(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】モータ付き車両のホイールアセンブリ
(51)【国際特許分類】
B60B 35/14 20060101AFI20241225BHJP
F16C 19/18 20060101ALI20241225BHJP
F16C 33/58 20060101ALI20241225BHJP
F16D 3/20 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
B60B35/14 U
F16C19/18
F16C33/58
F16D3/20 Z
(21)【出願番号】P 2022545007
(86)(22)【出願日】2021-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2021051627
(87)【国際公開番号】W WO2021148675
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-12-12
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】508275098
【氏名又は名称】エヌティエヌ・ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】NTN EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100154771
【氏名又は名称】中田 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【氏名又は名称】藤原(橋詰) 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】バウドゥ・アレクサンドレ
(72)【発明者】
【氏名】プロイ-ソラリ・バンサン
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-047059(JP,A)
【文献】特開2007-255487(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0119185(US,A1)
【文献】仏国特許出願公開第03052104(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 35/14
F16C 19/18
F16C 33/58
F16D 3/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ付き車両の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、
共通の回転軸(100)を中心とする第1の環状外輪軌道面(22)および第2の環状外輪軌道面(24)を含む固定サブアセンブリ(12)と、
回転サブアセンブリ(14)であって、前記回転軸(100)を中心にして前記固定サブアセンブリ(12)に対して回転可能であり、ホイールリム(40)またはブレーキディスク(41)の取付け面を設けたフランジ(38)を含むホイールハブ(30)を有し、
前記取付けフランジ(38)は、前記ホイールリム(40)または前記ブレーキディスク(41)の分解方向(200)に軸方向に向く取付け面(42)を形成し、前記分解方向(200)は前記回転軸(100)に平行であり、前記取付け面(42)は前記回転軸(100)に垂直な組立基準面(PA)に対して接線方向であり、トランスミッションボウル(32)と、少なくとも1つの内輪部(36)とを備え、前記内輪部(36)は、前記ホイールハブの焼き嵌め軸受(52)に焼き嵌められ、前記回転軸(100)に対して少なくとも半径方向に延在する環状接触面(58、60)において前記トランスミッションボウル(32)に対して支持し、前記第1の外輪軌道面(22)の反対側に位置する第1の内輪軌道面(56)と、前記第2の外輪軌道面(24)の反対側に位置し前記内輪部(36)に形成された第2の内輪軌道面(62)とを備えた回転サブアセンブリ(14)と、
転動体であって(16、18)、前記第1の外輪軌道面(22)および前記第1の内輪軌道面(56)上を転動可能な第1の転動体列(16)と、前記第2の
外輪軌道面(24)および前記第2の
内輪軌道面(62)上を転動可能な第2の転動体列(18)とを形成し、前記第1の転動体列(16)の中心を含む第1のピッチ面(PP1)は、前記第2の転動体列(18)の中心を含む第2のピッチ面(PP2)からゼロでない距離Lの位置におり、前記分解方向(200)において、前記第1の転動体列(16)および前記第2の転動体列(18)は、前記第2の転動体列(18)の転動体に接し、前記回転軸(100)に垂直な前記駆動ホイールアセンブリ(10)の境界面(PL)の同じ外側に位置する転動体(16、18)とを備え、
前記内輪部(36)とトランスミッションボウル(32)の環状軸受面(60)との間の前記環状接触面(58、60)は、前記第1のピッチ面(PP1)と境界面(PL)との間に少なくとも部分的
に配置され、焼き嵌め軸受の直径DFよりも大きく、前記第2の内輪軌道面(62)の軌道面底部径DI2以下の最大接触径DAを有することを特徴とする、モータ付き車両の駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、
前記内輪部(36)と前記トランスミッションボウル(32)の環状軸受面(60)との間の前記環状接触面(58、60)が、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)との間に少なくとも部分的
に配置されていることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記第1外輪軌道面(22)は、前記第2内輪軌道面(62)の軌道面底部径DI2よりも小さい軌道面底部径DE1を有することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記トランスミッションボウル(32)が、転がり溝(461)を含む空間(50)を有し、前記転がり溝(461)が
、
-溝底部径DBOが、前記第1の内輪軌道面の軌道面底部径DI1よりも大きいこと、
-溝底部径DBOが、前記第2の内輪軌道面の軌道面底部径DI2よりも小さいこと、
-溝底部径DBOが、前記最大接触径DAよりも大きいこと、
のうちの一以上の条件を満たす溝底部径DBOを有することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記転動体(16、18)がボールであり、前記第1の転動体列(16)を構成するボールが、前記第2の転動体列(18)を構成するボールのボール径DC2以下のボール径DC1を有することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記内輪部(36)は、分解方向(200)の軸方向に面する端面(57)を有し、前記回転軸から最も遠い環状接触面(58、60)の点を含む平面(PAB)から距離L1の地点に位置し、前記距離L1は、前記第1のボール列(16)のボール直径DC1の1.5倍よりも小さいことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項7】
請求項5または6に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)の最大接触径DAが、前記第1の転動体列(16)の直径DC1の2倍と前記焼き嵌め軸受(52)の直径DFとの和よりも小さいことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、トランスミッションナット(322)と転動体(323)とをさらに備え、前記転動体(323)は、前記トランスミッションボウル(32)の空間(50)内と前記トランスミッションナット(322)に形成され
た転がり溝(461、321)によって案内され、前記トランスミッションナット(322)と前記転動体(323)と前記トランスミッションボウル(32)が、ピッチ平面(PPB)とピッチ径とを規定するトランスミッションジョイント(320)を形成することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項9】
請求項8に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)の最大接触径DAが、前記トランスミッションジョイントのピッチ径DPBよりも小さいことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項10】
請求項8または9に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記トランスミッションジョイント(320)のピッチ面(PPB)が、組立基準面(PA)から距離CAの地点に位置し、前記距離CAが、
-前記距離CAが、前記第2列の転動体(18)のピッチ径(DP2)よりも小さいこと、
-前記距離CAが、前記組立基準面(PA)と前記第2のピッチ面(PP2)との間で測定される軸方向距離の7分の13未満であること、
-前記距離CAと、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)との間の距離Lとの比が、4.75未
満であること、
-前記組立基準面(PA)と前記第2のピッチ面(PP2)との距離CAと距離L2との差と、前記第2の転動体列のピッチ径との比が、0.45未満であること、
のうちの一以上の条件を満たすことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)が
平坦であることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項12】
請求項1から
10のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)が
円錐台形状であり
、頂角Aが、
-頂角Aが100°から140°の間であること、
-頂角Aが、前記環状軸受面(60)の反対側にある前記トランスミッションボウル(32)の円錐台形内面の頂角B±10°の範囲と等しいこと、
のうちの一以上の条件を満たすことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、
前記環状接触面(58、60)の最大接触径DAと前記第2の転動体列(18)のピッチ径DP2との比が0.65未満であることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記トランスミッションボウル(32)が、前記ホイールハブ(30)のスプライン付き管状部(47)に嵌合または焼き嵌められて取り付けられ、スプライン接触面を形成するスプライン付き端部(46)を含み、前記回転サブアセンブリ(14)は
、前記トランスミッションボウル(32)に取り付けられ、前記分解方向(200)に軸方向に回転した前記ホイールハブ(30)の当接面(84)に対して直接的または間接的に支持する少なくとも1つの軸方向保持要素(80、88)を含んでいることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項15】
請求項14に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記スプライン接触面がスプラインピッチ径DPCを有し、前記環状接触面(58、60)が、DPCとLABとの合計(DPC+LAB)が前記第2列の転動体のピッチ径DP2よりも小さくなるように、組立基準面PAから距離LABの地点に軸方向に位置することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項16】
請求項14または15に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、軸方向において前記環状接触面(58、60)に最も近い前記スプライン接触面の端部と前記組立基準面(PA)との間で測定される距離(LPC)が、前記組立基準面(PA)と前記第2のピッチ面(PP2)との間で測定された長さL2の5分の4未満であることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、
前記ホイールハブ(30)は、一体型金属部品であることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって
、前記回転サブアセンブリ(14)が、前記取付け面(42)に取り付く前記ブレーキディスク(41)と、前記ブレーキディスク(41)に取り付く前記ホイールリム(40)と、前記ホイールリム(40)および前記ブレーキディスク(41)を取付けフランジ(38)に取り付けるための取付要素(143)とをさらに備えることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ付き車両のホイールアセンブリに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータ付き車両の駆動ホイールアセンブリは、一旦車両に取り付けられると、一般に、車両の懸架要素に固定されることが意図され、回転軸を規定する第1の外輪軌道面および第2の外輪軌道面を含む固定サブアセンブリと、回転軸を中心に固定部材に対して回転可能であり、ホイールハブ、トランスミッションボウル、第1の外輪軌道面の反対側に位置する第1の内輪軌道面、第2の外輪軌道面の反対側に位置する第2の内輪軌道面、ならびに転動体からなり、第1の外輪軌道面と第1の内輪軌道面の間に第1の転動体列、第2の外輪軌道面と第2の内輪軌道面の間に第2の転動体列が形成されている回転アセンブリとから構成される。ホイールハブは、ホイールリムおよびブレーキディスクのための取付け面を有する。したがって、このアセンブリは、典型的には、トルクの伝達、車両の懸架装置への取付け、回転における案内、ブレーキおよび転がりという、車両の内側から外側へ回転軸に沿って配置される技術的機能の積み重ねからなり、これは、軸方向、すなわち、車両の座標系における横方向に大きな寸法を要する。
【0003】
特許文献1では、第2の軌道面の内輪部をトランスミッションボウル上に焼き嵌めることが提案されており、これにより、2列の転動体間の所定の距離に対して軸方向のサイズを小さくすることができる一方で、車両の内側に位置する転動体の列のピッチ径を大きくすることが可能である。負荷容量とキャンバー剛性が2列の転動体間の距離と転動体の列のピッチ径との増加関数である限り、この構造は、軸方向寸法の減少および負荷容量とキャンバー剛性における良好な性能を両立させるための解決策を提供するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】仏国特許出願公開第3,052,104号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電動車両やハイブリッド車両のパワートレインは、内燃機関のパワートレインに比べて駆動輪の車幅方向が大きくなることが多く、これにより横方向の駆動軸が短くなる場合がある。駆動軸が短くなると、トランスミッションジョイントの角度の増大を招くため、好ましくない。このため、トランスミッションシャフトを配置するスペースを僅かにでも増やすことができれば、好ましいとされている。そのため、駆動ホイールアセンブリでは、特に負荷容量や剛性といった性能を犠牲にすることなく、軸方向にコンパクトにする必要性が高まっている。
【0006】
本発明は、軸方向におけるコンパクト性、高い負荷容量、および良好なキャンバー剛性を兼ね備えたモータ付き車両の駆動ホイールアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明の第1の態様によると、
モータ付き車両の駆動ホイールアセンブリであって、
共通の回転軸を中心とする第1の環状外輪軌道面および第2の環状外輪軌道面を含む固定サブアセンブリと、
回転サブアセンブリであって、前記回転軸を中心にして前記固定サブアセンブリに対して回転可能であり、ホイールリムまたはブレーキディスクの取付け面を設けたフランジを含むホイールハブを有し、前記取付けフランジは、前記ホイールリムまたは前記ブレーキディスクの分解方向に軸方向に向く取付け面を形成し、前記分解方向は前記回転軸に平行であり、前記取付け面は前記回転軸に垂直な組立基準面に対して接線方向であり、トランスミッションボウルと、少なくとも1つの内輪部とを備え、前記内輪部は、前記ホイールハブの焼き嵌め軸受上に焼き嵌められ、前記回転軸に対して少なくとも半径方向に延在する環状の接触界面において前記トランスミッションボウルに対して支持し、前記第1の外輪軌道面の反対側に位置する第1の内輪軌道面と、前記第2の外輪軌道面の反対側に位置し前記内輪部上に形成された第2の内輪軌道面とを備えた回転サブアセンブリと、
転動体であって、前記第1の外輪軌道面および前記第1の内輪軌道面上を転動可能な第1の転動体列と、前記第2の外側軌道面および前記第2の内側軌道面上を転動可能な第2の転動体列とを形成し、前記第1の転動体列の中心を含む第1のピッチ面は、前記第2の転動体列の中心を含む第2のピッチ面からゼロでない距離Lの位置におり、前記分解方向において、前記第1の転動体列および前記第2の転動体列は、前記第2の転動体列の転動体に接し、前記回転軸に垂直な前記駆動ホイールアセンブリの境界面の同じ外側に位置する転動体とを備えたモータ付き車両の駆動ホイールアセンブリが提案される。
【0008】
本発明によれば、内輪部とトランスミッションボウルの環状軸受面との間の環状接触面は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、第1のピッチ面と境界面との間に位置し、焼き嵌め軸受の直径DFよりも大きく、第2の内輪軌道面の軌道面底部径DI2よりも小さい最大接触径DAを有する。
【0009】
ここで、最大接触径DAとは、トランスミッションボウルと内輪部との間の有効接触部で観察され、回転軸に垂直な平面で測定される最大直径を意味すると理解される。
【0010】
本発明によれば、特定の形状を有する内輪部をアセンブリに備え、これにより、第2の内輪軌道面を第1の内輪軌道面の半径方向外側に配置し、内輪部によって形成された凹部に、環状軸受面を含むトランスミッションボウルの一部を収容することが可能になることが提案されている。
【0011】
第1の軌道面および第1の転動体列は、アセンブリが車両に組み込まれた後、第2の軌道面および第2の転動体列よりも車両の縦方向中央の垂直面から離れるように意図されている。
【0012】
好ましくは、内輪部とトランスミッションボウルの環状軸受面との間の環状接触面は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、第1のピッチ面と第2のピッチ面との間に配置される。
【0013】
第1の転動体列のピッチ径は、第2の転動体列のピッチ径よりも小さく、好ましくは大幅に小さく、それによりトランスミッションボウルを収容するために利用可能な体積を増大させている。好ましくは、第1の外輪軌道面は、第2の内輪軌道面の軌道面底部径DI2よりも小さい軌道面底部径DE1を有する。
【0014】
第1の内輪軌道面、第1の外輪軌道面および第1の転動体列によって形成される第1の転がり軸受の寸法と、第2の内輪軌道面、第2の外輪軌道面および第2の転動体列によって形成される第2の転がり軸受の寸法は、トランスミッションボウルの寸法に適合している。したがって、一実施形態によれば、前記トランスミッションボウルは、転がり溝を含む空間を有し、前記転がり溝が、好ましくは、
-溝底部径DBOが、第1の内輪軌道面の軌道面底部径DI1よりも大きいこと、
-溝底部径DBOが、第2の内輪軌道面の軌道面底部径DI2よりも小さいこと、
-溝底部径DBOが、最大接触径DAよりも大きいこと、
のうちの一以上の条件を満たす溝底部径DBOを有している。
【0015】
2列の転動体の一方または他方を円錐形状または円筒形状のローラで構成することができるが、これは特に負荷容量が多い車両に適している。
【0016】
しかしながら、回転サブアセンブリの回転に抵抗するトルクを最小化することを目的とした好ましい実施形態によれば、特に軽車両(自動車または実用車)用としては、転動体はボールである。好ましくは、第1の転動体列を構成するボールは、第2の転動体列を構成するボールのボール径DC2以下のボール径DC1を有する。第2のボール列の直径が大きくなると、2列のボールの間の距離を小さくすることが可能になり、内輪部の屈曲が制限され、したがって、回転サブアセンブリの部品が分離する危険性が抑えられる。外輪軌道面は、軌道面の軸方向両端部の間の軸方向中間位置に位置する軌道面底部を各々有するという意味で、軸方向において包囲されていることが好ましい。
【0017】
内輪部は、例えば鋼製の剛性を有する金属部品であることが好ましい。ホイールハブへの内輪部の焼き嵌めには、焼き嵌め軸受を必要とし、この軸受は、組立品の軸方向のコンパクト性を最適化するために、第1の内輪軌道面の近くまで延びている。好ましくは、内輪部は、分解方向に軸方向に向く端面を有し、内輪部と回転軸から最も遠いトランスミッションボウルの環状軸受面との間の環状接触面の点を含む平面から距離L1に位置し、距離L1は、第1のボール列のボール直径の1.5倍未満である。
【0018】
一実施形態によれば、環状接触面の最大接触径DAは、第1列の転動体の直径DC1の2倍と、焼き嵌め軸受の直径DFとの和よりも小さい。
【0019】
実際には、駆動ホイールアセンブリは、トランスミッションナットと転達体とをさらに備え、転達体は、トランスミッションボウルの空間内およびトランスミッションナットに形成された転がり溝によって案内される。転動体およびトランスミッションボウルは、トランスミッションジョイントを形成し、このジョイントは、トランスミッションナットの回転軸およびトランスミッションボウルの回転軸が整列されたときに転動体の中心を通るピッチ平面を規定し、ピッチ平面は、好ましくは固定サブアセンブリによって規定される回転軸に垂直である。また、トランスミッションナットの回転軸とトランスミッションボウルの回転軸とが整列したときに転動体の中心が位置するピッチ円のピッチ径を規定することも可能である。
【0020】
好ましくは、環状接触面の最大接触径DAは、トランスミッションジョイントのピッチ径DPBよりも小さい。
【0021】
アセンブリの軸方向におけるコンパクト化を促進するために、トランスミッションジョイントのピッチ面は、組立基準面から距離CAの地点に位置し、前記距離CAが、
-前記距離CAが、前記第2列の転動体のピッチ径よりも小さいこと、
-前記距離CAが、前記組立基準面と前記第2のピッチ面との間で測定される軸方向距離の7分の13未満であること、
-前記距離CAと、前記第1のピッチ面と前記第2のピッチ面との間の距離Lとの比が、4.75未満、好ましくは4.6未満であること、
-前記組立基準面と前記第2のピッチ面との距離CAと距離L2との差と、前記第2列の転動体のピッチ径との比が、0.45未満であること、
のうちの一以上の条件を満たしている。
【0022】
一実施形態によれば、環状接触面は平面状である。
【0023】
他の実施形態によれば、環状接触面はフレア状であり、好ましくはテーパー状であり、好ましくは、頂角Aが、
-頂角Aが100°から140°の間であること、
-頂角Aが、環状軸受面の反対側にあるトランスミッションボウルの円錐台形内面の頂角B±10°の範囲と等しいこと、
のうちの一以上の条件を満たす頂角Aを有する。
【0024】
取付け面の半径方向の位置は、アセンブリの剛性に影響を与える。一実施形態によれば、環状接触面の最大接触径DAと第2列の転動体のピッチ径DP2との比は、0.65未満である。
【0025】
一実施形態によれば、トランスミッションボウルは、ホイールハブのスプライン付き管状部に遊嵌、嵌合または焼き嵌められてスプライン接触面を形成するスプライン付き端部を含み、回転サブアセンブリは、トランスミッションボウルに取り付けられて、分解方向に軸方向に回転したホイールハブの当接面に対して直接的または間接的に支持する少なくとも一つの軸方向保持要素を含むことが好ましい。また、スプライン接触面は、ホイールハブの分解を可能にすることが好ましい。軸方向保持要素は、特に、回転軸と平行にトランスミッションボウルに形成されたねじ穴にねじ込まれたねじの頭部、またはトランスミッションボウルに形成されたねじ部にねじ込まれたナットで構成することができる。また、トランスミッションボウルの一端部またはホイールハブを冷間変形(cold deformation)させ、両部品を軸方向に干渉させることも可能である。より一般的には、トランスミッションボウルの端部は、ホイールハブに相補的な形状の管状部分に遊嵌または焼き嵌められて取り付けられ、非円形部分との接触面を形成する非円形基部を有する任意の円筒形状を有していてもよく、回転サブアセンブリは、トランスミッションボウルに取り付けられた少なくとも一つの軸方向保持要素を含み、分解方向に軸回転したホイールハブの当接面に対して直接的または間接的に支持することが望ましい。
【0026】
特にコンパクトで剛性の高いアセンブリを実現するために、
-スプライン接触面がスプラインピッチ径DPCを有し、環状接触面が、DPCとLABの合計(DPC+LAB)が第2の転動体列のピッチ径DP2よりも小さくなるように、組立基準面PAから距離LABの地点に軸方向に位置すること、
-軸方向において環状接触面に最も近いスプライン接触面の端部と組立基準面との間で測定される距離が、組立基準面と第2のピッチ面との間で測定される長さの5分の4未満であること、
のうちの一以上の配置が提供される。
【0027】
一実施形態によれば、ホイールハブは、ブレーキディスクまたはホイールリムをセンタリングするためのセンタリング軸受をさらに備え、回転軸の反対側において半径方向に回転され、取外し方向において取付け面に対して軸方向に突出している。センタリング軸受は、例えば、円筒形であってもよく、互いに異なる直径の2つの円筒形部分から構成されてもよく、その場合、取付け面に最も近い部分は、好ましくは最も遠い部分よりも大きな直径を有し、ブレーキディスクをセンタリングする機能を有する。他の形状のセンタリング軸受も考えられる。センタリング軸受は、不連続であることも可能であり、回転軸に平行な環状溝または溝を形成することも可能である。
【0028】
フランジの取付け面は、平坦であってもよいし、例えば放射状、環状、螺旋状の筋、スプライン、溝などが形成されていてもよい。
【0029】
一実施形態によれば、第1の転動体列の転動体は、第1の転動体列に対して相対的に位置する第1の頂点を有する第1の接触円錐上に位置する第1の内輪軌道面および第1の外輪軌道面との接触点を第2の転動体列に対向して有し、第2の転動体列の転動体は、第2の転動体列に対して相対的に位置する第2頂点を有する第2の接触円錐上に位置する第2の内輪軌道面および第2の外輪軌道面との接触点を第1の転動体列に対向して有している。
【0030】
実際には、固定サブアセンブリは、第1の外輪軌道面および第2の外輪軌道面に対して半径方向に延在する取付けクランプを有していてもよい。取付けクランプは、固定サブアセンブリを車両の懸架部材に取り付けることを意図している。この目的のために、取付けクランプは、好ましくは、取付け面を備えており、この取付け面は、懸架部材に構成要素を取り付けるための穴を有していてもよい。
【0031】
一実施形態によれば、固定サブアセンブリは、第1の外輪軌道面および第2の外輪軌道面を形成し、好ましくは取付けクランプも形成する一体型固体金属外輪からなる。あるいは、外輪軌道面の一方および/または他方が、取付けクランプを形成するスリーブ内に焼き嵌められた内輪部に作られるように規定することもできる。
【0032】
一実施形態によれば、第1の内輪軌道面は、ホイールハブに形成されている。
【0033】
あるいは、第1の内輪軌道面は、ホイールハブに少なくとも部分的に焼き嵌められた第1の内輪部に形成され、第2の転動体列に向かって軸方向に対向するホイールハブの肩部に対して軸方向に支持する。第1の内輪部は、第2の内輪軌道面から軸方向に離れる方向に面する第1の軸方向端部を有する。好ましくは、第1の内輪部は、第2の転動体列に向かって軸方向に対向するホイールハブの肩部に対して軸方向に支持する。この肩部は、第1の内輪部を軸方向に支持する。
【0034】
好ましくは、ホイールハブは金属製の一体型部品であり、アセンブリの剛性を高めることに寄与する。あるいは、ハブは、例えば、鋼/アルミニウムまたは鋼/複合材料の組み合わせのような、剛性を有する一体型の複合材料部品とすることができる。
【0035】
好ましくは、トランスミッションボウルは、強固な金属製の一体型部品である。
【0036】
適切な場合、回転サブアセンブリは、取付け面上のブレーキディスク軸受、ブレーキディスク上のホイール軸受、およびホイールリムとブレーキディスクを取付けフランジに取り付けるための構成要素をさらに備える。
【0037】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図を参照しながら、以下の開示内容を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1A】本発明の第1の実施形態に係るモータ付き車両の駆動ホイールアセンブリの縦断面図である。
【
図1B】
図1Aと同じであるが、ホイールアセンブリの様々な固有寸法が記載されている。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係るモータ付き車両の駆動ホイールアセンブリの縦断面図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係るモータ付き車両の駆動ホイールアセンブリの縦断面図である。
【0039】
より明確にするために、すべての図において、同一または類似の要素には同一の参照符号が付されている。
【発明を実施するための形態】
【0040】
図1Aは、モータ付き車両の駆動ホイールアセンブリ10を示し、モータ付き車両の懸架部材(図示せず)に固定されることを意図し、回転軸100を規定する固定サブアセンブリ12と、固定サブアセンブリ12の内部で回転軸100を中心に回転可能な回転サブアセンブリ14と、回転サブアセンブリ14と固定サブアセンブリ12の間の転動体16、18とを含む。
【0041】
ここでの固定サブアセンブリ12は、回転軸100を規定する同軸の第1の外輪軌道面22および第2の外輪軌道面24が形成された一体型の固体金属製外輪20によって構成されている。前記外輪は、半径方向外側に延びる少なくとも1つの取付クランプ26をさらに備え、この取付クランプ26を懸架部材に取付要素(図示せず)を介して取り付けるための穴(本図では図示せず)が形成される。
【0042】
回転サブアセンブリ14は、ホイールハブ30と、トランスミッションボウル32と、第1の内輪部34と、第2の内輪部36とから構成される。
【0043】
ホイールハブ30は、駆動ホイールリム40とブレーキディスク41とを取り付けるためのフランジ38を含む、一体型の金属部品である。フランジ38は、ブレーキディスク41を支持する面42を有し、リム40およびブレーキディスク41の取付要素143の挿入を可能にする取付穴43を備えている。
【0044】
ホイールハブ30はまた、平面軸受面42に対して軸方向に、ホイールリム40およびブレーキディスク41の分解方向200に突出するセンタリングスカート44を有し、半径方向外側に向くセンタリング軸受45、好ましくは段付きのものを備えている。段付きのセンタリング軸受45は、ホイールリム40をセンタリングするための第1の円筒部分と、組立中にブレーキディスク41をセンタリングするための同径またはそれ以上の第2の円筒部分とからなる。センタリング軸受45は、必ずしも組立後にリム40およびブレーキディスク41に接触したままの状態であることを意図していない。
【0045】
トランスミッションボウル32は、一体型金属部品であり、中実の突出端部分46と、等速ジョイントの空間50を区画するフレア状の中間部48とを有する。
【0046】
この実施形態では、前記空間は、トランスミッションジョイントナット322に形成された相補的な転がり溝321の反対側に位置する転がり溝461を有し、回転軸100を含む平面内に位置する凹状の軌道、例えば円弧に沿った転動体323をそれぞれ案内している。既知の方法で、このアセンブリは、トランスミッションシャフト324に固定されたナット322と、ホイールハブ30に固定されたトランスミッションボウル32との間の運動およびトルクの伝達を可能にするトランスミッションジョイント320を形成し、一方、動作時には、トランスミッションシャフト324は、外輪20によって拘束された回転軸100と完全に整合したままではなく、後者が車体に対して外輪20の1度以上の運動自由度を確保する懸架要素によって支持されているようになっている。
【0047】
トランスミッションボウル32の突出部46は、ホイールハブ30のスプライン加工された管状空間47にフリーに取り付けられ、嵌合または焼き嵌められて、スプライン接触面を形成している。
【0048】
さらに、
図1Aは、トランスミッションボウル32とホイールハブ30を取り付けるための手段を示しており、この手段は、突出部46のねじ端90にねじ込まれ、ホイールハブ30の肩部84に対して支持するナット88を実装している。
【0049】
第1の内輪部34は、ホイールハブ30の円筒状の焼き嵌め軸受52に焼き嵌められ、ホイールハブ30に形成された環状の肩部54に対して軸方向に支持している。第1の内輪部34には、第1の外輪軌道面22に面する第1の内輪軌道面56が形成されている。
【0050】
第2の内輪部36も、ホイールハブ30の円筒状焼き嵌め軸受52に焼き嵌められており、横方向端面57は第1の内輪部34に対して軸方向に支持し、環状の横方向当接面58は内輪軌道面56から軸方向に離れて向き、トランスミッションボウル32に形成された肩部60に対して支持するように、ホイールハブ30に対して軸方向に突出した面を有する。この実施形態では、環状の横方向当接面58および肩部60は、平坦である。第2の外輪軌道面24に対向する第2の内輪部36には、第2の内輪軌道面62が形成されている。転動体16,18は、一方では、第1の外輪軌道面22および第1の内輪軌道面56上を転動する第1の転動体列16を形成し、他方では、第2の外輪軌道面24および第2の内輪軌道面62上を転動する第2の転動体列18を形成している。
【0051】
残りの説明では、
図1Bに示されるように、アセンブリにおける顕著な寸法特性に焦点を当てるが、これにはいくつかの予備的な定義が必要である。したがって、以下のように定義する。
-PP1:第1列の転動体16の中心の軌跡を構成するピッチ円が位置するピッチ面である。
-PP2:第2列の転動体18の中心の軌跡を構成するピッチ円が位置するピッチ面である。
-DP1:第1列の転動体16のピッチ円の直径である。
-DP2:第2列の転動体18のピッチ円の直径である。
-DC1:第1の転動体列を構成するボール16の直径である。
-DC2:第2の転動体列を構成するボール18の直径である。
-PA:回転軸100に垂直で、取付け面42に接する平面である。
-PB:回転軸100に垂直で、第2の内輪部36の軸方向端面57に接する平面であって、脱着方向200を向いている平面である。
-PL:回転軸100に垂直な平面であって、第2列の転動体18に接し、その同じ側に2列の転動体16、18が位置する平面である。
-DA:第2の内輪部36に形成された横方向の環状当接面58とトランスミッションボウル38の環状軸受面60との間の接触面の最大直径、すなわち有効接触域を意味する。
-PAB:回転軸100に垂直な平面であって、第2の内輪部36に形成された横方向の環状当接面58と、回転軸から最も遠いトランスミッションボウル38の環状軸受面60との接触面の点(言い換えれば、半径DAの円が描かれる平面)を含んでいる平面を意味する。
-DBO:トランスミッションボウル32の空間50に形成された転がり溝の溝底部径である。
-DPB:トランスミッションジョイント320のピッチ径であり、トランスミッションシャフト324の軸線と回転軸100を一致させたときのトランスミッションジョイント320の転動体323の中心を含むピッチ円の直径である。
-PPB:トランスミッションシャフト324の軸線と回転軸100を一致させたときに回転軸100に対して垂直な、トランスミッションジョイント320のピッチ円を含む平面である。
-DI1:第1の内輪軌道面56の軌道面底部径であり、内輪軌道面56の最小径として定義される。
-DI2:第2の内輪軌道面62の軌道面底部径であり、内輪軌道面62の最小径として定義される。
-DE1:第1の外輪軌道面22の軌道面底部径であり、外輪軌道面22の最大径として定義される。
-DF:第2の内輪部36における、焼き嵌め軸受52の直径である。
-DPC:トランスミッションボウル32の突出部46とホイールハブ30のスプライン管状部47との間のスプライン接触面のスプラインピッチ径(すなわち、有効接触面積)である。
-LPC:回転軸100に平行に測定される距離であって、組立基準面PA、および、トランスミッションボウル32と第2の内輪部36との間のトランスミッションボウル32の突出部分46と境界面に最も近いホイールハブ30のスプライン管状部分47との間のスプライン接触面の一端との距離である。
【0052】
外輪20に形成された外輪軌道面22,24は、それぞれ対応する軌道面22,24の軸方向両端部の間の中間位置に位置する軌道面底64,66を有するという意味で、軸方向に包囲されている。ここでの転動体16,18はボールであり、軌道面22,24,56,62は、いわゆる「O」型のアンギュラ接触玉を2列配置した転がり軸受を構成するように配置されている。言い換えれば、第1列の転動体16と関連する軌道面22、56との間の接触点は、第1列の転動体16に対して、第2列の転動体18の反対側に位置する第1頂点を有する第1接触円錐上に位置し、第2列の転動体18と関連する軌道面24、62との間の接触点は、第2列の転動体18に対して、第1列の転動体16の反対側に位置する第2頂点を有する第2接触円錐上に位置する。
【0053】
注目すべきは、第2の内輪部36にトランスミッションボウル32を少なくとも軸方向に軸受するための環状軸受面60は、第1列の転動体16のピッチ面PP1と境界面PLとの間に軸方向に配置されており、好ましくは、第1列の転動体16のピッチ面PP1と第2列の転動体のピッチ面PP2との間に配置されていることである。環状軸受面60は、ホイールハブ30の焼き嵌め軸受52と第2の内輪軌道面62との間、好ましくは焼き嵌め軸受52と第1の外輪軌道面64の軌道面底部径との間に、径方向に配置されている。半径方向において、これは、直径DAが縮径DFよりも大きく、かつ、軌道面底部径DI2よりも小さく、好ましくは、軌道面底部径DE1よりも小さいことに通じている。
【0054】
この位置関係により、アセンブリ10は軸方向にコンパクトになり、優れた剛性を持つようになる。
【0055】
好ましくは、第1の外輪軌道面22の軌道面底部径DE1は、第2の内輪軌道面62の軌道面底部径DI2よりも小さい。
【0056】
トランスミッションボウル32の空間50に形成された転がり軌道461の軌道面底部径BODが、
-軌道面底部径DBOが、第1内輪軌道面56の軌道面底部径DI1よりも大きいこと、
-軌道面底部径DBOが、第2内輪軌道面62の軌道面底部径DI2よりも小さいこと、
-軌道面底部径DBOが、環状軸受面60の最大径DAよりも大きいこと、
の条件を満たす。
【0057】
この第1の実施形態では、転動体16,18はボールであり、第1列の転動体16を形成するボールは、第2列の転動体18を形成するボールの直径DC2と同じかそれ以下の直径DC1を有している。第1のボール列16に比較的小さな直径を選択することにより、第1列の転動体16に近いホイールハブ30の焼き嵌め領域において、第2の内輪部36の軸方向の厚さを十分に保持し、ピッチ面PP1、PP2を一致させることができるようになる。第2列の転動体18についてより大きな直径を選択することにより、2つのピッチ面PP1、PP2の間の距離を比較的小さく維持しながら、良好な耐荷重性を確保することが可能となる。
【0058】
第2の内輪部36の軸方向端面PBは、平面PABから、第1列の転動体16のボールの直径DC1の1.5倍よりも小さい距離L1の地点に位置している。
【数1】
【0059】
ピッチ面PPBは、平面PAから距離CAの地点に位置し、前記距離CAが、
-前記距離CAが、第2列の転動体18のピッチ径DP2よりも小さいこと、
-前記距離CAが、第2列の転動体18の当接面PAとピッチ面PP2との間で測定した軸方向距離L2の7分の13以下であること、
-前記距離CAと、第1のピッチ面PP1と第2のピッチ面PP2との間の距離Lとの比が4.75以下、好ましくは4.6以下であること、
-前記距離CAと、平面PAと第2のピッチ平面PP2との距離L2との差と、第2列の転動体18のピッチ径PD2との比が、0.45未満であること、
のうちの一以上の条件を満たす。
【数2】
【0060】
最大接触径DAは、
-第2列の転動体18の直径DAとピッチ径DP2との比が0.65未満である。
【数3】
-直径DAは、焼き嵌め軸受52の直径DFと、第1列の転動体16の直径DC1との和よりも小さい。
【数4】
のうちの一以上の条件を満たす。
【0061】
第2列の転動体18のピッチ径DP2は、スプラインピッチ径DPCと、平面PAと平面PABとの間の距離LABとの和よりも大きい。
【数5】
【0062】
軸方向において平面PABの環状接触面に最も近いスプライン接触面の端部と組立基準面(PA)との間で測定された距離LPCは、平面PAと第2列の転動体18のピッチ面PP2との間の距離L2の4/5未満である。
【数6】
【0063】
実際には、直径DAはトランスミッションジョイントのピッチ直径DPBよりも小さい。
【0064】
この第1の実施形態の変形例として、第1の内輪軌道面56をホイールハブ30に直接形成することも可能である。
【0065】
他の変形例では、第2のボール列の各ボール16,18は、同じ直径を有していてもよい。
【0066】
図2の実施形態は、第1の内輪軌道面56がホイールハブ30に直接形成されている点で
図1Aおよび1Bの実施形態と主として異なっている。第2内輪軌道面62は、内輪部36に形成されている。この内輪部36を、以降でも便宜上「第2の」内輪部と称する。この第2の内輪部36は、焼き嵌め軸受52に焼き嵌められ、ホイールハブ30の肩部86に対して、またトランスミッションボウル32の肩部60に対しても軸方向に支持している。この実施形態は、環状当接面58および環状軸受面60のフレア形状、ここでは円錐台形状の形状によって、
図1Aおよび1Bのものとは二次的に異なっている。特に、環状当接面58と環状軸受面60との間の接触領域の最大円に対応する、
図2における平面PABと寸法DAの位置関係に注目されたい。環状軸受面60と環状当接面58の頂角Aは、好ましくは100°~140°の間である。頂点角Aはさらに好ましくは、環状軸受面60の反対側にあるトランスミッションボウル32の円錐台形内面61の頂点角Bと±10°の範囲で等しい。
【0067】
第1の実施形態について示された固有寸法は、第2の実施形態においても存在する。特に、環状軸受面60と環状当接面58との間に生じる接触面は、第1列の転動体16のピッチ面PP1と境界面PLとの間で軸方向に位置し、好ましくは2列の転動体16,18のピッチ面PP1、PP2同士の間で、ホイールハブ30の焼き嵌め軸受52と第2の内輪軌道面62の間で径方向に、好ましくは焼き嵌め軸受52と第1の外輪軌道面64の軌道面底部径を含む横平面との間で位置決めされている。
【0068】
図3の実施形態は、
図2の実施形態の変形例であり、2列の転動体16,18のボールの直径が互いに等しい。この場合、第2の実施形態よりも軸方向のコンパクト性が若干劣るが、転がり軸受の取付けが簡単になり、ボールの選択に誤りが生じるおそれが排除される。
【0069】
図3は、ホイールハブ30とトランスミッションボウル32との間の接続を固定するための手段を示し、この手段は、トランスミッションボウル32の突出部46のねじ穴78に係合するねじ76を実装し、その頭部80は、トランスミッションボウル32から離れる方向に向く車輪ハブの肩部84に対して軸受している。これらの固定手段は、すべての実施形態に転用することができる。
【0070】
当然のことながら、図面に示されると共に上述された例は、例示的かつ非限定的な目的のためにのみ提供されるものである。
【0071】
変形例として、車両の懸架要素への取付けクランプを形成する一以上の部品のクランプ26と、このクランプ内に焼き嵌めした2つの同軸の外輪部とを含む、複数の部品からなる固定サブアセンブリを提供することも可能である。
【0072】
また、2列のうち一方または他方の転動体16,18は、回転対称軸を有する転動体によって構成することができ、各転動体の中心を転動体の重心とし、転動体の回転対称軸に垂直でかつ転動体の重心を通る平面で測定した直径を転動体直径と定義することができる。
【0073】
他の実施形態を提供するために、図示された様々な実施形態を組み合わせることが可能であることが明示的に示される。例えば、
図1および
図2に図示されたトランスミッションボウル32とホイールハブ30との間の取付けの態様は、駆動ホイールのための全ての実施形態に等しく適用することが可能である。より一般的には、ホイールハブ30は、任意の適切な手段、特に仏国特許出願公開第3,003,201号明細書に記載の方法によってトランスミッションボウル32に取り付けることが可能である。また、ホイールハブ30の管状空間47の壁と、トランスミッションボウル32の突出部46の対応する部分に、あらかじめ機械加工されたスプラインを設けることも可能である。
【0074】
トランスミッションジョイント320は、転がり溝461,321によって制御されるツェッパ型等速ジョイントとして図示したが、等速ジョイントの他の変形例、例えばジョイントケージによって制御されるツェッパジョイント、またはクロストラックジョイントとしてもよい。このように、転がり溝461,321は必ずしも円形である必要はなく、また、必ずしも凹形である必要もなく、直線軌道としてもよい。
【0075】
本明細書、図面および添付の特許請求の範囲から当業者にとって明らかになったすべての構成は、たとえ具体的に他の決定された構成との関連においてのみ記載されていたとしても、個別にも任意に組み合わせても、ここに開示された他の構成または構成群と組み合わせることができることが強調される。ただし、そのことが明確に除外されていないか、技術事情によってその組み合わせが不可能または意味をなさないとされていないことが条件となる。
【0076】
本願の明細書の本文を通じて、「固定サブアセンブリ」は、可動サブアセンブリの回転のための固定座標系を構成するサブアセンブリを指すために使用されてきた。当業者であれば、車体と固定サブアセンブリとの間に介在する懸架装置の形状に応じて、このサブアセンブリ自体が車体に対して相対的に移動することが要求されることを理解したであろう。
なお、本発明は、実施の態様として以下の内容を含む。
〔態様1〕
モータ付き車両の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、
共通の回転軸(100)を中心とする第1の環状外輪軌道面(22)および第2の環状外輪軌道面(24)を含む固定サブアセンブリ(12)と、
回転サブアセンブリ(14)であって、前記回転軸(100)を中心にして前記固定サブアセンブリ(12)に対して回転可能であり、ホイールリム(40)またはブレーキディスク(41)の取付け面を設けたフランジ(38)を含むホイールハブ(30)を有し、
前記取付けフランジ(38)は、前記ホイールリム(40)または前記ブレーキディスク(41)の分解方向(200)に軸方向に向く取付け面(42)を形成し、前記分解方向(200)は前記回転軸(100)に平行であり、前記取付け面(42)は前記回転軸(100)に垂直な組立基準面(PA)に対して接線方向であり、トランスミッションボウル(32)と、少なくとも1つの内輪部(36)とを備え、前記内輪部(36)は、前記ホイールハブの焼き嵌め軸受(52)に焼き嵌められ、前記回転軸(100)に対して少なくとも半径方向に延在する環状接触面(58、60)において前記トランスミッションボウル(32)に対して支持し、前記第1の外輪軌道面(22)の反対側に位置する第1の内輪軌道面(56)と、前記第2の外輪軌道面(24)の反対側に位置し前記内輪部(36)に形成された第2の内輪軌道面(62)とを備えた回転サブアセンブリ(14)と、
転動体であって(16、18)、前記第1の外輪軌道面(22)および前記第1の内輪軌道面(56)上を転動可能な第1の転動体列(16)と、前記第2の外側軌道面(24)および前記第2の内側軌道面(62)上を転動可能な第2の転動体列(18)とを形成し、前記第1の転動体列(16)の中心を含む第1のピッチ面(PP1)は、前記第2の転動体列(18)の中心を含む第2のピッチ面(PP2)からゼロでない距離Lの位置におり、前記分解方向(200)において、前記第1の転動体列(16)および前記第2の転動体列(18)は、前記第2の転動体列(18)の転動体に接し、前記回転軸(100)に垂直な前記駆動ホイールアセンブリ(10)の境界面(PL)の同じ外側に位置する転動体(16、18)とを備え、
前記内輪部(36)とトランスミッションボウル(32)の環状軸受面(60)との間の前記環状接触面(58、60)は、前記第1のピッチ面(PP1)と境界面(PL)との間に少なくとも部分的に、好ましくは完全に配置され、焼き嵌め軸受の直径DFよりも大きく、前記第2の内輪軌道面(62)の軌道面底部径DI2以下の最大接触径DAを有することを特徴とする、モータ付き車両の駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様2〕
態様1に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、
前記内輪部(36)と前記トランスミッションボウル(32)の環状軸受面(60)との間の前記環状接触面(58、60)が、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)との間に少なくとも部分的に、好ましくは完全に配置されていることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様3〕
態様1または2に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記第1外輪軌道面(22)は、前記第2内輪軌道面(62)の軌道面底部径DI2よりも小さい軌道面底部径DE1を有することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様4〕
態様1から3のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記トランスミッションボウル(32)が、転がり溝(461)を含む空間(50)を有し、前記転がり溝(461)が、好ましくは、
-溝底部径DBOが、前記第1の内輪軌道面の軌道面底部径DI1よりも大きいこと、
-溝底部径DBOが、前記第2の内輪軌道面の軌道面底部径DI2よりも小さいこと、
-溝底部径DBOが、前記最大接触径DAよりも大きいこと、
のうちの一以上の条件を満たす溝底部径DBOを有することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様5〕
態様1から4のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記転動体(16、18)がボールであり、前記第1の転動体列(16)を構成するボールが、前記第2の転動体列(18)を構成するボールのボール径DC2以下のボール径DC1を有することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様6〕
態様5に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記内輪部(36)は、分解方向(200)の軸方向に面する端面(57)を有し、前記回転軸から最も遠い環状接触面(58、60)の点を含む平面(PAB)から距離L1の地点に位置し、前記距離L1は、前記第1のボール列(16)のボール直径DC1の1.5倍よりも小さいことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様7〕
態様5または6に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)の最大接触径DAが、前記第1の転動体列(16)の直径DC1の2倍と前記焼き嵌め軸受(52)の直径DFとの和よりも小さいことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様8〕
態様1から7のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、トランスミッションナット(322)と転動体(323)とをさらに備え、前記転動体(323)は、前記トランスミッションボウル(32)の空間(50)内と前記トランスミッションナット(322)に形成された前記転がり溝(461、321)によって案内され、前記トランスミッションナット(322)と前記転動体(323)と前記トランスミッションボウル(32)が、ピッチ平面(PPB)とピッチ径とを規定するトランスミッションジョイント(320)を形成することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様9〕
態様8に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)の最大接触径DAが、前記トランスミッションジョイントのピッチ径DPBよりも小さいことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様10〕
態様8または9に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記トランスミッションジョイント(320)のピッチ面(PPB)が、組立基準面(PA)から距離CAの地点に位置し、前記距離CAが、
-前記距離CAが、前記第2列の転動体(18)のピッチ径(DP2)よりも小さいこと、
-前記距離CAが、前記組立基準面(PA)と前記第2のピッチ面(PP2)との間で測定される軸方向距離の7分の13未満であること、
-前記距離CAと、前記第1のピッチ面(PP1)と前記第2のピッチ面(PP2)との間の距離Lとの比が、4.75未満、好ましくは4.6未満であること、
-前記組立基準面(PA)と前記第2のピッチ面(PP2)との距離CAと距離L2との差と、前記第2の転動体列のピッチ径との比が、0.45未満であること、
のうちの一以上の条件を満たすことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様11〕
態様1から10のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)が平面であることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様12〕
態様1から11のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記環状接触面(58、60)がフレア状であり、好ましくはテーパー状であり、好ましくは、頂角Aが、
-頂角Aが100°から140°の間であること、
-頂角Aが、前記環状軸受面(60)の反対側にある前記トランスミッションボウル(32)の円錐台形内面の頂角B±10°の範囲と等しいこと、
のうちの一以上の条件を満たすことを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様13〕
態様1から12のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、
前記環状接触面(58、60)の最大接触径DAと前記第2の転動体列(18)のピッチ径DP2との比が0.65未満であることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様14〕
態様1から13のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記トランスミッションボウル(32)が、前記ホイールハブ(30)のスプライン付き管状部(47)に嵌合または焼き嵌められて取り付けられ、スプライン接触面を形成するスプライン付き端部(46)を含み、前記回転サブアセンブリ(14)は、好ましくは、前記トランスミッションボウル(32)に取り付けられ、前記分解方向(200)に軸方向に回転した前記ホイールハブ(30)の当接面(84)に対して直接的または間接的に支持する少なくとも1つの軸方向保持要素(80、88)を含んでいることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様15〕
態様14に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、前記スプライン接触面がスプラインピッチ径DPCを有し、前記環状接触面(58、60)が、DPCとLABとの合計(DPC+LAB)が前記第2列の転動体のピッチ径DP2よりも小さくなるように、組立基準面PAから距離LABの地点に軸方向に位置することを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様16〕
態様14または15に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、軸方向において前記環状接触面(58、60)に最も近い前記スプライン接触面の端部と前記組立基準面(PA)との間で測定される距離(LPC)が、前記組立基準面(PA)と前記第2のピッチ面(PP2)との間で測定された長さL2の5分の4未満であることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様17〕
態様1から16のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、
前記ホイールハブ(30)は、一体型金属部品であることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。
〔態様18〕
態様1から17のいずれか一態様に記載の駆動ホイールアセンブリ(10)であって、金属部分は、前記回転サブアセンブリ(14)が、前記取付け面(42)に取り付く前記ブレーキディスク(41)と、前記ブレーキディスク(41)に取り付く前記ホイールリム(40)と、前記ホイールリム(40)および前記ブレーキディスク(41)を取付けフランジ(38)に取り付けるための取付要素(143)とをさらに備えることを特徴とする駆動ホイールアセンブリ(10)。