(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20241226BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20241226BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20241226BHJP
C08K 3/105 20180101ALI20241226BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/105
C08K7/00
(21)【出願番号】P 2023219811
(22)【出願日】2023-12-26
【審査請求日】2024-08-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】胡 皓
(72)【発明者】
【氏名】小澤 洸太
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-113308(JP,A)
【文献】特開2000-309638(JP,A)
【文献】特開2021-155621(JP,A)
【文献】特開2002-088252(JP,A)
【文献】特許第4748541(JP,B2)
【文献】特開2005-089706(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102372904(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114479274(CN,A)
【文献】国際公開第2017/038623(WO,A1)
【文献】特開昭62-020574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光輝性顔料(A)、カーボンブラック(B)、ポリオレフィンワックス(C)、およびポリオレフィン樹脂(D)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、カーボンブラック(B)を
1.1~10質量%、
光輝性顔料(A)を15~55質量%含み、
カーボンブラック(B)とポリオレフィンワックス(C)の含有質量比(B)/(C)が、0.1~
2であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
光輝性顔料(A)がアルミニウムフレークを含む、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
光輝性顔料(A)の平均粒子径が5μm~100μmである、請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3いずれか1項記載の熱可塑性樹脂組成物から形成してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物、および該熱可塑性樹脂組成物から形成してなる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂組成物から形成されてなる成形品は、比較的安価で優れた特性を有することから、自動車部品、家電部品、OA用品、建材用品、装飾用品など多岐の分野にわたって使用されているが、このような成形品の外観や触感は、金属材料、無機材料又は木材からなる成形品と比較して、安っぽい印象を与えることがある。そのため、金属のようなメタリック感がある高意匠性な成形品を提供することが求められている。そして、メタリック調外観とするために、メタリック調の塗料を用いて塗装処理を施す方法が知られている。しかし、製造工程の簡略化や環境負荷の低減を考慮して、現在では無塗装で良好なメタリック調外観を示すことのできる成形品が求められている。
【0003】
無塗装化に対応する材料として、熱可塑性樹脂にアルミ顔料等の光輝性顔料を練り込んだ熱可塑性樹脂組成物が検討されている。
【0004】
たとえば特許文献1では、アルミ顔料を合成樹脂に練り込むことで、メタリック感を有する樹脂組成物が得られると記載されている。特許文献2では、光輝材を含有するポリプロピレン系樹脂組成物をキャビティ内表面に断熱層を設けた金型を用いて射出成形する方法が提案されている。特許文献3では、カーボンブラックとアルミフレークを使用することで、フリップフロップ性メタリック感のポリプロピレン樹脂組成物が得られている。特許文献4では、アルミ顔料を含有するマスターバッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特昭51-63847号公報
【文献】特開2000-313747号公報
【文献】特許第6868090号公報
【文献】特許第4748541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように光輝性顔料を用いることで、無塗装化でのメタリック調外観を達成することができる。しかしながら、光輝性顔料を練り込んだ成形品は、ウェルドラインやフローマークなどの成形不良が目立ちやすくなる傾向があることから、建材用品、自動車向けなどの大型部品へ使用することは困難な状況にある。さらに上記用途では屋外での使用が多く、成形品の耐光性と耐傷つき性も要求される。
【0007】
従来の成形品では、例えば特許文献2は、特殊な断熱層を設けた射出成形金型を用いる関係上、金型を冷却するために時間を要し、成形サイクルが長くなるという欠点がある。特許文献3では、カーボンブラックの分散性不良による色スジ、色ムラの外観不良および成形品の耐傷つき性不足の問題が残っている。特許文献4では、多く含有されるポリエチレンワックスにより、成形品の機械強度および耐光性に問題がある。
【0008】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、顔料の分散性に優れ、メタリック調外観と低ウェルドラインを両立し、優れた外観の成形品を形成することのできる樹脂組成物を得ることを目的とする。さらに機械物性、耐傷つき性、耐光性も良好な熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らが鋭意検討を重ねたところ、以下の態様において、本発明の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
[1]光輝性顔料(A)、カーボンブラック(B)、ポリオレフィンワックス(C)、およびポリオレフィン樹脂(D)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、カーボンブラック(B)を0.1~10質量%含み、
カーボンブラック(B)とポリオレフィンワックス(C)の含有質量比(B)/(C)が、0.1~10であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
[2]熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、光輝性顔料(A)を15~55質量%含む、[1]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]光輝性顔料(A)がアルミニウムフレークを含む、[1]または[2]記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]光輝性顔料(A)の平均粒子径が5μm~100μmである、[1]~[3]いずれか記載の熱可塑
[5][1]~[4]いずれか記載の熱可塑性樹脂組成物から形成してなる成形品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の熱可塑性樹脂組成物により、顔料の分散性に優れ、メタリック調外観を維持したまま、ウェルドラインを抑えた成形品とすることができる。さらに、機械物性、耐傷つき性、耐光性も良好な熱可塑性樹脂組成物を得られ、該熱可塑性樹脂組成物から形成してなる成形品は、自動車内外装材、建材、家電製品外装等の様々な分野に非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を適用した実施形態の一例について説明する。但し、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に属し得る。また、本明細書で特定する数値「A~B」は、数値Aと数値Aより大きい値および数値Bと数値Bより小さい値を満たす範囲をいう。また、本明細書において「フィルム」、「シート」、および「プレート」は、同義であり、厚みによって区別されない。
また、「熱可塑性樹脂組成物」を「樹脂組成物」、「カーボンブラック」を「CB」、「ポリオレフィンワックス(C)」を「ワックス(C)」、「ポリオレフィン樹脂(D)」を「樹脂(D)」と表すことがある。
本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
なお、本明細書において特定する数値は、実施形態または実施例に開示した方法により求められる。
【0012】
≪熱可塑性樹脂組成物≫
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、光輝性顔料(A)、カーボンブラック(B)、ポリオレフィンワックス(C)、およびポリオレフィン樹脂(D)を含む。
また、前記熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、カーボンブラック(B)を0.1~10質量%含み、カーボンブラック(B)とポリオレフィンワックス(C)の含有質量比(B)/(C)が、0.1~10である。
このような樹脂組成物を用いることにより、光輝性顔料(A)およびカーボンブラック(B)といった顔料の分散性に優れ、メタリック調外観を維持し、かつ射出成形において金型内で溶融樹脂の合流部分が線状の跡となり発生する成形不良であるウェルドラインを抑制することができる。さらに、機械物性、耐傷つき性、耐光性も良好な熱可塑性樹脂組成物とすることができる。
【0013】
<光輝性顔料(A)>
光輝性顔料とは、パールのような光沢または金属性の光沢を有する顔料である。
本発明の光輝性顔料(A)としては、アルミフレーク等の金属フレーク;アルミ箔等の金属箔;パールマイカ、干渉マイカ、二酸化チタン等の金属を被覆したマイカ等のマイカ;亜鉛粉、フロンズ粉、ステンレス粉、アルミ粉等の金属粉;金属(銀、銀合金など)、金属酸化物(二酸化チタンなど)を被覆したガラスフレーク、好ましくは二酸化チタンを被覆したガラスフレーク等が挙げられる。好ましくは、金属フレーク、パールマイカ、干渉マイカ、及び二酸化チタンを含む金属酸化物を被覆したガラスフレークからなる群から選ばれる。輝度感に優れ、ウェルドラインを抑制する観点から、より好ましくはアルミニウムフレークである。
【0014】
光輝性顔料(A)の平均粒子径は5~100μmであることが好ましく、20~60μmがより好ましい。
平均粒子径が5μm以上であることにより、ウェルドラインの発生をより抑制することができる。平均粒子径が100μm以下であることにより、光輝性顔料が目立ちすぎず、輝度感とウェルドラインの両立ができ、高級感が損なわれないために好ましい。また、衝撃性能の低下もより抑えることができる。
【0015】
光輝性顔料(A)がフレーク状の場合、厚さ方向の厚みが0.2~10μmであることが好ましく、0.7~3μmがより好ましい。
厚みが0.2μm以上であることにより、ウェルドラインの発生をより抑制することができる。厚みが10μm以下であることにより、光輝性顔料が目立ちすぎず、輝度感とウェルドラインの両立ができ、高級感が損なわれないために好ましい。また、衝撃性能の低下もより抑えることができる。
好ましくは、光輝性顔料(A)の平均粒子径は5~100μm、かつ厚みが0.2~10μmの場合である。
【0016】
光輝性顔料(A)の平均粒子および厚みは、透過型電子顕微鏡を用いた画像解析により求めることができる。
具体的には、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0017】
本発明において、光輝性顔料(A)の含有率は、熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、15~55質量%であることが好ましく、は20~45質量%がより好ましく、25~35質量%がさらに好ましい。光輝性顔料(A)の含有率が15質量%以上であることで、成形品に、より優れたメタリック調外観を発現させることができる。含有率が55質量%を超えると光輝性顔料(A)の添加効果が飽和する場合がある。また、55質量%以下であることにより、機械物性により優れたものとすることができる。
【0018】
<カーボンブラック(B)>
カーボンブラックは、油やガスを不完全燃焼させたり、炭化水素を熱分解することにより製造された、導電性を有する無定形炭素である。カーボンブラック(B)としては特に制限されず、アセチレンブラック、ファーネスブラック、中空カーボンブラック、ケッチェンブラック等、いずれも用いることができる。
【0019】
カーボンブラック(B)の平均粒子径は15nm以上であることが好ましい。より好ましくは20~90nm、更に好ましくは30~40nmである。一般的にカーボンブラックの粒子径が小さくなるにつれ比表面積が増大するため、成形品の耐光性が向上する傾向がある。一方でカーボンブラックの粒子同士が凝集体を生成しやすくなる結果、成形品におけるカーボンブラックの分散状態に差が生じ、スジ、色ムラの形成をしやすくなる。そのため、平均粒子径が15nm以上であることが好ましい。また平均粒子径が90nm以下であると、カーボンブラックの着色力が充分発揮される。さらに、成形品が傷付ついた際の、光輝性顔料および樹脂由来の白化を抑制し、耐傷つき性もより向上できる。
カーボンブラックの平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いた画像解析により求めることができる。
具体的には、実施例に記載の方法により求めることができる。
【0020】
本発明において、カーボンブラック(B)の含有率は、熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、0.1~10質量%である。好ましくは0.3~8質量%であり、より好ましくは0.5~5質量%、さらに好ましくは1.1~5質量%である。
0.1質量%未満では耐光性が弱くなり、成形品が傷付ついた際に光輝性顔料および樹脂由来の白化が顕著に表れ、耐傷つき性も低下する。1.1質量%以上ではウェルドラインの発生をより抑制できる。10質量%を超えるとカーボンブラック(B)の隠ぺい力によって全体の明度が低下し、輝度感が低下する。
【0021】
<ポリオレフィンワックス(C)>
ワックスは、常温(25℃)で固体であり、加熱すると液体となる有機物であり、本発明のポリオレフィンワックス(C)は、ポリオレフィンからなるワックスであれば特に制限されない。
【0022】
ポリオレフィンワックス(C)のメルトフローレート(MFR)は加工性、分散性の観点からMFR(メルトフローレート、溶融粘度ともいう)100g/10分超が好ましい。
メルトフローレート(MFR)は、JIS K-7210に準拠して求めることができる。
ポリオレフィンワックス(C)の融点は、顔料分散性の観点から、130℃以下であることが好ましい。120℃以下であることがより好ましい。また、70℃以上であることが好ましい。
上記範囲の融点を示すワックス(C)を使用することで、カーボンブラック(B)の分散性がより向上し、熱可塑性樹脂とワックスとを溶融混練する際の加工性も良好となる。
融点は示差走査熱量計によりもとめることができる。
具体的にはたとえば、セイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計DSC6200により、標準物質としてアルミナを用い、温度範囲40~200℃、昇温速度10℃/分にて測定し、求めることができる。
【0023】
本発明のポリオレフィンワックス(C)は、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのオレフィンモノマーの重合体であり、ブロック、ランダムコポリマーまたはターポリマーであっても構わない。具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)のようなα-オレフィン類の重合体である。ワックスは、単独または2種以上で併用できる。
【0024】
ポリオレフィンワックス(C)の数平均分子量は、1,000~30,000が好ましく、2,000~25,000がより好ましい。
良好となる。
数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフランを用いて測定することができる。
【0025】
本発明において、ポリオレフィンワックス(C)の含有率は、熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、0.1~20質量%であることが好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1~10質量%がさらに好ましい。ポリオレフィンワックス(C)の含有率がこの範囲内であることで、機械物性、および耐光性が、より優れたものとすることができる。
【0026】
カーボンブラック(B)とポリオレフィンワックス(C)の含有質量比(B)/(C)は、0.1~10であることが好ましく、0.3~8がより好ましく、0.5~5がさらに好ましい。この範囲にあることで、カーボンブラック(B)の分散不良によるスジ、色ムラの発生をより低減することができ、より外観に優れた成形品を得ることができる。
【0027】
<ポリオレフィン樹脂(D)>
ポリオレフィン系樹脂(D)は、オレフィン類を主体とする重合体であって、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどが挙げられる。
但し、ポリオレフィンワックス(C)である場合は除く。
本発明に使用されるポリオレフィン系樹脂(D)はとくに制限されない。具体的には、射出成形および押出成形用として広く上市されているポリプロピレン、プロピレン-エチレンのブロック共重合体、およびそのランダム共重合体、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等が挙げられる。これらの中でも、さらに成形品の良好な機械強度を得られることから、ポリプロピレン樹脂が好ましい、プロピレン-エチレンのブロック共重合体がより好ましい。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂(D)のメルトフローレート(MFR)は、加工性、外観性の観点からMFR(メルトフローレート、溶融粘度ともいう)は、5~100g/10分が好ましく、10~60g/10分が更に好ましい。
メルトフローレート(MFR)は、JIS K-7210に準拠して求めることができる。
【0029】
ポリオレフィン系樹脂(D)の融点は、130℃を超えることが好ましい。また、180℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
融点は示差走査熱量計によりもとめることができる。
具体的にはたとえば、セイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計DSC6200により、標準物質としてアルミナを用い、温度範囲40~200℃、昇温速度10℃/分にて測定し、求めることができる。
【0030】
本発明において、ポリオレフィン系樹脂(D)の含有率は、熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、25質量%以上であることが好ましく、40質量%以上がよりこのましい。また、80質量%以下であることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂(D)の含有率がこの範囲内であることで、機械物性により優れたものとすることができる。
【0031】
<その他顔料>
本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてカーボンブラック(B)及び光輝性顔料(A)以外の有機顔料および無機顔料等のその他顔料を、要求される色相に合わせて用いることができる。例えば有機顔料としてはアゾ系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジオキサジン系、キノフタロン系等の顔料が挙げられる。無機顔料としては酸化鉄、コバルトブルー、群青、黄鉛、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、石膏、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタンが挙げられる。中でも、タルクが好ましい。
【0032】
<任意成分>
本発明の樹脂組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、アルカリ金属やアルカリ土類金属または亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ノニオン系界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、帯電防止剤、ハロゲン系、リン系または金属酸化物等の難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤などの添加剤を任意成分として含有させることができる。
【0033】
<樹脂組成物の製造方法>
本発明の樹脂組成物は、上記した各配合成分を上記配合割合で配合・混合し、溶融混練することにより製造することができる。この際、樹脂組成物の製造に係る公知の方法を用いることができる。例えば、溶融混練は、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒し、ペレット状、粉体状、顆粒状あるいはビーズ状の樹脂組成物とすることができる。
【0034】
樹脂組成物は、マスターバッチまたはコンパウンドのいずれの形態で使用してもよい。
コンパウンドの場合、コンパウンドを製造した後に、コンパウンドをそのまま使用して、後述の方法で成形品を製造することができる。
【0035】
マスターバッチの場合、マスターバッチを製造した後に、成形品の主成分として、例えばマスターバッチの製造に使用したのと同じポリオレフィン樹脂(D)を希釈樹脂として用い、マスターバッチを配合して成形品を製造することができる。マスターバッチの含有量としては希釈樹脂であるポリオレフィン樹脂(D)100質量部に対して、マスターバッチを1~15質量部含有することが好ましく、3~10質量部含有することがより好ましい。
このとき希釈樹脂として用いるポリオレフィン樹脂(D)は、マスターバッチの製造に使用したものと同じであってもよいし、異なるものであってもよいが、同じポリオレフィン樹脂であるほうが、樹脂同士の相溶性が優れるために好ましい。
光輝性顔料(A)の際、操作性および分散性の観点から、マスターバッチを経由することが好ましい。
光輝性顔料(A)の含有率は、衝撃強度、分散性の観点から、マスターバッチ100質量%を基準として、15~65質量%であることが好ましい。より好ましくは、20~55質量%である
【0036】
光輝性顔料(A)、カーボンブラック(B)、ポリオレフィンワックス(C)、ポリオレフィン樹脂(D)の混合方法は、公知の方法を使用することができる。例えば、流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機や、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用い、顔料とポリオレフィンワックス(C)、ポリオレフィン樹脂(D)を攪拌、混合する方法、または、ニーダー、ロールミル、バンバリーミキサー等を用いて溶融混練する方法等が挙げられる。
【0037】
≪成形品≫
成形品は、本発明の熱可塑性樹脂組成物を成形することにより得ることができる。
成形方法は特に制限されるものではなく、押出成形、圧縮成形、射出成形、ブロー成形
等によって得ることができる。本発明の樹脂組成物がマスターバッチである場合、成形体の成形時に規定の倍率で希釈樹脂と混練し、成形品を形成することができる。
希釈樹脂は、無機充填材を配合し、希釈用樹脂組成物としてから用いてもよい。無機充填材の種類は特に限定されず、公知の無機材を使用できる。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を具体的に実施例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下、部は質量部、%は質量%を意味する。
また、表中の配合量は「質量部」、含有率は「質量%」であり、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0039】
ポリオレフィンワックスの数平均分子量および融点の測定方法は以下の通りである。
<ポリオレフィンワックスの数平均分子量>
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC法)により、標準物質としてポリスチレン、溶離液としてテトラヒドロフランを用いて測定した。
【0040】
<ポリオレフィンワックスの融点>
セイコーインスツルメンツ社製示差走査熱量計DSC6200により、標準物質としてアルミナを用い、温度範囲40~200℃、昇温速度10℃/分にて測定した。
【0041】
<顔料の平均粒子径、厚みの測定>
光輝性顔料(A)は長径を粒子径、一番薄いところを厚みとし、透過型電子顕微鏡(TEM)の拡大画像(例えば500倍~1万倍)から観察できる30個程度の粒子に関する粒子径と厚みを測定し、平均値を求めて得た。カーボンブラック(CB)、および無機顔料の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)の拡大画像(例えば500倍~1万倍)から観察できる30個程度の粒子に関する粒子径、または厚みを測定し、平均値を求めた。
【0042】
実施例および比較例に用いた原料を以下に示す。
<光輝性顔料(A)>
(A-1)メタックス ネオ NME040T3(アルミフレーク、平均厚み0.9μm平均粒子径40μm、東洋アルミニウム社製、アルミ濃度=70%、キャリア樹脂LDPE=30%)
(A-2)イリオジン153フラッシュパール(パールマイカ、平均粒子径100μm、メルク社製)
(A-3)メタックス ネオ NME060T4(アルミフレーク、平均厚み1.1μm平均粒子径60μm、東洋アルミニウム社製、アルミ濃度=70%、キャリア樹脂LDPE=30%)
(A-4)メタックス ネオ NME005N1(アルミフレーク、平均厚み0.2μm平均粒子径5μm、東洋アルミニウム社製、アルミ濃度=70%、キャリア樹脂LDPE=30%)
<カーボンブラック(B)>
(B-1)三菱カーボンブラック#40、平均粒子径24nm
【0043】
<ポリオレフィンワックス(C)>
(C-1)サンワックス131P(三洋化成工業社製ポリエチレンワックス、数平均分子量3,500、MFR=100g/10分超、融点105℃)
(C-2)ハイワックスNP056(三井化学社製ポリプロピレンワックス、数平均分子量7200、MFR=100g/10分超、融点130℃)
【0044】
<ポリオレフィン樹脂(D)>
(D-1)サンアロマー PMA60Z (サンアロマー社製、MFR=45g/10分)
(D-2)プライムポリプロ J226T(プライムポリマー社製、融点141℃、MFR=20g/10分)
(D-3)ノバテックPP BC03C(日本ポリプロ社製、融点161℃ MFR=30g/10分)
【0045】
<その他成分>
(E-1)分散剤、カルシウム・ステアレート(日東化成工業社製)
(E-2)タルク、ミクロエースP-3(日本タルク社製、粒径:5μm)
【0046】
[希釈用樹脂組成物の製造]
(E-2)のタルク(ミクロエースP-3、日本タルク社製、平均粒子径5μm))を20質量部とポリオレフィン樹脂(D-3)80質量部を配合し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて220℃で押出し、造粒し、ペレット状の希釈用樹脂組成物を得た。
【0047】
[実施例1]
光輝性顔料(A-1)40部(アルミフレーク28部)、カーボンブラック(B-1)2部、ポリオレフィンワックス(C-1)2部、ポリオレフィン樹脂(D-1)56部を配合し、ヘンシェルミキサーにて予備混合した。続いて、スクリュー径30mmの単軸押出機(日本製鋼所製)にて220℃で溶融混錬した後、造粒し、ペレット状の樹脂組成物(F-1)を得た。
【0048】
[実施例2~12、実施例14~18、比較例1~3、5]
表1に示す材料と配合量(質量部)にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様の方法でペレット状の樹脂組成物(F-2~12、F-14~21、F-23)をそれぞれ得た。
【0049】
[実施例13]
光輝性顔料(A-1)2部、カーボンブラック(B-1)0.1部、ポリオレフィンワ
ックス(C-1)0.2部、ポリオレフィン樹脂(D-1)78.7部、その他成分(E
-2)タルク19部を配合し、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて220℃で溶融混錬し
た後、造粒し、ペレット状の樹脂組成物(F-13)を得た。
ただし、実施例11、13、および15は参考例である。
【0050】
[比較例4]
光輝性顔料(A-1)40部、カーボンブラック(B-1)1部、ポリオレフィン樹脂(D-1)58部、任意成分(E)1部を配合し、ヘンシェルミキサーにて予備混合した。次スクリュー径30mmの単軸押出機(日本製鋼所製)にて220℃で溶融混錬した後、造粒し、ペレット状の樹脂組成物(F-22)を得た。
【0051】
表1において、「(A)含有率」は、熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準とした際の、光輝性顔料(A)の含有率(%)であり、「(B)含有率」は、熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準とした際の、カーボンブラック(B)の含有率(%)である。
【0052】
【0053】
[評価項目および評価方法]
本発明の熱可塑性樹脂組成物の外観、機械物性、耐傷つき性、および耐光性を下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
<試験用成形品の作製>
(試験片1)
実施例1~12、実施例14~18、比較例1~5について、得られた樹脂組成物5部と、希釈用樹脂組成物100部を混合し、射出成形機(東芝機械社製)にて220℃で成形し、縦150mm×横125mm×厚み2.5mmの外観試験片1を得た。
実施例13で得られた樹脂組成物は、そのまま射出成形機(東芝機械社製)にて220℃で成形し、縦150mm×横125mm×厚み2.5mmの外観試験片1を得た。
【0054】
(試験片2)
実施例1~12、実施例14~18、比較例1~5について、得られた樹脂組成物5部と、希釈用樹脂組成物100部を混合し、射出成形機(東芝機械社製)にて220℃で成形し、縦80mm×横10mm×厚み4mmの試験片2を得た。
実施例13で得られた樹脂組成物は、そのまま射出成形機(東芝機械社製)にて220℃で成形し、縦80mm×横10mm×厚み4mmの試験片2を得た。
【0055】
(試験片3)
実施例1~12、実施例14~18、比較例1~5について、得られた樹脂組成物5部と、希釈用樹脂組成物100部を混合し、射出成形機(東芝機械社製)にて220℃で成形し、縦45mm×横45mm×厚み2.5mm試験片3を得た。
実施例13で得られた樹脂組成物は、そのまま射出成形機(東芝機械社製)にて220℃で成形し縦45mm×横45mm×厚み2.5mm試験片3を得た。
【0056】
<外観評価>
(分散性)
試験片1を光学顕微鏡「デジタル顕微鏡VHX-100」(キーエンス社製)を用いて倍率50倍の視野で観察した。
視野中に観察される黒点凝集物の大きさにより、分散性を評価した。大きい粒子が存在しないほど、分散性が良好であり、外観に優れるといえる。
[判断基準]
◎:100μm以上の黒点凝集物が存在しない 非常に良好
〇:100μm以上の黒点凝集物が存在するが、200μm以上の黒点凝集物が存在しない 良好
△:200μm以上の黒点凝集物が存在するが、300μm以上の黒点凝集物が存在しない 実用レベル
×:視野中に観察される大きさ300μm以上の黒点凝集物が存在する 実用不可
【0057】
(輝度感)
試験片1を用いて、目視にてキラキラ感によりメタリック調外観(輝度感)を評価した。
[判断基準]
◎:深みのあるキラキラ感が強い 非常に良好
〇:キラキラ感が有り 良好
△:キラキラ感やや少ない 実用レベル
×:キラキラ感がほとんどない 実用不可
【0058】
(ウェルドライン)
試験片1を用いて、目視でウェルドラインを評価した。
[判断基準]
◎:ウェルドラインが気にならない 非常に良好
〇:目視角度によりウェルドラインが認められるが気にならない 良好
△:目視角度によりウェルドラインが黒いスジとなって目立つ 実用レベル
×:明らかにウェルドラインが黒いスジとして目立つ 実用不可
【0059】
<衝撃強度測定>
シャルピー衝撃強度により機械物性を評価した。
試験片2と、基準として、希釈用樹脂組成物のみを用い、試験片2と同様の方法で製造した基準試験片とについて、それぞれのシャルピー衝撃強度を、JIS K7171:2016に従い測定した。
得られた測定値から、下記式(1)に従い各々の測定値に対する物性保持率を算出した。
物性保持率の値が高いほど、強度に優れており、良好であるといえる。評価が「△」以上であれば成形品の破壊等が起こらない。
式(1)物性保持率(%)=[試験片2のシャルピー衝撃強度/基準試験片のシャルピー衝撃強度]×100
[判断基準]
◎:物性保持率80%以上 非常に良好
〇:物性保持率が75%以上80%未満 良好
△:物性保持率が70%以上75%未満 実用レベル
×:物性保持率が70%未満 実用不可
【0060】
<耐傷つき性評価>
試験片1の表面を上島製作所社製のクロスカット塗膜剥離試験機AD-1110を用いて、175gの荷重を載せた引掻針(JISG4404に規定されるSKS2種のタングステン鋼針)にて、引掻速度500mm/分、0.75mmピッチで、流れ方向(MD)に5本掻き傷を付けた。流れ直角方向(TD)についても同様に試験を行った後、目視で耐傷つき性を評価した。
[判断基準]
◎:傷が気にならない 非常に良好
〇:目視角度により傷が認められるが気にならない 良好
△:目視角度により傷が目立つ 実用レベル
×:明らかに傷が目立つ 実用不可
【0061】
<耐光性評価>
試験片3を用いて、サンシャインウェザーメーター(S80型 スガ試験機(株)社製)を使用し、:放射エネルギー255W/m2、温度63℃、試験時間1000時間の条件で、試料表面の色差(ΔE)を標測色した。ΔEが小さいほど、耐光性が優れていることを示す。以下の基準で耐光性を評価した
[判断基準]
◎:1000h後ΔE=0.5未満 非常に良好
〇:1000h後ΔE=0.5以上1.0未満 良好
△:1000h後ΔE=1.0以上1.5未満 実用レベル
×:1000h後ΔE=1.5以上 実用不可
【0062】
【0063】
表2に示すように、本発明の樹脂組成物を用いることにより、分散性に優れ、メタリック調外観でありながら、ウェルドラインが目立たない成形品が得られた。さらに、機械物性、耐光性、耐傷つき性、耐衝撃性も良好な成形品であることが確認できた。
【要約】
【課題】
顔料の分散性に優れ、メタリック調外観と低ウェルドラインを両立し、優れた外観の成形品を形成することのできる樹脂組成物を得ることを目的とする。さらに機械物性、耐傷つき性、耐光性も良好な熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
光輝性顔料(A)、カーボンブラック(B)、ポリオレフィンワックス(C)、およびポリオレフィン樹脂(D)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
前記熱可塑性樹脂組成物100質量%を基準として、カーボンブラック(B)を0.1~10質量%含み、
カーボンブラック(B)とポリオレフィンワックス(C)の含有質量比(B)/(C)が、0.1~10であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物により解決される。
【選択図】なし