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特許7610653カーボン繊維分散液およびカーボンペーパーの製造方法
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  • 特許-カーボン繊維分散液およびカーボンペーパーの製造方法 図1
  • 特許-カーボン繊維分散液およびカーボンペーパーの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】カーボン繊維分散液およびカーボンペーパーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/02 20060101AFI20241225BHJP
   D21H 13/50 20060101ALI20241225BHJP
   D06M 15/53 20060101ALI20241225BHJP
   D06M 15/333 20060101ALI20241225BHJP
   D06M 15/285 20060101ALI20241225BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20241225BHJP
【FI】
C08J3/02 A
D21H13/50
D06M15/53
D06M15/333
D06M15/285
D06M15/263
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023106960
(22)【出願日】2023-06-29
(65)【公開番号】P2024007469
(43)【公開日】2024-01-18
【審査請求日】2023-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2022-0081800
(32)【優先日】2022-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519350498
【氏名又は名称】ハンソル ケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HANSOL CHEMICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7-8F, 513, Teheran-ro, Gangnam-gu, Seoul 06169, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100167689
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 征二
(72)【発明者】
【氏名】ユン, ヤング-ホ
(72)【発明者】
【氏名】クォン, セ-マン
(72)【発明者】
【氏名】パク, ブユン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム, セウング-ヘオン
(72)【発明者】
【氏名】アン, ダミロ
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/041750(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0130840(KR,A)
【文献】特開2018-159164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
D21H
D06M
C01B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒にカーボン繊維ウェッティング剤(wetting agent)およびバインダーを投入し撹拌して、親水化されたカーボン繊維を含む溶液を製造する第1ステップと、
共重合体溶液を前記親水化されたカーボン繊維を含む溶液に投入して、前記親水化されたカーボン繊維を分散させる第2ステップと、を含み、
前記カーボン繊維の平均長さが5mm以上であり、
前記共重合体は、
アクリル酸系の単量体単位と、
アクリルアミド系の単量体単位と、
含み、
前記共重合体の総含有量100モル%を基準として、前記アクリル酸系の単量体単位と前記アクリルアミド系の単量体単位とのモル%の比(前記アクリル酸系の単量体単位のモル%:前記アクリルアミド系の単量体単位のモル%)が10:90~90:10であり、
前記カーボン繊維分散液の総含有量100重量%を基準として、
前記共重合体を0.1重量%以上、10重量%以下、
前記カーボン繊維を0.01重量%以上、10重量%以下、
前記バインダーを0.001重量%以上、5重量%以下、
含む、
カーボン繊維分散液の製造方法。
【請求項2】
前記第1ステップで500~2,000rpmの速度で剪断力(shear force)を加えて撹拌させる、
請求項1に記載のカーボン繊維分散液の製造方法。
【請求項3】
前記第2ステップで1,000rpm以下の速度で撹拌させる、
請求項1に記載のカーボン繊維分散液の製造方法。
【請求項4】
前記ウェッティング剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはこれらの組み合わせである、
請求項1に記載のカーボン繊維分散液の製造方法。
【請求項5】
前記共重合体のアクリル酸系の単量体単位として重合される単量体は、アクリル酸(acrylic acid)、メタクリル酸(methacrylic acid)、イタコン酸(itaconic acid)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパン-スルホン酸(2-Acrylamido-2-methylpropane sulfonic acid)、マレイン酸(maleic acid)、またはこれらの組み合わせであり、
前記共重合体のアクリルアミド系の単量体単位として重合される単量体は、アクリルアミド(acrylamide)、メタクリルアミド(methacrylamide)、またはこれらの組み合わせである、
請求項1に記載のカーボン繊維分散液の製造方法。
【請求項6】
前記共重合体のpHが5以上、10以下であり、
粘度は100cp以上、20,000cp以下である、
請求項1に記載のカーボン繊維分散液の製造方法。
【請求項7】
前記カーボン繊維分散液は、
pHが2以上、12以下であり、
粘度は10cp以上、200cp以下である、
請求項1~6のいずれか1項に記載のカーボン繊維分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたカーボン繊維分散液を成形する第3ステップと、
前記成形されたカーボン繊維分散液を乾燥する第4ステップと、を含む、
カーボンペーパーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボン繊維分散液およびカーボンペーパーの製造方法およびこれにより製造されたカーボン繊維分散液およびカーボンペーパーに関し、カーボン繊維の分散安定性を高めることができ、カーボンペーパーの性能(例えば、引張強度など)を向上させることができる。
【背景技術】
【0002】
繊維強化複合材料は、補強材としてガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維やシリコンカーバイド繊維のような繊維を用いて製造されたもので、このうち、カーボン繊維を用いたカーボン繊維強化複合材料(carbon fiber reinforced plastics、CFRP)は、比強度は鉄鋼の6倍、比弾性率は鉄鋼の3倍など優れた物理的特性を有するカーボン繊維を用いるため、軽いながらも高強度の特性を有していて、航空機、風力発電機の回転翼などに広く使用されている。
【0003】
それだけでなく、最近、環境問題の浮上により、これと共に、使用後に廃棄されるカーボン繊維強化複合材料からカーボン繊維を回収して再利用しようとする研究が増加しており、関連市場も規模が増加している。
【0004】
このようなカーボン繊維および再生カーボン繊維を適用してカーボン繊維強化複合材料を製造する方法には、繊維を織物、不織布または短繊維状態で樹脂と混合して複合材料を作る方法があり、高強度の製品を作るためには、不織布を製造して複合材料を作らなければならない。
【0005】
繊維は不織布形態に製造する時、繊維の太さ、長さ、配列、成形法などによって物性が異なって現れる。繊維の方向を一定に配列する成形法と不規則(ランダム)に分散する成形法はそれぞれの長短があるが、不規則に分散する方法は、一定に配列する成形法より、施設費用および稼働性部分の工程上のメリットのみならず、エネルギー節減と環境配慮のメリットがある。しかし、ランダムに配列される繊維は、凝集、ねじれなどの現象により不織布の機械的物性を低下しうるというデメリットがある。特に、このような物性の低下は、一般的に繊維長が長ければ、水中で繊維相互間の結合力で束になって分散が悪くなるが故に現れるので、不織布の物性を増加させるためには、繊維長の長さが長い繊維を均一に分散させることができる研究が必要である。
【0006】
しかし、既存のカーボン繊維の分散に適用される分散剤であるCMCなどのセルロース系高分子などは一定長さ以上のカーボン繊維を均一に分散させることができないのが現状である。
【0007】
したがって、一定長さ以上のカーボン繊維を性能の低下なく均一に分散させることができる方法が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】大韓民国公開特許公報第10-2022-0055337号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、カーボン繊維を効果的に水系分散させるカーボン繊維分散液およびカーボンペーパーの製造方法およびこれにより製造された優れた分散性のカーボン繊維分散液および優れた特性のカーボンペーパーを提供することを目的とする。
【0010】
特に、平均長さが12mm~25mmで比較的長さの長いカーボン繊維を水系分散させることにより、カーボンペーパーの機械的物性を強化することを目的とする。
【0011】
しかし、本願が解決しようとする課題は以上に言及した課題に制限されず、言及されていないさらに他の課題は以下の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の一側面は、溶媒にカーボン繊維とウェッティング剤(wetting agent)を投入し撹拌して、親水化されたカーボン繊維を含む溶液を製造する第1ステップと、
共重合体溶液を前記親水化されたカーボン繊維を含む溶液に投入して、前記親水化されたカーボン繊維を分散させる第2ステップと、を含み、
前記共重合体は、アクリル酸系の単量体単位と、
アクリルアミド系の単量体単位と、を含む、
カーボン繊維分散液の製造方法を提供する。
【0013】
本願の他の側面は、前記カーボン繊維分散液の製造方法により製造され、
pHが2以上、12以下であり、
粘度は10cp以上、200cp以下である、
カーボン繊維分散液を提供する。
【0014】
本願のさらに他の側面は、前記カーボン繊維分散液の製造方法により製造されたカーボン繊維分散液を成形する第3ステップと、
前記成形されたカーボン繊維分散液を乾燥する第4ステップと、を含む、
カーボンペーパーの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるカーボン繊維分散液の製造方法およびカーボンペーパーの製造方法は、カーボン繊維(特に、長繊維)を効果的に水系分散させて、優れた分散安定性のカーボン繊維分散液および優れた特性のカーボンペーパーを製造できる効果がある。
【0016】
特に、相対的に長さの長いカーボン繊維を効率的に水系分散させることにより、カーボンペーパーの機械的物性を強化させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ロープ状の凝集体が形成されたカーボン繊維分散液を示す写真である。
図2】2d lab formation sensor装置によって測定された測定値によるカーボンペーパー内のカーボン繊維の分散性を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0019】
これに先立ち、本明細書および特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自らの発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則り、本発明の技術的思想に符合する意味と概念で解釈されなければならない。
【0020】
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の最も好ましい一つの実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替可能な多様な均等物と変形例が存在できることを理解しなければならない。
【0021】
本明細書において、単数の表現は文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や、数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。
【0022】
本明細書において、数値範囲を示す「aないしb」および「a~b」において、「ないし」および「~」は、≧aかつ≦bで定義する。
【0023】
本願の一側面によるカーボン繊維分散液の製造方法は、溶媒にカーボン繊維とウェッティング剤(wetting agent)を投入し撹拌して、親水化されたカーボン繊維を含む溶液を製造する第1ステップと、共重合体溶液を前記親水化されたカーボン繊維を含む溶液に投入して、前記親水化されたカーボン繊維を分散させる第2ステップと、を含むことができる。
【0024】
また、前記共重合体は、アクリル酸系の単量体単位と、アクリルアミド系の単量体単位と、を含むことができる。
【0025】
前記溶媒としては、水が使用できる。
【0026】
前記共重合体は、合成工程によってランダムまたはブロック共重合体であってもよい。
【0027】
本願のカーボン繊維分散液の製造方法の前記第1ステップは、疎水性である前記カーボン繊維の表面に水と水素結合を形成可能な親水基を導入して水分散を可能にするステップであってもよい。
【0028】
また、前記第2ステップは、静電気的反発力による前記カーボン繊維の分散を誘導すると同時に、立体障害を利用して前記カーボン繊維の再凝集を防止するためのステップで、前記共重合体を溶媒に溶解した前記共重合体溶液を前記第1ステップで適切に親水化されたカーボン繊維に混合し、適切に分散できるように一定量の溶媒を追加することができる。
【0029】
例えば、前記第2ステップでは、前記第1ステップで用意された親水化されたカーボン繊維を含む溶液(カーボン繊維、溶媒、ウェッティング剤、バインダーなどを含むことが可能)をカーボン繊維の重量対比1~50倍の前記共重合体溶液(共重合体(分散剤)および共重合体を希釈させた溶媒(例えば、水))と混合することができる。
【0030】
一方、前記カーボン繊維は、PAN系、Pitch系、Cellulose系、化学的/物理的方法により、プリプレグなどで再利用した再生カーボン繊維(recycled Carbon Fiber)、またはこれらの組み合わせから選択して使用可能である。
【0031】
一実施形態において、前記第1ステップにおいて、バインダー(バインダー繊維またはバインダー高分子)を追加的に投入することができる。
【0032】
前記バインダー繊維またはバインダー高分子は、カーボンペーパーの製造時、乾燥ステップ後のカーボンペーパーの結合強度を増加させるために使用されるもので、例えば、ポリビニルアルコール(Polyvinyl alcohol、PVA)繊維、低融点ポリエステル繊維(low-melting-point polyester、LMPET)、ポリビニルアルコール樹脂(Polyvinyl alcohol resin)などであってもよい。
【0033】
一実施形態において、前記第1ステップで500~2,000rpmの速度で剪断力(shear force)を加えて撹拌させることができる。これは、前記カーボン繊維分散液に含まれる繊維の損傷を最小化するためのもので、pulper、overhead stirrer、knife beaterなど高い剪断力を加えられる装置が用いられる。
【0034】
一実施形態において、前記第2ステップで1,000rpm以下の速度で撹拌させて、前記親水化されたカーボン繊維を分散させることができる。
【0035】
前記撹拌速度は、例えば、1,000rpm以下、800rpm以下、500rpm以下、300rpm以下であってもよい。
【0036】
この時、渦流発生を最小化できるように設計されたインペラを適用して撹拌させて、カーボン繊維を分散および安定化させることができる。
【0037】
一実施形態において、前記カーボン繊維の平均長さが5mm以上であってもよい。例えば、前記カーボン繊維の平均長さは、6mm以上、10mm以上、12mm以上、15mm以上、20mm以上であってもよい。
【0038】
一実施形態において、前記ウェッティング剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0039】
例えば、前記ウェッティング剤は、EO(ethylene oxide)/PO(propylene oxide)共重合体界面活性剤、PEO(polyethylene oxide)系界面活性剤、PEG(polyethylene glycol)系界面活性剤、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0040】
一実施形態において、前記カーボン繊維分散液の総含有量100重量%を基準として、前記共重合体を0.1重量%以上、10重量%以下、前記カーボン繊維を0.01重量%以上、10重量%以下含むことができる。
【0041】
前記共重合体の含有量が前記範囲を上回る場合、分散液の粘度が高くなって、カーボンペーパーの製造時に脱水および乾燥に困難があり、下回る場合、繊維の分散が低下しうる。
【0042】
ウェブの作製時に目標しようとする坪量に合わせて前記カーボン繊維の適切な含有量を選択することができ、前記カーボン繊維の含有量が前記範囲を上回ったり、下回る場合、摩擦による損傷が増加したり、ウェッティングが適切に行われない。
【0043】
一実施形態において、前記カーボン繊維分散液の総含有量100重量%を基準として、前記バインダー(バインダー繊維)を0.001重量%以上、5重量%以下含むことができる。
【0044】
前記バインダー繊維の含有量が前記範囲を下回る場合、好適な強度が出ない。
【0045】
また、前記カーボン繊維分散液の総含有量100重量%を基準として、前記ウェッティング剤を0.01重量%以上、5重量%以下含むことができる。
【0046】
一実施形態において、前記共重合体の総含有量100モル%を基準として、前記アクリル酸系の単量体単位と前記アクリルアミド系の単量体単位とのモル%の比(前記アクリル酸系の単量体単位のモル%:前記アクリルアミド系の単量体単位のモル%)が10:90~90:10であってもよい。
【0047】
例えば、前記アクリル酸系の単量体単位と前記アクリルアミド系の単量体単位とのモル%の比は、90:10、80:20、70:30、60:40、50:50、40:60、30:70、20:80、10:90であってもよく、30:70~70:30であってもよい。
【0048】
アクリル酸またはアクリルアミドが単独で重合された単一重合体(homopolymer)を分散剤として用いる場合、カーボン繊維の分散がまともに行われない。
【0049】
一実施形態において、前記共重合体のアクリル酸系の単量体単位として重合される単量体は、アクリル酸(acrylic acid)、メタクリル酸(methacrylic acid)、イタコン酸(itaconic acid)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパン-スルホン酸(2-Acrylamido-2-methylpropane sulfonic acid)、マレイン酸(maleic acid)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0050】
また、前記共重合体のアクリルアミド系の単量体単位として重合される単量体は、アクリルアミド(acrylamide)、メタクリルアミド(methacrylamide)、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0051】
前記共重合体は、pHが5以上、10以下であり、粘度は100cp以上、20,000cp以下であってもよい。
【0052】
例えば、前記共重合体のpHは、5以上、9以下であってもよい。前記カーボン繊維分散液のpHが前記範囲を上回ったり、下回ると、時間によって分散剤が変質したり、カーボン繊維の分散性能が減少しうる。
【0053】
前記共重合体は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アミン化合物、またはこれらの組み合わせを追加して前記共重合体のpHを調節することができる。
【0054】
特に、前記アミン化合物は、pH9以上のアミン化合物であってもよい。
【0055】
例えば、Sodium Hydroxide、Potassium Hydroxide、Ammonioum Hydroxide、Lithium Hydroxide、dimethylamine、trimethylamine、Monoethanolamine、diethanolamine、triethanolamine、Arginine、Tromethamine、Diisopropanolamine、Triiospropanolamineなどが前記共重合体のpHを調節するために使用できるが、これに限定されない。
【0056】
また、前記共重合体の粘度が前記範囲を上回る場合、粘度が高くなって使用に不利であり、下回る場合、カーボン繊維の分散がまともに行われない。
【0057】
一方、前記共重合体の重量平均分子量は、10万以上、500万以下であってもよい。
【0058】
前記共重合体の分子量が前記範囲を上回る場合、粘度が高くて使用に不利であり、下回る場合、カーボン繊維の分散がまともに行われない。
【0059】
また、分子量範囲により、低い分子量の共重合体は短繊維の分散に、高分子量の共重合体は長繊維の分散に適合できる。
【0060】
本願の他の側面によるカーボン繊維分散液は、本願のカーボン繊維分散液の製造方法により製造され、pHが2以上、12以下であり、粘度は10cp以上、200cp以下であってもよい。
【0061】
本願のさらに他の側面によるカーボンペーパーの製造方法は、本願のカーボン繊維分散液の製造方法により製造されたカーボン繊維分散液を成形する第3ステップと、前記成形されたカーボン繊維分散液を乾燥する第4ステップと、を含むことができる。
【0062】
前記第3ステップは、前記第2ステップで製造されたカーボン繊維分散液を用いて、湿式工程により紙状に成形するステップで、例えば、カーボン繊維分散液は、Wet-laid湿式不織布製造機、手すき機などを用いて紙状に成形することができる。
【0063】
以後、第4ステップにより乾燥させて最終的なカーボンペーパーを製造することができる。
【0064】
本願のさらに他の側面によるカーボンペーパーは、本願のカーボンペーパーの製造方法により製造され、引張強度が25kgf/cm以上であってもよい。
【0065】
例えば、前記カーボンペーパーの引張強度は、25kgf/cm以上、30kgf/cm以上、40kgf/cm以上であってもよい。
【0066】
一方、前記カーボンペーパーは、坪量16g/m、厚さ120~150μmに製造して、2Dラブフォーメーションセンサ装置で測定した均一度(分散性)が320以下であってもよい。
【0067】
例えば、前記カーボンペーパーの均一度(分散性)は、320以下、310以下、300以下、290以下であってもよい。
【0068】
以下、実施例を用いて本願をより具体的に説明するが、本願がこれに制限されるものではない。
【0069】
製造例1.重合体の製造
3口フラスコ反応器にアクリル酸単量体(AA)、アクリルアミド単量体(AM)および水を入れて、温度計装着後、窒素purgingし、70℃に到達するまで昇温させた。
【0070】
アクリル酸単量体(AA)+アクリルアミド単量体(AM)と水との重量比(アクリル酸単量体(AA)+アクリルアミド単量体(AM)の重量:水の重量)は2:8であった。
【0071】
次に、過硫酸アンモニウム(ammonium persulfate、APS)を水に溶解後、30分間滴下した(APSは、アクリル酸単量体(AA)、アクリルアミド単量体(AM)および水の総含有量100重量部に対して0.1重量部使用した)。
【0072】
滴下完了後、70℃で7時間維持し冷却させた後、NaOHでpH7.0に調節して、固形分25%、重量平均分子量100,000g/molの重合体を製造した。
【0073】
前記重合体の総含有量100mol%を基準として、アクリル酸単量体(AA)とアクリルアミド単量体(AM)とのmol%の比率(アクリル酸単量体(AA)のmol%:アクリルアミド単量体(AM)のモル%)は70:30(D1)、30:70(D2)、100:0(D3)および0:100(D4)に調節して4つの重合体を製造した。
【0074】
製造例2.カーボン繊維分散液の製造
総含有量500gを基準として、カーボン繊維(Zolteck社)、ポリビニルアルコール(PVA)繊維(VPB-101、kurary社)および非イオン性界面活性剤系のウェッティング剤(HPW-500、Hansol社)を、下記表1に示したように含有量を調節して、残部の溶媒(水)に入れて混合した後、pulperを適用して、1,000rpmでプレウェッティングステップ(親水化されたカーボン繊維を含む溶液を製造するステップ)を経た。
【0075】
以後、溶媒(水)2,000gと製造例1により製造された重合体(分散剤)を溶解させた重合体溶液に、プレウェッティングステップを経た親水化されたカーボン繊維を含む溶液を投入し、渦流形成を少なく発生させるインペラを適用して、300rpm以下の低速で撹拌させてカーボン繊維分散液を製造した。
【0076】
使用されたカーボン繊維の平均長さは、下記表1に示したように、それぞれ6、12、20mmであった。
【0077】
実施例1~3、比較例6は、分散剤として前記製造例1により製造された重合体D1を用い、実施例4は、分散剤として前記製造例1により製造された重合体D2を用い、比較例1は、分散剤として前記製造例1により製造された重合体D3を用い、比較例2は、分散剤として前記製造例1により製造された重合体D4を用いて、製造例2によりカーボン繊維分散液を製造した。
【0078】
一方、比較例3~5は、分散剤としてCMC(carboxymethyl cellulose、Duksan Science、Mw21,000~500,000)を用いて、製造例2によりカーボン繊維分散液を製造した。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1~4および比較例1~6のカーボン繊維分散液の図1に示すように、ロープ状の凝集カーボン繊維が肉眼で観察されない時までの時間を測定して、分散速度を測定した。
【0081】
また、実施例1~4および比較例1~6のカーボン繊維分散液の分散後、2時間放置した後、カーボン繊維の再凝集や沈降が発生するかを肉眼で観察して分散安定性を測定した。
【0082】
測定されたカーボン繊維分散液の分散速度および分散安定性を、下記表2に示した。
【0083】
【表2】
【0084】
アクリル酸単量体(AA)およびアクリルアミド単量体(AM)の共重合体を分散剤として用いた実施例1~4のカーボン繊維分散液の場合、アクリル酸単量体(AA)またはアクリルアミド単量体(AM)が単独で重合された単一重合体(homopolymer)を分散剤として用いた比較例1および2のカーボン繊維分散液と比較した時、分散液の分散速度が高くなり(分散に必要な時間が短くなり)、分散安定性が向上することを確認することができた。
【0085】
また、CMCを分散剤として用いた比較例3~5のカーボン繊維分散液に比べて、実施例1~4のカーボン繊維分散液の分散速度が高くなり(分散に必要な時間が短くなり)、分散安定性が向上することを確認することができた。
【0086】
特に、相対的に長さの長い平均長さ12mmおよび20mmのカーボン繊維を含む実施例2~4のカーボン繊維分散液の高い分散安定性を確認することができた。
【0087】
これに対し、実施例2と単一重合体またはCMCを分散剤として用いたことだけを除いて同一の比較例1、2および5の場合、平均長さ12mmのカーボン繊維の分散が容易でなく、分散安定性も非常に不良であった。
【0088】
実施例1~3と同一の重合体を分散剤として用いたが、ウェッティング剤を含まない(すなわち、プレウェッティングステップを経ていない)比較例6のカーボン繊維分散液は、カーボン繊維の分散が容易でなく、カーボン繊維の分散安定性も非常に不良であった。
【0089】
すなわち、プレウェッティングステップがカーボン繊維分散液のカーボン繊維の分散および分散安定性に大きく影響を及ぼすことが分かった。
【0090】
製造例3.カーボンペーパーの製造
25×25cmの手すき機を用いて、実施例1~4および比較例1~6のカーボン繊維分散液の抄紙を作製し、これを120℃の熱風乾燥オーブンで30分間乾燥してカーボンペーパーを製造した。
【0091】
実施例1~4および比較例1~6のカーボン繊維分散液を用いて、製造例3により製造したカーボンペーパーの分散性および引張強度を測定した。
【0092】
カーボンペーパーの分散性(均一性)は、製造例3により坪量16g/m、厚さ120~150μmのカーボンペーパーをTechpap SAS社(フランス)の2d lab formation sensor装置を用いて分散性を測定した。
【0093】
2d lab formation sensor装置によって測定されたflocの数と分布によりカーボンペーパーの分散性を評価することができ、測定値が低いほど分散性に優れていると評価することができる。
【0094】
引張強度は、Shimadzu社のAGS-X 10N-10KN装置を用いて、2m/minの速度でカーボンペーパーの引張強度を測定した。
【0095】
図2に示すように、実施例1~4のカーボン繊維分散液を用いて製造したカーボンペーパーの場合、実施例1~4の分散液の優れた分散性によって2d lab formation sensor装置による測定値が200~300に相当し、カーボンペーパー内でカーボン繊維が均一に分散したと測定された。
【0096】
これに対し、比較例1~6の分散液を用いて製造したカーボンペーパーの場合、2d lab formation sensor装置による測定値が320を超えており、カーボンペーパー内でカーボン繊維が均一に分散していないことを確認することができた。
【0097】
測定されたカーボンペーパーの分散性と引張強度を、下記表3に示した。
【0098】
【表3】
【0099】
実施例1~4のカーボン繊維分散液を用いて製造したカーボンペーパーの場合、カーボン繊維の長さが増加するにつれて、2d lab formation sensor装置による測定値が少しずつ大きくなったが、測定値が300以下に相当して優れた分散性を示した。
【0100】
これに対し、比較例1~6のカーボン繊維分散液を用いて製造したカーボンペーパーの場合、カーボン繊維の長さが増加するにつれて、2d lab formation sensor装置による測定値が急激に大きくなって、分散性が非常に低下することを確認することができた。
【0101】
また、実施例1~4の分散液を用いて製造したカーボンペーパーの場合、比較例1~6の分散液を用いて製造したカーボンペーパーに比べて優れた分散性によって引張強度が大きく向上することを確認することができた。
【0102】
特に、実施例1~3の分散液を用いて製造したカーボンペーパーの場合、カーボン繊維の長さが増加するにつれて、引張強度が向上することを確認することができた。
【0103】
すなわち、本願のアクリル酸単量体(AA)およびアクリルアミド単量体(AM)の共重合体は、相対的に長さの長い平均長さが12mm、20mmのカーボン繊維にも効果的な分散剤として使用可能であることを確認することができた。
【0104】
本願のカーボン繊維分散液は、既存のカーボン繊維分散液に比べて優れた分散特性を有するので、本願のカーボン繊維分散液を用いてカーボンペーパーの特性を向上させることができることを確認した。
【0105】
本発明の範囲は上記の詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2