(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】スイング練習器具
(51)【国際特許分類】
A63B 69/36 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A63B69/36 501B
(21)【出願番号】P 2024035014
(22)【出願日】2024-03-07
(62)【分割の表示】P 2023189056の分割
【原出願日】2023-11-06
【審査請求日】2024-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】509292010
【氏名又は名称】軽部 央
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】軽部 央
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-037521(JP,A)
【文献】特開2002-204845(JP,A)
【文献】特表2013-517089(JP,A)
【文献】米国特許第05026063(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 69/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のシャフトと、
前記シャフトの一端に取り付けられたグリップと、
前記シャフトの他端に取り付けられた
キャップ状の錘と、を
含み、
前記錘が前記シャフトの長さ方向に垂直な方向に貫通する単一の開口部を有し、
前記開口部が前記錘に内蔵される笛部材で構成されていること、
を特徴とするスイング練習器具
。
【請求項2】
前記シャフトが
前記一端を前記他端に接触可能に撓む可撓性を有すること、
を特徴とする請求項1に記載のスイング練習器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフスイング等のスイングを練習するために用いることができるスイング練習器具に関し、特にゴルフクラブのシャフトの撓り及び戻り並びに的確なスイング軌道を面で体感して身に付けることができる安価なスイング練習器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフスイングを練習するために様々な練習器具が用いられており、例えば、ゴルフクラブを模した棒状のゴルフスイング練習器具が知られている。当該ゴルフスイング練習器具は、素振りを反復して行うことによって正確なスイングフォームを体得しつつ、スイングスピードやスイングパワーを向上させるものである。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2002-204845号公報)には、表面に握り部分としてのグリップ部を有する剛性シャフト部と、シャフト部の先端から延び、可撓性と共に略直線状態への復元弾性を有する振り子部とを有するゴルフスイング練習器具が開示されている。
【0004】
また、特許文献2(特開2013-70926号公報)には、シャフトの一端側に一方側グリップが設けられると共に、他端側に他方側グリップが設けられ、他方側グリップ部分を固定した状態で一方側グリップ部分を振動させた際の振動数を「F1(cpm)」とし、一方側グリップ部分を固定した状態で他方側グリップ部分を振動させた際の振動数を「F2(cpm)」としたとき、「F1<F2」かつ「F1=90cpm~220cpm」となるように調整したことを特徴とするゴルフスイング練習器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-204845号公報
【文献】特開2013-70926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1のゴルフスイング練習器具は、例えば引用文献1の
図6に示されるように、スイング時においてゴルフスイング練習器具が大きく撓ることを目的としたものであり、非常に柔らかい弾性素材から構成されたものである。このため、当該ゴルフスイング練習器具は、クラブやアイアンに見立てて素振りを行い、スイング感覚を多少感じるに過ぎず、スイング時の撓り及び戻りを体感しにくく、スイングの軌道がバラバラになるおそれがあった。
【0007】
また、上記特許文献2のゴルフスイング練習器具は、グラスファイバー製のシャフトを有するものであり、スイング時の撓りが不足しているために素振りで正しいインパクトゾーンを体得することが困難であり、スイング時の撓り及び戻りを体感しにくく、また、的確なスイング軌道を体感しにくいという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に対処すべくなされたもので、その解決しようとする課題は、ゴルフスイング等のスイングの正確なフォームを体得しつつ、スイング時のシャフトの撓りと戻りを体感することができ、併せてスイング軌道を面で体感して的確なスイング軌道を身に付けることが可能なスイング練習器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は上記目的を達成すべく、スイング練習器具の形状、構造、素材及びスペック等について鋭意研究を重ねた結果、スイング時の撓り及び戻りが適度で、スイング軌道を体感するためには、特定の形状、寸法及び撓り・戻りを有する樹脂製シャフトを用いることが極めて有効であることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、
樹脂製のシャフトと、
前記シャフトの一端に取り付けられたグリップと、
前記シャフトの他端に取り付けられた重さ1g~100gの錘と、を有し、
を特徴とするスイング練習器具、を提供する。
【0011】
上記本発明のスイング練習器具においては、
前記シャフトが6.0mm~13.0mmの太さを有し、
前記スイング練習器具の全長が90cm~117cmであること、が好ましい。
【0012】
また、上記本発明のスイング練習器具においては、
前記シャフトが中空であること、が好ましい。
【0013】
また、上記本発明のスイング練習器具においては、
前記シャフトが前記一端を前記他端に接触可能に撓る可撓性を有すること、が好ましい。
【0014】
更に、上記本発明のスイング練習器具においては、
前記錘がキャップ状であり、前記シャフトの長さ方向に垂直な方向に貫通する開口部を有すること、
が好ましい。
【0015】
更にまた、上記本発明のスイング練習器具においては、
撓り時の先端部分から静止時の前記シャフトまでの垂線の距離(撓り幅)が70~100cmであること、が好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のスイング練習器具は、ゴルフスイング等のスイングの正確なフォームを体得しつつ、スイング時のシャフトの適度な撓りと戻りを体感することができるとともに、繰り返しスイング軌道を面で体感することができることから好ましいスイング軌道を的確に身に付けることが可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスイング練習器具1の正面図(a)及び側面図(b)である。
【
図2】
図1のスイング練習器具1の先端部分の錘6の一例を拡大して示す正面図(a)及び側面図(b)と、錘6に内蔵される笛部材8の側面図(c)及び正面図(d)である。
【
図3】
図1のスイング練習器具1を用いたスイング練習時におけるスイング練習器具1の撓りの様子を示す図である。
【
図4】
図1のスイング練習器具1を用いたスイング練習時においてスイング軌道を面で捉える様子を説明するための概略図である。
【
図5】
図1のスイング練習器具における撓り幅Xを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明のスイング練習器具の代表的な実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する場合がある。また、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、表された各構成要素の寸法やそれらの比は実際のものとは異なる場合もある。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係るスイング練習器具1の正面図(a)及び側面図(b)である。
図1に示すように、スイング練習器具1は、シャフト2と、グリップ4と、を有しており、グリップ4はシャフト2の一端に取り付けられている。また、シャフト2のグリップ4が取り付けられている一端と反対側の他端には、1g~100gの錘6が取り付けられている。
【0020】
本発明者は、スイング練習器具の形状、構造、素材及びスペック等について鋭意研究を重ねた結果、スイング時の撓り及び戻りが適度で、スイング軌道を体感するためには、このような特定の構成を有するスイング練習器具が極めて有効であることを見出した。
【0021】
まず、シャフト2には、本発明の効果を奏する範囲であれば種々の材料を用いることができ、例えばポリプロピレン又はポリカーボネート等の樹脂で構成すればよく、本実施形態においては、中空パイプ形状である。また、太さ(外径)は、例えば6.0mm~13.0mmであるのが好ましい。また、中空パイプ形状であるシャフト2の内径は、例えば2.0~4.5mmであるのが好ましい。
【0022】
そして、本実施形態において、シャフト2は前記一端を前記他端に接触可能に撓る可撓性を有するものであるのが好ましい。即ち、シャフト2の一端及び他端をそれぞれ右手及び左手で把持して折り曲げた際、シャフト2の一端と他端が接触してもシャフト2は大きく綺麗に湾曲し、決して折れる等の損傷を生じない可撓性を有するのが好ましい。
【0023】
また、シャフト2を含むスイング練習器具1の全長は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に制限は無いが、例えば全長が90cm~120cmであればよく、好ましくは90cm~115cmである。これらの範囲であれば、使用者の体格や身長に合わせて本発明の効果を奏する適当なゴルフスイング練習機器の長さを選択することができ、また、例えばゴルフバッグに好適に収納することができる。
【0024】
シャフト2の製造方法は特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知の種々の製造方法を用いることができ、生産性及び製品価格の観点から、押出成型法又は射出成型法を用いることができる。
【0025】
次に、スイング練習器具1のシャフト2の一端に取り付けられるグリップ4は、種々のスポーツに用いられるグリップであってもよいが、ゴルフグリップが好適である。グリップ4の凹状部にシャフト2を内挿して接着剤や両面テープ等で接続すればよい。
【0026】
グリップ4は、弾性材料を用いて成形されたものであり、グリップ4の外周面には、例えばシボ加工により、滑り止めを兼ねた細かい凹凸模様等が形成されていることが好ましい。また、グリップ4の内径は一定であるが、外径はグリップ4の一端側(グリップエンド側)に近づくにつれて漸増することが好ましい。
【0027】
グリップ4の弾性材料としては、例えばゴムや合成樹脂エラストマー等が好ましく使用されるが、これらに限定されるものではなく、インサート成形が可能でグリップに適した弾力性や柔軟性を有する材料であれば、全て使用可能である。
【0028】
シャフト2の他端に取り付けられる錘6は、スイング練習器具1のスイング時に適度な撓り・戻りを付与できる重さを有していればよく、例えば1g~100gであればよく、より確実に本発明の効果を得るためには特に20g~50gであるのが好ましい。本実施形態の錘6は、キャップ状であり、
図1の(a)及び
図2に示すように、シャフト2に外挿されて例えば接着剤や両面テープ等で接続される。
【0029】
このような構成のシャフト2、グリップ4及び錘6を含むスイング練習器具1によれば、スイング練習器具として理想的な重量及び機械的特性(スイング時の撓り・戻り及び軌道等)を発揮できる。そのため、例えば
図3に示すように、スイング練習器具1を用いたスイング練習時において矢印の方向に遷移するようにスイング練習器具1の撓り・戻りが連続し(繰り返し)、
図4に示すように、スイング練習器具1を用いたスイング練習時において、スイング軌道がブレないように、スイング練習器具1が撓ったり戻ったりしながら仮想面P上をなぞるようにスイング軌道を捉える練習を反復することができ、スイング軌道の習得に好適である。
【0030】
ここで、そして、錘6は、シャフト2の長さ方向に垂直な方向に貫通する開口部6aを有すること、が好ましい。この開口部6aがあることにより、
図2及び
図3に示すように、スイング練習時において、スイング練習器具1の撓り・戻りが連続し(繰り返し)て、スイング軌道を反復して的確に面Pで捉えることができれば、風が開口部6aを通って「ヒュッ、ヒュッ」と音が鳴るため、正しいスイング軌道か否かの確認に役立ちその習得に好適である。
【0031】
また、開口部6aを構成する部材として、
図2の(c)及び(d)の側面図及び正面図で示される構造を有する笛部材8が錘6に内蔵されていてもよい。この笛部材8が内蔵されていることによって、スイング練習時に、スイング練習器具1の撓り・戻りが連続し(繰り返し)て、スイング軌道を反復して的確に面で捉えれば、風が開口部6aを通って笛部材8が確実に鳴るため、正しいスイング軌道か否かの確認に役立ちその習得に更に好適である。
【0032】
なお、錘6の形状は、本発明の効果を損なわずまたスイング練習器具1のスイングし易さを妨げない範囲であれば特に制限はないが、例えば球状、円板状、板状、星型等の種々の形状を採用することもできる。
【0033】
次に、
図5に、本実施形態のスイング練習器具1におけるスイング時の撓り幅Xを説明するための模式図を示す。本実施形態のスイング練習器具1は、
図5に示すように、スイングした際の撓り時P1の先端部分から、静止時P2のシャフトまでの垂線の距離(撓り幅X)が70cm~100cm、好ましくは80cm~100cmである。
【0034】
本実施形態のスイング練習器具1は、上記のような構造を有することから、従来にない可撓性及びスイングの際の撓り幅Xを実現することができる。なお、この撓り幅Xは、スイング時の動画撮影をしてコマ送りすること等により、測定することができる。
【0035】
このような従来に無い可撓性及び撓り幅Xにより、特に、通常のゴルフクラブに対する利点として、安価で簡易な構造によって通常のゴルフクラブと同等以上の撓りと戻りを体感することができ、総じて、ゴルフスイングの正確なフォームを体得しつつ、ゴルフクラブのシャフトの撓りと戻りを体感してクラブヘッドがゴルフボールに当たる最適なインパクトゾーンを身に付けることもでき、併せてスイングスピードやスイングパワーの向上を図ることができる。
【0036】
更に、スイング練習器具1は理想的な重量及び機械的特性(スイング時の撓り・戻り及び軌道等)を発揮できる。そのため、スイング練習器具1を用いたスイング練習時において矢印の方向に遷移するようにスイング練習器具1の撓り・戻りを連続させる(繰り返す)ことができ、スイング練習器具1を用いたスイング練習時においてスイング軌道を反復して面Pで捉える練習をすることができ、スイング軌道の習得に好適である(
図3及び
図4参照)。
【0037】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、それら設計変更は全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
1・・・スイング練習器具、
2・・・シャフト、
4・・・グリップ、
6・・・錘、
6a・・・開口部、
8・・・笛部材。
【要約】
【課題】ゴルフスイング等のスイングの正確なフォームを体得しつつ、スイング時のシャフトの撓りと戻りを体感することができ、併せてスイング軌道を面で体感して的確なスイング軌道を身に付けることが可能なスイング練習器具を提供する。
【解決手段】樹脂製のシャフトと、前記シャフトの一端に取り付けられたグリップと、前記シャフトの他端に取り付けられた重さ1g~100gの錘と、を有し、を特徴とするスイング練習器具。
【選択図】
図1