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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】ビスケット様ミルク食品
(51)【国際特許分類】
   A21D 13/80 20170101AFI20241225BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
A21D13/80
A21D2/26
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022521725
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 EP2020078714
(87)【国際公開番号】W WO2021074117
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】19306359.1
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518422987
【氏名又は名称】サヴァンシア ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダ シルバ ブーシー,アンヌ-クレア
(72)【発明者】
【氏名】マルクス,ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】エイマード,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】ラコット,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】パデル,ビルジニ
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-048170(JP,A)
【文献】特開2001-178414(JP,A)
【文献】特開2014-140364(JP,A)
【文献】特表2019-523021(JP,A)
【文献】特表2017-531450(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093611(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/180667(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D 2/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスケット様ミルク食品であって、以下のもの、即ち、
当該ビスケット様ミルク食品の総重量の30~60重量%であるタンパク質(そのうち、少なくとも80重量%は乳由来である)と、
当該ビスケット様ミルク食品の総重量の12~45重量%である単糖類及び/又は二糖類(そのうち、単糖類及び/又は二糖類の少なくとも60重量%はラクトースである)と、
当該ビスケット様ミルク食品の総重量の1~40重量%である脂質と、
当該ビスケット様ミルク食品の総重量の6重量%未満である水と、
を含み、
タンパク質、単糖類及び/又は二糖類、脂質、並びに水以外の任意の化合物の含有量が、当該ビスケット様ミルク食品の総重量の10重量%未満であり、
0.1~0.6g/cm の見掛け密度を有することを特徴とする、ビスケット様ミルク食品
【請求項2】
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の少なくとも60重量%である乳由来の原料を含むことを特徴とする、請求項1に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項3】
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の1重量%未満である、ベーキングパウダ及び乳化剤の中から選択される少なくとも1つの添加物を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項4】
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の30~60重量%であるタンパク質(そのうち、少なくとも80重量%は乳由来である)と、
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の12~45重量%である単糖類及び/又は二糖類(そのうち、該単糖類及び/又は二糖類の少なくとも60重量%はラクトースである)と、
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の1~40重量%である脂質と、
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の6重量%未満である水と、
から構成されることを特徴とする、請求項1に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項5】
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の少なくとも60重量%である乳由来の原料を含むことを特徴とする、請求項4に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項6】
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の20~85重量%である全乳又は脱脂乳を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項7】
前記脂質が、植物性脂肪を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項8】
0.12~0.4g/cmの見掛け密度を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項9】
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の0.8~1.6重量%であるカルシウムを含むことを特徴とする、請求項1~3及び6~8のいずれか一項に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項10】
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の5重量%未満である、タンパク質、単糖類及び/若しくは二糖類、脂質、並びに水以外の任意の他の化合物、並びに/又は、
前記ビスケット様ミルク食品の総重量の0.5重量%未満であるベーキングパウダ及び乳化剤の中から選択される少なくとも1つの添加物、
を含むことを特徴とする、請求項1~3及び6~9のいずれか一項に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項11】
前記単糖類及び/又は二糖類が、前記ビスケット様ミルク食品の総重量の12重量%~40重量%の量で存在するラクトースであること、並びに、
前記脂質が、乳由来であること、
を特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項12】
ベーキングパウダ及び乳化剤の中から選択される少なくとも1つの添加物を含まないことを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載のビスケット様ミルク食品
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のビスケット様ミルク食品を調製する方法であって、当該方法は、
a.生地を得るための原料を混合する工程と、
b.前記生地を成形する工程と、
c.前記生地を切断する工程と、
d.任意選択的に、前記切断された生地を予備乾燥させる工程と、
e.オーブン調理する工程と、
f.任意選択的に、目標湿度に達するまで乾燥させる工程と、
g.任意選択的に、表面に混在物を添加する工程、表面に噴霧する工程、例えば溶かしたチョコレート又は類似するチョコレートなどの別の流体に浸す工程と、
を備えてなることを特徴とする、ビスケット様ミルク食品の調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品産業の分野に関し、より具体的には、ミルクビスケット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実際に、本出願人は、外観、食感、及び官能特性がビスケットのものである食品製品を開発しているが、これらの製品は主に乳原料から構成されている。
【0003】
ビスケットとは、小麦粉、脂肪、及び砂糖から開発された穀物製品であり、低い残留湿度(5重量%未満)を有する。
【0004】
より具体的には、ビスケットは、概して、小麦粉(15~75重量%)、最も多くの場合で小麦、脂肪(10~50重量%)、及び糖(5~50重量%)から主に構成される。一方では小麦粉、糖、及び脂肪の間のバランスに、他方では生地の水和レベルに従って、いくつかの型の生地が区別される。
- ハード又はセミハードの生地は、少なくとも50%の小麦粉を含み、硬質で可塑性のレオロジーを伴う粘着性の連続構造を有する。これらは、その後調理される個別の生地片へと回転切断(roto-cut)される前に、薄層に圧延されることが多い。
- “脂肪質の”生地は、25%~60%で含まれる小麦粉含有量と、より高い糖含有量及び脂肪含有量(15~40%)とを有する。水和レベルが低い場合、生地は、非粘着性で脆い構造を伴う砂状の外観を有する。最も多くの場合はロータリ成形機中で、生地を圧縮して、加工することができる生地片を得て、次いでこれを調理することが通例である。より高い水和にて、生地片は連続構造になるが、ハード及びセミハードの生地よりもはるかに柔軟な構造となる。生地をシリンダ内に押し込み(低剪断押出に似ている)、その後、典型的にはワイヤカッタを用いて生地を切断することができる。生地片は、概して固い帯上に堆積され、調理中に多かれ少なかれ広がる。
【0005】
ベーキングパウダ又は乳化剤のような他の原料もまたビスケット作製に使用される。ビスケット生地中に低い含有量で組み込まれているにもかかわらず、これらは、生地及び最終製品の品質に必要不可欠な役割を有し、それらの生産において極めて重要である。
【0006】
ベーキングパウダとは、調理中に生地内のガスを放出し、生地の膨張に寄与する、物質又は物質の組合せである。物質の一例は重炭酸アンモニウムであり、これは、二酸化炭素及びアンモニア中において熱により分解され、かつ残留物を残さない。組合せの一例は、水及び熱の存在下で二酸化炭素を生成する混合物である、塩基(炭酸塩型又は重炭酸塩型)と、弱酸(酒石酸型又は酸性ピロリン酸ナトリウム型)との混合物である。
【0007】
乳化剤は、ビスケット作製に従来使用されている、界面活性剤化合物である。乳化剤は異なる役割を有する:技術レベルでは、乳化剤は、混練中の脂肪の分散を促進し、静置時間中の生地の安定性を高め、形成中の生地の機械加工性を改善する。乳化剤はまた、最終製品の外観と、その経時的な保存とに対して、プラスの影響(酸化及びデンプンの分解の潜在的な遅延)を及ぼす。
【0008】
乳粉末又はソフトホエイ(soft whey)などの乳原料は、乳タンパク質と還元糖との間の相互作用によって開始されるメイラード反応によって、色及び風味を適用するために、少量(2重量%未満の生地)でビスケット配合物に添加される場合がある。より多い用量では、乳粉末又はソフトホエイは、ビスケットを強く着色し、硬く詰まった食感をもたらす傾向があり、これは消費者に好まれていない。
【0009】
ビスケットの栄養プロファイルは、特に脂肪及び糖の含有量を減少させ、かつ繊維及びタンパク質の含有量を増加させることを目的とした、多くの改善作業の対象を形成した。乳タンパク質又はマメ科タンパク質のように高リジン含有量を有するタンパク質の使用は、リジンが必須アミノ酸であり、概して小麦及び穀物には欠けていることから、栄養学的観点から特に興味深いものである。しかしながら、タンパク質の濃縮は、ほとんどの場合、生地の技術的特性及びビスケットの官能特性にとって好ましくないことが証明されている。その効果は更に顕著であり、組み込まれるタンパク質含有量は高い。タンパク質の組込みには、概して、水分を保持するそれらの高い能力に起因して、生地の水和を増加させる必要がある。生地は、静置時間中に不安定となり、形成が困難になり、これによって収量は低下する。混練に加えられる追加の水を蒸発させるためには、調理条件(時間及び/又は温度)もまた改変されなければならない。生地中のタンパク質による食感加工効果で、開発は極めて不利になり、より高密度かつより硬い製品が得られる。調理中にタンパク質がゲル化して、これにより、砂糖のガラス化現象と、小麦タンパク質の不溶化と、デンプンの部分的な膨化又は糊化との組合せに起因して、ビスケットマトリックスの硬さが強化される場合、硬さの増加もまた目立つようになる。
【0010】
これらの技術的な制限は、おそらく、通気構造とサクサクした食感とを有する、乳が豊富でありタンパク質が豊富でもあるビスケット型製品が存在しない理由を説明している。タンパク質が濃縮された製品は、ほとんどの場合、以下の形態で提供される:
- 乳化剤を含有する、砂糖と脂肪とのバインダ中に押し出された粒子を組み込むことによって得られる、乾燥してサクサクした棒状物。押し出された混在物を熱バインダと混合して柔軟な生地を得て、これをシートに広げ、次いで硬化させるために冷却し、最後に棒状に切断する。実際の調理はせず、場合によっては乾燥のみであるため、調理された製品の風味プロファイルを得ることはできない。口の中での食感は「朝食用」シリアル(「調理済みシリアル」)に近く、非常に異質であるそのバーの外観は、概して滑らかかつ連続的であるビスケットの外観とは極めて異なる。
- “歯ごたえがある”食感を有し、粉末形態のタンパク質と、押し出された混在物を含有する、棒状物。歯ごたえがある食感は、最終製品中の残留湿度がより高い(10%超)ことに起因しており、これは、タンパク質の組込みに関連した硬さの増加に対する技術的な解決策である。これらの棒状物は、ベーキングパウダ、乳化剤といった有意な数の添加物を含有しているが、湿潤剤及び増粘剤もまた含有している。したがって、欧州特許出願公開第3531837号(Generale Biscuit)の出願では、歯ごたえがある食感を有し、粉末又は固体粒子の形態で添加された20%~30%のタンパク質を含有する、調理済みシリアル製品について記載している。乳タンパク質の割合は、粉末形態で添加された0~16%のタンパク質と、粒子形態で添加されたタンパク質の33~50%とを表す。粉末の形態にあるタンパク質と粒子の形態にあるタンパク質と割合がこの特許請求の範囲に示されていることを考えると、したがって、最終製品は0~14%の乳タンパク質を含有すると推定することができる。最終製品はまた、穀物原料(小麦粉及び穀物混在物)、糖、卵粉、ベーキングパウダ、乳化剤、湿潤剤を含有している。水含有量は8~16%で構成され、密度は0.6~0.92g/cmで構成される。
【0011】
添加物の存在は、天然で且つ変形がわずかである製品を求める消費者にとって、ますます受け入れられていない。更に、このカテゴリの製品は、ビスケットのものとは異なる形態(やや長方形で厚みがある)、表面外観(異形)、及び口内での食感を有する。
【0012】
いくつかの特許では、タンパク質含有量が増加した、乾燥してサクサクした組成物について記載している。
【0013】
米国特許出願公開第2003091698号(Marsland)では、ビスケット作製方法が、全体として、アミラーゼ化合物に富む配合物のために設計及び適合されてきたことが正しく述べられている。これは、発明者らによれば、肥満、糖尿病、過敏性腸症候群などの公衆衛生上の問題を引き起こす。提案された解決策は、アミラーゼ化合物を小麦タンパク質及び他のタンパク質で置き換えることで、伸長可能かつ柔軟な生地を得るものであり、この生地は、目標残留湿度に達するまで、次いで圧延し、次いで切断し、フライ、オーブン調理、電子レンジ調理法などを用いて乾燥させることができる。最終製品は少なくとも25重量%のタンパク質を含有する。小麦タンパク質はその顕著な粘弾特性が知られており、そのようなレベルの組込みは、非常に弾性のある生地、及び形成及び切断が不可能な生地を生成したであろう。実際、発明者らは、ジスルフィド架橋を切断する効果を有する還元化学薬剤によって改変された小麦タンパク質を、配合物に一体化させ、粘弾性効果を失わせることを提案する。
【0014】
別の例は英国特許出願公開第1500012号(Chiari&Forti SPA)であり、これは、標準的な製品(8%未満のタンパク質を含有する)の感覚特性を保ち、かつタンパク質濃縮物又は単離物などの高価な原料に頼るのを回避することによって、13%~15%程度のタンパク質含有量を有するビスケットを得ることを望むものである。出願人らは、デンプンとタンパク質との部分的な分離を可能にする物理的方法によって得られた、タンパク質含有量の高い小麦粉を用いることを提案する。このように処理された小麦粉は18~22%程度のタンパク質含有量を有する。しかしながら、このような小麦粉から生成されるビスケットは、不規則な形態と、過度に硬い食感とを有することもまた知られている。これは、小麦の主要なタンパク質であるグルテンの、特定の特性に関連している。したがって、強調した解決策は、タンパク質が濃縮されたこの小麦粉を、タンパク質分解酵素などの技術的な補正剤、又はシステインなどの還元剤と組み合わせることによって用いることからなる。
【0015】
米国特許出願公開第2003064145号(Fannon)は、栄養価が制限されていることについて、食物不耐性の原因であるグルテンを非難しており、健康に良い影響を与える、良好な感覚的特性、限られた脂肪含有量、及び高タンパク質含有量を有するスナックを得る必要性を主張している。これらの異なる欠点に応じて提案された技術的解決策は、画分が加水分解されるダイズタンパク質、穀物タンパク質、(小麦粉、又はコメ、又はタピオカデンプン型の)アミラーゼ剤、可塑剤(水及び/又はポリオール)を用いることからなる。粉末は水和され、次いで混合物は、切断され、乾燥され、風味付けされ、その後包装される前に、押出調理器を用いて押し出される。製品は、乾燥材料の25重量%~95重量%で含まれるタンパク質含有量、乾燥材料の0.2重量%~30重量%で含まれる脂肪含有量、及び1.2重量%~71.2重量%で含まれるデンプン含有量に相当する、5:95~75:25で含まれるデンプンとタンパク質含有量との比を有する。記載された食品製品の特異性は、押し出された混合物が0.5%を超える脂肪を含有してはならず、脂肪の残りは押出後に製品の表面に適用されるという点である。発明者らはこれについての説明をしていないが、脂肪が押出機のスクリュー内での滑動現象を誘発して、知覚される実際の剪断が減少することによって押出プロセスを妨害するので、脂肪が豊富な組成物を押し出すことができないことが、当業者に知られている。脂肪が製品の周囲にのみ存在するという事実によって問題の回避は可能になるが、しかしながら、口内での触覚に対する油のような知覚と、脂っぽい味とを与えることに寄与する可能性があり、消費者にとって製品をあまり魅力的ではなくしてしまう。
【0016】
タンパク質が豊富でグルテンが少ないスナックを押出によって得るための別のアプローチは、Lickerら(国際公開第2009/129024号、Frito-Lay)によって記載されているものである。発明者らは、押し出されたスナック中のタンパク質の濃縮が、過剰な着色、味及び望ましくない風味化合物、並びにスナックの膨張の問題などの、様々な種類の問題を引き起こすことについて記載している。発明者らが保持する技術的解決策は、乳タンパク質単離物、すなわち、ラクトースがほぼ完全に除去された乳原料を用いることからなる。これらの原料(カゼインカルシウム、血清タンパク質単離物、及び乳タンパク質単離物)は、少なくとも90%のタンパク質を含有する。これらの乳原料の一方又は他方、並びに有意な量のデンプン(32~66%)、及び任意選択的に乳化剤を用いて、18%のタンパク質(28g部分当たり5g)を含む膨張スナックを得ることを可能にする配合物(である)。
【0017】
他の用途はまた、穀物製品中のタンパク質の濃縮がもたらす技術的問題を解決するために、特定の乳原料に頼ることにも言及している。米国特許出願公開第2019/0059396号(Smith Tucker)の出願の場合、出願人は、乳清タンパク質によりタンパク質をクッキー生地で濃縮したいと望んでいるが、しかしながら、生地が粘着性で加工困難となり、最終製品が不快なゴム状の食感を有するために、その組込みは制限される。提案された解決策は、膜処理によって得られた非常に特異的な画分に由来し、かつ膜脂質、すなわち乳脂肪球の膜脂質を含む少なくとも12%の脂肪を含有する、「ホエイタンパク質リン脂質濃縮物(Whey Protein Phospholipid Concentrate)」ことWPPCを参照する、血清タンパク質の特定のグレードの濃縮物を使用することである。これらの脂質は卵黄に近い特性を有すると記載されており、これにより、出願人によれば、充分な機械加工性を有するクッキー生地、及び調理後には指示物に近いクッキーを得ることが可能になる。記載されたクッキー生地の配合物は、糖(サッカロース及びシロップ)、脂肪、乳タンパク質、ベーキングパウダ、甘味料(スクラロース)、ポリオール(グリセロール及びソルビトール)、食物繊維シロップ、リンゴシロップ、チョコレートチップ、風味料、及び任意選択的に卵などの、多数の他の原料も含有する。
【0018】
他の用途もまた、元のタンパク質材料への関心を示している:中国特許出願第107691562号A(Zhenglanqi Changhong Dairy Products Factory)の出願は、血清の形態又はリコッタタイプのチーズの形態であるバターミルク及び血清タンパク質などの、「乳共製品」の混合物の使用について言及している。この目的は、これらの乳材料を、小麦粉、卵、砂糖、任意選択的に他の乳タンパク質と混合して、これらからその後調理することができる生地を作製しすることによって、これらの乳材料を強化することである。生地は、典型的には、33~37%のバターミルク、28~32%の血清チーズ(serum cheese)、16~20%の小麦粉、5~7%の黒砂糖、4~6%の脱脂粉乳、2~4%の精製糖、及び2~4%の卵を含有する。
【0019】
中国特許出願第104855465号A(Xinjiang Wangyuan Camel Milk Ind Co Ltd)の出願は、ラクダ乳である別の特定の原料を使用する。この乳は栄養特性及び有用な健康上の利益を有するが、生産が限られており、コストが高く、出願人はこの乳を、液体又は粉末形態で、サツマイモ粉、コンニャク、サンザシ、及びハスの葉などの他の原料と混合して、そこから栄養製品を作製するようしている。実施例1~実施例9で算出されたラクダ乳粉末含有量は、ビスケットの総重量の3.7~19%で含まれている。乳原料(バターも含む)の割合は5~20%で含まれる。
【0020】
国際公開第2016/116426号(ProteiFood)の出願は、穀粉を含まず、かつ子供、大人、スポーツ選手、及び高齢者に必要なタンパク質及びミネラル塩含有量を提供する、ロングライフビスケット又はワッフル型の食品製品に関する。この出願は、少なくとも以下の原料を含む、乾燥膨張食品製品に関する:動物又は植物由来のタンパク質濃縮物、脂肪、食感加工添加物(親水コロイド及び植物ゲル化剤、タンパク質分解性添加物及びそれらの加水分解生成物、酸性化剤及びそれらの塩、マルトデキストリンから構成される群から選択)、並びに残留水。この発明の原理は、タンパク質濃縮物及び脂肪(任意選択的に他の原料を伴う)を、ゲル化剤(カラギーナン、寒天などのような親水コロイド型のもの、若しくはデンプン型、好ましくは改変されたもの)と混合すること、又はタンパク質濃縮物を凝固させるために、当該タンパク質濃縮物を、タンパク質分解剤(特に、レンネット型のもの)及び/若しくは酸性化剤(発酵物又は化学的酸味料)で処理すること、のいずれかからなる。これらの2つの処理は、当業者に公知の時間、温度、剪断操作条件下において行われる。どちらの場合においても、この目的は、ある特定の静置時間の終了時に、スライス又は磨り下しに充分なほどしっかりしたレオロジー(rheology)を有するゲル化固体を得ることであって、任意選択的に、操作に先行して部分的な乾燥段階が行われる。最後に、最終の膨張工程を電子レンジを用いて行う。
【0021】
国際公開第2016/116426号の出願と同じ発明者による、国際公開第2018/019954号(ProteiFood)の出願は、食感加工添加物及び脂肪が非存在であることによって区別される。この発明はまた、動物又は植物由来の、食品グレードの、及び残留水のタンパク質濃縮物で構成された、又はこれらを含む、乾燥膨張食品製品を製造する方法に関する。この製造方法は、4℃~100℃で含まれる温度にて、動物又は植物由来のタンパク質濃縮物と水とから構成される、又はこれらを含む、熱膨張性前駆物質を調製することからなり、その熱膨張性前駆物質をマイクロ波型装置内で加熱して、その膨張と、水含有量から残留物含有量への減少とを引き起こすことを対象とする。
【0022】
この発明者らは、熱膨張性前駆物質が、好ましくは15重量%~50重量%、好ましくは20重量%~40重量%のタンパク質を含有するが、他の原料が添加されるかどうか、又は添加された水で補足物が構成されるかどうかは特定しないことを示している。最終製品中の残留水含有量のみを特定する(3%~10%)。生地又はゲルの形態で得られた熱膨張性前駆物質は、膨張した食品製品の所望の形態及びサイズに従って、任意選択的に小片で詳述される。レシピを概説する表に詳述されている最終製品の組成は、40%~59%で含まれるタンパク質含有量、19%~30%で含まれる脂肪含有量、及び1.3%~10%未満で含まれる糖含有量を示している。実施例3~実施例5は、ベルギーの供給業者Cosucraによって製造されたイヌリンの商品名である、Fibrulineを含むことに留意しなければならない。イヌリンは食物繊維であり、乳ラクトース又はサッカロースなどの消化可能な炭水化物とは見なされない。46頁の以下の表において、実施例2及び実施例6は、10に等しいDE(デキストロース当量:Dextrose Equivalent)マルトデキストリンを含む。DEマルトデキストリン10の単糖類及び二糖類の含有量は原料の総質量の10%未満であり、残りは少なくとも3に等しい重合度DP(degree of polymerisation)を有する分子で構成されていることが知られている。したがって、全ての例における単糖類及び二糖類の含有量は、全ての場合において10%未満のままである。
【0023】
従来技術の全てが、タンパク質豊富で、膨張し、サクサクしたスナックに対する数々の試みが提案されていることを示している。これらの用途の間にはある特定の類似性がある。栄養組成に関して、組成物は高いタンパク質含有量を含むが、これらは、乳タンパク質よりも植物タンパク質であることが多い。加えて、これらが乳タンパク質である場合、本出願人は、好ましくは、望ましくない化合物が除去されているタンパク質濃縮物又は単離物、すなわち精製された原料を選択している。望ましくない化合物とは、タンパク質含有量を希釈する一方で、技術的機能性が低く、かつ製造方法の効率を低下させる化合物を意味する。ラクトースは、その非常に限られた溶解性に起因して、乾燥製品中のラクトースと考えることができる。その上、ラクトースは、その還元特性により、調理中にタンパク質と反応(メイラード反応)し、これにより顕著な褐色の着色、更には望ましくない味又は焦げた風味を生成する。したがって、タンパク質とラクトースとの両方が豊富な製品を設計することは、先行技術(従来技術)によって推奨されておらず、上述した著者らは、可能な限り少ないラクトースを含有する濃縮タンパク質を選択している。
【0024】
これらの技術的問題を回避する手段は、フランス特許出願公開第2237401号(Klosterfrau Berlin Chem)の出願で提案されている。この出願は、高い乳タンパク質含有量と、低い脂肪含有量及び糖含有量とを有する、いわゆるダイエットビスケットを製造することを目的としている。タンパク質は、糖含有量を減少させるために予め透析され、次いで乾燥された脱脂乳と、小麦又はダイズなどの植物タンパク質とに由来する。これらの粉末を65℃未満の温度で脂肪及びレシチンからなる無水相に組み込み、得られた生地を金型に沈積し、加工が極めて困難になるまで冷却する。この食品製品の製造はいかなる調理工程も含まず、したがって、得られる製品はビスケットではないことに留意することが重要である。後者は0.75~0.9g/cmで含まれる密度を有し、硬く脆い食感を有しており、製品から小片を切り離すには製品を強く噛む必要がある。最終製品中の乳原料の割合は、14%~57%で含まれる。最後に、提案された組成物の種類は、したがって狭義のビスケットよりも、ホワイトチョコレートに似た種類の無水棒状物により類似している。
【0025】
論理的には、先行技術は、タンパク質が豊富な膨張スナックの生産を成功させるために、高いタンパク質含有量を有する原料の実施を提案している。しかしながら、これに関連して、約34%のタンパク質及び50%を超えるラクトースを含む粉末化脱脂乳は、その比較的低いタンパク質含有量及びその高いラクトース含有量に起因して、これらの膨張スナックに組み込まれたことはなかった。
【0026】
小麦粉又はデンプン型のアミラーゼ化合物を見出すこともまた一般的であり、これらのうち、調理型の熱処理における食感加工及び膨張の役割は周知のものである。アミラーゼ化合物とは、これは、小麦粉中に存在するタンパク質画分の分離後に得られる、様々な穀物、マメ科、擬穀粉、及び精製デンプンを含む、少なくとも60重量%のデンプンを含む、任意の原材料又は原料を意味する。デンプン自体は、いわゆる擬晶複合体粒子、すなわち部分結晶性及び部分非晶質で組織化された可変割合の2種類の分子(アミロース及びアミロペクチン)で構成されている。天然の状態では、デンプンは、多数の植物学的な種に存在する組織(例えば、穀物胚乳)に一体化された、1ミクロン~10ミクロン程度の顆粒の形態で存在し、ここで、デンプンはエネルギー貯蔵を構成する。最も一般的なアミラーゼ化合物源は、穀粉、特に小麦である。他の代替物、例として:精製された又は完全な他の穀粉:コメ、メーズ、オートムギ、オオムギ、スペルトコムギ、小スペルトコムギ(small spelt)、ヒトツブコムギ、ライコムギなど;擬穀粉(キノア、アマランス、及びソバ)、又はマメ科(エンドウマメ、レンズマメ、マメ、ヒヨコマメ)が使用される。デンプン及び小麦粉は、それらの技術的特性、特に溶解性及び食感加工力を改変する物理的、酵素的、及び/又は化学的処理に供することができる。一例として、マルトデキストリンは、複合炭水化物と単純炭水化物との中間の特性を有し、且つある特定のビスケットの配合で使用される、酵素的又は化学的に加水分解されたデンプンである。
【0027】
ビスケット作製で使用される他の原料は、60%未満のデンプン含有量を含有する。これは、例えば、ある特定のマメ科粉(エンドウマメ、レンズマメ、ヒヨコマメ、マメなど)、又は任意選択的にターボ分離された穀物、穀物の糠、アリューロン型穀物画分、及び穀物又はマメ科食物繊維である。他の食物繊維もまた使用することができる。これらは、3以上の重合度(DP)の炭水化物化合物であり、小腸では代謝も消化もされない。食物繊維は、食品中で天然に存在するか(植物性繊維、果実、穀物など)、又は物理的、酵素的、若しくは化学的改変によって食用の原材料から得られるか(フラクトオリゴ糖、難消化性デキストリン、難消化性デンプンなど)、又は合成によっても得られるか(ポリデキストロース)、のいずれかである。従来、繊維とは、それらの溶解性及びそれらの食感加工の特徴に従って区別される。短鎖可溶性繊維は可溶性で食感加工されておらず、ビスケット製品の糖含有量を減少させるために高用量で使用することができる。不溶性繊維は、膨化又は保水能力に応じ、それ自体は粒子のサイズ及び形態に応じて、多かれ少なかれ食感加工される。これらの不溶性繊維は、従来、ビスケットの機械的抵抗を改善するために使用されているが、通常では、より低い用量(数質量パーセント)で使用される。
【0028】
これらの化合物(デンプン及び誘導体、繊維、ポリオールなど)の使用は、乳化剤又は発酵剤などのビスケット作製で従来使用されている添加物の使用に関連することが多い。
【0029】
一方では、結論として、膨張を保証するのに充分な含有量を保存し、乳化剤及び発酵剤などの従来の添加物を強めることによって、出発点として、参照ビスケットの作成を行い、かつアミラーゼ化合物及び/又は糖の一部をタンパク質で置き換えることができるものとして、アプローチを区別することができる。別のアプローチは、選択されたタンパク質濃縮物を実施し、ゲル化剤を用いてそれらを食感加工すること、又はそれらを凝固させることで、それらを切断して乾燥させることができるしっかりとした生地を有するようにすることからなる。
【0030】
どちらの場合でも、当業者には周知であるように、この技術の現状では概して選択されている膨張方法は、押出機の加熱されたスリーブ内部の生地を非常に強く圧縮し、実際には押出機を出る強い膨張を発生させ、これにより、配合物に含有される水を大幅に気化させ、高い膨張を発生させる押出である。代替案は、国際公開第2018/019954号の出願のようなマイクロ波システムの使用である。先行技術で言及されている技術(押出及びマイクロ波を含む)は、大気圧で行われる一連の簡単な操作:生地を得るための混練(粘着性又は分散されるかのいずれか)、個々の生地片を得るための形成、次いで、所望のレベルの残留湿度を得るための調理(概して、直接対流式オーブン又は強制対流式オーブン内における)、従来のビスケット作製技術の一部は形成しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0031】
【文献】欧州特許出願公開EP3531837号A1
【文献】米国特許出願公開第2003091698号A1
【文献】英国特許出願公開第1500012号A
【文献】米国特許出願公開第2003064145号A1
【文献】国際公開WO2009/129024号A2
【文献】米国特許出願公開第2019/0059396号A1
【文献】中国特許出願第107691562号A
【文献】中国特許出願第104855465号A
【文献】国際公開WO2016/116426号
【文献】国際公開WO2018/019954号
【文献】フランス特許出願公開第2237401号A5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
これに関連して、本出願人は、主に乳原料で構成され、ビスケット作製で従来使用されている添加物を含まない、ミルクビスケットの開発を目的とした。主に乳原料からビスケット型(タイプ)の食感を得ることは、上で詳述したように驚くべきことであり、乳原料の組み込みは高品質のビスケットの調製にとって好ましくないことが当業者に知られている。上述のタンパク質の悪影響に加えて、ラクトースはまた、技術的及び感覚刺激的な問題をも引き起こす。実際、ラクトースはサッカロースよりも10倍可溶性が低く、これにより、混練及び形成段階中における生地中への溶解が非常に制限される。したがって、ラクトースは従来サッカロースが許容してきた生地の水和を低下させることができず、口内に砂質の特徴を付与することもまた可能である。ラクトースの砂糖風味もまた、消費者が好まないサッカロースの砂糖風味と比べて、非常に弱い。従って、これらの先入観を克服することによって、本出願人は、以下の要素を含む本発明の主題であるミルクビスケットを開発した。
【課題を解決するための手段】
【0033】
すなわち、本発明の主題であるミルクビスケットは、
- ミルクビスケットの総重量の30~60重量%のタンパク質(そのうち、少なくとも80重量%は乳由来である);
特に、ミルクビスケットの総重量に対するポンデラルな(ponderal、重量の)なタンパク質含有量は、30~50重量%、30~40重量%、35~50重量%、35~40重量%、40~50重量%、40~45重量%、又は50~60重量%で含まれ得る。好ましくは、この含有量は、30~50重量%、30~40重量%、35~50重量%、又は35~40重量%、より好ましくは30~50重量%、又は30~40重量%で含まれる。そして、タンパク質の総重量に対するポンデラルな乳タンパク質含有量は、好ましい含有量から最も好ましいタンパク質の順で、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は100重量%である。
- ミルクビスケットの総重量の12~45重量%の単糖類及び/又は二糖類(その内、当該単糖類及び/又は二糖類の少なくとも60重量%はラクトースである);
特に、ミルクビスケットの総重量に対する単糖類及び/又は二糖類のポンデラルな含有量は、12~30重量%、20~45重量%、30~45重量%、35~45重量%、20~35重量%、又は20~30重量%で含まれ得る;好ましくは、この含有量は、30~45重量%又は35~45重量%で含まれ、より好ましくは、35~45重量%で含まれる;単糖類及び/又は二糖類の総重量に対するポンデラルなラクトース含有量は、好ましい含有量から最も好ましい含有量の順で、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、100重量%の中から選択される。
- ミルクビスケットの総重量の1~40重量%である脂質;
特に、ミルクビスケットの総重量に対するポンデラルな脂質含有量は、1~10重量%、1~5重量%、1~2重量%、10~40重量%、10~30重量%、10~25重量%、又は15~25重量%で含まれる。
並びに、
- ミルクビスケットの総重量の、6重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは4重量%未満、全く好ましくは3重量%以下の水;
を含んでなる。
【0034】
好ましくは、当該ビスケットは更に、以下のとおりである:
- 当該ビスケットは、ミルクビスケットの総重量の少なくとも60重量%の乳由来の成分を含む;ミルクビスケットの総重量に対する乳由来の成分のポンデラルな含有量は、好ましい含有量から最も好ましい含有量の順で、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%の中から選択される;特定の実施形態によれば、ミルクビスケットは、したがって、ミルクビスケットの乾燥重量の100%に当たる乳原料のみを含有する;
並びに/又は
- 当該ビスケットは、0.1~0.6g/cmで含まれる見掛け密度を有する;見掛け密度は、好ましい値から最も好ましい値の順で、0.1~0.5g/cm;0.1~0.4g/cm、及び0.1~0.3g/cmで含まれる;
並びに/又は
- 当該ビスケットは、ミルクビスケットの総重量の10重量%未満である、上に列挙されたもの以外の化合物、すなわちタンパク質、単糖類及び/又は二糖類、脂質、及び水を含む;ミルクビスケットの総重量に対する他の化合物のポンデラルな含有量は、好ましい含有量から最も好ましい含有量の順で、5重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、及び0重量%の中から選択される;
並びに/又は
- 当該ビスケットは、ミルクビスケットの総重量の1重量%未満、好ましくは0.5重量%未満、より好ましくは0.25重量%未満、及び全く好ましくは0重量%である、ベーキングパウダ及び乳化剤の中から選択される少なくとも1つの添加物を含む。
【0035】
「列挙されたもの以外の化合物」では、以下を挙げることができる:
- アミラーゼ化合物、すなわち、異なる穀粉(コムギ、オートムギ、コメ、メーズ、オオムギなど)、マメ科粉(エンドウマメ、レンズマメ、ヒヨコマメ、ソラマメ、マメなど)、擬穀粉(ソバ、キノア、アマランス)、及び小麦粉中に存在するタンパク質画分の分離後に得られ、任意選択的に物理的、酵素的、若しくは化学的に改変された、マルトデキストリンなどの精製デンプンを含む、少なくとも60%重量のデンプンを含む原材料若しくは原料;
- デンプン含有量を減少させるために、物理的分離処理に供される可能性のある、ある特定の穀物、マメ科、擬穀物、天然小麦粉、若しくは小麦粉を含む、60重量%未満のデンプンを含む、少量のデンプン源;
- 食物繊維、例として、任意選択的に部分的に加水分解された(フラクトオリゴ糖若しくはFOS)、チコリ繊維(イヌリン)、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、穀物の糠、不溶性穀物、若しくはマメ科繊維、難消化性デンプンなど;
並びに/又は
- 多かれ少なかれ精製された形態で添加される、任意の少数元素ビタミン源、ミネラルのポリオール源(マルチトール、グリセロール、ソルビトールなど)若しくは強力な甘味料。
【発明を実施するための形態】
【0036】
従って、本発明は、以下から構成されるミルクビスケットに関する:
- ミルクビスケットの総重量の30~60重量%のタンパク質(そのうち、少なくとも80重量%は乳由来である);
特に、ミルクビスケットの総重量に対するポンデラル(ponderal)なタンパク質含有量は、30~50重量%、30~40重量%、35~50重量%、35~40重量%、40~50重量%、40~45重量%、又は50~60重量%で含まれ得る。好ましくは、この含有量は、30~50重量%、30~40重量%、35~50重量%、又は35~40重量%、より好ましくは30~50重量%、又は30~40重量%で含まれる。そして、タンパク質の総重量に対するポンデラルな乳タンパク質含有量は、好ましい含有量から最も好ましい含有量の順で、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、少なくとも98重量%、又は100重量%である。
- ミルクビスケットの総重量の12~45重量%の単糖類及び/又は二糖類(そのうち、当該単糖類及び/又は二糖類の少なくとも60重量%はラクトースである);
特に、ミルクビスケットの総重量に対する単糖類及び/又は二糖類のポンデラルな含有量は、12~30重量%、20~45重量%、30~45重量%、35~45重量%、20~35重量%、又は20~30重量%で含まれ得る;好ましくは、この含有量は、30~45重量%又は35~45重量%で含まれ、より好ましくは、35~45重量%で含まれる;単糖類及び/又は二糖類の総重量に対するポンデラルなラクトース含有量は、好ましい含有量から最も好ましい含有量の順で、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、少なくとも95重量%、100重量%の中から選択される;
- ミルクビスケットの総重量の1~40重量%である脂質;
特に、ミルクビスケットの総重量に対するポンデラルな脂質含有量は、1~10重量%、1~5重量%、1~2重量%、10~40重量%、10~30重量%、10~25重量%、又は15~25重量%で含まれる;
- ミルクビスケットの総重量の、6重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは4重量%未満、全く好ましくは3重量%以下の水、
で構成される。
【0037】
この実施形態によれば、当該ビスケットは、更に好ましくは以下のとおりである:
- 当該ビスケットは、ミルクビスケットの総重量の少なくとも60重量%である乳由来の原料を含む;
及び/又は
- 当該ビスケットは、0.1~0.6g/cmで含まれる見掛け密度を有する。
【0038】
以下の表は、本発明にかかるミルクビスケットの様々な実施形態の組成を示す。
【表A】
【0039】
一実施形態によれば、本発明にかかるミルクビスケットは、以下を含む、即ち、
- ミルクビスケットの総重量の30~50重量%のタンパク質(そのうち、少なくとも80重量%は乳由来である);
- ミルクビスケットの総重量の12~45重量%の単糖類及び/又は二糖類(そのうち、当該単糖類及び/又は二糖類の少なくとも60重量%はラクトースである);
- ミルクビスケットの総重量の2~40重量%の脂質;
- ミルクビスケットの総重量の6重量%未満の水;
を含んでおり、
当該ビスケットは、(以下のとおりである)
- 当該ビスケットは、ミルクビスケットの総重量の少なくとも60重量%の乳由来の原料を含む;
- 当該ビスケットは、0.1~0.6g/cmで含まれる見掛け密度を有する;並びに
- 当該ビスケットは、アミラーゼ化合物のミルクビスケットの総重量の10重量%未満を含む;並びに
- 当該ビスケットは、ミルクビスケットの総重量の1重量%未満である、ベーキングパウダ及び乳化剤の中から選択される少なくとも1つの添加物を含む。
【0040】
驚くべきことに、主に乳原料から構成されるそのようなレシピは、混練段階と、(生地を薄層に圧延することによる、又はロータリ成形機を用いて生地を成形することによる)生地片形成段階と、次いで生地片を調理することと、最終製品を包装することとを含む、いわゆる圧延及び「ロータリ成形」法などの、従来の経済的なビスケット作製工業方法を実施することで、顕著な膨化を伴うサクサクしたビスケット型の食品製品の調製を可能にする。
【0041】
本発明の方法によれば、本発明にかかるミルクビスケットのレシピは、列挙されたもの(即ち、タンパク質、単糖類及び/又は二糖類、脂質、並びに水)以外の化合物や、ビスケットの製造中に使用されるベーキングパウダ又は乳化剤型である任意の添加物を含まず、特に、このレシピは、以下のものを含まない:即ち、
- アミラーゼ化合物、すなわち、異なる穀粉(コムギ、オートムギ、コメ、メーズ、オオムギなど)、マメ科粉(エンドウマメ、レンズマメ、ヒヨコマメ、ソラマメ、マメなど)、擬穀粉(ソバ、キノア、アマランス)、及び小麦粉中に存在するタンパク質画分の分離後に得られ、任意選択的に物理的、酵素的、若しくは化学的に改変された、マルトデキストリンなどの精製デンプンを含む、少なくとも60%重量のデンプンを含む原材料若しくは原料;
- デンプン含有量を減少させるために、物理的分離処理に供される可能性のある、穀物、マメ科、擬穀物、天然小麦粉、若しくは小麦粉もまた含む、少なくとも60重量%のデンプンを含む、少量のデンプン源;
- 食物繊維源、例として、任意選択的に部分的に加水分解された(フラクトオリゴ糖若しくはFOS(fructooligosaccharide))、チコリ繊維(イヌリン)、難消化性デキストリン、ポリデキストロース、穀物の糠、不溶性穀物、若しくはマメ科繊維、難消化性デンプンなど;
並びに
- ポリオール源(マルチトール、グリセロール、ソルビトールなど)、若しくは強力な甘味料、少数元素ビタミン源、多かれ少なかれ精製された形態で添加されるミネラル、
を含まない。
【0042】
乳由来の原料は、これらがタンパク質、脂質、単糖類及び二糖類、又はカルシウムであるかどうかにかかわらず、全乳、部分的又は完全な脱脂乳、完全又は部分的な脱脂粉乳、乳タンパク質粉末、発酵乳、脂肪材料、クリーム、バター、任意の種類のチーズなどの、乳派生物製品に由来し得る。これらの原料は、タンパク質(アミノ酸のバランスのとれたプロファイルと高い消化率とを有する、参照タンパク質と見なされる)の品質からカルシウムなどのミネラル含有量まで、周知の栄養上の関心がある。
【0043】
当業者は、ミルクビスケットの組成に適合するように、これらの乳派生物製品の栄養組成を考慮する方法を知るであろう。
【0044】
通常、乳由来のタンパク質は、2つのタンパク質ファミリーを含む:
カゼイン、多量の乳タンパク質(80%質量の乳タンパク質)、及び、血清タンパク質(20質量%の乳タンパク質)、主にβ-ラクトグロブリン及びα-ラクトアルブミン。
【0045】
本発明にかかるミルクビスケットはまた、植物由来のタンパク質のような非乳由来のタンパク質と、特に、穀物(小麦、オートムギ、コメ、メーズ、オオムギなど)、擬穀物(キノア、アマランス、ソバ)、マメ科(エンドウマメ、レンズマメ、ヒヨコマメ、ソラマメ、マメなど)、油料種子/タンパク質(ダイズ)、並びに油性物(oleaginous)(セイヨウアブラナ、ヒマワリ、亜麻、ゴマ、チアなどの、乾燥果及び種子)に由来するタンパク質とを含み得る。
【0046】
脂質とは、乳又は植物由来の脂肪、又はそれらの混合物を意味する。植物性脂肪を用いる場合、脂質とは、好ましくは、セイヨウアブラナ、ヒマワリ、油料種子ヒマワリ(oilseed sunflower)、オリーブ油などの油、又はカカオバター、シアバター、ヤシ、ヤシ核、コプラなどの凝結から半凝結した脂肪である。
【0047】
従来、単糖類及び二糖類とは、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、ラクトース、サッカロースなどの単糖、並びに、グルコース、マルトース、フルクトースなどの異なる割合による混合物を含有する、グルコース・フルクトース・シロップである。
【0048】
本発明の範囲において、見掛け密度は、Quantachrome社のAutoTap(商標)装置を用いて充填された条件下で評価される。原理としては、既知のミルクビスケットの塊の体積を測定し、そこから見掛け密度を演繹するものである。これを行うためには、7つのミルクビスケットを正確に秤量し(PE(g))、次いで、砂で覆う。全てを再び秤量し、次いで、円筒形の試験片へと導入し、機械的振動によって「充填」する(n=1000)。この充填段階の最後に、試験片の高さ(V(mL))を読み取ることにより、加えた砂の密度(Ds(kg.m-3))及び添加された砂の分量(PS(g))を把握することで、ミルクビスケットの密度Dを算出することができる:
【0049】
【数1】
【0050】
アミラーゼ化合物とは、少なくとも60重量%のデンプンを含む、任意の原材料又は原料を意味する。デンプンは、様々な割合である2種類の分子(アミロース及びアミロペクチン)から構成される、消化可能な複合炭水化物である。最も一般的なデンプン化合物源は、穀粉、特に小麦である。他の代替物はまた、例として:精製された又は完全な他の穀粉:コメ、メーズ、オートムギ、オオムギ、スペルトコムギ、小スペルトコムギ、ヒトツブコムギ、ライコムギなど;擬穀粉(キノア、アマランス、及びソバ)、又はマメ科粉(エンドウマメ、レンズマメ、マメ、ヒヨコマメ);タンパク質及び繊維画分の分離後に小麦粉から得られた精製デンプン;マルトデキストリンなどの物理的、酵素的、及び/又は化学的処理によって改変された小麦粉及び/又はデンプンを使用する。
【0051】
ベーキングパウダとは、重炭酸アンモニウムなどの物質、又は(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、若しくは炭酸アンモニウム、又は重炭酸塩型の)物質と、弱酸(酒石酸又はピロリン酸ナトリウムの)との混合物として理解される。規制レベルでは、これらのベーキングパウダは、ヨーロッパでは添加物であり、投与率が限られている場合もある:炭酸ナトリウム(E500i、ii、iii)、炭酸カリウム(E501i、ii)、炭酸アンモニウム(E503i、ii)、炭酸マグネシウム(E504i、ii)、グルコノデルタラクトン(E575)、酒石酸(E331)、酒石酸ナトリウム(E335i、ii)、酒石酸カリウム(E336i、ii)、酒石酸ナトリウムカリウム(E337)、二リン酸塩又はピロリン酸塩(E450)、アルミノナトリウム性リン酸塩(alumino-sodic phosphate)(E541)(供給源:SYFAB、Syndicat national des Fabricants de Produits intermediares pour boulangerie、pastisserie et viennoiserie(製パン、製菓、及びヴィエノワズリのための中間体製品の製造業者の国立シンジケート)、
1650518832787_0.aspx?act=122&lid=5&rid=267
)。調理中のガス生産反応に起因して、生地中に組み込まれるベーキングパウダは、調理の最中に、完全に(炭酸アンモニウムの例)又は部分的に(他のベーキングパウダの場合)消失する。本出願の範囲では、ベーキングパウダ含有量は、最終製品中のいわゆるベーキングパウダの残留濃度ではなく、生地に実施された値に対応して任意選択的に使用される。
【0052】
乳化剤とは、食料品に添加されると、油及び水などの2つ以上の非混和相の均質な混合を達成又は維持することを可能にする、界面活性物質として理解される。これらは、レシチン(E322)、並びに脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリドのファミリー(E471)、並びに脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリドのエステル(E472)などの物質である。一例として、E472sのカテゴリでは、モノグリセリド及びジグリセリドの乳酸エステル(E472b)に言及することができ、脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリドのモノアセチル酒石酸エステル及びジアセチル酒石酸エステル(E472e)、並びに脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリドの混合された酢酸エステル及び酒石酸エステル(E472f)を挙げることができる。他に可能性のある乳化剤は、脂肪酸スクロエステル(fatty acid sucroesters)(E473)、スクログリセリド(E474)、脂肪酸ポリグリセリンエステル(fatty acid polyglyceric esters)(E475)、グリコールプロピレンエステル(E477)、ステアロイル-2ナトリウム又は乳酸カルシウム(E481、E482)である。
【0053】
本出願人は、これらの原料(アミラーゼ化合物、デンプン源、マルトデキストリン、食物繊維、ポリオール、ベーキングパウダ、及び乳化剤)が、本発明の実施形態にとって、最適な官能特性を有するミルクビスケットを得るためには必要でないことを観察した。したがって、特に栄養上の理由から、又は添加物を含まない原料の短いリストを得るために、本発明にかかる乳粉末のレシピにこれらを含めることは考慮されない。しかしながら、これらが追加される可能性が本発明の実施に影響を及ぼさないことは明らかである。
【0054】
特定の実施形態によれば、本発明にかかるミルクビスケットは、以下を含有するものである:
- 総タンパク質重量に対して、少なくとも90重量%、95重量%、98重量%、若しくは100重量%の乳由来のタンパク質;並びに/又は
- ミルクビスケットが非乳由来の原料を含有する場合、後者は、好ましくは植物タンパク質、若しくは植物性脂肪、及び/若しくはサッカロース、若しくは他の同等の糖材料、及び/若しくは食物繊維によって表される;並びに/又は
- ミルクビスケットの総重量の20~85重量%、好ましくは35重量%~75重量%、より好ましくは40~65重量%の全乳若しくは脱脂粉乳;並びに/又は
- 0.1~0.4g/cm;0.12~0.4g/cm;0.15~0.4g/cm、好ましくは0.1~0.35g/cm、若しくは0.15~0.35g/cmで含まれる見掛け密度を有する;並びに/又は
- ミルクビスケットの総重量の0.8~1.6重量%若しくは0.8~1.3重量%のカルシウム;並びに/又は
- ミルクビスケットの総重量の5重量%未満、好ましくは3重量%未満、更に好ましくは1重量%未満のアミラーゼ化合物、若しくは他の化合物(いかなるアミラーゼ化合物をも含まない);並びに/又は
- ミルクビスケットの総重量の0.5重量%未満、好ましくは0.3重量%未満、若しくは0.1重量%未満である、ベーキングパウダ及び乳化剤の中から選択される少なくとも1つの添加物。
【0055】
別の特定の実施形態によれば、本発明にかかるミルクビスケットは、以下のとおりである:当該単糖類及び/又は二糖類は、ミルクビスケットの総重量の12重量%~40重量%又は12重量%~30重量%の分量で存在するラクトースである;並びに、当該脂質は、乳由来である。
【0056】
特定の実施形態によれば、本発明にかかるミルクビスケットは、ベーキングパウダ及び乳化剤の中から選択されるいかなる添加物をも含まない;好ましくは、本発明にかかるミルクビスケットは、ベーキングパウダも乳化剤も含まない。これら2つの先行する実施形態のうち1つによれば、本発明にかかるミルクビスケットは、以下の中から選択される、いかなる食品添加物をも更に含まない:ゲル化剤(食料品に添加すると、ゲルを形成することにより食料品に粘稠度を与える物質)、増粘剤(食料品に添加すると、食料品の粘度を増加させる物質)、安定剤(食料品に添加すると、食料品の物理化学的状態の維持を可能にする物質)、湿潤剤(低大気湿度の影響を補うことによって食料品の乾燥を防止する、又は水性媒体への粉末の溶解を促進する物質)、封鎖剤(金属イオンと化学錯体を形成する物質)、及び溶融塩(チーズに含有されるタンパク質を分散させ、それによって、脂肪及び他の成分の均質な分布をもたらす物質)。問題の物質の中でも、異なるカラギーナン(イオタ、ラムダ、カッパ)に言及することができ、ガラクトマンナン(グアーガム、イナゴマメ、コロハ、タラ)、キサンタンガム、ペクチン、加工デンプン、ポリオールなどを挙げることができる。
【0057】
特定の実施形態によれば、本発明にかかるミルクビスケットは、以下のものから構成される:
- ミルクビスケットの総重量の30~50重量%のタンパク質(そのうち、少なくとも80重量%は乳由来である);
- ミルクビスケットの総重量の12~45重量%の単糖類及び/又は二糖類(そのうち、当該単糖類及び/又は二糖類の少なくとも60重量%はラクトースである);
- ミルクビスケットの総重量の2~40重量%の脂質;
- ミルクビスケットの総重量の0.8~1.3重量%のカルシウム;
- ミルクビスケットの総重量の6重量%未満の水;
から構成されており、
当該ビスケットは、以下のとおりである:
- 当該ビスケットは、ミルクビスケットの総重量の少なくとも60重量%の乳由来の原料を含む;および、
- 当該ビスケットは、0.1~0.6g/cmで含まれる見掛け密度を有する。
【0058】
有利には、高含有量の乳原料は、本発明にかかるビスケットの構造及び食感を損なわない。反対に、本出願人は、完全に又は部分的にくり抜かれた中空構造からなる様々な構造を有するビスケットを調製すること、すなわち、ビスケットの内部が、1つの単一の空洞又はいくつかの広い空洞から構成され、多数のより大きな又はより小さな空洞が互いに連通していないビスケット(泡のような食感)の調製を達成した。
【0059】
驚くべきことに、ミルクビスケット調製は、ビスケット部門で従来実施されている工業的方法のいかなる有意な適応も必要としない。これは、本発明のミルクビスケットを生産するための新規設備に投資する必要がないため、経済的に非常に有利であることが証明されている。
【0060】
この結果は、ロータリ成形機によって膨張した製品の入手はビスケット製造業者にとって確かではないため、予想外である。実際、この種の方法では、生地は砂状かつ不連続な構造を有し、すなわち、生地は、加工可能な連続構造を形成しない、ある状態における、可変サイズの独立した粒子から構成される粒状材料の形態で提供される。したがって、連続的な生地片を得るためには、打ち出されたシリンダ内でこれらの加圧粒子を強く圧縮する必要があるが、しかしながら、生地片は脆く、かつあまり粘着性ではないままとなる。形成後、生地片をベルト上に回収し、切断又は他の加工などのいかなる追加の加工もせずに、オーブン内へと直接送る。ロータリ成形機内での強い圧縮は生地を高密度(典型的には、少なくとも1.1g/cmに等しい)にし、これにより、オーブン内での製品の開発が不利になる。その上、砂状生地の場合に添加される水の分量は限られており、したがって、水の気化では、製品の発酵を生じさせるのに充分ではない。したがって、ビスケット作製で従来使用されている技術的解決策は、調理中に製品を膨張させるために、時には有意な分量(生地の最大1重量%)のベーキングパウダを用いることからなる。本発明の場合、たとえ発酵剤を用いずとも、生地の砂質の不連続構造及びロータリ成形機内での強い圧縮にもかかわらず、膨張は全て同じに観察される。
【0061】
加えて、常に驚くべきことに、本発明の方法では、成形によって圧縮された生地は、調理に対し中空シェルをある特定の条件下において生成し、これは、概して穀物調理製品(比較的均質なマルチハニカム内部構造を有する)では観察されない。
【0062】
他には押出、ブローイング、ポッピング、真空膨張型膨張技術があるが、これらはいずれも中空シェルの獲得にはつながらない。一方で、既知のシェルを得るための技術は、常温成形(チョコレート、冷間成形型)又は加熱成形(ワッフル型)であるが、これらの技術はいずれも本発明の乳又はチーズ組成物に適用されない。加えて、概して、成形技術は、第1の半シェル成形段階を必要とし、次いでこれを組み立てて最終シェルを作成する。本発明の場合、シェルは1つの単一工程で作製される。
【0063】
最後に、ミルクビスケットのラクトース高含有量は、水へのこの糖の溶解性の低さに起因して、有利ではない。ビスケット製造業者は、糖の溶解を確実に実施したい場合、高い溶解性(ラクトースの10倍)を有するサッカロース、更には転化糖シロップ又はグルコース・フルクトース・シロップを伝統的に使用する。したがって、有意な分量のラクトースの使用は、当業者の経験と明らかに反する。
【0064】
したがって、本発明はまた、上記のようなミルクビスケットを調製する方法に関し、特に、以下の工程を含む:
a- 生地を得るために原料を混合する工程(任意選択的に、生地の調製からその形成前までの待ち時間を適用);
b- 生地を形成する工程;
c- 生地を切断する工程;
d- 任意選択的に、切断生地を予備乾燥させる工程(例えば、50~70℃、5~10%HRの制御された温度及び湿度であるチャンバ内における予備乾燥);
e- オーブン調理する工程;
f- 場合により、目標湿度に達するまで乾燥させる工程;
g- 任意選択的に、表面に混在物を添加する工程、該表面に噴霧する工程、例えば溶かしたチョコレート又は類似するチョコレートなどの別の流体に浸す工程。
【0065】
「類似する」チョコレートとは、チョコレートに類似しているが、カカオバターが植物又は動物由来の他の脂肪で置き換えられている、製品を意味する。
【0066】
生地の成形及び切断は、ビスケット作製部門の通常設備を用いて行われ、当業者に知られている。いくつかのツールは、生地の外観及び一貫性に応じて、それ自体は配合物及び水和レベル(混練中に加えられる水の分量)に応じて、可能である。
* 砂状の非連続生地(個々の粒子は、生地片を切断することができるいかなる連続的なネットワークも形成しない)の場合、成形はロータリ成形機によって実行可能。
* 延伸、圧縮、及び切断することができた連続生地の場合、成形は、生地が充分にしっかりしている場合は薄層に圧延し、次いで回転切断するか、又は生地がより柔軟である場合は体積測定シリンダ内で圧縮し、ワイヤカッタ若しくは絞り(iris)を用いて切断することによって、行うことができる。後者の場合、共押出の使用も可能であり、これにより、組成物の内側に配置された素材(又は別の生地)及びこれを、同心円状に有することが可能となる。本発明にかかる組成物は、共押出製品の内生地又は外生地であり得る。
【0067】
本発明にかかる方法によって得られたミルクビスケットは、当然、その保存及びその輸送のために包装することができる。
【実施例
【0068】
本発明に従うミルクビスケットを調製した例(実施例1~8)
【0069】
1.タイプIの配合物:
原料:全乳(35%)、脱脂粉乳(29%)、植物性脂肪(14%)、乳タンパク質粉末(12%)、糖(10%)。
【0070】
栄養組成:
【表1】
【0071】
製品の特徴づけ: ミルク味を伴う、中空空洞、サクサクした、及び分散した形態で膨化された製品。0.17g/cmの測定プロトコルによる見掛け密度。最終製品中の乾燥脱脂乳及び全乳粉末の含有量は、46%(それぞれ、40%及び6%)である。
【0072】
2.タイプIIの配合物:
原料:パルメザンチーズ(40%)、脱脂粉乳(26.5%)、水(22.7%)、乳タンパク質粉末(10%)、塩(0.8%)。
【0073】
栄養組成:
【表2】
【0074】
製品の特徴づけ: 削ったパルメザンチーズ味を伴う、中空空洞、サクサクした、及び分散した形態で膨化された製品。0.15g/cmの測定プロトコルによる見掛け密度。最終製品は36%の脱脂粉乳を含有する。
【0075】
3.タイプIIIの配合物:
原料:脱脂粉乳(60%)、水(28%)、植物性脂肪(10%)、乳タンパク質粉末(2%)。
【0076】
栄養組成:
【表3】
【0077】
製品の特徴づけ: この製品は、前述の実施例の中空シェルとは異なるマルチハニカム内部構造を有し、砂糖のようなベイクドミルクの味を有する。
0.38g/cmの測定プロトコルによる見掛け密度。最終製品は80%の脱脂粉乳を含有する。
【0078】
4.タイプIVの配合物:
原料:脱脂粉乳(46%)、水(20%)、植物性脂肪(12%)、糖(10%)、乳タンパク質粉末(7%)、グルテン(5%)。
【0079】
栄養組成:
【表4】
【0080】
製品の特徴づけ: 中空空洞、サクサクした、及び分散した形態で膨化された製品。
0.18g/cmの測定プロトコルによる見掛け密度。最終製品は55%の脱脂粉乳を含有する。
【0081】
5.タイプVの配合物:
原料:脱脂粉乳(30%)、水(28%)、乳タンパク質粉末(12%)、植物性脂肪(12%)、糖(10%)、メーズデンプン(6%)。
【0082】
栄養組成:
【表5】
【0083】
製品の特徴づけ: 中空空洞、サクサクした、及び分散した形態で膨化された製品。
0.18g/cmの測定プロトコルによる見掛け密度。最終製品は40%の脱脂粉乳を含有する。
【0084】
6.タイプVIの配合物:
原料:脱脂粉乳(41%)、全乳(30%)、バター(16%)、乳タンパク質粉末(13%)。
【0085】
栄養組成:
【表6】
【0086】
製品の特徴づけ: 中空空洞、サクサクした、及び分散した形態で膨化された製品。
0.2g/cmの測定プロトコルによる見掛け密度。最終製品は60%の脱脂粉乳を含む乳原料のみを含有する。
【0087】
7.タイプVIIの配合物:
原料:水(40%)、脱脂粉乳(33.3%)、乳タンパク質粉末(26.7%)。
【0088】
栄養組成:
【表7】
【0089】
製品の特徴づけ:中空空洞、サクサクした、及び分散した形態で極めて膨化された製品。0.12g/cmの測定プロトコルによる見掛け密度。最終製品は54%の脱脂粉乳を含む乳原料のみを含有する。これは添加脂肪を含有していない。
【0090】
8.タイプVIIIの配合物:
原料:脱脂粉乳(46%)、水(30%)、乳タンパク質粉末(10%)、バター(10%)、FOS(7%)。
【0091】
栄養組成:
【表8】
【0092】
製品の特徴づけ:中空空洞、サクサクした、及び分散した形態で膨化された製品。
0.26g/cmの測定プロトコルによる見掛け密度。最終製品は62%の脱脂粉乳を含有する。
【0093】
実施例1(タイプI)~実施例8(タイプVIII)に係るビスケットの組成の概要
【表B】