(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】細胞賦活剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/13 20160101AFI20241226BHJP
A23L 29/00 20160101ALI20241226BHJP
A61K 31/706 20060101ALI20241226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241226BHJP
A61K 35/618 20150101ALI20241226BHJP
【FI】
A23L33/13
A23L29/00
A61K31/706
A61P43/00 107
A61P1/16
A61K35/618
(21)【出願番号】P 2024144028
(22)【出願日】2024-08-26
【審査請求日】2024-08-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504017337
【氏名又は名称】株式会社ゆうき
(73)【特許権者】
【識別番号】513066982
【氏名又は名称】株式会社ウェッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100205914
【氏名又は名称】堀越 総明
(74)【代理人】
【識別番号】100162189
【氏名又は名称】堀越 真弓
(72)【発明者】
【氏名】山本 博之
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-001694(JP,A)
【文献】特開2018-002604(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078177(WO,A1)
【文献】特開2011-162528(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115590204(CN,A)
【文献】千葉医学,2018年,94,p.15-22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 5/40- 5/49
A23L31/00-33/29
A61K31/706
A23K10/00
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/FSTA/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
肝細胞の細胞賦活剤であって、
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)と、
焼成された貝殻を粉砕加工した焼成貝殻粉体及び焼成された天然ゼオライトを粉砕加工した焼成ゼオライト粉体を水に投入して水中で加熱処理を施し、乾燥させて得られる食品添加用還元剤と、を含有
し、
前記細胞賦活が、肝細胞の代謝活性を向上させる作用であることを特徴とする
肝細胞の細胞賦活剤。
【請求項2】
前記ニコチンアミドモノヌクレオチドと前記食品添加用還元剤の配合比(ニコチンアミドモノヌクレオチドの質量:食品添加用還元剤の質量)が、10:90~40:60であることを特徴とする請求項1に記載の
肝細胞の細胞賦活剤。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の
肝細胞の細胞賦活剤を有効成分として含有する肝機能向上剤。
【請求項4】
皮膚線維芽細胞の細胞賦活剤であって、
ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)と、
焼成された貝殻を粉砕加工した焼成貝殻粉体及び焼成された天然ゼオライトを粉砕加工した焼成ゼオライト粉体を水に投入して水中で加熱処理を施し、乾燥させて得られる食品添加用還元剤と、を含有し、
前記細胞賦活が、皮膚線維芽細胞の代謝活性を向上させる作用であることを特徴とする皮膚線維芽細胞の細胞賦活剤。
【請求項5】
前記ニコチンアミドモノヌクレオチドと前記食品添加用還元剤の配合比(ニコチンアミドモノヌクレオチドの質量:食品添加用還元剤の質量)が、10:90~40:60であることを特徴とする請求項4に記載の皮膚線維芽細胞の細胞賦活剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)と、貝殻類及び天然ゼオライトを焼成及び水中加熱処理等することで調製される天然素材由来の還元剤と、を含有する細胞賦活剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗老化遺伝子または長寿遺伝子とも呼ばれるサーチュイン遺伝子は、補酵素ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)により活性化されることが知られている。ところが、加齢や何らかの原因により体内のNAD量が減少すると、サーチュイン遺伝子が充分に活性化されなくなり、老化の原因となることが報告されている。近年、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN;nicotinamide mononucleotide)が注目されている。NMNは体内に取り込まれると、補酵素NADに変換されるため、サーチュイン遺伝子を活性化させる。それゆえ、NMNを摂取することで、加齢等により減少した補酵素NADを補ってサーチュイン遺伝子を活性化させ、老化を予防する効果が期待できる。
【0003】
また、上述した抗老化に関する機能のほか、NMNを配合した組成物に関する新たな機能についての研究が進められている。例えば、特許文献1には、NMNとロイシンを組み合わせた組成物に筋肉増強作用があることが開示されている。また、特許文献2には、NMNとレスベラトロールを組み合わせた組成物に血液中の尿酸低減作用があることが開示されている。
【0004】
他方、天然素材由来の還元剤として、カキ殻等の貝殻類と天然ゼオライトとをそれぞれ所定条件にて電気炉で加熱焼成して10ミクロンの粉体に粉砕加工した後、両者を水に投入して水中で加熱処理を施し、乾燥させて得られる食品添加用還元剤が知られている(特許文献3)。この食品添加用還元剤は商品名「ライフセラミックスパウダー」として、株式会社ウェッジから食品素材として製造販売されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2022-146639号公報
【文献】特許第6545256号公報
【文献】特許第4465687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
抗老化機能を有するNMNと何らかの素材とを組み合わせることによって、特許文献1、2で開示されたような、身近な健康や美容に寄与するNMNの新たな機能を見出すことが求められている。そして、その新たな機能に基づく機能性食品や医薬組成物への展開が期待されている。
【0007】
したがって、本発明は上述した点に鑑みてなされたもので、その目的は、NMNと、貝殻類及び天然ゼオライト由来の食品添加用還元剤を組み合わせてなる組成物について、新たな機能を見出し、その新たな機能に基づく用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、NMNと貝殻類及び天然ゼオライト由来の食品添加用還元剤を組み合わせた組成物について、さまざまなアッセイを行い研究を重ねた。その結果、本発明者は、NMNと食品添加用還元剤を組み合わせた組成物に、いずれか一方の材料のみには見られない特定の機能があることを見出した。この知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の細胞賦活剤は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)と、焼成された貝殻を粉砕加工した焼成貝殻粉体及び焼成された天然ゼオライトを粉砕加工した焼成ゼオライト粉体を水に投入して水中で加熱処理を施し、乾燥させて得られる食品添加用還元剤と、を含有する。NMNと上述した食品添加用還元剤とを配合した組成物とすることにより、細胞を賦活化させ、細胞の働きを活性化させることができる。
【0010】
また、本発明の細胞賦活剤は、賦活化される細胞が肝細胞又は線維芽細胞であることも好ましい。これにより、NMNと、貝殻類及び天然ゼオライト由来の食品添加用還元剤とを配合した本発明に係る組成物によって賦活化される細胞として、好適な細胞が選択される。本発明に係る組成物は、肝細胞及び線維芽細胞のいずれの細胞についても、細胞を賦活化させて、細胞の働きを活性化させることができる。
【0011】
また、本発明の細胞賦活剤は、ニコチンアミドモノヌクレオチドと食品添加用還元剤の配合比(ニコチンアミドモノヌクレオチドの質量:食品添加用還元剤の質量)が、10:90~40:60であることも好ましい。これにより、NMNと食品添加用還元剤を配合した本発明に係る組成物において、細胞賦活効果に優れる、構成成分の好適な配合比が選択される。
【0012】
また、本発明の肝機能向上剤は、上述した細胞賦活剤を有効成分として含有する。本発明に係る組成物は、肝細胞を賦活化させることによって、肝細胞の働きを活性化させ、肝機能を向上させることができる。
【0013】
また、本発明の皮膚老化抑制剤は、上述した細胞賦活剤を有効成分として含有する。本発明に係る組成物は、線維芽細胞を賦活化させることによって、線維芽細胞の働きを活性化させ、皮膚の老化の抑制や改善を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下のような優れた効果を有する細胞賦活剤を提供することができる。
(1)肝細胞及び線維芽細胞を賦活化させて、細胞の働きを活性化させることができる。
(2)NMNと食品添加用還元剤がそれぞれ保有する他の機能も併せて享受することができる。
(3)いずれも人体に対する安全性が高い化合物であるため、経口摂取でき、機能性食品として安全に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1における、本発明の組成物の肝細胞に対する細胞賦活効果を示すグラフである。
図1(a)は、本発明に係る組成物(実施例1)とNMNのみ(比較例1a)をそれぞれ肝細胞に添加したときの試験結果を示し、
図1(b)は、本発明に係る組成物(実施例1)と還元剤のみ(比較例1b)をそれぞれ肝細胞に添加したときの試験結果である。
【
図2】実施例2における、本発明の組成物の線維芽細胞に対する細胞賦活効果を示すグラフである。
図2(a)は、本発明に係る組成物(実施例2)とNMNのみ(比較例2a)をそれぞれ線維芽細胞に添加したときの試験結果を示し、
図2(b)は、本発明に係る組成物(実施例2)と還元剤のみ(比較例2b)をそれぞれ線維芽細胞に添加したときの試験結果である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の細胞賦活剤について詳細に説明する。本発明の細胞賦活剤は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)と、後述する貝殻類及び天然ゼオライトを焼成及び水中加熱処理等することで調製される天然素材由来の食品添加用還元剤とを含有している。
【0017】
本発明における細胞賦活とは、細胞の代謝活性が向上して細胞の働きが活性化することをいい、本発明の細胞賦活剤を添加又は投与されない状態のコントロールと比較して、細胞の代謝活性が向上して細胞の働きが活性化されていることを意味する。具体的には、例えば、MTTアッセイにおいて、本発明の細胞賦活剤を添加又は投与されない状態のコントロールと比較して、MTTから生成するホルマザン量が増加すること、すなわち、MTTをホルマザンに還元する細胞の代謝活性が高くなっていることを意味する。
【0018】
本発明に係る組成物により、賦活化される細胞としては、特に限定されないが、肝細胞または線維芽細胞に対する効果が顕著である。また、線維芽細胞としては、皮膚線維芽細胞が好ましい。本発明に係る組成物がこれらの細胞を賦活化させる作用機序は解明されていないが、NMNと貝殻類及び天然ゼオライト由来の食品添加用還元剤とを組み合わせた組成物とすることにより、優れた細胞賦活作用を発揮する。
【0019】
さらに、本発明に係る細胞賦活剤は、肝細胞を賦活化させることによって、肝細胞の代謝を活性化し、肝機能を向上させる肝機能向上剤として用いることができる。また、本発明に係る細胞賦活剤は、皮膚線維芽細胞を賦活化させることによって、皮膚線維芽細胞の代謝活性を向上させて、細胞内における酸化反応を抑制し、皮膚の老化の抑制や改善を図る皮膚老化抑制剤として用いることができる。
【0020】
(ニコチンアミドモノヌクレオチド)
本発明の組成物は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を含有している。NMNには、α型とβ型の光学異性体が存在するが、本発明においては、β型のβ-NMNが好適に用いられる。本発明においては、このNMNと後述する食品添加用還元剤を組み合わせることによって、肝細胞や皮膚線維芽細胞の代謝活性を向上させて、これらの細胞を賦活化させる作用を有する。さらに、上述したように、NMNは体内に取り込まれると、補酵素NADに変換されるため、サーチュイン遺伝子を活性化させるように機能する。それゆえ、NMNを摂取することで、加齢等により減少した補酵素NADを補ってサーチュイン遺伝子を活性化させ、老化を予防する効果も期待できる。
【0021】
(食品添加用還元剤)
本発明の組成物は、焼成された貝殻を粉砕加工した焼成貝殻粉体及び焼成された天然ゼオライトを粉砕加工した焼成ゼオライト粉体を水に投入して水中で加熱処理を施し、乾燥させて得られる食品添加用還元剤を含有している。本発明においては、上述したNMNとこの食品添加用還元剤を組み合わせることによって、肝細胞や皮膚線維芽細胞の代謝活性を向上させて、これらの細胞を賦活化させる作用を有する。この食品添加用還元剤としては、健康食品用素材として流通している、商品名「ライフセラミックスパウダー」(株式会社ウェッジ製品)が好適に用いられる。
【0022】
この食品添加用還元剤は、特に限定されないが、一例として、特許文献3(特許第4465687号公報)にて開示された方法によって製造することができる。例えば、カキ殻等の貝殻類を電気炉に入れ、500℃~850℃の温度範囲で段階的に昇温させながら8~20時間加熱焼成する。加熱焼成後、焼成された貝殻を粉体に粉砕加工して焼成貝殻粉体を得る。他方、天然ゼオライトについても、電気炉を用い、200℃~800℃の温度範囲で段階的に昇温させながら5~10時間加熱焼成する。加熱焼成後、焼成された天然ゼオライトを粉体に粉砕加工して焼成ゼオライト粉体を得る。そして、焼成貝殻粉体85~98%に対し、焼成ゼオライト粉体2~15%を混合した混合物を水に投入し、水温90℃に加温して、この平衡温度を維持したまま水中で5~48時間イオン交換させる。その後、この混合物を乾燥させることによって、この食品添加用還元剤が得られる。
【0023】
より具体的には、まず、カキ殻等の貝殻類を電気炉に入れ、初期温度550℃で3時間加熱焼成し、その後700℃で5時間、さらに840℃で8時間加熱焼成する。加熱焼成後、焼成された貝殻を10ミクロンの粉体に粉砕加工して焼成貝殻粉体を得る。他方、天然ゼオライトについても、電気炉を用い、初期温度250℃で2時間、その後750℃で5時間加熱焼成する。加熱焼成後、焼成された天然ゼオライトを10ミクロンの粉体に粉砕加工して焼成ゼオライト粉体を得る。そして、焼成貝殻粉体90%に対し、焼成ゼオライト粉体10%を混合した混合物を水に投入し、水温90℃に加温して、この平衡温度を維持したまま水中で8時間イオン交換させる。その後、この混合物を含水比3%になるまで乾燥した後に、電気炉を用いて840℃で5時間焼成することによって、この食品添加用還元剤が得られる。なお、貝殻類及び天然ゼオライトの焼成時間や焼成温度、焼成貝殻粉体と焼成ゼオライトの混合割合、及び、水中での加熱温度や水中反応時間は、材料として選択された貝殻や天然ゼオライトの種類や状態によって、適宜変更することができる。
【0024】
本発明に係る組成物において、NMNと食品添加用還元剤の配合比(NMNの質量:食品添加用還元剤の質量)は、細胞賦活効果を発揮させる観点から、10:90~40:60とすることが好ましく、15:85~30:70とすることがより好ましく、20:80~30:70とすることがさらに好ましい。これにより、肝細胞及び皮膚線維芽細胞が活性化されて賦活化される。
【0025】
本発明に係る組成物における、NMNの配合量は、作用効果の観点から、組成物全体の5~40質量%とすることが好ましく、10~30質量%とすることがより好ましく、15~30質量%とすることが特に好ましい。また、本発明に係る組成物における、食品添加用還元剤の配合量は、作用効果の観点から、組成物全体の50~85質量%とすることが好ましく、55~80質量%とすることがより好ましく、55~70質量%とすることが特に好ましい。
【0026】
本発明に係る細胞賦活剤に係る組成物は、公知の方法に従って製造することができる。具体的には、上述した配合成分を混合・分散等することにより製造される。
【0027】
本発明に係る組成物には、上述したNMN及び食品添加用還元剤といった配合成分に加え、サプリメント等の食品や医薬品等の製造の際に通常用いられる成分である賦形剤、滑沢剤、分散剤、崩壊剤、緩衝剤、増量剤、保存剤、香料又は安定化剤等の成分を適宜配合し、従来慣用されている方法により種々の形態に調製することができる。また、本発明に係る組成物の有効成分のバイオアベイラビリティーや安定性を向上させるために、マイクロカプセル、超微粉末化、シクロデキストリン等を用いた包接化などの製剤技術を含むドラッグデリバリーシステムを用いることもできる。
【0028】
さらに、本発明に係る細胞賦活剤は、錠剤やカプセル剤(ハードカプセル及びソフトカプセル)、顆粒剤、懸濁剤、シロップ剤などのサプリメント形態、清涼飲料、果汁飲料、アルコール飲料などの飲料、アメやガム、クッキー、ビスケット、チョコレート等の菓子、パン、粥、シリアル、麺類、ゼリー、スープ、乳製品、調味料等のあらゆる形態とすることができる。また、本発明の細胞賦活剤に係る組成物には、本発明の有効成分の効能に影響を与えない範囲において、他の機能性成分や、各種アミノ酸、各種ビタミン、ミネラル、オリゴ糖、プレバイオティクス若しくは他のプロバイオティクス等を種々組み合わせることも可能である。本発明の組成物は安全性が高く、食品組成物として好適に用いられるが、食品組成物にはサプリメント、健康食品、機能性食品、特定保健用食品等が含まれる。
【0029】
また、本発明に係る細胞賦活剤の1日あたりの摂取量は、目的とする効果や年齢、性別、体重等によって異なるが、一例として、NMNを20mg~500mgとし、食品添加用還元剤を100mg~6gとすることが好ましく、NMNを30mg~300mgとし、食品添加用還元剤を100mg~3gとすることがより好ましく、NMNを50mg~250mgとし、食品添加用還元剤を200mg~2gとすることがさらに好ましい。
【0030】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に特に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
1.肝細胞の細胞賦活作用の検討
本実施例では、ヒト肝細胞株であるHepG2細胞を用い、NMNと、貝殻類及び天然ゼオライト由来の食品添加用還元剤を含有する、本発明に係る組成物の肝細胞に対する細胞賦活作用を検討した。
【0032】
[サンプル液の調製]
β-ニコチンアミドモノヌクレオチド(β-NMN、オリエンタル酵母工業株式会社製品)と、焼成された貝殻と焼成された天然ゼオライトを水に投入して水中で加熱処理を施し、乾燥後に粉砕処理して得られる食品添加用還元剤(商品名:ライフセラミックスパウダー、株式会社ウェッジ製品)を、β-NMN:食品添加用還元剤=23:77の配合比率で混合した。これをDMEM培地で希釈し、以下表1に示す異なる濃度のサンプル液を調製した。他方、比較対照として、以下表1に示すように、β-NMNのみをDMEM培地で希釈したサンプル液と、食品添加用還元剤のみをDMEM培地で希釈したサンプル液をそれぞれ調製した。
【0033】
【0034】
本発明に係る組成物の肝細胞に対する細胞賦活作用の確認試験は、細胞の代謝活性を測定できるMTTアッセイにより行った。対象細胞にMTT(3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide)を添加し、還元生成物のホルマザンの量を吸光度により測定することで、細胞の代謝活性を測定することができる。MTTは株式会社同仁化学研究所製品を用いた。本試験においては、生細胞として、ヒト肝由来腫瘍細胞株であるHepG2細胞を用い、HepG2細胞は、DMEM培地で37℃、5%CO2存在下、100%飽和水蒸気条件下で培養した。
【0035】
まず、HepG2細胞を96ウェルマイクロプレートの各ウェルに10
3個/ウェルとなるように播種し、CO
2インキュベーターで24時間培養した。培養後、各ウェルから上清を除去し、実施例1群、比較例1a群及び比較例1b群に分け、表1に示す各群に対応するサンプル液をそれぞれ100μLずつ添加した。CO
2インキュベーターで24時間培養した後、上清を除去し、サンプル液を含有していない新しいDMEM培地に交換(100μL/ウェル)した後、0.5mg/mLのMTTを10μLずつ各ウェルに添加した。4時間培養後、上清を除去し、100μLの可溶化液(0.1M HCl中に10%SDSを含む)を各ウェルに加え、一晩静置して生成したホルマザンの結晶を可溶化した。翌日、マイクロプレートリーダー(テカン社製品)にて560nmにおけるホルマザン液の吸光度を測定し、DMEM培地のみの溶媒対照の試験区(試験区No.1、No.1a、No.1b)のホルマザン液の吸光度を100としたときの相対値を吸光度比(% of control)として求めた。結果を表2、表3及び
図1に示す。表2及び
図1(a)はNMNの添加濃度に基づく吸光度比(% of control)を示しており、表3及び
図1(b)は食品添加用還元剤の添加濃度に基づく吸光度比(% of control)を示している。
【0036】
【0037】
【0038】
図1及び表2,3の結果より、NMN単独(比較例1a)又は食品添加用還元剤単独(比較例1b)では、吸光度比(%)、すなわち、肝細胞の代謝によって生成するホルマザンの量には大きな変化はみられなかった。これに対し、NMNと食品添加用還元剤とを組み合わせた本発明に係る組成物を添加することにより、濃度依存的にホルマザン量が増加しており、肝細胞の代謝活性が向上し、肝細胞が賦活化されることが明らかとなった。例えば、本実施例1で調製した組成物では、少なくともNMNの濃度が0.73mg/mL及び食品添加用還元剤の濃度が2.44mg/mLにおいて、吸光度比が125%となり、NMNの濃度が6.57mg/mL及び食品添加用還元剤の濃度が22mg/mLの条件下では、吸光度比が255%まで達した。なお、溶媒対照を含めた各試験区間における肝細胞の細胞数に変化はみられず、本発明に係る組成物を添加することによる肝細胞数の増加傾向等は認められなかった。このように、NMNと食品添加用還元剤とを組み合わせることによって、各構成成分単独ではみられない、肝細胞の代謝活性向上・賦活化効果が生じることが明らかとなった。
【0039】
[実施例2]
2.線維芽細胞の細胞賦活作用の検討
本実施例では、正常ヒト皮膚線維芽細胞を用い、NMNと、貝殻類及び天然ゼオライト由来の食品添加用還元剤を含有する、本発明に係る組成物の肝細胞に対する細胞賦活作用を検討した。
【0040】
サンプル液の調製は上述した実施例1と同様にして行い、NMNのみのサンプル液を比較例2a、食品添加用還元剤のみのサンプル液を比較例2bとした。線維芽細胞に対する細胞賦活作用の確認試験は、用いる細胞株をHepG2細胞から正常ヒト皮膚線維芽細胞に変更した以外は、上述した実施例1と同様の方法により行い、DMEM培地のみの溶媒対照の試験区(試験区No.2、No.2a、No.2b)の吸光度を100としたときの相対値を吸光度比(% of control)として求めた。結果を表4、表5及び
図2に示す。表4及び
図2(a)はNMNの添加濃度に基づく吸光度比(% of control)を示しており、表5及び
図2(b)は食品添加用還元剤の添加濃度に基づく吸光度比(% of control)を示している。
【0041】
【0042】
【0043】
図2及び表4,5の結果をみると、NMN単独(比較例2a)又は食品添加用還元剤単独(比較例2b)では大きな変化はみられず、NMM単独添加の場合に、線維芽細胞の代謝によって生成するホルマザンの量が若干増加する作用がみられたが、吸光度比(%)が増加した試験区のNMMの添加率は、19.7mg/mLと高濃度であった。これに対し、NMNと食品添加用還元剤とを組み合わせた本発明に係る組成物を添加することにより、濃度依存的にホルマザン量が顕著に増え、線維芽細胞の代謝活性が向上し、線維芽細胞が賦活化されることが明らかとなった。例えば、本実施例2で調製した組成物では、少なくともNMNの濃度が0.73mg/mL及び食品添加用還元剤の濃度が2.44mg/mLにおいて、吸光度比が148%と顕著に増加し、NMNの濃度が6.57mg/mL及び食品添加用還元剤の濃度が22mg/mLの条件下では、吸光度比が248%まで達した。なお、溶媒対照を含めた各試験区間における線維芽細胞の細胞数に変化はみられず、本発明に係る組成物を添加することによる線維芽細胞数の増加傾向等は認められなかった。このように、NMNと食品添加用還元剤とを組み合わせることによって、各構成成分単独ではみられない、線維芽細胞の代謝活性向上・賦活化効果が生じることが明らかとなった。
【0044】
本発明は、上述の実施形態又は実施例に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨を逸脱しない範囲内での種々、設計変更した形態も技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の細胞賦活剤は、肝細胞及び線維芽細胞の代謝活性の向上により細胞を賦活化させることができるものであり、機能性食品や医薬等の分野の産業において、有効に利用できるものである。
【要約】
【課題】ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)と、貝殻類及び天然ゼオライト由来の食品添加用還元剤を組み合わせてなる組成物について、新たな機能を見出し、その新たな機能に基づく用途を提供すること。
【解決手段】細胞賦活剤は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)と、焼成された貝殻を粉砕加工した焼成貝殻粉体及び焼成された天然ゼオライトを粉砕加工した焼成ゼオライト粉体を水に投入して水中で加熱処理を施し、乾燥させて得られる食品添加用還元剤と、を含有する。
【選択図】なし