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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】がんの予防または治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/06 20060101AFI20241226BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20241226BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C07K7/06 ZNA
A61K38/08
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022561199
(86)(22)【出願日】2022-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2022002762
(87)【国際公開番号】W WO2022203219
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0036803
(32)【優先日】2021-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】PCT/KR2022/002399
(32)【優先日】2022-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520413140
【氏名又は名称】エル-ベース カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】L-BASE CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ド ヨン
【審査官】西澤 龍彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/099188(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/172722(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/200910(WO,A2)
【文献】国際公開第2021/194228(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/197100(WO,A1)
【文献】YEON, M et al.,CAGE Binds to Beclin1, Regulates Autophagic Flux and CAGE-Derived Peptide Confers Sensitivity to Anti-cancer Drugs in Non-small Cell Lung Cancer Cells,frontiers in Oncology,2018年,Vol. 8,pp. 1-16
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式で表される化合物:
[一般式]
X-AQTGTGKT
(前記一般式中、
Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、
Xは、
【化1】
からなる群から選ばれた一つであり、AのN末端側に結合している。)
【請求項2】
下記一般式で表される化合物を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物:
[一般式]
X-AQTGTGKT
(前記一般式中、
Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、
Xは、
【化2】
からなる群から選ばれた一つであり、AのN末端側に結合している。)
【請求項3】
前記がんは、肺がん、乳がん、血液がん、大腸がん、膵臓がん、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれたがんであることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記肺がんは、非小細胞性肺がん(non-small cell lung cancer)であることを特徴とする請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記血液がんは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた血液がんであることを特徴とする請求項3に記載の薬学的組成物。
【請求項6】
前記Xは、
【化3】
からなる群から選ばれた一つであり、前記がんは、肺がんであることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
前記Xは、
【化4】
からなる群から選ばれた一つであり、前記がんは、乳がんであることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記Xは、
【化5】
からなる群から選ばれた一つであり、前記がんは、血液がんであることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記Xは、
【化6】
からなる群から選ばれた一つであり、前記がんは、膵臓がんであることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
前記Xは、
【化7】
からなる群から選ばれた一つであり、前記がんは、大腸がんであることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項11】
前記Xが
【化8】
である場合、化合物のヒト血液内での半減期が100分~150分であることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項12】
前記Xが
【化9】
からなる群から選ばれた一つである場合、化合物のヒト血液内での半減期が45分~70分であることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項13】
前記Xが
【化10】
である場合、化合物のヒト血液内での半減期が20分~30分であることを特徴とする請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項14】
下記の段階を含むオリゴペプチドX-AQTGTGKTの製造方法:
(前記Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、
前記Xは、
【化11】
からなる群から選ばれた一つである。)
(1)TGおよびKTをそれぞれ合成する段階;
(2)前記TGとKTを結合してTGKTを合成する段階;
(3)前記TGKTのN末端にTGを結合してTGTGKTを合成する段階;
(4)前記TGTGKTのN末端にQを結合してQTGTGKTを合成する段階;および
(5)前記QTGTGKTのN末端にアラニン誘導体(X-A)を結合してX-AQTGTGKTを合成する段階。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物をこれを必要とする個体に投与する段階を含み、ここで、対象はヒトを除く、がんの予防または治療方法。
【請求項16】
がん治療用薬剤の製造のための請求項1に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のオリゴペプチドAQTGTGKTのアナログ化合物、これを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物およびその製造方法に関する。
【0002】
本発明は、2021年3月22日に出願された韓国特許出願第10-2021-0036803号および2022年2月18日に出願されたPCT出願第PCT/KR2022/002399号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
現在、がんの早期診断法の開発および新しい抗がん療法の持続的な開発に伴ってがんの治療効果が向上しているにも関わらず、がんは、まだ韓国における死亡原因のうち1~2位を争う重要な疾患である。現在使用されている抗がん剤の大部分は、化学療法によるものであり、がんの種類によって薬理作用が多様であり、毒性による副作用が多様に現れるので、がん治療の問題点として指摘されている。
【0004】
従来の抗がん剤は、がん細胞だけでなく、正常細胞にも浸透して、正常細胞の機能および活性に損傷を与えるので、骨髄機能の低下、胃腸障害、脱毛症などの副作用を誘発したり、長期間化学療法による抗がん剤に対する多剤耐性を示すなど、がん治療の大きな問題点を示す。したがって、従来の抗がん剤のこのような深刻な問題点を解決できる革新的な抗がん剤の開発に関する研究が活発に行われている。
【0005】
一方、腫瘍細胞の特異的腫瘍抗原を標的とする抗体の開発が行われているが、抗体の場合、免疫反応の恐れおよび組織内浸透の低い効率性などの問題点がある。他方で、ペプチド(peptide)の場合、分子量が小さくて、抗体とは異なって免疫反応の恐れが少なく、組織内浸透が容易であるという長所があり、腫瘍抗原を標的とするペプチド系抗がん剤は、腫瘍に選択的に作用できるので、正常細胞に損傷を与えるなどの副作用が殆どないことが期待されている。しかしながら、このような長所にもかかわらず、非常に制限的ながん腫にのみ使用されており、特にヒトに投与直後、短時間内に分解されて効果を発揮しにくいという問題点があった。
【0006】
前記問題点を解決するための方法として、ペプチドをアミド化(amidation)、エステル化(esterification)、アシル化(acylation)、アセチル化(acetylation)、ペグ化(PEGylation)、環化(cyclization)またはアルキル化(alkylation)などによって変形させることによって、収率の向上、生体内活性の増加、受容体に対するペプチドの親和性増加、タンパク質の分解遅延などを試みることができるが、前記変形によっても所望の効果が向上することは保障されず、かえってペプチドが本来有していた生体内活性を喪失したり、予期しない副作用が発生しうる危険がある。したがって、このような否定的効果を最小化するとと同時に、目的とする効果を最大化するためのペプチドの変形に対する研究が活発に行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述したような従来技術上の問題点を解決するためになされたものであって、オリゴペプチドAQTGTGKT(alanine-glutamine-threonine-glycine-threonine-glycine-lysine-threonine)の抗がん効果および血液内での半減期をより一層向上させるために、鋭意努力した結果、本発明を完成した。特に、AQTGTGKTペプチドのアミド化(amidation)したアナログ化合物は、優れた抗がん効果および増加した半減期を有することを確認した。
【0008】
これより、本発明の目的は、下記の一般式で表される化合物を提供することにある:
【0009】
[一般式]
X-AQTGTGKT
【0010】
前記一般式中、Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、
Xは、
【化1】
からなる群から選ばれた一つ以上である。
【0011】
本発明の他の目的は、前記の一般式で表される化合物を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記一般式で表される化合物の製造方法を提供することにある。
【0013】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、下記の一般式で表される化合物を提供する:
【0015】
[一般式]
X-AQTGTGKT
【0016】
前記一般式中、Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、
Xは、
【化2】
からなる群から選ばれた一つ以上である。
【0017】
また、本発明は、下記の一般式で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物を提供する:
【0018】
[一般式]
X-AQTGTGKT
【0019】
前記一般式中、Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、
Xは、
【化3】
からなる群から選ばれた一つ以上である。
【0020】
また、本発明は、前記一般式で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩をこれを必要とする個体に投与する段階を含むがんの予防または治療方法を提供する。前記化合物は、有効量で投与することができる。
【0021】
それだけでなく、本発明は、前記一般式で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩のがんに対する予防、改善または治療用途を提供する。
【0022】
さらに、本発明は、前記一般式で表される化合物またはその薬学的に許容可能な塩のがん治療用薬剤を生産するための用途を提供する。
【0023】
本発明の一具現例において、前記がんは、肺がん、乳がん、血液がん、大腸がん、膵臓がん、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれたがんでありうるが、これに限定されるものではない。
【0024】
本発明の他の具現例において、前記肺がんは、非小細胞性肺がん(non-small cell lung cancer)でありうるが、これに限定されるものではない。
【0025】
本発明のさらに他の具現例において、前記血液がんは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれたものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明の一具現例において、前記Xは、
【化4】
からなる群から選ばれた一つ以上であり、前記がんは、肺がんでありうるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明の他の具現例において、前記Xは、
【化5】
からなる群から選ばれた一つ以上であり、前記がんは、乳がんでありうるが、これに限定されるものではない。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記Xは、
【化6】
からなる群から選ばれた一つ以上であり、前記がんは、血液がんでありうるが、これに限定されるものではない。
【0029】
本発明のさらに他の具現例において、前記Xは、
【化7】
からなる群から選ばれた一つ以上であり、前記がんは、膵臓がんでありうるが、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明のさらに他の具現例において、前記Xは、
【化8】
からなる群から選ばれた一つ以上であり、前記がんは、大腸がんでありうるが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明の一具体例において、前記Xが
【化9】
である場合、前記化合物は、ヒト血液内での半減期が100分~150分であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
本発明の他の具体例において、前記Xが
【化10】
からなる群から選ばれた一つ以上である場合、前記化合物は、ヒト血液内での半減期が45分~70分であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明のさらに他の具体例において、前記Xが
【化11】
である場合、前記化合物は、ヒト血液内での半減期が20分~30分であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
また、本発明は、下記の段階を含むオリゴペプチドX-AQTGTGKTの製造方法を提供する:
【0035】
(前記Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、
前記Xは、
【化12】
からなる群から選ばれた一つである。)
【0036】
(1)TGおよびKTをそれぞれ合成する段階;
(2)前記TGとKTを結合してTGKTを合成する段階;
(3)前記TGKTのN末端にTGを結合してTGTGKTを合成する段階;
(4)前記TGTGKTのN末端にQを結合してQTGTGKTを合成する段階;および
(5)前記QTGTGKTのN末端にアラニン誘導体(X-A)を結合してX-AQTGTGKTを合成する段階。
【発明の効果】
【0037】
本発明は、新規のオリゴペプチドAQTGTGKTのアナログ化合物、これを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物およびその製造方法に関し、前記オリゴペプチドAQTGTGKTのアナログが優れた抗がん効果を示し、ヒトの血液内で安定に存在することを確認した。したがって、本発明による薬学的組成物は、オリゴペプチドが持っている長所である抗体に比べて分子量が小さくて、免疫反応の恐れが少なく、組織内に浸透が容易であるという点に加えて、がん細胞の増殖抑制効果に非常に優れており、ヒトの血液内で安定に存在できる効果を示すので、がんを治療するのに有用な抗がん剤として使用できることが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1-7】図1図7は、本発明による化合物を同定し、化合物の構造確認のためのUPLC-MS(図上)およびH NMR(図下)結果を示す図であり、図1は、4-PhPh-AQTGTGKT、図2は、Ac-AQTGTGKT、図3は、3-PhPh-AQTGTGKT、図4は、4-MeOPh-AQTGTGKT、図5は、2-PhPh-AQTGTGKT、図6は、Ph-AQTGTGKT、図7は、Naphthyl-AQTGTGKTの測定結果を示す図である。
図8図8は、肺がん細胞株H1299で本発明の化合物処理による細胞活性抑制効果をCTG assayによって分析した結果を示す図である(p<0.05、**p<0.01、***p<0.001;以下同一)。
図9図9は、肺がん細胞株H1975で本発明の化合物処理による細胞活性抑制効果をCTG assayによって分析した結果を示す図である。
図10図10は、肺がん(乳頭状腺癌)細胞株H820で本発明の化合物処理による細胞活性抑制効果をMTT assayによって分析した結果を示す図である。
図11a図11aは、乳がん細胞株MDA-MB-231で本発明の化合物処理による細胞活性抑制効果をCTG assayによって分析した結果を示す図である。
図11b図11bは、乳がん細胞株HCC1937で本発明の化合物処理による細胞活性抑制効果をMTT assayによって分析した結果を示す図である。
図12図12は、血液がん細胞株Jurkat clone E6-1で本発明の化合物処理による細胞活性抑制効果をMTT assayによって分析した結果を示す図である。
図13図13は、膵臓がん細胞株CFPAC-1で本発明の化合物処理による細胞活性抑制効果をMTT assayによって分析した結果を示す図である。
図14図14は、大腸がん細胞株HT29で本発明の化合物処理による細胞活性抑制効果をMTT assayによって分析した結果を示す図である。
図15図15は、肺がん細胞株H820をヌードマウスに接種して腫瘍を形成させた後、本発明の化合物処理による腫瘍成長抑制を分析した結果を示す図である。
図16図16は、肺がん細胞株H1975をヌードマウスに接種して腫瘍を形成させた後、本発明の化合物処理による腫瘍成長抑制を分析した結果を示す図である。
図17図17は、乳がん細胞株HCC1806をマウスに接種して腫瘍を形成させた後、本発明の化合物処理による腫瘍成長抑制を分析した結果を示す図である。
図18図18は、大腸がん細胞株CT26をマウスに接種して腫瘍を形成させた後、腫瘍体積を測定して本発明の化合物を処理による腫瘍成長抑制を分析した結果を示す図である。
図19-26】図19図26は、ヒト血液内で本発明によるそれぞれの化合物の時間帯別残留量を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明者らは、オリゴペプチドAQTGTGKTのアミド化アナログ(amidation analog)を新しく合成し、これらが優れた抗がん効果(実施例2参照)および血液内での優れた安定性(実施例3参照)を示すという事実を確認して、本発明を完成した。これより、本発明は、下記の一般式で表される化合物を提供することができる:
【0040】
[一般式]
X-AQTGTGKT
【0041】
前記一般式中、Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、Xは、
【化13】
からなる群から選ばれた一つ以上である。
【0042】
本発明の他の様態として、本発明は、前記一般式で表される化合物を有効成分として含む、がんの予防または治療用薬学的組成物を提供することができる。
【0043】
本発明のさらに他の様態として、本発明は、前記一般式で表される化合物を個体に投与する段階を含むがんの予防または治療方法を提供することができる。
【0044】
本明細書において使用される用語「予防」とは、本発明による組成物の投与によってがんによる症状を遮断したり、抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0045】
本明細書において使用される用語「治療」とは、本発明による組成物の投与によってがんによる症状が好転したり有益に変更されるすべての行為を意味する。
【0046】
本明細書において使用される用語「個体」とは、疾患の予防または治療を必要とする対象を意味する。例えば、前記個体は、ヒト、または非ヒトである霊長類、マウス、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジおよびウシを含む哺乳類でありうる。
【0047】
本明細書において使用される用語「オリゴペプチド」は、ペプチド結合によってアミノ酸残基が互いに結合して形成された線状(linear)の分子を意味する。本発明のオリゴペプチドは、分子・生物学的な方法と共に当業界で公知となった化学的合成方法(例えば、固相合成技術(solid-phase synthesis techniques))によって製造されることができる(Merrifield,J.Amer.Chem.Soc.85:2149-54(1963);Stewart,et al.,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd.ed.,Pierce Chem.Co.:Rockford,111(1984))。
【0048】
本発明による化合物の範囲には、さらに、その薬学的に許容可能な塩が含まれ得る。本明細書において使用される用語「薬学的に許容可能な」という用語は、過度な毒性、刺激、アレルギー反応またはその他問題点や合併症なしで利得/危険の比が合理的なので、対象体(例:ヒト)の組織と接触して使用するのに適しており、健全な医学的判断の範疇内である化合物を意味する。前記薬学的に許容可能な塩は、例えば薬学的に許容可能な遊離酸(free acid)により形成された酸付加塩および薬学的に許容可能な金属塩を含む。
【0049】
また、本発明による化合物の範囲には、本発明の化合物と均等な生物学的活性を発揮するアミノ酸配列の変異を有する生物学的機能均等物が含まれ得る。このようなアミノ酸配列の変異は、アミノ酸の側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷およびサイズなどに基づいてなる。アミノ酸の側鎖置換体のサイズ、形態および種類に対する分析によって、アラニンとグリシンは、類似のサイズを有し;リシンは、陽電荷を帯びた残基であり;グルタミンとスレオニンは、電荷を帯びないことが分かる。したがって、このような考慮事項に基づいて、アラニンとグリシン;そしてグルタミンとスレオニンは、生物学的に機能均等物といえる。
【0050】
変異を導入するにあたって、アミノ酸の疎水性インデックス(hydropathic index)が考慮されることができる。それぞれのアミノ酸は、疎水性と電荷によって次のように疎水性インデックスが付与されている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(-3.5);アスパラギン(-3.5);リシン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。
タンパク質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を付与するにあたって疎水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似の疎水性インデックスを有するアミノ酸で置換する場合、類似の生物学的活性を保有できることは公知の事実である。疎水性インデックスを参照して変異を導入させる場合、好ましくは、±2以内、より好ましくは、±1以内、より好ましくは、±0.5以内の疎水性インデックス差異を示すアミノ酸の間に置換をする。
【0051】
一方、類似の親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸間の置換が均等な生物学的活性を有するタンパク質をもたらすことはよく知られている。米国特許第4,554,101号に開示されたように、次の親水性値がそれぞれのアミノ酸残基に付与されている:アルギニン(+3.0);リシン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。
【0052】
親水性値を参照して変異を導入させる場合、好ましくは、±2以内、より好ましくは、±1以内、より好ましくは、±0.5以内の親水性値の差異を示すアミノ酸の間に置換をする。
【0053】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質でのアミノ酸交換は、当該分野において公知となっている(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York,1979)。最も通常的に起こる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Ala/Glu、Asp/Gly間の交換である。
【0054】
上述した生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本発明の前記一般式で表される化合物のアミノ酸配列(AQTGTGKT)のタンパク質は、これと実質的な同一性(substantial identity)を示す配列を含むと解釈される。前記の実質的な同一性は、上記した本発明の配列と任意の他の配列を最大限対応するようにアライン(align)し、当業界で通常使用されるアルゴリズムを利用してアラインされた配列を分析した場合に、最小62.5%の相同性、より好ましくは、75%以上の相同性、最も好ましくは、87.5%以上の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界で公知となっている。
【0055】
本発明の薬学的組成物は、がんの予防または治療に使用される。本発明の薬学的組成物が使用可能ながんは、肺がん、乳がん、血液がん、大腸がん、膵臓がん、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれたがんでありうるが、これに限定されるものではない。
【0056】
本発明において、前記肺がんは、非小細胞性肺がん(non-small cell lung cancer)でありうるが、これに限定されるものではない。本発明の一具現例において、本発明による化合物は、T790M突然変異陽性患者、EGFR m患者、および/またはOsimertinib耐性患者の肺がん治療のためのものでありうるが、これに限定されるものではない。
【0057】
また、前記乳がんは、Hormone receptor(HR)陽性乳がんでありうるが、これに限定されるものではない。また、前記乳がんは、トリプルネガティブ乳がん(Triple negative breast cancer)でありうるが、これに限定されるものではない。
【0058】
また、前記血液がんは、白血病、リンパ腫、多発性骨髄腫、およびこれらの組み合わせからなる群から選ばれた血液がんでありうるが、これに限定されるものではない。
【0059】
本発明の一実施例では、本発明による薬学的組成物が肺がん、乳がん、血液がん、膵臓がんおよび大腸がんに対して優れた抗がん活性を示すことを確認した(実施例2参照)。
【0060】
本発明において、前記薬学的組成物が肺がんの予防または治療に使用される場合、一般式X-AQTGTGKTで表される化合物を有効成分として含み、前記Xは、
【化14】
からなる群から選ばれた一つ以上でありうるが、これに限定されるものではない。
【0061】
また、本発明において、前記薬学的組成物が乳がんの予防または治療に使用される場合、一般式X-AQTGTGKTで表される化合物を有効成分として含み、前記Xは、
【化15】
からなる群から選ばれた一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0062】
また、本発明において、前記薬学的組成物が血液がんの予防または治療に使用される場合、一般式X-AQTGTGKTで表される化合物を有効成分として含み、前記Xは、
【化16】
からなる群から選ばれた一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0063】
また、本発明において、前記薬学的組成物が膵臓がんの予防または治療に使用される場合、一般式X-AQTGTGKTで表される化合物を有効成分として含み、前記Xは、
【化17】
からなる群から選ばれた一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
また、本発明において、前記薬学的組成物が大腸がんの予防または治療に使用される場合、一般式X-AQTGTGKTで表される化合物を有効成分として含み、前記Xは、
【化18】
からなる群から選ばれた一つ以上であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0065】
本発明の他の実施例では、本発明による前記一般式で表される化合物がヒトの血液内で安定に存在でき、AQTGTGKTと比較して、向上した半減期を有するという事実を確認した(実施例3参照)。したがって、前記実施例の結果は、本発明による化合物が向上した抗がん効果および安定性を有することを示す。
【0066】
本発明の一般式X-AQTGTGKTで表される化合物において、前記Xが
【化19】
である場合、前記化合物のヒト血液内での半減期は、20分以上であってもよいが、これに限定されるものではない。前記半減期は、例えば20分~30分、21分~30分、22分~30分、23分~30分、24分~30分、25分~30分、26分~30分、27分~30分、28分~30分、29分~30分、20分~29分、21分~29分、21分~28分、21分~27分、21分~26分、21分~25分、21分~24分、21分~23分、21分~22分、22分~30分、22分~28分、22分~26分、22分~24分、23分~30分、23分~28分、23分~26分、23分~24分、24分~30分、24分~27分、25分~30分、25分~27分、26分~30分、26分~28分、27分~30分、27分~29分、28分~30分、28分~29分、または29分~30分などであってもよい。また、前記半減期は、AQTGTGKTの半減期と比較して、1900%~2900%増加したものであってもよいが、これに限定されるものではない。前記増加比率は、例えば1900%~2700%、2000%~2700%、2100%~2700%、2200%~2700%、2300%~2700%、2400%~2700%、2500%~2700%、2600%~2700%、1900%~2600%、2000%~2600%、2100%~2600%、2100%~2500%、2100%~2400%、2100%~2300%、2100%~2200%、2200%~2700%、2200%~2600%、2200%~2500%、2200%~2400%、2200%~2300%、2300%~2700%、2300%~2500%、2400%~2700%、2400%~2600%、または2500%~2700%などであってもよい。
【0067】
また、本発明の一般式X-AQTGTGKTで表される化合物において、前記Xが
【化20】
からなる群から選ばれた一つ以上である場合、前記化合物のヒト血液内での半減期は、45分以上であってもよいが、これに限定されるものではない。前記半減期は、例えば45分~70分、46分~70分、47分~70分、48分~70分、49分~70分、50分~70分、51分~70分、53分~70分、55分~70分、57分~70分、59分~70分、65分~70分、45分~65分、50分~65分、55分~65分、60分~65分、45分~60分、50分~60分、55分~60分、45分~55分、50分~55分、または60分~70分などであってもよい。また、前記半減期は、AQTGTGKTの半減期と比較して、4400%~6900%増加したものであってもよいが、これに限定されるものではない。前記増加比率は、例えば4400%~6900%、4500%~6900%、4600%~6900%、4700%~6900%、4800%~6900%、4900%~6900%、5000%~6900%、5100%~6900%、5200%~6900%、5300%~6900%、5400%~6900%、5500%~6900%、5600%~6900%、5700%~6900%、5800%~6900%、5900%~6900%、6000%~6900%、6100%~6900%、6200%~6900%、6300%~6900%、6400%~6900%、6500%~6900%、6600%~6900%、6700%~6900%、6800%~6900%、4400%~6500%、4500%~6500%、4700%~6500%、5000%~6500%、5200%~6500%、5500%~6500%、5700%~6500%、6000%~6500%、6300%~6500%、4400%~6000%、4600%~6000%、4800%~6000%、5000%~6000%、5500%~6000%、4400%~5500%、4700%~5500%、5000%~5500%、5200%~5500%、4400%~5000%、4800%~5000%、4400%~4700%、または4500%~4700%などであってもよい。
【0068】
また、本発明の一般式X-AQTGTGKTで表される化合物において、前記Xが
【化21】
である場合、前記化合物のヒト血液内での半減期は、100分以上であってもよいが、これに限定されるものではない。前記半減期は、例えば100分~150分、102分~150分、103分~150分、104分~150分、105分~150分、106分~150分、107分~150分、108分~150分、109分~150分、110分~150分、111分~150分、112分~150分、115分~150分、117分~150分、120分~150分、123分~150分、125分~150分、127分~150分、130分~150分、132分~150分、135分~150分、137分~150分、140分~150分、142分~150分、145分~150分、147分~150分、148分~150分、100分~140分、102分~140分、104分~140分、106分~140分、108分~140分、120分~140分、125分~140分、130分~140分、135分~140分、100分~130分、102分~130分、105~130分、110分~130分、115分~130分、120分~130分、125分~130分、100分~120分、105分~120分、110分~120分、115分~120分、100分~110分、105分~110分、または100分~105分などであってもよい。また、前記半減期は、AQTGTGKTの半減期と比較して、9900%~14900%増加したものであってもよいが、これに限定されるものではない。前記増加比率は、例えば9900%~14900%、10000%~14900%、10100%~14900%、10200%~14900%、10300%~14900%、10400%~14900%、10500%~14900%、10700%~14900%、11000%~14900%、11500%~14900%、12000%~14900%、12500%~14900%、13000%~14900%、13500%~14900%、14000%~14900%、14500%~14900%、9900%~12000%、10000%~12000%、10200%~12000%、10500%~12000%、10700%~12000%、11000%~12000%、11500%~12000%、11700%~12000%、9900%~11000%、10000%~11000%、または9900%~10000%などであってもよい。
【0069】
一方、本発明による薬学的組成物は、有効成分以外に、薬学的組成物として製造するために通常使用する適切な担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含んでもよい。また、通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態で剤形化して使用できる。
【0070】
前記組成物に含まれ得る担体、賦形剤および希釈剤としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾアート、プロピルヒドロキシベンゾアート、タルク、マグネシウムステアレート、および鉱物油などがある。前記組成物を製剤化する場合には、通常使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を使用して調製することができる。
【0071】
本発明による薬学的組成物は、薬学的に有効な量で投与される。本発明において、「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的なベネフィット/リスクの割合で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量レベルは、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路および排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素およびその他医学分野によく知られた要素によって決定されることができる。好ましい投与量は、個体の状態および体重、疾患の程度、薬物形態、投与経路および期間によって選択されることができる。具体的な例として、前記薬学的組成物は、0.001~1000mg/kg、0.01~100mg/kg、0.01~10mg/kg、0.1~10mg/kgまたは0.1~1mg/kgの量を1日に1回~数回に分けて投与することができる。
【0072】
上記した要素を全部考慮して副作用なしで最小限の量で最大効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって決定されることができる。具体的に、本発明による薬学的組成物の有効量は、患者の年齢、性別、状態、体重、体内での活性成分の吸収度、不活性率および排泄速度、疾患の種類、併用される薬物によって変わることができる。
【0073】
本発明の薬学的組成物は、個体に多様な経路で投与することができる。例えば、経口投与、鼻腔内投与、経気管支投与、動脈注射、静脈注射、皮下注射、筋肉注射または腹腔内注射によって投与することができる。一日投与量は、一日に1回~数回に分けて投与することができる。
【0074】
本発明の他の様態として、本発明は、下記の段階を含むオリゴペプチドX-AQTGTGKTの製造方法を提供することができる:
【0075】
(前記Aは、アラニン(alanine)であり、Qは、グルタミン(glutamine)であり、Tは、スレオニン(threonine)であり、Gは、グリシン(glycine)であり、Kは、リシン(lysine)であり、
前記Xは、
【化22】
からなる群から選ばれた一つである。)
(1)TGおよびKTをそれぞれ合成する段階;
(2)前記TGとKTを結合してTGKTを合成する段階;
(3)前記TGKTのN末端にTGを結合してTGTGKTを合成する段階;
(4)前記TGTGKTのN末端にQを結合してQTGTGKTを合成する段階;および
(5)前記QTGTGKTのN末端にアラニン誘導体(X-A)を結合してX-AQTGTGKTを合成する段階。
【実施例
【0076】
本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味と概念と解釈されるべきである。
【0077】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、ただ本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【0078】
[実施例]
実験方法
1.CTG(CellTiter-Glo Luminescent)分析
本発明によるAQTGTGKTアナログ化合物をがん細胞株に処理した後、CTG分析を通じて細胞の増殖程度を測定した。具体的に、96-wellプレートに各well当たり5×10/100μlの細胞をシーディング(seeding)し、24時間培養した後、本発明によるAQTGTGKTアナログ7種をそれぞれトランスフェクション(transfection)した。48時間経過後、CellTiter-Glo(Promega Co.,米国)試薬を細胞培養液と同量で混合し、2分間回転撹拌器(orbital shaker)で反応させた。室温で10分間反応させた後、ルミノメーター(luminometer;GloMax,Promega)を用いて発光シグナルを測定した。
【0079】
2.MTT(tetrazolium)分析
本発明によるAQTGTGKTアナログ化合物をがん細胞株に処理した後、MTT分析を通じて細胞の増殖程度を測定した。具体的に、96-wellプレートに各well当たり5×10/100μlの細胞を分注し、24時間培養した後、本発明によるAQTGTGKTアナログ7種をそれぞれ導入した。72時間経過後、CellTiter-96(Promega Co.,米国)試薬を各well当たり10μlずつ添加し、5%CO、37℃で反応させた。3時間経過後、分光光度計(spectrophotometer;SPECTROstarNano,BMG)を用いて490nmで吸光度を測定した。
【0080】
3.肺がん動物モデル
H1975細胞を4×10cells/mouseの濃度で150μlずつマウスの脇腹に皮下注射で1回接種した。接種完了後、形成されたtumor massのvolumeが70~130mmに到達したことを確認した後、無作為群分離を実施した。試験物質は、3日間隔で5回、2日間隔で5回尾静脈投与した。
H820細胞を5×10cells /mouseの濃度でmatrigelと1:1の割合で200μlずつマウスの脇腹に皮下注射で1回接種した。接種完了後、形成されたtumor massのvolumeが70~130mm3に到達したことを確認した後、無作為群分離を実施した。試験物質は、毎日14回尾静脈投与した。
【0081】
4.乳がん動物モデル
乳がん細胞株であるHCC1806細胞を5×10 cells/mouseの濃度で、matrigelと1:1の割合で200μlずつマウスの脇腹に皮下注射で1回接種した。接種完了後、形成された腫瘍の体積が70~130mmに到達したことを確認し、無作為群分離を実施した。試験物質は、10mpkの濃度で2日間隔7回尾静脈投与し、投与開始日を1日に設定した。腫瘍の体積は、週2回測定し、長軸径と短軸径を測定して体積を算出し、同時に個体の絶対重量を測定した。
【0082】
5.大腸がん動物モデル
CAGE遺伝子の発現を誘導したCT26細胞株を1×10 cells/mouseの濃度でmatrigel 1:1で200μlずつマウスの脇腹に皮下注射で1回接種した。接種完了後、形成された腫瘍の体積が70mm3に到達したことを確認し、無作為群分離を実施した。試験物質は、10mpkの濃度で2日間隔7回尾静脈投与し、投与開始日を1日に設定した。腫瘍の体積は、週2回測定し、長軸径と短軸径を測定して体積を算出し、同時に個体の絶対重量を測定した。
【0083】
実施例1:AQTGTGKTアナログ(analog)の製造
1.1.反応一般
すべての反応は、別途の言及がない限り、さらなる反応を行うことなく、商業的に販売される物質および試薬を用いて行った。反応は、シリカゲルプレート(Keiselgel 60 F254,Merck)および/または超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)上の薄膜クロマトグラフィー(TLC)によりモニタリングした。TLCプレート上の斑点の可視化は、UV光によって、そして、過マンガン酸カリウムおよび/またはニンヒドリンでTLCプレートを染色し、ヒートガン(heat gun)で炭化させることによって達成された。すべての生成物は、H NMRおよび/またはUPLC-MSを用いて特定した。
【0084】
1.2.Boc/OBn-TGの合成
まず、官能基がベンジルで保護されたTGを下記の反応式1によって合成した。以下、各反応式で化合物は、下記に併記したアラビア数字(n)によって化合物nと称することとする。
【0085】
[反応式1]
【化23】
【0086】
具体的に、BocThr(OBn)OH(化合物1;25.0g、80.8mmol、1.0当量)およびNOSu(9.77g、84.8mmol、1.05当量)をジクロロメタン(150mL)に溶解させた。混合物を0℃に冷却させ、不活性雰囲気下に置いた。その後、前記混合物に1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(16.3g、84.8mmol、1.05当量)を添加した。混合物を室温に加温し、20時間撹拌した。次に、混合物をNHCl(飽和水性)で洗浄し、相を分離した。有機層をMgSOで乾燥させ、減圧下に濃縮して、生成物として淡黄色のオイル(35.7g、>100%収率、定量的収率を仮定)の化合物2を収得した。
【0087】
前記化合物2のBocThr(OBn)OSu(32.8g、80.8mmol、1.0当量)を1,4-ジオキサン(200mL)に溶解させ、蒸留水(100mL)中のグリシンナトリウム塩水和物溶液を一度に添加した。室温で6時間撹拌した後、混合物をエチルアセテートおよびクエン酸(飽和水性)に分画した。有機層をMgSOで乾燥させ、ろ過した後、減圧下で濃縮した。粗物質を水(0.1%ギ酸)溶離液中、30~70%アセトニトリル(0.1%ギ酸)でC18(400g)カラムで精製した。所望の分画を合わせ、エチルアセテートおよびNaHCO(飽和水性)に分画した。有機層をMgSOで乾燥させ、ろ過した後、減圧下に生成物として淡黄色のガム(21.9g、74%収率)の化合物3を収得した。
【0088】
1.3.CBz/OBn/COBn-KTの合成
OH官能基がベンジルで保護されたKTを下記の反応式2によって合成した。
【0089】
[反応式2]
【化24】
【0090】
具体的に、BocLys(CBz)OH(化合物4;27.0g、70.9mmol、1.0当量)およびNOSu(9.80g、85.1mmol、1.2当量)をジクロロメタン(128mL)に溶解させた。混合物を0℃に冷却させ、不活性雰囲気下に置いた。その後、前記混合物に1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドヒドロクロリド(16.3g、85.1mmol、1.05当量)を添加した。混合物を室温に加温し、20時間撹拌した。次に、混合物をNHCl(飽和水性)で洗浄し、相を分離した。有機層をMgSOで乾燥させ、減圧下に濃縮して、生成物として淡黄色のオイル(36.7g、>100%収率、定量的収率と仮定)の化合物5を収得した。
【0091】
次に、前記化合物5(BocLys(Cbz)OSu;36.7g、70.9mmol、1.0当量)およびThr(OBn)OBn.HCl(25.0g、74.4mmol、1.05当量)を室温で1,4-ジオキサン(477mL)に溶解させた。前記溶液に蒸留水(326mL)中のNaHCO(6.85g、81.5mmol、1.15当量)の溶液を添加した。以後、生成された混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物をエチルアセテートで希釈し、10%クエン酸(水性)および塩水で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、ろ過した後、減圧下で濃縮して、生成物として黄色の油性固体55.9g(>100%収率、定量的収率と仮定)の化合物6を収得した。
【0092】
最後に、前記化合物6(BocLys(Cbz)Thr(OBn)OBn;55.9g、70.9mmol、1.00当量)を1,4-ジオキサン(360mL)に溶解させ、1,4-ジオキサン(177mL)中の4N HClを添加した。混合物を室温で一晩中撹拌した。その後、NaHCOの飽和水溶液をpH値が8になるまで添加した。前記溶液をエチルアセテートで抽出して、生成された有機溶液をNaSOで乾燥させた後、ろ過した後、減圧下で濃縮して、生成物として黄色の油性固体(38.7g、97%収率)の化合物7を収得した。
【0093】
1.4.CBz/OBn/OBn/COBn-TGKTの合成
前記1.2.および1.3.で合成したTGとKTを下記の反応式3によって結合してTGKTを合成した。
【0094】
[反応式3]
【化25】
【0095】
より具体的に、ジクロロメタン(50mL)中のBocThr(OBn)GlyOH(化合物3;5.61g、15.3mmol、1.00当量)および化合物8(Lys(Cbz)Thr(OBn)OBn;10.0g、15.3mmol、1.0当量)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.90mL、33.7mmol、2.2当量)を添加した。混合物を室温で不活性雰囲気下に撹拌し、HATU(7.00g、18.4mmol、1.20当量)を添加した。生成された混合物を2時間撹拌した後、NHCl(飽和水性)で洗浄し、次いで、NaHCO(飽和水性)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、ろ過した後、減圧下に濃縮して、生成物として淡い橙色の油性固体(25.0g、>100%収率、定量的収率と仮定)の化合物9を収得した。
【0096】
前記収得したBocThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物9;以前の段階から取った13.9g、15.3mmol、1.0当量)を窒素下に室温で1,4-ジオキサン(150mL)に溶解させた。この溶液に1,4-ジオキサン(20mL)中の4N HClを添加した。前記混合物は、室温で20時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、水(0.1%ギ酸)溶離液中、20%アセトニトリル(0.1%ギ酸)を用いてC18(400g)カラムで精製した。所望の分画を合わせ、凍結乾燥させた。生成された粉末は、NaHCO(飽和水性)およびジクロロメタンに溶解させ、15分間撹拌した。層を分離させ、有機層をNaSOで乾燥させた後、ろ過した後、減圧下に濃縮させて、生成物として無色ガム(10.9g、88%収率)の化合物10を収得した。
【0097】
1.5.CBz/OBn/OBn/OBn/COBn-TGTGKTの合成
前記1.2.および1.4.で合成したTG(化合物3)とTGKT(化合物10)を下記の反応式4によって結合して、ベンジルで保護されたTGTGKTを合成した。
【0098】
[反応式4]
【化26】
【0099】
より具体的に、ジクロロメタン(100mL)中のBocThr(OBn)GlyOH(化合物3;5.10g、14.0mmol、1.05当量)およびBocThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物10;10.8g、13.3mmol、1.0当量)溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.10mL、29.3mmol、2.2当量)を添加した。混合物を室温で不活性雰囲気下に撹拌し、HATU(5.60g、14.7mmol、1.1当量)を添加した。生成された混合物を2時間撹拌し、NHCl(飽和水性)およびNaHCO(飽和水性)で洗浄した。有機層を減圧下で濃縮して、生成物として淡黄色のガム(21.4g、>100%収率、定量的収率を仮定)の化合物11を収得した。
【0100】
次いで、前記収得した化合物11(BocThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn;以前の段階で取った15.4g、13.3mmol、1.00当量)を窒素下の室温で1,4-ジオキサン(150mL)に溶解させた。この溶液に1,4-ジオキサン(50mL)中の4N HClを添加し、混合物を室温で5時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、水(0.1%ギ酸)溶離液中20%アセトニトリル(0.1%ギ酸)を用いてC18(120g)カラムで精製した。所望の分画を合わせ、半分の体積に濃縮した後、NaHCO(飽和水性)およびエチルアセテートに分画した。層を分離し、有機層をNaSOで乾燥させた後、ろ過し、減圧下に濃縮して、生成物として灰白色の固体(14.6g、>100%収率、定量的収率を仮定)の化合物12を収得した。
【0101】
1.6.CBz/OBn/OBn/OBn/COBn-QTGTGKTの合成
前記1.5.で合成した化合物12(TGTGKT)に下記反応式5によってQを追加で結合して、化合物14(QTGTGKT)を合成した。
【0102】
[反応式5]
【化27】
【0103】
より具体的に、エチルアセテート(150mL)およびN,N-ジメチルホルムアミド(25mL)中のThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物12;12.7g、12.0mmol、1.0当量)およびBocGlnOH(3.25g、13.2mmol、1.1当量)の溶液にN,N-ジイソプロピルエチルアミン(4.60mL、26.4mmol、2.2当量)を添加した。混合物を室温で不活性雰囲気下に撹拌し、HATU(5.47g、14.4mmol、1.20当量)を添加した。生成された混合物を1時間撹拌した後、NHCl(飽和水性)で洗浄した。有機層をジクロロメタンでさらに抽出した。次いで、有機層を合わせ、減圧下に濃縮させた。粗物質を水(0.1%ギ酸)中の20~100%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配を用いて400g、C18カラムで精製した。所望の分画を合わせた後、エチルアセテートおよびNaHCO(飽和水性)溶液に分画した。有機層を濃縮させ、凍結乾燥工程によって残留物を除去した。合わせた分画で合計12.9g(89%総収率)の化合物13を収得した。
【0104】
前記収得した化合物13(BocGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn;7.00g、5.40mmol、1.00当量)を窒素下に室温で1,4-ジオキサン(150mL)に溶解させた。この溶液に1,4-ジオキサン(43.5mL)中の4N HClを添加した。混合物を室温で20時間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮し、水/アセトニトリル(2/1)溶液を用いて凍結乾燥させた。最終的に淡黄色の粉末(6.36g、96%収率)の化合物14を分離した。
【0105】
1.7.AQTGTGKTアナログの合成
4-PhPh-AQTGTGKTを除いた残りの6種のアナログは、前記反応式5の最終生成物である化合物14および下記反応式6の生成物である化合物17nを下記反応式7によって結合させて合成した。
【0106】
[反応式6]
【化28】
【0107】
[反応式7]
【化29】
【0108】
前記反応式7によって純度90%以上の3-PhPh-AQTGTGKT 2.9mg、純度89%の4-MeOPh-AQTGTGKT 7.0mg、純度95%以上の2-PhPh-AQTGTGKT 22.7mg、純度90%以上のPh-AQTGTGKT 23.2mg、および純度85%のNaphthyl-AQTGTGKT 23.2mgを最終的に収得した。
【0109】
以下、それぞれのアナログ合成過程について具体的に説明する。
【0110】
1.7.1.3-PhPh-AQTGTGKTの合成
3-PhPh-AQTGTGKT(化合物19-1)は、下記反応式8によって収得した化合物17-1を前記化合物14と反応式9によって反応させて、最終目的化合物である3-PhPh-AQTGTGKTを合成した。
【0111】
[反応式8]
【化30】
【0112】
より具体的に、H-Ala-OBzl.HCl(388mg、1.80mmol、1.2当量)をエチルアセテート(10mL)に懸濁させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(653μL、3.75mmol、2.5当量)を添加した。室温で5分間撹拌した後、HATU(855mg、2.25mmol、1.5当量)および[1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸(297mg、1.50mmol、1当量)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をエチルアセテートで希釈した後、NHCl(飽和水性)、NaHCO(飽和水性)および塩水で洗浄した。収得した有機物を乾燥させ(NaSO)、ろ過した後、減圧下に濃縮させた。残留物は、25gカラムでヘプタン中の2~40%エチルアセテート勾配で精製して、無色固体(493mg、91%収率)の化合物16-1を収得した。
【0113】
次いで、最小量の水で濡らした10%Pd/C(49mg)をメタノール(30mL)中の化合物16-1(3-PhPh-AlaOBn;493mg、1.37mmol)溶液に添加した。前記混合物を水素雰囲気(バルーン)下で2時間撹拌した。混合物は、セライトパッドを通じてろ過させ、メタノールおよびエチルアセテートで洗浄した。収得したろ液は、減圧下に濃縮させて、無色バブル(337mg、91%収率)の化合物17-1を収得し、これを下記反応式9によって化合物14と反応させた。
【0114】
[反応式9]
【化31】
【0115】
より具体的に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(97.0μL、0.556mmol、2.2当量)およびジクロロメタン(20mL)中のGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物14;300mg、0.253mmol、1当量)および3-PhPh-AlaOH(化合物17-1;68.0mg、0.253mmol、1当量)懸濁液にHATU(106mg、0.278mmol、1.1当量)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、反応混合物をNaHCO(飽和水性)で洗浄した。有機物を減圧下で濃縮し、残留物を水(0.1%ギ酸)中の40~100%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配で60g、C18カラムで精製して、凍結乾燥を経た後、無色固体(140mg、38%収率)の化合物18-1を収得した。
【0116】
次いで、10%Pd/C(85.0mg)を2M塩酸(水性、0.5mL)および2-プロパノール(10mL)中の3-PhPh-AlaGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物18-1;85.0mg、59.1μmol)溶液に添加した。前記混合物を水素雰囲気(バルーン)下で4.5時間撹拌した後、混合物を0.45μmシリンジフィルターを通じてろ過した。収得したろ液を減圧下に濃縮し、残留物を凍結乾燥した。その後、水(0.1%ギ酸)中の5~50%アセトニトリル(0.1%ギ酸)を用いて60g、C18カラムで物質を精製し、凍結乾燥して、無色固体(2.9mg、5%収率)の目的化合物19-1を収得した。
【0117】
化合物19-1(3-PhPh-AQTGTGKT)のH NMRデータは、次のように測定された:
H NMR(400MHz;D2O):δ=8.01-7.99(m、1H)、7.86-7.82(m、1H)、7.75-7.66(m、3H)、7.55(t、J 7.7Hz、1H)、7.49(t、J 7.5Hz、2H)、7.43-7.38(m、1H)、4.48-4.24(m、5H)、4.23-4.12(m、3H)、4.09(d、J 3.8Hz、1H)、4.00-3.96(m、2H)、3.88(s、2H)、2.90(t、J 7.4Hz、2H)、2.35(t、J 7.5Hz、2H)、2.15-2.06(m、1H)、2.03-1.91(m、1H)、1.84-1.72(m、1H)、1.70-1.52(m、3H)、1.45(d、J 7.2Hz、3H)、1.40-1.24(m、2H)、1.15-1.05(m、9H)、16 exchangeable protons not visible。
【0118】
1.7.2.4-MeOPh-AQTGTGKTの合成
4-MeOPh-AQTGTGKT(化合物19-2)は、下記反応式10によって収得した化合物17-2を前記化合物14と反応式11によって反応させて、最終目的化合物である4-MeOPh-AQTGTGKTを合成した。
【0119】
[反応式10]
【化32】
【0120】
より具体的に、H-Ala-OBzl.HCl(425mg、1.97mmol、1.2当量)をエチルアセテート(10mL)に懸濁させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(715μL、4.11mmol、2.5当量)を添加した。室温で5分間撹拌した後、HATU(937mg、2.46mmol、1.5当量)および4-メトキシ安息香酸(250mg、1.64mmol、1当量)を添加し、前記混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物をエチルアセテートで希釈した後、NHCl(飽和水性)、NaHCO(飽和水性)および塩水で洗浄した。有機物を乾燥させ(NaSO)、ろ過した後、減圧下に濃縮させた。残留物をヘプタン中の15-50%エチルアセテート勾配で25gカラム上で精製して、無色固体(360mg、70%収率)の化合物16-2を収得した。
【0121】
次いで、最小量の水で濡らした10%Pd/C(18mg)をメタノール(15mL)中の4-OMePh-AlaOBn(化合物16-2;180mg、0.574mmol)溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で110時間撹拌した。その後、前記混合物をセライトパッドを通じてろ過し、メタノールで洗浄した。収得したろ液は、減圧下に濃縮させて、無色オイル(128mg、100%収率)の化合物17-2を収得し、これを下記反応式11によって化合物14と反応させた。
【0122】
[反応式11]
【化33】
【0123】
より具体的に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(63.0μL、0.360mmol、2.2当量)およびジクロロメタン(20mL)中のGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物14;200mg、0.164mmol、1当量)および4-OMePh-AlaOH(化合物17-2;36.6mg、0.164mmol、1当量)の懸濁液にHATU(74.5mg、0.196mmol、1.2当量)を添加した。混合物を室温で64時間撹拌し、前記反応混合物をメタノールで希釈した後、NHCl(飽和水性)、NaHCO(飽和水性)および水で洗浄した。有機物を減圧下で濃縮し、残留物を水(0.1%ギ酸)中の50~95%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配で60g、C18カラムで精製して、凍結乾燥を経た後、無色固体(113mg、50%収率)の化合物18-2を収得した。
【0124】
次いで、10%Pd/C(100mg)を2M塩酸(水性、1.0mL)および2-プロパノール(20mL)中の4-OMePh-AlaGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物18-2;108mg、77.6μmol)の溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で18時間撹拌した。前記混合物を0.45μmシリンジフィルターを通じてろ過した。収得したろ液を減圧下に濃縮させ、残留物を水に溶解させた後、凍結乾燥させた。前記乾燥された物質を水(0.1%ギ酸)中の5~30%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配を用いて30g、C18カラムで精製し、凍結乾燥して、無色固体(7.0mg、10%収率)の化合物19-2を収得した。
【0125】
化合物19-2(4-MeOPh-AQTGTGKT)のH NMRデータは、次のように測定された:
H NMR(400MHz;D2O):δ=7.76-7.71(m、2H)、7.02-6.98(m、2H)、4.42-4.28(m、5H)、4.24-4.13(m、3H)、4.09(d、J 3.9Hz、1H)、4.01-3.96(m、2H)、3.89(s、2H)、3.81(s、3H)、2.91(t、J 7.4Hz、2H)、2.34(t、J 7.6Hz、2H)、2.14-2.06(m、1H)、2.00-1.91(m、1H)、1.85-1.75(m、1H)、1.71-1.54(m、3H)、1.42(d、J 7.2Hz、3H)、1.40-1.25(m、3H)、1.16-1.07(m、8H)、16 exchangeable protons not visible。
【0126】
1.7.3.2-PhPh-AQTGTGKTの合成
2-PhPh-AQTGTGKT(化合物19-3)は、下記反応式12によって収得した化合物17-3を前記化合物14と反応式13によって反応させて、最終目的化合物である2-PhPh-AQTGTGKTを合成した。
【0127】
[反応式12]
【化34】
【0128】
より具体的に、H-Ala-OBzl.HCl(388mg、1.80mmol、1.2当量)をエチルアセテート(10mL)に懸濁させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(653μL、3.75mmol、2.5当量)を添加した。室温で5分間撹拌した後、HATU(855mg、2.25mmol、1.5当量)および[1,1’-ビフェニル]-2-カルボン酸(297mg、1.50mmol、1当量)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。前記反応混合物をエチルアセテートで希釈した後、NHCl(飽和水性)、NaHCO(飽和水性)および塩水で洗浄した。収得した有機物を乾燥させ(NaSO)、ろ過した後、減圧下に濃縮させた。残留物をヘプタン中の2~40%エチルアセテート勾配で25gカラムで精製して、無色オイル(416mg、77%収率)の化合物16-3を収得した。
【0129】
次いで、最小量の水で濡らした10%Pd/C(42mg)をメタノール(20mL)中の2-PhPh-AlaOBn(化合物16-3;416mg、1.16mmol)の溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で18時間撹拌した。その後、前記混合物をセライトパッドを通じてろ過し、メタノールで洗浄した。収得したろ液は、減圧下に濃縮させて、無色オイル(308mg、99%収率)の化合物17-3を収得し、これを下記反応式13によって化合物14と反応させた。
【0130】
[反応式13]
【化35】
【0131】
より具体的に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(63.0μL、0.360mmol、2.2当量)およびジクロロメタン(20mL)中のGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物14;200mg、0.164mmol、1当量)および2-PhPh-AlaOH(化合物17-3;44.2mg、0.164mmol、1当量)の懸濁液にHATU(74.5mg、0.196mmol、1.2当量)を添加した。混合物を室温で64時間撹拌し、前記反応混合物をメタノールで希釈した後、NHCl(飽和水性)、NaHCO(飽和水性)および水で洗浄した。有機層を減圧下に濃縮し、残留物を水(0.1%ギ酸)中の50~95%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配で60g、C18カラムで精製して、凍結乾燥を経た後、無色固体(115mg、49%収率)の化合物18-3を収得した。
【0132】
次いで、10%Pd/C(100mg)を2M塩酸(水性、1.0mL)および2-プロパノール(20mL)中の2-PhPh-AlaGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物18-3;110mg、76.5μmol)溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で18時間撹拌した。前記混合物を0.45μmシリンジフィルターを通じてろ過した。収得したろ液を減圧下に濃縮させ、残留物を水に溶解させた後、凍結乾燥した。前記乾燥した物質を水(0.1%ギ酸)中の5~50%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配で30g、C18カラムで精製し、凍結乾燥して、無色固体(22.7mg、31%収率)の化合物19-3を収得した。
【0133】
化合物19-3(2-PhPh-AQTGTGKT)のH NMRデータは、次のように測定された:
H NMR(400MHz;D2O):δ=7.56-7.48(m、2H)、7.44-7.33(m、7H)、4.38-4.26(m、4H)、4.25-4.13(m、4H)、4.08(d、J 3.9Hz、1H)、4.00-3.96(m、2H)、3.89(s、2H)、2.91(t、J 7.5Hz、2H)、2.25(t、J 7.5Hz、2H)、2.09-2.01(m、1H)、1.93-1.77(m、2H)、1.72-1.56(m、3H)、1.41-1.29(m、2H)、1.18(d、J 7.2Hz、3H)、1.12(d、J 5.6Hz、6H)、1.08(d、J 6.4Hz、3H)、16 exchangeable protons not visible。
【0134】
1.7.4.Ph-AQTGTGKTの合成
Ph-AQTGTGKT(化合物19-4)は、下記反応式14によって収得した化合物17-4を前記化合物14と反応式15によって反応させて、最終目的化合物であるPh-AQTGTGKTを合成した。
【0135】
[反応式14]
【化36】
【0136】
より具体的に、H-Ala-OBzl.HCl(388mg、1.80mmol、1.2当量)をエチルアセテート(10mL)に懸濁させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(653μL、3.75mmol、2.5当量)を添加した。室温で5分間撹拌した後、HATU(855mg、2.25mmol、1.5当量)および安息香酸(183mg、1.50mmol、1当量)を添加し、混合物を室温で18時間撹拌した。前記反応混合物をエチルアセテートで希釈した後、NHCl(飽和水性)、NaHCO(飽和水性)および塩水で洗浄した。収得した有機物を乾燥させ(NaSO)、ろ過した後、減圧下に濃縮させた。残留物をヘプタン中の2-50%エチルアセテート勾配で25gカラムで精製して、無色オイル(375mg、88%収率)の化合物16-4を収得した。
【0137】
次いで、最小量の水で濡らした10%Pd/C(38mg)をメタノール(30mL)中のPh-Ala-OBn(化合物16-4;375mg、1.32mmol)の溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で4時間撹拌した。その後、前記混合物をセライトパッドを通じてろ過し、メタノールで洗浄した。収得したろ液は、減圧下に濃縮させて、無色ガラス(glass;254mg、99%収率)の化合物17-4を収得し、これを下記反応式15によって化合物14と反応させた。
【0138】
[反応式15]
【化37】
【0139】
より具体的に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(97.0μL、0.556mmol、2.2当量)およびジクロロメタン(20mL)中のGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物14;300mg、0.253mmol、1当量)およびPh-Ala-OH(化合物17-4;49.0mg、0.253mmol、1)の懸濁液にHATU(106mg、0.278mmol、1.1当量)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、前記反応混合物をNaHCO(飽和水性)で洗浄した。有機物を減圧下に濃縮し、収得した残留物を水(0.1%ギ酸)中の40~100%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配で60g、C18カラムで精製して、凍結乾燥を経た後、無色固体(200mg、58%)の化合物18-4を収得した。
【0140】
次いで、10%Pd/C(110mg)を2M塩酸(水性、1.0mL)および2-プロパノール(20mL)中のPh-AlaGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物18-4;110mg、80.8μmol)溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で18時間撹拌した。前記混合物を0.45μmシリンジフィルターを通じてろ過した。収得したろ液を減圧下に濃縮させ、残留物を水に溶解させた後、凍結乾燥させた。前記乾燥した物質を水(0.1%ギ酸)中の5~50%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配を用いて60g、C18カラムで精製し、凍結乾燥して、無色固体(23.2mg、33%収率)の化合物19-4を収得した。
【0141】
化合物19-4(Ph-AQTGTGKT)のH NMRデータは、次のように測定された:
H NMR(400MHz;D2O):δ=7.74-7.70(m、2H)、7.58-7.53(m、1H)、7.48-7.43(m、2H)、4.45-4.34(m、3H)、4.32-4.27(m、2H)、4.25-4.14(m、3H)、4.11(d、J 3.8Hz、1H)、4.00-3.96(m、2H)、3.89(s、2H)、2.91(t、J 7.4Hz、2H)、2.34(t、J 7.6Hz、2H)、2.14-2.06(m、1H)、2.01-1.91(m、1H)、1.85-1.76(m、1H)、1.71-1.56(m、3H)、1.43(d、J 7.3Hz、3H)、1.40-1.30(m、2H)、1.16-1.07(m、9H)、16 exchangeable protons not visible。
【0142】
1.7.5.Naphthyl-AQTGTGKTの合成
Naphthyl-AQTGTGKT(化合物19-5)は、下記反応式16によって収得した化合物17-5を前記化合物14と反応式17によって反応させて、最終目的化合物であるNaphthyl-AQTGTGKTを合成した。
【0143】
[反応式16]
【化38】
【0144】
より具体的に、H-Ala-OBzl.HCl(388mg、1.80mmol、1.2当量)をエチルアセテート(10mL)に懸濁させ、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(653μL、3.75mmol、2.5当量)を添加した。室温で5分間撹拌した後、HATU(855mg、2.25mmol、1.5当量)および2-ナフトエ酸(258mg、1.50mmol、1当量)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌した。前記反応混合物をエチルアセテートで希釈した後、NHCl(飽和水性)、NaHCO(飽和水性)および塩水で洗浄した。収得した有機物を乾燥させ(NaSO)、ろ過した後、減圧下に濃縮させた。残留物をヘプタン中の2-40%エチルアセテート勾配で25gカラムで精製して、無色固体(385mg、77%収率)の化合物16-5を収得した。
【0145】
次いで、最小量の水で濡らした10%Pd/C(39mg)をメタノール(20mL)中の2-Naphthyl-AlaOBn(化合物16-5;385mg、1.15mmol)の溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で4時間撹拌した。その後、前記混合物をセライトパッドを通じてろ過し、メタノールで洗浄した。収得したろ液は、減圧下に濃縮させて、無色固体(266mg、95%収率)の化合物17-5を収得し、これを下記反応式17によって化合物14と反応させた。
【0146】
[反応式17]
【化39】
【0147】
より具体的に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(97.0μL、0.556mmol、2.2当量)およびジクロロメタン(20mL)中のGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物14;300mg、0.253mmol、1当量)および2-Naphthyl-Ala-OH(化合物17-5;61.0mg、0.253mmol、1当量)懸濁液にHATU(106mg、0.278mmol、1.1当量)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、(飽和水性)NaHCOで洗浄した。収得した有機層を減圧下に濃縮し、残留物を水(0.1%ギ酸)中の40~100%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配で60g、C18カラムで精製して、凍結乾燥を経た後、無色固体(230mg、64%収率)の化合物18-5を収得した。
【0148】
次いで、10%Pd/C(101mg)を2M塩酸(水性、1.0mL)および2-プロパノール(20mL)中の2-Naphthyl-AlaGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物18-5;101mg、71.5μmol)溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で3時間撹拌した。前記混合物を0.45μmシリンジフィルターを通じてろ過した。収得したろ液を減圧下に濃縮させ、残留物を水に溶解させた後、凍結乾燥させた。前記乾燥した物質を水(0.1%ギ酸)中の5~40%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配で30g、C18カラム上で精製し、凍結乾燥して、無色固体(23.2mg、33%収率)の化合物19-5を収得した。
【0149】
化合物19-5(Naphthyl-AQTGTGKT)のH NMRデータは、次のように測定された:
H NMR(400MHz;D2O):δ=8.32(s、1H)、8.01-7.90(m、3H)、7.79-7.73(m、1H)、7.64-7.55(m、2H)、4.51-3.70(m、13H)、2.96-2.81(m、2H)、2.39-2.30(m、2H)、2.18-2.04(m、1H)、2.03-1.93(m、1H)、1.85-1.72(m、1H)、1.71-1.53(m、3H)、1.50-1.43(m、3H)、1.39-1.24(m、2H)、1.19-1.04(m、9H)、16 exchangeable protons not visible。
【0150】
1.8.Ac-AQTGTGKTの合成
Ac-AQTGTGKT(化合物19-6)は、下記反応式18によって行われて、最終目的化合物であるAc-AQTGTGKTを合成した。
【0151】
[反応式18]
【化40】
【0152】
より具体的に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(94.0μL、0.540mmol、2.2当量)およびジクロロメタン(30mL)中のGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物14;300mg、0.245mmol、1当量)およびAc-Ala-OH(32.1mg、0.245mmol、1当量)の懸濁液にHATU(112mg、0.294mmol、1.2当量)を添加した。混合物を室温で14時間撹拌し、前記反応混合物を(飽和水性)NH4Cl、NaHCOおよび水で洗浄した。有機層を減圧下に濃縮し、残留物を水(0.1%ギ酸)中の50~95%アセトニトリル(0.1%ギ酸)勾配で60g、C18カラムで精製した。所望の分画を合わせ、凍結乾燥して、無色固体(104mg、33%収率)の化合物18-6を収得した。
【0153】
次いで、10%Pd/C(10mg)を2M塩酸(水性、0.19mL)および2-プロパノール(5mL)中のAc-AlaGlnThr(OBn)GlyThr(OBn)GlyLys(Cbz)Thr(OBn)OBn(化合物18-6;33mg、25μmol)溶液に添加した。混合物を水素雰囲気(バルーン)下で14時間撹拌した。前記混合物を0.45μmシリンジフィルターを通じてろ過した。収得したろ液を減圧下に濃縮させ、水に溶解させた後、凍結乾燥した。前記乾燥した物質をメタノール中の0.5Mアンモニアで溶離させながら、500mg SCX-2カートリッジで精製した。所望の分画を合わせ、減圧下に濃縮した後、凍結乾燥して、無色固体(7.6mg、37%収率)の化合物19-6を収得した。
【0154】
化合物19-6(Ac-AQTGTGKT)のH NMRデータは、次のように測定された:
H NMR(400MHz;D2O):δ=4.40-4.33(m、2H)、4.32-4.27(m、2H)、4.24-4.12(m、4H)、4.08(d、J 4.0Hz、1H)、4.03-3.88(m、4H)、2.92(t、J 7.2Hz、2H)、2.32(t、J 7.8Hz、2H)、2.15-2.02(m、1H)、1.99-1.88(m、4H)、1.86-1.76(m、1H)、1.74-1.55(m、3H)、1.45-1.31(m、2H)、1.29(t、J 7.4Hz、2H)、1.20-1.06(m、10H)、16 exchangeable protons not visible。
【0155】
1.9.4-PhPh-AQTGTGKTの合成
1.9.1.QTGTGKT中間体の合成
4-PhPh-AQTGTGKT合成のための中間体QTGTGKTは、下記反応式19~反応式23によって合成した:
【0156】
[反応式19]
【化41】
【0157】
[反応式20]
【化42】
【0158】
[反応式21]
【化43】
【0159】
[反応式22]
【化44】
【0160】
[反応式23]
【化45】
【0161】
前記反応式19~反応式23は、ベンジル保護基の有無を除いては、前記反応式1~反応式5とほぼ類似の過程であり、重複する説明は省略することとする。
【0162】
1.9.2.4-PhPh-AQTGTGKTの合成
前記反応式23で収得した化合物31は、下記反応式24で合成されたアラニン誘導体と反応式25によって結合されて、最終生成物4-PhPh-AQTGTGKTを収得した。
【0163】
[反応式24]
【化46】
【0164】
[反応式25]
【化47】
【0165】
また、前記反応式24および反応式25は、前述した反応式とほぼ類似の過程によって進行されたところ、重複する説明は省略することとする。最終的に無色固体(583mg、68%収率)の化合物36を収得した。
【0166】
化合物36(4-PhPh-AQTGTGKT)のH NMRデータは、次のように測定された:
H NMR(400MHz;D2O):δ=7.85(d、J 8.8Hz、2H)、7.77(d、J 8.8Hz、2H)、7.70(d、J 7.2Hz、2H)、7.49(t、J 7.2Hz、2H)、7.42(t、J 7.1Hz、1H)、4.34-4.04(m、6H)、4.07(d、J 3.6Hz、1H)、3.93(d、J 2.0Hz、2H)、2.82(t、J 7.0Hz、2H)、1.82-1.67(m、1H)、1.66-1.55(m、1H)、1.54-1.44(m、2H)、1.37-1.22(m、2H)、1.18(d、J 6.4Hz、3H)、1.06(t、J 6.5Hz、3H)、10 exchangeable protons not visible。
【0167】
1.10.化合物の確認
前記製法によって収得したAQTGTGKTアナログ7種は、H NMRおよびUPLC-MS(ultraperformance liquid chromatography-mass spectrometry)技法で分析して、化学構造を確認した。分析結果は、図1図7に示し、化合物は、表1に整理した。
【0168】
【表1】

【0169】
実施例2:AQTGTGKTアナログの抗がん効果の確認
2.1.肺がん細胞活性抑制効果
前記実験方法で記述したCTG分析方法によって肺がん細胞株H1299にAQTGTGKTアナログを100μMの濃度で48時間処理したり、肺がん細胞株H820またはH1975にAQTGTGKTアナログを10μMの濃度で72時間処理した後、各アナログの細胞毒性を比較した。
【0170】
その結果、図8に示されたように、H1299細胞株に4-PhPh-AQTGTGKTを処理した場合には、対照群(AQTGTGKT)と比較して、細胞の活性が約10%減少し、Ac-AQTGTGKTは4.2%、3-PhPh-AQTGTGKTは15%、4-MeOPh-AQTGTGKTは12%、2-PhPh-AQTGTGKTは20%、Ph-AQTGTGKTは18%、Naphthyl-AQTGTGKTは14%の細胞活性抑制効果を示した。
【0171】
H1975細胞株の場合、図9に示されたように、Ac-AQTGTGKTを処理した場合には、対照群(AQTGTGKT)と比較して、細胞の活性が約16%減少し、3-PhPh-AQTGTGKTは33%、4-MeOPh-AQTGTGKTは4%、2-PhPh-AQTGTGKTは3%の細胞活性抑制効果を示した。
【0172】
また、H820細胞株の場合、図10に示されたように、3-PhPh-AQTGTGKTを処理した場合には、対照群(AQTGTGKT)と比較して、細胞の活性が約12%減少し、4-MeOPh-AQTGTGKTは10%の細胞活性抑制効果を示した。
【0173】
このような結果は、前記アミド化アナログが肺がん細胞の分裂を非常に効果的に抑制できることを示す。
【0174】
2.2.乳がん細胞の活性および増殖抑制効果
(1)乳がん細胞の活性抑制効果
前記実験方法で記述したCTG分析方法によって乳がん細胞株MDA-MB-231にAQTGTGKTアナログを100μMの濃度で48時間処理した後、細胞内のATP量を測定することによって、細胞の活性を比較した。
【0175】
その結果、図11aに示されたように、4-PhPh-AQTGTGKTを処理した場合には、対照群(AQTGTGKT)と比較して、細胞の活性が約30%減少効果を示し、乳がん細胞の分裂を抑制するのに卓越した効果があることを立証した。
【0176】
(2)乳がん細胞の成長および増殖能抑制効果
前記実験方法で記述したMTT分析方法によって乳がん細胞株にAQTGTGKTアナログを処理して、細胞増殖抑制効果を比較した。乳がん細胞株としてHCC1937を用いた。
【0177】
HCC1937細胞株にAc-AQTGTGKT、3-PhPh-AQTGTGKT、4-MeOPh-AQTGTGKT、2-PhPh-AQTGTGKT、Ph-AQTGTGKT、Naphtyl-AQTGTGKTを100μMの濃度で処理し、72時間後に細胞増殖抑制効果を比較した。その結果、図11bに示されたように、Ac-AQTGTGKT、3-PhPh-AQTGTGKT、4-MeOPh-AQTGTGKT、2-PhPh-AQTGTGKT、Ph-AQTGTGKT、およびNaphtyl-AQTGTGKTは、対照群(AQTGTGKT)と比較して、細胞増殖をそれぞれ約11.1%、17.1%、14.3%、15.9%、13.6%、および9.5%抑制したことが示された。
【0178】
前記実験結果は、本発明によるAQTGTGKTアナログが乳がんに対して優れた抗がん効果を発揮することを示す。
【0179】
2.3.血液がん細胞の成長および増殖能抑制効果
前記実験方法で記述したMTT分析方法によって血液がん細胞株にAQTGTGKTアナログを処理して細胞毒性を比較した。血液がん細胞株としてJurkat clone E6-1を用いた。
【0180】
Jurkat clone E6-1に4-PhPh-AQTGTGKT、Ac-AQTGTGKT、3-PhPh-AQTGTGKT、4-MeOPh-AQTGTGKT、2-PhPh-AQTGTGKT、Ph-AQTGTGKT、およびNaphtyl-AQTGTGKTをそれぞれ10μMの濃度で処理し、48時間後に細胞増殖抑制効果を比較した。その結果、図12に示されたように、4-PhPh-AQTGTGKT、Ac-AQTGTGKT、3-PhPh-AQTGTGKT、4-MeOPh-AQTGTGKT、2-PhPh-AQTGTGKT、Ph-AQTGTGKT、およびNaphtyl-AQTGTGKTは、対照群(AQTGTGKT)と比較して、細胞増殖をそれぞれ約4.8%、7.9%、6.4%、4%、6.7%、10.2%、および10.4%抑制したことが示された。
【0181】
上記のような結果は、本発明によるAQTGTGKTアナログが血液がん細胞に対して優れた抗がん効果があることを示す。
【0182】
2.4.膵臓がん細胞の成長および増殖能抑制効果
前記実験方法で記述したMTT分析方法によって膵臓がん細胞株CFPAC-1にAQTGTGKTアナログを10μMの濃度で72時間処理して、細胞毒性を比較した。
【0183】
その結果、図13に示されたように、4-PhPh-AQTGTGKTを処理した場合には、対照群(AQTGTGKT)と比較して、細胞の活性が約12%減少し、3-PhPh-AQTGTGKTは2%、4-MeOPh-AQTGTGKTは6%、Ph-AQTGTGKTは3%、Naphthyl-AQTGTGKTは3%の細胞活性抑制効果を示した。
【0184】
上記のような結果は、本発明によるAQTGTGKTアナログが膵臓がん細胞に対する優れた抗がん効果があることを示す。
【0185】
2.5.大腸がん細胞の成長および増殖能抑制効果
前記実験方法で記述したMTT分析方法によって大腸がん細胞株HT29にAQTGTGKTアナログを50μMの濃度で72時間処理して、細胞毒性を比較した。
【0186】
その結果、図14に示されたように、4-PhPh-AQTGTGKTを処理した場合には、対照群(AQTGTGKT)と比較して、細胞の増殖が約8%減少し、Ac-AQTGTGKTは58%、3-PhPh-AQTGTGKTは59%、4-MeOPh-AQTGTGKTは48%、2-PhPh-AQTGTGKTは7%、Ph-AQTGTGKTは40%、Naphthyl-AQTGTGKTは58%の細胞増殖抑制効果を示した。上記のような結果は、本発明によるAQTGTGKTアナログが大腸がん細胞に対する優れた抗がん効果があることを示す。
【0187】
2.6.肺がん細胞を接種した動物モデルにおける腫瘍成長抑制効果
前記実験方法で記述した動物実験分析方法によって肺がん細胞株H820が移植されたヌードマウスにAQTGTGKTアナログを10mpkの用量で3日間隔で5回、2日間隔で5回、合計で10回処理して、腫瘍の成長を比較した。
【0188】
その結果、図15に示されたように、H820肺がん細胞株を移植した後、3-PhPh-AQTGTGKTを処理した場合には、対照群(AQTGTGKT)と比較して、腫瘍の成長が約16.5%減少し、2-PhPh-AQTGTGKTは27%、Ph-AQTGTGKTは20%、Naphthyl-AQTGTGKTは26%の腫瘍成長の抑制効果を示した。
【0189】
また、H1975肺がん細胞を移植したヌードマウスにAQTGTGKTアナログを10mpkの用量で14日間処理して、腫瘍の成長を比較した。
【0190】
その結果、図16に示されたように、3-PhPh-AQTGTGKTを処理した場合には、対照群(AQTGTGKT)と比較して、腫瘍の成長が約16.5%減少して、腫瘍成長の抑制効果を示した。
【0191】
総合的に、上記のような結果は、肺がん細胞を移植した動物モデルにおいて本発明の化合物に優れた抗がん効果があることを示す。
【0192】
2.7.乳がん細胞を接種した動物モデルにおける腫瘍成長抑制効果
前記実験方法で記述した動物実験分析方法によって乳がん細胞株が移植された免疫不全マウスにAQTGTGKTとAQTGTGKTアナログ3種(3-PhPh-AQTGTGKT、4-MeOPh-AQTGTGKT、およびPh-AQTGTGKT)を10mpkの用量で2日間隔、合計で7回尾静脈投与して、腫瘍の成長を比較した。
【0193】
アナログ7回投与を終えて2日後である15日目に腫瘍の体積を算出した結果、AQTGTGKT投与グループは平均1884.17mm、3-PhPh-AQTGTGKT投与グループは944.70mm、4-MeOPh-AQTGTGKT投与グループは812.69mm、Ph-AQTGTGKT投与グループは1133.80mmと測定され、AQTGTGKTグループの腫瘍体積と比べて約49.86%、56.86%、39.82%と腫瘍の成長を抑制した(図17)。
【0194】
総合的に、上記のような結果は、乳がん細胞を移植した動物モデルにおいてマウスの体重には影響を及ぼさずに、本発明の化合物に優れた抗がん効果があることを示す。
【0195】
2.8.大腸がん細胞を接種した動物モデルにおける腫瘍成長抑制効果
前記実験方法で記述した動物実験分析方法によってCAGE遺伝子の発現を誘導したCT26細胞株が移植されたマウスにAQTGTGKTおよびAQTGTGKTアナログ2種(3-PhPh-AQTGTGKTおよびNaphthyl-AQTGTGKT)をそれぞれ10mpkの用量で2日間隔、合計で7回尾静脈投与して、腫瘍の成長を比較した。
【0196】
その結果、対照群(AQTGTGKT投与群)と比べて、アナログ投与グループは、10日後から腫瘍の成長が抑制されたことが示され、アナログ7回投与の翌日である14日に腫瘍の体積を算出した結果、AQTGTGKT投与グループは平均2573.07mm、3-PhPh-AQTGTGKT投与グループは平均880.35mm、Naphthyl-AQTGTGKT投与グループは平均880.35mmであることが確認された(図18)。AQTGTGKT投与グループと比較して、3-PhPh-AQTGTGKT投与グループは約65.79%、Naphthyl-AQTGTGKT投与グループは約62.04%と腫瘍の成長が抑制されたことが示された。12日および14日基準、AQTGTGKT投与グループと比較して、3-PhPh-AQTGTGKT、Naphtyl-AQTGTGKTの2種のアナログ投与グループにおいてp<0.001と統計的に有意に腫瘍の成長を抑制した。
【0197】
総合的に、上記のような結果は、CAGEの発現を誘導したCT26細胞を移植した動物モデルにおいてマウスの体重には影響を及ぼさずに、本発明の化合物に優れた抗がん効果があることを示す。
【0198】
実施例3:AQTGTGKTアナログの血液内安定性の確認
本発明によるAQTGTGKTアナログが血液内で何分間安定に存在するかを確認するために、100%ヒト血液に10μMの各化合物を入れ、0、5、10、15、30、60および120分が経過した時点で血液内残留量を測定した。
【0199】
その結果、図19図26に示されたように、AQTGTGKTの場合には、半減期が1分も経っておらず、20分以内に血液内でほとんど分解されて、残留AQTGTGKTがほとんど検出されないことが確認された。これに対し、本発明による7種のAQTGTGKTアナログは、全部顕著に向上した安定性を示したが、特に4-PhPh-AQTGTGKT、3-PhPh-AQTGTGKT、4-MeOPh-AQTGTGKT、2-PhPh-AQTGTGKT、Ph-AQTGTGKTおよびNaphthyl-AQTGTGKTの場合には、47分~105分の半減期を示し、120分が経過した後にも、20~40%が血液内残留して、高い安定性を示した。このような結果は、アミド化アナログがさらに優れた抗がん効果を示すだけでなく、より一層向上した血液内安定性を示して、標的に到達するまで分解されずに安定に存在できることを示す結果である。
【0200】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであって、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明は、新規のオリゴペプチドAQTGTGKTのアナログ化合物、これを有効成分として含むがんの予防または治療用薬学的組成物およびその製造方法に関し、前記オリゴペプチドAQTGTGKTのアナログが優れた抗がん効果を示し、ヒトの血液内で安定に存在することを確認した。したがって、本発明による薬学的組成物は、オリゴペプチドが持っている長所である抗体に比べて分子量が小さくて、免疫反応の恐れが少なく、組織内に浸透が容易であるという点に加えて、がん細胞の増殖抑制効果に非常に優れており、ヒトの血液内で安定に存在できる効果を示すので、がんを治療するのに有用な抗がん剤として使用できることが期待される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図19
図20
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【配列表】
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