(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】ロックナット
(51)【国際特許分類】
F16B 39/34 20060101AFI20241225BHJP
F16B 39/24 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
F16B39/34 A
F16B39/24 M
(21)【出願番号】P 2022506766
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2020071558
(87)【国際公開番号】W WO2021023626
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】102019120894.7
(32)【優先日】2019-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】522044984
【氏名又は名称】エスエフ・ハンデルス-ウント・ベズィッツゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SF HANDELS- UND BESITZGESELLSCHAFT MBH
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】フラグ,ハルトムート
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-159412(JP,A)
【文献】特表2012-531568(JP,A)
【文献】米国特許第02598052(US,A)
【文献】特開昭58-131421(JP,A)
【文献】実開昭51-139867(JP,U)
【文献】特開2018-189097(JP,A)
【文献】実開昭54-015167(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 39/34
F16B 39/38
F16B 39/24
F16B 39/284
B21K 1/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内ネジ(16)を有するネジ部と、前記ネジ部に隣接する周縁肩部(20)と、前記肩部を囲むカラーとを含むナット本体(12)、および、金属製の環状ワッシャー(22,22’)を備えるロックナットであって、
前記カラーは内方へ曲げられ、環状溝(28)が前記曲げられたカラーと前記肩部との間に形成され、前記環状ワッシャーは前記環状溝に収容され、
前記ネジ部の前記内ネジ(16)に対応する内ネジ(16’)が前記環状ワッシャー(22)の内周縁に形成され、前記環状ワッシャー(22)の前記内ネジ(16’)は、前記ナット本体(12)の前記内ネジ(16)に対してある距離だけ軸方向にオフセットされており、
一連の突起(40)またはくぼみが、前記環状ワッシャーと前記肩部とが互いに重なる前記肩部に形成され、前記突起または前記くぼみ間の残部が貫入する一連のくぼみ(30)が前記環状ワッシャーに形成されており、前記突起またはくぼみは軸方向に突出またはくぼみ、前記肩部
のまわりに分散して配置されており、
前記突起または前記残部は、角度α_vだけ前記ロックナットの径方向平面に対して傾斜している頂点線で形成され、前記角度α_vは、30°~60°の範囲である、ロックナット。
【請求項2】
前記肩部は、角度α_sだけネジ軸線に向かって前記ロックナットの径方向平面に対して傾斜している肩部表面を備え、前記角度α_sは0°~15°の範囲である、請求項1に記載のロックナット。
【請求項3】
前記突起またはくぼみは、前記肩部に成形または形成されている、請求項1または2に記載のロックナット。
【請求項4】
前記突起またはくぼみは、前記カラーに隣接する、請求項3に記載のロックナット。
【請求項5】
前記突起またはくぼみは、径方向に前記カラーから前記肩部の一部まで、特に前記肩部の径方向延長部の1/2~4/5まで延在している、請求項3または4に記載のロックナット。
【請求項6】
前記突起またはくぼみは、前記カラーに面する前記突起またはくぼみの中心間距離Aに対する前記突起またはくぼみの幅Bが、B=b*Aに等しく、前記bは0.2~1の範囲である、請求項3から5のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項7】
前記突起またはくぼみは径方向に整列され、かつ/または、前記肩部
のまわりに均等に分散して配置される、請求項1から6のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項8】
少なくとも12の突起またはくぼみが設けられている、請求項7に記載のロックナット。
【請求項9】
前記突起またはくぼみは、前記ナット本体に面する前記環状ワッシャーの表面上に形成または成形される、請求項1または2に記載のロックナット。
【請求項10】
前記突起は、円形もしくは楕円形ドームまたは横たわる半円柱の凸曲率で形成され、または角を有する突起、横たわる三角柱もしくは四面体の形状を有し、または前記形状をほぼ有する、請求項1から9のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項11】
前記突起または前記くぼみの幅、および/または、前記突起の高さまたは前記くぼみの深さが径方向内方へ減少する、請求項1から10のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項12】
内ネジ(16)を有するネジ部と、前記ネジ部に隣接する周縁肩部(20)と、前記肩部を囲むカラーとを含むナット本体(12)、および、金属製の環状ワッシャー(22,22’)を備えるロックナットであって、
前記カラーは内方へ曲げられ、環状溝(28)が前記曲げられたカラーと前記肩部との間に形成され、前記環状ワッシャーは前記環状溝に収容され、
前記ネジ部の前記内ネジ(16)に対応する内ネジ(16’)が前記環状ワッシャー(22)の内周縁に形成され、前記環状ワッシャー(22)の前記内ネジ(16’)は、前記ナット本体(12)の前記内ネジ(16)に対してある距離だけ軸方向にオフセットされており、
一連の突起(60’)およびくぼみ(60”)が、前記環状ワッシャーと前記肩部とが互いに重なる前記肩部に形成されており、前記突起またはくぼみは軸方向に突出またはくぼみ、前記肩部
のまわりに分散して配置されており、
前記くぼみは、リブ状構造を区分する、ロックナット。
【請求項13】
内ネジ(16)を有するネジ部と、前記ネジ部に隣接する周縁肩部(20)と、前記肩部を囲むカラーとを含むナット本体(12)、および、金属製の環状ワッシャー(22,22’)を備えるロックナットであって、
前記カラーは内方へ曲げられ、環状溝(28)が前記曲げられたカラーと前記肩部との間に形成され、前記環状ワッシャーは前記環状溝に収容され、
前記ネジ部の前記内ネジ(16)に対応する内ネジ(16’)が前記環状ワッシャー(22)の内周縁に形成され、前記環状ワッシャー(22)の前記内ネジ(16’)は、前記ナット本体(12)の前記内ネジ(16)に対してある距離だけ軸方向にオフセットされており、
一連の突起(60’)およびくぼみ(60”)が、前記環状ワッシャーと前記肩部とが互いに重なる前記肩部に形成されており、前記突起またはくぼみは軸方向に突出またはくぼみ、前記肩部
のまわりに分散して配置されており、
周方向に延在する単一のまたは多数の部分のリブが前記ナット本体の前記肩部に形成され、前記環状溝に前記環状ワッシャーを収容することによって、前記リブにくぼみが形成され、前記くぼみによって、前記リブが前記周方向に整列された複数の突起に再成形されるように構成されている、ロックナット。
【請求項14】
前記周方向リブは、前記環状ワッシャーが前記環状溝に収容される前は一連であり、前記肩部に前記カラーに隣接する周溝を加工することにより形成される、請求項13に記載のロックナット。
【請求項15】
内ネジ(16)を有するネジ部と、前記ネジ部に隣接する周縁肩部(20)と、前記肩部を囲むカラーとを含むナット本体(12)、および、金属製の環状ワッシャー(22,22’)を備えるロックナットであって、
前記カラーは内方へ曲げられ、環状溝(28)が前記曲げられたカラーと前記肩部との間に形成され、前記環状ワッシャーは前記環状溝に収容され、
前記ネジ部の前記内ネジ(16)に対応する内ネジ(16’)が前記環状ワッシャー(22)の内周縁に形成され、前記環状ワッシャー(22)の前記内ネジ(16’)は、前記ナット本体(12)の前記内ネジ(16)に対してある距離だけ軸方向にオフセットされており、
一連の突起(60’)およびくぼみ(60”)が、前記環状ワッシャーと前記肩部とが互いに重なる前記環状ワッシャーに形成されており、前記突起およびくぼみは軸方向に突出またはくぼみ
、前記環状ワッシャーの周縁のまわりに分散して配置されており、
周方向に整列された突起が、前記ナット本体の前記肩部に面する前記環状ワッシャーの表面に形成される、ロックナット。
【請求項16】
周方向に延在する単一のまたは多数の部分のリブが前記環状ワッシャーの表面に形成され、前記環状溝に前記環状ワッシャーを収容することによって、前記リブにくぼみが形成され、前記くぼみによって、前記リブが前記周方向に配置された複数の突起に再成形されるように構成されている、請求項15に記載のロックナット。
【請求項17】
前記周方向リブは、前記環状ワッシャーが前記環状溝に収容される前は一連であり、前記環状ワッシャーの表面の周溝により形成される、請求項16に記載のロックナット。
【請求項18】
前記環状ワッシャーは、前記環状溝に加圧係合と形状的嵌合により保持されている、請求項1から17のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項19】
前記環状ワッシャー(22)は一定の厚さを有するか、または、前記環状ワッシャー(22)の内径の厚さが前記環状ワッシャー(22)の外径の厚さよりも大きい、請求項1から18のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項20】
前記環状ワッシャー(22)の前記内ネジ(16’)は、前記ナット本体(12)の前記内ネジ(16)に対して、ネジ山ピッチの約3~30%の距離だけ軸方向にオフセットされている、請求項1から19のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項21】
前記環状ワッシャー(22)の内径での厚さは、前記内ネジ(16)のネジ山ピッチに等しいか、またはネジ山ピッチの1倍から2倍の間である、請求項1から20のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項22】
前記環状ワッシャー(22、22’)は、前記ロックナットの端面方向に凸状に湾曲している、請求項1から21のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項23】
前記環状ワッシャー(22)の周縁に分散した1つまたは複数の切り取り部が前記環状ワッシャーの外周縁に形成され、前記切り取り部は、1つまたは複数の延長部分として爪(26)を前記環状ワッシャーの周縁に画定する、請求項1から22のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項24】
前記環状ワッシャー(22)の表面は前記環状ワッシャーの周縁のまわりに分散した1つまたは複数の突起を有する、請求項1から23のいずれか1項に記載のロックナット。
【請求項25】
請求項13に記載のロックナットを製造する方法であって、
前記ナット本体の前記肩部に、前記カラーに隣接する周溝によって周方向リブ(60)が形成され、
前記環状ワッシャー(22)の周縁に分散した1つまたは複数の切り取り部が形成され、前記切り取り部により1つまたは複数の爪(26)が画定されており、
前記環状ワッシャー(22)がまだネジ山のないナット本体(12)の前記肩部の前記カラーの内側に配置され、
第1の力が、前記カラーに軸方向に加えられて、前記カラーが内方へ曲げ加工され、前記カラーと前記肩部との間に前記環状ワッシャーが軸方向に締めつけられる環状溝(28)が形成され、前記第1の力が加わることで、前記爪(26)によって前記周方向リブ(60)が第1の距離だけ変形し、
その後、前記ナット本体(12)と前記環状ワッシャー(22)に内ネジ(16、16’)が1回の加工で形成され、
続いて、第2の力が、前記環状ワッシャーを軸方向に変位させるように前記環状ワッシャーが締めつけられている前記カラーおよび前記環状溝(28)に軸方向に加えられ、前記周方向リブが第2の距離だけ変形するとともに、前記爪(26)が、前記周方向リブに形成されたくぼみ(60”)に配置され、前記くぼみ(60”)によって、前記周方向リブ(60)が複数の突起(60’)に再成形される、方法。
【請求項26】
前記環状ワッシャー(22、22’)は、予め凸状の曲率を有するように製造され、前記環状ワッシャー(22、22’)が前記ロックナットの端面方向に凸状になるように前記ナット本体(12)の前記肩部に配置され、前記環状ワッシャーの前記凸状の曲率は、変形時に、維持または実質的に維持される、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文によるロックナットに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなロックナットは、例えば、DE2638560C、DE4313809C1、DE4313845C1およびWO2011/000393A1から公知である。
【0003】
ロックナットは、再使用可能な一体型金属ナット、特に、内ネジが設けられた金属ナット本体と、環状溝へ変形されて金属製の係止ワッシャーを内部に保持する隣接するカラーとを有する鋼で一体成形されたナットである。ロックナットは、ナット本体でカラーの内側に環状ワッシャーを配置し、カラーを圧着して、このように形成された環状溝に環状ワッシャーを保持し、その後、ナット本体および環状ワッシャーにおいて同時に内ネジを切ることによって製造される。結果として、ネジ山は、係止環状ワッシャーの内周縁辺上のナットのネジ山に対応する。環状ワッシャーおよびワッシャーのネジ山は、ナットのネジ山に対して、わずかな距離だけ、例えば、ナットのネジ山のネジ山ピッチの約5~30%、好ましくは10~20%に相当する距離だけ、軸方向にオフセットさせて、ロックナットの締めつけ効果を調節する。係止環状ワッシャーは、軸方向に特定の弾性を有し、それによってロックナットの締めつけ力は、環状ワッシャーの内ネジのオフセットによって調節することができ、ロックナットは、多くのねじ込み操作のために、この調節された締めつけ力を維持する。
【0004】
この種のロックナットは、ネジ接続が緩まないように、ネジを固着する有効で簡単な手段を提供する。さらなる締結具もしくは機械要素、または、ネジシャンク、ネジ山端もしくはボルトのさらなる機械加工は、ネジを固着するために必要とされない。係止ワッシャーは、ネジまたはボルトがねじ込まれたときに弾性的に変形することができる締めつけ部品を構成する。結果として、係止環状ワッシャーのオフセットによって調節することができる径方向および軸方向の保持力をもたらす。ロックナットは、大きな温度変動および振動でも永久接続を確実なものとする。
【0005】
この周知のロックナットは、優れた係止性を有するので市場に定着した。例えば、特定のナットの大きさ、または極端な温度負荷に対して望ましい可能性のある係止環状ワッシャーの弾性を高めるために、上述の文献は、外周縁に切片状の周縁くぼみを有し、および/または外周縁に追加の切れ込みを有し、径方向に可変厚さを有する環状ワッシャーを提供することを示唆する。これにより、ばね鋼などの硬い弾性材料から環状ワッシャーを製造し、それでも所望の軸方向たわみに必要な弾性を達成し、同時に高い保持力を達成するのに十分高い環状ワッシャーの弾性復元力を保つことを可能にする。環状ワッシャーは、少なくともナット本体の材料と同じくらい硬い材料から製作されるので、環状ワッシャーのネジ山は、多くのねじ込み操作の後も損傷されないので、ロックナットは、係止位置における締めつけ力に目立った変化が生じることなく、数回、緩め、締め直されることができる。非常に高い温度に耐え得る材料を使用することができ、このことは、例えば、自動車に使用されるときに非常に重要である。
【0006】
上述の文献は、保持環状ワッシャーの弾性を最適化するための実行可能な解決策を提案する。しかしながら、実際には、環状溝における保持環状ワッシャーの固定は、まだ改善できることが示された。
【0007】
従来技術では、一般的なロックナットに類似する方法でナット本体のカラーに保持されるプラスチック製の係止および封止リングを有するロックナットも公知である。このようなロックナットは、例えば、EP0047061A1、DE1815585A、DE3640225C2、DE8424281U1、US4,019,550A、US3,275,054A、US3,316,338A、US2,450,694A、US5,454,675Aに記載される。しかしながら、これらのロックナットは異なる動作原理に基づく。プラスチックの保持および封止リングの最初はネジのない部分が、ナットの内ネジに直接、接続し、内ネジをわずかに越えて突出する。ボルトがねじ込まれると、ボルトは、係止封止ワッシャーの内周縁内へ切り込む。上述の文献の大部分は、ボルトがねじ込まれたときの後退するプラスチック材料の吸収を扱っている。
【0008】
この従来技術の教示は、係止環状ワッシャーの弾性および保持力の調節に関して、金属から一体的に製作されたロックナットへの転用が不可能である。なぜなら、他の理由の中でもとりわけ、プラスチック環状ワッシャーは、その弾性に関して、金属製の環状ワッシャーとは異なる挙動を示すからであり、また、この従来技術は、環状ワッシャーおよびナット本体の内ネジの軸方向オフセットを提供しないからである。これらのロックナットの保持力は異なる動作原理に基づく。金属から一体的に製作されたロックナットの信頼性をさらに最適化することが本発明の目的である。
【0009】
この課題は、各独立請求項によるロックナットにより解決される。各従属請求項は実施形態を定義する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、内ネジを有するネジ部と、ネジ部に隣接する周縁肩部と、肩部を囲むカラーとを含むナット本体と、金属製の環状ワッシャーと、を備えるロックナットであって、環状ワッシャーはカラーの内側の肩部に置かれ、カラーは内方へ曲げられて、環状ワッシャーが収容された曲げられたカラーと肩部との間に、環状溝を形成する、ロックナットを提供する。ナット本体のネジ部の内ネジに対応する内ネジが環状ワッシャーの内周縁に形成され、環状ワッシャーの内ネジは、ナット本体の内ネジに対してある距離だけ軸方向にオフセットされる。環状溝に環状ワッシャーをより良好に固定するために、一連の突起またはくぼみが、環状ワッシャーおよび肩部が互いに重なる肩部または環状ワッシャーに形成され、これらの突起またはくぼみは軸方向に突出するとともに肩部または環状ワッシャーの周縁に分散して配置される。突起またはくぼみは、環状ワッシャーがナット本体の肩部でカラーの内側に配置されたとき、肩部上の環状ワッシャーのために支持表面、線または点を形成する。カラーを変形させて環状溝を形成することによって、軸方向の力が環状ワッシャーに加えられ、突起またはくぼみ、またはくぼみ間の残りの材料を部分的に変形させ、かつ/または反対側の表面、環状ワッシャーまたは肩部内へ部分的に押圧する。結果として、環状ワッシャーは、力により係止するように、かつ形状を合わせるように環状溝に締めつけられる。肩部、またはくぼみ間の環状ワッシャーもしくは材料に形成された突起は、カラーが変形されることにより環状溝内に回転に対して環状ワッシャーを固着するときに環状ワッシャーまたは肩部の反対側の表面に、ある程度貫通する。さらに、突起またはくぼみによって、環状ワッシャーの軸方向のオフセットをより正確に調節することができるのは、突起またはくぼみが肩部または環状ワッシャーの連続の、または段付きの表面よりもより適合できるからである。
【0011】
様々な実施形態では、突起またはくぼみは径方向に整列されて肩部または環状ワッシャーの周縁のまわりに均等に分散する。これにより環状ワッシャーはナット本体の軸線に垂直に良好に位置合わせされる。
【0012】
ロックナットの大きさに応じて、異なる数の突起またはくぼみが径方向に選ばれてもよく、少なくとも16の突起またはくぼみが様々な実施形態において設けられる。例えば、少なくとも24または40の突起またはくぼみが軸方向に設けられてもよい。
【0013】
くぼみ間の突起または残りの材料は様々な形状を有することができる。様々な実施形態では、突起または残りの材料は、凸曲率の形状、特に、円形もしくは楕円形ドームまたは横たわる半円柱、または角のある、もしくはとがった形状、特に横たわる三角柱もしくは四面体の形状、またはほぼそのような形状を有する。特に良好な結果は、不規則な四面体の形状であるにおいてくぼみ間の突起または残りの材料で得られた。
【0014】
突起またはくぼみが肩部に形成されるとき、例えば、四面体の第1の面はカラーへ隣接してもよく、四面体の第2の面は、四面体の高さが径方向にカラーから肩部の内周縁に向けて減少するように肩部へ隣接してもよい。くぼみ間の突起または残りの材料は、例えば、四面体であるが、径方向に、肩部の全体または一部のみにかけて、例えば、カラーから肩部の径方向延長部の1/2~4/5にかけて延在してもよい。
【0015】
突起またはくぼみが環状ワッシャーに形成されるとき、例えば、四面体の第1の表面は環状ワッシャーの外周縁と整列されてもよく、四面体の第2の表面は、四面体の高さが径方向に環状ワッシャーの外周縁から環状ワッシャーの内周縁に向けて減少するように環状ワッシャーへ隣接してもよい。くぼみ間の突起または残りの材料は、例えば、四面体であるが、径方向に環状ワッシャーの全体または一部のみにかけて、例えば、環状ワッシャーの外周縁から環状ワッシャーの径方向延長部の1/2~4/5にかけて延在してもよい。
【0016】
様々な実施形態では、肩部は、角度α_sだけロックナットの径方向平面に対して傾斜している肩部表面を有し、ここでα_sは約0°~15°の範囲または約5°もしくは10°である。また、くぼみ間の突起または残りの材料は、角度α_vだけロックナットの径方向平面に対して傾斜している頂点線を有してもよく、ここでα_v>α_sであって、α_vは、例えば、30°~60°の範囲または約40°、45°、もしくは50°である。
【0017】
様々な実施形態では、突起がカラーに当接する場合の突起の中心間距離Aに対する突起またはくぼみの幅BがB=b*Aに等しい、またはほぼ等しく、ここでbは0.2~1、より詳細には0.5~1の範囲であり、または約1もしくは0.5である。くぼみ間の突起または残りの材料の最大高さは、これらの突起または残りの材料の幅にほぼ等しく、または幅の半分から幅の2倍までの範囲にあってもよい。くぼみ間の突起40および/または残りの材料の最大高さは、固着環状ワッシャー22の厚さで決まってもよく、例えば、ワッシャーの厚さの0.25倍からワッシャーの厚さの1倍であってもよい。突起の幅、および/またはくぼみ間の突起および/または残りの材料の高さは径方向内方へ減少してもよい。
【0018】
さらなる実施形態では、周縁に整列された突起がナット本体の肩部に形成される。突起は、例えば、環状溝に環状ワッシャーを収容することによって内部にくぼみが形成され、周縁に延在する一片または多数の片のリブを、ナット本体の肩部に形成することによって形成されてもよく、これらのくぼみは、複数の周縁に整列された突起へ、リブを再成形する。例えば、一片リブは、カラーへ隣接する肩部に正面のくぼみを形成することによって、例えば、ナット本体を回すことによって形成されることができる。環状ワッシャーがその周辺に爪または他の延長部分を有する場合、これらは、ナット本体のカラーがフランジ取り付け加工されたときにリブを貫通することができ、結果として、リブに形成されたくぼみに置かれることができる。これにより、回転に対してナット本体に環状ワッシャーを固着させる。
【0019】
さらなる実施形態では、周縁に整列された突起がナット本体の肩部に面する環状ワッシャーの表面に形成される。突起は、例えば、環状ワッシャーの表面に、周縁に延在する一片または多数の片のリブを形成することによって形成されてもよく、このリブの内部で、環状ワッシャーが環状溝に収容される場合、複数の周縁に整列された突起へ、リブを再成形するくぼみが形成される。例えば、一片のリブは、環状ワッシャーの表面に正面のくぼみを形成することによって、例えば、環状ワッシャーを回すことによって形成されてもよい。ナット本体の肩部が、その周囲に爪または他の延長部分を有する場合、これらの爪または延長部分は、ナット本体のカラーがフランジ取り付け加工されたときにリブを貫通することができ、結果として、リブに形成されたくぼみに置かれることができる。これにより、回転に対してナット本体に環状ワッシャーを固着させる。
【0020】
様々な実施形態では、環状ワッシャーは一定の厚さを有し得るか、または環状ワッシャーのその内径での厚さは、環状ワッシャーのその外径での厚さよりも大きくてもよい。
【0021】
様々な実施形態では、環状ワッシャーは、環状ワッシャーの内ネジがナット本体の内ネジに対して内ネジのネジ山ピッチの約5~30%、特に10~20%である距離だけ軸方向にオフセットされるように、ナット本体に対して変位させる。例えば、環状ワッシャーの内ネジは、ネジ山ピッチの約10%または20%である距離だけナット本体の内ネジから軸方向にオフセットされる。環状ワッシャーおよびその内ネジのオフセットは使用されて、ロックナットの締めつけ力を調節することができる。
【0022】
様々な実施形態では、環状ワッシャーのその内径での厚さは、内ネジのネジ山ピッチに等しいか、もしくはほぼ等しく、または、ネジ山ピッチの1倍からネジ山ピッチの1.5倍の間にある。
【0023】
様々な実施形態では、環状ワッシャーは、ロックナットの前側の方向に凸状に湾曲している。
【0024】
様々な実施形態では、環状ワッシャーの周縁に分散する、いくつかの切り取り部および/または爪が環状ワッシャーの外周縁に形成される。
【0025】
環状ワッシャーは、金属、特に、ばね鋼から製作される。ナット本体も金属、特に鋼から製作される。
【0026】
本発明は、上述した型のロックナットを製造する方法も提供する。ワッシャーは、ナット本体の肩部でカラーの内側に配置され、このナット本体は、まだネジ山がない。第1の力が、軸方向にカラーへ加えられて、カラーを内方へ変形させ、これは「フランジ取り付け加工」とも呼ばれ、環状ワッシャーが軸方向に締めつけられているフランジ取り付け加工されたカラーと肩部との間に環状溝を形成する。第1の力を加えることによって、くぼみ間の突起または残りの材料は、第1の距離だけ変形し、反対側表面内へ少し貫入する。その後、単一の操作において、内ネジが ナット本体および環状ワッシャーに形成され、環状ワッシャーは、突起によって環状溝において回転に対して固着される。その後、第2の力が、軸方向に環状ワッシャーを変位させるために環状ワッシャーが締めつけられているカラーおよび環状溝へ軸方向に加えられる。第2の力を加えることによって、くぼみ間の突起または残りの材料は第2の距離だけ変形する。くぼみ間の突起または残りの材料により、軸方向にワッシャーを正確かつ均一に下げることができるので、ネジ山のオフセットを正確に調節することができる。さらに、くぼみ間の突起または残りの材料により、環状溝に環状ワッシャーを力で固定することに加えて、環状ワッシャーとナット本体との間で形状を合わせることもできるので、環状溝に回転に対して環状ワッシャーを固着する。これは、切断工程時に環状ワッシャーを回転させることができないので、ネジを切る場合に特に有利である。
【0027】
別の実施例では、ロックナットを製造する方法は、カラーへ隣接する肩部を正面から突き刺すことによってナット本体の肩部に周縁リブを形成することを備える。その後、環状ワッシャーは、まだネジ山がないナット本体の肩部でカラーの内側に配置され、第1の力が軸方向にカラーへ加えられてカラーの内方にフランジ取り付け加工を行い、かつ環状ワッシャーが軸方向に締めつけられたフランジ取り付け加工されたカラーと肩部との間に環状溝を形成し、ここで、第1の力を加えることによって、環状ワッシャーの外周に形成された爪が周縁リブを貫通してくぼみに置かれ、それによってリブに形成される。
【0028】
続いて、単一の操作において、内ネジがナット本体および環状ワッシャーに形成することができ、その後、第2の力が、環状ワッシャーが締めつけられて軸方向に環状ワッシャーを変位させるカラーおよび環状溝へ軸方向に加えられ、ここで、第2の力を加えることによって、爪はさらなる距離だけリブに貫通する。
【0029】
逆に、周縁リブも肩部に面する環状ワッシャーの表面に形成されることができ、対応する突起または爪は、突起または爪が、カラーにフランジ取り付け加工が行われたときに環状ワッシャー上のリブ内へ貫入するように、ナット本体の肩部で周縁に整列させることができる。
【0030】
リブと爪との間の相互作用によって軸方向にワッシャーを正確かつ均一に下げることができるのでネジ山オフセットを正確に調節することができる。さらに、工程で形成された突起およびくぼみにより、環状溝に環状ワッシャーを摩擦固定させることに加えて、環状ワッシャーとナット本体との間で形状を合わせて接続することもできるので、環状溝に回転に対して環状ワッシャーを固着する。これは、切断工程時に環状ワッシャーを回転させることができないので、ネジ山を形成するときに特に有利である。
【0031】
様々な実施形態では、環状ワッシャーは、前加工ステップにおいて凸曲率で製造され、環状ワッシャーがロックナットの前側の方向に凸状に湾曲されるようにナット本体の肩部に配置され、それによって環状ワッシャーの凸曲率は、変形時に、維持または実質的に維持される。
【0032】
本発明は、図面を参照して実施形態によって以下により詳細に説明する。図面は次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】実施例による、ロックワッシャーを挿入する前の、上方からのロックナットのナット本体の斜視図である。
【
図2】実施例による、下方からのロックナットのナット本体の斜視図である。
【
図4】
図5および
図6の断面を説明するためのロックナットの上面図である。
【
図5】実施例による、
図4および
図13の断面線A-Aに沿ったナット本体および固定されたロックワッシャーを有するロックナットの垂直断面図である。
【
図6】実施例による、
図4および
図13の断面線B-Bに沿ったナット本体および固定されたロックワッシャーを有するロックナットの垂直断面図である。
【
図9】
図6~8のロックナットの縦断面斜視図である。
【
図10】実施例による、ロックワッシャーが定位置に締めつけられた、上方からのロックナットの斜視図である。
【
図11】係止環状ワッシャーを非表示にした、
図10の類似図である。
【
図12】実施例による保持環状ワッシャーの斜視図である。
【
図13】実施例によるロックワッシャーのロックナットへ挿入される前の上面図である。
【
図14】完成されたロックナットから取られた保持環状ワッシャーを示す、
図13の類似図である。
【
図15】別の実施例による保持環状ワッシャーの上面図である。
【
図16】
図15の線A-Aに沿った固着環状ワッシャーの断面図である。
【
図17】別の実施例による保持環状ワッシャーの上面図である。
【
図18】
図17の線B-Bに沿った固着環状ワッシャーの断面図である。
【
図19】別の実施例による、
図21の断面線A-Aに沿ったロックナットのナット本体の垂直断面図である。
【
図22】
図19の実施例によるナット本体の、環状ワッシャーを挿入する前の斜視図である。
【
図23】実施例を説明するための、環状ワッシャーが挿入されて再び除去された後のナット本体の
図19と類似の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図は、実施形態の実施例を示し、それによって、例えば、上述の実施形態のように修正を行うことができる。明瞭にするために、全ての図で、全ての特徴に参照符号がつけられているわけではない。しかしながら、当業者であれば、図がそれぞれロックナットの対応する特徴を示すことを認識するであろう。
【0035】
様々な図では、ナット本体12および係止環状ワッシャー22を有するロックナット10が示されている。ロックナット10は、例えば六角形のナットとして鋼から製作され、すなわち、実施例では、ナット本体および環状ワッシャーは鋼から製作される。図示された実施例では、ナット本体12は、一端面に同心カラー14を有し、芯孔16を有し、この孔の直径はナットの大きさおよび形成されるネジ山の内径で決まる。図では、芯孔16のみが示され、ロックナットが完成されたときに内ネジがこの孔に切り込み、以下に「ナットネジ山」とも称される。カラー14の内縁辺または内周縁18は、ロックナット10の芯孔の直径に対して外方へオフセットされ、係止ワッシャー22を収容するために芯孔16とカラー14との間に肩部20を形成する。
【0036】
カラーの内径DKは、芯孔径Dの約1.2~1.5倍、DK=1.2*D~1.5*Dであり、例えば、芯孔径Dの約1.3倍である。カラー14の高さは、係止環状ワッシャー22の厚さで決まり、例えば、係止環状ワッシャー22の厚さの約2倍であってもよく、ここで係止環状ワッシャー22の厚さは、ほぼ、ロックナット10のネジ山ピッチの1倍からネジ山ピッチの1.5倍の間である。カラー14の高さは、以下に述べるように、カラーがフランジ加工(カシメ加工)されたときに係止環状ワッシャー22が確実に締めつけられることができるような高さである。カラー14は、全体的に円錐形状を有し、(径方向に測定された)その厚さはロックナットの面から軸方向に増加する。カラーの厚さは、以下に説明するように、フランジ加工後の締めつけおよび保持力の調節に利用することができる。
【0037】
係止環状ワッシャー22は、以下、短く環状ワッシャーとも称され、金属、好ましくは、ばね鋼またはばね帯鋼などの弾性金属から製作される。
【0038】
一連の突起40は、肩部20に形成され、軸方向に突出し、カラー14の内壁18へ隣接し、肩部の周縁のまわりに分散する。以下の実施例は、突起40が肩部20に形成された実施形態に関する。別の実施形態では、代わりに、突起またはくぼみは、環状ワッシャーがナット本体内へ挿入されるときに肩部20に面する環状ワッシャーの一側に形成されてもよく、
図5~
図9を参照して述べるように同じまたは実質的に同じ効果を達成することができる。さらに他の実施形態では、くぼみが、
図16および
図17における環状ワッシャーを参照して示されたものと同じように肩部に形成され、くぼみ間の残りの材料は上述の突起と類似の機能を有する。
【0039】
図1~
図16に示された実施例では、突起40は不規則な四面体の形状であり、各四面体の一面がカラーの内壁18へ隣接し、隣接面が肩部20へ隣接し、四面体の他の二辺は楔形状を囲む。肩部20へ隣接する面は突起40の基部を形成し、楔状の突起40の頂点線は、肩部20からの突起40の高さがカラー14の内壁18からロックナットの軸線の方向に減少するように、肩部20の表面に対して傾斜している。
【0040】
実施例では、突起40は均一な歯列を形成し、突起40は、径方向に配列され、かつ肩部または環状ワッシャーの周縁のまわりに均等に分散する。様々な実施形態では、少なくとも12、16、24または少なくとも40の突起が、ロックナットの大きさおよび用途に応じて設けられてもよい。例えば、大きさM8のロックナットが少なくとも16、例えば、20の突起を有してもよく、大きさM12のロックナットが、例えば、少なくとも20の突起を有してもよく、大きさM16のロックナットが、例えば、少なくとも40の突起を有してもよい。突起の数は、カラー14の芯孔16または内壁18の周縁で決められてもよい。肩部20から測定された突起40の高さは、一実施例では、カラー14の高さの約3分の1であってもよい。突起40の高さも固着環状ワッシャー22の厚さで決められてもよく、例えば、ワッシャーの厚さの0.25倍からワッシャーの厚さの1倍であってもよい。
【0041】
例えば、M12の大きさのロックナットの実施例では、カラー14の内径は約12~15mmであってもよい。カラー14の高さは、カラーの肩部20との接触線から測定されるが、約3.5mmであってもよい。24の突起が本実施例に設けられた場合、これらの突起は約2mmまたは15°の中心間の間隔を有する。突起は、突起の基部で、最も広い点で2mmの最大幅を有してもよい。突起のそれらの基部での幅は、最も広い点で、例えば、約1.8mm、約1.5mmまたは約1mmであってもよい。突起の肩部からの高さは、最も高い点で、例えば、約0.5mm~約2mm、例えば、約1mmであってもよい。環状ワッシャー22の厚さは、約1.5mm~2.5mmの範囲にあってもよい。
【0042】
例えば、M20の大きさのロックナットの実施例では、カラー14の内径は約20~25mmであってもよい。カラー14の高さは、肩部20との接触線から測定されるが、約5mmであってもよい。32の突起が、本実施例に設けられた場合、約2mmまたは11.25°の中心間の間隔を有する。突起は、これらの基部で、最も広い点で2mmの最大幅を有してもよい。突起のこれらの基部での幅は、最も広い点で、例えば、約1.8mm、約1.5mmまたは約1mmであってもよい。突起の肩部からの高さは、最も高い点で、例えば、約0.5mm~約3mmの範囲、例えば、約0.6、1.5または2.5mmであってもよい。環状ワッシャー22の厚さは、約1.5mm~4mmの範囲、より詳細には、2.5mm~3.75mmの範囲にあってもよい。
【0043】
突起は、それらの基部で、最も広い点で、基本的に互いに隣接し得るか、または、例えば、0.5mm~2mmの小さな距離、または非常に大きなロックナットの場合は、5mmまで、もしくは1cmまでの距離で配置されることができる。
【0044】
図示された実施例では、突起は、楔形状で、傾斜した頂点線を有する一方で、突起は、他の形状、例えば、凸曲率の形状、特に、円形もしくは楕円形ドームまたは横たわる半円柱、または他の角度のある形状、特に、横たわる三角柱、切妻屋根、傾斜していない楔または他の四面体、もしくは多面体の形状を有してもよい。このような形状の変形、例えば、丸みを帯びた角もしくは先端を切ったような形の角も、本発明の範囲内である。突起の幅、高さおよび間隔に関して、上記は原則としてあてはまる。
【0045】
肩部20は、ロックナット10の径方向平面に対して整列されることによってカラー14の内面18と直角であってもよく、または径方向平面に対してわずかに傾斜してカラー14から離れて径方向内方へ傾斜してもよい。例えば、肩部20は、径方向平面に対して、例えば、20°まで、例えば、約10°の角度α_sだけ傾斜してもよい。突起の頂点線は、同じ径方向平面に対して、例えば、30°~60°ほどの、例えば、約45°の傾斜角度α_vを有してもよい。これらの角度は、肩部の傾斜および突起の傾斜が最もよく見られる
図7に示される。
【0046】
環状ワッシャー22の実施例が
図12~
図14に示される。ワッシャーは、ナット本体12の芯孔径Dと等しいか、またはわずかに小さい芯孔径D
Rを有する。
図12~
図14に示される実施例では、環状ワッシャー22は、円形の切片が環状ワッシャー22の外周縁にない3つの切り取り部24を有する。一対の爪26が環状ワッシャー22の周縁で3つの切り取り部24のそれぞれの間に形成される。以下に説明されるように、環状ワッシャー22は、カラー14にフランジ取り付け加工をすることによって、円形の切片形状の切り取り部24の間で、各対の爪26の領域においてナット本体12に固定される。
【0047】
環状ワッシャー22は、均一な厚さを有してもよく、または環状ワッシャー22の厚さは、その外径よりも内径での厚さが大きくてもよい。係止環状ワッシャー22の厚さを直径で変化させることによって、環状ワッシャーの弾性、ひいてはロックナットの保持力を調節することができる。例えば、環状ワッシャー22の外径での厚さは、ナットネジ山のネジ山ピッチの高さ以下であってもよく、例えば、ネジ山ピッチの半分から1倍の範囲であってもよい。例えば、外径での厚さは、ネジ山ピッチの約4分の3であってもよい。環状ワッシャー22の内径での厚さは、ネジ山ピッチ以上であってネジ山ピッチの2.5倍以下であってもよい。例えば、内径での厚さは、ネジ山ピッチの約1.5倍などの、ネジ山ピッチの1倍から2倍の間である。実際には、環状ワッシャーの内径での厚さがネジ山ピッチの2倍よりも大きい場合、ロックナットの過度のブレーキトルクが、ほとんどの用途においてボルトをねじ込むときに生じ、それによってブレーキトルクおよび保持力もロックナットおよびナットネジ山の全体寸法ならびにナットネジ山に対する環状ワッシャー22のネジ山の軸方向オフセットの大きさで決まる。
【0048】
ロックナットが製造されるときに、環状ワッシャー22は、カラー14によって囲まれた肩部20に最初に配置される。このように事前に組み立てられた状態では、環状ワッシャー22は、
図5および
図6において特によく見られるように、ロックナットの前側の方向に凸曲率を有してもよい。
【0049】
続いて、
図5~
図9に示されるように、カラー14は、フランジ取り付け加工によって、その上端において圧力パンチなどによって変形して引き抜かれ、それによって、環状ワッシャー22が軸方向に動かないように保持された環状溝28が形成される。フランジ取り付け加工されたカラーは14’がつけられている。カラー14をフランジ取り付け加工するために、カラーを変形させ、変形時に、突起がわずかな距離だけ環状ワッシャー22の材料内へ貫入するように突起40に環状ワッシャー22を押圧するのに十分な第1の押圧力が加えられる。例えば、押圧力は、突起40が環状ワッシャー22の材料内へ突起の高さの3分の1まで貫入するように調節されることができる。このように、環状ワッシャー22は環状溝28内で軸方向に固定されるばかりではなく、回転に対しても固着される。この状態は
図5~
図9に示され、
図5および
図7は、
図4および
図13における固着環状ワッシャー22の配向に対して示されている断面A-AおよびB-Bの断面図を示す。
図5の断面A-Aは、切り取り部24のうちの1つおよび一対の爪26の間の反対側の空間と交差するので、環状ワッシャー22は、これらの位置で、カラー14の内壁18に当接しない。切断面B-Bは、環状ワッシャー22が、これらの位置で、カラー14の内壁18へ隣接するように2つの対向する爪26と交差する。
【0050】
環状ワッシャー22を環状溝28に固着した後、切断工具が使用されて、ナット本体12および環状ワッシャー22が同一で連続したネジ山(図示せず)を有するようにナット本体12および環状ワッシャー22において同時に内ネジを切る。突起40は環状ワッシャー22の材料内へ部分的に押圧されるので、環状ワッシャー22は、ネジ山を形成しながら、回転に対して固着される。爪26は追加の回転防止保護を行う。
【0051】
その後、第2の押圧力が、同じまたは別の圧力ダイによってフランジ取り付け加工されたカラー14’に加えられ、それによって環状ワッシャー22はナットネジ山の軸方向にわずかに変位するので、ナットネジ山および環状ワッシャー22の内ネジは互いに軸方向にオフセットする。環状ワッシャー22の軸方向オフセットは、ネジ山ピッチの約5~30%好ましくは10~20%であってもよいので、2つのネジ山の互いからのオフセットは、ネジ山ピッチの4分の1から半分の間にある。第2の押圧力は第1の押圧力とほぼ等しくてもよく、ナット本体12および環状ワッシャー22のネジ山の所望のオフセットを達成するように調節される。このような所望のオフセットは、例えば、ロックナットの所望の保持トルクに応じて調節されてもよい。係止環状ワッシャーは肩部20に平らに置かれないが、突起40上で、係止環状ワッシャー22の軸方向オフセットは均等かつ正確に調節されることができる。この工程において、突起40は変形し、かつ/または環状ワッシャー22の材料内へさらに貫入することができる。
【0052】
図13および
図14は、ロックナットの完成前後の保持環状ワッシャー22’の実施例を示し、突起40の貫入によって形成されたくぼみ30が
図14に示されている。くぼみ30は、突起40とフランジ取り付け加工されたカラー14’との間に締めつけられた係止環状ワッシャー22’の領域に位置する。
【0053】
図15および
図16は、突起44が表面に形成された環状ワッシャー42の別の実施例を示す。環状ワッシャー42の幾何学的構成は、突起44の形成を除いて、
図12~
図14を参照して説明したものと基本的に同じまたは類似であり得る。
図12~
図14の上記説明を参照する。
【0054】
図15および
図16の実施例では、環状ワッシャー42の周縁のまわりに分散した爪46それぞれの3つの突起44のグループが6つある。これは一例にすぎず、異なる数の突起が設けられ、
図15および
図16に示されているものとは異なるように配列され、グループにされ、または均等に分散して、形成されてもよい。
図15および
図16の実施例では、突起44はロックナットの肩部20で突起40と形状が類似してもよい。このことは、特に、突起44の形状、寸法および相対的配置にあてはまる。上記説明を参照する。
【0055】
図15および
図16の環状ワッシャー42は、肩部に形成された突起またはくぼみを有する必要がないロックナットと対をなすことができるので、滑らかな表面を有し得る。完成されたロックナットは原則として、
図5~
図9を参照して説明したように製造されてもよいが、
図15および
図16の実施例では肩部の突起よりもむしろ環状ワッシャー42の突起44のほうが変形する。
図5~
図9の上記説明を参照する。
【0056】
図17および
図18は、くぼみ54が表面に形成された環状ワッシャー52のさらに別の実施例を示す。環状ワッシャー52の幾何学的構成は、くぼみ54の形成を除いて、
図12~
図14を参照して説明したものと基本的に同じまたは類似であり得る。
図12~
図14の上記説明を参照する。
【0057】
図17および
図18に示された実施例では、11のくぼみ54の3つのグループが環状ワッシャー52の周縁のまわりに形成され、各くぼみは、爪56上に、および爪の間に設けられる。これは当然、一例にすぎず、異なる数のくぼみが設けられてもよく、また、
図17および
図18に示されているものとは異なるように配置され、グループにされ、形状にされてもよい。
図17および
図18の実施例では、くぼみ54間に残る材料は結果として歯状またはリブ状の構造58をもたらし、これらの構造は、特に、歯状またはリブ状の構造58の形状、寸法および相対的配置に関して、ロックナット10の肩部20上の突起40と設計が類似であってもよい。突起の上記説明を参照する。
【0058】
図17および
図18の環状ワッシャー52はロックナット10と対をなしてもよく、その肩部は突起またはくぼみが形成される必要がないので、滑らかな表面を有し得る。ロックナットは原則として、
図5~
図9を参照して説明したように製造されてもよいが、
図17および
図18の実施例では、環状ワッシャー52の歯状またはリブ状構造58は、肩部の突起よりもむしろ変形する。
図5~
図9の上記説明を参照する。
【0059】
さらなる実施形態では、図示されないが、くぼみが、突起40の代わりに、ロックナット10の肩部20に形成されてもよく、くぼみ間に、歯状またはリブ状構造が、くぼみ間に残る材料から形成され、これらの構造は
図17および
図18に示されたものと類似であってもよい。この場合も、ロックナットは、基本的に、
図5~
図9を参照して説明されたように製造されるが、この場合も、肩部で変形するのは突起ではなく歯状またはリブ状構造58である。
【0060】
ロックナットのさらなる実施形態が
図19~
図25に示される。ロックナットは、基本的に、
図1~
図18を参照して上述したナット本体12および係止環状ワッシャー22で構築されるので、上記説明を参照する。特に、環状ワッシャー22は
図12および13を参照して説明されたとおりであってもよい。以下では相違点のみを説明する。前の図と同じ参照符号を使用して同一または対応する特徴を示す。特に記載がない限り、ロックナットに関する上記備考は必要な変更を加えるとあてはまる。
【0061】
図19~
図25の実施例では、周縁リブ60が肩部14に最初に形成される。これは、例えば、ナット本体12を回すことによって、カラー14に隣接して周溝62を加工することにより形成できる。任意で、追加の材料が、周溝62から離れて面するリブ60の側で、すなわち径方向内方で肩部20の表面から除去されて、所望の幅および高さのリブ60を画定し得る。リブ60の幅および高さは、前の実施形態に記載された突起40の幅および高さに根本的に類似してもよい。
【0062】
例えば、リブ60は、その基部で、最も広い点で、3mm、好ましくは1~2mmの最大幅を有してもよい。肩部からのリブの高さは、最も高い点で、例えば、約0.5mm~2mmの範囲、例えば、約1mmであり得る。これらの値は当然、例にすぎず、ロックナットの大きさ、ネジ山、使用された材料、設定される保持力および他の要因に応じて可変である。リブは、例えば、基本的にほぼ三角形もしくは台形の断面、または半円形、半楕円形もしくは放物線形の断面を有し得る。
【0063】
図22は、環状ワッシャー22がナット本体12にいかに据えられるかを示す。環状ワッシャー22を挿入後、カラー14も、
図6~
図9を参照して上述したように、回転に対して環状溝28に環状ワッシャー22を固着するために本実施形態でフランジ取り付け加工される。
図19~
図25の実施例では、
図12および
図13を参照して説明したように、径方向外方に突出している延長部分、例えば、爪26を有する環状ワッシャー22が使用される。環状ワッシャーとナット本体との間の接続、ネジ山の形成および環状ワッシャーの変形は、基本的に、
図1~
図18を参照して説明したように行われることができる。
【0064】
図23~
図25は、
図22に示されたような環状ワッシャーが挿入され再び除去された後のナット本体の異なる図を示す。環状ワッシャーの除去は、ロックナットが意図されたとおり使用されたときには意図されない。しかしながら、リブ60の変形を検証するために、カラー14のフランジ取り付け加工された部分は、例えば、フライス加工されることができるので、
図23に示されたカラースタブ14’が残る。
【0065】
図23~
図25に示されたように、爪26はリブ60内へ圧入されリブ60を変形させて、爪に対応するリブ60におけるくぼみ60”によって分離され、周方向に整列された突起60’を画定する。くぼみ60”は、径方向にリブ60の材料を完全にまたは部分的に変位させ、リブ60の残りの材料により別々の突起60’または周縁に連続する突起を形成してもよい。いずれの場合も、環状ワッシャー22は、くぼみ60”に爪26とともに置かれ、くぼみに回転に対して固着される。
【0066】
代替実施形態では、周縁リブが環状ワッシャーの表面に形成されてもよく、対応する突起または爪は、カラーがフランジ取り付け加工されたときに突起または爪が環状ワッシャーでリブ内へ貫入するように、周縁方向においてナット本体の肩部に配置されてもよい。達成された効果は、
図19~
図25に関連して上述された効果と同じである。
【0067】
記載された実施形態では、予め組み立てられた状態における係止環状ワッシャー22は、ナット本体12の前側の方向における凸曲率、すなわちナットネジ山から離れて向く曲率を有する。ネジ山の軸方向オフセットを形成するときに、この凸曲率は幾分、低減されることができるが、補償されていないか、または逆にさえされない。既成状態における係止環状ワッシャー22の予備曲率は、軸方向オフセットを形成するときに、より画定された変形挙動を確実にすることができるので、軸方向のオフセットのより正確な設定およびロックナットの結果として得られる保持力を達成させることができる。
【0068】
図示されないが、ネジ山が設けられてナットにねじ込まれたボルトは、環状ワッシャー22によって全ての側で締めつけられ、それによって、環状ワッシャーの軸方向におけるばね力およびネジ山の軸方向オフセットは、締めつけ力に対して決定的である。環状ワッシャー22のばね力は、その弾性によって大きく決定される。さらに、ロックナットの締めつけ力はカラー14の厚さによって調節されることができる。より薄いカラー、特にカラーのより薄い前方縁辺は、ボルトがねじ込まれたときに幾分、降伏することができるように、カラーに一定の弾性を与えることができる。
【0069】
上記の説明、図および特許請求の範囲に開示された特徴は、様々な実施形態において発明を実現するために、個別および任意の組み合わせの両方において重要であり得る。