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特許7610704デリバリーデバイスおよび内視鏡システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】デリバリーデバイスおよび内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20241225BHJP
【FI】
A61F2/966
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023523923
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020470
(87)【国際公開番号】W WO2022249464
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】304050923
【氏名又は名称】オリンパスメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】桜田 燿一
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195720(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/184553(WO,A1)
【文献】特開2016-159048(JP,A)
【文献】国際公開第2015/146288(WO,A1)
【文献】特開2016-112421(JP,A)
【文献】国際公開第2006/104143(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一外筒部材と、
前記第一外筒部材の内側に挿通される内筒部材と、
前記第一外筒部材よりも近位側に位置し、前記内筒部材と接続される第二外筒部材と、
前記第二外筒部材の内側に挿通され、前記第一外筒部材と接続される牽引部材と、
前記牽引部材を内部に固定する第一孔と、前記内筒部材が進退可能なように構成される第二孔と、が形成された第一接合部材と、
前記第一接合部材と前記第一外筒部材の径方向外側に配置され、前記第一接合部材の外周面の全周と前記第一外筒部材の外周面の全周に密着するように設けられ、前記第一接合部材と前記第一外筒部材とを固定する固定部材と、
を備えるデリバリーデバイス。
【請求項2】
前記固定部材の径方向内側において、前記第一外筒部材の端面と前記第一接合部材の端面とが接するように配置されている
請求項1に記載のデリバリーデバイス。
【請求項3】
前記固定部材の表面と前記第一外筒部材の表面と前記第一接合部材の表面は、熱融着性を有する同一の樹脂で形成され、
前記固定部材、前記第一外筒部材および前記第一接合部材は、熱融着によって互いに固定される、
請求項1に記載のデリバリーデバイス。
【請求項4】
前記第一接合部材の前記第一孔の径は、前記第一接合部材の前記第二孔の径よりも小さい
請求項1に記載のデリバリーデバイス。
【請求項5】
前記第二外筒部材を内部に固定するよう構成される第一孔と、前記内筒部材を内部に固定するよう構成される第二孔と、が形成された第二接合部材をさらに備える
請求項1に記載のデリバリーデバイス。
【請求項6】
前記第二接合部材の前記第一孔は、前記牽引部材が挿通され前記牽引部材が進退可能に構成される
請求項5に記載のデリバリーデバイス。
【請求項7】
前記第二接合部材の前記第二孔は、前記デリバリーデバイスをガイドするガイドワイヤが挿通され、かつ前記ガイドワイヤが進退可能な大きさを有する
請求項5に記載のデリバリーデバイス。
【請求項8】
前記第二接合部材は、前記デリバリーデバイスの遠位側に第一端を有し前記デリバリーデバイスの近位側に第二端有し、
前記第一孔の径は、前記第一端よりも前記第二端の方が大きく、
前記第二孔の径は、前記第二端よりも前記第一端の方が大きい、
請求項5に記載のデリバリーデバイス。
【請求項9】
前記第一接合部材よりも前記デリバリーデバイスの近位側に配置され、前記第二外筒部材と前記内筒部材とを固定する第二接合部材をさらに備える
請求項1に記載のデリバリーデバイス。
【請求項10】
前記第一外筒部材は、ステントが格納されるステント格納領域を有し、
前記第一接合部材は前記デリバリーデバイスの近位側に第二端を有し、
前記第二接合部材は前記デリバリーデバイスの遠位側に第一端を有し、
前記デリバリーデバイスの長手方向において、前記第一接合部材の前記第二端から前記第二接合部材の前記第一端までの長さは、前記ステント格納領域の長さよりも長い
請求項9に記載のデリバリーデバイス。
【請求項11】
前記第一外筒部材は前記デリバリーデバイスの遠位側に第一端を有し、
前記第二接合部材は前記デリバリーデバイスの遠位側に第一端を有し、
前記第二外筒部材は前記デリバリーデバイスの近位側に第二端を有し、
前記デリバリーデバイスの長手方向において、前記第二接合部材の前記第一端から前記第二外筒部材の前記第二端までの長さは、前記第一外筒部材の前記第一端から前記第二接合部材の前記第一端までの長さよりも長い
請求項9に記載のデリバリーデバイス。
【請求項12】
前記第一外筒部材と前記内筒部材との間に格納され、かつ、前記第二外筒部材に対する前記牽引部材の近位側への移動に伴いリリースされるステントをさらに備える
請求項1に記載のデリバリーデバイス。
【請求項13】
第一外筒部材と、
前記第一外筒部材の内側を挿通する内筒部材と、
前記第一外筒部材よりも近位側に位置し、前記内筒部材と接続される第二外筒部材と、 前記第二外筒部材の内側を挿通し、前記第一外筒部材と接続される牽引部材と、
前記牽引部材を内部に固定する第一孔と、前記内筒部材が挿通され前記内筒部材が進退可能なように構成される第二孔と、を有する第一接合部材と、
前記第一接合部材と前記第一外筒部材の径方向外側に配置され、前記第一接合部材の外周面の全周と前記第一外筒部材の外周面の全周に密着するように設けられ、前記第一接合部材と前記第一外筒部材とを固定する固定部材と、
を備えるデリバリーデバイスと、
前記デリバリーデバイスが進退可能なように構成された処置具チャネルを有する内視鏡と、
を備える内視鏡システム。
【請求項14】
前記デリバリーデバイスは、前記第一接合部材よりも前記デリバリーデバイスの近位側に配置され、前記第二外筒部材と前記内筒部材とを固定する第二接合部材をさらに備える 請求項13に記載の内視鏡システム。
【請求項15】
前記デリバリーデバイスは、前記第一外筒部材と前記内筒部材との間に格納され、かつ、前記第二外筒部材に対する前記牽引部材の近位側への移動に伴いリリースされるステントをさらに備える
請求項14に記載の内視鏡システム。
【請求項16】
前記第一接合部材は、前記ステントが格納されるステント格納領域を有し、
前記処置具チャネルのうち前記内視鏡の遠位側から前記ステント格納領域のすべてが突出した状態において、前記第一接合部材と前記第二接合部材が、前記処置具チャネルの内部に位置するよう構成される
請求項15に記載の内視鏡システム。
【請求項17】
前記第一外筒部材は前記デリバリーデバイスの遠位側に第一端を有し、
前記第二接合部材は前記デリバリーデバイスの遠位側に第一端を有し、
前記第一接合部材は、前記ステントが格納されるステント格納領域を有し、
前記処置具チャネルのうち前記内視鏡の遠位側から前記ステント格納領域のすべてが突出した状態において、前記デリバリーデバイスの長手方向における前記第二接合部材の前記第一端から前記内視鏡の鉗子口までの長さは、前記第一外筒部材の前記第一端から前記第二接合部材の前記第一端までの長さよりも長い
請求項15に記載の内視鏡システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デリバリーデバイスおよび内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
デリバリーデバイスの代表的な例として、消化管等に生じた狭窄や閉塞(以下、「狭窄等」と称する。)を拡張するためのステントを体内に留置するために用いられるステントデリバリーデバイスが挙げられる。ステントデリバリーデバイスは、内視鏡の処置具チャネルに挿通してステントを狭窄等まで搬送する。その後、ステントデリバリーデバイスは、デバイス内に格納されたステントを狭窄等に留置する。
【0003】
特許文献1に記載されたステントデリバリーデバイスでは、筒状部材の内部に遠位側チューブを挿通しており、筒状部材に対して遠位側チューブが摺動可能に設けられている。ステントは筒状部材と遠位側チューブとの間に格納されている。筒状部材に固定された牽引部材が牽引されることによって、筒状部材が移動し、格納されたステントが狭窄等に留置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2006-271565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたステントデリバリーデバイスでは、筒状部材と牽引部材が一箇所のみで接合されている。このため、筒状部材と牽引部材との接合強度が十分であるといえず、筒状部材と牽引部材が分離しやすい。筒状部材と牽引部材が分離すると、ステントをデバイス外へとリリースしにくくなり、目的位置にステントを留置することが困難になる。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は、確実に目的位置に留置可能なデリバリーデバイスおよび内視鏡システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一様態に係るデリバリーデバイスは、第一外筒部材と、前記第一外筒部材の内側に挿通される内筒部材と、前記第一外筒部材よりも近位側に位置し、前記内筒部材と接続される第二外筒部材と、前記第二外筒部材の内側に挿通され、前記第一外筒部材と接続される牽引部材と、前記牽引部材を内部に固定する第一孔と、前記内筒部材が進退可能なように構成される第二孔と、が形成された第一接合部材と、前記第一接合部材と前記第一外筒部材の径方向外側に配置され、前記第一接合部材の外周面の全周と前記第一外筒部材の外周面の全周に密着するように設けられ、前記第一接合部材と前記第一外筒部材とを固定する固定部材と、を備える。
【0008】
本発明の第二様態に係る内視鏡システムは、第一外筒部材と、前記第一外筒部材の内側を挿通する内筒部材と、前記第一外筒部材よりも近位側に位置し、前記内筒部材と接続される第二外筒部材と、前記第二外筒部材の内側を挿通し、前記第一外筒部材と接続される牽引部材と、前記牽引部材を内部に固定する第一孔と、前記内筒部材が挿通され前記内筒部材が進退可能なように構成される第二孔と、を有する第一接合部材と、前記第一接合部材と前記第一外筒部材の径方向外側に配置され、前記第一接合部材の外周面の全周と前記第一外筒部材の外周面の全周に密着するように設けられ、前記第一接合部材と前記第一外筒部材とを固定する固定部材と、を備えるデリバリーデバイスと、前記デリバリーデバイスが進退可能なように構成された処置具チャネルを有する内視鏡と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
上記の態様によれば、デリバリーデバイスを構成する部材の接合強度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】内視鏡システムを示す図である。
図2】同内視鏡システムのデリバリーデバイスの全体構成を示す図である。
図3】同デリバリーデバイスを構成する部材を示す図である。
図4図3を一部破断および断面にて示す図である。
図5】同デリバリーデバイスの第一接合部を示す断面図である。
図6図5のC6-C6断面を示す図である。
図7図5のC7-C7断面を示す図である。
図8】同デリバリーデバイスの第二接合部を示す断面図である。
図9図8のC9-C9断面を示す図である。
図10図8のC10-C10断面を示す図である。
図11】デリバリーデバイスの部分断面図である。
図12】デリバリーデバイスからステントをリリースした状態を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図1から図12を参照して説明する。
【0012】
[内視鏡システム300]
内視鏡システム300について、図1を参照して説明する。内視鏡システム300は、内視鏡200と、デリバリーデバイス100と、を備えている。デリバリーデバイス100は、内視鏡200のチャネルに挿通される。
【0013】
[内視鏡200]
内視鏡200について、図1を参照して説明する。
内視鏡200は、公知の側視型の軟性内視鏡であり、長尺の挿入部210と、操作部220と、処置具チャネル230と、を備えている。操作部220は挿入部210の近位端部に設けられている。以下の説明において、内視鏡200の操作部220側を近位側と称する。挿入部210の長手軸方向における操作部220とは反対側を内視鏡200の遠位側と称する。処置具チャネル230は、デリバリーデバイス100などの処置具が挿通される。内視鏡200は直視型の軟性内視鏡であってもよい。
【0014】
挿入部210は、先端硬質部211と、湾曲部212と、可撓管部213と、を有している。先端硬質部211が挿入部210の先端部に設けられたている。湾曲部212は、先端硬質部211の近位側に取り付けられ、湾曲操作可能に構成されている。可撓管部213は、湾曲部212の近位側に取り付けられている。
【0015】
先端硬質部211の側面には、撮像ユニット216が外部に露出した状態で設けられている。撮像ユニット216は、ライトガイド215およびCCDを有する。
【0016】
先端硬質部211には、起上台214が設けられている。起上台214の近位端部は、先端硬質部211に回転可能に支持されている。起上台214の先端部に起上台操作ワイヤ(不図示)が固定されている。起上台操作ワイヤ(不図示)は、挿入部210内を通して近位側に延びている。
【0017】
湾曲部212は、上下方向や左右方向に湾曲自在に構成されている。湾曲部212は、湾曲部212の遠位側に操作ワイヤの先端が固定されている。操作ワイヤは挿入部210内を通して操作部220まで延びている。上下方向は、挿入部210が真っ直ぐに延びた状態から軸線に対して交差する方向に湾曲する直交する方向のうち、内視鏡の視野の上下方向である。左右方向は、挿入部210が真っ直ぐに延びた状態から軸線に対して交差する方向に湾曲する直交する方向のうち、内視鏡の視野の左右方向である。湾曲部212の湾曲方向は、上下方向および左右方向に限らず、挿入部210の軸線に交差する方向にも湾曲自在である。
【0018】
処置具チャネル230の遠位端部231は、先端硬質部211の側面に開口している。処置具チャネル230の近位端部は、操作部220まで延びている。
【0019】
操作部220の近位端部には、操作ワイヤを操作するノブ223や撮像ユニット216等を操作するスイッチ224が設けられている。使用者は、ノブ223を操作することによって湾曲部212を所望の方向に湾曲させることができる。
【0020】
操作部220よりも遠位側には、処置具チャネル230に連通する鉗子口222が設けられている。使用者は、鉗子口222からデリバリーデバイス100等の内視鏡用処置具を挿入することができる。鉗子口222には体液の漏れを防ぐために鉗子栓225が取り付けられる。
【0021】
[デリバリーデバイス100]
デリバリーデバイス100について、図2から図11を参照して説明する。図2に示すように、デリバリーデバイス100は、全体として細長い形状を有する。デリバリーデバイス100は、第一外筒部材1と、内筒部材2と、牽引部材3と、第二外筒部材4と、チップ5と、ステント6と、第一接合部8と、第二接合部9と、を備えている。
【0022】
第一外筒部材1は、内視鏡200の処置具チャネル230を挿通可能な長尺の筒状部材である。第一外筒部材1は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。第一外筒部材1は、樹脂等で形成されたチューブであってもよいし、コイルシースであってもよい。図3および図4に示すように、第一外筒部材1は、デリバリーデバイス100の遠位側に第一端1aを有し、デリバリーデバイス100の近位側に第二端1bを有する。第一外筒部材1は、第一開口11および第二開口12が形成されている。第一開口11は第一端1aに開口している。第二開口12は、第二端1bに開口している。第一開口11および第二開口12は、第一外筒部材1の内部空間(ルーメン)13と連通している。第一開口11および第二開口12は内筒部材2が挿通可能な略円状の開口である。第一外筒部材1は、ステント6を格納するステント格納領域E1を有する。ステント格納領域E1は、第一外筒部材1と内筒部材2との間にステント6を格納する領域である。
【0023】
内筒部材2は、内視鏡200の処置具チャネル230に挿通可能な長尺の筒状部材である。内筒部材2は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。内筒部材2は、樹脂等で形成されたチューブであってもよいし、コイルシースであってもよい。図3および図4に示すように、内筒部材2は、デリバリーデバイス100の遠位側に第一端2aを有し、デリバリーデバイス100の近位側に第二端2bを有する。内筒部材2は、第一開口21および第二開口22が形成されている。第一開口21は、第一端2aに開口している。第二開口22は、第二端2bに開口している。第一開口21および第二開口22は、内筒部材2のルーメン(ガイドワイヤルーメン)23と連通している。第一開口21および第二開口22はガイドワイヤGが挿通可能な略円状の開口である。内筒部材2は、第一外筒部材1の内側に挿通される。具体的には、内筒部材2は、第一開口11および第二開口12を通過して、第一外筒部材1のルーメン13に相対移動可能に挿通されている。内筒部材2の外径は、第一外筒部材1のルーメン13の内径よりも小さい。
【0024】
第一外筒部材1は、ステント6を格納するステント格納領域E1を有する。ステント格納領域E1は、内筒部材2との間にステント6を格納する領域である。ステント格納領域E1は、内筒部材2の外側に挿通されたステント6を第一外筒部材1のルーメン13内に格納する領域である。ステント格納領域E1は、第一外筒部材1の第一端1aから近位側にステント6の長さ以上延びる領域である。
【0025】
第二外筒部材4は、内視鏡200の処置具チャネル230に挿通可能な長尺の筒状部材である。第二外筒部材4は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。第二外筒部材4は、樹脂等で形成されたチューブであってもよいし、コイルシースであってもよい。図3および図4に示すように、第二外筒部材4は、デリバリーデバイス100の遠位側に第一端4aを有し、デリバリーデバイス100の近位側に第二端4bを有する。第二外筒部材4は、第一外筒部材1よりもデリバリーデバイス100の近位側に設けられている。第二外筒部材4は、第一開口41および第二開口42が形成されている。第一開口41は、第一端4aに開口している。第二開口42は、第二端4bに開口している。第一開口41および第二開口42は、第二外筒部材4の内部空間(ルーメン)43と連通している。第一開口41および第二開口42は牽引部材3が挿通可能な略円状の開口である。第二外筒部材4の第一端4aは、第二接合部9により、内筒部材2の第二端2bと接続されている。
【0026】
牽引部材3は、内視鏡200の処置具チャネル230に挿通可能な長尺の部材である。牽引部材3は、NiTi等の金属や樹脂等で形成されており、可撓性を有するワイヤである。図3および図4に示すように牽引部材3は、第二外筒部材4の内側に挿通される。具体的には、牽引部材3は、第一開口41および第二開口42を通過して、第二外筒部材4の内部空間(ルーメン)43に相対移動可能に挿通されている。第二外筒部材4の内部空間(ルーメン)43に挿通される牽引部材3の外径は、第二外筒部材4のルーメン43の内径よりも小さい。牽引部材3の遠位端部31は、第一接合部8により、第一外筒部材1の近位端部14と接続されている。牽引部材3のうち少なくとも遠位端部31は、サンドブラスト等の技術により、表面が荒らされていてもよい。術者は牽引部材3を牽引することで、第一外筒部材1を近位側に牽引できる。
【0027】
チップ5は、略円錐状の形状を有する。チップ5には、軸線方向に延びる貫通孔51が形成されている。図3および図4に示すように、チップ5は、遠位端部52と、近位端部53とを有し、近位端部53において内筒部材2と接続されている。遠位端部52は近位端部53よりも径寸法が小さい。貫通孔51は、第一開口21を経由して内筒部材2のガイドワイヤルーメン23と連通している。このため、チップ5の貫通孔51にガイドワイヤGを挿入すると、ガイドワイヤGを内筒部材2のガイドワイヤルーメン23内に進入させることができる。
【0028】
ガイドワイヤとは、デリバリーデバイス100を管腔内に挿入する際に使用する器具である。例えば、術者は、内視鏡200の鉗子栓225から突出したガイドワイヤGの近位端部を、デリバリーデバイス100のチップ5の貫通孔51に挿入する。ガイドワイヤGは、貫通孔51から内筒部材2のガイドワイヤルーメン23に進入する。術者は、ガイドワイヤGを保持しながらデリバリーデバイス100を押し込むことにより、ガイドワイヤGに沿ってデリバリーデバイス100を前進させる。
【0029】
ステント6は、筒状の自己拡張型ステントである。ステント6は、ワイヤを編み込んで形成されている。図3および図4に示すように、ステント6は、第一外筒部材1のステント格納領域E1に収容されている。具体的には、ステント6の内部に内筒部材2が通され、縮径した状態のステント6が、内筒部材2と第一外筒部材1との間の隙間に収容されている。ステント6は、内筒部材2の外周面に形成された係止部(不図示)に係止されている。これにより、ステント6は、縮径された状態では内筒部材2に対して位置決めされており、内筒部材2の長手方向に相対移動しない。牽引部材3が近位側に牽引されることによって、第一外筒部材1がデリバリーデバイス100の近位側に移動し、ステント6がデリバリーデバイス100からリリースされるよう構成されている。ステント6は、金属の筒をレーザーで切削加工して形成されたレーザーカットタイプのステントであってもよい。ステント6は、内筒部材2の内周面あるいは外周面に樹脂膜のカバーが施されたカバーステントであってもよい。
【0030】
ステント6を形成するワイヤは、NiTiを主材料とする超弾性合金である。NiTiを主材料とする超弾性合金は、編み込んだ時点では永久変形をしておらず、編み込んだ状態で熱処理を加えることで編み込み形状が記憶される。
【0031】
ステント6が自己拡張型ステントである例を説明したが、ステント6は自己拡張型ステントに限定されない。ステント6は非自己拡張型ステントであってもよく、例としてCoCr系合金のステントやポリ乳酸やポリグリコール酸およびそれらの共重合体からなる生分解性ステントなどが挙げられる。ステント6は流体で拡張するステントであってもよい。流体で拡張するステントの例としてバルーン等の他処置具により拡張される非自己拡張型ステントなどが挙げられる。
【0032】
第一接合部8は、第一接合部材81と、固定部材82と、を有している。第一接合部8は、第一外筒部材1と牽引部材3とを接続および固定する。
【0033】
第一接合部材81は、内視鏡200の処置具チャネル230を挿通可能な筒状部材である。第一接合部材81は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。第一接合部材81の全部または第一接合部材81の表面は、第一外筒部材1の表面と同一の樹脂で形成されている。ただし、第一接合部材81の全部または第一接合部材81の表面の素材はこれに限らない。図5に示すように、第一接合部材81は、デリバリーデバイス100の遠位側に第一端81aを有し、デリバリーデバイス100の近位側に第二端81bを有する。図7に示すように、第一接合部材81は、第一孔811と第二孔812が形成されたマルチルーメンチューブである。第一接合部材81の第一端81aは、第一外筒部材1の第二端1bと接する。第一接合部材81の第一端81aの端面と、第一外筒部材1の第二端1bの端面とが接する。
【0034】
第一孔811には、牽引部材3の遠位端部31が挿通され、遠位端部31は第一孔811の内部に固定される。具体的には、遠位端部31は第一孔811に挿通された後、接着剤によって第一孔811に固定される。このとき、牽引部材3の表面が荒らされていることで、接合強度を向上することができる。つまり、牽引部材3の表面粗さが大きいと、接合強度が向上する。なお、第一孔811の内表面と牽引部材3の外表面との間に生じる摩擦力によって、第一孔811と牽引部材3とを固定してもよい。第一孔811の内径は、牽引部材3の外径と略等しい大きさである。
【0035】
図5および図7に示すように、第二孔812には、内筒部材2が挿通される。内筒部材2は第二孔812に相対移動可能に挿通されている。第二孔812の内径は、内筒部材2の外径よりも大きい。本実施形態において、第二孔812の内径は、第一孔811の内径よりも大きいが、これに限らない。すなわち、第二孔812の内径が第一孔811の内径よりも小さくてもよい。
【0036】
固定部材82は、内視鏡200の処置具チャネル230に挿通可能な筒状部材である。固定部材82は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。固定部材82は、第一外筒部材1と第一接合部材81を覆うように設けられる。具体的には、固定部材82は、第一外筒部材1と第一接合部材81の径方向外側に配置され、第一外筒部材1の全周と第一接合部材81の全周とを覆い、第一外筒部材1と第一接合部材81に密着するよう設けられる。固定部材82は、第一外筒部材1の第二端1bおよび第一接合部材81の第一端81aの全周を覆う。固定部材82は、第一外筒部材1と第一接合部材81とを固定する。
【0037】
固定部材82の全体または固定部材82の表面は、第一外筒部材1の表面と同一の素材で形成されることが望ましい。固定部材82の全体または固定部材82の表面は、第一接合部材81の表面と同一の樹脂で形成されることが望ましい。すなわち、第一接合部材81の表面と固定部材82の表面と第一外筒部材1の表面が同一の素材、特に同一の樹脂で形成されることが望ましい。本発明においては、この樹脂が熱融着性を有してもよい。第一接合部材81の表面と固定部材82の表面と第一外筒部材1の表面とが熱融着性を有する樹脂で形成されることで、これらの部材を容易に熱融着することができる。そのため、各部材の伸縮性に基づいた接合と比べて、強固に接合することができる。ただし、固定部材82または固定部材82の表面の素材はこれに限らない。
【0038】
第一接合部8によって第一外筒部材1と牽引部材3とが接続および固定される構造を説明する。牽引部材3の遠位端部31は、第一接合部材81の第一孔811の内部に固定されている。第一接合部材81の第一端81aの端面と第一外筒部材の第二端1bの端面とが突き合わされている。すなわち、第一接合部材81の第一端81aの端面と第一外筒部材の第二端1bの端面とが接触している。第一接合部材81と第一外筒部材1の両方を覆うように固定部材82が設けられる。固定部材82は、第一外筒部材1の第二端1bおよび第一接合部材81の第一端81aの全周を覆い、密着している。
【0039】
以上の構造により、第一接合部8は、第一外筒部材1と牽引部材3とを接続および固定する。そのため、第一外筒部材1と牽引部材3とを一箇所のみで接続および固定する場合と比べて、接合面積を確保することができる。第一接合部8では、固定部材82が第一外筒部材1と第一接合部材81の全周を覆う構造を有する。そのため、固定部材82の内周面の一部に第一外筒部材1などの筒状部材の外周面の一部を接合した場合と比べて、接合面積を確保することができる。
【0040】
第二接合部9は、第二接合部材91を有している。第二接合部9は、内筒部材2と第二外筒部材4とを接続および固定する。
【0041】
第二接合部材91は、内視鏡200の処置具チャネル230を挿通可能な筒状部材である。第二接合部材91は、樹脂等で形成されており、可撓性を有する。図8から図10に示すように、第二接合部材91は、デリバリーデバイス100の遠位側に第一端91aを有し、デリバリーデバイス100の近位側に第二端91bを有する。第二接合部材91は、内筒部材2と第二外筒部材4とを接続および固定する。第二接合部材91は、第一孔911と第二孔912を有するマルチルーメンチューブである。
【0042】
第一孔911には、第二外筒部材4の第一端4aが挿通され、第二外筒部材4の第一端4aは第一孔911の内部に固定される。第一孔911には、牽引部材3が挿通される。牽引部材3は第一孔911に相対移動可能に挿通されている。図8から図10に示すように、第一孔911の内径は、第二接合部材91の第一端91aと第二端91bとで異なる。具体的には、第一孔911において、第一端91aの内径よりも第二端91bの内径が大きい。第二端91bにおける第一孔911の内径は、第二外筒部材4の外径と略等しい大きさである。
【0043】
第二孔912には、内筒部材2の第二端2bが挿通され、内筒部材2の第二端2bは第二孔912の内部に固定される。第二孔912は、ガイドワイヤGが挿通可能に構成される。ガイドワイヤGは第二孔912に相対移動可能に挿通可能である。第二孔912の内径は、第二接合部材91の第一端91aと第二端91bとで異なる。具体的には、第二孔912において、第一端91aの内径よりも第二端91bの内径が小さい。第一端91aにおける第二孔912の内径は、内筒部材2の外径と略等しい大きさである。
【0044】
第二接合部9によって内筒部材2と第二外筒部材4とが接続および固定される構造を説明する。第二外筒部材4の第一端4aは、第二接合部材91の第一孔911の内部に固定されている。内筒部材2の第二端2bは、第二接合部材91の第二孔912の内部に固定されている。
【0045】
以上の構造により、第二接合部9は、内筒部材2と第二外筒部材4とを接続および固定する。そのため、内筒部材と第二接合部材とを一箇所のみで接続および固定する場合と比べて、広い接合面積を確保することができる。さらに、第二接合部9では、第二接合部材91の第一孔911が第二外筒部材4の全周を覆い、第二接合部材91の第二孔912が内筒部材2の全周を覆う構造を有する。そのため、筒状部材の内周面の一部に第二外筒部材4内筒部材の外周面の一部を接合した場合と比べて、広い接合面積を確保することができる。
【0046】
前述したように第二接合部材91の第一孔911の内径と第二孔912の内径とは、第二接合部材91の第一端91aと第二端9bとでそれぞれ異なる。第二端91bにおける第一孔911の内径は、第二外筒部材4を挿通可能とする径である。第一端91aにおける第一孔911の内径は、第二外筒部材4よりも外径が小さい牽引部材3が挿通可能な程度に小さい。同様に、第一端91aにおける第二孔912の内径は、内筒部材2が挿通可能な径であり、第二端91bにおける第二孔912の内径は、内筒部材2よりも外径が小さいガイドワイヤGが挿通可能な程度に小さい。そのため、第一孔911の径および第二孔912の径を、それぞれ第一端91aと第二端91bとの間で一律にした場合と比べて、第二接合部材91の外径を小さくすることができる。
【0047】
以上で説明したデリバリーデバイス100の使用時の状況について、図11を参照して説明する。デリバリーデバイス100の遠位端は、使用時、内視鏡200の処置具チャネル230の遠位端部231から突出している。特に、ステント6の留置位置の近傍にデリバリーデバイス100の遠位端が配置された状態では、デリバリーデバイス100に設けられたステント格納領域E1のすべてが処置具チャネル230の遠位端部231から突出している。この状態において、第一接合部材81および固定部材82は、処置具チャネル230の内部に配置される。同様に、第二接合部材91も処置具チャネル230の内部に配置される。一方で、第二外筒部材4の第二開口42は処置具チャネル230の近位側の鉗子口222から外部に配置される。
【0048】
術者やその介助者は、ステント6の留置位置を決定したら、次に、牽引部材3を近位側に牽引する。第二外筒部材4の鉗子栓225に対する位置が固定された状態で、牽引部材3が近位側に牽引される。第一接合部材81と固定部材82とによって、牽引部材3は第一外筒部材1と固定されている。内筒部材2は、第一外筒部材1に対して進退可能にルーメン13内に挿入されている。そのため、牽引部材3が近位側に牽引されると、第一外筒部材1、第一接合部材81および固定部材82は、牽引部材3の移動に伴い後退し、内筒部材2は後退しない。内筒部材2は、第二外筒部材4と接続されており、第二外筒部材4は、処置具チャネル230に対する位置が保持されている。このため、内筒部材2の位置は保持され、ステント格納領域E1の位置が配置された目標位置からずれ難い。この状態で、第一外筒部材1が、内筒部材2に対して後退すると、ステント6が外部に露出する。ステント6はステント格納領域E1から外部に露出すると拡径し、チップ5の外径よりも大きく拡がる。その後、牽引部材3をさらに近位側に牽引すると、第一接合部8が第二接合部9に接触する。第一接合部8が第二接合部9にした状態で、牽引部材3を牽引し続けると、内筒部材2およびチップ5が後退する。ステント6は、チップ5の外径よりも拡径しているため、ステント6が後退することなくデリバリーデバイス100を後退させることができる。
【0049】
ステント6が完全に拡張するまでは、第一外筒部材1を内筒部材2に対して前進させて、ステント6を縮径させながら第一外筒部材1と内筒部材2との間に再度収容する(リキャプチャ)こともできる。リキャプチャは、留置位置の再設定の際等に有用である。
【0050】
デリバリーデバイス100を構成する各部材の、デリバリーデバイス100の長手方向の寸法について、図11および図12を参照して説明する。
【0051】
ステント格納領域E1の長手方向の長さを長さD1と称する。ステント6がステント格納領域E1に格納され、かつ、ステント6が留置可能な初期状態における第一接合部材81の第二端81bから第二接合部材91の第一端91aまでの長さを長さD2と称する。長さD2は、長さD1よりも長い。長さD2は、第二接合部9に対して第一外筒部材1が遠位側に最も離れている時の長さである。長さD2は、内筒部材2が処置具チャネル230内に露出する部分の長さである。以上の構造により、ステント6がデリバリーデバイス100からリリースされるまで牽引部材3を近位側に牽引した場合であっても、第一接合部材81と第二接合部材91とが接触しない。したがって、第一接合部材81をデリバリーデバイス100の近位側に牽引できないために、第一外筒部材1が十分に後退せず、ステント6がステント格納領域E1から全て露出されず、ステント6をリリースできなくなるという状況を防ぐことができる。長さD2の領域において、デリバリーデバイス100を構成する各部材、すなわち内筒部材2および牽引部材3は処置具チャネル230内と接触し難い。そのため、デリバリーデバイス100の処置具チャネル230に対する進退移動時、処置具チャネル230の内面に対する摩擦力の影響を受け難い。
【0052】
第二接合部材91は処置具チャネル230内に挿入されている。したがって、第二接合部材91は鉗子口222よりも遠位側に配置されている。初期状態、すなわち、第一外筒部材1の第一端1aおよびステント格納領域E1が処置具チャネル230の遠位端から突出し、第二端1bが遠位端部231内に位置する状態において、第二接合部材91の第一端91aから内視鏡200の鉗子口222までの長さD4は、第一外筒部材1の第一端1aから第二接合部材91の第一端91aまでの長さD3よりも長い。同様に、第二接合部材91の第一端91aから第二外筒部材4の第二端4bまでの長さD5は、長さD3よりも長い。長さD4は、処置具チャネル230内に挿入されている第二外筒部材4の挿入長である。
【0053】
ステント6を留置する際、第二外筒部材4の処置具チャネル230に対する位置が保持されており、長さD2と長さD3が変動する。ここで、デリバリーデバイス100がステント6をリリースする時に移動する部材を移動部材と称する。具体的に移動部材とは、第一接合部材81、第一接合部8、および牽引部材3である。長さD2と長さD3は、移動部材の移動の程度によって変動する。長さD3は、牽引部材3を最も遠位側に押し出した場合でも、第一接合部8の第一端81aが処置具チャネル230の遠位端部231から露出しない長さである。例えば、胆管用のデリバリーデバイス100の場合、長さD3は20cmである。長さD3は、第一外筒部材1の長さと長さD2の最大値との合計長さよりも長い。
【0054】
前述したように、長さD4は、長さD3よりも長い。つまり、デリバリーデバイス100において、長尺な処置具チャネル230内で進退する部分の長さD3は、位置が保持されている部分の長さD4よりも短い。この結果、ステント6の留置操作時に、デリバリーデバイス100と処置具チャネル230との間に生じる摩擦の影響を小さくすることができるようになる。このため、デリバリーデバイス100が位置ずれし難く、ステント6を所望の位置に留置できる。
【0055】
前述したように、長さD5は、長さD3よりも長い。つまり、デリバリーデバイス100において、長尺な処置具チャネル230内で進退する部分の長さD3が最大の長さになるときの長さ(長さD3の最大値)は、長さD5よりも短い。この結果、ステント6の留置操作時に、デリバリーデバイス100と処置具チャネル230との間に生じる摩擦の影響を小さくすることができるようになる。このため、デリバリーデバイス100が処置具チャネル230に対して位置ずれし難く、ステント6を所望の位置に留置できる。
【0056】
各長さD3、D4、D5が前述のよう関係を有することで、移動部材がデリバリーデバイス100の遠位端部から外部に現れていない領域(D4、D5の領域)は、移動部材がデリバリーデバイス100の遠位端部から外部に現れている領域(D3の領域)よりも大きい。そのため、デリバリーデバイス100がステント6をリリースする際に、デリバリーデバイス100と処置具チャネル230との間に生じる摩擦力の影響を抑えることができる。
【0057】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、牽引部材3が第一孔911の内部に固定される。第一孔11が形成される第一接合部材81と第一外筒部材1とは、固定部材82によって固定される。すなわち、第一接合部材81と固定部材82とによって、牽引部材3は第一外筒部材1と固定されている。牽引部材3が第一孔911の内部に固定されることによって、牽引部材3と第一孔911との接合面積を広く確保できる。この結果、牽引部材の端面と接合部材の端面とを一箇所のみで固定する場合に比べて広い接合面積を確保でき、接合強度を高めることができる。
【0058】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、第一外筒部材1および第一接合部材81と、固定部材82と、が固定されている。すなわち、固定部材82は、第一外筒部材1および第一接合部材81の全周に密着して覆っている。したがって、より広い接合面積を確保することができる。
【0059】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、固定部材82の径方向内側において第一外筒部材1と第一接合部材81とが端面同士で接続されている。この結果、デリバリーデバイス100の内径を確保でき、内筒部材2が進退可能に挿通される第二孔812の内径を広く確保できる。この結果、牽引部材3を牽引すると、内筒部材2に対して、第一外筒部材1を円滑に牽引できる。この他、第二孔812の内径を広く確保できる結果、ガイドワイヤの進退路を広く確保できる。したがって、ガイドワイヤGの円滑な進退操作ができる。
【0060】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、固定部材82、第一外筒部材1、および第一接合部材81が同じ材質で形成されることで、熱融着により一体化して接合させることができ、容易に接合できる。
【0061】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、第一孔911の径は牽引部材を内部に固定する大きさを有し、第二孔912の径は内筒部材2を進退可能に挿通できる大きさを有する。したがって、第一孔911で牽引部材を固定しつつ、内筒部材2が容易に進退できる。
【0062】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、第二接合部材91は、内筒部材2と第二外筒部材4とを接続する部材である。この結果、内筒部材2と第二外筒部材4とを一箇所のみで接合する場合と比べて広い接合面積を確保できる。
【0063】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、牽引部材を牽引することでステント6をステント格納領域E1からリリースする。第二接合部材91の第一孔911は、牽引部材が進退自在な大きさを有する。したがって、内筒部材2と第二外筒部材4とを接合しつつ、牽引部材が進退する経路を確保できる。この結果、デリバリーデバイス100の外径寸法を抑えながら牽引部材の進退経路を確保し、牽引部材が円滑に進退可能となり、操作性に優れる。
【0064】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、ガイドワイヤに沿ってデリバリーデバイス100全体を進退させる。ガイドワイヤが内筒部材2に対して進退自在に設けられている。したがって、内筒部材2と第二外筒部材4とを広い接合面積で確実に接合しつつ、ガイドワイヤGが進退する経路を広く確保できる。
【0065】
実施形態に係るデリバリーデバイス100によれば、第一端91aにおける第一孔911の内径は牽引部材3が挿通できる大きさの径であればよいが、第二端91bにおける第一孔911の内径は第二外筒部材4が挿通され、かつ固定される大きさの径が必要である。すなわち、第一端91aにおける第一孔911の径よりも第二端91bにおける第一孔911の径が大きい。第一端91aにおける第二孔912の内径は内筒部材2が挿通および固定可能な径が必要であるが、第二端91bにおける第二孔912の内径はガイドワイヤGが挿通できる径であればよい。この結果、第二接合部材91の外径を細径化できる。第二接合部9が細径化できる結果、デリバリーデバイス100の処置具チャネル230内の進退移動時、第二接合部9が処置具チャネル230に接触し難く、デリバリーデバイス100の進退動作を円滑に行える。特に、内視鏡挿入部が湾曲しているときに処置具チャネル230と第二接合部9が接触して進退移動に抵抗を与えることを抑制できる。
【0066】
第一外筒部材1、内筒部材2、牽引部材3、第二外筒部材4、第一接合部材81、固定部材82、第二接合部材91は、所望の機械的特性が満足されていれば、材料に特に制限はない。X線透視下で使用するデリバリーデバイスの場合、X線不透過な金属性マーカー(例えば、白金、タングステン、イリジウムなどの医療用X線不透過金属および合金)を付加したり、X線不透過な材料(例えば、硫酸バリウムなど)を混ぜ合わせたりしてもよい。
【0067】
以上、第一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、医療器具を体内に搬送するデリバリーデバイスに適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・・第一外筒部材
1a・・・第一端
1b・・・第二端
2・・・内筒部材
2a・・・第一端
2b・・・第二端
3・・・牽引部材
4・・・第二外筒部材
4a・・・第一端
4b・・・第二端
6・・・ステント
8・・・第一接合部
9・・・第二接合部
13、43・・・内部空間(ルーメン)
81・・・第一接合部材
81a・・・第一端
81b・・・第二端
82・・・固定部材
91・・・第二接合部材
91a・・・第一端
91b・・・第二端
100・・・デリバリーデバイス
300・・・内視鏡システム
230・・・処置具チャネル
811・・・第一孔
812・・・第二孔
911・・・第一孔
912・・・第二孔
E1・・・ステント格納領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12