(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】嵌脱コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61M 39/10 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A61M39/10 110
(21)【出願番号】P 2023155815
(22)【出願日】2023-09-21
【審査請求日】2023-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】390034728
【氏名又は名称】イナバゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
(73)【特許権者】
【識別番号】307016180
【氏名又は名称】地方独立行政法人鳥取県産業技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100118393
【氏名又は名称】中西 康裕
(72)【発明者】
【氏名】西 需
(72)【発明者】
【氏名】杉原 誉明
(72)【発明者】
【氏名】才木 直史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕亮
【審査官】黒田 暁子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-327519(JP,A)
【文献】特開2015-051093(JP,A)
【文献】特表2023-532661(JP,A)
【文献】米国特許第05405336(US,A)
【文献】米国特許第05312377(US,A)
【文献】国際公開第2015/087881(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/018737(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 39/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者側に刺入される刺入部を有
し、少なくとも、該刺入部と、チューブと、該刺入部の反対側において該チューブと連結する刺入側コネクタと、からなる刺入側セットと、
輸液バッグ或いは採尿バッグを有
し、少なくとも、前記バッグと、チューブと、前記バッグの反対側において該チューブと連結するバッグ側コネクタと、からなるバッグ側セットと、
において、前記刺入側コネクタと前記バッグ側コネクタとは螺着によって接続可能であると共に、前記刺入側コネクタと前記バッグ側コネクタとを接続する際に
前記刺入側コネクタと前記バッグ側コネクタとの間に追加して用いる嵌脱コネクタであって、
前記嵌脱コネクタは、オスコネクタとメスコネクタから
なると共に、前記オスコネクタは接続ダボからなる接続部を有しており、前記メスコネクタは接続孔からなる接続部を有しており、
前記接続ダボが前記接続孔に挿入されることにより、前記オスコネクタと前記メスコネクタとが嵌合し、
前記オスコネクタと前記メスコネクタとは、挿入方向と反対の離脱方向に所定の力が加わることによって離脱するものであり、
前記オスコネクタと前記メスコネクタの、
一方には、前記刺入側セットの
前記刺入側コネクタへ螺着によって取り付ける刺入側取付部が、
設けられており、
他方には、前記バッグ側セットの
前記バッグ側コネクタへ螺着によって取り付けるバッグ側取付部が、設けられていることを特徴とする嵌脱コネクタ。
【請求項2】
前記オスコネクタ
の前記接続部と前記メスコネクタ
の前記接続部は、
一方の前記接続部が硬質材料からなる硬質接続部
であり、
他方の前記接続部が弾性材料からなる弾性接続部
であることを特徴とする請求項1に記載する嵌脱コネクタ。
【請求項3】
前記オスコネクタが前記硬質接続部であ
ると共に、前記オスコネクタの前記接続ダボの側面に凸部が設けられており、
前記メスコネクタが前記弾性接続部であ
ると共に、前記メスコネクタの前記接続孔の内側に凹部が設けられており、
前記オスコネクタの前記凸部からなる一方の当接面と、前記メスコネクタの前記接続孔に露出すると共に硬質材からなる他方の当接面と、からなる当接位置決め部を更に有しており、
前記オスコネクタと前記メスコネクタとが嵌合する際、前記一方の当接面と前記他方の当接面とが当接すると共に、前記凸部と前記凹部とが係合することを特徴とする請求項2に記載の嵌脱コネクタ。
【請求項4】
前記所定の力は、3~45Nであることを特徴とする請求項1に記載する嵌脱コネクタ。
【請求項5】
前記オスコネクタと前記メスコネクタは、流路に対する逆止弁をそれぞれ有することを特徴とする請求項1に記載する嵌脱コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、嵌脱コネクタ及び液体ラインに関する。詳しくは、患者側に刺入される刺入部を有する刺入側セットと、輸液バッグ或いは採尿バッグを有するバッグ側セットと、を接続する際に用いる嵌脱コネクタであって、嵌脱コネクタは、オスコネクタとメスコネクタからなる嵌脱コネクタ及びこのような嵌脱コネクタを備えた液体ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液ラインにおいては、チューブ同士を接続するコネクタが用いられている。例えば、非特許文献1のように、直接静脈に刺入部(翼状針や静脈内留置針など)を刺入する場合には輸液バッグと刺入部の間にコネクタが用いられている。また、非特許文献2のように、抗癌剤や高カロリー輸液(食事の代わりの栄養液)の輸液時に使用されるCVポート(非特許文献2参照)では、血管内にカテーテルを留置して、そのカテーテルの一端のポートに針を刺入するが、この場合も輸液バッグと刺入部の間にコネクタが用いられている。
【0003】
また、点滴のみならず、尿道カテーテルにおいては、膀胱側の尿道留置カテーテルと採尿バッグ側の導尿チューブの間にコネクタが用いられている(非特許文献3、非特許文献4参照)。
このように輸液ラインや採尿ラインのように液体の流れる液体ラインでは、一般的にコネクタが用いられている。
【0004】
従来、接続箇所に用いる嵌脱コネクタは、緩みが生じたり、接続が外れしまったりすると輸液時の安全性が確保できないという思想の下、ライン途中で外れないようにするため(いわゆる「クローズドシステム」を実現するため)、コネクタに求められる機能としては、如何にして緩みを防ぐかということや、接続が外れないか、というような強固な接続機能であった。このようなコネクタは、ルアーロック型と呼ばれるようなネジを捻って固定するような強固な接続機能を実現したものとなっていた。例えば、特許文献1には、螺合による接続のため、回転が生じないと接続が外れないコネクタが記されている。また、非特許文献5には、外力による爪のロックを外して、回転が生じないと接続が外れないコネクタであるツインシールド(登録商標)が記されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】輸液製剤協会 用語説明 輸液ライン(点滴ライン)、[令和5年7月10日検索]、インターネット〈https://www.yueki.com/faq/words37/index.html〉
【文献】山王病院 PICCについて、[令和5年7月10日検索]、インターネット〈https://www.sannoclc.or.jp/hospital/patient/department/shoukaki_c/pdf/picc2.pdf〉
【文献】日本環境感染学会 尿道カテーテル関連尿路感染予防、[令和5年7月10日検索]、インターネット〈http://www.kankyokansen.org/other/edu_pdf/3-3_06.pdf〉
【文献】ナースプラス 尿道カテーテルQ&A、[令和5年7月10日検索]、インターネット〈https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/workstyle/20200522-16750/〉
【文献】株式会社ジェイ・エム・エス JMSニードルレスアクセスポート、[令和5年7月10日検索]、インターネット〈https://medical.jms.cc/pdf/B097_twinshield_catalog.pdf〉
【文献】日本赤十字医療センター 抜去あるある事例集、[令和5年7月10日検索]、インターネット〈https://www.carecom.jp/smile/pdf/pamphlet_case-008.pdf〉
【文献】今日の臨床サポート 尿道損傷(自己抜去の対応含む)、[令和5年7月10日検索]、インターネット〈https://clinicalsup.jp/jpoc/contentpage.aspx?diseaseid=1340〉
【文献】3Mジャパン カテーテル固定用ドレッシング、[令和5年7月10日検索]、インターネット〈https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/medical-jp/dressings/tegaderm/〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献6のように、病院内で点滴を行っている患者の中には、せん妄患者や高齢者も多く、輸液ラインや尿道カテーテルの自己抜去が問題となっている。また、せん妄患者や高齢者でなくても、高カロリー輸液や抗癌剤のFOLFIRI(フォルフィリ)療法は数日継続して行われるので、睡眠中のライン抜去も問題となっている。また、手術後の貯留した液体の排出や縫合部の漏れのモニタリングを行う為のドレナージと呼ばれるような治療も数日継続して行われる。
また、非特許文献7のように、尿道カテーテルでも高齢者や乳幼児に自己抜去が認められる。
【0008】
このように自己抜去等で抜けてしまうと、再度の刺入(もう一度針の刺入)が必要となるが、再刺入は患者に大きな苦痛を与えることになる。また抜けたことによる出血は患者への肉体的な損傷となる。尿道カテーテルにおいては尿道損傷のような肉体的な損傷のおそれもある。そして、このような自己抜去によるリスクは、留置期間の長期化に伴い増大することになる。
【0009】
また、通常、カテーテルは刺入部でドレッシング材のような粘着性の被覆保護材(例えば、非特許文献8参照)で人体に固定されているが、自己抜去の際には、このカテーテルの刺入部で抜けが生じることから、体液の流出や、薬液の流出が生じてしまう。
【0010】
このような体液の流出や薬液の流出が生じると、清掃する必要があるが、とくに夜間のように院内での作業従事者が少ない場合や、風船の携帯型注入器(インフューザー)を使用して自宅で数日行う継続輸液の場合には負担が大きくなってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、非常に大きな力が輸液ラインや採尿ラインに加わった際には、刺入部で抜けるのではなく、輸液ラインや採尿ラインにおける接続箇所で抜けることにより、患者に対する再刺入や肉体的な損傷を低減することのできる嵌脱コネクタ及び液体ラインを提供することを目的とする。
また、接続箇所での抜けにより体液の流出や薬液の流出が生じないようにする安全な嵌脱コネクト及び液体ラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の嵌脱コネクタは、患者側に刺入される刺入部を有する刺入側セットと、輸液バッグ或いは採尿バッグを有するバッグ側セットと、を接続する際に用いる嵌脱コネクタであって、前記嵌脱コネクタは、オスコネクタとメスコネクタからなり、前記オスコネクタと前記メスコネクタとは、挿入方向と反対の離脱方向に所定の力が加わることによって離脱することを特徴とする。
【0013】
挿入側セットとバッグ側セットとの接続が、従来のような爪によるロックや、ネジによる螺合の強固な嵌脱ではないので、例えば、輸液ラインにおいて自己抜去のような強い力によって挿入方向(差し込み方向)と反対の方向に所定の力が加わることによって、オスコネクタとメスコネクタとの間で離脱が生じることになる。従って、刺入部での抜けが抑えられることになるので、患者に対する再刺入や肉体的な損傷を低減することができる。
【0014】
同様に、採尿ラインにおいても、強い力が加わるとオスコネクタとメスコネクタとの間で離脱が生じるため、患者に対する再刺入や肉体的な損傷を低減することができる。
【0015】
また、所定の力が加わることによって離脱する構成なので、それ以下のような小さな力が液体ラインに加わったとしても離脱したりしない。つまり、本発明は、オスコネクタとメスコネクタとでの離脱条件を調整したものとなっている。
【0016】
また、本発明の嵌脱コネクタは、前記所定の力(離脱力)は、3~45Nであることが好ましい。自己抜去のような大きな力ではなく、輸液ラインや採尿ラインに触れたような弱い力でも簡単にオスコネクタとメスコネクタとの間で離脱が生じることになると、頻繁に離脱が生じ、その度にオスコネクタとメスコネクタとの再挿入が必要となるが、この程度の離脱力により抜けることで、弱い力での頻繁な離脱を防ぐとともに、刺入部の固定に用いられる被覆保護材が剥がれる前に離脱することが可能となる。
【0017】
なお、より好ましい範囲としては、7~10Nであり、この範囲であれば、多種存在する被覆保護材の多くに十分に用いることができる。また、このような離脱力を実現する方法としては、例えば、オスコネクタとメスコネクタの、一方が硬質材料からなる硬質接続部を有し、他方が弾性材料からなる弾性接続部を有しており、この弾性接続部のショアA硬度50とすることで実現することが可能である。
【0018】
また、本発明の嵌脱コネクタは、前記オスコネクタと前記メスコネクタは、一方が硬質材料からなる硬質接続部を有し、他方が弾性材料からなる弾性接続部を有して挿抜されるとともに、前記オスコネクタと前記メスコネクタは、当接位置決め部を有することが好ましい。
【0019】
弾性接続部の変形によりオスコネクタとメスコネクタとの間で離脱が生じることにより、輸液ラインや採尿ラインにおいて強い力が加わった場合に、オスコネクタとメスコネクタとの間で離脱が生じることになる。また、オスコネクタとメスコネクタの当接位置決め部によって、オスコネクタのメスコネクタへの挿入が当接によって止まるので、常に同じ挿入量を実現できる。そして、挿入量が安定することで、オスコネクタとメスコネクタとの間での離脱を均一化することができる。
【0020】
また、本発明の嵌脱コネクタは、前記オスコネクタと前記メスコネクタは、一方が硬質材料からなる硬質接続部を有し、他方が弾性材料からなる弾性接続部を有して挿抜されるとともに、前記硬質接続部と前記弾性接続部には、係合する凸部と凹部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
このような構成の嵌脱コネクタは、オスコネクタとメスコネクタが離脱する際に、適度な衝撃と共に、音が生じることになる。このような衝撃や音の発生は、自己抜去を行うような患者に対して、抜去したことによる解放感を与えることになり、患者の気持ちを落ち着かせることにつながり、しばらく自己抜去のような行動を抑制することができる。
【0022】
また、本発明の嵌脱コネクタは、前記オスコネクタと前記メスコネクタは、流路に対する逆止弁をそれぞれ有することが好ましい。嵌脱コネクタで離脱が生じた場合に、体液の流出や、薬液の流出を防ぐことができ、より安全な離脱コネクタとなる。
【0023】
また、本発明の嵌脱コネクタは、前記オスコネクタと前記メスコネクタの一方には、挿入側セットへ取り付ける挿入側取付部が、他方には、バッグ側セットへ取り付けるバッグ側取付部が、設けられていることが好ましい。既存の刺入側セットのチューブ部(例えば、シュアプラグADや、これがなければ三方活栓へ)や、バッグ側セットのチューブ部に嵌脱コネクタを簡単に取り付けて用いることができる。
【0024】
また、本発明の液体ラインは、患者側に刺入される刺入部を有する刺入側セットと、輸液バッグ或いは採尿バッグを有するバッグ側セットと、前記刺入側セットと前記バッグ側セットとを接続する一対の嵌脱コネクタと、からなる液体ラインにおいて、前記一対の嵌脱コネクタは、オスコネクタとメスコネクタからなり、前記オスコネクタと前記メスコネクタとは、挿入方向と反対の離脱方向に所定の力が加わることによって離脱することが好ましい。これにより、実際の輸液ラインや採尿ラインにおいて、刺入部での抜けが抑えられることになるので、患者に対する再刺入や肉体的な損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態1の液体ラインを示す撮像の撮像である。
【
図2】本実施形態1の嵌脱コネクタを示す分解斜視図である。
【
図3】本実施形態1の嵌脱コネクタを示す他視方向の分解斜視図である。
【
図4】Aは本実施形態1の嵌脱コネクタの脱離した状態を示す断面図であり、Bは嵌脱コネクタの嵌合した状態を示す断面図である。
【
図5】本実施形態2の液体ラインを示す撮像である。
【
図6】本実施形態2の嵌脱コネクタの嵌合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、実施形態及び図面を参照にして本発明を実施するための形態を説明するが、以下に示す実施形態は、本発明をここに記載したものに限定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0027】
[実施形態1]
まず
図1を用いて、従来の輸液ラインからなる液体ライン200と本実施形態の液体ライン100との違いについて説明する。従来の液体ライン200と本実施形態の液体ライン100とは、
図1に示すように共にバッグ側セット1と刺入側セット2からなる。
【0028】
バッグ側セット1は、点滴スタンドに吊り下げられる輸液バッグ(図示せず)と、輸液バッグに刺入されるびん針11と、第1延長チューブ12を介してびん針11に連結される点滴筒13と、第2延長チューブ14を介して点滴筒13に連結されるクレンメ15と、クレンメ15を介して第2延長チューブ14から繋がっている第3延長チューブ16(実際には第2延長チューブ14と第3延長チューブ16は連続した一体のチューブ)と、第3延長チューブ16に連結された輸液出口コネクタ17と、からなる。なお、びん針11、第1延長チューブ12、点滴筒13、第2延長チューブ14、クレンメ15、第3延長チューブ16、輸液出口コネクタ17のようなセットについて、本実施形態ではテルモ社の「テルフュージョン(登録商標)輸液セット(TI-U751P)」を用いている。
【0029】
刺入側セット2は、輸液入口コネクタ21(例えば、テルモ社の「シュアプラグ(登録商標)ADのSA-1W」)と、輸液入口コネクタ21が螺入で取り付けられる三方活栓22と、第4延長チューブ23を介して三方活栓22に連結される針用コネクタ24と、針用コネクタ24に螺入によって取り付けられる刺入部である静脈用留置針25と、からなる。なお、三方活栓22、第4延長チューブ23、針用コネクタ23のようなセットについて、本実施形態ではテルモ社の「テルフュージョン(登録商標)延長チューブ付三方活栓(TS-WR0525L)」を用いている。また、静脈用留置針25には、メディキット社の「スーパーキャス5」を用いている。
【0030】
このようなバッグ側セット1と刺入側セット2において、従来の液体ライン200では、輸液出口コネクタ17と輸液入口コネクタ21とが螺着(輸液出口コネクタ17側のカラーの内周に設けられている雌ネジと、輸液入口コネクタ21側のメス部の外周に設けられている雄ネジ)により強固に固定されたものとなっていた。
【0031】
一方、本実施形態の液体ライン100は、バッグ側セット1と刺入側セット2からなる従来の液体ライン200の輸液出口コネクタ17と輸液入口コネクタ21の間に、本実施形態の嵌脱コネクタ3を追加し、この嵌脱コネクタ3を介してバッグ側セット1と刺入側セット2を接続したものである。
【0032】
なお、バッグ側セット1と刺入側セット2は一般的な市販品であるので、詳細な説明を省略する。また、バッグ側セット1と刺入側セット2については、
図1で示したもの以外にも様々なものがある。
【0033】
次に、
図2~
図4を用いて実施形態1の嵌脱コネクタ3を説明する。
図2は嵌脱コネクタ3の要部を示す分解斜視図であり、
図3は
図2とは異なる方向から見た分解斜視図である。
図4Aは嵌脱コネクタの脱離した状態を示す断面図であり、
図4Bは嵌脱コネクタの嵌合した状態を示す断面図である。
図2、
図3に示すように、嵌脱コネクタ3は、バッグ側から刺入側に向かって、メスコネクタ6とオスコネクタ7と、からなる。
【0034】
このメスコネクタ6は、バッグ側から刺入側に向かって、バッグ側取付部61とバッグ側逆止弁62と弁押さえ63と弾性接続部64とが、順次接合されている。
また、オスコネクタ7は、バッグ側から刺入側に向かって、硬質接続部71と刺入側逆止弁72と刺入側取付部73とが、順次接合されている。
【0035】
このようなメスコネクタ6及びオスコネクタ7において、バッグ側取付部61、弁押さえ63、弾性接続部64、硬質接続部71と刺入側取付部73は硬質材(例えば、ポリカーボネイトやポリプロプレン等の樹脂や金属)からなり、バッグ側逆止弁62、弾性接続部64と刺入側逆止弁72の材質は弾性材(例えば、シリコーンゴムやイソプレンゴム、エラストマー等)からなる。
【0036】
また、
図2、3に示すように、メスコネクタ6のバッグ側取付部61は、太さの違う2つ筒状部からなり、この内バッグ側の径の小さい筒状部はメス部611となり、このメス部611の外周には、
図4Bに示すように、ISO80369シリーズに準拠した雄ネジ61Sが形成されている。そして、この雄ネジ61Sと、バッグ側セット1の既存の輸液出口コネクタ17のカラーの内周に設けられている雌ネジと、によりメスコネクタ6と輸液出口コネクタ17とが螺着することになる。
【0037】
一方、
図2に示すように、オスコネクタ7の刺入側取付部73は、刺入側へ向かうオス部731の周囲を筒状のカラー732で覆われており、
図4Bに示すように、刺入側取付部73のカラー732の内周にはISO80369シリーズに準拠した雌ネジ73Sが形成されている。そして、この雌ネジ73Sと、刺入側セット2の既存の輸液入口コネクタ21のメス部の外周に設けられている雄ネジと、により、オスコネクタ7と輸液入口コネクタ21とが螺着することになる。
【0038】
[流路の開放/閉結]
図4Aに示すように、メスコネクタ6のバッグ側取付部61とバッグ側逆止弁62と弁押さえ63と弾性接続部64にはそれぞれ第1流路R1~第4流路R4が形成されている。
図2、
図3に示すように、バッグ側逆止弁62の第2流路R2は3つ形成されている。
図4Aに示すように、バッグ側逆止弁62の第2流路R2と弁押さえ63の第3流路R3がずれているために、メスコネクタ6は、オスコネクタ7と嵌合していない状態で、バッグ側取付部61から弾性接続部64への輸液の流路がバッグ側逆止弁62によって閉鎖されている。
【0039】
図4Aに示すように、オスコネクタ7の硬質接続部71と刺入側逆止弁72と刺入側取付部73にはそれぞれ第5流路R5~第7流路R7が形成されている。
図2、
図3に示すように、硬質接続部71の第5流路R5の入口側(メスコネクタ6側)には4つの半円状の切欠きによる入路R5aが形成され、出口近傍には金型の突合せで形成される4つの円形状の孔の分離路R5bが形成されている。
【0040】
図2~
図4に示すように、刺入側逆止弁72は、外輪721の中央に位置する内輪722との間に、刺入側へリング状に膨らんだ薄い膜723で内輪722を支えた形状となっている。また、
図4Aの拡大図に示すように、刺入側逆止弁72の第6流路R6は内輪722に設けられている孔である。そして、
図4Aに示すように、オスコネクタ7はメスコネクタ6と嵌合していない状態では、刺入側逆止弁72に輸液の流圧が掛からないために、刺入側逆止弁72の内輪722が硬質接続部71と密着している。なお、このような構成においては、この密着状態の刺入側逆止弁72に対して、仮に、刺入側からの血液の逆流による血圧が加わっても、血液が逆流してオスコネクタ7から流出することはない。
【0041】
そして、
図2~
図4に示すように、オスコネクタ7の硬質接続部71には2段の凸部712を備えた嵌合用の接続ダボ711が設けられ、メスコネクタ6の弾性接続部64には凸部712に係合する2段の凹部642を備えた接続孔641が設けられる。そして、
図4Bに示すように、メスコネクタ6の弾性接続部64にオスコネクタ7の硬質接続部71が嵌合される。この時、弾性接続部64の材質は、弾性材であることから、硬質接続部71を容易に圧入することができる。なお、凸部712やこれに係合する凹部642の形状は、図示したような挿入方向に向かって細くなるような筍型のようなものだけでなく、丸型(ドーナツ状)のようなもの等、他の形状でも構わない。
【0042】
図4Bに示すように、メスコネクタ6とオスコネクタ7が嵌合されると、第4流路R4と第3流路R3を貫通した第5流路R5の刺入側取付部73が軟質のバッグ側逆止弁62を押圧して、バッグ側逆止弁62が変形する。これにより、バッグ側逆止弁62の第2流路R2と硬質接続部71の入路R5aの通路となる第1隙間T1が開通する。
【0043】
そして、第1流路R1と第2流路R2と流れた輸液が第1隙間T1と第5流路に流れて、刺入側逆止弁72を押圧する。これにより、刺入側へ膨らむ軟質の薄いリング状の膜723が、輸液をこの膨らみで受けて変形して、硬質接続部71の第5流路R5と刺入側逆止弁72の第6流路R6の通路となる第2隙間T2が開通する。そして、第5流路R5まで流れた輸液が第2隙間T2、第6流路R6と流れ、輸液入口コネクタ21を介して液体ライン100の末端である刺入部の静脈用留置針25へと流れる。
【0044】
従来の液体ライン200のコネクタは爪によるロックや、ネジによる螺合の強固な係合となっていた。一方、本実施形態の液体ライン100においては、メスコネクタ6とオスコネクタ7からなる嵌脱コネクタ3を用いてバッグ側セット1と挿入側セット2を接続している。この嵌脱コネクタ3は、挿入方向とは反対となる離脱方向に力が加わることで離脱してしまう。したがって、非特許文献6の事例集に記されているように、せん妄患者や高齢者や乳幼児の自己抜去、また、例えば、点滴スタンドのキャスター部分に延長チューブが引っ掛かり、睡眠中の寝返りで静脈用留置針25が抜去してしまうよう場合に、メスコネクタ6とオスコネクタ7との間で先に離脱してしまうことになる。従って、刺入部での抜けが抑えられることになるので、患者に対する再刺入や肉体的な損傷を低減することができる。
【0045】
また、オスコネクタ7の硬質接続部71の外周には凸部712が、メスコネクタ6の弾性接続部64の内周にはこの凸部712と係合する凹部642が設けられている。このような凸部712と凹部642によって、嵌脱コネクタ3のオスコネクタ7とメスコネクタ6とが、挿入方向と反対の離脱方向の力が加わることによって離脱した際に、適度な衝撃と共に、音が生じることになる。偶然の抜去と違い、自己抜去を行うような患者は、原因までは明確ではないが、抜去したことによる解放感を一度得ると、それで満足してしまうことも多い。従って、オスコネクタ7とメスコネクタ6との離脱が生じたことを、あえて衝撃や音を通じて感じさせることで、患者はその後落ち着き、しばらく自己抜去のような行動を抑制することができる。
【0046】
なお、嵌脱コネクタ3における、メスコネクタ6とオスコネクタ7とが挿入方向と反対の離脱方向に所定の力が加わると離脱してしまう離脱力としては、被覆保護材による静脈用留置針25の保持力よりも弱い力が好ましい。被覆保護材による保持力よりも強い力が瞬時に加わることがあれば、被覆保護材が剥がれてしまう前に、メスコネクタ6とオスコネクタ7とが先に離脱してしまうので、静脈用留置針25の抜去を防止することができる。
【0047】
そこで、本発明者は市販の被覆保護材を用いて実際に腕に貼り付けた被覆保護材による引張試験を行って検証した。粘着力が非常に強いGRIP-LOK(登録商標)でおよそ45N、カテリープラス(登録商標)I.V.でおよそ10N、SORBAVIEW(登録商標)SHIELDでおよそ4Nであった。また、あまりにも簡単に離脱してしまうのも実用的ではない。したがって、メスコネクタ6とオスコネクタ7とが離脱する力としては、3~45Nの範囲が好ましく、より好ましくは7~10Nの範囲が好ましい。
【0048】
また、このような離脱力を実現する具体的な方法として、例えば、本実施形態の嵌脱コネクタ3においては、本発明者の検証によると、硬質材からなるオスコネクタ7の硬質接続部71に対して、メスコネクタ6の弾性接続部64のショアA硬度50とすることでだいたい10Nの離脱力を実現でき、ショアA硬度70とすることでだいたい20N、ショアA硬度90とすることでだいたい40Nの離脱力を実現できる。また、凸部712と凹部642の大きさによっても調整可能である。
【0049】
なお、上記のように被覆保護材により粘着力が異なることから、例えば、被覆保護材の粘着力によって、離脱力を変えた嵌脱コネクタを準備しておくことも可能である。例えば、被覆保護材であるドレッシング材には末梢静脈から行う場合に使用するものと、中心静脈から行う場合に使用するものとに大別できる。末梢静脈用は短期使用を期待され、使用頻度も多いため、被覆保護材としはコスト面から低粘着力で小面積が一般的となる。一方、中心静脈要は長期使用を期待され、径の太いカテーテルが用いられることから、被覆保護材としては高粘着力で大面積が一般的となる。従って、末梢静脈用や中心静脈用のように、用いられる用途に応じて、離脱力の異なる嵌脱コネクタを使い分けてもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、メスコネクタ6にオスコネクタ7が挿入されるときに、凸部712と凹部642の位置が所望される位置で止まるように、当接位置決め部8が設けられている。この当接位置決め部8は、具体的には、
図4Aに示すメスコネクタ6において硬質材からなる弁押さえ63の第4流路R4から露出した第1当接面81と、
図4A示すオスコネクタ7において硬質材からなる硬質接続部71の先端側(メスコネクタ6側)凸部712における第2当接面82からなる。
【0051】
そして、このメスコネクタ6の第1当接面81と、雄コネクタ7の第2当接面81とは、
図4Bに示すように、メスコネクタ6にオスコネクタ7が挿入されると、互いに当接することになる。この硬質材からなる第1当接面81と第2当接面82による当接により、オスコネクタ7の挿入がこの位置で確実に止まることになるので、常に同じ挿入量を実現することができる。従って、本実施形態の当接位置決め部8によって、挿入量が安定することにより、メスコネクタ6とオスコネクタ7との間での離脱の均一化を実現することができる。
【0052】
また、メスコネクタ6とオスコネクタ7が離脱したとき、本実施形態のメスコネクタ6のバッグ側逆止弁62によって輸液が漏れ出ることはない。また、オスコネクタ7の刺入側逆止弁72によって血液が漏れ出ることもない。
【0053】
なお、本実施形態のオスコネクタ7の刺入側逆止弁72は、メスコネクタ6とオスコネクタ7が嵌合しているときも逆血しない構成となっている。そのため、例えば、点滴で直接静脈に穿刺するとき等は、血液の逆流を確認することになるが、このままでは、静脈用留置針が正常に刺入されているかを逆血により確認することができない。しかし、この場合、この逆血確認は三方活栓を利用して行うことができる。また、嵌脱コネクタ3を接続する前に逆血確認してもよい。また、メスコネクタ6とオスコネクタ7を嵌合したときに、刺入側逆止弁72を押圧して逆血できるようにする押圧部を別途設ける構成を採用することもできる。
【0054】
[実施形態2]
次に、
図5、
図6を用いて、実施形態2の液体ライン100Aを説明する。第2実施形態の液体ライン100Aにおいては、第1実施形態の液体ライン100と構成が同一の部分については同一の参照符号を付与してその詳細な説明は省略し、構成が異なる同一名の部分については参照符号に添え字「A」を付す。
【0055】
実施形態1の液体ライン100は従来の液体ライン200の輸液出口コネクタ17と輸液入口コネクタ21の間に、実施形態1の嵌脱コネクタ3を追加したものである。
【0056】
これに対して、
図5に示すように、実施形態2の液体ライン100Aは従来の液体ライン200の輸液入口コネクタ21に代えて、実施形態1の嵌脱コネクタ3(のオスコネクタ7)に取り替えたものである。
【0057】
嵌脱コネクタ3の刺入側取付部73は、筒状のカラー732の内周にISO80369シリーズに準拠した雌ネジ73Sが形成されている。このため、嵌脱コネクタ3の刺入側取付部73を三方活栓22のメス部外周の雄ネジに螺着することができる。また、嵌脱コネクタ3のオスコネクタ7には刺入側逆止弁72が付いているので、メスコネクタ6とオスコネクタ7が離脱しても血液がオスコネクタ7から漏れ出ることは無い。したがって、従来の液体ライン200に用いられていた逆血弁を備えた輸液入口コネクタ21を省くことができる。
【0058】
そして、このような構成の液体ライン100Aにおいても、
図6に示すように、実施形態1の液体ライン100(
図4B)と同様の輸液の流路を形成することができる。
【0059】
なお、本発明の既存のバッグ側セットと既存の刺入側セットは上述の構成に限定するものではない。本発明は種々のバッグ側セットや種々の刺入側セットに適用することができる。
【0060】
また、本発明の液体ラインは輸液バッグを使用したものに限定するものではない。非特許文献6の抜去の事例集に記載されているように、輸液のチューブ・カテーテルには抹消静脈ラインのみならず、CVポートなどがある。また、輸液のみならず、輸液とは逆方向の採尿ラインや体液などを排出する種々のドレーンなどもあり、これらにも、本発明を適用することができる。
【0061】
また、本実施形態の嵌脱コネクタ3においては、メスコネクタ6とオスコネクタ7との挿入において、メスコネクタ6側に弾性接続部が、オスコネクタ7側に硬質接続部が形成されていたが、メスコネクタ6側を硬質材からなる硬質接続部とし、オスコネクタ7側を弾性材からなる弾性接続部としても構わない。
【0062】
また、本実施形態と異なり、本発明の嵌脱コネクタは、メスコネクタ6とオスコネクタ7との挿入においては、メスコネクタ6の接続部とオスコネクタ7の接続部の何れも弾性接続部で形成することも可能である。この時、弾性接続部の互いの硬度が異なっていても構わない。
【0063】
また、本実施形態においては、液体ライン100において、嵌脱コネクタ3をメスコネクタ6とオスコネクタ7からなる独立した部品として扱っている。しかしながら、本発明の液体ラインにおいて、例えば、嵌脱コネクタ3のメスコネクタ6は、バッグ側セットの輸液出口コネクタ17の代りに第3延長チューブ16に一体化して連結した部品として扱い、オスコネクタ7は、第2実施形態のように、輸液入口コネクタ21の代りとして、三方活栓22に螺着して用いる独立した部品として扱うような構成等、用途に応じて様々な構成を採用することも可能である。
【符号の説明】
【0064】
100、100A、200:液体ライン
1:バッグ側セット
17:輸液出口コネクタ
2:刺入側セット
21:輸液入口コネクタ
3:嵌脱コネクタ
6:メスコネクタ
61:バッグ側取付部
62:バッグ側逆止弁
63:弁押さえ
64:弾性接続部
7:オスコネクタ
71:硬質接続部
72:刺入側逆止弁
73:刺入側取付部
R1~R7:第1流路~第7流路
【要約】
【課題】非常に大きな力が輸液ラインや採尿ラインに加わった際には、刺入部で抜けるのではなく、輸液ラインや採尿ラインにおける接続箇所で抜けることにより、患者に対する再刺入や肉体的な損傷を低減することのできる嵌脱コネクタを提供することを目的とする。
【解決手段】患者側に刺入される刺入部25を有する刺入側セット2と、輸液バッグ或いは採尿バッグを有するバッグ側セット1と、を接続する際に用いる嵌脱コネクタ3であって、嵌脱コネクタ3は、オスコネクタ7とメスコネクタ6からなり、オスコネクタ7とメスコネクタ6とは、挿入方向と反対の離脱方向に所定の力が加わることによって離脱する。
【選択図】
図4