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特許7610774ヌクレアーゼ反応、リガーゼ反応、ポリメラーゼ反応、及びシーケンシング反応を組み合わせて使用し、核酸の配列、発現、コピー数、またはメチル化変化を決定するためのデバイス、プロセス、及びシステム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ヌクレアーゼ反応、リガーゼ反応、ポリメラーゼ反応、及びシーケンシング反応を組み合わせて使用し、核酸の配列、発現、コピー数、またはメチル化変化を決定するためのデバイス、プロセス、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241226BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20241226BHJP
   C12Q 1/6837 20180101ALI20241226BHJP
【FI】
C12M1/00 A ZNA
C12Q1/68 100Z
C12Q1/6837 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022130367
(22)【出願日】2022-08-18
(62)【分割の表示】P 2019553187の分割
【原出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2022166216
(43)【公開日】2022-11-01
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】62/478,412
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508057896
【氏名又は名称】コーネル・ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】CORNELL UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100138911
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 陽子
(72)【発明者】
【氏名】バラニー フランシス
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-533096(JP,A)
【文献】特開2012-024072(JP,A)
【文献】特開2011-160728(JP,A)
【文献】特表2004-502923(JP,A)
【文献】国際公開第2014/051076(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12Q 1/68
C12Q 1/6837
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入口と;
出口と;
前記注入口及び前記出口と流体連結し、空間を画定するカートリッジと
を含む、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであって、
前記空間が、
個々の行と列で構成される複数の産物捕捉細区画を備える固体支持体の入った産物捕捉筐体であって、各個々の産物捕捉細区画が、疎水性表面でそれぞれが隔てられる複数の個別の親水性マイクロポアのアレイを含み、前記個別の親水性マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有し、物質が前記注入口から前記産物捕捉細区画の列を通って、前記細区画内のマイクロポアの前記アレイと接触しそして前記出口に至ることが可能であるように、前記産物捕捉筐体が複数の流体流路を備えており、前記複数の流体流路は前記固体支持体の上方及び下方に位置する、前記産物捕捉筐体
を含む、
前記システム。
【請求項2】
前記注入口または前記出口を通して試薬及び/または反応物を前記産物捕捉筐体へ誘導するか、または前記産物捕捉筐体から排出するか、を選択するための1つ以上のバルブ
をさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記産物捕捉筐体に近接する1つ以上の発熱体を前記カートリッジ内にさらに含む、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法であって、
請求項に記載のシステムを提供することと、
捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを、前記産物捕捉筐体内の前記固体支持体上の前記産物捕捉細区画の前記マイクロポアに加え、それにより、前記捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを前記マイクロポア内に保持することと
を含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月29日出願の米国仮特許出願第62/478,412号の優先利益を主張するものであり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヌクレアーゼ反応、ライゲーション反応、ポリメラーゼ反応、及びシーケンシング反応の組み合わせを使用し、核酸の配列、発現、コピー数、またはメチル化変化を決定するためのデバイス、プロセス、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
DNAシーケンシングの進歩により、出生前医療、移植有効性、がん及び他の疾患の検出、ならびに個別化治療を向上させる非侵襲的分子診断の標準化及び開発に期待が寄せられている。現状では、疾患素因または早期疾患を有する患者は特定されず、また疾患を有する患者に最善の治療が施されていない。これはすべて、診断段階での失敗が原因である。
【0004】
がんの分野では、早期発見、治療指導、及び再発の監視すべてが血液試料から可能であるような技術の開発が必要とされている。それには、(i)既知の遺伝子における単塩基変異、小挿入変異、及び小欠失変異(無細胞DNAの1%~0.01%に存在する場合)の高感度検出;(ii)プロモーターの高メチル化及び低メチル化(無細胞DNAの1%~0.01%に存在する場合)の高感度検出;(iii)腫瘍由来のエキソソームもしくはRISC複合体、または血液中の循環腫瘍細胞から単離された腫瘍特異的mRNA、lncRNA、及びmiRNAの正確な定量;(iv)循環腫瘍細胞から単離されたDNAにおける腫瘍特異的なコピー変化の正確な定量;(v)循環腫瘍細胞から単離されたDNAにおける変異、プロモーターの高メチル化及び低メチル化の正確な定量を開発する必要性が挙げられる。上記はすべて(循環腫瘍細胞から単離されたDNAにおける腫瘍特異的なコピー変化の定量を除き)、ゲノムの標的遺伝子または標的領域に焦点を定めたシーケンシングを必要とする。さらに、元の断片の双方の鎖から配列情報またはメチル化状態を決定するには、希少な事象の確認が不可避である。
【0005】
正常血漿には、正常な生理学的過程(すなわち、エキソソーム、アポトーシス)を経て正常細胞から放出された核酸が含まれる。ストレス、炎症、感染、または損傷といった状態下では、核酸が追加放出される場合もある。一般に、アポトーシス細胞から放出されるDNAは平均160bp長であるが、胎児細胞からのDNAは平均約140bpである。がん患者由来の血漿には、異常な生理学的過程を経てがん細胞から放出される核酸に加え、循環腫瘍細胞(CTC)内の核酸が含まれている。同様に、妊婦の血漿には胎児細胞から放出された核酸が含まれている。
【0006】
信頼性のある診断及びスクリーニング試験を開発するにはいくつかの課題がある。第1の課題は、疾患の徴候(すなわち早期がん)を示す腫瘍または胎児から発せられるマーカーと、正常組織から発せられる同じマーカーの存在とを区別することである。また、検査するマーカーの数及び試験のコストと、アッセイの特異性及び感度とのバランスを計る必要がある。これは、がんなどの疾患の生物学的変動への対処を必要とする課題である。多くの場合、アッセイはスクリーニングツールとして機能すべきものであり、二次診断のフォローアップ(すなわち、大腸内視鏡検査、羊水穿刺)を利用できる必要がある。生物学的問題を複雑化しているのは、核酸配列の変異またはプロモーターのメチル化の違いを確実に検出すること、または極少数の初期細胞由来(すなわちCTC由来)、もしくはがんもしくは胎児特異的シグナルが、正常細胞から発せられるはるかに大量の核酸の存在下にある場合に、DNAまたはRNAのコピー数を確実に定量することが必要とされることである。最後に、目的とする疾患特異的核酸の違いを検出して得られる真のシグナルと、試料に存在する正常な核酸から生じる偽シグナルと、疾患特異的核酸の違いが存在しない場合に生じる偽シグナルとを区別するという技術的課題がある。
【0007】
一例として、血漿において、p53遺伝子またはメチル化されたプロモーター領域に変異を有する循環腫瘍DNAの存在を検出するという課題について検討する。そのような試料には、正常細胞から生じるはるかに大量の無細胞DNAが含まれており、腫瘍DNAは、無細胞DNA全体の0.01%しか含まれない場合がある。したがって、そのような突然変異体DNAの存在を全シーケンシングによって発見しようとすると、変異を有する10個のゲノムを識別するのに、100,000個のゲノムをシーケンシングする必要がある。それには、300,000GBのDNAのシーケンシングが要求される。これは、膨大なデータ管理の問題は言うまでもなく、現行のシーケンシング技術の範囲を超える作業である。この問題を回避するために、多くのグループが特異的標的領域の取得、または問題の領域のPCR増幅を試みている。配列取得にはドロップアウトが生じるという欠点があり、その結果、目的とする配列のおそらく90~95%は取得されるが、目的の断片が欠落する。もう一つの選択肢であるPCR増幅は、真の変異と区別できない稀なエラーを誘発する危険性がある。さらに、PCRによってメチル化情報が失われる。プロモーターのメチル化の存在を決定するためにバイサルファイト処理が従来から使用されてきたが、これもDNA試料を破壊し、無細胞DNAの複数のメチル化の変化を特定する能力に欠けている。
【0008】
エラー率を低減し、シーケンシングランの精度を向上させるためのいくつかの異なる手法がある。DNAの同じ領域を30~100回シーケンシングすることにより、高いエラー率が存在する場合でもコンセンサス精度を達成することができる。ただし、エラー率が高いと、例えば正常なDNAの存在下でがんの変異を特定しようとする場合、低存在量の配列変異体の特定が非常に困難になる。したがって、比較的存在量の少ない変異を検出するには、エラー率の低さが要求される。タグ付きアンプリコンディープシーケンシング(TAm-Seq)法(Forshew et al.,“Noninvasive Identification and Monitoring of Cancer Mutations by Targeted Deep Sequencing of Plasma DNA,” Sci Transl Med.4(136):136(2012)(非特許文献1))と呼ばれる第1の手法は、TP53、EGFR、BRAF、及びKRASを含む、がん関連遺伝子の選択領域を対象とする5995塩基を増幅するプライマー設計に基づくものである。この手法は、2%~65%の頻度でp53遺伝子の変異を特定することができる。この手法では、多数のPCRプライマーとのマルチプレックス反応でDNAを前増幅(15サイクル)するプライマーが設計される。前増幅では目的とする産物と不要な産物の両方が生成されるので、後にシングルプレックスPCRを実行して、目的とする産物それぞれをさらに増幅する。この断片に最終のバーコーディングPCR工程を施した後、標準の次世代シーケンシングを行う。この手法の利点は、少数の出発核酸の増幅に卓越している、長年の実績をもつマルチプレックスPCR-PCRを利用していることである。欠点としては、この手法は増幅の初期ラウンドで真の変異とPCRエラーとを区別できないことである。したがって、2%の感度(すなわち、50wt対立遺伝子中の1つの変異対立遺伝子の検出)は、治療判断を行う前の末期がんの評価には十分であるが、早期検出には感度が不十分である。
【0009】
第1の手法の変形例は、Safe-Sequencing System「Safe-SeqS」(Kinde et al.,“Detection and Quantification of Rare Mutations with Massively Parallel Sequencing,” Proc Natl Acad Sci USA 108(23):9530-5(2011)(非特許文献2))と呼ばれるもので、ランダムに断片化されたゲノムDNAがリンカーの末端に付加され、リンカーがゲノムDNAとライゲーションされる。この手法は、ゲノムシーケンシングにより示される変異のほとんどが実際にはエラーであることを実証し、推定されるシーケンシングエラーを少なくとも70分の1に低減させた。同様に、超高感度ディープシーケンシング(Narayan et al.,“Ultrasensitive Measurement of Hotspot Mutations in Tumor DNA in Blood Using Error-suppressed Multiplexed Deep Sequencing,” Cancer Res.72(14):3492-8(2012)(非特許文献3))と呼ばれる手法は、ネステッドPCR増幅用のプライマーにバーコードを付加する。想定されるように、バイオインフォマティクスツールに依存した、バーコードを付加して稀な変異及びコピー数の変動を検出する類似システムが開発された(Talasaz,A.;Systems and Methods to Detect Rare Mutations and Copy Number Variation、米国特許出願公開第US 2014/0066317 A1号(特許文献1))。ペアエンドリードを使用すると、推定される変異を含む領域が網羅される。この方法は、後期がん患者の血漿中の既知の変異を追跡するために使用された。これらの手法では、コンセンサス配列を確定するには多数の読み取りが必要である。これらの方法は標的DNA全体の伸長を必要とするため、特に脱アミノ化シトシンなどの損傷した塩基がコピーされると、真の変異とポリメラーゼによるエラーとを区別できないことになる。最後に、これらの方法では断片内のCpG部位のメチル化状態に関する情報は提供されない。
【0010】
デュプレックスシーケンシング(Schmitt et al.,“Detection of Ultra-Rare Mutations by Next-Generation Sequencing,” Proc Natl Acad Sci USA 109(36):14508-13(2012)(非特許文献4))と呼ばれる第2の手法は、12塩基のランダムなタグを含んだ二重鎖リンカーの使用に基づくものである。インプット標的DNAのトップ鎖とボトム鎖の両方を増幅することにより、所与の断片が(各末端の12塩基からなる)固有の識別子を得るため、それをシーケンシングにより追跡することができる。固有のタグセットを共有する配列リードは、トップ鎖またはボトム鎖のいずれの方向にも鎖の識別子を有するメンバーを含むペアになったファミリーに分類される。各ファミリーペアは1つの二本鎖DNA断片の増幅に反映される。1つのみまたは少数のファミリーメンバーに存在する変異は、増幅の後半で発生するシーケンシングのミスまたはPCRで生じたエラーを表す。ペアとなる1つのファミリーの多くのメンバーまたは全メンバーで発生する変異は、変異原性DNA損傷部位がコピーされると発生し得るような、増幅の初回ラウンド中のPCRエラーから生じる。それに対してDNA断片の両方の鎖に存在する真の変異は、1つのファミリーペアの全メンバーに現れる。アーティファクトとなる変異がファミリーペアで真の変異と同時発生する可能性があるが、エラー修正された一本鎖コンセンサス配列を作成する際に、PCR増幅の初回ラウンドで発生するものを除くすべてを個別に識別して除外しておくことができる。その後、個々のDNA二重鎖の二本鎖のそれぞれから得た配列を比較して、PCRの初回ラウンド中に発生した残りのエラーを排除した二重鎖コンセンサス配列を取得することができる。この手法の利点は、真の変異をPCRエラーまたは変異原性DNA損傷と明確に区別し、3.8×10-10の極めて低いエラー率を達成することである。この手法の欠点は、ファミリーペアの少なくとも5つのメンバーの各鎖を取得するために多数の断片のシーケンシングが必要になることである(すなわち、元の断片あたり最低10個の配列を読み取るが、変動があるため、これよりはるかに多くを必要とする場合がある)。さらに、この方法は、cfDNAでは試験されていないが、cfDNAは、無傷のゲノムDNAから生成される断片よりも小さい傾向があるため、すべての潜在的な変異を網羅するには、より多数の断片のシーケンシングが要求されることになる。最後に、この方法では断片内のCpG部位のメチル化状態に関する情報は提供されない。
【0011】
1分子分子反転プローブ法(smMIP)(Hiatt et al.,“Single Molecule Molecular Inversion Probes for Targeted,High-Accuracy Detection of Low-Frequency Variation,” Genome Res.23(5):843-54(2013)(非特許文献5))と呼ばれる第3の手法は、1分子タギング法とマルチプレックス法とを組み合わせた捕捉により、低頻度のサブクローン変動の高感度検出を可能にする。この方法は、臨床標本においてエラー率2.6×10-5を主張している。この手法の欠点は、ファミリーペアの少なくとも5つのメンバーの各鎖を取得するために多数の断片のシーケンシングが必要になることである(すなわち、元の断片あたり最低10個の配列を読み取るが、変動があるため、これよりはるかに多くを必要とする場合がある)。また、この方法は、標的DNA全体の伸長を必要とするため、特に脱アミノ化シトシンなどの損傷した塩基がコピーされると、真の変異とポリメラーゼによるエラーとを区別することができないことになる。さらに、この方法は、cfDNAでは試験されていないが、cfDNAは、無傷のゲノムDNAから生成される断片よりも小さい傾向があるため、すべての潜在的な変異を網羅するには、より多数の断片のシーケンシングが要求されることになる。最後に、この方法では断片内のCpG部位のメチル化状態に関する情報は提供されない。
【0012】
サークルシーケンシング(Lou et al.,“High-throughput DNA Sequencing Errors are Reduced by Orders of Magnitude Using Circle Sequencing,” Proc Natl Acad Sci USA 110(49):19872-7(2013)(非特許文献6);Acevedo et al.,“Mutational and Fitness Landscapes of an RNA Virus Revealed Through Population Sequencing,” Nature 2014 505(7485):686-90(2014)(非特許文献7);及びAcevedo et al.,“Library Preparation for Highly Accurate Population Sequencing of RNA Viruses,” Nat Protoc.9(7):1760-9(2014)(非特許文献8))と呼ばれる第4の手法は、DNAまたはRNAを約150塩基に断片化し、変性して一本鎖を形成し、そのような一本鎖を環状化して、ランダムヘキサマープライマー及びphi29 DNAポリメラーゼを使用して(ウラシル-DNAグリコシラーゼ及びホルムアミドピリミジン-DNAグリコシラーゼの存在下で)ローリングサークル増幅を行い、その産物を約500塩基に再断片化した後、標準的な次世代シーケンシングを進めることに基づくものである。この手法の利点は、ローリングサークル増幅により、元の標的DNAを剥がしながら多数のタンデムコピーが作成されるため、ポリメラーゼエラーは1つのコピーにしか出現しないが、真の変異はすべてのコピーに出現し得ることである。コピーが物理的に相互連結されるため、リードファミリーのサイズは平均3コピーである。この方法はまた、ウラシル-DNAグリコシラーゼ及びホルムアミドピリミジン-DNAグリコシラーゼを使用して、損傷した塩基が含まれる標的を除去し、そのようなエラーを排除する。この技術の利点は、現行レベルの約0.1~1×10-2から、7.6×10-6もの低率に至るシーケンシングエラー率をとることである。現状では、後者のエラー率は、野生型DNAが100~10,000倍過剰に存在する場合に、血漿中のがん変異を識別するのに十分である。さらなる利点は、同じ配列の2~3コピーが物理的に連結されるため、1つの断片から生成される配列データによって真の変異を検証できることである。これは、デュプレックスシーケンシング手法を使用した場合に少なくとも10個の断片を要するのとは対照的である。しかしながら、この方法では、コピー数の変化を判別する機能は提供されず、また断片内のCpG部位のメチル化状態に関する情報も提供されない。
【0013】
Complete Genomicsが開発した第5の手法(Drmanac et al.,“Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarrays,” Science 327(5961):78-81(2010)(非特許文献9))は、ナノボールアレイでのライゲーションの読み取りの使用に基づくものである。約400ヌクレオチドのゲノムDNAをリンカーで環状化し、切断して、リンカーと再環状化し、最終的に約4つのリンカーが含まれるまで再環状化する。phi29 DNAポリメラーゼを使用して、DNAのローリングサークル増幅を行い、ナノボールを生成する。次に、これをアレイに配置し、ライゲーションを用いた手法を使用してシーケンシングする。この手法の本明細書との関連が顕著な点は、同じ配列の多数のタンデムコピーを生成した後、単一のローリングサークル増幅産物からのシーケンシングが可能なことである。リガーゼまたはポリメラーゼのいずれかによって(ローリングサークルと他のsequencing by synthesis手法とを組み合わせることにより)同じ配列を複数回調べるため、塩基あたりのエラー率を大幅に減少させることができる。したがって、ローリングサークル産物から直接シーケンシングすることで、上記のサークルシーケンシング手法と同じ利点が多数得られる。
【0014】
SMRT-1分子リアルタイムシーケンシング(Flusberg et al.,“Direct Detection of DNA Methylation During Single-Molecule,Real-Time Sequencing,” Nat Methods 7(6):461-5(2010)(非特許文献10))と呼ばれる第6の手法は、DNA断片の末端にヘアピンループを追加して、鎖置換活性をもつDNAポリメラーゼを、その共有結合した閉ループの周りに伸長させ、2つの相補鎖に関する配列情報を得ることに基づくものである。具体的には、1分子のポリメラーゼが、蛍光標識ヌクレオチドの相補核酸鎖への取り込みを触媒する。メチル化塩基の反対側のヌクレオチドを取り込むと、ポリメラーゼは減速または「スタッター」し、その結果生じる蛍光パルスにより、N-メチルアデニン、5-メチルシトシン、及び5-ヒドロキシメチルシトシンを含む、DNA鋳型内の修飾ヌクレオチドを直接検出することができる。特にポリメラーゼが閉ループを数回横断して、コンセンサス配列を決定できるようになるため、この手法の精度は向上している。この技術は「ダンベル」型の基質(ほとんどが、DNAの線形断片の2つの相補配列で構成される)の配列情報を得るように設計されているが、一本鎖の環状基質にも適用することができる。
【0015】
いくつかの研究グループ及び企業が、固有の分子識別子(UMI)またはバーコードを各断片に付加しながら、特異的標的配列を増幅するキットを開発している。
【0016】
SiMSen-Seq(シーケンシングを用いた高感度変異検出のための、単純マルチプレックスPCRによるDNAのバーコード処理)と呼ばれる簡潔な手法は、高忠実度のポリメラーゼを用いた2ラウンドのPCRを使用して、各断片、ならびに外部ユニバーサルプライマーにヘアピン保護バーコードを付加する(Stahlberg et al.,“Simple,Multiplexed,PCR-based Barcoding of DNA Enables Sensitive Mutation Detection in Liquid Biopsies Using Sequencing,” Nucleic Acids Res.44(11):e105)(2016)(非特許文献11))。この手法では、標的DNAからバーコードを「隠す」アダプターステムが一方のプライマーに含まれているため、バーコード配列内のランダムな塩基によって、標的へのプライマーのハイブリダイゼーションが誤誘導されることがない。他方のプライマーは、末端にIlluminaアダプター配列をもつ通常のプライマーである。高忠実度ポリメラーゼによる2ラウンドの増幅の後、アダプター及びバーコードが標的断片に付加される。プロテアーゼ処理及び希釈後に、患者の識別子バーコードが含まれるIlluminaアダプターを使用して2回目のPCRを実行する。この手法は、未処理のシーケンシングエラーのホットスポット位置を特定していたが、現在では1本の鎖のみをバーコード処理するように設計されている。
【0017】
ThruPLEX Tag-seqキット(Rubicon Genomics)では、ステムループアダプターを二本鎖DNAの末端にライゲーションする。標準のYアダプターと同様に、ゲノムDNAが修復されて平滑末端が得られる。次の工程で、5’末端がブロックされた固有の分子タグ(UMI)を含むステムループアダプターが、DNAの5’末端にライゲーションされ、標的断片の3’末端にニックが残る。ステムループアダプターには一本鎖オーバーハングがなく、互いのライゲーションが起きにくい。これはどちらも、他の多くのNGS調製物に見られる非特異的なバックグラウンドに影響するものである。代わりに、ステムループアダプターには切断可能な複製停止塩基が含まれている。最後の工程で、DNAの3’末端を伸長してライブラリ合成が完了し、高忠実度の増幅により、Illumina互換インデックスが付加される。空のアダプターが残存する場合は分解される。ライゲーション反応は非効率的なことがあり、変異試料の投入量が制限される場合には収量が低下する可能性が生じる。さらに、この手法は特異的標的の選択性がない。
【0018】
NEBNext Direct標的濃縮手法(New England Biolabs)では、DNAを約150~200bp長に断片化する。断片化されたDNAは、対象とする各標的の3’末端を規定するビオチン化オリゴヌクレオチド「ベイト」に迅速にハイブリダイズされる。このようなオリゴヌクレオチドベイトは、各標的のトップ鎖とボトム鎖の両方に設計される。ベイト-標的のハイブリッドをストレプトアビジンビーズに結合し、3’オフターゲット配列があれば酵素によりトリミングすることで平滑末端が生成される。このようにハイブリダイゼーション時間の短さと3’オフターゲット配列の酵素除去とを兼ね備えることで、従来のハイブリダイゼーションによる濃縮方法と比較して、シーケンシング効率の向上が可能になる。次に、トリミングした標的を、固有の分子識別子(UMI)及び試料バーコードを含むIllumina互換ライブラリに変換する。この変換は次のように実行される。ターミナルトランスフェラーゼで平滑末端をdAテール化し、ヘアピン型ループ配列と一本鎖dAオーバーハングとのライゲーションを可能にする。次に、DNAポリメラーゼでプローブを伸長して元の断片のコピーを生成し、ランダムな5’末端をもつ二本鎖DNAを生成する。これらの末端を平滑化し(T4ポリメラーゼまたはDNAポリメラーゼ1を使用)、最初の断片化によるリン酸が5’末端に含まれるか、またはT4キナーゼを使用してリン酸が付加される。これで、この新しい末端がUMI配列を含む元の標的鎖へのアダプターのライゲーションに適するものになる。次に、アダプターヘアピンループを切断することにより、5’アダプター配列、UMI配列、5’標的配列のストレッチ、ベイトに相補的な3’末端までの目的標的領域、polydA配列、そしてさらに3’アダプター配列で構成されるトップ鎖が生成される。次に、このトップ鎖を溶解してストレプトアビジンビーズを除去でき、これを精製すると、患者識別子バーコードを含むIlluminaまたはIon Torrentアダプターによる増幅に適するものになる。1日以内で配列に対応したライブラリが生成される。この手順は、ほとんどの自動液体処理装置と適合性がある。この技術は、目的とする断片のみの捕捉に非常に効率的であるように設計されているが、長時間の複数工程を要する手順でもあり、変異試料の投入量が制限される場合には収量が低下する可能性がある。
【0019】
QIAseq標的RNAシーケンシング手法(Qiagen Inc.)では、固有の識別子をRNA配列に付加することで、その正確な計数が可能である。RNA試料を精製した後、逆転写酵素を使用してcDNAを合成する。最初の5’共通配列、内部の12塩基分子タグ(すなわちUMI)、及び遺伝子特異的3’部分で構成される複合プライマーを使用して、cDNAから伸長産物を生成する。伸長後、反応物を精製して未反応のプライマーを除去する。これに続いて、ユニバーサルプライマー、及び第2の5’共通配列を含む第2の遺伝子特異的プライマーを使用して第1段階のPCRを行う。製造業者によれば、第1の遺伝子特異的プライマーと第2の遺伝子特異的プライマーは、「互いを認識しないため、プライマー二量体が最小限に抑えられる」。第1のPCRの後に、追加の反応物精製工程がある。これに続いて、ユニバーサルアダプター配列を使用して第2段階のPCRを行い、患者識別子バーコードを含むIlluminaまたはIon Torrentアダプターを付加する。6時間以内で配列に対応したライブラリが生成される。各初期cDNA分子は、UMIを含むプライマーによって伸長することが想定されるため、転写産物を固有のUMIと照合して、各RNA分子の元の転写産物が存在する数を計数できるため、1つの転写産物の5つの複製物を同じ遺伝子の5つの固有の転写産物と区別することができる。この技術は、RNA-seqの場合と同様であるが、非常に特異的な目的とする断片についてRNA断片を計数するように設計されている。また、この技術は、低存在量の変異の同定にも適合可能であるが、複数回の洗浄手順により、変異試料の投入量が制限される場合には収量が低下する可能性が生じる。
【0020】
液体生検の臨床研究のためのOncomine Cell-Free DNAアッセイ(ThermoFisher Scientific)では、2段階のPCR反応を使用して、cfDNAから標的配列を直接増幅する。順方向と逆方向両方の複合プライマーには、第1/第2の5’共通配列、内部の固有分子タグ(すなわちUMI)、及び遺伝子特異的3’部分を含む。正確には2サイクルのPCR後に、2つの複合二本鎖産物が形成される。第1の産物には、トップ鎖プライマー伸長産物、トップ鎖標的配列、及び第2の共通配列を含むボトム鎖プライマーの相補体を含む。これを、ボトム鎖標的配列を含むボトム鎖プライマーの初期伸長にハイブリダイズする。第2の産物には、ボトム鎖プライマー伸長産物、ボトム鎖標的配列、及び第1の共通配列を含むトップ鎖プライマーの相補体を含む。これを、トップ鎖標的配列を含むトップ鎖プライマーの初期伸長物にハイブリダイズする。したがって、トップ鎖とボトム鎖の両方に、ユニバーサルアダプター配列、及び各初期標的鎖から生じる固有のUMI配列が含まれる。次に、遺伝子特異的プライマーから精製された標的アンプリコンが固体支持体上に捕捉される。固体支持体から産物を遊離させた後、ユニバーサルアダプター配列を使用して適切な第2段階のPCRを行い、患者識別子バーコードを含むIon Torrentアダプターを付加する。数時間以内で配列に対応したライブラリが生成され、その後、ビーズ上でのエマルジョンPCRを使用して、さらなる鋳型調製物と組み合わせることができる。この手法は非常に迅速かつ頑強であるが、最初の遺伝子特異的プライマーを物理的に除去すると共に、第2のPCR工程後に(おそらくプライマー二量体を排除するため)精製/サイズ選別するという余分な工程を必要とする。また、この手順により、変異試料の投入量が制限される場合に収量が低下する可能性が生じるかどうかは不明瞭である。
【0021】
本発明は、当技術分野における上記及び他の欠点を克服することを対象とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】米国特許出願公開第US 2014/0066317 A1号
【非特許文献】
【0023】
【文献】Forshew et al.,“Noninvasive Identification and Monitoring of Cancer Mutations by Targeted Deep Sequencing of Plasma DNA,” Sci Transl Med.4(136):136(2012)
【文献】Kinde et al.,“Detection and Quantification of Rare Mutations with Massively Parallel Sequencing,” Proc Natl Acad Sci USA 108(23):9530-5(2011)
【文献】Narayan et al.,“Ultrasensitive Measurement of Hotspot Mutations in Tumor DNA in Blood Using Error-suppressed Multiplexed Deep Sequencing,” Cancer Res.72(14):3492-8(2012)
【文献】Schmitt et al.,“Detection of Ultra-Rare Mutations by Next-Generation Sequencing,” Proc Natl Acad Sci USA 109(36):14508-13(2012)
【文献】Hiatt et al.,“Single Molecule Molecular Inversion Probes for Targeted,High-Accuracy Detection of Low-Frequency Variation,” Genome Res.23(5):843-54(2013)
【文献】Lou et al.,“High-throughput DNA Sequencing Errors are Reduced by Orders of Magnitude Using Circle Sequencing,” Proc Natl Acad Sci USA 110(49):19872-7(2013)
【文献】Acevedo et al.,“Mutational and Fitness Landscapes of an RNA Virus Revealed Through Population Sequencing,” Nature 2014 505(7485):686-90(2014)
【文献】Acevedo et al.,“Library Preparation for Highly Accurate Population Sequencing of RNA Viruses,” Nat Protoc.9(7):1760-9(2014)
【文献】Drmanac et al.,“Human Genome Sequencing Using Unchained Base Reads on Self-Assembling DNA Nanoarrays,” Science 327(5961):78-81(2010)
【文献】Flusberg et al.,“Direct Detection of DNA Methylation During Single-Molecule,Real-Time Sequencing,” Nat Methods 7(6):461-5(2010)
【文献】Stahlberg et al.,“Simple,Multiplexed,PCR-based Barcoding of DNA Enables Sensitive Mutation Detection in Liquid Biopsies Using Sequencing,” Nucleic Acids Res.44(11):e105)(2016)
【発明の概要】
【0024】
本発明の一態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムに関する。本システムには、注入口及びカートリッジが含まれる。カートリッジは、注入口と流体連結された複数の一次反応チャンバーを含む空間を画定しており、そのチャンバーに注入口からの物質を受け入れ、その物質から一次反応チャンバー産物を産生する。この空間にはまた、複数の個々の列の複数の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体も含まれ、各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを含み、そこで一次反応産物をさらに反応させてアレイ産物を産生する。アレイ産物は、マイクロポアまたはマイクロウェルで検出されるが、その場合、個々の産物捕捉サブユニットの1つ以上の列に、複数の一次反応チャンバーのうちの1つを通った物質を受け入れる。
【0025】
本発明の別の態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムに関する。システムには、注入口、出口、及びマイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを含むカートリッジを含み、カートリッジは注入口及び出口と流体連結されている。カートリッジは、注入口と流体連結された複数の一次反応チャンバーを含む空間を画定しており、そのチャンバーに注入口からの物質を受け入れ、その物質から一次反応チャンバー産物を産生する。この空間にはまた、複数の二次反応チャンバーが含まれ、そのうちの1つ以上は、複数の一次反応チャンバーのうちの1つと流体連結されており、そこに複数の一次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れ、二次反応チャンバー産物を産生する。複数の一次及び二次反応チャンバーの少なくともいくつかを、複数の一次及び二次反応チャンバー内に液体のトラフを保持するように構成することで、後続反応でチャンバー産物またはアレイ産物を産生するための試料、試薬、及び/または生成反応物の混合が容易になる。この空間にはまた、それぞれが複数の二次反応チャンバーのうちの1つと流体連結された複数の混合チャンバーが含まれ、そこに複数の二次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れ、物質を産物捕捉筐体に排出し、それにより、個々の産物捕捉サブユニットの各列が、1つ以上の混合チャンバーのうちの1つに流体連結され、1つ以上の混合チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れる。この空間にはまた、複数の個々の列の複数の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体も含まれ、各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを含み、そこで二次反応産物をさらに反応させてアレイ産物を産生する。アレイ産物は、マイクロポアまたはマイクロウェルで検出されるが、その場合、個々の産物捕捉サブユニットの1つ以上の列に、複数の一次反応チャンバーのうちの1つを通った物質を受け入れる。
【0026】
本発明の別の態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムに関する。システムには、注入口、出口、ならびに注入口及び出口と流体連結されているカートリッジを含む。カートリッジは、複数の個々の列の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体が含まれる空間を画定する。各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアのアレイを含み、マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有する。産物捕捉筐体は、物質が注入口から産物捕捉サブユニットの列を通って、それらサブユニット内のマイクロポアのアレイと接触し、出口に至ることが可能であるように、複数の流体流路を備えており、この複数の流体流路は固体支持体の上及び下に位置する。
【0027】
本発明のさらなる態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法に関する。この方法は、本発明のシステムを提供すること、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを、産物捕捉筐体内の固体支持体上の産物捕捉サブユニットのマイクロポアまたはマイクロウェルに加えることを含む。その結果、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブが、マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持される。
【0028】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。1つ以上の一次反応チャンバー及び/または1つ以上の二次反応チャンバー(存在する場合)の充填に続くプロセスには、システムで一次反応及び/または二次反応を実行し、一次反応及び/または二次反応の実行に基づいて、マイクロウェルまたはマイクロポア内の試料中の標的核酸分子の存在を検出することを含む。
【0029】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。一次反応及び/または二次反応の実行後、消光基及び蛍光基を含む1つ以上のプローブをポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、またはリボヌクレアーゼが標的特異的に切断する条件下で、そのような反応の産物をマイクロウェルまたはマイクロポア内で増幅すると、標的核酸分子が試料に存在する場合、蛍光基が遊離されてシグナルが生じる。
【0030】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。このプロセスには、複数の標的核酸分子が含まれる試料を供給し、次いで標的核酸分子の一部に相補的な第1の部分、及び第2の部分を有する一次オリゴヌクレオチドプライマーのセット及びポリメラーゼとその試料とを接触させ、ポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成することを含む。この混合物を一次反応チャンバーでポリメラーゼ連鎖反応に供し、増幅産物のセットを産生する。増幅産物は、複数の個々の列の複数の捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体に送られる。各個々の産物捕捉サブユニットは、第2の部分に相補的な固定された捕捉プローブを含む複数の個別のマイクロポアのアレイを含む。固定された捕捉プローブに標的核酸分子が捕捉され、コピーされる。固定された標的核酸分子のヌクレオチド配列は、マイクロポアでシーケンシング反応を実行することにより得られる。
【0031】
本発明はまた、試料中の複数の核酸分子を同定するためのマイクロタイタープレートを調製するプロセスに関する。これには、複数の個々の行と列をもつ産物捕捉サブユニットを備えるマイクロタイタープレートを提供することを含み、各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロウェルのアレイを含む。マイクロタイタープレートのマイクロウェルに、オリゴヌクレオチドプライマー及び/またはプローブを含有する水性液体を充填する。マイクロタイタープレートを遠心分離して、水性液体を、マイクロタイタープレート内の各個々の産物捕捉サブユニットの未充填マイクロウェルに分散させる。その後、遠心分離が終了すると、水性液体が疎水性表面と接触していない状態になる。水性液体を蒸発させ、マイクロウェルを乾燥することで、マイクロウェルにオリゴヌクレオチドプライマーを残留させる。
【0032】
本発明の別の態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムに関する。このシステムには、注入口、出口、ならびに注入口及び出口と流体連結されているカートリッジを含む。カートリッジは、複数の個々の列の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体が含まれる空間を画定する。各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアのアレイを含み、マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有する。産物捕捉筐体は、物質が注入口から産物捕捉サブユニットの列を通って、それらサブユニット内のマイクロポアのアレイと接触し、出口に至ることが可能であるように、複数の流体流路を備えており、この複数の流体流路は固体支持体の上及び下に位置する。
【0033】
本発明は、血液試料から疾患の原因を直接判定するための一連のデバイス、チャンバー、及びアッセイを提供する。臨床試料から核酸を精製し、標的領域を一連の増幅反応に供し、リアルタイムPCRまたはシーケンシングのいずれかを読み取り値として使用して、標的を同定または計数する。
【0034】
本発明は、米国及び世界が直面している主要な診断臨床上の課題に対処しやすくすることを目的とする。最大の未充足ニーズは、最も早い段階でがんを発見することである。利用可能で正確な早期発見検査は、米国で年間300,000人超、世界で4,000,000人超の生命を救う可能性があり、米国だけで年間医療費を3000億ドル節約することができる。この課題の解決策の一つとして有望なものが、本出願で説明するような、1分子レベルの感度で、複数のDNA変異及びメチル化の変化を同時にアッセイするプロセスとシステムを提供することである。同じアッセイを使用して、血液中の「がんマーカーの負荷」を監視し、所与の治療が手術後の残存がん細胞をどれだけ効果的に殺傷しているかを監視することもできる。関連する課題は、別の治療法がまだ有効であり得る時点で、がんの早期再発について患者を監視することである。本発明は、がんマーカーの追跡に、Taqman(商標)アッセイ、シーケンシング、またはその両方を使用する柔軟性が得られる。
【0035】
感染性疾患検査は、単一の病原体検出から、症状に基づく病原体検出または血液媒介性の病原体検出へと移行しつつある。本発明は、何百もの標的に対する正確なウイルス負荷値または細菌負荷値が同時に得られる可能性をもち、医師が臨床的に実行可能な決定を下す指針となる。例えば、呼吸器疾患を患っている患者を、インフルエンザ及びパラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルス、ライノウイルス、エンテロウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ヒト型結核菌、肺炎球菌、A群レンサ球菌、マイコプラズマ肺炎、ヘモフィルスインフルエンザなどのあらゆる株について同時に検査することができる。血液媒介性の病原体の場合、本発明を使用して、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、MRSA、ストレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)(VRE)、リステリア(Listeria)、アシネトバクター(Acinetobacter)、エンテロバクター(Enterobacter)、大腸菌(E.coli)(毒素生産物を含む)、クレブシエラ(Klebsiella)(KPCのものを含む)、シュードモナス(Pseudomonas)、プロテウス(Proteus)、カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ナイセリア(Neisseria)、ヘモフィルス(Haemophilus)などを区別することができる。発熱の症状がある海外旅行者を検査して、ジカウイルスを、ウイルス性出血熱(デング熱、黄熱病、西ナイル熱、アレナウイルス、フィロウイルス、ブニヤウイルス、及びその他のフラビウイルス)またはその他のウイルス(インフルエンザ、RSV、SARS、チクングニア、風疹、はしか、パルボウイルス、エンテロウイルス、アデノウイルス、及びアルファウイルス感染)、または寄生虫原因(マラリア)もしくは細菌原因(A群レンサ球菌、リケッチア、ボレリア、レプトスピラ症)と区別することができる。
【0036】
非侵襲的出生前検査は現在、直接シーケンシングによる染色体断片の計数、またはアレイを用いた定量によるライゲーションに基づく検出のいずれかを使用して染色体コピー異常を識別するために使用されている。1分子レベルで標的を正確に同定及び計数する本発明の能力は、正確性の高い結果をより低コストで提供する機会をもたらすと考えられる。例として、生命にかかわる常染色体及びX連鎖劣性メンデル型遺伝病;21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー、ターナー症候群、クラインフェルター症候群(染色体コピー異常);デュシェンヌ型及びベッカー型筋ジストロフィー、嚢胞性線維症、ならびにその他の遺伝性疾患について、より完全な血液検査が可能である。
[本発明1001]
注入口と
空間を画定するカートリッジと
を含む、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであって、
前記空間が、
前記注入口からの物質を受け入れ、前記物質から一次反応チャンバー産物を産生するために前記注入口と流体連結された、複数の一次反応チャンバーと、
複数の産物捕捉サブユニットの複数の個々の列を備える固体支持体の入った産物捕捉筐体であって、各個々の産物捕捉サブユニットが、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを含み、そこで一次反応産物をさらに反応させてアレイ産物を産生し、これを前記マイクロポアまたはマイクロウェルで検出し、ここで、個々の産物捕捉サブユニットの1つ以上の前記列に、前記複数の一次反応チャンバーのうちの1つを通った物質を受け入れる、前記産物捕捉筐体と
を含む、
前記システム。
[本発明1002]
前記産物捕捉筐体から物質を排出するための出口をさらに含む、本発明1001のシステム。
[本発明1003]
前記カートリッジによって画定される前記空間が、
そこに前記注入口から物質が排出され、そこから物質が前記複数の一次反応チャンバーに排出される、1つ以上の初期反応チャンバー
をさらに含む、本発明1001のシステム。
[本発明1004]
前記カートリッジによって画定される前記空間が、
前記複数の一次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れるために、そのうちの1つ以上が前記複数の一次反応チャンバーのうちの1つと流体連結されている、複数の二次反応チャンバーと、
前記複数の二次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れ、かつ物質を前記産物捕捉筐体に排出し、それにより、個々の産物捕捉サブユニットの各列が、1つ以上の混合チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れるために該1つ以上の混合チャンバーのうちの1つに流体連結された、それぞれが前記複数の二次反応チャンバーのうちの1つと流体連結された複数の混合チャンバーと
をさらに含む、本発明1001のシステム。
[本発明1005]
前記複数の一次及び二次反応チャンバーの少なくともいくつかが、前記複数の一次及び二次反応チャンバー内に液体のトラフを保持するように構成される、本発明1004のシステム。
[本発明1006]
前記複数の一次及び二次反応チャンバーのそれぞれが、前記複数の一次及び二次反応チャンバー内に液体のトラフを保持する内部バッフルを有する、本発明1004のシステム。
[本発明1007]
前記複数の一次及び/または二次反応チャンバーのそれぞれが、前記複数の一次及び二次反応チャンバー内に複数の液体のトラフを保持する1つ以上の内部バッフルを有する、本発明1004のシステム。
[本発明1008]
前記混合チャンバーのそれぞれが、物質が前記混合チャンバーに入る付近から、物質が前記混合チャンバーを出る付近まで延在する仕切部を含む、本発明1004のシステム。
[本発明1009]
前記混合チャンバーのそれぞれが、疎水性の高い第1の表面と、第1の表面から間隔をあけて配置され、第1の表面よりも疎水性が低い第2の表面とを含み、
前記第1及び第2の表面が、物質が前記混合チャンバーに入る付近から、物質が前記混合チャンバーを出る付近まで延在する、
本発明1004のシステム。
[本発明1010]
前記一次反応チャンバー及び/または前記二次反応チャンバーが、オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブをそこにスポットできる内部表面を含む、本発明1004のシステム。
[本発明1011]
前記産物捕捉サブユニットが、複数の個別のマイクロポアのアレイを含み、前記マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有する、本発明1001のシステム。
[本発明1012]
前記産物捕捉筐体内の前記マイクロポアの前記第2の端を覆うメッシュスクリーン
をさらに含む、本発明1011のシステム。
[本発明1013]
前記個別のマイクロポア内に配置されたビーズ
をさらに含む、本発明1011のシステム。
[本発明1014]
前記産物捕捉サブユニットが、開口端及び閉口端をそれぞれが有する複数の個別のマイクロウェルのアレイを含む、本発明1001のシステム。
[本発明1015]
前記産物捕捉筐体が、
物質が前記複数の混合チャンバーから前記産物捕捉サブユニットの列を通って、それらサブユニット内のマイクロポアまたはマイクロウェルのアレイと接触することを可能にする複数の流体流路
を含む、本発明1004のシステム。
[本発明1016]
前記複数の流体流路が、前記固体支持体の上方及び下方に位置する、本発明1015のシステム。
[本発明1017]
前記複数の流体流路が、前記固体支持体の上方に位置する、本発明1015のシステム。
[本発明1018]
前記注入口を通して試薬または反応物をカートリッジへ誘導するか、またはカートリッジから排出するか、を選択するための1つ以上のバルブ
をさらに含む、本発明1001のシステム。
[本発明1019]
前記出口及び/または前記産物捕捉筐体内の前記出口から離れた位置を通して試薬または反応物を前記産物捕捉筐体へ誘導するか、または前記産物捕捉筐体から排出するか、を選択するための1つ以上のバルブ
をさらに含む、本発明1001のシステム。
[本発明1020]
前記一次反応チャンバー及び/または前記産物捕捉筐体に近接する1つ以上の発熱体を前記カートリッジ内にさらに含む、本発明1001のシステム。
[本発明1021]
前記初期反応チャンバーに近接する1つ以上の発熱体を前記カートリッジ内にさらに含む、本発明1003のシステム。
[本発明1022]
前記二次反応チャンバーのうちの1つ及び/または前記1つ以上の前記混合チャンバーに近接する1つ以上の発熱体を前記カートリッジ内にさらに含む、本発明1004のシステム。
[本発明1023]
試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法であって、
本発明1001のシステムを提供することと、
ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを、前記産物捕捉筐体内の前記固体支持体上の前記産物捕捉サブユニットの前記マイクロポアまたはマイクロウェルに加え、それにより、前記ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを前記マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持することと
を含む、前記方法。
[本発明1024]
前記試料中の標的核酸の一部と相補的なヌクレオチド配列を含む第1の部分をそれぞれが有する一次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを、前記1つ以上の一次反応チャンバーに充填することをさらに含む、本発明1023の方法。
[本発明1025]
前記一次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーが、
前記マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持されたユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーの一部と同一であるかまたは相補的であるヌクレオチド配列を含む、第2の部分
をさらに含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法であって、
本発明1004のシステムを提供することと、
ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを、前記産物捕捉筐体内の前記固体支持体上の前記産物捕捉サブユニットの前記マイクロポアまたはマイクロウェルに加え、それにより、前記ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを前記マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持することと
を含む、前記方法。
[本発明1027]
前記試料中の標的核酸の一部と相補的なヌクレオチド配列を含む第1の部分をそれぞれが有する一次または二次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを、前記1つ以上の一次反応チャンバー及び/または二次反応チャンバーに充填することをさらに含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
前記一次または二次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーが、
前記マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持されたユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーの一部と同一であるかまたは相補的であるヌクレオチド配列を含む、第2の部分
をさらに含む、本発明1027の方法。
[本発明1029]
前記産物捕捉サブユニットが、個別のマイクロポアのアレイを含み、
前記マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、
前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有し、
前記マイクロポアの前記第1の端と流体連通する第1の通路と、前記マイクロポアの前記第2の端と流体連通する第2の通路と、を備え、
ここで、前記ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブが、以下に示す順序の以下の工程:
疎水性液体を前記第2の通路に通しながら、前記ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを、前記第1の通路を通して、前記第1の開口端から前記マイクロポアに通す工程;
疎水性液体を前記第2の通路に通しながら、疎水性液体を前記第1の通路に通す工程;
疎水性液体を前記第2の通路に通しながら、揮発性溶媒を前記第1の通路に通す工程;及び
熱、疎水性液体、揮発性溶媒、さらに空気を前記第2の通路に通しながら、空気を前記第1の通路を通す工程
を含む方法により、前記マイクロポアに加えられる、
本発明1023または本発明1026の方法。
[本発明1030]
前記産物捕捉サブユニットが、個別のマイクロポアのアレイを含み、
前記マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、
前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有し、
前記マイクロポアの前記第1の端と流体連通する第1の通路と、前記第2の端を覆うメッシュスクリーンによって前記マイクロポアの前記第2の端と隔てられかつ第2の通路と流体連通される第2の通路と、を備え、
ここで、前記検出または捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブが、以下に示す順序の以下の工程:
前記ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを、前記第1の通路を通して、前記第1の開口端から前記マイクロポアに通す工程;
前記ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを前記第1の通路から排出しながら、疎水性液体を前記第1の通路に通す工程;
疎水性液体を前記第2の通路に通しながら、疎水性液体を前記第1の通路に通す工程;
疎水性液体を前記第2の通路に通しながら、揮発性溶媒を前記第1の通路に通す工程;及び
熱、疎水性液体、揮発性溶媒、さらに空気を前記第2の通路に通しながら、空気を前記第1の通路を通す工程
を含む方法により、前記マイクロポアに加えられる、
本発明1023または本発明1026の方法。
[本発明1031]
本発明1025または本発明1028の方法により調製されるシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスであって、
前記1つ以上の一次反応チャンバーに充填することが、及び存在する場合には任意で、前記1つ以上の二次反応チャンバーに充填することが、
前記システム内で前記一次反応及び/または二次反応を実行することと、
前記一次反応及び/または二次反応の実行に基づいて、前記マイクロウェルまたはマイクロポア内の前記試料中の標的核酸分子の存在を検出することと
をさらに含む、前記プロセス。
[本発明1032]
前記検出することが、
標的核酸分子が試料に存在する場合、蛍光基が遊離されてシグナルが生じるように、消光基及び蛍光基を含む1つ以上のプローブをポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、またはリボヌクレアーゼが標的特異的に切断する条件下で、前記一次及び/または二次反応の前記産物を前記マイクロウェルまたはマイクロポア内で増幅すること
を含む、本発明1031のプロセス。
[本発明1033]
前記一次反応及び/または二次反応を実行することが、
複数の標的核酸分子が含まれる試料を供給することと;
第1のポリメラーゼ伸長または連鎖反応混合物を形成するために、前記標的核酸分子の一部に相補的な第1の部分、または前記標的核酸分子の相補体を有する一次オリゴヌクレオチドプライマーのセット、及びポリメラーゼと、前記試料とを接触させることと;
伸長産物または増幅産物の第1のセットを産生するために、1つ以上の初期反応チャンバーまたは一次反応チャンバーで前記第1のポリメラーゼ伸長または連鎖反応混合物を第1のポリメラーゼ伸長または連鎖反応に供することと;
第2のポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成するために、伸長産物または増幅産物の前記第1のセットを、一次伸長産物または一次増幅産物の一部と相補的である第1の部分を有する二次オリゴヌクレオチドプライマーのセット、及びポリメラーゼとを接触させることと;
5’の第2の部分配列、標的ヌクレオチド配列特異的部分またはその相補体、及び3’の第2の部分相補配列をそれぞれの二次増幅産物が含む増幅産物の第2のセットを産生するために、前記一次または二次反応チャンバーで前記第2のポリメラーゼ連鎖反応混合物を第2のポリメラーゼ連鎖反応に供することと
を含む、本発明1031のプロセス。
[本発明1034]
前記一次反応及び/または二次反応を実行することが、
複数の標的核酸分子が含まれる試料を供給することと;
第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成するために、前記標的核酸分子の一部に相補的な部分またはその伸長産物を有する一次オリゴヌクレオチドプライマーのセット、及びポリメラーゼと、前記試料とを接触させることと;
増幅産物の第1のセットを産生するために、1つ以上の初期反応チャンバーまたは一次反応チャンバーで前記第1のポリメラーゼ連鎖反応混合物を第1のポリメラーゼ連鎖反応に供することと;
リガーゼ検出反応混合物を形成するために、増幅産物の前記第1のセットの一部と相補的である第1の部分、及び第2の部分を有するオリゴヌクレオチドプローブのセット、ならびにリガーゼと、増幅産物の前記第1のセットとを接触させることと;
5’の第2の部分配列、標的ヌクレオチド配列特異的部分またはその相補体、及び3’の第2の部分配列をそれぞれのライゲーション産物が含むライゲーション産物のセットを産生するために、前記一次または二次反応チャンバーで前記リガーゼ検出反応混合物をリガーゼ検出反応に供することと
を含む、本発明1031のプロセス。
[本発明1035]
前記1つ以上の一次反応チャンバーに充填すること、存在する場合には前記1つ以上の二次反応チャンバーに充填すること、ならびに前記システムで一次反応及び/または二次反応を実行することが、以下に示す順序の以下の工程:
疎水性液体を前記注入口から前記システムに通す工程;
一次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー、ならびに逆転写及び/もしくはポリメラーゼ連鎖反応試薬、さらに疎水性液体を前記注入口から前記システムに送る工程;
前記システムでポリメラーゼ伸長または連鎖反応を実行する工程;
前記注入口を通して前記システムから物質を排出する工程;
疎水性液体、ポリメラーゼ連鎖反応試薬またはリガーゼ検出反応試薬、さらに疎水性液体を前記注入口から前記システムに送る工程;ならびに
前記システムでポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応を実行する工程
を含むプロセスによって実行される、本発明1031のプロセス。
[本発明1036]
前記産物捕捉サブユニットが、個別のマイクロポアのアレイを含み、
前記マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、
前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有し、
前記マイクロポアの第1の端と流体連通する第1の通路と、前記マイクロポアの前記第2の端と流体連通する第2の通路と、を備え、
ここで、前記システムで前記二次反応を実行することが、以下に示す順序の以下の工程:
疎水性液体を前記第2の通路に通しながら、ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応の前記産物を、前記第1の通路を通して前記産物捕捉筐体に送る工程;
疎水性液体を前記第1及び第2の通路に通す工程;及び
ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応の前記産物を、前記産物捕捉サブユニットの前記マイクロポア内でユニバーサルタグプライマー及びプローブとのポリメラーゼ連鎖反応に供する工程
を含むプロセスによって実行される、
本発明1031のプロセス。
[本発明1037]
前記産物捕捉サブユニットが、個別のマイクロポアのアレイを含み、
前記マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、
前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有し、
前記マイクロポアの第1の端と流体連通する第1の通路と、前記マイクロポアの前記第2の端を覆うメッシュスクリーンによって前記マイクロポアの前記第2の端と流体連通されかつ隔てられた第2の通路と、を備え、
前記システムで前記二次反応を実行することが、以下に示す順序の以下の工程:
ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応の前記産物を、前記第1の通路を通して前記産物捕捉筐体に送る工程;
疎水性液体を前記第1の通路に通す工程;
疎水性液体を前記第1及び第2の通路に通す工程;
ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応の前記産物を、前記産物捕捉サブユニットの前記マイクロポア内でユニバーサルタグプライマー及びプローブとのポリメラーゼ連鎖反応に供する工程
を含むプロセスによって実行される、
本発明1031のプロセス。
[本発明1038]
1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のヌクレオチドの挿入もしくは欠失、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、1つ以上の転座、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、前記試料中または他の試料中の他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる複数の核酸分子を、試料において同定する、本発明1031のプロセス。
[本発明1039]
本発明1024の方法により調製されるシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスであって、前記1つ以上の一次反応チャンバーに充填することに続いて、前記プロセスが、
前記システム内で前記一次反応を実行することと、
前記一次反応を実行することに続いて前記試料中の標的核酸分子の前記ヌクレオチド配列を取得することと
をさらに含む、前記プロセス。
[本発明1040]
前記一次反応を実行することが、
複数の標的核酸分子が含まれる試料を供給することと;
ポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成するために、前記標的核酸分子の一部に相補的な第1の部分、及び第2の部分を有する一次オリゴヌクレオチドプライマーのセット、ならびにポリメラーゼと、前記試料とを接触させることと;
増幅産物のセットを産生するために、前記一次反応チャンバーで前記ポリメラーゼ連鎖反応混合物をポリメラーゼ連鎖反応に供することと;
各個々の産物捕捉サブユニットが、前記第2の部分に相補的な固定された捕捉プローブを含む複数の個別のマイクロポアのアレイを含む、複数の個々の列の複数の捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った前記産物捕捉筐体に前記増幅産物を送ることであって、前記試料中の標的核酸分子の前記ヌクレオチド配列を取得することが前記マイクロポア内で実行される、前記送ることと
を含む、本発明1039のプロセス。
[本発明1041]
前記産物捕捉サブユニットが、複数の個別のマイクロポアのアレイを含み、前記マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有する、本発明1040のプロセス。
[本発明1042]
前記産物捕捉筐体内の前記マイクロポアの前記第2の端を覆うメッシュスクリーン
をさらに含む、本発明1041のプロセス。
[本発明1043]
前記個別のマイクロポア内に配置された前記固定された捕捉プローブを含むビーズ
をさらに含む、本発明1040のプロセス。
[本発明1044]
前記ヌクレオチド配列を取得する前と、前記ポリメラーゼ連鎖反応混合物をポリメラーゼ連鎖反応に供した後に、前記増幅産物から少なくとも1つの第2の部分を除去することをさらに含む、本発明1040のプロセス。
[本発明1045]
ウラシルDNAグリコシラーゼ、アプリン/アピリミジンエンドヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼIV、エンドヌクレアーゼV、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ、ホルムアミドピリミジンDNAグリコシラーゼ、もしくは8-オキシグアニンDNAグリコシラーゼ、またはそれらの組み合わせを用いて、前記除去することを実施する、本発明1044のプロセス。
[本発明1046]
前記産物捕捉サブユニットが、個別のマイクロポアのアレイを含み、
前記マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、
前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有し、
前記マイクロポアの第1の端と流体連通する第1の通路と、前記マイクロポアの前記第2の端を覆うメッシュスクリーンによって前記マイクロポアの前記第2の端と流体連通されかつ隔てられた第2の通路と、を備え、
ここで、前記ヌクレオチド配列を取得することが、以下に示す順序の以下の工程:
ポリメラーゼ連鎖反応の前記産物を、前記第1の通路を通して前記産物捕捉筐体に送る工程;
前記産物を個別のマイクロウェルに分配するように、疎水性液体を前記第1の通路に通す工程;
疎水性液体を前記第1及び第2の通路に通す工程;
増幅産物を産生する条件下で、前記マイクロウェルの内部表面に固定された前記捕捉オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応及び/または等温反応にて前記産物を増幅する工程;
疎水性液体を前記第2の通路に通しながら、揮発性溶媒を前記第1の通路に通す工程;
前記産物を個別のマイクロウェルに単離するように、疎水性液体を前記第2の通路に通しながら、前記ポリメラーゼ連鎖反応及び/または等温反応の前記産物を変性し、固定されていない核酸分子を前記第1の通路から洗い流す工程;
揮発性溶媒、空気、さらにシーケンシング試薬を前記第2の通路に通しながら、水よりも高密度の疎水性液体を前記第1の通路に通す工程;ならびに
前記産物捕捉サブユニットでシーケンシング反応を実行する工程
を含むプロセスによって実行される、
本発明1039のプロセス。
[本発明1047]
試料中の複数の核酸分子を同定するためのマイクロタイタープレートを調製するプロセスであって、
複数の個々の行と列をもつ産物捕捉サブユニットを備え、各個々の産物捕捉サブユニットが、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロウェルのアレイを含む、マイクロタイタープレートを提供することと;
オリゴヌクレオチドプライマー及び/またはプローブを含有する水性液体のセットを、前記マイクロタイタープレートの前記マイクロウェルのセットに充填することと;
前記水性液体を、前記マイクロタイタープレート内の各個々の産物捕捉サブユニットの未充填マイクロウェルに分散させるために、前記マイクロタイタープレートを遠心分離することと;
前記水性液体が前記疎水性表面と接触していない状態にするために、前記遠心分離を終了することと;
前記水性液体を蒸発させることと;
前記マイクロウェルに前記オリゴヌクレオチドプライマーを残留させるように、前記マイクロウェルを乾燥することと
を含む、前記プロセス。
[本発明1048]
本発明1047のプロセスにより調製されるマイクロタイタープレートを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスであって、
水性試料を前記マイクロタイタープレートに投入することと;
疎水性液体が前記水性試料の上に位置するように、前記疎水性液体を前記マイクロタイタープレートに投入することと;
前記水性液体を、前記マイクロタイタープレート内の未充填マイクロウェルに分散させるために、前記マイクロタイタープレートを遠心分離することと;
前記試料が前記疎水性表面と接触していない状態にするために、前記遠心分離を終了することと;
前記標的核酸分子が前記試料に存在する場合に、蛍光基が遊離されてシグナルが生じるように、消光基及び蛍光基を含む1つ以上のプローブをポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、またはリボヌクレアーゼが標的特異的に切断する条件下で、核酸分子の増幅反応を実施することと
を含む、前記プロセス。
[本発明1049]
1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のヌクレオチドの挿入もしくは欠失、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、1つ以上の転座、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、前記試料中または他の試料中の他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる複数の核酸分子を、試料において同定する、本発明1048のプロセス。
[本発明1050]
注入口と;
出口と;
前記注入口及び前記出口と流体連結し、空間を画定するカートリッジと
を含む、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであって、
前記空間が、
複数の個々の列の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体であって、各個々の産物捕捉サブユニットが、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアのアレイを含み、前記マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、前記第1の端は大きい直径を有し、前記第2の端は前記第1の端の直径よりも小さい直径を有し、物質が前記注入口から前記産物捕捉サブユニットの列を通って、前記サブユニット内のマイクロポアの前記アレイと接触しそして前記出口に至ることが可能であるように、前記産物捕捉筐体が複数の流体流路を備えており、前記複数の流体流路は前記固体支持体の上方及び下方に位置する、前記産物捕捉筐体
を含む、
前記システム。
[本発明1051]
前記注入口または前記出口を通して試薬及び/または反応物を前記産物捕捉筐体へ誘導するか、または前記産物捕捉筐体から排出するか、を選択するための1つ以上のバルブ
をさらに含む、本発明1050のシステム。
[本発明1052]
前記産物捕捉筐体に近接する1つ以上の発熱体を前記カートリッジ内にさらに含む、本発明1050のシステム。
[本発明1053]
試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法であって、
本発明1050のシステムを提供することと、
捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを、前記産物捕捉筐体内の前記固体支持体上の前記産物捕捉サブユニットの前記マイクロポアに加え、それにより、前記捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを前記マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持することと
を含む、前記方法。
[本発明1054]
本発明1053の方法により調製されるシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスであって、捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを前記マイクロポアに前記加えることに続いて、前記プロセスが、
前記システム内で前記反応を実行することと、
前記反応の実行に基づいて、前記マイクロポア内の前記試料中の標的核酸分子の存在を検出することと
を含む、前記プロセス。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1A図1Dは、細区画で構成され、カートリッジとの流体連結に適する固体支持体の概略図を示す。各細区画には、後続のqPCR、UniTaq、FRET、qLDR、またはシーケンシング反応、及び標的同定のためのマイクロポアまたはマイクロウェルが含まれる。図1Aでは、各細区画は幅400ミクロン×長さ600ミクロン(長方形断面図として図示)であり、直径50ミクロンの24個のマイクロポアまたはマイクロウェルが含まれる。細区画間にはさらに100ミクロン幅の隆起部が使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。これらを長方形の細区画の行間及び列間に「白色」領域として表す。図1Bでは、各細区画は幅600ミクロン×長さ400ミクロン(長方形断面図として図示)であり、直径5ミクロンの2,760個のマイクロポアまたはマイクロウェルが含まれる。細区画間にはさらに100ミクロン幅の隆起部が使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。図1Cでは、各細区画は幅800ミクロン×長さ1,200ミクロン(長方形断面図として図示)であり、直径50ミクロンの96個のマイクロポアまたはマイクロウェルが含まれる。細区画間にはさらに200ミクロン幅の隆起部が使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。図1Dでは、各細区画は幅400ミクロン×長さ600ミクロン(長方形断面図として図示)であり、直径5ミクロンの2,760個のマイクロポアまたはマイクロウェルが含まれる。細区画間にはさらに100ミクロン幅の隆起部が使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。
図2】直径50ミクロンのマイクロウェルまたはマイクロポアのアレイへのマイクロ流路の流体接続の概略正面図を示す。図2は、数千のマイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバーの例示的な設計の概略正面図を示している。この図では、注入試料は大きな六角形チャンバー(下部)に流体接続され、六角形チャンバーは第1の12個の菱形チャンバーのセット(4個おきに、それぞれ大トラフ、中トラフ、及び小トラフを含む)に流体接続され、第1の12個の菱形チャンバーのセットは第2の24個の菱形チャンバーのセット(2個おきに、それぞれ大トラフ及び小トラフを含む)に流体接続され、第2の菱形チャンバーのセットは、24個の細長い混合チャンバーに流体接続され、混合チャンバーは、マイクロウェルまたはマイクロポア(拡大正面図ではパネルの上部に2行のみを図示)が含まれるチャンバーに流体接続されている。
図3】直径5ミクロンのマイクロポアのアレイへのマイクロ流路の流体接続の概略正面図を示す。図3は、Taqman(商標)またはシーケンシング反応に適した、数百万のマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバーの別の例示的な設計の概略正面図を示している。この図では、注入試料は大きな六角形チャンバー(下部)に流体接続され、六角形チャンバーは第1の8個の六角形チャンバーのセット(4個おきに、それぞれ大トラフ及び小トラフを含む)に流体接続され、第1の六角形チャンバーのセットは第2の16個の六角形チャンバーのセット(2個おきに、それぞれ大トラフ及び小トラフを含む)に流体接続され、第2の六角形チャンバーのセットは、16個の細長い混合チャンバーに流体接続され、混合チャンバーは、マイクロウェルまたはマイクロポア(拡大正面図ではパネルの上部に2行のみを図示)が含まれるチャンバーに流体接続されている。
図4図4A図4Cは、固体支持体内の50ミクロンのマイクロウェルの概略正面図(図4A)、図4Aの線B-Bに沿った断面図(図4B)、及び図4Aの線C-Cに沿った断面図(図4C)を示し、流体の流れを誘導しやすくし、構造安定性をもたらすために、チャンバー間の隆起部がプレートにどのように連結されているかを示している。この図は、5または2.5ミクロンのマイクロポアにも該当するが、その場合、各チャンバー内に図示されるマイクロポアは多くなる。一実施形態では、縦方向の隆起部は上部プレート及び下部プレートと面一であり、横方向の隆起部は液体が列の上を流れるが、ある列から次の列へは流れないようにするためのくぼみまたは流路を有する。
図5図5A図5Cは、固体支持体内の50ミクロンのマイクロウェルの概略正面図(図5A)、図5Aの線B-Bに沿った断面図(図5B)、及び図5Aの線C-Cに沿った断面図(図5C)を示し、流体の流れを誘導しやすくし、構造安定性をもたらすために、チャンバー間の隆起部が2枚のプレートにどのように連結されているかを示している。この図は、5または2.5ミクロンのマイクロポアにも該当するが、その場合、各チャンバー内に図示されるマイクロポアは多くなる。この図では、チャンバーの前面は淡色プレートとマイクロポアの広径側との間の領域であり、チャンバーの背面は暗色プレートとマイクロポアの狭径側との間の領域である。背面プレートを発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。一実施形態では、縦方向の隆起部は上部プレート及び下部プレートと面一であり、横方向の隆起部は液体が列の上を流れるが、ある列から次の列へは流れないようにするためのくぼみまたは流路を有する。
図6図6A図6Cは、図13と同様である固体支持体内の50、5、または2.5ミクロンのマイクロポアの概略正面図(図6A)、図6Aの線B-Bに沿った断面図(図6B)、及び図6Aの線C-Cに沿った断面図(図6C)を示す。ただし、この図では、50、5、または2.5ミクロンのマイクロポアの底部が、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層をどのように備えるかを示している。この層により、5または2.5ミクロンのマイクロポアに前面から液体を充填することができ、背面の0.5ミクロンのポアから空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。この図では、チャンバーの前面は淡色プレートとマイクロポアの広径側との間の領域であり、チャンバーの背面は暗色プレートとマイクロポアの狭径側との間の領域である。背面プレートを発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。
図7図7A図7Iは、異なる試薬を混合すること、様々な増幅反応を実施すること、または後ほど次の反応に使用するため、もしくはマイクロウェルもしくはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させるために上記増幅反応物の一部を保存することを含む様々な操作を行うことができるプレチャンバーの様々な設計の概略正面図を示す。図7Aは、排出後に少量の反応物を保持するためのトラフを備えたチャンバーを示す。図7Bは、排出後に中量の反応物を保持するためのトラフを備えたチャンバーを示す。図7Cは、排出後に多量の反応物を保持するためのトラフを備えたチャンバーを示す。図7Dは、排出後に1種または2種の少量の反応物を保持するための2つのトラフを備えたチャンバーを示す。図7Eは、排出後に1種の中量の反応物及び/または1種の少量の反応物を保持するための2つのトラフを備えたチャンバーを示す。図7Fは、排出後に多量の反応物を保持するためのトラフを備え、第2の反応流体を下方へ移動させ、最初の反応により予め残存する産物と完全に混合することを確実にする追加障壁を備えるチャンバーを示す。図7Gは、図7Aと同様であるが、チャンバー下部ではなく側面から試薬が投入される。図7H図7Gと類似しているが、より多量の産物がチャンバー下部に保持される。図7Iは、図7Hと同様であるが、水性液層と油層とを個別に移動できるような追加部分をいくつか備えている。図7Iでは、チャンバーは図7Hと同様であるが、追加部分をいくつか備える。
図8図8A図8Cは、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバーの様々な設計の概略正面図を示す。図8Aは、8つのチャンバー内の流体連結するプライマー及び/またはプローブ(灰色の円)が、チャンバーを出た後、より細長いチャンバーへ、そしてマイクロウェルまたはマイクロポアの行へと入り、最終的にマイクロウェルまたはマイクロポア内で乾燥され、内部表面に共有結合する例である。図8Bは、4+4のチャンバーに流体連結する試薬が、チャンバーを出た後、より細長いチャンバーに入る例である。左側はコーティングされているか、極疎水性のプラスチックで作製されているが、右側はわずかに疎水性であるか、やや親水性である。図8C図8Aと同様であるが、チャンバーが4つしかなく、プラスチック製の隆起部または仕切部を追加で備える。
図9図9A図9Bは、図5A及び図6Bに例示されるような、マイクロポアに充填するための実施形態の概略側面図を示す。図9Aは、上部と下部の両側が開口しているマイクロポアを示す。上部からマイクロポアにプライマー(及びプローブ)が流体導入されると同時に、下部から油が導入される。続いて、油によって頂部領域から水溶液が押し流され、プライマー/プローブは流体分離される。プライマーが固定され、乾燥される場合がある。図9Bは、頂部側が開口し、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層を備えるマイクロポアを示す。この層により、50、5、または2.5ミクロンのマイクロポアに前面から液体を充填することができ、底面の0.5ミクロンの孔から空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。
図10】マイクロウェルまたはマイクロポアに充填する前に、反応チャンバーに充填する実施形態の概略正面図を示す。この構成は、2組の反応チャンバーで構成され、それぞれトラフを有し、第2のセットには適切なライゲーションプローブオリゴヌクレオチド(灰色の円)が事前にスポットされている。下部に軽油キャップを導入した後、標的、PCRプライマー、及びPCR試薬を含む水性液体を投入し、次いで重油を使用して、第1の反応チャンバーのセットに流体移動させる。PCR工程の後、油と大半の水性反応物が排出され、最初の2つのチャンバーのトラフに産物の一部が残る。チャンバーに再び軽油を充填した後、LDR試薬及び酵素を充填し、次いでこの水性反応混合物を、重油を使用して、第2の反応チャンバーのセット(事前にスポットされたLDRプライマーとここで混合する)に流体移動させる。
図11図11A図11Bは、Taqman(商標)またはUniTaq反応などのリアルタイムPCR反応を実施するために、図5A及び図6Bに例示されるようなマイクロポアに充填するための実施形態の概略正面図を示す。図は、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマーセット)を予備充填して乾燥させたマイクロポアから始まっている。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。図11Aでは、テール付き標的またはライゲーションされたプローブが下部前面からマイクロポアに流体導入されると同時に、下部背面から油が導入される。続いて、前面から油が流入すると、非生産的な容積から水性液体が押し出され、マイクロポアへ流入すると同時に、前面の各個々のマイクロポアが油で覆われる。図11Bでは、マイクロポアの内側表面と0.5ミクロンの穴のある窒化ケイ素を除き、すべての表面が疎水性である。水性流体は下部前面から注入されると、前面からマイクロポアに入り、背面から空気を押し出すが、0.5ミクロンの窒化ケイ素の孔は通過しない。水性液体が前面からマイクロポアに充填されたときに、前面から油が流入すると、非生産的な容積から水性液体が押し出され、マイクロポアへ流入すると同時に、前面の各個々のマイクロポアが油で覆われる。チャンバーの背面に油が充填されてもよい。各マイクロポアは流体分離されており、後続の独立した増幅及び熱サイクル反応に適している。
図12】シーケンシング反応を実行するために、図6に例示されるようなマイクロポアに充填するための実施形態の概略側面図を示す。この例では、マイクロポアの内側表面と0.5ミクロンの穴のある窒化ケイ素を除き、すべての表面が疎水性である。水性流体は下部前面から注入されると、前面からマイクロポアに入り、背面から空気を押し出すが、0.5ミクロンの窒化ケイ素の孔は通過しない。水性液体が前面からマイクロポアに充填されたときに、前面から油が流入すると、非生産的な容積から水性液体が押し出され、マイクロポアへ流入すると同時に、前面の各個々のマイクロポアが油で覆われる。背面にも油が充填されている。各マイクロポアは流体分離されており、鋳型鎖を増幅して、マイクロポアの内部表面の固体支持体に固定する後続の独立した熱サイクル反応に適している。油は前面チャンバーから排出され、反対側の鎖産物は変性され、他の産物及びプライマーは洗い流される。重油プラグを使用して前面チャンバー下部を塞ぐと同時に、背面をすすぐと、シーケンシングに適したマイクロポア内でクローン増殖されて固定された標的鎖がアレイに供給される。
図13図13A~13Bは、図1及び図6に記載のマイクロウェルまたはマイクロポアを使用したチャンバー形式の概略正面図を示す。図13Aは、細区画が幅800ミクロン×長さ1200ミクロン(長方形断面図として図示)であるマイクロウェル形式であり、直径50ミクロンの96個のマイクロウェルが含まれる。細区画間にはさらに200ミクロン幅の隆起部が使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。これらを長方形の細区画の行間及び列間に「白色」領域として表す。図13Bは、マイクロタイタープレート形式のマイクロポアのアレイ上でシーケンシングするためのマイクロ流体チャンバーの概要である。拡大図には、それぞれ2,072個のマイクロポアを含む、2つの二重列及び1つの二重行の細区画のみを示す。一実施形態では、マイクロポアを含むチャンバーへの供給は、流体閉鎖または流体開放できる一連の個々の開口部から、音響液滴射出を使用して、所与の列のチャンバーすべてに、試薬、酵素、標的、または前増幅した標的を流入させる。音響液滴射出を使用する場合、一連の親水性の入力チャンバーに液滴を供給し、続いてマイクロポアの列に供給することにより、個々の開口部への流体の流入を促進することができる。この概略図では、個々の開口部はそれぞれ親水性の入力チャンバーに接続されており、そのチャンバーから2列のマイクロポアへ供給される。さらに、チャンバーはまた、1つの入口からチャンバーすべてに試薬を流入させ、反対側で単一の廃棄口または出口へと流出させることを可能にするように流体連結されている。親水性の入力チャンバーに試薬、酵素、標的、または前増幅した標的が適切に充填されると、これらの開口部は閉じられ、その後、油または他の試薬が1つの入口から追加され、投入溶液がマイクロポアへと流体移動して、さらに反応が行われる。
図14】適切なプライマー及びプローブの予備充填に適した、図13Aに記載のチャンバー内のマイクロウェルを使用するマイクロタイタープレート形式の概略側面図を示す。工程Aは、疎水性プレート内の1つのチャンバーの側面図を示す。これには、両側に隆起部がある50ミクロンの親水性ウェルが含まれる。工程Bで、プレートの上下を反転し、音響液滴射出を使用して、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、変異またはメチル化特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマーセット)を充填した。工程Cで、プレートを遠心分離し、空のマイクロウェルに水性液体を分散させる。対する工程Dは、遠心分離後に、水溶液が疎水性表面を回避するように、マイクロウェル上に液滴が形成されている様子を示す。工程Eで、水溶液を蒸発させると、ウェルには乾燥したプライマー/プローブのセットが残る(工程Fに図示)。
図15図13Aに記載のチャンバー内のマイクロウェルを使用し、適切なTaqman(商標)またはUniTaqのプライマー及びプローブを予備充填した、マイクロタイタープレート形式の概略側面図を示す。工程Aは、疎水性プレート内の1つのチャンバーの側面図を示す。これには、両側に隆起部がある50ミクロンの親水性ウェルが含まれる。工程Bで、プレートの上下を反転し、音響液滴射出を使用して、リアルタイム増幅(すなわちTaqman(商標)反応)及び標的DNAに適した試薬を充填する。工程Cで、水性層を疎水性鉱油で覆う。工程Dで、プレートをスイングバケットローターに移し、遠心分離する。高濃度の水性液体が空のマイクロウェルに分散する。工程Eで、プレートをサーモサイクラーに移動する。鉱油で覆われ、増幅に適した個々のマイクロウェルに液滴が分離する。
図16】未知の病原体を同定または相対定量するための、Taqman(商標)の読み取りを用いた例示的なPCR-PCR-qPCR手順を示す。
図17】未知の病原体を同定または相対定量するための、UniTaqの読み取りを用いた例示的なPCR-PCR-qPCR手順を示す。
図18】未知の病原体を同定または相対定量するための、スプリットプローブUniTaq(UniRq)の読み取りを用いた例示的なPCR-PCR-qPCR手順を示す。
図19】未知の病原体を同定または相対定量するための、Taqman(商標)の読み取りを用いた例示的なPCR-LDR-qPCR手順を示す。
図20】未知の病原体を同定または相対定量するための、UniTaqの読み取りを用いた例示的なPCR-LDR-qPCR手順を示す。
図21】未知の病原体を同定または相対定量するための、スプリットプローブUniTaq(UniSpTq)の読み取りを用いた例示的なPCR-LDR-qPCR手順を示す。
図22】未知の病原体を同定または相対定量するための、ユニバーサルスプリットプローブの読み取りを用いた例示的なPCR-qLDR(UniLDq)手順を示す。
図23】未知の病原体を同定または相対定量するための、標的特異的スプリットプローブの読み取りを用いた例示的なPCR-qLDR(TsLDq)手順を示す。
図24】マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である概略正面図を示す。この設計は、未知の病原体の同定及び定量のための、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-UniTaq検出(あるいは、標的特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCR)の実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。灰色の円は、異なるプライマーまたはプローブのセットが予備充填されている行または列の領域を記号で表している。
図25図25A図25Bは、数千のマイクロポアを含むマイクロポアプレートを使用して、UniTaqまたは標的特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCRアッセイを実行するための、カートリッジ及びバルブ、構成の概略側面図を示す。図25Aは、直径50ミクロンのマイクロウェルまたはマイクロポアのアレイへのマイクロ流路の流体接続を示す概略正面図である。図25Bでは、マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面(プレートの上部、プレートの左側に図示)は、バルブ1、2、及び3と連通しており、対して第2の側面(プレートの下部、プレートの右側に図示)は、バルブ4及び5と連通している。
図26】未知の病原体を血液から直接同定または相対定量するための、Taqman(商標)の読み取りを用いた例示的なPCR-PCR-qPCR手順を示す。
図27】未知の病原体を血液から直接同定または相対定量するための、UniTaqの読み取りを用いた例示的なPCR-PCR-qPCR手順を示す。
図28】低レベルの変異を同定または相対定量するための、Taqman(商標)の読み取りを用いた例示的なPCR-LDR-qPCRキャリーオーバー防止反応を示す。
図29】低レベルの変異を同定または相対定量するための、UniTaqの読み取りを用いた例示的なPCR-LDR-qPCRキャリーオーバー防止反応を示す。
図30】マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である正面図を示す。この設計は、血漿中の低レベルの未知の変異を同定及び定量するためのマルチプレックスPCR-LDR-UniTaq検出の実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。(あるいは、変異特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRを使用する)。灰色の円は、異なるプライマーまたはプローブのセットが予備充填されている行または列の領域を記号で表している。
図31】低レベルのメチル化を同定または相対定量するための、Taqman(商標)の読み取りを用いた例示的なPCR-LDR-qPCR(場合によりキャリーオーバー防止を伴う)反応を示す。
図32】低レベルのメチル化を同定または相対定量するための、UniTaqの読み取りを用いた例示的なPCR-LDR-qPCR(場合によりキャリーオーバー防止を伴う)反応を示す。
図33】野生型及び選択的スプライシングされたmRNA転写産物を同定または相対定量するための、UniTaqの読み取りを用いた例示的なRT-PCR-LDR-qPCR反応を示す。
図34】マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である正面図を示す。この設計は、希少及び過剰発現両方のlncRNA、mRNA、またはスプライス変異体を同定及び定量するためのマルチプレックスRT-PCR-LDR-UniTaq検出の実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。(あるいは、標的特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRを使用する)。灰色の円は、異なるプライマーまたはプローブのセットが予備充填されている行または列の領域を記号で表している。
図35】未知の病原体の一方の鎖における変異を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子PCR法を示す。この例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。
図36】マイクロポアあたりの産物収率を最大化するため、第1のタグプライマーが、溶液中と、固定された第2のタグプライマー(第1のタグプライマーより長い)のいずれよりも多量に存在する、断片識別子PCR法の一実施形態を示す。
図37】マイクロポアあたりの産物収率を最大化するため、溶液中の第1のタグプライマーが、2つの異なる5’部分、及び5’付加部分をもつプライマーを含み、溶液中と、固定された第2のタグプライマー(第1のタグプライマーより長い)のいずれよりも多量に存在する、断片識別子PCR法の別の実施形態を示す。
図38】マイクロポアあたりの産物収率を最大化するため、溶液中の第1のタグプライマーが、dA35、及びGCリッチ足場にdA35を付加したプライマーを含み、溶液中と、固定された第2のタグプライマー(第1のタグプライマーより長い)のいずれよりも多量に存在する、断片識別子PCR法の別の実施形態を示す。
図39】マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である正面図を示す。この設計は、未知の病原体同定のための、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングの実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。灰色の円は、異なるプライマーまたはプローブのセットが予備充填されている行または列の領域を記号で表している。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。
図40】cfDNAの一方の標的鎖において低存在量の変異を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子PCR法を示す。この例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。
図41】cfDNAの重複断片にわたって、一方の標的鎖における低存在量の変異を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子PCR法を示す。この例では、第2のタグ配列プライマーがビオチン化されており、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに捕捉されて、マイクロポアに分配されるか、またはストレプトアビジンでコーティングされたマイクロポアに直接分配される。
図42】cfDNAの重複断片にわたって、一方の標的鎖における低存在量の変異を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子PCR法を示す。この例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。
図43】ビオチン化または固定された第2のタグ配列プライマーを用いたPCR増幅のさらなる詳細を示す。これは、より短いアンプリコンは増幅しないパンハンドル構造を形成するが、目的とする長い産物は固体支持体上で増幅することを示している。
図44】cfDNAの重複断片にわたって、一方の標的鎖における低存在量の変異を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子PCR法の別の実施形態を示す。この図では、第2のタグ配列を含む2つの標的特異的プライマーが示されている。この例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。
図45】cfDNAの重複断片にわたって、一方の標的鎖における低存在量の変異を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子PCR法の別の実施形態を示す。この図では、第1のタグ配列を含む2つの標的特異的プライマーが示されている。この例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。
図46】cfDNAの重複断片にわたって、両方の標的鎖における低存在量の変異を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子PCR法を示す。この例では、固定された第1のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第2のタグ配列を含む異なるネステッドプライマーを使用することにより、トップ鎖から増幅された領域がボトム鎖から増幅された領域と異なるため、トップ鎖及びボトム鎖の配列から得られる読み取りを区別することができる。
図47】SNPを同定し、cfDNAの両方の遺伝子座特異的鎖のコピー数を計数するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子PCR法を示す。この例では、固定された第1のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第2のタグ配列を含む異なるネステッドプライマーを使用することにより、トップ鎖から増幅された領域がボトム鎖から増幅された領域と異なるため、トップ鎖及びボトム鎖の配列から得られる読み取りを区別することができる。
図48】マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である正面図を示す。この設計は、血漿中の低存在量の未知の変異を同定するため、または血漿中のトリソミーの非侵襲的出生前検査のための、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングの実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。灰色の円は、異なるプライマーまたはプローブのセットが予備充填されている行または列の領域を記号で表している。
図49図49A図49Bは、断片識別子PCR-シーケンシングを使用して、血漿中の低存在量の未知の変異を同定するためのカートリッジ及びバルブの構成である概略側面図を示す。図49Aは、直径5ミクロンのマイクロポアのアレイへのマイクロ流路の流体接続を示す概略正面図である。図49Bは、数百万のミクロポアを含むマイクロポアプレートを使用した、断片識別子PCR-シーケンシングの流体システムである。マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面(プレートの上部、プレートの左側に図示)は、バルブ1、2、及び3と連通しており、対して第2の側面(プレートの下部、プレートの右側に図示)は、バルブ4、5、及び6と連通している。
図50】断片識別子PCR-シーケンシングを使用して、血漿中の低存在量の未知の変異を同定するためのカートリッジ及びバルブの構成である概略側面図を示す。工程Aは、直径5ミクロンのマイクロポアのアレイにマイクロ流路が流体接続されたマイクロプレートの提供を含む。工程Bは、初期反応を個々のウェルで実行し、その後、音響液滴射出を使用して、適切な試薬、酵素、緩衝液、標的、及び/または前増幅した標的を、入力チャンバー、及び数百万のマイクロポアを含む列へと至る開口部に流入させることを示す。工程Cは、4つのバルブに流体連結されたプレートを示す。マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面(プレートの上部に図示)は、バルブ1及び3と連通しており、対して第2の側面(プレートの下部に図示)は、バルブ2及び4と連通している。
図51】cfDNAの一方の標的鎖において低存在量のメチル化を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的なBsh1236I-バイサルファイト-断片識別子PCR法を示す。この例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。
図52】マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である正面図を示す。この設計は、血漿中の低存在量の未知の変異及びメチル化を同定するための、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシング及びBsh1236I-バイサルファイト-マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングの実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。
図53】CTCまたはエキソソームから単離された低存在量及び中存在量のlncRNA、mRNA、及びスプライス部位変異体を同定するための、sequencing-by-synthesisの読み取りを用いた例示的な断片識別子RT-PCR法を示す。この例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。
図54】マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である正面図を示す。この設計は、CTCまたはエキソソームから単離された低存在量及び中存在量のlncRNA、mRNA、及びスプライス部位変異体を同定するためのマルチプレックスRT-PCR-ネステッドPCR-UniTaq検出の実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。(あるいは、転写産物特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCR)。灰色の円は、異なるプライマーまたはプローブのセットが予備充填されている行または列の領域を記号で表している。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
本発明の一態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムに関する。本システムには、注入口及びカートリッジが含まれる。カートリッジは、注入口と流体連結された複数の一次反応チャンバーを含む空間を画定しており、そのチャンバーに注入口からの物質を受け入れ、その物質から一次反応チャンバー産物を産生する。この空間にはまた、複数の個々の列の複数の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体も含まれ、各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを含み、そこで一次反応産物をさらに反応させてアレイ産物を産生する。アレイ産物は、マイクロポアまたはマイクロウェルで検出されるが、その場合、個々の産物捕捉サブユニットの1つ以上の列に、複数の一次反応チャンバーのうちの1つを通った物質を受け入れる。
【0039】
一実施形態では、本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムは、産物捕捉筐体から物質を排出するための出口をさらに含む。
【0040】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの別の実施形態では、カートリッジによって画定される空間に、1つ以上の初期反応チャンバーがさらに含まれ、そこに注入口から物質が排出され、そこから物質が複数の一次反応チャンバーに排出される。
【0041】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの、さらに別の実施形態では、カートリッジによって画定される空間に、複数の二次反応チャンバーがさらに含まれ、そのうちの1つ以上は、複数の一次反応チャンバーのうちの1つと流体連結されており、複数の一次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れる。この空間にはまた、それぞれが複数の二次反応チャンバーのうちの1つと流体連結された複数の混合チャンバーが含まれ、そこに複数の二次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れ、物質を産物捕捉筐体に排出し、それにより、個々の産物捕捉サブユニットの各列が、1つ以上の混合チャンバーのうちの1つに流体連結され、1つ以上の混合チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れる。
【0042】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの本実施形態によれば、複数の一次及び二次反応チャンバーの少なくともいくつかを、複数の一次及び二次反応チャンバー内に液体のトラフを保持するように構成する。
【0043】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであり、カートリッジによって画定される空間に、複数の二次反応チャンバー及び複数の混合チャンバーがさらに含まれる別の実施形態では、複数の一次及び/または二次反応チャンバーのそれぞれが、複数の一次及び二次反応チャンバー内に液体のトラフを保持する内部バッフルを有する。
【0044】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであり、カートリッジによって画定される空間に、複数の二次反応チャンバー及び複数の混合チャンバーがさらに含まれる、さらに別の実施形態では、複数の一次及び/または二次反応チャンバーのそれぞれが、複数の一次及び二次反応チャンバー内に複数の液体のトラフを保持する1つ以上の内部バッフルを有する。
【0045】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであり、カートリッジによって画定される空間に、複数の二次反応チャンバー及び複数の混合チャンバーがさらに含まれる、さらなる実施形態では、混合チャンバーのそれぞれが、物質が混合チャンバーに入る付近から、物質が混合チャンバーを出る付近まで延在する仕切部を含む。
【0046】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであり、カートリッジによって画定される空間に、複数の二次反応チャンバー及び複数の混合チャンバーがさらに含まれる別の実施形態では、混合チャンバーのそれぞれが、疎水性の高い第1の表面と、第1の表面から間隔をあけて配置され、第1の表面よりも疎水性が低い第2の表面とを含み、第1及び第2の表面は、物質が混合チャンバーに入る付近から、物質が混合チャンバーを出る付近まで延在する。
【0047】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであり、カートリッジによって画定される空間に、複数の二次反応チャンバー及び複数の混合チャンバーがさらに含まれる、さらに別の実施形態では、一次反応チャンバー及び/または二次反応チャンバーは、オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブをそこにスポットできる内部表面を含む。
【0048】
本発明に従う試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの別の実施形態では、産物捕捉サブユニットは、複数の個別のマイクロポアのアレイを含み、マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有する。
【0049】
このシステムは、産物捕捉筐体内のマイクロポアの第2の端か、または個別のマイクロポア内に配置されたビーズを覆うメッシュスクリーンをさらに備えてもよい。
【0050】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムのさらなる実施形態では、産物捕捉サブユニットは、それぞれが開口端及び閉口端を有する複数の個別のマイクロウェルのアレイを含む。
【0051】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムであり、カートリッジによって画定される空間に、複数の二次反応チャンバー及び複数の混合チャンバーがさらに含まれる別の実施形態では、産物捕捉筐体は、物質が複数の混合チャンバーから産物捕捉サブユニットの列を通って、それらサブユニット内のマイクロポアまたはマイクロウェルのアレイと接触することが可能であるように複数の流体流路を含む。
【0052】
複数の流体流路は、固体支持体の上方に位置しても、及び/または下方に位置してもよい。
【0053】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの別の実施形態では、システムは、注入口を通して、試薬または反応物をカートリッジへ誘導するか、またはカートリッジから排出するか、を選択するための1つ以上のバルブをさらに含み得る。
【0054】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムのさらなる実施形態では、システムは、出口及び/または産物捕捉筐体内の出口から離れた位置を通して、試薬または反応物を産物捕捉筐体へ誘導するか、または産物捕捉筐体から排出するか、を選択するための1つ以上のバルブをさらに含む。
【0055】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの、さらに別の実施形態では、システムは、一次反応チャンバー及び/または産物捕捉筐体に近接する1つ以上の発熱体をカートリッジ内にさらに含む。
【0056】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの別の実施形態では、カートリッジによって画定される空間に、1つ以上の初期反応チャンバーがさらに含まれ、そこに注入口から物質が排出され、そこから物質が複数の一次反応チャンバーに排出される。システムは、初期反応チャンバーに近接する1つ以上の発熱体をカートリッジ内にさらに含み得る。
【0057】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの別の実施形態では、カートリッジによって画定される空間に、複数の二次反応チャンバー及び複数の混合チャンバーがさらに含まれる場合、システムは、二次反応チャンバーのうちの1つ及び/または混合チャンバーのうちの1つ以上に近接する1つ以上の発熱体をカートリッジ内にさらに含み得る。
【0058】
本発明の別の態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムに関する。システムには、注入口、出口、及びマイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを含むカートリッジを含み、カートリッジは注入口及び出口と流体連結されている。カートリッジは、注入口と流体連結された複数の一次反応チャンバーを含む空間を画定しており、そのチャンバーに注入口からの物質を受け入れ、その物質から一次反応チャンバー産物を産生する。この空間にはまた、複数の二次反応チャンバーが含まれ、そのうちの1つ以上は、複数の一次反応チャンバーのうちの1つと流体連結されており、そこに複数の一次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れ、二次反応チャンバー産物を産生する。複数の一次及び二次反応チャンバーの少なくともいくつかを、複数の一次及び二次反応チャンバー内に液体のトラフを保持するように構成することで、後続反応でチャンバー産物またはアレイ産物を産生するための試料、試薬、及び/または生成反応物の混合が容易になる。この空間にはまた、それぞれが複数の二次反応チャンバーのうちの1つと流体連結された複数の混合チャンバーが含まれ、そこに複数の二次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れ、物質を産物捕捉筐体に排出し、それにより、個々の産物捕捉サブユニットの各列が、1つ以上の混合チャンバーのうちの1つに流体連結され、1つ以上の混合チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れる。この空間にはまた、複数の個々の列の複数の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体も含まれ、各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを含み、そこで二次反応産物をさらに反応させてアレイ産物を産生する。アレイ産物は、マイクロポアまたはマイクロウェルで検出されるが、その場合、個々の産物捕捉サブユニットの1つ以上の列に、複数の一次反応チャンバーのうちの1つを通った物質を受け入れる。
【0059】
本発明の別の態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムに関する。システムには、注入口、第2の注入位置、出口、ならびに注入口、第2の注入位置、及び出口と流体連結されているカートリッジを含む。カートリッジは、複数の個々の列の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体が含まれる空間を画定し、各個々の産物捕捉サブユニットは、複数の個別のマイクロポアのアレイを含む。産物捕捉筐体は、物質が注入口及び/または第2の注入位置から産物捕捉サブユニットの列を通って、それらサブユニット内のマイクロポアのアレイと接触し、出口に至ることが可能であるように、複数の流体流路を備えており、この複数の流体流路は固体支持体の上及び下に位置する。1つ以上のバルブを使用して、注入口、出口、及び/または産物捕捉筐体内の出口から離れた第2の注入位置を通して、試薬または反応物を産物捕捉筐体へ誘導するか、または産物捕捉筐体から排出するか、を選択する。
【0060】
本発明のさらなる態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法に関する。この方法は、本発明のシステムを提供すること、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを、産物捕捉筐体内の固体支持体上の産物捕捉サブユニットのマイクロポアまたはマイクロウェルに加えることを含む。その結果、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブが、マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持される。
【0061】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法は、試料中の標的核酸の一部と相補的なヌクレオチド配列を含む第1の部分をそれぞれが有する一次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを、1つ以上の一次反応チャンバーに充填することをさらに含み得る。本実施形態によれば、一次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持されたユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーの一部と同一であるかまたは相補的であるヌクレオチド配列を含む第2の部分を、さらに含み得る。
【0062】
本発明のさらなる態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法に関する。この方法は、本発明のシステムを提供することを含み、システムは注入口及びカートリッジを含む。カートリッジが画定する空間には、注入口からの物質を受け入れ、その物質から一次反応チャンバー産物を産生する、注入口と流体連結された複数の一次反応チャンバー;複数の個々の列の複数の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体であって、各個々の産物捕捉サブユニットが、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを含み、そこで一次反応産物をさらに反応させてアレイ産物を産生し、これをマイクロポアまたはマイクロウェルで検出し、個々の産物捕捉サブユニットの1つ以上の列に、複数の一次反応チャンバーのうちの1つを通った物質を受け入れる、産物捕捉筐体;そのうちの1つ以上が、複数の一次反応チャンバーのうちの1つと流体連結されており、複数の一次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れる、複数の二次反応チャンバー;及び複数の混合チャンバーであって、それぞれが上記複数の二次反応チャンバーのうちの1つと流体連結され、上記複数の二次反応チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れ、かつ物質を上記産物捕捉筐体に排出し、それにより、個々の産物捕捉サブユニットの各列が、上記1つ以上の混合チャンバーのうちの1つに流体連結され、上記1つ以上の混合チャンバーのうちの1つからの物質を受け入れる、複数の混合チャンバーが含まれる。この方法は、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを、産物捕捉筐体内の固体支持体上の産物捕捉サブユニットのマイクロポアまたはマイクロウェルに加えることをさらに含む。その結果、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブが、マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持される。
【0063】
本方法は、試料中の標的核酸の一部と相補的なヌクレオチド配列を含む第1の部分をそれぞれが有する一次または二次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを、1つ以上の一次反応チャンバー及び/または二次反応チャンバーに充填することをさらに含み得る。本実施形態によれば、一次または二次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーは、マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持されたユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーの一部と同一であるかまたは相補的であるヌクレオチド配列を含む第2の部分を、さらに含み得る。
【0064】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法に関する一実施形態では、産物捕捉サブユニットは、個別のマイクロポアのアレイを含み、マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有し、マイクロポアの第1の端と流体連通する第1の通路と、マイクロポアの第2の端と流体連通する第2の通路を備え、ここでユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブは、以下に示す順序の以下の工程を含む方法により、マイクロポア内に加えられる:ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブが第1の通路を通り、第1の開口端からマイクロポアに入ると同時に、疎水性液体が第2の通路に通される;疎水性液体を第2の通路に通しながら、疎水性液体を第1の通路に通す;疎水性液体を第2の通路に通しながら、揮発性溶媒を第1の通路に通す;空気が第1の通路を通ると同時に、熱、疎水性液体、揮発性溶媒、さらに空気が第2の通路に通される。
【0065】
本発明の試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法に関する別の実施形態では、産物捕捉サブユニットは、個別のマイクロポアのアレイを含み、マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有し、マイクロポアの第1の端と流体連通する第1の通路と、第2の通路と流体連通され、第2の端を覆うメッシュスクリーンによってマイクロポアの第2の端と隔てられた第2の通路を備え、ここで検出または捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブは、以下に示す順序の以下の工程を含む方法により、マイクロポア内に加えられる:ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブが第1の通路を通り、第1の開口端からマイクロポアに入る;疎水性液体が第1の通路を通り、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを第1の通路から排出する;疎水性液体を第2の通路に通しながら、疎水性液体を第1の通路に通す;疎水性液体を第2の通路に通しながら、揮発性溶媒を第1の通路に通す;空気が第1の通路を通ると同時に、熱、疎水性液体、揮発性溶媒、さらに空気が第2の通路に通される。
【0066】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。1つ以上の一次反応チャンバー及び/または1つ以上の二次反応チャンバー(存在する場合)の充填に続くプロセスには、システムで一次反応及び/または二次反応を実施し、一次反応及び/または二次反応の実行に基づいて、マイクロウェルまたはマイクロポア内の試料中の標的核酸分子の存在を検出することを含む。
【0067】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。一次反応及び/または二次反応の実行後、消光基及び蛍光基を含む1つ以上のプローブをポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、またはリボヌクレアーゼが標的特異的に切断する条件下で、そのような反応の産物をマイクロウェルまたはマイクロポア内で増幅すると、標的核酸分子が試料に存在する場合、蛍光基が遊離されてシグナルが生じる。
【0068】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。一次反応及び/または二次反応を実行するプロセスには、複数の標的核酸分子を含有する試料を供給し、標的核酸分子の一部に相補的な第1の部分、または標的核酸分子の相補体を有する一次オリゴヌクレオチドプライマーのセット、及びポリメラーゼとその試料を接触させ、第1のポリメラーゼ伸長または連鎖反応混合物を形成することを含む。この混合物を1つ以上の初期反応または一次反応チャンバーで第1のポリメラーゼ伸長または連鎖反応に供し、伸長産物または増幅産物の第1のセットを産生する。次にこの産物を、一次伸長産物または一次増幅産物の一部と相補的である第1の部分を有する二次オリゴヌクレオチドプライマーのセット、及びポリメラーゼと接触させ、第2のポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成する。この第2の混合物を一次または二次反応チャンバーで第2のポリメラーゼ連鎖反応に供し、増幅産物の第2のセットを産生する。二次増幅産物はそれぞれ、5’の第2の部分配列、標的ヌクレオチド配列特異的部分、またはその相補体、及び3’の第2の部分相補配列を含む。
【0069】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。一次反応及び/または二次反応を実行するプロセスには、複数の標的核酸分子を含有する試料を供給し、標的核酸分子の一部に相補的な部分、またはその伸長産物を有する一次オリゴヌクレオチドプライマーのセット、及びポリメラーゼとその試料を接触させ、第1のポリメラーゼ伸長または連鎖反応混合物を形成することを含む。この混合物を1つ以上の初期反応または一次反応チャンバーで第1のポリメラーゼ連鎖反応に供し、伸長産物または増幅産物の第1のセットを産生する。次にこの産物を、増幅産物の第1のセットの一部と相補的である第1の部分、及び第2の部分を有するオリゴヌクレオチドプローブのセット、ならびにリガーゼと接触させ、リガーゼ検出反応混合物を形成する。この第2の混合物を一次または二次反応チャンバーでリガーゼ検出反応に供し、ライゲーション産物のセットを産生する。ライゲーション産物はそれぞれ、5’の第2の部分配列、標的ヌクレオチド配列特異的部分、またはその相補体、及び3’の第2の部分配列を含む。
【0070】
本発明のさらに別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。1つ以上の一次反応チャンバー(存在する場合)に充填するプロセス、ならびにシステムで一次反応及び/または二次反応を実行するプロセスは、以下に示す順序の以下の工程を伴うプロセスによって実施される。疎水性液体を注入口からシステムに通す。一次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマー、ならびに逆転写及び/またはポリメラーゼ連鎖反応試薬、さらに疎水性液体を注入口からシステムに通す。システム内でポリメラーゼ伸長または連鎖反応が実行され、物質は注入口を通りシステムから排出される。疎水性液体、ポリメラーゼ連鎖反応試薬またはリガーゼ検出反応試薬、さらに疎水性液体が注入口からシステムに送られ、システムでポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応が実行される。
【0071】
本発明の別の実施形態は、産物捕捉サブユニットが個別のマイクロポアのアレイを含む本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有し、マイクロポアの第1の端と流体連通する第1の通路と、マイクロポアの第2の端と流体連通する第2の通路を備え、ここでシステムでの二次反応の上記の実行は、以下に示す順序の以下の工程を伴うプロセスによって実施される。ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応の産物が、第1の通路を通って産物捕捉筐体に送られると同時に、疎水性液体が第2の通路を通る。疎水性液体をさらに第1及び第2の通路に通す。次にポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応の産物を、産物捕捉サブユニットのマイクロポア内でユニバーサルタグプライマー及びプローブとのポリメラーゼ連鎖反応に供する。
【0072】
本発明の別の実施形態は、産物捕捉サブユニットが個別のマイクロポアのアレイを含む本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有し、マイクロポアの第1の端と流体連通する第1の通路と、マイクロポアの第2の端を覆うメッシュスクリーンによってマイクロポアの第2の端と流体連通されかつ隔てられた第2の通路とを備え、ここでシステムでの二次反応を実行するプロセスは、以下に示す順序の以下の工程を伴うプロセスによって実施される。ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応の産物が、第1の通路を通って産物捕捉筐体に送られる。疎水性液体を第1の通路に通す。さらに疎水性液体を第1及び第2の通路に通す。ポリメラーゼ連鎖反応またはリガーゼ検出反応の産物を、産物捕捉サブユニットのマイクロポア内でユニバーサルタグプライマー及びプローブとのポリメラーゼ連鎖反応に供する。
【0073】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスであって、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のヌクレオチドの挿入もしくは欠失、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、1つ以上の転座、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、試料中または他の試料中の他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる複数の核酸分子を試料において同定するプロセスに関する。
【0074】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスであって、そのシステムの調製が、試料中の標的核酸の一部と相補的なヌクレオチド配列を含む第1の部分をそれぞれが有する一次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを、1つ以上の一次反応チャンバーに充填することを含むプロセスに関する。1つ以上の一次反応チャンバーに充填するプロセスに続くプロセスが、システムで一次反応を実行することと、一次反応を行うプロセスに続いて試料中の標的核酸分子のヌクレオチド配列を取得することとをさらに含む。
【0075】
本発明の別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。このプロセスには、複数の標的核酸分子が含まれる試料を供給し、標的核酸分子の一部に相補的な第1の部分、及び第2の部分を有する一次オリゴヌクレオチドプライマーのセット、ならびにポリメラーゼとその試料を接触させ、ポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成することを含む。この混合物を一次反応チャンバーでポリメラーゼ連鎖反応に供し、増幅産物のセットを産生する。増幅産物は、複数の個々の列の複数の捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体に送られ、各個々の産物捕捉サブユニットは、第2の部分に相補的な固定された捕捉プローブを含む複数の個別のマイクロポアのアレイを含む。固定された捕捉プローブに標的核酸分子が捕捉され、コピーされる。固定された標的核酸分子のヌクレオチド配列は、マイクロポアでシーケンシング反応を実行することにより得られる。
【0076】
本実施形態によれば、産物捕捉サブユニットは、複数の個別のマイクロポアのアレイを含み、マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有し得る。このプロセスはさらに、産物捕捉筐体内のマイクロポアの第2の端を覆うメッシュスクリーンを含んでもよい。
【0077】
別の実施形態では、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスは、固定された捕捉プローブを含有するビーズを個々のマイクロポアに配置することをさらに含む。
【0078】
さらなる実施形態では、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスは、ヌクレオチド配列を取得するプロセスの前と、ポリメラーゼ連鎖反応混合物をポリメラーゼ連鎖反応に供した後に、増幅産物から少なくとも1つの第2の部分を除去することをさらに含む。少なくとも1つの第2の部分を除去するプロセスは、ウラシルDNAグリコシラーゼ、アプリン/アピリミジンエンドヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼIII、エンドヌクレアーゼIV、エンドヌクレアーゼV、アルキルアデニンDNAグリコシラーゼ、ホルムアミドピリミジンDNAグリコシラーゼ、もしくは8-オキシグアニンDNAグリコシラーゼ、またはそれらの組み合わせを用いて実施することができる。
【0079】
別の実施形態は、本発明のシステムを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。このプロセスは、本発明のシステムを提供することと、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブを、産物捕捉筐体内の固体支持体上の産物捕捉サブユニットのマイクロポアまたはマイクロウェルに加えることとを含み、その場合、ユニバーサルタグまたは捕捉オリゴヌクレオチドプライマーもしくはプローブは、マイクロポアまたはマイクロウェル内に保持される。このプロセスはさらに、試料中の標的核酸の一部と相補的なヌクレオチド配列を含む第1の部分をそれぞれが有する一次反応オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーを、1つ以上の一次反応チャンバーに充填することと、システムで一次反応を実行することとを含む。プロセスはさらに、一次反応を実行するプロセスに続いて試料中の標的核酸分子のヌクレオチド配列を取得することをさらに含む。産物捕捉サブユニットは、個別のマイクロポアのアレイを含み、マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有し、マイクロポアの第1の端と流体連通する第1の通路と、マイクロポアの第2の端を覆うメッシュスクリーンによってマイクロポアの第2の端と流体連通されかつ隔てられた第2の通路とを備え、ここでヌクレオチド配列を取得するプロセスは、以下に示す順序の以下の工程を含むプロセスによって実施される。ポリメラーゼ連鎖反応の産物が、上記第1の通路を通って産物捕捉筐体に送られる。次に疎水性液体を第1の通路に通し、それによって産物が個別のマイクロウェルに分配される。次に、疎水性液体を第1及び第2の通路に通す。増幅産物を産生する条件下で、マイクロウェルの内部表面に固定された捕捉オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、ポリメラーゼ連鎖反応及び/または等温反応にて産物を増幅する。次に、疎水性液体を第2の通路に通しながら、揮発性溶媒を第1の通路に通す。ポリメラーゼ連鎖反応及び/または等温反応の産物は変性され、固定されていない核酸分子は第1の通路から洗い流され、疎水性液体は第2の通路を通り、それによって産物は個別のマイクロウェルに単離される。水よりも高密度の疎水性液体を第1の通路に通すと同時に、揮発性溶媒、空気、さらにシーケンシング試薬を第2の通路に通す。その後、産物捕捉サブユニットでシーケンシング反応を実行する。
【0080】
本発明はまた、試料中の複数の核酸分子を同定するためのマイクロタイタープレートを調製するプロセスに関する。それには、複数の個々の行と列をもつ産物捕捉サブユニットを備えるマイクロタイタープレートを提供することを含み、各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロウェルのアレイを含む。マイクロタイタープレートのマイクロウェルに、オリゴヌクレオチドプライマー及び/またはプローブを含有する水性液体を充填する。マイクロタイタープレートを遠心分離して、水性液体を、マイクロタイタープレート内の各個々の産物捕捉サブユニットの未充填マイクロウェルに分散させる。その後、遠心分離が終了すると、水性液体が疎水性表面と接触していない状態になる。水性液体を蒸発させ、マイクロウェルを乾燥することで、マイクロウェルにオリゴヌクレオチドプライマーを残留させる。
【0081】
本発明の別の実施形態は、マイクロタイタープレートのマイクロウェル内で乾燥したオリゴヌクレオチドプライマーを調製するための本発明のプロセスを使用して、試料中の複数の核酸分子を同定するプロセスに関する。それには、疎水性液体が水性試料の上に位置するように、水性試料をマイクロタイタープレートに投入した後に、疎水性液体をマイクロタイタープレートに投入することを含む。マイクロタイタープレートを遠心分離して、水性液体を、マイクロタイタープレート内の未充填のマイクロウェルに分散させる。その後、遠心分離が終了すると、水性液体が疎水性表面と接触していない状態になる。消光基及び蛍光基を含む1つ以上のプローブをポリメラーゼ、エキソヌクレアーゼ、エンドヌクレアーゼ、またはリボヌクレアーゼが標的特異的に切断する条件下で、核酸分子の増幅反応を行うと、標的核酸分子が試料に存在する場合、蛍光基が遊離されてシグナルが生じる。
【0082】
本実施形態によれば、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のヌクレオチドの挿入もしくは欠失、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、1つ以上の転座、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、試料中または他の試料中の他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる複数の核酸分子を同定する。
【0083】
本発明の別の態様は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムに関する。このシステムには、注入口、出口、ならびに注入口及び出口と流体連結されているカートリッジを含む。カートリッジは、複数の個々の列の産物捕捉サブユニットを備える固体支持体の入った産物捕捉筐体が含まれる空間を画定する。各個々の産物捕捉サブユニットは、疎水性表面で隔てられた複数の個別の親水性マイクロポアのアレイを含み、マイクロポアはそれぞれ、対向する第1及び第2の開口端を有し、第1の端は大きい直径を有し、第2の端は第1の端の直径よりも小さい直径を有する。産物捕捉筐体は、物質が注入口から産物捕捉サブユニットの列を通って、それらサブユニット内のマイクロポアのアレイと接触し、出口に至ることが可能であるように、複数の流体流路を備えており、この複数の流体流路は固体支持体の上及び下に位置する。
【0084】
一実施形態では、試料中の複数の核酸分子を同定するシステムは、注入口または出口を通して、試薬及び/または反応物を産物捕捉筐体へ誘導するか、または産物捕捉筐体から排出するか、を選択するための1つ以上のバルブをさらに含む。
【0085】
試料中の複数の核酸分子を同定するための別の実施形態では、システムは、産物捕捉筐体に近接する1つ以上の発熱体をカートリッジ内にさらに含む。
【0086】
本発明は、試料中の複数の核酸分子を同定するためのシステムの調製方法に関する。この方法は、本発明のシステムを提供することを含み、システムは上記のように、注入口、出口、ならびに注入口及び出口と流体連結され、かつ空間を画定するカートリッジを含む。この方法は、捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブを、産物捕捉筐体内の固体支持体上の産物捕捉サブユニットのマイクロポアに加え、捕捉オリゴヌクレオチドプライマーまたはプローブをマイクロポアまたはマイクロウェル内に保持することをさらに含む。一実施形態では、この方法は、システムで反応を実行することと、その反応の実行に基づいて、マイクロポア内の試料中の標的核酸分子の存在を検出することとをさらに含む。
【0087】
本発明は、血液試料から直接疾患の原因を判定するための一連のデバイス、チャンバー、及びアッセイを提供する。臨床試料から核酸を精製し、標的領域を一連の増幅反応に供し、リアルタイムPCRまたはシーケンシングのいずれかを読み取り値として使用して、標的を同定または計数する。これらのデバイスで対応できる喫緊の臨床ニーズの概要を表1に示す。
【0088】
(表1)血液試料から疾患の原因を直接判定する臨床ニーズの概要
【0089】
複数の未知の病原体または変異を検出する際の主たる課題の一つは、マルチプレックス反応においてPCRのドロップアウトを回避すると同時に、可能性のある断片及び目的とする断片をすべて増幅することである。マルチプレックスPCR反応は最適化が困難な場合があり、断片のドロップアウトという問題が絶えずつきまとう。8~12サイクルの範囲の初期PCRサイクルであれば、比較的コピー数を維持できる場合が多いが、一部の断片がより効率的に増幅されると、それらが過剰増幅して、低効率の断片よりも優勢になる傾向があり、結果として以降のサイクルで断片のドロップアウトが生じる。この問題に対する解決策の一つは、最初はサイクルを制限してマルチプレックス増幅を実行した後、産物を24~48個の反応チャンバーに分割して、複雑性がはるかに低い状態で後続の増幅反応を行うことである。もう一つの解決策は、初期増幅産物を希釈して、数十、数百、または数千のマイクロポアまたはマイクロウェルを含む細区画に入れることである。それにより、所与のマイクロポアまたはマイクロウェルを1~4つのqPCRまたは個別のシーケンシング反応に使用できるため、PCRのドロップアウトのリスクを最小限に抑えながら、正確な標的の計数または定量が可能になる。
【0090】
本発明の一態様は、一連の細区画、好ましくは行と列に整列されたものであり、各細区画が、後続のqPCR、UniTaq、FRET、qLDR、またはシーケンシング反応及び標的同定のための、1桁、数十、数百、または数千のマイクロポアまたはマイクロウェルを備えるものである。好ましい実施形態では、標的が存在すると蛍光で読み取りされる。いくつかの実施形態では、標的は増幅されて、マイクロポアまたはマイクロウェル内の固体支持体に固定または結合される。そのような固定は、マイクロポアもしくはマイクロウェルの内部表面、マイクロポアもしくはマイクロウェルの表面に固定されたデンドリマー状プライマー、または増幅前にマイクロポアもしくはマイクロウェル内に予め分配されているか、もしくは初回増幅後にマイクロポアもしくはマイクロウェルに分配されるマイクロビーズに対して直接行われる場合がある。固体支持体への固定または結合により、増幅された標的を1回以上調べて、標的内の変異、SNP、または配列変異の有無を決定することができる。これには、複数ラウンドのライゲーション検出反応(LDR)、sequencing by synthesis、またはsequencing by ligationが含まれる。
【0091】
細区画を行と列に整列することで、ユニバーサルもしくは標的特異的プライマー、酵素、試薬、緩衝液、標的、または前増幅した標的のいずれかを、そのような行及び列に充填しやすくなる。流体連結または流体接続された流路を経由して、全細区画にわたる所与の行または列に液体を流入させることによって、あるいは例えば音響液滴射出(ADE)技術を使用して個別の細区画に液体を正確に分注することによって、充填を達成することができる。ADE機器の製造業者の一つはLabcyte(Sunnyvale California)である。
【0092】
本発明の一実施形態では、この柔軟な設計構造により、384個、768個、または1536個の標的、変異、耐性遺伝子、病因遺伝子、及び/または株変異体もしくは血清型変異体を潜在的に表すウイルス、細菌、原生動物、マラリア、または他の病原性の核酸の同定、ジェノタイピング、及び/または定量が可能になる。通常、収量が血液1mlあたり1~2コロニー形成単位であるため、細菌性DNAを血液から直接検出することは特に困難な課題であるが、空間多重化手法では、それでもなお32個、64個、または128個の潜在的な標的を同定できる場合がある。以下に記載するシーケンシングモジュールを使用すると、この設計により1,536個の潜在的な病原体標的について約150塩基のリードを決定することができる。
【0093】
この設計の別の実施形態は、空間希釈(例えば48区分)を使用し、血漿から直接、コピー数を正確に計数して、トリソミーの非侵襲的出生前検査(NIPT)を行うことが可能である。48区分、すなわち48列のそれぞれにおいて、ワトソン鎖がクリック鎖と一致する必要があるため(各鎖の一方と所与の断片から生成されるため)、これは鎖の欠失またはその他のエラーの内部標準となる。2番(対照)、13番、18番、21番、X、及びY染色体の複数の固有の遺伝子座を使用して、コピー数を確定し、トリソミーまたは他の染色体コピーの変化を識別する。一実施形態では、両鎖で184個の遺伝子座領域を調べることができるが、これを368個または736個の遺伝子座領域に増加させることができる。
【0094】
設計の別の実施形態は、最大64個または128個の潜在的標的に対する、血漿からの直接的なPCR-LDR-qPCRによる1分子変異検出を可能にするほか、単一のシグナルによって遺伝子内の複数の変異(すなわちK-rasコドン12及び13における変異)を評価する場合の柔軟性もさらに備えている。選択遺伝子のプロモーター領域においてCpG部位のメチル化を同定及び計数する際に、類似するレベルの柔軟性を適用することができる。チャンバー内で段階希釈を実行できるため、例えばエキソソームまたは血小板から単離された、希少及び過剰発現両方のlncRNA、mRNA、またはスプライス変異体を含め、384個のRNA標的の正確な計数が可能である。
【0095】
設計の別の実施形態は、144個の標的領域における低存在量の変異の決定を可能にし、両鎖について約150塩基のリードが得られ、それにより各変異が正確に計数される。メチル化領域をシーケンシングすることで、これらの領域を前濃縮できるため、低存在量で存在する場合であっても、2,000を超えるメチル化CpGプロモーター領域を調べることができる。
【0096】
本発明の一実施形態(図1Aを参照)では、細区画Zは列A~Aii及び行B~Bに存在し、幅400ミクロン×長さ600ミクロンである。細区画Z間にはさらに100ミクロン幅の隆起部X及びYが使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。そのような隆起部は、細区画間の流体運動を可能にするくぼみまたは流路を有するように設計されてもよい。マイクロポアまたはマイクロウェルは、複合材料、プラスチック、金属、ガラス、ケイ素、窒化ケイ素、またはそれらの混合物を含み得る固体支持体で作製される。マイクロポアまたはマイクロウェルの寸法は、直径50ミクロン、深さ約50ミクロン~深さ400ミクロンの範囲であってよく、底部が開口されていても(すなわちマイクロポア)または閉口されていてもよい(すなわちマイクロウェル)。50ミクロンのマイクロポアの底部が、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層を備える場合があり、それにより、50ミクロンのマイクロポアに上部から液体を充填することができ、底部の0.5ミクロンの孔から空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。微孔性の窒化ケイ素膜は、シリコンウェハ基板上に配置された窒化ケイ素層のフォトリソグラフィーパターニング及び反応性イオンエッチングなどの周知の方法により作製することができる(DesOrmeaux JP et al.,“Nanoporous Silicon Nitride Membranes Fabricated from Porous Nanocrystalline Silicon Templates,” Nanoscale 6(18):10798-805(2014)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一実施形態では、各細区画は、正方充填または六方充填で形成された、直径50ミクロンの6×4=24個のマイクロポアまたはマイクロウェルを備える。そのような実施形態は、後続のqPCR、UniTaq、FRET、またはqLDR検出に最適である。
【0097】
(表2)カートリッジ形式またはマイクロタイタープレート形式のマイクロウェルまたはマイクロポアの様々な実施形態
【0098】
本発明の別の実施形態(図1B)では、細区画Zは列A~A及び行B~Bixに存在し、幅400ミクロン×長さ600ミクロンである。細区画Z間にはさらに100ミクロン幅の隆起部X及びYが使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。そのような隆起部は、細区画間の流体運動を可能にするくぼみまたは流路を有するように設計されてもよい。マイクロポアまたはマイクロウェルは、複合材料、プラスチック、金属、ガラス、ケイ素、窒化ケイ素、またはそれらの混合物を含み得る固体支持体で作製される。マイクロポアまたはマイクロウェルの寸法は、直径5ミクロン、深さ約5ミクロン~深さ40ミクロンの範囲であってよく、底部が開口されていても(すなわちマイクロポア)または閉口されていてもよい(すなわちマイクロウェル)。5ミクロンのマイクロポアの底部が、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層を備える場合があり、それにより、5ミクロンのマイクロポアに上部から液体を充填することができ、底部の0.5ミクロンの孔から空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。一実施形態では、各細区画は、六方充填で形成された、直径5ミクロンの60×46=2,760個のマイクロポアまたはマイクロウェルを備える。そのような実施形態は、後続のsequencing by synthesisまたはsequencing by ligationに最適である。
【0099】
上記実施形態の別の変形例では、細区画Zは、幅400ミクロン×長さ600ミクロンであり、細区画間に幅100ミクロンの隆起部X及びYを備える。マイクロポアまたはマイクロウェルの寸法は、直径2.5ミクロン、深さ約2.5ミクロン~深さ20ミクロンの範囲であってよく、底部が開口されていても(すなわちマイクロポア)または閉口されていてもよい(すなわちマイクロウェル)。2.5ミクロンのマイクロポアの底部が、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層を備える場合があり、それにより、2.5ミクロンのマイクロポアに上部から液体を充填することができ、底部の0.5ミクロンの孔から空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。一実施形態では、各細区画は、六方充填で形成された、直径2.5ミクロンの100×92=11,040個のマイクロポアまたはマイクロウェルを備える。そのような実施形態は、後続のsequencing by synthesisまたはsequencing by ligationに最適である。
【0100】
本発明の別の実施形態(図1C)では、細区画Zは列A~A及び行B~Biiに存在し、幅800ミクロン×長さ1,200ミクロンである。細区画Z間にはさらに200ミクロン幅の隆起部X及びYが使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。そのような隆起部は、細区画間の流体運動を可能にするくぼみまたは流路を有するように設計されてもよい。マイクロウェルは、複合材料、プラスチック、金属、ガラス、ケイ素、窒化ケイ素、またはそれらの混合物を含み得る固体支持体で作製される。マイクロウェルの寸法は、直径50ミクロン、深さ約50ミクロン~深さ400ミクロンの範囲であってよい。一実施形態では、各細区画は、正方充填または六方充填で形成された、直径50ミクロンの12×8=96個のマイクロポアまたはマイクロウェルを備える。そのような実施形態は、後続のqPCR、UniTaq、FRET、またはqLDR検出に最適である。
【0101】
本発明の別の実施形態(図1Dを参照)では、細区画Zは列A~Aii及び行B~Bに存在し、幅400ミクロン×長さ600ミクロンである。細区画Z間にはさらに100ミクロン幅の隆起部X及びYが使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。そのような隆起部は、細区画間の流体運動を可能にするくぼみまたは流路を有するように設計されてもよい。マイクロポアは、複合材料、プラスチック、金属、ガラス、ケイ素、窒化ケイ素、またはそれらの混合物を含み得る固体支持体で作製される。マイクロポアの寸法は、直径5ミクロン、深さ約5ミクロン~深さ40ミクロンの範囲であってよい。5ミクロンのマイクロポアの底部が、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層を備える場合があり、それにより、5ミクロンのマイクロポアに上部から液体を充填することができ、底部の0.5ミクロンの孔から空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。一実施形態では、各細区画は、六方充填で形成された、直径5ミクロンの60×46=2,760個のマイクロポアまたはマイクロウェルを備える。そのような実施形態は、後続のsequencing by synthesisまたはsequencing by ligationに最適である。
【0102】
上記実施形態の別の変形例では、細区画は、幅400ミクロン×長さ600ミクロンであり、細区画間に幅100ミクロンの隆起部を備える。マイクロポアまたはマイクロウェルの寸法は、直径2.5ミクロン、深さ約2.5ミクロン~深さ20ミクロンの範囲であってよい。2.5ミクロンのマイクロポアの底部が、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層を備える場合があり、それにより、2.5ミクロンのマイクロポアに上部から液体を充填することができ、底部の0.5ミクロンの孔から空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。一実施形態では、各細区画は、六方充填で形成された、直径2.5ミクロンの100×92=11,040個のマイクロポアを備える。そのような実施形態は、後続のsequencing by synthesisまたはsequencing by ligationに最適である。
【0103】
デバイスは、マイクロ流体流路に流体接続されたマイクロポアまたはマイクロウェルのアレイを備えると想定される。一実施形態では、流体接続された流路により、様々な試薬及び酵素を一連の反応チャンバーに供給し、前増幅反応を行ってから産物をマイクロポアまたはマイクロウェルのアレイに移動させ、後続のTaqman(商標)またはシーケンシング読み取りを行うことが可能である。
【0104】
図2の左(下)部分は、直径50ミクロンのマイクロウェルまたはマイクロポアのアレイへのマイクロ流路の流体接続を示す概略正面図である。図2のこの部分では、マイクロ流路は、注入口2及び出口8を有するカートリッジ4によって画定される空間6に存在する。図2の右(上)部分は、カートリッジ内部の構成要素の詳細図を記載したものであり、数千のマイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバーの例示的な設計の概略正面図を示している。この設計は、後述するような、CTCまたはエキソソームから単離された低存在量及び中存在量のlncRNA、mRNA、及びスプライス部位変異体を同定するためのマルチプレックスRT-PCR-ネステッドPCR-UniTaq検出の実行に適したチャンバー構造を示している。この図では、試料注入口は、入口12を経て大きな六角形チャンバー10(下)に流体接続され、六角形チャンバーは、導管14によって、第1の12個の菱形チャンバーのセット16(4個おきに、それぞれ大トラフ18c、中トラフ18b、及び小トラフ18aを含む)に流体接続され、第1の菱形チャンバーのセットは、導管20によって、第2の24個の菱形チャンバーのセット22(2個おきに、それぞれ大トラフ24a及び小トラフ24bを含む)に流体接続され、第2の菱形チャンバーのセットは、導管26によって、24個の細長い混合チャンバー28に流体接続され、混合チャンバーは、導管30によって、マイクロウェルまたはマイクロポアが含まれる細区画32(パネルの上部に2行のみを図示)に流体接続されている。全チャンバーに所与のレベルで等しく充填するために、流体の流れを制限するように蛇行経路が設計されている場合がある。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。
【0105】
図3の左(下)部分は、直径5ミクロンのマイクロポアのアレイへのマイクロ流路の流体接続を示す概略正面図である。図3のこの部分では、マイクロ流路は、注入口102及び出口108を有するカートリッジ104によって画定される空間106に存在する。図3の右(上)部分は、カートリッジ内部の構成要素の詳細図を記載したものであり、Taqman(商標)またはシーケンシング反応に適した、数百万のマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバーの別の例示的な設計の概略正面図を示している。この図では、注入試料は、入口112を経て大きな六角形チャンバー110(下)に流体接続され、大きな六角形チャンバーは、導管114によって、第1の8個の六角形チャンバーのセット116(4個おきに、それぞれ大トラフ118a及び小トラフ118bを含む)に流体接続され、第1の六角形チャンバーのセットは、導管120によって、第2の16個の六角形チャンバーのセット122(2個おきに、それぞれ大トラフ124a及び小トラフ124bを含む)に流体接続され、第2の六角形チャンバーのセットは、導管126によって、16個の細長い混合チャンバー128に流体接続され、混合チャンバーは、導管130によって、マイクロポアが含まれる細区画132(パネルの上部に2行のみを図示)に流体接続されている。第2の16個の六角形チャンバーのセット122は、互いに少しずつオフセットした例が示されているが、これは密な構造を保ちながら、各チャンバー内での液体容積を大きくできるようにするためである。全チャンバーに所与のレベルで等しく充填するために、流体の流れを制限するように流体経路が設計されている場合がある。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。
【0106】
図4A図4Cは、固体支持体の細区画232内の50ミクロンのマイクロウェルと、流体の流れを誘導しやすくするプレート204の概略正面図(図4A)、図4Aの線B-Bに沿った概略水平断面図(図4B)、及び図4Aの線C-Cに沿った概略垂直断面図(図4C)を示す。この図は、5または2.5ミクロンのマイクロポア202にも該当するが、その場合、各チャンバー内に図示されるマイクロポアは多くなる。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。これはウェルの六方空間配置の例を示す。この実施形態では、マイクロウェルの内部表面は親水性表面を有し、対する外部表面は疎水性であるため、標的または前増幅した標的及び/またはプライマーが含まれる水性液体をマイクロウェルの上に(例えば下から上に)流すと、水性液体が各マイクロウェルに充填される。続いて疎水性液体(すなわち鉱油、シリコーン油、フッ素化油、またはペルフルオロデカリン)をウェルの上に流すと、疎水性液体で覆われた個々のウェルに水性液体が残り、それぞれが隔離されたウェル内で、後続の酵素反応または増幅反応を独立して進行することが可能である。
【0107】
図4の一実施形態では、プレートの表面は疎水性である。別の実施形態では、プレートの表面は親水性である。一実施形態では、チャンバーからの注入及び排出を制御する1つ以上のバルブを用いて、下部から液体を流入させ、上部から流出させる。下部から上部へ至る水性液体のマイクロウェルへの流れは、下部から陽圧をかけること、すなわち上部が空気に開放されたチャンバーに液体を送出することによって、及び/または陰圧をかけること(すなわちシリンジ吸引または部分的な真空引き)によって促進することができる。流速は、様々な組み合わせの圧力を使用して調整することができる。
【0108】
図5A図5Cは、固体支持体の細区画232内の50ミクロンのマイクロポア202の概略正面図(図5A)、図5Aの線B-Bに沿った概略水平断面図(図5B)、及び図5Aの線C-Cに沿った概略垂直断面図(図5C)を示す。これは図4A図4Cと同様であるが、前面プレート204及び背面プレート206を備える。この図では、チャンバーの前面は前面プレートとマイクロポアの広径側との間の領域であり、チャンバーの背面は背面プレートとマイクロポアの狭径側との間の領域である。背面プレートを発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。
【0109】
図4A図4C及び図5A図5Cはいずれも、流体の流れを誘導しやすくし、構造安定性をもたらすために、細区画間の隆起部がプレート204及び206にどのように連結されているかを示している。この図は、5または2.5ミクロンのマイクロポアにも該当するが、その場合、各チャンバー内に図示されるマイクロポアは多くなる。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。一実施形態では、縦方向の隆起部はプレートと面一であり、横方向の隆起部は液体が列の上を流れるが、ある列から次の列へは流れないようにするためのくぼみまたは流路を有する。最初に特定のプライマーを行内に予備充填するのに適した別の実施形態では、列間の流路を閉鎖するため、ならびに追加分の高さを設け、行全体に流体を流すことは可能であるが、ある行から次の行へは流れないようにするための隆起を有する横方向の隆起部と共に一時的かつ補足的なプレートを利用する。目的とするプライマーセットが行に充填された後、液体が蒸発するにつれて、プライマーはマイクロポア内の親水性表面で濃縮される。プレートを取り外すと、その蒸発を促進することができ、その後、最後のプレートを元に戻すと、行から列の上へと流れるが、ある列から次の列へは流れないようにすることができる。マイクロポアが含まれる固体支持体の背面にある隆起部も、類似する構造のものであり、背面でも液体が列の上を流れるように背面プレートに取り付けられる。横方向の隆起部にある流路またはくぼみの位置は、望ましい構造支持体が得られるようにオフセットされていてもよい。隆起部、くぼみ、または横方向の隆起部の流路の正確な寸法を最適化して、流体の流れが最適下限となるデッドスペース、すなわち所与のチャンバーの角のスペースを回避することができる。
【0110】
図6A図6Cは、図5A図5Cと同様に、固体支持体232内の50、5、または2.5ミクロンのマイクロポア202の概略正面図(図6A)、図6Aの線B-Bに沿った概略水平断面図(図6B)、及び図6Aの線C-Cに沿った概略垂直断面図(図6C)を示す。ただし、この図では、50、5、または2.5ミクロンのマイクロポアの底部が、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層238をどのように備えるかを示している。この層により、50、5、または2.5ミクロンのマイクロポアに前面から液体を充填することができ、背面の0.5ミクロンのポアから空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。これらの図では、チャンバーの前面は前面プレート204とマイクロポアの広径側との間の領域であり、チャンバーの背面は背面プレート206とマイクロポアの狭径側との間の領域である。背面プレート206を発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。一実施形態では、プレート204及び206いずれの表面も疎水性である。別の実施形態では、一方のプレートの表面は親水性であり、他方は疎水性である。別の実施形態では、両方のプレートの表面が親水性である。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。
【0111】
以下のセクションでは、異なるマイクロ流体チャンバー構造の説明を記載すると共に、様々なチャンバー、マイクロウェル、及び/またはマイクロポアに、後続の核酸の増幅、検出、及び/またはシーケンシング反応に適した液体がどのように充填されるかについて例示する。
【0112】
図7A図7Iは、異なる試薬を混合すること、様々な増幅反応を実施すること、または後ほど次の反応に使用するため、もしくはマイクロウェルもしくはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させるために上記増幅反応物の一部を保存することを含む様々な操作を行うことができるプレチャンバーの様々な設計の概略正面図を示す。一般に、流体は下部口から入り、上部口から出る。いくつかの補足例では、サイズ及び種類が同じである複数のチャンバーに同時に充填される。これらの例では、チャンバーは一般に疎水性の材料で作製されており、液体は親水性である。こうした例では、少量の低密度疎水性油(すなわち鉱油)を使用して各チャンバーの上部を密閉することで、液体の水分を失うことなく、熱サイクルすることが可能である。場合により、後方から水性液体を押し流す際には、これらのチャンバーの下部を密閉する疎水性液体はフッ素化油、すなわちペルフルオロデカリンなどのより高密度なものであり得る。さらに、グリセロール(10%v/v超を使用した場合、酵素活性に影響を及ぼす)などの添加剤、または酵素安定性を増強するか、もしくはGCリッチ標的の増幅を増強する他の化合物、例えばベタイン、エクトイン、ヒドロキシエクトイン、マンノシルグリセレート、マンノシルグリセルアミド、リン酸ジグリセロール、または他の糖もしくは糖誘導体を使用して、水性層の密度及び粘度を調整することができる。図7Aでは、鉱油の小さなプラグにより、液体がチャンバーに注入されるように水性反応成分が誘導される。鉱油が上部出口に到達し、チャンバーが密閉されると、チャンバーに水性液体が充填され、下部入口はフッ素化油で密閉される。熱サイクル(または他の反応)の後、液体が排出されると、入口の左側にある浅いトラフに保持された少量の水性液体が残る。新たに試薬が導入されると、先の反応の増幅産物と混合されることになる。図7B図7Aと同様であるが、より多量の産物がトラフに保持される。図7C図7Aと同様であるが、ほぼ半量の産物がトラフに保持される。図7D図7Aの変形例であり、いくつかのプライマーセットが右側の第2のトラフにプリントされる場合がある。これらの条件下では、下部チャンバーでの最初の反応からの産物を、第1(左側)のトラフには充填されるが、第2のトラフを超えないように、この第2のチャンバーへ流体流入させることができる。液体が排出されると、入口の左側にある浅いトラフに保持された少量の水性液体が残る。新たに試薬が導入されると、先の反応の増幅産物に加え、第2のトラフに付着するプライマーとも混合されることになる。この方法では、一次PCRに続いて二次LDRまたはPCR反応を行うことができる。留意点として、二次反応からの液体を排出すると、産物は左側と右側両方のトラフに残る。図7E図7Dの変形例であり、第1の産物セットの方を多く保持するために第1のトラフの方が大きくなっている。図7F図7Cと同様であるが、第2のプラスチック部品を備える。これにより、第2の反応流体を下方へ移動させ、最初の反応により予め残存する産物と完全に混合することを確実にする。図7G図7Aと同様であるが、下部ではなく側面から試薬が投入される。それによって、最初の反応からの一部の産物をチャンバーに保持し、後で第2の反応物と混合することができる。図7H図7Gと同様であるが、より多量の産物がチャンバー下部に保持される。図7Iでは、チャンバーは図7Hと同様であるが、追加部分をいくつか備える。鉱油が入口に押し上げられると、一部は2本の細い疎水性チューブに入り、残りはチャンバーの側面に入る。それに続く水性液体は、細い疎水性の開口部には入らず、前方に鉱油の小さなプラグがある反応チャンバーに完全に流入される。鉱油が上部出口に到達し、チャンバーが密閉されると、チャンバーに水性液体が充填され、2本の細いチューブにも鉱油が充填され、下部入口はフッ素化油で密閉される。反応後、液体が排出されると、2本の細いチューブから鉱油が、続いて空気が排出される。チャンバー内で産生された産物はいかるものもそこに留まる。十分な水性流体が追加され、上部の空気開口部を超えて液体が押し上げられると、産物は次のチャンバーに流体流入することができる。
【0113】
図8A図8Cは、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに、導管14、20、26、及び30内の液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバーの様々な設計の概略正面図を示す。図8Aは、8つのチャンバー16内の流体連結するプライマー及び/またはプローブ(灰色の円17)が、チャンバーを出た後、導管26によって、より細長いチャンバー28へ、そしてマイクロウェルまたはマイクロポアの細区画32へと入り、最終的にマイクロウェルまたはマイクロポア内で乾燥され、内部表面に共有結合する例である。一実施形態では、カートリッジの製造時に、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を行に予備充填する。一実施形態では、一時的なプレートを使用して、マイクロウェルまたはマイクロポアの列全体にわたるが、各行は互いに隔離された流体経路を提供する。図の上部にある灰色の円は、例えば音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによってプライマーセットが送達またはプリントされる可能性のある位置を示している。プリント後、マイクロ流体流路を使用してプライマーセットを各行に分配し、個別のマイクロウェルまたはマイクロポア内で乾燥させることができる。プライマーセットが適切に送達され、所定の位置で乾燥された後は、一時的なプレートを取り外して、永続的なカバーと交換し、マイクロウェルまたはマイクロポアの列の上を通るが、各列を隣接列から隔離する流体経路を提供する。図8Bは、トラフ18及び24ならびにバッフル23を備えた4+4のチャンバー16及び22に流体連結する試薬が、チャンバーを出た後、細長いチャンバー28、さらに導管30及び細区画32へと流入する例である。この図では、灰色の円25は、ポリメラーゼ及び/またはリガーゼによるDNA増幅反応に適した特異的プライマーを表す。長いチャンバーの左側は極疎水性のプラスチックでコーティングされているか、またはそれで作製されているが、右側はわずかに疎水性であるか、やや親水性である。鉱油の小さなプラグは最初のチャンバーから押し出されると、自然に左方向へ移動し、プラグに続く水性反応物が、マイクロウェルまたはマイクロポアで構成される列(図の上部)へと直接押し流される。したがって、最初に水性液体に露出させる(それにより、閉じ込められた気泡が液体の動きを妨げるのを回避する)ことにより、マイクロウェルまたはマイクロポアへの充填が最適に機能すれば、この手段により、鉱油が経路から取り除かれる。図8C図8Bと同様の概略図であり、その図では、トラフ18及びバッフル19を備えた4つのチャンバー16に流体連結する試薬が、チャンバーを出た後、細長いチャンバー28、さらに細区画32へと流入する。この図では、灰色の円17は、ポリメラーゼ及び/またはリガーゼによるDNA増幅反応に適した特異的プライマーを表す。図8Cには、追加のプラスチック製隆起部または仕切部29が示されている。これは、後続の水溶液がチャンバーを通って押し上げられる際に、疎水性油を水溶液から分離し、それと混ざらないようにする効果がある。
【0114】
図9A図9Bは、図5B及び図6Bに例示されるような、マイクロポアに充填するための実施形態の概略側面図を示す。これらの図では、マイクロポア202の内側は親水性であり、他の表面は疎水性である。一実施形態では、マイクロポアのアレイへの流体移動に適したプレチャンバー内に、例えば音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティング(図8Aを参照)により、異なるプライマー及びプローブがプリントされる。図9A及び図9Bにおいて、前面プレート204は流路240の上方に示されている。図9Aは、固体支持体232内の、頂部と底部の両側が開口しているマイクロポア202を示す。上部流路240からマイクロポアにプライマー(及びプローブ)が流体導入されると同時に、背面プレート206と形成される下部流路242から油(好ましくは水溶液よりも高密度である)が導入される。続いて、油(低密度のもの)によって上部流路240から水溶液が押し流され、プライマー/プローブは流体分離される。プライマーが表面に共有結合的に固定されている場合、その化学作用は、上部流路240と下部流路242の両方に油が充填されたときに起こり得る。あるいは、捕捉によりプライマーが固定される場合もあり、例えばビオチン化プライマーはストレプトアビジンをコーティングした表面によって捕捉することができる。プライマー-プローブを後で乾燥させる場合、酢酸アンモニウムなどの揮発性塩に配合するか、あるいはベタイン、エクトイン、ヒドロキシエクトイン、マンノシルグリセレート、マンノシルグリルアミド、リン酸ジグリセロール、または他の糖もしくは糖誘導体を含有する安定化緩衝液を加えてもよい。その後、マイクロポア内の水溶液と混和しない揮発性有機物(すなわちヘキサノール)を用いて、上部の油を押し流すことができる。揮発性有機物を空気で押し流し、穏やかな熱の存在下で水を蒸発させると、目的とするプライマー及びプローブが乾燥してマイクロポアの内部表面に残るようにすることができる。下部の油も揮発性有機物、続いて空気で押し流し、アレイチャンバーを乾燥させてもよい。あるいは、プライマーがマイクロポア202の内部表面に固定されている場合、過剰なプライマーを洗い流した後、任意の揮発性有機物(すなわちエタノール)を加えて乾燥させる。図9Bは、上部流路240(プレート202とで形成)側が開口する固体支持体232内にあり、200~400ナノメートル厚の窒化ケイ素上に0.5ミクロンの穴をもつ別の層238を備えるマイクロポア202を示す。この層により、50、5、または2.5ミクロンのマイクロポアに流路240経由で前面から液体を充填することができ、下部流路242(背面プレート206とで形成)の0.5ミクロンの孔から空気は通るが液体は漏れないようにすることができる。この図では、任意のプライマーの固定工程時に必要とされる場合、マイクロポア202内の反応物を後で加熱できるように下部流路242に油が追加されている。他の実施形態、例えば固定を伴わずにプライマー/プローブを追加する場合、下部及び/または上部のチャンバーに油を使用してもしなくてもよい。
【0115】
図10は、細区画32のマイクロウェルまたはマイクロポアに充填する前に、反応チャンバーに充填する実施形態の概略正面図を示す。この構成には、導管14及び20によって供給が行われる2組の反応チャンバー16及び22が含まれ、それぞれがトラフ18及び24を有し、第2のセットには適切なライゲーションプローブオリゴヌクレオチド(灰色の円25)が事前にスポットされている。左側は、マイクロポアアレイでのTaqman(商標)読み取り前の初期マルチプレックスPCR前増幅及びそれに続くリガーゼ検出反応(LDR)用のマイクロ流路及びチャンバーの一部の概略図を示している。次のパネルでは、下部の導管14に軽油キャップ、続いて標的、PCRプライマー、及びPCR試薬を含む水性液体を導入した後、重油を使用して、この水性反応混合物を第1の反応チャンバーのセット16に流体移動させる。PCR熱サイクル工程の後、油と大半の水性反応物が導管14によって排出されるが、最初の2つのチャンバー16それぞれのトラフ18に少量のPCR産物が保持される。導管14経由でチャンバーに再び軽油を充填した後、LDR試薬及び酵素を充填し、次いでこの水性反応混合物を、重油を使用して第2の反応チャンバーのセット22(事前にスポットされたLDRプライマーとここで混合する)に流体移動させる。反応チャンバー22から、導管26によって反応チャンバー28(プラスチック製隆起部または仕切部29により分割される)へ、さらに導管30によってマイクロウェルまたはマイクロポアの細区画32へと流入する。LDRの熱サイクル工程の後、再度試薬が排出されるが、LDR産物はトラフ24に保持される。このときこの産物は、図11Aから~図11Bで説明するように、PCRマスターミックスと流体混合して、マイクロポアアレイへ移動させ、後続のTaqman(商標)反応を行うのに適したものである。
【0116】
図11A図11Bは、Taqman(商標)またはUniTaq反応などのリアルタイムPCR反応を実施するために、図5C及び図6Cに例示されるようなマイクロポア202に充填するための実施形態の概略側面図を示す。図11A図11Bでは、流路240の左側に前面プレート204が示され、流路242の右側に背面プレート206が示されている。この図は、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を予備充填して乾燥させた、固体支持体232内のマイクロポア202から始まっている。一実施形態では、マイクロポア202の内部表面は親水性表面を有し、対する外側の前面244及び背面246は疎水性であるため、標的または前増幅した標的及び/またはプライマーが含まれる水性液体をマイクロポアの上に(例えば下部から流路242を通り、孔の直径が大きい前面側244から流路240を通り上部まで)流すと、水性液体が各マイクロポアに充填される。一実施形態では、チャンバーからの注入及び排出を制御する1つ以上のバルブを用いて、流路240または242の下部から液体を流入させ、流路240または242の上部から流出させる。一実施形態では、チャンバーの前後の流体の注入及び排出が、個々のバルブによって、または個々に圧力を加えることによって調整または制御される。下部から上部へ至る水性液体のマイクロポアへの流れは、流路240または242経由で下部から陽圧をかけること、すなわち上部が空気に開放されたチャンバーに液体を送出することによって、及び/または陰圧をかけること(すなわちシリンジ吸引または部分的な真空引き)によって促進することができる。流速は、上部、下部、前面、または背面から様々な組み合わせの圧力を使用して調整することができる。例示目的で、マイクロポア202内での後続の個別化した増幅に適する水性液体をマイクロポア202に充填する作業について検討する。図11Aでは、マイクロポア202の内側表面を除き、前面244及び背面246を含むすべての表面が疎水性である。下部前面から陽圧を利用して水性流体が注入されると、流体が流路240を通って前面244からマイクロポア202に入り、流路242を通って背面246から空気が押し出され、マイクロポア202の背面にメニスカスが形成される。最初に充填されたマイクロポアの背面から液体を押し出すのに十分な圧力を生じさせるために、前面で水性液体が上昇するにつれ重量が増加しないように、下部背面246から流路242へと疎水性液体を押し出して、マイクロポア202の背面の水性メニスカスを形成直後に覆う。至適な圧力高の差は実験により決定することができる。この差は、液体の粘度、液体の密度、液体の体積差に加え、マイクロポアのある固体支持体の外側表面の疎水性の作用であると考えられる。水性液体が流路240を通って前面244からマイクロポア202に充填されたときに、前面244から流路240を通って疎水性液体(すなわち重油)が流入すると、非生産的な容積から水性液体が押し出され、マイクロポア202へ流入すると同時に、前面244の各個々のマイクロポア202が油で覆われる。それにより、マイクロポアそれぞれに水性液体が充填され、前面244及び背面246は疎水性液体で密閉される。各マイクロポア202は流体分離されており、後続の独立した増幅及び熱サイクル反応に適している。図11Bでは、マイクロポア202の内側表面と0.5ミクロンの穴のある窒化ケイ素238を除き、すべての表面が疎水性である。流路240経由で下部前面244から陽圧を利用して水性流体が注入されると、流体が前面244からマイクロポア202に入り、流路242経由で背面246から空気を押し出し、液体は0.5ミクロンの窒化ケイ素の孔を通過しない。水性液体が前面244からマイクロポア202に充填されたときに、前面244から流路240を通って油が流入すると、非生産的な容積から水性液体が押し出され、マイクロポア202へ流入すると同時に、前面244の各個々のマイクロポア202が油で覆われる。チャンバーの背面に加湿空気を充填して加熱し、最終的にマイクロポア内の水性液体を加熱してもよい。あるいは、流路242経由でチャンバーの背面246にも図のように油を充填してもよい。それにより、マイクロポア202それぞれに水性液体が充填され、前面及び背面が油で密閉される。各マイクロポアは流体分離されており、後続の独立した増幅及び熱サイクル反応に適している。
【0117】
図12は、シーケンシング反応を実行するために、図6A図6Cに例示されるようなマイクロポアに充填するための実施形態の概略側面図を示す。図12では、流路240の左側に前面プレート204が示され、流路242の右側に背面プレート206が示されている。この例では、マイクロポア202の内側表面と0.5ミクロンの穴のある窒化ケイ素238を除き、前面244及び背面246を含むすべての表面が疎水性である。流路240経由で下部前面244から陽圧を利用して水性流体が注入されると、流体は前面244からマイクロポア202に入り、流路242経由で背面246から空気を押し出し、0.5ミクロンの窒化ケイ素の孔は通過しない。水性液体が前面244からマイクロポア202に充填されたときに、前面244から油が流入すると、非生産的な容積から水性液体が押し出され、マイクロポアへ流入すると同時に、前面244の各個々のマイクロポアが油で覆われる。流路242の背面246にも油が充填されている。それにより、マイクロポア202それぞれに水性液体が充填され、前面244及び背面246は油で密閉される。各マイクロポア202は流体分離されており、鋳型鎖を増幅して、マイクロポアの内部表面の固体支持体に固定する後続の独立した熱サイクル反応に適している。油は流路240を通り前面244から押し流されるが、反対側の鎖産物は変性され、他の産物及びプライマーは洗い流される。重油プラグを使用して流路240で前面244下部を塞ぐと同時に、流路242に通して背面246をすすぎ、場合により空気乾燥させると、シーケンシングに適したマイクロポア202内でクローン増殖されて固定された標的鎖がアレイに供給される。背面246の下部から上部前面244及び背面246に至る、水性液体のマイクロポアへの流れは、下部から陽圧をかけること、すなわち上部が空気に開放された流路240または242に液体を送出することによって、及び/または陰圧をかけること(すなわちシリンジ吸引または部分的な真空引き)によって促進することができる。流速は様々な組み合わせの圧力を使用して、または上部背面での開口を制限することにより調整できるため、必ずシーケンシング試薬の体積のほとんどが下部背面246から入り、マイクロポア202を通って上部前面244から排出される。マイクロポア202の背面側に窒化ケイ素層238を使用するさらなる利点は、前面側244から追加された水性液体は、背面側246の空気界面を破壊しないが、流路242の背面246に水性液体が充填されている場合、0.5ミクロンの穴からマイクロポア202の前面244へと自由に通過することである。これにより、後続のシーケンシング反応での試薬の追加及び様々な試薬の流入または流出において柔軟性が高まる。
【0118】
図13A図13Bは、図1及び図6A図6Cに記載のマイクロウェルまたはマイクロポアを使用したチャンバー形式の概略正面図を示す。図13Aは、空間306を画定するカートリッジ304内の細区画332が幅800ミクロン×長さ1200ミクロン(長方形断面図として図示)であり、直径50ミクロンの96個のマイクロウェルが含まれるマイクロウェル形式の概要を示す。細区画332間にはさらに200ミクロン幅の隆起部350が使用され、細区画の間隔及び追加の構造支持体を提供する。これらを長方形の細区画332の行間及び列間に「白色」領域として表す。この概略図では、簡潔にするため、32列×32行を示している。他の実施形態として、48列×48行、及び64列×64行が挙げられる。図13Bは、マイクロタイタープレート形式のマイクロポアのアレイ上でシーケンシングするためのマイクロ流体チャンバーの概要を示す。本概略図では、空間406を画定するカートリッジ404内の32の二重列×32の二重行を示し、拡大図には、2,072個のマイクロポアをそれぞれが含む、(白色隆起部450で区切られた)細区画432の二重列2つと二重行1つのみを示す。他の実施形態として、48の二重列×48の二重行、64の二重列×64の二重行が挙げられる。さらに他の実施形態として、96列×96行、及び128列×128行が挙げられる。一実施形態では、マイクロポアを含むチャンバーへの注入口を通る供給は、流体閉鎖または流体開放できる一連の個々の開口部から、音響液滴射出を使用して、列のチャンバーすべてに、試薬、酵素、標的、または前増幅した標的を流入させる。音響液滴射出を使用する場合、反対側から陰圧をかけること(すなわち真空)によって、及び/または一連の親水性入力チャンバー452及び導管454及び遷移部456に導管455内の液滴を供給し、続いてマイクロポアの列を有する細区画432に供給することにより、注入口402から個々の開口部への流体の流入を促進することができる。この概略図では、個々の開口部はそれぞれ親水性の入力チャンバー452に接続されており、そのチャンバーからマイクロポアを含む2列の細区画432へ供給される。さらに、チャンバーはまた、1つの入口からチャンバーすべてに試薬を流入させ、反対側で単一の廃棄口または出口408へと流出させることを可能にするように流体連結されている。親水性の入力チャンバー452に試薬、酵素、標的、または前増幅した標的が適切に充填されると、これらの開口部は閉じられ、その後、油または他の試薬が1つの入口から追加され、投入溶液がマイクロポアへと流体移動して、さらに反応が行われる。
【0119】
マイクロウェルまたはマイクロポアの代替構成も考慮することができる。OpenArray技術は、ThermoFisher(Carlsbad,CA)から入手可能である。この技術では、様々な異なる方法で構成できる、3,072個のスルーホールを備えるスライド大の顕微鏡用金属プレートを使用する。例えばプレートを64個のスルーホールまたはマイクロポアを備える48のサブアレイに分割することができる(各サブアレイは、従来の384ウェルマイクロタイタープレートと同じ間隔である)。現在の構成では、各スルーホールは直径300ミクロン、深さ300ミクロンであり、スルーホールは親水性であるか、または親水性コーティングを備えているが、プレートの前表面及び後表面は疎水性コーティングを備えている。そのため、表面張力によって水性試薬がスルーホールに保持される。適切な増幅及び検出プライマーをスルーホールに充填した後、これらのプライマーをスルーホールの内側表面で乾燥させることができる。続いて、試料、酵素、及び適切な緩衝液を加えるとプライマーは溶解されるが、疎水性液体(すなわち鉱油)を両側に使用すると反応物は各スルーホール内の所定位置に密閉される。直径60ミクロンのスルーホールを製造して、この技術を拡張すると、サブアレイあたり約1,225個のスルーホール、スライド大の顕微鏡プレートあたりの合計では58,800個のスルーホールまたはマイクロポアが可能になる。また、ThermoFisherが開発した別のシステムがQuantStudio 3DデジタルPCR 20Kチップであり、これは直径60ミクロンのマイクロウェル20,000個を含むようにエッチングされたシリコン基板で構成されている。プライマー、試薬、及び酵素を加え、プレートを密閉して液体をマイクロウェルに分配し、反応を実行する。制限はチップ上で1回の反応しか実行できない点である。もう一つのシステムは、Formulatrix(Bedford,MA)が開発しており、Constellation Digital PCRシステムとして知られている。このシステムでは、標準的なマイクロタイタープレートが、32,000個のマイクロウェル(直径約50ミクロンのもの)を含む24個のチャンバー、または8,000個のマイクロウェルを含む96個のチャンバーに分割されている。この設計はまた、200,000個のマイクロウェル(直径約20ミクロンのもの)を含む24個のチャンバー、50,000個のマイクロウェルを含む96個のチャンバー、または12,500個のマイクロウェルを含む384個のチャンバーの使用にも対応している。各チャンバーは入力流路に流体連結された入力ウェルを備え、入力流路は個別の区画で構成される多数の接続流路と流体連結され、さらに接続流路はすべて、通気口または空気穴を有する出力流路に流体連結されている。流路の下部には、プレートの密閉に適した透明なプラスチックがある。プライマー、試薬、及び酵素を入力ウェルに加えると、入力流路及び接続流路を経て流体送出され、過剰分は出力流路及び通気口に移動する。続いてローラーを使用して下部の密閉部を加圧すると流路が遮断され、それにより各区画が熱サイクル及びデジタルPCR読み取りに適した、分離されたマイクロウェルになる。圧力を利用して接続流路を一時的に遮断し、増幅反応中に限り区画(マイクロウェル)を作成することによって、または後で溶解することができる一時的な封止材によって、下部のプラスチックのみ一時的な密閉部を形成するように、このシステムを変更することができる。後続のシーケンシング反応で、個々の区画(マイクロウェル)内で標的が増幅及び固定された後、下部のプラスチックの密閉が解除され、未反応の試薬及び共有結合で固定されていない産物を変性させて洗い流すことができる。得られたクローン増幅された一本鎖標的は、以下に記載されるか、または当技術分野で公知である、後続のsequencing-by-synthesis反応に適している。
【0120】
図14は、適切なプライマー及びプローブの予備充填に適した、図13Aに記載の固体支持体332内のマイクロウェル302を使用するマイクロタイタープレート形式500の概略側面図を示す。工程Aは、疎水性プレート内の1つのチャンバーの側面図を示す。これには、両側に隆起部350がある50ミクロンの親水性ウェルが含まれる。工程Bで、プレートの上下を反転し、音響液滴射出を使用して、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、変異またはメチル化特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマーセット)を充填した。工程Cで、プレートを遠心分離し、空のマイクロウェルに水性液体を分散させる。対する工程Dは、遠心分離後に、水溶液が疎水性表面を回避するように、マイクロウェル上に液滴が形成されている様子を示す。工程Eで、水溶液を蒸発させると、ウェルには乾燥したプライマー/プローブのセットが残る(工程Fに図示)。
【0121】
図15は、図13のパネルAに記載の固体支持体332内のマイクロウェル302及び隆起部350を使用し、適切なTaqman(商標)またはUniTaqのプライマー及びプローブ(例示)を任意に予備充填した、マイクロタイタープレート形式の概略側面図を示す。工程Aは、疎水性プレート内の1つのチャンバーの側面図を示す。これには、両側に隆起部がある50ミクロンの親水性ウェルが含まれる。工程Bで、プレートの上下を反転し、音響液滴射出を使用して、リアルタイム増幅(すなわちTaqman(商標)反応)及び標的DNAに適した試薬を充填する。PCRプライマー及びTaqman(商標)プローブ(複数可)は、予めチャンバーに追加され、乾燥される場合もあれば(図14に例示)、あるいは標的、酵素、及び試薬と共に追加される。工程Cで、水性層を疎水性鉱油で覆う。工程Dで、プレートをスイングバケットローターに移し、遠心分離する。高濃度の水性液体が空のマイクロウェルに分散する。工程Eで、プレートをサーモサイクラーに移動する。鉱油で覆われ、増幅に適した個々のマイクロウェルに液滴が分離する。
【0122】
本発明の一態様は、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、試料中または他の試料中の他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる複数の核酸分子を試料において同定する方法を対象とする。この方法には、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる1つ以上の核酸分子を含有する可能性のある試料を提供することを含む。1つ以上の一次オリゴヌクレオチドプライマーセットが提供され、各一次オリゴヌクレオチドプライマープライマーセットは、(a)標的ヌクレオチド配列に隣接する配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1の一次オリゴヌクレオチドプライマー、及び(b)第1の一次オリゴヌクレオチドプライマーから形成された伸長産物の一部に相補的なヌクレオチド配列を含む第2の一次オリゴヌクレオチドプライマーを含む。接触させる試料を、1つ以上の一次オリゴヌクレオチドプライマーセット、デオキシヌクレオチドミックス、及びDNAポリメラーゼとブレンドして、ポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成し、このポリメラーゼ連鎖反応混合物を変性処理、ハイブリダイゼーション処理、及び伸長処理を含む、1つ以上のポリメラーゼ連鎖反応サイクルに供することにより、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む一次伸長産物を形成する。最初のPCR産物を24、36、または48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。この方法はさらに、一次伸長産物を、ポリメラーゼ及び1つ以上の二次オリゴヌクレオチドプライマーセットとブレンドして二次ポリメラーゼ反応混合物を形成することを含む。各二次オリゴヌクレオチドプライマーセットは、(a)標的ヌクレオチド配列に隣接する及び/またはそれを含む配列に相補的な5’プライマー特異的部分及びヌクレオチド配列を含む第1の二次オリゴヌクレオチドプライマー、ならびに(b)第1の二次オリゴヌクレオチドプライマーから形成された伸長産物の部分に相補的な5’プライマー特異的部分及びヌクレオチド配列を含む第2の二次オリゴヌクレオチドプライマーを含む。接触させる試料を、1つ以上の二次オリゴヌクレオチドプライマーセット、デオキシヌクレオチドミックス、及びDNAポリメラーゼとブレンドして、ポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成し、このポリメラーゼ連鎖反応混合物を変性処理、ハイブリダイゼーション処理、及び伸長処理を含む、1つ以上のポリメラーゼ連鎖反応サイクルに供することにより、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む一次伸長産物を形成する。試料中の二次伸長産物配列を検出及び識別して、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、試料中の他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる1つ以上の核酸分子の存在を同定する。
【0123】
図16図18に本発明の本態様の様々な実施形態を示す。
【0124】
図16(工程A~F)は、未知の病原体同定のための例示的なPCR-PCR-qPCRを示している。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。病原体がRNAウイルスの場合、最初の逆転写酵素工程を使用してcDNAを生成する。図16(工程B)に示すように、試料を初期反応チャンバー内で増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。遺伝子座特異的プライマー及びデオキシヌクレオチドミックスを使用して、マルチプレックスPCR増幅反応を実行する。一実施形態では、生成される異なるアンプリコンの相対比を維持するため、サイクルを制限して(12~20サイクル)増幅を実行する。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。最初のPCR産物を24、36、または48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。
【0125】
図16の工程Cに示すように、標的特異的オリゴヌクレオチド二次プライマーを一次増幅産物とハイブリダイズし、ポリメラーゼ(塗りつぶした菱形)を使用して対象とする標的含有領域を増幅する。この図の工程Cに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を二次プライマーに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ポリメラーゼ伸長性に優れる3’OH基が生じる(図16、工程C)。第1の二次オリゴヌクレオチドプライマーには5’プライマー特異的部分(Ai)が含まれ、第2の二次オリゴヌクレオチドプライマーには、二次増幅産物の後続の増幅を可能にする5’プライマー特異的部分(Ci)が含まれる。二次増幅反応の後、各一次PCR反応チャンバーからの伸長産物は、1つ以上のタグ特異的プライマーペア(各ペアは、対応するプライマーAi及びCiで構成される)が含まれる384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配され、PCR増幅、及び検出される。図16の工程E及びFに示すように、PCR産物の検出は、従来のTaqMan(商標)検出アッセイを使用して実施することができる(Whitcombe et al.の米国特許第6,270,967号及びAnderson et al.の米国特許第7,601,821号を参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。TaqMan(商標)を使用した検出では、二次PCR産物のプライマー特異的部分のハイブリダイゼーションに適したプライマーと併用して、標的領域にまたがるオリゴヌクレオチドプローブが増幅及び検出に使用される。TaqMan(商標)プローブには、一方の末端に蛍光レポーター基(F1)が、もう一方の末端に消光分子(Q)が含まれており、これらは互いに、無傷のプローブ内で、消光分子がレポーター基の蛍光を消光する程度に近接している。増幅時に、TaqMan(商標)プローブ及び上流プライマーは、ライゲーション産物の相補領域にハイブリダイズする。ポリメラーゼの5’->3’ヌクレアーゼ活性により、ハイブリダイズしたプライマーが伸長し、TaqMan(商標)プローブの蛍光基が遊離され、検出可能なシグナルが生じる(図16、工程F)。
【0126】
図17(工程A~F)は、未知の病原体同定のための例示的なPCR-PCR-qPCRを示している。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。病原体がRNAウイルスの場合、最初の逆転写酵素工程を使用してcDNAを生成する。図17(工程B)に示すように、試料を初期反応チャンバー内で増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。遺伝子座特異的プライマー及びデオキシヌクレオチドミックスを使用して、マルチプレックスPCR増幅反応を実行する。一実施形態では、生成される異なるアンプリコンの相対比を維持するため、サイクルを制限して(12~20サイクル)増幅を実行する。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。最初のPCR産物を24、36、または48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。
【0127】
UniTaqシステムは、Spierの米国特許出願公開第2011/0212846号に完全に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。UniTaqシステムは3つの固有の「タグ」配列の使用を伴い、図17の工程Cに示すように、固有のタグ配列の少なくとも1つ(Ai)は第1のオリゴヌクレオチドプライマーに存在し、第2及び第3の固有のタグ部分(Bi及びCi)は、第2のオリゴヌクレオチドプライマー配列に存在する。プライマーセットのオリゴヌクレオチドプライマーをPCR増幅すると、得られる伸長産物には、Ai配列-標的特異的配列-Bi’配列-Ci’配列が含まれることになる。UniTaq手法の重要な点は、正のシグナルを生成するには、PCRプライマーセットの二次オリゴヌクレオチドプライマーの両方が正確に一致するセットであることが必要とされるため、高度に多重化された核酸の検出が可能なことである。例えば、本明細書に記載されるように、これは、2つの部分、すなわち2つのタグの相互のハイブリダイゼーションを必要とすることにより達成される。
【0128】
図17の工程Cに示すように、標的特異的オリゴヌクレオチド二次プライマーを一次増幅産物とハイブリダイズし、ポリメラーゼ(塗りつぶした菱形)を使用して対象とする標的含有領域を増幅する。この図の工程Cに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を二次プライマーに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ポリメラーゼ伸長性に優れる3’OH基が生じる(図17、工程C)。第1の二次オリゴヌクレオチドプライマーには5’プライマー特異的部分(Ai)が含まれ、第2の二次オリゴヌクレオチドプライマーには、二次増幅産物の後続の増幅及び検出を可能にする5’プライマー特異的部分(Bi、Ci)が含まれる。二次増幅反応の後、各一次PCR反応チャンバーからの伸長産物は、対応するプライマー(F1-Bi-Q-Ai及びCi)で各ペアが構成される1つ以上のタグ特異的プライマーペアが含まれる384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される。検出の際、Ai(第1のプライマー特異的部分)、Bi’(UniTaq検出部分)、及びCi’(第2のプライマー特異的部分)が含まれる二次PCR産物は、Aiと同じヌクレオチド配列を有する第1のオリゴヌクレオチドプライマー、及びCi’に相補的な第2のオリゴヌクレオチドプライマー(すなわちCi)を使用して、両鎖にプライミングされる。第1のオリゴヌクレオチドプライマーはまた、一端に検出可能な標識F1を有し、他端に消光分子(Q)を有するUniTaq検出プローブ(Bi)も含む(F1-Bi-Q-Ai)。場合により、ポリメラーゼブロッキングユニット、例えばHEG、THF、Sp-18、ZEN、またはポリメラーゼ伸長を停止するのに十分である、当技術分野で公知の他の任意のブロッカーが、消光分子の近位に配置される。PCR増幅により、図17の工程Fに示す二本鎖産物が形成される。この例では、ポリメラーゼブロッキングユニットは、第1のユニバーサルプライマーの5’部分(Bi)をポリメラーゼがコピーするのを妨げることで、一本鎖になるときに産物のボトム鎖がヘアピンを形成できないようにする。そのようなヘアピンが形成されると、ステムの3’末端にアンプリコンとのアニーリングを生じるため、この3’末端のポリメラーゼ伸長によりPCR反応が終了することになる。
【0129】
二本鎖PCR産物が変性され、その後、温度が低下すると、産物の上部鎖は、第1のオリゴヌクレオチドプライマーの5’部分(Bi)と鎖の反対端の部分Bi’との間にステムを有するヘアピンを形成する(図17、工程G)。また、この工程中に、第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、ヘアピンを形成する産物の5’プライマー特異的部分(Ci’)とアニーリングする。工程Gにおいて第2のユニバーサルプライマーが伸長すると、ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性により、検出可能な標識D1または消光分子がアンプリコンの5’末端から切断され、それにより標識と消光分子間の距離が長くなり、標識の検出が可能になる。
【0130】
図18(工程A~F)は、未知の病原体同定のための例示的なPCR-PCR-qPCR(UniRq)を示している。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。病原体がRNAウイルスの場合、最初の逆転写酵素工程を使用してcDNAを生成する。図18(工程B)に示すように、試料を初期反応チャンバー内で増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。遺伝子座特異的プライマー及びデオキシヌクレオチドミックスを使用して、マルチプレックスPCR増幅反応を実行する。一実施形態では、生成される異なるアンプリコンの相対比を維持するため、サイクルを制限して(12~20サイクル)増幅を実行する。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。最初のPCR産物を24、36、または48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。
【0131】
スプリットプローブシステムは、Barany et al.の米国特許第9,598,728号に完全に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ここで、PCR増幅用に設計されたスプリットプローブシステムは4つの固有の「タグ」配列の使用を伴い、図18の工程Cに示すように、固有のタグ配列(Ai)ならびに第2及び第3の固有のタグ部分のスプリット部分(Bi’、ti’)は、第1の二次オリゴヌクレオチドプライマーに存在し、第2及び第3の固有のタグ部分の他のスプリット部分(tj及びBj)、ならびに第4の固有のタグ配列(Ci)は第2の二次オリゴヌクレオチドプライマー配列に存在する。プライマーセットのオリゴヌクレオチドプライマーをPCR増幅すると、得られる伸長産物には、Ai配列--Bi’及びti’配列-標的特異的配列-ti’,Bj’配列-Ci’配列が含まれることになる。スプリットプローブ手法の重要な点は、正のシグナルを得るには、PCRプライマーセットの二次オリゴヌクレオチドプライマーの両方が正しいことが必要とされるため、高度に多重化された核酸の検出が可能なことである。例えば、本明細書に記載されるように、これは、2つの部分、すなわち2つのタグの相互のハイブリダイゼーションを必要とすることにより達成される。
【0132】
図18の工程Cに示すように、標的特異的オリゴヌクレオチド二次プライマーを一次増幅産物とハイブリダイズし、ポリメラーゼ(塗りつぶした菱形)を使用して対象とする標的含有領域を増幅する。この図の工程Cに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を二次プライマーに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ポリメラーゼ伸長性に優れる3’OH基が生じる(図18、工程C)。第1の二次オリゴヌクレオチドプライマーには、5’プライマー特異的部分(Ai、Bi’、ti’)が含まれ、第2の二次オリゴヌクレオチドプライマーには、二次増幅産物の後続の増幅及び検出を可能にする5’プライマー特異的部分(tj、Bj、Ci)が含まれる。二次増幅反応の後、各一次PCR反応チャンバーからの伸長産物は、対応するプライマー(F1-r-Bj,Bi-Q-Ai、及びCi)で各ペアが構成される1つ以上のタグ特異的プライマーペアが含まれる384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される。検出の際、Ai(第1のプライマー特異的部分)、Bi’(スプリットUniTaq検出部分)、ti’(標的配列に相補的な領域)、内部ti,tj配列を含む標的配列、tj’(標的配列に相補的な領域)、Bi’(スプリットUniTaq検出部分)、及びCi’(第2のプライマー特異的部分)が含まれる二次PCR産物は、Aiと同じヌクレオチド配列を有する第1のオリゴヌクレオチドプライマー、及びCi’に相補的な第2のオリゴヌクレオチドプライマー(すなわちCi)を使用して、両鎖にプライミングされる。第1のオリゴヌクレオチドプライマーはまた、一端に検出可能な標識F1を有し、他端に消光分子(Q)を有するUniTaq検出プローブ(Bj,Bi、内部にリボース塩基を有する)も含む(F1-r-Bj,Bi-Q-Ai)。場合により、ポリメラーゼブロッキングユニット、例えばHEG、THF、Sp-18、ZEN、またはポリメラーゼ伸長を停止するのに十分である、当技術分野で公知の他の任意のブロッカーが、消光分子の近位に配置される。PCR増幅により、図18の工程Fに示す二本鎖産物が形成される。この例では、ポリメラーゼブロッキングユニットは、第1のユニバーサルプライマーの5’部分(Bj,Bi)をポリメラーゼがコピーするのを妨げることで、一本鎖になるときに産物のボトム鎖がヘアピンを形成できないようにする。そのようなヘアピンが形成されると、ステムの3’末端にアンプリコンとのアニーリングを生じるため、この3’末端のポリメラーゼ伸長によりPCR反応が終了することになる。
【0133】
二本鎖PCR産物が変性され、その後、温度が低下すると、産物の上部鎖は、病原体特異的配列(tiとti’;tjとtj’)、BiとBi’、及びBjとBj’との間に4つのヘアピンを形成する。それにより、Bj配列のリボース塩基は二本鎖になり、RNaseH2により蛍光基F1標識を産物から遊離できるため、標識と消光分子との距離が長くなり、標識の検出が可能になる(図18、工程G)。スプリットプローブ設計の利点の一つは、プライマー二量体の形成に起因する偽産物、すなわち(F1-r-Bj,Bi-Q-Ai-Bi’-ti’-プライマー二量体-tj’,Bj’-Ci’)が、偽陽性シグナルを示さない点である。これは、tiとti’;tjとtj’のヘアピンが形成されず、BiとBi’のステムのみが残され、その結果、増幅反応で使用されるハイブリダイゼーション温度でr-BjとBj’配列がステムを形成しないためである。
【0134】
本発明の別の態様は、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、試料中または他の試料中の他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる複数の核酸分子を試料において同定する方法を対象とする。この方法には、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる1つ以上の核酸分子を含有する可能性のある試料を提供することを含む。1つ以上の一次オリゴヌクレオチドプライマーセットが提供され、各一次オリゴヌクレオチドプライマープライマーセットは、(a)標的ヌクレオチド配列に隣接する配列に相補的なヌクレオチド配列を含む第1の一次オリゴヌクレオチドプライマー、及び(b)第1の一次オリゴヌクレオチドプライマーから形成された伸長産物の部分に相補的なヌクレオチド配列を含む第2の一次オリゴヌクレオチドプライマーを含む。接触させる試料を、1つ以上の一次オリゴヌクレオチドプライマーセット、デオキシヌクレオチドミックス、及びDNAポリメラーゼとブレンドして、初期反応チャンバー内でポリメラーゼ連鎖反応混合物を形成し、このポリメラーゼ連鎖反応混合物を変性処理、ハイブリダイゼーション処理、及び伸長処理を含む、1つ以上のポリメラーゼ連鎖反応サイクルに供することにより、標的ヌクレオチド配列またはその相補体を含む一次伸長産物を形成する。最初のPCR産物を24、36、または48個の一次LDR反応チャンバーに分配する。この方法はさらに、一次伸長産物を、リガーゼ及び1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブセットとブレンドしてライゲーション反応混合物を形成することを含む。各オリゴヌクレオチドプローブセットは、(a)標的ヌクレオチド配列特異的部分を有する第1のオリゴヌクレオチドプローブ、及び(b)標的ヌクレオチド配列特異的部分を有する第2のオリゴヌクレオチドプローブを含み、プローブセットの第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブは、それらの間に接合部を有する一次伸長産物の相補的な標的ヌクレオチド配列に互いに隣接して、塩基特異的にハイブリダイズするように構成される。1つ以上のオリゴヌクレオチドプローブセットの第1及び第2のオリゴヌクレオチドプローブを、共にライゲーションし、ライゲーション反応混合物においてライゲーション産物配列を形成し、試料中のライゲーション産物配列を検出及び識別して、1つ以上のヌクレオチド、1つ以上のコピー数、1つ以上の転写産物配列、及び/または1つ以上のメチル化残基によって、試料中の他の核酸分子のヌクレオチド配列とは異なっている標的ヌクレオチド配列が含まれる1つ以上の核酸分子の存在を同定する。
【0135】
図19~23に本発明の本態様の様々な実施形態を示す。
【0136】
図19(工程A~F)は、未知の病原体同定のための例示的なPCR-LDR-qPCR(Taqman(商標))を示している。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。病原体がRNAウイルスの場合、最初の逆転写酵素工程を使用してcDNAを生成する。図19(工程B)に示すように、試料を初期PCR反応チャンバー内で増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。遺伝子座特異的プライマー及びデオキシヌクレオチドミックスを使用して、マルチプレックスPCR増幅反応を実行する。一実施形態では、生成される異なるアンプリコンの相対比を維持するため、サイクルを制限して(12~20サイクル)増幅を実行する。別の実施形態では、20~40サイクルを使用して対象とする領域を増幅する。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。最初のPCR産物を24、36、または48個の一次LDR反応チャンバーに分配する(工程C)。
【0137】
図19の工程Dに示すように、標的特異的オリゴヌクレオチドプローブが増幅産物にハイブリダイズし、2つのオリゴヌクレオチドがその相補配列にハイブリダイズされると、リガーゼ(黒丸)によって共に共有結合され閉じられる。上流のオリゴヌクレオチドプローブには5’プライマー特異的部分(Ai)が含まれ、下流のオリゴヌクレオチドプローブには、ライゲーション産物の後続の増幅を可能にする3’プライマー特異的部分(Ci’)が含まれる。ライゲーションの後、各一次LDR反応チャンバーからのライゲーション産物は、1つ以上のタグ特異的プライマーペア(各ペアは、対応するプライマーAi及びCiで構成される)が含まれる384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配され、PCR増幅、及び検出される。図19の工程E及びFに示すように、ライゲーション産物の検出は、従来のTaqMan(商標)検出アッセイを使用して実施することができる(Whitcombe et al.の米国特許第6,270,967号及びAnderson et al.の米国特許第7,601,821号を参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。TaqMan(商標)を使用した検出では、ライゲーション産物のプライマー特異的部分のハイブリダイゼーションに適したプライマーと併用して、ライゲーション接合部にまたがるオリゴヌクレオチドプローブが増幅及び検出に使用される。TaqMan(商標)プローブには、一方の末端に蛍光レポーター基(F1)が、もう一方の末端に消光分子(Q)が含まれており、これらは互いに、無傷のプローブ内で、消光分子がレポーター基の蛍光を消光する程度に近接している。増幅時に、TaqMan(商標)プローブ及び上流プライマーは、ライゲーション産物の相補領域にハイブリダイズする。ポリメラーゼの5’->3’ヌクレアーゼ活性により、ハイブリダイズしたプライマーが伸長し、TaqMan(商標)プローブの蛍光基が遊離され、検出可能なシグナルが生成される(図19、工程F)。
【0138】
図20は、未知の病原体同定のための別の例示的なPCR-LDR-qPCR(UniTaq)を示している。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。病原体がRNAウイルスの場合、最初の逆転写酵素工程を使用してcDNAを生成する。図20(工程B)に示すように、試料を初期反応チャンバー内で増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。この実施形態では、ライゲーションプローブは、検出を容易にするためにUniTaqプライマー及びタグ配列を含むように設計されている。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。最初のPCR産物を24、36、または48個の一次LDR反応チャンバーに分配する(工程C)。
【0139】
UniTaqシステムは、Spierの米国特許出願公開第2011/0212846号に完全に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。UniTaqシステムは3つの固有の「タグ」配列の使用を伴い、図20の工程Dに示すように、固有のタグ配列の少なくとも1つ(Ai)は第1のオリゴヌクレオチドプローブに存在し、第2及び第3の固有のタグ部分(Bi及びCi)は、第2のオリゴヌクレオチドプローブ配列に存在する。プローブセットのオリゴヌクレオチドプローブをライゲーションすると、得られるライゲーション産物には、Ai配列-標的特異的配列-Bi’配列-Ci’配列が含まれることになる。UniTaq手法の重要な点は、正のシグナルを得るには、ライゲーションプローブセットのオリゴヌクレオチドプローブの両方が正しいことが必要とされるため、高度に多重化された核酸の検出が可能なことである。例えば、本明細書に記載されるように、これは、2つの部分、すなわち2つのタグの相互のハイブリダイゼーションを必要とすることにより達成される。
【0140】
ライゲーションの後、各一次LDR反応チャンバーからのライゲーション産物は、適切なUniTaqプライマーペアが含まれる384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される(図20、工程E)。検出の際、Ai(第1のプライマー特異的部分)、Bi’(UniTaq検出部分)、及びCi’(第2のプライマー特異的部分)が含まれるライゲーション産物は、Aiと同じヌクレオチド配列を有する第1のオリゴヌクレオチドプライマー、及びCi’に相補的な第2のオリゴヌクレオチドプライマー(すなわちCi)を使用して、両鎖にプライミングされる。第1のオリゴヌクレオチドプライマーはまた、一端に検出可能な標識F1を有し、他端に消光分子(Q)を有するUniTaq検出プローブ(Bi)も含む(F1-Bi-Q-Ai)。場合により、ポリメラーゼブロッキングユニット、例えばHEG、THF、Sp-18、ZEN、またはポリメラーゼ伸長を停止するのに十分である、当技術分野で公知の他の任意のブロッカーが、消光分子の近位に配置される。PCR増幅により、図20の工程Fに示す二本鎖産物が形成される。この例では、ポリメラーゼブロッキングユニットは、第1のユニバーサルプライマーの5’部分(Bi)をポリメラーゼがコピーするのを妨げることで、一本鎖になるときに産物のボトム鎖がヘアピンを形成できないようにする。そのようなヘアピンが形成されると、ステムの3’末端にアンプリコンとのアニーリングを生じるため、この3’末端のポリメラーゼ伸長によりPCR反応が終了することになる。
【0141】
二本鎖PCR産物が変性され、その後、温度が低下すると、産物の上部鎖は、第1のオリゴヌクレオチドプライマーの5’部分(Bi)と鎖の反対端の部分Bi’との間にステムを有するヘアピンを形成する(図20、工程G)。また、この工程中に、第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、ヘアピンを形成する産物の5’プライマー特異的部分(Ci’)とアニーリングする。工程Gにおいて第2のユニバーサルプライマーが伸長すると、ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性により、検出可能な標識D1または消光分子がアンプリコンの5’末端から切断され、それにより標識と消光分子間の距離が長くなり、標識の検出が可能になる。
【0142】
図21は、未知の病原体同定のための別の例示的なPCR-LDR-qPCR(UniSpTq)を示している。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。病原体がRNAウイルスの場合、最初の逆転写酵素工程を使用してcDNAを生成する。図20(工程B)に示すように、試料を初期反応チャンバー内で増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。この実施形態では、ライゲーションプローブは、検出を容易にするためにスプリットプローブ及びタグ配列を含むように設計されている。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。最初のPCR産物を24、36、または48個の一次LDR反応チャンバーに分配する(工程C)。
【0143】
スプリットプローブシステムは、Barany et al.の米国特許第9,598,728号に完全に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。スプリットプローブシステムは4つの固有の「タグ」配列の使用を伴い、図21の工程Dに示すように、固有のタグ配列(Ai)ならびにスプリット部分の第2及び第3の固有のタグ部分(Bi’,zi)は、第1のオリゴヌクレオチドプローブに存在し、他のスプリット部分の第2及び第3の固有のタグ部分(zj’,Bj’)、ならびに第4の固有のタグ配列(Ci’)は第2のオリゴヌクレオチドプローブ配列に存在する。プローブセットのオリゴヌクレオチドプローブをライゲーションすると、得られるライゲーション産物には、Ai配列-Bi’及びzi配列-標的特異的配列-zi’,Bj’配列-Ci’配列が含まれることになる。スプリットプローブ手法の重要な点は、正のシグナルを得るには、ライゲーションプローブセットのオリゴヌクレオチドプローブの両方が正しいことが必要とされるため、高度に多重化された核酸の検出が可能なことである。例えば、本明細書に記載されるように、これは、2つの部分、すなわち2つのタグの相互のハイブリダイゼーションを必要とすることにより達成される。
【0144】
ライゲーションの後、各一次LDR反応チャンバーからのライゲーション産物は、適切なUniTaqプライマーペアが含まれる384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される(図21、工程E)。検出の際、Ai(第1のプライマー特異的部分)、Bi’(第1のスプリットプローブ検出部分)、Bj’(第2のスプリットプローブ検出部分)、及びCi’(第2のプライマー特異的部分)が含まれるライゲーション産物は、Aiと同じヌクレオチド配列を有する第1のオリゴヌクレオチドプライマー、及びCi’に相補的な第2のオリゴヌクレオチドプライマー(すなわちCi)を使用して、両鎖にプライミングされる。第1のオリゴヌクレオチドプライマーはまた、一端に検出可能な標識F1を有し、他端に消光分子(Q)を有するUniTaq検出プローブ(Bj,Bi)も含む(F1-Bj,Bi-Q-Ai)。場合により、ポリメラーゼブロッキングユニット、例えばHEG、THF、Sp-18、ZEN、またはポリメラーゼ伸長を停止するのに十分である、当技術分野で公知の他の任意のブロッカーが、消光分子の近位に配置される。PCR増幅により、図21の工程Fに示す二本鎖産物が形成される。この例では、ポリメラーゼブロッキングユニットは、第1のユニバーサルプライマーの5’部分(Bj,Bi)をポリメラーゼがコピーするのを妨げることで、一本鎖になるときに産物のボトム鎖がヘアピンを形成できないようにする。そのようなヘアピンが形成されると、ステムの3’末端にアンプリコンとのアニーリングを生じるため、この3’末端のポリメラーゼ伸長によりPCR反応が終了することになる。
【0145】
二本鎖PCR産物が変性され、その後、温度が低下すると、産物の上部鎖は、BiとBi’、ziとzi’、及びBjとBj’との間に3つのヘアピンを形成する(図21、工程G)。また、この工程中に、第2のオリゴヌクレオチドプライマーは、ヘアピンを形成する産物の5’プライマー特異的部分(Ci’)とアニーリングする。工程Gにおいて第2のユニバーサルプライマーが伸長すると、ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性により、検出可能な標識D1または消光分子がアンプリコンの5’末端から切断され、それにより標識と消光分子間の距離が長くなり、標識の検出が可能になる。ポリメラーゼがBj’を通過するとすぐに短いzi-zi’ステムは破断し、さらにポリメラーゼは伸長を続け、dsDNA産物を生成する。
【0146】
UniTaqプローブ手法及びスプリットプローブ手法はいずれも、標準のプライマー/プローブセットを適切なマイクロポアまたはマイクロウェルにプリントできるという利点をもたらす。Ciプライマーは、ライゲーションして産物を形成したか、ライゲーションされないままかを問わず、下流のLDRプローブのコピーを作成することになる。その伸長産物が、標的不在下でUniTaqプローブ設計を使用して上流のプローブ/プライマーとプライマー二量体を形成する場合、そのような産物(F1-Bi-Q-Ai-部分標的-Bi’-Ci’)は、ハイブリダイゼーション温度でBiとBi’のヘアピンを形成し、その結果、偽陽性シグナルが生じることになる。スプリットプローブ設計の利点の一つは、そのような偽産物(F1-Bj,Bi-Q-Ai-部分標的-zi’,Bj’-Ci’)が偽陽性シグナルを示さない点である。これは、BiとBi’;ziとzi’のヘアピンが形成されず、BjとBj’の配列のみが残され、その結果、増幅反応で使用されるハイブリダイゼーション温度でステムを形成しないためである。
【0147】
また、以下の図22及び図23に例示されるように、ライゲーション産物を使用して、PCR-qLDRと呼ばれるプロセスでシグナルを直接生成することもできる。そのような手法の一つが、文献全体が参照により本明細書に組み込まれるBarany et al.のWO/2016/057832に記載されており、これはライゲーション後にFRETまたは蛍光シグナルを生じるライゲーション検出プローブを使用する。
【0148】
一実施形態では、第1のライゲーションプローブには、3’標的特異的領域、及びドナーまたはアクセプター部分を有する5’テール配列が含まれ、プローブセットの第2のライゲーションプローブには、アクセプターまたはドナー部分をそれぞれが有する5’標的特異的領域及び3’テール配列が含まれる。プローブセットのライゲーションプローブの5’及び3’テール配列は、互いに相補的であり、アクセプター基とドナー基は、互いに近接した状態になると、フェルスター共鳴エネルギー移動(FRET)を介して検出可能なシグナルが生じる。ライゲーション後、ライゲーションされていないオリゴヌクレオチドプローブは洗い流され、固定された増幅産物からライゲーション産物が変性される。変性すると、ライゲーション産物の相補的な5’及び3’テール配列が互いにハイブリダイズし、ドナー基とアクセプター基が互いに近接した状態になり、検出可能なFRETシグナルが生じる。
【0149】
別の実施形態では、上流プローブには、5’末端の蛍光レポーター基に続いて、テール配列部分、消光基(例えばZEN)、及び標的特異的部分が含まれる場合がある。一本鎖形態では、蛍光基はZen基によって消光される。上流及び下流のライゲーションプローブをライゲーションし、得られるライゲーション産物を変性すると、ライゲーション産物の相補的な5’及び3’テール部分はハイブリダイズして短い二本鎖部分を形成する。このような条件下では、レポーター基が消光基によって消光されることがなく、検出可能なシグナルが生じる。これをハイブリダイゼーション脱消光プローブ(HuQP)と呼ぶ。
【0150】
PCRを必要としないqLDRの手法は、「SNP検出用多重リガーゼ反応及びプローブ切断(Multiple Ligase Reactions and Probe Cleavages for SNP Detection)」と呼ばれる(Kim,“PCR Free Multiple Ligase Reactions and Probe Cleavages for the SNP Detection of KRAS Mutation with Attomole Sensitivity,” Analyst 141(16):6381-6386(2016)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この手法では、接合部で標的との完全な相補性が存在する場合に、2つのプライマーがハイブリタイズして標的にライゲーションされる。2つのプライマーには、ライゲーションされない3’及び5’末端に非相補配列も含まれる。ライゲーション後、ライゲーション産物(LP)は、鎖置換ヘアピン(SDH)と複合体を形成するが、これは標的よりもSDHの方がLPの融解温度(Tm)が高いためである。さらに、遊離した標的を、2つのプライマーとの新たなライゲーションに再利用することができる。リガーゼ反応にSDHを追加することで、等温条件時に、単一標的それぞれに対して、複数の酵素による2つのプライマーのライゲーションが可能になる。検出可能なシグナルを生成するため、SNP特異的ライゲーションの後に、金ナノ粒子(AuNP)を用いて改変サイクリングプローブアッセイを行う。サイクリングプローブアッセイでは、各端に蛍光ドナーとクエンチャーを含む標的結合キメラプローブをRNase Hにより消化する。RNaseHは、RNAホスホジエステル結合がRNA-DNAヘテロ二重鎖に存在する場合にのみ、その結合を切断する。ヘテロ二重鎖のDNAは消化されず、一本鎖または二本鎖のRNAまたはDNAも消化されない。サイクリングプローブアッセイは、RNase Hのこのような特性を利用するように設計されている。RNAが分解されて標的DNA鎖が解放されると、別の無傷のRNA分子がDNAとハイブリダイズでき、線形のシグナル増幅が生じる。
【0151】
図22は、未知の病原体同定のための別の例示的なPCR-qLDR(UniLDq)を示している。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。病原体がRNAウイルスの場合、最初の逆転写酵素工程を使用してcDNAを生成する。図22(工程B)に示すように、試料を初期反応チャンバー内で増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。この実施形態では、ライゲーションプローブは、検出を容易にするためにタグ配列を含むように設計されている。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。最初のPCR産物を384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配する(工程C)。
【0152】
病原体特異的ライゲーションオリゴヌクレオチドは、後続の検出用のタグ(Bi’-ti’-上流標的配列;下流標的配列-tj’-Bj’)を有する。ti’及びtj’配列は、ライゲーション接合部の標的の配列ti、tjに相補的である。特異的SNPまたは変異を検出する場合に、LNAまたはPNA野生型プローブをブロックすると、野生型配列へのライゲーションが抑制される。この図の工程Dに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を上流ライゲーションプローブに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ライゲーションに優れる3’OH基が生じる(図22、工程D)。標的特異的オリゴヌクレオチドプローブが増幅産物にハイブリダイズし、任意のRNaseH工程で3’OH基が解放されると、2つのオリゴヌクレオチドがその相補配列にハイブリダイズされたときに、リガーゼ(黒丸)によって共に共有結合され閉じられる(図22、工程E)。
【0153】
プローブ(F1-r-Bj,Bi-Q)の存在下で、変性工程の後、温度が低下すると、プローブと病原体特異的配列(tiとti’;tjとtj’)、BiとBi’、及びBjとBj’との間に4つの二本鎖ステムが形成される。それにより、Bj配列のリボース塩基は二本鎖になり、RNaseH2により蛍光基が遊離し、シグナルを生成することができる(図22、工程F)。切断されたプローブは産物から解離し、新たなプローブがハイブリダイズして、さらなるシグナルを生成することができる。ライゲーションされていないLDRプライマーは必ずしもヘアピンを形成しないため、RNaseH2はシグナルを発生しないことになる。この手法の一実施形態では、PCR反応後、産物は、標的特異的LDRプライマーに加え、ユニバーサルプローブ(複数可)がすでに含まれたマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される。
【0154】
図23は、未知の病原体同定のための別の例示的なPCR-qLDR(TsLDG)を示している。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。病原体がRNAウイルスの場合、最初の逆転写酵素工程を使用してcDNAを生成する。図23(工程B)に示すように、試料を初期反応チャンバー内で増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。この実施形態では、ライゲーションプローブは、検出を容易にするためにタグ配列を含むように設計されている。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。最初のPCR産物を384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配する(工程C)。
【0155】
病原体特異的ライゲーションオリゴヌクレオチドは、後続の検出用のタグ(Bi’-上流標的配列;下流標的配列-tj’)を有する。tj’配列は、ライゲーション接合部の標的のtj配列に相補的である。特異的SNPまたは変異を検出する場合に、LNAまたはPNA野生型プローブをブロックすると、野生型配列へのライゲーションが抑制される。この図の工程Dに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を上流ライゲーションプローブに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ライゲーションに優れる3’OH基が生じる(図23、工程D)。標的特異的オリゴヌクレオチドプローブが増幅産物にハイブリダイズし、任意のRNaseH工程で3’OH基が解放されると、2つのオリゴヌクレオチドが相補配列にハイブリダイズされたときに、リガーゼ(黒丸)によって共に共有結合され閉じられる(図23、工程E)。
【0156】
プローブ(F1-r-病原体配列-Bi-Q)の存在下で、変性工程の後、温度が低下すると、病原体特異的配列間(ti,tjとti’,tj’)、及びBiとBi’の間に2つの二本鎖ステムが形成される。それにより、病原体配列のリボース塩基は二本鎖になり、RNaseH2により蛍光基が遊離し、シグナルを生成することができる。切断されたプローブは産物から解離し、新たなプローブがハイブリダイズして、さらなるシグナルを生成することができる。ライゲーションされていないLDRプライマーはどちらもステムを形成しないため、RNaseH2はシグナルを発生しないことになる。この手法の一実施形態では、PCR反応後、産物は、標的特異的LDRプライマーに加え、病原体配列特異的プローブ(複数可)がすでに含まれたマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される。
【0157】
切断可能プローブ(cP)によるqLDRは、FRETプローブまたはハイブリダイゼーション脱消光(HuQP)プローブのいずれかによるLDRを使用する場合よりも、生成されるシグナルの程度が大きくなる。後者は、サイクルの関数である線形シグナルを生成する。すなわち、LDRを「X」サイクルを実行する場合、生成される蛍光シグナルの量「F」はXに比例する(すなわちF=f(X))。図22及び23と同様の切断可能プローブを使用する場合、生成されるシグナルの量は、1回のLDRサイクル中にプローブが切断される回数「C」とサイクル数X両方の関数である(すなわちF=f(X)(X-1)C)。実際のレベルでは、LDR-FRETまたはLDR-HuQPを50サイクル実行すると、シグナル変化のダイナミックレンジは50倍になるが、LDR-cPを50サイクル実行すると、シグナル変化のダイナミックレンジは1,225倍になる。
【0158】
図24は、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である概略正面図である。この設計は、未知の病原体の同定及び定量のための、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-UniTaq検出(あるいは、標的特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCR)の実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。図24では、注入試料は大きな六角形チャンバー16(トラフ18を含む;下部、初期反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー16は、導管20によって六角形チャンバー22(大トラフ24及びバッフル23を含む、一次PCR反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー22は、導管26によって細長い混合チャンバー28に流体接続され、混合チャンバーは、導管30によって、マイクロウェルまたはマイクロポアの細区画32が含まれるチャンバー(パネルの上部に4行のみを図示)に流体接続されている。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。カートリッジの製造時に、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を細区画の行に予備充填する。カートリッジの製造時に、マイクロウェルまたはマイクロポアの列へと至る一次PCR反応チャンバーに、UniTaqまたはユニバーサルタグ配列のいずれかを5’末端にもつネステッドPCRプライマーセットが予備充填されている。図の右側にある灰色の円25は、例えば音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによってプローブセットが送達またはプリントされる可能性のある位置を示している。この例図では、768個に相当する24列32行に計画された細区画を4つずつ示し、各細区画には24個のマイクロウェルまたはマイクロポアが含まれる。この例では、最初のマルチプレックスPCR増幅(またはRNA標的の逆転写PCR)を9サイクル行い、元の各標的の最大512コピーを初期反応チャンバーで産生する。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、最初のマルチプレックス反応物を一次PCR反応チャンバー(上記のネステッドPCRプライマーを予備充填)に分配する。この場合、各一次PCR反応チャンバー内の元の各病原体の平均分配数は20コピーである。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含むプライマーは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。UniTaqまたはユニバーサルタグをもつ標的特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、5サイクルのネステッドPCRを実行すると、一次PCR反応チャンバーあたり平均640コピーの各病原体特異的標的が産生される。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、各一次PCR反応チャンバーのネステッドPCR産物と混合し、混合チャンバーへ、さらに各列のマイクロポアへと分配する。各行の各細区画のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。マイクロポアのポアソン分布では、最初に低存在量で存在する病原体特異的標的を計数するが、各細区画のマイクロポアにわたるCt値は、最初に高存在量で存在する病原体特異的標的の概算のコピー情報を提供することになる。
【0159】
図24のカートリッジ設計はまた、未知の病原体の同定及び定量のための、マルチプレックスPCR-LDR-UniTaq検出(あるいは、標的特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCR)を実施する際にも使用することができる。カートリッジの製造時に、マイクロウェルまたはマイクロポアの列へと至る一次LDR反応チャンバーに、ライゲーションされない5’(上流)末端及び3’(下流)末端にUniTaqまたはユニバーサルタグ配列のいずれかをもつLDR’プローブセットが予備充填されている。図の右側にある灰色の円25は、例えば音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによってプローブセットが送達またはプリントされる可能性のある位置を示している。プローブを乾燥させて、カートリッジのカバー部分を取り付け、プローブセットを適切な位置に密閉する。カートリッジの使用時には、カートリッジの初期反応チャンバーから一次LDR反応チャンバー、混合チャンバーを経て、最終的に各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの列まで反応物が流体移動する。この例図では、768個に相当する計画された24列4つ、32行8つの細区画を示し、各細区画には24個のマイクロウェルまたはマイクロポアが含まれる。この例では、最初のマルチプレックスPCR増幅(またはRNA標的の逆転写PCR)を30サイクル行い、元の標的を初期反応チャンバーで増幅する。ポリメラーゼを不活性化し(例えば加熱死滅化またはプロテアーゼ消化などによる)、マルチプレックス産物をリガーゼ、ATP、またはNADを含むリガーゼ反応混合物に10倍希釈し、一次LDR反応チャンバー(上記のLDRプローブを予備充填)に分配する。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含む、PCRプライマー及び/またはLDR上流プローブは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。UniTaqまたはユニバーサルタグをもつアレル特異的プローブを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20サイクルのLDRを実行する。新しいPCR試薬を追加し、各一次LDR反応チャンバーのLDR産物と混合し、混合チャンバーへ、さらに各列のマイクロポアへと分配する。各行の各細区画のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。各細区画の24個のマイクロポアにわたるCt値は、最初に高存在量で存在する病原体特異的標的の概算のコピー情報を提供することになる。
【0160】
各細区画に96個のマイクロウェルを含む、2,304個に相当する48列48行の細区画を使用する代替的実施形態では、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を、各行の適切な細区画に、音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによって直接送達した後、個々のマイクロウェル内で乾燥させる。最初のマルチプレックスPCR増幅(またはRNA標的の逆転写PCR)を10サイクル行い、元の各標的の最大1,024コピーを初期反応チャンバーまたはウェルで産生する。必要に応じて、「タンデム」PCRプライマーを使用する。新しいPCR試薬を追加し、最初のマルチプレックス反応物を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバー(音響液滴射出を使用してネステッドPCRプライマーを追加)に分配する。この場合、ウェルまたは一次PCR反応チャンバーあたりの元の各病原体の平均分配数は20コピーである。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含むプライマーは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。UniTaqまたはユニバーサルタグをもつ標的特異的プライマーを24個組または48個組のプライマーセットにして使用し、3~4サイクルのネステッドPCRを実行すると、ウェルまたは一次PCR反応チャンバーあたり平均160~320コピーの各病原体特異的標的が産生される。新しいPCR試薬を追加し、各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーのネステッドPCR産物と混合し、各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーの産物を、96個のマイクロウェルを備える、それぞれ24個2セットまたは12個4セットの細区画に分配する。2セットを使用する場合、第2のセットは第1のセットの100/1希釈である。4セットを使用する場合、各セットは前のセットの20/1希釈である。これにより、大きな規模にわたって存在する病原体の網羅が可能になる。平均して、最初の各細区画に元の各病原体が12コピー得られ、所与の1マイクロウェルに元の病原体が1または0コピー得られることになる。存在する病原体の数が多くなると、各細区画に追加のコピーが得られることになる。各行の各細区画のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。96個のマイクロウェルのポアソン分布では、最初に低存在量で存在する病原体特異的標的を計数するが、細区画のマイクロウェルにわたるCt値は、最初に高存在量で存在する病原体特異的標的の概算のコピー情報を提供することになる。
【0161】
図25A図25Bは、UniTaqまたは標的特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCRを使用して、未知の病原体を同定及び定量する;UniTaqまたは変異特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRを使用して、血漿中の低レベルの未知の変異を同定及び定量する;ならびにUniTaqまたは標的特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRを使用して、血漿中の低レベルのメチル化及び未知の変異を同定及び定量するためのカートリッジ4、バルブ、及び試薬構成の概略側面図を示す。図25Aは、直径50ミクロンのマイクロウェルまたはマイクロポアのアレイへのマイクロ流路の流体接続を示す概略正面図である。簡潔にするため、図には、1つの初期マルチプレックス反応チャンバー10、トラフ18を備える16個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー16、トラフ24及びバッフル23を備える16個の二次マルチプレックス反応チャンバー22、16個の細い混合チャンバー28、ならびに16列で数千個のマイクロポアまたはマイクロウェルからなる細区画32を含む1つの主要チャンバーを例示している。示されるように、これらは導管14、20、26、及び30によって、共に結合されている。流体は、注入口2からカートリッジ4に入り、出口8から出る。ただし、チャンバーの他の構成も使用することができ、例えば、図24に記載される病原体検出用のマルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCRには、二次マルチプレックス反応チャンバーは必要としない。図25Bは、数千のマイクロポア202で構成されるマイクロポアプレートシステム(一般的には図11図12に記載のもの)を使用した、UniTaqまたは標的特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCRの流体システムを示す。マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面(プレートの上部、プレートの左側に図示)は、バルブ1、2、及び3と連通しており、対して第2の側面(プレートの下部、プレートの右側に図示)は、バルブ4及び5と連通している。バルブ1は、必要に応じて、初期マルチプレックス反応チャンバー、一次PCR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、溶解/プロテアーゼ緩衝液、酵素、洗浄緩衝液、溶出緩衝液、緩衝液、EtOH、軽油、及び重油を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ3から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第1の側、他のチャンバー、PCR反応チャンバー、及び初期マルチプレックス反応チャンバーを空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。バルブ1は、バルブ2を選択することもできる。バルブ2は、初期マルチプレックス反応チャンバー、PCR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、初期マルチプレックスPCRプライマー、マスターPCRミックス、初期逆転写プライマー、マスター逆転写ミックス、洗浄液、EtOH、及び空気を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。バルブ4は、マイクロポアプレートの第2の側にわたり空気、軽油、重油、及び廃棄物を分注し、バルブ5を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ5から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第2の側を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。
【0162】
(表3)マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCR用の試薬構成
【0163】
図25Bは、初期マルチプレックス反応チャンバー10、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー16、24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー22、及び24~48列を含む主要チャンバー28、及び数千のマイクロポアまたはマイクロウェル202の細区画32に個別に加熱/冷却を施せるように設計されるいくつかの発熱体1~4を示す。背面プレート206(前面プレート204の反対側)、またはマイクロポアもしくはマイクロウェルの流路(複数可)240及び242の1つ以上の平面(複数可)244及び246、ならびに反応チャンバーを、これらの発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。図25に示すように、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー16及び24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー22の裏側にある2つの発熱体は、すべての一次チャンバーをすべての二次チャンバーとは独立して制御する2つの長方形(水平)ストリップとして設計される。例えば、初期反応チャンバー10、一次チャンバー16、二次チャンバー22、混合チャンバー28、及び数千のマイクロウェルまたはマイクロポアの細区画を含む主要チャンバーのいずれかに、一次チャンバーごとに独立した発熱体がある代替構成、追加の行または発熱体を有する追加のチャンバー行(すなわち一次、二次、三次など)がある代替構成、及び/または行もしくは列とは異なる幾何形態で配置された24~48個の空間多重化を有する代替構成も使用することができる。例えば、それぞれが個別の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー16、個別の二次マルチプレックス反応チャンバー22、個別の混合チャンバー28、及び数百~数千のマイクロポアまたはマイクロウェルの細区画を含む個別のチャンバーと流体接続されている、24個の個々の入力ウェルがプレートに含まれていてもよい。試料は、任意の初期マルチプレックス反応を受けた後、音響液滴射出または他の流体工学手段によって24個の個別の入力ウェルに注入されてもよい。
【0164】
図26(工程A~F)は、未知の細菌病原体を血液から直接同定するための例示的なPCR-PCR-qPCRを示す。この方法は、工程Aに示すように、病原体ゲノムDNAを分離することから始まる。血液から直接細菌を予め捕捉する、すなわちアプタマーまたは抗体を使用することにより、検出が容易になる。課題となるのは、大量の過剰なWBC DNAから希少な細菌DNAのみを増幅することである。図26(工程B)に示すように、試料を24個、36個、または48個の一次PCR反応チャンバーに分配し、それぞれを増幅反応、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供し、対象とする標的含有領域を増幅する。標的特異的プライマー及びデオキシヌクレオチドミックスを使用して、マルチプレックスPCR増幅反応を実行する。場合により、鎖置換ポリメラーゼを、標的ごとにタンデムまたは多数のプライマーと共に使用する。一実施形態では、サイクルを制限して(12~20サイクル)増幅を実行する。別の実施形態では、プライマー二量体の増幅を防ぐため、各プライマーの5’末端に8~11塩基の同じテールが含まれる。
【0165】
図26の工程Cに示すように、二次PCR反応チャンバー内で、標的特異的オリゴヌクレオチド二次プライマーを一次増幅産物とハイブリダイズし、ポリメラーゼ(塗りつぶした菱形)を使用して対象とする標的含有領域を増幅する。この図の工程Cに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を二次プライマーに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ポリメラーゼ伸長性に優れる3’OH基が生じる(図26、工程C)。ネステッドプライマー増幅に続いて、各二次PCR反応チャンバーの産物が、384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される。図16図26、工程D~Fを参照)で上述したように、対応するプライマーAiとCiのペア、及びライゲーション接合部にわたるTaqMan(商標)プローブを使用して、または当技術分野で公知の他の好適な手段を使用してPCR産物を検出することができる。
【0166】
図27(工程A~F)は、未知の細菌病原体を血液から直接同定するための別の例示的なPCR-PCR-qPCRを示す。この方法は、UniTaq読み取りを使用する以外は、図26に示すものと同様に、標的核酸の一次PCR反応チャンバーへの初期分配、及びマルチプレックスPCR増幅から始まる。
【0167】
図27の工程Cに示すように、二次PCR反応チャンバー内で、標的特異的オリゴヌクレオチド二次プライマーを一次増幅産物とハイブリダイズし、ポリメラーゼ(塗りつぶした菱形)を使用して対象とする標的含有領域を増幅する。この図の工程Cに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を二次プライマーに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ポリメラーゼ伸長性に優れる3’OH基が生じる(図27、工程C)。ネステッドプライマー増幅に続いて、各二次PCR反応チャンバーの産物が、384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される。UniTaq特異的プライマー(すなわちF1-Bi-Q-Ai、Ci)を使用してPCR産物を増幅し、図17図27、工程D~Gを参照)で上述したように、または当技術分野で公知の他の好適な手段を使用して検出する。
【0168】
図24のカートリッジ設計はまた、血液から直接、未知の細菌病原体のマルチプレックスPCR-ネステッドPCR-UniTaq検出を実施する際にも使用することができる。(あるいは、標的特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCR)。カートリッジの製造時に、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を行に予備充填する。カートリッジの使用時には、カートリッジの初期反応チャンバーから一次PCR反応チャンバー、混合チャンバーを経て、最終的に各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの列まで反応物が流体移動する。この例図では、768個に相当する24列及び32行の細区画を示し、各細区画には24個のマイクロウェルまたはマイクロポアが含まれる。24列に試料を分配し、最初のマルチプレックスPCR増幅を、鎖置換ポリメラーゼと、10~12bpのテールをもつ大きなタンデムプライマーのセットまたは複数のプライマーセットを用いて20サイクル行い、元の各標的(存在する場合)あたり1,000,000コピーを産生する。RNA塩基及び3’ブロッキング基を含むネステッドプライマーは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。UniTaqまたはユニバーサルタグをもつ標的特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、各一次PCR反応チャンバーで10サイクルのネステッドPCRを実行する。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、各一次PCR反応チャンバーのネステッドPCR産物と混合し、混合チャンバーから、さらに各列のマイクロウェルまたはマイクロポアへと分配する。各行の各細区画のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。標的の前増幅と、プライマーの二量体形成を防ぐテールの使用により、1細胞レベルでの細菌病原体の同定が可能になる。
【0169】
各細区画に96個のマイクロウェルを含む、2,304個に相当する48列及び48行の細区画を使用する代替的実施形態では、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を、各行の適切な細区画に、音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによって直接送達した後、個々のマイクロウェル内で乾燥させる。初期試料を48個のウェルに分配する。ウェルまたは初期反応チャンバーで9サイクルのマルチプレックスPCRを実行すると、元の各病原体(存在する場合)が最大512コピー得られる。「タンデム」以上のPCRプライマーセットを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~12塩基の同じ5’テール配列が含まれる。平均して、最初の各細区画に元の各病原体が10コピー得られ、所与の1マイクロウェルに元の病原体が1または0コピー得られることになる。存在する病原体の数が多くなると、各細区画に追加のコピーが得られることになる。各行の各細区画のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。96個のマイクロウェルのポアソン分布では、最初に低存在量で存在する病原体特異的標的を計数するが、マイクロウェルにわたるCt値は、最初に高存在量で存在する病原体特異的標的の概算のコピー情報を提供することになる。
【0170】
図28は、低レベル変異を検出するための別の例示的なPCR-LDR-qPCR反応(任意でキャリーオーバー防止を含む)を示す。ゲノムまたはcfDNAは単離され(図28、工程A)、24、36、48、または64個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配された後、PCRが行われる。単離されたDNA試料は、試料に存在する可能性のあるdU含有核酸分子を消化するため、場合によりUDGで処理される(図28、工程B)。遺伝子座特異的上流プライマー、遺伝子座特異的下流プライマー、野生型配列を含むブロッキングLNAまたはPNAプローブ、及びdUTPを場合により含むデオキシヌクレオチドミックスを使用して、対象とする領域を選択的に増幅する。本実施形態では、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を上流プライマーに含めることにより、別の選択性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、変異の数塩基上流にあり、ポリメラーゼ伸長に適した3’OH基が解放される(図28、工程B)。上流のPCRプライマーと部分的に重複する野生型配列を含むブロッキングLNAまたはPNAプローブは、野生型配列への結合に対しては、上流のプライマーよりも競合優先性をもつが、変異DNAに対してほど強くないため、PCRの各ラウンド中の野生型DNAの増幅が抑制される。図28の工程Cに示すように、増幅産物には場合によりdUが含まれるが、UDGまたは類似の酵素で後処理すると、キャリーオーバーを防止することができる。各一次PCR反応チャンバーからの産物は、対応する二次LDR反応チャンバーに分配される。
【0171】
図28の工程Dに示すように、標的特異的オリゴヌクレオチドプローブが増幅産物にハイブリダイズし、2つのオリゴヌクレオチドがその相補配列にハイブリダイズされると、リガーゼ(黒丸)によって共に共有結合され閉じられる。本実施形態では、対象とする変異の検出に特異的な配列をもつ上流オリゴヌクレオチドプローブには、ライゲーション産物の後続の検出を促進する5’プライマー特異的部分(Ai)がさらに含まれる。この場合もまた、野生型配列を含むブロッキングLNAまたはPNAプローブが存在することで、PCR増幅工程中に、変異体配列の濃縮後に、存在する場合がある野生型標的配列へのライゲーションが抑制される。変異型と野生型両方の配列に共通する配列をもつ下流オリゴヌクレオチドプローブには、3’プライマー特異的部分(Ci’)が含まれ、変異の検出に特異的な配列を有する上流プローブの5’プライマー特異的部分(Ai)と共に、後続の変異体ライゲーション産物のみの増幅及び検出を可能にする。この図の工程Dに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を上流ライゲーションプローブに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ライゲーションに優れる3’OH基が生じる(図28、工程D)。ライゲーションに続いて、各二次LDR反応チャンバーの産物が、384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される。図19図28、工程E~Gを参照)で上述したように、対応するプライマーAiとCiのペア、及びライゲーション接合部にわたるTaqMan(商標)プローブを使用して、または当技術分野で公知の他の好適な手段を使用してライゲーション産物を検出することができる。
【0172】
図29は、低レベル変異を検出するための別の例示的なPCR-LDR-qPCR反応(任意でキャリーオーバー防止を含む)を示す。ゲノムまたはcfDNAは単離され(図29、工程A)、24、36、48、または64個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配された後、PCRが行われる。単離されたDNA試料は、試料に存在する可能性のあるdU含有核酸分子を消化するため、場合によりUDGで処理される(図29、工程B)。上流の遺伝子座特異的プライマーは、変異の数塩基上流に設計され、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を含む。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基を除去して、ポリメラーゼ伸長に適した3’OH基が解放される(図29、工程B)。上流のPCRプライマーと部分的に重複する野生型配列を含むブロッキングLNAまたはPNAプローブは、野生型配列への結合に対しては、上流のプライマーよりも競合優先性をもつが、変異DNAに対してほど強くないため、PCRの各ラウンド中の野生型DNAの増幅が抑制される。図29の工程Cに示すように、増幅産物には場合によりdUが含まれるが、UDGまたは類似の酵素で後処理すると、キャリーオーバーを防止することができる。各一次PCR反応チャンバーからの産物は、対応する二次LDR反応チャンバーに分配される。
【0173】
図29の工程Dに示すように、標的特異的オリゴヌクレオチドプローブが増幅産物にハイブリダイズし、2つのオリゴヌクレオチドがその相補配列にハイブリダイズされると、リガーゼ(黒丸)によって共に共有結合され閉じられる。本実施形態では、対象とする変異の検出に特異的な配列をもつ上流オリゴヌクレオチドプローブには、ライゲーション産物の後続の検出を促進する5’プライマー特異的部分(Ai)がさらに含まれる。この場合もまた、野生型配列を含むブロッキングLNAまたはPNAプローブが存在することで、PCR増幅工程中に、変異体配列の濃縮後に存在する場合がある野生型標的配列へのライゲーションが抑制される。変異型と野生型両方の配列に共通する配列をもつ下流オリゴヌクレオチドプローブには、3’プライマー特異的部分(Bi’-Ci’)が含まれ、変異の検出に特異的な配列を有する上流プローブの5’プライマー特異的部分(Ai)と共に、後続の変異体ライゲーション産物のみの増幅及び検出を可能にする。この図の工程Dに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を上流ライゲーションプローブに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ライゲーションに優れる3’OH基が生じる(図29、工程D)。ライゲーションに続いて、各二次LDR反応チャンバーの産物が、384個または768個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配される。UniTaq特異的プライマー(すなわちF1-Bi-Q-Ai、Ci)を使用してライゲーション産物を増幅し、図20図29、工程E~Hを参照)で上述したように、または当技術分野で公知の他の好適な手段を使用して検出する。
【0174】
図30は、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である概略正面図である。この設計は、血漿中の低レベルの未知の変異を同定及び定量するためのマルチプレックスPCR-LDR-UniTaq検出の実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。(あるいは、変異特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRを使用する)。図30では、注入試料は入口12を経て初期反応チャンバー10(下)に流体接続され、適切な試薬と混合される。初期反応チャンバー10(下)は、導管14によって第1の六角形チャンバーセット16(小トラフ18を含む、一次PCR反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー16は、導管20によって、第2の六角形チャンバーセット22(大トラフ24及びバッフル23を含む、二次PCR反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー22は、導管26によって細長い混合チャンバー28に流体接続され、混合チャンバー28は、導管30によって、マイクロウェルまたはマイクロポアの細区画32が含まれるチャンバーに流体接続されている(パネルの上部に4行のみを図示)。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。カートリッジの製造時に、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を行に予備充填する。カートリッジの製造時に、マイクロウェルまたはマイクロポアの細区画の列へと至る二次LDR反応チャンバー22に、ライゲーションされない5’(上流)末端及び3’(下流)末端にUniTaqまたはユニバーサルタグ配列のいずれかをもつLDR’プローブセットが場合により予備充填されている。図の左側にある灰色の円25は、例えば音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによってプローブセットを送達またはプリントされる可能性のある位置を示している。プローブを乾燥させて、カートリッジのカバー部分を取り付け、プローブセットを適切な位置に密閉する。あるいは、同じLDRプライマーセットを各プレチャンバーで使用する場合、PCR工程の後に追加できるため、最初にカートリッジにプリントする必要がない。カートリッジの使用時には、カートリッジの初期反応チャンバー10から一次PCR反応チャンバー16、二次LDR反応チャンバー22を経て、最終的には混合チャンバー28に達し、さらに各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの細区画32の列まで反応物が流体移動する。この例図では、768個に相当する24列32行に計画された細区画を4つずつ示し、各細区画には24個のマイクロウェルまたはマイクロポアが含まれる。この例では、最初のマルチプレックスPCR増幅が、最初の一次PCR反応チャンバー16のそれぞれで、野生型配列の増幅は抑制するが、変異型配列は抑制しないPNAまたはLNAの存在下で10~40サイクル繰り返される。別の実施形態では、マルチプレックスPCR時の断片のドロップアウトを最小限に抑えるために、最初の「前増幅」マルチプレックスPCRを、初期反応チャンバー10で8~20サイクル実行する。その後、この産物を一次PCR反応チャンバー16に分配する。ある変形例では、一次反応チャンバーのそれぞれに、野生型配列の増幅を抑制するPNAまたはLNAをもつ1~4個のPCRプライマーセットが含まれており、シングルまたはマルチプレックスPCRをさらに10~30サイクル実行し、潜在的な変異を含む1~4種類の断片を単一の一次反応チャンバーで増幅することができる。別の変形例では、4つの一次反応チャンバー6組に、野生型配列の増幅を抑制するPNAまたはLNAをもつ4~16個のPCRプライマーセットが含まれており、マルチプレックスPCRをさらに10~30サイクル実行し、潜在的な変異を含む4~16種類の断片を単一の一次反応チャンバーで増幅することができる。ポリメラーゼを不活性化し(例えば加熱死滅化またはプロテアーゼ消化などによる)、各チャンバーのマルチプレックス産物をリガーゼ、ATP、またはNADを含むリガーゼ反応混合物に10倍希釈し、対応する二次LDR反応チャンバー22(上記のLDRプローブを予備充填)に分配する。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含む、PCRプライマー及び/またはLDR上流プローブは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。UniTaqまたはユニバーサルタグをもつアレル特異的プローブを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20サイクルのLDRを実行する。LDRプライマーが、同じ遺伝子の異なる変異に対して、同じ細区画で同じシグナルを生じるように設計することができる。新しいPCR試薬を追加し、各二次PCR反応チャンバー22のLDR産物と混合し、混合チャンバー28から、さらに各列のマイクロポアへと分配する。各行の各細区画のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。それぞれの列での特異的変異の有無により、血漿中の低レベル変異の数を計数することができる。
【0175】
各細区画に96個のマイクロウェルを含む、2,304個に相当する48列及び48行の細区画を使用する代替的実施形態では、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を、各行の適切な細区画に、音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによって直接送達した後、個々のマイクロウェル内で乾燥させる。最初の試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバー16に分配する。血漿中の最高レベルのDNA=10,000ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバー16あたり200コピーであり、最大1つの変異がある。野生型DNAの増幅を低減するため、ブロッキングPNAまたはLNAを用いて10~40サイクルの遺伝子座特異的PCRを実行する。任意:PCR反応時にdUTPを使用する(UDGで前処理し、初期試料のキャリーオーバー汚染を防止する)。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含む、PCRプライマー及び/またはLDR上流プローブは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。また、すべての下流PCRプライマーには、プライマー二量体の増幅を抑制するために、好ましくは8~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる。別の実施形態では、マルチプレックスPCR時の断片のドロップアウトを最小限に抑えるために、最初の「前増幅」マルチプレックスPCRを、初期ウェルまたは反応チャンバーで8~20サイクル実行する。その後、この産物を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバー16に分配する。ある変形例では、48個のウェルまたは一次反応チャンバーのそれぞれに、野生型配列の増幅を抑制するPNAまたはLNAをもつ1~4個のPCRプライマーセットが含まれており、シングルまたはマルチプレックスPCRをさらに10~30サイクル実行し、潜在的な変異を含む1~4種類の断片を単一のウェルまたは一次反応チャンバーで増幅することができる。別の変形例では、4つの一次反応チャンバー12組に、野生型配列の増幅を抑制するPNAまたはLNAをもつ4~16個のPCRプライマーセットが含まれており、マルチプレックスPCRをさらに10~30サイクル実行し、潜在的な変異を含む4~16種類の断片を単一のウェルまたは一次反応チャンバーで増幅することができる。各ウェルの産物をLDRプライマー及び緩衝液で希釈する。ウェルまたは二次LDR反応チャンバー22内で、UniTaqテールをもつアレル特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20サイクルのLDRを実行する。LDRプライマーが、同じ遺伝子の異なる変異に対して、同じ細区画で同じシグナルを生じるように設計することができる。LDR反応は、同じ反応チャンバーで実行することも、2つの個々の反応チャンバーで実行して、再合一することもできる。UniTaqマスターミックス及びUDGを追加し、各ウェルまたは二次LDR反応チャンバー22の産物を、それぞれ96個のマイクロポアを含む48個の細区画に分配する。細区画には適切なUniTaqプライマー及び/またはプローブが事前にスポットされている(図28及び図29を参照)。事前にスポットされたプライマーセットを使用して各マイクロポア内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。
【0176】
図25のカートリッジ及びバルブ構成を使用して、UniTaqまたは変異特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRを使用して、血漿中の低レベルの未知の変異を同定及び定量することもできる。この図はまた、数千のマイクロポアで構成されるマイクロポアプレートを使用した、UniTaqまたは変異特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRの流体システムを示す。マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面(プレートの上部、プレートの左側に図示)は、バルブ1、2、及び3と連通しており、対して第2の側面(プレートの下部、プレートの右側に図示)は、バルブ4及び5と連通している。バルブ1は、必要に応じて、24~48個の初期マルチプレックスPCR反応チャンバー、24~48個のLDR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、溶解/プロテアーゼ緩衝液、酵素、洗浄緩衝液、溶出緩衝液、緩衝液、EtOH、軽油、及び重油を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ3から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第1の側、他のチャンバー、LDR反応チャンバー、及び初期マルチプレックスPCR反応チャンバーを空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。バルブ1は、バルブ2を選択することもできる。バルブ2は、24~48個の初期マルチプレックスPCR反応チャンバー、24~48個のLDR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、初期マルチプレックスPCRプライマー、任意のLDRプライマー、マスターPCRミックス、マスターLDRミックス、マスターUDGミックス、緩衝液、洗浄液、EtOH、及び空気を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。バルブ4は、マイクロポアプレートの第2の側にわたり空気、軽油、重油、及び廃棄物を分注し、バルブ5を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ5から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第2の側を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。
【0177】
(表4)マルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCR用の試薬構成
【0178】
図25Bは、初期マルチプレックス反応チャンバー10、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー16、24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー22、ならびに24~48列で数千個のマイクロポアまたはマイクロウェルの細区画を含む主要チャンバーに個別に加熱/冷却を施せるように設計されるいくつかの発熱体を示す。背面プレート、またはマイクロポアもしくはマイクロウェルチャンバーの1つ以上の平面(複数可)、ならびに反応チャンバーを、これらの発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。図25に示すように、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー10及び24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー22の裏側にある2つの発熱体は、すべての一次チャンバーをすべての二次チャンバーとは独立して制御する2つの長方形(水平)ストリップとして設計される。代替構成も使用することができ、例えば最初のマルチプレックスPCRを、(i)野生型DNAの伸長を抑制するブロッキングプライマーの有無を問わず、片側のマルチプレックスプライマーを線形伸長する、及び(ii)相補的プライマーを追加して、最初の伸長産物のPCR増幅を制限するか、または拡張するという2つの工程に分割してもよい。そのような構成では、(i)24~48個の一次マルチプレックスポリメラーゼ伸長反応チャンバー、(ii)24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー、(iii)24~48個の三次マルチプレックス反応チャンバー、及び(iv)24~48列で数千個のマイクロポアまたはマイクロウェルを含む主要チャンバーの裏側に、少なくとも4つの、独立して制御される発熱体が必要になる。
【0179】
図31は、メチル化を検出するための別の例示的なPCR-LDR-qPCR反応(任意でキャリーオーバー防止を含む)を示す。ゲノムまたはcfDNAは単離され(図31、工程A)、初期反応チャンバー内でBsh1236Iにより処理されて(CG^CG)、非メチル化DNAが完全に消化される。単離されたDNA試料は、試料に存在する可能性のあるdU含有核酸分子を消化するため、場合によりUDGで処理される(図31、工程B)。酵素処理されたDNAをバイサルファイトで処理し、Cを5meCではなくUに変換し、鎖を非相補的にする。次いで、バイサルファイト処理されたDNAを、24、36、48、または64個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配し、対象とするメチル化CpGを含む遺伝子座特異的領域を、PCRを使用して増幅する(図31、工程B)。本実施形態では、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を上流プライマーに含めることにより、別の選択性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、変異の数塩基上流にあり、ポリメラーゼ伸長に適した3’OH基が解放される(図31、工程B)。プライマー二量体を防ぐため、下流プライマーは5’末端に8~11塩基の同じテールを含む。図31の工程Cに示すように、増幅産物には場合によりdUが含まれるが、UDGまたは類似の酵素で後処理すると、キャリーオーバーを防止することができる。
【0180】
図31の工程Dに示すように、標的特異的オリゴヌクレオチドプローブが増幅産物にハイブリダイズし、二次LDR反応チャンバー内で2つのオリゴヌクレオチドが相補配列にハイブリダイズされると、リガーゼ(黒丸)によって共に共有結合され閉じられる。本実施形態では、対象とするCpGのメチル化状態の検出に特異的な配列をもつ上流オリゴヌクレオチドプローブには、ライゲーション産物の後続の検出を促進する5’プライマー特異的部分(Ai)がさらに含まれる。下流オリゴヌクレオチドプローブには、3’プライマー特異的部分(Ci’)が含まれ、変異の検出に特異的な配列を有する上流プローブの5’プライマー特異的部分(Ai)と共に、後続のメチル化特異的ライゲーション産物のみの増幅及び検出を可能にする。この図の工程Dに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を上流ライゲーションプローブに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ライゲーションに優れる3’OH基が生じる(図31、工程D)。ライゲーションに続いて、図19図31、工程E~Gを参照)で上述したように、対応するプライマーAiとCiのペア、及びライゲーション接合部にわたるTaqMan(商標)プローブを使用して、または当技術分野で公知の他の好適な手段を使用してライゲーション産物を検出することができる。
【0181】
図32は、図31の工程A~Cと同様の初期工程を用いて、メチル化を検出するための別の例示的なPCR-LDR-qPCR反応(任意でキャリーオーバー防止を含む)を示す。図32の工程Dに示すように、標的特異的オリゴヌクレオチドプローブが増幅産物にハイブリダイズし、2つのオリゴヌクレオチドがその相補配列にハイブリダイズされると、リガーゼ(黒丸)によって共に共有結合され閉じられる。本実施形態では、対象とするCpGのメチル化状態の検出に特異的な配列をもつ上流オリゴヌクレオチドプローブには、ライゲーション産物の後続の検出を促進する5’プライマー特異的部分(Ai)がさらに含まれる。下流オリゴヌクレオチドプローブには、3’プライマー特異的部分(Bi’-Ci’)が含まれ、変異の検出に特異的な配列を有する上流プローブの5’プライマー特異的部分(Ai)と共に、後続のメチル化特異的ライゲーション産物のみの増幅及び検出を可能にする。この図の工程Dに示すように、3’切断ブロッキング基(Blk3’、例えばC3スペーサー)及びRNA塩基(r)を上流ライゲーションプローブに含めることにより、別の特異性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H(星印)によりRNA塩基が除去され、ライゲーションに優れる3’OH基が生じる(図32、工程D)。ライゲーションに続いて、UniTaq特異的プライマー(すなわちF1-Bi-Q-Ai、Ci)を使用してライゲーション産物を増幅し、図20図32、工程E~Hを参照)で上述したように、または当技術分野で公知の他の好適な手段を使用して検出する。
【0182】
図30のカートリッジ設計はまた、血漿中の低レベルのメチル化及び未知の変異を同定及び定量するために、マルチプレックスPCR-LDR-UniTaq検出を実施する際にも使用することができる。(あるいは、変異またはメチル化特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRを使用する)。
【0183】
図25のカートリッジ及びバルブ構成を使用して、UniTaqまたは標的特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRを使用して、血漿中の低レベルのメチル化及び未知の変異を同定及び定量することもできる。この図は、数千のマイクロポアで構成されるマイクロポアプレートを使用した、UniTaqまたは標的特異的Taqman(商標)プローブを用いたマルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCRの流体システムを示す。マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面(プレートの上部、プレートの左側に図示)は、バルブ1、2、及び3と連通しており、対して第2の側面(プレートの下部、プレートの右側に図示)は、バルブ4及び5と連通している。バルブ1は、必要に応じて、バイサルファイト反応チャンバー、24~48個の初期マルチプレックスPCR反応チャンバー、24~48個のLDR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、溶解/プロテアーゼ緩衝液、酵素、洗浄緩衝液、溶出緩衝液、緩衝液、EtOH、軽油、及び重油を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ3から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第1の側、他のチャンバー、LDR反応チャンバー、初期マルチプレックスPCR反応チャンバー、及びバイサルファイト反応チャンバーを空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。バルブ1は、バルブ2を選択することもできる。バルブ2は、バイサルファイト反応チャンバー、24~48個の初期マルチプレックスPCR反応チャンバー、24~48個のLDR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、メチル化標的用の初期マルチプレックスPCRプライマー、変異標的用の初期マルチプレックスPCRプライマー、任意のLDRプライマー、マスターPCRミックス、マスターLDRミックス、マスターUDGミックス、Bsh1236I、バイサルファイト、緩衝液、洗浄液、EtOH、及び空気を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。バルブ4は、マイクロポアプレートの第2の側にわたり空気、軽油、重油、及び廃棄物を分注し、バルブ5を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ5から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第2の側を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。
【0184】
(表5)マルチプレックスPCR-LDR-リアルタイムPCR用の試薬構成(バイサルファイトあり)
【0185】
図25Bは、初期マルチプレックス反応チャンバー10、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー16、24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー22、ならびに24~48列で数千個のマイクロポアまたはマイクロウェルの細区画を含む主要チャンバーに個別に加熱/冷却を施せるように設計されるいくつかの発熱体を示す。背面プレート、またはマイクロポアもしくはマイクロウェルチャンバーの1つ以上の平面(複数可)、ならびに反応チャンバーを、これらの発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。図25に示すように、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー10及び24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー22の裏側にある2つの発熱体は、すべての一次チャンバーをすべての二次チャンバーとは独立して制御する2つの長方形(水平)ストリップとして設計される。代替構成を使用することもできる。例えば、Bsh1236I選択プロセスの代わりに、メチル化DNAにメチル特異的結合タンパク質または抗体を使用するために、メチル化DNAが濃縮される場合がある。この工程は、カートリッジ内で行うことも、またはメチル濃縮されたDNAをカートリッジに入れる前に行うこともできる。バイサルファイト処理後の最初のマルチプレックスPCRを、(i)非メチル化DNA DNAの伸長を抑制するブロッキングプライマーの有無を問わず、片側のマルチプレックスプライマーを線形伸長する、及び(ii)相補的プライマーを追加して、最初の伸長産物のPCR増幅を制限するか、または拡張するという2つの工程に分割してもよい。そのような構成では、(i)24~48個の一次マルチプレックスポリメラーゼ伸長反応チャンバー、(ii)24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー、(iii)24~48個の三次マルチプレックス反応チャンバー、及び(iv)24~48列で数千個のマイクロポアまたはマイクロウェルを含む主要チャンバーの裏側に、少なくとも4つの、独立して制御される発熱体が必要になる。
【0186】
図33は、低レベルの選択的スプライシング転写産物を検出するためのRT-PCR-PCR-qPCR反応を示す。図33の工程Aは、検出される、エクソン3aが含まれる野生型転写産物(上)、及びエクソン3bが含まれる低レベルの選択的スプライシング転写産物(下)を示している。この方法には、mRNAを単離すること、及び初期反応チャンバー内で3’転写産物特異的プライマー(すなわちエクソン4)を使用して逆転写酵素でcDNAコピーを生成することを含む。Taqポリメラーゼを活性化して、異なるアンプリコンの相対比を維持するため、サイクルを制限して(すなわち7サイクル)PCR増幅を実行する(図33、工程B)。一実施形態では、最初のマルチプレックス反応物を6つの一次PCR反応チャンバーに分配する。この場合、各一次PCR反応チャンバーへの元の各転写産物の平均分配数は20コピーである。
【0187】
図33の工程Cに示すように、一次PCR反応チャンバー内で、標的特異的オリゴヌクレオチド二次プライマーを一次増幅産物とハイブリダイズし、ポリメラーゼ(塗りつぶした菱形)を使用して対象とする標的含有領域をPCR増幅する(すなわち10サイクル)。本実施形態では、選択的スプライス変異体(すなわちエクソン3b)に特異的であり、野生型変異体(すなわちエクソン3a)とはハイブリダイズしないプライマーを利用して、選択的スプライス変異体に対応する増幅産物のみを産生する。6つの各チャンバーからの産物は、それよりも小さい4つの二次反応/希釈チャンバー(合計24個のチャンバー)に別々に希釈される。ネステッドプライマー増幅に続いて、各二次反応/希釈チャンバーからのPCR産物は別々に希釈され、384個または768個のマイクロポアに分配される。UniTaq特異的プライマー(すなわちF1-Bi-Q-Ai、Ci)を使用して産物を増幅し、図20図33、工程D~Fを参照)で上述したように、または当技術分野で公知の他の好適な手段を使用して検出する。
【0188】
図34は、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である概略正面図である。この設計は、希少及び過剰発現両方のlncRNA、mRNA、またはスプライス変異体を計数するためのマルチプレックスRT-PCR-ネステッドPCR-UniTaq検出の実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。(あるいは、標的特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスRT-PCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCR)。図34では、注入試料は入口12を経て初期反応チャンバー10(下)に流体接続される。初期反応チャンバー10は、導管14によって六角形チャンバー16(大トラフ18を備え、一次PCR反応チャンバーを構成)に流体連結される。一次PCR反応チャンバー16は、導管20によって第2の六角形チャンバーセット22(最初の各チャンバーが接続される4つのチャンバー。大トラフ24a、中トラフ24c、小トラフ24b、及び極小トラフ24dをそれぞれが備え、二次反応/希釈チャンバー22を構成)に流体接続され、六角形チャンバー22は、導管26によって細長い混合チャンバー28に流体接続され、混合チャンバーは、導管30によって、マイクロウェルまたはマイクロポアを含む細区画32のチャンバー(パネルの上部に4行のみを図示)に流体接続されている。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。カートリッジの製造時に、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を行に予備充填する。カートリッジの製造時に、マイクロウェルまたはマイクロポアの列へと至るチャンバーに、UniTaqまたはユニバーサルタグ配列のいずれかを5’末端にもつネステッドPCRプライマーセットが予備充填されている。図の左側にある灰色の円17は、例えば音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによってプライマーセットが送達またはプリントされる可能性のある位置を示している。プライマーを乾燥させて、カートリッジのカバー部分を取り付け、プローブセットを適切な位置に密閉する。カートリッジの使用時には、カートリッジの最初のチャンバーからカートリッジへ、最終的に各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの列まで反応物が流体移動する。この例図では、768個に相当する24列及び32行に計画された細区画を4つずつ示し、各細区画には24個のマイクロウェルまたはマイクロポアが含まれる。この例では、初期反応チャンバーで最初のマルチプレックス逆転写PCRを7サイクル行い、元の標的を増幅する。最初のマルチプレックス産物を一次PCR反応チャンバーに分配する。この場合、各一次PCR反応チャンバーへの元の各転写産物の平均分配数は20コピーである。UniTaqまたはユニバーサルタグをもつ標的特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、10サイクルのネステッドPCRを実行する。各一次PCR反応チャンバーは、排出後も一定比率の液体量を保持するように設計されている。3サイクルの充填と排出を実行して、産物を別々に希釈する。各一次PCR反応チャンバーからの産物を、二次反応/希釈チャンバーに分配する。各二次反応/希釈チャンバーは、排出後も一定比率の液体量を保持するように設計されている。3サイクルの充填と排出を実行して、産物を別々に希釈する。ネステッドPCR産物を混合チャンバーへ、さらに各列のマイクロポアへと分配する。各行のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。マイクロポア内のポアソン分布により、低コピー、中コピー、及び高コピーのlncRNA、mRNA、またはスプライス変異体を計数する。
【0189】
各細区画に96個のマイクロウェルを含む、2,304個に相当する48列及び48行の細区画を使用する代替的実施形態では、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を、各行の適切な細区画に、音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによって直接送達した後、個々のマイクロウェル内で乾燥させる。初期反応チャンバーまたはウェルで、10サイクルのマルチプレックスRT-PCRを実行すると、元の各RNA分子の最大1,024コピーが得られる。必要に応じて、「タンデム」PCRプライマーを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる場合がある。最初のマルチプレックス産物を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。元の各RNA標的の各ウェルへの平均分配数は20コピーである。UniTaqテールをもつプライマーを24個組または48個組のプライマーセットにして使用し、3~4サイクルのネステッドPCRを実行すると、元の各病原体の最大160~320コピーが得られる。各ウェルの産物を、96個のマイクロポアを備える、それぞれ24個2セットまたは12個4セットの細区画に分配する。2セットを使用する場合、第2のセットは第1のセットの100/1希釈である。4セットを使用する場合、各セットは前のセットの20/1希釈である。これにより、大きな規模にわたって存在するRNA分子の網羅が可能になる。平均して、最初の各細区画に元の各RNA分子が12コピー得られ、所与の1マイクロポアに元のRNAが1または0コピー得られることになる。存在するRNAの数が多くなると、各細区画に追加のコピーが得られることになる。事前にスポットされたUniTaqプライマーセットを使用して各マイクロポア内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。2セットまたは4セットの希釈物にわたる96個のマイクロポアのポアソン分布により、試料中のRNAコピー数が非常に多い場合はもとより、RNAコピー数が非常に少ない場合でも、ある程度の計数が可能になる。
【0190】
本発明の別の実施形態は、固体支持体での標的分子の合成またはライゲーションによるシーケンシングのためのシステムである。例えば図1に記載するように、直径5ミクロンのマイクロポア内で1つ以上の標的分子を増幅する。標的は増幅されて、マイクロポアまたはマイクロウェル内の固体支持体に固定または結合される。そのような固定は、マイクロポアもしくはマイクロウェルの内部表面、マイクロポアもしくはマイクロウェルの表面に固定されたデンドリマー状プライマー、または増幅前にマイクロポアもしくはマイクロウェル内に予め分配されているか、もしくは増幅後にマイクロポアもしくはマイクロウェルに分配されるマイクロビーズに対して直接行われる場合がある。マイクロビーズは表面積がかなり大きい多孔質の場合があり、マイクロポア単独の内側表面で達成し得るよりも高レベルの増幅が可能である。固体支持体への固定または結合により、増幅された標的を1回以上調べて、標的内の変異、SNP、または配列変異の有無を決定することができる。
【0191】
sequencing-by-synthesisの蛍光産物を検出するための標準的な手法は、ウェルあたり1つの標的のみを増幅する、及び単一のユニバーサルプライマーを使用してシーケンシングリードを生成することに依拠する。単一の標的分子を増幅する手法の一つは、クラスター増幅として知られ、固体支持体上に順方向と逆方向両方のプライマーを固定することである。ただし、この手法は、伸長産物が新しいプライマーとハイブリダイズせず、互いが再ハイブリダイズする傾向があるため、クラスター内の鎖の総収量が制限される。代替手法は、油に囲まれた水滴内のビーズ上でDNAを増幅することである。本明細書では、溶液中で増幅を行った後、固体支持体または固定プライマー上に産物を捕捉して、さらに伸長させ、増幅産物のコピーを作製する簡潔な手法を提案する。この方法では、より大量に反応が行われるため、高収量の複数の増幅産物が得られ、さらにこれを、選択された標的特異的プライマー、または代わりに共通領域及び可変領域を含む異なるシーケンシングプライマーのセットを使用してシーケンシングすることができる。適切な充填量及びプライマーの選択により、各ラウンドのシーケンシングで、約30%~35%のマイクロポアで固有のシーケンシング読み取りが可能になる。
【0192】
マイクロポア及びマイクロウェルは、内側に親水性表面を、外側に疎水性表面を有するように構築される。この構造は、異なる個々の量の液体に試料流体を注入するのに適しており、マイクロポアまたはマイクロウェル間でのクロストークがない増幅を可能にする。さらに、親水性表面を官能化すると、マイクロポアまたはマイクロウェル内にはプライマーを結合/固定できるが、外部には結合/固定できないため、クロストークをなくすことができる。
【0193】
固体支持体がポリ(メタクリル酸メチル)(別名PMMA、プレキシガラス、Lucite)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリエチレン、またはポリプロピレンの被覆用材で構成される場合、手法の一つは、UVレーザーアブレーションによってマイクロポアまたはマイクロウェルを作製することである。あるいは、マイクロポア及びマイクロウェルを、射出成形、インプリント、ホットエンボス、またはエッチングによって作製し、マスキング手法を使用してそれらの特定の表面をUV光に曝露する。これらのプロセスでは、5’アミノ末端オリゴヌクレオチドの、EDC/NHSを介在する共有結合に適したカルボキシレート表面を生成し、マイクロアレイを作製する(Situma et al.,“Fabrication of DNA Microarrays onto Poly(methyl Methacrylate)with Ultraviolet Patterning and Microfluidics for the Detection of Low-abundant Point Mutations,” Anal Biochem 340(1):123-35(2005);McCarley et al.,“Resist-free Patterning of Surface Architectures in Polymer-based Microanalytical Devices,”J Am Chem Soc.127(3):842-3(2005);Soper et al.,“Fabrication of DNA Microarrays onto Polymer Substrates Using UV Modification Protocols With Integration Into Microfluidic Platforms for the Sensing of Low-abundant DNA Point Mutations,”Methods 37(1):103-13(2005);Wang et al.,“Microarrays Assembled in Microfluidic Chips Fabricated From Poly(Methyl Methacrylate)for the Detection of Low-Abundant DNA Mutations,” Anal Chem.75(5):1130-40(2003)。それぞれ全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0194】
代替的実施形態では、共有結合ポリマーブラシを原子移動ラジカル重合(ATRP)によってPMMAの表面に成長させる(Balamurugan et al.,“Aqueous-based Initiator Attachment and ATRP Grafting of Polymer Brushes from Poly(Methyl Methacrylate)Substrates,” Langmuir 28(40):14254-60(2012)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この手法は、PMMA表面へのATRP開始剤の共有結合固定と、後続のポリ(Nイソプロピルアクリルアミド)PNIPAAmの表面開始水性ATRPの生成に基づいている。簡潔には、PMMAの選択領域をUV修飾してカルボン酸官能基を導入し、その後EDC/NHSのエチレンジアミンと反応させてアミノ基に変換する。次に、これらのアミン官能化PMMA表面をATRP開始剤N-ヒドロキシスクシンイミジル-2-ブロモ-2-メチルプロピオネートの活性化エステルと反応させる。水中で原子移動重合を行い、共有結合した開始剤表面からPNIPAAmブラシを成長させる。表面からポリマーをグラフトする際の、この水性系の経路は、様々な基材及び水溶性ATRPモノマーに適合させることができる。
【0195】
代替的実施形態では、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート(PEGMA)を用いてCOC表面を光グラフト化した。これには、最初の段階で表面開始剤の共有結合を形成し、その後、第2段階でこれらの部位からPEGMAのグラフト重合を行うという2段階の逐次手法を使用する(Stachowiak et al.,“Hydrophilic Surface Modification of Cyclic Olefin Copolymer Microfluidic Chips Using Sequential Photografting,” J Sep Sci.30(7):1088-93(2007)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。類似する手法が低密度ポリエチレンフィルムにも使用される。(Wang et al.,“Surface Modification of Low-Density Polyethylene Films by UV-Induced Graft Copolymerization and Its Relevance to Photolamination,” Langmuir 14(4):921-927(1998)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0196】
代替的実施形態では、親水性コーティングを使用して疎水性表面を親水性表面に変換する(Zilio et al.,“Universal Hydrophilic Coating of Thermoplastic Polymers Currently Used in Microfluidics,” Biomed Microdevice.16(1):107-14(2014)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。別の変形例では、光反応性コーティングを使用してデバイスの濡れ性を空間的に制御し、親水性表面を形成する(Abate et al.,“Photoreactive Coating for High-Contrast Spatial Patterning of Microfluidic Device Wettability,” Lab Chip 8(12):2157-60(2008)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0197】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.の米国特許出願公開第2015/0099642号に記載されているように、固体支持体の表面に、オリゴヌクレオチドを固体支持体に結合するリンカー分子の層が含まれていてもよいが、リンカー分子は本発明の必須要素ではないことが理解されよう。リンカー分子は、好ましくは完成した基材のポリマーが、基材に露出した分子と自由に相互作用できる程度の十分な長さのものである。十分な露出を得るには、リンカー分子は6~50原子長でなければならない。親水性/疎水性といった特性に基づいて適切なリンカー分子を選択することができる。リンカー分子は、例えば、アリールアセチレン、2~10モノマー単位を含むエチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二塩基酸、アミノ酸、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0198】
リンカー分子は、例えば(ポリ)トリフルオロクロロエチレン表面を使用して、炭素-炭素結合を介して基材に結合させることができる。リンカー分子は、場合により規則的な配列で、すなわち頭部基の一部として、重合された単層に結合されてもよい。代替的実施形態では、リンカー分子は基材の表面に吸着される。
【0199】
本発明のデバイスには、用途に応じた様々な種類のオリゴヌクレオチドを含み得る。本発明の一実施形態では、デバイスのオリゴヌクレオチドは、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.の米国特許第6,852,487号及び同第7,455,965号に記載される、捕捉オリゴヌクレオチドプローブである。したがって、本発明は、固体支持体上に複数の標的ヌクレオチド配列を捕捉する方法も包含する。
【0200】
本発明のデバイスを使用して実施することができる固相増幅の他の適切な方法は、Morris et al.の米国特許第6,017,738号、Gormley et al.の米国特許第7,741,463号、Rigatti et al.の米国特許第7,754,429号、及びChee et al.の米国特許第6,355,431号、ならびにSabot et al.の米国特許公開第2009/0226975号、Yu et al.の米国特許公開第2001/0036632号、Sundararajan et al.の同第2008/0108149号、Gunderson et alの米国特許公開第2005/0053980号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明のデバイスはまた、他のマルチプレックス核酸反応の実施にも適しており、この反応には、限定されないが、一塩基または多塩基伸長反応、プライマー伸長アッセイ、固相シーケンシング、固相オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ、ペアエンドリード、RNAシーケンシング、コピー数解析、ChIPシーケンシング、及び全体が参照により本明細書に組み込まれるOliphant et al.の米国特許出願公開第2010/0015626号に記載の他の反応が含まれる。
【0201】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.の米国特許出願公開第2015/0099642号に記載されているように、本発明の一態様は、固体支持体上のマイクロウェルまたはマイクロポア内にオリゴヌクレオチドを結合させる方法に関する。第1のこれらの方法には、底面、上面、及び底面と上面との間に広がる複数の側面を有する固体支持体を提供することを含む。底面、上面、及び複数の側面は、固体支持体上に複数のマイクロウェルまたはマイクロポアを集合的に形成する。固体支持体の底面を覆うためにマスクを利用し、マスクしたデバイスが活性化作用物に曝露されると、固体支持体のマスクされていない表面は活性化され、対して固体支持体のマスクされた表面は不活化される。固体支持体からマスクを除去し、オリゴヌクレオチドが固体支持体の活性化表面とは結合するが、固体支持体の不活化表面には結合しない効果のある条件下で、露出した固体支持体を複数のオリゴヌクレオチドと接触させることにより、オリゴヌクレオチドが固体支持体上のマイクロウェルまたはマイクロポア内に結合される。
【0202】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.の米国特許出願公開第2015/0099642号に記載されているように、本発明の本態様によれば、固体支持体は好ましくはポリマー材料を含む。好適なポリマーとして、ポリ(メタクリル酸メチル)、ポリカーボネート、ポリスルホン、エラストマー、及びポリマー性有機シリコーンが挙げられるが、これらに限定されない。底面、上面、及び底面と上面との間に広がる複数の側面を有する固体支持体は、平面を有する固体支持体から形成され、この平面は固体支持体上にマイクロウェルまたはマイクロポアを作製するため、底面、上面、及び複数の側面を形成するように処理されている。一実施形態では、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Soper et al.の米国特許第8,758,974号に記載されるホットエンボスを平面に施す。この手法は、固体支持体がポリマー材料を含む場合に好ましい。本発明の本態様の代替的実施形態では、固体支持体上にマイクロウェルまたはマイクロポアを作製するため、平面にフォトリソグラフィーを施す。
【0203】
オリゴヌクレオチドを含む生体分子の結合のためにポリマーの表面を修飾する方法が、Soper et al.の米国特許第8,758,974号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。固体支持体上のマイクロウェルまたはマイクロポア内でのオリゴヌクレオチドの選択的活性化及び結合を達成するため、固体支持体上の複数のパターン位置を選択的にマスクして、活性化作用物、例えばUV光に曝露する。本発明の本態様の一実施形態では、活性化作用物は化学線である。好ましくは、化学線への曝露は酸化雰囲気で実施される。多くの用途において通常の空気が適しているが、必要に応じて、パターンの形成を変更するために、酸素(または他の酸化剤)の濃度が高いかまたは低い雰囲気を使用することもできる。酸素の代わりに、または酸素に加えて、当技術分野で公知の他の酸化剤、例えばSO2、NO2、またはCNBrを使用してもよい(例えばKavc et al.,”Surface Modification of Polyethylene by Photochemical Introduction of Sulfonic Acid Groups,” Chem.Mater.12:1053-1059(2000);Meyer et al,”Surface Modification of Polystyrene by Photoinitiated Introduction of Cyano Groups,” Macromol.Rapid Commun.20:515-520(1999),を参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。化学線曝露によりポリマー表面が活性化されて、光酸化が促進し、曝露表面にカルボキシル基が生成される。化学線活性化に適した表面として、アクリレートポリマー(例えばPMMA)、芳香族ポリマー(例えばポリスチレン、フェノキシ樹脂)、ポリアミド、ポリスルホン、及びコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0204】
化学線を活性化作用物として使用するアレイ表面の活性化は、使用されるポリマーが吸収する周波数の広帯域紫外線、狭帯域UVランプ(例えば254nm)、またはUVレーザーへの曝露により達成することができる。あるいは、酸素プラズマを活性化作用物として使用し、アレイ表面の活性化を達成することができる。環状オレフィンコポリマー(COC)は、自家蛍光レベルが並外れて低く、UVまたは酸素プラズマ曝露後に高密度の官能基を生成する能力があるため、好ましいポリマーである。
【0205】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Soper et al.の米国特許第8,758,974号に記載されるように、オリゴヌクレオチド、好ましくはアミン末端オリゴヌクレオチドは、当技術分野で周知の方法、例えば架橋剤としてエチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)、及び中間体エステルとしてN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を使用するクリックケミストリーを用いて、表面の活性化領域に結合される。ただし、ジスルフィド、マレイミド、またはシロキサンなどの他の結合化学物質も使用することができる。複数のマイクロウェルまたはマイクロポアが含まれるアレイを形成する場合、オリゴヌクレオチドはウェルの活性化された側面と、存在する場合は底面には結合するが、マスクされた上面には結合しない。
【0206】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.の米国特許出願公開第2015/0099642号に記載されているように、固体支持体上にオリゴヌクレオチドのアレイを形成する別の方法は、平面基材と、基材表面にわたる感光層とを有する固体支持体を提供することを含む。固体支持体は、固体支持体上にマイクロウェルまたはマイクロポアを形成するのに有効な条件下でフォトリソグラフィープロセスを施す。オリゴヌクレオチドが、フォトリソグラフィープロセスによって露光された感光層の部分には結合するが、未露光のままの部分には結合しないか、あるいは未露光のままの部分には結合するが、露光された部分には結合しない効果がある条件下で、固体支持体をオリゴヌクレオチドと接触させることにより、オリゴヌクレオチドが固体支持体上のマイクロウェルまたはマイクロポア内に結合される。
【0207】
オリゴヌクレオチドの固体支持体への共有結合を可能にするように、感光性表面(すなわちSU-8またはその変種の1つ)に官能基を生成する様々な方法が当技術分野で公知である。好適な官能基として、カルボキシル基、カルボニル基、ヒドロキシル基、アミノ基、エポキシ基、及びシラノール基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0208】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.の米国特許出願公開第2015/0099642号に記載されているように、SU-8は、追加の活性化または修飾を伴わないオリゴヌクレオチドの共有結合に適したエポキシド環を含む好ましい表面材料である(Wang et al.,“Surface Graft Polymerization of SU-8 for Bio-MEMS Applications,” J.Micromech.Microeng.17:1371-1380(2007)も参照。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。一実施形態では、表面エポキシド基を加水分解し、第一級アミンをもつオリゴヌクレオチドと第二級アミンを形成するアルカリ溶液(pH約12)を使用して、アミン末端オリゴヌクレオチドをSU-8の表面に付加することができる。あるいは、SU-8のマイクロウェルまたはマイクロポアを硝酸で処理して、表面に拘束されたヒドロキシル基を生成した後、オリゴヌクレオチドに含まれる第一級アミンと反応させる(図24;Wang et al.,“Surface Graft Polymerization of SU-8 for Bio-MEMS Applications,” J.Micromech.Microeng.17:1371-1380(2007)、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。さらに別の実施形態では、SU-8ポリマーマイクロウェルまたはマイクロポアをUV照射(254nm)に曝露して表面のヒドロキシル基及びカルボン酸基を生成する。これらの手法は、活性化作用物への曝露後にその表面化学を変化させない材料を固体支持体基材が含んでいるため、接触光学式マスクを必要としない。
【0209】
エポキシ系レジストと互換性のある代替の結合化学物質、例えばSU-8はまた、オリゴヌクレオチドをマイクロウェルまたはマイクロポアの内部表面に結合させる用途にも適している。例えば、一実施形態では、架橋試薬を使用して、支持体の表面に存在する官能基を修飾する。好適な架橋試薬として、全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.の米国特許出願公開第2015/0099642号に記載される、グリシン、グルタルアルデヒド、及びアミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0210】
デンドリマーを固体支持体に固定するための一実施形態では、bDNAとして知られる一連の分岐オリゴデオキシリボヌクレオチドを介して複数のプライマーを固体表面に結合する。(Horn et al.,“An Improved Divergent Synthesis of Comb-type Branched Oligodeoxyribonucleotides(bDNA)Containing Multiple Secondary Sequences,” Nucleic Acids Res.25(23):4835-41(1997)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この手法では、bDNAに、1つの固有なオリゴヌクレオチドである一次配列、櫛状分岐ネットワークを介して異なるオリゴヌクレオチドの多くの同一コピーに共有結合する二次配列が含まれる。標的増幅に適したオリゴヌクレオチド複合体の複数のコピーを、bDNAネットワークにハイブリダイズし、次いで共有結合的に架橋させる。鎖間架橋に適したヌクレオチド類似体は以下に示す。あるいは、DNAリガーゼなどの酵素プロセスを使用して鎖を連結することができる。オリゴヌクレオチド複合体の5’末端は、二次配列に相補的であり、架橋に適するように設計されているが、3’末端は、目的とする標的の増幅用タグ配列としての使用に適している。
【0211】
デンドリマー様DNAのアセンブリ制御のための多用途かつ独創的な実施形態は、ハイブリダイゼーションにより作製されるY字型DNA分子を使用する(Li et al.,“Controlled Assembly of Dendrimer-like DNA,” Nat Mater.3(1):38-42(2004);Um et al.,“Dendrimer-like DNA-based Fluorescence Nanobarcodes,” Nat Protoc.1(2):995-1000(2006);Campolongo et al.,“DNA Nanomedicine:Engineering DNA as a Polymer for Therapeutic and Diagnostic Applications,” Adv Drug Deliv Rev.62(6):606-16(2010)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。ハイブリダイゼーションを制御して、より小型のY字型分子を互いにライゲーションし、マルチアーム型デンドリマー構造を作成した後、DNA鎖を互いに架橋して永続的なものにすることにより、そのような分子をアセンブリすることができる。5’または3’末端に、アミノ基、ビオチン基、またはその他の部分をもつ末端DNA分子の一部を使用することで、デンドリマー複合体の固体支持体への共有結合または非共有結合による固定に適した分子になる。標的増幅に適した複合オリゴヌクレオチドの複数のコピーを、bDNAネットワークにハイブリダイズし、次いで共有結合的に架橋するかまたはライゲーションする。複合オリゴヌクレオチドの5’末端は、二次配列に相補的であり、架橋またはライゲーションに適するように設計されているが、3’末端は、目的とする標的の増幅用タグ配列としての使用に適している。
【0212】
別の実施形態では、分岐DNAは、「ステップワイズ及びダブルクリック」ケミストリーを使用した付加環化によるトリプロパルギル化オリゴヌクレオチドから合成される。(Xiong et al., “Construction and Assembly of Branched Y-shaped DNA: ”click” Chemistry Performed on Dendronized 8-aza-7-deazaguanine Oligonucleotides,” Bioconjug Chem. 23(4):856-70 (2012)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。2つの末端三重結合をもつ7-トリプロパルギルアミン側鎖で修飾されたデンドロン化オリゴヌクレオチドをビスアジドでさらに官能化し、2つの末端アジド基をもつ誘導体を得る。続いて、2つのアジド基または2つの三重結合をもつ分岐側鎖をDNA断片と組み合わせて、対応するクリック反応可能な官能基を得る。同様に、市販のアジド、アルキン、またはDBCO部分を含むオリゴヌクレオチドを使用してもよい。こうした手法により、分岐した(Y字型)3本アームのDNAが得られる。相補的オリゴヌクレオチドの第1のセットによる分岐DNAのアニーリングにより、超分子集合体が得られ、これを本明細書に記載の架橋手法を使用することにより熱安定性にすることができる。相補的な複合オリゴヌクレオチドの第2のセットを超分子bDNAネットワークにハイブリダイズし、次いで共有結合的に架橋するかまたはライゲーションする。複合オリゴヌクレオチドの5’末端は、相補的オリゴヌクレオチドの第1のセットに相補的であり、架橋またはライゲーションに適するように設計されているが、3’末端は、目的とする標的の増幅用タグ配列としての使用に適している。
【0213】
別の実施形態では、デンドリマーは固体支持体上で直接アセンブリされる(Benters et al.,“DNA Microarrays with PAMAM Dendritic Linker Systems,” Nucleic Acids Res.30(2):E10(2002)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この手法は、目的とする標的の増幅にタグ配列として使用するのに適する、固体支持体と望ましいオリゴヌクレオチドとの間のメディエーター部分として、予め組み立てられたポリアミドアミン(PAMAM)放射状デンドリマーを使用する。64個の第一級アミノ基を外圏に含むデンドリマーをシリル化ガラス支持体に共有結合させ、続いてその樹状高分子をグルタル酸無水物で修飾し、N-ヒドロキシスクシンイミドで活性化させる。これで、活性化された表面を、アミノ修飾されたDNAオリゴマーで装飾でき、目的とするオリゴヌクレオチドプライマーが高密度に充填された非常に安定性の高い表面が得られる。
【0214】
別の実施形態では、(アジドとの)銅フリークリックケミストリー用のジベンゾシクロオクチル(DBCO);(アジドとの)クリックケミストリー用の5-オクタジイニルdU;Amino Modifier C6 dT(ペプチド結合用);またはアルキンもしくはDBCOとのクリックケミストリー用のアジドを使用して、固体表面、別のオリゴヌクレオチド、またはデンドリマーオリゴヌクレオチドにプライマーを共有結合することができる。他のオリゴヌクレオチドまたは固体支持体いずれへの架橋にも適した、修飾塩基を含むオリゴヌクレオチドが、例えばIDT(Integrated DNA technologies,Coralville,Iowa 52241,USA)から市販されている。
【0215】
別の実施形態では、フラン部分を含む修飾塩基を用いてオリゴヌクレオチドを合成する。メチレンブルーの存在下で可視光に曝露されると、一重項酸素の形成を誘発し、それがフランの酸化を引き起こし、さらにその結果生じるアルデヒドが相補的なAまたはCと迅速に反応して安定した鎖間付加物を形成する。(Op de Beeck et al.,“Sequence Specific DNA Cross-linking Triggered by Visible Light,” J Am Chem Soc.134(26):10737-40(2012)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0216】
デンドリマー構造を安定化するための別の手法は、光架橋を利用することである。(Rajendran et al.,“Photo-cross-linking-assisted Thermal Stability of DNA Origami Structures and its Application for Higher-temperature Self-assembly,” J Am Chem Soc.133(37):14488-91(2011)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。この手法では、8-メトキシプソラレンを使用して、UV光への曝露時にピリミジン塩基を互いに架橋する。
【0217】
別の実施形態では、脱塩基部位のヌクレオチド類似体を使用して、鎖間架橋を促進する(Ghosh et al.,“Synthesis of Cross-linked DNA Containing Oxidized Abasic Site Analogues,” J Org Chem.79(13):5948-57(2014)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0218】
別の実施形態では、4-ビニル置換ピリミジン及び6-ビニルプリンヌクレオチド類似体を使用して、鎖間架橋を形成する(Nishimoto et al.,“4-vinyl-substituted pyrimidine Nucleosides Exhibit the Efficient and Selective Formation of Interstrand Cross-links with RNA and Duplex DNA,” Nucleic Acids Res.41(13):6774-81(2013)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらの類似体として、シトシンとの架橋のための2-アミノ-6-ビニルプリン誘導体、ならびに4-ビニル置換ピリミジン誘導体、T-ビニル及びU-ビニルが挙げられる。
【0219】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.のWO 2016/057832に記載されているように、(アジドとの)銅フリークリックケミストリー用のジベンゾシクロオクチル(DBCO);(アジドとの)クリックケミストリー用の5-オクタジイニルdU;Amino Modifier C6 dT(ペプチド結合用);またはアルケンもしくはDBCOとのクリックケミストリー用のアジドを使用して、固体表面にオリゴヌクレオチドを共有結合することができる。あるいは、オリゴヌクレオチドにビオチン基またはHisタグなどの捕捉部分が含まれていてもよく、これらが、固体支持体上のマイクロウェルまたはマイクロポア内に存在する固定化ストレプトアビジンまたはNTAマトリックスによってそれぞれ捕捉されることになる。
【0220】
制限された(短鎖)RCAアンプリコンの共有結合された同一のコピーで表面を形成する代替手段として、Sequoia増幅(全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.の2013/012440)及び野火(wildfire)増幅(Ma et al.,“Isothermal Amplification Method for Next-Generation Sequencing,” Proc Natl Acad Sci USA 10(35):14320-3(2013)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)が挙げられる。
【0221】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.のWO 2015/188192に記載されているように、固体支持体は多種多様な材料から作製することができる。基材は、粒子、鎖、沈殿物、ゲル、シート、チューブ、球体、ビーズ、容器、毛細管、パッド、薄片、フィルム、プレート、スライド、ディスク、膜などとして存在する生物学的、非生物学的、有機、無機、またはこれらのいずれかの組み合わせであり得る。基材は、盤状、正方形、円形などの任意の利便な形状を有し得る。基材は、好ましくは平坦であるが、様々な代わりの表面構成を採る場合もある。例えば、基材はハイブリダイゼーションがそこで行われる隆起領域または陥没領域を含んでもよい。基材及びその表面は、好ましくは本明細書に記載のシーケンシング反応をそこで実施するための剛性支持体を形成している。
【0222】
鋳型作製に使用される市販の次世代シーケンシング用固体支持体プラットフォームを、本発明のシステム及び方法に利用することができる。例えば、Illumina(登録商標)Flow Cell、Life Technologies(登録商標)IonSphere(商標)及びエマルジョンPCRビーズ、ならびに454エマルジョンPCRビーズを本発明のシステム及び方法に使用することができる。その結果、環状キメラ一本鎖核酸構築物の第1の固体支持体プライマー特異的部分は、市販のNGS固体支持体に固定されたプライマーと同一であるように設計される。したがって、第1の固体支持体プライマー特異的部分の相補体を含む伸長産物が、NGS固体支持体表面のプライマーにハイブリダイズすることができる。
【0223】
図35は、1つの標的鎖の病原体をシーケンシング及び同定するためのプライマー設計の一実施形態を示す。ゲノムDNAを単離し、RNAウイルスの場合には、最初の逆転写酵素工程でcDNAを生成する。初期反応チャンバー内で、PCRを使用して標的DNAを前増幅してもよい(図35、工程A)。一変形例では、PCR増幅されたDNAまたはcDNAを24、36、または48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。標的配列を増幅するため、遺伝子座特異的ネステッドプライマーのペアを準備する。プライマーペアはそれぞれ、(i)第1の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーと;(ii)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第2の遺伝子座特異的プライマーであって、第2の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、ならびに遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーとで構成される。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長に適した3’OHが解放される(図35、工程B)。熱安定性ポリメラーゼ、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用して、2サイクルまたは3サイクルのPCR増幅を実行する。この増幅サイクルにより、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、2つの遺伝子座特異的プライマー部分間の標的配列、内部断片識別子、及び第2の5’共通配列またはタグ配列が含まれる産物が産生される。産物中の元のプライマー及びプライマーの一部は、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)及び場合によりAPE1(ヒトアプリンエンドヌクレアーゼ;図35、工程C)を使用して破壊される。その結果、各二本鎖増幅産物の一方の末端部分が一本鎖になる。固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している。(図35、工程D)。
【0224】
特にマイクロポアまたはビーズ内で複数の産物を増幅する場合に、最良のシーケンシングシグナルを得るには、固定されたプライマーのほとんどが伸長され、シーケンシングに適する標的含有鎖に変換されるように産物を増幅することが望ましい。図36図37、及び図38は、個別にもしくは組み合わせて、または他の手法と共に使用することができる3つの異なる実施形態を示す。
【0225】
図36は、第1のタグプライマーが、溶液中と、固定された第2のタグプライマーのいずれよりも多量に存在する一実施形態を示す。固定されたプライマーは、溶液中の第2のタグプライマーよりも長い。場合により、固定プライマーにハイブリダイズする一本鎖産物の合成に優位であり、そのようなプライマーの伸長を完了まで促進するように、PCRまたはその他の増幅サイクルの終了時のハイブリダイゼーション温度を短い方のタグプライマーのTmより高くする。
【0226】
図37は、溶液中の第1のタグプライマーが、2つの異なる5’部分、及び5’付加部分をもつプライマーを含み、いずれの第2のタグプライマーよりも多量に存在する別の実施形態を示す。固定されたプライマーは、溶液中の第2のタグプライマーよりも長い。5’-3’ヌクレアーゼ活性を欠く鎖置換ポリメラーゼを使用して、等温増幅と熱サイクル増幅を組み合わせて実行する。異なる5’部分をもつ産物を再アニーリングすると、末端にY字型構造が生じ、鎖置換増幅が可能になる。これは、固定されたプライマーの伸長を完了まで促進する効果がある。
【0227】
図38は、溶液中の第1のタグプライマーが、dA35、及びGCリッチ足場にdA35を付加したプライマーを含み、いずれの第2のタグプライマーよりも多量に存在する別の実施形態を示す。固定されたプライマーは、溶液中の第2のタグプライマーよりも長い。5’-3’ヌクレアーゼ活性を欠く鎖置換ポリメラーゼを使用して、等温増幅及び/または熱サイクル増幅を実行する。プライマーの足場は、標的に結合された場合にのみRNaseH2により放出される。過剰な一本鎖産物は、固定されたプライマーにハイブリダイズし、固定されたプライマーの伸長を完了まで促進する効果がある。
【0228】
固定された伸長産物のシーケンシングは、本明細書に記載及び図示されているsequence-by-synthesisを使用して行うことができる。sequence-by-synthesisとして、蛍光によるsequence-by-synthesis及びイオンによるsequence-by-synthesisが挙げられる。他の好適なシーケンシング方法を用いることもでき、これには例えば、蛍光プライマーハイブリダイゼーション、分子ビーコンハイブリダイゼーション、プライマー伸長、エキソヌクレアーゼを用いたシーケンシング、リガーゼ検出反応、リガーゼ連鎖反応、パイロシーケンシング法、蛍光によるsequencing-by-ligation、ナノポア及びナノチューブを用いたシーケンシング、ならびにイオンによるsequencing-by-ligationが含まれるが、これらに限定されない。
【0229】
全体が参照により本明細書に組み込まれる、Barany et al.のWO 2016/154337に完全に記載されているように、固体支持体上に標的核酸分子を固定するのに適した捕捉分子及び方法は、上述されている。同様に、固相増幅を使用して標的核酸分子に相補的な固定された伸長産物を産生する方法も上述されている。
【0230】
本発明の本態様によれば、固定された標的核酸分子またはその固定された伸長産物に、ヌクレオチド伸長反応プロセスを施す。ヌクレオチド伸長反応混合物は、ヌクレオチド三リン酸の集合体を含み、集合体中の各種類のヌクレオチド三リン酸は、(i)異なる切断可能な蛍光標識基、及び(ii)後続のヌクレオチド三リン酸の添加を阻害する切断可能なブロッキング部分を有する。
【0231】
ヌクレオチド三リン酸のブロッキング部分は、その3’OH基への後続のヌクレオチド三リン酸の付加を直接ブロックすることができる。本実施形態では、リボースの2’-Oまたはデオキシリボースの3’-Oのヌクレオシド三リン酸に、ブロッキング部分を付加する。このようなヌクレオチド三リン酸は、蛍光sequencing-by-synthesisと同一であるか、または類似する(Ju et al.,“Four-color DNA Sequencing by Synthesis Using Cleavable Fluorescent Nucleotide Reversible Terminators,” Proc Natl Acad Sci USA 103(52):19635-40(2006)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。3’-Oブロッキング基の場合、文献に十分な実証例がいくつかあり、これにはアミノ基、アジドメチル基、及びシアノエチル基などを含むが、これらに限定されない。酵素の取り込み効率と脱ブロッキング工程時の除去しやすさを兼ね備えるように、基の具体的な特性を選択する必要がある。ブロッキング基の除去は、ブロッキング基の化学的特性に固有のものであるが、例として、プライマー-鋳型の二重鎖を保持し、プライマー-鋳型の二重鎖の溶解によるシグナルの損失を引き起こさない温度での穏やかな水性試薬(すなわち還元剤)の使用が挙げられる。
【0232】
あるいは、ヌクレオチド三リン酸のブロッキング部分は、その3’OH基への後続のヌクレオチド三リン酸の付加を不可逆的に阻害する。このようなブロッキング部分は、ヌクレオシドのC5またはC7位置、すなわちそれぞれピリミジンまたはプリンのヌクレオチド三リン酸に付加することができる。このようなヌクレオチド三リン酸は、Lightning Terminators(商標)(LaserGen, Inc.)(Gardner et al.,“Rapid Incorporation Kinetics and Improved Fidelity of a Novel Class of 3’OH Unblocked Reversible Terminators,” Nucleic Acids Research 40(15):7404-15(May 2012)及びLitosh et al.,“Improved Nucleotide Selectivity and Termination of 3’-OH Unblocked Reversible Terminators by Molecular Tuning of 2 nitrobenzyl Alkylated HOMedU Triphosphates,” Nucleic Acids Research 39(6):e39(2011)。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)、及びVirtual Terminator(商標)(Helicos BioSciences)(Bowers et al.,“Virtual Terminator Nucleotides for Next-Generation DNA Sequencing,” Nat.Methods 6:593-595(2003)、Efcavitch et alの米国特許第8,071,755号、Siddiqi et alの米国特許第8,114,973号、Siddiqi et alのWO 2008/0169077。その全体が参照により本明細書に組み込まれる)と同一であるか、または類似している。立体バルクもしくは電荷阻害または両方の組み合わせを利用する鋳型依存性DNAポリメラーゼにより、dNTPの取り込みを阻害する化学部分を使用することができる。阻害部分の例は、Glu-GluまたはAsp-Aspのジペプチドである。
【0233】
これらすべての実施形態において、遺伝子特異的プライマーを使用して、sequencing-by-synthesisを開始し、標的の固有の配列を決定することができる。一実施形態では、最初のネステッド増幅に使用される上流遺伝子座特異的プライマーは、シーケンシングプライマーとしても機能し得る。これらのプライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除されるため、不正確なプライマー結合による誤った読み取りの可能性が実質的に排除される。
【0234】
あるいは、遺伝子座特異的プライマーは、可変領域を含むように設計される。個別の標的に異なった可変領域が含まれることになり、さらにそれを個別のプライマーを使用してシーケンシングする。一実施形態では、第1の8~16種のシーケンシングプライマーのセットは、共通の5’配列(16塩基)及び可変3’配列(8塩基)を含む。または、第2の64~256種のシーケンシングプライマーのセットは、共通の5’配列(8塩基)、中間の可変配列(8塩基、8~16種の変異体)、及び超可変3’配列(8塩基、64~256種の変異体)を含む。手法の一つは、スプリット&プール合成戦略を使用することである。例として、16種の変異体プライマーのファミリーの合成には、遺伝子座特異的3’領域を合成し、4つのアリコートに分割し、それぞれ4塩基を追加して、プールし、再び4アリコートに分割し、それぞれ4塩基を追加して、さらにプールし、最後に5’末端の16塩基の共通配列と合成することを含む。3’側の最初の4塩基がGTCA、ACTG、TGAC、及びCAGTであり、次の4塩基がGCTA、ATCG、TAGC、及びCGATであり、続いて5’側の16塩基があると考えられる。このように、16種のシーケンシングプライマーのセットを使用することで、各アンプリコンを一意にシーケンシングすると同時に、あるプライマーが不適合な相補体に結合することによるミスプライミングを最小限に抑えることができる。
【0235】
図39は、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である概略正面図である。この設計は、未知の病原体同定のための、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングの実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。図39では、注入試料は大きな六角形チャンバー116(下部、初期反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー116は、導管120によって六角形チャンバー122のセット(大トラフ124及びバッフル123を含む、一次PCR反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー122は、導管126によって細長い混合チャンバー128に流体接続され、混合チャンバーは、導管130によって、マイクロポアが含まれる細区画132のチャンバー(パネルの上部に4行のみを図示)に流体接続されている。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。カートリッジの製造時に、1つ以上のユニバーサルタグプライマーセットが行に予備充填され、そのうち1つのプライマーは固体支持体に固定され、他のプライマーは結合されるが、そのプライマーは高温で放出される。カートリッジの製造時に、マイクロウェルまたはマイクロポアの列へと至るチャンバーに、ユニバーサルタグ配列を5’末端にもつネステッドPCRプライマーセットが予備充填されている。図の左側にある灰色の円125は、例えば音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによってプライマーセットが送達またはプリントされる可能性のある位置を示している。プライマーを乾燥させて、カートリッジのカバー部分を取り付け、プライマーセットを適切な位置に密閉する。カートリッジの使用時には、カートリッジの最初のチャンバーからカートリッジへ、最終的に各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの列まで反応物が流体移動する。この例図では、3,072個に相当する48列及び64行に計画された細区画を4つずつ示し、各細区画に2,760個のマイクロポア、アレイ合計で8,478,720個のマイクロポアが含まれる。この例では、最初のマルチプレックスPCR増幅(またはRNA標的の逆転写PCR)を10サイクル行い、元の各標的の最大1,024コピーが初期反応チャンバーで産生される。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、最初のマルチプレックス反応物を一次PCR反応チャンバー(上記のネステッドPCRプライマーを予備充填)に分配する。この場合、各一次PCR反応チャンバー内の元の各病原体標的の平均分配数は20コピーである。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含むプライマーは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。ユニバーサルタグをもつ標的特異的プライマーを32個組または64個組のプライマーセットにして使用し、5サイクルのネステッドPCRを実行すると、一次PCR反応チャンバーあたり平均640コピーの各病原体特異的標的が産生される。UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、マイクロポア内の固定されたプライマーへのハイブリダイゼーションを促進する一本鎖テールをPCR産物の片側に形成する。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、各一次PCR反応チャンバーのネステッドPCR産物と混合し、混合チャンバーへ、さらに各列のマイクロポアへと分配する。各マイクロポア内で1つ以上の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。各行の各細区画のユニバーサルプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。標的特異的またはユニバーサルタグ特異的シーケンシングプライマーのいずれかを追加する。sequencing-by-synthesisを実行する。マイクロポア内のポアソン分布により標的配列を計数し、直接配列情報により変異病原体を特定する。
【0236】
図39のカートリッジ設計はまた、未知の病原体同定のためのマルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングを実施する別の実施形態にも使用することができる。本実施形態では、すべてのマイクロポアに、固定された単一のユニバーサルプライマーが予備充填され、マイクロポアは乾燥される。すべての細区画に同一のプライマーが入っているため、列を通して、または他の方法で追加することができる。この例図では、3,072個に相当する48列及び64行に計画された細区画を4つずつ示し、各細区画に2,760個のマイクロポア、アレイ合計で8,478,720個のマイクロポアが含まれる。この例では、最初のマルチプレックスPCR増幅(またはRNA標的の逆転写PCR)を10サイクル行い、元の各標的の最大1,024コピーが初期反応チャンバーで産生される。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、最初のマルチプレックス反応物を一次PCR反応チャンバー(上記のネステッドPCRプライマーを予備充填)に分配する。この場合、各一次PCR反応チャンバー内の元の各病原体標的の平均分配数は20コピーである。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含むプライマーは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。セットのうち1つのプライマーに8~12個の固有のタグ配列をもち、5’末端に共通配列をもつ標的特異的プライマーを使用して、5サイクルのネステッドPCRを実行すると、一次PCR反応チャンバーあたり平均640コピーの各病原体特異的標的が産生される。UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、マイクロポア内の固定されたプライマーへのハイブリダイゼーションを促進する一本鎖テールをPCR産物の片側に形成する。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、各一次PCR反応チャンバーのネステッドPCR産物と混合し、混合チャンバーへ、さらに各列のマイクロポアへと分配する。各マイクロポア内で1つ以上の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。各行の各細区画のユニバーサルプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。標的特異的プライマーか、または固有のタグ特異的部分をもつユニバーサルプライマーのいずれかをシーケンシングプライマーとして追加する。sequencing-by-synthesisを実行する。マイクロポア内のポアソン分布により標的配列を計数し、直接配列情報により変異病原体を特定する。
【0237】
2,304個に相当する48の二重列及び48の二重行の細区画を使用する代替的実施形態では、各細区画は11,040個のマイクロポアを含み、二重列あたり529,920個のマイクロポアを有する。最初に10サイクルのPCRで試料をマルチプレックス増幅すると、ウェルまたは初期反応チャンバー内に元の各病原体の最大1,024コピーが得られる。図50に示すように、例えば音響液滴射出を使用して、最初のマルチプレックス産物を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配し、一次PCR反応チャンバー内で遺伝子座特異的プライマー、緩衝液、及びポリメラーゼと混合する。各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーへの元の各病原体の平均分配数は20コピーである。32組のネステッドPCRを2~3サイクル実行すると、元の各病原体標的の最大80~160コピーが得られる。場合により、UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、マイクロポア内の固定されたプライマーへの産物のハイブリダイゼーションを改善する。各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーの産物を529,920個のマイクロポアに分配する。各マイクロポア内で複数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。sequencing-by-synthesisを実行する。マイクロポア内のポアソン分布により標的配列を計数し、直接配列情報により変異病原体を特定する。
【0238】
図40は、1つの標的鎖の変異をシーケンシング及び同定するためのプライマー設計の一実施形態を示す。本実施形態及び以下の実施形態では、元のゲノムセグメントに、例えば腫瘍特異的変異を含む、cfDNAのセグメント(約160bp)または断片化されたゲノムDNAのセグメント(約160bp)が含まれる(図40、工程A)。試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。低存在量の変異に関して、各変異断片が異なる一次PCR反応チャンバーに存在することが空間的分布により保証されることになる。したがって、2つ以上の一次PCR反応チャンバーに変異が存在する場合、それがポリメラーゼエラーではなく真の変異である可能性が高い。標的配列を増幅するため、遺伝子座特異的ネステッドプライマーのペアを準備する。プライマーペアはそれぞれ、(i)第1の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーと;(ii)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第2の遺伝子座特異的プライマーであって、第2の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、ならびに遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーとで構成される。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長に適した3’OHが解放される(図40、工程B)。熱安定性ポリメラーゼ、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用して、2サイクルまたは3サイクルのPCR増幅を実行する。この増幅サイクルにより、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、2つの遺伝子座特異的プライマー部分間の標的配列、内部断片識別子、及び第2の5’共通配列またはタグ配列の相補体が含まれる産物が産生される。産物中の元のプライマー及びプライマーの一部は、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)及び場合によりAPE1(ヒトアプリンエンドヌクレアーゼ;図40、工程C)を使用して破壊される。その結果、各二本鎖増幅産物の一方の末端部分が一本鎖になる。一変形例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している。(図40、工程D)。別の変形例では、第2のタグ配列を含むビオチン化プライマーを一本鎖領域にアニールする。鎖置換ポリメラーゼが伸長し、断片の全長二本鎖コピーを形成する。伸長したビオチン化プライマーと遊離したビオチン化プライマーの両方が、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに捕捉されてマイクロポアに分配されるか、またはストレプトアビジンでコーティングされたマイクロポアに直接捕捉される。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している(図示しないが、以下の図41と同様)。
【0239】
図41及び図42は、重複断片にわたる1つの標的鎖の変異をシーケンシング及び同定するためのプライマー設計の実施形態を示す。試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。低存在量の変異に関して、各変異断片が異なる一次PCR反応チャンバーに存在することが空間的分布により保証されることになる。重複する標的配列を増幅するため、重複領域(すなわち、がん特異的遺伝子の1つ以上のエクソン)にわたる遺伝子座特異的ネステッドプライマーのペアを準備する。プライマーペアはそれぞれ、(i)第1の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーと;(ii)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第2の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の共通配列またはタグ配列とわずかに異なる第2の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、ならびに遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーとで構成される。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長に適した3’OHが解放される(図41、工程B)。熱安定性ポリメラーゼ、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用して、2サイクルまたは3サイクルのPCR増幅を実行する。この増幅サイクルにより、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、2つの遺伝子座特異的プライマー部分間の標的配列、内部断片識別子、及び第2の5’共通配列またはタグ配列の相補体が含まれる、短い(プライマー二量体よりわずかに長い)産物及び長い産物(100塩基以上の標的配列を含む)両方の重複産物が産生される。産物中の元のプライマー及びプライマーの一部は、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)及び場合によりAPE1(ヒトアプリンエンドヌクレアーゼ;図41、工程C)を使用して破壊される。その結果、各二本鎖増幅産物の一方の末端部分が一本鎖になる。一変形例では、第2のタグ配列を含むビオチン化プライマーを一本鎖領域にアニールする。鎖置換ポリメラーゼが伸長し、断片の全長二本鎖コピーを形成する(図41、工程D)。伸長したビオチン化プライマーと遊離したビオチン化プライマーの両方が、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに捕捉されてマイクロポアに分配されるか、またはストレプトアビジンでコーティングされたマイクロポアに直接捕捉される。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、長い方の産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。短い産物はパンハンドルを形成するため、増幅されない。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している(図41、工程E)。図43の工程Aは、短い産物ではなく長い産物がどのように増幅されるかを詳細に示している。別の変形例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、長い方の産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。短い産物はパンハンドルを形成するため、増幅されない。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している。(図42、工程D)。図43の工程Bは、1つのプライマーを固定した場合に、短い産物ではなく長い産物がどのように増幅されるかを詳細に示している。
【0240】
図44及び図45は、重複断片にわたる1つの標的鎖の変異をシーケンシング及び同定するためのプライマー設計の一実施形態を示す。試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。低存在量の変異に関して、各変異断片が異なる一次PCR反応チャンバーに存在することが空間的分布により保証されることになる。重複する標的配列を増幅するため、重複領域(すなわち、がん特異的遺伝子の1つ以上のエクソン)にわたる遺伝子座特異的ネステッドプライマーのペアを準備する。プライマーペアはそれぞれ、(i)第1の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーと;(ii)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第2の遺伝子座特異的プライマーであって、第2の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、ならびに遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーとで構成される。プライマーのペアは、重複するセットが反対の向きになるように、すなわち同じタグ配列をもつプライマーからは短い産物(ほぼプライマー二量体程度の大きさ)が生じ、2つの異なるタグ配列をもつプライマーからは長い産物が生じるように設計されている。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長に適した3’OHが解放される(図44図45、工程B)。熱安定性ポリメラーゼ、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用して、2サイクルまたは3サイクルのPCR増幅を実行する。この増幅サイクルにより、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、2つの遺伝子座特異的プライマー部分間の標的配列、内部断片識別子、及び第2の5’共通配列またはタグ配列の相補体が含まれる、短い(プライマー二量体よりわずかに長く、同一のタグを含む)産物、及び100塩基以上の標的配列を含む長い産物の両方の重複産物が産生される。産物中の元のプライマー及びプライマーの一部は、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)及び場合によりAPE1(ヒトアプリンエンドヌクレアーゼ;図44図45、工程C)を使用して破壊される。その結果、各二本鎖増幅産物の一方の末端部分が一本鎖になる。一変形例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、長い方の産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。短い産物は、第2のタグ配列が欠落しているか(図44、工程D)、またはパンハンドルを形成しているため、増幅されず、さらに固体支持体に結合されない(図45、工程D)。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している。(図44及び図45、工程D)。別の変形例では、第2のタグ配列を含むビオチン化プライマーを一本鎖領域にアニールする。鎖置換ポリメラーゼが伸長し、断片の全長二本鎖コピーを形成する。伸長したビオチン化プライマーと遊離したビオチン化プライマーの両方が、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに捕捉されてマイクロポアに分配されるか、またはストレプトアビジンでコーティングされたマイクロポアに直接捕捉される。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、長い方の産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。短い産物は、第2のタグ配列が欠落しているか、またはパンハンドルを形成しているため、増幅されず、さらに固体支持体に結合されない。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している(図示しないが、図41と同様)。
【0241】
図46は、重複断片にわたる両方の標的鎖の変異をシーケンシング及び同定するためのプライマー設計の一実施形態を示す。試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。低存在量の変異に関して、各変異断片が異なる一次PCR反応チャンバーに存在することが空間的分布により保証されることになる。重複する標的配列を増幅するため、重複領域(すなわち、がん特異的遺伝子の1つ以上のエクソン)にわたる遺伝子座特異的ネステッドプライマーのペアを準備する。プライマーペアはそれぞれ、(i)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第1の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーと;(ii)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第2の遺伝子座特異的プライマーであって、同一またはわずかに異なる第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、ならびに遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーとで構成される。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長に適した3’OHが解放される(図46、工程B)。熱安定性ポリメラーゼ、好ましくはTaq DNAポリメラーゼを使用して、2サイクルまたは3サイクルのPCR増幅を実行する。この増幅サイクルにより、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、内部断片識別子、2つの遺伝子座特異的プライマー部分間の標的配列、別の内部断片識別子、及び第1の5’共通配列またはタグ配列と同一またはわずかに異なる相補体が含まれる、短い産物(ただし、上流プライマーからの伸長が、短い伸長産物と衝突することになるため、Taqポリメラーゼの5’->3’エキソヌクレアーゼ活性により大半が破壊される)、及び長い産物(100塩基以上の標的配列を含む)両方の重複産物が産生される。産物中の元のプライマー及びプライマーの一部は、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)及び場合によりAPE1(ヒトアプリンエンドヌクレアーゼ;図46、工程C)を使用して破壊される。その結果、各二本鎖増幅産物の両方の末端部分が一本鎖になる。一変形例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、長い方の産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンが含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している。(図46、工程E)。別の変形例では、第1のタグ配列を含むビオチン化プライマーを一本鎖領域にアニールする。鎖置換ポリメラーゼが伸長し、各断片の両鎖の全長二本鎖コピーを形成する。第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される第3の遺伝子座特異的ネステッドプライマーのセットを追加する。第3の遺伝子座特異的プライマーのセットは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用した1~2回のPCRサイクルに適する3’OHが解放される。伸長したビオチン化プライマーと遊離したビオチン化プライマーの両方が、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに捕捉されてマイクロポアに分配されるか、またはストレプトアビジンでコーティングされたマイクロポアに直接捕捉される。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、長い方の産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している。
【0242】
図47は、SNPをシーケンシングして同定し、両方の遺伝子座鎖のコピー数を計数するためのプライマー設計の一実施形態を示している。試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。低存在量の変異に関して、各変異断片が異なる一次PCR反応チャンバーに存在することが空間的分布により保証されることになる。SNPを含む標的配列を増幅するため、遺伝子座特異的プライマーのペアを準備する。プライマーペアはそれぞれ、(i)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第1の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーと;(ii)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第2の遺伝子座特異的プライマーであって、同一またはわずかに異なる第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、ならびに遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーとで構成される。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長に適した3’OHが解放される(図47、工程B)。熱安定性ポリメラーゼ、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用して、3サイクルのPCR増幅を実行する。このような増幅サイクルにより、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、内部断片識別子、2つの遺伝子座特異的プライマー部分間の標的配列、別の内部断片識別子、及び第1の5’共通配列またはタグ配列と同一またはわずかに異なる相補体が含まれる産物が産生される。産物中の元のプライマー及びプライマーの一部は、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)及び場合によりAPE1(ヒトアプリンエンドヌクレアーゼ;図47、工程C)を使用して破壊される。その結果、各二本鎖増幅産物の両方の末端部分が一本鎖になる。一変形例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している。(図47、工程D)。別の変形例では、第1のタグ配列を含むビオチン化プライマーを一本鎖領域にアニールする。鎖置換ポリメラーゼが伸長し、各断片の両鎖の全長二本鎖コピーを形成する。第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される第3の遺伝子座特異的ネステッドプライマーのセットを追加する。第3の遺伝子座特異的プライマーのセットは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用した1~2回のPCRサイクルに適する3’OHが解放される。伸長したビオチン化プライマーと遊離したビオチン化プライマーの両方が、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに捕捉されてマイクロポアに分配されるか、またはストレプトアビジンでコーティングされたマイクロポアに直接捕捉される。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している(図示しないが、図41と同様)。
【0243】
図48は、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である概略正面図である。この設計は、断片識別子PCR-シーケンシングを使用した、血漿中の低存在量の未知の変異の同定に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。図48では、注入試料は、導管120によって六角形チャンバーのセット122(大トラフ124及びバッフル123を含む、一次PCR反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバーは、導管126によって細長い混合チャンバー128に流体接続され、混合チャンバーは、導管130によって、マイクロポアの細区画232を含むチャンバー(パネルの上部に4行のみを図示)に流体接続されている。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。カートリッジの製造時に、固定された単一のユニバーサルプライマーがマイクロポアに予備充填され、マイクロポアは乾燥される。すべての細区画に同一のプライマーが入っているため、列を通して、または他の方法で追加することができる。カートリッジの使用時には、カートリッジへ、さらに最終的に各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの列まで反応物が流体移動する。この例図では、3,072個に相当する48列及び64行に計画された細区画を4つずつ示し、各細区画に2,760個のマイクロポア、アレイ合計で8,478,720個のマイクロポアが含まれる。この例では、初期血漿DNA(最高レベルである10,000ゲノム相当)が緩衝液、酵素、断片識別子プライマーと混合され、均等に分割され、菱形チャンバーのセットに流体移動し、一次PCR反応チャンバーに分配される。各標的の平均分配数は一次PCR反応チャンバーあたり200コピーであり、最大1つの変異がある。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含むプライマーは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、マイクロポア内の固定されたプライマーへのハイブリダイゼーションを促進する一本鎖テールをPCR産物の片側または両側に形成する。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、各一次PCR反応チャンバーのPCR産物と混合し、混合チャンバーへ、さらに各列のマイクロポアへと分配する。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各マイクロポア内で1つ以上の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。標的特異的プライマーか、または固有のタグ特異的部分をもつユニバーサルプライマーのいずれかをシーケンシングプライマーとして追加する。sequencing-by-synthesisを実行する。約80塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成し、両方の鎖を検証しながら、各変異を正確に計数する。一実施形態では、72個のシーケンシングプライマーを使用し、必要な場合には重複領域を含む、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方について、36個の標的領域をカバーする。必要に応じて、追加の72個のシーケンシングプライマーを使用することができる。別の実施形態では、カートリッジは、4ラウンドのシーケンシング=288プライマー、すなわち両方の鎖の144の標的領域をカバーして、各変異を正確に計数する余地をもつように設計される。別の実施形態では、元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。また、マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~12塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均72個の産物がシーケンシングされる。場合により、次のシーケンシングプライマーで次の72個の断片のシーケンシングを繰り返す。
【0244】
代替的実施形態では、2,304個に相当する48の二重列及び48の二重行の細区画であり、各細区画が11,040個のマイクロポアを含み、二重行あたり529,920個のマイクロポアを有する細区画を使用して、低存在量の変異を同定して計数する。図50に示すように、例えば音響液滴射出を使用して、初期試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配し、48個の一次PCR反応チャンバー内で遺伝子座特異的プライマー、緩衝液、及びポリメラーゼと混合する。血漿中の最高レベルのDNA=10,000ゲノム相当である。平均して、各標的は細区画あたり200コピーであり、最大1つの変異がある。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。UDG/APE1で処理し、529,920個のマイクロポアをもつ区分(列)に産物を分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の標的は区分(列)あたり約1200コピーを有し、変異が存在する場合、「ワトソン鎖」が約3コピーと「クリック鎖」が約3コピー存在するはずである。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各マイクロポア内で多数の産物をPCR増幅した後、固定されていない鎖を溶解させる。一実施形態では、256個のシーケンシングプライマーを追加し、必要な場合には重複領域を含む、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方について、128個の標的領域をカバーする。約80塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成する。529,920個のマイクロポアのうち約307,200個のマイクロポアで配列情報が生成され、これらの約75%で、シーケンシングラウンドあたり1つのPCR産物からのリードが得られることになる。必要とされる標的領域をシーケンシングするために、さらに256個のシーケンシングプライマーを必要な頻度で追加する。一実施形態では、元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。別の実施形態では、マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~16塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均256個の産物がシーケンシングされる。場合により、次のシーケンシングプライマーで次の256個の断片のシーケンシングを繰り返す。
【0245】
図48に示す設計は、断片識別子PCR-シーケンシングを使用した、血漿中のトリソミーの非侵襲的出生前検査(NIPT)にも適している。基本的な考え方は、各鎖のコピーが存在する数を計数することである。一次PCR反応チャンバーのそれぞれにおいて、ワトソン鎖がクリック鎖と一致する必要があるため(各鎖の一方と所与の断片から生成されるため)、これは鎖の欠失またはその他のエラーの内部標準となる。2番(対照)、13番、18番、21番、X、及びY染色体の複数の固有の遺伝子座を使用して、コピー数を確定し、ならびにトリソミーまたは他の染色体コピーの変化を識別する。
【0246】
カートリッジの製造時に、固定された単一のユニバーサルプライマーがマイクロポアに予備充填され、マイクロポアは乾燥される。すべての細区画に同一のプライマーが入っているため、列を通して、または他の方法で追加することができる。カートリッジの使用時には、カートリッジへ、さらに最終的に各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの列まで反応物が流体移動する。この例図では、3,072個に相当する48列64行に計画された細区画を4つずつ示し、各細区画に2,760個のマイクロポア、アレイ合計で8,478,720個のマイクロポアが含まれる。この例では、初期血漿DNA(2,000ゲノム相当に調整)が緩衝液、酵素、断片識別子プライマーと混合され、均等に分割され、菱形チャンバーのセットに流体移動し、48個の一次PCR反応チャンバーに分配される。各遺伝子座の平均分配数は一次PCR反応チャンバーあたり40コピーであり、異なるSNPがある。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含むプライマーは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、マイクロポア内の固定されたプライマーへのハイブリダイゼーションを促進する一本鎖テールをPCR産物の両側に形成する。必要に応じて、新しいPCR試薬を追加し、各一次PCR反応チャンバーのPCR産物と混合し、混合チャンバーへ、さらに各列のマイクロポアへと分配する。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各マイクロポア内で1つ以上の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。標的特異的プライマーか、または固有のタグ特異的部分をもつユニバーサルプライマーのいずれかをシーケンシングプライマーとして追加する。sequencing-by-synthesisを実行する。約50塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成し、両方の鎖を検証しながら、各SNP及び染色体コピー数を正確に計数する。
【0247】
代替的実施形態では、NIPTの染色体コピーの変化を同定するために、2,304個に相当する48の二重列及び48の二重行であり、各細区画が11,040個のマイクロポアを含み、二重行あたり529,920個のマイクロポアを有する細区画を使用する。初期試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。血漿/試料中のDNAを2,000ゲノム相当に調整する。遺伝子座特異的プライマー、緩衝液、及びポリメラーゼと混合した初期試料を、図50に示すように、例えば音響液滴射出を使用して、48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。平均して、各遺伝子座は一次PCR反応チャンバーあたり40コピーであり、異なるSNPがある。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーの産物を529,920個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の遺伝子座は細区画あたり約240コピーを有することになる(ワトソン鎖で120とクリック鎖で120)。遺伝子座特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各ウェル内で多数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。一実施形態では、2,208個のシーケンシングプライマー(または1つのプライマー、以下を参照)を追加し、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方について、1,104個の遺伝子座領域をカバーする。約50塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成する。必要に応じて、追加の2,208個のシーケンシングプライマー(または1つのプライマー、以下を参照)を追加する。上記の計算は、平均して約50%のマイクロポアに充填されることを基準とする。(ポアソン分布:平均ラムダ=0.4;初期比率x=0)。そのような条件下では、マイクロポアの約60%は何もシーケンシングリードが得られず、約30%は固有(すなわち単一リード)であり、約7.5%で二重リードが得られ、及び約1.3%で三重リードが得られることになる。実用レベルでは、SNPを区別するには単一リードが明確である。遺伝子座の決定には二重リードを使用できるが、SNPを区別するには二重リードを使用すべきではない。単一リードから二重リードまでで、90%を超える鎖がカバーされ、またその分布は本質的にランダムであるため、初期試料に存在する各鎖の正確性の高い計数がこの手法で可能になるはずである。一実施形態では、元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。別の実施形態では、マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~16塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均368個の産物がシーケンシングされる。次のシーケンシングプライマーで次の1,104個の断片のシーケンシングを繰り返す。
【0248】
臨床試料中のコピー数を正確に計数する能力には、補足的な用途もある。NIPTの分野では、新規デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を検出する機会が生じることがある。この疾患は、DMD遺伝子の一部の欠失により散発的に発生する場合がある。DMDにわたるSNPと全エクソンの両方が網羅されるため、コピー損失の正確な評価が可能になる。
【0249】
コピー数とSNPの両方を正確に計数する能力の別の実施形態は、最初は循環腫瘍細胞(CTC)においてだが、最終的にはcfDNAにおいても、LOHまたは遺伝子増幅を同定するためのものである。その患者の正常細胞の二倍体ゲノムのハプロタイプを決定することによって、この手法は容易になるが、これはバフィーコート画分(多形核白血球、PMN)から単離されたDNAからの標準的手法によって行うことができる。統計的有意性を達成するには十分なDNAが必要となるが、簡潔には、所与の染色体アーム(すなわち8p、がんでは欠失することが多い;または20q、がんで増加することが多い)で全SNPの一貫した過少計数または過剰計数がある場合、それは臨床試料におけるそのアームの減少または増加それぞれを示唆することになる。この手法は、血漿試料中の腫瘍由来cfDNAの比率に応じた、がんの検出において(すなわち、cfDNAにおいてLOHの同定を試みる場合に)十分な感度をもつことができ、治療決定の指針、または療法の有効性の監視(すなわち、CTCからコピーの変化を直接評価する場合)に役立つ場合がある。
【0250】
図49A~49Bは、断片識別子PCR-シーケンシングを使用した、血漿中の低存在量の未知の変異の同定;マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングを使用した、未知の病原体の同定;及び断片識別子PCR-シーケンシングを使用した、血漿中の低存在量のメチル化及び未知の変異の同定のための、カートリッジ104及びバルブ構成の概略側面図を示す。図49Aは、直径5ミクロンのマイクロポア202のアレイである細区画へのマイクロ流路の流体接続を示す概略正面図である。マイクロポアのアレイの下部には別の層238がある。簡潔にするため、図には、1つの初期マルチプレックス反応チャンバー110、(トラフ118を備える)16個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー116、(トラフ124及びバッフル123を備える)16個の二次マルチプレックス反応チャンバー122、16個の細い混合チャンバー128、ならびに16列で数百万個のマイクロポアまたはマイクロウェルからなる細区画232を含む1つの主要チャンバーを例示している。示されるように、これらは導管114、120、126、及び130によって、共に結合されている。流体は、注入口102からカートリッジ104に入り、出口108から出る。ただし、チャンバーの他の構成も使用することができ、例えば、図48に記載される病原体検出用のマルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングには、二次マルチプレックス反応チャンバーは必要としない。図49Bは、数百万のミクロポア202を含むマイクロポアプレートを使用した、断片識別子PCR-シーケンシングの流体システムを示す。マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面244(プレートの上部、プレートの左側に図示)は、バルブ1、2、及び3と連通しており、対して第2の側面246(プレートの下部、プレートの右側に図示)は、バルブ4、5、及び6と連通している。バルブ1は、必要に応じて、初期反応チャンバー110、48個の一次PCR反応チャンバー116、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、溶解/プロテアーゼ緩衝液、酵素、洗浄緩衝液、溶出緩衝液、緩衝液、EtOH、軽油、及び重油を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ3から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第1の側、他のチャンバー、一次PCR反応チャンバー116、及び初期反応チャンバー110を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。バルブ1は、バルブ2を選択することもできる。バルブ2は、初期マルチプレックス反応チャンバー、PCR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、断片ID PCRプライマー、マスターPCRミックス、マスターUDG/APE1緩衝液、ネステッド&ユニバーサルプライマー、洗浄液、EtOH、及び空気を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。バルブ5は、マイクロポアプレートの第2の側にわたって、シーケンシングプライマーセット1、2、及び3、緩衝液、ETOH、空気、軽油、重油、ならびに廃棄物を分注し、バルブ6を経由して廃棄する。バルブ5は、バルブ4を選択することもできる。バルブ4は、sequencing-by-synthesis用のポリメラーゼ及び適切な蛍光標識ヌクレオチドを含む伸長ミックス、すすぎ緩衝液、イメージング緩衝液、切断緩衝液、及び洗浄液を分注する。さらに、バルブ1は、バルブ6から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第2の側を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。
【0251】
(表6)断片識別子PCR-シーケンシング用の試薬構成(変異)
【0252】
図49Bは、初期マルチプレックス反応チャンバー110、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー116、24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー122、ならびに24~48列で数千個のマイクロポアまたはマイクロウェルの細区画232を含む主要チャンバーに個別に加熱/冷却を施せるように設計されるいくつかの発熱体を示す。背面プレート206(前面プレート204の反対側)、またはマイクロポアもしくはマイクロウェルチャンバーの1つ以上の平面(複数可)、ならびに反応チャンバーを、これらの発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。図49に示すように、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー116及び24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー122の裏側にある2つの発熱体は、すべての一次チャンバーをすべての二次チャンバーとは独立して制御する2つの長方形(水平)ストリップとして設計される。代替構成を使用することもできる。例えば、初期反応チャンバー110、一次チャンバー116、二次チャンバー118、混合チャンバー120、ならびに数千のマイクロポアまたはマイクロウェルの細区画232を含む主要チャンバーのいずれかに、一次チャンバーごとに独立した発熱体がある、追加の行または発熱体を有する追加のチャンバー行(すなわち一次、二次、三次など)がある、及び/または行もしくは列とは異なる幾何形態で配置された24~48個の空間多重化を有する。代替構成も使用することができ、例えば最初のサイクルを制限したPCRを、(i)野生型DNAの伸長を抑制するブロッキングプライマーの有無を問わず、片側のマルチプレックスプライマーを線形伸長する、及び(ii)相補的プライマーを追加して、最初の伸長産物を1または2サイクルPCR増幅するという2つの工程に分割してもよい。別の例では、それぞれが個別の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー116、個別の二次マルチプレックス反応チャンバー122、個別の混合チャンバー128、及び数千~数百万のマイクロポアまたはマイクロウェルの細区画232を含む個別のチャンバーと流体接続されている、24個の個々の入力ウェルがプレートに含まれていてもよい。試料は、任意の初期マルチプレックス反応を受けた後、音響液滴射出または他の流体工学手段によって24個の個別の入力ウェルに注入されてもよい。
【0253】
図49のカートリッジ及びバルブ構成は、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングを使用した未知の病原体の同定に使用することもできる。この図は、数百万のマイクロポアを含むマイクロポアプレートを使用した、マルチプレックスPCR-ネステッドPCR-シーケンシングの流体システムを示す。マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面(プレート244の上部、プレートの左側に図示)は、バルブ1、2、及び3と連通しており、対して第2の側面(プレート246の下部、プレートの右側に図示)は、バルブ4、5、及び6と連通している。バルブ1は、必要に応じて、初期マルチプレックス反応チャンバー110、48個のPCR反応チャンバー116、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、溶解/プロテアーゼ緩衝液、酵素、洗浄緩衝液、溶出緩衝液、緩衝液、EtOH、軽油、及び重油を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ3から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第1の側、他のチャンバー、一次PCR反応チャンバー116、及び初期反応チャンバー110を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。バルブ1は、バルブ2を選択することもできる。バルブ2は、初期反応チャンバー110、一次PCR反応チャンバー116、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、初期マルチプレックスPCRプライマー、マスターPCRミックス、初期逆転写プライマー、マスター逆転写ミックス、マスターUDG/APE1緩衝液、ネステッド&ユニバーサルプライマー、洗浄液、EtOH、及び空気を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。バルブ5は、マイクロポアプレートの第2の側にわたって、シーケンシングプライマーセット1、2、及び3、緩衝液、ETOH、空気、軽油、重油、ならびに廃棄物を分注し、バルブ6を経由して廃棄する。バルブ5は、バルブ4を選択することもできる。バルブ4は、sequencing-by-synthesis用のポリメラーゼ及び適切な蛍光標識ヌクレオチドを含む伸長ミックス、すすぎ緩衝液、イメージング緩衝液、切断緩衝液、及び洗浄液を分注する。さらに、バルブ1は、バルブ6から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第2の側を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。
【0254】
(表7)PCR-シーケンシング用の試薬構成(未知の病原体)
【0255】
図50は、断片識別子PCR-シーケンシングを使用して、血漿中の低存在量の未知の変異を同定するための、注入口402及び出口408を備える代替カートリッジ404ならびにバルブ構成の概略図を示す。パネルAは、直径5ミクロンのマイクロポアのアレイへのマイクロ流路の流体接続を示す概略正面図を示す。この構成は、上記の代替的実施形態、すなわち2,304個に相当する48の二重列及び48の二重行であり、各細区画が11,040個のマイクロポアを含み、二重行あたり529,920個のマイクロポアを有する細区画を使用する場合のものである。これらの実施形態では、初期反応を個々のウェルまたは反応チャンバー452で実行し、その後、導管455経由で音響液滴射出を使用して、適切な試薬、酵素、緩衝液、標的、及び/または前増幅した標的を、マイクロポアを含む列を有する入力チャンバー及び細区画432へと至る開口部456に導管454経由で流入させる。その後、プレートは4つのバルブに流体連結される(パネルC)。細区画432を出た液体は、導管454から、チャンバー467、及び導管457を通って、出口405に至る。マイクロポアプレートは、流路240及び242経由で孔の両側から流体連通可能である。第1の側面206(プレートの上部に図示)は、バルブ1及び3と連通しており、対して第2の側面204(プレートの下部に図示)は、バルブ2及び4と連通している。バルブ1は、sequencing-by-synthesis用のポリメラーゼ及び適切な蛍光標識ヌクレオチドを含む伸長ミックス、すすぎ緩衝液、イメージング緩衝液、切断緩衝液、洗浄液、軽油、及びETOHを分注する。バルブ2は、洗浄液、すすぎ緩衝液、切断緩衝液、ETOH、重油、及び空気を分注する。さらに、バルブ1は、バルブ4から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第2の側を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。
【0256】
図51は、1つの標的鎖のメチル化をシーケンシング及び同定するためのプライマー設計の一実施形態を示す。初期反応チャンバー内で、cfDNAをBsh1236Iで処理し(CG^CG)、非メチル化DNAを完全に消化する。バイサルファイトで処理し、Cを5meCではなくdUに変換し、鎖を非相補的にする。試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。低存在量のメチル化に関して、各メチル化断片が異なる一次PCR反応チャンバーに存在することが空間的分布により保証されることになる。したがって、2つ以上の一次PCR反応チャンバーにメチル化が存在する場合、それが不完全な切断またはバイサルファイト変換によるものではなく真のメチル化である可能性が高い。標的配列を増幅するため、遺伝子座特異的ネステッドプライマーのペアを準備する。プライマーペアはそれぞれ、(i)第1の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーと;(ii)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第2の遺伝子座特異的プライマーであって、第2の5’共通配列部分またはタグ配列部分、断片識別子配列、ならびに遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーとで構成される。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長に適した3’OHが解放される(図51、工程B)。熱安定性ポリメラーゼ、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用して、2サイクルまたは3サイクルのPCR増幅を実行する。この増幅サイクルにより、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、2つの遺伝子座特異的プライマー部分間の標的配列、内部断片識別子、及び第2の5’共通配列またはタグ配列の相補体が含まれる産物が産生される。産物中の元のバイサルファイト変換されたDNA、プライマー、及びプライマーの一部は、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)及び場合によりAPE1(ヒトアプリンエンドヌクレアーゼ;図51、工程C)を使用して破壊される。その結果、各二本鎖増幅産物の一方の末端部分が一本鎖になる。一変形例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンが含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している(図51、工程D)。別の変形例では、第2のタグ配列を含むビオチン化プライマーを一本鎖領域にアニールする。鎖置換ポリメラーゼが伸長し、断片の全長二本鎖コピーを形成する。伸長したビオチン化プライマーと遊離したビオチン化プライマーの両方が、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに捕捉されてマイクロポアに分配されるか、またはストレプトアビジンでコーティングされたマイクロポアに直接捕捉される。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンがマイクロポアに含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している(図示しないが、図41と同様)。
【0257】
図52は、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である概略正面図である。この設計は、断片識別子PCR-シーケンシングを使用した、血漿中の低存在量のメチル化及び未知の変異の同定に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。図52では、注入試料は大きな六角形チャンバー110(下部、初期反応チャンバー)に注入口112経由で流体接続され、六角形チャンバー110は、導管114によって第1の六角形チャンバーのセット116(小トラフ118を含む、一次PCR反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー116は、導管120によって第2の六角形チャンバーのセット122(大トラフ124及びバッフル123を含む、二次反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー122は、導管126によって細長い混合チャンバー128に流体接続され、混合チャンバーは、導管130によって、マイクロポアの細区画232を含むチャンバー(パネルの上部に4行のみを図示)に流体接続されている。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。カートリッジの製造時に、固定された単一のユニバーサルプライマーがマイクロポアに予備充填され、マイクロポアは乾燥される。すべての細区画に同一のプライマーが入っているため、列を通して、または他の方法で追加することができる。カートリッジの使用時には、カートリッジへ、さらに最終的に各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの列まで反応物が流体移動する。この例図では、3,072個に相当する48列及び64行に計画された細区画を4つずつ示し、各細区画に2,760個のマイクロポア、アレイ合計で8,478,720個のマイクロポアが含まれる。この例では、初期血漿DNA(最高レベルである10,000ゲノム相当)は半分に分割され、第2の半量は一時的に保存される。第1の半量は緩衝液、酵素、断片識別子プライマーと混合され、均等に分割され、第1の菱形チャンバーのセットに流体移動し、48個の一次PCR反応チャンバーに分配される。各標的の平均分配数は一次PCR反応チャンバーあたり200コピーであり、最大1つの変異がある。場合により、RNA塩基及び3’ブロッキング基を含むプライマーは、正しい標的に結合した場合にのみ、RNaseH2によりブロックが解除されるため、追加の特異性が提供され、偽産物が回避される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、マイクロポア内の固定されたプライマーへのハイブリダイゼーションを促進する一本鎖テールをPCR産物の片側または両側に形成する。産物は二次反応チャンバーに流体移動し、初期のチャンバーは排出して洗浄される。第2の半量の試料は初期反応チャンバー内でBsh1236Iにより消化される。消化したDNAをバイサルファイトで処理し、DNA鎖を再精製する。バイサルファイト処理したDNAをプライマー、試薬、及びポリメラーゼと混合し、第1の48個の一次PCR反応チャンバーのセットに分配する。制限エンドヌクレアーゼ切断後の血漿中の最高レベルのDNAは、約200ゲノム相当である。平均して、エンドヌクレアーゼ処理後、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり4コピーであり、最大1つのメチル化がある。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。元のメチル化DNAのトップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、一本鎖テールをPCR産物の片側または両側に形成する。このようなメチル化特異的一次PCR産物は、二次反応チャンバー内で先の変異特異的産物と混合された後、長い(細い)混合チャンバーへと移動されると同時に、新鮮な緩衝液、プライマー、及びポリメラーゼと混合された後、最終的に各列のマイクロポアを含むチャンバーに産物が分配される。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各マイクロポア内で1つ以上の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。標的特異的プライマーか、または固有のタグ特異的部分をもつユニバーサルプライマーのいずれかをシーケンシングプライマーとして追加する。sequencing-by-synthesisを実行する。約80塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成し、両方の鎖を検証しながら、各変異を正確に計数する。一実施形態では、72個のシーケンシングプライマーを使用して36個の標的領域をカバーし、必要な場合には重複領域を含む、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方において変異を同定及び検証する。必要に応じて、追加の72個のシーケンシングプライマーを使用することができる。別の実施形態では、カートリッジは、4ラウンドのシーケンシング=288プライマー、すなわち両方の鎖の144の標的領域をカバーして、各変異を正確に計数する余地をもつように設計される。別の実施形態では、元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。また、マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~12塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均72個の産物がシーケンシングされる。場合により、次のシーケンシングプライマーで次の72個の断片のシーケンシングを繰り返す。一実施形態では、潜在的変異が含まれる領域と同じラウンドでメチル化領域をシーケンシングする。別の実施形態では、1回の独立したシーケンシングランでメチル化領域をカバーしており、すべてのメチル化領域を正確に計数して、理論上、2,760のメチル化領域をカバーすることができる。
【0258】
代替的実施形態では、2,304個に相当する48の二重列及び48の二重行の細区画であり、各細区画が11,040個のマイクロポアを含み、二重行あたり529,920個のマイクロポアを有する細区画を使用して、低存在量のメチル化及び変異を同定して計数する。初期血漿試料を半分に分割した後、図50に示すように、例えば音響液滴射出を使用して、半量を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配し、48個の細区画内の遺伝子座特異的プライマー、緩衝液、及びポリメラーゼと混合する。血漿中の最高レベルのDNA=10,000ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり200コピーであり、最大1つの変異がある。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。UDG/APE1で処理して、産物からユニバーサルプライマー配列を除去する。第2の半量の試料をウェルまたは初期反応チャンバー内で、Bsh1236Iで消化する。消化したDNAをバイサルファイトで処理し、DNA鎖を再精製する。バイサルファイト処理したDNAをプライマー、試薬、及びポリメラーゼと混合し、48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。制限エンドヌクレアーゼ切断後の血漿中の最高レベルのDNAは、約200ゲノム相当である。平均して、エンドヌクレアーゼ処理後、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり4コピーであり、最大1つのメチル化がある。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。元のメチル化DNAのトップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。UDG/APE1で処理して、産物からユニバーサルプライマー配列を除去する。各一次PCR反応チャンバーからのメチル化及び変異標的産物を混合し、529,920個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の変異標的は区分(列)あたり約1200コピーを有し、変異が存在する場合、「ワトソン鎖」が約3コピーと「クリック鎖」が約3コピー存在するはずである。75%が捕捉されると想定すると、所与のメチル化標的は区分(列)あたり約16コピーを有し、メチル化領域が存在する場合、「ワトソン鎖」が約3コピーと「クリック鎖」が約3コピー存在するはずである。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各マイクロポア内で多数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。一実施形態では、256個のシーケンシングプライマーを追加し、必要な場合には重複領域を含む、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方について、128個の標的領域をカバーする。約80塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成する。529,920個のマイクロポアのうち約307,200個のマイクロポアで配列情報が生成され、これらの約75%で、シーケンシングラウンドあたり1つのPCR産物からのリードが得られることになる。必要とする数の標的領域をシーケンシングするために、さらに256個のシーケンシングプライマーを必要な頻度で追加する。一実施形態では、元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。別の実施形態では、マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~16塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均256個の産物がシーケンシングされる。場合により、次のシーケンシングプライマーで次の256個の断片のシーケンシングを繰り返す。一実施形態では、潜在的変異が含まれる領域と同じラウンドでメチル化領域をシーケンシングする。別の実施形態では、1回の独立したシーケンシングランでメチル化領域をカバーしており、すべてのメチル化領域を正確に計数して、理論上、19,200のメチル化領域をカバーすることができる。したがって、メチル化領域だけに対応するマスターの共通配列を使用すれば、この単一のプライマーによって、1回のランですべてのメチル化領域をカバーすることができる。
【0259】
図49のカートリッジ及びバルブ構成は、断片識別子PCR-シーケンシングを使用した、血漿中の低存在量のメチル化及び未知の変異の同定のために使用することができる。この図は、数百万のマイクロポアを含むマイクロポアプレートを使用した、断片識別子PCR-シーケンシングの流体システムを示す。マイクロポアプレートは孔の両側から流体連通可能である。第1の側面(プレートの上部、プレートの左側に図示)は、バルブ1、2、及び3と連通しており、対して第2の側面(プレートの下部、プレートの右側に図示)は、バルブ4、5、及び6と連通している。バルブ1は、必要に応じて、初期反応チャンバー、48個の一次PCR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、溶解/プロテアーゼ緩衝液、酵素、洗浄緩衝液、溶出緩衝液、緩衝液、EtOH、軽油、及び重油を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。さらに、バルブ1は、バルブ3から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第1の側、他のチャンバー、一次PCR反応チャンバー、及び初期反応チャンバーを空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。バルブ1は、バルブ2を選択することもできる。バルブ2は、初期マルチプレックス反応チャンバー、PCR反応チャンバー、及びマイクロポアプレートの第1の側にわたる追加チャンバーを通じて、断片ID PCRプライマー、マスターPCRミックス、マスターUDG/APE1緩衝液、ネステッド&ユニバーサルプライマー1、Bsh1236I、バイサルファイト、断片ID PCRプライマー2、ネステッド&ユニバーサルプライマー2、洗浄液、EtOH、及び空気を分注し、バルブ3を経由して廃棄する。バルブ5は、マイクロポアプレートの第2の側にわたって、シーケンシングプライマーセット1、2、及び3、緩衝液、ETOH、空気、軽油、重油、ならびに廃棄物を分注し、バルブ6を経由して廃棄する。バルブ5は、バルブ4を選択することもできる。バルブ4は、sequencing-by-synthesis用のポリメラーゼ及び適切な蛍光標識ヌクレオチドを含む伸長ミックス、すすぎ緩衝液、イメージング緩衝液、切断緩衝液、及び洗浄液を分注する。さらに、バルブ1は、バルブ6から空気を逆方向に導入することにより、マイクロポアプレートの第2の側を空にするために使用できる廃棄口を選択することができる。
【0260】
(表8)断片識別子PCR-シーケンシング用の試薬構成(変異及びメチル化)
【0261】
図49Bは、初期マルチプレックス反応チャンバー110、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー116、24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー122、ならびに24~48列で数千個のマイクロポアまたはマイクロウェルの細区画232を含む主要チャンバーに個別に加熱/冷却を施せるように設計されるいくつかの発熱体を示す。背面プレート、またはマイクロポアもしくはマイクロウェルチャンバーの1つ以上の平面(複数可)、ならびに反応チャンバーを、これらの発熱体に押し付けることで、温度制御、加熱、及び/または熱サイクルが可能になる。図49に示すように、24~48個の一次マルチプレックスPCR反応チャンバー116及び24~48個の二次マルチプレックス反応チャンバー122の裏側にある2つの発熱体は、すべての一次チャンバーをすべての二次チャンバーとは独立して制御する2つの長方形(水平)ストリップとして設計される。例えば、初期マルチプレックス反応チャンバー110、一次チャンバー116、二次チャンバー122、混合チャンバー128、ならびに数千のマイクロポアまたはマイクロウェルの区画232を含む主要チャンバーのいずれかに、一次チャンバーごとに独立した発熱体がある代替構成、追加の行または発熱体を有する追加のチャンバー行(すなわち一次、二次、三次など)がある代替構成、及び/または行もしくは列とは異なる幾何形態で配置された24~48個の空間多重化を有する代替構成も使用することができる。代替構成も使用することができ、例えば、Bsh1236I選択プロセスの代わりに、メチル化DNAにメチル特異的結合タンパク質または抗体を使用するために、メチル化DNAを濃縮する。この工程は、カートリッジ内で行うことも、またはメチル濃縮されたDNAをカートリッジに入れる前に行うこともできる。バイサルファイト処理後の最初のサイクルを制限したマルチプレックスPCRは、(i)非メチル化DNADNAの伸長を抑制するブロッキングプライマーの有無を問わず、片側のマルチプレックスプライマーを線形伸長する、及び(ii)相補的プライマーを追加して、最初の伸長産物を1または2サイクルPCR増幅するという2つの工程に分割してもよい。
【0262】
図53は、低存在量及び中存在量のlncRNA、mRNA、及びスプライス変異体をシーケンシングするためのプライマー設計の一実施形態を示す。逆転写酵素を使用して、初期反応チャンバー内で3’転写産物特異的プライマーによりcDNAコピーを作製する(図53、工程A)。試料を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。転写産物配列を増幅するため、転写産物特異的ネステッドプライマーのペアを準備する。プライマーペアはそれぞれ、(i)第1の遺伝子座特異的プライマーであって、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーと;(ii)プライマー配列全体に2つ以上のdU塩基を有する第2の遺伝子座特異的プライマーであって、第2の5’共通配列部分またはタグ配列部分、転写産物識別子配列、ならびに遺伝子座特異的3’部分、3’末端のリボヌクレオチドなどの切断可能な塩基及びブロッキング基で構成される上記のプライマーとで構成される。遺伝子座特異的プライマーは、cDNAまたは相補体に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除され、ポリメラーゼ介在性の伸長に適した3’OHが解放される(図53、工程B)。熱安定性ポリメラーゼ、好ましくは鎖置換ポリメラーゼを使用して、2サイクルまたは3サイクルのPCR増幅を実行する。この増幅サイクルにより、第1の5’共通配列部分またはタグ配列部分、2つの遺伝子座特異的プライマー部分間の転写産物配列、内部転写産物識別子、及び第2の5’共通配列またはタグ配列の相補体が含まれる産物が産生される。産物中の元のプライマー及びプライマーの一部は、UDG(ウラシルDNAグリコシラーゼ)及び場合によりAPE1(ヒトアプリンエンドヌクレアーゼ;図53、工程C)を使用して破壊される。その結果、各二本鎖増幅産物の一方の末端部分が一本鎖になる。一変形例では、固定された第2のタグ配列プライマーを含むマイクロポアに産物を、またはマイクロポアにビーズを分配する。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のウェルには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、そのポアに異なる領域からの複数のクローンアンプリコンが含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している(図53、工程D)。別の変形例では、第2のタグ配列を含むビオチン化プライマーを一本鎖領域にアニールする。鎖置換ポリメラーゼが伸長し、断片の全長二本鎖コピーを形成する。伸長したビオチン化プライマーと遊離したビオチン化プライマーの両方が、ストレプトアビジンでコーティングされたビーズに捕捉されてマイクロポアに分配されるか、またはストレプトアビジンでコーティングされたマイクロポアに直接捕捉される。第1及び第2のタグプライマーの両方が存在する場合、産物はマイクロポア内でPCR増幅される。その結果、所与のマイクロポアには一般に、所与の領域のゼロまたは1つのクローン増幅物が含まれるが、異なる領域からの複数のクローンアンプリコンが含まれる場合もある。変性、及び未結合断片の除去後に残存する係留された一本鎖標的DNAは、プライマー誘導シーケンシングに適している(図示しないが、図41と同様)。
【0263】
図54は、マイクロウェルまたはマイクロポアを含むチャンバーに液体を流体移動させることを可能にするプレチャンバー充填の例示的な設計の一部である概略正面図である。この設計は、希少及び過剰発現両方のlncRNA、mRNA、スプライス変異体、または遺伝子融合体を計数するためのマルチプレックスRT-PCR-ネステッドPCR-UniTaq検出の実行に適したチャンバー構造とマイクロウェルまたはマイクロポアを示している。(あるいは、標的特異的Taqman(商標)プローブを用いた、マルチプレックスRT-PCR-ネステッドPCR-リアルタイムPCR)。注入試料は注入口12から大きな六角形チャンバー10(下部、初期反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー10は、導管14によって、第1の六角形チャンバーのセット16(8個おきに、それぞれ大トラフ18c、中トラフ18b、及び小トラフ18aを含む(図54には大トラフ18aを含むものを示す)、一次PCR反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー16は、導管20によって、第2の六角形チャンバーのセット22(2個おきに、それぞれ大トラフ24a及び小トラフ24bを含む、二次反応チャンバー)に流体接続され、六角形チャンバー22は、導管26によって細長い混合チャンバー28に流体接続され、混合チャンバーは、導管30によって、マイクロウェルまたはマイクロポアの細区画32が含まれるチャンバー(パネルの上部に4行のみを図示)に流体接続されている。図は縮尺通りではなく、例示を目的とする。カートリッジの製造時に、1~4種のUniTaqプライマーセット(または代わりに、標的特異的なTaqman(商標)プローブを備えた1~4種のユニバーサルタグプライマー)を行に予備充填する。カートリッジの製造時に、マイクロウェルまたはマイクロポアの列へと至るチャンバーに、UniTaqまたはユニバーサルタグ配列のいずれかを5’末端にもつネステッドPCRプライマーセットが予備充填されている。図の左側にある灰色の円17は、例えば音響液滴射出、毛細管、インクジェット、またはクイル式プリンティングによってプライマーセットを送達またはプリントすることが可能な位置を示している。プライマーを乾燥させて、カートリッジのカバー部分を取り付け、プローブセットを適切な位置に密閉する。カートリッジの使用時には、カートリッジの最初のチャンバーからカートリッジへ、最終的に各列が隣接する列から隔てられたマイクロウェルまたはマイクロポアの列まで反応物が流体移動する。この例図では、3,072個に相当する計画された48列4つ、64行8つの細区画を示し、各細区画に2,760個のマイクロポア、アレイ合計で8,478,720個のマイクロポアが含まれる。この例では、最初のマルチプレックス逆転写PCRを9サイクル行い、元の各転写産物の最大512コピーが初期反応チャンバーで産生される。最初のマルチプレックス産物を一次PCR反応チャンバーに分配する。この場合、各一次PCR反応チャンバーへの元の各転写産物の平均分配数は20コピーである。UniTaqまたはユニバーサルタグをもつ標的特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、10サイクルのネステッドPCRを実行する。各一次PCR反応チャンバーは、排出後も一定比率の液体量を保持するように設計されている。3サイクルの充填と排出を実行して、産物を別々に希釈する。各一次PCR反応チャンバーからの産物を、2つの二次反応チャンバーに希釈する。各二次反応チャンバーは、排出後も一定比率の液体量を保持するように設計されている。2サイクルの充填と排出を実行して、産物を別々に希釈する。ネステッドPCR産物を混合チャンバーへ、さらに各列のマイクロポアへと分配する。各行のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。マイクロポア内のポアソン分布により、低コピー、中コピー、及び高コピーのlncRNA、mRNA、スプライス変異体、または遺伝子融合体を計数する。
【実施例
【0264】
仮想実施例1-未知の病原体の同定及び定量のためのPCR-PCR-Taqman(商標)またはPCR-PCR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが24、及び列あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが384である、24×16=384(または場合により768)個の細区画を備える9,216マイクロウェルまたはマイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する(事前にスポットされたアレイを使用):図16図17図18、及び図24を参照のこと。
【0265】
アッセイは、384個、768個、または1,536個の潜在的標的を検出及び定量するように設計される場合がある。カートリッジを準備するにあたり、カートリッジを組み立てる前に、UniTaqまたはユニバーサルタグプライマー及び標的特異的プローブセットが垂直に追加されたアレイの前面に16個、32個、または64個いずれかのネステッドPCRプライマーペアを24箇所スポットし、乾燥させる必要がある。
【0266】
1.試料の初回マルチプレックス増幅-潜在的標的が384個、768個、または1536個。初期反応チャンバーで9サイクルのマルチプレックスPCRを実行し、元の各病原体の最大512コピーを得る。必要に応じて、「タンデム」PCRプライマーを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる場合がある。
【0267】
2.最初のマルチプレックス産物を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。各一次PCR反応チャンバーへの元の各病原体標的の平均分配数は20コピーである。UniTaqテールをもつプライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、5サイクルのネステッドPCRを実行すると、元の各病原体の最大640コピーが得られる。
【0268】
3.各一次PCR反応チャンバーの産物を384個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配する。平均して、各細区画(24個のマイクロウェルまたはマイクロポアを含む)に元の各病原体が40コピー得られ、所与の1ウェルに元の病原体が1または2コピー得られることになる。存在する病原体の数が多くなると、各細区画に追加のコピーが得られることになる。UniTaqプライマーセットを使用して各ウェル内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。24個のマイクロウェルまたはマイクロポア(細区画あたり)のポアソン分布では、最初に低存在量で存在する病原体特異的標的を計数するが、24個のマイクロウェルまたはマイクロポア(細区画あたり)にわたるCt値は、最初に高存在量で存在する病原体特異的標的の概算のコピー情報を提供することになる。
【0269】
注1:特にネステッドプライマーを使用する場合、このアッセイ形式の成否は、UniTaqプライマーによってプライマー二量体が形成されないかどうかによる。3’ブロックされたUniTaqプライマーと、RNA塩基のブロックを解除するRNaseH2を使用すると、この問題が解決すると考えられる(図17を参照)。同じ3’ブロック/RNaseの手段をネステッドプライマーセットにも使用できるが、病原体の配列のずれがプライマーによる特定の標的の増幅を妨げる可能性があるため、ネステッドプライマーの効果が減少するリスクがわずかながら存在する。
【0270】
注2:プライマー二量体からの標的非依存性シグナルを回避する追加手法は、タグ領域に部分標的配列を含むネステッドプライマーを使用し、5’-3’ヌクレアーゼ活性を欠く鎖置換ポリメラーゼを使用して標的内の相補領域を増幅することである。UniTaq増幅工程後、二本鎖産物を変性すると、標識産物はクローバー型構造を形成して、プローブのRNA塩基は二本鎖型になり、RNaseH2による蛍光基の遊離に適したものになる(図18を参照)。ただし、病原体の非存在下でプライマー二量体が形成される場合、産物の病原体特異的配列がないため、クローバー型構造が形成されず、したがってRNaseH2による切断もされない。ウイルス病原体の場合には、標的の配列のずれが、目的とするクローバー型構造の形成を妨げる可能性があるため、このようなプライマーが標的を特定する効果が減少し得るリスクがわずかながら存在することに留意されたい。
【0271】
注3:RNAウイルスの場合、最初に逆転写酵素工程を加えるか、または増幅緩衝液にTth DNAポリメラーゼ及びMn2+を使用して、シングルステップのRT-PCRを行うことができる。また、試料を分割して、1つのアリコートを潜在的なRNA標的の増幅(例えば10サイクル)に使用し、第2のアリコートを潜在的な低レベルの細菌標的の増幅(例えば20サイクル)に使用できる点にも留意されたい。その後、2つの別々のPCR増幅産物を混合し、PCR緩衝液で希釈して、24個の細区画に分配し、ネステッドPCR反応に供する。
【0272】
注4:UniTaqプライマーを使用する一つの利点は、それらを互いに極めて近接して配置できるため、単一の初期標的アンプリコンから複数のネステッド産物を産生できることである。その結果、各病原体に対する2、3、または4つの初期標的と、それに続く各標的断片内部の2、3、または4つのネステッドプライマーセットを含むプライマー設計が可能になる。4~16個の可能性のあるシグナルのうち最小限2つまたは3つが観察された場合にのみ病原体が陽性とみなされることになる。この手法のもう一つの利点は、最初のマルチプレックス反応においてPCRプライマーの数が制限されていることである。さらなる利点は、これらのシグナルが異なる細区画に表示されるようにプライマーを設計することで、何らかの標的非依存性(偽)シグナルを低減できることである。
【0273】
仮想実施例2-未知の病原体の同定及び定量のためのPCR-PCR-Taqman(商標)またはPCR-PCR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルが96、及び列あたりのマイクロウェルが4,608である、48×48=2,304個の細区画を備える221,1846マイクロウェルアレイ形式用のカートリッジを使用する(マイクロタイターアレイプレートへ音響液滴射出):図16図17、及び図18を参照のこと。
【0274】
アッセイは、576個または1,152個の潜在的標的を検出及び定量するように設計される場合がある。マイクロタイタープレートを準備するにあたり、マイクロタイタープレートを使用する前に、UniTaqまたはユニバーサルタグプライマー及び標的特異的プローブセットを追加し、それらを乾燥させることが必要になる。
【0275】
1.試料の初回マルチプレックス増幅-潜在的標的が576個または1,152個。ウェルまたは初期反応チャンバー内で、10サイクルのマルチプレックスPCRを実行し、元の各病原体の最大1,024コピーを得る。必要に応じて、「タンデム」PCRプライマーを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる場合がある。
【0276】
2.最初のマルチプレックス産物を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーへの元の各病原体標的の平均分配数は20コピーである。UniTaqテールをもつプライマーを24個組または48個組のプライマーセットにして使用し、3~4サイクルのネステッドPCRを実行すると、元の各病原体の最大160~320コピーが得られる。
【0277】
3.各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーの産物を、96個のマイクロウェルを備える、それぞれ24個2セットまたは12個4セットの細区画に分配する。2セットを使用する場合、第2のセットは第1のセットの100/1希釈である。4セットを使用する場合、各セットは前のセットの20/1希釈である。これにより、大きな規模にわたって存在する病原体の網羅が可能になる。平均して、最初の各細区画に元の各病原体が12コピー得られ、所与の1マイクロウェルに元の病原体が1または0コピー得られることになる。存在する病原体の数が多くなると、各細区画に追加のコピーが得られることになる。事前にスポットされたUniTaqプライマーセットを使用して各マイクロウェル内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロウェル内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。2セットまたは4セットの希釈物にわたる96マイクロウェルのポアソン分布により、試料中の病原体コピー数が非常に多い場合はもとより、病原体コピー数が非常に少ない場合でも、ある程度の計数が可能になる。
【0278】
上記実施例1の注1~4も参照のこと。
【0279】
仮想実施例3-未知の病原体の同定及び定量のためのPCR-LDR-Taqman(商標)、PCR-LDR Unitaq、またはPCR-LDR-スプリットUniTaq(UniSpTq)検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが24、及び列あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが384である、24×16=384(または場合により768)個の細区画を備える9,216マイクロウェルまたはマイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する(事前にスポットされたアレイを使用):図19図20図21、及び図24を参照のこと。
【0280】
アッセイは、384個、768個、または1,536個の潜在的標的を検出及び定量するように設計される場合がある。カートリッジを準備するにあたり、カートリッジを組み立てる前に、UniTaqまたはユニバーサルタグプライマー及び標的特異的プローブセットが垂直に追加されたアレイの前面に16個、32個、または64個いずれかのLDRプライマーペアを24箇所スポットし、乾燥させる必要がある。
【0281】
1.試料の初回マルチプレックス増幅-潜在的標的が384個、768個、または1536個。初期反応チャンバー内で、30サイクルのPCRを実行し、元の各病原体を最大限に増幅させる。必要に応じて、「タンデム」PCRプライマーを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる必要がある。
【0282】
2.最初のマルチプレックス産物を24個の一次LDR反応チャンバーに分配すると同時に10倍に希釈する。各一次LDR反応チャンバーへの元の各病原体標的の平均分配数は数百万コピーになる。UniTaqテールをもつアレル特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20サイクルのLDRを実行する。
【0283】
3.各一次LDR反応チャンバーのLDR産物を384個のマイクロポアに分配する。UniTaqプライマーセットを使用して各ウェル内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。24個のマイクロウェルまたはマイクロポア(細区画あたり)にわたるCt値は、最初に高存在量で存在する病原体特異的標的の概算のコピー情報を提供する。
【0284】
注1:このアッセイ形式の成否は、UniTaqプライマーによって、例えば下流LDRプライマーとのプライマー二量体が形成されないかどうかによる。この問題を以下のように解決した:元の試料に偶発的なキャリーオーバー汚染があれば、それを破壊するUDGを初期PCR反応物に含め、PCR産物にdUTPを組み込む。LDR後、UniTaqマスターミックスにUDGを含有し、PCR産物があればすべて破壊することにより、LDR産物からの増幅のみが可能になる。(図19及び図20も参照)。
【0285】
注2:最後の増幅工程にUniTaqプライマーを使用する場合、単純なプローブ設計(図20)またはスプリットプローブ設計(図21)のいずれかを使用して実行することができる。下流のライゲーションプライマーからの伸長産物が上流のF1-Bi-Q-Ai UniTaqタグプライマーとプライマー二量体を形成する場合、元のプローブ設計では、ライゲーション非依存性プライマー二量体が形成される可能性がある(図20)。プライマー二量体の問題は、図21に示すスプリットプローブ設計を使用して対処することができる。UniTaq増幅工程後、二本鎖産物を変性すると、標識産物はステムループ構造を形成して、Taqポリメラーゼの5’-3’ヌクレアーゼ活性によってプライマーCiが伸長し、蛍光基を遊離してシグナルを生成することが可能になる。ポリメラーゼが第1のステム領域を通過するとすぐに第2の短い(zi-zi’)ステムは破断し、ポリメラーゼは伸長を続け、dsDNA産物を生成する。下流のライゲーションプライマーからの伸長産物と上流のF1-Bi-Q-Ai UniTaqタグプライマーとにより生じた、ライゲーション非依存性プライマー二量体産物が存在する場合、その産物はzi配列を欠いており、その結果、完全なステムループ構造を形成しないことになる。したがって、Ciが伸長しても、Bjプローブ領域はBj’配列にハイブリダイズされず、蛍光基(F1)が消光基(Q)から遊離することがない。
【0286】
注3:RNAウイルスの場合、最初に逆転写酵素工程を加えるか、または増幅緩衝液にTth DNAポリメラーゼ及びMn2+を使用して、シングルステップのRT-PCRを行うことができる。また、試料を分割して、1つのアリコートを潜在的なRNA標的の増幅(例えば30サイクル)に使用し、第2のアリコートを潜在的な低レベルの細菌標的の増幅(例えば40サイクル)に使用できる点にも留意されたい。その後、2つの別々のPCR増幅産物を混合し、LDR緩衝液で希釈して、24個の二次LDR反応チャンバーに分配し、LDR反応に供する。
【0287】
注4:LDRプライマーを使用する一つの利点は、それらを互いに極めて近接して配置できるため、単一の初期標的アンプリコンから、重複していても複数のLDR産物を産生できることである。その結果、各病原体に対する2、3、または4つの初期標的と、それに続く各標的断片内部の2、3、または4つのLDRプライマーセットを含むプライマー設計が可能になる。4~16個の可能性のあるシグナルのうち最小限2つまたは3つが観察された場合にのみ病原体が陽性とみなされることになる。この手法のもう一つの利点は、最初のマルチプレックス反応においてPCRプライマーの数が制限されていることである。さらなる利点は、これらのシグナルが異なる細区画に表示されるようにプライマーを設計することで、何らかの標的非依存性(偽)シグナルを低減できることである。
【0288】
仮想実施例4-未知の病原体の同定及び定量のための、ユニバーサルまたは標的特異的プローブ(例えばUniLDqまたはTsLDq)を用いたPCR-PCR-qLDR検出またはPCR-qLDR検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが24、及び列あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが384である、24×16=384(または場合により768)個の細区画を備える9,216マイクロウェルまたはマイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する(事前にスポットされたアレイを使用):図22及び図23を参照のこと。
【0289】
アッセイは、384個、768個、または1,536個の潜在的標的を検出及び定量するように設計される場合がある。カートリッジを準備するにあたり、カートリッジを組み立てる前に、qLDRプライマー及びプローブセットが垂直に追加されたアレイの前面に16個、32個、または64個いずれかのネステッドPCRプライマーペアを24箇所スポットし、乾燥させる必要がある。
【0290】
1.試料の初回マルチプレックス増幅-潜在的標的が384個、768個、または1536個。初期反応チャンバー内で、10~15サイクルのPCRを実行し、元の各病原体標的を1,000~32,000倍に増幅する。必要に応じて、「タンデム」PCRプライマーを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる必要がある。
【0291】
2.最初のマルチプレックス産物を24個の一次PCR反応チャンバーに分配すると同時に10倍に希釈する。各一次PCR反応チャンバーへの元の各病原体標的の平均分配数は4~130コピーになる。上記のプライマーまたはネステッドプライマーいずれかのサブセットを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20~30サイクルのPCRを実行する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる必要がある。
【0292】
3.各一次PCR反応チャンバーのPCR産物を384個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配する。下記のプライマーセットを使用して各ウェル内で1、2、または4つの潜在的な産物をiLDR(「i」は等温を意味する)増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。
【0293】
未知の細菌病原体を血液から直接同定するための代替法(PCR-qLDR検出を使用):
1.初期試料を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。潜在的標的が32個、64個、または128個である試料の初回マルチプレックス増幅を行う。30~40サイクルのマルチプレックスPCRを実行し、存在する場合、元の各標的の数十億コピーを得る。「タンデム」以上のPCRプライマーセットを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~12塩基の同じ5’テール配列が含まれる。
【0294】
2.各一次PCR反応チャンバーのPCR産物を384個のマイクロポアに分配する。下記のプライマーセットを使用して各ウェル内で1、2、または4つの潜在的な産物をiLDR(iは等温を意味する)増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。
【0295】
注1:UniTaqを使用して蛍光シグナルを生成する代わりに、「iLDR」(iは等温を意味する)という名称の新しい手法を導入する(図22及び図23を参照)。この手法の第1の変形例では、ユニバーサルタグとプローブ配列を使用する(図22)。ここで、LDRプライマーには、タグ配列(Bi’;Bj’)に加え、ライゲーション接合部領域に相補的な配列(ti’,tj’)の両方が含まれている。PCR増幅産物の存在下で、ライゲーションプローブは互いに隣接してハイブリダイズし、熱安定性リガーゼを使用して共有結合する。プローブ(F1-r-Bj,Bi-Q)の存在下で、変性工程の後、温度が低下すると、プローブと病原体特異的配列(tiとti’;tjとtj’)、BiとBi’、及びBjとBj’との間に4つの二本鎖ステムが形成される。それにより、Bj配列のリボース塩基は二本鎖になり、RNaseH2により蛍光基(F1)が遊離し、シグナルを生成することができる。切断されたプローブは産物から解離し、新たなプローブがハイブリダイズして、さらなるシグナルを生成することができる。ライゲーションされていないLDRプライマーは必ずしもヘアピンを形成しないため、RNaseH2はシグナルを発生しないことになる。生成されるシグナルの量は、先のLDR工程で産生された累積LDR産物への各ハイブリダイゼーション工程中に切断されるプローブ数の関数である。例えば、産生されたLDR産物ごとに10個の蛍光分子が遊離されるとすると、5サイクルのLDR後にはシグナルが10倍増加し、15サイクル後には100倍増加し、及び46サイクル後には1,000倍増加することになる。形成される産物量は約4~5×(サイクル数)^2である。PCR-iLDRを使用する潜在的な利点は、手順に2つの工程しか必要としないことである(PCR-LDR-UniTaqでは代わりに3工程を必要とする)。iLDR工程によって検出に十分なシグナルが生成される場合、プロトコル全体が簡素化される。
【0296】
注2:iLDRの第2の変形例は、配列特異的なプローブを使用する。ここで、LDRプライマーには、1つのタグ配列(Bi’)と、ライゲーション接合部領域に相補的な1つの配列(tj’)が含まれている。プローブ(F1-r-病原体配列-Bi-Q)の存在下で、変性工程の後、温度が低下すると、病原体特異的配列間(ti,tjとti’,tj’)、及びBiとBi’の間に2つの二本鎖ステムが形成される。それにより、病原体配列のリボース塩基は二本鎖になり、RNaseH2により蛍光基が遊離し、シグナルを生成することができる。切断されたプローブは産物から解離し、新たなプローブがハイブリダイズして、さらなるシグナルを生成することができる。ライゲーションされていないLDRプライマーはどちらもステムを形成しないため、RNaseH2はシグナルを発生しないことになる。上記のように、生成されるシグナルの量は、先のLDR工程で産生された累積LDR産物への各ハイブリダイゼーション工程中に切断されるプローブ数の関数である。
【0297】
注3:RNAウイルスの場合、最初に逆転写酵素工程を加えるか、または増幅緩衝液にTth DNAポリメラーゼ及びMn2+を使用して、シングルステップのRT-PCRを行うことができる。また、試料を分割して、1つのアリコートを潜在的なRNA標的の増幅(例えば30サイクル)に使用し、第2のアリコートを潜在的な低レベルの細菌標的の増幅(例えば40サイクル)に使用できる点にも留意されたい。その後、2つの別々のPCR増幅産物を混合し、LDR緩衝液で希釈して、24個の二次LDR反応チャンバーに分配し、LDR反応に供する。
【0298】
注4:LDRプライマーを使用する一つの利点は、それらを互いに極めて近接して配置できるため、単一の初期標的アンプリコンから、重なったものでも複数のLDR産物を産生できることである。その結果、各病原体に対する2、3、または4つの初期標的と、それに続く各標的断片内部の2、3、または4つのLDRプライマーセットを含むプライマー設計が可能になる。4~16個の可能性のあるシグナルのうち最小限2つまたは3つが観察された場合にのみ病原体が陽性とみなされることになる。この手法のもう一つの利点は、最初のマルチプレックス反応においてPCRプライマーの数が制限されていることである。さらなる利点は、これらのシグナルが異なる細区画に表示されるようにプライマーを設計することで、何らかの標的非依存性(偽)シグナルを低減できることである。
【0299】
仮想実施例5-血液から未知の病原体を直接同定及び定量するための、PCR-PCR-Taqman(商標)またはPCR-PCR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが24、及び列あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが384である、24×16=384(または場合により768)個の細区画を備える9,216マイクロウェルまたはマイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する(事前にスポットされたアレイを使用):図26及び図27を参照のこと。
【0300】
アッセイは、32個、64個、または128個の潜在的標的を検出及び定量するように設計される場合がある。カートリッジを準備するにあたり、カートリッジを組み立てる前に、UniTaqまたはユニバーサルタグ及び標的特異的プローブ及びプライマーセットが垂直に追加されたアレイの前面に16個、32個、または64個のネステッドPCRプライマーペアをスポットし、乾燥させる必要がある。
【0301】
1.初期試料を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。潜在的標的が32個、64個、または128個である試料の初回マルチプレックス増幅を行う。20サイクルのマルチプレックスPCRを実行し、存在する場合、元の各標的の最大1,000,000コピーを得る。「タンデム」以上のPCRプライマーセットを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~12塩基の同じ5’テール配列が含まれる。
【0302】
2.二次PCR反応チャンバーで、UniTaqテールをもつプライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、10サイクルのネステッドPCRを実行する。プライマーは、正確な標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。
【0303】
3.各二次PCR反応チャンバーのPCR産物を384個のマイクロポアに分配する。各行のユニバーサルまたはUniTaqプライマーは、正しいタグをもつ各列からの産物のみを増幅する。標的の前増幅と、プライマーの二量体形成を防ぐテールの使用により、1細胞レベルでの細菌病原体の同定が可能になる。
【0304】
注1:このアッセイ形式の成否は、UniTaqプライマーによって、例えばネステッドプライマーとのプライマー二量体が形成されないかどうかによる。3’ブロックされたUniTaqプライマーと、RNA塩基のブロックを解除するRNaseH2を使用すると、この問題が解決すると考えられる。同じ3’ブロック/RNaseの手段をネステッドプライマーセットにも使用できるが、病原体の配列のずれがプライマーによる特定の標的の増幅を妨げる可能性があるため、ネステッドプライマーの効果が減少するリスクがわずかながら存在する。
【0305】
注2:UniTaqプライマーを使用する一つの利点は、それらを互いに極めて近接して配置できるため、単一の初期標的アンプリコンから複数のネステッド産物を産生できることである。その結果、各病原体に対する2、3、または4つの初期標的と、それに続く各標的断片内部の2、3、または4つのネステッドプライマーセットを含むプライマー設計が可能になる。4~16個の可能性のあるシグナルのうち最小限2つまたは3つが観察された場合にのみ病原体が陽性とみなされることになる。
【0306】
仮想実施例6-血液から未知の病原体を直接同定及び定量するための、PCR-PCR-Taqman(商標)またはPCR-PCR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルが96、及び列あたりのマイクロウェルが4,608である、48×48=2,304個の細区画を備える221,1846マイクロウェルアレイ形式用のカートリッジを使用する(マイクロタイターアレイプレートへ音響液滴射出):図26及び図27を参照のこと。
【0307】
アッセイは、48個、96個、または192個の潜在的標的を検出及び定量するように設計される場合がある。マイクロタイタープレートを準備するにあたり、マイクロタイタープレートを使用する前に、UniTaqまたはユニバーサルタグプライマー及び標的特異的プローブセットを追加し、それらを乾燥させることが必要になる。
【0308】
1.初期試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。潜在的標的が48個、96個、または192個である試料の初回マルチプレックス増幅を行う。9サイクルのマルチプレックスPCRを実行し、存在する場合、元の各病原体の最大512コピーを得る。「タンデム」以上のPCRプライマーセットを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~12塩基の同じ5’テール配列が含まれる。
【0309】
2.各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーの産物を、それぞれ96個のマイクロウェルを備える、48個の細区画に分配する。細区画には適切なネステッド標的特異的プライマー、UniTaqプライマー、及び/またはプローブが事前にスポットされている(図16図17、及び図18を参照)。平均して、最初の各細区画に元の各病原体が10コピー得られ、所与の1マイクロウェルに元の病原体が1または0コピー得られることになる。存在する病原体の数が多くなると、各細区画に追加のコピーが得られることになる。事前にスポットされたプライマーセットを使用して各マイクロポア内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロウェル内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。96個のマイクロウェルのポアソン分布により、病原体コピー数が非常に少ない場合でも、ある程度の計数が可能になる。
【0310】
上記実施例5の注1~2も参照のこと。
【0311】
仮想実施例7-血漿から低存在量の変異及び/またはCpGメチル化を直接同定及び定量するための、PCR-LDR-Taqman(商標)またはPCR-LDR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが24、及び列あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが384である、24×16=384(または場合により768)個の細区画を備える9,216マイクロウェルまたはマイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する(事前にスポットされたアレイを使用):図28図29、及び図30を参照のこと。
【0312】
アッセイは、64個または128個の潜在的標的を検出及び定量化するように設計することができ、複数の変異を単一の蛍光色によって評価することが可能であるカートリッジを準備するにあたり、カートリッジを組み立てる前に、UniTaqまたはユニバーサルタグ及び標的特異的プローブ及びプライマーセットが垂直に追加されたアレイの前面に16個、32個、または64個のネステッドPCRプライマーペアをスポットし、乾燥させる必要がある。
【0313】
1.初期試料を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。血漿中の最高レベルのDNA=10,000ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり400コピーであり、最大1つの変異がある。野生型DNAの増幅を低減するため、ブロッキングPNAまたはLNAを用いて10~40サイクルの遺伝子座特異的PCRを実行する。任意:PCR反応時にdUTPを使用する(UDGで前処理し、初期試料のキャリーオーバー汚染を防止する)。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべての下流PCRプライマーに好ましくは8~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる必要がある。
【0314】
2.各一次PCR反応チャンバーの産物をLDRプライマー及び緩衝液で希釈して、産物を二次LDR反応チャンバーに分配する。UniTaqテールをもつアレル特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20サイクルのLDRを実行する。LDRプライマーが、同じ遺伝子の異なる変異に対して、同じ細区画で同じシグナルを生じるように設計することができる。LDR反応は、同じ反応チャンバーで実行することも、2つの個々の反応チャンバーで実行して、再合一することもできる。
【0315】
3.UniTaqマスターミックス及びUDGを追加し、各二次LDR反応チャンバーの産物を、384個のマイクロポアに分配する。UniTaqプライマーセットを使用して各ウェル内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。
【0316】
注1:この設計には、基板全体で同一のLDRプライマーセットを使用するか、または異なるLDRプライマーセットをプリントした後、PCR反応のアリコートと結合させ、その後、マイクロポアに分配する前に再度、産物を混合するという選択肢がある。
【0317】
注2:3’ブロッキング基及びRNA塩基を上流プライマーに含めることにより、別の選択性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H2によりRNA塩基が除去され、変異の数塩基上流にあり、ポリメラーゼ伸長に適した3’OH基が解放される。上流のPCRプライマーと部分的に重複する野生型配列を含むブロッキングLNAまたはPNAプローブは、野生型配列への結合に対しては、上流のプライマーよりも競合優先性をもつが、変異DNAに対するほど強くないため、PCRの各ラウンド中の野生型DNAの増幅が抑制される。
【0318】
注3:同様に、3’ブロッキング基、及び標的特異的ハイブリダイゼーション時にRNase H2によって除去されるRNA塩基を下流プライマーに含めることにより、さらに選択性を方法に組み込むことができる。さらに、同一の5’テールを約24~30塩基まで伸長することができる。この配列への「ユニバーサル」プライマー(3’ブロッキング基及びRNA塩基も含む)の追加が可能であれば、このプライマーが初期PCR増幅工程で遺伝子座特異的プライマーよりも高濃度で存在することになる。ユニバーサルプライマーは、マルチプレックス増幅時にすべてのPCR産物の増幅を促進する。
【0319】
注4.あるいは、マルチプレックスPCR時の断片のドロップアウトを最小限に抑えるために、最初の「前増幅」マルチプレックスPCRを、初期反応チャンバーで8~20サイクル実行する。次に、この産物を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。ある変形例では、24個の一次反応チャンバーのそれぞれに、野生型配列の増幅を抑制するPNAまたはLNAをもつ1~4個のPCRプライマーセットが含まれており、シングルまたはマルチプレックスPCRをさらに10~30サイクル実行し、潜在的な変異を含む1~4種類の断片を単一の一次反応チャンバーで増幅することができる。別の変形例では、4つの一次反応チャンバー6組に、野生型配列の増幅を抑制するPNAまたはLNAをもつ4~16個のPCRプライマーセットが含まれており、マルチプレックスPCRをさらに10~30サイクル実行し、潜在的な変異を含む4~16種類の断片を単一の一次反応チャンバーで増幅することができる。
【0320】
注5:この設計はまた、メチル化検出との組み合わせが可能である。
【0321】
血漿中の低存在量CpGメチル化の同定及び定量の場合(変異と組み合わせた場合;バイサルファイト-PCR-LDR-Taqman(商標)、またはバイサルファイト-PCR-LDR-Unitaq検出を使用。図31図32、及び図30を参照):
1.初期反応チャンバー内で試料をBsh1236Iで消化する。バイサルファイトで処理する。DNA鎖を再精製する。
【0322】
2.バイサルファイト処理した試料を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。RE切断後の血漿中の最高レベルのDNA=200ゲノム相当である。必要に応じて、野生型DNAの増幅を低減するため、任意のブロッキングPNAまたはLNAを用いて0~40サイクルの遺伝子座特異的PCRを実行する。PCR反応時にdUTPを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべての下流PCRプライマーに好ましくは8~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる必要がある。
【0323】
2.各一次PCR反応チャンバーの産物をLDRプライマー及び緩衝液で希釈して、産物を二次LDR反応チャンバーに分配する。UniTaqテールをもつメチル特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20サイクルのLDRを実行する。LDRプライマーが、異なるメチル化領域に対して、すなわち同じプロモーター領域のトップ鎖及びボトム鎖に対して、同じ細区画で同じシグナルを生じるように設計することができる。LDR反応は、同じ反応チャンバーで実行することも、2つの個々の反応チャンバーで実行して、再合一することもできる。
【0324】
3.UniTaqマスターミックス及びUDGを追加し、各二次LDR反応チャンバーの産物を、384個のマイクロポアに分配する。UniTaqプライマーセットを使用して各ウェル内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。
【0325】
注1:この設計には、基板全体で同一のLDRプライマーセットを使用するか、または異なるLDRプライマーセットをプリントした後、PCR反応のアリコートと結合させ、その後、マイクロポアに分配する前に再度、産物を混合するという選択肢がある。
【0326】
注2:3’ブロッキング基及びRNA塩基を上流プライマーに含めることにより、別の選択性の階層を方法に組み込むことができる。標的特異的ハイブリダイゼーション時に、RNase H2によりRNA塩基が除去され、変異の数塩基上流にあり、ポリメラーゼ伸長に適した3’OH基が解放される。上流のPCRプライマーと部分的に重複する野生型配列を含むブロッキングLNAまたはPNAプローブは、野生型配列への結合に対しては、上流のプライマーよりも競合優先性をもつが、変異DNAに対するほど強くないため、PCRの各ラウンド中の野生型DNAの増幅が抑制される。
【0327】
注3:同様に、3’ブロッキング基、及び標的特異的ハイブリダイゼーション時にRNase H2によって除去されるRNA塩基を下流プライマーに含めることにより、さらに選択性を方法に組み込むことができる。さらに、同一の5’テールを約24~30塩基まで伸長することができる。この配列への「ユニバーサル」プライマー(3’ブロッキング基及びRNA塩基も含む)の追加が可能であれば、このプライマーが初期PCR増幅工程で遺伝子座特異的プライマーよりも高濃度で存在することになる。ユニバーサルプライマーは、マルチプレックス増幅時にすべてのPCR産物の増幅を促進する。
【0328】
注4:別の実施形態では、マルチプレックスPCR時の断片のドロップアウトを最小限に抑えるために、最初の「前増幅」マルチプレックスPCRを、初期反応チャンバーで8~20サイクル実行する。次に、この産物を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。ある変形例では、24個の一次反応チャンバーのそれぞれに、1~4個のPCRプライマーセットが含まれており、シングルまたはマルチプレックスPCRをさらに10~30サイクル実行し、潜在的なメチル化を含む1~4種類の断片を単一の一次反応チャンバーで増幅することができる。別の変形例では、4つの一次反応チャンバー6組に、4~16個のPCRプライマーセットが含まれており、マルチプレックスPCRをさらに10~30サイクル実行し、潜在的なメチル化を含む4~16種類の断片を単一の一次反応チャンバーで増幅することができる。
【0329】
注5:この設計はまた、変異検出との組み合わせも可能である。
【0330】
仮想実施例8-血漿から低存在量の変異及び/またはCpGメチル化を直接同定及び定量するための、PCR-LDR-Taqman(商標)またはPCR-LDR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルが96、及び列あたりのマイクロウェルが4,608である、48×48=2,304個の細区画を備える221,1846マイクロウェルアレイ形式用のカートリッジを使用する(マイクロタイターアレイプレートへ音響液滴射出):図28及び図29を参照のこと。
【0331】
アッセイは、48個、96個、または192個の潜在的標的を検出及び定量するように設計される場合がある。マイクロタイタープレートを準備するにあたり、マイクロタイタープレートを使用する前に、UniTaqまたはユニバーサルタグプライマー及び標的特異的プローブセットを追加し、それらを乾燥させることが必要になる。
【0332】
1.初期試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。血漿中の最高レベルのDNA=10,000ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり200コピーであり、最大1つの変異がある。野生型DNAの増幅を低減するため、ブロッキングPNAまたはLNAを用いて10~40サイクルの遺伝子座特異的PCRを実行する。任意:PCR反応時にdUTPを使用する(UDGで前処理し、初期試料のキャリーオーバー汚染を防止する)。
【0333】
2.各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーの産物をLDRプライマー及び緩衝液で希釈して、二次LDR反応チャンバーに分配する。UniTaqテールをもつアレル特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20サイクルのLDRを実行する。LDRプライマーが、同じ遺伝子の異なる変異に対して、同じ細区画で同じシグナルを生じるように設計することができる。LDR反応は、同じ反応チャンバーで実行することも、2つの個々の反応チャンバーで実行して、再合一することもできる。
【0334】
3.UniTaqマスターミックス及びUDGを追加し、各ウェルまたは二次LDR反応チャンバーの産物を、それぞれ96個のマイクロポアを含む48個の細区画に分配する。細区画には適切なUniTaqプライマー及び/またはプローブが事前にスポットされている(図28及び図29を参照)。事前にスポットされたプライマーセットを使用して各マイクロポア内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。
【0335】
血漿中の低存在量CpGメチル化の同定及び定量の場合(変異と組み合わせた場合;バイサルファイト-PCR-LDR-Taqman(商標)、またはバイサルファイト-PCR-LDR-Unitaq検出を使用。図31及び図32を参照):
1.初期反応チャンバー内で試料をBsh1236Iで消化する。バイサルファイトで処理する。DNA鎖を再精製する。
【0336】
2.バイサルファイト処理した試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。RE切断後の血漿中の最高レベルのDNA=200ゲノム相当である。必要に応じて、野生型DNAの増幅を低減するため、任意のブロッキングPNAまたはLNAを用いて10~40サイクルの遺伝子座特異的PCRを実行する。任意:PCR反応時にdUTPを使用する。
【0337】
3.各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーの産物をLDRプライマー及び緩衝液で希釈して、二次LDR反応チャンバーに分配する。UniTaqテールをもつメチル特異的プライマーを16個組、32個組、または64個組のプライマーセットにして使用し、20サイクルのLDRを実行する。LDRプライマーが、異なるメチル化領域に対して、すなわち同じプロモーター領域のトップ鎖及びボトム鎖に対して、同じ細区画で同じシグナルを生じるように設計することができる。LDR反応は、同じ反応チャンバーで実行することも、2つの個々の反応チャンバーで実行して、再合一することもできる。
【0338】
4.UniTaqマスターミックス及びUDGを追加し、各ウェルまたは二次LDR反応チャンバーの産物を、それぞれ96個のマイクロポアを含む48個の細区画に分配する。細区画には適切なUniTaqプライマー及び/またはプローブが事前にスポットされている(図31及び図32を参照)。事前にスポットされたプライマーセットを使用して各マイクロポア内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。
【0339】
上記実施例7の注1~5も参照のこと。
【0340】
仮想実施例9-希少及び過剰発現両方のlncRNA、mRNA、またはスプライス変異体の正確な計数のための、PCR-PCR-Taqman(商標)またはPCR-PCR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが24、及び列あたりのマイクロウェルまたはマイクロポアが384である、24×16=384(または場合により768)個の細区画を備える9,216マイクロウェルまたはマイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する(事前にスポットされたアレイを使用):スプライス変異体を例とする図33、及び図34を参照のこと。
【0341】
アッセイは、384個の潜在的標的を検出及び定量するように設計することができる。カートリッジを準備するにあたり、カートリッジを組み立てる前に、UniTaqまたはユニバーサルタグ及び標的特異的プローブ及びプライマーセットが垂直に追加されたアレイの前面に16個、32個、または64個のネステッドPCRプライマーペアをスポットし、乾燥させる必要がある。
【0342】
1.潜在的標的が384個である試料の初回マルチプレックス逆転写/増幅を行う。初期反応チャンバーで7サイクルのマルチプレックスRT-PCRを実行し、元の各転写産物の最大128コピーを得る。プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべての逆転写及びPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる必要がある。
【0343】
2.最初のマルチプレックス産物を6個の一次PCR反応チャンバーに分配する。各一次PCR反応チャンバーへの元の各転写産物の平均分配数は20コピーである。UniTaqテールをもつプライマーを一次PCR反応チャンバーごとに16個組、32個組、または64個組の固有のプライマーセットにして使用し、10サイクルのネステッドPCRを実行すると、元の各転写産物の最大20,480コピーが得られる。この例では、最小数で、おおよそ元のRNA転写産物1個で20,480コピーが得られ、元のRNA転写産物100個で2,048,000コピーが得られ、元のRNA転写産物10,000個で204,800,000コピーが得られることになり、3つの異なる転写産物セットが正確に定量される。
【0344】
3.6つの一次PCR反応チャンバーは、排出後も反応物中に一定比率の液体量を保持するように設計されている。この例では、ネステッドPCR反応物の全体積は80単位に指定され、保持量は40単位以下に指定される。この例示では、一次PCR反応チャンバー1及び2のマルチプレックス増幅プライマーセットは低レベルの転写産物(40単位の液体を保持)に対応し、一次PCR反応チャンバー3及び4は中レベルの転写産物(10単位の液体を保持)に対応し、一次PCR反応チャンバー5及び6は高レベルの転写産物(3単位の液体を保持)に対応する。最初の排出後に残留する液体及び最小コピーの計算値は以下の通りである。
【0345】
ポリメラーゼを阻害する抗体を含む新しいマスターミックス40μを残留液体に加え、再び排出する:
【0346】
ポリメラーゼを阻害する抗体を含む新しいマスターミックス40μを残留液体に加え、再び排出する:
【0347】
新しいマスターミックス40μを残留液体に加え、今度は上方に流入させ、合計体積が20単位であり、10単位以下を保持できる4つの二次反応/希釈チャンバー、A、B、C、及びDに等分する。
SRチャンバー3及び4、ならびに5及び6は、上記の約2倍の分子数を有することになる。
【0348】
新しいマスターミックス10μを上方チャンバー内の残留液体に加え、再び排出する:
SRチャンバー3及び4、ならびに5及び6は、上記の約2倍の分子数を有することになる。
【0349】
新しいマスターミックス10μを上方チャンバー内の残留液体に加え、再び排出する:
SRチャンバー3及び4、ならびに5及び6は、上記の約2倍の分子数を有することになる。
【0350】
最後に、十分なマスターミックスが追加され、同時に残留産物及び試薬はすべて、マイクロポア内への移動に備えて、より大きい混合チャンバーに移動される。
【0351】
4.各二次反応/希釈チャンバーの産物を384個のマイクロウェルまたはマイクロポアに分配する。平均して、Aの二次反応/希釈チャンバーそれぞれに元の各転写産物が5コピー得られ、B、C、及びDの二次反応/希釈チャンバーでは徐々に少なくなる。UniTaqプライマーセットを使用して各ウェル内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。24個のマイクロポアのポアソン分布により、Aの二次反応/希釈チャンバー内の極少のコピー転写産物の計数が可能になり、B、C、及びDの二次反応/希釈チャンバーの24個のマイクロポアにわたるポアソン分布により、3~4桁の規模でコピー数が多い転写産物の計数が可能になる。
【0352】
二次反応/希釈チャンバー1及び2では、1個(「A」列の24個のマイクロポアのうち平均約5個に充填)から約1,500~3,000個(「D」列の24個のマイクロウェルまたはマイクロポアのうち平均約15~21個に充填)までの範囲の開始転写産物を正確に計数する。
【0353】
二次反応/希釈チャンバー3及び4では、100個(「A」列の24個のマイクロポアのうち平均約10個に充填)から約150,000~300,000個(「D」列の24個のマイクロウェルまたはマイクロポアのうち平均約15~21個に充填)までの範囲の開始転写産物を正確に計数する。
【0354】
二次反応/希釈チャンバー5及び6では、10,000個(「A」列の24個のマイクロポアのうち平均約10個に充填)から約15,000,000~30,000,000個(「D」列の24個のマイクロウェルまたはマイクロポアのうち平均約15~21個に充填)までの範囲の開始転写産物を正確に計数する。
【0355】
注1:このアッセイ形式の成否は、UniTaqプライマーによって、例えばネステッドプライマーとのプライマー二量体が形成されないかどうかによる。3’ブロックされたUniTaqプライマーと、RNA塩基のブロックを解除するRNaseH2を使用すると、この問題が解決すると考えられる。同じ3’ブロック/RNaseの手段をネステッドプライマーセットにも使用できるが、病原体の配列のずれがプライマーによる特定の標的の増幅を妨げる可能性があるため、ネステッドプライマーの効果が減少するリスクがわずかながら存在する。
【0356】
注2:UniTaqプライマーを使用する一つの利点は、それらを互いに極めて近接して配置できるため、単一の初期標的転写産物から複数のネステッド産物を産生できることである。その結果、各転写産物領域内に2つのネステッドプライマーセットを含むプライマー設計が可能になる。これにより、所与の転写産物の二重検証が可能になる。この手法のもう一つの利点は、最初のマルチプレックス反応においてPCRプライマーの数が制限されていることである。さらなる利点は、これらのシグナルが異なる細区画に表示されるようにプライマーを設計することで、何らかの標的非依存性(偽)シグナルを低減できることである。
【0357】
注3:異なる希釈物を含む異なるチャンバーセットを設計する代替法として、PCRサイクル数の変更を含む異なる条件下で、個々の発熱体が異なるチャンバーで動作してもよい。
【0358】
仮想実施例10-希少及び過剰発現両方のlncRNA、mRNA、またはスプライス変異体の正確な計数のための、PCR-PCR-Taqman(商標)またはPCR-PCR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロウェルが96、及び列あたりのマイクロウェルが4,608である、48×48=2,304個の細区画を備える221,1846マイクロウェルアレイ形式用のカートリッジを使用する(マイクロタイターアレイプレートへ音響液滴射出):スプライス変異体を例とする図33を参照のこと。
【0359】
アッセイは、576個または1,152個の潜在的標的を検出及び定量するように設計される場合がある。マイクロタイタープレートを準備するにあたり、マイクロタイタープレートを使用する前に、UniTaqまたはユニバーサルタグプライマー及び標的特異的プローブセットをスポットし、それらを乾燥させることが必要になる。
【0360】
1.潜在的標的が576個または1,152個である試料の初回マルチプレックス逆転写/増幅を行う。初期反応チャンバーで、10サイクルのマルチプレックスPCRを実行し、元の各RNA分子の最大1,024コピーを得る。必要に応じて、「タンデム」PCRプライマーを使用する。また、プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべてのPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる場合がある。
【0361】
2.最初のマルチプレックス産物を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。元の各RNA標的の各ウェルへの平均分配数は20コピーである。UniTaqテールをもつプライマーを24個組または48個組のプライマーセットにして使用し、3~4サイクルのネステッドPCRを実行すると、元の各RNA分子の最大160~320コピーが得られる。
【0362】
3.各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーの産物を、96個のマイクロポアを備える、それぞれ24個2セットまたは12個4セットの細区画に分配する。2セットを使用する場合、第2のセットは第1のセットの100/1希釈である。4セットを使用する場合、各セットは前のセットの20/1希釈である。これにより、大きな規模にわたって存在するRNA分子の網羅が可能になる。平均して、最初の各細区画に元の各RNA分子が12コピー得られ、所与の1マイクロポアに元のRNAが1または0コピー得られることになる。存在するRNAの数が多くなると、各細区画に追加のコピーが得られることになる。事前にスポットされたUniTaqプライマーセットを使用して各マイクロポア内で1、2、または4つの潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。UniTaqプライマーには1つ、2つ、または4つの異なる蛍光色素を使用する。2セットまたは4セットの希釈物にわたる96個のマイクロポアのポアソン分布により、試料中のRNAコピー数が非常に多い場合はもとより、RNAコピー数が非常に少ない場合でも、ある程度の計数が可能になる。
【0363】
上記実施例9の注1~2も参照のこと。
【0364】
仮想実施例11-未知の病原体の同定及びジェノタイピングのためのPCR-PCR-シーケンシングの使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロポアが2,760、及び列あたりのマイクロポアが88,320である、48×32=1,536個の細区画を備える、標的シーケンシング用の4,239,360マイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する。固定したプライマーを用いたマルチプレックス増幅については、図35を参照のこと。固体表面での増幅を完了まで促進することに関する詳細については、図36図37、及び図38を参照のこと。
【0365】
アッセイは、1,536個の潜在的標的を同定及びジェノタイピングするように設計することができる。カートリッジを準備するにあたり、カートリッジを組み立てる前に、アレイの前面に48×32個のPCRプライマーペアを、背面には32×48個のPCRシーケンシングプライマーをスポットし、それらを乾燥させる必要がある。
【0366】
1.潜在的標的が1,536個である試料の初回マルチプレックス増幅を行う。初期反応チャンバー内で、10サイクルのPCRを実行し、元の各病原体の最大1,024コピーを得る。
【0367】
2.最初のマルチプレックス産物を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。各一次PCR反応チャンバーへの元の各病原体標的の平均分配数は20コピーである。遺伝子座特異的ネステッドプライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。32個ずつ5サイクルのネステッドPCRを実行すると、元の各病原体の最大640コピーが得られる。場合により、UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、マイクロポア内の固定されたプライマーへの産物のハイブリダイゼーションを改善する。
【0368】
3.各一次PCR反応チャンバーの産物を88,320個のマイクロポアに分配する。平均して、各細区画(2,760個のマイクロポアを含む)に元の各病原体の20コピーが得られることになる。各マイクロポア内で複数の産物をPCR増幅し、さらに固定されていない鎖を溶解させる。
【0369】
4.48個の標的それぞれに対する48個のシーケンシングプライマーを32個の細区画に垂直に追加する。1,536個の潜在的標的を同時にシーケンシングすることができる。2,760個のマイクロポアのポアソン分布により、低存在量の標的を計数することができる。
【0370】
同じ48個の細区画にシーケンシングプライマーを追加した、未知の病原体の同定及びジェノタイピングのためのPCR-PCR-シーケンシング(図49を参照):
シーケンシングプライマーを同方向に、すなわち再分割せずに追加する場合、48×n個の潜在的標的が存在し、88,320/n個のマイクロポア/細区画である。
【0371】
これに対処する方法はいくつかある。一つの手法は一般に、細菌病原体がウイルス病原体よりも低レベルで存在することである。本来のPCRサイクルには、第2のプライマーを用いないウイルス病原体のRT工程が含まれる場合があるため、細菌の断片ほど多くは増幅されない。また、本来のPCR工程はサイクルが少ない可能性があり、ネステッドPCR工程でもサイクルが少ない可能性がある。したがって、88,320個のマイクロポア/区分(すなわち列)で、一部の病原体がより多く存在する場合、すなわち一部が2,000コピー存在し、それ以外が5コピー存在する場合であっても、細区画あたり32個の標的をシーケンシングするのは不合理というわけではない。また、32個のシーケンシングプライマー×48のセットがデバイスにプリントされることにも留意されたい。その場合、1回のシーケンシングランで1,536個の潜在的標的を同時に検出すると共に、2,760個のマイクロポアのポアソン分布を利用することが可能である。
【0372】
もう一つの手法は、ユニバーサルプライマーと、固体支持体に結合されていない側のネステッドPCRプライマーの標的特異的配列との間に8~12塩基の固有の配列を組み込むことである。これにより、より多くのユニバーサルシーケンシングプライマーの3’側の8~12塩基を使用して、潜在的標的のセットをシーケンシングすることが可能である。
【0373】
もう一つの手法は、ネステッドPCRプライマーのセットごとに異なるユニバーサルプライマーを使用し、さらに目的とするユニバーサルのセットを32分割してマイクロポア内にプリントすることである。これにより、各増幅産物が実質的に、規定した行及び列へ確実に送られることになる。この手法の利点は、様々な産物の個々のTaqman(商標)またはLDR検出も可能になることである。
【0374】
この案の変形例では、ユニバーサルプライマー配列はUniTaq配列である。望ましいUniTaqプライマーは、ポア内に32個ずつプリントされる。この手法は、すべてのプライマーの固定化を必要としないが、デンドリマーへのハイブリダイゼーションを使用して一時的に適所に保持することができる。
【0375】
48区分に分割した、4色LDR-FRET検出により、192個の標的を同時に高精度で計数することが可能である点に留意されたい。48区分のそれぞれに、増幅された異なる標的のセット(例えば16個)があるため、384個すべてのLDRプライマーを同時に追加でき、また各自それらが選別されることになる。これにより、わずか4つのLDR反応で768個の標的を正確に定量及び計数することができる。
【0376】
仮想実施例12-未知の病原体の同定及びジェノタイピングのためのPCR-PCR-シーケンシングの使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロポアが11,040、及び列あたりのマイクロポアが529,920である、48の二重列×48の二重行=2,304個の細区画を備える、標的シーケンシング用の25,436,160マイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する。固定したプライマーを用いたマルチプレックス増幅については、図35を参照のこと。固体表面での増幅を完了まで促進することに関する詳細については、図36図37、及び図38を参照のこと。
【0377】
アッセイは、2,304~9,216個の潜在的標的を同定及びジェノタイピングするように設計することができる。カートリッジを準備するにあたり、カートリッジを組み立てる前に、アレイの前面に48×48個のPCRプライマーペアを、背面には48×48個のPCRシーケンシングプライマーをスポットし、それらを乾燥させる必要がある。
【0378】
1.潜在的標的が2,304~9,216個である試料の初回マルチプレックス増幅を行う。初期反応チャンバー内で、10サイクルのPCRを実行し、元の各病原体の最大1,024コピーを得る。
【0379】
2.最初のマルチプレックス産物を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーへの元の各病原体標的の平均分配数は20コピーである。遺伝子座特異的ネステッドプライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。32個ずつ2~3サイクルのネステッドPCRを実行すると、元の各病原体の最大80~160コピーが得られる。場合により、UDG/APE1を用いて産物からユニバーサルプライマー配列を除去し、マイクロポア内の固定されたプライマーへの産物のハイブリダイゼーションを改善する。
【0380】
3.各ウェルまたは一次PCR反応チャンバーの産物を529,920個のマイクロポアに分配する。各マイクロポア内で複数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0381】
同じ48個の細区画にシーケンシングプライマーを追加した、未知の病原体の同定及びジェノタイピングのためのPCR-PCR-シーケンシング:
シーケンシングプライマーを同方向に、すなわち再分割せずに追加する場合、48×n個の潜在的標的が存在し、529,920/n個のマイクロポア/細区画である。
【0382】
これに対処する方法はいくつかある。一つの手法は一般に、細菌病原体がウイルス病原体よりも低レベルで存在することである。本来のPCRサイクルには、第2のプライマーを用いないウイルス病原体のRT工程が含まれる場合があるため、細菌の断片ほど多くは増幅されない。また、本来のPCR工程はサイクルが少ない可能性がある。したがって、529,920個のマイクロポア/区分(列)で、一部の病原体がより多く存在する場合、すなわち一部が2,000コピー存在し、それ以外が5コピー存在する場合であっても、区分(列)あたり32個の標的をシーケンシングするのは不合理というわけではない。また、192個のシーケンシングプライマー×48のセットがデバイスに分配されることにも留意されたい。その場合、1回のシーケンシングランで9,216個の潜在的標的を同時に検出すると共に、529,920個のマイクロポアのポアソン分布を利用することが可能である。
【0383】
もう一つの手法は、ユニバーサルプライマーと、固体支持体に結合されていない側のネステッドPCRプライマーの標的特異的配列との間に8~16塩基の固有の配列を組み込むことである。これにより、より多くのユニバーサルシーケンシングプライマーの3’側の8~16塩基を使用して、潜在的標的のセットをシーケンシングすることが可能である。
【0384】
第1の8~16種のシーケンシングプライマーのセットは、共通の5’配列(16塩基)及び可変3’配列(8塩基)を含み得る。または、第2の64~256種のシーケンシングプライマーのセットは、共通の5’配列(8塩基)、中間の可変配列(8塩基、8~16種の変異体)、及び超可変3’配列(8塩基、64~256種の変異体)を含み得る。
【0385】
仮想実施例13-血漿から低存在量の変異及び/またはCpGメチル化を直接同定及び計数するためのPCR-PCR-シーケンシングの使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロポアが2,760、及び列あたりのマイクロポアが88,320である、48×32=1,536個の細区画を備える、標的シーケンシング用の4,239,360マイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する。図40~46及び図48を参照のこと。
【0386】
1.初期試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。血漿中の最高レベルのDNA=10,000ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり200コピーであり、最大1つの変異がある。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。
【0387】
2.UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーの産物を88,320個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の標的は区分(列)あたり約1200コピーを有し、変異が存在する場合、「ワトソン鎖」が約3コピーと「クリック鎖」が約3コピー存在するはずである。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各ウェル内で多数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0388】
3.72個のシーケンシングプライマーを追加し、必要な場合には重複領域を含む、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方について、36個の標的領域をカバーする。約80塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成する。
【0389】
4.追加の72個のシーケンシングプライマーを追加する。現行のカートリッジは、4ラウンドのシーケンシング=288プライマー、すなわち両方の鎖の144の標的領域をカバーし、各変異を正確に計数する余地を容易に有する。
【0390】
注1:元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。
【0391】
注2:また、マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~12塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均72個の産物がシーケンシングされる。次のシーケンシングプライマーで次の72個の断片のシーケンシングを繰り返す。
【0392】
血漿中の低存在量CpGメチル化の同定及び定量の場合(変異と組み合わせた場合;バイサルファイト-PCR-PCR-シーケンシングを使用。図51及び図52を参照):
1.初期反応チャンバー内で試料をBsh1236Iで消化する。バイサルファイトで処理する。鎖を再精製する。
【0393】
2.バイサルファイト処理した試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。RE切断後の血漿中の最高レベルのDNA=200ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり4コピーであり、最大1つのメチル化がある。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。元のメチル化DNAのトップ鎖の4つのコピーとボトム鎖の4つのコピーを得る。
【0394】
3.UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーの産物を88,320個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の標的は一次PCR反応チャンバーあたり約16コピーを有し、メチル化領域が存在する場合、「ワトソン鎖」が約3コピーと「クリック鎖」が約3コピー存在するはずである。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各ウェル内で多数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0395】
4.メチル化領域をカバーするために要求される数のシーケンシングプライマーを追加する。(すべてのメチル化領域を正確に計数して、理論上、1回のシーケンシングランで2,760のメチル化領域をカバーすることができる)。
【0396】
注1:元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。
【0397】
バイサルファイト-PCR-PCRシーケンシングを使用した、血漿中の低存在量CpGメチル化の同定及び定量(単独で行う場合):
1.初期反応チャンバー内で試料をBsh1236Iで消化する。バイサルファイトで処理する。鎖を再精製する。
【0398】
2.バイサルファイト処理した試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。RE切断後の血漿中の最高レベルのDNA=200ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり4コピーであり、最大1つのメチル化がある。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。1つの鎖に対して11サイクルの断片識別子PCRを実行する。1つの鎖の元のメチル化DNAの1,024コピーが得られる。
【0399】
3.UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーの産物を88,320個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の標的は区分(列)あたり約100コピーを有し、メチル化領域が存在する場合、その鎖が約24コピー存在するはずである。各ウェル内で複数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0400】
4.12個の標的それぞれに対する12個のシーケンシングプライマーを32個の細区画に垂直に追加する。384個の潜在的メチル化標的を同時にシーケンシングすることができる。2,760個のマイクロポアのポアソン分布により、メチル化標的を計数することができる。すべてのメチル化領域を正確に計数して、合計384個の潜在的なメチル化標的領域を同時に評価することができる。
【0401】
注1:元の標的特異的な第2のプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。
【0402】
仮想実施例14-血漿から低存在量の変異及び/またはCpGメチル化を直接同定及び計数するためのPCR-PCR-シーケンシングの使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロポアが11,040、及び列あたりのマイクロポアが529,920である、48の二重列×48の二重行=2,304個の細区画を備える、標的シーケンシング用の25,436,160マイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する。図40~46及び図48を参照のこと。
【0403】
1.初期試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。血漿中の最高レベルのDNA=10,000ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり200コピーであり、最大1つの変異がある。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。
【0404】
2.UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーからの産物を529,920個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の標的は区分(列)あたり約1200コピーを有し、変異が存在する場合、「ワトソン鎖」が約3コピーと「クリック鎖」が約3コピー存在するはずである。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各ウェル内で多数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0405】
3.256個のシーケンシングプライマーを追加し、必要な場合には重複領域を含む、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方について、128個の標的領域をカバーする。約80塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成する。529,920個のマイクロポアのうち約307,200個のマイクロポアで配列情報が生成され、これらの約75%で、シーケンシングラウンドあたり1つのPCR産物からのリードが得られることになる。
【0406】
4.必要とする数の標的領域をシーケンシングするために、さらに256個のシーケンシングプライマーを必要な頻度で追加する。
【0407】
注1:元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。
【0408】
注2:マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~16塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均256個の産物がシーケンシングされる。次のシーケンシングプライマーで次の256個の断片のシーケンシングを繰り返す。
【0409】
血漿中の低存在量CpGメチル化の同定及び定量の場合(変異と組み合わせた場合;バイサルファイト-PCR-PCR-シーケンシングを使用。図51を参照):
1.初期反応チャンバー内で試料をBsh1236Iで消化する。バイサルファイトで処理する。鎖を再精製する。
【0410】
2.バイサルファイト処理した試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。RE切断後の血漿中の最高レベルのDNA=200ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり4コピーであり、最大1つのメチル化がある。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。元のメチル化DNAのトップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。
【0411】
3.UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーからの産物を529,920個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の標的は区分(列)あたり約16コピーを有し、メチル化領域が存在する場合、「ワトソン鎖」が約3コピーと「クリック鎖」が約3コピー存在するはずである。標的特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各ウェル内で多数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0412】
4.メチル化領域をカバーするために要求される数のシーケンシングプライマーを追加する。すべてのメチル化領域を正確に計数して、理論上、1回のシーケンシングランで19,200のメチル化領域をカバーすることができる。したがって、メチル化領域だけに対応するマスターの共通配列を使用すれば、この単一のプライマーによって、1回のランですべてのメチル化領域をカバーすることができる。
【0413】
注1:元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。
【0414】
バイサルファイト-PCR-PCRシーケンシングを使用した、血漿中の低存在量CpGメチル化の同定及び定量(単独で行う場合):
1.初期反応チャンバー内で試料をBsh1236Iで消化する。バイサルファイトで処理する。鎖を再精製する。
【0415】
2.バイサルファイト処理した試料を48個のウェルまたは一次PCR反応チャンバーに分配する。RE切断後の血漿中の最高レベルのDNA=200ゲノム相当である。平均して、各標的は一次PCR反応チャンバーあたり4コピーであり、最大1つのメチル化がある。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。1つの鎖に対して11サイクルの断片識別子PCRを実行する。1つの鎖の元のメチル化DNAの1,024コピーが得られる。
【0416】
3.UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーからの産物を529,920個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の標的は区分(列)あたり約100コピーを有し、メチル化領域が存在する場合、その鎖が約24コピー存在するはずである。各ウェル内で複数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0417】
4.メチル化領域をカバーするために要求される数のシーケンシングプライマーを追加する。すべてのメチル化領域を正確に計数して、理論上、1回のシーケンシングランで19,200のメチル化領域をカバーすることができる。したがって、メチル化領域だけに対応するマスターの共通配列を使用すれば、この単一のプライマーによって、1回のランですべてのメチル化領域をカバーすることができる。
【0418】
注1.元の標的特異的な第2のプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。
【0419】
仮想実施例15-血漿からの直接的なトリソミーの非侵襲的出生前検査(NIPT)のためのPCR-PCR-シーケンシングの使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロポアが2,760、及び列あたりのマイクロポアが88,320である、48×32=1,536個の細区画を備える、標的シーケンシング用の4,239,360マイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する。図50を参照のこと。
【0420】
1.血漿/試料中のDNAを2,000ゲノム相当に調整する。初期試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。平均して、各遺伝子座は一次PCR反応チャンバーあたり40コピーであり、異なるSNPがある。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。
【0421】
2.UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーの産物を88,320個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の遺伝子座は区分、すなわち列あたり約240コピーを有することになる(ワトソン鎖で120とクリック鎖で120)。遺伝子座特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各ウェル内で多数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0422】
3.368個のシーケンシングプライマー(または1つのプライマー、以下の注2を参照)を追加し、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方について、184個の遺伝子座領域をカバーする。約50塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成する。
【0423】
4.追加の368個のシーケンシングプライマー(または1つのプライマー、以下の注2を参照)を追加する。現行のカートリッジは、4ラウンドのシーケンシング=両鎖の736の遺伝子座領域をカバーし、ワトソン鎖とクリック鎖の両方で各SNPを正確に計数する余地を有する。
【0424】
基本的な考え方は、各鎖のコピーが存在する数を計数することである。48区分、すなわち48列のそれぞれにおいて、ワトソン鎖がクリック鎖と一致する必要があるため(各鎖の一方と所与の断片から生成されるため)、これは鎖の欠失またはその他のエラーの内部標準となる。2番(対照)、13番、18番、21番、X、及びY染色体の複数の固有の遺伝子座を使用して、コピー数を確定し、ならびにトリソミーまたは他の染色体コピーの変化を識別する。
【0425】
上記の計算は、平均して約50%のマイクロポアに充填されることを基準とする。(ポアソン分布:平均ラムダ=0.4;初期比率x=0)。そのような条件下では、マイクロポアの約60%は何もシーケンシングリードが得られず、約30%は固有(すなわち単一リード)であり、約7.5%で二重リードが得られ、及び約1.3%で三重リードが得られることになる。実用レベルでは、SNPを区別するには単一リードが明確である。遺伝子座の決定には二重リードを使用できるが、SNPを区別するには二重リードを使用すべきではない。単一リードから二重リードまでで、90%を超える鎖がカバーされ、またその分布は本質的にランダムであるため、初期試料に存在する各鎖の正確性の高い計数がこの手法で可能になるはずである。
【0426】
注1:元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。
【0427】
注2:マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~12塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均368個の産物がシーケンシングされる。次のシーケンシングプライマーで次の368個の断片のシーケンシングを繰り返す。
【0428】
仮想実施例16-血漿からの直接的なトリソミーの非侵襲的出生前検査(NIPT)のためのPCR-PCR-シーケンシングの使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロポアが11,040、及び列あたりのマイクロポアが529,920である、48の二重列×48の二重行=2,304個の細区画を備える、標的シーケンシング用の25,436,160マイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する。図50を参照のこと。
【0429】
1.血漿/試料中のDNAを2,000ゲノム相当に調整する。初期試料を48個の一次PCR反応チャンバーに分配する。平均して、各遺伝子座は一次PCR反応チャンバーあたり40コピーであり、異なるSNPがある。遺伝子座特異的プライマーは、標的に結合した場合にのみRNaseH2によりブロック解除される。各鎖がわずかに異なる配列をカバーする両方の鎖について、3サイクルの断片識別子PCRを実行する。トップ鎖の4つのコピーと、ボトム鎖の4つのコピーを得る。
【0430】
2.UDG/APE1で処理して、各一次PCR反応チャンバーの産物を529,920個のマイクロポアに分配する。75%が捕捉されると想定すると、所与の遺伝子座は区分、すなわち列あたり約240コピーを有することになる(ワトソン鎖で120とクリック鎖で120)。遺伝子座特異的ネステッドプライマー及びユニバーサルプライマーを使用して、各ウェル内で多数の産物をPCR増幅し、固定されていない鎖を溶解させる。
【0431】
3.2,208個のシーケンシングプライマー(または1つのプライマー、以下の注2を参照)を追加し、ワトソン鎖及びクリック鎖の両方について、1,104個の遺伝子座領域をカバーする。約50塩基の配列情報に加えて、10塩基の固有の断片識別子バーコードを生成する。
【0432】
4.追加の2,208個のシーケンシングプライマー(または1つのプライマー、以下の注2を参照)を追加する。
【0433】
基本的な考え方は、各鎖のコピーがいくつ存在するかを計数することである。48区分、すなわち48列のそれぞれにおいて、ワトソン鎖がクリック鎖と一致する必要があるため(各鎖の一方と所与の断片から生成されるため)、これは鎖の欠失またはその他のエラーの内部標準となる。2番(対照)、13番、18番、21番、X、及びY染色体の複数の固有の遺伝子座を使用して、コピー数を確定し、ならびにトリソミーまたは他の染色体コピーの変化を識別する。
【0434】
上記の計算は、平均して約50%のマイクロポアに充填されることを基準とする。(ポアソン分布:平均ラムダ=0.4;初期比率x=0)。そのような条件下では、マイクロポアの約60%は何もシーケンシングリードが得られず、約30%は固有(すなわち単一リード)であり、約7.5%で二重リードが得られ、及び約1.3%で三重リードが得られることになる。実用レベルでは、SNPを区別するには単一リードが明確である。遺伝子座の決定には二重リードを使用できるが、SNPを区別するには使用すべきではない。単一リードから二重リードまでで、90%を超える鎖がカバーされ、またその分布は本質的にランダムであるため、初期試料に存在する各鎖の正確性の高い計数がこの手法で可能になるはずである。
【0435】
注1:元のネステッドプライマーをシーケンシングプライマーとして使用することもできる。
【0436】
注2:マスターの共通配列と、さらに異なる断片を固有にシーケンシングする3’末端の8~16塩基とを含む共通配列の異なるセットで構成されるネステッドプライマーを設計することができ、それにより個々のシーケンシングプライマーあたり平均368個の産物がシーケンシングされる。次のシーケンシングプライマーで次の1,104個の断片のシーケンシングを繰り返す。
【0437】
仮想実施例17-希少及び過剰発現両方のlncRNA、mRNA、またはスプライス変異体の正確な計数のための、PCR-PCR-Taqman(商標)またはPCR-PCR Unitaq検出の使用
以下に記載するアッセイは、細区画あたりのマイクロポアが2,760、及び列あたりのマイクロポアが88,320である、48×32=1,536個の細区画を備える、標的シーケンシング用の4,239,360マイクロポアアレイ形式用のカートリッジを使用する。図53及び図54を参照のこと。アッセイは、1,536個の潜在的標的を検出及び定量するように設計することができる。
【0438】
1.潜在的標的が1,536個である試料の初回マルチプレックス逆転写/増幅を行う。初期反応チャンバーで9サイクルのPCRを実行し、元の各転写産物の最大512コピーを得る。プライマー二量体の増幅を抑制するために、すべての逆転写及びPCRプライマーに好ましくは10~11塩基の同じ5’テール配列が含まれる必要がある。
【0439】
2.最初のマルチプレックス産物を24個の一次PCR反応チャンバーに分配する。各一次PCR反応チャンバーへの元の各転写産物の平均分配数は20コピーである。UniTaqテールをもつプライマーを一次PCR反応チャンバーごとに32個組の固有のプライマーセットにして使用し、10サイクルのネステッドPCRを実行すると、元の各転写産物の最大20,480コピーが得られる。この例では、最小数で、おおよそ元のRNA転写産物1個で20,480コピーが得られ、元のRNA転写産物100個で2,048,000コピーが得られ、元のRNA転写産物10,000個で204,800,000コピーが得られることになり、3つの異なる転写産物セットが正確に定量される。
【0440】
3.24個の各一次PCR反応チャンバーは、排出後も反応物中に一定比率の液体量を保持するように設計されている。この例では、ネステッドPCR反応物の全体積は80単位に指定され、保持量は40単位以下に指定される。この例示では、一次PCR反応チャンバー1~8のマルチプレックス増幅プライマーセットは低レベルの転写産物(40単位の液体を保持)に対応し、一次PCR反応チャンバー9~16は高レベルの転写産物(10単位の液体を保持)に対応し、一次PCR反応チャンバー17~24は高レベルの転写産物(3単位の液体を保持)に対応する。最初の排出後に残留する液体及び最小コピーの計算値は以下の通りである:
【0441】
ポリメラーゼを阻害する抗体を含む新しいマスターミックス40μを残留液体に加え、再び排出する:
【0442】
ポリメラーゼを阻害する抗体を含む新しいマスターミックス40μを残留液体に加え、再び排出する:
【0443】
新しいマスターミックス40μを残留液体に加え、今度は上方に流入させ、合計体積が20単位であり、10単位以下を保持できる、二次反応/希釈チャンバーA及びBに等分する。
SRチャンバー9~16、ならびに17~24は、上記の約2倍の分子数を有することになる。
【0444】
新しいマスターミックス10μを上方チャンバー内の残留液体に加え、再び排出する:
SRチャンバー9~16、ならびに17~24は、上記の約2倍の分子数を有することになる。
【0445】
最後に、十分なマスターミックスが追加され、同時に残留産物及び試薬はすべて、マイクロポア内への移動に備えて、より大きい混合チャンバーに移動される。
【0446】
4.各二次反応/希釈チャンバーの産物を88,320個のマイクロポアに分配する。平均して、Aの二次反応/希釈チャンバーそれぞれに元の各転写産物が5コピー得られ、Bの二次反応/希釈チャンバーでは約200分の1に減少する。UniTaqプライマーセットを使用して各マイクロポア内で潜在的な産物をPCR増幅し、各細区画の各マイクロポア内のCt値を測定する。(任意:UniTaqプライマーで2種類または4種類の蛍光色素を使用して、転写産物の総数を2倍または4倍にすることができる)。2,760個のマイクロポアのポアソン分布により、Aの二次反応/希釈チャンバー内の極少のコピー転写産物の計数が可能になり、Bの二次反応/希釈チャンバーの2,760個のマイクロポアにわたるポアソン分布により、3桁の規模でコピー数が多い転写産物の計数が可能になる。
【0447】
二次反応/希釈チャンバー1~8では、1個(「A」列の2,760個のマイクロポアのうち平均約5個に充填)から約110,000~220,000個(「B」列の2,760個のマイクロポアのうち平均約1,766~2,290個に充填)までの範囲の開始転写産物を正確に計数する。
【0448】
二次反応/希釈チャンバー3及び4では、100個(「A」列の2,760個のマイクロポアのうち平均約10個に充填)から約11,000,000~22,000,000個(「B」列の2,760個のマイクロポアのうち平均約1,766~2,290個に充填)までの範囲の開始転写産物を正確に計数する。
【0449】
二次反応/希釈チャンバー5及び6では、10,000個(「A」列の2,760個のマイクロポアのうち平均約10個に充填)から約1,100,000,000~2,200,000,000個(「B」列の2,760個のマイクロポアのうち平均約1,766~2,290個に充填)までの範囲の開始転写産物を正確に計数する。
【0450】
注1:このアッセイ形式の成否は、UniTaqプライマーによって、例えばネステッドプライマーとのプライマー二量体が形成されないかどうかによる。3’ブロックされたUniTaqプライマーと、RNA塩基のブロックを解除するRNaseH2を使用すると、この問題が解決すると考えられる。同じ3’ブロック/RNaseの手段をネステッドプライマーセットにも使用できるが、病原体の配列のずれがプライマーによる特定の標的の増幅を妨げる可能性があるため、ネステッドプライマーの効果が減少するリスクがわずかながら存在する。
【0451】
注2:UniTaqプライマーを使用する一つの利点は、それらを互いに極めて近接して配置できるため、単一の初期標的転写産物から複数のネステッド産物を産生できることである。その結果、各転写産物領域内に2つのネステッドプライマーセットを含むプライマー設計が可能になる。これにより、所与の転写産物の二重検証が可能になる。この手法のもう一つの利点は、最初のマルチプレックス反応においてPCRプライマーの数が制限されていることである。さらなる利点は、これらのシグナルが異なる区分(列)に表示されるようにプライマーを設計することで、何らかの標的非依存性(偽)シグナルを低減できることである。
【0452】
注3:異なる希釈物を含む異なるチャンバーセットを設計する代替法として、PCRサイクル数の変更を含む異なる条件下で、個々の発熱体が異なるチャンバーで動作してもよい。
【0453】
同じ48の区分(すなわち列)にシーケンシングプライマーを追加して、希少及び過剰発現両方のlncRNA、mRNA、またはスプライス変異体の正確な計数:
シーケンシングプライマーを同方向に、すなわち再分割せずに追加する場合、48×n個の潜在的標的が存在し、88,320/n個のマイクロポア/細区画である。
【0454】
これに対処する方法は2つある。一つの手法は一般に、細菌病原体がウイルス病原体よりも低レベルで存在することである。本来のPCRサイクルには、第2のプライマーを用いないウイルス病原体のRT工程が含まれる場合があるため、細菌の断片ほど多くは増幅されない。また、本来のPCR工程はサイクルが少ない可能性があり、ネステッドPCR工程でもサイクルが少ない可能性がある。したがって、88,320個のマイクロポア/区分(列)で、一部の病原体がより多く存在する場合、すなわち一部が2,000コピー存在し、それ以外が5コピー存在する場合であっても、区分あたり32個の標的をシーケンシングするのは不合理というわけではない。また、32個のシーケンシングプライマー×48のセットがデバイスにプリントされることにも留意されたい。その場合、1回のシーケンシングランで1,536個の潜在的標的を同時に検出すると共に、2,760個のマイクロポアのポアソン分布を利用することが可能である。
【0455】
もう一つの手法は、ユニバーサルプライマーと、固体支持体に結合されていない側のネステッドPCRプライマーの標的特異的配列との間に8~12塩基の固有の配列を組み込むことである。これにより、より多くのユニバーサルシーケンシングプライマーの3’側の8~12塩基を使用して、潜在的標的のセットをシーケンシングすることが可能である。
【0456】
もう一つの手法は、ネステッドPCRプライマーのセットごとに異なるユニバーサルプライマーを使用し、さらに目的とするユニバーサルのセットを32分割してマイクロポア内にプリントすることである。これにより、各増幅産物が実質的に、規定した行及び列へ確実に送られることになる。この手法の利点は、様々な産物の個々のTaqman(商標)またはLDR検出も可能になることである。
【0457】
この案の変形例では、ユニバーサルプライマー配列はUniTaq配列である。望ましいUniTaqプライマーは、ポア内に32個ずつプリントされる。この手法は、すべてのプライマーの固定化を必要としないが、デンドリマーへのハイブリダイゼーションを使用して一時的に適所に保持することができる。
【0458】
48区分に分割した、4色LDR-FRET検出により、192個の標的を同時に高精度で計数することが可能である点に留意されたい。48区分のそれぞれに、増幅された異なる標的のセット(例えば16個)があるため、384個すべてのLDRプライマーを同時に追加でき、また各自それらが選別されることになる。これにより、わずか4つのLDR反応で768個の標的を正確に定量及び計数することができる。
【0459】
潜在的標的が384個の場合(UniTaqプライマーセットを垂直に追加し、組み立てる前に乾燥させる)。
アレイの前面に16個、32個、または64個いずれかのネステッドPCRプライマーペアを24箇所スポットする必要がある。
【0460】
仮想実施例18-スプリットUniTaqプローブ(UniRq)を用いたPCRプライマー設計の例
図18のスプリットUniTaqプローブ(UniRq)を用いたPCRプライマー設計の例:(Tm=64.6)(合計186bp;28+28bp TS DNA)
【0461】
OligoAnalyzer 3.1に基づくTm計算に関する注記:
所与のTm値は、内部太字配列tiとti’のヘアピンで62.6℃、構造全体で53.1℃である。
【0462】
所与のTm値は、内部斜字配列tjとtj’のヘアピンで59.7℃、構造全体で53.1℃である。
【0463】
離れた太字配列tiとti’は38.6℃でハイブリダイズする。
【0464】
離れた斜字配列tjとtj’は37.2℃でハイブリダイズする。
【0465】
離れた二重下線配列BiとBi’、及びBjとBj’のTmは、それぞれ30.2及び47.6である。
【0466】
4つのヘアピン領域を合計すると、ヘアピン全体のTmは64.6になる。
【0467】
可能性のあるプライマー二量体PCR産物(両方のスプリット相補体にハイブリダイズするプローブ部分のTm=54.4)
(注:プライマー二量体は正当な標的配列
を欠くため、そのような産物へのPCRプライマーのハイブリダイゼーションによって3’ブロックが遊離することはなく、そのため増幅もされない)
(上流標的配列;28bp)(下流標的配列;28bp)
【0468】
仮想実施例19-分離したスプリットUniTaqプローブ(UniSpTq)を用いたPCRプライマー設計の例
分離したスプリットUniTaqプローブを用いたPCRプライマー設計の例:(Tm=62.6)(合計156bp;28+28bp TS DNA)
【0469】
OligoAnalyzer 3.1に基づくTm計算に関する注記:
所与のTm値は、内部太字配列tiとti’のヘアピンで62.6℃、構造全体で53.1℃である。
【0470】
所与のTm値は、内部斜字配列tjとtj’のヘアピンで59.7℃、構造全体で53.1℃である。
【0471】
離れた太字配列tiとti’は38.6℃でハイブリダイズする。
【0472】
離れた斜字配列tjとtj’は37.2℃でハイブリダイズする。
【0473】
離れた二重下線配列BiとBi’、及びBjとBj’のTmは、それぞれ36.4及び42.7である。
【0474】
4つのヘアピン領域を合計すると、ヘアピン全体は62.6になる。
【0475】
可能性のあるプライマー二量体PCR産物(両方のスプリット相補体にハイブリダイズするプローブ部分のTm=51.4)
(注:プライマー二量体は正当な標的配列
を欠くため、そのような産物へのPCRプライマーのハイブリダイゼーションによって3’ブロックが遊離することはなく、そのため増幅もされない)
(上流標的配列;28bp)(下流標的配列;28bp)
【0476】
仮想実施例20-スプリットUniTaqプローブ(UniSpTq)を用いたLDRプライマー設計の例
図21のスプリットUniTaqプローブ(UniSpTq)を用いたLDRプライマー設計の例(Tm=66.6)(合計170bp;60bp TS DNA)
【0477】
OligoAnalyzer 3.1に基づくTm計算に関する注記:
所与のTm値は、内部太字配列ziとzi’のヘアピンで64℃、構造全体で57.4℃である。
【0478】
離れた太字配列ziとzi’は42.9℃でハイブリダイズする。
【0479】
離れた二重下線配列BiとBi’、及びBjとBj’のTmは、それぞれ35.1及び50.3である。
【0480】
3つのヘアピン領域を合計すると、Tmは66.6になる。
【0481】
本実施例は、従来のUniTaqと同様、プライマーの1つにプローブが結合されたスプリットジップコード設計を使用する方法を示している。この実施例の利点は、プローブオリゴヌクレオチドが上流LDRプライマーまたは下流LDRプライマーのいずれにもハイブリダイズするが、2つに分離したLDRプローブが共有結合し、互いにハイブリダイズできる場合にのみ両方にハイブリダイズすることである。上記のように、LDR反応は10nMのプローブで実行され、UniTaq反応を開始するときに産物が10倍に希釈される。これは、LDRプライマーの最大濃度が1nM、すなわちUniTaqプローブ濃度の約250~500分の1であることを意味する。したがって、上記のように、プローブの2つが1nMの場合、3方向のハイブリダイゼーションの可能性はゼロに低下する。ただし、LDR産物が存在する場合は、それが増幅され、産物の全体濃度が増加して、単に1分子がそれ自体にハイブリダイズするだけになる(結合されたUniTaqプローブを含む増幅LDR産物)。
【0482】
仮想実施例21-分離したスプリットUniTaqプローブ(UniSpTq)を用いたLDRプライマー設計の例
分離したスプリットUniTaqプローブを用いたLDRプライマー設計の例:(Tm=65.2)(合計150bp;60bp TS DNA)
【0483】
OligoAnalyzer 3.1に基づくTm計算に関する注記:
所与のTm値は、内部太字配列ziとzi’のヘアピンで64℃、構造全体で56.3℃である。
【0484】
離れた太字配列ziとzi’は44.7℃でハイブリダイズする。
【0485】
離れた二重下線配列BiとBi’、及びBjとBj’のTmは、それぞれ43.0及び45.9である。
【0486】
3つのヘアピン領域を合計すると、Tmは65.2になる。
【0487】
本実施例は、分離プローブを用いたスプリットジップコード設計を使用する方法を示している。この実施例の利点は、プローブオリゴヌクレオチドが上流LDRプライマーまたは下流LDRプライマーのいずれにもハイブリダイズするが、2つに分離したLDRプローブが共有結合し、互いにハイブリダイズできる場合にのみ両方にハイブリダイズすることである。さらに重要な点として、平均的なPCR実験では100~500nMのプライマー濃度を使用するが、本明細書に記載のLDR反応では10nMのプライマー濃度を使用するとみなされる。産物はUniTaq反応を開始するときに10倍に希釈されるが、これは、LDRプライマーの最大濃度が1nM、すなわちUniTaqプローブ濃度の約250~500分の1であることを意味する。したがって、プローブの2つが1nMの場合、3方向のハイブリダイゼーションの可能性はゼロに低下する。ただし、LDR産物が存在する場合は、それが増幅され、産物の全体濃度が増加して、単に2分子が互いにハイブリダイズするだけになる(増幅されたLDR産物とUniTaqプローブ)。
【0488】
仮想実施例22-追加されたユニバーサルプローブ(UniLDq)の等温RNaseH2切断を用いたqLDRプライマー設計の例
追加されたユニバーサルプローブ(UniLDq;図22)の等温RNaseH2切断を用いたqLDRプライマー設計の例:(Tm=64.8)(合計145bp;60bp TS DNA)
【0489】
OligoAnalyzer 3.1に基づくTm計算に関する注記:
所与のTm値は、内部太字配列tiとti’のヘアピンで67℃、構造全体で67.7℃である。
【0490】
所与のTm値は、内部斜字配列tjとtj’のヘアピンで63.7℃、構造全体で67.7℃である。
【0491】
離れた太字配列tiとti’は38.6℃でハイブリダイズする。
【0492】
離れた斜字配列tjとtj’は37.2℃でハイブリダイズする。
【0493】
離れた二重下線配列BiとBi’、及びBjとBj’のTmは、それぞれ36.4及び42.7である。
【0494】
4つの二本鎖ステム領域を合計すると、Tm値は64.8になる。
【0495】
仮想実施例23-追加された標的特異的プローブ(TsLDq)の等温RNaseH2切断を用いたqLDRプライマー設計
追加された標的特異的プローブ(TsLDq;図23)の等温RNaseH2切断を用いたqLDRプライマー設計の例(Tm=62)(合計84bp、B-raf V600E変異の例)。
【0496】
OligoAnalyzer 3.1に基づくTm計算に関する注記:
上流及び下流のLDRプライマーの組み合わせ部分
14-mer、Tm50.5℃
【0497】
離れた二重下線配列Bi及びBi’:
のTmは47.8℃である。
【0498】
2つの二本鎖ステム領域を合計すると、Tm値は62℃になる。
【0499】
本明細書で好ましい実施形態を示し、詳細に説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、種々の変更、追加、置換などがなされ得るため、これらも以下の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲内にあるとみなされることは当業者に明らかであろう。
【0500】
配列情報
SEQUENCE LISTING
<110> Cornell University
<120> DEVICES, PROCESSES, AND SYSTEMS FOR DETERMINATION OF NUCLEIC ACID
SEQUENCE, EXPRESSION, COPY NUMBER, OR METHYLATION CHANGES USING
COMBINED NUCLEASE, LIGASE, POLYMERASE, AND SEQUENCING REACTIONS
<150> US 62/478,412
<151> 2017-03-29
<160> 67
<170> PatentIn version 3.5

<210> 1
<211> 24
<212> DNA
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<210> 4
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nnnnnnnnnn nnnnnncagt atcg 24

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<211> 24
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nnnnnnnnnn nnnnnncagt tagc 24

<210> 16
<211> 24
<212> DNA
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<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(16)
<223> n at positions 1-16 can be a, g, c, or t
<400> 16
nnnnnnnnnn nnnnnncagt cgat 24

<210> 17
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<212> DNA
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<220>
<223> primer
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tcagtatcgg cgtagtcacc tgttttgttg atcactatcg ga 42

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tcgacgatag gtttccgcac tcacaggcag ctagcgatag tac 43

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<222> (6)..(6)
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tcacanggca gcacaacaaa acatcagtat cggcgtagtc acc 43

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tcgacgatag gtttccgcac 20

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<220>
<223> primer
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<220>
<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 is RNA
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tcacanggca gcacaacaaa acatcagtat cggcgtagtc acctgttttg ttgatcacta 60
tcgga 65

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<223> primer
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nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnntc cgatagtgaa agcgatagta c 51

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<212> DNA
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<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(28)
<223> n at positions 1-28 can be a, g, c, or t
<400> 23
nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnngt actatcgcta gctgcctgtg agtgcggaaa 60
cctatcgtcg a 71

<210> 24
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
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tccgatagtg aaagcgatag tac 23

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<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
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<223> n at position 6 can be a, g, c, or u
<220>
<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 is RNA
<400> 25
tcacanggca gcacaacaaa acatcagtat cggcgtagtc acctgttttg ttgatcacta 60
tcgga 65

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<212> DNA
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<223> primer
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<223> n at positions 1-56 can be a, g, c, or t
<400> 26
nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnngtac 60
tatcgctagc tgcctgtgag tgcggaaacc tatcgtcga 99

<210> 27
<211> 43
<212> DNA
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<220>
<223> primer
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tcagtatcgg cgtagtcacc gagtttcctt gatcactatc gga 43

<210> 28
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<212> DNA
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<220>
<223> primer
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tcgacgatag gtttccgcac tcacagtcag ctagcgatag tac 43

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<220>
<223> primer
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tcagtatcgg cgtagtcacc 20

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<221> misc_feature
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<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 can be a, g, c, or u
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<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 is RNA
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tcacangtca gcacaaggaa actc 24

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<223> primer
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tcagtatccg cgtagtcacc gagtttcctt gatcactatc gga 43

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<212> DNA
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<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(28)
<223> n at positions 1-28 can be a, g, c, or t
<400> 34
nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnntc cgatagtgaa agcgatagta c 51

<210> 35
<211> 71
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(28)
<223> n at positions 1-28 can be a, g, c, or t
<400> 35
nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnngt actatcgcta gctgactgtg agtgcggaaa 60
cctatcgtcg a 71

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<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 36
tccgatagtg aaagcgatag tac 23

<210> 37
<211> 24
<212> DNA
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<223> probe
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<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 can be a, g, c, or u
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<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 is RNA
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tcacangtca gcacaaggaa actc 24

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<211> 43
<212> DNA
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tcagtatccg cgtagtcacc gagtttcctt gatcactatc gga 43

<210> 39
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<212> DNA
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<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(56)
<223> n at positions 1-56 can be a, g, c, or t
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nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnngtac 60
tatcgctagc tgactgtgag tgcggaaacc tatcgtcga 99

<210> 40
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<212> DNA
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<223> primer
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tcagtatcgg cgtagtcacc ctgttttgtt gatcactatc ggac 44

<210> 41
<211> 75
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(30)
<223> n at positions 1-30 can be a, g, c, or t
<400> 41
nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn gtccgatagt gaagctgcct gtgaggtgcg 60
gaaacctatc gtcga 75

<210> 42
<211> 44
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 42
ctcacaggca gcacaacaaa acagtcagta tcggcgtagt cacc 44

<210> 43
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 43
tcgacgatag gtttccgcac 20

<210> 44
<211> 68
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> probe
<400> 44
ctcacaggca gcacaacaaa acagtcagta tcggcgtagt caccctgttt tgttgatcac 60
tatcggac 68

<210> 45
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<212> DNA
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<221> misc_feature
<222> (1)..(60)
<223> n at positions 1-60 can be a, g, c, or t
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nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn 60
gtccgatagt gaagctgcct gtgaggtgcg gaaacctatc gtcga 105

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<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 46
tcagtatcgg cgtagtcacc cgagtttcct tgatcacttt cggac 45

<210> 47
<211> 75
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(30)
<223> n at positions 1-30 can be a, g, c, or t
<400> 47
nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn gtccgaaagt gaagctgact gtgaggtgcg 60
gaaacctatc gtcga 75

<210> 48
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 48
tcagtatcgg cgtagtcacc 20

<210> 49
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 49
tcgacgatag gtttccgcac 20

<210> 50
<211> 25
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> probe
<400> 50
ctcacagtca gcacaaggaa actcg 25

<210> 51
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 51
tcagtatcgg cgtagtcacc cgagtttcct tgatcacttt cggac 45

<210> 52
<211> 105
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(60)
<223> n at positions 1-60 can be a, g, c, or t
<400> 52
nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn 60
gtccgaaagt gaagctgact gtgaggtgcg gaaacctatc gtcga 105

<210> 53
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 53
gagtttcctt gatcactatc gga 23

<210> 54
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (13)..(13)
<223> n at position 13 can be a, g, c, or u
<220>
<221> misc_feature
<222> (13)..(13)
<223> n at position 13 is RNA
<400> 54
tccgatagtg aanagcgg 18

<210> 55
<211> 11
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 55
agcgatagta c 11

<210> 56
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 56
gtactatcgc tagctgactg tga 23

<210> 57
<211> 24
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> probe
<220>
<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 can be a, g, c, or u
<220>
<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 is RNA
<400> 57
tcacangtca gcacaaggaa actc 24

<210> 58
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 58
gagtttcctt gatcactatc gga 23

<210> 59
<211> 42
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (1)..(30)
<223> n at positions 1-30 can be a, g, c, or t
<400> 59
nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn tccgatagtg aa 42

<210> 60
<211> 41
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (12)..(41)
<223> n at positions 12-41 can be a, g, c, or t
<400> 60
agcgatagta cnnnnnnnnn nnnnnnnnnn nnnnnnnnnn n 41

<210> 61
<211> 23
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 61
gtactatcgc tagctgactg tga 23

<210> 62
<211> 53
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<220>
<221> misc_feature
<222> (48)..(48)
<223> n at position 48 can be a, g, c, or u
<220>
<221> misc_feature
<222> (48)..(48)
<223> n at position 48 is RNA
<400> 62
cgagtttcct tggagtccta aataggtgat tttggtctag ctacgganga gac 53

<210> 63
<211> 37
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 63
gaaatctcga tggagtgggt cccatttggt acgagat 37

<210> 64
<211> 84
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 64
cgagtttcct tggagtccta aataggtgat tttggtctag ctacggagaa atctcgatgg 60
agtgggtccc atttggtacg agat 84

<210> 65
<211> 29
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> probe
<220>
<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 can be a, g, c, or u
<220>
<221> misc_feature
<222> (6)..(6)
<223> n at position 6 is RNA
<220>
<221> misc_feature
<222> (7)..(7)
<223> n at position 7 is u
<220>
<221> misc_feature
<222> (7)..(7)
<223> n at position 7 is an RNA
<400> 65
cgagannttc tccgtaccaa ggaaactcg 29

<210> 66
<211> 14
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 66
acggagaaat ctcg 14

<210> 67
<211> 13
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> primer
<400> 67
cgagtttcct tgg 13
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13
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図16
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図20
図21
図22
図23
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図25
図26
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41
図42
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図49
図50
図51
図52
図53
図54
【配列表】
0007610774000001.xml