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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-24
(45)【発行日】2025-01-08
(54)【発明の名称】無線通信装置及び無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20241225BHJP
   B61L 3/12 20060101ALI20241225BHJP
   B61L 23/00 20060101ALI20241225BHJP
   H04W 4/021 20180101ALI20241225BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20241225BHJP
【FI】
H04B7/06 952
B61L3/12 Z
B61L23/00 Z
H04W4/021
H04W16/28
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024103890
(22)【出願日】2024-06-27
【審査請求日】2024-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 遼平
(72)【発明者】
【氏名】須藤 勇気
【審査官】原田 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-196259(JP,A)
【文献】特開平09-175395(JP,A)
【文献】特開2013-012976(JP,A)
【文献】特開2003-104203(JP,A)
【文献】国際公開第2015/177871(WO,A1)
【文献】特開2003-016583(JP,A)
【文献】特開2006-216006(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
B61L 3/12
B61L 23/00
H04W 4/021
H04W 16/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサービスに対応した無線通信装置であって、
ビームフォーミング機能を有するフェーズドアレイアンテナと、
前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御するとともに、前記複数のサービスのうち、前記制御によって探索された前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向に応じたサービスを提供する制御を行う制御部と、
を備える無線通信装置。
【請求項2】
前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を示す第1情報と、提供するサービスに関する第2情報とが対応付けられたビームテーブルを備えており、
前記制御部は、前記ビームテーブルを用いて前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御し、制御したビーム方向を示す前記第1情報に対応付けられた前記第2情報に基づいて、制御したビーム方向に応じたサービスを提供する制御を行う、
請求項1記載の無線通信装置。
【請求項3】
提供するサービスに応じたデータの入力及び出力の少なくとも一方が行われる複数のポートを備えており、
前記第2情報は、前記ポートを識別する識別情報であり、
前記制御部は、制御したビーム方向を示す前記第1情報に対応付けられた前記識別情報で識別される前記ポートで入出力されるデータが、制御したビームの方向に送受信されるように制御する、
請求項2記載の無線通信装置。
【請求項4】
前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向は、前記フェーズドアレイアンテナの放射パターンのメインローブが現れる方向である、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、無線通信を行う相手機器の受信電力が最大となるように、前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御する、請求項1記載の無線通信装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の無線通信装置と、
前記無線通信装置と無線通信を行う複数の無線機器と、
を備える無線通信システム。
【請求項7】
前記無線通信装置は、ホームに設置されており、
前記無線機器は、前記ホームに入線する車両編成に設置されている、
請求項6記載の無線通信システム。
【請求項8】
前記無線通信装置の前記制御部は、前記ホームの異なる番線に入線する前記車両編成に設置された前記無線機器と無線通信できるように前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御する、請求項7記載の無線通信システム。
【請求項9】
前記無線通信装置は、前記ホームに入線する車両編成に対し、前記車両編成が入線する前記ホームの番線に応じた前記ホームの画像を送信するサービスを提供し、
前記無線機器は、前記無線通信装置から送信されて来る前記画像を受信して前記車両編成に設置された表示装置に出力して表示させる、
請求項7記載の無線通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置及び無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両編成の運転士にホームの画像を提示することによって、車両編成の運転を支援する技術が知られている。この技術では、ホームに設置されたカメラによって撮影された画像を車両編成に送信し、送信されてきた画像を受信して車両編成の運転席に設置された液晶表示装置に出力して表示させる無線通信システムが用いられる。このよう無線通信システムの詳細は、例えば、以下の特許文献1,2を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2023-40544号公報
【文献】特開2009-255782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ダイヤの乱れ又はメンテナンスによって、番線と入線する車両編成の関係は変更を余儀なくされることが多々ある。このため、上述した無線通信システムでは、通信のための識別設定(例えば、無線通信時の中心周波数及びSSID(Service Set Identifier))が全ての車両編成で共通の設定とすることが好まれる。従って、従来の無線通信システムでは、ホームの番線に入線する車両編成に対して適切な画像を提供するためには、ホームの番線に入線する車両編成を検知する検知システムが別途必要になり、導入コストが高くなるという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、導入コストを抑えつつ、通信相手に応じた適切なサービスを提供することができる無線通信装置及び無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様による無線通信装置(10)は、ビームフォーミング機能を有するフェーズドアレイアンテナ(11)と、前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御するとともに、前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向に応じたサービスを提供する制御を行う制御部(12)と、を備える。
【0007】
本発明の第1の態様による無線通信装置は、ビームフォーミング機能を有するフェーズドアレイアンテナと制御部とを備えている。そして、制御部が、通信相手である無線機器の位置に応じて、フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御し、フェーズドアレイアンテナのビームの方向に応じたサービスを提供する制御を行っている。これにより、導入コストを抑えつつ、通信相手に応じた適切なサービスを提供することができる。
【0008】
また、本発明の第2の態様による無線通信装置は、本発明の第1の態様による無線通信装置において、前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を示す第1情報と、提供するサービスに関する第2情報とが対応付けられたビームテーブル(BT)を備えており、前記制御部が、前記ビームテーブルを用いて前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御し、制御したビーム方向を示す前記第1情報に対応付けられた前記第2情報に基づいて、制御したビーム方向に応じたサービスを提供する制御を行う。
【0009】
また、本発明の第3の態様による無線通信装置は、本発明の第2の態様による無線通信装置において、提供するサービスに応じたデータの入力及び出力の少なくとも一方が行われる複数のポート(P1、P2)を備えており、前記第2情報が、前記ポートを識別する識別情報であり、前記制御部は、制御したビーム方向を示す前記第1情報に対応付けられた前記識別情報で識別される前記ポートで入出力されるデータが、制御したビームの方向に送受信されるように制御する。
【0010】
また、本発明の第4の態様による無線通信装置は、本発明の第1から第3の何れかの態様による無線通信装置において、前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向が、前記フェーズドアレイアンテナの放射パターンのメインローブが現れる方向である。
【0011】
また、本発明の第5の態様による無線通信装置は、本発明の第1から第4の何れかの態様による無線通信装置において、前記制御部が、無線通信を行う相手機器の受信電力が最大となるように、前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御する。
【0012】
本発明の第1の態様による無線通信システム(1~3)は、本発明の第1から第5の何れかの態様による無線通信装置と、前記無線通信装置と無線通信を行う複数の無線機器(20)と、を備える。
【0013】
また、本発明の第2の態様による無線通信システムは、本発明の第1の態様による無線通信システムにおいて、前記無線通信装置が、ホーム(HM)に設置されており、前記無線機器が、前記ホームに入線する車両編成(TR)に設置されている。
【0014】
また、本発明の第3の態様による無線通信システムは、本発明の第2の態様による無線通信システムにおいて、前記無線通信装置の前記制御部は、前記ホームの異なる番線に入線する前記車両編成に設置された前記無線機器と無線通信できるように前記フェーズドアレイアンテナのビームの方向を制御する。
【0015】
また、本発明の第4の態様による無線通信システムは、本発明の第2又は第3の態様による無線通信システムにおいて、前記無線通信装置が、前記ホームに入線する車両編成に対し、前記車両編成が入線する前記ホームの番線に応じた前記ホームの画像を送信するサービスを提供し、前記無線機器が、前記無線通信装置から送信されて来る前記画像を受信して前記車両編成に設置された表示装置(40)に出力して表示させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、導入コストを抑えつつ、通信相手に応じた適切なサービスを提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態による無線通信システムを示すブロック図である。
図2】本発明の第1実施形態で用いられるビームテーブルの一例を示す図である。
図3】本発明の第1実施形態による無線通信システムにおいて形成されるビームの一例を示す図である。
図4】本発明の第2実施形態による無線通信システムを示すブロック図である。
図5】本発明の第2実施形態による無線通信システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。
図6】本発明の第3実施形態による無線通信システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による無線通信装置及び無線通信システムについて詳細に説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による無線通信システムを示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態の無線通信システム1は、無線通信装置10と複数の無線機器20とを備え、無線通信装置10と複数の無線機器20との間でポイント・ツー・マルチポイント(Point To Multipoint)通信が可能なシステムである。このような無線通信システム1は、無線通信装置10と複数の無線機器20とが無線通信を行うことによって、無線機器20に応じたサービスの提供が可能である。
【0020】
無線通信システム1は、例えば、マイクロ波、準ミリ波、ミリ波等の高周波信号を用いて無線通信を行う。また、無線通信システム1は、例えば、無線通信規格IEEE802.11adに準拠した無線通信を行う。無線通信装置10は、接続を管理する基地局装置に相当するものであり、例えば、無線通信規格IEEE802.11で規定されるAP(Access Point)及びPCP(PBSS Control Point)に相当するものである。複数の無線機器20は、基地局装置に接続する無線端末に相当するものであり、例えば、無線通信規格IEEE802.11で規定されるSTA(STAtion)に相当するものである。尚、図1では、複数の無線機器20として2つの無線機器20a,20bを示しているが、無線機器20の数が2つに制限される訳ではない。無線機器20の数は、3つ以上であってもよい。
【0021】
無線通信装置10は、フェーズドアレイアンテナ11と制御部12とを備えており、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向に応じたサービスを提供する。無線通信装置10が提供するサービスは、例えば、無線機器20に適した音声、画像、文字、図形、その他の各種データの提供が挙げられる。尚、無線通信装置10が提供するサービスは上記の各種データの提供に制限される訳ではなく任意のサービスであってよい。
【0022】
フェーズドアレイアンテナ11は、複数のアンテナ素子(図示省略)を備えており、ビームパターン(アンテナ指向性)を自在に変化させることができるアンテナである。つまり、フェーズドアレイアンテナ11は、ビームフォーミング機能を有するアンテナである。フェーズドアレイアンテナ11では、複数のアンテナ素子に供給する信号(送信信号)又は複数のアンテナ素子から供給される信号(受信信号)の強度及び位相の少なくとも一方を調整することによって、ビームフォーミング機能が実現される。
【0023】
フェーズドアレイアンテナ11では、上記の強度及び位相を調整することによって、任意のビームパターンを形成することが可能である。本実施形態では、理解を容易にするために、フェーズドアレイアンテナ11のビームパターンとして、図1に示す2つのビームBMが形成されるとする。尚、形成されるビームBMの方向は、フェーズドアレイアンテナ11の放射パターンのメインローブが現れる方向である。2つのビームBMのうち、一方のビームBM1は無線機器20aを向くものであり、他方のビームBM2は無線機器20bを向くものである。
【0024】
尚、本実施形態では、図1に示す通り、無線通信装置10から図面右方向に放射されるビームBMの角度を0°としている。そして、この角度(0°)から右回り(時計回り)の角度を正とし、左回り(反時計回り)の角度を負としている。このため、無線機器20aに向くビームBM1は負の角度で表され、無線機器20bに向くビームBM2は正の角度で表される。
【0025】
制御部12は、フェーズドアレイアンテナ11のビームの方向を制御するとともに、フェーズドアレイアンテナ11のビームの方向に応じたサービスを提供する制御を行う。ここで、制御部12は、無線通信を行う無線機器20の受信電力が最大となるように、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を制御する。図1に示す例では、無線機器20aの受信電力が最大となるようにビームBM1の方向を制御し、無線機器20bの受信電力が最大となるようにビームBM2の方向を制御する。
【0026】
制御部12は、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を制御した後に、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向に応じたサービスを提供する制御を行う。具体的に、制御部12は、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を示す情報(第1情報)と、提供するサービスに関する情報(第2情報)とが対応付けられたビームテーブルBTを用いて制御を行う。
【0027】
図2は、本発明の第1実施形態で用いられるビームテーブルの一例を示す図である。図2に示す通り、ビームテーブルBTは、ビームセクター(第1情報)、ビームの方向(第1情報)、及びデータ(第2情報)が対応付けられたテーブルである。
【0028】
ビームセクターは、フェーズドアレイアンテナ11によって形成されるビームを特定する情報であり、例えば、0~63の範囲の整数(番号)が格納される。ビームの方向は、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を示す情報であり、例えば、-90°~+90°の範囲の任意の角度が格納される。尚、ビームセクターとビームの方向とは一対一で対応付けられているため、ビームセクターが特定されると、ビームの方向が特定されることになる。
【0029】
データは、提供するサービスに応じて用いられるデータを示す情報であり、例えば、サービスAで用いられるデータである旨を示すデータA、サービスBで用いられるデータである旨を示すデータB等が格納される。尚、サービスが提供されない場合には、「無」が格納される。
【0030】
図2に示す例では、ビームセクターが10の場合には、ビームの方向として-35°が格納されており、ビームセクターが25の場合には、ビームの方向として-10°が格納されている。ビームセクターが40の場合には、ビームの方向として10°が格納されており、ビームセクターが55の場合には、ビームの方向として35°が格納されている。尚、図2に示す例では、ビームセクターが10,25,40,55以外の場合には、ビームセクターとビームの方向との対応関係の図示を省略している。
【0031】
また、図2に示す例では、ビームセクターが10~25の場合(ビームの方向が-35°~-10°の場合)には、データとしてデータAが格納されている。ビームセクターが40~55の場合(ビームの方向が10°~35°の場合)には、データとしてデータBが格納されている。尚、図2に示す例では、ビームセクターが0~9の場合、26~39の場合、及び56~63の場合は何れもデータには「無」が格納される。
【0032】
制御部12は、図2に示すビームテーブルBTを用いてフェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を制御する。制御部12は、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を制御した後に、そのビームBMの方向を特定するビームセクターに対応付けられたデータに基づいて、制御したビームBMの方向に応じたサービスを提供する制御を行う。
【0033】
例えば、無線機器20aが、無線通信装置10に対して-10°の角度で規定される位置に配置されており、無線機器20bが、無線通信装置10に対して10°の角度で規定される位置に配置されているとする。制御部12は、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を、ビームセクターが25で特定される方向に制御した場合には、その方向に位置している無線機器20aに対して、データAを提供する制御を行う。また、制御部12は、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を、ビームセクターが40で特定される方向に制御した場合には、その方向に位置している無線機器20bに対して、データBを提供する制御を行う。
【0034】
無線機器20は、無線通信装置10との間で無線通信を行う機器である。無線機器20は、無線通信装置10との間で無線通信が可能であれば任意の機器であってよい。無線機器20は、アンテナと、無線通信装置10との間で行われる無線通信を制御する制御部とを備える。無線機器20が備えるアンテナは、指向性アンテナ、無指向性アンテナ等の任意のアンテナであってよい。また、無線機器20は、無線通信装置10と同様に、フェーズドアレイアンテナを備えていてもよい。
【0035】
無線機器20は、固定配置されてもよく、移動可能に配置されてもよい。無線機器20が固定配置されている場合には、無線通信装置10のフェーズドアレイアンテナ11で形成されるビームBMの方向は変わらない。これに対し、無線機器20が移動可能に配置されている場合には、無線通信装置10のフェーズドアレイアンテナ11で形成されるビームBMの方向は、無線機器20の位置に応じて変化する。
【0036】
ここで、無線機器20は、無線通信装置10に対する角度方向について、無線通信装置10に設けられたフェーズドアレイアンテナ11によって形成されるビームBMの半値幅の2倍以上離れていることが好ましい。例えば、無線通信装置10及び無線機器20aを通る直線と、無線通信装置10及び無線機器20bを通る直線とのなす角が、ビームBMの半値幅の2倍以上であることが望ましい。これは、意図しないデータ通信を抑制するためである。
【0037】
図3は、本発明の第1実施形態による無線通信システムにおいて形成されるビームの一例を示す図である。前述の通り、フェーズドアレイアンテナ11によって形成されるビームBMの方向は、フェーズドアレイアンテナ11の放射パターンのメインローブが現れる方向である。ビームBMの半値幅は、ビームBMの強度がメインローブの最大値から3dB低下する部分におけるビームBMの角度である。
【0038】
また、無線機器20が移動可能に配置されている場合には、無線通信装置10のフェーズドアレイアンテナ11で形成されるビームBMの可動範囲は、無線機器20の移動可能な範囲に応じて最小限に設定するのが好ましい。これは、意図しない反射によるマルチパスが原因で生ずる最適な送信ビームセクターの誤検知を防止するためである。
【0039】
図2に示す例では、ビームBMの可動範囲は、ビームセクターが10~25(ビームの方向が-35°~-10°)の範囲と、ビームセクターが40~55(ビームの方向が10°~35°)の範囲とに制限されている。尚、ビームBMの可動範囲は、ビームセクターで規制してもよく、他の方法で規制してもよい。例えば、フェーズドアレイアンテナ11に設けられた複数のアンテナ素子の各々に対応して設けられる移相器(図示省略)に設定する移相量を調整し、特定の方向にのみビームBMが形成されるようにすることで、ビームBMの可動範囲を規制してもよい。
【0040】
上記構成において、無線通信装置10の電源が投入されると、制御部12は、まず、図2に示すビームテーブルBTを参照してフェーズドアレイアンテナ11を制御し、ビームBMの方向を順次変化させる。そして、制御部12は、無線通信を行う無線機器20の受信電力が最大となるように、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を制御する。図2に示す例では、無線機器20aの受信電力が最大となるようにビームBM1の方向を制御し、無線機器20bの受信電力が最大となるようにビームBM2の方向を制御する。例えば、制御部12は、ビームBM1の方向をビームセクターが25で特定される方向(-10°)に制御し、ビームBM2の方向をビームセクターが40で特定される方向(10°)に制御する。
【0041】
次に、制御部12は、図2に示すビームテーブルBTを参照して、制御したビームBMの方向に応じたサービスを提供する制御を行う。例えば、制御部12は、ビームテーブルBTを参照して、ビームセクターが25で特定される方向(-10°)に対応するデータAを、その方向に位置する無線機器20aに対して提供する。また、制御部12は、ビームテーブルBTを参照して、ビームセクターが40で特定される方向(10°)に対応するデータBを、その方向に位置する無線機器20bに対して提供する。このようにして、フェーズドアレイアンテナ11のビームの方向に応じたサービスが提供される。
【0042】
以上の通り、本実施形態では、無線通信装置10が、ビームフォーミング機能を有するフェーズドアレイアンテナ11と、制御部12と、を備えている。そして、制御部12が、通信相手である無線機器20の位置に応じて、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向を制御し、フェーズドアレイアンテナ11のビームBMの方向に応じたサービスを提供する制御を行っている。これにより、導入コストを抑えつつ、通信相手に応じた適切なサービスを提供することができる。
【0043】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態による無線通信システムを示すブロック図である。本実施形態の無線通信システム2の基本構成は、第1実施形態の無線通信システム1と同様である。このため、図4においては、図1に示す構成と同様の構成については、同一の符号を付してある。本実施形態の無線通信システム2は、駅等のホームHMを監視する監視システムに適用したものである。
【0044】
図4に示す通り、本実施形態の無線通信システム2は、無線通信装置10及び複数の無線機器20に加えて、複数の画像伝送システム30及び複数のモニタ40(表示装置)を備える。無線通信装置10及び複数の画像伝送システム30は駅のホームHMに設置され、複数の無線機器20及びモニタ40は、複数の電車TR(車両編成)にそれぞれ設置される。
【0045】
画像伝送システム30は、カメラ群31及び画像合成装置32を備えており、カメラ群31によって撮影された画像を画像合成装置32で合成して無線通信装置10に伝送する。図4に示す例では、ホームHMの一方の番線(以下、「一番線」という)の画像を撮影する画像伝送システム30aと、ホームHMの他方の番線(以下、「二番線」という)の画像を撮影する画像伝送システム30bとが設けられている。尚、図4では、複数の画像伝送システム30として2つの画像伝送システム30a,30bを示しているが、画像伝送システム30の数が2つに制限される訳ではない。画像伝送システム30の数は、3つ以上であってもよい。
【0046】
画像伝送システム30aは、カメラ群31a及び画像合成装置32aを備える。カメラ群31aは、ケーブルCB1によって接続された複数のカメラを備える。カメラ群31aが備える複数のカメラは、ホームHMの一番線側においてホームHMに沿って(電車TRの入線方向に沿って)配置されている。つまり、カメラ群31aが備える複数のカメラは、ホームHMの一番線側の互いに異なる位置の画像を撮影するように配列されている。画像合成装置32aは、カメラ群31aが備える複数のカメラによって撮影され、ケーブルCB1によって伝送されてくる画像を合成する(エンコードする)。画像合成装置32aは、無線通信装置10のポートP1に接続されており、合成した画像を無線通信装置10に出力する。
【0047】
画像伝送システム30bは、カメラ群31b及び画像合成装置32bを備える。カメラ群31bは、ケーブルCB2によって接続された複数のカメラを備える。カメラ群31bが備える複数のカメラは、ホームHMの二番線側においてホームHMに沿って(電車TRの入線方向に沿って)配置されている。つまり、カメラ群31bが備える複数のカメラは、ホームHMの二番線側の互いに異なる位置の画像を撮影するように配列されている。画像合成装置32bは、カメラ群31bが備える複数のカメラによって撮影され、ケーブルCB2によって伝送されてくる画像を合成する(エンコードする)。画像合成装置32bは、無線通信装置10のポートP2に接続されており、合成した画像を無線通信装置10に出力する。
【0048】
無線通信装置10は、フェーズドアレイアンテナ11で形成されるビームBM1が、一番線に入線する電車TR1(或いは、一番線から発車する電車TR1)に設けられた無線機器20aに向くように制御する。そして、無線通信装置10は、ポートP1に入力される画像を、ビームBM1の方向に位置する無線機器20aに向けて送信するサービスを提供する。
【0049】
このように、本実施形態では、無線機器20aに向けて送信されるビームBM1に対して無線通信装置10のポートP1が対応付けられている。つまり、本実施形態では、図2に示すビームテーブルBTにおいて、データAがポートP1から入力されるデータである旨の情報が格納されている。例えば、図2に示すビームテーブルBTのデータAとして、ポートP1を識別する識別情報が格納されている。
【0050】
また、無線通信装置10は、フェーズドアレイアンテナ11で形成されるビームBM2が、二番線に入線する電車TR2(或いは、二番線から発車する電車TR2)に設けられた無線機器20bに向くように制御する。そして、無線通信装置10は、ポートP2に入力される画像を、ビームBM2の方向に位置する無線機器20bに向けて送信するサービスを提供する。
【0051】
このように、本実施形態では、無線機器20bに向けて送信されるビームBM2に対して無線通信装置10のポートP2が対応付けられている。つまり、本実施形態では、図2に示すビームテーブルBTにおいて、データBがポートP2から入力されるデータである旨の情報が格納されている。例えば、図2に示すビームテーブルBTのデータBとして、ポートP2を識別する識別情報が格納されている。
【0052】
モニタ40は、例えば、液晶表示装置等の表示装置を備えており、無線機器20で受信されて無線機器20から出力される画像をデコードして表示する。モニタ40は、例えば、電車TRの運転席に設置される。図4に示す例では、ホームHMの一番線に入線する電車TR1にモニタ40aが設置されており、ホームHMの二番線に入線する電車TR2にモニタ40bが設置されている。尚、図4では、複数のモニタ40として2つのモニタ40a,40bを示しているが、モニタ40の数が2つに制限される訳ではない。モニタ40は、例えば、ホームHMに入線予定のある全ての電車TRに設けられていてもよい。
【0053】
図5は、本発明の第2実施形態による無線通信システムの動作を説明するためのタイミングチャートである。尚、ここでは、説明を簡単にするために、電車TR1がホームHMの一番線に、電車TR2がホームHMの二番線に、同時に入線する場合の動作を例に挙げて説明する。
【0054】
無線通信装置10は、一定の時間間隔でビーコンをブロードキャストにより送信している(ステップS11)。電車TR1がホームHMの一番線に入線し、電車TR2がホームHMの二番線に入線すると、無線通信装置10から送信されたビーコンが、電車TR1に設けられた無線機器20a及び電車TR2に設けられた無線機器20bで受信される。無線機器20a及び無線機器20bは、ビーコンを受信すると、SSID等を確認した上で、無線通信装置10に対してアソシエーション要求を送信する(ステップS12)。
【0055】
無線通信装置10は、無線機器20a及び無線機器20bから送信されてきたアソシエーション要求を受信すると、無線機器20a及び無線機器20bの各々に対してACK(ACKnowledgement:肯定応答)を送信する(ステップS13)。これにより、無線通信装置10と無線機器20a及び無線機器20bとの間でアソシエーションが確立される。
【0056】
アソシエーションが確立されると、無線通信装置10と無線機器20a及び無線機器20bとの間で送信ビームセクターの探索が行われる(ステップS14)。例えば、無線機器20a及び無線機器20bにもフェーズドアレイアンテナが設けられている場合には、無線通信装置10並びに無線機器20a及び無線機器20bは、受信時には準オムニ(準無指向性)状態になって送信ビームセクターを探索する。
【0057】
送信ビームセクターの探索が終了すると、無線通信装置10と無線機器20a及び無線機器20bとの間で最適な送受信ビームセクターの探索が行われる(ステップS15)。具体的には、受信側をビームフォーミングモードにし、送受信で最適なビームセクター(ビーム方向)を探索する処理が行われる。
【0058】
尚、最適なビームセクターとは、無線機器20a,20b側で受信電力が最大となるビームセクターであり、無線通信装置10と無線機器20a,20bの送受信のビーム方向(メインローブが現れる方向)が正対している状態である。最適な送受信ビームセクターが探索されると、例えば、図4に示す通り、ビームBM1が、電車TR1に設けられた無線機器20aに向いており、ビームBM2が、電車TR2に設けられた無線機器20bに向いている状態になる。
【0059】
尚、無線機器20aの位置は電車TR1の移動に従って変化し、無線機器20bの位置は電車TR2の移動に従って変化する。このため、最適な送受信ビームセクターの探索は、少なくとも電車TR1,TR2が停止するまでは継続して行われる。
【0060】
最適な送受信ビームセクターが探索されると、無線通信装置10は、ビームテーブルBTを参照して、探索された最適なビームセクターに対応したデータを、データフレームにして無線機器20a,20bにそれぞれ送信する(ステップS16)。具体的に、無線通信装置10は、ビームBM1のビームセクターに対応する識別情報で識別されるポートP1に入力される画像(画像伝送システム30aから出力される画像)を、ビームBM1の方向に位置する無線機器20aに向けて送信する。また、無線通信装置10は、ビームBM2のビームセクターに対応する識別情報で識別されるポートP2に入力される画像(画像伝送システム30bから出力される画像)を、ビームBM2の方向に位置する無線機器20bに向けて送信する。
【0061】
無線機器20a,20bは、無線通信装置10から送信されてきたデータフレームを受信すると、ACKを送信する(ステップS17)。そして、無線機器20a,20bは、受信した画像データをモニタ40a,40bにそれぞれ出力する(ステップS18)。これにより、画像伝送システム30aのカメラ群31aで撮影された画像が、電車TR1に設けられたモニタ40aに表示され、画像伝送システム30bのカメラ群31bで撮影された画像が、電車TR2に設けられたモニタ40bに表示される。
【0062】
以上の通り、本実施形態では、無線通信装置10をホームHMに設置し、無線通信装置10と無線通信を行う無線機器20a,20bを電車TR1,TR2にそれぞれ設置している。そして、無線通信装置10が、無線機器20aの位置に応じてビームBM1の方向を制御して、画像伝送システム30aで撮影された画像(電車TR1が入線するホームHMの一番線の画像)を無線機器20aに送信してモニタ40aに表示させている。また、無線通信装置10が、無線機器20bの位置に応じてビームBM2の方向を制御して、画像伝送システム30bで撮影された画像(電車TR2が入線するホームHMの二番線の画像)を無線機器20bに送信してモニタ40bに表示させている。
【0063】
このように、本実施形態では、ホームHMの番線に入線する電車を検知する検知システムを別途設けることなく、ホームHMの番線に入線する電車TRに設けられたモニタ40に対し、その電車TRが入線するホームHMの番線の画像を表示させることができる。つまり、本実施形態においても、導入コストを抑えつつ、通信相手に応じた適切なサービスを提供することができる。
【0064】
尚、本実施形態では、図5に示すアソシエーション要求が送信される位置において、無線通信装置10及び無線機器20aを通る直線と、無線通信装置10及び無線機器20bを通る直線とのなす角が、ビームBMの半値幅の2倍以上であることが望ましい。これは、意図しないデータ通信を抑制するためである。また、無線通信装置10のフェーズドアレイアンテナ11で形成されるビームBM1,BM2の可動範囲は、電車TRに設置された無線機器20の移動可能な範囲に応じて最小限に設定するのが好ましい。これは、意図しない反射によるマルチパスが原因で生ずる最適な送信ビームセクターの誤検知を防止するためである。
【0065】
また、前述のアソシエーション要求が送信される位置を検出する手段としては、停車動作中(速度低下中)の電車TRからの速度情報、停止位置までの距離情報、GPS(Global Positioning System)信号等が使用される。無線装置10及び無線機器20は、これらの信号を用いて上記の位置を検出したことをトリガーとしてアソシエーション要求を開始する。
【0066】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態による無線通信システムを示すブロック図である。本実施形態の無線通信システム3は、基本的には、第2実施形態の無線通信システム2と同様である。このため、図6おいては、図4に示す構成と同様の構成については、同一の符号を付してある。本実施形態の無線通信システム3は、無線通信装置10と無線機器20a,20bとの間で行われるポイント・ツー・マルチポイント通信を、例えば、L2ブリッジを用いて、VLAN(Virtual Local Area Network)により実現するものである。
【0067】
図6に示す通り、画像伝送システム30a,30bは、例えば、イーサネット(登録商標)によって無線通信装置10のポートP1,P2にそれぞれ接続されている。また、モニタ40a,40bは、例えば、イーサネット(登録商標)によって無線機器20a,20bにそれぞれ接続されている。
【0068】
無線通信装置10は、タグ処理部13a,13b及び無線インターフェイス部14を備える。タグ処理部13aは、ポートP1と無線インターフェイス部14との間に設けられ、ポートP1と無線インターフェイス部14との間でやりとりされるデータ(フレーム)に対するタグ処理を行う。タグ処理部13bは、ポートP2と無線インターフェイス部14との間に設けられ、ポートP2と無線インターフェイス部14との間でやりとりされるデータ(フレーム)に対するタグ処理を行う。
【0069】
具体的に、タグ処理部13aは、ポートP1から無線インターフェイス部14に向かうフレームにVLANタグ(識別子)を挿入する処理を行う。尚、タグ処理部13aは、無線インターフェイス部14からポートP1に向かうフレームに挿入されているVLANタグを除去する処理も行う。タグ処理部13bは、ポートP2から無線インターフェイス部14に向かうフレームにVLANタグを挿入する処理を行う、尚、タグ処理部13bは、無線インターフェイス部14からポートP2に向かうフレームに挿入されているVLANタグを除去する処理も行う。
【0070】
タグ処理部13aが処理するVLANタグ(以下、「第1VLANタグ」という)と、タグ処理部13bが処理するVLANタグ(以下、「第2VLANタグ」という)とは異なるものである。例えば、第1VLANタグは、値が「1」である識別子であり、第2VLANタグは、値が「2」である識別子である。本実施形態では、図2に示すビームテーブルBTにおいて、データAとして第1VLANタグが格納されており、データBとして第2VLANタグが格納されている。
【0071】
このように、本実施形態では、ビームテーブルBTにおいてビームセクターとVLANタグとが対応付けられている。また、無線通信装置10と無線機器20a,20bとがアソシエーションを行う際に、通信相手のアドレスをそれぞれ取得している。尚、通信相手のアドレスは、MACアドレス(Media Access Control address)である。このため、本実施形態では、ビームセクター、MACアドレス、及びVLANタグが対応付けられている。
【0072】
具体的には、ビームBM1(図4参照)のビームセクター、無線インターフェイス部21aのMACアドレス、及び第1VLANタグが対応付けられている。また、ビームBM2(図4参照)のビームセクター、無線インターフェイス部21bのMACアドレス、及び第2VLANタグが対応付けられている。尚、図6では、無線インターフェイス部14のMACアドレスをA0で示しており、無線インターフェイス部21aのMACアドレスをA1で示しており、無線インターフェイス部21bのMACアドレスをA2で示している。
【0073】
無線インターフェイス部14は、ビームテーブルBT及びMACアドレスの対応関係を参照して、タグ処理部13a,13bから出力されるフレームの送信制御を行う。具体的に、無線インターフェイス部14は、MACアドレスで特定される無線インターフェイス部21aへ送信するビームセクターを参照する。そして、参照したビームセクターが図2に示す10から25の範囲内の値である場合は、第1VLANタグが挿入されているフレームをMACアドレスで特定される無線インターフェイス部21aに送信されるよう送信制御を行う。参照したビームセクターが図2に示す40から55の範囲内の値である場合は、第2VLANタグが挿入されているフレームをMACアドレスで特定される無線インターフェイス部21aに送信されるよう送信制御を行う。
【0074】
また、無線インターフェイス部14は、MACアドレスで特定される無線インターフェイス部22bへ送信するビームセクターを参照する。そして、参照したビームセクターが図2に示す10から25の範囲内の値である場合は、第1VLANタグが挿入されているフレームをMACアドレスで特定される無線インターフェイス部21bに送信されるよう送信制御を行う。参照したビームセクターが図2に示す40から55の範囲内の値である場合は、第2VLANタグが挿入されているフレームをMACアドレスで特定される無線インターフェイス部21bに送信されるよう送信制御を行う。尚、無線通信装置10では、第2実施形態と同様に、ビームテーブルBTを参照してビームBM1,BM2の方向の制御も別途行われる。
【0075】
このようにして、第2実施形態と同様に、画像伝送システム30aで撮影された画像が無線機器20aに送信されてモニタ40aに表示される。また、画像伝送システム30bで撮影された画像が無線機器20bに送信されてモニタ40bに表示される。
【0076】
以上の通り、本実施形態においても、第2実施形態と同様に、無線通信装置10をホームHMに設置し、無線通信装置10と無線通信を行う無線機器20a,20bを電車TR1,TR2にそれぞれ設置している。そして、無線通信装置10が、無線機器20aの位置に応じてビームBM1の方向を制御して、画像伝送システム30aで撮影された画像(電車TR1が入線するホームHMの一番線の画像)を無線機器20aに送信してモニタ40aに表示させている。また、無線通信装置10が、無線機器20bの位置に応じてビームBM2の方向を制御して、画像伝送システム30bで撮影された画像(電車TR2が入線するホームHMの二番線の画像)を無線機器20bに送信してモニタ40bに表示させている。
【0077】
このように、本実施形態においても、ホームHMの番線に入線する電車を検知する検知システムを別途設けることなく、ホームHMの番線に入線する電車TRに設けられたモニタ40に対し、その電車TRが入線するホームHMの番線の画像を表示させることができる。つまり、本実施形態においても、導入コストを抑えつつ、通信相手に応じた適切なサービスを提供することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態による無線通信装置及び無線通信システムについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限される訳ではなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記第2,3実施形態で提供されるサービスは、ホームHMの番線に入線する電車TRに設けられたモニタ40に対し、その電車TRが入線するホームHMの番線の画像を表示させるものであった。しかしながら、これとは逆に、ホームHMの番線毎に設けられたモニタに対し、そのホームHMの番線に入線する電車TRの画像(例えば、電車TR内の画像)を表示させるサービスを提供するものであってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1~3…無線通信システム、10…無線通信装置、11…フェーズドアレイアンテナ、12…制御部、20…無線機器、40…モニタ、HM…ホーム、P1,P2…ポート、BT…ビームテーブル、TR…電車
【要約】
【課題】導入コストを抑えつつ、通信相手に応じた適切なサービスを提供することができる無線通信装置及び無線通信システムを提供する。
【解決手段】無線通信システム1は、無線通信装置10と複数の無線機器20とを備える。無線通信装置10は、ビームフォーミング機能を有するフェーズドアレイアンテナ11と、フェーズドアレイアンテナ11のビームの方向を制御するとともに、フェーズドアレイアンテナ11のビームの方向に応じたサービスを提供する制御を行う制御部12と、を備える。例えば、無線通信装置10はホームに設置され、無線機器20はホームに入線する電車に設置され、無線通信装置10は、ホームの番線に入線する電車に設けられたモニタに対し、その電車が入線するホームの番線の画像を表示させるサービスを提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6