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特許7610607電離放射線放出から防護するための遮蔽板
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】電離放射線放出から防護するための遮蔽板
(51)【国際特許分類】
   G21F 3/00 20060101AFI20241225BHJP
   A61B 6/10 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
G21F3/00 S
A61B6/10 502
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022543454
(86)(22)【出願日】2021-01-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2021050531
(87)【国際公開番号】W WO2021144289
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2023-12-01
(31)【優先権主張番号】2000403
(32)【優先日】2020-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520222139
【氏名又は名称】ルメール パクス
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】ルメール ピエール-マリー
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-042292(JP,A)
【文献】実開昭63-068305(JP,U)
【文献】特表2010-525910(JP,A)
【文献】特表2005-523437(JP,A)
【文献】国際公開第2018/109380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/00
A61B 6/00
A61N 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線種又は他の電離放射線の放出からオペレータを防護するための放射線防護遮蔽板(1)であって、前記遮蔽板(1)は、少なくとも部分的に放射線防護材料から作られた前壁(2)を備え、前記前壁(2)は、オペレータが位置する空間(E)に面する前壁内面(24)と、前記前壁内面(24)の反対側の前壁外面(25)と、上部(26)と、下部(27)と、前記上部(26)及び下部(27)の間に位置する中間部(28)とを備え、前記上部(26)は、少なくとも1つの透明パネル(261)を備え、前記中間部(28)は、材料及び/又は前記オペレータの腕の通過に適したエアロック構造(7)を備え、
前記エアロック構造(7)が、柔軟閉鎖構造(72)に関連付けられたエアロック開口部(71)を備え、前記エアロック開口部(71)は、水平又はほぼ水平な下部開口縁(711)を備え、
及び、前記遮蔽板(1)が、材料及び/又はオペレータの腕を支持するのに適した支持装置(73)を備え、前記支持装置(73)は、前記前壁の内面(24)側で、前記下部開口縁(711)に配置されている放射線防護遮蔽板(1)において、
前記支持装置(73)が、前記下部開口縁(711)に近接して位置する近位端(731)と、反対側の遠位端(732)とを備えること、及び前記支持装置(73)の前記近位端(731)が、垂直又はほぼ垂直な軸(733)を中心に枢動可能に取り付けられることを特徴とする放射線防護遮蔽板。
【請求項2】
前記下部開口縁(711)の長さの少なくとも一部にわたって前記支持装置(73)の位置を調整することを可能にする調整手段(74、7111)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項3】
前記調整手段が、前記下部開口縁(711)に沿って形成され、前記支持装置(73)と一体のスライダ構造(74)と協働するレール構造(7111)からなり、前記スライダ構造(74)は、前記レール構造(7111)上のその位置をロックできるように適合されたロック手段を備えることを特徴とする、請求項に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項4】
前記支持装置(73)が細長いボディの形態であることを特徴とする、請求項1に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項5】
前記支持装置(73)がU字形断面のシュートの形態であることを特徴とする、請求項に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項6】
前記前壁(2)が、(a)前記前壁の外面(25)の少なくとも一部を形成する外側パネル(8)であって、前記前壁の中間部(28)に位置する外側パネル開口部(81)を備える外側パネル(8)と、(b)前記前壁の内面(24)の側で、前記外側パネルの開口部(81)に対向して配置された、垂直方向に移動可能な内側パネル(9)とを備え、
前記内側パネル(9)は内側パネル開口部(91)を備え、前記内側パネル開口部(91)は前記柔軟閉鎖構造(72)を備え、前記支持装置(73)を備えた前記下部開口縁(711)を備え、
前記外側パネル開口部(81)と前記内側パネル開口部(91)は前記エアロック開口部(71)を一緒に形成し、
前記内側パネル(9)は、前記エアロック開口部(71)の高さレベルを調整することができるように前記外側パネル(8)に対して垂直方向に移動可能に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項7】
前記内側パネル(9)が、重量補償手段と関連して、前記外側パネル(8)に設けられた垂直レール(82)に沿って移動可能に取り付けられ、前記内側パネル(9)は、操作ハンドル(92)を備え、その高さ位置を確実にロックするために前記外側パネル(8)に設けられた複数の割出孔と協働する割出突起を備えることを特徴とする、請求項に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項8】
前記内側パネル開口部(91)及び前記外側パネル開口部(81)がそれぞれ、水平に並置され、垂直支柱(83、93)によって分離された2つの開口部分を備えることを特徴とする、請求項に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項9】
前記柔軟閉鎖構造(72)が、放射線防護材料で作られた複数の垂直ストリップの並置からなることを特徴とする、請求項1に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項10】
前記前壁(2)が垂直又はほぼ垂直な平面内に延在し、2つの側縁(21)を備え、前記前壁(2)の前記側縁(21)の少なくとも一方は、前記前壁の内面(24)の側から見て、前記前壁の平面に対して90°~140°間の角度(X)で、垂直又はほぼ垂直な平面内に延在する側壁(3)によって延長し、
前記側壁(3)は、放射線防護材料で作られた柔軟フラップ(36)を備える外側縁(31)を備えることを特徴とする、請求項1に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項11】
前記前壁(2)が垂直又はほぼ垂直な平面内に延在し、それぞれ側壁(3)によって延長する2つの側縁(21)を備え、前記側壁(3)は、前記前壁内面(24)の側から見て、前記前壁(2)の平面に対して90°から140°の間の角度(X)で、垂直又はほぼ垂直な平面内にそれぞれ延在すること、
及び、前記エアロック構造(7)が、前記前壁(2)の全幅にわたって延在し、前記側壁(3)のそれぞれの幅の一部にわたって延在すること、
を特徴とする、請求項1に記載の放射線防護遮蔽板。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の放射線防護遮蔽板(1)の高さの少なくとも一部を覆うように意図されたカバーの形態の装備品であって、
少なくとも部分的に前記前壁(2)を覆うように適合された少なくとも1つの柔軟パネル(12)であって、前記前壁(2)の上部(26)の透明パネル(261)に対向して位置決めされるように意図された少なくとも1つの透明部分と、前記前壁(2)への固定手段とを備える、少なくとも1つの柔軟パネル(12)、
少なくとも1つの柔軟エアロック構造(13)であって、前記エアロック構造(7)の前記エアロック開口部(71)に関連付けられた柔軟閉鎖構造(72)を少なくとも部分的に覆うように適合され、前記少なくとも1つの柔軟エアロック構造(13)は、開口部を備えた柔軟ポケットの形態であり、前記柔軟ポケットは、前記柔軟ポケットの前記開口部における前記柔軟閉鎖構造(72)の下縁の係合によって前記柔軟閉鎖構造(72)を覆うよう適合されており、前記柔軟エアロック構造(13)はそれを前記エアロック構造(7)に取り付けるための手段を備える、少なくとも1つの柔軟エアロック構造(13)、及び
材料及び/又はオペレータの腕を支持するように適合された前記支持装置(73)を覆うための柔軟支持装置ポケット(14)であって、前記柔軟支持装置ポケット(14)は、それを前記支持装置(73)上に位置決めするためのポケット開口部を備え、前記柔軟支持装置ポケット(14)は、それを前記支持装置(73)に取り付けるための手段を備える、柔軟支持装置ポケット(14)、
を備えることを特徴とする装備品。
【請求項13】
請求項10または11に記載の放射線防護遮蔽板(1)の高さの少なくとも一部を覆うように意図されたカバーの形態の請求項12に記載の装備品であって、
少なくとも部分的に前記前壁(2)及び少なくとも部分的に前記側壁(3)を覆うように適合された少なくとも1つの柔軟パネル(12)であって、前記前壁(2)の上部(26)の透明パネル(261)に対向して位置決めされるように意図された少なくとも1つの透明部分と、前記前壁(2)及び前記側壁(3)への固定手段とを備える、少なくとも1つの柔軟パネル(12)、
少なくとも1つの柔軟エアロック構造(13)であって、前記エアロック構造(7)の前記エアロック開口部(71)に関連付けられた柔軟閉鎖構造(72)を少なくとも部分的に覆うように適合され、前記少なくとも1つの柔軟エアロック構造(13)は、開口部を備えた柔軟ポケットの形態であり、前記柔軟ポケットは、前記柔軟ポケットの前記開口部における前記柔軟閉鎖構造(72)の下縁の係合によって前記柔軟閉鎖構造(72)を覆うよう適合されており、前記柔軟エアロック構造(13)はそれを前記エアロック構造(7)に取り付けるための手段を備える、少なくとも1つの柔軟エアロック構造(13)、及び
材料及び/又はオペレータの腕を支持するように適合された前記支持装置(73)を覆うための柔軟支持装置ポケット(14)であって、前記柔軟支持装置ポケット(14)は、それを前記支持装置(73)上に位置決めするためのポケット開口部を備え、前記柔軟支持装置ポケット(14)は、それを前記支持装置(73)に取り付けるための手段を備える、柔軟支持装置ポケット(14)、
を備えることを特徴とする装備品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電離放射線に対する防護装置の分野に関する。
【0002】
本発明は、より詳細には、オペレータを電離放射線、例えばX線の放出から防護するための医療環境又は他の環境において使用される放射線防護遮蔽板に関する。本発明はまた、無菌の保護された環境で使用するために、そのような遮蔽板を覆うことによる包装のためのカバーの形態の装置に関する。
【背景技術】
【0003】
特定の検査又は介入の間、患者は管理、診断又は処置のために使用される電離放射線、特にX線タイプの電離放射線に暴露される。
【0004】
これは、カテーテル法、ペースメーカーの挿入、血管、神経学的又は泌尿器検査、CRM(Cardiac Rhythm Management、カーディアック・リズム・マネージメント)、CRT(Cardiac Resynchronization Therapy、心臓再同期療法)、又はX線透視法技術の実施時などの介入の場合に特に当てはまる。
【0005】
特に、X線透視法は、対象物のリアルタイム画像を得るためにX線を使用する画像化技術である。
【0006】
医療分野では、この技術を適用することにより、例えば心拍又は血管中の血液の流れなど、患者の内臓の構造及び機能の視覚化が可能になる。この技術は診断並びに治療に使用され、そしてこれは介入分野、特に放射線医学、心臓病学、神経学、電気生理学、末梢血管放射線医学、介入小児科学等で使用される。
【0007】
これらの特殊分野専用の部屋には、X線透視装置(Cアームとも呼ばれる)が装備されており、それは、一端がX線放出装置を担持し他端が検出器を備える大型のアーチが延びる可動式技術的筐体の全体形状をとる。
【0008】
装備された部屋では、カテーテル及びプローブが診断又は治療目的のためにアクセス経路(通常大腿動脈又は橈骨動脈)に導入される。血管網は、しばしば造影製品の注入と組み合わせて、X線の使用により視覚化される。
【0009】
これらのX線透視装置は診察台周りの重要な空間を占め、それらの位置は診察又は処置される患者の身体領域に応じて頻繁に変更される。
【0010】
特に、X線に対して透明であるためX線透視画面では見えない心臓の部分を可視化するために、特定種類の介入には超音波エコー検査技術の補助が必要である。
【0011】
この超音波を用いる技術は、例えば僧帽弁が十分に閉じず、十分に密閉されない場合に、僧帽弁にステープルを打つために実施される。
【0012】
このような経食道超音波エコー技術により、心腔内を可視化し、左心房や後心室壁の形態や異常を詳細に観察することができる。それらは、管状のプローブを咽頭から食道へ挿入し、トランスデューサを患者の心臓の右側に向けて使用する。プローブ制御ボックスがプローブの上流に設置され、施術者は様々な所望の設定を行うことができる。
【0013】
上流側でプローブ制御ボックスは、特に心臓画像を表示するための画面を備えるコンソールに接続されている。
【0014】
オペレータ(医師、外科医、技師、看護師など)を、放出された電離放射線(放出装置から直接来る一次的な種類のもの、又は装置によって反射される、また患者自身から直接来る二次的な種類のもの)から適切に防護することが重要であり、それができない場合、時間の経過と共に蓄積され、様々な病状(上肢の壊死、脳腫瘍、白内障、放射性皮膚炎など)を引き起こしやすい大量の線量に彼らを暴露するという罰を受けることは理解されよう。
【0015】
このため、放射線防護材料で作られたブラウス、肩掛け、エプロン、甲状腺プロテクター、眼鏡などの衣服からなる防護構造が存在するが、必ずしも全身を覆うものではなく、その重さはオペレータの快適性を損ない、動きを制限し、疲労を早めることになる。さらに、鉛防護の等価性は、厚さ0.5mmが限度である。
【0016】
適切な放射線防護材料から作られたパネル又はパネルアセンブリからなり、適合された支持体から吊り下げられ、又は直接若しくは転がる基部を介して床に置かれる遮蔽板又はシールドも存在する。
【0017】
このような放射線防護遮蔽板構造は、米国特許出願公開第2012/0049093号明細書、米国特許出願公開第2006/0076522号明細書、FR2,915,868号明細書、国際公開第2009/156660号パンフレット、さらに米国特許第3,308,297号明細書に記載されている。
【0018】
しかしながら、これまで知られている遮蔽板構造は、特に、そのような介入の間に取り扱われなければならない材料又は装置の存在のために、前述の超音波エコー技術の実施に完全に適しているわけではない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
最先端技術の前述の欠点を改善するために、本発明は、X線種又は他の電離放射線の放出からオペレータを確実に防護する放射線防護遮蔽板を提案し、この遮蔽板は、少なくとも部分的に放射線防護材料で作られた前壁を備え、この前壁は、オペレータが位置する空間に向けられた前壁の内面と、前記前壁の内面の反対側の前壁の外面と、上部と、下部と、前記上部及び下部の間に位置する中間部とを備え、この上部は、少なくとも1つの透明パネルを備え、この中間部は、材料及び/又は前記オペレータの腕の通過に適したエアロック構造を備え、
この放射線防護遮蔽板は、前記エアロック構造が、柔軟閉鎖構造に関連付けられたエアロック開口部を備え、このエアロック開口部は、水平又はほぼ水平な下部開口縁を備えること、
及び、遮蔽板が、材料及び/又はオペレータの腕を支えるのに適した支持装置を備え、この支持装置は、前記前壁の内面側で、前記下部開口縁のレベルに配置されていることを特徴とする。
【0020】
オペレータが位置する空間に延在するこのような支持装置は、このオペレータによる材料や機器の取り扱いを容易にするため、オペレータの経時的な疲労を軽減し、オペレータの動作の精度を向上させる。
【0021】
本発明による放射線防護遮蔽板の他の非限定的且つ有利な特徴は、個別に取り上げると又はすべての技術的に可能な組み合わせによれば、以下の通りである:
- 前記支持装置は、前記開口部の下縁に近接して位置する近位端と、反対側の遠位端とを備え、前記支持装置の前記近位端は、垂直又はほぼ垂直な軸を中心に枢動可能に取り付けられる;
- 前記放射線防護遮蔽板は、前記下部開口縁の長さの少なくとも一部にわたって前記支持装置の位置を調整可能な調整手段を備える;
- 前記調整手段は、前記開口部の下縁に沿って形成され、前記支持装置と一体のスライダ構造と協働するレール構造からなり、このスライダ構造は、前記レール構造上の位置をロックできるように適合されたロック手段を備える;
- 前記支持装置は、細長いボディの形態である;
- 前記支持装置は、U字形断面のシュートの形態である;
- 放射線防護遮蔽板の前記前壁は、(a)前記前壁の外面の少なくとも一部を形成する外側パネルであって、前壁の中間部のレベルに位置する外側パネル開口部を備える外側パネルと、(b)前記前壁の内面の側で、前記外側パネル開口部に対向して配置され、垂直方向に移動可能な内側パネルとを備え、
この内側パネルは内側パネル開口部を備え、この内側パネル開口部は前記柔軟閉鎖構造を備え、前記支持装置を備えた前記開口部下縁を備え、
この外側パネル開口部と内側パネル開口部は前記エアロック開口部を一緒に形成し、
内側パネルは、前記エアロック開口部の高さレベルを調整することができるように前記外側パネルに対して垂直方向に移動可能に取り付けられる;
- 前記内側パネルは、重量補償手段と関連して、前記外側パネルに設けられた垂直レールに沿って移動可能に取り付けられ、この内側パネルは、操作ハンドルを備え、その高さ位置を確実にロックするために前記外側パネルに設けられた複数の割出孔と協働する割出突起を備える;
- 前記内側パネル開口部及び前記外側パネル開口部はそれぞれ、水平に並置され、垂直支柱によって分離された2つの開口部分を備える;
- 柔軟閉鎖構造は、放射線防護材料で作られた複数の垂直ストリップの並置からなる;
- 前記前壁は垂直又はほぼ垂直な平面内に延在し、2つの側縁を備え、前記前壁の前記側縁の少なくとも一方は、前壁の前記内面の側から見て、前記前壁の平面に対して90°~140°間の角度で、垂直又はほぼ垂直な平面内に延在する側壁によって延長され、この側壁は、放射線防護材料で作られた柔軟フラップを備える外側縁を備える;
- 前記前壁は垂直又はほぼ垂直な平面内に延在し、それぞれ側壁によって延長する2つの側縁を備え、この側壁は、前壁の前記内面の側から見て、前記前壁の平面に対して90°から140°の間の角度で、垂直又はほぼ垂直な平面内にそれぞれ延在し、
前記エアロック構造は、前記前壁の全幅にわたって延在し、前記側壁のそれぞれの幅の一部にわたって延在する;
- 放射線防護遮蔽板は、前壁の前記内面、又は適切な場合、その側壁の一方の内面に固定されたスクリーン支持体に取り付けられたスクリーンを備える;
- 放射線防護遮蔽板は、地面で支持される車輪を備えた基部を備え、その前壁の下部、及び必要に応じてその側壁の下部は、柔軟放射線防護材料のパネルを備える。
【0022】
本発明はまた、以下を含む、上記で定義された放射線防護遮蔽板の高さの少なくとも一部を覆うように意図されたカバーの形態の装備品に関する:
(a)前記前壁を少なくとも部分的に、及び適切な場合、前記一方又は両方の側壁を少なくとも部分的に覆うように適合された少なくとも1つの柔軟パネルであって、前記前壁の上部の透明パネルに対向して位置決めされるように意図された少なくとも1つの透明部分と、前記前壁及び/又は該当する場合、前記一方又は両方の側壁へ固定するための手段とを備える、少なくとも1つの柔軟パネル、
(b)少なくとも1つの柔軟エアロック構造であって、前記エアロック構造の前記エアロック開口部に関連付けられた柔軟閉鎖構造を少なくとも部分的に覆うように適合され、この少なくとも1つの柔軟エアロック構造は、開口部を備えた柔軟ポケットの形態であり、この柔軟ポケットは、前記柔軟ポケットの前記開口部における前記柔軟閉鎖構造の下縁の係合によって前記柔軟閉鎖構造を覆うよう適合されており、この柔軟エアロック構造はそれを前記エアロック構造に取り付けるための手段を備える、少なくとも1つの柔軟エアロック構造、及び
(c)材料及び/又はオペレータの腕を支持するように適合された前記支持装置を覆うための柔軟支持装置ポケットであって、この柔軟支持装置ポケットは、それを前記支持装置上に位置決めするためのポケット開口部を備え、この支持装置の柔軟ポケットは、それを前記支持装置に取り付けるための手段を備える、柔軟支持装置ポケット。
【0023】
当然のことながら、本発明の様々な特徴、変形及び実施形態は、互いに非両立的又は排他的でない限り、様々な組み合わせで互いに関連付けることができる。
【0024】
さらに、本発明の様々な他の特徴は、本発明の実施形態の非限定的な形態を示す図面を参照して作成された添付の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】内側から、すなわちオペレータが位置する空間側から斜視的に見た本発明による放射線防護遮蔽板を示す。
図2図1の放射線防護遮蔽板の内側の正面図である。
図3図1及び2に示された放射線防護遮蔽板の側面図である。
図4図1~3に示した放射線防護遮蔽板の外側(オペレータが位置する空間と反対側)の正面図である。
図5図1~4に示した放射線防護遮蔽板の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1~5に示される放射線防護遮蔽板1は、病院の手術室において、電離放射線源によって放出される電離放射線から、例えばCアームタイプのX線透視装置によって放出されるX線からオペレータを防護するのに適している。
【0027】
このため、この放射線防護遮蔽板1の様々な構成部分は、該当する構成部分に応じて、少なくとも0.2mmの適切な鉛等価性を有する放射線防護材料で作られている。例えば、すべての構成部分について、この鉛等価性は0.5mm~3mmである。
【0028】
より詳細には、放射線防護遮蔽板1は、例えば鋼の金属フレームからなり、このフレームは、透明パネル又はフレキシブルパネルなどの適切な放射線防護材料で作られた様々なパネルと関連付けられる。
【0029】
図1~5に示すように、この放射線防護遮蔽板1は、可動式キャビンの形態であり、両側に側壁3が、上部に天井構造4が延在する前壁2を備えており、このアセンブリは地面で支持される車輪6を備えた基部5上に搭載されている。
【0030】
前壁2は、垂直又はほぼ垂直な平面に延在する。
【0031】
この前壁2は、概ね長方形状であり、2つの側縁21、上縁22及び下縁23によって境界を定められる。前壁2は、オペレータが位置する空間Eに向けられた前壁の内面24と、前壁の内面24の反対側の前壁の外面25とを備える。
【0032】
側壁3はそれぞれ、前壁2の側縁21の一方を延長している。
【0033】
各側壁3は、概ね長方形状であり、前壁2の隣接する側縁21の全高又はほぼ全高にわたって延在する。
【0034】
これらの側壁3のそれぞれは、垂直又はほぼ垂直な平面に延在し、前壁の内面24の側から見て、前壁2の平面に対して90°~140°の角度X(図5)で傾斜している。
【0035】
好ましくは、前壁の内面24と各側壁3との間のこの角度Xは、110°~120°である。
【0036】
さらに、これら側壁3のそれぞれは、外側縁31、上縁32及び下縁33によって境界を定められ、オペレータが位置する空間Eに向けられた側壁内面34と、前記側壁内面34の反対側の側壁外面35とを備える。
【0037】
側壁3の外側縁31には、放射線防護材料で作られた柔軟フラップ36が備えられている。このような柔軟サイドフラップ36は、衝撃を吸収することを可能にし、周辺機器に接触した場合に、遮蔽板1又は周辺機器が破損するリスクを抑える。
【0038】
柔軟フラップ36は、例えば、液体の飛沫に耐性のある防護布で覆われた柔軟放射線防護材料のシートからなり、このシートは有利なことにそれ自体の上に折り重ねて二重の厚さを形成することができる。
【0039】
前壁2の上部26は、オペレータが遮蔽板1の反対側を視認できるように透明パネル261を備える。例えば、この透明パネル261は、鉛ガラス製であっても、放射線防護材料を添加したプラスチック材料製であってもよい。
【0040】
図示の実施形態では、透明パネル261は、前壁2の幅の一部にわたって延在する。変形実施形態では、この透明パネル261は、前壁2の全幅を占めてもよく、任意選択的に、横方向に延在して側壁3の表面の一部を占めてもよい。
【0041】
前壁2の下部27は、柔軟放射線防護材料のパネル272によって満たされた開口部271を備える。この柔軟パネル272は、機器(例えば、X線透視用Cアーム)との接触により変形して、分解を防ぐことができる一方、電離放射線に対して有効なバリアを構成している。
【0042】
ここで、この柔軟放射線防護材料のパネル271は、前壁2の全幅を占め、さらに側壁3の表面の一部も占めている。変形実施形態では、柔軟放射線防護材料のパネル271は、前壁2の幅の一部のみにわたって延在することができる。
【0043】
柔軟パネル272は、例えば、液体の飛沫に耐性のある防護布で覆われた柔軟放射線防護材料の多シート集合体からなることができ、その全体は柔軟放射線防護カーテンを形成する。
【0044】
その上部26と下部27の間に、前壁2は、遮蔽板の反対側への材料及び/又はオペレータの腕の通過を可能にするエアロック構造7を備えた中間部28を備える。
【0045】
エアロック構造7は、柔軟閉鎖構造72に関連付けられたエアロック開口部71を備える。エアロック開口部71は、下部開口縁711を備え、この下部開口縁711は、材料及び/又はオペレータの腕を支持するのに適した支持装置73を備える。
【0046】
支持装置73は、前壁の内面24の側に配置されている(すなわち、それは開口部の下縁711からオペレータが位置する空間Eに延びる)。ここでは、それはU字形断面のシュートの形態の細長い本体からなる。それは、開口部の下縁711に固定された近位端731と、オペレータが位置する空間Eに延在する反対側の遠位端732とを備える。支持装置73の近位端731は、垂直又はほぼ垂直な軸733を中心に、開口部の下縁711に隣接して枢動可能に取り付けられる。
【0047】
支持装置73の位置は、開口部の下縁711の長さの少なくとも一部に沿って調整することができる。
【0048】
このため、支持装置73の近位端731は、開口部の下縁711に沿って設けられたレール構造7111と協働するように適合されたスライダ構造74を備える。
【0049】
好ましくは、スライダ構造74は、その位置(ひいては支持装置73の位置)をレール構造7111に対してロックできるように適合されたロック手段75を備える。このロック手段75は、例えば、スライダ構造74に担持され、その端部がレール構造7111に接触するように配置されたクランプねじ、又はばね仕掛けのピストンからなることができる。
【0050】
オペレータが位置する空間Eに存在するオペレータは、エアロック7を介して作業する際に、支持装置73を腕や機器の支持体として使用できることが理解される。例えば支持装置73は、心臓外科医の補助として、音波検査者が操作する心臓内超音波エコー診断装置のプローブのボックス制御部の支持体として機能することができる。
【0051】
レール構造7111に沿った支持装置73の位置は、音波検査者の形態に応じて調整される。そして、この支持装置73が垂直軸733を中心に枢動可能に取り付けられていることにより、介入中の検査者の移動が容易になる。
【0052】
支持装置73の全体的な形状及び構造は、支持され、検査者によって操作されることが意図される材料/機器に応じて適合させることができる。
【0053】
より具体的には、放射線防護遮蔽板1の前壁2は、以下のものを備える:
- (a)中間前壁部28に位置する外側パネル開口部81を備える外側パネル8、及び
- (b)前壁の内面24の側で前記外側パネル開口部81に面して配置された垂直方向に移動可能な内側パネル9。この内側パネル9は、柔軟閉鎖構造72と、支持装置73を備える開口部の下縁711とを備える内側パネル開口部91を備える。
【0054】
外側パネル開口部81と内側パネル開口部91は、前述のエアロック開口部71を一緒に形成する。
【0055】
外側パネル開口部81は内側パネル開口部91より大きく、外側パネル開口部81に対向する内側パネル開口部91の位置によってエアロック開口部71は画定される。外側パネル開口部81の寸法及び位置は、内側パネル開口部91の高さのすべての許容/所望位置を可能にするように適合される。
【0056】
内側パネル9は、内側パネル開口部91、ひいてはエアロック開口部71の高さのレベルを適合させることができるように、外側パネル8に対して垂直方向に取り付けられる。
【0057】
このため、内側パネル9は、オペレータが位置する空間Eの方に向けられた面で外側パネル8に設けられた垂直ガイド82によって案内される。この内側パネル9には、その高さ位置を確実にロックするための操作ハンドル92と割出手段とがさらに設けられている。
【0058】
例えば、割出手段は、外側パネル8に設けられた複数の割出孔(図示せず)と協働する、操作ハンドル92に装着された後退可能な割出突起からなる。操作ハンドル92は、内側パネル9の移動に直交する水平方向の移動の可能性を有し、ロック位置に戻るための手段と関連付けられてもよい。
【0059】
好ましくは、放射線防護遮蔽板1はさらに、その高さ位置調整を容易にするために、エアロックの内側パネル9の重量を補償することを可能にする、重量補償手段(図示せず)を備える。これらの重量補償手段は、外側パネル8と内側パネル9との間に介在する、1つ又は複数のジャッキ(例えばガス式ジャッキ)から構成されてもよい。
【0060】
図1、2及び4から分かるように、図示の実施形態では、外側パネル開口部81及び内側パネル開口部91は、それぞれ垂直支柱83及び93によって分離された2つの水平に並置された開口部分を備える。
【0061】
これら2つの垂直支柱83、93は向かい合うように配置され、前述の重量補償ジャッキの支持体として使用することができる。
【0062】
柔軟閉鎖構造72は、垂直支柱93の両側にある内側パネル開口部91の2つの部分を装備する。
【0063】
この柔軟閉鎖構造72は、内側パネル開口部91の2つの部分をできるだけ効果的に閉鎖するように配置される一方、材料及び/又はオペレータの腕の通過を可能にするために分離できるようになっている。
【0064】
柔軟閉鎖構造72は、放射線防護材料で作られた複数の垂直ストリップの並置から構成されてもよく、この垂直ストリップの並置は、内側パネル開口部91の2つの部分のそれぞれの上部に(例えば、ねじ止め式締結金属プロファイルによって)固定可能であり、内側パネル開口部91の両方の部分の幅及び高さの全体にわたって延在する。
【0065】
このような柔軟ストリップは、鉛フリーの柔軟放射線防護材料からなるNovashield(登録商標)で作られた柔軟パネルから得ることができる。
【0066】
変形として、柔軟材料のストリップは、ジョイントで互いに接続された、放射線防護材料の剛性リンクの並置から形成されたストリップで置き換えることができる。
【0067】
添付の図に示すように、エアロック構造7は、前壁2の全幅にわたって、また各側壁3の幅の一部にわたって延在する。ここでは、このために、エアロック構造7の内側パネル9は、互いに角度的にオフセットされた3つの面の並置からなる3面体形状を有している。支持装置73を担持するレール構造7111は、内側パネル開口部91の2つの部分の下部開口縁711に沿って形成される。このレール構造7111は、内側パネル9の3面体形状に従う複数のセクションから構成される。
【0068】
代替実施形態では、前壁2は、単一の側壁3を備えてもよく、さらに別の実施形態では、この前壁2は、側壁を含まなくてもよい。エアロック構造7の全体的な形状は、それに応じて適合される。
【0069】
別の有利な特徴によれば、放射線防護遮蔽板1は、オペレータが位置する空間Eに配置されたスクリーン10を備える。
【0070】
このスクリーン10は、空間Eに位置するオペレータに有用な情報を表示するのに適している。例えば、このスクリーン10には、患者の生体パラメータ(心拍、体温、血圧等)や、X線透視システム(Cアーム)によって得られた画像を表示することができる。
【0071】
スクリーン10は、前壁の内面24又は側壁の内面34に固定されたスクリーン支持体11に取り付けられる。
【0072】
この場合、図示の実施形態では、スクリーン支持体11は、オペレータが位置する空間E側で側壁3のそれぞれに固定され、スクリーン10の最も賢明な位置の選択を可能にする。
【0073】
例えば、本発明による放射線防護遮蔽板1は、前壁2の外側パネル8及び側壁3の一部を形成する、12mm厚の金属シートフレームから作ることができ、この金属フレームは、以下のものを含む:
- オペレータが位置する空間Eの側に加えられ、任意の適切な手段、例えばプラスチックピンによって固定された、透明パネル261を位置決めするための上部開口部、
- 支持装置73を備えた可動内側パネル9に対向して位置決めするための、外側パネル開口部81、
- オペレータが位置する空間Eの側に取り付けられ、任意の適切な手段(例えば、下部開口部271の上縁のねじ込み式金属固定プロファイル)によって固定された、柔軟放射線防護材料で作られたパネル272を位置決めするための下部開口部271、
- 側壁3の外側縁31に任意の適切な手段で取り付けられ固定された、放射線防護材料で作られた柔軟フラップ36、
- 前壁2の上縁22及び側壁3の上縁32から水平に延び、任意の適切な手段によって固定された、放射線防護材料の透明パネルから形成された天井構造4、
- 地面で支持される車輪6を備えた基部5、
- スクリーン支持体を備えるスクリーン10。
【0074】
手術室で使用される場合、放射線防護遮蔽板1は、その高さの少なくとも一部を覆うように設計された滅菌カバーの形態の装備品と関連付けられる。
【0075】
図2に概略的に示されるカバーの形態のこのような装備品は、以下のものを含み得る:
- 前壁2及び側壁3の内面及び外面を少なくとも部分的に覆うように適合された柔軟パネル12。この柔軟パネル12は、エアロック構造7と対向して配置されることを意図した部分に開口部を有し;前壁2の上部26の透明パネル261と対向して配置されることを意図した透明部分を備える。パネル12はさらに、前壁2及び/又は側壁3に固定することを可能にする固定手段を備える。これらの留め手段は、例えば、ファスナ、接着剤ストリップ又は自己把持ストリップから構成することができる;
- エアロック構造7のエアロック開口部71に関連付けられた柔軟閉鎖構造72を少なくとも部分的に覆うように適合された、少なくとも1つの柔軟エアロック構造13。この柔軟エアロック構造13は、開口部を備えた少なくとも1つの柔軟ポケットの形態であってよく、この柔軟ポケットは、前記柔軟ポケットの開口部における柔軟閉鎖構造72の下縁の係合によって前記柔軟閉鎖構造72を覆うよう適合されている。この柔軟エアロック構造13は、エアロック構造7に取り付けることを可能にする手段(例えば、ファスナ、接着剤ストリップ又は自己把持ストリップ)をさらに備えている;
この場合、柔軟エアロック構造13は、支柱93の両側で、柔軟閉鎖構造72の2つの部分のうちの1つを覆うようにそれぞれ適合された2つの柔軟ポケットを備え得る;
- 支持装置73上のその位置決めのためのポケット開口部を備える、支持装置73を覆うための柔軟支持装置ポケット14。この柔軟支持装置ポケット14は、支持装置73へのその取り付けのための手段(例えば、ファスナ、接着剤ストリップ又は自己把持ストリップ)を備えている。
図1
図2
図3
図4
図5