(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ノズル式スチームトラップ
(51)【国際特許分類】
F16T 1/00 20060101AFI20241226BHJP
F16T 1/38 20060101ALI20241226BHJP
F16T 1/34 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F16T1/00 A
F16T1/00 E
F16T1/38 Z
F16T1/34
(21)【出願番号】P 2020137484
(22)【出願日】2020-08-17
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517240687
【氏名又は名称】株式会社生活環境研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(72)【発明者】
【氏名】岩頭 文雄
【審査官】高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015341(JP,A)
【文献】特開平05-263993(JP,A)
【文献】実開平07-010641(JP,U)
【文献】特開昭60-018694(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2256472(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/00
F16T 1/34
F16T 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレイン流入口からドレイン排出口に至る経路に第1のノズルを有するノズル式スチームトラップであって、
前記第1のノズルはドレインの下流側が膨張室に通じ、前記膨張室は第2のノズルを経て前記ドレイン排出口に通じ、
外部操作により前記第2のノズルに対し進退して前記第2のノズルを通るドレインの流量を調整可能なニードルを有し、
前記ドレイン流入口側の圧力を検出する第1の圧力計と、前記第1のノズルのドレイン排出口側の圧力を検出する第2の圧力計を有し、
前記第1の圧力計と前記第2の圧力計による検出圧力差を前記ニードルにより調整
することでドレインの流量調整
が可能
であり、
前記第1のノズルは、直列的に配置された複数のノズル部材で構成されているノズル式スチームトラップ。
【請求項2】
前記複数のノズル部材は、それぞれドレインの下流側に膨張室を有している請求項
1記載のノズル式スチームトラップ。
【請求項3】
前記複数のノズル部材のノズル孔径は異なる請求項1
または2記載のノズル式スチームトラップ。
【請求項4】
前記複数のノズル部材のノズル孔径は等しい請求項1
または2記載のノズル式スチームトラップ。
【請求項5】
前記ニードルは、前記第2のノズルのノズル孔と対向する面に前記ニードルの長さ方向に沿ったスリットを有する請求項1ないし
4のいずれかに記載のノズル式スチームトラップ。
【請求項6】
前記ドレイン流入口側にストレーナを有し、前記スリットは、前記ストレーナを通り抜ける異物が通過できる幅または深さである請求項
5記載のノズル式スチームトラップ。
【請求項7】
前記ニードルの前記スリットに代え、または前記ニードルの前記スリットとともに、前記ニードルが進退する前記第2のノズルのノズル孔側にスリットを有する請求項
5または6記載のノズル式スチームトラップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気を熱交換することによって生じる凝縮水(以下「ドレイン」という)を蒸気から分離して排出するノズル式スチームトラップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
加熱源などとして蒸気を用いる工場その他の施設では、操業の安定性、安全性を確保するために、熱交換機や蒸気の輸送経路中で発生するドレインを系外に排出するスチームトラップが用いられている。スチームトラップには各種可動方式のものがあるが、近年では可動部のないノズル式スチームトラップが用いられている。
【0003】
ノズル式スチームトラップは、微細な通路を通過するときの動粘度が蒸気よりも水の方が低く、蒸気に比べて水の質量流量が多いことを利用している。その仕組みは、本体内にノズルを装着し、ノズルに設けられているドレイン排出孔によってスチームの通過を阻止し、ドレインのみを通過させる仕組みである。
【0004】
スチームトラップでは、ドレインの排出量に応じてドレインの流量を調整する必要がある。従来の一般的なノズル式スチームトラップでは、ドレイン排出孔の径が異なるいくつかのノズルを用意しておき、適合するドレイン排出孔径のノズルを選択して装着する構成になっている。
【0005】
このような従来のノズル式スチームトラップによれば、ドレインの流量を調整するには、内部空間を密閉している蓋などの部材を取り外してノズルを交換し、再び密閉するという作業が必要である。したがって、ドレインを適正な流量に調整するためには、ドレインの排出量を観察しながらノズルが適正であるか否かを判断し、ノズルの着脱を繰り返しながら調整する必要があり、作業に時間と労力を要していた。これに加えて、高温の蒸気やドレインに触れるため危険を伴っていた。
【0006】
特許文献1記載の発明は、このようなノズル式スチームトラップの課題を解決するもので、ノズルのドレイン排出孔に対しノズルの一端側から進退するニードルを有する。このニードルは、外部からの操作によって進退し、ノズルとともにドレインの流量を調整するニードルバルブを構成している。
【0007】
特許文献1記載の発明によれば、内部空間を開放してノズルを交換しなくても、ニードルバルブを調整することにより容易かつ短時間にドレインの排出量を微調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、特許文献1記載の発明をさらに改良し、ドレインの排出量の微調整をより的確かつ迅速に行うことができるノズル式スチームトラップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、
ドレイン流入口からドレイン排出口に至る経路に第1のノズルを有するノズル式スチームトラップであって、
前記第1のノズルはドレインの下流側が膨張室に通じ、前記膨張室は第2のノズルを経て前記ドレイン排出口に通じ、
外部操作により前記第2のノズルに対し進退して前記第2のノズルを通るドレインの流量を調整可能なニードルを有し、
前記ドレイン流入口側の圧力を検出する第1の圧力計と、前記第1のノズルのドレイン排出口側の圧力を検出する第2の圧力計を有し、
前記第1の圧力計と前記第2の圧力計による検出圧力差を前記ニードルにより調整してドレインの流量調整を可能にしたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るノズル式スチームトラップを通じて排出されるドレインの流量は、前記検出圧力差と第2のノズルの流路面積によって決まる。流量の目標値が決まれば前記検出圧力差が決まるので、この検出圧力差が目標値になるように第2のノズルに対するニードルの位置を調整する。このニードルの調整は第1および第2の圧力計による前記検出圧力によって行うことができるため、特許文献1記載の発明よりも一層容易で安全にかつ短時間にドレインの排出量を微調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るノズル式スチームトラップの実施例を示すドレインの流路に沿った断面図である。
【
図2】前記実施例中のニードルの変形例を示す縦断面図である。
【
図3】前記実施例中のニードルの別の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係るノズル式スチームトラップの実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0014】
[構成]
図1に示すように、ノズル式スチームトラップは、金属の鍛造品などからなるハウジング1を主体として構成されている。ハウジング1は、例えば、蒸気を使用する熱交換機のドレイン排出口などに接続されるドレイン流入口5と、連通路7を介してドレイン流入口5に連通しているドレイン排出口8を有する。ドレイン流入口5と連通路7との間にはストレーナ6がある。ハウジング1はストレーナ6のハウジングとともに一体に成形されている。
【0015】
連通路7は、
図1においてハウジングの下から上に向かったのち折り折り返して上から下に向かい、さらに横方向に直角に折れ曲がってドレイン排出口8に連通している。ハウジング1の上端は解放し、この開放端を蓋2によって塞ぎ、締結部材によって蓋2をハウジング1に密着させている。
【0016】
ストレーナ6は、縦方向と横方向に一定間隔を保った網目状のフィルタを有し、網目の大きさ以上の錆や不純物などの異物が連通路7に流入するのを阻止する。ストレーナ6の端部にはキャップ14が装着されている。キャップ14を取り外すことによりフィルタを取り外し、フィルタを掃除できるようになっている。
【0017】
連通路7には、
図1においてドレインが下から上に向って流通する部分に第1のノズル10が設けられている。第1のノズル10は、下から上に向かって順に、第1ノズル部材11、第2ノズル部材12、第3ノズル部材13が直列的に配置されることによって構成されている。
【0018】
各ノズル部材11,12,13は、ドレインを通過させる小さな孔であるノズル孔を有するとともに、それぞれのノズル孔よりもドレインの下流側に膨張室14,15,16を有している。第3ノズル部材13の下流側にある膨張室16は、ハウジング1と蓋2との間に形成されている膨張室17に連通している。
【0019】
連通路7の、ハウジング1の上部で折り返されて下に向かう部分には第2のノズル20が取り付けられている。第2のノズル20はドレインの通路を狭めるドレイン孔21を有する。ドレイン孔21は横断面が真円の孔である。第2のノズル20の下方に位置する連通路7は膨張室22を構成している。前記膨張室17は第2のノズル20のドレイン孔21を経て膨張室22に連通している。膨張室22はドレイン排出口8に連通している。
【0020】
以上の通り、第1のノズル10はドレインの下流側が膨張室17に通じ、膨張室17は第2のノズル20を経てドレイン排出口8に通じている。
【0021】
図1に示す実施例では、直列的に配置された複数のノズル部材11,12,13で第1のノズル10が構成されているが、第1のノズル10は1個のノズル部材で構成してもよい。また、複数のノズル部材で第1のノズル10を構成する場合、ノズル部材の個数は任意である。複数のノズル部材で第1のノズル10を構成する場合、互いに等しいノズル孔径にしてもよいし、異なったノズル孔径にしてもよい。ノズル孔径については後でさらに説明する。
【0022】
前記蓋2には、第2のノズル20の上方において、スリーブ31を介して上下方向にニードル4が装着されている。ニードル4の先端部すなわち
図1において下端部41は円錐形状に形成され、この円錐形状の下端部41が第2のノズル20のノズル孔21の上端部に対向している。スリーブ31は蓋2のねじ孔にねじ込まれている。ニードル4は、スリーブ31にその中心軸線方向に挿入され、外周に形成されている雄ネジがスリーブ31の内周に形成されている雌ねじにねじ込まれている。
【0023】
ニードル4の下端部41の最大径は第2のノズル20のノズル孔21の径とほぼ等しい。ニードル4をその中心軸線の周りに回転させると、前記雄ネジがスリーブ3の雌ねじにリードされて円錐形状の下端部41が第2のノズル20のノズル孔21に対して進退する。ニードル4の進退によって、ノズル孔21へのドレイン入り口面積、すなわち、ノズル20の上端面におけるノズル孔21とニードル4の先端部41とによって形成されるリング状の隙間の面積が増減するようになっている。第2のノズル20とニードル4とによってニードルバルブを構成している。
【0024】
蓋2とスリーブ31との接合部およびスリーブ31とニードル4との接合部には、気密保持のためのシールが施されている。スリーブ31の上端部にはキャップ32がねじ込みによって被せられ、キャップ32をニードル4の上端部が貫通している。ニードル4の上端部には、ニードル4を回転操作するためのハンドル48が装着されている。
【0025】
ノズル式スチームトラップは、ドレイン流入口5側に、ドレイン流入口5側の圧力を検出する第1の圧力計51を有し、ドレイン流入口5に流入するドレインの温度を検出する温度計を有している。また、第1のノズル10のドレイン排出口側の圧力すなわち膨張室17の圧力を検出する第2の圧力計52を有している。さらに、ドレイン排出口8側に、ドレイン排出口8側の圧力を検出する第3の圧力計53を有している。これらの圧力計による検出圧力差に応じてニードル4を調整してドレインの流量調整を可能にしている。流量調整については後で詳細に説明する。
【0026】
ニードル4によるドレインの流量調整は、前記圧力計51,52,53や前記温度計による検出値に応じて行う。この流量調整は、手動操作することによって行ってもよいし、自動的に制御するようにしてもよい。
図1には、自動的に制御する場合の例として、ニードル4を駆動するモータ70と、モータ70を制御する制御部60を備えた例が示されている。制御部60には、前記第1の圧力計51による検出圧力P1,第2の圧力計52による検出圧力P2,第3の圧力計53による検出圧力P3,前記温度計の検出温度Tが入力される。
【0027】
[動作]
これまで説明してきたノズル式スチームトラップの動作を説明する。ノズル式スチームトラップは、ドレイン流入口5が熱交換機や蒸気の輸送経路に接続し、ストレーナ6、第1のノズル10、第2のノズル20を経てドレイン排出口8からドレインを排出する。ドレインが第1のノズル10、第2のノズル20を通過する際に、各ノズルのノズル孔で流路が狭められることによる圧力の高まり、膨張室で膨張することによる圧力の低下を繰り返す。
【0028】
第1のノズル10は、直列的に配置された3個のノズル部材11,12,13で構成されており、それぞれのノズル孔とそれぞれの膨張室14,15,16によって圧力の高まりと膨張が繰り返される。複数のノズル部材11,12,13においてスチームストラップ効果が発揮され、スチームストラップ効果が高まる。これによってドレインのみが通過し、蒸気の通過は阻止される。
【0029】
図1に示す本発明の実施例に係るノズル式スチームトラップにおいて、ニードル4を回転させてその先端部41を第2のノズル20のノズル孔21に向って侵入させると、ノズル孔21へのドレインの侵入量は少なくなる。膨張室17すなわち第1のノズル10の下流側に設置されている圧力計52の検出圧力P2は高くなる。ドレイン流入口5側の圧力はほぼ一定であるから、第1の圧力計51の検出圧力P1はほぼ一定である。したがって、第1の圧力計51と第2の圧力計52の検出圧力差P1-P2は小さくなる。
【0030】
検出圧力差P1-P2が所定の圧力差よりも小さくなるのは、第2のノズル20を通るドレインの流量が少なすぎることによる。このような場合は、ニードル4を逆に回転させて第2のノズル20を後退させ、ノズル孔21とニードル4の先端部41とによって形成される隙間の面積を拡大する。
【0031】
第2のノズル20を通るドレインの流量は、第2のノズル20の流入側とドレイン排出口8側の圧力の圧力差すなわちP2とP3との差の平方根に比例して変動する。ノズル孔21とニードル4の先端部41とによって形成される隙間の面積を拡大すると第2のノズル20を通るドレインの流量が増え、圧力P2が低下して検出圧力差P1-P2が大きくなる。
【0032】
本発明の実施例によれば、ドレイン流入口5と、第1のノズル10のドレイン排出口側の検出圧力差P1-P2によって、第2のノズル20のドレインの流量を適正に調整することができる。
【0033】
従来一般のノズル式スチームトラップは、ノズルのノズル孔径によってドレインの流量が決まる。したがって、ドレイン排出量を理論的に計算し、求められた排出量に基づいてノズル孔径を決定している。しかし、装置を稼働すると、ドレインが効率的に排出されないとか、スチームトラップを通じて蒸気が漏れるなどの問題が生じることがある。このような場合、ノズル孔径の異なるノズルと交換しながら適正な流量に設定している。高温高圧の蒸気を扱う装置であるため、このような調整作業には苦難を伴う。
【0034】
その点、前記特許文献1記載のノズル式スチームトラップは、ノズルを交換することなく外部からニードルバルブを調整することにより、連続的に流量を調整することができる。しかし、特許文献1記載のノズル式スチームトラップは、ニードルバルブ調整の目安になるものがなく、ドレインの流れを目視しながら感によって調整せざるを得なかった。
【0035】
本発明に係るノズル式スチームトラップの前記実施例では、ドレイン流入口5と、第1のノズル10のドレイン排出口側の検出圧力差P1-P2という明確な指標に基づいて、第2のノズル20のドレインの流量を調整する。したがって、生成されたドレインをその量に応じて的確に精度よく排出することができる。ドレインの排出量調整はニードルバルブによって連続的に行うことができ、ノズル孔径の異なるノズルを交換しながら調整する必要はないから、安全かつ迅速に調整することができる。
【0036】
第2のノズル20のノズル孔21の径は理論上計算された孔径よりも大きい孔径とする。また、第1のノズル10を構成するノズル部材11,12,13のノズル孔よりもかなり大きく設定されている。そして、第2のノズル20のノズル孔21の実質的な開口面積はニードル4の先端部41で制限される。第2のノズル20を流れるドレインの流量はニードル4によって微調整する。
【0037】
ドレインの流量を自動制御する場合は、第1、第2、第3の圧力計51,52,53による検出圧力P1,P2,P3と、ドレイン流入口5側の温度Tに基づいて、制御部60がモータ70を制御してニードルバルブの開度を調整する。ドレイン流入口5側に多くのドレインが存在すると温度Tが低下するので、制御部60はモータ70を制御してニードルバルブの開度を大きくして第2のノズル20を通過するドレインの流量を多くする。
【0038】
検出圧力P1,P2の差が小さい場合は、ドレイン量に対してニードルバルブの開度が小さいと判断できるので、制御部60はニードルバルブの開度を大きくするようにモータ70を制御する。
【0039】
図示の実施例に係るノズル式スチームトラップを、ドレインの発生量の少ない蒸気輸送経路に設置することにより、大幅な省エネ効果を得ることができる。第1のノズル10を連続した複数個のノズル部材11,12、13で構成してスチームストラップ効果を高めたことと、ニードルバルブの微調整によってスチームストラップ作用を適正に調整できるようにしたことによる。具体的には、ドレインの発生量の少ない蒸気輸送経路では、検出圧力P1,P2の差が小さくなるようにニードルバルブを微調整する。
【0040】
前述の通り、蒸気輸送経路でのドレイン発生量は少ないため、蒸気輸送経路にスチームストラップが設置されていても、スチームストラップによるドレイン排出量の調整は軽視されていた。調整を行うとしても、ノズル孔径の異なるノズルに交換することしか行われていなかった。図示の実施例に係るノズル式スチームトラップを蒸気輸送経路に装着しておけば、蒸気の排出を効率的に阻止することができ、省エネ効果を高めることができる。
【0041】
[ニードルの変形例]
ノズル式スチームトラップでは、ノズルのノズル孔が異物で塞がれないように、ノズルの上流側にストレーナ6が配置されている。ストレーナ6は、前述のとおり、縦方向と横方向に一定間隔を保った網目状のフィルタが装填され、網目より大きい異物を捕捉してノズル孔が塞がれるのを防止している。
【0042】
しかしながら、前記フィルタの網目より大きい異物が流入し、ノズル孔を塞ぐことがある。特に、本実施例のように、ニードル4の先端部41と第2のノズル20の上端とでニードルバルブを構成したものにおいては、ニードルバルブ部分の隙間は極狭くなり、この隙間が異物で塞がれ、目詰まりを起こすることがあり得る。
【0043】
図2は、前記隙間が異物で塞がれることを防止するニードル4の変形例の一つである。
図2において、ニードル4は、円錐形状の先端部41と、前記スリーブ31の雌ねじにねじ込む雄ネジ42と、前記ハンドル48の嵌合部43を有する。ニードル4は、先端部41の一部から雄ネジ42にかけて、第2のノズル20のノズル孔21と対向する面に、ニードル4の長さ方向に沿ったスリット45を有している。
【0044】
前記スリット45の幅または深さは、前記フィルタの網目の対角の長さ、したがって網目の大きさに2の平方根を掛けた値よりも大きく設定する。ストレーナ6のフィルタは、その網目の対角の長さの異物まで透過するので、かかる大きさの異物を第2のノズル20のノズル孔21を通過させる必要がある。ニードル4のスリット45の幅または深さを前述のように設定しておけば、前記フィルタの網目をその対角方向に潜り抜けた異物を、スリット45に沿って通過させ、前記ニードルバルブ部分の目詰まりを防止することができる。
【0045】
図3はニードル4の別の例を示している。
図3に示すニードル4は、ニードル4の長さ方向に沿って2つのスリット451,452を有している点が
図2に示すニードル4と異なっている。2つのスリット451,452はニードル4の中心軸線を挟んで正反対の位置にある。スリット451,452の幅または深さは、
図2におけるスリット45と同様に設定する。他の構成は
図2のニードル4と同じであるから、共通の符号を付して説明を省略する。
【0046】
図2に示すノズル式スチームトラップのニードル4として
図3に示すニードル4を使用すれば、異物によるニードルバルブ部分の目詰まりを一層効果的に防止することができる。
【0047】
ニードル4のスリット45、451,452に代えて、ニードル4が進退する第2のノズル20のノズル孔21側に一つまたは複数のスリットを有するものであってもよい。または、ニードル4のスリット45、451,452とともに、ニードル4が進退する第2のノズル20のノズル孔21側にも一つまたは複数のスリットを有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 ハウジング
2 蓋
4 ニードル
5 ドレイン流入口
6 ストレーナ
7 連通路
8 ドレイン排出口
10 第1のノズル
11 第1ノズル部材
12 第2ノズル部材
13 第3ノズル部材
17 膨張室
20 第2のノズル
21 ノズル孔
22 膨張室
51 第1の圧力計
52 第2の圧力計
53 第3の圧力計