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特許7610821アンテナモジュールおよびそれを搭載した通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】アンテナモジュールおよびそれを搭載した通信装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20241226BHJP
   H01P 1/203 20060101ALI20241226BHJP
   H01P 1/205 20060101ALI20241226BHJP
   H01Q 21/24 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01P1/203
H01P1/205 K
H01Q21/24
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023545174
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(86)【国際出願番号】 JP2022029670
(87)【国際公開番号】W WO2023032564
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2021139853
(32)【優先日】2021-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大平 昌敬
(72)【発明者】
【氏名】須藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】田口 義規
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-88493(JP,A)
【文献】特開昭54-20638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0048069(US,A1)
【文献】国際公開第2021/095301(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 13/08
H01P 1/203
H01P 1/205
H01Q 21/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナモジュールであって、
誘電体基板と、
前記誘電体基板に配置された放射素子と、
前記放射素子に対向して配置された第1接地電極と、
前記放射素子と前記第1接地電極との間に配置され、複数の共振器を含んで構成された共振回路とを備え、
前記放射素子および前記共振回路によってフィルタ装置が構成され、
前記共振回路は、
給電回路から高周波信号を受ける入力線路と、
前記入力線路に結合し、前記フィルタ装置の通過帯域外に減衰極を形成するEPU(Extracted Pole Unit)として機能する第1共振部と、
前記入力線路および前記放射素子に結合する第2共振部とを含み、
前記アンテナモジュールは、前記放射素子と前記入力線路との間に配置された第2接地電極をさらに備え、
前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置され
前記第1共振部は、互いに隣接して配置された第1共振器および第2共振器を含み、
前記第2共振部は、互いに隣接して配置された第3共振器および第4共振器を含み、
前記第2共振器および前記第3共振器は前記入力線路と結合し、
前記第4共振器は前記放射素子と結合し、
前記誘電体基板において、前記第1接地電極から前記放射素子に向かう方向を第1方向とした場合、
前記入力線路、前記第1共振部および前記第2共振部は、前記第1接地電極から前記第1方向に向かって同じ距離の位置に隣接して配置されており、
前記第1方向から前記誘電体基板を平面視した場合に、前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置されており、
前記共振回路は、前記入力線路および前記第2共振器に結合し、前記入力線路と前記第2共振器との間の結合量を調整するための第1調整素子をさらに含む、アンテナモジュール。
【請求項2】
前記共振回路は、前記入力線路および前記第3共振器に結合し、前記入力線路と前記第3共振器との間の結合量を調整するための第2調整素子をさらに含む、請求項に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
前記共振回路は、前記第1共振器および前記第2共振器に結合し、前記第1共振器と前記第2共振器との間の結合量を調整するための第3調整素子をさらに含む、請求項1または請求項2に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記フィルタ装置における通過帯域の中心周波数に対応する信号の波長をλとした場合、前記第1共振器、前記第2共振器、前記第3共振器、および前記第4共振器の各々は、一方端が前記第1接地電極に接続されたλ/4共振器である、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記第4共振器と前記放射素子とは非接触で結合している、請求項に記載のアンテナモジュール。
【請求項6】
前記第4共振器は、
互いに対向して配置された第1平板電極および第2平板電極と、
前記第1平板電極と前記第2平板電極とを接続する第1ビアとを含む、請求項に記載のアンテナモジュール。
【請求項7】
前記第4共振器および前記放射素子に接続された第2ビアをさらに備える、請求項に記載のアンテナモジュール。
【請求項8】
前記共振回路は、前記誘電体基板を法線方向から平面視した場合に、前記入力線路、前記第1共振部および前記第2共振部を囲むように配置され、前記第1接地電極に接続された複数の第3ビアをさらに含む、請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項9】
アンテナモジュールであって、
誘電体基板と、
前記誘電体基板に配置された放射素子と、
前記放射素子に対向して配置された第1接地電極と、
前記放射素子と前記第1接地電極との間に配置され、各々が複数の共振器を含んで構成された第1共振回路および第2共振回路とを備え、
前記放射素子および前記第1共振回路によって第1フィルタ装置が構成され、前記放射素子および前記第2共振回路によって第2フィルタ装置が構成され、
前記第1共振回路および前記第2共振回路の各々は、
給電回路から高周波信号を受ける入力線路と、
前記入力線路に結合し、対応するフィルタ装置の通過帯域外に減衰極を形成するEPUとして機能する第1共振部と、
前記入力線路および前記放射素子に結合する第2共振部とを含み、
前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置され、
前記アンテナモジュールは、前記放射素子と前記第1共振回路の入力線路との間、および、前記放射素子と前記第2共振回路の入力線路との間に配置された第2接地電極をさらに備え、
前記放射素子は、第1偏波方向、および、前記第1偏波方向とは異なる第2偏波方向に電波を放射可能であり、
前記第1共振回路を通過した信号は、前記放射素子において、前記第1偏波方向の電波を放射するための給電点に供給され、
前記第2共振回路を通過した信号は、前記放射素子において、前記第2偏波方向の電波を放射するための給電点に供給され
前記第1共振回路および前記第2共振回路の各々において、
前記第1共振部は、互いに隣接して配置された第1共振器および第2共振器を含み、
前記第2共振部は、互いに隣接して配置された第3共振器および第4共振器を含み、
前記第2共振器および前記第3共振器は対応する共振回路の入力線路と結合し、
前記第4共振器は前記放射素子と結合し、
前記誘電体基板において、前記第1接地電極から前記放射素子に向かう方向を第1方向とした場合、
前記入力線路、前記第1共振部および前記第2共振部は、前記第1接地電極から前記第1方向に向かって同じ距離の位置に隣接して配置されており、
前記第1方向から前記誘電体基板を平面視した場合に、前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置されており、
対応する共振回路は、前記入力線路および前記第2共振器に結合し、前記入力線路と前記第2共振器との間の結合量を調整するための調整素子をさらに含む、アンテナモジュール。
【請求項10】
アンテナモジュールであって、
誘電体基板と、
前記誘電体基板に配置された放射素子と、
前記放射素子に対向して配置された第1接地電極と、
前記放射素子と前記第1接地電極との間に配置され、複数の共振器を含んで構成された共振回路とを備え、
前記放射素子および前記共振回路によってフィルタ装置が構成され、
前記共振回路は、
給電回路から高周波信号を受ける入力線路と、
前記入力線路に結合し、前記フィルタ装置の通過帯域外に減衰極を形成するEPUとして機能する第1共振部と、
前記入力線路および前記放射素子に結合する第2共振部とを含み、
前記アンテナモジュールは、前記放射素子と前記入力線路との間に配置された第2接地電極をさらに備え、
前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置され、
前記第1共振部は、互いに隣接して配置された第1共振器および第2共振器を含み、
前記第2共振部は、互いに隣接して配置された第3共振器および第4共振器を含み、
前記第2共振器および前記第3共振器は前記入力線路と結合し、
前記第4共振器は前記放射素子と結合し、
前記誘電体基板において、前記第1接地電極から前記放射素子に向かう方向を第1方向とした場合、
前記入力線路、前記第1共振部および前記第2共振部は、前記第1接地電極から前記第1方向に向かって同じ距離の位置に隣接して配置されており、
前記第1方向から前記誘電体基板を平面視した場合に、前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置されており、
前記共振回路は、前記入力線路および前記第3共振器に結合し、前記入力線路と前記第3共振器との間の結合量を調整するための第2調整素子をさらに含む、アンテナモジュール。
【請求項11】
アンテナモジュールであって、
誘電体基板と、
前記誘電体基板に配置された放射素子と、
前記放射素子に対向して配置された第1接地電極と、
前記放射素子と前記第1接地電極との間に配置され、複数の共振器を含んで構成された共振回路とを備え、
前記放射素子および前記共振回路によってフィルタ装置が構成され、
前記共振回路は、
給電回路から高周波信号を受ける入力線路と、
前記入力線路に結合し、前記フィルタ装置の通過帯域外に減衰極を形成するEPUとして機能する第1共振部と、
前記入力線路および前記放射素子に結合する第2共振部とを含み、
前記アンテナモジュールは、前記放射素子と前記入力線路との間に配置された第2接地電極をさらに備え、
前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置され、
前記第1共振部は、互いに隣接して配置された第1共振器および第2共振器を含み、
前記第2共振部は、互いに隣接して配置された第3共振器および第4共振器を含み、
前記第2共振器および前記第3共振器は前記入力線路と結合し、
前記第4共振器は前記放射素子と結合し、
前記誘電体基板において、前記第1接地電極から前記放射素子に向かう方向を第1方向とした場合、
前記第1共振部は、前記第1方向において、前記入力線路と前記第1接地電極との間の位置に配置され、
前記第2共振部は、前記第1方向において、前記放射素子と前記入力線路との間の位置に配置され、
前記共振回路は、前記第1共振器および前記第2共振器に結合し、前記第1共振器と前記第2共振器との間の結合量を調整するための第3調整素子をさらに含む、アンテナモジュール。
【請求項12】
アンテナモジュールであって、
誘電体基板と、
前記誘電体基板に配置された放射素子と、
前記放射素子に対向して配置された第1接地電極と、
前記放射素子と前記第1接地電極との間に配置され、複数の共振器を含んで構成された共振回路とを備え、
前記放射素子および前記共振回路によってフィルタ装置が構成され、
前記共振回路は、
給電回路から高周波信号を受ける入力線路と、
前記入力線路に結合し、前記フィルタ装置の通過帯域外に減衰極を形成するEPUとして機能する第1共振部と、
前記入力線路および前記放射素子に結合する第2共振部とを含み、
前記アンテナモジュールは、前記放射素子と前記入力線路との間に配置された第2接地電極をさらに備え、
前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置され、
前記第1共振部は、互いに隣接して配置された第1共振器および第2共振器を含み、
前記第2共振部は、互いに隣接して配置された第3共振器および第4共振器を含み、
前記第2共振器および前記第3共振器は前記入力線路と結合し、
前記第4共振器は前記放射素子と結合し、
前記誘電体基板において、前記第1接地電極から前記放射素子に向かう方向を第1方向とした場合、
前記入力線路、前記第1共振部および前記第2共振部は、前記第1接地電極から前記第1方向に向かって同じ距離の位置に隣接して配置されており、
前記第1方向から前記誘電体基板を平面視した場合に、前記入力線路は、前記第1共振部と前記第2共振部との間に配置されており、
前記共振回路は、前記第1共振器および前記第2共振器に結合し、前記第1共振器と前記第2共振器との間の結合量を調整するための第3調整素子をさらに含む、アンテナモジュール。
【請求項13】
前記給電回路をさらに備える、請求項1,9~12のいずれか1項に記載のアンテナモジュール。
【請求項14】
請求項1,9~12のいずれか1項に記載のアンテナモジュールを搭載した、通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナモジュールおよびそれを搭載した通信装置に関し、より特定的には、フィルタ内蔵型のアンテナモジュールの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2001-267825(特許文献1)および特開2003-258547号公報(特許文献2)には、誘電体基板内にアンテナと一体的に形成されたフィルタを有し、アンテナの放射素子をフィルタの共振器として利用したアンテナ装置が開示されている。特許文献1,2のような構成とすることによって、アンテナ装置の小型化を図るとともに、アンテナ特性を改善することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-267825号公報
【文献】特開2003-258547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、スマートフォンあるいは携帯電話などの無線通信装置のフロントエンド回路において、アンテナ装置とフィルタとが一体化された構成が提案されている。このような無線通信装置においては、依然として小型化の要求が高く、それに伴ってフロントエンド回路自体の小型化も必要とされている。特に、異なる2つの偏波方向に電波を放射可能な、いわゆるデュアル偏波タイプのアンテナ装置においては、各偏波に対してフィルタを配置することが必要となるため、フィルタ自体の小型化も必要とされる。
【0005】
また、フィルタ特性についても、非通過帯域における減衰量を大きくすること、および、通過帯域の近傍における急峻度を大きくすることが望まれる。
【0006】
本開示は、以上のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、フィルタ装置を内蔵したアンテナモジュールの小型化およびフィルタ特性の改善を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のある局面に従うアンテナモジュールは、誘電体基板と、誘電体基板に配置された放射素子と、放射素子に対向して配置された第1接地電極および第2接地電極と、共振回路とを備える。共振回路は、放射素子と第1接地電極との間に配置され、複数の共振器を含んで構成される。放射素子および共振回路によってフィルタ装置が構成される。共振回路は、給電回路から高周波信号を受ける入力線路と、入力線路に結合する第1共振部と、入力線路および放射素子に結合する第2共振部とを含む。第2接地電極は、放射素子と入力線路との間に配置される。第1共振部は、フィルタ装置の通過帯域外に減衰極を形成するEPU(Extracted Pole Unit)として機能する。入力線路は、第1共振部と第2共振部との間に配置される。
【0008】
本開示の他の局面に従うアンテナモジュールは、誘電体基板と、誘電体基板に配置された放射素子と、放射素子に対向して配置された第1接地電極および第2接地電極と、第1共振回路および第2共振回路とを備える。第1共振回路および第2共振回路の各々は、複数の共振器を含んで構成されており、放射素子と第1接地電極との間に配置される。放射素子および第1共振回路によって第1フィルタ装置が構成され、放射素子および第2共振回路によって第2フィルタ装置が構成される。第1共振回路および第2共振回路の各々は、給電回路から高周波信号を受ける入力線路と、入力線路に結合する第1共振部と、入力線路および放射素子に結合する第2共振部とを含む。第2接地電極は、放射素子と第1共振回路の入力線路との間、および、放射素子と第2共振回路の入力線路との間に配置される。第1共振部は、対応するフィルタ装置の通過帯域外に減衰極を形成するEPUとして機能する。入力線路は、第1共振部と第2共振部との間に配置される。放射素子は、第1偏波方向、および、第1偏波方向とは異なる第2偏波方向に電波を放射可能である。第1共振回路を通過した信号は、放射素子において、第1偏波方向の電波を放射するための給電点に供給される。第2共振回路を通過した信号は、放射素子において、第2偏波方向の電波を放射するための給電点に供給される。
【発明の効果】
【0009】
本開示のアンテナモジュールは、フィルタ装置を構成する放射素子と共振回路とを備えている。共振回路は、入力線路から分岐した第1共振部および第2共振部を含んでおり、第1共振部はEPUとして機能し、第2共振部は放射素子に結合されている。本開示のアンテナモジュールにおいては、比較的シンプルな構成を用いて、放射素子および第2共振部によって通過帯域を設定し、第1共振部によって非通過帯域に減衰極を設けることができる。したがって、フィルタ装置を内蔵したアンテナモジュールにおいて、小型化およびフィルタ特性の改善を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1に従うアンテナモジュールが適用される通信装置のブロック図である。
図2】実施の形態1のアンテナモジュールの斜視図である。
図3】アンテナモジュールの共振回路の部分の平面図である。
図4】実施の形態1のアンテナモジュールの側面透視図である。
図5】フィルタ装置の構成を説明するための図である。
図6】実施の形態1におけるアンテナ特性を説明するための図である。
図7】変形例1のアンテナモジュールを説明するための図である。
図8】変形例2のアンテナモジュールを説明するための図である。
図9】変形例3のアンテナモジュールを説明するための図である。
図10】変形例4のアンテナモジュールを説明するための図である。
図11】変形例4の共振回路における最終段の共振器の構成を説明するための図である。
図12】実施の形態2のアンテナモジュールの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
(通信装置の基本構成)
図1は、本実施の形態1に係るアンテナモジュール100が適用される通信装置10のブロック図の一例である。通信装置10は、たとえば、携帯電話、スマートフォンあるいはタブレットなどの携帯端末や、通信機能を備えたパーソナルコンピュータなどである。本実施の形態に係るアンテナモジュール100に用いられる電波の周波数帯域の一例は、たとえば28GHz、39GHzおよび60GHzなどを中心周波数とするミリ波帯であるが、上記以外の周波数帯域についても適用可能である。なお、以下の例においては、28GHzを中心周波数とする帯域幅を通過帯域(26.5GHz~29.5GHz)とする場合を例として説明する。
【0013】
図1を参照して、通信装置10は、アンテナモジュール100と、ベースバンド信号処理回路を構成するBBIC200とを備える。アンテナモジュール100は、給電回路の一例であるRFIC110と、アンテナ装置120と、共振回路150とを備える。通信装置10は、BBIC200からアンテナモジュール100へ伝達された信号を、RFIC110にて高周波信号にアップコンバートし、共振回路150を介してアンテナ装置120から放射する。また、通信装置10は、アンテナ装置120で受信した高周波信号を共振回路150を介してRFIC110へ送信し、ダウンコンバートしてBBIC200にて信号を処理する。
【0014】
図1では、説明を容易にするために、アンテナ装置120を構成する複数の放射素子121のうち、4つの放射素子121に対応する構成のみが示されており、同様の構成を有する他の放射素子121に対応する構成については省略されている。なお、図1においては、アンテナ装置120が二次元のアレイ状に配置された複数の放射素子121で構成される例が示されているが、複数の放射素子121が一列に配置された一次元アレイであってもよい。あるいは、アンテナ装置120は、単独の放射素子121によって構成されていてもよい。本実施の形態1においては、放射素子121は、略正方形の平板形状を有するパッチアンテナである。
【0015】
RFIC110は、スイッチ111A~111D,113A~113D,117と、パワーアンプ112AT~112DTと、ローノイズアンプ112AR~112DRと、減衰器114A~114Dと、移相器115A~115Dと、信号合成/分波器116と、ミキサ118と、増幅回路119とを備える。
【0016】
高周波信号を送信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがパワーアンプ112AT~112DT側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の送信側アンプに接続される。高周波信号を受信する場合には、スイッチ111A~111D,113A~113Dがローノイズアンプ112AR~112DR側へ切換えられるとともに、スイッチ117が増幅回路119の受信側アンプに接続される。
【0017】
BBIC200から伝達された信号は、増幅回路119で増幅され、ミキサ118でアップコンバートされる。アップコンバートされた高周波信号である送信信号は、信号合成/分波器116で4分波され、4つの信号経路を通過して、それぞれ異なる放射素子121に給電される。このとき、各信号経路に配置された移相器115A~115Dの移相度が個別に調整されることにより、アンテナ装置120の指向性を調整することができる。
【0018】
各放射素子121で受信された高周波信号である受信信号は、それぞれ、異なる4つの信号経路を経由し、信号合成/分波器116で合波される。合波された受信信号は、ミキサ118でダウンコンバートされ、増幅回路119で増幅されてBBIC200へ伝達される。
【0019】
共振回路150は、共振回路1501~1504を含む。共振回路1501~1504は、RFIC110におけるスイッチ111A~111Dにそれぞれ接続される。共振回路1501~1504の各々は、対応する放射素子121とともにフィルタ装置を構成し、特定の周波数帯域の信号を減衰させる機能を有する。共振回路1501~1504および放射素子121によって構成されるフィルタ装置は、バンドパスフィルタ、ハイパスフィルタ、ローパスフィルタ、あるいは、これらの組み合わせであってもよい。RFIC110からの高周波信号は、共振回路1501~1504を通過して、対応する放射素子121に供給される。
【0020】
ミリ波帯の高周波信号の場合、伝送線路が長くなると、ノイズ成分が混入しやすくなる傾向にある。そのため、共振回路150と放射素子121との距離をできるだけ短くすることが好ましい。すなわち、放射素子121から高周波信号を放射する直前に共振回路150を通過させることによって、放射素子121から不要波が放射されることを抑制することができる。また、放射素子121における受信直後に共振回路150を通過させることによって、受信信号に含まれる不要波を除去することができる。
【0021】
なお、図1においては、共振回路150とアンテナ装置120が個別に記されているが、本開示においては、後述するように、共振回路150はアンテナ装置120の内部に配置される。
【0022】
RFIC110は、例えば、上記回路構成を含む1チップの集積回路部品である。あるいは、RFIC110における各放射素子121に対応する機器(スイッチ、パワーアンプ、ローノイズアンプ、減衰器、移相器)については、対応する放射素子121毎に1チップの集積回路部品として設けられてもよい。
【0023】
(アンテナモジュールの構成)
次に、図2図4を用いて、本実施の形態1におけるアンテナモジュール100の構成の詳細を説明する。図2はアンテナモジュール100の斜視図である。図3はアンテナモジュール100の共振回路150の部分の平面図である。図4はアンテナモジュール100の側面透視図である。なお、図2および図3においては、説明を容易にするために、誘電体基板130およびRFIC110が省略されている。
【0024】
図2図4においては、アンテナモジュール100が、1つの放射素子121を有する場合を例として説明するが、図1で説明したように、アンテナモジュール100は複数の放射素子が一次元配列あるいは二次元配列されたアレイアンテナであってもよい。
【0025】
図2図4を参照して、アンテナモジュール100は、放射素子121、共振回路150およびRFIC110に加えて、誘電体基板130と、給電配線であるビア171~173と、接地電極GND1,GND2とを含む。なお、以降の説明において、誘電体基板130の法線方向(電波の放射方向)をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直な面をX軸およびY軸で規定する。また、各図におけるZ軸の正方向を上方側、負方向を下方側と称する場合がある。なお、Z軸方向は、本開示における「第1方向」に対応する。
【0026】
誘電体基板130は、たとえば、低温同時焼成セラミックス(LTCC:Low Temperature Co-fired Ceramics)多層基板、エポキシまたはポリイミドなどの樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、より低い誘電率を有する液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、フッ素系樹脂から構成される樹脂層を複数積層して形成された多層樹脂基板、あるいは、LTCC以外のセラミックス多層基板である。なお、誘電体基板130は必ずしも多層構造でなくてもよく、単層の基板であってもよい。
【0027】
誘電体基板130は略直方体の形状を有しており、その上面131(Z軸の正方向の面)、あるいは、上面131に近い内部の誘電体層に放射素子121が配置されている。誘電体基板130において下面132(Z軸の負方向の面)に近い内部の誘電体層の全面にわたって、放射素子121に対向して、平板形状の接地電極GND1が配置される。また、放射素子121と接地電極GND1との間の誘電体層に、放射素子121に対向して、平板形状の接地電極GND2が配置される。接地電極GND2は、放射素子121とともにアンテナを構成する。
【0028】
誘電体基板130の下面132には、はんだバンプ160を介してRFIC110が実装されている。なお、RFIC110は、はんだ接続に代えて、多極コネクタを用いて誘電体基板130に接続されてもよい。
【0029】
共振回路150は、接地電極GND1と接地電極GND2との間の配線層に配置される。共振回路150は、入力線路155、および、共振器151~154を含む。図2または図3に示されるように、入力線路155、および、共振器151~154の各々は、Y軸方向に延在する帯状の平板電極である。共振回路150および放射素子121によって形成されるフィルタ装置の通過帯域の中心周波数に対応する信号の波長をλとした場合、共振器151~154はλ/4の長さを有する。すなわち、共振器151~154はλ/4共振器である。
【0030】
共振回路150において、共振器151~154を取り囲むように複数のビアVGが配置されている。ビアVGは、接地電極GND1,GND2に接続されている。また、共振回路150は、ビアVGを互いに接続する、略C字形状の平板電極PGを含む。共振器151~154の各々は、一端が平板電極PGに接続されている。入力線路155は、平板電極PGの切欠部180を通って共振回路150内に延伸している。ビアVGおよび平板電極PGはシールドとして機能し、共振器151~154および入力線路155が、配線層に配置される他の配線と電磁界結合することを抑制する。
【0031】
入力線路155は、ビア171を介してRFIC110に接続されているビア171よって、RFIC110から入力線路155に高周波信号が伝達される。
【0032】
共振器151,152は、入力線路155が配置される誘電体層と、接地電極GND1が配置される誘電体層との間の誘電体層に配置されている。共振器152は、共振器151よりも入力線路155に近い位置に配置されており、誘電体基板130の法線方向から平面視した場合に、共振器152の一部は入力線路155と重なっている。共振器152は、共振器151および入力線路155と電磁界結合する。共振器151,152は、減衰極を発生させるEPUとして機能する共振部51を構成する。このように、フィルタ装置を信号が通過する直列パスとは別に共振器151,152を追加することによって、フィルタ装置の通過帯域よりも高周波数側および/または低周波数側の非通過帯域に、減衰極を設けることができる。なお、共振器151,152は、互いに電磁界結合ができれば、必ずしも同じ誘電体層に配置されていなくてもよい。
【0033】
共振器153,154は、入力線路155が配置される誘電体層と、接地電極GND2が配置される誘電体層との間の誘電体層に配置されている。共振器153は、共振器154よりも入力線路155に近い位置に配置されており、誘電体基板130の法線方向から平面視した場合に、共振器153の一部は入力線路155と重なっている。共振器153は、共振器154および入力線路155と電磁界結合する。共振器154は、ビア172,173および平板電極156を介して、放射素子121の給電点SP1に接続されている。給電点SP1は、放射素子121の中心からY軸の正方向にオフセットした位置に配置されている。給電点SP1に高周波信号が供給されることによって、Y軸方向を偏波方向とする電波が放射素子121から放射される。
【0034】
共振器153,154は共振部52を構成する。入力線路155、共振器153,154、および放射素子121によって、フィルタ装置の通過帯域が定められる。なお、共振部51よりも共振部52を放射素子121に近い位置に配置することによって、共振器154と放射素子121を接続する給電配線の長さを短くできるので、伝送損失を低減することができる。なお、共振器153,154についても、互いに電磁界結合ができれば、必ずしも同じ誘電体層に配置されていなくてもよい。
【0035】
このように、共振器151,152によって構成される共振部51と、共振器153,154によって構成される共振部52とは、入力線路155に対して互いに反対方向の位置に配置されている。そのため、共振部51と共振部52とは、直接的には結合していない。
【0036】
図5は、共振回路150と放射素子121とによって構成されるフィルタ装置50を説明するための図である。図5においては、フィルタ装置50を構成する各ノード間の結合状態が示されている。図5において、ノード「S」は入力線路155に対応しており、ノード「1」~「4」は共振器151~154にそれぞれ対応している。ノード「5」は放射素子121に対応している。なお、ノード「L」は、電波が放射される空間に対応している。図5に示されるように、入力線路155は、共振部51の共振器152と電磁界結合しており、共振器152は共振器151と電磁界結合している。また、入力線路155は、共振部52の共振器153と電磁界結合しており、共振器153は共振器154と電磁界結合しており、共振器154は放射素子121に接続している。このように、実施の形態1のアンテナモジュール100で構成されるフィルタ装置50においては、減衰極を形成するための共振部51は、通過帯域を設定する共振部52および放射素子121と結合しておらず、入力線路155から分岐した経路となっている。
【0037】
一般的に、複数の共振器で構成されるフィルタ装置において、非通過帯域に減衰極を設ける手法として、共振器間の飛越結合を形成する構成が知られている。この場合、フィルタ装置内のある共振器について、隣接する1つ以上の共振器を飛び越して他の共振器と結合する構造が必要となるため、共振器の形状および配置が複雑となり、フィルタ装置全体のサイズが大きくなる場合がある。
【0038】
これに対し、実施の形態1のアンテナモジュール100内に構成されるフィルタ装置50においては、EPUとして機能する共振部51を設けることによって、飛越結合を用いることなく非通過帯域に減衰極を設けることが可能となる。そして、飛越結合が不要であるため、各共振器として帯状の平板電極のλ/4共振器を隣接して配置した、比較的シンプルな構造によってフィルタ装置を構成することができる。このように、実施の形態1におけるフィルタ装置50は、飛越結合を用いるフィルタ装置に比べて、フィルタ装置全体のサイズを小型化しつつ、EPUを用いて非通過帯域に減衰極を設けることによってフィルタ装置50の減衰特性を改善することができる。
【0039】
(アンテナ特性)
図6は、実施の形態1におけるアンテナ特性を説明するための図である。図6においては、横軸には周波数が示されており、縦軸には反射損失(左軸)およびアンテナゲイン(右軸)が示されている。図6において、実線LN10は反射損失を示しており、破線LN11はアンテナゲインを示している。
【0040】
図6を参照して、反射損失については、対象となる28GHz帯(26.5GHz~29.5GHz)の通過帯域BW1においては、約20dBの反射損失を実現できている。また、アンテナゲインについては、通過帯域BW1においては0dBi以上のゲインが実現できている。さらに、非通過帯域においては、25GHz付近および32GHz付近において減衰極が形成されており、通過帯域近傍において急峻な減衰が実現されている。
【0041】
以上のように、実施の形態1におけるアンテナモジュール100においては、入力線路155から分岐した共振部51,52を有するフィルタ装置50を含んでおり、共振部51によって減衰極が形成され、共振部52および放射素子121によって通過帯域が形成される。アンテナモジュール100においては、共振部51をEPUとして機能させることによって、飛越結合を用いない比較的シンプルな構成とすることができるので、減衰極の形成によって所望の減衰特性を実現しながら、フィルタ装置50のサイズを小型化することができる。
【0042】
なお、実施の形態1における「接地電極GND1,GND2」は、本開示における「第1接地電極」および「第2接地電極」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「共振部51,52」は、本開示における「第1共振部」および「第2共振部」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「共振器151~154」は、本開示における「第1共振器」、「第2共振器」、「第3共振器」および「第4共振器」にそれぞれ対応する。実施の形態1における「ビア172,173」は、いずれも本開示における「第2ビア」に対応する。実施の形態1における「ビアVG」は、本開示における「第3ビア」に対応する。
【0043】
(変形例1)
変形例1においては、共振部51における共振器間の結合量を調整するための構成を追加した構成について説明する。
【0044】
図7は、変形例1のアンテナモジュール100Aを説明するための図である。アンテナモジュール100Aにおいては、実施の形態1のアンテナモジュール100の共振回路150が、共振回路150Aに置き換えられた構成を有している。アンテナモジュール100Aにおいて、実施の形態1のアンテナモジュール100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0045】
図7を参照して、アンテナモジュール100Aの共振回路150Aは、共振回路150の構成に加えて、調整素子157がさらに配置された構成を有している。調整素子157は、共振部51の共振器151,152が配置される誘電体層と、接地電極GND1が配置される誘電体層との間の誘電体層に配置されている。調整素子157は、誘電体基板130を法線方向から平面視した場合に、略矩形形状を有しており、共振器151および共振器152の双方に部分的に重なっている。共振器151および共振器152と調整素子157とが重なる面積、および/または、共振器151および共振器152と調整素子157との距離(すなわち、配置される誘電体層)を調整することによって、共振器151と共振器152との間の結合量を調整することができる。
【0046】
このような調整素子を追加することによって、フィルタ装置の設計において設計パラメータが増加するため、結合量を適切に調整することによって、さらなる特性改善を行なうことが可能となる。
【0047】
なお、変形例1における「調整素子157」は、本開示における「第3調整素子」に対応する。
【0048】
(変形例2)
変形例2においては、共振部51,52および入力線路155が、同一の誘電体層に配置される構成について説明する。
【0049】
図8は、変形例2のアンテナモジュール100Bを説明するための図である。アンテナモジュール100Bにおいては、実施の形態1のアンテナモジュール100の共振回路150が、共振回路150Bに置き換えられた構成を有している。アンテナモジュール100Bにおいて、実施の形態1のアンテナモジュール100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0050】
図8を参照して、アンテナモジュール100Bの共振回路150Bにおいては、共振部51に含まれる共振器151,152、入力線路155、および、共振部52に含まれる共振器153,154が、同一の誘電体層に、この順で配置されている。言い換えれば、共振部51,52および入力線路155は、接地電極GND1からZ軸方向に同じ距離の位置に隣接して配置されており、法線方向から誘電体基板130を平面視した場合に、入力線路155は、共振部51と共振部52との間に配置されている。
【0051】
さらに、共振回路150Bにおいては、共振器151と共振器152との間の結合量を調整するための調整素子157、入力線路155と共振器152との間の結合量を調整するための調整素子158,および、入力線路155と共振器153との間の結合量を調整するための調整素子159がさらに設けられている。
【0052】
調整素子157,158,159は、共振部51,52および入力線路155が配置される誘電体層と、接地電極GND1が配置される誘電体層との間の誘電体層に配置されている。なお、調整素子157,158,159のうちの一部あるいは全部が、共振部51,52および入力線路155が配置される誘電体層と、接地電極GND2が配置される誘電体層との間の誘電体層に配置されていてもよい。
【0053】
調整素子157は、誘電体基板130を法線方向から平面視した場合に、略矩形形状を有しており、共振器151および共振器152に部分的に重なっている。各共振器と調整素子157とが重なる面積、および/または、各共振器と調整素子157との距離を調整することによって、共振器151と共振器152との間の結合量を調整することができる。
【0054】
調整素子158は、誘電体基板130を法線方向から平面視した場合に、略矩形形状を有しており、共振器152および入力線路155に部分的に重なっている。共振器152および入力線路155と調整素子158とが重なる面積、および/または、共振器152および入力線路155と調整素子158との距離を調整することによって、共振器152と入力線路155との間の結合量を調整することができる。
【0055】
調整素子159は、誘電体基板130を法線方向から平面視した場合に、略矩形形状を有しており、共振器153および入力線路155に部分的に重なっている。共振器153および入力線路155と調整素子159とが重なる面積、および/または、共振器153および入力線路155と調整素子159との距離を調整することによって、共振器153と入力線路155との間の結合量を調整することができる。
【0056】
なお、図8には示されていないが、共振部52における共振器153と共振器154との間の結合量を調整するための調整素子がさらに設けられていてもよい。
【0057】
このように、各共振部および入力線路を同一の誘電体層に配置することによって、共振回路のZ軸方向の寸法を低減できるので、アンテナモジュールの低背化を図ることができる。また、調整素子を追加することによって、各共振部における共振器間、および、各共振部と入力線路との間の結合量を調整することができ、その結果としてアンテナ特性を改善することができる。
【0058】
なお、変形例2における「調整素子158」、「調整素子159」および「調整素子157」は、本開示における「第1調整素子」、「第2調整素子」および「第3調整素子」にそれぞれ対応する。
【0059】
(変形例3)
変形例3においては、共振回路と放射素子との他の結合態様について説明する。
【0060】
図9は、変形例3のアンテナモジュール100Cを説明するための図である。アンテナモジュール100Cにおいては、実施の形態1のアンテナモジュール100において、共振回路150と放射素子121とを接続するためのビア172,173および平板電極156が除かれた構成となっている。アンテナモジュール100Cにおいて、実施の形態1のアンテナモジュール100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0061】
図9を参照して、アンテナモジュール100Cにおいては、共振部52における最終段の共振器154は、接地電極GND2に形成された開口部を通して放射素子121の給電点SP1に対向している。共振器154と放射素子121とは容量結合しており、非接触で高周波信号を伝達するように構成されている。
【0062】
実施の形態1のアンテナモジュール100のように、共振器154と放射素子121とをビア等によって直接接続した場合、このビア等の給電配線による不要共振が発生してノイズの要因となる場合がある。アンテナモジュール100Cのように共振器154と放射素子121との間の給電配線を用いない構成とすることによって、給電配線に起因する不要共振を抑制し、アンテナ特性を改善することができる。
【0063】
なお、ビア172,173および平板電極156をすべて除いた場合、共振器154と放射素子121との距離によっては、共振器154と放射素子121との間の結合が弱くなり、十分なアンテナゲインを確保できない状態となる可能性がある。そのため、不要共振が低減できる範囲で、給電配線の一部のみを除いた構成として、共振器154と放射素子121とを容量結合させるようにしてもよい。たとえば、アンテナモジュール100におけるビア173のみを取り除いた構成として、平板電極156と放射素子121とを容量結合させるようにしてもよい。
【0064】
(変形例4)
変形例4においては、共振回路と放射素子との間の給電配線を、共振回路の最終段の共振器の一部として利用する構成について説明する。
【0065】
図10は、変形例4のアンテナモジュール100Dを説明するための図である。アンテナモジュール100Dにおいては、実施の形態1のアンテナモジュール100の共振回路150が、共振回路150Dに置き換えられた構成を有している。アンテナモジュール100Dにおいて、実施の形態1のアンテナモジュール100と重複する要素の説明は繰り返さない。
【0066】
図10を参照して、アンテナモジュール100Dの共振回路150Dにおいては、共振部52における共振器154が、共振器154#に置き換えられた構成となっている。共振器154#は、平板電極154D,156Dおよびビア172Dを含む。平板電極154Dは、共振器153に隣接して配置されている。
【0067】
平板電極156Dおよびビア172Dは、実施の形態1のアンテナモジュール100における給電配線に含まれる平板電極156およびビア172にそれぞれ対応している。すなわち、平板電極156Dは、接地電極GND2が配置される誘電体層と放射素子121が配置される誘電体層との間の層に配置されており、ビア172Dによって平板電極154Dと接続されている。
【0068】
図11は、共振回路150Dにおける共振器154#を、X軸方向から見た図である。共振器154#は、平板電極154D,156Dおよびビア172Dによって略C字形状に形成されており、平板電極154D、ビア172Dおよび平板電極156Dに沿った経路の長さがλ/4となっている。そして、共振器154#と放射素子121とが非接触で電磁界結合することによって、共振回路150Dから放射素子121に高周波信号が伝達される。
【0069】
実施の形態1のアンテナモジュール100においては、共振器154がλ/4の長さを有する平板電極で構成され、給電配線(ビア172,173および平板電極156)によって放射素子121に接続されていた。アンテナモジュール100Dにおいては、給電配線として用いられていたビアおよび平板電極の一部を共振器154#の一部として利用することによって、ビアに起因する不要共振を防止するとともに、共振回路150Dと放射素子121との間における非接触での結合量を確保することができる。
【0070】
なお、変形例4における「平板電極154D,156D」は、本開示における「第1平板電極」および「第2平板電極」にそれぞれ対応する。変形例4における「ビア172D」は、本開示における「第1ビア」に対応する。
【0071】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、放射素子から2つの異なる偏波方向に電波が放射可能な、いわゆるデュアル偏波タイプのアンテナモジュールに対して、本開示の特徴を適用した構成について説明する。
【0072】
図12は、実施の形態2のアンテナモジュール100Eの斜視図である。アンテナモジュール100Eにおいては、放射素子121に対して、2つの共振回路150X,150Yが設けられた構成となっている。共振回路150X,150Yの各々は、基本的には、実施の形態1のアンテナモジュール100の共振回路150と同様の構成を有している。そのため、共振回路150X,150Yの詳細な構成については繰り返さない。なお、共振回路150X,150Yが重なる部分においては、共振器を取り囲むビアVGおよび平板電極PGの一部が共通化されている。
【0073】
共振回路150Xは、ビアおよび平板電極で構成される給電配線170Xによって、放射素子121の給電点SPXに接続される。給電点SPXは、放射素子121の中心からX軸の正方向にオフセットした位置に配置されている。共振回路150Xを介して給電点SPXに高周波信号が供給されることによって、放射素子からはX軸方向を偏波方向とする電波が放射される。共振回路150Xと放射素子121とによって、X軸方向を偏波方向とする電波についてのフィルタ装置(第1フィルタ装置)が構成される。
【0074】
共振回路150Yは、ビアおよび平板電極で構成される給電配線170Yによって、放射素子121の給電点SPYに接続される。給電点SPYは、放射素子121の中心からY軸の正方向にオフセットした位置に配置されている。共振回路150Yを介して給電点SPYに高周波信号が供給されることによって、放射素子からはY軸方向を偏波方向とする電波が放射される。共振回路150Yと放射素子121とによって、Y軸方向を偏波方向とする電波についてのフィルタ装置(第2フィルタ装置)が構成される。
【0075】
実施の形態1において説明したように、共振回路150X、150Yは、比較的コンパクトな構成とすることができるので、アンテナモジュール100Eのようなデュアル偏波タイプのアンテナモジュールにおいても、放射素子121に近接して共振回路を配置することができる。したがって、アンテナモジュールを小型化しつつ、アンテナ特性を改善することが可能となる。
【0076】
なお、実施の形態1における各変形例の構成は、矛盾とならない範囲で実施の形態2の構成にも適用可能である。
【0077】
実施の形態2における「共振回路150X、150Y」は、本開示における「第1共振回路」および「第2共振回路」に対応する。実施の形態2における「X軸方向」および「Y軸方向」は、本開示における「第1偏波方向」および「第2偏波方向」に対応する。
【0078】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
10 通信装置、50 フィルタ装置、51,52 共振部、100,100A~100E アンテナモジュール、110 RFIC、111A~111D,113A,~113D,117 スイッチ、112AR~112DR ローノイズアンプ、112AT~112DT パワーアンプ、114A~114D 減衰器、115A~115D 移相器、116 信号合成/分波器、118 ミキサ、119 増幅回路、120 アンテナ装置、121 放射素子、130 誘電体基板、131 上面、132 下面、150,1501~1504,150A,150B,150D,150X,150Y 共振回路、151~154,154# 共振器、154D,156,156D,PG 平板電極、155 入力線路、157~159 調整素子、160 はんだバンプ、170X,170Y 給電配線、171~173,172D,VG ビア、180 切欠部、200 BBIC、GND1,GND2 接地電極、SP1,SPX,SPY 給電点。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12