(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】キシリレンジイソシアネート組成物、キシリレンジイソシアネート変性体組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズ
(51)【国際特許分類】
C07C 265/14 20060101AFI20241225BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20241225BHJP
G02C 7/00 20060101ALI20241225BHJP
G02C 7/02 20060101ALI20241225BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20241225BHJP
C07C 265/08 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
C07C265/14
G02B1/04
G02C7/00
G02C7/02
C08G18/76 014
C07C265/08
(21)【出願番号】P 2023089233
(22)【出願日】2023-05-30
(62)【分割の表示】P 2022528632の分割
【原出願日】2021-06-14
【審査請求日】2024-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2021011959
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 勝
【審査官】吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-503325(JP,A)
【文献】特表2020-533393(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163016(WO,A1)
【文献】特開2018-193369(JP,A)
【文献】特開2018-177811(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179575(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
G02B
G02C
C08G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キシリレンジイソシアネート組成物であって、
99質量%以上のキシリレンジイソシアネートと、
前記キシリレンジイソシアネート組成物を以下の測定条件でガスクロマトグラフィー質量分析により測定した場合に、保持時間が14.0分~14.6分である化合物と、
ジクロロメチルベンジルイソシアネートと
を含み、
前記化合物の含有割合は、2000ppm以下であり、
前記ジクロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、60ppm以下である、キシリレンジイソシアネート組成物。
(ガスクロマトグラフィー質量分析の測定条件)
カラム;HP19091L-433 HP-50+(内径0.25mm×長さ30m、フィルム0.25μm)、
オーブン温度;50℃で1分間保持、50℃から280℃まで10.0℃/minで昇温、280℃到達後6分間保持、
キャリアガス;He1.0ml/min コンスタントフローモード、
注入方法;パルスドスプリットレス法(150kPa at 0.5min)、
注入量;1.0μL、
サンプル濃度:1.0質量%ジクロロメタン溶液
注入温度;200℃、
インターフェース温度;280℃、
四重極温度;150℃、
イオン源温度;230℃、
検出方法;Scan法(m/z:10~500)。
【請求項2】
前記化合物の含有割合は、100ppmを超過する、請求項1に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【請求項3】
前記化合物の含有割合は、10ppm以上である、請求項1に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【請求項4】
前記化合物の分子量は、161である、請求項1~3のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【請求項5】
前記化合物は、下記一般式(1)で示される、請求項1~3のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(1)において、R
1は、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。R
2は、水素原子、メチル基、エチル基またはホルミル基を示す。mは、0以上2以下の整数を示す。)
【請求項6】
前記化合物は、下記化学式(2)で示されるホルミル基含有イソシアネート、および/または、下記化学式(3)で示されるエチル基含有イソシアネートを含む、請求項5に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【化2】
【化3】
【請求項7】
99質量%以上のキシリレンジイソシアネートと、
下記一般式(1)で示される化合物と、
ジクロロメチルベンジルイソシアネートと
を含み、
前記化合物の含有割合は、2000ppm以下であり、
前記ジクロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、60ppm以下である、キシリレンジイソシアネート組成物。
【化1】
(一般式(1)において、R
1は、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。R
2は、水素原子、メチル基、エチル基またはホルミル基を示す。mは、0以上2以下の整数を示す。)
【請求項8】
前記化合物の含有割合は、100ppmを超過する、請求項7に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【請求項9】
前記化合物の含有割合は、10ppm以上である、請求項7に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【請求項10】
前記化合物は、下記化学式(2)で示されるホルミル基含有イソシアネート、および/または、下記化学式(3)で示されるエチル基含有イソシアネートを含む、請求項7~9のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【化2】
【化3】
【請求項11】
クロロメチルベンジルイソシアネートをさらに含み、前記クロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合が、0.2ppm以上3000ppm以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物が変性された変性体組成物であり、
下記(a)~(i)の官能基を少なくとも1種含有する、キシリレンジイソシアネート変性体組成物。
(a)イソシアヌレート基、
(b)アロファネート基、
(c)ビウレット基、
(d)ウレタン基、
(e)ウレア基、
(f)イミノオキサジアジンジオン基、
(g)ウレトジオン基、
(h)ウレトンイミン基、
(i)カルボジイミド基
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物、および/または、請求項12に記載のキシリレンジイソシアネート変性体組成物を含有するイソシアネート成分と、
活性水素基含有成分と、を含む、重合性組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の重合性組成物の硬化物である、樹脂。
【請求項15】
請求項14に記載の樹脂を含む、成形体。
【請求項16】
請求項15に記載の成形体を含む、光学素子。
【請求項17】
請求項16に記載の光学素子を含む、レンズ。
【請求項18】
レンズの製造のための請求項1~11のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物の使用。
【請求項19】
99質量%以上のキシリレンジイソシアネートと、
下記化学式で示されるホルミル基含有イソシアネートと、
クロロメチルベンジルイソシアネートと
を含み、
前記ホルミル基含有イソシアネートの含有割合は、2000ppm以下であり、
前記クロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合は、3000ppm以下である、キシリレンジイソシアネート組成物の、レンズの製造のための使用。
化学式:
【化1】
【請求項20】
前記ホルミル基含有イソシアネートの含有割合は、100ppmを超過する、請求項19に記載のキシリレンジイソシアネート組成物の、レンズの製造のための使用。
【請求項21】
前記ホルミル基含有イソシアネートの含有割合は、10ppm以上である、請求項19に記載のキシリレンジイソシアネート組成物の、レンズの製造のための使用。
【請求項22】
前記クロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合が、0.2ppm以上である、請求項19~21のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物の、レンズの製造のための使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キシリレンジイソシアネート組成物、キシリレンジイソシアネート変性体組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種産業製品に用いられるポリ(チオ)ウレタン樹脂の原料として、キシリレンジイソシアネート組成物が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されるようなキシリレンジイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートに加えて、キシリレンジイソシアネート以外の化合物を含む場合がある。
【0005】
しかるに、樹脂は、目的および用途によって、優れた耐黄変性および透明性が要求される。しかし、キシリレンジイソシアネート組成物が特定の化合物を含有すると、そのキシリレンジイソシアネート組成物から製造される樹脂の耐黄変性および透明性が、顕著に低下するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、耐黄変性および透明性に優れる樹脂を安定して製造できるキシリレンジイソシアネート組成物、キシリレンジイソシアネート変性体組成物、重合性組成物、樹脂、成形体、光学素子およびレンズを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、キシリレンジイソシアネート組成物であって、キシリレンジイソシアネートと、前記キシリレンジイソシアネート組成物を以下の測定条件でガスクロマトグラフィー質量分析により測定した場合に、保持時間が14.0分~14.6分である化合物と、を含み、前記化合物の含有割合が、2000ppm以下である、キシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0008】
(ガスクロマトグラフィー質量分析の測定条件)
カラム;HP19091L-433 HP-50+(内径0.25mm×長さ30m、フィルム0.25μm)、
オーブン温度;50℃で1分間保持、50℃から280℃まで10.0℃/minで昇温、280℃到達後6分間保持、
キャリアガス;He1.0ml/min コンスタントフローモード、
注入方法;パルスドスプリットレス法(150kPa at 0.5min)、
注入量;1.0μL、
サンプル濃度:1.0質量%ジクロロメタン溶液
注入温度;200℃、
インターフェース温度;280℃、
四重極温度;150℃、
イオン源温度;230℃、
検出方法;Scan法(m/z:10~500)。
【0009】
本発明[2]は、前記化合物の含有割合が、100ppmを超過する、上記[1]のキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
本発明[3]は、前記化合物の含有割合が、10ppm以上である、上記[1]のキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0010】
本発明[4]は、前記化合物の分子量が、161である、上記[1]~[3]のいずれか1つのキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0011】
本発明[5]は、前記化合物が、下記一般式(1)で示される、上記[1]~[4]のいずれか1つのキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0012】
【化1】
(一般式(1)において、R
1は、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。R
2は、水素原子、メチル基、エチル基またはホルミル基を示す。mは、0以上2以下の整数を示す。)
本発明[6]は、前記化合物が、下記化学式(2)で示されるホルミル基含有イソシアネート、および/または、下記化学式(3)で示されるエチル基含有イソシアネートを含む、上記[5]のキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0013】
【0014】
【化3】
本発明[7]は、キシリレンジイソシアネートと、下記一般式(1)で示される化合物であって、分子量が161である化合物と、を含み、前記化合物の含有割合が、2000ppm以下である、キシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0015】
【化1】
(一般式(1)において、R
1は、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。R
2は、水素原子、メチル基、エチル基またはホルミル基を示す。mは、0以上2以下の整数を示す。)
本発明[8]は、前記化合物の含有割合は、100ppmを超過する、上記[7]のキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
本発明[9]は、前記化合物の含有割合が10ppm以上である、上記[7]のキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0016】
本発明[10]は、前記化合物は、下記化学式(2)で示されるホルミル基含有イソシアネート、および/または、下記化学式(3)で示されるエチル基含有イソシアネートを含む、上記[7]~[9]のいずれか1つのキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0017】
【0018】
【化3】
本発明[11]は、クロロメチルベンジルイソシアネートをさらに含み、前記クロロメチルベンジルイソシアネートの含有割合が、0.2ppm以上3000ppm以下である、上記[1]~[10]のいずれか1つのキシリレンジイソシアネート組成物を含む。
【0019】
本発明[12]は、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載のキシリレンジイソシアネート組成物が変性された変性体組成物であり、下記(a)~(i)の官能基を少なくとも1種含有する、キシリレンジイソシアネート変性体組成物を含む。
(a)イソシアヌレート基、
(b)アロファネート基、
(c)ビウレット基、
(d)ウレタン基、
(e)ウレア基、
(f)イミノオキサジアジンジオン基、
(g)ウレトジオン基、
(h)ウレトンイミン基、
(i)カルボジイミド基。
【0020】
本発明[13]は、上記[1]~[11]のいずれか1つのキシリレンジイソシアネート組成物、および/または、上記[12]のキシリレンジイソシアネート変性体組成物を含有するイソシアネート成分と、活性水素基含有成分と、を含む、重合性組成物を含む。
【0021】
本発明[14]は、上記[13]の重合性組成物の硬化物である、樹脂を含む。
【0022】
本発明[15]は、上記[14]の樹脂を含む、成形体を含む。
【0023】
本発明[16]は、上記[15]の成形体を含む、光学素子を含む。
【0024】
本発明[17]は、上記[16]の光学素子を含む、レンズを含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明のキシリレンジイソシアネート組成物は、キシリレンジイソシアネートと、上記した化合物とを含み、上記した化合物の含有割合が上記上限以下である。そのため、上記したキシリレンジイソシアネート組成物から製造される樹脂は、耐黄変性および透明性に優れる。
【0026】
本発明のキシリレンジイソシアネート変性体組成物は、上記したキシリレンジイソシアネート組成物が変性されて得られる。そのため、上記しキシリレンジイソシアネート変性体組成物から製造される樹脂は、耐黄変性および透明性に優れる。
【0027】
本発明の重合性組成物は、イソシアネート成分として、上記したキシリレンジイソシアネート組成物、および/または、上記したキシリレンジイソシアネート変性体組成物を含有する。そのため、上記した重合性組成物から製造される樹脂は、耐黄変性および透明性に優れる。
【0028】
本発明の樹脂、成形体、光学素子およびレンズは、上記した重合性組成物の硬化物を含む。そのため、樹脂、成形体、光学素子およびレンズは、耐黄変性および透明性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.キシリレンジイソシアネート組成物
本発明のキシリレンジイソシアネート組成物は、主成分としてキシリレンジイソシアネートを99質量%以上含有する、ほぼ単一化合物(つまり、キシリレンジイソシアネート)であるが、副成分として、後述する特定化合物(より具体的には、特定のイソシアネート化合物)を含有していることから、キシリレンジイソシアネート組成物として定義している。
【0030】
つまり、本発明のキシリレンジイソシアネート組成物は、必須成分として、キシリレンジイソシアネートと、後述する特定化合物とを含有している。
【0031】
以下において、キシリレンジイソシアネート組成物をXDI組成物とし、キシリレンジイソシアネートをXDIとする。
【0032】
XDIとして、例えば、1,2-XDI(o-XDI)、1,3-XDI(m-XDI)、および、1,4-XDI(p-XDI)が挙げられる。
【0033】
これらXDIは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0034】
XDIのなかでは、好ましくは、1,3-XDI(m-XDI)が挙げられる。
【0035】
XDIは、例えば、公知の塩酸塩法により製造できる。具体的には、キシリレンジアミンの塩酸塩とホスゲンとを、常圧(0.1MPa)下において反応させることにより、XDIを製造できる。また、XDIは、必要により、例えば、公知の精製方法によって精製される。精製方法として、例えば、精留(蒸留)および抽出が挙げられる。
【0036】
XDIの含有割合(純度)は、XDI組成物の総質量に対して、例えば、99.00質量%以上、好ましくは、99.50質量%以上、より好ましくは、99.60質量%以上、さらに好ましくは、99.80質量%以上、また、例えば、99.95質量%以下である。XDIの含有割合は、特許第6373536号公報の[0377]段落に記載の方法に準拠して測定できる。
【0037】
特定化合物は、例えば、XDIに添加されることにより、XDI組成物に含まれる。なお、特定化合物は、上記したXDIの製造において副生して、XDI組成物に含まれてもよい。
特定化合物がXDIの製造において副生してXDI組成物に含まれる場合、XDI組成物に含まれる特定化合物の含有割合を調整する方法は、限定されない。XDI組成物に含まれる特定化合物の含有割合は、例えば、蒸留、カラム精製等の公知の方法により調整できる。
【0038】
XDI組成物を以下の測定条件でガスクロマトグラフィー質量分析により測定した場合に、特定化合物の保持時間が14.0分~14.6分である。
(ガスクロマトグラフィー質量分析の測定条件)
カラム;HP19091L-433 HP-50+(内径0.25mm×長さ30m、フィルム0.25μm)、
オーブン温度;50℃で1分間保持、50℃から280℃まで10.0℃/minで昇温、280℃到達後6分間保持、
キャリアガス;He1.0ml/min コンスタントフローモード、
注入方法;パルスドスプリットレス法(150kPa at 0.5min)、
注入量;1.0μL、
サンプル濃度:1.0質量%ジクロロメタン溶液、
注入温度;200℃、
インターフェース温度;280℃、
四重極温度;150℃、
イオン源温度;230℃、
検出方法;Scan法(m/z:10~500)。
【0039】
特定化合物の分子量は、161である。特定化合物として、具体的には、下記一般式(1)で示されるイソシアネート化合物が挙げられる。
【0040】
一般式(1)
【化1】
(一般式(1)において、R
1は、水素原子、メチル基またはエチル基を示す。R
2は、水素原子、メチル基、エチル基またはホルミル基を示す。mは、0以上2以下の整数を示す。)
一般式(1)において、R
1は、好ましくは、水素原子を示す。
【0041】
一般式(1)において、R2は、好ましくは、エチル基またはホルミル基を示す。
【0042】
一般式(1)において、mは、好ましくは、1を示す。
【0043】
上記一般式(1)で示されるイソシアネート化合物は、好ましくは、下記化学式(2)で示されるホルミル基含有イソシアネート、および/または、下記化学式(3)で示されるエチル基含有イソシアネートを含み、より好ましくは、下記化学式(2)で示されるホルミル基含有イソシアネートを含む。
【0044】
【0045】
化学式(3)
【化3】
特定化合物の含有割合は、XDI組成物の総質量に対して、例えば、0.1ppm、好ましくは、1ppm以上、より好ましくは、10ppm以上、さらに好ましくは、100ppmを超過し、また、2000ppm以下、好ましくは、1700ppm以下、より好ましくは、1500ppm以下、さらに好ましくは、1200ppm以下、とりわけ好ましくは、1000ppm以下である。特定化合物の含有割合は、後述する実施例に記載の方法に準拠して算出できる。なお、上限値と下限値は適宜組み合わせることができる。
【0046】
特定化合物の含有割合が上記下限以上であれば、XDI組成物から製造される樹脂の染色性の向上を図ることができる。また、特定化合物の含有割合が上記下限以上であれば、XDI組成物の保存安定性が低下することを抑制できる。また、特定化合物の含有割合が上記下限以上であれば、特定化合物を簡単に低減でき、XDI組成物の生産性が低下することを抑制できる。特定化合物の含有割合が上記上限以下であれば、XDI組成物から製造される樹脂の耐黄変性および透明性の向上を図ることができる。
【0047】
また、XDI組成物は、下記化学式(4)に示すクロロメチルベンジルイソシアネート(モノクロロメチルベンジルイソシアネート)を含有してもよい。以下において、クロロメチルベンジルイソシアネートをCBIとする。
【0048】
化学式(4)
【化4】
CBIは、上記したXDIの製造において副生する塩素化合物である。つまり、XDIの製造において、CBIが副生する場合がある。なお、XDIの製造において副生するCBIの構造異性体は、製造されるXDIの構造異性体に対応する。
【0049】
CBIとして、例えば、o-CBI、m-CBIおよびp-CBIが挙げられる。
【0050】
CBIの含有割合は、XDI組成物の総質量に対して、例えば、0ppm以上、好ましくは、0.2ppm以上、好ましくは、6ppm以上、より好ましくは、100ppm以上、また、例えば、5000ppm以下、好ましくは、4000ppm以下、より好ましくは、3000ppm以下、とりわけ好ましくは、1600ppm以下、特に好ましくは、1000ppm以下である。CBIの含有割合は、特許第6373536号公報の[0377]段落に記載の方法に準拠して測定できる。
【0051】
CBIの含有割合が上記の範囲であれば、XDI組成物から製造される樹脂の耐黄変性の向上を確実に図ることができる。とりわけ、CBIの含有割合が上記上限以下であれば、XDI組成物から製造される樹脂の耐黄変性の向上を確実に図ることができるとともに、樹脂の機械特性の向上を図ることができる。
また、XDI組成物は、ジクロロメチルベンジルイソシアネートを含有してもよい。以下において、ジクロロメチルベンジルイソシアネートをDCIと記載する。
DCIの含有割合は、XDI組成物の総質量に対して、例えば、0.1ppm以上、好ましくは、0.3ppm以上、より好ましくは、0.6ppm以上、より好ましくは、1.0ppm以上であり、例えば、60ppm以下、好ましくは、50ppm以下、より好ましくは、30ppm以下、より好ましくは、20ppm以下である。
DCIの含有割合が上記範囲内であれば、XDI組成物から製造される樹脂の黄変および/または白濁を抑制できる。
DCIの含有割合は、特許第6373536号公報の[0376]段落に記載の方法に準拠して測定できる。
【0052】
また、XDI組成物は、その他の成分を含有することができる。その他の成分として、例えば、ジクロロメタンイミノ-メチルベンジルイソシアネート、キシリレンジクロリド、および、シアノベンジルイソシアネートが挙げられる。
【0053】
XDI組成物は、その他の成分のうち、1種のみを含有してもよく、2種以上含有してもよい。
【0054】
その他の成分の含有割合は、XDI組成物の総質量に対して、例えば、0ppm以上、また、例えば、0.2ppm以下、好ましくは、300ppm以下である。
【0055】
XDI組成物における加水分解性塩素の濃度(HC)は、例えば、10ppm以上、好ましくは、20ppm以上、より好ましくは、30ppm以上、また、例えば、1000ppm以下、好ましくは、500ppm以下、より好ましくは200ppm以下である。
加水分解性塩素の濃度(HC)は、JIS K-1603-3(2007)に記載されている加水分解性塩素の求め方に準拠して測定される。
【0056】
2.キシリレンジイソシアネート変性体組成物
上記したXDI組成物は、必要により公知の方法で変性体化される。
【0057】
キシリレンジイソシアネート変性体組成物(以下、XDI変性体組成物とする。)は、上記したXDI組成物を変性することにより製造され、下記(a)~(i)の官能基を少なくとも1種含有する。
(a)イソシアヌレート基、
(b)アロファネート基、
(c)ビウレット基、
(d)ウレタン基、
(e)ウレア基、
(f)イミノオキサジアジンジオン基、
(g)ウレトジオン基、
(h)ウレトンイミン基、
(i)カルボジイミド基。
【0058】
より具体的には、上記(a)の官能基(イソシアヌレート基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのトリマーを含有しており、例えば、XDI組成物を公知のイソシアヌレート化触媒の存在下において反応させ、XDIをイソシアヌレート化(例えば三量化)することにより、得ることができる。
【0059】
上記(b)の官能基(アロファネート基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのアロファネート変性体を含有しており、例えば、XDI組成物と、1価アルコールまたは2価アルコールとを反応させた後、公知のアロファネート化触媒の存在下でさらに反応させることにより、得ることができる。
【0060】
上記(c)の官能基(ビウレット基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのビウレット変性体を含有しており、例えば、XDI組成物と、水または第二級アミンとを反応させた後、公知のビウレット化触媒の存在下でさらに反応させることにより、得ることができる。
【0061】
上記(d)の官能基(ウレタン基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのポリオール変性体を含有しており、例えば、XDI組成物と、低分子量ポリオール(例えば、トリメチロールプロパン)との反応により、得ることができる。
【0062】
上記(e)の官能基(ウレア基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのポリアミン変性体を含有しており、例えば、XDI組成物と、ポリアミンとの反応により、得ることができる。
【0063】
上記(f)の官能基(イミノオキサジアジンジオン基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのイミノオキサジアジンジオン変性体(非対称性トリマー)を含有しており、例えば、XDI組成物を公知のイミノオキサジアジンジオン化触媒の存在下において反応させ、XDIをイミノオキサジアジンジオン化(例えば三量化)することにより、得ることができる。
【0064】
上記(g)の官能基(ウレトジオン基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのウレトジオン変性体を含有しており、例えば、XDI組成物を、公知のウレトジオン化触媒の存在下において反応させ、XDIをウレトジオン化(例えば、二量化)することにより、得ることができる。
【0065】
上記(h)の官能基(ウレトンイミン基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのウレトンイミン変性体を含有しており、例えば、XDI組成物を公知のカルボジイミド化触媒の存在下において反応させ、カルボジイミド基を形成した後、そのカルボジイミド基にXDIを付加させることにより、得ることができる。
【0066】
上記(i)の官能基(カルボジイミド基)を含有するXDI変性体組成物は、XDIのカルボジイミド変性体を含有しており、例えば、XDI組成物を公知のカルボジイミド化触媒の存在下において反応させることにより、得ることができる。
【0067】
なお、XDI変性体組成物は、上記(a)~(i)の官能基を少なくとも1種含有していればよく、2種以上含有することもできる。そのようなXDI変性体組成物は、上記の反応を適宜併用することにより、生成される。
【0068】
また、XDI変性体組成物は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0069】
<作用効果>
上記したXDI組成物は、XDIと、上記した特定化合物とを含み、上記した特定化合物の含有割合が上記上限以下である。また、上記したXDI変性体組成物は、上記したXDI組成物が変性されて得られる。
【0070】
そのため、上記したXDI組成物および/または上記したXDI変性体組成物から製造される樹脂は、耐黄変性および透明性に優れる。
【0071】
なお、上記した実施形態では、特定化合物として、上記一般式(1)で示される化合物を挙げ、具体的には、上記化学式(2)で示されるホルミル基含有イソシアネートおよび上記化学式(3)で示されるエチル基含有イソシアネートが挙げられる。しかし、特定化合物は、これに限定されない。
【0072】
XDI組成物を上記の測定条件でガスクロマトグラフィー質量分析により測定した場合に、保持時間が14.0分~14.6分である化合物であれば、特定化合物は、上記一般式(1)に含まれなくてもよい。
【0073】
また、上記一般式(1)に含まれ、分子量が161である化合物であれば、特定化合物の保持時間は、XDI組成物を上記の測定条件でガスクロマトグラフィー質量分析により測定した場合に、保持時間が14.0分~14.6分の範囲外であってもよい。
【0074】
3.重合性組成物
上記したXDI組成物および/またはXDI変性体組成物は、樹脂の原料として好適に利用される。より詳しくは、XDI組成物および/またはXDI変性体組成物は、イソシアネート成分として、樹脂の原料である重合性組成物に含まれる。
【0075】
重合性組成物は、イソシアネート成分と、活性水素基含有成分とを含む。
【0076】
イソシアネート成分は、XDI組成物および/またはXDI変性体組成物を含有し、好ましくは、XDI組成物および/またはXDI変性体組成物からなる。
【0077】
活性水素基含有成分として、例えば、ポリオール成分、ポリチオール成分、および、ポリアミン成分が挙げられる。
【0078】
活性水素基含有成分は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0079】
活性水素基含有成分のなかでは、好ましくは、ポリオール成分およびポリチオール成分が挙げられる。
【0080】
ポリオール成分として、例えば、低分子量ポリオールおよび高分子量ポリオールが挙げられる。
【0081】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量60以上400未満、好ましくは、300以下の化合物である。低分子量ポリオールとして、例えば、2価アルコール、3価アルコール、4価アルコール、5価アルコール、6価アルコール、7価アルコール、および、8価アルコールが挙げられる。低分子量ポリオールのなかでは、好ましくは、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられる。
【0082】
2価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、アルカン(7~22)ジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、アルカン-1,2-ジオール(C(炭素数、以下同様。)17~20)、イソソルビド、1,3-または1,4-シクロヘキサンジメタノールおよびそれらの混合物、1,4-シクロヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、1,4-ジヒドロキシ-2-ブテン、2,6-ジメチル-1-オクテン-3,8-ジオール、および、ビスフェノールAが挙げられる。
【0083】
3価アルコールとして、例えば、グリセリン、および、トリメチロールプロパンが挙げられる。
【0084】
また、低分子量ポリオールとして、数平均分子量60以上400未満のポリアルキレンオキサイドが挙げられる。ポリアルキレンオキサイドには、2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体が含まれる。ポリアルキレンオキサイドは、上記のアルコールを開始剤として、アルキレンオキサイド(例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド)を付加させて得られる。
【0085】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量400以上、好ましくは、500以上、また、例えば、10000以下、好ましくは、5000以下の化合物である。
【0086】
高分子量ポリオールとして、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオール、シリコーンポリオール、フッ素ポリオール、および、ビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。
【0087】
このようなポリオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0088】
ポリオール成分の水酸基価は、例えば、5mgKOH/g以上、好ましくは、10mgKOH/g以上、また、例えば、300mgKOH/g以下、好ましくは、250mgKOH/g以下である。なお、水酸基価は、JISK1557-1のA法またはB法に準拠するアセチル化法またはフタル化法から測定できる。
【0089】
また、ポリオール成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定による標準ポリスチレン換算で、例えば、2000以上、好ましくは、5000以上、また、例えば、100000以下、好ましくは、50000以下である。
【0090】
ポリチオール成分として、例えば、メタンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,2,3-プロパントリチオール、1,2-シクロヘキサンジチオール、ビス(2-メルカプトエチル)エーテル、テトラキス(メルカプトメチル)メタン、ジエチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、エチレングリコールビス(2-メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリス(2-メルカプトアセテート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2-メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3-メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2-ビス(2-メルカプトエチルチオ)エタン、1,2-ビス(3-メルカプトプロピルチオ)エタン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(2-メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3-トリス(3-メルカプトプロピルチオ)プロパン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2-メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3-メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3-ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5-ジメルカプトメチル-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプト-1,4-ジチアン、2,5-ジメルカプトメチル-2,5-ジメチル-1,4-ジチアン、及びこれらのチオグリコール酸およびメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2-メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3-メルカプトプロピネート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(2-メルカプトアセテート)、2-メルカプトエチルエーテルビス(3-メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2-メルカプトエチルエステル)、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、トリス(メルカプトエチルチオ)メタン、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアンなどの脂肪族ポリチオール化合物;
1,2-ジメルカプトベンゼン、1,3-ジメルカプトベンゼン、1,4-ジメルカプトベンゼン、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,5-ナフタレンジチオール、2,6-ナフタレンジチオールなどの芳香族ポリチオール化合物;
2-メチルアミノ-4,6-ジチオール-sym-トリアジン、3,4-チオフェンジチオール、ビスムチオール等の複素環ポリチオール化合物などが挙げられる。
【0091】
このようなポリチオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0092】
また、ポリチオール成分としては、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、2,5-ビス(メルカプトメチル)-1,4-ジチアン、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6-ビス(メルカプトメチルチオ)-1,3-ジチアン、2-(2,2-ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)-1,3-ジチエタン、1,1,2,2-テトラキス(メルカプトメチルチオ)エタン、3-メルカプトメチル-1,5-ジメルカプト-2,4-ジチアペンタン、トリス(メルカプトメチルチオ)メタン、エチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)およびジエチレングリコールビス(3-メルカプトプロピオネート)からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0093】
<作用効果>
上記した重合性組成物は、イソシアネート成分として、上記したXDI組成物、および/または、上記したXDI変性体組成物を含有する。そのため、上記した重合性組成物から製造される樹脂は、耐黄変性および透明性に優れる。
【0094】
4.樹脂
上記したイソシアネート成分と、上記した活性水素基含有成分とを反応させることにより、樹脂が製造される。言い換えれば、樹脂は、重合性組成物の硬化物である。樹脂は、好ましくは、公知の成形方法によって成形される。つまり、成形体は、樹脂を含む。
【0095】
樹脂の成形体として、例えば、光学素子が挙げられる。
【0096】
光学素子として、例えば、レンズ、シートおよびフィルムが挙げられ、好ましくは、レンズが挙げられる。
【0097】
レンズは、例えば、上記したXDI組成物と、上記したポリチオール成分との反応により製造される。レンズの製造では、例えば、注型法を採用することができる。
【0098】
レンズとして、例えば、透明レンズ、サングラスレンズ、偏光レンズ、眼鏡レンズ、カメラレンズ、ピックアップレンズ、および、コンタクトレンズが挙げられる。
【0099】
また、重合性組成物は、二液硬化型樹脂原料として調製することもできる。
【0100】
二液硬化型樹脂原料は、硬化剤としてのA剤と、主剤としてのB剤とを含む。
【0101】
A剤は、例えば、上記したXDI変性体組成物を含む。B剤は、例えば、上記したポリオール成分を含む。
【0102】
二液硬化型樹脂原料として、例えば、二液硬化型コーティング原料が挙げられる。コーティングとして、例えば、塗料および接着剤が挙げられる。
【0103】
<作用効果>
上記した樹脂、成形体、光学素子、レンズおよびコーティングは、上記した重合性組成物の硬化物を含む。そのため、樹脂、成形体、光学素子、レンズおよびコーティングは、耐黄変性および透明性に優れる。
【実施例】
【0104】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0105】
<評価方法>
実施例中において、プラスチックレンズの各物性の評価方法は以下の通りである。
【0106】
<屈折率(ne)、アッベ数(νe)>
島津製作所社製プルフリッヒ屈折計KPR-30を用いて、波長546.1nm(水銀e線)、波長480.0nm(Cd F’線)および波長643.9nm(Cd C’線)での屈折率(ne、nF’、nC’)をそれぞれ測定し、屈折率(ne)およびアッベ数(νe)をそれぞれ求めた。
【0107】
<耐熱性>
島津製作所社製熱機械分析装置TMA-60を用いて、TMAペネートレーション法(50g荷重、ピン先0.5mmφ、昇温速度10℃/min)でのガラス転移温度Tgを測定し、耐熱性の指標とした。
【0108】
<プラスチックレンズ(樹脂)のイエローインデックスの値(Y.I.値)の算出> 樹脂を、厚さ9mm、直径75mmの円形平板プラスチックレンズとして作成し、コニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用いて、Y.I.値を求めた。
【0109】
なお、Y.I.値は小さいほどプラスチックレンズの色相が良く、Y.I.値が大きいほど色相が不良となる相関がある。
【0110】
<プラスチックレンズ(樹脂)の失透度>
樹脂を、厚さ9mm、直径75mmの円形平板プラスチックレンズとして作成し、平板レンズに対し、光源(ハヤシレピック社製Luminar Ace LA-150A)からの光を透過させた。平板レンズを透過した光の画像を画像処理装置(宇部情報システム社製)に取り込み、取り込んだ画像に対して濃淡処理した。処理後の画像の濃淡の度合いを画素毎に数値化し、各画素の濃淡の度合いの数値の平均値を取得し、平板レンズの失透度を求めた。
【0111】
失透度が小さい程、樹脂(ここでは平板レンズ)の透明性が損なわれる度合いが少ない(すなわち、樹脂の透明性に優れている)。
【0112】
2.調製例1:XDIの調製
還流冷却管、撹拌翼、温度計、塩化水素ガス導入管、ホスゲン導入管、原料槽、原料装入ポンプを備えた、圧力調節器付きのオートクレーブ(内容積は2m3)を反応器として用いた。この反応器内に、不活性溶媒としてオルトジクロロベンゼン846kgを仕込み、原料槽にm-キシリレンジアミン136.2kg(1.0kモル)、および、オルトジクロロベンゼン621kgを仕込んだ(全アミン濃度8.5質量%)。
【0113】
次に、反応器内の温度を120℃に昇温後、内圧を大気圧よりも0.01MPa高圧に調節した。そして、塩化水素ガス導入管より塩化水素ガスを43.8kg/hrの速度で反応器内に装入を開始し、同時に原料槽から不活性溶媒で希釈したm-キシリレンジアミンを、原料装入ポンプにて379kg/hrの速度で装入を開始し、2時間掛けて全量を装入した。その後、さらに塩化水素ガスを20kg/hrで装入しながら、1時間熟成した。
【0114】
次に、反応器内において反応液(塩酸塩スラリー)を160℃に昇温後、ホスゲン導入管より、ホスゲンを100kg/hr(1.0kモル/hr)で導入し、温度を保ちながら8時間反応させた。反応終了後、反応器内に窒素をパージすることにより、未反応ホスゲンおよび塩化水素ガスを除去した。そして、反応液を濾過して、未反応塩酸塩0.8kg(乾燥重量)を取り除いた。得られた濾液を脱溶媒して、m-XDI純度98.10%の反応マス188.6kgを得た。
【0115】
次いで、得られた反応マスを精留して、m-XDI純度99.99質量%のm-XDIを得た。
【0116】
3.調製例2:ホルミル基含有イソシアネートの調製
500mlスケールの耐圧オートクレーブに、1,3-ジシアノベンゼン(富士フィルム和光純薬社製)10g(0.078モル)と、5質量%パラジウム担持カーボン触媒(NEケムキャット社製、NXタイプ49質量%含水品)16.6g(パラジウム0.0078モル)と、反応溶媒としてのメタノール(富士フィルム和光純薬社製)100gとを装入した。
【0117】
次いで、オートクレーブ内に窒素を供給して、オートクレーブ内の圧力を3.1MPa(絶対圧)まで上昇させた後、オートクレーブから窒素を排出して、オートクレーブ内の圧力を0.2MPa(絶対圧)まで低下させた。この操作を4回繰り返して、オートクレーブ内を窒素置換した。
【0118】
次いで、オートクレーブ内に水素を供給して、オートクレーブ内の圧力を2.1MPa(絶対圧)まで上昇させた後、オートクレーブから水素を排出して、オートクレーブ内の圧力を0.2MPa(絶対圧)まで低下させた。この操作を4回繰り返して、オートクレーブ内を水素置換した。
【0119】
次いで、畜圧器を用いてオートクレーブ内に水素を供給して、オートクレーブ内の圧力を1.0MPa(絶対圧)まで上昇させた。そして、オートクレーブ内の圧力を維持しながら、オートクレーブ内の内容物を撹拌して、1,3-ジシアノベンゼンを水添反応させた。
【0120】
理論量の約75%の水素吸収が完了した時点で、オートクレーブ内を窒素置換して、オートクレーブ内から水素を除去した。
【0121】
次いで、反応液をろ紙によってろ過して、反応液からパラジウム担持カーボン触媒を除去した。その後、ろ液を、ロータリーエバポレーターで濃縮した。その後、真空ポンプによって、濃縮後のろ液から低沸成分を除去した。
【0122】
これによって、1-イミノメチル-3-(アミノメチル)ベンゼンを主成分とする組成物を得た。当該組成物を加水分解して3-(アミノメチル)ベンズアルデヒドを主成分とする組成物を得た。
【0123】
次いで、3-(アミノメチル)ベンズアルデヒドを主成分とする組成物をトルエン中でトリホスゲンと反応させて、上記化学式(2)で示されるホルミル基含有イソシアネート(3-(イソシアナトメチル)ベンズアルデヒド)を調製した。反応液からトルエンを留去した後、減圧蒸留にてホルミル基含有イソシアネートを得た。
【0124】
得られたホルミル基含有イソシアネートを上記したガスクロマトグラフィー質量分析の測定条件にて分析したところ、保持時間14.0分~14.6分にピークが確認された。
【0125】
4.実施例1~4および比較例1
調製例1で得られたXDIと、調製例2で得られたホルミル基含有イソシアネートとを、XDI組成物におけるホルミル基含有イソシアネートの含有割合が表1の値となるように、混合した。これによって、XDI組成物を得た。
【0126】
なお、XDI組成物におけるホルミル基含有イソシアネートの含有割合は、得られたXDI組成物に下記の内部標準物質を添加して、上記したガスクロマトグラフィー質量分析の測定条件にて分析して、保持時間12.1分に現れる内部標準物質と、保持時間14.0分~14.6分に現れるホルミル基含有イソシアネートとの面積比から算出した。結果を表1に示す。
【0127】
内部標準物質;メチルナフタレンを分析サンプル100mgに対して0.5mg添加して10mLに定容。
【0128】
5.プラスチックレンズの製造
各実施例および各比較例のXDI組成物52質量部、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.01質量部、ゼレックUN(商品名Stepan社製品;酸性リン酸エステル)0.10質量部、バイオソーブ583(堺化学社製;紫外線吸収剤)1.5質量部を、20℃にて混合溶解させた。4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタンを主成分とするポリチオール成分48質量部を装入混合し、混合均一液とした。この均一液を600Paにて1時間脱泡した後、1μmテフロン(登録商標)フィルターにて濾過を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃~120℃まで徐々に昇温し、38時間で重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で1時間アニールを行い、プラスチックレンズを製造した。前述のプラスチックレンズの各物性の評価方法に基づき、各物性を求めた。その結果を表1に示す。
【0129】
【表1】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明のキシリレンジイソシアネート組成物、キシリレンジイソシアネート変性体組成物、重合性組成物、樹脂および成形体は、レンズ、シートおよびフィルムなどの光学素子に利用される。