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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/275 20180101AFI20241225BHJP
   F21S 41/26 20180101ALI20241225BHJP
   F21S 41/143 20180101ALI20241225BHJP
   F21V 5/00 20180101ALI20241225BHJP
   F21W 102/155 20180101ALN20241225BHJP
【FI】
F21S41/275
F21S41/26
F21S41/143
F21V5/00 320
F21V5/00 610
F21W102:155
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2022539473
(86)(22)【出願日】2021-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2021027667
(87)【国際公開番号】W WO2022025031
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2024-05-02
(31)【優先権主張番号】P 2020131173
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020131174
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020131175
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020131176
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020131177
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100143764
【弁理士】
【氏名又は名称】森村 靖男
(72)【発明者】
【氏名】本橋 和也
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537804(JP,A)
【文献】特開2019-086765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/275
F21S 41/26
F21S 41/143
F21V 5/00
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
前記光源部から出射する光の最長波長より小さいナノ構造体を含む複数のセルが配列され前記光源部から出射する前記光が透過するメタ領域を有するメタレンズと、
を備え、
前記メタ領域は、当該メタ領域を透過する前記光の位相分布を変化させ
前記メタレンズにおける前記光源部からの前記光が入射する入射面は、外側に向かって凸状に湾曲して前記光の発散角が小さくなるように当該光を屈折し、
前記入射面に入射した前記光は、前記メタ領域を透過する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
光透過性を有し前記メタ領域を覆う保護部材を更に備える
ことを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記保護部材は、前記メタレンズの屈折率より低い屈折率を有し、それぞれの前記ナノ構造体の間を埋めている
ことを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項4】
光源部と、
前記光源部から出射する光の最長波長より小さいナノ構造体を含む複数のセルが配列され前記光源部から出射する前記光が透過するメタ領域を有するメタレンズと、
を備え、
前記メタ領域は、当該メタ領域を透過する前記光の位相分布を変化させ、当該メタ領域における特定の位置において当該メタ領域と直交する基準軸と平行な参照光が当該メタ領域に入射する場合に、前記メタレンズから出射する前記参照光の位相分布が所定の位相分布を2πで割った余りからなる特定の位相分布となるように、前記参照光の位相分布を変化させ、
前記所定の位相分布は、前記基準軸から離れるに従い位相の遅れ量(rad)が減少するとともに当該位相の遅れ量の減少率が増加する位相分布であり、
前記特定の位相分布は、複数のピークを有し、
前記基準軸に沿って見る場合に、前記特定の位置から離れる方向において互いに隣り合う前記ピーク間に2つ以上の前記セルが位置するように、前記複数のセルが配列される
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項5】
前記特定の位相分布は、3つ以上の前記ピークを有し、
前記ピーク間に位置する前記セルの数は、前記特定の位置から離れるに従い少なくなる
ことを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項6】
前記ナノ構造体の形状は、円柱形状であり、
前記ピーク間に位置する前記セルの数は、3つ以上である
ことを特徴とする請求項またはに記載の車両用灯具。
【請求項7】
前記メタ領域の最小の幅は、10mm以上である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項8】
光源部と、
前記光源部から出射する光の最長波長より小さいナノ構造体を含む複数のセルが配列され前記光源部から出射する前記光が透過するメタ領域を有するメタレンズと、
を備え、
前記メタ領域は、コマ収差が発生するように前記メタ領域を透過する前記光の位相分布を変化させ、前記コマ収差が発生しない場合に比べて前記メタ領域を透過する前記光の発散角を前記光によって形成される配光パターンの左右方向に広げる
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項10】
前記メタ領域は、前記コマ収差によって左方向へ広がる前記発散角の広がり量と前記コマ収差によって右方向へ広がる前記発散角の広がり量との一方を他方よりも大きくする
ことを特徴とする請求項に記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記メタ領域は、前記コマ収差が発生しない場合に比べて前記メタ領域を透過する前記光の発散角を前記光によって形成される配光パターンの上下方向に広げる
ことを特徴とする請求項から10のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項12】
前記メタ領域は、前記コマ収差によって左右方向へ広がる前記発散角の広がり量を前記コマ収差によって上下方向へ広がる前記発散角の広がり量よりも大きくする
ことを特徴とする請求項11に記載の車両用灯具。
【請求項13】
光源部と、
前記光源部から出射する光の最長波長より小さいナノ構造体を含む複数のセルが配列され前記光源部から出射する前記光が透過するメタ領域を有するメタレンズと、
を備え、
前記メタ領域は、当該メタ領域を透過する前記光の位相分布を変化させ、前記メタ領域を透過する前記光に含まれる可視光を屈曲する前記メタ領域の屈曲力よりも前記メタ領域を透過する前記光に含まれる赤外光を屈曲する前記メタ領域の屈曲力を小さくする
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項14】
前記メタ領域は、波長の比が1:1.5である前記可視光及び前記赤外光において、前記赤外光の位相変調量が前記可視光の位相変調量の0.6倍未満となるように、構成される
ことを特徴とする請求項13に記載の車両用灯具。
【請求項15】
前記可視光の最長波長は、660nmであり、
前記赤外光の最短波長は、1000nmである
ことを特徴とする請求項13または14に記載の車両用灯具。
【請求項16】
前記ナノ構造体の形状は、円柱形状である
ことを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項17】
光源部と、
前記光源部から出射する光の最長波長より小さいナノ構造体を含む複数のセルが配列され前記光源部から出射する前記光が透過するメタ領域を有するメタレンズと、
を備え、
前記メタ領域は、当該メタ領域を透過する前記光の位相分布を変化させ
前記メタレンズにおける少なくとも1つの共鳴波長は、800nm以上2400nm未満である
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項18】
前記少なくとも1つの共鳴波長は、800nm以上900nm未満の範囲に含まれる
ことを特徴とする請求項17に記載の車両用灯具。
【請求項19】
前記光源部から出射する前記光の分光分布は、複数のピークを有し、
複数の前記共鳴波長は、複数の前記ピークのそれぞれの波長と異なる
ことを特徴とする請求項17または18に記載の車両用灯具。
【請求項20】
複数の前記共鳴波長の全ては、前記光源部から出射する前記光の波長帯域に含まれない
ことを特徴とする請求項19に記載の車両用灯具。
【請求項21】
前記メタレンズは、当該メタレンズを透過する前記光源部からの前記光の発散角を小さくする
ことを特徴とする請求項17から20のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項22】
光源部と、
前記光源部から出射する光の最長波長より小さいナノ構造体を含む複数のセルが配列され前記光源部から出射する前記光が透過するメタ領域を有するメタレンズと、
を備え、
前記メタ領域は、当該メタ領域を透過する前記光の位相分布を変化させ
前記光源部から出射する前記光の分光分布は、複数のピークを有し、
前記メタレンズにおける複数の共鳴波長は、複数の前記ピークのそれぞれの波長と異なる
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項23】
前記複数の共鳴波長の少なくとも1つは、複数の前記ピークのそれぞれの波長のうち最短の波長を超えかつ最長の波長未満である
ことを特徴とする請求項22に記載の車両用灯具。
【請求項24】
互いに隣り合う前記ピーク間において強度が最小である前記光の波長と、前記複数の共鳴波長の前記少なくとも1つとが同じである
ことを特徴とする請求項23に記載の車両用灯具。
【請求項25】
前記複数の共鳴波長は、前記光源部からの前記光の波長帯域に含まれる特定の共鳴波長を含み、
前記光の分光分布の全体における最大の強度に対する前記光における前記特定の共鳴波長の光の強度の比は、0.1以下である
ことを特徴とする請求項22から24のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ヘッドライトに代表される車両用灯具として、光源部から出射する光が透過する投影レンズを備えるものが知られており、例えば、下記特許文献1にはこのような車両用灯具が開示されている。
【0003】
下記特許文献1の車両用灯具では、光源部から出射して投影レンズに入射する光は、発散角が調節され、車両の前方に照射される。
【0004】
また、例えば下記特許文献2には、配光パターンを広げる車両用灯具が開示されている。この車両用灯具において、投影レンズの周辺部の前方近傍に、付加レンズが配置されている。付加レンズは、投影レンズを透過した光を光軸から水平方向に離れる方向に偏向させている。これにより、車両用灯具から外部に投影される配光パターンは、付加レンズが配置されていない場合に車両用灯具から外部に投影される配光パターンの左右両端が左右両側へ広がった配光パターンとなり、付加レンズが配置されていない場合の配光パターンに比べて広がる。
【0005】
また、光源部がLED(Light Emitting Diode)等の半導体発光素子を含む発光モジュールからなる車両用灯具も知られている。また、このような発光モジュールから出射する光を所望の色にするために様々な構成が検討されている。例えば、下記特許文献3には、LEDと、当該LEDから出射する光の一部が照射されて当該光と異なる波長の光を出射する蛍光体と、を備える発光モジュールが開示されている。この発光モジュールでは、蛍光体から出射する光とLEDから出射する光の他の一部とが合波され、LEDから出射する光の色と異なる色の光が出射する。また、この発光モジュールから出射する光の分光分布には2つのピークが含まれ、一方のピークにおける波長はLEDから出射する光のピーク波長と概ね同じであり、他方のピークにおける波長は蛍光体から出射する光のピーク波長と概ね同じである。
【0006】
【文献】特開2012-169189号公報
【文献】特開2007-35467号公報
【文献】特開平10-242513号公報
【発明の概要】
【0007】
上記特許文献1のような車両用灯具では、出射する光の配光パターンの大きさを所望の大きさにし易い。ところで、車両のデザインの多様化等により、車両用灯具に対して小型化の要望がある。
【0008】
そこで、本発明は、小型化し得る車両用灯具を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的の達成のため、本発明の車両用灯具は、光源部と、前記光源部から出射する光の最長波長より小さいナノ構造体を含む複数のセルが配列され前記光源部から出射する前記光が透過するメタ領域を有するメタレンズと、を備え、前記メタ領域は、当該メタ領域を透過する前記光の位相分布を変化させることを特徴とするものである。
【0010】
車両用灯具における投影レンズでは、一般的に入射面及び出射面の少なくとも一方が湾曲する面であり、この湾曲する面の形状を調節することで光源部から出射する光の発散角を調節している。このため、このような投影レンズでは、当該湾曲する面を形成するためにある程度の厚さが必要となる。一方、この車両用灯具におけるメタレンズは、複数のセルの配置やそれぞれのセルにおけるナノ構造体の大きさ等を調節することで、光源部からの光の位相分布を変化させて、当該光の発散角を調節できる。このため、このメタレンズは、上記のメタ領域の曲率を上記の投影レンズの曲面の曲率より小さくしても光源部からの光の発散角を調節でき、上記の投影レンズより薄くできる。このため、この車両用灯具によれば、上記の投影レンズによって光源部からの光の発散角を調節する場合と比べて、小型化できる。
【0011】
前記メタレンズにおける前記光源部からの前記光が入射する入射面は、外側に向かって凸状に湾曲して前記光の発散角が小さくなるように当該光を屈折し、前記入射面に入射した前記光は、前記メタ領域を透過することとしてもよい。
【0012】
一般的にメタ領域に入射する光の発散角が大きくなると、メタ領域の設計が複雑になる傾向にある。この車両用灯具におけるメタレンズでは、光源部からの光は、湾曲した入射面によって発散角が小さくされた後に、メタ領域に入射する。このため、例えば、メタレンズによって光源部からの光の発散角を小さくして所定の発散角にするとき、光源部からの光が入射する入射面が平面である場合と比べて、メタ領域に入射する光の発散角を小さくできる。従って、この車両用灯具によれば、メタ領域の設計が複雑になることを抑制し得、光源部からの光の発散角を小さくするときに特に有用である。
【0013】
或いは、前記メタレンズにおける前記光源部からの前記光が入射する入射面は、複数の溝が設けられ前記光の発散角が小さくなるように当該光を回折し、前記入射面に入射した前記光は、前記メタ領域を透過することとしてもよい。
【0014】
この車両用灯具におけるメタレンズでは、光源部からの光は、入射面によって発散角が小さくされた後に、メタ領域に入射する。このため、例えば、メタレンズによって光源部からの光の発散角を小さくして所定の発散角にするとき、光源部からの光が入射する入射面が平面である場合と比べて、メタ領域に入射する光の発散角を小さくし得る。従って、この車両用灯具によれば、メタ領域の設計が複雑になることを抑制し得、光源部からの光の発散角を小さくするときに特に有用である。
【0015】
上記の車両用灯具は、光透過性を有し前記メタ領域を覆う保護部材を更に備えることとしてもよい。
【0016】
このような構成にすることで、それぞれのナノ構造体の間に埃等が入りこんだり、ナノ構造体に埃等が付着したり、ナノ構造体に傷がつくことを抑制でき、光源部からの光の発散角を適切に調節し得る。
【0017】
この場合、前記保護部材は、前記メタレンズの屈折率より低い屈折率を有し、それぞれの前記ナノ構造体の間を埋めていることとしてもよい。
【0018】
前記メタ領域は、当該メタ領域における特定の位置において当該メタ領域と直交する基準軸と平行な参照光が当該メタ領域に入射する場合に、前記メタレンズから出射する前記参照光の位相分布が所定の位相分布を2πで割った余りからなる特定の位相分布となるように、前記参照光の位相分布を変化させ、前記所定の位相分布は、前記基準軸から離れるに従い位相の遅れ量(rad)が減少するとともに当該位相の遅れ量の減少率が増加する位相分布であり、前記特定の位相分布は、複数のピークを有し、前記基準軸に沿って見る場合に、前記特定の位置から離れる方向において互いに隣り合う前記ピーク間に2つ以上の前記セルが位置するように、前記複数のセルが配列されることとしてもよい。
【0019】
上記の参照光の位相分布が上記の所定の位相分布となるようにメタ領域が構成されることで、メタ領域を透過してメタレンズから出射する光の発散角を小さくできる。ここで、2πの整数倍だけ光の位相が遅れる場合、当該光の波面は位相が遅れていない光の波面と同じであるとみなすことができる。このため、上記の参照光の位相分布が上記の特定の位相分布となるようにメタ領域が構成されても、発散角を小さくできる。このため、この車両用灯具は、メタレンズによって光源部からの光の発散角を小さくできる。また、上記のように、特定の位相分布は、特定の位置からメタ領域に沿って離れるに従い位相の遅れ量と当該位相の遅れ量の増加率とが増加する所定の位相分布を、2πで割った余りからなり、複数のピークを有する。このため、特定の位相分布における位相の遅れ量は、特定の位置から離れるに従いゼロから増加して2πに限りなく近づきゼロとなる変化を周期的に繰り返す。上記の変化の1周期に対して配置されるセルの数が少ないほど、メタ領域によって変化された位相分布と特定の位相分布とのずれが大きくなり、メタ領域に入射する光のエネルギーに対する特定の位相分布に応じた発散角でメタ領域から出射する光のエネルギーの割合が低くなる傾向にある。この車両用灯具では、この変化の1周期に対して2つ以上のセルが配置される。このようにセルが配置されることで、メタレンズによる光のエネルギーのロスを車両用灯具におけるレンズに好適に使用できる程度に小さくし易くできる。
【0020】
上記のように複数のセルが配列される場合、前記特定の位相分布は、3つ以上のピークを有し、前記ピーク間に位置する前記セルの数は、前記特定の位置から離れるに従い少なくなることとしてもよい。
【0021】
また、上記のように複数のセルが配列される場合、前記ナノ構造体の形状が円柱形状であり、前記ピーク間に位置する前記セルの数は、3つ以上であることが好ましい。発明者はこのような構成にすることでメタ領域に入射する光のエネルギーに対する特定の位相分布に応じた発散角でメタ領域から出射する光のエネルギーの割合を60%以上にし得ることを見出した。
【0022】
前記メタ領域の最小の幅は、10mm以上であることとしてもよい。
【0023】
一般的にレンズを大きくすることで当該レンズから出射する光の量を多くし易くなる。上記のような構成にすることで、メタレンズから出射する光の配光パターンを、車両用前照灯から出射する光の配光パターンとして必要な明るさにし易くできる。なお、車両用前照灯から出射する光の配光パターンとして、例えば、ロービームやハイビームの配光パターンが挙げられる。
【0024】
また、前記メタ領域は、コマ収差が発生するように前記メタ領域を透過する前記光の位相分布を変化させ、前記コマ収差が発生しない場合に比べて前記メタ領域を透過する前記光の発散角を前記光によって形成される配光パターンの左右方向に広げることとしてもよい。
【0025】
コマ収差とは、像面における点像が一点に結像せず、彗星状の尾を引くように広がって結像する収差である。像面において光は、コマ収差によって、点像から点像の周囲に放射状に拡散するのではなく、点像からある方向に伸びる。これにより、光の発散角がコマ収差によって広がると理解できる。メタレンズでは、コマ収差が発生しない場合であっても、複数のセルの配置やそれぞれのセルにおけるナノ構造体の大きさや形状等を調節することで光の発散角が広がり得る。しかしながら、本発明のメタ領域では、コマ収差が発生しない場合において広がった発散角と同じ発散角であっても、コマ収差による光の上記の伸びによって発散角を左右方向にさらに広げることができる。従って、コマ収差が発生せずに光の発散角を広げたメタレンズから投影される配光パターンよりも、配光パターンは左右方向にさらに広がり得る。
【0026】
また、一般的に、湾曲する面を備える前述のような投影レンズはコマ収差が抑制されるように設計されている。このため、投影レンズを用いる場合、光源部からの光の発散角の広がりが抑制され、車両用灯具の外部に投影される配光パターンの広がりが抑制される。これに対して、投影レンズとして構成されるメタレンズのメタ領域では、コマ収差によって発散角が広がるため、配光パターンは投影レンズから投影される配光パターンよりも広がり得る。
【0027】
また、メタ領域が、コマ収差が発生するようにメタ領域を透過する光の位相分布を変化させる場合、前記メタ領域は、前記コマ収差によって左方向へ広がる前記発散角の広がり量と、前記コマ収差によって右方向へ広がる前記発散角の広がり量とを同じにしてもよい。このような構成にすることで、配光パターンの右端と左端とのそれぞれの広がり量が同じとなり得、広がり量が同じにならない場合に比べてメタレンズの設計が容易になり得る。
【0028】
或いは、前記メタ領域は、前記コマ収差によって左方向へ広がる前記発散角の広がり量と前記コマ収差によって右方向へ広がる前記発散角の広がり量との一方を他方よりも大きくしてもよい。このような構成にすることで、配光パターンの右端の広がり量及び配光パターンの左端の広がり量の一方が他方よりも多くなり、車両の運転者は配光パターンが広がった側に位置する対象物を一層視認し易くなり得る。
【0029】
また、メタ領域が、コマ収差が発生するようにメタ領域を透過する光の位相分布を変化させる場合、前記メタ領域は、前記コマ収差が発生しない場合に比べて前記メタ領域を透過する前記光の発散角を前記光によって形成される配光パターンの上下方向に広げてもよい。このような構成にすることで、車両の運転者は、案内標識や路面等の対象物を視認し易くなり得る。
【0030】
また、メタ領域が、コマ収差が発生するようにメタ領域を透過する光の位相分布を変化させる場合、前記メタ領域は、前記コマ収差によって左右方向へ広がる前記発散角の広がり量を前記コマ収差によって上下方向へ広がる前記発散角の広がり量よりも大きくしてもよい。このような構成にすることで、メタレンズを透過する光の光量が変わることなく配光パターンが上下方向よりも左右方向に多く広がり、運転者の視界の広がりは当該配光パターンによって上下方向よりも左右方向に確保され得る。
【0031】
また、前記メタ領域は、前記メタ領域を透過する前記光に含まれる可視光を屈曲する前記メタ領域の屈曲力よりも前記メタ領域を透過する前記光に含まれる赤外光を屈曲する前記メタ領域の屈曲力を小さくすることとしてもよい。
【0032】
前述のように、メタ領域はメタ領域を透過する光の位相分布を変化させる。この位相分布は、複数のセルの配置やそれぞれのセルにおけるナノ構造体の大きさや形状等に応じて変化する。このため、メタ領域は、これらを調節することで、メタ領域を透過する光の位相分布を変化させ、光に含まれる可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力よりもメタ領域を透過する光に含まれる赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力を小さくする。屈曲力とは、メタ領域がメタ領域を透過する光を曲げる力を示す。屈曲力が小さいほど、メタ領域を透過する光の曲がり角が小さくなり、光の集束が抑制される。従って、例えば太陽光が車両用灯具の外部から車両用灯具の内部に入射しても、この車両用灯具では、太陽光に含まれる赤外光の曲がり角は上記の屈曲力によって太陽光に含まれる可視光の曲がり角よりも小さくなる。このため、この車両用灯具によれば、投影レンズに比べて、メタ領域はメタレンズから光源部に進行する赤外光の集光を抑制し得る。赤外光の集光が抑制されると、投影レンズに比べて、赤外光の集光による光源部の劣化が抑制され得る。
【0033】
また、可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力より赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力が小さい場合、前記メタ領域は、波長の比が1:1.5である前記可視光及び前記赤外光において、前記赤外光の位相変調量は前記可視光の位相変調量の0.6倍未満となるように、構成されてもよい。
【0034】
例えばアクリルからなる屈折レンズにおいて、可視光を屈曲する屈折レンズの屈曲力を1とすると、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力は概ね0.98となる。また、例えばポリカーボネートからなる屈折レンズにおいて、可視光を屈曲する屈折レンズの屈曲力を1とすると、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力は、概ね0.98となる。従って、アクリルであってもポリカーボネートであっても、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力は可視光を屈曲する屈折レンズの屈曲力の概ね0.98倍となる。この場合、屈折レンズは赤外光を集光し易くしてしまう。メタ領域の屈曲力は、メタ領域を透過する光の位相変調量と当該光の波長との積の値に概ね比例する。この車両用灯具では、波長の比が1:1.5である可視光及び赤外光において、赤外光の位相変調量が可視光の位相変調量の0.6倍未満となることによって、赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力は可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力の0.9倍未満となる。赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力と赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力とを可視光を屈曲するそれぞれの屈曲力を基準に比較すると、赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力は赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力よりも小さくなる。従って、この車両用灯具では、屈折レンズよりも赤外光の集光を抑制し得る。
【0035】
また、可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力より赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力が小さい場合、前記可視光の最長波長は、660nmであり、前記赤外光の最短波長は、1000nmであってもよい。
【0036】
また、可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力より赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力が小さい場合、前記ナノ構造体の形状は、円柱形状であってもよい。このような構成にすることで、光源部からの可視光がランダム偏光であっても、当該可視光が効率的に屈曲し得る。
【0037】
また、前記メタレンズにおける少なくとも1つの共鳴波長は、800nm以上2400nm未満であることとしてもよい。
【0038】
メタレンズでは、特定の波長の光の透過率が他の波長の光の透過率よりも極端に低くなる現象が生じる場合があり、この特定の波長は一般的に複数あることが知られている。これら特定の波長は、メタレンズにおける光の不透過率がピークとなる波長であり、共鳴波長と呼ばれる。これら共鳴波長は、それぞれのセルにおけるナノ構造体の大きさや形状、当該ナノ構造体を構成する材料の屈折率等に応じて決まる。この車両用灯具では、上記のように、メタレンズにおける少なくとも1つの共鳴波長は、800nm以上2400nm未満である。一般的に地表近くにおける太陽光には、800nmから2400nmの波長帯域の光が含まれる。このため、この車両用灯具によれば、太陽光がメタレンズを透過して光源部に照射されるとき、メタレンズが投影レンズとされる場合と比べて、太陽光のうち800nmから2400nmの波長の光の光源部への照射量を低減できる。従って、この車両用灯具によれば、メタレンズが投影レンズとされる場合と比べて、太陽光による光源部の加熱量を少なくし得、太陽光による光源部の劣化を抑制し得る。
【0039】
また、メタレンズにおける少なくとも1つの共鳴波長が、800nm以上2400nm未満である場合、前記少なくとも1つの共鳴波長は、800nm以上900nm未満の範囲に含まれることとしてもよい。
【0040】
一般的に地表近くにおける太陽光の強度は、800nm以上の波長帯域において、波長が長くなるに従い小さくなる傾向にある。なお、太陽光の分光分布は、強度が急激に小さくなる谷を複数有する。この谷における最小の強度は、例えば、当該谷の近傍における強度の50%以下である。このような谷は800nm以上900nm未満の範囲に位置しない傾向にある。このため、上記のような構成にすることで、太陽光がメタレンズを透過して光源部に照射されるときの太陽光による光源部の加熱量を少なくし易い。
【0041】
また、メタレンズにおける少なくとも1つの共鳴波長が、800nm以上2400nm未満である場合、前記光源部から出射する前記光の分光分布は、複数のピークを有し、複数の前記共鳴波長は、複数の前記ピークのそれぞれの波長と異なることとしてもよい。
【0042】
上記分光分布のピークにおける波長の光は、車両用灯具から出射する光の色調に大きく影響する傾向にある。このため、この車両用灯具によれば、出射する光の色調に大きく影響する波長の光のメタレンズでの透過率が低くなることを抑制し得、所望の色調の光を出射し得る。
【0043】
この場合、複数の前記共鳴波長の全ては、前記光源部から出射する前記光の波長帯域に含まれないこととしてもよい。
【0044】
この車両用灯具によれば、少なくとも1つの共鳴波長が光源部から出射する光の波長帯域に含まれる場合と比べて、所望の色調の光を出射し得る。
【0045】
また、メタレンズにおける少なくとも1つの共鳴波長が、800nm以上2400nm未満である場合、前記メタレンズは、当該メタレンズを透過する前記光源部からの前記光の発散角を小さくすることとしてもよい。
【0046】
また、前記光源部から出射する前記光の分光分布は、複数のピークを有し、前記メタレンズにおける複数の共鳴波長は、複数の前記ピークのそれぞれの波長と異なることとしてもよい。
【0047】
この車両用灯具では、上記のように、光源部から出射する光の分光分布は、複数のピークを有するため、この分光分布が1つのピークのみを有する場合と比べて、出射する光の色調を所望の色調にし得る。また、この車両用灯具では、上記のように、メタレンズにおける複数の共鳴波長は、複数のピークのそれぞれの波長と異なる。複数のピークにおけるそれぞれの波長の光は、車両用灯具から出射する光の色調に大きく影響する。このため、この車両用灯具によれば、出射する光の色調に大きく影響する波長の光のメタレンズでの透過率が低くなることを抑制し得、所望の色調の光を出射し得る。
【0048】
また、光源部から出射する光の分光分布が複数のピークを有する場合、前記複数の共鳴波長の少なくとも1つは、複数の前記ピークのそれぞれの波長のうち最短の波長を超えかつ最長の波長未満であることとしてもよい。
【0049】
複数の共鳴波長に上記の最短の波長を超え最長の波長未満である共鳴波長が含まれないようにする場合、それぞれのセルにおけるナノ構造体の大きさや形状、セルの配列等の設計が複雑になる傾向にある。このため、上記のような構成にすることで、これらの設計が複雑になることを抑制し得る。
【0050】
この場合、互いに隣り合う前記ピーク間において強度が最小である前記光の波長と、前記複数の共鳴波長の前記少なくとも1つとが同じであることとしてもよい。
【0051】
このような構成にすることで、ピーク間において強度が最小である光を除く光の波長と共鳴波長とが同じ場合と比べて、出射する光量の低下を抑制し得る。
【0052】
また、光源部から出射する光の分光分布が複数のピークを有する場合、前記複数の共鳴波長は、前記光源部からの前記光の波長帯域に含まれる特定の共鳴波長を含み、前記光の分光分布の全体における最大の強度に対する前記光における前記特定の共鳴波長の光の強度の比は、0.1以下であることとしてもよい。
【0053】
このような構成にすることで、上記の比が0.1を超える場合と比べて、出射する光量の低下を抑制し得る。
【0054】
以上のように本発明によれば、小型化し得る車両用灯具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】本発明の第1実施形態における車両用灯具を概略的に示す断面図である。
図2図1に示す光源部を概略的に示す正面図である。
図3図1に示すメタレンズの一方の主面の一部を拡大して示す正面図である。
図4】第1実施形態における所定の位相分布の一部を概略的に示す図である。
図5】第1実施形態における特定の位相分布の一部を概略的に示す図である。
図6】第2実施形態におけるメタレンズを概略的に示す断面図である。
図7】第3実施形態におけるメタレンズを概略的に示す断面図である。
図8】第4実施形態における車両用灯具を図1と同様に示す図である。
図9】第1変形例に係る保護部材とメタレンズとを概略的に示す断面図である。
図10】第5実施形態における車両用灯具から当該灯具の前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用の配光パターンを示す図である。
図11】第2変形例における配光パターンの一例を示す図である。
図12】第2変形例における配光パターンの別の一例を示す図である。
図13】第3変形例における配光パターンの一例を示す図である。
図14】第4変形例における配光パターンの一例を示す図である。
図15】第6実施形態におけるナノ構造体の直径と、最長波長が660nmである可視光及び最短波長が1000nmである赤外光のそれぞれの位相変調量との関係を示す図である。
図16】第7実施形態における車両用灯具を図1と同様に示す図である。
図17】第7実施形態における光源部から出射する光の分光分布、及びメタレンズの光の透過率分布を概略的に示す図である。
図18】地表近くでの太陽光の分光分布、及び第7実施形態のメタレンズの光の透過率分布を概略的に示す図である。
図19】第5変形例に係る光源部から出射する光の分光分布、及びメタレンズの光の透過率分布を図17と同様に示す図である。
図20】第8実施形態における光源部から出射する光の分光分布、及びメタレンズの光の透過率分布を概略的に示す図である。
図21】第6変形例に係る光源部から出射する光の分光分布、及びメタレンズの光の透過率分布を図20と同様に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明に係る車両用灯具の好適な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。以下に例示する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良することができる。また、本発明は、以下に例示する実施形態における構成要素を適宜組み合わせてもよい。なお、以下で参照する図面では、理解を容易にするために、各部材の寸法を変えて示す場合がある。
【0057】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における車両用灯具を示す図であり、車両用灯具の鉛直方向の断面を概略的に示す図である。本実施形態の車両用灯具1は自動車用の前照灯とされる。自動車用の前照灯は、一般的に車両の前方の左右方向のそれぞれに備えられるものである。本明細書において「右」とは車両の進行方向において右側を意味し、「左」とは車両の進行方向において左側を意味する。左右の前照灯のそれぞれは、形状が左右方向に概ね対称であることを除いて、同じ構成とされる。このため、本実施形態では、一方の前照灯について説明する。図1に示すように、本実施形態の車両用灯具1は、筐体10と、光源部20と、メタレンズ30とを主な構成として備える。
【0058】
本実施形態の筐体10は、ランプハウジング11、フロントカバー12及びバックカバー13を主な構成として備える。ランプハウジング11の前方は開口しており、当該開口を塞ぐようにフロントカバー12がランプハウジング11に固定されている。また、ランプハウジング11の後方には前方よりも小さな開口が形成されており、当該開口を塞ぐようにバックカバー13がランプハウジング11に固定されている。
【0059】
ランプハウジング11と、当該ランプハウジング11の前方の開口を塞ぐフロントカバー12と、当該ランプハウジング11の後方の開口を塞ぐバックカバー13とによって形成される空間は灯室Rであり、この灯室R内に光源部20とメタレンズ30とが収容されている。バックカバー13は、ランプハウジング11の後方の開口を通じての光源部20及びメタレンズ30の交換のために、ランプハウジング11に対して開閉可能または着脱可能となっている。フロントカバー12は透光性を有する材料で構成されており、光源部20から出射されてメタレンズ30を透過する光はフロントカバー12を透過する。ランプハウジング11及びバックカバー13は、例えば、樹脂で構成される。
【0060】
図2は、図1に示す光源部20を概略的に示す正面図である。本実施形態では、図1図2に示すように、光源部20は、光を出射する複数の発光素子21と、複数の発光素子21が実装される回路基板22と、を有する。なお、図1図2では、見易さのため、1つの発光素子21のみに符号を付し、他の発光素子21の符号は省略されている。複数の発光素子21は、マトリックス状に配置されて上下方向及び左右方向に列を形成し、前方に向かって光を出射する。複数の発光素子21のそれぞれは、発光素子21のそれぞれに供給される電力によって、出射する光の光量を個別に変更可能とされている。また、これら発光素子21は白色光を出射する蛍光体方式のLED(Light Emitting Diode)であり、光源部20は所謂LEDアレイであり、光源部20から出射する光は所定の波長帯域を有している。なお、発光素子21の数や構成は、特に限定されるものではない。例えば、発光素子21は、互いに異なる波長の光を出射する複数のLEDを含む構成であってもよく、互いに異なる波長の光を出射する複数のLD(Laser Diode)を含む構成であってもよい。
【0061】
このような光源部20は、光を出射させる発光素子21を選択することで所定の配光パターンを有する光を出射することができ、当該選択を変化させることで所定の配光パターンの外形を変化させることができる。また、光源部20は、それぞれの発光素子21から出射する光量を調節することで所定の配光パターンにおける光の強度分布を調節することができる。つまり、光源部20は、複数の発光素子21から出射する光の光量に応じた所定の配光パターンを有する光を出射でき、出射する光の配光パターンを変化させることができる。なお、光源部20は、出射する光の配光パターンを変化させることができなくてもよい。
【0062】
本実施形態の光源部20から出射する光Lの波長は、可視光の波長帯域に含まれる。可視光線の波長帯域は、概ね380nmから780nmである。光源部20から出射する光Lは、複数の発光素子21から出射する光であるため、それぞれの発光素子21から出射する光の波長は光源部20から出射する光Lの波長と概ね同じである。光Lの波長は、可視光の波長帯域に含まれなくてもよい。
【0063】
本実施形態のメタレンズ30は、平板状の部材であり、厚さ方向に透過する光の発散角を調節するように構成される。メタレンズ30は、光源部20の前方に配置され、光源部20から出射する光Lは、平面状の一方の主面31sに入射し、平面状の他方の主面32sから出射する。このため、主面31sは光源部20からの光Lが入射する入射面であり、主面32sは、主面31sに入射した光源部20からの光Lが出射する出射面である。
【0064】
図3は、図1に示すメタレンズ30の一方の主面31sの一部を拡大して示す正面図である。図3に示すように、主面31sは、互いに異なる2方向に区分けされて形成される複数のセル33を有し、それぞれのセル33にナノ構造体35が設けられている。なお、図3には、隣接するセル33間の境界が破線で示されている。また、見易さのため、1つのセル33及び1つのナノ構造体35のみに符号を付し、他のセル33及びナノ構造体35の符号は省略されている。本実施形態では、複数のセル33は、主面31sの全体に亘って配列されており、主面31sの全体がナノ構造体35を含む複数のセル33が配列されたメタ領域であると理解できる。また、メタレンズ30の形状は円板形状であり、複数のセル33は主面31sの重心31gを基準とする径方向と周方向とに並んでいる。また、特定の位置としてのこの重心31gにおいて主面31sと直交する基準軸36は光源部20と交わっている。また、光源部20の発光素子21は基準軸36と概ね垂直な面に沿って配置されている。また、メタレンズ30の直径は10mm以上であり、例えば50mmである。このため、メタ領域の最小の幅は10mm以上である。主面31sにおいてナノ構造体35を除く領域は平面であり、ナノ構造体35は主面31sから光源部20側に向かって延在する突起である。このようなナノ構造体35は、主面31sへの超微細加工によってメタレンズ30の一部として構成されており、メタレンズ30と一体となっている。
【0065】
なお、複数のセル33の配列、このメタ領域の位置や範囲は、特に制限されるものではない。例えば、メタ領域は、主面31sの一部であってもよく、光源部20側と反対側の主面32sの少なくとも一部であってもよい。また、メタ領域は、主面31sの少なくとも一部と主面32sの少なくとも一部であってもよい。また、図3に示すセル33の形状は概ね四角形状であるが、特に制限されない。また、複数のセル33の大きさや形状は互いに異なっていてもよい。また、メタレンズ30及びメタ領域の大きさは、特に制限されず、例えば、メタレンズ30の直径は10mmより小さくてもよい。また、メタレンズ30の外形は特に制限されず、例えば、四角形状であってもよい。
【0066】
本実施形態では、ナノ構造体35の形状は円柱形状であり、直径は光源部20から出射する光の最長波長より小さい。なお、ナノ構造体35の幅が、光源部20から出射する光の最長波長より小さければよく、ナノ構造体35の形状は特に制限されるものではない。例えば、ナノ構造体35の形状は、四角柱形状、C字形状であってもよい。また、ナノ構造体35は、所定の間隔をあけて並ぶ一対の四角柱等から構成されてもよい。また、それぞれのセル33におけるナノ構造体35の形状は異なっていてもよい。また、それぞれのセル33に複数のナノ構造体35が設けられていてもよく、それぞれのセル33におけるナノ構造体35の数は異なっていてもよい。また、メタレンズ30を構成する材料として、例えば、ガラス、樹脂等が挙げられる。なお、ナノ構造体35とナノ構造体35以外の部分とを構成する材料は、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0067】
このようなナノ構造体35を含むセル33は、当該セル33を透過する光Lの位相を変調させることができる。そして、複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状等を調節することで、メタ領域を透過する光Lの位相分布を変化させることができ、メタレンズ30を透過する白色の光Lの発散角が変化するようにできる。本実施形態では、光Lの発散角が小さくなって所定の発散角となるように、複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状等が調節されている。このため、メタ領域は、光Lの位相を変調して当該光Lの発散角が所定の発散角となるように構成されていると理解できる。
【0068】
具体的には、本実施形態のメタ領域は、上記の基準軸36と平行な参照光が当該メタ領域に入射する場合に、メタレンズ30から出射する当該参照光の位相分布が、図4に示す所定の位相分布50を2πで割った余りからなる特定の位相分布となるように、構成される。なお、図4は、本実施形態における所定の位相分布50の一部を概略的に示す図であり、上記基準軸36を含む鉛直面での所定の位相分布50を示す図である。また、メタレンズ30から出射する参照光の位相分布とは、基準軸36と垂直な仮想平面での位相分布であり、本実施形態では、当該仮想平面はメタレンズ30の出射面である主面32sに沿った面での位相分布とされる。図4において、x軸は位相の遅れ量(rad)であり、y軸は基準軸36と主面32sとの交点32pから基準軸36と垂直な方向への距離であり、rはメタレンズ30の半径である。図4に示すように、基準軸36を含む鉛直面での所定の位相分布50は、基準軸36から当該基準軸36と垂直な方向に離れるに従い位相の遅れ量が減少するとともに当該位相の遅れ量の減少率が増加する曲線である。そして、図示による説明は省略するが、基準軸36を含むいずれの平面での所定の位相分布50は、図4に示す所定の位相分布50と同様の曲線である。従って、所定の位相分布50は、基準軸36から離れるに従い位相の遅れ量が減少するとともに当該位相の遅れ量の減少率が増加する位相分布であると理解できる。ここで、上記の参照光の位相分布がこのような所定の位相分布50となるようにメタ領域が構成されることで、メタ領域を透過してメタレンズ30から出射する光の発散角を小さくできる。また、2πの整数倍だけ光の位相が遅れる場合、当該光の波面は位相が遅れていない光の波面と同じであるとみなすことができる。従って、上記の参照光の位相分布が所定の位相分布50を2πで割った余りからなる特定の位相分布となるようにメタ領域が構成される本実施形態のメタレンズ30であっても、光Lの発散角を小さくできる。なお、所定の位相分布50は、基準軸36から離れるに従い位相の遅れ量が減少するとともに当該位相の遅れ量の減少率が増加する位相分布であればよく、発散角の調節度合い等に応じて、これら位相の遅れ量及び当該位相の遅れ量の減少率が調節される。また、基準軸36は、重心31gを通るものに制限されるものではなく、メタ領域における特定の位置において当該メタ領域と直交するものであればよい。
【0069】
また、本実施形態では、図5に示すように、所定の位相分布50を2πで割った余りからなる特定の位相分布60は、複数のピーク61を有する。なお、図5は、本実施形態における特定の位相分布60の一部を概略的に示す図であり、上記基準軸36を含む鉛直面での特定の位相分布60の一部を示す図である。図5において、x軸は位相の遅れ量(rad)であり、y軸は基準軸36と主面32sとの交点32pから基準軸36と垂直な方向への距離であり、rはメタレンズ30の半径である。また、図5には、y=rを示す点線及びx=2πを示す点線が記載されている。また、図5では、見易さのため、4つのピーク61のみに符号を付して、他のピーク61の符号は省略されている。図5に示すように、基準軸36を含む鉛直面での特定の位相分布60おける位相の遅れ量は、基準軸36から当該基準軸36と垂直な方向に離れるに従い2πに限りなく近い値から減少してゼロとなる変化を周期的に繰り返す。この周期の幅は、基準軸36から離れるに従い狭くなっており、最大の幅は概ね400μm程度であり、この幅が最大の周期に隣接する周期の幅は100μm程度である。また、最小の幅は概ね1μm程度である。なお、上記ように、基準軸36を含むいずれの平面での所定の位相分布50は、図4に示す所定の位相分布50と同様の曲線である。このため、基準軸36を含むいずれの平面での特定の位相分布60おける位相の遅れ量は、基準軸36から離れるに従い2πに限りなく近い値から減少してゼロとなる変化を周期的に繰り返す。従って、特定の位相分布60における位相の遅れ量は、基準軸36から離れるに従い上記の変化を周期的に繰り返すと理解できる。ここで、上記の変化の1周期に対して配置されるセルの数が少ないほど、メタ領域によって変調された位相分布と特定の位相分布60とのずれが大きくなり、メタ領域に入射する光のエネルギーに対する特定の位相分布60に応じた発散角でメタ領域から出射する光のエネルギーの割合が低くなる傾向にある。本実施形態では、基準軸36に沿って見る場合に、重心31gから離れる方向において互いに隣り合うピーク61間に2つ以上のセル33が位置するように、複数のセル33が配列される。つまり、上記の変化の1周期に対して2つ以上のセル33が配置されることになる。このようにセル33が配置されることで、メタレンズ30による光のエネルギーのロスを車両用灯具におけるレンズに好適に使用できる程度に小さくし易くできる。また、本実施形態では、ナノ構造体35の形状は円柱形状である。そして、発明者は、上記の変化の1周期に対して3つ以上のセル33が配置されるとともに、ナノ構造体35の形状が円柱形状であることによって、メタ領域に入射する光のエネルギーに対する特定の位相分布60に応じた発散角でメタ領域から出射する光のエネルギーの割合を60%以上にし得ることを見出した。このため、メタレンズ30における光のエネルギーのロスを低減する観点では、このような構成にすることが好ましい。また、本実施形態では、特定の位相分布60は、3つ以上のピーク61を有する。また、基準軸36に沿って見る場合に重心31gから離れる方向において互いに隣り合うピーク61間に位置するセル33の数は、重心31gから離れるに従い少なくなる。
【0070】
本実施形態の車両用灯具1では、このようなメタレンズ30で発散角が小さくなるように調節された光Lがフロントカバー12を介して車両の前方へ向けて出射する。このため、本実施形態の車両用灯具1は、出射する光の配光パターンの大きさを所望の大きさにし易い。また、上記のように、光源部20は出射する光の配光パターンを変化させることができる。このため、車両用灯具1によれば、例えば、ハイビームとロービームとを切り替えて出射したり、ADB(Adaptive Driving Beam)を出射したりし得る。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の車両用灯具1は、光源部20とメタレンズ30とを備える。メタレンズ30は、メタ領域としての主面31sを有する。この主面31sには、光源部20から出射する光Lの最長波長より小さいナノ構造体35を含む複数のセル33が配列され、光源部20から出射する光Lがこの主面31sを透過する。メタ領域としての主面31sは、当該主面31sを透過する光Lの位相分布を変化させる。ここで、車両用灯具における投影レンズでは、一般的に入射面及び出射面の少なくとも一方が湾曲する面であり、この湾曲する面の形状を調節することで光源部から出射する光の発散角を調節している。このため、このような投影レンズでは、当該湾曲する面を形成するためにある程度の厚さが必要となる。一方、本実施形態の車両用灯具1におけるメタレンズ30は、複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさ等を調節することで、光源部からの光Lの位相分布を変化させて、当該光Lの発散角を調節できる。このため、本実施形態のメタレンズ30は、メタ領域としての主面31sの曲率を上記の投影レンズの曲面の曲率より小さくして、例えば主面31sを平面状にしても光源部20からの光の発散角を調節でき、上記の投影レンズより薄くできる。このため、本実施形態の車両用灯具1によれば、上記の投影レンズによって光源部20からの光Lの発散角を調節する場合と比べて、小型化できる。
【0072】
一般的にレンズを大きくすることで当該レンズから出射する光の量を多くし易くなる。本実施形態では、メタ領域としての主面31sの最小の幅は、10mm以上である。このため、本実施形態では、メタレンズ30から出射する光の配光パターンを、車両用前照灯から出射する光の配光パターンとして必要な明るさにし易くできる。なお、車両用前照灯から出射する光の配光パターンとして、例えば、ロービームやハイビームの配光パターンが挙げられる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。本実施形態では、メタレンズ30の構成が第1実施形態と異なる。
【0074】
図6は、本実施形態におけるメタレンズを概略的に示す断面図であり、メタレンズの厚さ方向の断面を概略的に示す図である。図6に示すように、本実施形態のメタレンズ30では、光源部20からの光Lが入射する入射面としての主面31sの全体は、外側に向かって凸状に湾曲した湾曲面である。このように湾曲する主面31sでは、光源部20からの光Lの発散角が小さくなるように当該光Lが屈折する。また、光源部20からの光Lが出射する出射面としての主面32sの全体がナノ構造体35を含む複数のセル33が配列されたメタ領域であり、主面31sに入射した光源部20からの光Lが当該メタ領域を透過する。また、基準軸36は、主面32sにおける特定の位置としての重心32gにおいて主面32sと直交しており、光源部20と交わっている。そして、第1実施形態と同様に、メタ領域は、上記の基準軸36と平行な参照光が当該メタ領域に入射する場合にメタレンズ30から出射する当該参照光の位相分布が所定の位相分布50を2πで割った余りからなる特定の位相分布60となるように、構成される。なお、入射面としての主面31sは、外側に向かって凸状に湾曲して光源部20からの光Lの発散角が小さくなるように当該光Lを屈折すればよく、一部が外側に向かって凸状に湾曲する構成であってもよい。
【0075】
一般的にメタ領域に入射する光の発散角が大きくなると、メタ領域の設計が複雑になる傾向にある。本実施形態のメタレンズ30では、光源部20からの光Lは、湾曲した入射面である主面31sによって発散角が小さくされた後に、メタ領域としての主面32sに入射する。このため、本実施形態では、主面31sが平面である場合と比べて、メタ領域に入射する光源部20からの光Lの発散角を小さくできる。従って、本実施形態の車両用灯具1によれば、メタ領域の設計が複雑になることを抑制し得、本実施形態のように光源部20からの光Lの発散角を小さくするときに特に有用である。
【0076】
なお、主面31sの少なくとも一部がメタ領域であり、主面32sが外方に凸状に湾曲し、メタ領域を透過した光Lが主面32sから出射してもよい。一般的にメタ領域によって光の発散角を調節する角度が大きくなると、メタ領域の設計が複雑になる傾向にある。このような構成によれば、主面32sが平面である場合と比べて、メタ領域によって光Lの発散角を小さくする角度を小さくでき、メタ領域の設計が複雑になることを抑制し得る。
【0077】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。本実施形態では、メタレンズ30の構成が第1実施形態と異なる。
【0078】
図7は、本実施形態におけるメタレンズ30を概略的に示す断面図であり、メタレンズ30の厚さ方向の断面を概略的に示す図である。図7に示すように、本実施形態のメタレンズ30では、光源部20からの光Lが入射する入射面としての平面状の主面31sには、複数の溝37が設けられる。なお、図7では、見易さのため、溝37は誇張されて記載され、1つの溝37のみに符号を付して、他の溝37の符号は省略されている。それぞれの溝37は、主面31sの中心である重心31gを中心とする円に沿うように延在している。このように複数の溝37が設けられた主面31sでは、光源部20からの光Lの発散角が小さくなるように当該光Lが回折する。つまり、光Lがこのように回折するように溝37の形状、深さ、幅、及び位置等が調節されており、主面31sはこのように光Lを回折すると理解できる。また、光源部20からの光Lが出射する主面32sの全体がナノ構造体35を含む複数のセル33が配列されたメタ領域であり、当該メタ領域を光源部20からの光Lが透過する。また、基準軸36は、主面32sにおける特定の位置としての重心32gにおいて主面32sと直交しており、光源部20と交わっている。そして、第1実施形態と同様に、メタ領域は、上記の基準軸36と平行な参照光が当該メタ領域に入射する場合にメタレンズから出射する当該参照光の位相分布が所定の位相分布50を2πで割った余りからなる特定の位相分布60となるように、構成される。なお、入射面としての主面31sは、複数の溝37が設けられ光源部20からの光Lの発散角が小さくなるように当該光Lを回折すればよく、溝37の形状、数、位置等は制限されるものではない。また、湾曲した主面31sに溝37が設けられてもよい。
【0079】
また、本実施形態のメタレンズ30では、光源部20からの光Lは、入射面である主面31sによって発散角が小さくされた後に、メタ領域に入射される。このため、光源部20からの光Lが入射する主面31sが平面である場合と比べて、メタ領域によって主面31sに入射した光Lの発散角を小さくする角度を小さくし得る。従って、本実施形態の車両用灯具1によれば、メタ領域の設計が複雑になることを抑制し得、本実施形態のように光源部20からの光Lの発散角を小さくするときに特に有用である。
【0080】
なお、メタ領域の設計が複雑になることを抑制する観点では、主面31sが外側に向かって凸状に湾曲した主面31sに複数の溝37が設けられ、当該主面31sが光源部20からの光Lを回折してもよい。また、主面31sの少なくとも一部がメタ領域であり、主面32sがメタ領域を透過した光Lを発散角が小さくなるように回折してもよい。このような構成によれば、主面32sが平面である場合と比べて、メタ領域によって光Lの発散角を小さくする角度を小さくし得、メタ領域の設計が複雑になることを抑制し得る。
【0081】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について詳細に説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、同一の参照符号を付して特に説明する場合を除き重複する説明は省略する。
【0082】
図8は、本実施形態における車両用灯具1を図1と同様に示す図である。なお、図8では、筐体10及び光源部20の記載の省略されている。図8に示すように、本実施形態の車両用灯具1は、光透過性を有する保護部材40を更に有する点で、第1実施形態の車両用灯具1と異なる。
【0083】
本実施形態の保護部材40は、本体部41とリブ42とからなる。本体部41は、円板状の部材であり、一方の主面43sがメタレンズ30の主面31sと所定の間隔をあけて対向するように配置される。基準軸36と平行な方向において、メタ領域としての主面31sの全体が本体部41と重なっている。リブ42は、本体部41の主面43sに設けられ、メタレンズ30側に向かって突出する。このリブ42は本体部41の外縁に沿って全周に亘って延在している。リブ42の内周面が全周に亘ってメタレンズ30の外周面に接着され、保護部材40がメタレンズ30に固定されている。このような保護部材40は、メタ領域としての主面31sと非接触で当該主面31sを覆っており、保護部材40とメタレンズ30とによって形成される閉空間45に主面31sが露出している。本体部41とリブ42とは一体に形成され、保護部材40を構成する材料として、例えば、ガラス、樹脂等が挙げられる。
【0084】
本実施形態では、光源部20から出射する光Lは、保護部材40の本体部41を透過してメタレンズ30に入射し、当該メタレンズ30で光Lの発散角が調整され、発散角が調節された光Lがフロントカバー12を介して車両の前方へ向けて出射する。本実施形態では、上記のように、保護部材40はメタ領域としての主面31sを覆う。このため、それぞれのナノ構造体35の間に埃等が入り込んだり、ナノ構造体35に埃等が付着したり、ナノ構造体35に傷がつくことを抑制でき、光源部20からの光Lの発散角を適切に調節し得る。
【0085】
なお、保護部材40のリブ42には、閉空間45と外部とを連通させる穴等の連通部が設けられてもよい。しかし、それぞれのナノ構造体35の間に埃等が入り込んだり、ナノ構造体35に埃等が付着したりすることを抑制する観点では、保護部材40にはこのような穴が設けられないことが好ましい。
【0086】
また、保護部材40はナノ構造体35に接触していてもよく、例えば、図9に示すように、保護部材40の本体部41はそれぞれのナノ構造体35の間を埋めていてもよい。なお、図9は、第1変形例に係る保護部材40とメタレンズ30とを概略的に示す断面図であり、保護部材40及びメタレンズ30の厚さ方向の断面の一部を概略的に示す図である。また、図9では、見易さのため、1つのナノ構造体35のみに符号を付し、他のナノ構造体35の符号は省略されている。この場合、保護部材40の屈折率は、メタレンズ30の屈折率より低くする。このような構成であっても、メタレンズ30で光Lの発散角を調整できる。
【0087】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態では、メタレンズ30の構成が第1実施形態と異なる。
【0088】
本実施形態のメタレンズ30におけるメタ領域は、複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状等が調節されて、コマ収差が発生するようにメタ領域を透過する光Lの位相分布を変化させている。コマ収差とは、像面における点像が一点に結像せず、彗星状の尾を引くように広がって結像する収差である。像面において光は、コマ収差によって、点像から点像の周囲に放射状に拡散するのではなく、点像からある方向に伸びる。これにより、光の発散角がコマ収差によって広がると理解できる。
【0089】
本実施形態のメタ領域は、上記のコマ収差が発生しない場合に比べてコマ収差によってメタ領域を透過する光Lの発散角を広げている。光Lの発散角の広がりによって、メタ領域を透過する光Lによって形成される配光パターンは、コマ収差が発生しない場合に比べて広がった状態で車両用灯具1の外部に投影される。
【0090】
図10は、本実施形態における左右の車両用灯具1から当該灯具の前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成されるロービーム用の配光パターンを示す図である。図10では、コマ収差が発生しているメタレンズ30から投影された配光パターン70を実線で示す。また、図10では、コマ収差が発生していないメタレンズから投影された配光パターン80を破線で示している。
【0091】
図10では、配光パターン70,80の明瞭化のために、配光パターン80の上端及び下端を、配光パターン70の上端及び下端よりも内側に図示しているが、配光パターン80の上端及び下端は配光パターン70の上端及び下端と同じ位置に位置する。配光パターン70,80の中心は、同じ位置に位置するものとする。
【0092】
図10において、Sは水平線を示し、Cは、左右方向における配光パターン70の中心を通り、配光パターン70に直交して車両の前後に延びる基準軸を示し、Vは基準軸Cに対して直交している鉛直線を示す。配光パターン70は、上端に、カットオフラインCL1,CL2,CL3を有する。カットオフラインCL1は、カットオフラインCL2を基準としてカットオフラインCL3とは反対側に設けられている。カットオフラインCL1とカットオフラインCL2との交点は、エルボー点EPと称される。エルボー点EPは、水平線Sより下方かつ鉛直線V上に位置する。エルボー点EPは、水平線Sより下方かつ鉛直線Vの近傍に位置してもよい。カットオフラインCL1は、エルボー点EPから車両の左右方向の一方側である右側に水平方向に延在する。カットオフラインCL2は、エルボー点EPから車両の上下左右方向における左斜め上方に向かって延在している。エルボー点EP側とは反対側におけるカットオフラインCL2の端は、水平線Sより上方に位置している。カットオフラインCL3は、カットオフラインCL2の上記した端から、車両の左右方向における左側に水平方向に延在する。配光パターン70の光量分布として、光量は、エルボー点EPの近傍に位置するホットゾーンHZLにおいて最も多く、ホットゾーンHZLから離れるに従って徐々に減少する。
【0093】
本実施形態のメタ領域は、配光パターン70における点像を配光パターン70の左右方向において配光パターン70の内側から配光パターン70の外側に向かって伸ばすコマ収差が発生するように、メタ領域を透過する光Lの位相分布を変化させている。これにより、本実施形態のメタ領域は、コマ収差が発生しない場合に比べてコマ収差によって光Lの発散角を光Lによって形成される配光パターン70の左右方向に広げており、配光パターン70の左右方向において配光パターン70を配光パターン80よりも広げている。配光パターン70のうち、V線と配光パターン70の左端との間の配光パターン70の一部を領域70aとして、V線と配光パターン70の右端との間の配光パターン70の残りの一部を領域70bとする。メタ領域は、メタレンズ30を鉛直方向から見る場合に、領域70aを形成する光Lの発散角をコマ収差によって配光パターン70の基準軸Cから左方向に広げる。また、メタ領域は、メタレンズ30を鉛直方向から見る場合に、領域70bを形成する光Lの発散角をコマ収差によって配光パターン70の基準軸Cから右方向に広げる。これにより、配光パターン70は、領域70aにおいて配光パターン80の左端が外側である左側方に広がると共に、領域70bにおいて配光パターン80の右端が外側である右側方に広がるような配光パターンとなる。メタ領域は、領域70aを形成し左方向へ広がる光Lの発散角と領域70bを形成し右方向へ広がる光Lの発散角とを同じにしている。これにより、配光パターン70の右端と左端とのそれぞれの広がり量が同じとなり得、広がり量が同じにならない場合に比べてメタレンズ30の設計が容易になり得る。
【0094】
上記のように、本実施形態のメタ領域は、コマ収差が発生するようにメタ領域を透過する光Lの位相分布を変化させ、コマ収差が発生しない場合に比べてメタ領域を透過する光Lの発散角を配光パターン70の左右方向に広げる。
【0095】
メタレンズ30では、コマ収差が発生しない場合であっても、複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状等を調節することで光Lの発散角が広がり得る。しかしながら、本実施形態のメタ領域では、コマ収差が発生しない場合において広がった発散角と同じ発散角であっても、コマ収差による光Lの伸びによって発散角を左右方向にさらに広げることができる。従って、本実施形態の車両用灯具1によれば、コマ収差が発生せずに光Lの発散角を広げたメタレンズ30から投影される配光パターンよりも、配光パターン70は左右方向にさらに広がり得る。
【0096】
また、一般的に、湾曲する面を備える前述のような投影レンズはコマ収差が抑制されるように設計されている。このため、投影レンズを用いる場合、光源部からの光の発散角の広がりが投影レンズによって抑制され、車両用灯具の外部に投影される配光パターンの広がりが抑制される。これに対して、本実施形態の投影レンズとして構成されるメタレンズ30のメタ領域では、コマ収差を発生させることで光源部20からの光Lの発散角が上記のように広がるため、配光パターン70は投影レンズから投影される配光パターンよりも広がり得る。
【0097】
また、前述した特許文献2の車両用灯具では、配光パターンを広げるために投影レンズ及び付加レンズの両方が用いられている。しかし、本実施形態のメタレンズ30では、このように投影レンズ及び投影レンズとは別のレンズによって配光パターンが広がる場合に比べて、投影レンズとレンズとの相対位置を調節する必要がなく、部品点数が削減され得、車両用灯具1の重量が削減され得る。また、上記した投影レンズ及び上記した別のレンズによって光の発散角を広げる場合に比べて、本実施形態の車両用灯具1では、1枚のメタレンズ30で光Lの発散角を広げられ、小型化できる。
【0098】
また、配光パターン70の広がり量は光Lの発散角の広がり量によって調節され、発散角の広がり量はコマ収差の程度である光Lの上記の伸びによって調節され、光Lの伸びは複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状等によって調節される。このようにメタレンズ30の設計の自由度は高くされるため、本実施形態の車両用灯具1では、加工精度によってコマ収差が意図せずに発生してしまう投影レンズに比べて、配光パターン70の広がり量が容易に制御され得る。
【0099】
なお、投影レンズにコマ収差を意図して発生させようとしても、投影レンズの形状や、投影レンズによって投影される配光パターンにおける光量分布等の兼ね合いで、当該配光パターンの広がり量の自由度が制限されてしまう。しかしながら、本実施形態の車両用灯具1では、上記したコマ収差の程度の調節によって、コマ収差を意図して発生させる投影レンズに比べて、配光パターン70の広がり量の自由度が向上し得る。
【0100】
また、投影レンズにコマ収差が発生しても、光Lの発散角が左右方向において配光パターン70の基準軸Cから離れる方向に広がるとは限らず、左右方向において配光パターンが容易に広がるとは限らない。しかしながら、本実施形態の車両用灯具1では、複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状等の調節によって、左右方向において配光パターン70は容易に広がり得る。また、本実施形態の車両用灯具1では、左右方向に配光パターン70が広がるようにコマ収差を意図して発生させる投影レンズの制作に比べて、メタレンズ30を容易に制作できる。
【0101】
本実施形態のメタレンズ30で用いられているコマ収差以外で光が発散する収差として、球面収差、非点収差、及び、像面収差が挙げられる。これら3つの収差では、像面における光が基準となる点像から点像の周囲に放射状に拡散することもある。従って、これら3つの収差では、コマ収差のように、配光パターンの外側だけでなく、配光パターンの内側にも像のボケが広がる。このため、これら3つの収差のうちのいずれかによって広がる配光パターンは、コマ収差によって広がる配光パターンに比べて効率的に広がらない。これに対して、本実施形態のメタレンズ30では、コマ収差によって光Lの発散角を左右方向においてのみ配光パターン70の基準軸Cから離れる方向に広げているため、他の3つの収差に比べて配光パターン70を左右方向に効率的に広げ易くなり、広がる方向が一方向に規定され得る。また、3つの収差では、上記した拡散によって、配光パターンの左右の端において明るさのぼやけが発生してしまうことがある。これに対して、本実施形態のメタレンズ30では、コマ収差によって配光パターンを広がる方向が左右方向における配光パターンの外側となるように制御される。従って、本実施形態のメタレンズ30では、配光パターンの左右の端周辺において光量が内側から外側に徐々に少なくなり得、他の3つの収差に比べて配光パターンの左右の端における明るさのぼやけが抑制され得る。
【0102】
上記したように、像面において光はコマ収差によって点像からある方向に伸び、光の伸び量は像面における点像から当該点像から広がる彗星状の発散光の最外角までの広がり角に相当する。コマ収差によって伸びる光における光量は、点像において最も多く、点像から離れるほど徐々に少なくなる。本実施形態のメタレンズ30では、広がる配光パターン70が左右の端における光量は配光パターン70の中心側から外側に向かって徐々に少なくなり、配光パターン70の左右端における配光ムラの発生が抑制され得る。また、配光パターン70における配光ムラを抑制する観点から、光の伸び量は、像面における点像を形成する光の広がり角度の15%程度であればよく、当該広がり角度の50%であれば非常に有効である。
【0103】
配光パターン70は、ロービーム用の配光パターンとして説明したが、ハイビーム用の配光パターンであってもよい。
【0104】
メタ領域は、配光パターン70の中心部はコマ収差が抑制され、配光パターン70の端部に向かうにしたがって発散角を広げてもよい。これにより中心部の光量が保たれつつ、運転者の視界の広がりも確保される。また、メタ領域は、領域70aを形成し左方向へ広がる光Lの発散角と領域70bを形成し右方向へ広がる光Lの発散角との一方を広げてもよい。これにより、配光パターン70の右端と左端との一方のみが広がり得る。また、メタ領域は、領域70aを形成し左方向へ広がる少なくとも一部の光Lの発散角を広げてもよい。これにより、配光パターン70の左端の少なくとも一部は、広がり得る。また、メタ領域は、領域70bを形成し右方向へ広がる少なくとも一部の光Lの発散角を広げてもよい。これにより、配光パターン70の右端の少なくとも一部は、広がり得る。
【0105】
コマ収差が発生するように光Lの位相分布を変化させるメタ領域を有するメタレンズ30を備える車両用灯具1について、第5実施形態を例に説明したが、このような車両用灯具1はこれに限定されるものではない。このような車両用灯具1の変形例である第2変形例、第3変形例、及び第4変形例について以下に説明する。
【0106】
まず、第2変形例について図11及び図12を用いて説明する。図11は、第2変形例における配光パターンの一例を示す図であり、図12は、第2変形例における配光パターンの別の一例を示す図である。本変形例のメタ領域は、領域70aを形成し配光パターン70の基準軸Cから左方向へ広がる光Lの発散角と領域70bを形成し配光パターン70の基準軸Cから左方向へ広がる光Lの発散角との一方を他方よりも大きくしてもよい。これにより、配光パターン70の右端の広がり量及び配光パターン70の左端の広がり量の一方が他方よりも多くなる。例えば、メタ領域が領域70aを形成し配光パターン70の基準軸Cから左方向へ広がる光Lの発散角を領域70bを形成し配光パターン70の基準軸Cから右方向へ広がる光Lの発散角よりも大きくすると、図11に示すように配光パターン70が右端よりも左端に広く広がる。この場合、走行車線側の歩道に位置する歩行者や道路標識等の対象物への光Lの照射範囲は広がり得る。また、例えば、メタ領域が領域70bを形成し配光パターン70の基準軸Cから右方向へ広がる光Lの発散角を領域70aを形成し配光パターン70の基準軸Cから左方向へ広がる光Lの発散角よりも大きくすると、図12に示すように配光パターン70が左端よりも右端に広く広がる。この場合、対向車線側の歩道に位置する歩行者等の対象物への光Lの照射範囲が広がり得る。従って、車両の運転者は、配光パターンが広がった側に位置する対象物を一層視認し易くなり得る。
【0107】
次に、第3変形例について図13を用いて説明する。図13は、第3変形例における配光パターンの一例を示す図である。本変形例の配光パターン70は、左側の車両用灯具1から投影される配光パターン71と、右側の車両用灯具1から投影される配光パターン73との重なりあいによって構成される。配光パターン71,73を見易くするために、配光パターン71には左斜め上方に延在するハッチングを付しており、配光パターン73には右斜め上方に延在するハッチングを付している。配光パターン71の左端は、配光パターン73の左端よりも外側に位置する。また、配光パターン73の右端は、配光パターン71の右端よりも外側に位置する。
【0108】
配光パターン80は、配光パターン70と同様に、左右それぞれの車両用灯具1から投影される配光パターンの重なりによって形成される。配光パターン71,73と区別し易くするために、配光パターン80にはハッチングを付していない。
【0109】
左側の車両用灯具1のメタ領域は、光Lの発散角をコマ収差によって配光パターン70の基準軸Cから離れる方向である当該光軸から左方向に広げる。これにより、配光パターン71の左端は、配光パターン80の左端よりも左方向に広がる。また、右側の車両用灯具1のメタ領域は光Lの発散角をコマ収差によって配光パターン70の基準軸Cから離れる方向である当該光軸から右方向に広げる。これにより、配光パターン73の左端は、配光パターン80の右端よりも右方向に広がる。
【0110】
このように、左右それぞれの車両用灯具1から投影される配光パターン71,73の重ね合わせによって配光パターン70が形成される場合であっても、配光パターン70を左右に広げることができる。また本変形例では、例えば左側用のメタレンズ30を、交換前の左側用のメタレンズ30とはコマ収差の程度が異なる別の左側用のメタレンズ30と交換することで、配光パターンの左方向における広がりを調節できる。
【0111】
次に、第4変形例について図14を用いて説明する。図14は、第4変形例における配光パターンの一例を示す図である。図14において、S1は、水平線Sに平行な線であり、配光パターン70の中心を通る線である。配光パターン70のうち、S1線と配光パターン70の上端との間の配光パターン70の一部を領域70cとして、S1線と配光パターンの下端との間の配光パターン70の残りの一部を領域70dとする。配光パターン70はロービーム用であり、カットラインの位置を固定する必要がある。このため、メタ領域は、メタレンズ30を水平方向から見る場合に、領域70cを形成する光Lの発散角をコマ収差によって配光パターン70の基準軸Cから離れる方向である当該光軸から上方向に広げず、領域70dを形成する光Lの発散角をコマ収差によって配光パターン70の基準軸Cから離れる方向である当該光軸から下方向に広げる。これにより、配光パターン70は、領域70dにおいて配光パターン80の下端が外側である下方に広がるような配光パターンとなる。なお、例えば、配光パターン70がハイビーム用の配光パターンである場合、メタ領域は、メタレンズ30を水平方向から見る場合に、領域70cを形成する光Lの発散角をコマ収差によって配光パターン70の基準軸Cから離れる方向である当該光軸から上方向に広げてもよい。これにより、配光パターン70は、領域70cにおいて配光パターン80の上端が外側である上方に広がるような配光パターンとなる。このようにメタ領域は、配光パターン70における点像を配光パターン70の上下方向において配光パターン70の内側から配光パターン70の外側に向かって伸ばすコマ収差が発生するように、メタ領域を透過する光Lの位相分布を変化させている。これにより、メタ領域は、コマ収差が発生しない場合に比べて光Lの発散角を配光パターンの上下方向において配光パターン70の基準軸Cから離れる方向に広げて、配光パターン80に比べて配光パターン70を配光パターンの高さ方向である上下方向にも広げている。この場合、車両の運転者は、案内標識や路面等の対象物を視認し易くなり得る。
【0112】
また、メタ領域は、左右方向における配光パターン70の端側を形成し配光パターン70の基準軸Cから左右方向へ広がる光Lの発散角を上下方向における配光パターン70の端側を形成し配光パターン70の基準軸Cから上下方向へ広がる光Lの発散角よりも広げている。これにより、配光パターン70の左右両端のそれぞれの広がり量は配光パターン70の下端の広がり量よりも多くなり、メタレンズ30から出射する光の光量が変わることなく配光パターン70は配光パターン70の上下方向よりも左右方向に多く広がる。これにより、運転者の視界の広がりは当該配光パターンによって上下方向よりも左右方向に確保され得る。また、配光パターン70の左右両端のそれぞれの広がり量が配光パターン70の下端の広がり量よりも多くならない場合に比べて、車両の運転者は、歩行者、及び道路標識等の対象物を一層視認し易くなり得る。
【0113】
なお、メタ領域は、配光パターン70の下端側を形成する光Lの発散角を広げなくてもよいし、配光パターン70の上端側を形成する光Lの発散角を広げてもよい。或いは、メタ領域は、左右方向における配光パターン70の端側を形成する光Lの発散角よりも上下方向における配光パターン70の端側を形成する光Lの発散角を広げてもよい。これにより、配光パターン70は、配光パターン70の左右方向よりも上下方向に多く広がる。
【0114】
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態では、メタレンズ30の構成が第1実施形態と異なる。
【0115】
図1に示すように、例えば日中に車両が上り坂を走行している場合において、例えば太陽光などの光が車両用灯具1の外部からフロントカバー12を介して車両用灯具1の筐体10の内部に入射することがある。筐体10の内部に入射した光は、メタレンズ30において主面32sに入射し主面31sから光源部20に向かって出射し、光源部20からの光Lとは逆方向に進行して光源部20に集光することがある。光の集光によって、光源部20は劣化するおそれがある。本実施形態のメタ領域は屈曲力によって集光を抑制しており、当該屈曲力について以下に説明する。また、以下において、光に含まれる可視光の最長波長は660nmであり、光に含まれる赤外光の最短波長が1000nmであり、この場合のそれぞれの光の波長の比が1:1.5であるものとして説明する。
【0116】
屈曲力とは、屈折レンズやメタ領域がそれぞれを透過する光を曲げる力を示す。屈曲力が小さいほど、それぞれを透過する光の曲がり角が小さくなり、光の集束が抑制される。
【0117】
次に、1枚の屈折レンズの屈曲力について説明する。屈折レンズの主な材質として、アクリルまたはポリカーボネートが挙げられる。アクリルからなる屈折レンズの屈折率は、可視光に対して1.489であり、赤外光に対して1.483である。また、ポリカーボネートからなる屈折レンズの屈折率は、可視光に対して1.579であり、赤外光に対して1.568である。
【0118】
1枚の屈折レンズの焦点距離は「屈折率-1」に反比例するため、当該屈折レンズの屈曲力は「屈折率-1」に比例する。このため、アクリルからなる屈折レンズにおいて、可視光を屈曲する屈折レンズの屈曲力を1とすると、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力は概ね0.98となる。また、ポリカーボネートからなる屈折レンズにおいて、可視光を屈曲する屈折レンズの屈曲力を1とすると、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力は、概ね0.98となる。
【0119】
従って、アクリルであってもポリカーボネートであっても、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力は、可視光を屈曲する屈折レンズの屈曲力の概ね0.98倍となる。この場合、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力は可視光を屈曲する屈折レンズの屈曲力と概ね同じであるため、赤外光の曲がり角は可視光の曲がり角と概ね同じとなり、赤外光を屈曲する屈折レンズの焦点距離は可視光の場合の焦点距離と概ね同じとなる。従って、屈折レンズは、赤外光を集光し易くしてしまう。
【0120】
次に、メタ領域の屈曲力について説明する。メタ領域を透過する光の位相分布は、上記したようにメタ領域によって変化される。位相は光の波面の進み遅れを表すため、位相分布が与えられた光は波面に傾きを持つ。光は波面に垂直となる向きへ進行するため、上記の効果によってメタ領域において位相を変調された光は元の進行方向と異なる向きへ波面が傾き、光の進行方向が屈曲される。このため、メタ領域を透過する光を屈曲するメタ領域の屈曲力は、当該光の位相変調量と当該光の波長との積の値に概ね比例する。上記のように、メタ領域は、メタ領域を透過する光の位相分布を変化させる。この位相分布は、複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状等に応じて変化する。これらの調節によって、メタ領域はメタ領域を透過する光の位相分布を変化する。また、メタ領域では、当該変化によって当該光の位相変調量を変化させている。本実施形態のメタ領域において、上記の調節によって可視光の位相変調量と赤外光の位相変調量との比は4:1とされており、可視光の上記の最長波長と赤外光の上記の最短波長との比は上記の1:1.5である。従って、この場合において、可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力と赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力との比は、1:0.3となる。
【0121】
このように、メタ領域は、上記の調節によってメタ領域を透過する光の位相分布を変化させおり、当該変化によって当該光の位相変調量を変化させ、この変化によってメタ領域を透過する可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力よりもメタ領域を透過する赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力を小さくする。赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力が可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力よりも小さくなると、赤外光の曲がり角が可視光の曲がり角よりも小さくなるため、メタ領域は赤外光の集光を抑制し得る。従って、メタ領域は、可視光を光源部20に集光し、赤外光の集光を抑制して赤外光を透過させている。
【0122】
次に、赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力と、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力との比較について説明する。両者を可視光を屈曲するそれぞれの屈曲力を基準に比較すると、赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力は、上記の調節によって、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力よりも小さい。従って、メタ領域による赤外光の曲がり角は、屈折レンズによる赤外光の曲がり角よりも小さくなる。可視光を屈曲する屈折レンズの焦点距離を50mmと仮定する場合、赤外光を屈曲する屈折レンズの焦点距離は、屈折レンズの上記の屈曲力の比によって可視光を屈曲する焦点距離から概ね0.1mmずれる。これに対して、可視光を屈曲するメタ領域を含むメタレンズ30の焦点距離を上記と同様に50mmと仮定する場合、赤外光を屈曲するメタ領域を含むメタレンズ30の焦点距離は、メタ領域の上記の屈曲力の比によって可視光を屈曲するメタ領域を含むメタレンズ30焦点距離から概ね100mmずれる。従って、メタ領域が屈折レンズよりも赤外光を屈曲する屈曲力を小さくすると、メタ領域による赤外光の曲がり角は屈折レンズによる赤外光の曲がり角よりも小さくなるため、メタ領域は屈折レンズよりも赤外光の集光を抑制し得る。
【0123】
なお、赤外光に対するメタレンズ30の焦点距離が可視光に対するメタレンズ30の焦点距離から当該焦点距離の10%程度ずれるだけでも、メタ領域は赤外光の集光を抑制し得える。この場合、可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力と赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力との比は概ね1:0.9、つまり赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力は可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力の概ね0.9倍となる。以下に、可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力と赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力との比が概ね1:0.9である場合の可視光の位相変調量と赤外光の位相変調量との比について説明する。
【0124】
ここでは、可視光の位相変調量と赤外光の位相変調量との比を1:Xとする。可視光及び赤外光のそれぞれの波長の比は、上記のように1:1.5となる。また、可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力と赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力との比は、上記した概ね1:0.9が適切である。上記のように、可視光及び赤外光のそれぞれを屈曲するメタ領域の屈曲力は、位相変調量と波長との積の値に概ね比例する。従って、Xは0.6となり、赤外光の位相変調量は可視光の位相変調量の0.6倍となる。なお、赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力は可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力の0.9倍未満であることが好適であることから、赤外光の位相変調量は可視光の位相変調量の0.6倍未満であることが好適となる。
【0125】
上記のように、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力は可視光を屈曲する屈折レンズの屈曲力の概ね0.98倍となり、赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力は可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力の0.9倍未満となる。赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力と、赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力とを可視光を屈曲するそれぞれの屈曲力を基準に比較すると、赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力は赤外光を屈曲する屈折レンズの屈曲力よりも小さくなる。従って、メタ領域は、屈折レンズよりも赤外光の集光を抑制し得る。
【0126】
図15は、ナノ構造体35の直径と、最長波長が660nmである可視光及び最短波長が1000nmである赤外光のそれぞれの位相変調量との関係を示す図である。実線はナノ構造体35の直径と可視光の位相変調量との関係を示し、破線はナノ構造体35の直径と赤外光の位相変調量との関係を示す。
【0127】
メタレンズ30が可視光に対してレンズとして機能することによって可視光を集光するためには、可視光の位相変調量は0-2π(rad)の範囲をとることが重要である。このために、ナノ構造体35の形状が円柱形状であり、円柱形状のナノ構造体35の直径の範囲はこの範囲に対応する直径となっていればよく、例えば0nmから250nmまでであることが好適である。本実施形態では、ナノ構造体35の直径の範囲は例えば100nmから250nmまであることがより好適であり、この範囲内の直径のナノ構造体35が複数配置されている。可視光の位相変調量の範囲において、赤外光の位相変調量は0.5πラジアンである。従って、メタ領域は、赤外光の集光を抑制して赤外光を透過させる。
【0128】
なお、ナノ構造体35の形状が円柱形状である場合、集光させる光の波長が長くなるほど、図15に示すグラフの傾きは小さくなるため、ナノ構造体35の直径の範囲は広がる。
【0129】
上記のように、本実施形態のメタ領域は、メタ領域を透過する光の位相分布を変化させ、メタ領域を透過する光に含まれる可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力よりもメタ領域を透過する光に含まれる赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力を小さくする。
【0130】
本実施形態の車両用灯具1では、上記のように、メタ領域はメタ領域を透過する光の位相分布を変化させる。この位相分布は、複数のセル33の配置やそれぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状等に応じて変化する。このため、メタ領域は、これらを調節することで、メタ領域を透過する光の位相分布を変化させ、光に含まれる可視光を屈曲するメタ領域の屈曲力よりも光に含まれる赤外光を屈曲するメタ領域の屈曲力を小さくする。屈曲力が小さいほど、メタ領域を透過する光の曲がり角が小さくなり、光の集束が抑制される。従って、例えば太陽光が車両用灯具1の外部からフロントカバー12を介して車両用灯具1の筐体10の内部に入射しても、この車両用灯具1では、太陽光に含まれる赤外光の曲がり角は上記の屈曲力によって太陽光に可視光の曲がり角よりも小さくなるため、投影レンズに比べて、メタ領域は光源部20に進行する赤外光の集光を抑制し得る。赤外光の集光が抑制されると、投影レンズに比べて、赤外光の集光による光源部20の劣化が抑制され得る。
【0131】
また、光源部20の劣化が抑制されると、光源部20から出射される光Lへの光源部20の劣化による影響が抑制され、所定の配光パターンが投影され得る。
【0132】
また、ナノ構造体35の形状が円柱形状とすることで、光源部20からの可視光がランダム偏光であっても、当該可視光が効率的に屈曲し得る。
【0133】
可視光を屈曲する屈曲力より赤外光を屈曲する屈曲力が小さいメタ領域を有するメタレンズ30を備える車両用灯具1について、第6実施形態を例に説明したが、このような車両用灯具1はこれに限定されるものではない。第6実施形態の変形例について以下に説明する。
【0134】
第6実施形態の車両用灯具1では、車両用灯具1の外部から車両用灯具1の内部に入射する光として太陽光を用いて説明したが、当該光は、太陽光に限定される必要はなく、車両用灯具1の外部から車両用灯具1の内部に入射する赤外光及び可視光であればよい。また、波長の比が1:1.5の一例として、可視光の最長波長を660nmとし、赤外光の最短波長が1000nmとしているが、当該比が1:1.5であれば、可視光及び赤外光のそれぞれの波長は特に限定されない。
【0135】
車両用灯具1から投影される配光パターンは、ロービーム用の配光パターンであってもよいし、ハイビーム用の配光パターンであってもよい。
【0136】
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態では、光源部20及びメタレンズ30の構成が第1実施形態と異なる。
【0137】
図16は、本実施形態における車両用灯具を図1と同様に示す図である。また、図17は、本実施形態における光源部20から出射する光の分光分布、及びメタレンズ30の光の透過率分布を概略的に示す図である。なお、図17において、横軸は波長であり、第1の縦軸は最大強度を基準とする相対強度であり、第2の縦軸は最大の透過率を基準とする相対的な透過率である。また、図17では、分光分布が細線で示され、透過率分布が太線で示されている。本実施形態では、光源部20から出射する光Lの波長帯域は、概ね380nmから780nmである。また、図17に示すように、この光Lの分光分布90は、4つのピーク91,92,93,94を有する。それぞれのピーク91,92,93,94における波長91w,92w,93w,94wは、波長91w、波長92w、波長93w、波長94wの順で長くなる。波長91wは概ね410nmであり、波長92wは概ね460nmであり、波長93wは概ね530nmであり、波長94wは概ね620nmである。このため、複数のピーク91,92,93,94における波長91w,92w,93w,94wうち、波長91wが最短であり、波長94wが最長である。また、これらピーク91,92,93,94における波長91w,92w,93w,94wは可視光の波長帯域に含まれる。なお、分光分布90は、可視光線の波長帯域に含まれないピークを有していてもよい。また、分光分布90のピークの数は制限されず、例えば、分光分布90はピークを有さなくてもよい。また、光源部20から出射する光Lは、複数の発光素子21から出射する光であるため、それぞれの発光素子21から出射する光の分光分布は、図17に示す分光分布90と概ね同じである。
【0138】
例えば日中に車両が上り坂を走行しているときなどにおいて、図16に示すように、太陽光L2がフロントカバー12を介して灯室R内に入射し、メタレンズ30を透過して光源部20に照射される場合がある。本実施形態では、メタレンズ30は当該メタレンズ30を透過する光源部20からの光Lの発散角を小さくする。このため、メタレンズ30を透過する太陽光L2は、集光して光源部20に照射される。
【0139】
図18は、地表近くでの太陽光L2の分光分布、及び本実施形態のメタレンズ30の光の透過率分布を概略的に示す図である。なお、図18において、横軸は波長であり、縦軸は最大強度を基準とする相対強度であり、第2の縦軸は最大の透過率を基準とする相対的な透過率である。また、図18では、分光分布が細線で示され、300nmから2500nmの範囲における透過率分布が太線で示されている。図18に示すように、太陽光L2には可視光とともに赤外光も含まれる。
【0140】
また、ナノ構造体を含むセルが配列されたメタ領域を有するメタレンズでは、特定の波長の光の透過率が他の波長の光の透過率よりも極端に低くなる現象が生じる場合があり、この特定の波長は複数あることが知られている。これら特定の波長は、メタレンズにおける光の不透過率がピークとなる波長であり、共鳴波長と呼ばれる。これら共鳴波長は、それぞれのセルにおけるナノ構造体の大きさや形状、当該ナノ構造体を構成する材料の屈折率等に応じて決まる。本実施形態では、図18に示すように、メタレンズ30における複数の共鳴波長のうち、最長の共鳴波長30w1及び2番目に長い共鳴波長30w2は、800nm以上2400nm未満の範囲に含まれ、2番目に長い共鳴波長30w2は、800nm以上900nm未満の範囲に含まれる。具体的には、共鳴波長30w1は概ね1700nmであり、共鳴波長30w2は概ね850nmである。また、3番目に長い共鳴波長30w3は概ね425nmである。なお、図18には、これら共鳴波長30w1,30w2,30w3を示す一点鎖線SL1,SL2,SL3が記載されている。また、図17には、共鳴波長30w3を示す一点鎖線SL3が記載されている。図17に示すように、共鳴波長30w3は、光源部20から出射する光Lの波長帯域に含まれており、光源部20からの光Lは共鳴波長30w3と同じ波長の光を含む。しかし、この共鳴波長30w3は、当該光Lの分光分布90におけるピーク91,92,93,94の波長91w,92w,93w,94wと異なる。このため、メタレンズ30における複数の共鳴波長の全ては、これらピークの波長と異なる。また、この共鳴波長30w3は、互いに隣り合うピーク91,92の波長91w,92w間の波長である。なお、メタレンズ30における少なくとも1つの共鳴波長が800nm以上2400nm未満であればよい。例えば、最長の共鳴波長が共鳴波長30w2であり、2番目に長い共鳴波長が共鳴波長30w3であってもよい。
【0141】
上記のように、本実施形態の車両用灯具1では、メタレンズ30における少なくとも1つの共鳴波長は、800nm以上2400nm未満である。また、図18に示すように、一般的に地表近くにおける太陽光には、800nmから2400nmの波長帯域の光が含まれる。このため、本実施形態の車両用灯具1によれば、太陽光L2がメタレンズ30を透過して光源部20に照射されるとき、メタレンズ30が投影レンズとされる場合と比べて、太陽光L2のうち800nmから2400nmの波長の光の光源部20への照射量を低減できる。従って、本実施形態の車両用灯具1によれば、上記の場合と比べて、太陽光L2による光源部20の加熱量を少なくし得、太陽光L2による光源部20の劣化を抑制し得る。
【0142】
本実施形態の車両用灯具1では、共鳴波長30w2は、800nm以上900nm未満の範囲に含まれる。図18に示すように、一般的に地表近くにおける太陽光L2の強度は、800nm以上の波長帯域において、波長が長くなるに従い小さくなる傾向にある。なお、太陽光L2の分光分布100は、強度が急激に小さくなる谷を複数有する。この谷における最小の強度は、例えば、当該谷の近傍における強度の50%以下である。このような谷は800nm以上900nm未満の範囲に位置しない傾向にある。このため、上記のような構成にすることで、太陽光L2がメタレンズ30を透過して光源部20に照射されるときの太陽光L2による光源部20の加熱量を少なくし易い。なお、800nm以上900nm未満の範囲に複数の共鳴波長が含まれてもよく、この範囲に共鳴波長が含まれなくてもよい。
【0143】
本実施形態の車両用灯具1では、光源部20から出射する光Lの分光分布90は、4つのピーク91,92,93,94を有する。複数の共鳴波長は、ピーク91,92,93,94の波長91w,92w,93w,94wと異なる。分光分布90のピーク91,92,93,94における波長の光は、車両用灯具から出射する光の色調に大きく影響する傾向にある。このため、本実施形態の車両用灯具1によれば、出射する光の色調に大きく影響する波長の光のメタレンズ30での透過率が低くなることを抑制し得、所望の色調の光を出射し得る。
【0144】
なお、所望の色調の光を出射する観点では、分光分布90は複数のピークを有し、複数の共鳴波長が複数のピークのそれぞれの波長と異なっていればよい。例えば、複数の共鳴波長が光源部20から出射する光Lの波長帯域に含まれていてもよい。また、本実施形態では、光源部からの光Lの波長帯域に含まれる共鳴波長30w3は、互いに隣り合うピーク91,92の波長91w,92w間の波長である。このような場合、共鳴波長30w3は、互いに隣り合うピーク91,92間において強度が最小である光Lの波長と同じであることが好ましい。このような構成にすることで、ピーク91,92間において強度が最小である光を除く光の波長とこの共鳴波長30w3とが同じ場合と比べて、出射する光量の低下を抑制し得る。
【0145】
また、出射する光量の低下を抑制する観点では、分光分布90の全体における最大の強度に対する光源部20からの光Lにおける共鳴波長30w3の光の強度の比は、0.1以下であることが好ましい。このような構成にすることで、この比が0.1を超える場合と比べて、出射する光量の低下を抑制し得る。また、このような構成にすることで、この比が0.1を超える場合と比べて所望の色調の光を出射し易くし得る。なお、この比は、ゼロであることがより好ましい。しかし、この比は、0.1を超えていてもよい。また、出射する光量の低下を抑制する観点では、光源部20からの光L全体の光量に対する光源部20からの光Lにおける共鳴波長30w3の光量の割合は4%未満であることが好ましい。
【0146】
また、本実施形態の車両用灯具1は、上記のように、メタレンズ30は当該メタレンズ30を透過する光源部20からの光Lの発散角を小さくする。このため、メタレンズ30を透過する太陽光L2は集光して光源部20に照射されるため、メタレンズ30が光源部20からの光Lの発散角を大きくする場合と比べて、光源部20が劣化する可能性が高い。このため、本実施形態の車両用灯具1は、光源部20からの光Lの発散角を小さくする場合に特に有用である。
【0147】
また、本実施形態の車両用灯具1は、光源部20とメタレンズ30とを収容する筐体10を備える。このような車両用灯具1では、太陽光L2のメタレンズ30への入射角によっては、メタレンズ30を透過した太陽光L2が筐体10の内面に照射される場合がある。本実施形態の車両用灯具1によれば、太陽光L2がメタレンズ30を透過して筐体10に照射されるとき、メタレンズ30が投影レンズとされる場合と比べて、太陽光L2のうち800nmから2400nmの波長の光の筐体10の内面への照射量を低減できる。
【0148】
少なくとも1つの共鳴波長が800nm以上2400nm未満であるメタレンズ30を備える車両用灯具1について、第7実施形態を例に説明した。しかし、このような車両用灯具1はこれに限定されるものではない。第7実施形態の変形例について以下に説明する。
【0149】
例えば、第7実施形態では、複数の共鳴波長が光源部20から出射する光Lの波長帯域に含まれる共鳴波長30w3を含むメタレンズ30を例に説明した。しかし、メタレンズ30における複数の共鳴波長の全ては、光源部20から出射する光Lの波長帯域に含まれなくてもよい。換言すれば、光源部20から出射する光Lは、メタレンズ30における複数の共鳴波長の全てを含まなくてもよい。このような構成にすることで、少なくとも1つの共鳴波長が光源部20から出射する光Lの波長帯域に含まれる場合と比べて、所望の色調の光を出射し得る。
【0150】
また、第7実施形態では、複数の共鳴波長の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なるメタレンズ30を例に説明した。しかし、所望の色調の光を出射する観点では、複数の共鳴波長が複数のピークのそれぞれの波長と異なっていればよく、例えば、特定の共鳴波長があるピークの波長と同じであってもよい。なお、所望の色調の光を出射する観点では、複数の共鳴波長の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なることが好ましい。
【0151】
また、所望の色調の光を出射する観点では、メタレンズ30の光の透過率分布は、メタレンズ30を透過する光源部20からの光Lの最大の透過率を基準とする相対的な透過率が80%以下であり1つの共鳴波長を含む連続した共鳴波長帯域を複数含み、これら共鳴波長帯域の少なくとも1つが複数のピークのそれぞれの波長と異なることが好ましい。この場合、これら共鳴波長帯域の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。なお、メタレンズ30の光の透過率分布がメタレンズ30を透過する光源部20からの光Lの最大の透過率を基準とする相対的な透過率が60%以下であり1つの共鳴波長を含む連続した共鳴波長帯域を複数含む場合には、これら共鳴波長帯域の少なくとも1つが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。この場合、これら共鳴波長帯域の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。また、メタレンズ30の光の透過率分布がメタレンズ30を透過する光源部20からの光Lの最大の透過率を基準とする相対的な透過率が40%以下であり1つの共鳴波長を含む連続した共鳴波長帯域を複数含む場合には、これら共鳴波長帯域の少なくとも1つが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。この場合、これら共鳴波長帯域の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。
【0152】
なお、所望の色調の光を出射し易くする観点では、第7実施形態と異なり、例えば、メタレンズにおける最長の共鳴波長は、光源部からの光の分光分布のピークにおける波長のうち最短の波長より短くてもよい。つまり、このようになるように光源部やメタレンズを構成してもよい。以下、このような変形例について図19を参照して説明する。なお、第7実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。図19は、第5変形例に係る光源部20から出射する光の分光分布90、及びメタレンズ30の光の透過率分布を図17と同様に示す図である。本変形例では、メタレンズ30の共鳴波長が上記実施形態における共鳴波長と異なる。また、分光分布90は上記実施形態の分光分布90と同じであるが、異なっていてもよい。また、メタレンズ30における最長の共鳴波長30w1は、光源部20からの光Lの波長帯域に含まれる。しかし、上記のように、この最長の共鳴波長30w1は、複数のピーク91,92,93,94のそれぞれにおける波長91w,92w,93w,94wのうち最短の波長91wより短い。このため、メタレンズ30における複数の共鳴波長の全ては、波長91wより短い。本変形例の車両用灯具1によれば、メタレンズ30における最長の共鳴波長30w1が上記の最短の波長91wより長い場合と比べて、出射する光の色調に大きく影響する波長の光のメタレンズでの透過率が低くなることを抑制し得る。従って、本変形例の車両用灯具1によれば、上記の場合と比べて、所望の色調の光を出射し易くし得る。なお、所望の色調の光を出射し易くする観点では、メタレンズ30における最長の共鳴波長30w1は、光源部20からの光Lの波長帯域における最短の波長より短くてもよい。また、この観点では、メタレンズ30における最長の共鳴波長30w1は、可視光の波長帯域における最短の波長、例えば、380nmより短くてもよい。つまり、このようになるようにメタレンズ30を構成してもよい。
【0153】
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。本実施形態では、光源部20及びメタレンズ30の構成が第1実施形態と異なる。
【0154】
図20は、本実施形態における光源部20から出射する光の分光分布、及びメタレンズ30の光の透過率分布を概略的に示す図である。なお、図20において、横軸は波長であり、第1の縦軸は最大強度を基準とする相対強度であり、第2の縦軸は最大の透過率を基準とする相対的な透過率である。また、図20では、分光分布が細線で示され、透過率が太線で示されている。図20に示すように、本実施形態では、分光分布90は、4つのピーク91,92,93,94を有する。それぞれのピーク91,92,93,94における波長91w,92w,93w,94wは、波長91w、波長92w、波長93w、波長94wの順で高くなる。波長91wは概ね410nmであり、波長92wは概ね460nmであり、波長93wは概ね530nmであり、波長94wは概ね620nmである。このため、複数のピーク91,92,93,94における波長91w,92w,93w,94wのうち、波長91wが最短であり、波長94wが最長である。また、これらピーク91,92,93,94における波長91w,92w,93w,94wは可視光の波長帯域に含まれる。なお、分光分布90は、可視光の波長帯域に含まれないピークを有していてもよい。また、光源部20から出射する光Lは、複数の発光素子21から出射する光であるため、それぞれの発光素子21から出射する光の分光分布は、図20に示す分光分布90と概ね同じである。
【0155】
本実施形態では、ナノ構造体35の形状は円柱形状であり、直径は図20に示すピーク94の波長94wより小さい。なお、ナノ構造体35の幅が、ピーク91,92,93,94のそれぞれにおける波長のうち最長の波長94wより小さければよく、ナノ構造体35の形状は特に制限されるものではない。
【0156】
第7実施形態で説明したように、メタレンズにおける共鳴波長は、それぞれのセルにおけるナノ構造体の大きさや形状、当該ナノ構造体を構成する材料の屈折率等に応じて決まる。本実施形態では、メタレンズ30における複数の共鳴波長の全ては、それぞれのピーク91,92,93,94における波長91w,92w,93w,94wと異なる。また、図20に示すように、メタレンズ30における複数の共鳴波長のうち、最長の共鳴波長30w1は波長94wより長く、2番目に長い共鳴波長30w2は、光源部20からの光Lの波長帯域に含まれる。なお、図20には、これら共鳴波長30w1,30w2を示す一点鎖線SL1,SL2が記載されている。本実施形態では、2番目に長い共鳴波長30w2は、これら波長91w,92w,93w,94wのうち最短の波長91wを超えかつ最長の波長92w未満である。複数の共鳴波長に最短の波長91wを超えかつ最長の波長94w未満である共鳴波長が含まれないようにする場合、それぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状、セル33の配列等の設計が複雑になる傾向にある。このため、本実施形態では、これらの設計が複雑になることを抑制し得る。なお、複数の共鳴波長に波長91wを超えかつ波長94w未満である共鳴波長が含まれなくてもよい。また、本実施形態では、ピーク91,92,93,94のうち互いに隣り合うピーク92,93間において強度が最小である光源部20からの光の波長と、2番目に長い共鳴波長30w2とが同じである。なお、ピーク92,93間において強度が最小である光源部20からの光の波長とこの共鳴波長30w2とが異なっていてもよい。また、この共鳴波長30w2は、ピーク91,92間の波長であってもよく、ピーク93,94間の波長であってもよく、これらピーク間において強度が最小である光源部20からの光の波長とこの共鳴波長30w2とは同じであってもよく、異なっていてもよい。また、メタレンズ30における複数の共鳴波長は、最短の波長91wを超えかつ最長の波長94w未満である共鳴波長を複数含んでいてもよい。
【0157】
前述した特許文献3の発光モジュールでは、LEDから出射する光の波長や蛍光体を適宜選択することで、出射する光の色調を調節し得る。このため、このような発光モジュールを車両用灯具の光源部に用いることで、所望の色調の光を車両用灯具から出射し得ると考えられる。本実施形態の車両用灯具1では、上記のように、光源部20から出射する光の分光分布90は、複数のピーク91,92,93,94を有する。このため、本実施形態の車両用灯具1によれば、この分光分布90が1つのピークのみを有する場合と比べて、出射する光の色調を所望の色調にし得る。また、本実施形態のメタレンズ30における複数の共鳴波長は、複数のピーク91,92,93,94のそれぞれの波長91w,92w,93w,94wと異なる。複数のピーク91,92,93,94におけるそれぞれの波長91w,92w,93w,94wの光は、車両用灯具1から出射する光の色調に大きく影響する。このため、本実施形態の車両用灯具1によれば、出射する光の色調に大きく影響する波長91w,92w,93w,94wの光のメタレンズ30での透過率が低くなることを抑制し得、所望の色調の光を出射し得る。
【0158】
本実施形態の車両用灯具1では、メタレンズ30における複数の共鳴波長は、複数のピーク91,92,93,94のそれぞれの波長91w,92w,93w,94wのうち最短の波長91wを超えかつ最長の波長94w未満である共鳴波長30w2を含む。また、互いに隣り合うピーク92,93間において強度が最小である光源部20からの光の波長と、この共鳴波長30w2とが同じである。このような構成にすることで、ピーク92,93間において強度が最小である光を除く光の波長とこの共鳴波長30w2とが同じ場合と比べて、出射する光量の低下を抑制し得る。
【0159】
出射する光の分光分布が複数のピークを有する光源部20と、複数の共鳴波長がこれら複数のピークのそれぞれの波長と異なるメタレンズ30とを備える車両用灯具1について、第8実施形態を例に説明した。しかし、このような車両用灯具1はこれに限定されるものではない。第8実施形態の変形例について以下に説明する。
【0160】
例えば、第8実施形態では、分光分布90が4つのピーク91,92,93,94を有する光Lを出射する光源部20を例に説明した。しかし、光源部20は、分光分布が複数のピークを有する光を出射する構成であればよい。例えば、光源部20は発光素子21から出射する光の一部を遮光する遮光板を有していてもよく、発光素子21から出射する光の少なくとも一部を反射する反射板を有していてもよい。また、光源部20から出射する光Lの分光分布90が有するピークの数は特に制限されない。例えば、光源部20は、図21に示す分光分布の光を出射する構成であってもよい。なお、図21は、第6変形例に係る光源部から出射する光の分光分布、及びメタレンズの光の透過率分布を図20と同様に示す図である。以下、光源部から出射する光の分光分布が図21に示す分光分布となる第6変形例について説明する。なお、第8実施形態と同一又は同等の構成要素については、特に説明する場合を除き、同一の参照符号を付して重複する説明は省略する。
【0161】
本変形例における分光分布90は、2つのピーク91,92を有する。ピーク91における波長91wは、ピーク92における波長92wより短い。本変形例では、波長91wは概ね460nmであり、波長92wは概ね570nmである。また、ピーク91における強度は、ピーク92における強度より高く、分光分布90の全体において最大である。また、本変形例におけるナノ構造体35の直径は、ピーク92における波長92wより小さい。また、本変形例のメタレンズ30における複数の共鳴波長の全ては、2つのピーク91,92のそれぞれの波長91w,92wと異なる。このため、本変形例の車両用灯具1は、第1実施形態と同様にして、複数の共鳴波長の少なくとも1つがいずれかのピーク91,92における波長91w,92wと同じ場合と比べて、所望の色調の光を出射し得る。
【0162】
また、2番目に長い共鳴波長30w2は、これら波長91w,92wのうち最短の波長91wを超えかつ最長の波長92w未満である。つまり、複数の共鳴波長に、これら波長91w,92wのうち最短の波長91wを超えかつ最長の波長92w未満である共鳴波長30w2が含まれる。このため、本変形例によれば、第1実施形態と同様に、それぞれのセル33におけるナノ構造体35の大きさや形状、セル33の配列等の設計が複雑になることを抑制し得る。
【0163】
また、本変形例では、互いに隣り合うピーク91,92間において強度が最小である光源部20からの光の波長と、共鳴波長30w2とが同じである。このため、本変形例によれば、第8実施形態と同様に、ピーク91,92間において強度が最小である光を除く光の波長とこの共鳴波長30w2とが同じ場合と比べて、出射する光量の低下を抑制し得る。
【0164】
また、本変形例では、メタレンズ30における複数の共鳴波長は、光源部20からの光Lの波長帯域に含まれる共鳴波長30w2を含む。分光分布90の全体における最大の強度は、ピーク91における強度であり、この強度に対する光源部20からの光Lにおける共鳴波長30w2の光の強度の比は、0.1以下である。このため、本変形例によれば、この比が0.1を超える場合と比べて、出射する光量の低下を抑制し得る。また、このような構成にすることで、この比が0.1を超える場合と比べて所望の色調の光を出射し易くし得る。なお、この比は、ゼロであることがより好ましい。しかし、この比は、0.1を超えていてもよい。また、出射する光量の低下を抑制する観点では、光源部20からの光L全体の光量に対する光源部20からの光Lにおける共鳴波長30w2と同じ波長の光量の割合は4%未満であることが好ましい。
【0165】
また、第8実施形態、及び第6変形例では、2番目に長い共鳴波長30w2が光源部20からの光Lの波長帯域に含まれるメタレンズ30を例に説明した。しかし、最長の共鳴波長30w1が光源部20からの光Lの波長帯域に含まれていてもよく、全ての共鳴波長が光源部20からの光Lの波長帯域に含まれていなくてもよい。
【0166】
また、第8実施形態、及び第6変形例では、複数の共鳴波長の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なるメタレンズ30を例に説明した。しかし、複数の共鳴波長が複数のピークのそれぞれの波長と異なっていればよく、例えば、特定の共鳴波長があるピークの波長と同じであってもよい。なお、所望の色調の光を出射する観点では、複数の共鳴波長の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なることが好ましい。
【0167】
また、所望の色調の光を出射する観点では、メタレンズ30の光の透過率分布は、メタレンズ30を透過する光源部20からの光Lの最大の透過率を基準とする相対的な透過率が80%以下であり1つの共鳴波長を含む連続した共鳴波長帯域を複数含み、これら共鳴波長帯域の少なくとも1つが複数のピークのそれぞれの波長と異なることが好ましい。この場合、これら共鳴波長帯域の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。なお、メタレンズ30の光の透過率分布がメタレンズ30を透過する光源部20からの光Lの最大の透過率を基準とする相対的な透過率が60%以下であり1つの共鳴波長を含む連続した共鳴波長帯域を複数含む場合には、この共鳴波長帯域の少なくとも1つが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。この場合、これら共鳴波長帯域の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。また、メタレンズ30の光の透過率分布がメタレンズ30を透過する光源部20からの光Lの最大の透過率を基準とする相対的な透過率が40%以下であり1つの共鳴波長を含む連続した共鳴波長帯域を複数含む場合には、これら共鳴波長帯域の少なくとも1つが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。この場合、これら共鳴波長帯域の全てが複数のピークのそれぞれの波長と異なることがより好ましい。
【0168】
以上、本発明について、上記実施形態及び変形例を例に説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0169】
例えば、上記実施形態では、車両用灯具1は、前照灯とされたが、特に制限されるものではない。例えば、車両用灯具1は、画像を構成する光を路面等の被照射体に照射するものとされてもよい。また、車両用灯具が画像を構成する光を路面等の被照射体に照射するものとされる場合、車両用灯具が出射する光の方向や車両用灯具が車両に取り付けられる位置は特に限定されない。また、車両用灯具が出射する光の色は白色に制限されるものではない。
【0170】
また、上記実施形態では、光源部20からの光Lの発散角を小さくするメタレンズ30を例に説明した。しかし、メタレンズ30は、光源部20からの光Lの発散角を大きくするように構成されてもよい。
【0171】
また、上記実施形態では、メタ領域としての主面31sや主面32sが平面状であるメタレンズ30を例に説明した。しかし、メタ領域としての主面31sや主面32sは曲面状であってもよい。しかし、メタレンズ30を薄くする観点では、メタ領域としての主面31sや主面32sは平面状であることが好ましい。
【0172】
また、上記の第1~第4実施形態では、3つ以上のピーク61を有する特定の位相分布60を例に説明した。しかし、ピーク61の数は特に制限されるものではなく、例えば、特定の位相分布60はピーク61を有さなくてもよい。
【0173】
本発明によれば、小型化し得る車両用灯具が提供され、自動車等の車両用灯具などの分野において利用可能である。

図1
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