(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】開口装置
(51)【国際特許分類】
A62B 5/00 20060101AFI20241225BHJP
【FI】
A62B5/00 C
(21)【出願番号】P 2022512601
(86)(22)【出願日】2021-03-30
(86)【国際出願番号】 JP2021013752
(87)【国際公開番号】W WO2021201067
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2020061604
(32)【優先日】2020-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 哲也
(72)【発明者】
【氏名】城戸 憲昌
(72)【発明者】
【氏名】小野木 渉
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-023547(JP,U)
【文献】特開2010-110501(JP,A)
【文献】特開2009-142519(JP,A)
【文献】登録実用新案第3113695(JP,U)
【文献】特開昭55-118762(JP,A)
【文献】実開昭60-099944(JP,U)
【文献】特開昭52-038799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が出入り可能な開口を有する外枠と、
一端側が前記外枠に回動可能に軸支されて前記開口を閉塞可能な上蓋と、
前記開口を塞いだ状態で前記上蓋を前記外枠にロックするロック機構と、
前記ロック機構のロックを解除する操作部と、
前記外枠と前記上蓋とを接続し、前記上蓋の前記外枠に対する開放を最大開放角度で止める開放停止部と、
前記操作部の操作に伴い前記ロック機構のロックが解除された場合に前記上蓋を開放方向に回動させる付勢手段と、を備え、
前記開放停止部は、
前記外枠に回動可能に連結された第1のアームと、
前記第1のアーム及び前記上蓋の各々に回動可能に連結された第2のアームと、を備え、
前記上蓋が前記開口を塞いだ状態において前記第1のアームと前記第2のアームとが折り畳まれ、前記上蓋が開放方向に回動するにつれて前記第1のアームと前記第2のアームとが伸展され
、
前記開放停止部は、前記上蓋が所定の角度以上に開放された場合に、前記付勢手段による前記第1のアームと前記第2のアームとの伸展速度を抑制する減衰手段を有している、
開口装置。
【請求項2】
前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか一方に設けられ、前記減衰手段の一端を回動可能に取り付ける第1連結部と、
前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか他方に設けられ、前記減衰手段の他端を回動及びスライド可能に連結する第2連結部と、を備え、
前記上蓋の開放角度が前記所定の角度未満である場合、前記減衰手段は前記上蓋が開放方向に回動するにつれて前記他端が前記第2連結部をスライドし、前記上蓋の開放角度が前記所定の角度以上である場合、前記減衰手段は前記上蓋が開放方向に回動するにつれて伸長する、
請求項
1に記載の開口装置。
【請求項3】
人が出入り可能な開口を有する外枠と、
一端側が前記外枠に回動可能に軸支されて前記開口を閉塞可能な上蓋と、
前記開口を塞いだ状態で前記上蓋を前記外枠にロックするロック機構と、
前記ロック機構のロックを解除する操作部と、
前記外枠と前記上蓋とを接続し、前記上蓋の前記外枠に対する開放を最大開放角度で止める開放停止部と、
前記操作部の操作に伴い前記ロック機構のロックが解除された場合に前記上蓋を開放方向に回動させる付勢手段と、を備え、
前記開放停止部は、
前記外枠に回動可能に連結された第1のアームと、
前記第1のアーム及び前記上蓋の各々に回動可能に連結された第2のアームと、を備え、
前記上蓋が前記開口を塞いだ状態において前記第1のアームと前記第2のアームとが折り畳まれ、前記上蓋が開放方向に回動するにつれて前記第1のアームと前記第2のアームとが伸展され、
前記開放停止部は、
前記上蓋が前記最大開放角度まで開放した場合に、前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか一方に当接して当該アームの更なる回動を規制するストッパを備え、
前記上蓋が最大開放角度まで回動した場合に、前記第1のアームと前記第2のアームとの連結部に設けられた第3軸は、前記第1のアームの前記外枠側に設けられた第1軸及び前記第2のアームの前記上蓋側に設けられた第2軸を結ぶ仮想線に対して、前記第1のアームと前記第2のアームとが折り畳まれる側の反対側に設けられている
、開口装置。
【請求項4】
人が出入り可能な開口を有する外枠と、
一端側が前記外枠に回動可能に軸支されて前記開口を閉塞可能な上蓋と、
前記開口を塞いだ状態で前記上蓋を前記外枠にロックするロック機構と、
前記ロック機構のロックを解除する操作部と、
前記外枠と前記上蓋とを接続し、前記上蓋の前記外枠に対する開放を最大開放角度で止める開放停止部と、
前記操作部の操作に伴い前記ロック機構のロックが解除された場合に前記上蓋を開放方向に回動させる付勢手段と、を備え、
前記開放停止部は、
前記外枠に回動可能に連結された第1のアームと、
前記第1のアーム及び前記上蓋の各々に回動可能に連結された第2のアームと、を備え、
前記上蓋が前記開口を塞いだ状態において前記第1のアームと前記第2のアームとが折り畳まれ、前記上蓋が開放方向に回動するにつれて前記第1のアームと前記第2のアームとが伸展され、
前記開放停止部は、
前記上蓋が前記最大開放角度まで開放した場合に、前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか一方に当接して当該アームの更なる回動を規制するストッパを備え、
前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか一方は、他の付勢手段からなり、
前記上蓋の開放角度が所定の角度未満である場合、前記付勢手段と前記他の付勢手段の両方で前記上蓋を開放方向に回動させる
、開口装置。
【請求項5】
前記ストッパは、前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか他方に対し、前記上蓋が開放方向に回動する際に前記第1のアームと前記第2のアームとを折り畳む方向に押圧する、
請求項
3又は請求項
4に記載の開口装置。
【請求項6】
前記外枠内に全体又は一部が収納される避難装置を備える、
請求項1~請求項
5のいずれか一項に記載の開口装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人が出入り可能な開口を有する開口装置に関する。
【背景技術】
【0002】
公共施設、マンション等の建物の屋上やベランダ等には、昇降口や、火災等の緊急避難時に使用する避難ハッチ等、人が出入り可能な開口装置が設けられている。当該開口装置には、通常時において人が落下したり出入りできないように当該開口を塞ぐ上蓋が設けられている。
また、上蓋付きの開口装置に設置する避難装置として、救助袋や折畳み式の梯子や垂直降下式のエレベータ近似の装置も検討されている(特開2017-164543号公報参照。)。
しかし、特開2017-164543号公報に記載されているような開口装置は、人が出入り可能な開口を有する外枠が設けられ、通常は当該開口を塞ぐ上蓋が設けられてある。すなわち、方形状の上蓋により方形状の開口を塞ぐ構造に形成されている。そして、当該上蓋は、方形状の開口外枠の一辺側に上蓋を外枠に対して回動可能に連結するヒンジが設けられ、当該ヒンジの反対側の上蓋の辺縁側を手で持ち上げて当該上蓋を開放するような構造に形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述したような従来の技術では、開口が大きい場合に、上蓋が大型化し、上蓋全体の重量も大きくなる。これにより、高齢者や子供や障害者等の手の力が弱い人の場合は、そのような重量のある上蓋を持ち上げて開放する作業は、容易ではなく大変であるという問題点があった。
【0004】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的とするところは、開口を出入りしようとする人が、開口を塞ぐ上蓋を自ら手等で持ち上げることなく、上蓋を開放させることが可能な開口装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の態様の開口装置は、人が出入り可能な開口を有する外枠と、一端側が前記外枠に回動可能に軸支されて前記開口を閉塞可能な上蓋と、前記開口を塞いだ状態で前記上蓋を前記外枠にロックするロック機構と、前記ロック機構のロックを解除する操作部と、前記外枠と前記上蓋とを接続し、前記上蓋の前記外枠に対する開放を最大開放角度で止める開放停止部と、前記操作部の操作に伴い前記ロック機構のロックが解除された場合に前記上蓋を開放方向に回動させる付勢手段と、を備え、前記開放停止部は、前記外枠に回動可能に連結された第1のアームと、前記第1のアーム及び前記上蓋の各々に回動可能に連結された第2のアームと、を備え、前記上蓋が前記開口を塞いだ状態において前記第1のアームと前記第2のアームとが折り畳まれ、前記上蓋が開放方向に回動するにつれて前記第1のアームと前記第2のアームとが伸展される。
【0006】
第1の態様に係る開放停止部は上述したように第1のアームと、第2のアームとを備え、上蓋が開口を塞いだ状態において、第1のアームと、第2のアームとが折り畳まれる。そのため、開放停止部を開口装置の開口周囲の狭いスペースに収納配置することが可能となる。
【0007】
第1の態様によれば、開口を塞いだ状態で上蓋を外枠にロックするロック機構と、このロック機構のロックを解除する操作部とを備え、ロック機構のロックを操作部の操作により解除すると、付勢手段の付勢力により上蓋を開放方向に回動させる。これにより、開口を出入りしようとする人が、操作部を操作することで、ロック機構のロックが解除され、人が上蓋を自ら手等で持ち上げることなく、上蓋を開放方向に回動させて開放させることが可能となる。
【0008】
したがって、手の力が一般的な大人より弱い高齢者や、子供や、障害者等であっても、重量のある上蓋を自ら手で持ち上げることなく、開放させることができ、上蓋が開放された開口を介して、階下等へスムーズに出入りすることが可能となる。結果として、火災等の緊急時であっても、上蓋を容易に開放させることができ、緊急時の避難等を容易なものにすることができる。
【0009】
第2の態様の開口装置は、第1の態様の開口装置において、前記開放停止部は、前記上蓋が前記最大開放角度まで開放した場合に、前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか一方に当接して当該アームの更なる回動を規制するストッパを備える。
【0010】
第2の態様によれば、開放停止部において、ストッパは、上蓋が最大開放角度まで開放した場合に、第1のアーム及び第2のアームのいずれか一方に当接して当該アームの更なる回動を規制する。これにより、第1のアーム及び第2のアームのいずれか一方の回動が規制され、当該アームの回動が規制されることで、当該アームに連結された上蓋の開放が停止する。これにより、上蓋が最大開放角度まで開放した状態で開放が停止する。
【0011】
第3の態様の開口装置は、第1又は第2の態様の開口装置において、前記開放停止部は、前記上蓋が所定の角度以上に開放された場合に、前記付勢手段による前記第1のアームと前記第2のアームとの伸展速度を抑制する減衰手段を有している。
【0012】
第3の態様によれば、上蓋を回動させる付勢手段によって上蓋を開放する際、上蓋の開放角度が増加することに伴う、上蓋の回動速度の増加を抑制することが可能となる。
上述の通り、外枠の開口を塞ぐ水平状態の上蓋を持ち上げて回動させようとすると、最初に持ち上げるときが通常、最も大きな力が必要となる。そして、上蓋が垂直状態に近づいていくと、特に大きな力は必要とせずに、小さな力で開放させることができることになる。しかし、上蓋を開放方向に付勢する付勢力は、上蓋の開放角度によらずおよそ一定であるため、上蓋が垂直状態に近づいていくと、上蓋の回動速度は、開放角度の増加に伴って増加する。このため、上蓋を最大開放角度まで開放した際に衝撃が生じる。
ここで、開放停止部は、上蓋が所定の開放角度以上に開放された状態で付勢手段による上蓋の回動速度を抑制する減衰手段を有する。これにより、上蓋を最大開放角度まで開放した際の衝撃を抑制することが可能となる。
【0013】
第4の態様の開口装置は、第3の態様の開口装置において、前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか一方に設けられ、前記減衰手段の一端を回動可能に取り付ける第1連結部と、前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか他方に設けられ、前記減衰手段の他端を回動及びスライド可能に連結する第2連結部と、を備え、前記上蓋の開放角度が前記所定の角度未満である場合、前記減衰手段は前記上蓋が開放方向に回動するにつれて前記他端が前記第2連結部をスライドし、前記上蓋の開放角度が前記所定の角度以上である場合、前記減衰手段は前記上蓋が開放方向に回動するにつれて伸長する。
【0014】
第4の態様によれば、開放角度が上述した所定の角度未満である場合は、前記減衰手段が前記第2連結部をスライドするため、伸展速度を規制しない。また、上述した所定の開放角度以上に開放された状態で第1のアーム及び第2のアームの伸展速度が抑制される。これにより、前記付勢手段による前記上蓋の開放速度を、上述した所定の角度以上である場合に抑制することが可能となる。
【0015】
第5の態様の開口装置は、第1~第4のいずれか1の開口装置において、前記上蓋が最大開放角度まで回動した場合に、前記第1のアームと前記第2のアームとの連結部に設けられた第3軸は、前記第1のアームの前記外枠側の第1軸及び前記第2のアームの前記上蓋側に設けられた第2軸を結ぶ仮想線に対して、前記第1のアームと前記第2のアームとが折り畳まれる側の反対側に設けられている。
【0016】
第5の態様によれば、上述した上蓋が最大開放角度まで開放された状態から、上蓋に対して上蓋を閉塞する方向に力を加えた場合に、第1のアームと第2のアームとが折り畳まれる方向の反対側に設定されているため、開放停止部が折り畳みやすくなる。これにより、上蓋が最大開放角度まで開放した状態から、再び開口を塞いだ状態に変化させやすくなる。
【0017】
第6の態様の開口装置は、第2の態様の開口装置において、さらに、前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか一方は、他の付勢手段からなり、前記上蓋の開放角度が所定の角度未満である場合、前記付勢手段と前記他の付勢手段の両方で前記上蓋を開放方向に回動させる。
【0018】
本発明によれば、上蓋を開放方向に回動させる「付勢手段」に加えて、開放停止部の第1のアーム及び第2のアームのいずれか他方は、「他の付勢手段」からなる。すなわち、上蓋を開放方向に付勢する付勢力は、「付勢手段」と、「他の付勢手段」との2つの付勢手段により得られることになる。当該付勢力を得るために1つの付勢手段で達成しようとすると、大きな付勢力を発生する大きな付勢手段が必要となる。
【0019】
また、外枠の開口を塞ぐ水平状態の上蓋を持ち上げて回動させようとすると、最初に持ち上げるときが通常、最も大きな力が必要となる。そして、上蓋が垂直状態に近づいていくと、特に大きな力は必要とせずに、小さな力で開放させることができることになる。このため、2つの付勢手段を、水平状態の上蓋の開放の初期段階においては、2つの付勢手段の両方の付勢力を利用して開放させる。そして、その後、上蓋がある程度まで開放されて、そのような大きな付勢力を必要としない状態になったときは、2つの付勢手段の一方だけの付勢力だけで開放させることで、上蓋を最大開放角度まで開放した際の衝撃を抑制することが可能となる。
【0020】
第7の態様の開口装置は、第2又は第6の態様の開口装置において、前記ストッパは、前記第1のアーム及び前記第2のアームのいずれか他方に対し、前記上蓋が開放方向に回動する際に前記第1のアームと前記第2のアームとを折り畳む方向に押圧する。
【0021】
第7の態様によれば、ストッパは、付勢手段の上蓋を開放方向に回動させる付勢力に対する反力により、第1のアームと第2のアームとを折り畳む方向に第2のアームを押圧するようなことが可能となる。
【0022】
第8の態様の開口装置は、第1~第7のいずれか1の開口装置において、前記外枠内に全体又は一部が収納される避難装置(具体的には例えば折りたたみはしごや、救助袋等)を備える。
第8の態様によれば、外枠内に全体又は一部が収納される避難装置を備える。これにより、上枠を外枠に対して開放することで、当該避難装置を用いて、階下に避難することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】第1実施形態に係る開口装置の設置状態を斜め上方から見た場合の俯瞰図である。
【
図1B】第1実施形態に係る開口装置の設置状態を斜め下方から見た場合の俯瞰図である。
【
図2】第1実施形態に係る避難装置の動作を示すものであって、昇降台が待機位置にある状態を示す側面図である。
【
図3】第1実施形態に係る開口装置の避難装置の平面図である。
【
図4A】第1実施形態に係る開口装置を示す平面図である。
【
図4B】
図4Aにおいて開放停止部を拡大して示す部分拡大平面図である。
【
図5】第1実施形態に係る開口装置を示す縦断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る開口装置の上蓋を閉じた状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図7】第1実施形態に係る開口装置の上蓋を半開放角度まで開放した状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る開口装置の上蓋を90°まで開放した状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る開口装置に車椅子利用者がペダルを操作している状態を示す側面図及び部分拡大側面図である。
【
図10】第1実施形態に係る開口装置のロック機構及びリンク機構を示す平面図である。
【
図11】第1実施形態に係る開口装置のロック機構及びリンク機構を示す正面図である。
【
図12】第1実施形態に係る開口装置において、車椅子の前輪がペダルを踏む直前の状態の部分縦断面図である。
【
図13】第1実施形態に係る開口装置において、車椅子の前輪がペダルを踏んでいる状態の部分縦断面図である。
【
図14】第1実施形態に係る開口装置において、車椅子の前輪がペダルを踏む前のリンクレバーの側面図である。
【
図15】第1実施形態に係る開口装置において、車椅子の前輪がペダルを踏んでいる状態のリンクレバーの側面図である。
【
図16】第1実施形態に係る開口装置において、車椅子の前輪がペダルを踏む前のロック機構のロック状態の部分縦断面図である。
【
図17】第1実施形態に係る開口装置において、車椅子の前輪がペダルを踏んでいる状態のロック機構の部分縦断面図である。
【
図18】第1実施形態に係る開口装置において、上蓋から前輪が離れた状態のロック機構の部分縦断面図である。
【
図19】第1実施形態に係る開口装置において、上蓋を開放している状態のロック機構の部分縦断面図である。
【
図20】第1実施形態に係る開口装置において、上蓋を閉めている状態のロック機構の部分縦断面図である。
【
図21】第1実施形態に係る開口装置において、上蓋がロックされている状態のロック機構の部分縦断面図である。
【
図22】第1実施形態に係る開口装置において、2つのペダルが操作されている状態(2点鎖線)及び1つのペダルだけが操作されている状態(実線)の作動部の正面図である。
【
図23】第1実施形態に係る開口装置において、1つのペダルだけが操作されて作動部の変位が半分の状態のロック機構の部分縦断面図である。
【
図24】第1実施形態に係る開口装置において、2つのペダルのいずれも操作されず作動部も跳ね上がってなく、ロック機構がロックされている状態の概略斜視図である。
【
図25】第1実施形態に係る開口装置において、2つのペダルが操作されて作動部が跳ね上がってロック機構のロックが解除されている状態を示す概略斜視図である。
【
図26】第1実施形態に係る開口装置において、1つのペダルだけが操作されて作動部の変位が半分の状態のロック機構を示す概略斜視図である。
【
図27】第2実施形態に係る開放停止部を示す斜視図である。
【
図28】第2実施形態に係る開口装置の上蓋を閉じた状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図29】第2実施形態に係る開口装置の上蓋を半開放角度まで開放した状態を示す部分拡大縦断面図である。
【
図30】第2実施形態に係る開口装置の上蓋を90°まで開放した状態を示す部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[第1実施形態]
まず、
図1A及び
図1Bに示すように、第1実施形態に係る開口装置8及び当該開口装置8に設けられた避難装置11は、非常時に上階の廊下やベランダから下階の廊下やベランダへと避難するために使用されるものである。開口装置8は、上階側の床基部2に嵌合固定されて避難用の開口3を形成する外枠100を有する。
【0025】
第1実施形態に係る避難装置11は、下階の床面4上に立設され、上端が上記外枠100に固定されるガイド支柱1と、昇降台5(
図2、
図3参照)とを有している。昇降台5は、避難用の外枠100内に保持される待機位置と、この待機位置からガイド支
柱1に沿って降下して下階床面4に着地する避難位置との間で昇降駆動される。
【0026】
上記ガイド支柱1は、適宜の座屈強度を有する中空パイプ体であり、例えばアルミニウムを押し出し成形して形成される。このガイド支柱1の下端部は、下階の床基部2に、上端部は外枠100に固定される。また、ガイド支柱1の一側壁面にはラック溝15が形成される。
【0027】
外枠100には、一端側が当該外枠100に回動可能に軸支されて開口3を閉塞可能な上蓋110が設けられている。本実施形態において、この上蓋110は、後述する所定の機構により開口3を開閉可能な開口装置8を構成しているものであり、当該開口装置8の内容は後で詳細に説明する。また、本実施形態では、前記開口3を塞いだ状態で上蓋110を外枠100にロックするロック機構200を備えている。当該ロック機構200の内容も後で詳細に説明する。
【0028】
さらに、ガイド支柱1の中空部には、所定のワイヤによりつり下げられる重錘が収容される。ワイヤの重錘への固定端に対する反対側の端部は昇降台5に連結されており、重錘と昇降台5への固定端との間には、プーリが配置される。重錘は、利用者が搭乗しない状態の昇降台5を上方へ引き上げることができる重量に設定されており、下階に到達した後、利用者が昇降台5を降りると、重錘の重量により昇降台5は待機位置に復帰するように形成されている。
【0029】
一方、昇降台5には、上記ガイド支柱1が挿通する支柱挿通開口5a(
図3参照)が開設されている。支柱挿通開口5aは避難者が待機位置にある昇降台5に乗る際の乗り込み口となる乗り込み辺縁6の両外側に隣接する隣接縁7側の各々に形成されている。これら支柱挿通開口5aは、乗り込み辺縁6からの間隔が等しい位置に形成されており、上記ガイド支柱1は、これら支柱挿通開口5aに対応する対向位置に2本立設される。
【0030】
以上のようにして支柱挿通開口5aを挿通するガイド支柱1に沿って昇降台5を昇降させるために、支柱挿通開口5aの周りには、ピニオン13等が配置されている。
ピニオン13は、ガイド支柱1のラック溝15に噛合する。なお、遠心ブレーキを用いてピニオン13が回転することにより、動作してその回転速度を制限する装置を設けるようにしてもよい。
【0031】
さらに、上記昇降台5の表面には、車椅子16による使用を可能にするために、車椅子16の車輪16a及び前輪16bをガイドする車輪ガイド溝17(
図3参照)が凹設されている。車輪ガイド溝17は昇降台5の乗り込み辺縁6から奥側辺縁7aに至るほぼ全長にわたって形成されており、車椅子16の昇降台5への搭乗は、乗り込み辺縁6から乗り上げた後、奥側辺縁7a方向に移動させて行われる。
【0032】
また、
図2に示すように、上記車輪ガイド溝17には、乗り込み辺縁6から所定間隔隔てた位置を開始端19とし、乗り込み辺縁6に至る傾斜面20が形成されており、下階まで避難した後、車椅子16を後退させて下階の床面4に降りる際の段差発生が防止されるように形成されている。
【0033】
さらに、昇降台5が待機位置にあるときの上階側の床面4との間の段差を吸収するために、外枠100にはスロープ制御体25を介してスロープ部材18が装着される。
【0034】
なお、本明細書中の説明において、「時計回り」回転方向や、「反時計回り」回転方向の説明は、図面を用いて説明している場合の当該図面を正面から見た場合の「時計回り」回転方向や、「反時計回り」回転方向を意味している。また、図中の符号である、18aは、ガイド用立ち上がり片であり、18bは、回転軸部材であり、25aは、支持杆であり、25bはタイヤ部材である。
【0035】
さらに、上記昇降台5には、
図3に示すように、手摺体26が装着される。手摺体26は、横杆26aと、横杆26aの両端から直角方向に延びる縦杆26bとを有してU字形状に形成されており、昇降台5への装着は、各縦杆26bの自由端を昇降台5の奥側辺縁7a近傍に回転自在に連結して行われる。
【0036】
この手摺体26は、ばねにより常に使用姿勢側に付勢されている。使用時には特に操作なく(上蓋110の開放により)起立姿勢に移行するように形成されている。
【0037】
さらに、避難装置11には、昇降台5を待機位置に保持するためのストッパ装置が設けられるとともに、手摺体26の横杆26aには上記ストッパ装置を手動で解除するための手動解除操作部29が配置される。
したがって、昇降台5が待機位置にあるとき、上記ストッパ装置を介して、昇降台5の降下を規制する。
この状態から手動解除操作部29を手動で操作することにより、ストッパ装置を手動で解除することで、昇降台5の降下が開始する。
【0038】
(上蓋110により開口3を閉塞可能な開口装置8の機構)
上蓋110により開口3を閉塞可能な開口装置8の機構について以下に説明する。
本実施形態に係る開口装置8は、
図1~
図9に示すように、人が出入り可能な開口3を有する外枠100と、一端側が外枠100に回動可能に軸支されて開口3を閉塞可能な上蓋110と、開口3を塞いだ状態で上蓋110を外枠100にロックするロック機構200と、このロック機構200のロックを解除する操作部120(具体的にはペダル130)と、外枠100と上蓋110とを接続し、上蓋110の開放を最大開放角度(具体的には、90°)で止める開放停止部150と、上蓋110を開放方向に付勢する付勢手段140とを備えている。
そして、開放停止部150は、外枠100に回動可能に連結された第1のアーム160と、この第1のアーム160及び上蓋110の各々に回動可能に連結された第2のアーム170とを備えている。
そして、上蓋110を閉じる際には第1のアーム160と第2のアーム170とが折り畳まれるように形成され、ロック機構200のロックを操作部120の操作により解除すると、付勢手段140、他の付勢手段145により上蓋110が開放されるように形成されている。
【0039】
上記内容について、
図4~
図9の図面を用いてさらに詳細に説明する。
図4Aは、上蓋110の平面図、
図4Bは、上蓋110の部分拡大平面図であって、上蓋110は、
図5に示すように、左側の高さが低く、右側の方が高さが高く形成されている。
図5~
図8に示すように、上蓋110は、上蓋110の高さが高い側の端縁側が、回転軸112を介して、外枠100に回動可能に軸支されている。なお、外枠100は、ケース21と一体に形成されている。本実施形態に係る上蓋110は、
図8に示すように、後述するように外枠100に対して90°(最大開放角度)まで回動可能に形成されている。
【0040】
また、上蓋110の
図5の左側の高さが低い側の端縁に、後述するように、開口3を塞いだ状態で上蓋110を外枠100にロックするロック機構200が設けられている。そして、
図4Aに示すように、上蓋110の左側の端縁側に、ロック機構200のロックを解除する操作部120としてのペダル130が当該端縁に沿って2つ並んで設けられている。この2つのペダル130は、一般的な車椅子16の2つの前輪16bの間隔と整合するように形成されてあり、
図9に示すように、左側から車椅子16の左右の前輪16bで、当該ペダル130の端を上から踏み込んで操作することができるように形成されているものである。
【0041】
上蓋110の上面中央には、平面視で長方形であって、周囲よりも僅かに凹んだ段差状の段差部111が形成されている。段差部111を設けることによって、上蓋110が補強され、剛性を向上させることができる。
【0042】
本実施形態では、上蓋110の両側端には、細板状の接続ブラケット113が固定されていて、この接続ブラケット113に付勢手段140と第2のアーム170が連結されている。後述するストッパ180もこの接続ブラケット113に設けられている。
図4A、
図4B、
図5及び
図6に示すように、上蓋110の回転軸112が設けてある端縁側に、外枠100と上蓋110の回転軸112側とを連結する付勢手段140が設けてある。この付勢手段140は、ガススプリングであって、内部に充填したガスの圧力によりシリンダ141内のピストンロッド142を押し出す方向に付勢力を作用させる。
【0043】
そして、上述したように、外枠100と、上蓋110の回転軸112側近傍とを接続し、上蓋110の開放を最大開放角度で止める開放停止部150が設けてある。
この開放停止部150は、外枠100に回動可能に連結された第1のアーム160と、この第1のアーム160及び上蓋110の各々に回動可能に連結された第2のアーム170とを備えている。
本実施形態では、第1のアーム160は、上述した付勢手段140とは異なる「他の付勢手段145」からなる。この他の付勢手段145も、上述した付勢手段140と同様にガススプリングであって、内部に充填したガスの圧力によりシリンダ146内のピストンロッド147を押し出す方向に付勢力を作用させる。また、第2のアーム170は、付勢手段ではなく、断面略U字型の棒状部材からなる。
【0044】
なお、付勢手段140のピストンロッド142の端部は接続ブラケット113に、付勢手段140のシリンダ141の端部は外枠100に回動可能に連結されている。第1軸Cにより第1のアーム160の一端は外枠100に、第3軸Eにより第1のアーム160の他端は第2のアーム170の一端に回動可能に連結されている。第2軸Dにより第2のアーム170の他端は接続ブラケット113に回動可能に連結されている。
また、本実施形態では、第1のアーム160と、第2のアーム170とのうち、第1のアーム160が他の付勢手段145からなり、第2のアーム170が棒状部材からなるが、特にこれに限定されるものではない。具体的には、例えば、両者の構造を逆にして、第2のアーム170を他の付勢手段145により形成し、第1のアーム160を棒状部材により形成することができる。この場合、ストッパ180を外枠100に設けて第1のアーム160に当接させる構造としてもよい。
【0045】
図5に示すように、上蓋110の回転軸112の反対側の端縁と、外枠100との間には、上蓋110が水平状態で開口3(
図1、2参照)及び昇降台5の上方を塞いだ状態で上蓋110を外枠100にロックするロック機構200が形成されている。このロック機構200は、上蓋110の端縁に設けられた2つのペダル130を操作すると、当該ロック機構200のロックが解除される。
なお、ロック機構の内容は後で詳細に説明する。ロック機構200のロックが解除されると、
図5及び
図6に示すような水平状態の上蓋110には、付勢手段140及び第1のアーム160としての他の付勢手段145の両方の付勢力、具体的には、左右の合計4本の付勢手段(2本の付勢手段140及び2本の他の付勢手段145)の付勢力により、上蓋110が開放される方向に力が加わり、回転軸112を回転の中心として、上蓋110が開放される方向に回動する。
【0046】
図7に示すように、上蓋110が外枠100(水平方向)に対して、所定の角度の一例として略70°(具体的には、例えば66°、以下、本実施形態における「半開放角度」とする)の回転角度だけ開放されると、第1のアーム160としての他の付勢手段145は、シリンダ146からピストンロッド147が伸びきった状態となり、それ以上は、ピストンロッド147がシリンダ146内から外方に伸びない状態になっている。したがって、当該伸びきった状態以降は、第1のアーム160としての他の付勢手段145からは付勢力は発生しない状態となる。
すなわち、本実施形態に係る第1のアーム160は、ガススプリングとして最大作動長までピストンロッド147を延出する他の付勢手段145である。そして、この他の付勢手段145の延出中における第2のアーム170は、ストッパ180に
図7に示すB点において当接し、他の付勢手段145に対して折り畳まれる方向に押圧される。なお、第1のアーム160は、最大作動長までピストンロッド147を延出するまで、すなわち、
図6から
図7に示す間、当該B点において、ストッパ180と当接していることになる。
そして、第2のアーム170は、他の付勢手段145が前記最大作動長に達し、かつ前記付勢手段140により他の付勢手段145に対して展開される方向に回転した場合、ストッパ180に
図8に示すA点で当接することにより、最大開放角度を維持することが可能となる。
すなわち、ストッパ180は、上蓋110が、最大開放角度まで開放した場合に第2のアーム170のA点に当接して更なる回動を規制している。
上述したように、上蓋110が水平状態から半開放角度開放された後、さらに上蓋110を開放させようとする場合には、付勢手段140による付勢力により、上蓋110がさらに開放されることになる。
なお、当該第1のアーム160は、伸びきっているので、これ以上ピストンロッド147が外方に突出することはないが、第1のアーム160の先端側に連結されている第2のアーム170が
図7、
図8に示すように、第1のアーム160に対して回動する。これにより、上蓋110をさらに開放させることが可能となる。
【0047】
本実施形態では、上述したように上蓋110を半開放角度開放させた後、さらに開放させると、
図8に示すように、上蓋110が外枠100に対して最大開放角度まで開放された状態において、上蓋110がそれ以上開放しないように開放停止部150(具体的には、第2のアーム170)に当接するストッパ180が上蓋110に形成されている。
第2のアーム170は、他の付勢手段145が伸びきった状態において上蓋110が外枠100に対して開放する角度が最大開放角度(90°)に未到達である場合、第2のアーム170が上蓋110に対して回動してストッパ180に当接することで、上蓋110を最大開放角度(90°)まで開放する。
【0048】
上蓋110が最大開放角度(90°)まで開放されると、
図8に示すように、第2のアーム170の側端Aにストッパ180が当接することで、それ以上、上蓋110が開放されることがない。なお、上蓋110が半開放角度まで回動する間は、
図7に示すように、第1のアーム160が第2のアーム170を付勢し、付勢された第2のアーム170の側端Bがストッパ180に当接する。これにより、第1のアーム160としての他の付勢手段145の付勢力が上蓋110に対して伝達される。なお、上蓋110の回転角度が半開放角度(
図7)から90°(
図8)までの間は、アーム170の側端と、ストッパ180とは当接しないように形成されている。
【0049】
(開口装置8における上蓋110の開閉動作機能の作用及び効果)
本実施形態では、上述したような開口装置8を有することで以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0050】
本実施形態に係る開放停止部150は、外枠100に回動可能に連結された第1のアーム160と、第1のアーム160及び上蓋110の各々に回動可能に連結された第2のアーム170とを備えている。開放停止部150は、上蓋110を閉じる際には第1のアーム160と第2のアーム170とが折り畳まれるように形成されている。
これにより、開放停止部150を開口装置8の開口周囲の狭いスペースに収納配置することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態は、開口3を塞いだ状態で上蓋110を外枠100にロックさせるロック機構200と、このロック機構200のロックを解除する操作部120としてのペダル130及びリンク機構210とを備えている。そして、ロック機構200のロックを操作部120の操作により解除すると、付勢手段(付勢手段140及び他の付勢手段145)の付勢力により上蓋110が開放されるように形成されている。これにより、開口3を出入りしようとする人が、操作部120を操作(なお、車椅子16の前輪16bでペダル130を踏むことを含む)することで、ロック機構200のロックが解除され、人が上蓋110を自ら手等で持ち上げることなく、上蓋110を開放させることが可能となる。
【0052】
したがって、手の力が一般的な大人より弱い高齢者や、子供や、障害者等であっても、重量のある上蓋110を自ら手で持ち上げることなく、開放させることができ、上蓋110が開放された開口3を介して、階下等へスムーズに出入りすることが可能となる。結果として、火災等の緊急時であっても、上蓋110を容易に開放させることができ、緊急時の避難等を容易なものにすることができる。
【0053】
本実施形態によれば、上蓋110を開放方向に付勢する「付勢手段140」に加えて、開放停止部150の第1のアーム160は、「他の付勢手段145」からなる。すなわち、上蓋110を開放方向に付勢する付勢力は、「付勢手段140」と、「他の付勢手段145」との2つの付勢手段により得られることになる。当該付勢力を得るために1つの付勢手段で達成しようとすると、大きな付勢力を発生する大きな付勢手段が必要となるのに対して、それよりも小さな付勢力を発生する付勢手段を2つ設けることで必要な付勢力を獲得することができるものである。
一般的に、小さな付勢力を発生する付勢手段は、汎用品を使用できる。
【0054】
また、床等に開けられた開口3を上から水平状態になって塞ぐ上蓋110がヒンジ等で回動可能に連結されているような場合、当該上蓋110をヒンジ等の回転軸112を回転の中心として回動させて持ち上げようとすると、初期の状態である水平状態の上蓋110を初期状態の水平状態から最初に持ち上げるときが通常、上蓋110の自重が掛かるため、最も大きな力が必要となる。そして、上蓋110をある程度の角度まで、例えば上蓋110が上述したような半開放角度となる付近まで開放させるとその後は、特に大きな力は必要とせずに、小さな力で開放させることができることになる。
【0055】
このため、小さな付勢力を有する2つの付勢手段(付勢手段140及び他の付勢手段145)を、開口3を水平状態になって塞いでいる上蓋110が所定の角度(半開放角度)未満である場合には、それら両方の付勢力を利用して開放させる。その後、上蓋110が所定の角度(半開放角度)まで開放されて、大きな付勢力を必要としない場合には、付勢手段140、又は他の付勢手段145の一方だけの付勢力だけで開放させる。そのため、上蓋110を最大開放角度まで開放させた際の衝撃を抑制することが可能となる。
【0056】
本実施形態は、第2のアーム170は、他の付勢手段145が伸びきった状態において上蓋110が外枠100に対して開放する角度が最大開放角度(90°)に未到達である場合、第2のアーム170が上蓋110に対して回動し、上蓋110を最大開放角度まで更に開放するように形成されている。
【0057】
他の付勢手段145が伸びきった状態において上蓋110が外枠100に対して開放する角度が最大開放角度(90°)に未到達である場合、上蓋110は外枠100に対して開放する角度(余地)を有している状態となる。この状態において、「付勢手段140」の付勢力により、上蓋110は開放方向に付勢されて回動する。その際、第2のアーム170は、第1のアーム160の「他の付勢手段145」は伸びきっている状態であるため、第1のアーム160(他の付勢手段145)に引っ張られて、第2のアーム170が上蓋110に対して回動する。上蓋110が外枠100に対して最大開放角度(90°)まで開放された状態において、上蓋110がそれ以上開放しないように第2のアーム170がストッパ180に当接することで、第2のアーム170の回動が停止し、この第2のアーム170の回動が停止することで、第2のアーム170に連結された上蓋110の開放が停止する。これにより、上蓋110が最大開放角度(90°)まで開放した状態で開放が停止する。
【0058】
また、第1のアーム160と外枠100との連結部である第1軸C、第2のアーム170と接続ブラケット113との連結部である第2軸D、第1のアーム160と第2のアーム170との連結部である第3軸Eは、上蓋110が最大開放角度まで開放した状態においても直線上に並んでいない。すなわち、第3軸Eは、第1のアーム160の外枠100側に設けられた第1軸C及び第2のアーム170の上蓋110側に設けられた第2軸Dを結ぶ仮想線に対して、第1のアーム160と第2のアーム170とが折り畳まれる側の反対側(本実施形態では上蓋110の回転軸112側に近い側)に設けられている。
【0059】
これにより、上蓋110が最大開放角度まで開放された状態において、上蓋110を閉める方向に力を加えた場合、第2軸Dと第1軸Cとを結ぶ直線に沿って圧縮力が働き、第1のアーム160及び第2のアーム170は、それぞれ折り畳まれる方向に回動する。これにより、上蓋110は開いた状態から閉じる方向に回動する。
次に上述したロック機構200について
図9~
図26を用いて詳細に説明する。
【0060】
(操作部120)
ロック機構200のロックを解除する場合には、
図9に示すように、上蓋110の左側の端縁側から、左右のペダル130の端を車椅子16の左右の前輪16bで、上から踏み込んで操作する。
【0061】
本実施形態では、ロック機構200のロックを操作により解除するための操作部120として、ペダル130及びリンク機構210が設けられている。
図10及び
図11に示すように、前記リンク機構210は、2つのペダル130とロック機構200とをつなぐと共に、2つのペダル130を共に操作しないとロック機構200のロックが解除されないように形成されている。
【0062】
ここで、前記ペダル130は、
図12に示すように、回転軸として水平方向に延びるペダル軸134を有している。そして、このペダル軸134の端縁側にペダル130と共にペダル軸134の回りに回転移動(
図13参照)するリンクバー132が水平方向に形成されている。このリンクバー132の一方の端部は、後述するリンクレバー220の一方の端部側に連結されている。なお、本実施形態では、リンクレバー220が「連動部」に相当する。
【0063】
図10に示すように、リンク機構210は、上述した2つのペダル130の各々に対して設けられると共に各ペダル軸134の回りに回転移動するリンクバー132と、2つのペダル130の各々に対して設けられ、ペダル130の操作に応じてリンクバー132を介して作動するリンクレバー220と、両端側において、各リンクレバー220の他方の端部側に接続され、両側のペダル130が操作されて所定量の移動が行われた場合にロック機構200のロックを解除する棒状(バー状)の作動部230と、を備えている。
【0064】
図10及び
図11に示すように、左右のペダル130にリンクバー132及びリンクレバー220が設けられ、左右のリンクレバー220によって、作動部230の両端が連結され、当該作動部230の中央付近にロック機構200が設けられている。
【0065】
図12に示すように、車椅子16の前輪16bが、ペダル130を踏む直前の状態では、当該前輪16bがペダル130の自由端側に当接する。その状態において、
図13に示すように、車椅子16の前輪16bがペダル130を踏むと、ペダル130は、ペダル軸134を回転の中心として、
図13において反時計回転方向に回転して、
図13のペダル130の左側の自由端側が下方に押し下げられる。それに伴って、ペダル130の内部に配置されたリンクバー132も下方に移動する。
【0066】
【0067】
図12に示すような前輪16bがペダル130を踏む直前の状態では、リンクバー132は軸222(
図14参照)とほぼ同じ高さに位置している。この状態では、軸222を中心として、回転するリンクレバー220は、
図14に示すような右下がりの状態となり、リンクレバー220の作動部230が連結されている側の端部は下方に下がった位置となる。このため、この状態では、
図24に示すように、作動部230も下方に下がった状態となる。
【0068】
一方、
図13に示すような前輪16bがペダル130を踏んでいる状態では、リンクバー132は軸222(
図14参照)よりも低い位置に移動する。これにより、リンクレバー220は、
図15に示すような右上がりの状態となり、リンクレバー220の作動部230が連結されている側の端部は上方に上がった位置となる。このため、この状態では、
図25に示すように、作動部230も上方に上がった状態となる。
【0069】
(ロック機構200)
ロック機構200は、外枠100の一部(具体的には、ロックバー101)に対して係止可能な係止部242と、上蓋110に設けられ、係止部242の外枠100への係止を維持するロック状態と係止部242の外枠100への係止を解除可能なアンロック状態とを切替可能なロック部材(第1のロックカム240)を備えている。
更に、ロック機構200は、ロック部材240のロック状態を維持するロック維持状態と、リンク機構210の作動に伴いロック部材240のアンロック状態を維持するアンロック維持状態とを切替可能な第1の状態維持手段を備えている。
この第1の状態維持手段252は、ロック状態において第1のロックカム240の回動を阻止する阻止状態と、リンク機構210の作動に伴い第1のロックカム240の回動を許容する許容状態と、の間で回動可能とする第2のロックカム250を有している。
【0070】
更に、ロック機構200は、第1の状態維持手段252がアンロック維持状態に切り替えられた場合、リンク機構210の作動に関わらずアンロック維持状態を維持する第2の状態維持手段262を備えている。
この第2の状態維持手段262は、第2のロックカム250が阻止状態から許容状態に回動された場合、第2のロックカム250の阻止状態への復帰を阻止する第3のロックカム260を有する。
【0071】
さらに、ロック機構200について詳細に説明する。
図16に示すように、上述したロックバー101は、外枠100の一部であって、外枠100から水平方向に突出する円柱棒状に形成されている。
前記第1のロックカム240は、外枠100に設けたロックバー101を係止可能な凹溝状の係止部242を備えている。
また、この第1のロックカム240は、軸241を回転の中心として回動可能に形成されるとともに、上述した第2のロックカム250に一方の端部が連結された引張ばね244により、反時計回転方向に付勢されている。
【0072】
また、この第1のロックカム240には、上述した第2の状態維持手段262としての第3のロックカム260の後述する四角凹部264に入り込んでいる突部245を有している。突部245が四角凹部264に入り込むことで、第2の状態維持手段262としての第3のロックカム260を操作することが可能である。
また、この第1のロックカム240は、第1の状態維持手段252としての第2のロックカム250の凹部253に係止されて当該第1のロックカム240の回転を規制する凸部243が形成されている。
【0073】
第1の状態維持手段252としての第2のロックカム250は、軸251を回転の中心として回動可能に形成されるとともに、第1のロックカム240の凸部243を係止して第1のロックカム240の回転を規制してロック状態を維持させるための凹部253を有している。
【0074】
また、第2のロックカム250は、外周部に前方に突出して前記第3のロックカムの回転を規制する四角凸部254を有している。
また、第2のロックカム250は、作動部230が上方へ移動するに伴って、上方へ跳ね上げられて、第2のロックカム250を回転させる跳ね上げ片255が後方に突出して形成されている。
【0075】
前記第2の状態維持手段262としての第3のロックカム260は、軸261を回転の中心として回動可能に形成されるとともに、トーションバネ263により、
図16の反時計回転方向に付勢されている。また、第3のロックカム260には、第1のロックカム240の突部245が入り込んだ状態の四角凹部264が形成されている。
【0076】
図16は、ロック機構200のロック状態を示している。
本実施形態では、上述した開口装置8で説明した付勢手段140及び他の付勢手段145の付勢力により、水平状態の上蓋110を開放しようとする力が作用している。
【0077】
したがって、外枠100に固定されているロックバー101と、上蓋110に軸241を介して回動可能に固定されている第1のロックカム240との関係から、上蓋110を開放しようとする前記付勢力により、上蓋110が開放する方向に移動して第1のロックカム240は、
図16の反時計回転方向に回転しようとする。しかし、第2のロックカム250の凹部253に第1のロックカム240の凸部243が係止されており、第1のロックカム240は反時計回転方向の回転が規制されている。そのため、ロックバー101は、係止部242によるロック状態が維持される。結果としてロック機構200のロック状態が維持される。
【0078】
一対のペダル130が同時に操作された場合、リンクバー132が下方に移動し、軸222を回転中心として回動するリンクレバー220が右上がり状態となり、
図17に示すように、右側端部に連結されている作動部230も上方に移動して跳ね上がる。
【0079】
作動部230の跳ね上げに伴い、第1の状態維持手段252としての第2のロックカム250の跳ね上げ片255も上方に跳ね上げられ、第2のロックカム250が
図17の反時計回転方向に回転し、第2のロックカム250の凹部253から、第1のロックカム240の凸部243が外れ、第1のロックカム240が反時計回転方向に回転可能な状態となる。
【0080】
また、第2のロックカム250が反時計回転方向(
図17)に回転した状態において、第2のロックカム250の四角凸部254が、第3のロックカム260の突出する外周に当接することで、第2のロックカム250の時計回転方向(
図17)への回転が規制される。
【0081】
これにより、
図18に示すように、ペダル130の操作が終わって、すなわち、車椅子16を後退させて前輪16bをペダル130から離して、リンクバー132が上昇し、リンクレバー220が右下がり状態(
図18)となり、作動部230が下方に移動しても、第1の状態維持手段252としての第2のロックカム250は、時計回転方向(
図18)に回転せず、回転が規制された状態を維持する。これにより、第1のロックカム240の凸部243が、第2のロックカム250の凹部253に係止されない状態が維持され、第1のロックカム240の回転は規制されず、自由に回転可能な状態を維持する。このため、上蓋110の開放と共にロックバー101に引きずられ、及び引張ばね244の張力を受けて第1のロックカム240は、
図19に示すように、反時計回転方向に回転する。そして、第1のロックカム240の回転に伴い、係止部242の内部からロックバー101が外れ、上蓋110が完全に開放される(持ち上がる)。
また、第1のロックカム240の回転に伴い、突部245が第3のロックカム260を時計方向に回転させる。これにより、第3のロックカム260による第2のロックカム250の時計方向への回転の規制は解除される。一方、第1のロックカム240の凸部243が第2のロックカム250の外周部に当接するため、第2のロックカム250の時計方向への回転の規制は維持される。
【0082】
上蓋110を閉める際には、
図20に示すように、上蓋110を人の手で下方に押し下げると、ロックバー101が第1のロックカム240の係止部242の内部に入り込み、係止部242の上側を押し上げる。これにより、第1のロックカム240が、
図20の時計回転方向に回転する。
第1のロックカム240が、時計回転方向に回転すると、引張ばね244の引張力により、第2のロックカム250は、
図21に示すように時計回転方向に回転して、
図16と同様のロック状態に戻る。
【0083】
本実施形態に係るリンク機構210は、2つのペダル130とロック機構200とをつなぐと共に、2つのペダル130を共に操作しないとロック機構200のロックが解除されないように形成されている。上記2つのペダル130を共に操作しないとロック機構200のロックが解除されない機構について説明する。
図22は、2つのペダル130が操作されている状態(2点鎖線)及び1つのペダル(具体的には、左側のペダル)だけが操作されている状態(実線)の作動部230の正面図である。
【0084】
図22の実線で示されている状態は、左側のペダル130だけを操作しているもので、具体的には、
図23及び
図26に示すような状態になっているものである。
【0085】
このように、両方のペダル130を共に操作せずに片方だけのペダル130を操作した場合には、作動部230は、
図22の実線で示すような状態となる。作動部230の中央位置では、作動部230の上方への跳ね上げの移動距離が、両方のペダル130を操作した場合の距離Lの約半分の距離L/2となり、ロック機構200のロック状態を解除するために必要な所定量の移動距離Lの半分L/2となる。かかる場合、
図23に示すように、作動部230の跳ね上げ、すなわち上方への移動距離が通常の半分となって不足し、跳ね上げ片255をロック解除させることができるまで跳ね上げることができない。結果として、第2のロックカム250の
図23の反時計回転方向の回転が不足する。
図17の場合と比較しても、第2のロックカム250の回転量が不足し、第1のロックカム240の反時計回転方向への回転規制を解除するには至らない。このように、本実施形態は、左右のペダル130を共に操作しないとロック機構200のロック状態が解除されない機構であり、誤作動を防止することができるものである。
【0086】
本実施形態によれば、ペダル130を足で踏みつけて操作したり、車椅子16の前輪16bで踏みつけて操作することにより、ペダル130とロック機構200とをつなぐリンク機構210を介して、ロック機構200のロックを解除することができる。そして、ロック機構200のロックが解除されれば、付勢手段(付勢手段140及び他の付勢手段145)の付勢力により、上蓋110を開放方向に開放することができる。
【0087】
これにより、床面にある上蓋110まで手を伸ばして自らの手でロック状態を解除し、当該上蓋110を持ち上げて開放することができないような車椅子16の利用者等が足や車椅子16の前輪16b等でペダル130を操作することで、上蓋110を開放することができる。
【0088】
本実施形態によれば、片方だけのペダル130の操作では、片方だけのリンクレバー220しか作動せず、作動部230の両端の一方しか移動しない。このため、作動部230の所定量の移動を確保することができず、ロック機構200のロックが解除されない。
【0089】
このように2つのペダル130を共に操作しないとロック機構200のロックが解除されないように形成されている。このため、幼児等のいたずらで1つのペダル130が操作されたり、また、偶然に片方の足で1つのペダル130を踏んでしまうようなことが起きても、ロック機構200のロックは解除されない。これにより、幼児等のいたずらや、誤作動等の発生を抑えることができ、誤って上蓋110を開放してしまうようなことを防止することができる。
【0090】
これにより、車椅子16の利用者であって、左右のペダル130を手や足で同時に操作することができないような場合であっても、容易にロック機構200のロックを解除することができ、上蓋110を開放方向に開放することができる。結果として、火災や地震等の緊急時における避難において介助者がいなくても車椅子16の利用者だけで容易に行うことができる。
【0091】
本実施形態によれば、上蓋110に設けられた係止部242が、ロック状態では、外枠100に設けられたロックバー101を係止することで、上蓋110が外枠100から離れることができず、ロック機構200がロック状態となる。
【0092】
また、上蓋110に設けられた係止部242が、アンロック状態では、ロックバー101を係止していないことで、上蓋110が外枠100から離れることが可能な状態となり、ロック機構200のロックが解除された状態となる。
また、第1の状態維持手段252が、前記ロック状態を維持することで、ロック機構200がロック状態を維持することができる。
【0093】
また、第2の状態維持手段262が、第2のロックカムが阻止状態から許容状態に回動された場合、ペダル130の操作位置に関わらず第2のロックカムの阻止状態への復帰を阻止する。これにより、ペダル130を操作して、ロック状態からアンロック状態にした後、ペダル130から手や足や前輪16b等が離れて、ペダル130の操作を止めても、アンロック状態から再度、ロック状態へ移行し、ロック機構200がロック状態に戻ることを防止することができる。
【0094】
本実施形態によれば、第1のロックカム240が、外枠100の一部を係止可能な係止部242を有し、回動することで、係止部242のロック状態及びアンロック状態を変更することができる。
また、第1の状態維持手段252としての第2のロックカム250は、初期状態において第1のロックカム240の回動を阻止する阻止状態とすることで係止部242をロック状態とし、当該第2のロックカム250が回動することで第1のロックカム240を回動可能とする。
また、第2の状態維持手段262としての回動可能な第3のロックカム260は、第2のロックカム250が阻止状態から許容状態に回動された場合、第2のロックカム250の阻止状態への復帰を阻止する。
【0095】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示は係る例に限定されない。本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0096】
また、第1実施形態に掛かる開口装置8を有する避難装置11は、上述したような車椅子16だけではなく、車椅子16での移動が困難な者に用いられるストレッチャーにも適用可能である。
【0097】
[第2実施形態]
次に第2実施形態について、
図27~
図31を適宜引用しながら説明する。なお、第1実施形態と同じ構成には同じ符号を付すこととし、詳細な説明は割愛する。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0098】
図27は、本開示の第2実施形態に係る開放停止部450の斜視図である。
図27に示すように、第2実施形態では、第1実施形態に対し、開放停止部450における第1のアーム460、第2のアーム470、及びストッパ480の形状が変更されている。
【0099】
第1のアーム460は、長手方向の両端をそれぞれ外枠100と、後述する第2のアーム470とにそれぞれ回動可能に連結される部材である。第1のアーム460は、一例として、一対の側壁460Aと、一対の側壁460Aの端部を結ぶ天板460Bとを有する、断面略U字の棒状部材で形成されている(
図27参照)。第1のアーム460は、第1軸Cにより外枠100に対して回動可能に連結され、第3軸Eにより第2のアーム470に対して回動可能に連結されている。
【0100】
第1のアーム460の長手方向略中央には、後述する減衰手段350のピストンロッド354側の端に取り付けられた、第1軸ピン353を回動可能に固定する第1連結部346が設けられている。
【0101】
第2のアーム470は、長手方向の両端をそれぞれ接続ブラケット113と、第1のアーム460とにそれぞれ回動可能に連結される部材である。第2のアーム470は、一例として、一対の側壁470Aと、一対の側壁470Aの端部を結ぶ天板470Bを有する、断面略U字の棒状部材で形成されている(
図27参照)。第2のアーム470は、第3軸Eにより第1のアーム460に対して回動可能に連結され、第2軸Dより接続ブラケット113に対して回動可能に連結されている。
【0102】
また、第2のアーム470には、第2連結部342が設けられている。この第2連結部342は、後述する減衰手段350のシリンダ352側の端に取り付けられた第2軸ピン355が回動可能かつスライド可能に連結されている案内部344を有している。案内部344は、一例として、第2のアーム470の長手方向に沿った長孔である。なお、この第2連結部342は、第2のアーム470と一体として形成されていてもよく、また別体として設けられてもよい。
【0103】
なお、
図27に示すように、一例として一対の側壁470A同士の間の距離は第1のアーム460の幅よりも広く設定されている。そのため、本実施形態では、第1のアーム460が第3軸Eにおいて第2のアーム470に対して軸支されている場合、第2のアーム470の内側に収容されている。
【0104】
ここで、第2実施形態に係る開口装置8の開放停止部450は、減衰手段350を有している。減衰手段350は、一例としてシリンダ352及びピストンロッド354を有するオイルダンパである。減衰手段350は長手方向に伸縮可能、具体的には、シリンダ352に対してピストンロッド354が伸縮可能とされている。ここで、ピストンロッド354側の端に取り付けられた第1軸ピン353が「減衰手段の一端」に相当し、シリンダ352側の端に取り付けられた第2軸ピン355が「減衰手段の他端」に相当する。なお、減衰手段350は、少なくともピストンロッド354の伸縮時において、その伸縮を抑制する抵抗力を生じる。
なお、第1軸ピン353がピストンロッド354側の端に、第2軸ピン355がシリンダ352側の端に、それぞれ取り付けられているが、本実施形態に係る「減衰手段の一端」及び「減衰手段の他端」は、これに限定されない。例えば、第1軸ピン353及び第2軸ピン355は、それぞれ減衰手段350に一体に成形されていてもよい。
【0105】
また、本実施形態では一例として、第2のアーム470の天板470Bにおける第1のアーム460側の端部が、第3軸Eから第1のアーム460側に延出している。これにより、
図31に示すように、第1のアーム460と第2のアーム470とが最も開いた状態において、第1のアーム460の天板460Bが第2のアーム470の天板470Bに当接することにより、ストッパ480として機能する。
なお、本実施形態では、一対の側壁460A同士の間の距離が第2のアーム470の幅よりも広く設定されている場合、すなわち第2のアーム470が第3軸Eにおいて第1のアーム460に対して軸支されていてもよい。この場合、第2のアーム470は、第1のアーム460の内側に収容され、第2のアーム470の天板470Bが第1のアーム460の天板460Bに当接することにより、ストッパ480として機能するように設定してもよい。
【0106】
(上蓋110により開口3を閉塞可能な開口装置8の機構)
本実施形態に係る、上蓋110により開口3を閉塞可能な開口装置8の機構について以下に説明する。
【0107】
図27及び
図28に示されるように、付勢手段440が縮んだ状態、すなわち上蓋110が閉じている状態では、第1のアーム460と第2のアーム470とは、折りたたまれて上蓋110内に収容されている。
【0108】
第1実施形態と同様に、
図28に示された状態からロック機構200のロックが解除された場合、上蓋110は、シリンダ441内のピストンロッド442に付勢力が作用して付勢手段440が伸長することにより、閉じられた状態から開き始める。また、開放停止部450は、第1のアーム460及び第2のアーム470が第3軸Eを中心に回動して、折りたたまれた状態から伸展を始める。
【0109】
このとき、ピストンロッド354側の端に取り付けられた第1軸ピン353は、第1のアーム460に対して第1連結部346を中心に回動し、シリンダ352側の端に取り付けられた第2軸ピン355は、第2のアーム470の第2連結部342の案内部344に沿って第3軸Eの方向にスライドする。
【0110】
図29は、上蓋110が所定の角度の一例として略50°(以下、本実施形態における「半開放角度」とする)まで開放した状態を示す図である。
図29に示されるように、上蓋110が半開放角度に開放した状態において、第1のアーム460及び第2のアーム470は、継続して開き続ける。ここで、上蓋110が半開放角度まで開放されると、案内部344と減衰手段350との成す角度が大きくなるため、シリンダ352側の端は、スライドを停止する。
【0111】
このとき、第1のアーム460及び第2のアーム470がさらに開くことにより、減衰手段350は、シリンダ352に対してピストンロッド354が引っ張られるため、伸長される。すなわち、上蓋110が半開放角度以上に開放した状態において、開放停止部450に設けられた減衰手段350は、第1のアーム460及び第2のアーム470の伸展に対する抵抗力を発生させる。
【0112】
図30は、上蓋110が90°(最大開放角度)まで開放した状態を示す図である。
図30に示されるように、第1のアーム460は第2のアーム470に形成されたストッパ480によって、第2のアーム470に対する進展が規制される。これにより、第1のアーム460及び第2のアーム470はほぼ一直線状になると共に、上蓋110の開放は規制される。
【0113】
図31は、
図30における第1のアーム460、第2のアーム470の配置を示す図である。
図31に示されるように、第1のアーム460と外枠100との連結部である第1軸C、第2のアーム470と接続ブラケット113との連結部である第2軸D、第1のアーム460と第2のアーム470との連結部である第3軸Eは、上蓋110が最大開放角度まで開放した状態においても直線上に並んでいない。すなわち、第3軸Eは、第1軸C及び第2のアーム170の上蓋110側に設けられた第2軸Dを結ぶ仮想線に対して、第1のアーム460と第2のアーム470とが折り畳まれる側の反対側(本実施形態では上蓋110の回転軸112側に遠い側)に設けられている。
【0114】
これにより、上蓋110が最大開放角度まで開放された状態において、上蓋110を閉める方向に力を加えた場合、第1のアーム460及び第2のアーム470の長手方向に圧縮力が働く。つまり、第2軸Dと第1軸Cとを結ぶ直線に沿って圧縮力が働き、第1のアーム460及び第2のアーム470は、それぞれ折り畳まれる方向に回動する。これにより、上蓋110は開いた状態から閉じる方向に回動する。
【0115】
(開口装置8における上蓋110の開閉動作機能の作用及び効果)
本実施形態では、上述したような開口装置8を有することで以下に示すような作用及び効果を奏する。
【0116】
図28~
図30に示されるように、本実施形態に係る開放停止部450を備えた開口装置8は、上蓋110が開放する場合において、以下の作用が生ずる。上蓋110の開放角度が半開放角度未満の状態では、減衰手段350の他端が第2連結部342の案内部344をスライドすることにより、減衰手段350は、伸長されない。したがって、水平状態の上蓋110を持ち上げて回動させようとする状態において、付勢手段440のみが作用する。
【0117】
ここで、上蓋110の開放角度が増加するにつれ、上蓋110の荷重が回転軸112に向くため上蓋110の回動に必要なモーメントが低下し、上蓋110の開放速度が増加する。そのため、開放停止部450及び減衰手段350がない場合は、上蓋110が最大開放角度まで達した際に衝撃が生じる。
【0118】
これに対し、本実施形態に係る開口装置8によれば、上蓋110の回動に必要なモーメントが低下する半開放角度から減衰手段350が機能し、第1のアーム460及び第2のアーム470の伸展に対する抵抗力が生じることにより、上蓋110の開放速度が抑制される。
【0119】
このように、本実施形態に係る開口装置8では、上蓋110の開放角度の増加に伴う開放速度の増加を抑制することが可能となる。これにより、上蓋110が最大開放角度まで達した際の衝撃が低減される。
【0120】
以上に示した効果によって、本実施形態に係る開口装置8では、上蓋110が閉じられた状態から人の手によらず開放させること、及び上蓋110の開放角度が半開放角度以上である場合に開放速度を抑制することの両立を図ることが可能となる。
【0121】
また、本実施形態に係る開口装置8においても、本開示の第1実施形態に係る開口装置8と同様の構成については、第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0122】
なお、第2のアーム470に設けられた第2連結部342に形成された案内部344は、第2のアーム470の長手方向に沿った形状の長孔とされたが、これに限らない。案内部344は、例えば円弧状、波状、鋸歯状等の孔として、上蓋110の開放速度に合わせて設定されてもよい。さらに、V溝やT溝等の互いに摺動する案内機構としてもよく、又はリニアガイドやスライドレール等の直動機構とされていてもよい。
【0123】
また、第2連結部342は、第2のアーム470に設けられていたが、本実施形態に係る第2連結部342は、例えば第1のアーム460に設けられていてもよい。
【0124】
以上、添付図面を参照しながら本開示の実施形態を説明したが、本開示の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本開示は、建築物の廊下、ベランダ、屋根等に設けられた避難ハッチや昇降口等の開口装置として利用可能である。