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特許7610629モレキュラーシーブ吸音材料及びその製造方法とスピーカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】モレキュラーシーブ吸音材料及びその製造方法とスピーカ
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/162 20060101AFI20241225BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
G10K11/162
H04R1/02 101E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022581590
(86)(22)【出願日】2022-09-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-10-18
(86)【国際出願番号】 CN2022122004
(87)【国際公開番号】W WO2024036710
(87)【国際公開日】2024-02-22
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】202211000387.1
(32)【優先日】2022-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517409583
【氏名又は名称】エーエーシー マイクロテック(チャンヂョウ)カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】No.3 changcao road, Hi-TECH Industrial Zone, Wujin District, Changzhou City, Jiangsu Province, P.R. China
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ジエ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ヘジィ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ヂォンヤン
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0031678(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0037062(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第114684832(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105601984(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/16-11/168
H04R 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モレキュラーシーブ吸音材料であって、前記吸音材料は、変性モレキュラーシーブ及び接着剤を備え、前記接着剤の質量は、前記変性モレキュラーシーブの質量の2%~10%を占め、前記変性モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブに対してリン元素変性処理を行って得られるものであり、前記モレキュラーシーブにおけるシリコンとアルミニウムとの質量比は(50~100):1であり、前記変性モレキュラーシーブにおけるリン元素とアルミニウム元素とのモル比は(0.1~2):1である、ことを特徴とするモレキュラーシーブ吸音材料。
【請求項2】
前記リン元素変性処理に用いられるリン源は、リン酸、リン酸アンモニウム及びリン酸水素アンモニウムのうちの1種又は複数種である、請求項1に記載のモレキュラーシーブ吸音材料。
【請求項3】
前記接着剤は、ポリアクリル酸エステル、ポリスチレンアクリル酸エステル、ポリスチレン酢酸エステル、ポリウレタン樹脂、ポリエチルエチレン酢酸エステル塩のうちの1種又は複数種である、請求項1に記載のモレキュラーシーブ吸音材料。
【請求項4】
前記モレキュラーシーブは、MFI、FER、MELなどの構造タイプのうちの1種又は複数種を備える、請求項1に記載のモレキュラーシーブ吸音材料。
【請求項5】
請求項1~4に記載の吸音材料の製造方法であって、
ステップS1であって、モレキュラーシーブと水を均一に混合して、モレキュラーシーブスラリーを得るステップと、
ステップS2であって、リン源をステップS1で得られた前記モレキュラーシーブスラリーに添加し、超音波マイクロ波浸漬法で超音波浸漬し、浸漬後の溶液を濾過し、ケーキを取って乾燥させ、研磨した後に中間体モレキュラーシーブ粉末を得るステップと、
ステップS3であって、ステップS2で得られた前記中間体モレキュラーシーブ粉末を焼成して、変性モレキュラーシーブを得るステップと、
ステップS4であって、ステップS3で得られた前記変性モレキュラーシーブと水を均一に混合した後、接着剤を添加し、懸濁液を得るステップと、
ステップS5であって、前記懸濁液を成形処理し、乾燥した後に前記モレキュラーシーブ吸音材料を得るステップと、を含む、ことを特徴とする吸音材料の製造方法。
【請求項6】
前記ステップS1において、前記モレキュラーシーブと前記水との重量体積比が(10~30):(150~250)である、請求項5に記載の吸音材料の製造方法。
【請求項7】
前記ステップS2において、前記超音波マイクロ波浸漬法に用いられる超音波デバイスは、プローブ式超音波であり、前記超音波マイクロ波浸漬法のマイクロ波加熱温度は、60℃~90℃であり、前記超音波マイクロ波浸漬法の超音波浸漬時間は、0.5h~2hである、請求項5に記載の吸音材料の製造方法。
【請求項8】
前記ステップS4において、前記変性モレキュラーシーブと前記水と前記接着剤との重量比は、1:(0.6~1.5):(0.02~0.10)である、請求項5に記載の吸音材料の製造方法。
【請求項9】
前記ステップS5において、前記乾燥の方式は、凍結乾燥、真空乾燥、常圧乾燥のうちの1種又は複数種を備える、請求項5に記載の吸音材料の製造方法。
【請求項10】
スピーカであって、収容空間を備えるハウジングと、前記ハウジング内に設置された発音単体と、前記発音単体と前記ハウジングとで囲まれたバックチャンバとを備え、前記バックチャンバには請求項1~4に記載の吸音材料が充填されている、ことを特徴とするスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料技術分野に関し、特にモレキュラーシーブ吸音材料及びその製造方法とスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、ブルートゥース(登録商標)イヤホンなどの携帯電子デバイスの発展に伴い、人々の音質に対する要求もますます高くなり、音質を向上させ、スピーカの発音効果を向上させるために、現在採用されている一般的な方法の一つは、スピーカバックチャンバに吸音材料を装入して仮想バックチャンバの体積を増大させ、それにより音質を向上させることである。
【0003】
モレキュラーシーブは、高比表面積材料として、チャンバが振動する時にチャンバ内の空気を絶えず吸着及び脱着することができ、それによりチャンバ体積を増大させる効果を間接的に達成し、したがって、スピーカバックチャンバ内に一般的に用いられる吸音材料である。しかし、スピーカは、高温高湿の環境で長期間動作すると、音質の低下ひいては雑音が発生することがある。これは、モレキュラーシーブ、特に低シリカアルミナ比モレキュラーシーブが高温高湿の条件下で不可逆的な不活性化を起こしやすく、F0値を高くし、さらに音質を悪化させたり雑音を発生させたりするためである。
【0004】
したがって、高温高湿の環境下で優れた信頼性を備えるモレキュラーシーブ吸音材料を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のスピーカ用吸音材料では高温高湿の条件下で不可逆的な不活性化を発生しやすく、F0値を高くし、さらに音質を悪化させたり雑音を発生させたりするという問題を解決するために、モレキュラーシーブ吸音材料及びその製造方法とスピーカを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様によれば、本発明は、モレキュラーシーブ吸音材料を提供し、前記吸音材料は、変性モレキュラーシーブ及び接着剤を備え、前記接着剤の質量は、前記変性モレキュラーシーブの質量の2%~10%を占め、前記変性モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブに対してリン元素変性処理を行って得られたものであり、前記モレキュラーシーブにおけるシリコンとアルミニウムとの質量比は(50~800):1であり、前記変性モレキュラーシーブにおけるリン元素とアルミニウム元素とのモル比は(0.1~2):1である。
【0007】
第1態様に合わせて、実現可能な実施形態において、前記リン元素変性処理に用いられるリン源は、リン酸、リン酸アンモニウム及びリン酸水素アンモニウムのうちの1種又は複数種である。
【0008】
実現可能な実施形態において、前記接着剤は、ポリアクリル酸エステル、ポリスチレンアクリル酸エステル、ポリスチレン酢酸エステル、ポリウレタン樹脂、ポリエチルエチレン酢酸エステル塩のうちの1種又は複数種である。
【0009】
実現可能な実施形態において、前記モレキュラーシーブは、MFI、FER、MELなどの構造タイプのうちの1種又は複数種を備える。
【0010】
本発明の第2態様によれば、本発明は、上記吸音材料の製造方法をさらに提供し、当該製造方法は、
ステップS1であって、モレキュラーシーブと水を均一に混合して、モレキュラーシーブスラリーを得るステップと、
ステップS2であって、リン源をステップS1で得られた前記モレキュラーシーブスラリーに添加し、超音波マイクロ波浸漬法で超音波浸漬し、浸漬後の溶液を濾過し、ケーキを取って乾燥させ、研磨した後に中間体モレキュラーシーブ粉末を得るステップと、
ステップS3であって、ステップS2で得られた前記中間体モレキュラーシーブ粉末を焼成して、変性モレキュラーシーブを得るステップと、
ステップS4であって、ステップS3で得られた前記変性モレキュラーシーブと水を均一に混合した後、接着剤を添加し、懸濁液を得るステップと、
ステップS5であって、前記懸濁液を成形処理し、乾燥した後に前記モレキュラーシーブ吸音材料を得るステップと、を含む。
【0011】
第2態様に合わせて、実現可能な実施形態において、前記ステップS1において、前記モレキュラーシーブと前記水との重量体積比は(10~30):(150~250)である。
【0012】
実現可能な実施形態において、前記ステップS2において、前記超音波マイクロ波浸漬法に用いられる超音波デバイスは、プローブ式超音波であり、前記超音波マイクロ波浸漬法のマイクロ波加熱温度は、60℃~90℃であり、前記超音波マイクロ波浸漬法の超音波浸漬時間は、0.5h~2hである。
【0013】
実現可能な実施形態において、前記ステップS4において、前記変性モレキュラーシーブと前記水と前記接着剤との重量比は、1:(0.6~1.5):(0.02~0.10)である。
【0014】
実現可能な実施形態において、前記ステップS5において、前記乾燥の方式は、凍結乾燥、真空乾燥、常圧乾燥のうちの1種又は複数種を備える。
【0015】
本発明の第3態様によれば、本発明は、スピーカをさらに提供し、当該スピーカは、収容空間を備えるハウジングと、前記ハウジング内に配置された発音単体と、前記発音単体と前記ハウジングで囲まれたバックチャンバとを備え、前記バックチャンバには上記吸音材料が充填されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明による有益な効果は、次のとおりである。
【0017】
本発明のモレキュラーシーブ吸音材料は、変性モレキュラーシーブを備え、変性モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブに対してリン元素変性処理を行って得られたものであり、リン元素は、モレキュラーシーブの骨格に入り、骨格中のシリコン及びアルミニウムと結合してP~O~Si及びP~O~Al構造を形成し、モレキュラーシーブ骨格の安定性を強化する効果を有するため、得られた変性モレキュラーシーブは、安定した骨格構造を持ち、高温下での水蒸気加水分解に対する耐性の能力がより良好となり、このような変性モレキュラーシーブを吸音材料に応用することで、当該吸音材料が高温高湿の条件下でも良好な吸音性能を維持することを保証することができる。
【0018】
変性モレキュラーシーブにおけるリン元素とアルミニウム元素とのモル比を(0.1~2):1に限定することにより、得られた変性モレキュラーシーブ骨格の安定性をより良くすることができ、高温下での水蒸気加水分解に対する耐性の能力がより良好となり、さらに吸音材料の吸音性能をより効果的に保証することができる。変性モレキュラーシーブのリンが少なすぎると、十分な配位結合を形成することができず、モレキュラーシーブ骨格を効果的に保護することができないが、骨格中のリン含有量が高いと、リン種が一部のモレキュラーシーブの孔路を閉塞し、モレキュラーシーブのガスに対する吸着能力に影響を与える可能性がある。
【0019】
本発明は、モレキュラーシーブにおけるシリコンとアルミニウムとの質量比をさらに限定し、合理的なシリコン/アルミニウム質量比は、モレキュラーシーブ骨格構造の安定性を保証することができ、さらに変性モレキュラーシーブ骨格構造の安定性を保証することができる。本発明の吸音材料は、接着剤をさらに備え、吸音材料に接着剤を添加することは、モレキュラーシーブスラリーの粘度を増加させて球状粒子をより良く形成することを可能にするためのことであり、本発明は、接着剤の質量が変性モレキュラーシーブの質量における2%~10%を占めることを限定することで、モレキュラーシーブスラリーの粘度が保証でき、球状粒子をよりよく形成することができる。
【0020】
本発明の吸音材料は、温度50℃~150℃、湿度60~100%rhの条件下で長期間使用でき、その性能が変性されていないモレキュラーシーブ吸音材料より明らかに優れる。
【0021】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は、例示的なものだけであり、本発明を限定するものではないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
ここでの図面は、明細書に組み込まれかつ本明細書の一部を構成し、本発明の実施例に適合し、かつ明細書と共に本発明の原理を説明するために用いられる。
図1】本発明の提供するスピーカの内部の構造を示す模式図である。
図2】本発明の実施例1と比較例1を5日間持続的に監視した高温高湿試験結果の比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の技術案をよりよく理解するために、以下は、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
【0024】
説明した実施例は、本発明の実施例の一部にすぎず、すべての実施形態ではないことは明らかである。本発明の実施例に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0025】
本発明の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的とし、本発明を限定する意図はない。本発明の実施例および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1種」、「前記」、および「当該」は、文脈が他の意味を明確に示さない限り、複数の形を備えることも意図される。
【0026】
本明細書で使用される用語“及び/又は”は、関連オブジェクトの関連関係を説明するだけであり、3種類の関係が存在してもよく、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在し、AとBが同時に存在し、Bが単独で存在するという3種類の状況が存在すると理解されるべきである。なお、ここで符号「/」とは、一般に、前後関連オブジェクトが「または」の関係であることを意味する。
【0027】
なお、本発明の実施例に記載の「上」、「下」、「左」、「右」等の向きを示す用語は、図面の示す角度から記載したものであり、本発明実施例を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、この文脈では、ある要素が別の要素に「上」または「下」に接続されていると記載される場合、他の要素に「上」または「下」に直接接続することができるだけでなく、中間要素を介して、別の要素の「上」または「下」に間接的に接続されてもよいと理解されるべきである。
【0028】
第1態様において、本発明は、モレキュラーシーブ吸音材料を提供し、前記吸音材料は、変性モレキュラーシーブ及び接着剤を備え、前記接着剤の質量は、前記変性モレキュラーシーブの質量の2%~10%を占め、前記変性モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブに対してリン元素変性処理を行って得られたものであり、前記モレキュラーシーブにおけるシリコンとアルミニウムとの質量比は(50~800):1であり、前記変性モレキュラーシーブにおけるリン元素とアルミニウム元素とのモル比は(0.1~2):1である。
【0029】
好ましくは、接着剤の質量が変性モレキュラーシーブの質量に占める百分率含有量は、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。接着剤は、ポリアクリル酸エステル、ポリスチレンアクリル酸エステル、ポリスチレン酢酸エステル、ポリウレタン樹脂、ポリエチルエチレン酢酸エステル塩のうちの1種又は複数種から選択することができる。接着剤の固体含有量は、35%~60%であってもよく、具体的には35%、40%、45%、50%、55%又は60%などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0030】
好ましくは、モレキュラーシーブにおけるシリコンとアルミニウムとの質量比は、50:1、100:1、200:1、300:1、400:1、500:1、600:1、700:1又は800:1などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0031】
好ましくは、変性モレキュラーシーブにおけるリン元素とアルミニウム元素とのモル比は、0.1:1、0.25:1、0.5:1、0.75:1、1:1、1.25:1、1.5:1、1.75:1又は2:1などであり、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。好ましくは、前記変性モレキュラーシーブにおけるリン元素とアルミニウム元素とのモル比は、(0.5~1.5):1である。
【0032】
上記技術案において、吸音材料は、変性モレキュラーシーブを備え、変性モレキュラーシーブは、モレキュラーシーブに対してリン元素変性処理を行って得られたものであり、リン元素は、モレキュラーシーブの骨格に入り、骨格中のシリコン及びアルミニウムと結合してP~O~Si及びP~O~Al構造を形成し、モレキュラーシーブ骨格の安定性を強化する効果が有するため、得られた変性モレキュラーシーブは、より安定した骨格構造を持ち、高温下での水蒸気加水分解に対する耐性の能力がより良好となり、このような変性モレキュラーシーブを吸音材料に応用することで、当該吸音材料が高温高湿の条件下でも良好な吸音性能を維持することを保証することができる。
【0033】
変性モレキュラーシーブにおけるリン元素とアルミニウム元素とのモル比を(0.1~2):1に限定することにより、得られた変性モレキュラーシーブ骨格の安定性をより良くすることができ、高温下での水蒸気加水分解に対する耐性の能力がより良好となり、さらに吸音材料の吸音性能をより効果的に保証することができる。変性モレキュラーシーブのリンが少なすぎると、十分な配位結合を形成することができず、モレキュラーシーブ骨格を効果的に保護することができないが、骨格中のリン含有量が高いと、リン種が一部のモレキュラーシーブの孔路を閉塞し、モレキュラーシーブのガスに対する吸着能力に影響を与える可能性がある。
【0034】
本発明は、モレキュラーシーブにおけるシリコンとアルミニウムとの質量比をさらに限定し、合理的なシリコン/アルミニウム質量比は、モレキュラーシーブ骨格構造の安定性を保証することができ、さらに変性モレキュラーシーブ骨格構造の安定性を保証することができる。本発明の吸音材料は、接着剤をさらに備え、吸音材料に接着剤を添加することは、モレキュラーシーブスラリーの粘度を増加させて球状粒子をより良く形成することを可能にするためのことであり、本発明は、接着剤の質量が変性モレキュラーシーブの質量の2%~10%を占めることを限定することで、モレキュラーシーブスラリーの粘度が保証でき、球状粒子をよりよく形成することができる。本発明の吸音材料は、温度50℃~150℃、湿度60~100%rhの条件下で長期間使用でき、性能が変性されていないモレキュラーシーブ吸音材料より明らかに優れる。
【0035】
本発明の選択可能な技術案として、前記リン元素変性処理に用いられるリン源は、リン酸、リン酸アンモニウム及びリン酸水素アンモニウムのうちの1種又は複数種であってもよく、もちろんこれらのリン源に限定されるものではない。
【0036】
本発明の選択可能な技術案として、前記接着剤は、ポリアクリル酸エステル、ポリスチレンアクリル酸エステル、ポリスチレン酢酸エステル、ポリウレタン樹脂、ポリエチルエチレン酢酸エステル塩のうちの1種又は複数種である。
【0037】
本発明の選択可能な技術案として、前記モレキュラーシーブは、MFI、FER、MELなどの構造タイプのうちの1種又は複数種を備える。
【0038】
理解されるように、リン源の種類、接着剤の種類及びモレキュラーシーブの構造を具体的に限定することにより、吸音材料を製造するための原料の間がより高い相乗効果を達成することができ、吸音材料を高温高湿の条件下でもより良好な吸音性能を保持することができる。
【0039】
第2態様において、本発明は、上記吸音材料の製造方法をさらに提供し、当該製造方法は、
ステップS1であって、モレキュラーシーブと水を均一に混合して、モレキュラーシーブスラリーを得るステップと、
ステップS2であって、リン源をステップS1で得られた前記モレキュラーシーブスラリーに添加し、超音波マイクロ波浸漬法で超音波浸漬し、浸漬後の溶液を濾過し、ケーキを取って乾燥させ、研磨した後に中間体モレキュラーシーブ粉末を得るステップと、
ステップS3であって、ステップS2で得られた前記中間体モレキュラーシーブ粉末を焼成して、変性モレキュラーシーブを得るステップと、
ステップS4であって、ステップS3で得られた前記変性モレキュラーシーブと水を均一に混合した後、接着剤を添加し、懸濁液を得るステップと、
ステップS5であって、前記懸濁液を成形処理し、乾燥した後に前記モレキュラーシーブ吸音材料を得るステップと、を含む。
【0040】
代替的には、ステップS2において、浸漬後の溶液を濾過し、ケーキを取って乾燥する具体的なステップは、浸漬後の溶液を吸引濾過し、濾別された固体を、脱イオン水による洗浄濾過を繰り返した後、120℃のオーブンで乾燥させることであってもよい。
【0041】
代替的には、具体的な使用需要に応じて対応する成形処理手段を合理的に選択して前記懸濁液を処理して、最終形態の吸音材料を得ることもできる。前記成形方法としては、噴霧又は他の方式で造粒した後に乾燥させ、耐高温高湿の粒子状吸音材料を得ることと、特定の金型で成形した後に乾燥させ、耐高温高湿のブロック状吸音材料を得ることと、懸濁液を多孔質材料、例えば、有機フォーム、活性炭フォーム等の材料に担持して乾燥させた後に、耐高温高湿のフォーム系吸音材料を得ることと、塗布又は印刷の方式により、シート状又はフィルム状吸音材料を得ることとを含む方法があるが、特に限定されるものではない。
【0042】
上記技術案において、モレキュラーシーブリン浸漬変性方法は、超音波マイクロ波浸漬法であり、ここで、超音波浸漬は、超音波のキャビテーション作用により、通常の浸漬に比べてより良好な分散効果を有し、リンはモレキュラーシーブ骨格中でより均一に分散され、マイクロ波加熱が備える誘電体発熱効果及び深い浸透の特性は、通常のウォーターバスに比べてより優れた熱伝導効率及び受熱均一性を備える。
【0043】
本発明の選択可能な技術案として、ステップS1において、前記モレキュラーシーブと前記水との重量体積比は(10~30):(150~250)である。なお、重量体積比とは、モレキュラーシーブがグラムを単位とするとき、水がミリリットルを単位とすることを指す。
【0044】
好ましくは、前記モレキュラーシーブと前記水との重量体積比は、10:150、10:200、10:250、20:150、20:200、20:250、30:150、30:200又は30:250などであってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。理解できるように、モレキュラーシーブと水の重量体積比を限定することにより、濃度が適切なモレキュラーシーブスラリーを得ることができ、後続のリン変性処理ステップに寄与できる。
【0045】
本発明の選択可能な技術案として、ステップS2において、前記超音波マイクロ波浸漬法に用いられる超音波デバイスは、プローブ式超音波である。前記超音波マイクロ波浸漬法のマイクロ波加熱温度は、60℃~90℃である。前記超音波マイクロ波浸漬法の超音波浸漬時間は、0.5h~2hである。
【0046】
代替的には、前記超音波マイクロ波浸漬法のマイクロ波加熱温度は、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃又は90℃等であってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0047】
代替的には、前記超音波マイクロ波浸漬法の超音波浸漬時間は、0.5h、0.8h、1h、1.2h、1.5h、1.8h又は2h等であってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0048】
理解されるように、超音波マイクロ波浸漬法に用いられる超音波デバイス、マイクロ波加熱温度及び超音波浸漬時間を限定することにより、リンをモレキュラーシーブ骨格中により均一に分散させ、分散効率を向上させることができる。
【0049】
本発明の選択可能な技術案として、ステップS3において、前記焼成の温度は、400℃~600℃である。
【0050】
代替的には、前記焼成の温度は、400℃、420℃、450℃、480℃、500℃、550℃、580℃又は600℃などであってもよく、もちろん上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0051】
本発明の選択可能な技術案として、ステップS3において、前記焼成の時間は、0.5h~1.5hである。
【0052】
代替的には、前記焼成の時間は、0.5h、0.6h、0.7h、0.8h、0.9h、1.0h、1.1h、1.2h、1.3h、1.4h又は1.5h等であってもよく、当然のことながら上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定しない。
【0053】
理解されるように、焼成温度及び時間を限定することにより、構造が安定した変性モレキュラーシーブを得ることができる。
【0054】
いくつかの具体的な実施例方式において、ステップS5において、前記懸濁液を成形処理することは、具体的には、前記懸濁液を造粒装置により均一な大きさの液滴に分散させ、さらに液滴を冷却塔に送り込んで凍結させて固体粒子aとするステップを備える。このような成形処理により、微球状の吸音材料を得ることができる。
【0055】
いくつかの具体的な実施例方式において、ステップS5において、前記懸濁液を成形処理することは、具体的には、まず前記懸濁液をスクリーンで未分散の大粒子を濾過し、造粒装置により均一な大きさの液滴に分散させ、その後に液滴を冷却塔に送り込んで凍結させて固体粒子aとするステップを備える。このような成形処理により、微球状の吸音材料を得ることができる。
【0056】
いくつかの具体的な実施例方式において、ステップS5において、前記懸濁液を成形処理することは、具体的には、まず前記懸濁液をスクリーンで未分散の大粒子を濾過した後、成形金型に入れて成形するステップを備える。このような成形処理により、ブロック状の吸音材料を得ることができる。
【0057】
いくつかの具体的な実施例方式において、ステップS5において、前記懸濁液を成形処理することは、具体的には、まず前記懸濁液をスクリーンで未分散の大粒子を濾過した後、多孔質材料を浸漬し、多孔質材料は、有機フォーム、炭素繊維フォーム等であってもよいステップを備える。このような成形処理により、フォーム系吸音材料を得ることができる。
【0058】
本発明の選択可能な技術案として、ステップS4において、前記変性モレキュラーシーブと前記水と前記接着剤との重量比は、1:(0.6~1.5):(0.02~0.10)である。
【0059】
本発明の選択可能な技術案として、ステップS5において、前記乾燥の方式は、凍結乾燥、真空乾燥、常圧乾燥のうちの1種又は複数種を備える。
【0060】
いくつかの具体的な実施例方式において、前記乾燥の具体的なステップは、凍結された固体粒子aを凍結オーブンに入れて12h乾燥させ、粒子内の氷が全部昇華した後に固体粒子bを得て、上記固体粒子bを100℃~150℃のオーブンに入れて2h乾燥させることである。
【0061】
いくつかの具体的な実施例方式において、前記乾燥の具体的なステップは、凍結された固体粒子aを-40℃の真空オーブンに入れて12h乾燥させ、乾燥された粒子を110℃のオーブンに入れて2h乾燥させることである。
【0062】
第3態様において、本発明は、スピーカをさらに提供し、図1に示すように、スピーカ10は、収容空間を備えるハウジング1と、前記ハウジング1内に配置された発音単体2と、前記発音単体2と前記ハウジング1で囲まれたバックチャンバ3とを備え、前記バックチャンバ3には本発明の上記吸音材料が充填されている。
【0063】
理解できるように、本発明の上記吸音材料をスピーカ共振チャンバ内に充填し、高温高湿の使用環境に適応することができる。このようなスピーカは、スマートウォッチ、携帯電話、タブレット、イヤホン、スマートオーディオ、ノートパソコン等電子デバイスに適用することができる。
【0064】
以下では、複数の実施例を分けて本発明の実施例を一回に説明する。ただし、本発明の実施例は、以下の具体的な実施例に限定されない。保護範囲内において、適切な変更を実施することができる。
【0065】
[実施例1]
モレキュラーシーブ吸音材料の製造方法は、以下のステップに従って実施する。
【0066】
ステップS1では、ZSM-5(MFI)ゼオライト20gを秤量し、200mlの脱イオン水に添加し、均一に撹拌してモレキュラーシーブスラリーを得る。
【0067】
ステップS2では、ZSM-5(MFI)ゼオライトにおけるAlとのモル比が1:1質量である(NH42HPO4を秤量し、上記モレキュラーシーブスラリーに添加し、マイクロ波で80℃の条件で1h超音波浸漬する。
【0068】
浸漬後の溶液を濾過し、ケーキを取って脱イオン水による洗浄を繰り返し、その後に120℃のオーブンで乾燥させる。
【0069】
ステップS3では、ステップS2で得られた固体を500℃マッフル炉で1h焼成した後に取り出し、粉末に研磨すれば、変性モレキュラーシーブを得る。
【0070】
ステップS4では、上記変性モレキュラーシーブ20g、脱イオン水20g、アクリルバインダー2gを秤量して均一に混合し、常温で2h撹拌して懸濁液を得る。
【0071】
ステップS5では、ステップS4で得られた懸濁液を造粒装置により、均一な大きさの小液滴に分散させ、液滴が冷却塔に送り込んで凍結させて固体粒子とする。
【0072】
上記固体粒子を-40℃の真空オーブンに入れて12h乾燥させ、乾燥した後の粒子を110℃のオーブンに入れて2h乾燥させ、得られた固体粒子は、つまり、耐高温高湿のモレキュラーシーブ吸音微小球材料である。
【0073】
[比較例1]
本比較例は、ステップS1~S3を省略し、未変性のZSM-5(MFI)モレキュラーシーブ原粉をそのまま用いて吸音微小球の製造を行う点で、実施例1と異なっている。
【0074】
[実験例]
1、音響測定
スピーカの共振周波数は、周波数依存性抵抗及びその位相、及びその対応するゼロクロスを測定することにより特定される。0.5mlバックチャンバ及び11mm*15mm*3mm発音単体を備えるスピーカをインピーダンスアナライザーに接続し、直径300~350μmの微小球を選別して、スピーカのバックチャンバを満たし、空きチャンバを比較してF0のオフセット値即ちF0を算出する。
【0075】
2、高温高湿試験
本発明の前記実施例1及び比較例1は、初期性能をテストした後、いずれも85℃/85%rhの高温高湿タンクに放置し、24hごとに取り出して室温条件で1h放置した後、F0を測定し、5日間持続的に監視した高温高湿試験の結果は、図2に示すとおりである。
【0076】
図2から、リン元素変性を行ったモレキュラーシーブ吸音微小球は、高温高湿の環境で1日以上放置したとしても、性能が明らかに低下させないのに対して、リン元素変性を行っていないモレキュラーシーブ吸音微小球は、高温高湿の環境で1日以上放置した後、性能損失が前者の倍になることがわかった。その結果、リン変性されたモレキュラーシーブ吸音材料は、より優れた耐高温高湿性能を備えることが示されている。
【0077】
上記は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定することを意図するものではなく、当業者にとって、本発明は、様々な修正および変更を有し得る。本発明の精神と原則内で、行われたいかなる修正、同等置換、改善などは、いずれも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0078】
1 ハウジング
2 発音単体
3 バックチャンバ
10 スピーカ
図1
図2