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特許7610882フレキシブル電極素材及びその製造方法{FLEXIBLE ELECTRODE MATERIAL AND MANUFACTURING THEREOF}
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】フレキシブル電極素材及びその製造方法{FLEXIBLE ELECTRODE MATERIAL AND MANUFACTURING THEREOF}
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/02 20060101AFI20241226BHJP
   H01M 4/04 20060101ALI20241226BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 4/50 20100101ALI20241226BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01M4/02 A
H01M4/04 A
H01M4/48
H01M4/50
H01M4/66 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023533887
(86)(22)【出願日】2021-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 KR2021017064
(87)【国際公開番号】W WO2022131595
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0177030
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518274652
【氏名又は名称】慶尚大學校 産學協力團
(74)【代理人】
【識別番号】110002343
【氏名又は名称】弁理士法人 東和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン、 ゴンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ヨングン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 ジェヨン
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0033746(US,A1)
【文献】特開2020-047572(JP,A)
【文献】特表2016-520969(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104319108(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/84,10/00-10/39
H01G11/00-11/86
C01B32/00-32/991
C01G25/00-47/00,49/10-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンフィルム、及び、該グラフェンフィルム上に形成された針状のフリースタンディング金属酸化物を含む、亜鉛イオン電池のカソード用のフレキシブル電極素材であって、
前記金属酸化物が、α-MnO である、フレキシブル電極素材。
【請求項2】
前記グラフェンフィルムは、グラフェン又は積層された複数のグラフェンを含む、請求項1に記載のフレキシブル電極素材。
【請求項3】
前記グラフェンフィルムは、表面活性化され、表面に酸素(O)含有官能基が存在する、請求項1に記載のフレキシブル電極素材。
【請求項4】
記金属酸化物の含量は、1重量%~10重量%である、請求項1に記載のフレキシブル電極素材。
【請求項5】
前記金属酸化物の前記グラフェンフィルム表面に垂直な方向への長さは、10nm~200nmである、請求項1に記載のフレキシブル電極素材。
【請求項6】
前記金属酸化物が、前記グラフェンフィルムの表面に直接結合される、請求項1に記載のフレキシブル電極素材。
【請求項7】
バインダーフリー(binder-free)である、請求項6に記載のフレキシブル電極素材。
【請求項8】
前記電極は亜鉛イオン電池用である、請求項1に記載のフレキシブル電極素材。
【請求項9】
グラフェン及びポリビニリデンフルオライドを溶媒に溶解させて混合溶液を準備するステップと、前記混合溶液をメッシュに鋳造し、加熱してグラフェンフィルムを形成させるステップと、前記グラフェンフィルムをメッシュから分離するステップ、及び、前記グラフェンフィルムを金属酸化物前駆体溶液に浮かべた後、前記金属酸化物前駆体溶液を撹拌して、前記グラフェンフィルム上にフリースタンディング金属酸化物を形成するステップと、を含む、亜鉛イオン電池のカソード用のフレキシブル電極素材の製造方法。
【請求項10】
前記混合溶液は、ドクターブレード方式でメッシュに鋳造するものであり、
前記加熱は、50℃~150℃の温度で行われる、請求項9に記載のフレキシブル電極素材の製造方法。
【請求項11】
前記金属酸化物は、マンガン酸化物であり、
前記金属酸化物前駆体溶液は、過マンガン酸カリウム、硫酸及び脱イオン水を含む、請求項9に記載のフレキシブル電極素材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル電極素材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
亜鉛イオン電池は、亜鉛アノード、酸化物カソード、電解質、分離膜で構成され、優れた安定性、親環境性、高い比容量を有し、次世代フレキシブル携帯用エネルギー貯蔵装置として注目されている。
【0003】
特に、亜鉛は、亜鉛イオン電池の核心電極素材であって、非常に安全な材料であると同時に費用が安く、環境に優しい利点を有し、リチウム、ナトリウム、カリウムと比較して相対的に安定するだけでなく、理論容量が高く、電解質との互換性に優れ、電池の高いエネルギー密度と長寿命を実現することができる。
【0004】
亜鉛イオン電池のエネルギー貯蔵メカニズムは、充填時にカソードから亜鉛電極に亜鉛イオンの挿入及び脱離が行われ、放電時にカソードから亜鉛イオンの挿入及び脱離が行われる。
【0005】
このとき、カソードでの亜鉛イオンの貯蔵程度は、亜鉛イオン電池のエネルギー貯蔵性能を決定するのに最も重要な要素であり、適切なカソード素材を選定することは、非常に重要である。
【0006】
これに関連して、高い比容量と優れた長期安定性を有するVS、V及びVOなどのバナジウム系電極物質が研究されたことがあるが、高い費用及び毒性によって適用が困難な問題点が存在する。
【0007】
これに比べて、マンガン酸化物は、低コスト、優れた理論容量、高い作動電圧などの利点を有しており、亜鉛イオン電池用の電極素材として適した特性を示すが、バインダーと金属集電体の使用によって急激な容量低下が発生し、低いサイクリング安定性を示す。
【0008】
したがって、亜鉛イオン電池の優れたエネルギー貯蔵性能を確保しながら、容量維持率、サイクリング安定性などを向上させ得る電極素材の開発が必要である。
【0009】
前述した背景技術は、発明者が本願の開示内容を想到する過程で保有又は習得したものであり、必ずしも、本出願前に一般公衆に公開された公知技術とは限らない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上述した問題点を解決するためのものであり、本発明の目的は、亜鉛イオン電池のエネルギー貯蔵性能、容量維持率及びサイクリング安定性を向上させることができる、フレキシブル電極素材及びその製造方法を提供することである。
【0011】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及したものに制限されず、言及されていない他の課題は、以下の記載から該当分野における通常の技術者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、グラフェンフィルム、及び前記グラフェンフィルム上に形成された、フリースタンディング(free-standing)金属酸化物を含む、フレキシブル電極素材を提供する。
【0013】
一実施形態によれば、前記グラフェンフィルムは、グラフェン又は積層された複数のグラフェンを含んでもよい。
【0014】
一実施形態によれば、前記グラフェンフィルムは、表面活性化され、表面に酸素(O)含有官能基が存在するものであってもよい。
【0015】
一実施形態によれば、前記金属酸化物は、α-MnO、β-MnO、γ-MnO、δ-MnO、V及びV・nHOからなる群より選ばれる1つ以上を含んでもよい。
【0016】
前記金属酸化物の含量は、1重量%~10重量%であってもよい。
【0017】
一実施形態によれば、前記金属酸化物の前記グラフェンフィルム表面に垂直な方向への長さは、10nm~200nmであってもよい。
【0018】
一実施形態によれば、前記金属酸化物が、前記グラフェンフィルムの表面に直接結合されてもよい。
【0019】
一実施形態によれば、前記フレキシブル電極素材は、バインダーフリー(binder-free)であってもよい。
【0020】
一実施形態によれば、前記電極は、亜鉛イオン電池用であってもよい。
【0021】
本発明の他の態様は、グラフェン及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)を溶媒に溶解させて混合溶液を準備するステップと、前記混合溶液をメッシュ(mesh)に鋳造し、加熱してグラフェンフィルムを形成させるステップと、前記グラフェンフィルムをメッシュから分離するステップ、及び前記グラフェンフィルムを金属酸化物前駆体溶液に浮かべた後、前記金属酸化物前駆体溶液を撹拌するステップと、を含む、フレキシブル電極素材の製造方法を提供する。
【0022】
一実施形態によれば、前記混合溶液は、ドクターブレード方式でメッシュに鋳造するものであり、前記加熱は、50℃~150℃の温度で行われてもよい。
【0023】
一実施形態によれば、前記グラフェンフィルムをメッシュから分離するステップと、その後、前記分離されたグラフェンフィルムを表面活性化させるステップと、をさらに含んでもよい。
【0024】
一実施形態によれば、前記金属酸化物は、マンガン酸化物であり、前記金属酸化物前駆体溶液は、過マンガン酸カリウム(KMnO)、硫酸(HSO)及び脱イオン水(DIW)を含んでもよい。
【0025】
一実施形態によれば、前記撹拌は、30分~90分間行われてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によるフレキシブル電極素材は、グラフェンフィルム上にフリースタンディング金属酸化物を直接形成させることによって、エネルギー貯蔵性能、容量維持率、サイクリング安定性が向上した効果があり、柔軟性及び防水性に優れた効果がある。
【0027】
また、本発明によるフレキシブル電極素材の製造方法は、バインダー又は添加剤なしでグラフェンフィルム上に金属酸化物を選択的に成長させることによって、バインダーによる電池の容量低下、低いサイクリング安定性などの問題を解決することができ、柔軟性及び電気化学的性能に優れた電極素材を比較的簡単な方式で製造することができる利点がある。
【0028】
さらに、本発明によるフレキシブル電極素材を含む亜鉛イオン電池は、優れた電気化学的性能、安定性、柔軟性及び防水性を有することができ、水性の亜鉛イオン電池、及び、全固体の亜鉛イオン電池で両方とも実現可能な効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の製造過程を示す図である。
図2】本発明の一実施形態による電極素材の構造的形態を示す図である。
図3A】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、表面活性化されたグラフェンフィルムの曲げられた状態を示す写真である。
図3B】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、表面活性化されたグラフェンフィルムのFE‐SEM画像である。
図3C】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、実施例1のフレキシブル電極素材のFE‐SEM画像である。
図3D】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、実施例2のフレキシブル電極素材のFE‐SEM画像である。
図3E】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、実施例3のフレキシブル電極素材のFE‐SEM画像である。
図3F】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、表面活性化されたグラフェンフィルムのFE‐SEM画像である。
図3G】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、実施例1のフレキシブル電極素材のFE‐SEM画像である。
図3H】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、実施例2のフレキシブル電極素材のFE‐SEM画像である。
図3I】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像であり、実施例3のフレキシブル電極素材のFE‐SEM画像である。
図4A】本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材の断面FE-SEM画像(scale bar 500nm)である。
図4B】本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材の断面FE-SEM画像(scale bar 50nm)であり、図4Aの四角形表記部分を拡大したものである。
図5A】本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材の低解像度HR-TEM画像である。
図5B】本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材の高解像度HR-TEM画像であり、図5Aの四角形表記部分を拡大したものである。
図5C】本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材のEDSマッピング画像である。
図6A】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材のTGA結果である。
図6B】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材のXRD結果である。
図6C】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材のXPS結果である。
図6D】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材のXPS結果である。
図7A】表面活性化されたグラフェンフィルム上に商用化されたMnO粉末、PVDFバインダー、導電性カーボンブラック(Ketjen black)が鋳造された比較例と実施例1~実施例3の電極素材で製造されたコインセルの電気化学的特性を分析した結果であり、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルのNyquistプロットである。
図7B】表面活性化されたグラフェンフィルム上に商用化されたMnO粉末、PVDFバインダー、導電性カーボンブラック(Ketjen black)が鋳造された比較例と実施例1~実施例3の電極素材で製造されたコインセルの電気化学的特性を分析した結果であり、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルで、Zrealとω-1/2の関係を示すグラフである。
図7C】表面活性化されたグラフェンフィルム上に商用化されたMnO粉末、PVDFバインダー、導電性カーボンブラック(Ketjen black)が鋳造された比較例と実施例1~実施例3の電極素材で製造されたコインセルの電気化学的特性を分析した結果であり、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルのZnイオン拡散係数を示すグラフである。
図8A】比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルの電気化学的性能を示すグラフであり、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルの1.0~1.9V範囲の電位及び0.1~2.0Ag-1範囲の電流密度でレート特性(rate performance)を示すものである。
図8B】比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルの電気化学的性能を示すグラフであり、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルの1.0Ag-1の電流密度で300サイクル間の容量変化を示すグラフである。
図9】実施例2の電極素材を用いて製造されたセルのエネルギー及び電力密度をRagoneプロットによって電解質溶液を使用する他の報告されたエネルギー貯蔵装置と比較したものである。
図10】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材及びゲル電解質を使用した全固体の亜鉛イオン電池構造の概略図を示すものである。
図11A】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材及びゲル電解質を使用した全固体の亜鉛イオン電池の寿命性能及びサイクリング安定性を示すものであり、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池の1.0~1.9V範囲の電位及び0.3~1.0Ag-1範囲の電流密度でレート特性を示すものである。
図11B】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材及びゲル電解質を使用した全固体の亜鉛イオン電池の寿命性能及びサイクリング安定性を示すものであり、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池のエネルギー及び電力密度を以前に報告された全固体のエネルギー貯蔵装置と比較したRagoneプロットである。
図11C】本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材及びゲル電解質を使用した全固体の亜鉛イオン電池の寿命性能及びサイクリング安定性を示すものであり、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池の平坦な状態及び折り畳まれた状態と水の存在及び不存在の条件下で、0.5Ag-1の電流密度でサイクリング安定性を示すものである。
図12】本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池の水中及び曲げられた状態での作動如何を確認する実験写真である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付の図面を参照して、実施例を詳細に説明する。
しかし、実施例には、様々な変更が加えられるので、特許出願の権利範囲が、これらの実施例によって制限又は限定されるものではない。
実施例に対する全ての変更、均等物ないし代替物は、権利範囲に含まれると理解されるべきである。
【0031】
実施例で使用した用語は、単に説明を目的として使用されたものであり、限定しようとする意図として解釈されるべきではない。
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
本明細書において、「含む」又は「有する」などの用語は、本明細書において記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものの存在又は付加可能性を予め排除しないと理解されるべきである。
【0032】
別途の定義がない限り、技術的又は科学的な用語を含めてここで使用される全ての用語は、実施例が属する技術分野における通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同一の意味を持っている。
一般的に使用される辞書に定義されているなどの用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本出願において明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されない。
【0033】
また、添付図面を参照して説明する際に、図面符号にかかわらず、同一の構成要素は、同一の参照符号を付し、これについての重複する説明は、省略する。
実施例を説明するにあたって、関連する公知技術についての具体的な説明が、実施例の要旨を不要に濁す恐れがあると判断される場合、その詳細な説明は、省略する。
【0034】
さらに、実施例の構成要素を説明するにあたって、第1、第2、A、B、(a)、(b)などの用語を使用することができる。
これらの用語は、その構成要素を他の構成要素と区別するためのものであり、その用語によって該当構成要素の本質や順番又は順序などが限定されない。
ある構成要素が他の構成要素に「連結」、「結合」又は「接続」されると記載された場合、その構成要素は、その他の構成要素に直接的に連結又は接続され得るが、各構成要素の間にまた他の構成要素が「連結」、「結合」又は「接続」され得るとも理解されるべきである。
【0035】
いずれかの実施例に含まれた構成要素と、共通的な機能を含む構成要素は、他の実施例において同一の名称を使用して説明する。
反対の記載がない限り、いずれかの実施例に記載の説明は、他の実施例にも適用でき、重複する範囲で具体的な説明は省略する。
【0036】
本発明の一態様は、グラフェンフィルム、及び、このグラフェンフィルム上に形成されたフリースタンディング金属酸化物を含む、フレキシブル電極素材を提供する。
【0037】
本発明によるフレキシブル電極素材は、グラフェンフィルムの表面に金属酸化物がバインダーなしで結合することによって、柔軟性を有するだけでなく電気化学的性能が向上した特徴がある。
【0038】
本発明によるフレキシブル電極素材は、バインダーを含まないことで電荷移動性が向上し、前記グラフェンフィルム上にフリースタンディング金属酸化物が均一に形成されることで亜鉛イオン拡散能力が向上し得る。
【0039】
図1は、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の製造過程を示す図である。
【0040】
図1を参照すると、グラフェンフィルム上に金属酸化物である二酸化マンガン(MnO)を選択的に成長させることで、フレキシブル電極素材を得ることができる。
【0041】
図2は、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の構造的形態を示す図である。
【0042】
図2を参照すると、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材は、柔軟性を有するグラフェンフィルムが、表面に金属酸化物を均一に成長させることができる集電体及びプラットフォームの役割を果たし、グラフェンフィルム上に針状に成長した金属酸化物(MnO)が、亜鉛イオンの拡散能力及び電荷移動特性を向上させることで、高い電流密度で電池の比容量及びサイクリング安定性を向上させることができる。
【0043】
特に、本発明によるフレキシブル電極素材は、ゲル電解質を使用する全固体の電池にも適用可能な効果がある。
【0044】
前記フリースタンディング金属酸化物は、前記グラフェンフィルム表面に垂直な方向に立っている形態の金属酸化物であり、別途のバインダーや支持体なしで独立して結合されていてもよい。
【0045】
前記フリースタンディング金属酸化物は、別途のバインダー又は添加剤なしでグラフェンフィルム表面上に付着することで、バインダー又は添加剤使用による電池の急激な容量低下及びサイクリング安定性低下を抑制することができる。
【0046】
すなわち、バインダー又は添加剤の使用による副反応及び活性物質分解を防止し、イオン拡散能力及び電荷移動性を向上させることで電池の性能を向上させることができる。
【0047】
一実施形態によれば、前記フリースタンディング金属酸化物は、針状であってもよく、前記グラフェンフィルム表面に垂直方向に形成されていてもよい。
【0048】
前記フリースタンディング金属酸化物は、前記グラフェンフィルム上に均一に分布できる。
前記フリースタンディング金属酸化物の均一な分布は、亜鉛イオンの拡散能力を向上させることができる。
【0049】
一実施形態によれば、前記グラフェンフィルムは、グラフェン又は積層された複数のグラフェンを含んでもよい。
【0050】
前記グラフェンフィルムは、1つのグラフェンを含む、又は、複数のグラフェンが積層された形態であってもよい。
【0051】
前記グラフェンフィルムは、積層された複数のグラフェンを含む層状構造であることができ、これによって柔軟性を確保することができる。
【0052】
前記グラフェンフィルムは、集電体の役割を果たすことができ、化学的耐性に優れた利点がある。
【0053】
さらに、金属酸化物の電気伝導度を向上させて優れた電気化学的性能を提供し、前記フリースタンディング金属酸化物の成長を助けることができる。
【0054】
一実施形態によれば、前記グラフェンフィルムは、表面活性化され、表面に酸素(O)含有官能基が存在するものであってもよい。
【0055】
一般に、グラフェンの低い湿潤性は、水性合成中の溶液のイオンが炭素と接触することを妨げる要因として作用する。
【0056】
したがって、表面活性化、すなわち、表面機能化によって前記グラフェンフィルムの表面に酸素含有官能基を生成させ、グラフェンフィルムの湿潤性を増加させることによって、グラフェンフィルムの表面で金属酸化物が効果的に合成されることを可能にする。
【0057】
一実施形態によれば、前記表面活性化は、酸(acid)処理又は酸を使用したエッチング工程であり得る。
【0058】
酸処理又は酸を使用したエッチング工程は、酸性水溶液を使用するものであってもよい。
【0059】
前記表面活性化によって、グラフェンフィルムの表面に酸素含有官能基を形成させ、表面欠陥を発生させて前記グラフェンフィルムの表面で金属酸化物が効果的に合成されることを可能にする。
【0060】
一実施形態によれば、前記グラフェンフィルムは、不純物-フリー(Impurity-free)であってもよい。
【0061】
一実施形態によれば、前記金属酸化物は、α-MnO、β-MnO、γ-MnO、δ-MnO、V及びV・nHOからなる群より選ばれる1つ以上を含んでもよい。
【0062】
前記マンガン酸化物は、費用が安いだけでなく、理論容量が遵守し、高い作動電圧を実現できる利点を有する。
【0063】
一実施形態によれば、前記金属酸化物は、α-MnOであってもよい。
【0064】
前記α-MnOは、相対的に多くの亜鉛イオンを収容することができ、電極の比容量を高めることができる効果を実現することができる。
【0065】
一実施形態によれば、前記金属酸化物の含量は、1重量%~10重量%であってもよい。
【0066】
前記金属酸化物の含量が前記範囲未満の場合、活性物質としての効果を発現できず、前記範囲を超えると、むしろ、イオン拡散能力と電荷移動性が低下し、電気化学的性能低下を招く恐れがある。
【0067】
一実施形態によれば、前記金属酸化物のグラフェンフィルム表面に垂直な方向への長さは、10nm~200nmであってもよい。
【0068】
好ましくは、前記金属酸化物のグラフェンフィルム表面に垂直な方向への長さは、50nm~150nmであってもよく、より好ましくは、80nm~130nmであってもよく、さらに好ましくは、100nm~120nmであってもよい。
【0069】
万一、前記金属酸化物のグラフェンフィルム表面に垂直な方向への長さが前記範囲未満の場合、グラフェンフィルムの表面に空きスペースが増加することによって電気化学的性能を低下させることができ、前記範囲を超えると、金属酸化物の凝集が発生し、亜鉛イオン拡散能力及び電荷移動性を低下させるにつれて、電気化学的性能及びサイクリング安定性を低下させることができる。
【0070】
一実施形態によれば、前記金属酸化物がグラフェンフィルムの表面に直接結合されてもよい。
【0071】
前記金属酸化物は、前記グラフェンフィルムの表面上に直接合成されて成長されたものであり、別途のバインダーなしで直接結合されてもよい。
【0072】
一実施形態によれば、前記フレキシブル電極素材は、バインダーフリーであってもよい。
【0073】
すなわち、本発明によるフレキシブル電極素材は、バインダーや添加剤を含まないことで、バインダー又は添加剤による副反応及び活性物質分解を防止することができ、電極のイオン拡散能力及び電荷移動性を向上させることができる。
【0074】
一実施形態によれば、前記電極は、亜鉛イオン電池用であってもよい。
【0075】
前記亜鉛イオン電池は、水性の亜鉛イオン電池又は全固体の亜鉛イオン電池であってもよい。
【0076】
一実施形態によれば、前記電極は、亜鉛イオン電池用カソードであってもよい。
【0077】
一実施形態によれば、前記フレキシブル電極素材は、防水用電極として使用されてもよい。
【0078】
一実施形態によれば、前記フレキシブル電極は、90W/kg電力密度でエネルギー密度が390Wh/kg以上であってもよい。
【0079】
一実施形態によれば、前記フレキシブル電極は、1.0A/gの電流密度条件で300サイクル充放電後、容量維持率が82%以上であってもよい。
【0080】
本発明の他の態様は、前記フレキシブル電極素材を含むカソードと、亜鉛金属アノードと、分離膜、及び電解質と、を含む、フレキシブル亜鉛イオン電池を提供する。
【0081】
前記電解質は、溶液又はゲル状態であってもよく、ZnSOを含んでもよい。
【0082】
すなわち、本発明によるフレキシブル電極素材は、亜鉛イオン電池及び全固体の亜鉛イオン電池の両方に適用可能な特徴を有する。
【0083】
特に、柔軟性及び防水性に優れ、水中状態及び折り畳まれた状態でも優れた性能を発揮できる特徴を有する。
【0084】
本発明の他の態様は、グラフェン及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)を溶媒に溶解させて混合溶液を準備するステップと、前記混合溶液をメッシュに鋳造し、加熱してグラフェンフィルムを形成させるステップと、前記グラフェンフィルムをメッシュから分離するステップ、及び前記グラフェンフィルムを金属酸化物前駆体溶液に浮かべた後、前記金属酸化物前駆体溶液を撹拌するステップと、を含む、フレキシブル電極素材の製造方法を提供する。
【0085】
前記混合溶液を準備するステップにおいて、前記溶媒としては、有機溶媒を使用することができる。
例えば、溶媒として、N-メチル-2-ピロリドンを使用し得る。
【0086】
一実施形態によれば、前記溶解は、50℃~100℃の温度で30分~2時間行われるものである。
【0087】
一実施形態によれば、前記混合溶液は、ドクターブレード方式でメッシュに鋳造するものであり、前記加熱は、50℃~150℃の温度で行われるものである。
【0088】
前記加熱は、オーブンで50℃~150℃の温度で行われることができ、前記加熱乾燥によってグラフェンフィルムが形成できる。
【0089】
一実施形態によれば、前記グラフェンフィルムをメッシュから分離するステップと、その後、前記分離したグラフェンフィルムを表面活性化させるステップと、をさらに含んでもよい。
【0090】
前記表面活性化は、酸処理又は酸を使用したエッチング工程であってもよい。
【0091】
前記表面活性化は、10分~120分間行われることができ、好ましくは、30分~90分間行われることができる。
【0092】
前記表面活性化は、グラフェンフィルムの表面に酸素含有官能基を形成させ、湿潤性を増加させることで、混合溶液とグラフェンフィルムの炭素の間に反応を促進させ、グラフェンフィルムの表面に一部欠陥を発生させることによって、金属酸化物が効果的に成長することを可能にする。
【0093】
前記金属酸化物前駆体溶液は、目標金属酸化物を生成するための反応物質を含む溶液を意味する。
【0094】
一実施形態によれば、前記金属酸化物は、マンガン酸化物であり、前記金属酸化物前駆体溶液は、過マンガン酸カリウム(KMnO)、硫酸(HSO)及び脱イオン水(DIW)を含んでもよい。
【0095】
一実施形態によれば、前記マンガン酸化物は、下記のような反応式によって合成させることができる。
【0096】
【0097】
一実施形態によれば、前記撹拌は、30分~90分間行われてもよい。
【0098】
前記撹拌が行われる時間を調節することによって、合成される金属酸化物の大きさ及び垂直方向への長さを調節することができる。
【0099】
好ましくは、前記撹拌は、40分~80分間行われることができ、さらに好ましくは、50分~70分間行われることができる。
【0100】
前記撹拌時間は、金属酸化物が合成される反応時間であり、反応時間を調節して適切な大きさ及び長さの金属酸化物を形成させ得る。
【0101】
本発明のさらに別の態様は、前記フレキシブル電極素材又は前記製造方法によって製造されたフレキシブル電極素材を含むカソードと、亜鉛金属を含むアノードと、分離膜、及び電解質と、を含む亜鉛イオン電池を提供する。
【0102】
前記電解質は、溶液又はゲル状態であり得る。
【0103】
本発明の他の態様は、前記亜鉛イオン電池を含む、エネルギー貯蔵装置を提供する。
【0104】
前記エネルギー貯蔵装置は、全固体の装置であり得る。
【0105】
以下、実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
【0106】
但し、下記実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明の内容は、下記実施例に限定されるものではない。
【0107】
実施例.フレキシブル電極素材の製造
1)グラフェンフィルム製造
グラフェン及びポリビニリデンフルオライド(PVDF)を80℃で1時間N-メチル-2-ピロリドンに溶解させた。
【0108】
混合溶液をドクターブレード方式でステンレス鋼メッシュに鋳造し、次いで100℃のオーブンで加熱して乾燥させた。
【0109】
形成されたグラフェンフィルムをメッシュから分離した後、1M塩酸(HCl)で1時間エッチングしてグラフェンフィルムの表面を活性化した。
【0110】
2)フレキシブル電極素材の製造
表面活性化されたグラフェンフィルム(FGF)を脱イオン水で数回洗浄して乾燥させた。
表面活性化されたグラフェンフィルムを18mM過マンガン酸カリウム(KMnO)、1M硫酸(HSO)及び脱イオン水(DIW)の混合溶液に浮かべた後、溶液を80℃で30分、60分又は90分間撹拌してグラフェンフィルム上にフリースタンディング二酸化マンガン(MnO)が合成されたフレキシブル電極素材を得た。
【0111】
その後、フレキシブル電極素材を脱イオン水で洗浄して乾燥させた。
【0112】
以下では、前記撹拌時間に応じて、実施例1(30分)、実施例2(60分)、実施例3(90分)と表記する。
【0113】
実験例1.フレキシブル電極素材の形態及び構造的特性確認
実施例によって製造されたフレキシブル電極素材の形態及び構造的特性を電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)、高分解能透過電子顕微鏡(HR-TEM)、エネルギー分散分光法(EDS)によって分析した。
【0114】
また、実施例上に形成された二酸化マンガンの結晶相をX-ray回折分析法(XRD)によって分析し、組成を100℃~900℃の温度範囲で周囲大気下で熱重量分析器(TGA)によって分析した。
【0115】
化学結合状態は、X-線光電子分光法(XPS)によって分析した。
【0116】
図3は、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材の形態学的及び構造的特性を示す画像である。
【0117】
図3Aは、表面活性化されたグラフェンフィルムの曲げられた状態を示す写真である。
【0118】
図3B及び図3Fは、表面活性化されたグラフェンフィルムのFE-SEM画像である。
【0119】
図3C及び図3Gは、実施例1のフレキシブル電極素材のFE-SEM画像である。
【0120】
図3D及び図3Hは、実施例2のフレキシブル電極素材のFE-SEM画像である。
【0121】
図3E及び図3Iは、実施例3のフレキシブル電極素材のFE-SEM画像である。
【0122】
図3A図3Iを参照すると、撹拌による成長時間が長くなるほどMnOがより多く成長することが確認できる。
【0123】
実施例1の場合、短い成長時間(30分)によって空きスペースが現れ、実施例3の場合、長い成長時間(90分)によってMnOの凝集が生じた。
【0124】
これに比べて、実施例2の場合、グラフェンフィルムの表面にMnOが均一な分布で成長したことが確認できる。
【0125】
また、実施例1の場合、空きスペースが多く、小さくて曖昧な針状の粒子が比較的広い大きさの分布(22.3~81.6nm)で現れ、実施例3の場合、凝集の兆候と共に大きな針状のMnOがより広い大きさの分布(128.2~137.6nm)で現れた。
【0126】
これに比べて、実施例2の場合、空きスペースや凝集なしで表面活性化されたグラフェンの表面によく分散した明らかな針状のMnOが相対的に均一な大きさの分布(103.7~110.2nm)で現れることが確認できる。
【0127】
図4は、本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材の断面FE-SEM画像である。
【0128】
図4Aは、本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材の断面FE-SEM画像(scale bar 500nm)である。
【0129】
図4Bは、本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材の断面FE-SEM画像(scale bar 50nm)であり、図4Aの四角表記部分を拡大したものである。
【0130】
図4を参照すると、表面活性化されたグラフェンフィルム上にMnOがよく固定され、分散していることが確認できる。
【0131】
図5は、本発明の一実施形態による実施例2のフレキシブル電極素材のHR-TEM画像及びEDSマッピング画像である。
【0132】
図5Aは、実施例2のフレキシブル電極素材の低解像度HR-TEM画像である。
【0133】
図5Bは、実施例2のフレキシブル電極素材の高解像度HR-TEM画像であり、図5Aの四角表記部分を拡大したものである。
【0134】
図5A及び図5Bを参照すると、フレキシブル電極素材に形成された101.3~118.1nmの大きさの範囲の針状のMnOが確認できる。
さらに、0.69nmの格子距離を示すことが確認できるが、これは、α-MnOの(110)平面と一致するものである。
【0135】
図5Cは、実施例2のフレキシブル電極素材のEDSマッピング画像である。
【0136】
図5Cを参照すると、フレキシブル電極素材の表面にマンガン、酸素及び炭素が均一に分散していることが確認できる。
【0137】
図6は、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材のTGA、XRD及びXPS結果である。
【0138】
図6Aは、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材のTGA結果である。
【0139】
図6Aを参照すると、表面活性化されたグラフェンフィルムが100%重量損失を示すことが確認でき、これによって、グラフェンフィルムが純粋な炭素組成を有し、不純物を含まないことが分かる。
【0140】
これに比べて、実施例1~実施例3では、重量損失がそれぞれ3.2%、6.5%及び9.7%であると示されており、これは、処理時間の増加によって表面活性化されたグラフェンフィルム表面にMnOがより多く成長したことを意味する。
【0141】
図6Bは、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材のXRD結果である。
【0142】
図6Bを参照すると、表面活性化されたグラフェンフィルム及び実施例1~実施例3の両方において、黒鉛の(002)及び(004)層に該当する26.5゜及び54.6゜でピークが現れることが確認でき、これによって、グラフェンが積層されて層状構造を生成したことが確認できた。
実施例1~実施例3では、MnOの重量が10重量%未満であるため、これは、確認できなかった。
【0143】
図6C及び図6Dは、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材のXPS結果である。
【0144】
図6C及び図6Dを参照すると、654.5eV及び642.7eVでMn2pショルダーピークは、MnOに対する11.8eVの一般的なスピンエネルギー分離と一致することが確認でき、O1sスペクトルで532.6eV、531.5eV及び530.2eVにおけるピークは、それぞれ、H-O-H、水和された3価のMn-OH及び4価のMn-O-Mn結合に対応することが確認できる。
【0145】
これによって、表面活性化されたグラフェンフィルム表面にα-MnOが成功的に合成されたことが分かる。
【0146】
実験例2.フレキシブル電極素材を用いた亜鉛イオン電池の電気化学的特性評価
実施例で製造されたフレキシブル電極素材をカソード、亜鉛金属をアノード、ガラス繊維紙(glass fiber paper)を分離膜、2M硫酸亜鉛(ZnSO)を電解質で構成してCR2032型コインセルを製造した。
【0147】
前記セルを用いて、電気化学インピーダンス分光法(EIS)、循環電圧電流法(CV)によって電気化学的挙動を分析した。
【0148】
レート特性テストは、0.1、0.3、0.5、0.7、1.0、1.3、1.5及び2.0Ag-1の電流密度で1.0~1.9V(vs Zn/Zn2+)の電位範囲で行われ、長期サイクリングテストは、最大300サイクルの間、1.0Ag-1の電流密度で行われた。
【0149】
図7は、表面活性化されたグラフェンフィルム上に商用化されたMnO粉末、PVDFバインダー、導電性カーボンブラックが鋳造された比較例と実施例1~実施例3の電極素材で製造されたコインセルの電気化学的性能を分析した結果である。
【0150】
図7Aは、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルのNyquistプロットである。
ここで、高周波領域の半円と低周波領域の傾きは、電荷伝達抵抗(Rct)及びイオン拡散挙動(Warburgインピーダンス)を示す。
【0151】
図7Aを参照すると、実施例の場合、比較例よりも半円が小さく現れることが確認できるが、これは、活性物質が接近することを妨害できるバインダーがないためである。
【0152】
さらに、実施例2の場合、最も急な傾き、すなわち、最も低いWarburgインピーダンスを示し、亜鉛イオン拡散能力が最も優れていることが分かる。
【0153】
Warburgインピーダンス係数(σw)は、式1を用いて計算され、Znイオン拡散係数(D)は、式2を用いて計算された。
【0154】
【数1】
【0155】
【数2】
【0156】
ここで、Rは、バルク抵抗という全電極抵抗の類型を示し、Dは、Znイオン拡散係数、Rは、気体定数、Tは、温度、Aは、電極の面積、nは、分子当たりの電子数、Fは、ファラデー定数、Cは、Znイオンモル濃度である。
【0157】
図7Bは、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルにおいて、Zrealとω-1/2の関係を示すグラフである。
【0158】
図7Bを参照すると、これによって計算されたWarburgインピーダンス係数(σw)は、比較例、実施例1~実施例3の順に、それぞれ、23.6、23.8、14.2及び26.7Ωcm-1/2に該当することが分かる。
【0159】
図7Cは、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルのZnイオン拡散係数を示すグラフである。
【0160】
Znイオン拡散係数は、比較例、実施例1~実施例3の順に、それぞれ、0.61、0.60、1.68及び0.48×10-12cm-1と計算された。
【0161】
これによって、バインダーなしでMnOが均等に分散した実施例2で亜鉛イオンの拡散性能が増加することが分かる。
【0162】
図8は、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルの電気化学的性能を示すグラフである。
【0163】
図8Aは、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルの1.0~1.9V範囲の電位及び0.1~2.0Ag-1の範囲の電流密度でレート特性を示すものである。
【0164】
図8Aを参照すると、実施例2は、高い比容量を示し、0.1Ag-1から430.5mAhg-1の優れた回復容量(recovering capacity)を示すことが確認できる(97.8%の容量維持率)。
【0165】
これに比べて、実施例1は、低い放電容量を示し、実施例3は、放電容量の急激な損失と低い容量維持率(80.0%)を示した。
【0166】
図8Bは、比較例及び実施例1~実施例3の電極素材を用いて製造されたセルの1.0Ag-1の電流密度で300サイクル間の容量変化を示すグラフである。
【0167】
図8Bを参照すると、比較例及び実施例1~実施例3の順に、それぞれ、37.2%、62.8%、82.7%、45.8%の容量維持率を示すことが確認できる。
【0168】
これによって、全ての実施例が比較例よりも向上した容量維持率を示し、実施例2の場合、82%以上の容量維持率を確保して最も優れた長期安定性を示すことが分かる。
【0169】
図9は、実施例2の電極素材を用いて製造されたセルのエネルギー及び電力密度をRagoneプロットによって電解質溶液を使用する他の報告されたエネルギー貯蔵装置と比較したものである。
【0170】
図9を参照すると、実施例2は、90Wkg-1の電力密度で396Whkg-1の最大エネルギー密度を示し、1,800Wkgの電力密度で201Whkg-1の最大エネルギー密度を示すことが確認できる。
【0171】
すなわち、実施例2の電極素材を用いたセルは、以前に報告されたスーパーキャパシタ、リチウムイオンバッテリー、ナトリウムイオンバッテリー、アルミニウムイオンバッテリー、マグネシウムイオンバッテリー、カリウムイオンバッテリーと比較して高い電力密度とエネルギー密度を示すことが分かる。
【0172】
実験例3.フレキシブル電極素材を用いた全固体の亜鉛イオン電池の電気化学的特性評価
また、実施例で製造されたフレキシブル電極素材をカソード、亜鉛金属をアノード、ガラス繊維紙を分離膜とし、1M硫酸亜鉛(ZnSO)、1.5Mポリビニルアルコール(PVA)及び脱イオン水(DIW)を混合したゲルを電解質で構成し、全固体の亜鉛イオン電池を製造した。
【0173】
全固体の亜鉛イオン電池は、外装材として封止フィルムで包装され、10~10-2Hzの周波数範囲で5mVのAC信号を用いてEISを介して電気化学的挙動を調べた。
【0174】
レート特性テストは、0.3、0.5及び1.0Ag-1の電流密度で行われ、長期サイクリングテストは、0.5Ag-1の電流密度で100回までサンプルを平坦及び折り畳まれた状態で水に浸けた状態で行った。
【0175】
図10は、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材及びゲル電解質を使用した全固体の亜鉛イオン電池構造の概略図を示すものである。
【0176】
図11は、本発明の一実施形態によるフレキシブル電極素材及びゲル電解質を使用した全固体の亜鉛イオン電池の寿命性能及びサイクリング安定性を示すものである。
【0177】
図11Aは、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池の1.0~1.9V範囲の電位及び0.3~1.0Ag-1範囲の電流密度でレート特性を示すものである。
【0178】
図11Aを参照すると、全固体の亜鉛イオン電池は、0.3、0.5及び1.0Ag-1の電流密度で145.6、100.8及び45.6mAhg-1の優れた比容量を提供し、0.3Ag-1から131.6mAhg-1の回復容量を示すことが確認できる(容量維持率90.4%)。
【0179】
図11Bは、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池のエネルギー及び電力密度を以前に報告された全固体のエネルギー貯蔵装置と比較したRagoneプロットである。
【0180】
図11Bを参照すると、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池は、電力密度270Whkg-1から131Wkg-1のエネルギー密度を示すことが確認でき、これは、以前に報告された全固体のエネルギー貯蔵装置よりも優れたエネルギー密度であることが分かる。
【0181】
図11Cは、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池の平坦な状態及び折り畳まれた状態と水の存在及び不存在の条件下で、0.5Ag-1の電流密度でサイクリング安定性を示すものである。
【0182】
図11Cを参照すると、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池は、全ての状態で100サイクルの間に85%以上の容量維持率を示すことによって、高い柔軟性と共に防水性を有することが確認できる。
【0183】
図12は、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池の水中及び曲げられた状態での作動如何を確認する実験写真である。
【0184】
図12を参照すると、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池は、水中で発光ダイオード(LED)を照らし、曲げられた状態でドローンプロペラを作動させることが確認できる。
【0185】
これによって、本発明の一実施形態による全固体の亜鉛イオン電池は、優れた電気化学的性能、柔軟性及び防水性を有するエネルギー貯蔵装置として実適用できることが分かる。
【0186】
以上のように、実施例が限られた図面によって説明されたが、この技術分野における通常の知識を有する者であれば、上記に基づいて様々な技術的修正及び変形を適用することができる。
例えば、説明された技術が、説明された方法とは異なる順序で実行され、及び/又は、説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が、説明された方法とは異なる形態で結合又は組み合わせられる、又は他の構成要素又は均等物によって代替又は置換されても、適切な結果を達成することができる。
【0187】
したがって、他の実施形態、他の実施例及び特許請求の範囲と均等なものも、後述する特許請求の範囲に属する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11A
図11B
図11C
図12