(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】抜針検出システム及び抜針検出方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A61M1/36 145
(21)【出願番号】P 2022179847
(22)【出願日】2022-11-09
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】509352897
【氏名又は名称】ジーニアルライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】下北 良
(72)【発明者】
【氏名】藤田 達之
(72)【発明者】
【氏名】澤田 貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳厚
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-518413(JP,A)
【文献】特表2006-511244(JP,A)
【文献】特開2014-208312(JP,A)
【文献】特開平11-113873(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0045816(US,A1)
【文献】特開2004-219372(JP,A)
【文献】米国特許第04991580(US,A)
【文献】中国特許出願公開第112636702(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析装置の動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出する抜針検出システムであって、
前記動脈側穿刺針に接続された動脈側チューブに着脱可能に取り付けられる動脈側電極と、
前記静脈側穿刺針に接続された静脈側チューブに着脱可能に取り付けられる静脈側電極と、
前記動脈側電極を前記動脈側チューブに着脱可能に取り付けるための動脈側アタッチメント部と、
前記静脈側電極を前記静脈側チューブに着脱可能に取り付けるための静脈側アタッチメント部と、
前記動脈側電極及び前記静脈側電極に高周波電圧を印加する電圧印加部と、
前記電圧印加部により高周波電圧が印加された前記動脈側電極及び前記静脈側電極の電位差を検出する電位差検出部と、
前記電位差検出部により得られた検出信号から所定の周波数成分を抽出する周波数成分抽出部と、
前記周波数成分抽出部により得られた抽出信号に基づいて、前記動脈側穿刺針又は前記静脈側穿刺針の抜脱を検出する抜脱検出部とを備え
、
前記動脈側アタッチメント部は、前記動脈側電極をクッション材により支持しており、
前記静脈側アタッチメント部は、前記静脈側電極をクッション材により支持しており、
前記動脈側電極及び前記静脈側電極は、前記動脈側チューブ及び前記静脈側チューブの外形形状に合わせて変形可能に構成されている、抜針検出システム。
【請求項2】
前記動脈側アタッチメント部は、前記動脈側チューブを挟持する一対の挟持片部を有しており、前記一対の挟持片部それぞれにおいて前記動脈側電極が前記クッション材により支持されており、
前記静脈側アタッチメント部は、前記静脈側チューブを挟持する一対の挟持片部を有しており、前記一対の挟持片部それぞれにおいて前記静脈側電極が前記クッション材により支持されている、請求項
1に記載の抜針検出システム。
【請求項3】
前記血液透析装置による透析開始から所定時間経過するまでに前記周波数成分抽出部により抽出された抽出信号を用いて基準値を設定する基準値設定部をさらに備え、
前記抜脱検出部は、前記所定時間経過後において、前記周波数成分抽出部により得られた抽出信号と基準値とを比較することにより、前記動脈側穿刺針又は前記静脈側穿刺針の抜脱を検出する、請求項1又は2に記載の抜針検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抜針検出システム及び抜針検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液透析装置において動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出するシステムとしては、特許文献1に示すものが考えられている。
【0003】
この血液透析装置は、ディスポーザブル品である血液回路の製造コストの増加を削減するために、一対の電極のうち、一方の電極を血液回路に設けるとともに、他方の電極を透析装置本体が有する透析液導入ライン又は透析液排出ラインに設けている。
【0004】
しかしながら、上記の血液透析装置では、ディスポーザブル品である血液回路に一方の電極を設けた専用品であり、血液回路に2つの電極が設けられてはいないとは言え、電極が設けられていない汎用品である血液回路に比べて、その製造コストが増加してしまう。その結果、血液透析装置のランニングコストも増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、抜針を簡便に検出するとともに、そのランニングコストを低減することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る抜針検出システムは、血液透析装置の動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出する抜針検出システムであって、前記動脈側穿刺針に接続された動脈側チューブに着脱可能に取り付けられる動脈側電極と、前記静脈側穿刺針に接続された静脈側チューブに着脱可能に取り付けられる静脈側電極と、前記動脈側電極及び前記静脈側電極に高周波電圧を印加する電圧印加部と、前記電圧印加部により高周波電圧が印加された前記動脈側電極と前記静脈側電極との間に流れる電流を電圧に変換する電位差検出部と、前記電位差検出部により得られた検出信号から所定の周波数成分を抽出する周波数成分抽出部と、前記周波数成分抽出部により得られた抽出信号に基づいて、前記動脈側穿刺針又は前記静脈側穿刺針の抜脱を検出する抜脱検出部とを備えることを特徴とする。
【0008】
この抜針検出システムであれば、動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜脱を検出するための動脈側電極及び静脈側電極を、動脈側チューブ及び静脈側チューブに対して着脱可能にしているので、血液透析装置に用いられるディスポーザブル品である血液回路(動脈側穿刺針、動脈側チューブ、静脈側穿刺針及び静脈側チューブを含む。)に検出用の電極を組み込んだ専用品ではなく、検出用の電極が組み込まれていない汎用品を用いることができる。その結果、抜針を簡便に検出するとともに、抜針を検出するためのランニングコストを低減することができる。
また、本発明のように動脈側電極及び静脈側電極を着脱可能にするアタッチメント方式では、チューブの肉厚分だけ血液と電極と間の距離が空いてしまうため、容量性リアクタンスを小さくすることができず、検出信号が弱くなってしまう。ここで、本発明では、電位差検出部により得られた検出信号から所定の周波数成分を抽出し、その抽出信号に基づいて、動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜脱を検出するので、検出信号の重畳するノイズを除去して、動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜脱を精度良く検出することができる。その他、血液透析装置の血液ポンプの振動により生じるノイズの影響、又は、人がチューブに触れることにより生じるノイズの影響を低減することもできる。
【0009】
各チューブに加工を施すこと無く、各電極を各チューブに簡単に着脱可能に取り付けるための具体的な実施の態様としては、前記動脈側電極を前記動脈側チューブに着脱可能に取り付けるための動脈側アタッチメント部と、前記静脈側電極を前記静脈側チューブに着脱可能に取り付けるための静脈側アタッチメント部とをさらに備えていることが望ましい。
【0010】
前記動脈側アタッチメント部は、前記動脈側電極をクッション材により支持しており、前記静脈側アタッチメント部は、前記静脈側電極をクッション材により支持しており、前記動脈側電極及び前記静脈側電極は、前記動脈側チューブ及び前記静脈側チューブの外形形状に合わせて変形可能に構成されていることが望ましい。
この構成であれば、各電極を各チューブに密着させて接触面積を増やすことができ、各チューブ内を流れる血液と各電極との間に存在する容量性リアクタンスを低減することができる。その結果、電位差検出部により得られた検出信号の信号強度を上げることができ、動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針の抜脱を精度良く検出することができる。また、各チューブの外径によらず、各チューブと各電極とを密着させることができる。
【0011】
各チューブに対する各電極の取り付けを簡単に行うとともに、各チューブに対して各電極を密着させて接触面積を増やすためには、前記動脈側アタッチメント部は、前記動脈側チューブを挟持する一対の挟持片部を有しており、前記一対の挟持片部それぞれにおいて前記動脈側電極が前記クッション材により支持されており、前記静脈側アタッチメント部は、前記静脈側チューブを挟持する一対の挟持片部を有しており、前記一対の挟持片部それぞれにおいて前記静脈側電極が前記クッション材により支持されていることが望ましい。
【0012】
本発明に係る抜針検出システムは、各種透析用のチューブに適用可能であり、動脈側電極及び静脈側電極の取り付け自由度が高いシステムである反面、透析用のチューブの種類によって容量性リアクタンスが変化し、各電極の取付位置によって抵抗値が変化するため、電位差検出部により得られる検出信号の信号強度は一定とはならない。
この問題を好適に解決するためには、本発明に係る抜針検出システムは、前記血液透析装置による透析開始から所定時間経過するまでに前記周波数成分抽出部により抽出された抽出信号を用いて基準値を設定する基準値設定部をさらに備え、前記抜脱検出部は、前記所定時間経過後において、前記周波数成分抽出部により得られた抽出信号と基準値とを比較することにより、前記動脈側電極又は前記静脈側電極の抜脱を検出することが望ましい。
【0013】
また、本発明に係る抜針検出方法は、血液透析装置の動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出する抜針検出方法であって、前記動脈側穿刺針に接続された動脈側チューブに動脈側電極を着脱可能に取り付けるとともに、前記静脈側穿刺針に接続された静脈側チューブに静脈側電極を着脱可能に取り付け、前記動脈側電極及び前記静脈側電極に高周波電圧を印加して、前記動脈側電極及び前記静脈側電極の電位差を検出し、前記動脈側電極及び前記静脈側電極の電位差から所定の周波数成分を抽出して、抽出された信号に基づいて、前記動脈側電極又は前記静脈側電極の抜脱を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、抜針を簡便に検出するとともに、そのランニングコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る抜針検出システムの構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態の(a)動脈側電極とそのアタッチメント部、及び、(b)静脈側電極とそのアタッチメント部の断面を示す模式図である。
【
図3】同実施形態における抜針検出方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る抜針検出システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に示すいずれの図についても、わかりやすくするために、適宜省略し又は誇張して模式的に描かれている。同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0017】
本実施形態の抜針検出システム100は、血液透析装置の動脈側穿刺針又は静脈側穿刺針が患者から抜脱したことを検出するものである。
【0018】
ここで、血液透析装置10は、血液透析を行う透析器(ダイアライザ)11と、当該透析器11に接続されるとともに血液を流通させる血液回路12と、透析器11に接続されて透析液を流通させる透析液回路13とを備えている。血液回路12は、動脈側流路14と、静脈側流路15とを有している。動脈側流路14は、動脈側穿刺針14aと、当該動脈側穿刺針14aに接続されるとともに透析器11に接続される動脈側チューブ14bと、当該動脈側チューブ14bに設けられた血液ポンプ14cとを有している。また、静脈側流路15は、静脈側穿刺針15aと、当該静脈側穿刺針15aに接続されるとともに透析器11に接続される静脈側チューブ15bと、血液から空気を排除するドリップチャンバ15cとを有している。
【0019】
具体的に抜針検出システム100は、
図1に示すように、動脈側チューブ14bに着脱可能に取り付けられる動脈側電極2と、静脈側チューブ15bに着脱可能に取り付けられる静脈側電極3と、動脈側電極2及び静脈側電極3に高周波電圧を印加する電圧印加部4と、電圧印加部4により高周波電圧が印加された動脈側電極2及び静脈側電極3の電位差を検出する電位差検出部5と、電位差検出部5により得られた検出信号に基づいて動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する制御演算装置6とを備えている。
【0020】
本実施形態では、動脈側電極2は、動脈側アタッチメント部7により動脈側チューブ14bに着脱可能に取り付けられる。具体的に動脈側電極2は、動脈側チューブ14bにおいて血液ポンプ14cよりも動脈側穿刺針14a側に着脱可能に取り付けられる。また、静脈側電極3は、静脈側アタッチメント部8により静脈側チューブ15bに着脱可能に取り付けられる。具体的に静脈側電極3は、静脈側チューブ15bにおいてドリップチャンバ15cよりも静脈側穿刺針15a側に着脱可能に取り付けられる。
【0021】
動脈側アタッチメント部7は、
図2(a)に示すように、動脈側電極2をクッション材71により支持している。具体的に動脈側アタッチメント部7は、動脈側チューブ14bを挟持する一対の挟持片部72a、72bを有しており、一対の挟持片部72a、72bそれぞれにおいて動脈側電極2がクッション材71により支持されている。一対の挟持片部72a、72bは、図示しない固定機構により動脈側チューブ14bを挟んだ状態で固定される。なお、
図2(a)では、一対の挟持片部72a、72bが互いに分離する構成であったが、それらをヒンジ部を介して連結するようにしても良い。
【0022】
また、動脈側電極2は、動脈側チューブ14bの外形形状に合わせて変形可能に構成されている。具体的に動脈側電極2は、例えば薄板状をなすもの(例えば銅箔)であり、アタッチメント部7により動脈側チューブ14bの外側周面に押し付けられることにより、動脈側チューブ14bの外形形状に合わせて変形する。
【0023】
静脈側アタッチメント部8は、
図2(b)に示すように、静脈側電極3をクッション材81により支持している。具体的に静脈側アタッチメント部8は、静脈側チューブ15bを挟持する一対の挟持片部82a、82bを有しており、一対の挟持片部82a、82bそれぞれにおいて静脈側電極3がクッション材81により支持されている。一対の挟持片部82a、82bは、図示しない固定機構により静脈側チューブ15bを挟んだ状態で固定される。なお、
図2(b)では、一対の挟持片部82a、82bが互いに分離する構成であったが、それらをヒンジ部を介して連結するようにしても良い。
【0024】
また、静脈側電極3は、静脈側チューブ15bの外形形状に合わせて変形可能に構成されている。具体的に静脈側電極3は、例えば薄板状をなすもの(例えば銅箔)であり、アタッチメント部8により静脈側チューブ15bの外側周面に押し付けられることにより、静脈側チューブ15bの外形形状に合わせて変形する。
【0025】
電圧印加部4は、動脈側電極2及び静脈側電極3の間に高周波電圧を印加するものであり、例えばファンクションジェネレーターを用いて構成することができる。本実施形態の電圧印加部4は、周波数50kHzであり、電圧10Vp-pの高周波電圧を印加するように構成されている。なお、高周波電圧はこれに限られず、例えば、周波数30~100kHzであり、電圧5~15Vp-pの高周波電圧であれば良い。
【0026】
電位差検出部5は、高周波電圧が印加された動脈側電極2と静脈側電極3との間に流れる電流を電圧に変換するものであり、例えば100kΩの抵抗器51の電位差を計測する差動増幅回路を用いて構成することができる。なお、抵抗器51の抵抗値は100kΩに限られない。
【0027】
制御演算装置6は、CPU、内部メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器等を有するコンピュータにより構成され、内部メモリに格納された検査用プログラム基づいて、CPU及び周辺機器が協働することにより、周波数成分抽出部61、抜脱検出部62、基準値設定部63等としての機能を発揮する。その他、制御演算装置6は、抜針検出システム100全体の制御を行うものでもある。この制御演算装置6の機能は、物理的に1つのコンピュータにより構成されても良いし、物理的に分離した複数のコンピュータにより構成されても良い。
【0028】
周波数成分抽出部61は、電位差検出部5により得られた検出信号から所定の周波数成分を抽出するものであり、例えばロックインアンプ又はバンドパスフィルタを用いて構成することができる。本実施形態の周波数成分抽出部61は、電圧印加部4により印加される高周波電圧と同じ周波数の成分を抽出するものであり、具体的には、検出信号から50kHzの周波数成分を抽出する。
【0029】
抜脱検出部62は、周波数成分抽出部61により得られた抽出信号に基づいて、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出するものである。具体的に抜脱検出部62は、周波数成分抽出部61により得られた抽出信号が示す信号強度と、予め定められた基準値とを比較することにより、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する。なお、本実施形態の基準値は、基準値設定部63により設定されたものである。
【0030】
ここで、抜脱検出部62による抜脱の検出方法としては、例えば、(1)基準値を信号強度が基準値を下回った場合、(2)基準値の所定割合(例えば80%)を信号強度が下回った場合、又は、(3)前記(1)又は(2)において、信号強度が所定回数又は所定時間連続して下回った場合等が考えられる。
【0031】
基準値設定部63は、血液透析装置10による透析開始から所定時間経過するまでに周波数成分抽出部61により抽出された抽出信号を用いて基準値を設定するものである。本実施形態の基準値設定部63は、透析開始直後に基準値を設定する。なお、基準値設定部63により基準値が設定されるまでは、抜脱検出部62による抜針検知は行われない。そして、抜脱検出部62は、所定時間経過後(基準値が設定された後)において、周波数成分抽出部61により得られた抽出信号と基準値とを比較することにより、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する。
【0032】
<抜針検出方法>
次に、本実施形態の抜針検出システム100を用いた抜針検出方法について、
図3を参照して説明する。
【0033】
(a)電極2、3の取り付け
まず、患者に動脈側穿刺針14a及び静脈側穿刺針15aを穿刺し、血液透析の準備を完了する(ステップS1)。この状態で、アタッチメント部7、8により動脈側チューブ14bに動脈側電極2を取り付け、アタッチメント部7、8により静脈側チューブ15bに静脈側電極3を取り付ける(ステップS2)。ここで、動脈側チューブ14b及び静脈側チューブ15bの種類に関わらず、各電極2、3及びアタッチメント部7、8のクッション材71、81が変形することで、各電極2、3が各チューブ14b、15bの外側周面に沿って密着する。
【0034】
(b)キャリブレーション(基準値の設定)
各チューブ14b、15bに各電極2、3が取り付けられた後に、血液透析装置10による透析開始(ステップS3)と同時に、キャリブレーション動作を行う(ステップS4)。具体的には、電圧印加部4により動脈側電極2及び前記静脈側電極3に高周波電圧を印加して、電位差検出部5により動脈側電極2及び前記静脈側電極3の電位差を検出する。また、周波数成分抽出部61が電位差検出部5により得られた検出信号から所定の周波数成分を抽出する。そして、基準値設定部63が、周波数成分抽出部61により抽出された抽出信号を用いて基準値を設定する。
【0035】
(c)抜針の検出
上記(b)のキャリブレーションが終了すると同時に、抜針検出部62は、周波数成分抽出部61により抽出された抽出信号と、基準値設定部63により設定された基準値とを比較して、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出する(ステップS5)。なお、この抜針の検出は、血液透析装置10による血液透析が終了するまで行われる(ステップS6、S7)。上記(b)及び(c)において、電圧印加部4は高周波電圧を両電極2、3に印加し続け、電位差検出部5による電位差の検出及び周波数成分抽出部61による周波数成分の抽出は常時行われている。
【0036】
<本実施形態の効果>
本実施形態の抜針検出システム100によれば、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出するための動脈側電極2及び静脈側電極3を、動脈側チューブ14b及び静脈側チューブ15bに対して着脱可能にしているので、血液透析装置10に用いられるディスポーザブル品である血液回路12(動脈側穿刺針14a、動脈側チューブ14b、静脈側穿刺針15a及び静脈側チューブ15bを含む。)に検出用の電極を組み込んだ専用品ではなく、検出用の電極が組み込まれていない汎用品を用いることができる。その結果、抜針を簡便に検出するとともに、抜針を検出するためのランニングコストを低減することができる。
【0037】
また、本実施形態のように動脈側電極2及び静脈側電極3を着脱可能にするアタッチメント方式では、チューブの肉厚分だけ血液と電極と間の距離が空いてしまうため、容量性リアクタンスを小さくすることができず、検出信号が弱くなってしまう。ここで、本実施形態では、電位差検出部5により得られた検出信号から所定の周波数成分を抽出し、その抽出信号に基づいて、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を検出するので、検出信号の重畳するノイズを除去して、動脈側穿刺針14a又は静脈側穿刺針15aの抜脱を精度良く検出することができる。その他、血液ポンプ14cの振動により生じるノイズ、又は人がチューブ14b、15bに触れることにより生じるノイズの影響を低減することもできる。
【0038】
<本発明の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0039】
例えば、一対の挟持片部それぞれにクッション材を介して電極2、3を設ける構成であったが、一対の挟持片部の一方にクッション材を介して電極2、3を設ける構成であっても良い。
【0040】
また、各電極2、3をクッション材71、72を介して各チューブ14b、15bに密着させる構成の他に、各電極2、3を各チューブ14b、15bに巻きつける構成であっても良いし、クリップを用いて各電極2、3を各チューブ14b、15bに取り付ける構成であっても良い。
【0041】
さらに、前記実施形態の例えばキャリブレーションにおいて、電位差検出部5により得られる検出信号、又は、周波数成分抽出部61により得られる抽出信号の信号強度が所定範囲に含まれていない場合には、各電極2、3の取り付け位置が不適切、取り付け方が間違っているなどの取り付け不良を、音や光等により報知するように構成しても良い。
【0042】
さらに、前記実施形態の基準値は基準値設定部により設定されたものであったが、その他、ユーザが入力して設定できるように構成しても良い。
【0043】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0044】
100・・・抜針検出システム
10・・・血液透析装置
14a・・・動脈側穿刺針
14b・・・動脈側チューブ
15a・・・静脈側穿刺針
15b・・・静脈側チューブ
2・・・動脈側電極
7・・・動脈側アタッチメント部
71・・・クッション材
72a、72b・・・挟持片部
3・・・静脈側電極
8・・・静脈側アタッチメント部
81・・・クッション材
82a、82b・・・挟持片部
4・・・電圧印加部
5・・・電位差検出部
61・・・周波数成分抽出部
62・・・抜脱検出部
63・・・基準値設定部