(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】心臓補助システムの摩耗の状態を検出するため、およびそれを動作させるための方法および装置、ならびに心臓補助システム
(51)【国際特許分類】
A61M 60/538 20210101AFI20241226BHJP
A61M 60/178 20210101ALI20241226BHJP
A61M 60/174 20210101ALI20241226BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20241226BHJP
A61M 60/804 20210101ALI20241226BHJP
A61M 60/825 20210101ALI20241226BHJP
A61M 60/816 20210101ALI20241226BHJP
【FI】
A61M60/538
A61M60/178
A61M60/174
A61M60/237
A61M60/804
A61M60/825
A61M60/816
(21)【出願番号】P 2020571361
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2019066486
(87)【国際公開番号】W WO2019243582
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】102018210076.4
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520469457
【氏名又は名称】カルディオン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】KARDION GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】バウムバッハ, ハーディ
(72)【発明者】
【氏名】カッセル, ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】シェレンベルク, インガ
(72)【発明者】
【氏名】エーレンプフォルト, リカルド
(72)【発明者】
【氏名】シュミット, マルク
(72)【発明者】
【氏名】マンスール, アハマド
(72)【発明者】
【氏名】ブッディ, マルティナ
(72)【発明者】
【氏名】シュルブッシュ, トーマス アレクサンダー
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-019197(JP,A)
【文献】特開平08-057042(JP,A)
【文献】特表2010-518907(JP,A)
【文献】特開平02-055886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0247200(US,A1)
【文献】特開2005-028137(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0200389(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/538
A61M 60/178
A61M 60/174
A61M 60/237
A61M 60/804
A61M 60/825
A61M 60/816
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓補助システムの摩耗状態を検出するための方法であって、
心臓に埋め込まれた前記心臓補助システムの初期動作状態である第1の動作状態を決定する工程と、
前記心臓補助システムの前記心臓への埋め込みに続いて、心臓補助システムのインペラに関連する
前記第1の動作状態に関連する、
第1の時刻の第1のセンサ信号を受信する工程と、
前記心臓補助システムの
構成要素の第2の動作状態に関連する、
第2の時刻の第2のセンサ信号を受信する工程と、
前記初期動作状態に基づいて、第2の動作状態に関連する、比較ルールを決定する工程と、
前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、および
前記比較ルールに少なくとも部分的に基づき前記心臓補助システムの摩耗状態に関連する摩耗信号を判定する工程と、
前記第2のセンサ信号に関連する前記心臓補助システムの前記構成要素を前記摩耗信号に基づく制御信号で制御して、前記インペラの速度を制御する工程と、を含む、心臓補助システムの摩耗状態を検出するための方法。
【請求項2】
前記第1のセンサ信号は、前記インペラ上の堆積物または前記インペラの不均衡に関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のセンサ信号は、前記インペラに関連する位置、振動、加速度、圧力、回転数、温度、電圧、電流、電力、光反射、または電気抵抗のうちの少なくとも一つと関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2のセンサ信号は、前記心臓補助システムの入口カニューレと関連している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2のセンサ信号は、前記入口カニューレ内の流れまたは圧力の変化に関連する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のセンサ信号または前記摩耗信号を外部処理装置に提供する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1のセンサ信号は、時間領域または周波数領域で前記心臓補助システムの前記動作状態を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記心臓補助システムの前記第1の動作状態の変化における特徴的な振動を判定する工程をさらに含み、前記特徴的な振動は前記第1の動作状態の誤りパターンに関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1のセンサ信号に少なくとも部分的に基づき前記比較ルールを決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のセンサ信号に少なくとも部分的に基づきフィンガープリントを生成する工程と、
前記比較ルールに少なくとも部分的に基づき前記フィンガープリントを健全なフィンガープリントと比較する工程と、
前記フィンガープリントと前記健全なフィンガープリントとの比較に少なくとも部分的に基づき前記摩耗信号を判定する工程と、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記摩耗信号に少なくとも部分的に基づき生成され、前記心臓補助システムの構成要素を制御するように構成された制御信号を生成する工程と、
前記心臓補助システムの構成要素を制御するための前記制御信号を送信する工程と、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
心臓補助システムの摩耗状態を判定するように構成されているシステムであって、
前記心臓補助システムの心臓への埋め込みに続いて、前記心臓補助システムのインペラの第1の動作状態に関連する
第1の時刻の第1のセンサ信号と、前記心臓補助システムの
構成要素の第2の動作状態に関連する
第2の時刻の第2のセンサ信号とを受信するように構成されている読み取り装置と、
前記心臓補助システムのさらなる信頼性を示す機能的パラメータを判定し、前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、および比較ルールに少なくとも部分的に基づき、前記心臓補助システムの現在の摩耗を示す摩耗信号を判定するように構成されている判定装置と、
前記摩耗信号に基づくとともに、前記第2のセンサ信号に関連する前記心臓補助システムの
前記構成要素を制御
して、前記インペラの速度を制御するように構成され
ている制御信号を生成し、前記心臓補助システムに送信するように構成されている制御装置と、を含む、心臓補助システムの摩耗状態を判定するように構成されているシステム。
【請求項13】
前記第1のセンサ信号は、前記心臓補助システムのインペラに関連している、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1のセンサ信号は、時間領域または周波数領域で前記心臓補助システムの前記動作状態を表す、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記第2のセンサ信号は、前記心臓補助システムの入口カニューレに関連している、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
心臓補助システムであって、
血液の体積流をフローポンプに供給するための入口カニューレと、
前記フローポンプのインペラと、
心臓補助システムの摩耗状態を判定するように構成されている装置であって、
前記心臓補助システムの心臓への埋め込みに続いて、前記心臓補助システムの前記インペラの第1の動作状態に関連する
第1の時刻の第1のセンサ信号と、前記心臓補助システムの
構成要素の第2の動作状態に関連する
第2の時刻の第2のセンサ信号とを受信するように構成されている読み取り装置と、
前記心臓補助システムのさらなる信頼性を示す機能的パラメータを判定し、前記第1のセンサ信号、前記第2のセンサ信号、および比較ルールに少なくとも部分的に基づき、前記心臓補助システムの現在の摩耗を示す摩耗信号を判定するように構成されている判定装置と、
制御信号を生成して前記心臓補助システムに送信するように構成されている制御装置であって、前記制御信号は、
前記摩耗信号に基づくとともに、前記第2のセンサ信号に関連する前記心臓補助システムの
前記構成要素を制御
して、前記インペラの速度を制御するように構成され
ている、制御装置と、を含む装置と、を備えている、心臓補助システム。
【請求項17】
前記第1のセンサ信号は、前記心臓補助システムの前記インペラの動作状態に関連している、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記第1のセンサ信号は、時間領域または周波数領域で前記心臓補助システムの前記動作状態を表す、請求項16に記載のシステム。
【請求項19】
前記第2のセンサ信号は、前記心臓補助システムの前記入口カニューレの動作状態に関連している、請求項16に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立特許請求項に記載のタイプの装置または方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5904708号明細書は、埋め込み式気圧センサ、体外気圧センサ、および体外圧を受信しそれを処理して血圧変化を検出する埋め込み式処理ユニットを有するシステムを記述している。このシステムは、埋め込まれた圧力センサおよび体外圧力センサからのデータを使用して、埋め込み可能な医療装置の機能を設定または制御することを可能にする。
【0003】
これに基づいて、本発明の根底にある目的は、心臓補助システムの状態だけでなく、心臓補助システムそれ自体を動作させるため、特に監視するために、最先端技術で公知の方法および装置をさらに改善すること、ならびに高い機能的信頼性を確保し、かつ理想的には深刻なシステム故障を回避することである。
【0004】
これを念頭に置いて、本明細書に提示したアプローチは、心臓補助システムの摩耗の状態を検出するための方法、心臓補助システムを動作させるための方法だけでなく、前述の方法および心臓補助システムを主要請求項に従って使用および/または制御する装置を導入する。独立特許請求項に特定された装置の有利なさらなる開発および改善は、従属請求項に特定された手段を使用して可能である。
【0005】
本明細書に提示したアプローチを使用して、心臓補助システムの動作状態を表すセンサ信号を読み、かつ処理することができる。動作状態は、例えば、心臓補助システムの物理的状態、または心臓補助システムが動作している環境の状態とすることができる。センサ信号および処理仕様を使用して、例えば、センサ信号を心臓補助システムの特定の動作状態と比較することによって、心臓補助システムの摩耗の状態を表す摩耗信号を判定することができる。これは、有利なことに、例えば、心臓補助システムの損傷もしくは経年劣化、または心臓補助システムの摩耗プロセスを検出するために、心臓補助システムの状態を連続的に監視することを可能にする。これは、心臓補助システムの故障を回避するのを可能にするため、またはこのような摩耗の状態の場合に迅速に措置を講じることを可能にするために有用である。状態を監視し、かつ摩耗の状態を検出することによって、有利なことに、心臓補助システムの安全性と信頼性を向上させることができる。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、心臓補助システムの摩耗の状態を検出するための方法を提示する。方法は、読み込む工程および判定する工程を含む。読み込む工程では、心臓補助システムの動作状態を表すセンサ信号が読み込まれる。判定する工程では、摩耗信号が、センサ信号および比較ルールを使用して判定される。摩耗信号は、摩耗の状態を表す。
【0007】
摩耗の状態は、心臓補助システムの、または心臓補助システムの機能に影響を与える可能性がある心臓補助システムの構成要素(ローター、滑り軸受、インペラ、またはケーブルなど)の現在の状態であると理解することができる。インペラの場合、例えば、これは前記インペラの不均衡である可能性がある。また、摩耗の状態は、例えば、心臓補助システムまたは心臓補助システムの構成要素(ポンプ入口など)の位置もしくは場所などの特性であると理解することもでき、例えば、ポンプ入口が血管に対してそれ自体を吸引しているかどうかを検出することができる。心臓補助システムは、例えば、心尖部心臓補助システムとして、または大動脈弁位置のための心臓補助システムとして設計することができる、右室補助システムまたは左室補助システムとすることができる。センサ信号は電気信号または無線信号とすることができ、これは例えば、心臓補助システムのセンサ装置によって提供することができる。センサ装置は、例えば、温度センサ、圧力センサ、または電圧センサを備えることができ、センサ信号は、それに応じて、動作状態として温度、圧力もしくは圧力変化、または電圧を表すことができる。センサ信号が、例えば、複数のセンサからのデータを含むことも可能である。判定する工程では、例えば、センサ信号を使用してセンサパラメータセットを抽出することができる。センサパラメータセットを評価するために、センサパラメータセットを使用して、摩耗信号を判定することができる。摩耗信号は、摩耗の状態として、例えば、処理仕様の形態で保存される心臓補助システムの予め定義された初期状態からの摩耗の状態の逸脱を含む電気信号とすることができる。
【0008】
一実施形態によれば、少なくとも一つの摩耗パラメータを、判定する工程で判定することができる。摩耗信号は、摩耗パラメータを含むことができる。摩耗パラメータは、心臓補助システムの構成要素に関する技術的なデータを含むことができ、例えば、それから構成要素の状態を推定できる。センサ信号によって反映される動作状態は、例えば、時間的進行の点から評価することができる。摩耗パラメータは、有利なことに、摩耗の状態を分析するために使用することができ、例えば、心臓補助システムまたは心臓補助システムの構成要素に対する故障の時間を予測することができ、これは安全性を増加させる。また、例えば、心臓補助システム全体を交換する代わりに、関連する構成要素を交換することができるようにするために、特定の構成要素の摩耗の状態を確認することも可能であり、これは有利なことにリソースの節約およびコストの節約になる。
【0009】
追加的または代替的に、一実施形態によれば、心臓補助システムの機能性を表す少なくとも一つの機能的パラメータを、判定する工程で判定することができる。この場合、摩耗信号は、機能的パラメータを含んでもよい。機能的パラメータは、例えば、心臓補助システムのさらなる信頼性のある動作が可能かどうか、または交換もしくは保守が必要かどうかを示すことができる。それ故に、心臓補助システムの機能性は、有利なことに、特に簡単に監視することができる。従って、例えば、埋め込み式心臓補助システムの保守を回避するため、または事前に前述の保守を計画できるようにするために、心臓補助システムの機能性または心臓補助システムの望ましい機能性の障害を検出することができ、これは、有利なことに、心臓補助システムの安全性および信頼性を増加させる。
【0010】
一実施形態によれば、本方法はさらに、センサ信号および追加的または代替的に摩耗信号を外部処理装置とのインターフェースに提供する工程を含むことができる。外部処理装置は、例えば、体外制御装置、またはスマートフォンなどのポータブル装置、または心臓補助システム用のサーバーもしくは警告装置とすることができる。それ故に、動作状態および追加的または代替的に摩耗の状態は、有利なことに、例えば、さらなる評価のために、外部に保存することができる。警告装置とのインターフェースまたはスマートフォンへの提供のために、摩耗信号は、例えば、機能的パラメータを含むことができ、体外制御装置またはサーバーとのインターフェースへの提供のために、摩耗信号は、例えば、摩耗パラメータを含むことができる。摩耗信号はまた、例えば、スマートフォンとのインターフェースに提供するために、機能的パラメータおよび摩耗パラメータも追加的に含んで、例えば、摩耗信号を視覚的または聴覚的に表示することができる。追加的または代替的に、例えば、処理仕様として予め定義された制限値を使用した警告信号として、かつ前述の制限値との比較結果の関数として提供するために、摩耗信号を判定することができる。
【0011】
一実施形態によれば、方法は感知する工程も含むことができる。感知する工程では、動作状態が感知され、そして動作状態を表すセンサ信号が提供される。この目的のために、心臓補助システムの特定の構成要素または特定の領域は、動作状態を確認するために、例えば、定義されたセンサ領域によって感知することができる。それ故に、センサ信号を取得するためのセンサ装置は、有利なことに、例えば、心臓補助システムの構成要素の摩耗の状態を判定するために、または摩耗の状態を特に正確に判定するために、設定することができる。
【0012】
一実施形態によれば、センサ信号はまた、センサ装置を使用して感知することもできる。センサ装置は、心臓補助システムの電気的な量、温度、圧力、体積流量、移動、光学信号もしくは音響信号、力、または位置の変化を感知するように構成することができる。電圧は、例えば、電気的な量として感知することができる。圧力上昇または圧力差は、例えば、圧力として感知することができる。心臓補助システムの構成要素の振動は、例えば、移動として、または埋め込み式心臓補助システムの着用者の転倒または着用者に対する物理的衝撃の形態での急激な移動として感知することができる。圧力および体積流量を感知することは、例えば、心臓補助システムのポンプ入口が血管にそれ自体を吸引しているかどうかを確認するために有利である。インペラの不均衡など、心臓補助システムの変位または誤動作は、例えば、レーザー干渉計、マイクロフォンまたは構造伝達音センサによって取得することができる光学信号または音響信号の助けにより識別することができる。先に述べた量を感知するために、センサ装置は、例えば、電圧センサ、電気抵抗センサ、温度センサ、圧力センサ、超音波流量センサ、光学的反射係数センサ、移動センサ、加速度センサ、磁気センサ、マイクロフォン、力センサ、距離センサ、または誘導ローター軸受センサおよび/もしくは静電容量ローター軸受センサ、または前述のセンサの組み合わせを備えることができる。前述のセンサのうちの少なくとも一つは、例えば、センサの自己診断のために、追加的に冗長であるように構成されてもよい。心臓補助システムの中へと組み込まれるセンサは、有利なことにセンサ信号を提供するために使用することができる。これは、コスト節約であり、かつ本方法のこの実施形態を実施するための装置のコンパクトな設計を可能にする。
【0013】
一実施形態によれば、センサ信号はまた、時間領域における、および追加的または代替的に周波数領域における動作状態を表すことができる。この目的のために、センサ信号は、例えば、動作状態の平均値または標準偏差を確認するために、特定の期間内の動作状態を表すことができる。センサ信号が周波数領域における動作状態を表す場合、例えば、スペクトルの中央値周波数の特徴周波数、定義された周波数帯中の統合されたバンドエネルギー、または既知の損傷周波数の場所における絶対振幅も判定することができる。それ故に、センサ信号のさらなる分析が有利なことに可能となり、これは摩耗の状態の正確な判定に有利である。
【0014】
さらに、一実施形態によると、心臓補助システムのさらなる動作状態を表すさらなるセンサ信号を、読み込む工程で読み込むことができる。判定する工程では、摩耗信号を、センサ信号、さらなるセンサ信号、および比較ルールを使用して判定することができる。これは、複数のセンサ信号を使用して摩耗の状態を判定することができるようにするために有利である。
【0015】
この場合、一実施形態によれば、センサ信号およびさらなるセンサ信号を使用して、センサパラメータセットを判定する工程で抽出することができる。摩耗信号は、センサパラメータセットおよび比較ルールを使用して判定することができる。センサパラメータセットを判定することは、時間領域または周波数領域のセンサデータを変換するために有利である。
【0016】
一実施形態によれば、方法は、センサ信号を使用して比較ルールを定義する工程を含むことができる。例えば、これを行うためにセンサパラメータセットを使用することができる。センサ信号を使用して、例えば、動作状態のプロファイルを作り出す、またはシステムのいわゆるフィンガープリントを生成することができる。この実施形態は、有利なことに、すでに読み込まれたセンサ信号を使用して比較ルールを定義すること、例えば、特定の動作状態に対して(例えば、心臓補助システムの埋め込まれた状態に対して)比較ルールを設定することを可能にする。
【0017】
このアプローチは、心臓補助システムを動作させるための方法をさらに導入する。方法は、心臓補助システムの摩耗の状態を検出するための前述の方法の一実施形態の工程と、心臓補助システムの構成要素を制御するための制御信号を提供する工程とを含む。制御信号は、センサ信号または摩耗信号を使用して出力される。それ故に、心臓補助システムの摩耗を検出し、任意選択的に評価するために、心臓補助システムの通常動作のためにすでに必要とされているセンサ信号、すなわち、心臓補助システムの心臓補助機能を実施するために必要とされるセンサ信号も使用することができる。この設計例によれば、例えば、動作状態または摩耗の状態に応じて、心臓補助システムの機械的要素への損傷を低減または防止するために、センサ信号および追加的または代替的に摩耗信号を使用して、心臓補助システムの構成要素および結果として機能を有利に適合させることができる。例えば、加速度センサまたは移動センサによって検出された、転倒などの衝撃が検出された場合、損傷を防止するために、例えば、センサ信号を使用して心臓補助システムのポンプを減速させることができる。
【0018】
本明細書に提示したアプローチは、本明細書に提示された心臓補助システムの摩耗の状態を検出するため、または対応する装置において心臓補助システムを動作させるための方法の変形の工程を実行、制御または実施するように構成された装置をさらに作り出す。装置の形態の本発明のこの設計の変形はまた、本発明の根底にある目的を、迅速かつ効率的に達成することを可能にする。
【0019】
この目的のために、装置は、信号またはデータを処理するための少なくとも一つの演算ユニット、信号またはデータを保存するための少なくとも一つのメモリユニット、センサからのセンサ信号を入力するためまたはアクチュエータへデータもしくは制御信号を出力するための少なくとも一つのセンサもしくはアクチュエータへのインターフェース、および/または通信プロトコル内に埋め込まれたデータを入力または出力するための少なくとも一つの通信インターフェースを備えることができる。演算ユニットは、例えば、信号プロセッサ、マイクロコントローラ、またはこれに類するものとすることができるが、一方でメモリユニットは、フラッシュメモリ、EEPROM、または磁気メモリユニットとすることができる。通信インターフェースは、無線および/または有線方式でデータを入力または出力するように構成することができ、それによって、有線データを入力または出力することができる通信インターフェースは、例えば、前述のデータを電気的にまたは光学的に、対応するデータ伝送ラインから入力またはデータ伝送ラインへと出力することができる。
【0020】
本事例では、装置は、センサ信号を処理し、前述のセンサ信号の関数として、制御信号および/またはデータ信号を出力する電気装置であると理解することができる。装置は、ハードウェアベースおよび/またはソフトウェアベースとすることができるインターフェースを備えることができる。ハードウェアベースの構成の場合、インターフェースは、例えば、装置の様々な機能を含有する、いわゆるシステムASICの一部とすることができる。しかしながら、インターフェースを、別個の集積回路、または少なくとも部分的に個別部品からなることも可能である。ソフトウェアベースの構成の場合、インターフェースは、例えば、マイクロコントローラ上に、他のソフトウェアモジュールと共に提供されるソフトウェアモジュールとすることができる。
【0021】
こうした装置は、有利なことに、心臓補助システムの一部とすることができ、または心臓補助システムの中へと組み込むことができる。例えば、装置の一実施形態は、心臓補助システムの動作中にいずれにしても取得されることになるセンサ信号を使用して、心臓補助システムの摩耗の状態を監視することができるようにするため、すでに機能している心臓補助システムの中へと組み込むことができる。
【0022】
本明細書に提示されるアプローチの設計例は、図面に概略的に示され、かつ以下の記述においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、一設計例による大動脈弁位置の心臓補助システムの概略図である。
【
図2】
図2は、一設計例による心尖部心臓補助システムの概略図である。
【
図3】
図3は、一設計例による心臓補助システムの摩耗の状態を検出するための装置の概略図である。
【
図4】
図4は、一設計例による心臓補助システムを動作させるための装置の概略図である。
【
図5】
図5は、一設計例による心臓補助システムの摩耗の状態を検出するための装置を有する心臓補助システムのセンサの配設の概略図である。
【
図6】
図6は、一設計例による心臓補助システムの摩耗の状態を検出するための方法および心臓補助システムを動作させるための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい設計例の以下の説明では、同一のまたは類似の参照符号が、様々な図に示される要素に対して使用されるが、これは類似の効果を有し、それによってこれらの要素の繰り返しの記載は省略される。
【0025】
図1は、一設計例による大動脈弁位置の心臓補助システム100の概略図を示す。図は、心臓105内に埋め込まれた状態にある心臓補助システム100の簡略図を示す。本明細書に示す心臓補助システム100の大動脈弁位置では、入口カニューレ110を有する心臓補助システム100のセクションは心臓105の左心室115に配置され、また心臓補助システム100の別のセクションは大動脈弁125の領域の大動脈120に配置される。ポンプ体積流130は、心室115内の入口カニューレ110の先端で受容され、そして大動脈120の領域に排出される。本明細書に示す心臓補助システム100の一設計例は、以下に記載される
図3および
図4を参照して示されるように、摩耗の状態を検出するため、または心臓補助システム100を動作させるための装置を備える。
【0026】
図2は、一設計例による心尖部心臓補助システム100の概略図を示す。図は、埋め込まれた状態にある心臓補助システム100の簡略図を示す。心尖部心臓補助システム100は、血流を導入するための流入口を備え、これは心臓105の外側を心臓105に沿って導かれるドレインカニューレ205を介して、心臓の左心室115から大動脈120に血流をポンプで送る。この目的のために、ポンプ体積流130は、心臓補助システム100のポンプ、例えば、回転式ポンプによってドレインカニューレ205に送達される。ドレインカニューレ205は、ポンプ体積流130を大動脈120に送達する。本明細書に示す心尖部心臓補助システム100の一設計例もまた、以下に記載される
図3および
図4を参照して示されるように、摩耗の状態を検出するため、または心臓補助システム100を動作させるための装置を含む。
【0027】
図3は、一設計例による心臓補助システムの摩耗の状態を検出するための装置300の概略図を示す。装置300は、読み取り装置305および判定装置310を備える。読み取り装置305は、心臓補助システムの動作状態を表すセンサ信号315を読み込むように構成されている。判定装置310は、センサ信号315および比較ルール320を使用して摩耗信号325を判定するように構成されている。摩耗信号325は、摩耗の状態を表す。
【0028】
本明細書に示す装置300は、先述の
図1および
図2の実施例として示される二つの心臓補助システムのうちの一つなどの心臓補助システムと併せて使用することができる。
【0029】
一設計例によれば、判定装置310は、少なくとも一つの摩耗パラメータを判定し、かつ摩耗パラメータを含む摩耗信号325を提供するように構成されている。追加的または代替的に、判定装置310は、心臓補助システムの機能を表す少なくとも一つの機能的パラメータを判定し、かつ機能的パラメータを含む摩耗信号325を提供するように構成されている。
【0030】
本明細書に示す設計例によれば、判定装置310はまた、外部処理装置335とのインターフェースに摩耗信号325を提供するように構成されている。センサ信号315は、外部処理装置335とのインターフェースにも任意選択的に提供される。インターフェースは、無線とすることも、または有線とすることもできる。
【0031】
本明細書に示す設計例によれば、読み取り装置305はまた、心臓補助システムのさらなる動作状態を表す、少なくとも一つのさらなるセンサ信号330を読み込むようにも構成される。判定装置310は、センサ信号315、少なくとも一つのさらなるセンサ信号330、および比較ルール320を使用して、摩耗信号325を判定するように構成されている。判定装置310はまた任意選択的に、センサ信号315および少なくとも一つのさらなるセンサ信号330を使用して、センサパラメータセットを抽出し、そしてセンサパラメータセットおよび比較ルール320を使用して、摩耗信号325を判定するように構成されている。本明細書に示す設計例によれば、比較ルールは判定装置内に事前保存されている。比較ルール320は、センサ信号315を使用して任意選択的に定義される。
【0032】
本明細書に示す設計例によれば、センサ信号315およびさらなるセンサ信号330は、センサ装置340によって提供される。センサ装置340は、動作状態を感知し、そして動作状態を表すセンサ信号315を提供するように任意選択的に構成されている。一設計例によれば、センサ装置340はまた、センサ信号315を提供するために、心臓補助システムの電気的な量、温度、圧力、体積流量、移動、光学信号もしくは音響信号、力、または位置の変化を感知するように構成されている。一設計例によれば、センサ信号315は、時間領域における、および追加的または代替的に周波数領域における動作状態を表すように構成されている。
【0033】
心臓補助システムと組み合わせて、本明細書に示す装置300は、第一の症状または深刻な緊急事態が発生する前に保守介入を実行することができるように、心臓補助システムの少なくとも一つの機能グループを監視するために使用することができる。センサ装置340は、例えば、心臓補助システムに組み込まれたセンサ装置とすることができ、また電流、電圧、温度、振動、圧力および圧力変化、音、光学的反射係数、力、ならびに位置の変化などの動作パラメータを判定するように構成することができる。一設計例によれば、センサパラメータは、例えば、時間領域において、および追加的または代替的に周波数領域において、判定装置310を使用して、センサデータから抽出される。
【0034】
システムのフィンガープリントは、いうなれば、判定されたセンサパラメータセットから生成することができ、またはセンサパラメータセットを、それ自体フィンガープリントとすることができる。判定装置310を使用して、フィンガープリントを、比較ルール320の形態で健全なフィンガープリントの定義と連続的に比較することができる。比較ルール320の健全なフィンガープリントからのフィンガープリントの逸脱は、心臓補助システムの進行中の経年劣化または損傷プロセスの兆候である。センサパラメータセットの時間的進行は、心臓補助システムの摩耗プロセスを評価し、かつ場合によっては故障時間を予測するために、判定装置310を使用して任意選択的に採用される。本明細書に示す設計例によれば、判定装置310は、外部処理装置335とのインターフェースに対して摩耗信号325を提供するように構成されており、例えば、摩耗パラメータを含む摩耗信号325の形態での摩耗信号325によって識別される正常なフィンガープリントからの逸脱の場合に、例えば、装置300を有する埋め込み式心臓補助システムの着用者、患者、または医師に、摩耗の状態を表す摩耗信号325を介して知らせる。
【0035】
本明細書に示す装置300の変形を使用する心臓補助システムの状態のこのような監視は、有利なことに、深刻なシステム故障の低減または防止さえも達成することを可能にする。システム劣化の早期検出は、時間的利点を提供するので、結果として、例えば、構成要素交換のための外科手術の予約を早期に計画することができる。予測的な保守介入は、患者を医療的な緊急事態のシナリオに曝さないことによって、患者の生活の質を向上させる。本明細書に示す装置300はまた、状態監視システムと呼ぶことができ、また特にポンプモータなどの、冗長となるように構成することができないサブシステムに対して、追加的保護手段を提供する。装置300を状態監視システムとして組み込むことによって、患者の自身の補助システムに対する信頼性を高めることができ、これは安心感をもたらす。
【0036】
摩耗信号325を使用して、判定された摩耗の状態を、無線モデムまたは有線インターフェースなどの通信インターフェースの形態の、外部処理装置335とのインターフェースを介して送信することができる。外部処理装置335が、例えば、体外制御装置またはポータブル装置の画面の形態のいわゆる「ウェアラブル」の表示装置(外部処理装置335としてBluetooth(登録商標) Low Energyを介して連結されたスマートフォンなど)を備える場合、摩耗信号325によって提供される摩耗の状態を、例えば、摩耗の状態の状態尺度の形態で、表示装置上に表示することができる。
【0037】
外部処理装置335とのインターフェースに摩耗信号325を提供することによって、摩耗の状態および/または根底にあるセンサ値もしくはセンサパラメータを、追加的または代替的に、後で取り出すために(ケーブル、無線、または誘導結合型通信インターフェースを介して)体外制御装置または心臓補助システムと共に埋め込まれた制御装置に保存することもでき、かつ/または、広域通信網(例えば、WLAN、LTE、またはGPRS)を介して中央サーバーに送信することもできる。中央サーバーの使用は、摩耗信号325によって送信されるシステムのフィンガープリント、ならびに摩耗の状態およびセンサデータのパラメータの傾向の進行を、システムの大きい母集団と比較することができ、その結果、心臓補助システムのシステム状態について堅牢な陳述をすることができるという利点を有する。
【0038】
図4は、一設計例による心臓補助システムを動作させるための装置400の概略図を示す。本明細書に示す装置400は、
図1または
図2を参照して例として示される心臓補助システムなどの心臓補助システムを動作し、かつ追加的または代替的に制御するように構成されている。この目的のために、装置400は、読み取り装置305および判定装置310を備え、これは
図3に示す読み取り装置および判定装置に実質的に対応する。読み取り装置305は、センサ装置340によって提供されるセンサ信号315を読み込むように対応して構成され、また判定装置310は、センサ信号315および比較ルール320を使用して摩耗信号325を判定し、かつ提供するように構成されている。
【0039】
本明細書に示す設計例によれば、装置400はまた制御装置405も備える。制御装置405は、センサ信号315または摩耗信号325を使用して、心臓補助システムの構成要素415を制御するための制御信号410を提供するように構成されている。
【0040】
心臓補助システムの構成要素415は、例えば、制御ユニット、または以下の
図5に示すようにポンプもしくはインペラもしくは駆動装置などの構造的要素である。もしセンサ信号315によって、および追加的または代替的に、判定装置310を使用した摩耗信号325の判定によって、装置400が、患者の転倒またはその他の物理的衝撃を検出した場合、装置400は、制御装置405を使用して、制御信号410によって、ポンプなどの心臓補助システムの構成要素415のうちの一つを制御して、機械的要素への損傷を防止または低減するために、ポンプを一時的に減速または停止させるように構成されている。
【0041】
図5は、一設計例による心臓補助システム100の摩耗の状態を検出するための装置300に対する心臓補助システム100のセンサの配設の概略図を示す。本明細書に示す心臓補助システム100へのセンサ組み込み例はまた、心臓補助システム100を動作させるための装置400と併せて実行することもできる。心臓補助システムは、例えば、前述の
図3および
図4を参照して記載した装置の変形と類似または同一である、装置300;400を対応して備える。例として、本明細書に示す心臓補助システム100は、
図1を参照して記載した心臓補助システムのように、大動脈弁位置のための心臓補助システムとして示されている。
【0042】
心臓補助システム100は、先端505と、血液体積流を受容するための入口ケージ510と、血液体積流をマイクロ軸流ポンプに送達するための入口カニューレ515と、マイクロ軸流ポンプのインペラ520と、磁気的または機械的に連結された電気駆動部525と、供給ケーブル530と、制御ユニット535とを備える。制御ユニット535は、例えば、装置300;400を含む。例として、心臓補助システム100は、据付け位置の一例においてセンサ装置として様々なセンサを備える。本明細書に示す設計例によれば、心臓補助システム100は、三つの温度センサ542を備え、そのうちの二つは電気駆動部525の領域に配置され、そのうちの一つは先端505の領域に配置される。一例として、心臓補助システム100はまた、三つの圧力センサ544を備え、そのうちの一つは先端505の領域に配置され、一つは入口カニューレ515の領域に配置され、そして一つは電気駆動部525の領域内に配置される。先端505と入口ケージ510の間の領域において、心臓補助システムは、超音波フローセンサ546も備える。先端505から離れる方に面する端部では、入口カニューレ515は、力、曲げ、または距離センサ548および光学的反射係数センサ550を追加的に備える。インペラ520に隣接して、電気駆動部525は、磁気センサもしくはホールセンサの形態のインペラ位置センサ552、レーザー干渉計などの光学距離センサ、または誘導ローターセンサおよび追加的もしくは代替的に容量ローター位置センサを備える。電気駆動部525の中央に、心臓補助システム100は、振動センサ、構造伝達音センサ、マイクロフォン、および追加的または代替的に、さらなるインペラ位置センサ554として、例えば、センサハブの形態のマイクロコントローラを備える。制御ユニット535の供給ケーブル530との接触点の領域で、心臓補助システムは、電圧、電流、電力、電気抵抗および/または逆EMFセンサの形態の電圧センサ556を備える。制御ユニット535は、マイクロフォン、圧力、加速度および/もしくは回転速度センサ、または温度センサの形態の制御装置センサ558をさらに備える。
【0043】
本明細書に示されるセンサ542、544、546、548、550、552、554、556、および558の冗長設計は、個々のセンサ値間の偏差を使用したセンサ542、544、546、548、550、552、554、556、および558の自己診断のために有利である。本明細書に示すセンサ542、544、546、548、550、552、554、556、および558のすべての組み込みは、すべての用途で意味を成すものではなく、あるいは、設置空間またはコストの理由から、すべての用途において実装できるわけではない。最も関連性のあるセンサを、特定の用途に応じて、例えば、故障モード影響解析(FMEA解析)に基づいて、または長期試験もしくはストレス試験で観察された故障に基づいて、標的化方式で選択することができる。
【0044】
以下は、心臓補助システム100の摩耗の状態を検出するため、および/または心臓補助システム100を動作させるために、心臓補助システム100、および本明細書に示すセンサ542、544、546、548、550、552、554、556および558のうちの一つ以上などのセンサ装置と併せた装置300、400の適用例の列挙である。
【0045】
マイクロフォンまたは構造伝達音センサの形態のインペラセンサ554、および追加的または代替的に、マイクロフォンおよび/または加速度センサの形態の制御装置センサ558は、摩耗の状態を判定することによって、軸受摩耗の分析を可能にする。
【0046】
磁気的に連結され、かつ磁気的に据付けられたインペラ520の場合、経年劣化および堆積物、ならびにポンプ血栓症の発症は、インペラ520の不均衡をもたらす可能性があり、これはインペラセンサ554および/または制御装置センサ558のマイクロフォン、加速度センサ、回転速度センサ、および構造伝達音センサを介して検出することができる。
【0047】
例えば、摩耗または堆積物の蓄積の結果としての、心臓補助システム100の滑り軸受の摩擦の変化は、消費電力の変化によって検出することができ、これは電流、電圧または電力センサの形態の電圧センサ556と、実際の圧力上昇または体積流量上昇との組み合わせで感知することができ、実際の圧力上昇または体積流量上昇は、入口カニューレ515もしくは電気駆動部525の領域の圧力センサ544のうちの一つまたは超音波フローセンサ546によって感知することができる。この誤りパターンはさらに特徴的な振動にもつながり、これは、インペラセンサ554および/または制御装置センサ558のマイクロフォン、加速度センサ、回転速度センサ、および構造伝達音センサによって検出することができる。
【0048】
磁気的に連結された駆動部525とインペラ520との間の滑りの測定は、カップリングおよびインペラ520の滑り軸受の状態についての情報を提供する。滑りは、例えば、光学、磁気、または容量インペラ位置センサ552を介して感知することができ、または多相電気モータ525の無電流回転における電気駆動電流および逆誘導電界エネルギー(逆EMF)の位相の関係を、例えば、制御装置535または電気駆動部525内の電圧センサ556によって感知することができる。この目的のために、電圧センサ556を、本明細書に示す位置、またはそこに配置された温度センサ542または圧力センサ554の位置にある電気駆動部525の領域に置くことができる。
【0049】
軸受上の負荷および結果として生じるインペラ520の圧力上昇は、力、歪み、または距離センサ548によってインペラの軸受において感知することもできる。
【0050】
堆積物およびポンプ血栓症の発症は、入口カニューレ515の形態にある入口ホース内の圧力降下を介して、例えば、大動脈と入口カニューレ515または心室との間の圧力勾配を介して検出することができるが、電圧センサ556によって検出可能な電力消費量と、超音波フローセンサ546によって検出可能な実際の流れとの比較、および圧力センサ544によって検出可能なポンプの圧力上昇を介しても検出することができる。
【0051】
電動駆動部525のステータの経年劣化プロセスの兆候は、例えば、電動駆動部525の領域内に位置付けられた温度センサ542によって検出することができる巻線温度、または電圧センサ556によって検出することができる巻線インピーダンスによって提供されるが、電気駆動部525の領域内に配置された温度センサ542または圧力センサ544の位置にあるインペラ位置センサ552によって測定されるモータエアギャップの光学的、誘導的、または容量的に測定された寸法によっても提供される。
【0052】
ローター上の堆積物、ならびに不均衡も、反射係数センサ550を使用する反射係数の光学的な測定を介して判定することができる。
【0053】
供給ケーブル530の品質は、電圧センサ556による電気抵抗測定を介して監視することができる。ケーブル切断を検出すること(シリーズ測定)に加えて、抵抗測定を、絶縁ジャケットおよび/または誘電体の状態を評価するために、隣接する線ストランド間の複素数値インピーダンス測定として実行することもできる。
【0054】
制御装置535の電源および信号電子機器の故障は、個々のアセンブリの温度を測定し、かつ選択された電圧レベルを監視することによって検出することができる。
【0055】
大動脈弁位置での心臓補助システム100における大動脈の心室壁へのポンプ入口の吸引、いわゆる「吸引」も、本明細書に示す装置300、400によって検出することができる。心臓補助システム100が吸引している場合、補助血液体積流はもはや不可能であり、心臓補助システム100は、大動脈壁から解放されるまでポンプ電力を(自動的に)減少させるべきである。吸引は、先端505の領域および入口カニューレ515の領域における圧力センサの圧力勾配を介して、および超音波フローセンサ546によって検出することができる。入口ケージ510の部分閉鎖もまた、入口ケージ510における流れ条件を変化させ、これは超音波フローセンサ546のドップラースペクトルを介して検出することができる。
【0056】
装置300、400の判定装置によるセンサデータ処理は、例えば、相対閾値または絶対閾値、平均値、標準偏差、時間枠または全観察期間中の最小値および最大値を介した、時間領域におけるセンサ信号の分析に基づく。追加的または代替的に、装置300、400の判定装置によるセンサデータ処理は、例えば、特徴周波数、スペクトルの中央値周波数、定義された周波数帯における統合バンドエネルギー、または既知の損傷周波数の場所における絶対振幅の判定を介した、周波数領域におけるセンサ信号の分析に基づく。先に述べた動作状態のセンサパラメータは、条件パラメータとして(すなわち、例えば摩耗パラメータとして)、比較ルールの予め定義された閾値に基づいて判定することができる。代替的に、システムパラメータのフィンガープリントは、比較ルールとして定義されてもよく、例えば、閾値は、健全なものとして(例えば、多次元パラメータ空間内の閾値超平面として)定義されるフィンガープリント上の数学的距離尺度で定義することができる。
【0057】
センサ値の処理は、センサハブなどのポンプ一体型マイクロコントローラまたは制御装置535で実現することができる。センサハブはまた、センサデータを前処理し、そして抽出されたセンサパラメータを転送するためにのみ使用することができ、これは供給ケーブル530に沿って必要とされる通信帯域幅を減少させる。
【0058】
図6は、一設計例による心臓補助システムの摩耗の状態を検出するための方法600および心臓補助システムを動作させるための方法700の流れ図を示す。
【0059】
方法600は、読み込む工程601および判定する工程603を含む。読み込む工程601では、心臓補助システムの動作状態を表すセンサ信号が読み込まれる。判定する工程603では、摩耗信号は、センサ信号および比較ルールを使用して判定される。摩耗信号は、摩耗の状態を表す。
【0060】
一設計例によれば、少なくとも一つの摩耗パラメータが、判定する工程603で判定される。この場合、摩耗信号は少なくとも一つの摩耗パラメータを含む。判定する工程603では、心臓補助システムの機能性を表す少なくとも一つの機能的パラメータも同様に任意選択的に判定される。次に、摩耗信号は少なくとも一つの機能的パラメータを含む。
【0061】
方法600はまた任意選択的に、センサ信号および/または摩耗信号を外部処理装置とのインターフェースに提供する工程605を含む。提供する工程605は任意選択的に、判定する工程603の後に行われる。提供する工程605でセンサ信号のみが提供される場合、提供する工程605はまた、読み込む工程601の後にも行うことができる。
【0062】
一設計例によれば、方法600は感知する工程607をさらに含み、ここで動作状態が感知され、動作状態を表すセンサ信号が提供される。感知する工程607は任意選択的に、読み込む工程601の前に行われる。感知する工程607は、追加的または代替的に、提供工程605の前に実行される。
【0063】
読み込む工程601では、心臓補助システムのさらなる動作状態を表すさらなるセンサ信号が任意選択的に読み込まれる。この場合、摩耗信号は、センサ信号、さらなるセンサ信号、および比較ルールを使用して、判定する工程603において判定される。センサパラメータセットはまた、任意選択的に、センサ信号およびさらなるセンサ信号を使用して、判定する工程603において抽出される。次に、摩耗信号が、センサパラメータセットおよび比較ルールを使用して判定される。
【0064】
一設計例によれば、方法600は、センサ信号を使用して比較ルールを定義する工程609をさらに含む。定義する工程609は、任意選択的に、読み込む工程601の後で、判定する工程603の前に実行される。
【0065】
心臓補助システムを動作させるための方法700は、上述のように、方法600の少なくとも工程601および工程603、ならびに任意選択的に、工程605、607、および609のうちの一つ以上を含む。方法700は、心臓補助システムの構成要素を制御するための制御信号を提供する工程701をさらに含む。制御信号は、センサ信号または摩耗信号を使用して提供される。
【0066】
設計例が、第一の特徴と第二の特徴との間に「および/または」の接続詞を含む場合、これは、一実施形態によれば、設計例が、第一の特徴および第二の特徴の両方を含み、また別の実施形態によれば、第一の特徴のみまたは第二の特徴のみのいずれかを含むことを意味するように読み取られるべきである。