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特許7610714送電システムにおける故障分類およびゾーン識別
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】送電システムにおける故障分類およびゾーン識別
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20241225BHJP
   H02H 3/00 20060101ALI20241225BHJP
   H02H 7/26 20060101ALI20241225BHJP
   G01R 31/08 20200101ALI20241225BHJP
【FI】
H02J13/00 301D
H02H3/00 Q
H02H7/26 B
G01R31/08
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2023540128
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-22
(86)【国際出願番号】 EP2021087399
(87)【国際公開番号】W WO2022144286
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】202041057544
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(31)【優先権主張番号】21172518.9
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ナイドゥ,オーディ
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ,ニィートゥ
【審査官】新田 亮
(56)【参考文献】
【文献】穐本、他,波動理論による送電線保護(その1.理論),電気学会論文誌B,1978年01月20日,98巻、1号,第79-86頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 13/00
H02H 3/00
H02H 7/26
G01R 31/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
故障のゾーン識別のための方法であって、
計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長未満である場合、進行波信号に基づいて、前記故障が存在する伝送線路のゾーンを識別することと、
前記計算された線路長と前記実際の線路長との前記差が前記閾値線路長よりも大きい場合、時間に関する増分端子電流の変化率に基づいて、前記故障が存在する前記伝送線路の前記ゾーンを識別することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記故障を有する伝送線路の識別を受信することと、
前記故障中に前記伝送線路の端子で決定された電圧または電流の測定値に対して実行されたモード変換から得られた進行波信号に基づいて、前記計算された線路長を取得するために、前記伝送線路の線路長を計算することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記進行波信号に基づいて識別される前記ゾーンは、前記端子からの前記実際の線路長の3分の1から3分の2までの範囲内にあり、増分端子電流の前記変化率に基づいて識別される前記ゾーンは、前記端子からの前記実際の線路長の3分の1の範囲内にある、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
故障分類のための方法であって、前記方法は、
故障中に測定された3相の各々における伝送線路の端子で電圧または電流の測定値を取得することと、
前記3相の各々に関する進行波信号を取得するために、前記電圧または電流の測定値に対してモード変換を実行することと、
前記進行波信号の大きさに基づいて、前記故障を分類することと
を含み、
前記進行波信号は、前記3相の各々に関するゼロモード進行波信号を含み、
前記方法は、地絡故障を非地絡故障と区別するために、前記ゼロモード進行波信号の大きさをゼロモード閾値と比較することを含む、方法。
【請求項5】
前記故障を分類することは、時間に関する前記電圧または電流の測定値の増分量を使用せずに実行される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記モード変換は、クラーク変換である、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
前記故障の前記分類に基づいて単相トリップまたは3相トリップを引き起こすためのトリップ信号を生成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記進行波信号は、前記3相の各々に関するベータモード進行波信号をさらに含み、前記方法は、
前記故障が地絡である場合、第1の条件が満たされるときに前記故障を前記3相のうちの第1の相および大地を含むものとして分類することを含み、前記第1の条件は、前記第1の相に関するベータ進行波信号の大きさが、前記3相の各々のベータ進行波信号の前記大きさの最小値であり、かつ、ベータモード閾値未満である場合に満たされる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記進行波信号は、前記3相の各々に関するアルファモード進行波信号をさらに含み、
前記方法は、前記故障が地絡である場合、
第2の条件が満たされるときに前記故障を前記3相のうちの2相および大地を含むものとして分類することであって、前記第2の条件は、前記3相のうちの第3の相に関するアルファ進行波信号の大きさが、前記3相の各々のアルファ進行波信号の前記大きさの最小値である場合に満たされる、分類することと、
前記第2の条件が満たされないときに前記故障を前記3相および前記大地を含むものとして分類することと、
前記故障が非地絡である場合、
第3の条件が満たされるときに前記故障を前記3相のうちの2相を含むものとして分類することであって、前記第3の条件は、前記3相のうちの第3の相に関するアルファ進行波信号の前記大きさが、前記3相の各々のアルファ進行波信号の前記大きさの最小値であり、かつ、アルファモード閾値未満である場合に満たされる、分類することと、
前記第3の条件が満たされないときに前記故障を前記3相を含むものとして分類することと
を含む、請求項または請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記端子は、同期発電リソースまたはグリッド接続された伝送線路またはインバータベースの発電リソースに接続される、請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~3のいずれか1項に記載のゾーン識別のための方法および請求項4~10のいずれか1項に記載の故障分類のための方法を含む、故障分類およびゾーン識別のための方法。
【請求項12】
請求項1~3のいずれか1項に記載の方法および/または請求項4~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサを備えるインテリジェント電子装置。
【請求項13】
プロセッサによって実行されると、前記プロセッサに、請求項1~3のいずれか1項に記載のゾーン識別のための方法および/または請求項4~10のいずれか1項に記載の故障分類のための方法を実行させる命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本主題は、一般に、送電システムにおける故障分類およびゾーン識別に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
送電システムは、発電機、変圧器、分路リアクトルなどの多数の電気構成要素を有する伝送線路を備える大きく複雑なネットワークである。電力システムは、伝送線路故障、発電ユニットの損失、高負荷伝送線路におけるスイッチング動作、負荷の大きさおよび方向の変化などのシステム擾乱を受けることが多い。一般に、故障は、正常な電流の流れに乱れを引き起こす電気システムの異常状態として定義され得る。この逸脱した電流の流れは、電圧および/または電流の流れの変化を引き起こし、送電を遮断する。
【0003】
電力システムがパラダイム転換に直面しているため、世界中のパワーグリッドは、同期AC回転機械からインバータベースのリソース(IBR)技術まで、発電ミックスの著しい変化を受けている。この傾向の自然な結果として、送電網および配電網の両方で再生可能電源がより多く配備される。周知の環境上の利点に加えて、これらの非従来技術の導入は、例えば慣性の減少、安定性マージンの減少、および予測不能性の増加により、電力システムの動作を変化させる。これらの再生可能技術のほとんどはインバータでインターフェースされているため、故障条件下でのそれらの挙動は従来の回転機械のものとは異なる。これにより、電力システム保護に新たな課題が生じる。さらに、風力および太陽光(PV)発電などのインバータベースのリソースの浸透率が高いことによる1つの問題は、パワーグリッドの故障電流および短絡強度の低下である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
本発明の実施形態は、送電システムにおける故障の分類のための方法、故障のゾーン識別のための方法、故障分類およびゾーン識別のための装置、ならびに故障分類およびゾーン識別のためのコンピュータ可読記憶媒体を提供する。
【0005】
本発明の実施形態の目的は、送電システム、特にIBRを含む送電システムに接続された発電源の種類に関係なく、送電システムにおいて故障を迅速かつ正確にクリアすることであり得る。例えば、故障は、強い電源を有するシステムでは、4分の1サイクル未満の時間でクリアされ得る。他の例では、故障は、IBRを含む送電システムにおいて5~7ms未満でクリアされ得る。
【0006】
第1の態様によれば、故障分類のための方法が提供される。本方法は、故障中に測定された3相の各々における伝送線路の端子で電圧または電流の測定値を取得することを含む。3相の各々に関する進行波信号を取得するために、電圧または電流の測定値に対してモード変換が実行される。さらに、進行波信号の大きさに基づいて、故障が分類される。
【0007】
一実施態様によれば、故障分類は、時間に関する電圧または電流の測定値の増分量を使用せずに実行される。
【0008】
一実施態様によれば、モード変換は、クラーク変換である。
一実施態様によれば、本方法は、故障の分類に基づいて単相トリップまたは3相トリップを引き起こすためのトリップ信号を生成する。
【0009】
一実施態様によれば、進行波信号は、3相の各々に関するゼロモード進行波信号を含み、本方法は、地絡故障を非地絡故障と区別するために、ゼロモード進行波信号の大きさをゼロモード閾値と比較することを含む。
【0010】
一実施態様によれば、進行波信号は、3相の各々に関するベータモード進行波信号をさらに含み、本方法は、故障が地絡の場合、第1の条件が満たされるときに故障を3相のうちの第1の相および大地を含むものとして分類することを含む。第1の条件は、第1の相に関するベータ進行波信号の大きさが、3相の各々のベータ進行波信号の大きさの最小値であり、かつ、ベータモード閾値未満である場合に満たされる。
【0011】
一実施態様によれば、進行波信号は、3相の各々に関するアルファモード進行波信号をさらに含み、本方法は、故障が地絡の場合、第2の条件が満たされるときに故障を3相のうちの2相および大地を含むものとして分類することを含む。第2の条件は、3相のうちの第3の相に関するアルファ進行波信号の大きさが、3相の各々のアルファ進行波信号の大きさの最小値である場合に満たされる。さらに、故障が地絡であり、かつ、第2の条件が満たされないときに、故障は、3相および大地を含むものとして分類される。さらに、故障が非地絡の場合、本方法は、第3の条件が満たされるときに故障を3相のうちの2相を含むものとして分類することを含む。第3の条件は、3相のうちの第3の相に関するアルファ進行波信号の大きさが、3相の各々のアルファ進行波信号の大きさの最小値であり、かつ、アルファモード閾値未満である場合に満たされる。さらに、第3の条件が満たされず、かつ、非地絡のときに、故障は、3相を含むものとして分類される。
【0012】
一実施態様によれば、端子は、同期発電リソースまたはグリッド接続された伝送線路またはインバータベースの発電リソースに接続される。
【0013】
第2の態様によれば、故障のゾーン識別のための方法が提供される。計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長未満である場合、進行波信号に基づいて、故障が存在する伝送線路のゾーンが識別される。計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長よりも大きい場合、故障が存在する伝送線路のゾーンは、時間に関する増分端子電流の変化率に基づいて識別される。
【0014】
一実施態様によれば、故障のゾーン識別のための方法は、故障を有する伝送線路の識別を受信することと、故障中に伝送線路の端子で決定された電圧または電流の測定値に対して実行されたモード変換から得られた進行波信号に基づいて、計算された線路長を取得するために、伝送線路の線路長を計算することとを含む。
【0015】
一実施態様によれば、進行波信号に基づいて識別されるゾーンは、端子からの実際の線路長の3分の1から3分の2までの範囲内にあり、増分端子電流の変化率に基づいて識別されるゾーンは、端子からの実際の線路長の3分の1の範囲内にある。
【0016】
第3の態様によれば、故障分類およびゾーン識別のための方法は、本明細書に開示される故障分類のための方法および本明細書に開示されるゾーン識別のための方法を含む。
【0017】
第4の態様によれば、故障分類および/またはゾーン識別のための方法を実行するインテリジェント電子装置が開示される。
【0018】
第5の態様によれば、実行されると、故障分類および/または故障ゾーン識別のための方法をプロセッサに実行させるプログラム命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体が開示される。
【0019】
図面の簡単な説明
本主題の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の図面に関してよりよく理解されよう。異なる図における同じ参照番号の使用は、類似または同一の特徴および構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1(a)】本主題の一実施形態による、アルファモードにおけるA相に関する、A相地絡(A-g)故障に対する進行波信号の監視を示す図である。
図1(b)】本主題の一実施形態による、ベータモードにおけるA相に関する、A相地絡(A-g)故障に対する進行波信号の監視を示す図である。
図2(a)】本主題の一実施形態による、アルファモードにおけるA相に関する、B相-C相間(BC)故障に対する進行波信号の監視を示す図である。
図2(b)】本主題の一実施形態による、ベータモードにおけるA相に関する、B相-C相間(BC)故障に対する進行波信号の監視を示す図である。
図3(a)】本主題の一実施形態による、アルファモードにおけるA相に関する、C相-A相地絡(CA-g)故障に対する進行波信号の監視を示す図である。
図3(b)】本主題の一実施形態による、ベータモードにおけるA相に関する、C相-A相地絡(CA-g)故障に対する進行波信号の監視を示す図である。
図4(a)】本主題の一実施形態による、アルファモードにおけるA相に関する、3相地絡(ABC-g)故障の場合に対する進行波信号の監視を示す図である。
図4(b)】本主題の一実施形態による、ベータモードにおけるA相に関する、3相地絡(ABC-g)故障の場合に対する進行波信号の監視を示す図である。
図5(a)】本主題の一実施形態による、故障を分類するための2電源等価電気回路網のブロック図である。
図5(b)】150km伝送線路のバスMから50kmにおけるA相地絡故障に対する3相電流を示す図である。
図5(c)】150km伝送線路のバスMから50kmにおけるA相地絡故障に対する電流信号のアルファ成分を示す図である。
図5(d)】150km伝送線路のバスMから50kmにおけるA相地絡故障に対する抽出された進行波を示す図である。
図5(e)】本主題の一実施形態による、故障が存在するゾーンを識別するための2電源等価電気回路網のブロック図である。
図6】本主題の一実施形態による、検出された故障が定義されたゾーン内にあるかどうかを識別するための技術を示す図である。
図7】本主題の一実施形態による、線路長計算のための進行波ベースの手法の格子図である。
図8(a)】本主題の一実施形態による、故障を分類するための方法を示す図である。
図8(b)】本主題の一実施形態による、故障が存在するゾーンを識別するための方法を示す図である。
図9】本主題の一実施形態による、故障分類のための故障の相選択のための方法を示す図である。
図10】本主題の一実施形態による、検出された故障が存在するゾーンを識別するための方法を示す図である。
図11】第1のシナリオの第1の例において、故障ゾーン識別のための増分電流の閾値および実際の変化率のプロットを示す図である。
図12(a)】本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第1の例において、バスMで記録されたベータ進行波信号の第1のピークを示す図である。
図12(b)】本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第1の例において、バスMで記録されたゼロモード進行波信号の第1のピークを示す図である。
図13】本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第1の例において、最初の3つのピークおよびそれらの到達時刻を示すバスMで記録された進行波信号を示す図である。
図14】第1のシナリオの第2の例において、故障ゾーン識別のための増分電流の閾値および実際の変化率のプロットを示す図である。
図15(a)】本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第2の例において、バスMで記録されたアルファ進行波信号の第1のピークを示す図である。
図15(b)】本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第2の例において、バスMで記録されたゼロモード進行波信号の第1のピークを示す図である。
図16】本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第2の例において、最初の3つのピークおよびそれらの到達時刻を示すバスMで記録された進行波信号を示す図である。
図17】第2のシナリオの第1の例において、故障ゾーン識別のための増分電流の閾値および実際の変化率のプロットを示す図である。
図18(a)】本主題の一実施形態による、第2のシナリオの第1の例において、バスMで記録されたベータ進行波信号の第1のピークを示す図である。
図18(b)】本主題の一実施形態による、第2のシナリオの第1の例において、バスMで記録されたゼロモード進行波信号の第1のピークを示す図である。
図19】第2のシナリオの第2の例において、故障ゾーン識別のための増分電流の閾値および実際の変化率のプロットを示す図である。
図20(a)】本主題の一実施形態による、第2のシナリオの第2の例において、バスMで記録されたアルファ進行波信号の第1のピークを示す図である。
図20(b)】本主題の一実施形態による、第2のシナリオの第2の例において、バスMで記録されたゼロモード進行波信号の第1のピークを示す図である。
図21】本主題の一実施形態による、第2のシナリオの第2の例において、最初の3つのピークおよびそれらの到達時刻を示すバスMで記録された進行波信号を示す図である。
図22(a)】本主題の一実施形態による、一例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、弱いインバータベースのリソースを有するシステムの動作時間を示す図である。
図22(b)】本主題の一実施形態による、一例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、弱いインバータベースのリソースを有するシステムの動作時間を示す図である。
図23(a)】本主題の一実施形態による、他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、弱いインバータベースのリソースを有するシステムの動作時間を示す図である。
図23(b)】本主題の一実施形態による、他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、弱いインバータベースのリソースを有するシステムの動作時間を示す図である。
図24(a)】本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、通常の伝送線路の動作時間を示す図である。
図24(b)】本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、通常の伝送線路の動作時間を示す図である。
図25(a)】本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、二重回路伝送線路の動作時間を示す図である。
図25(b)】本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、二重回路伝送線路の動作時間を示す図である。
図26(a)】本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、直列補償線路の動作時間を示す図である。
図26(b)】本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、直列補償線路の動作時間を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
詳細な説明
本主題は、送電システムにおける故障分類およびゾーン識別に関する。以下では、一例としてインバータベースのリソース技術を含む電力システムに関する故障分類およびゾーン識別について説明する。しかしながら、本主題は、IBRを有する電力システムにおける故障分類およびゾーン識別に限定されない。
【0022】
さらに、電力システムの安定性マージンは、電力システムの慣性に依存し、それは電力システムの故障を識別およびクリアするために使用され保護方式の所望の速度を決定する。IBRを含む電力システムは、慣性が低く、したがって安定性マージンが小さい。安定性マージンの低下は、臨界クリア時間の低下を意味する。故障は、臨界クリア時間よりも速くクリアされなければならず、そうでなければシステムが過渡安定性を失う可能性があり、それは電力システムの停電につながり得る。したがって、再生可能電源のパワーグリッドへの統合は、システム安定性の限界を維持するために高速保護を必要とする。
【0023】
従来、時間領域保護原理が、高速線路保護のために使用されている。新しい中継ハードウェアプラットフォームの高いサンプリングレート、処理パワー、および通信能力が、線路保護動作速度を改善するために使用される。しかしながら、これらの解決策は、速度に関して欠点を有する。さらに、主要パワーグリッドへの再生可能電源の追加の増大は、特に太陽光発電(PV)の統合が高いため、全体的な慣性を減少させると予想される。これは、電力システムの慣性定数および過渡安定性マージンを減少させる可能性があり、その結果、グリッドの安定動作を維持するための臨界クリア時間を減少させる。
【0024】
1つの従来技術では、増分端子電流の変化率に基づく時間領域ベースのアルゴリズムが、故障ゾーン識別のために使用される。増分端子電流の閾値変化率は、故障が設定ゾーン-1境界にあると仮定することによって計算される。増分端子電流の実際の変化率は、端子電流測定値から計算される。実際の率が閾値率よりも大きい場合、故障は設定ゾーン-1境界内にあると識別される。あるいは、実際の率が閾値率よりも小さい場合、故障は設定ゾーン-1境界を超えていると識別され、トリップ信号は生成されない。
【0025】
上記のような時間領域ベースのゾーン識別は、表Iに示すように、従来の発電源を有する通常の伝送線路システムの50%以内の故障に対して、<5ms以内に100%の確実性でトリップ信号を生成する。
【0026】
【表1】
【0027】
しかしながら、インバータベースの電源を有する伝送線路システムの場合、時間領域ベースのゾーン識別の確実性は、線路の50%における故障であっても86%まで低下する。平均トリップ時間もまた、以下に示される表IIに示されるように望ましくなく増加する。
【0028】
【表2】
【0029】
したがって、従来の技術に基づく時間領域ベースのゾーン識別は、インバータベースの電源を有する伝送線路の信頼性が高く高速な保護には不十分であり得る。したがって、電力システムを保護することができる高速距離保護技術、すなわち故障分類およびゾーン識別が必要とされている。
【0030】
本主題は、迅速な故障分類および迅速かつ正確なゾーン識別のための方法を提供する。故障分類(相選択)は、電流または電圧の測定値のモード変換から得られた進行波信号に基づいて達成される。さらに、故障分類後に、増分量と進行波原理の組合せに基づいて、故障区域またはゾーンが識別される。したがって、時間領域における増分量と進行波ベースの距離保護手法とを組み合わせたハイブリッド手法が提供され、安全性を損なうことなくより良好な信頼性および速度を達成する。この手法は、使用される発電源に関係なく、すべての電力システム、特にインバータベースのリソース(IBR)システムに適している。
【0031】
本明細書で開示される方法および装置は、従来の発電源を有するシステムについて、4分の1サイクル未満の時間で故障をクリアすることができる。本方法は、IBRシステムについて5~7ms未満で故障をクリアすることができる。さらに、本方法は直列補償線路に適用することができ、電力スイング中に誤動作せず、したがって電力スイング阻止機能を必要としない場合がある。
【0032】
本主題の上記および他の特徴、態様、および利点は、以下の記載および添付の図面に関してよりよく説明されよう。可能な限り、同じまたは類似の部分を指すために、図面および以下の説明において同じ参照番号が使用される。いくつかの例が記載されるが、変更、適合、および他の実装も可能である。
【0033】
電力伝送線路における異なるタイプの故障のシミュレーション中に3相に関して得られた進行波信号を最初に説明して、迅速な故障分類を実行することができる原理を確立する。このために、一例として、220kV、150kmの長さの伝送線路が考慮され、4種類の故障に対する進行波信号のアルファ成分およびベータ成分が監視される。この例では、説明のために、A-g(相地絡故障)、BC(相間故障)、CA-g(相間地絡故障)、およびABC-g(3相地絡故障)の故障が考慮されている。しかしながら、他の相地絡故障、相間故障、および相間地絡故障の間の故障の進行波信号のアルファ成分およびベータ成分も同様の結果をもたらす。
【0034】
図1(a)および図1(b)は、本主題の一実施形態による、(a)アルファモードおよび(b)ベータモードにおけるA相に関する、A相地絡(A-g)故障に対する進行波信号の監視を示す。一例では、150kmの伝送線路の25kmで、20Ωの故障抵抗および60度の開始角度で、相地絡(A-g)故障がシミュレートされる。図1(a)は、A相のアルファモードにおけるA相地絡(A-g)故障の進行波信号の監視を示し、図1(b)は、A相のベータモードにおけるA相地絡(A-g)故障の進行波信号の監視を示す。観察され得るように、A相地絡故障の場合、A相に関するアルファモード信号のみが存在するが、A相に関するベータモード信号は無視できる。さらに、B相およびC相に関するベータモード信号は、A相-g故障が発生するときに有意な大きさを有する(図には示されていない)。同様に、B相地絡(B-g)故障の場合、B相を基準とするベータモード信号は無視でき、C相地絡(C-g)故障の場合、C相を基準とするベータモード信号は無視できる。さらに、大地が故障に関与するため、これらの故障ではゼロモード信号の大きさは無視できない。
【0035】
図2(a)および図2(b)は、本主題の一実施形態による、(a)アルファモードおよび(b)ベータモードにおけるA相に関する、B相-C相間(BC)故障に対する進行波信号の監視を示す。一例では、150kmの伝送線路の25kmで、1Ωの故障抵抗および60度の開始角度で、相間(B相-C相)故障がシミュレートされる。図2(a)は、A相のアルファモードにおけるB相-C相間(BC)故障の進行波信号の監視を示し、図2(b)は、A相のベータモードにおけるB相-C相間(BC)故障の進行波信号の監視を示す。B相-C相間故障の場合、A相に関して推定されるアルファモード信号は無視できることが観察され、それは故障タイプ識別に使用され得る。同様に、A相-B相間およびC相-A相間故障の場合、それぞれC相およびB相に関するアルファモード信号の大きさは0に近い。また、大地が故障に関与しないため、これらの故障ではゼロモード信号の大きさは無視できる。
【0036】
図3(a)および図3(b)は、本主題の一実施形態による、(a)アルファモードおよび(b)ベータモードにおけるA相に関する、C相-A相地絡(CA-g)故障に対する進行波信号の監視を示す。一例では、150kmの伝送線路の25kmで、20Ωの故障抵抗および60度の開始角度で、相間地絡(C相-A相地絡)故障がシミュレートされる。図3(a)は、A相のアルファモードにおけるC相-A相地絡(CA-g)故障の進行波信号の監視を示し、図3(b)は、A相のベータモードにおけるC相-A相地絡(CA-g)故障の進行波信号の監視を示す。CA-g故障の場合、アルファおよびベータモード信号の両方が利用可能である。しかしながら、B相を基準として推定されるアルファモード信号の大きさは、3相すべてを基準として計算されるアルファモード信号のうちで最小である。また、大地が故障に関与するため、これらの故障ではゼロモード信号の大きさは無視できない。
【0037】
図4(a)および図4(b)は、本主題の一実施形態による、(a)アルファモードおよび(b)ベータモードにおけるA相に関する、3相地絡(ABC-g)故障の場合に対する進行波信号の監視を示す。一例では、150kmの伝送線路の25kmで、10Ωの故障抵抗および60度の開始角度で、3相地絡(ABC-g)故障がシミュレートされる。図4(a)は、A相のアルファモードにおける3相地絡(ABC-g)故障の進行波信号の監視を示し、図4(b)は、A相のベータモードにおける3相地絡(ABC-g)故障の進行波信号の監視を示す。図4(a)および図4(b)から分かるように、3相地絡故障については、アルファおよびベータモード信号の両方が利用可能である。
【0038】
これらの観察に基づいて、本主題は、以下に説明するように、故障の高速で信頼性の高い分類のための進行波信号情報に基づく相選択方法を提案する。
【0039】
図5(a)は、本主題の一実施形態による、故障を分類するための2電源等価電気回路網のブロック図を示す。2電源等価電気回路網500は、2つの端子であるバスM501とバスN502との間に接続された長さLの電力伝送線路512を備える。電源503および504は、それぞれバスM501およびバスN502に電力を供給する。一例では、電源503および504は、同期発電リソースまたはグリッド接続された伝送線路またはインバータベースの発電リソースなどの発電機に接続され得る。電気回路網500は、キロボルトの範囲内などの高電圧で、および数十または数百キロメートルなどの長距離にわたって電力を伝送することができる。
【0040】
故障分類のための2端子システム500は、伝送線路に関連付けられ得るが簡潔にするために示されていない様々なパラメータを監視、検知、および制御するための複数の追加の構成要素または装置を含むことができることが理解されよう。例えば、遮断器、センサ、変流器、電圧変圧器、伝送線路に接続された負荷、分路リアクトル、インテリジェント電子装置(IED)、保護リレーなどの構成要素が伝送線路に接続されてもよい。
【0041】
さらに、装置508が、故障分類のために伝送線路512と関連付けられ得る。説明のために、故障を分類するための技術は、端子M501に実装される装置508を参照して説明される。しかしながら、同様の技術は、理解され得るように、端子N502における装置によって適用され得る。
【0042】
一例では、装置508は、インテリジェント電子装置(IED)であり得る。他の例では、装置508は、IEDから測定値を受信することができるサーバ、デスクトップ装置、ラップトップなどの任意のコンピューティング装置であってもよい。一例では、本主題は、1つまたは複数のモジュールによって実施され得る。モジュールは、1つまたは複数のプロセッサによって実行可能な命令として実装されてもよい。例えば、装置508が方法を実行する例では、モジュールは装置508のプロセッサによって実行される。本方法が部分的に装置508によって実施され、部分的にサーバによって実施される場合、モジュールは(ステップに応じて)、それに応じて装置508およびサーバに分散される。
【0043】
動作中、装置508は、変流器、電位変圧器、ロゴスキーコイル、または他の測定センサなど、伝送線路512に接続された様々な測定機器から、第1の端子とも呼ばれるバスM501に関連する入力測定信号を受信するように構成されてもよい。例えば、VTとして示されている変圧器および/またはCTとして示されている変流器を使用して、入力測定値を取得することができる。一例では、装置508は、バスM501に関連する電圧測定値もしくは電流測定値、または電圧測定値と電流測定値の両方を取得することができる。装置508は、当技術分野で知られている技術を使用して電力伝送線路の故障を検出するように構成されてもよい。これに応じて、装置508は、以下でさらに説明するように故障を分類するように構成することができ、それに応じてトリップ信号を生成して故障を分離することができる。
【0044】
故障を分類するために、装置508は、プロセッサ520の助けを借りて、取得した測定値を処理することができる。プロセッサ520は、専用プロセッサ、共有プロセッサ、または複数の個別プロセッサとして実装されてもよく、そのうちのいくつかは共有されてもよい。装置508は、プロセッサ520に通信可能に接続することができるメモリ526を備えることができる。とりわけ、プロセッサ520は、メモリ526に記憶されたコンピュータ可読命令をフェッチして実行することができる。一例では、メモリ526は、故障分類モジュール522を記憶することができる。他の例では、故障分類モジュール522は、メモリ526の外部にあってもよい。メモリ526は、例えば、RAMなどの揮発性メモリ、またはEPROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含む任意の非一時的コンピュータ可読媒体を含むことができる。
【0045】
さらに、装置508は、故障分類モジュール522から得られた結果を、例えばサーバに通信するための出力インターフェース524を備えることができる。一例では、方法がサーバで実施される場合、装置508は、出力インターフェース524を介してサーバに電流および電圧の測定値を通信することができる。出力インターフェース524は、ネットワークエンティティ、ウェブサーバ、データベース、および外部リポジトリなどの他の通信、ストレージ、およびコンピューティング装置、ならびに周辺機器との対話を可能にする様々なコンピュータ可読命令ベースのインターフェースおよびハードウェアインターフェースを含むことができる。一例では、故障分類、電流および電圧の測定値などは、出力インターフェース524に接続された、または装置508と統合されたディスプレイ上で見ることができる。
【0046】
一例では、伝送線路における故障を検出すると、装置508のプロセッサ520は、故障分類モジュール522を実行して故障を分類することができる。故障分類モジュール522は、伝送線路に関連する測定機器によって故障中に測定された3相の各々における伝送の端子での電圧または電流の測定値を取得することができる。電圧または電流の測定値は、装置508内のリポジトリまたは外部装置もしくはリポジトリから取得することができる。
【0047】
次いで、故障分類モジュール522は、3相の各々に関する進行波信号を取得するために、電圧または電流の測定値に対してモード変換を実行することができる。進行波信号は、3相の各々に関して、ベータモード進行波信号、アルファモード進行波信号、およびゼロモード進行波信号のうちの1つまたは複数を含む。一例では、実行され得るモード変換はクラーク変換であり、モード変換は、それぞれのアルファ、ベータ、およびゼロモード進行波信号を取得するために、各相、すなわちA相、B相、およびC相で実行され得る。
【0048】
一例では、電圧または電流の測定値は、2つの空中モード信号(アルファモード信号およびベータモード信号)および大地モード信号に分解することができる。相電圧または相電流の空中モード信号および大地モード信号への分解は、クラーク変換によって実行することができる。次いで、空中モード信号および大地モード信号をバンドパスフィルタに通して、進行波を抽出することができる。例えば、150km伝送線路の50km地点におけるA相地絡故障を考える。図5(b)は、150km伝送線路のバスMから50kmにおけるA相地絡故障に対する3相電流を示す。図5(c)は、150km伝送線路のバスMから50kmにおけるA相地絡故障に対するA相における電流信号のアルファ成分を示す。図5(d)は、150km伝送線路のバスMから50kmにおけるA相地絡故障に対するA相における抽出されたアルファモード進行波を示す。高周波過渡成分(進行波)を図5(b)に550で表し、アルファモード信号における高周波過渡成分を図5(c)に552で表し、これは、図5(c)に示すアルファモード信号をバンドパスフィルタに通して図5(d)に示す進行波を取得することにより抽出される。進行波信号の大きさに基づいて、故障が分類され得る。一例では、故障分類は、時間に関する電圧または電流の測定値の増分量を使用せずに実行され得る。さらに、故障の分類に基づいて、単相トリップ信号または3相トリップ信号を生成することができる。
【0049】
故障を分類するために、故障分類モジュール522は、ゼロモード進行波信号の大きさをゼロモード閾値と比較して、地絡故障を非地絡故障と区別することができる。一例では、ゼロモード閾値は0.01であり得る。さらに、故障が地絡であるかどうかを判定し、3相A、B、およびCのアルファおよびベータモード進行波信号の大きさに基づいて、故障は、単相故障、単相地絡故障、相間故障、相間地絡故障、3相故障、または3相地絡故障として分類することができる。
【0050】
一例では、故障が地絡である場合、故障分類モジュール522は、第1の条件が満たされるときに、故障を3相のうちの第1の相および大地を含むものとして分類することができる。第1の条件は、第1の相に関するベータ進行波信号の大きさが、3相の各々のベータ進行波信号の大きさの最小値であり、かつ、ベータモード閾値未満である場合に満たされ得る。
【0051】
さらに、故障が地絡である場合、故障分類モジュール522は、第2の条件が満たされるときに、故障を3相のうちの2相および大地を含むものとして分類することができる。第2の条件は、3相のうちの第3の相に関するアルファ進行波信号の大きさが、3相の各々のアルファ進行波信号の大きさの最小値である場合に満たされ得る。第2の条件が満たされないが、地絡であるときに、故障分類モジュール522は、故障を3相および大地を含むものとして分類することができる。
【0052】
他方、故障が地絡でない場合、すなわち、ゼロモード進行波信号の大きさがゼロモード閾値未満である場合、故障分類モジュール522は、第3の条件が満たされるときに、故障を3相のうちの2相を含むものとして分類することができる。第3の条件は、3相のうちの第3の相に関するアルファ進行波信号の大きさが、3相の各々のアルファ進行波信号の大きさの最小値であり、かつ、アルファモード閾値未満である場合に満たされ得る。第3の条件が満たされず、かつ、非地絡のときに、故障分類モジュール522は、故障を3相を含むものとして分類することができる。
【0053】
故障を分類するための相選択処理について、図9を参照してさらに詳細に説明する。さらに、分類に基づいて、故障分類モジュールは、単相トリップ信号または3相トリップ信号を生成することができる。
【0054】
図5(e)は、本主題の一実施形態による、故障が存在するゾーンを識別するための2電源等価電気回路網のブロック図を示す。一例では、故障が検出および分類されると、故障が存在し得るセグメントまたは故障が存在し得るゾーンを識別することができる。一例では、故障は、図5(a)に関して説明した分類技術に基づいて分類されてもよく、または任意の他の故障分類技術が使用されてもよい。一例では、故障ゾーン識別のための2端子システム580は、図5(a)に関して説明した故障分類に使用される2端子システム500と同様であってもよい。
【0055】
図5(e)に示すように、ゾーン識別のために、伝送線路512に装置540を関連付けてもよい。装置540は、装置508と同様に、インテリジェント電子装置、またはIEDから測定値を受信することができるサーバ、デスクトップ装置、ラップトップなどの任意のコンピューティング装置であってもよい。一例では、装置508および装置540は、故障分類およびゾーン識別の両方を実行するために単一の装置に統合されてもよい。装置508と同様に、装置540は、変流器、電位変圧器、ロゴスキーコイル、または他の測定センサなど、伝送線路512に接続された様々な測定機器から、バスM501に関連する電圧および電流の測定値を受信してもよい。さらに、装置540は、故障が位置し得るゾーンを識別するように構成され得る。ゾーン識別のために、装置540は、プロセッサ520と同様のプロセッサ542の助けを借りて、取得した測定値を処理することができる。
【0056】
一例では、本主題は、プロセッサ542によって実行される1つまたは複数のモジュールによって実施され得る。モジュールは、1つまたは複数のプロセッサによって実行可能な命令として実装されてもよい。例えば、装置540が方法を実行する例では、モジュールは装置540のプロセッサによって実行される。本方法が部分的に装置540によって実施され、部分的にサーバによって実施される場合、モジュールは(ステップに応じて)、それに応じて装置540およびサーバに分散される。
【0057】
装置540は、プロセッサ542に通信可能に接続することができるメモリ546を備えることができる。とりわけ、プロセッサ542は、メモリ546に記憶されたコンピュータ可読命令をフェッチして実行することができる。一例では、メモリ546は、故障ゾーン識別モジュール544を記憶することができる。他の例では、故障ゾーン識別モジュール544は、メモリ546の外部にあってもよい。メモリ546は、例えば、RAMなどの揮発性メモリ、またはEPROM、フラッシュメモリなどの不揮発性メモリを含む任意の非一時的コンピュータ可読媒体を含むことができる。
【0058】
一例では、伝送線路における故障を検出すると、故障が存在し得るゾーンを識別するための方法が装置540によって実行され得る。さらに、装置540は、故障ゾーン識別モジュール544から得られた結果を、例えばサーバに通信するための出力インターフェース548を備えることができる。一例では、方法がサーバで実施される場合、装置540は、出力インターフェース548を介してサーバに電流および電圧の測定値を通信することができる。出力インターフェース548は、ネットワークエンティティ、ウェブサーバ、データベース、および外部リポジトリなどの他の通信、ストレージ、およびコンピューティング装置、ならびに周辺機器との対話を可能にする様々なコンピュータ可読命令ベースのインターフェースおよびハードウェアインターフェースを含むことができる。一例では、故障ゾーン識別、取得された電流および電圧の測定値などは、出力インターフェース548に接続された、または装置540と統合されたディスプレイ上で見ることができる。
【0059】
故障が存在するゾーンを識別するために、装置540は、故障を有する伝送線路の識別を受信するように構成され得る。説明のために、代替的に故障セグメントと呼ばれる故障ゾーンを識別する方法は、端子M501に実装された装置540に関して説明される。しかしながら、同様の方法は、理解され得るように、端子N502における装置によって実行され得る。
【0060】
動作中、装置540は、伝送線路512に故障が存在するという指示を受信することができる。この指示を受信すると、伝送線路512の線路長を計算することができる。一例では、線路長は、故障中に伝送線路512の端子M501などの端子で決定された電圧または電流の測定値に対して実行されたモード変換から得られた進行波信号に基づいて計算することができる。さらに、実際の線路長と計算された線路長との比較を使用して、故障が存在するゾーンを識別することができる。
【0061】
一例では、装置540は、計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長未満である場合、進行波信号に基づいて故障が存在する伝送線路のゾーンを識別することができる。進行波信号に基づいて識別されるゾーンは、端子からの実際の線路長の3分の1から3分の2の範囲内にあり得る。一例では、装置540は、計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長以上である場合、時間に関する増分端子電流の変化率に基づいて、故障が存在する伝送線路のゾーンを識別することができる。増分端子電流の変化率に基づいて識別されるゾーンは、端子からの実際の線路長の3分の1の範囲内にあり得る。故障セグメントまたは故障ゾーン識別の態様は、図6および図7を参照して以下でさらに詳細に説明される。
【0062】
図6は、本主題の一実施形態による、検出された故障が定義されたゾーン内にあるかどうかを識別するための技術を示す。端子501または502などのローカル端子に非常に近い故障の場合、時間領域手法は高速で信頼性が高いので実施され得ることが観察される。しかしながら、端子の近くで発生するこれらの故障の場合、進行波手法は、複数の反射および屈折の識別のために信頼性が低い可能性がある。他方、ローカル端子から離れて発生する故障の場合、時間領域手法はより遅く、信頼性が低い可能性がある。特に、インバータベースの電源を有する伝送線路の50%を超える故障の場合、時間領域手法は、進行波ベースの手法と比較して効率が低い可能性がある。進行波ベースの手法は、本主題による33.3%から66.67%の間の線路の部分に対して非常に高速かつ正確に機能することが分かっている。したがって、本主題は、時間領域手法および進行波手法を含むハイブリッド手法を実装し、したがって、端子からの総線路長の66.67%までの伝送線路の超高速かつ高信頼性の保護を保証する。
【0063】
一例では、伝送線路512などの伝送線路は、セグメント-1、セグメント-2、およびセグメント-3の3つのセグメントに分割されてもよい。一例では、セグメント-1およびセグメント-3は、端子終端に隣接し得るため、終端セグメントと呼ばれることがあり、セグメント-2は、伝送線路の中間点を含み得るため、中間セグメントと呼ばれることがある。セグメント-1は、バスM501から約33.33%のP1までの線路の先頭、すなわち端子から伝送線路の3分の1をカバーすることができる。セグメント-2は、端子501から伝送線路の3分の1(33.33%)のP1から、端子501から伝送線路の3分の2(66.67%)のP2までをカバーする。セグメント-3は、端子501から伝送線路の端子502までの伝送線路の3分の2である66.67%のP2、すなわち端子502から伝送線路の3分の1をカバーする。一例では、伝送線路のセグメント-1を保護するために時間領域ベースのゾーン識別手法を実施することができ、伝送線路のセグメント-2を保護するために進行波ベースの手法を実施することができる。セグメント-3は、端子502から見たときにセグメント-1に対応するので、セグメント-3は、電流または電圧の測定値が端子502から取得されるときに、時間領域ベースのゾーン識別手法を使用して保護されてもよい。したがって、本主題は、時間領域ベースの手法と進行波ベースの手法の両方の利点を効率的に組み合わせて、高速で信頼性の高いゾーン識別を達成する。
【0064】
図7は、本主題の一実施形態による、線路長計算のための進行波ベースの手法の格子図を示す。伝送線路における故障の発生中、相互接続された電力システム内の最も近いインピーダンス不連続点まで伝送線路に沿って光の速度にほぼ等しい速度で移動することができる高周波過渡信号が生成され得る。インピーダンス不連続点から、波は反射および屈折されることができ、それに基づいて線路長を計算することができる。
【0065】
上述したように、伝送線路の3分の1と3分の2との間の伝送線路の部分(P1-P2)は、進行波ベースの手法によって保護することができる。一例では、伝送線路のセグメント-2の故障を考えると、図7はその格子図を表す。
【0066】
【数1】
【0067】
線路長は、伝送線路のセグメント-2の故障についての式(1-3)に基づいて、式(4)に示すように計算することができる。
【0068】
【数2】
【0069】
一例では、故障ゾーン識別モジュール544は、計算された線路長を実際の既知の線路長と比較するように構成されてもよい。他の実施態様では、線路長を計算する他の技術が使用されてもよいことが理解されよう。一例では、実際の既知の線路長は、メモリ546に記憶されてもよい。さらに、計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長未満である場合、故障はセグメント-2にあると識別することができる。しかしながら、計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長よりも大きい場合、時間領域手法を使用することができる。
【0070】
したがって、本主題は、進行波手法に基づく高速で信頼性の高い故障分類システムと、故障が存在するセグメント(ゾーン)を識別するための増分時間領域および進行波原理に基づくハイブリッド解決策とを提供する。
【0071】
図8(a)、図8(b)、図9、および図10は、本主題の様々な実施形態による、故障の分類、故障が存在するゾーンの識別、故障の相選択、故障のゾーン識別のための方法を示す。方法800、801、900、1000が説明される順序は、限定として解釈されることを意図するものではなく、説明された方法ブロックのいくつかは、方法800、801、900、1000または代替方法を実施するために異なる順序で実行されてもよい。さらに、方法800、801、900、1000は、任意の適切なハードウェア、コンピュータ可読命令、ファームウェア、またはそれらの組合せで実施することができる。説明のために、方法800、801、900、1000は、図5(a)および図5(e)に示す実装形態に関して説明される。
【0072】
図8(a)は、本主題の一実施形態による、故障を分類するための方法800を示す。方法800では、ブロック802で、故障中に測定された3相の各々における伝送線路の端子で電圧または電流の測定値が取得される。一例では、端子は、同期発電リソースまたはグリッド接続された伝送線路またはインバータベースの発電リソースに接続され得る。一例では、送電システムの端子における各相の電圧測定値は、変圧器または電位変圧器によって取得されてもよく、送電システムの端子における各相の電流測定値は、変流器によって取得されてもよい。一例では、変流器および変圧器は、端子M501で装置に動作可能に接続されてもよい。
【0073】
ブロック804で、進行波信号を取得するために、3相の各々に関する電圧または電流の測定値に対してモード変換が実行される。一例では、当技術分野で周知の方法であるクラーク変換を、A相、B相、およびC相に関する電圧または電流の測定値に対して実行することができ、その後、アルファ、ベータ、およびゼロモード進行波信号を、図5(a)~図5(d)に関して上述したように3相の各々に関して取得することができる。
【0074】
ブロック806で、進行波信号の大きさに基づいて、故障が分類される。一例では、故障は、地絡か否かにかかわらず、単相故障、2相故障、または3相故障として分類され得る。故障の分類および相選択については、図9を参照して詳細に説明する。故障の分類に基づいて、単相トリップまたは3相トリップ信号を生成することができる。
【0075】
一例では、ゼロモード進行波信号の大きさをゼロモード閾値と比較して、地絡故障を非地絡故障と区別することができる。
【0076】
一例では、故障が地絡である場合、第1の条件が満たされるときに、故障は3相のうちの第1の相および大地を含むものとして分類され得る。第1の条件は、第1の相に関するベータ進行波信号の大きさが、3相の各々のベータ進行波信号の大きさの最小値であり、かつ、ベータモード閾値未満である場合に満たされ得る。
【0077】
一例では、故障が地絡である場合、第2の条件が満たされるときに、故障は3相のうちの2相および大地を含むものとして分類され得る。第2の条件は、3相のうちの第3の相に関するアルファ進行波信号の大きさが、3相の各々のアルファ進行波信号の大きさの最小値である場合に満たされ得る。さらに、第1および第2の条件が満たされず、かつ、故障が地絡であるときに、故障は、3相および大地を含むものとして分類され得る。
【0078】
他の例では、故障が非地絡の場合、第3の条件が満たされるときに、故障は、3相のうちの2相を含むものとして分類され得る。第3の条件は、3相のうちの第3の相に関するアルファ進行波信号の大きさが、3相の各々のアルファ進行波信号の大きさの最小値であり、かつ、アルファモード閾値未満である場合に満たされ得る。さらに、第3の条件が満たされず、かつ、故障が非地絡のときに、故障は、3相を含むものとして分類され得る。
【0079】
一例では、上述のような故障分類に基づいて、故障の分類に基づく単相トリップまたは3相トリップを引き起こすためにトリップ信号が生成され得る。一例では、装置508の故障分類モジュール522は、故障を分類するように構成することができる。
【0080】
図8(b)は、本主題の一実施形態による、故障が存在するゾーンを識別するための方法801を示す。方法801では、ブロック810で、計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長未満である場合、進行波信号に基づいて、故障が存在する伝送線路のゾーンが識別され得る。さらに、ブロック812で、計算された線路長と実際の線路長との差が閾値線路長以上である場合、時間に関する増分端子電流の変化率に基づいて、故障が存在する伝送線路のゾーンが識別され得る。一例では、時間に関する増分端子電流の変化率に基づいて故障が存在する伝送線路のゾーンを決定することは、電流測定値に基づいて増分端子電流の実際の変化率を計算することを含む。
【0081】
一例では、進行波信号に基づいて識別されるゾーンは、端子からの実際の線路長の3分の1から3分の2の範囲内にある。さらに、増分端子電流の変化率に基づいて識別されるゾーンは、端子からの実際の線路長の3分の1の範囲内にある。
【0082】
図9は、本主題の一実施形態による、故障分類のための故障の相選択のための方法900を示す。相選択は、上述したように進行波の原理に基づいて実行することができる。ブロック902で、アルファ、ベータ、およびゼロモード信号は、端子で得られた電圧または電流の測定値に対してA相に関するモード変換を実行した後に生成され得る。同様に、ブロック904で、アルファ、ベータ、およびゼロモード信号は、端子で取得された電圧または電流の測定値に対してB相に関するモード変換を実行した後に生成されることができ、ブロック906で、アルファ、ベータ、およびゼロモード信号は、端子で取得された電圧または電流の測定値に対してC相に関するモード変換を実行した後に生成されることができる。一例では、A相、B相、およびC相に関して実行されるモード変換は、クラーク変換であり得る。
【0083】
ブロック908で、各相のゼロモード信号をゼロモード閾値と比較することができる。ゼロモード閾値とゼロモード信号の大きさとの比較を使用して、故障が地絡か否かを判定することができる。一例では、ゼロモード閾値は0.01であり得る。ブロック908は、表現を容易にするためにA相に関するゼロモード基準信号が比較のために使用されることを示しているが、B相およびC相のゼロモード信号に対して同じ比較を行うことができることが理解されよう。
【0084】
ゼロモード信号の大きさがゼロモード閾値よりも大きい場合、故障は、満たされる1つまたは複数の条件に基づいて、相地絡故障、相間地絡故障、または3相地絡故障として分類することができる。
【0085】
ブロック910で、A相に関するベータ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するベータ進行波信号の大きさの最小値であり、A相に関するベータ進行波信号の大きさがベータモード閾値未満である場合、故障は、A相地絡故障として分類することができる。したがって、単相トリップ信号を生成してA相をトリップすることができる。
【0086】
ブロック912で、B相に関するベータ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するベータ進行波信号の大きさの最小値であり、B相に関するベータ進行波信号の大きさがベータモード閾値未満である場合、故障は、B相地絡故障として分類することができる。したがって、単相トリップ信号を生成してB相をトリップすることができる。
【0087】
同様に、ブロック914で、C相に関するベータ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するベータ進行波信号の大きさの最小値であり、C相に関するベータ進行波信号の大きさがベータモード閾値未満である場合、故障は、C相地絡故障として分類することができる。したがって、単相トリップ信号を生成してC相をトリップすることができる。
【0088】
ブロック916で、C相に関するアルファ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するアルファ進行波信号の大きさの最小値である場合、故障は、A相、B相、および大地の間の相間地絡故障または3相地絡(ABC-g)故障として分類することができる。したがって、3相トリップ信号を生成することができる。
【0089】
ブロック918で、A相に関するアルファ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するアルファ進行波信号の大きさの最小値である場合、故障は、B相、C相、および大地の間の相間地絡故障または3相地絡(ABC-g)故障として分類することができる。したがって、3相トリップ信号を生成することができる。
【0090】
ブロック920で、B相に関するアルファ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するアルファ進行波信号の大きさの最小値である場合、故障は、C相、A相、および大地の間の相間地絡故障または3相地絡(ABC-g)故障として分類することができる。したがって、3相トリップ信号を生成することができる。
【0091】
一例では、ブロック916、918および920で生成された故障分類は、3相トリップ信号を生成するためにORゲート950に送信され得る。安全性を確保し、損傷を低減するために、2相以上の間で故障が発生した場合、3相トリップ信号が生成され得る。
【0092】
ブロック908に戻って、故障が非地絡である場合、すなわち、ゼロモード進行信号のいずれかの大きさがゼロモード閾値以下である場合、方法900はブロック922に進む。ブロック922で、C相に関するアルファ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するアルファ進行波信号の大きさの最小値であり、C相に関するアルファ進行波信号の大きさがアルファモード閾値未満である場合、故障は、A相とB相との間の相間故障として分類することができる。
【0093】
ブロック924で、A相に関するアルファ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するアルファ進行波信号の大きさの最小値であり、A相に関するアルファ進行波信号の大きさがアルファモード閾値未満である場合、故障は、B相とC相との間の相間故障として分類することができる。
【0094】
同様に、ブロック926で、B相に関するアルファ進行波信号の大きさが、A相、B相、およびC相の3相に関するアルファ進行波信号の大きさの最小値であり、B相に関するアルファ進行波信号の大きさがアルファモード閾値未満である場合、故障は、C相とA相との間の相間故障として分類することができる。
【0095】
ブロック922、924および926のいずれか1つにおける条件が満たされない場合、故障は3相(ABC故障)として分類することができる。いずれの場合も、すなわち故障が2相故障であるか3相故障であるかにかかわらず、3相トリップ信号が生成され得る。一例では、ブロック922、924および926から生成されたすべての故障分類はORゲート952に送信されることができ、それに基づいて最終3相トリップ信号が生成され得る。安全性を確保し、損傷を低減するために、2相以上の間で故障が発生した場合、3相トリップ信号が生成され得る。
【0096】
図10は、本主題の一実施形態による、検出された故障が存在するゾーンを識別するための方法1000を示す。故障を分類することに関して上述したように、故障が発生した可能性があるセグメントを判定することができる。一例では、故障分類は、図8(a)および図9に関して上述した方法を使用して実行することができる。他の例では、当技術分野で知られている任意の故障分類方法を実行することができる。
【0097】
一例では、伝送線路は、図6に関して説明したように、セグメント-1、セグメント-2、およびセグメント-3の3つのセグメントに分割されてもよい。故障を分類する際に、ハイブリッド時間領域ベースの進行波手法を使用して、故障セグメントを見つけ、トリップ信号を生成することができる。ローカル端子に非常に近い故障の場合、時間領域手法が、高速で信頼性が高いので実装されることができ、一方、伝送線路の3分の1から3分の2にあるセグメントに対して、進行波ベースの手法が非常に高速かつ正確に使用され得る。時間領域手法と進行波手法の両方に基づく計算が同時に実行され、計算に基づいて、故障セグメントを識別することができる。
【0098】
ブロック1002で、到達範囲(故障が存在するセグメント)を伝送線路の実際の線路長の3分の1に設定することができる時間領域ベースの手法を実施することができる。時間領域手法を実施するために、時間に関する増分端子電流の変化率が監視される。増分端子電流の閾値変化率は、故障がセグメント-1境界にあると仮定することによって計算される。さらに、増分端子電流の実際の変化率は、端子から取得された電流測定値に基づいて計算される。増分端子電流の実際の変化率が増分端子電流の閾値変化率よりも大きい場合、故障はセグメント-1内にあると識別されることができ、トリップ信号生成のためにゾーン識別が提供され得る。代替的に、増分端子電流の実際の変化率が増分端子電流の閾値変化率よりも小さい場合、故障はセグメント-1を超えていると識別されることができ、ブロック1002からゾーン識別が提供されなくてもよい。
【0099】
ブロック1004で、端子Mにおける第1、第2、および第3の進行波の到着時刻が記録される進行ベースの手法が実施され得る。到着時刻および伝播速度などのパラメータに基づいて、上記の式(4)に示すように線路長を計算することができる。
【0100】
ブロック1006で、計算された線路長が実際の既知の線路長と比較され、差が閾値の線路長より小さい場合、故障が伝送線路のセグメント-2にあると識別され、故障ゾーン識別がブロック1006から提供される。しかしながら、差が閾値線路長以上である場合、ブロック1006から故障ゾーン識別は提供されない。一例では、閾値は、サンプリング周波数に応じて設定されてもよい。サンプリングレートが1MHzの場合、閾値は300mに設定されてもよい。
【0101】
ブロック1002および1006からの故障ゾーン識別は、最終トリップ信号を生成するためにORゲート1010(組合せ論理ゲート)に送信されてもよい。ORゲート1010がブロック1002またはブロック1006のいずれかからトリップ信号を受信すると、それはブロック1008に信号を送信し、それに応じてトリップ信号が生成され得る。
【0102】
故障が単相地絡(A-g)故障であると識別されることを考慮して、上記のセグメント識別方法を以下の例で示すことができる。故障をA相地絡故障として分類した後、時間領域手法ならびに進行波手法を使用するゾーン識別が実行される。時間領域手法が進行波手法の前にゾーン識別信号を発行する場合、故障は終端セグメント(線路長の最初の3分の1)に位置すると識別されることができ、進行波手法が時間領域手法の前にトリップ信号を発行する場合、故障は、電流または電圧の測定値が取得された端子から伝送線路の中央セグメント(線路セグメントの中央の3分の1)に位置すると識別されることができる。
【0103】
したがって、本主題は、進行波原理に基づく高速で信頼性の高い故障分類技術を提供し、ハイブリッド時間領域および進行波手法に基づいて故障が位置し得るセグメントを識別する。
【0104】

故障分類およびハイブリッド方法の性能を決定するために、従来の電源およびインバータベースのリソースを用いて、異なるタイプの故障、異なる値の故障抵抗、電源対線路インピーダンス比、故障位置の異なる故障シナリオをシミュレートおよび試験した。
【0105】
第1のシナリオでは、長さ200キロメートルの400kV、50Hz伝送線路のための従来の発電機を有する伝送線路システムについてシステムを試験した。
【0106】
第1の例では、5オームの故障抵抗および0.1秒の故障開始時間を有する線路の10%における単相地絡A-g故障を検討した。時間領域手法およびハイブリッド手法を試験した。
【0107】
図11は、第1のシナリオの第1の例において、時間領域手法による故障ゾーン識別のための増分電流の閾値および実際の変化率のプロットを示す。プロットの線1102は電流の実際の変化率を表し、プロットの線1104は電流の閾値変化率を表す。時間領域ベースの手法を使用する相選択は、A相地絡故障として故障タイプを識別するのに約3.17msかかることが観察された。さらに、時間領域ベースのゾーン識別は、故障がゾーン-1内にあることを識別するのに1.87msかかることが観察された。
【0108】
図12(a)および12(b)は、本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第1の例において、バスMで記録されたベータおよびゼロモード進行波信号の第1のピークを示す。図12(a)は、ベータモードにおけるA-g故障の進行波信号を示す。線1202は、C相に関するベータモード信号を示し、線1204は、A相に関するベータモード信号を示す。ここで、A相の線1204は最小であり、6.09e-9の無視できる大きさを有することが観察され得る。図12(b)は、線1206で表されるゼロモード信号の進行波信号を示す。線1206は、ゼロモード信号が有意な大きさを有することを示しているので、故障は地絡であり、故障はA相地絡A-g故障として分類されると結論付けられる。進行波ベースの手法を使用する相選択を使用した場合、相選択が故障タイプをA相地絡として識別するのにかかる時間は34μsであることが観察された。
【0109】
図13は、本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第1の例において、最初の3つのピークおよびそれらの到達時刻を示すバスMで記録された進行波信号を示す。0.1sでの故障開始の場合、端子Mで記録された最初の3つのピークおよび進行波信号を使用して、上述したように式(4)に基づいて線路長を計算した。式(4)を用いると、計算された線路長は、実際の線路長200kmとは大きく異なる59.99kmであると決定された。したがって、進行波ベースの手法に基づいてトリップ信号は生成されなかった。むしろ、時間領域手法は、(進行波手法による相選択後の)ゾーン識別およびハイブリッド手法によるトリップ信号の生成に使用される。表3は、従来の時間ベースの手法およびハイブリッド手法の動作時間の比較研究を提供する。
【0110】
【表3】
【0111】
表3から、伝送線路のセグメント-1(0から1/3)における故障の場合、時間領域ベースの手法だけで最終トリップ信号を生成するのに3.17msかかることが観察され得る。この時間は、相選択およびゾーン識別が並行して行われるので、相選択モジュールの動作時間から生じる。一方、ハイブリッド手法では、進行波ベースの相選択は34μs以内に相選択信号を与え、ゾーン識別手法の時間領域部分は1.87ms以内にトリップ信号を生成する(進行波手法はゾーンを正確に識別しないので、ゾーン識別は時間領域手法によって行われる)。したがって、最終トリップ時間は、ハイブリッド法では1.87msである。したがって、ハイブリッド解決策は、時間領域手法と比較してより高速な動作を実現する。
【0112】
第2の例では、50オームの故障抵抗および0.095秒の故障開始時間を有する線路の66%における相間BC故障を検討した。従来の時間領域ベースの手法と、時間領域ベースの手法と進行波ベースの手法との組合せによるハイブリッド方法とを試験した。
【0113】
図14は、第1のシナリオの第2の例において、故障ゾーン識別のための増分電流の閾値および実際の変化率のプロットを示す。プロットの線1402は電流の実際の変化率を表し、プロットの線1404は電流の閾値変化率を表す。プロットから分かるように、電流線1402の実際の変化率は電流線1404の閾値変化率と交差せず、したがってトリップ信号は生成されない。時間領域ベースの手法を使用する相選択は、B相-C相故障として故障タイプを識別するのに約4.58msかかることが観察された。さらに、時間領域ベースのゾーン識別はトリップ信号を生成しないことが観察された。
【0114】
図15(a)および図15(b)は、本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第2の例において、バスMで記録されたアルファおよびゼロモード進行波信号の第1のピークを示す。図15(a)は、アルファモードにおけるBC故障の進行波信号を示す。線1502は、C相に関するアルファモード信号を示し、線1504は、A相に関するアルファモード信号を示す。ここで、線1504は最小であり、11.9e-10の無視できる大きさを有することが観察され得る。図15(b)は、1e-13程度の無視できる大きさを有する線1506で表されるゼロモード信号の進行波信号を示す。線1506は、ゼロモード信号が無視できる大きさを有することを示しているので、故障は非地絡であり、故障はB相-C相故障として分類されると結論付けられる。この場合に、進行波ベースの手法を使用する相選択を使用した場合、相選択が故障タイプをB相-C相故障として識別するのにかかる時間は36μsであることが観察された。
【0115】
図16は、本主題の一実施形態による、第1のシナリオの第2の例において、最初の3つのピークおよびそれらの到達時刻を示すバスMで記録された進行波信号を示す。0.095sでの故障開始の場合、端子Mで記録された最初の3つのピークおよび進行波信号を使用して、上述したように式(4)に基づいて線路長を計算した。式(4)を用いると、計算された線路長は、実際の線路長200kmに非常に近い199.98kmであると決定された。したがって、約0.14msで(ハイブリッド法の)進行波ベースの手法に基づいてトリップ信号が生成された。表4は、従来の時間ベースの手法およびハイブリッド手法の動作時間の比較研究を提供する。
【0116】
【表4】
【0117】
表4から、伝送線路のセグメント-2(1/3から2/3)における故障の場合、時間領域アルゴリズムだけではでトリップ信号を生成できないことが観察され得る。しかしながら、ハイブリッド手法では、進行波ベースの相選択は34μs以内に相選択信号を与え、進行波ベースのゾーン識別手法は0.14ms以内にトリップ信号を生成する。したがって、最終トリップ時間は、ハイブリッド法では0.14msである。この例は、時間領域手法が失敗した場合でも、解決策が高速でトリップ信号を生成することを実証する。したがって、ハイブリッド解決策は、時間領域手法と比較して、ラインの3分の1から3分の2において高い故障抵抗および故障位置による確実性を高める。
【0118】
第2のシナリオでは、電源対線路インピーダンス比が30:5である220kV、50キロメートルの単一回路伝送線路について、弱いインバータベースの電源を有する伝送線路システムについてシステムを試験した。
【0119】
第1の例では、5オームの故障抵抗および0.3秒の故障開始時間を有する線路の32%における単相地絡A-g故障を検討した。時間領域手法およびハイブリッド手法を試験した。
【0120】
図17は、第2のシナリオの第1の例において、故障ゾーン識別のための増分電流の閾値および実際の変化率のプロットを示す。プロットの線1702は電流の実際の変化率を表し、プロットの線1704は電流の閾値変化率を表す。プロットから分かるように、電流線1702の実際の変化率は電流線1704の閾値変化率と交差せず、したがってトリップ信号は生成されない。時間領域ベースの手法を使用する相選択は、電流信号に基づいて正確な故障ループを識別することができないことが観察された。さらに、時間領域ベースのゾーン識別は、故障がゾーン-1内にあることを識別してトリップ信号を生成するために17.5msかかることが観察された。
【0121】
図18(a)および図18(b)は、本主題の一実施形態による、第2のシナリオの第1の例において、バスMで記録されたベータおよびゼロモード進行波信号の第1のピークを示す。図18(a)は、ベータモードにおけるA-g故障の進行波信号を示す。線1802は、C相に関するベータモード信号を示し、線1804は、A相に関するベータモード信号を示す。ここで、A相の線1804は最小であり、8.12e-9の無視できる大きさを有することが観察され得る。図18(b)は、線1806で表されるゼロモード信号の進行波信号を示す。線1806は、ゼロモード信号が有意な大きさを有することを示しているので、故障は地絡であり、故障はA相地絡A-g故障として分類されると結論付けられる。この場合、進行波ベースの手法を使用する相選択を使用した場合、相選択が故障タイプをA相地絡として識別するのにかかる時間は34μsであることが観察された。
【0122】
さらに、0.1sでの故障開始の場合、端子Mで記録された最初の3つのピークおよび進行波信号を使用して、上述したように式(4)に基づいて線路長を計算した。式(4)を用いると、計算された線路長は、実際の線路長50kmとは大きく異なる39.99kmであると決定された。したがって、進行波ベースの手法に基づいてトリップ信号は生成されなかった。むしろ、時間領域手法は、(進行波手法による相選択後の)ゾーン識別およびハイブリッド手法によるトリップ信号の生成に使用される。表5は、従来の時間ベースの手法およびハイブリッド手法の動作時間の比較研究を提供する。
【0123】
【表5】
【0124】
表5から、伝送線路のセグメント-1(0から1/3)における故障の場合、故障ループが正確に識別されないため、時間領域ベースの手法はトリップ信号を生成することに失敗することが観察され得る。しかし、ハイブリッド手法では、進行波ベースの相選択は34μs以内に相選択を与え、ゾーン識別手法の時間領域部分は7.8ms以内にトリップ信号を生成する(進行波手法はゾーンを正確に識別しないので、ゾーン識別は時間領域手法によって行われる)。したがって、最終トリップ時間は、ハイブリッド法では7.8msである。したがって、時間領域アルゴリズムのみを使用すると、弱い電源/再生可能エネルギーを有するシステムの確実性が低下する可能性がある。ハイブリッド保護解決策は、特にインバータベースの電源を有するシステムの確実性を高めることが証明されている。
【0125】
第2の例では、50オームの故障抵抗および0.29秒の故障開始時間を有する線路の66%における相間地絡CA-g故障を検討した。時間領域ベースの手法と、時間領域ベースの手法と進行波ベースの手法との組合せによるハイブリッド方法とを試験した。
【0126】
図19は、第2のシナリオの第2の例において、故障ゾーン識別のための増分電流の閾値および実際の変化率のプロットを示す。プロットの線1902は電流の実際の変化率を表し、プロットの線1904は電流の閾値変化率を表す。プロットから分かるように、電流線1902の実際の変化率は電流線1904の閾値変化率と交差せず、したがってトリップ信号は生成されない。時間領域ベースの手法を使用する相選択は、C相-A相地絡故障として故障タイプを識別するのに約13.7msかかることが観察された。さらに、時間領域ベースのゾーン識別はトリップ信号を生成しないことが観察された。
【0127】
図20(a)および図20(b)は、本主題の一実施形態による、第2のシナリオの第2の例において、バスMで記録されたアルファおよびゼロモード進行波信号の第1のピークを示す。図20(a)は、アルファモードにおけるCA-g故障の進行波信号を示す。線2002は、A相に関するアルファモード信号を示し、線2004は、C相に関するアルファモード信号を示し、線2006は、B相に関するアルファモード信号を示す。ここで、線2006は線2002および線2004と比較して最小であることが観察され得る。図20(b)は、線2008で表されるゼロモード信号の進行波信号を示す。線2008は、ゼロモード信号が有意な大きさを有することを示しているので、故障は地絡であり、故障はC相-A相地絡CA-g故障として分類されると結論付けられる。この場合に、進行波ベースの手法を使用する相選択を使用した場合、相選択が故障タイプをC相-A相地絡故障として識別するのにかかる時間は36μsであることが観察された。
【0128】
図21は、本主題の一実施形態による、第2のシナリオの第2の例において、最初の3つのピークおよびそれらの到達時刻を示すバスMで記録された進行波信号を示す。0.29sでの故障開始の場合、端子Mで記録された最初の3つのピークおよび進行波信号を使用して、上述したように式(4)に基づいて線路長を計算した。式(4)を用いると、計算された線路長は、実際の線路長50kmに非常に近い59.99kmであると決定された。したがって、約0.27msで(ハイブリッド法の)進行波ベースの手法に基づいてトリップ信号が生成された。表6は、従来の時間ベースの手法およびハイブリッド手法の動作時間の比較研究を提供する。
【0129】
【表6】
【0130】
表6から、伝送線路のセグメント-2(1/3から2/3)における故障の場合、時間領域アルゴリズムだけではでトリップ信号を生成できないことが観察され得る。しかしながら、ハイブリッド手法では、進行波ベースの相選択は36μs以内に相選択信号を与え、進行波ベースのゾーン識別手法は0.27ms以内にトリップ信号を生成する。したがって、最終トリップ時間は、ハイブリッド法では0.27msである。ハイブリッド手法は、時間領域手法が失敗した場合でも、速度の高いトリップ信号を生成する。したがって、ハイブリッド解決策は、特にゾーン境界に非常に近い故障の確実性を高める。また、ハイブリッド保護解決策は、特にインバータベースの電源を有するシステムの確実性を高めることが証明されている。
【0131】
システムおよび方法は、通常の単一回路伝送線路、二重回路線路、直列補償線路および弱い電源を有する線路を含む異なるシステムについて試験された。これらの各システムの結果概要を以下に示す。
【0132】
図22(a)および図22(b)は、本主題の一実施形態による、一例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、弱いインバータベースのリソースを有するシステムの動作時間を示す。15:2の電源対インピーダンス比を有する100km伝送線路のためのインバータベースのリソースを有するシステムを検討した。図22(a)および図22(b)は、従来の時間領域手法およびハイブリッド手法で得られた動作時間のプロットを示す。図22(a)では、ミリ秒単位で測定された最大トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2202は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2204は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図22(b)では、ミリ秒単位で測定された平均トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2206は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2208は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図22(a)および図22(b)から、位置(%)がx軸に沿って増大するにつれて、システムが従来の手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間も増加するが、システムがハイブリッド手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間は比較的非常に短く、それによってシステムの信頼性が増大することが観察され得る。
【0133】
従来法およびハイブリッド法の両方から得られた動作時間に基づいて、2つの方法を使用するシステムの確実性を表7に示す。
【0134】
【表7】
【0135】
故障位置が伝送線路長の3分の1を超えて増大すると、従来の手法は100%の正確な結果をもたらさないが、ハイブリッド手法は100%の信頼できる結果をもたらすことが観察される。
【0136】
図23(a)および図23(b)は、本主題の一実施形態による、他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、弱いインバータベースのリソースを有するシステムの動作時間を示す。30:5の電源対インピーダンス比を有する50km伝送線路のためのインバータベースのリソースを有するシステムを検討した。図23(a)および図23(b)は、従来の時間領域手法およびハイブリッド手法で得られた動作時間のプロットを示す。図23(a)では、ミリ秒単位で測定された平均トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2302は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2304は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図23(b)では、ミリ秒単位で測定された最大トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2306は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2308は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図23(a)および図23(b)から、位置(%)がx軸に沿って増大するにつれて、システムが従来の手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間も増加するが、システムがハイブリッド手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間は比較的非常に短く、それによって解決策の信頼性が増大することが観察され得る。
【0137】
従来法およびハイブリッド法の両方から得られた動作時間に基づいて、2つの方法を使用するシステムの確実性を表8に示す。
【0138】
【表8】
【0139】
故障位置が伝送線路長の3分の1を超えて増大すると、従来の手法は100%の正確な結果をもたらさないが、ハイブリッド手法は100%の信頼できる結果をもたらすことが観察される。
【0140】
図24(a)および図24(b)は、本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、通常の伝送線路の動作時間を示す。200kmの単一回路伝送線路を検討した。図24(a)および図24(b)は、従来の時間領域手法およびハイブリッド手法で得られた動作時間のプロットを示す。図24(a)では、ミリ秒単位で測定された平均トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2402は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2404は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図24(b)では、ミリ秒単位で測定された最大トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2406は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2408は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図24(a)および図24(b)から、位置(%)がx軸に沿って増大するにつれて、システムが従来の手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間も増加するが、システムがハイブリッド手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間は比較的非常に短く、それによってシステムの信頼性が増大することが観察され得る。
【0141】
従来法およびハイブリッド法の両方から得られた動作時間に基づいて、2つの方法を使用するシステムの確実性を表9に示す。
【0142】
【表9】
【0143】
故障位置が伝送線路長の3分の1を超えて増大すると、従来の手法は100%の正確な結果をもたらさないが、ハイブリッド手法は100%の信頼できる結果をもたらすことが観察される。
【0144】
図25(a)および図25(b)は、本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、二重回路伝送線路の動作時間を示す。200kmの二重回路伝送線路を検討した。図25(a)および図25(b)は、従来の時間領域手法およびハイブリッド手法で得られた動作時間のプロットを示す。図25(a)では、ミリ秒単位で測定された最大トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2502は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2504は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図25(b)では、ミリ秒単位で測定された平均トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2506は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2508は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図25(a)および図25(b)から、位置(%)がx軸に沿って増大するにつれて、システムが従来の手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間も増加するが、システムがハイブリッド手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間は比較的非常に短く、それによってシステムの信頼性が増大することが観察され得る。
【0145】
従来法およびハイブリッド法の両方から得られた動作時間に基づいて、2つの方法を使用するシステムの確実性を表10に示す。
【0146】
【表10】
【0147】
故障位置が伝送線路長の3分の1を超えて増大すると、従来の手法は100%の正確な結果をもたらさないが、ハイブリッド手法は100%の信頼できる結果をもたらすことが観察される。
【0148】
図26(a)および図26(b)は、本主題の一実施形態による、さらに他の例において、従来の手法およびハイブリッド手法によるシステムの信頼性を決定するための、直列補償線路の動作時間を示す。200kmの直列補償線路を検討した。図26(a)および図26(b)は、従来の時間領域手法およびハイブリッド手法で得られた動作時間のプロットを示す。図26(a)では、ミリ秒単位で測定された平均トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2602は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2604は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図26(b)では、ミリ秒単位で測定された最大トリップ時間に対して故障の位置がプロットされている。線2606は、従来の時間領域ベースの手法について得られた動作時間プロットを表し、線2608は、ハイブリッド手法について得られた動作時間プロットを表す。図26(a)および図26(b)から、位置(%)がx軸に沿って増大するにつれて、システムが従来の手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間も増加するが、システムがハイブリッド手法に基づいてトリップ信号を生成するのにかかる時間は比較的非常に短く、それによってシステムの信頼性が増大することが観察され得る。
【0149】
従来法およびハイブリッド法の両方から得られた動作時間に基づいて、2つの方法を使用するシステムの確実性を表11に示す。
【0150】
【表11】
【0151】
故障位置が伝送線路長の3分の1を超えて増大すると、従来の手法は100%の正確な結果をもたらさないが、ハイブリッド手法は100%の信頼できる結果をもたらすことが観察される。
【0152】
したがって、本主題は、故障を分類し、故障が位置する伝送線路のゾーンを識別する正確な方法を提供する。この方法は、故障タイプ、位置および故障抵抗に対してロバストである。したがって、インバータベースのリソースまたは従来の電源の場合、本主題は、速度および安全性を向上させながら、高い信頼性を提供する。
【0153】
本主題を特定の実施形態を参照して説明してきたが、この説明は限定的な意味で解釈されることを意味しない。開示された実施形態の様々な変更、ならびに主題の代替の実施形態は、主題の説明を参照すると当業者には明らかになるであろう。
図1(a)】
図1(b)】
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4(a)】
図4(b)】
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図6
図7
図8(a)】
図8(b)】
図9
図10
図11
図12(a)】
図12(b)】
図13
図14
図15(a)】
図15(b)】
図16
図17
図18(a)】
図18(b)】
図19
図20(a)】
図20(b)】
図21
図22(a)】
図22(b)】
図23(a)】
図23(b)】
図24(a)】
図24(b)】
図25(a)】
図25(b)】
図26(a)】
図26(b)】