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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】風力発電装置
(51)【国際特許分類】
   F03D 80/00 20160101AFI20241226BHJP
   F03D 1/06 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F03D80/00
F03D1/06 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024115479
(22)【出願日】2024-07-19
【審査請求日】2024-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000129150
【氏名又は名称】株式会社カランテ
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】山田 要次郎
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-155690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 80/00
F03D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の風車と、
前記第1の風車の風下に設けられ、前記第1の風車からの後流を受けて当該第1の風車と同じ仮想回転軸を中心に回転する第2の風車と
を有し、
前記第2の風車の羽根は、前記第1の風車からの後流を受けて前記第1の風車とは逆向きに回転するように構成されており
前記第1の風車の第1の羽根の受風面は、風を受ける方向と直交する仮想面に対して20°の所定の角度で傾斜しており、
前記第2の風車の第2の羽根は、前記第1の羽根と同一形状であり、当該第2の羽根の受風面は、風を受ける方向と直交する仮想面に対して前記第1の羽根の傾斜とは逆向きに20°だけ傾斜しており、
前記第1の風車の前記第1の羽根の先端の回転外周の直径と、前記第2の風車の前記第2の羽根の先端の回転外周の直径とが略同じであり、
前記第1の風車と前記第2の風車とは直径をDとし、Dの1/10をdとした場合に、
前記第1の風車と前記第2の風車との前記仮想回転軸上で距離は、6d~11dであり、
前記第1の風車は、風速3.5m/秒の風を受ける
風力発電装置。
【請求項2】
板状の第1の取付部(171)と第2の取付部(173)とが一体成型されている第1の取付具(17)と、
板状の第3の取付部(271)と第4の取付部(273)とが一体成型されている第2の取付具(27)と
を有し、
前記第1の取付部(171)の取付面と前記第2の取付部(173)の取付面とは第1の角度を形成しており、
前記第1の取付部(171)は、前記第1の風車(11)の第1の回転具(180)の正面(181)に固定されており、
前記第2の取付部(173)には、前記第1の羽根(13)が固定されており、
前記第3の取付部(271)の取付面と前記第4の取付部(273)の取付面とは第2の角度を形成しており、
前記第3の取付部(271)は、前記第2の風車(21)の第2の回転具(280)の正面(281)に固定されており、
前記第4の取付部(273)には、前記第2の羽根(23)が固定されている
請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記第1の羽根は第1の回転軸を中心に回転し、前記第2の羽根は前記第1の回転軸とは独立して設けられた第2の回転軸を中心に回転する
請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記第1の回転軸の回転を基に発電する第1の発電機と、
前記第1の発電機とは独立して設けられ前記第2の回転軸の回転を基に発電する第2の発電機と
を有する請求項3に記載の風力発電装置。
【請求項5】
陸上あるいは海洋上に設置されて作動をする
請求項1に記載の風力発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の水平軸風車発電機で構成する水平軸風車発電に関し、再生エネルギーの主力となる風力発電の風力利用の風力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
風力発電の風車の作動は水平または垂直軸に固定された羽根を風力により回転させ締結した発電機に回転力を伝えて電気エネルギーを得る構成をなしている。
本願発明に関わる風力発電機は水平軸風車発電機を複数組み合わせる技術であり、出願書類及び明細書にある風車とは水平軸風車発電機の略称である。
【0003】
風車発電機は環境などの法規あるいは送電設備など諸条件のため設置する場所に制約を受け、認可を受けた場所に集合して複数設置される場合が多く、その場合始めに風を受ける一次側の風車の羽根の平行面に平行して並列に設置するほか、地形あるいは海岸線または風向の状況により一次側の後方または左右上下方向に二次側以降の風車を設置することが避けられず一次側風車の後流の影響を受けることになる。
【0004】
一次側風車の羽根を回転し羽根の後方に進んだ気流は乱流となり、後方や周辺にある風車の回転に影響を与え、例えば風車の回転効率を10%から20%あるいはそれ以下に低下する、または機器を損傷し発電に影響を及ぼすなどの風力発電運用上の障害を生じこの乱流現象は風車ウエイクと名称されている。
風車は通常の大気流である風力を羽根で受けて抗力と揚力を発生し回転エネルギーとする構造であり、この大気流と異なる乱流を受風しては円滑には作動しない。明細書では乱気流も乱流と表現する。
【0005】
またこの乱流は陸上あるいは海洋上に設置される風車のいずれでも発生し一次側風車の後流による乱流は後方の上下や左右方向に幅を広げながら拡散し、大型風車にあっては後方や周辺の数百メートルの広範囲に及ぶことがあり、この風車ウエイク現象は霧煙の吹流試験により目視化され確認されている。
この風車発電機の作動を阻害する乱流現象は太陽光発電と併せ再生エネルギーの主力をなす風力発電の運用に関わる課題でありこれを解消することは再生エネルギーの新たな進捗の技術となる。
【0006】
1990年台に航空機の翼に発生する乱流を解消するウイングレットと言われる技術が開発された。これは主翼の先端を上に折り曲げて乱流の発生を解消しそれにより揚力が増えて燃費が5%前後節約され騒音が10%程度低下し離着陸時の騒音対策費の負担を軽減するなど経済性を発揮することが分かったので国内の航空企業において、この技術を採用することで改造費用を上まわるコストの合理化があり既に数十機を改造している。
飛行機が発明されてから1世紀を経ても未だ大気や気流と人工物との相互の干渉の実体には未解明の分野があることを示している。
風車ウエイクの障害を解消すれば損失する発電出力は増加となり、太陽光発電と共に再生エネルギーの主力をなす風力発電の新たな発展に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2024-090396号公報
【文献】2023年10月6日公告。NEDO新エネルギー事業団の公募課題: 「風車ウエイクの観測および評価手法の検討に関する研究開発」
【文献】2023年11月8日新聞発表。東芝エネルギーシステムズ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水平軸風車発電機を複数配置し運用する際に、風車相互間に発生する風力が乱流となり周辺に位置する風車の受ける風力を乱すあるいは減衰させる。この乱流の影響をうける風車の風力発電の効率を低下し、またときには風車や機器を損傷することもあり、この乱流現象である風車ウエイクは風力発電を推進するうえでの課題であり、これは陸上洋上を問わずまた形状や大きさの大小に拘わらず複数の風車の設置運用について共通する課題である。
大型風車発電機の破損による修復に際しては運用の停止期間が長期に亘り発電力の損失のほか補修の費用や人手の経済的損失がある。
上記の風車ウエイクを巡る諸課題を解消し隣接する風車発電機を円滑に運転し運用を図ることが解決すべき課題である。
【0009】
本発明は、上述した従来技術問題点に鑑みてなされ、風車ウエイクを巡る諸課題を解消し隣接する風車発電機を円滑に運転して高い発電効率を得ることができる風力発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1の風車と、前記第1の風車の風下に設けられ、前記第1の風車からの後流を受けて当該第1の風車と同じ仮想回転軸を中心に回転する第2の風車とを有し、前記第2の風車の羽根は、前記第1の風車からの後流を受けて前記第1の風車とは逆向きに回転するように構成されている、風力発電装置である。
【0011】
好適には、前記第1の風車の第1の羽根の受風面は、風を受ける方向と直交する仮想面に対して第1の角度だけ傾斜しており、前記第2の風車の第2の羽根の受風面は、風を受ける方向と直交する仮想面に対して前記第1の羽根の傾斜とは逆向きに第2の角度だけ傾斜している。
【0012】
好適には、前記第1の角度及び前記第2の角度は、10°~80°である。
【0013】
好適には、前記第1の風車の前記第1の羽根の先端の回転外周の直径と、前記第2の風車の前記第2の羽根の先端の回転外周の直径とが略同じである。
【0014】
好適には、前記第1の風車と前記第2の風車とは直径をDとし、Dの1/10をdとした場合に、前記第1の風車と前記第2の風車との前記仮想同一回転軸上で距離は、6d~11dである。
【0015】
好適には、前記第1の羽根と前記第2の羽根とは、線対称の関係にある。
【0016】
好適には、前記第1の羽根は第1の回転軸を中心に回転し、前記第2の羽根は前記第1の回転軸とは独立して設けられた第2の回転軸を中心に回転する。
【0017】
好適には、前記第1の回転軸の回転を基に発電する第1の発電機と、前記第1の発電機とは独立して設けられ前記第2の回転軸の回転を基に発電する第2の発電機とを有する。
【0018】
好適には、陸上あるいは海洋上に設置し作動をする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、風車ウエイクを巡る諸課題を解消し隣接する風車発電機を円滑に運転して高い発電効率を得ることができる風力発電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施形態に係る風力発電装置1の第1の風車11及び第2の風車21の形状と位置関係を説明するための図である。
図2図2は、第1の風車11と第2の風車21との位置関係(間隔)を説明するための側面方向の図である。
図3図3は、第1の羽根13の取付具17を説明するための図である。
図4図4は、第2の羽根23の取付具27を説明するための図である。
図5図5は、第1の羽根13及び第2の羽根23の角度を説明するための図である。
図6図6は、第1の風車11及び第2の風車21を取り付ける発電機Mを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る風力発電装置について説明する。
本実施形態に関わる風車発電装置は水平軸に羽根を固定した構造と形式であり構成要素の異なる水平軸風車発電機2基を組み合わせ基本とする。
この2基の風車は夫々異なる風力を受け作動も異なるので一次側と二次側として区別する発電装置となる。
風力発電に用いられる水平軸風車はプロペラ、多翼、セイルウイング、オランダ形などの形式があるが、本発明ではこれらの形式は問わず、羽根や翼の形状や数および大型や中型や小型の大きさに関係なく、複数設置の水平軸風車発電機に共通して発生する風車ウエイクの課題を解決する手段である。
【0022】
構成が異なる同一規模の水平軸風車発電機2基を用意し、最初に風力を受ける風車を一次側風車とし、その後方に位置し一次側風車の後流である風車ウエイクを受ける同軸延長上に二次側風車を配置する。
同軸延長上とは一次側風車の回転軸の中心の延長方向と二次側風車の回転軸の中心とが一致する風車の位置関係である。
二次側風車は一次側風車とは構成が異なり、受風する羽根の向きが一次側風車とは反対向きであり従って回転方向も反対方向である。
【0023】
この二次側風車は乱流である風車ウエイクを受風するが、二次側風車の羽根はこの乱流を受風するにも拘わらず抗力を発生し風車を回転させるエネルギーとなり一次側風車とほぼ同じ出力の風車発電機として運転運用することができる。
これは一次側風車の風車ウエイクを受風した二次側風車は、一次側風車の回転方向に対して逆回転をすることで風車ウエイクを風力として活用し一次側風車と同様な回転エネルギーを発生する風車の構成と機能を見出した。
さらにこの技術は単に風車ウエイクの障害を解消するのみでなく新たなエネルギーを発見したことに繋がる。
この一次側と二次側の組み合わせが本発明の水平軸風車発電装置である。
【0024】
この二次側の風車の開発による風力の利用は、既存の集合体の風車にあっては二次側風車に相当する風車を増設し発電出力を増加し、既存の単独に設置した風車にあっては二次側風車を増設し出力を倍増し、新規の集合体風車の設置にあっては設置できる基数と発電出力を増やし、新規の単独の設置では同時に2基を設置することであり、いずれの場合でも従来の方法による設置建設規模より設置数と発電出力を増加し再生エネルギーの開発と普及の推進となる。
【0025】
図1は、本発明の実施形態に係る風力発電装置1の第1の風車11及び第2の風車21の形状と位置関係を説明するための図である。
図1の例では、第1の風車11が風上側の一次側風車、第2の風車21が風下側の二次側風車となる。
図1に示すように、第2の風車21は、第1の風車11の風下に設けられ、第1の風車11からの後流を受けて第1の風車11と同じ仮想回転軸31を中心に回転する。
第2の風車21の羽根23は、第1の風車11からの後流を受けて前記第1の風車とは逆向きに回転するように構成されている。
【0026】
図1に示すように、第1の風車11の第1の羽根13の受風面は、風を受ける方向と直交する仮想面に対して第1の角度P1(受風する角度)だけ傾斜している。
第2の風車21の第2の羽根23の受風面は、風を受ける方向と直交する仮想面に対して第1の羽根13の傾斜とは逆向きに第2の角度P2だけ傾斜している。
本実施形態において、第1の角度P1及び第2の角度P2は、10°~80°である。
【0027】
図2は、第1の風車11と第2の風車21との位置関係(間隔)を説明するための側面方向の図である。
Dは風車の直径でありdはDの10分の1を単位とする間隔距離でWtは風向を示す。
【0028】
図2に示すように、第1の風車11と第2の風車21とは直径が同じである。当該直径は、第1の羽根13及び第2の羽根23の先端が回転する円周(先端の回転外周)の直径Dである。
第1の風車11と第2の風車21とは直径が同じである。
【0029】
当該直径をDとした場合に、第1の風車11と第2の風車21との仮想回転軸上での距離Xは、0.6D~1.1Dである。
図2に示すように、第1の羽根13と第2の羽根23とは線対称の関係にある、
また、第1の風車11の第1の回転軸19と、第2の風車21の第2の回転軸29とは独立して設けられている。
【0030】
風力発電装置1は、陸上あるいは海洋上に設置し作動をする水平軸風力発電装置である。
【0031】
以下、本発明の各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
大型の水平軸風車発電機の例えば発電容量1,500kw級では増速機構や発電機も規模が大きくなり設置する支柱も高いが、このような大型風車においても一次側風車発電機(第1の風車11)と受風面の向きと回転が反対の二次側風車発電機(第2の風車21)を一定の設置間隔で同軸上に設置すれば水平軸風車発電装置となり同一の設置条件でありながら高出力の発電を得られる。
発電出力の増加による経済性があれば敢えて強風を得るための高い支柱ではなくこれを縮小低層化することで建設、保守、送電の夫々に合理化が図れて発電コストの低減に寄与する。
【0032】
<第2実施形態>
規模の大きさに関わらず既設の風車発電機の後方に同一規模で二次側構成の風車発電機(第2の風車21)を一定の間隔と距離をもって新たに設置することで発電量が増加し新たな再生エネルギーを得る。これは新たな設置ではなく増設であり容易である。
【0033】
<第3実施形態>
風が少ない弱風の地形や地域にあって単機の発電出力では採算上風力発電が難しい設置条件にあっても、2基あるいは4基など複数の風車による本実施形態の風力発電装置を利用し発電力を増加し運用することで採算性を得ることができればこれまで風力発電に不適とされてきた地域に導入の機会が増える。
【0034】
<第4実施形態>
本実施形態の一次側および二次側発電機(第1の風車11及び第2の風車21)の構成を持つ発電装置を取り扱いや設置の方法が容易な汎用品とすることで、事業所、学校、諸施設や家庭および都市部のビル屋上などの未利用空間、あるいは船舶など移動体などに利用を進めると再生エネルギーの活用と一般の意識向上になり非常用電源としても有効である。
【0035】
以下、本実施形態の風力発電装置1の実施例を比較例と共に説明する。
これまで小型の風車発電機により気流や風況と共に風車ウエイクの解明とこれらに関係する研究開発をしてきたが新たに実機試験のため風車を製作した。
通常の風車発電機の構造は羽根を取り付けた回転部のローターと伝動装置及び発電機を収納するナセルと地上に設置する支柱から構成される。
当試験の目的として風況や風速と風車の作動や運転を観察するため風車に発電機を締結せず風車の挙動を詳細に計測観察したが、実施例において発電機と締結しての試験をした。軸と表示するのは風車の回転軸である。
【0036】
実機試験に供する試験装置は、鋳鉄製のVプーリー直径25.6cmを回転板とし、これに軸を固定し軸を両側で支持する木製の架台2組を用意してベアリング軸受けを双方の架台に設置して軸受けとし、架台の中間に風車が位置する構造とした。
羽根は長方形の木製の板を部材とし幅9cmx長さ55cm、厚さ1.2cmで面積495cmでありこれを4枚取り付けオランダ形とした。
第1の風車11の第1の羽根13及び第2の風車21の第2の羽根23の各々の受風面13a,23aの向きを変えて回転板に取り付けた。
【0037】
図1に示すように第1の風車11では、風向Wtに面して受風する4枚の第1の羽根13が受風面13aの第1の角度P1(斜角)が左向となるように図3に示す第1の取付具17を介して第1の回転具180にそれぞれ固定されている。
図3は、第1の羽根13を図1に示す第1の回転具180に固定する第1の取付具17の外観図である。
図3に示すように、第1の取付具17は、板状の取付部171と取付部173とが一体成型されている。
取付部171の取付面と取付部173の取付面とは第1の角度P1を形成している。
取付部171は、図1に示す第1の風車11の第1の回転具180の正面181(仮想面)に固定される(ネジ等)。
取付部173には、第1の羽根13が固定される。これにより、正面181と第1の羽根13とが第1の角度P1を形成する。
【0038】
図1に示すように第2の風車21では、風向Wtに面して受風する4枚の第2の羽根23が受風面23aの第1の角度P1(斜角)が左向となるように図4に示す第2の取付具27を介して第2の回転具280にそれぞれ固定されている。
図4は、第2の羽根23を図1に示す第2の回転具280に固定する第2の取付具27の外観図である。
図4に示すように、第2の取付具27は、板状の取付部271と取付部273とが一体成型されている。
取付部271の取付面と取付213の取付面とは第2の角度P2を形成している。
取付部271は、図1に示す第2の風車21の第2の回転具280の正面281(仮想面)に固定される(ネジ等)。
取付部273には、第2の羽根23が固定される。これにより、正面281と第2の羽根23とが第1の角度P1を形成する。
図1に示すように第2の風車21では、風向Wtに面して受風する4枚の第2の羽根23が受風面23aの第2の角度P2(斜角)が右向となるように図4に示す取付具27を介して円盤15に固定されている。
第1の角度P1及び第2の角度P2は、例えば、20°である。
斜角は図5の平面図に示すように、風向に対して直角方向を0°とし風向方向を90°とし、第1の羽根13の第1の角度P1と、第2の羽根23の第2の角度P2が10°以下では風車が円滑に回転せず80°以上では回転はするが羽根に発生する抗力が低いことから適切な回転エネルギーを得るため斜角の範囲を10°~80°以内とし、実施例の試験機では、20°とした。
【0039】
実機試験は屋外で実施した。
天候条件は晴天、気温17℃、風速1~2m/秒であった。
他の試験日も温度以外は同様な気候条件を選んで行った。
一定の風速を得るため送風機出力150Wを使用し風速の測定点は風車正面の中心から50cmの位置とした。
【0040】
第1の風車11を単独で運転した。
送風機による風速3.5m/秒で風車の回転数66rpmであった。
【0041】
2基の同じ構造の第1の風車11を直列に配置した。
仮想同軸延長上で軸の中心を合わせ間隔は双方の風車の中心を起点とし、配置の間隔距離は第1の風車11の直径約136cmをDとし、Dの10分の1を1dとし1、dから10dと12dまでの各間隔距離における後段の第1の風車11の作動を観察した。
配置の間隔については前段の第1の風車11の直径と関係のある距離であることを試験により知見を得ており、これは後段の第1の風車11の回転数と風車の制御にも応用する。
前段の第1の風車11に風速3,5m/秒で送風し回転は66rpmであり、後段の第1の風車11の風車の回転は前段の第1の風車11との間隔距離1dから計測を開始したが、1dから5dは停止、6dは停止し羽根が振動し、7dと8dも停止と振動があり、9dと10dは停止、11dと12dは停止であった。
【0042】
これにより前段の第1の風車11は66rpm/秒の回転をするが、羽根の向きと回転方向が同じ構成の後段の第1の風車11はすべての間隔dにおいて回転せず停止のままであるのは、前段の第1の風車11が受風し風車を回転した後流が風車ウエイクを発生し、それを受風した後段の第1の風車11に運転上の障害を及ぼす現象を確認した。
【0043】
第1の風車11と構成が異なる第2の風車21の同軸延長上で第2の風車21がその位置を移動し間隔を変更した場合の第2の風車21の回転の状況について試験した。
図2は、第1の風車11と第2の風車21との仮想同軸延長上に軸を合わせ風車の中心を起点とした配置の側面を示す。
送風機による風速3.5m/秒で第1の風車11の回転数66rpmにて後段に第2の風車21を配置し回転の状態を観察した。
【0044】
第1の風車11と第2の風車21との間隔Xが1dから3dでは回転せず、Xが4dから5dで20~30回転前後に不規則に変動し、Xが6dと7dは57rpmで回転し、Xが8dは66rpmで回転し、Xが9dは72rpmで回転し、Xが10dは59rpmで回転し、Xが11dは45rpmで回転し、Xが12dは回転しなかった。この経過を表1に示す。
表1は風速3.5m/秒で、第1の風車11の回転数66rpmにおけるXが1d~12dまでの回転状態を示す。
第1の風車11と第2の風車21との間隔Xと、第2の風車21の回転数rpmの関係
【0045】
【表1】
【0046】
これにより風車ウエイクを受風し作動する第2の風車21の回転を確認した。

第1の風車11の後段に第2の風車21を同軸延長上に配置するメリットの根拠について試験をした。
第1の風車11の回転軸の延長線上に第2の風車21の回転軸を合わせて間隔9dに配置した。風速3.5m/秒で第1の風車11の回転数は66rpmであり第2の風車21の回転数72rpmの状態にて、そのまま第2の風車21を受風面から見て左方向に1d相当の距離を移動すると、第2の風車21の風車の回転は変動し間欠的に30rpm前後となり2dの距離の移動では停止となりさらに左に移動すると回転は停止の状態を続けた。
【0047】
この試験により、第1の風車11の回転軸の仮想同軸延長上より第2の風車21が1d以上離れると羽根の回転は変動しあるいは回転を停止し移動の距離を同様にして右方向や上方向さらに下方向に移動しても回転は変動または停止することを確認した。
これにより第1の風車11と羽根の向きと回転方向が正反対の第2の風車21の回転は一次側風車の回転軸の中心線の延長上に軸が位置することでのみ実現する。
【0048】
第1の風車11の受風の風速3.5m/秒で回転数が66rpmであり、後段の第2の風車21の回転数が72rpmの状況で、第1の風車11と第2の風車21との中間の風速を計測した。
これは風車ウエイクを受風しこれを風力とし作動する第2の風車21の気流を観察し第2の風車21の受風についての知見を得るためである。
第2の風車21の第2の羽根23の受風面の中央の前方50cmを中心計測点とし、中心点は2.5m/秒であり、上方50cmは2.7m/秒、同下方2.1m/秒、左方2.7m/秒、右方1.8m/秒であり、限られた空間において極めて不均衡な風速であるがこの乱れた気流が第2の羽根23に逆向きの回転エネルギーを与え風車ウエイクを新しいエネルギーとして活用することができる。
【0049】
構成が異なる第1の風車11と第2の風車21について配置場所を交換して同じ風速試験をしたが、これは羽根と回転方向を入れ替えた条件となる。
第2の風車21を一次側風車とし、第1の風車11を二次側風車とし間隔Xを9dに配置した。このとき、風速3.5m/秒では第2の風車21は回転数66rpmで回転し、第1の風車11の回転は72rpmであり双方の作動には変化はなく、羽根の向きと回転方向が逆であれば風車の作動に支障はなった。
【0050】
次に、二次側風車の羽根を一次側より大形にした場合の二次側風車が受風する風車ウエイクの影響と運転状態について試験をした。
第2の風車21に幅9cm長さ70cm厚さ1.2cm面積630cmの板を第2の風車21の板と交換して4枚を取り付けた場合に、第1の風車11の仮想同軸延長上の後方9dに第2の風車21配置し運転し計測した。
このとき、風速3.5m/秒で第1の風車11は66rpmの回転数のとき、第2の風車21は40~60rpm前後の回転数であるが変動が激しく回転数は不定であった。風車ウエイクの範囲と外側の気流との境界など種々の原因が想定され二次側風車の羽根を単に大形とするのは運転が不安定であり一次側風車と規模の異なる風車は不適であることが分かった。
【0051】
以下に本願発明の実施例を記述するが用途はこれに限定されるものではない。
実機試験として第1の風車11の第1の回転軸19及び第2の風車21の第2の回転軸29に発電機を締結して出力を計測した。
第1の回転軸19と第2の回転軸29は独立して設けた。
【0052】
図6は、第1の風車11及び第2の風車21を取り付ける発電機Mを説明するための図である。
第1の風車11と第2の風車21の後方の軸受けの外側の軸にVプーリーV1を取り付け発電機Mの軸にも同様にVプーリV2を取り付けた。
第1の風車11と第2の風車21とも使用する発電機Mは同一の仕様である。
風車側のVプーリーV1は直径35.4cmとし、発電機M側のVプーリーV2は直径6.3cmとして、増速比は約5.6倍でとした。そして、Vベルト81により発電機Mを運転し発電出力を計測した。
【0053】
発電機Mの定格は三相交流100v、出力1.5KW、回転500rpm、負荷として600W電熱器2台を接続し出力のアンペアAを計測した。
風速3.5m/秒で第1の風車11の回転数62rpmにて59V、4.5Aであり、第2の風車21は回転数68rpmで66V、5.5Aであり合計出力は9Aであった。
プーリーによる増速回転数は出力回転数x出力側直径÷伝導側直径にて算出することから第1の風車11の発電機側プーリーV2の回転数は、62x35.4÷6.3≒348rpm であり、第2の風車21のV2は同様にして約382rpmである。
風車の回転数が無負荷運転より低下するのは発電機Mの負荷によるものである。
【0054】
次に送風機2基を使用し風速7m/秒における風車の発電出力を試験した。
第1の風車11は106rpmで100v、15Aであり、第2の風車21は116rpmで100v、15Aであり発電装置となる風車2基の合計出力は30Aであった。
第1の風車11のV2の回転数は上記計算例により約595rpmであり、二次側風車のV2は同じく651rpmである。
風速7m/秒において高い発電出力となり再生エネルギーを創出している。
【0055】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…風力発電装置
11…第1の風車
13…第1の羽根
17…取付具
19…第1の回転軸
21…第2の風車
23…第2の羽根
27…取付具
29…第2の回転軸
31…仮想回転軸
61…第1の支持台
63…第2の支持台
【要約】
【課題】 風車ウエイクを巡る諸課題を解消し隣接する風車発電機を円滑に運転して高い発電効率を得ることができる風力発電装置を提供する。
【解決手段】 第1の風車と、前記第1の風車の風下に設けられ、前記第1の風車からの後流を受けて当該第1の風車と同じ仮想回転軸を中心に回転する第2の風車とを有し、前記第2の風車の羽根は、前記第1の風車からの後流を受けて前記第1の風車とは逆向きに回転するように構成されている風力発電装置である。
【選択図】図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6