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特許7610896テラス幅の測定方法、欠陥測定方法及び測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】テラス幅の測定方法、欠陥測定方法及び測定装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20241226BHJP
   G01B 11/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G01B11/02 H
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024127935
(22)【出願日】2024-08-02
【審査請求日】2024-08-02
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300072587
【氏名又は名称】株式会社多聞
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】堀江 祥仙
(72)【発明者】
【氏名】桑原 登
【審査官】庄司 一隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-305292(JP,A)
【文献】特開2006-080339(JP,A)
【文献】特開2022-167477(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅の測定方法であって、
前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有する反射体の表面側に前記貼り合わせウェーハを配置し、
前記貼り合わせウェーハの表面及び前記貼り合わせウェーハの外周部より外側の前記反射体の表面を含む領域に対して垂直入射光を照射し、
前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うことを特徴とするテラス幅の測定方法。
【請求項2】
前記反射体として前記表面が鏡面又は光散乱面のものを用いることを特徴とする請求項1に記載のテラス幅の測定方法。
【請求項3】
前記反射体を、前記貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージとして用いることを特徴とする請求項1に記載のテラス幅の測定方法。
【請求項4】
前記垂直入射光の波長を、前記貼り合わせウェーハ及び前記テラス部の材料に対して前記垂直反射光のコントラストの高い波長領域を選択することを特徴とする請求項1に記載のテラス幅の測定方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のテラス幅の測定方法における前記垂直反射光を用いて、前記貼り合わせウェーハの欠陥を測定することを特徴とする欠陥測定方法。
【請求項6】
基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅を測定するための測定装置であって、
前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有し、前記貼り合わせウェーハの裏面側に配置される反射体と、
前記貼り合わせウェーハの表面及び前記反射体の表面に対して垂直入射光を照射するとともに、前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うテラス幅測定系と、
を備えるものであることを特徴とする測定装置。
【請求項7】
前記反射体の前記表面は鏡面又は光散乱面であることを特徴とする請求項6に記載の測定装置。
【請求項8】
前記反射体は、前記貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージであることを特徴とする請求項6に記載の測定装置。
【請求項9】
前記テラス幅の測定と同時に前記貼り合わせウェーハの欠陥の測定が可能なものであり、測定した前記テラス幅と前記欠陥を表示する表示手段を備えるものであることを特徴とする請求項6から8のいずれか一項に記載の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テラス幅の測定方法、欠陥測定方法及び測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気的に絶縁性のあるシリコン酸化膜の上にSOI(Silicon On Insulator)層が形成されたSOI構造を有するSOIウェーハは、デバイスの高速性、低消費電力性、高耐圧性、耐環境性等に優れていることから、電子デバイス用の高性能LSIウェーハとして特に注目されている。また、従来のシリコンに代わる材料として、ガリウムヒ素(GaAs)、リン化インジウム(InP)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)の他、RFフィルターの改良に用いられている圧電物質が期待されている。これらの材料を基板にDirectに貼り合わせた貼り合わせたウェーハや、POI(Piezoelectric-On-Insulator)や、GaN-on-SOIウェーハなどの開発も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-305292号公報
【文献】特開2006-080339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貼り合わせ法を用いてSOIウェーハなどの貼り合わせウェーハを作製すると、材料ウェーハの形状に起因して、外周部に貼り合わせが起こらない領域が発生する。また、貼り合わせが起こる領域であっても、その外周部には貼り合わせ強度が充分でない領域があり、デバイス作製工程中に剥離することが懸念されるため、予め、その部分の半導体層(SOI層など)を除去しておく場合もある。このように、半導体層が存在しない領域(貼り合わせが起こらない領域及び意図的に半導体層を除去した領域)は、テラス部と呼ばれる。
【0005】
図5に貼り合わせウェーハの一例としてSOIウェーハ30を示す。図5に示すように、SOIウェーハ30は、ベースウェーハ31、BOX層32、SOI層(半導体層)33を備えている。テラス部34では、ベースウェーハ30上にBOX層32、SOI層33がない。このテラス部34の幅は通常1~3mm程度あるが、テラス部34にはSOI層33が形成されていないため、テラス部34にデバイスを作製することができない。このため、デバイス作製が可能な半導体層の有効面積を保証する目的で、ユーザー毎にテラス部の幅に対して納入仕様が定められている。したがって、テラス部の幅を正確に測定する必要がある。また、実際の製造における検査においては、簡便かつ迅速に測定を行う必要がある。
【0006】
テラス部の幅の測定方法として、従来、様々な方法が提案されている。例えば、特許文献1には顕微鏡を用いてテラス幅を測定することが記載されている。特許文献1に記載の方法は精度が高いものの、作業者の作業習熟度が求められ、測定に時間がかかるという問題がある。また、特許文献2には、魔鏡を使った反射法(魔鏡法)によりテラス部の幅を測定する貼り合わせウェーハの評価方法が提案されている。特許文献2に記載の魔鏡法は迅速な測定法であるが、基板の面取り部からの反射光が得られないことから正確なテラス幅の測定が難しいという問題がある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することが可能なテラス幅の測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅の測定方法であって、前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有する反射体の表面側に前記貼り合わせウェーハを配置し、前記貼り合わせウェーハの表面及び前記貼り合わせウェーハの外周部より外側の前記反射体の表面を含む領域に対して垂直入射光を照射し、前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うテラス幅の測定方法を提供する。
【0009】
このようなテラス幅の測定方法によれば、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することができる。
【0010】
このとき、前記反射体として前記表面が鏡面又は光散乱面のものを用いるテラス幅の測定方法とすることができる。
【0011】
これにより、より安定してテラス幅を測定することができる。
【0012】
このとき、前記反射体を、前記貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージとして用いるテラス幅の測定方法とすることができる。
【0013】
これにより、より簡便にテラス幅を測定することができる。
【0014】
このとき、前記垂直入射光の波長を、前記貼り合わせウェーハ及び前記テラス部の材料に対して前記垂直反射光のコントラストの高い波長領域を選択するテラス幅の測定方法とすることができる。
【0015】
これにより、より安定してより精度高くテラス幅を測定することができる。
【0016】
このとき、上記のテラス幅の測定方法における前記垂直反射光を用いて、前記貼り合わせウェーハの欠陥を測定する欠陥測定方法とすることができる。
【0017】
これにより、テラス幅の測定と同時に、迅速かつ精度高く貼り合わせウェーハの欠陥の大きさ、面積、形状を測定することができる。
【0018】
本発明は、また、基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅を測定するための測定装置であって、前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有し、前記貼り合わせウェーハの裏面側に配置される反射体と、前記貼り合わせウェーハの表面及び前記反射体の表面に対して垂直入射光を照射するとともに、前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うテラス幅測定系と、を備えるものである測定装置を提供する。
【0019】
このような測定装置によれば、簡便な構成で、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することができるものとなる。
【0020】
このとき、前記反射体の前記表面は鏡面又は光散乱面である測定装置とすることができる。
【0021】
これにより、より安定してテラス幅を測定することができるものとなる。
【0022】
このとき、前記反射体は、前記貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージである測定装置とすることができる。
【0023】
これにより、より簡便な装置構成となる。
【0024】
このとき、前記テラス幅の測定と同時に前記貼り合わせウェーハの欠陥の測定が可能なものであり、測定した前記テラス幅と前記欠陥を表示する表示手段を備えるものである測定装置とすることができる。
【0025】
これにより、テラス幅の測定と同時に、迅速かつ精度高く前記欠陥を測定、評価することができるものとなる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明のテラス幅の測定方法によれば、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することが可能となる。本発明の測定装置によれば、簡便な構成で、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明に係る測定装置及びテラス幅の測定方法を説明する図面である。
図2】本発明の測定方法(実施例1)と従来の測定方法(比較例1、2)による測定結果の比較を示す図面である。
図3】本発明の測定方法(実施例1)と従来の測定方法(比較例2)による測定結果の比較を示す図面である。
図4】本発明の測定方法(実施例2)により貼り合わせウェーハの全面を測定した結果を示す図面である。
図5】貼り合わせウェーハの構造を説明する図面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
上述のように、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することが可能なテラス幅の測定方法及び測定装置が求められていた。
【0030】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅の測定方法であって、前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有する反射体の表面側に前記貼り合わせウェーハを配置し、前記貼り合わせウェーハの表面及び前記貼り合わせウェーハの外周部より外側の前記反射体の表面を含む領域に対して垂直入射光を照射し、前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うテラス幅の測定方法により、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することができることを見出し、本発明を完成した。
【0031】
本発明者らは、また、基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅を測定するための測定装置であって、前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有し、前記貼り合わせウェーハの裏面側に配置される反射体と、前記貼り合わせウェーハの表面及び前記反射体の表面に対して垂直入射光を照射するとともに、前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うテラス幅測定系と、を備えるものである測定装置により、簡便な構成で、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することができるものとなることを見出し、本発明を完成した。
【0032】
以下、図面を参照して説明する。なお、本発明のテラス幅の測定装置及び測定方法が対象とする貼り合わせウェーハは、SOIウェーハのほか、絶縁層を介さないでSi、GaAs、InP、SiC、GaNを貼り合わせたDirect貼り合わせウェーハもある。その他、圧電物質を貼り合わせたPOIウェーハなど、特に限定されない。貼り合わせウェーハにおけるベースウェーハ上の層の数も特に限定されず、単層であっても、2層以上の複数層を備えたものであってもよい。
【0033】
[測定装置]
図1に、本発明に係る測定装置の概略を示す。なお、図1では、測定対象物との位置関係及びテラス幅の測定方法を説明するために測定対象物である貼り合わせウェーハも記載しているが、貼り合わせウェーハが本発明に係る測定装置を構成する部材ではないことは言うまでもない。
【0034】
図1に示すように、本発明に係る測定装置100は、貼り合わせウェーハ30の外径よりも大きな外縁を有し、貼り合わせウェーハ30の裏面側に配置される反射体2と、貼り合わせウェーハ30の表面及び反射体2の表面に対して垂直入射光L1を照射するとともに、貼り合わせウェーハ30及び反射体2からの垂直反射光L2を受光してテラス幅34の測定を行うテラス幅測定系1とを備えるものである。このような測定装置は、垂直反射光L2を測定したときに、貼り合わせウェーハ30のSOI層(半導体層)33、テラス部34の平坦な領域、面取り部及び反射体2で異なるコントラストとして観察されるため、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を正確に測定することができるものである。また、従来の顕微鏡法のように条件出し等にかかる手間を省くことができるものであり、簡便な装置構成で迅速に測定できるものである。
【0035】
(テラス幅測定系)
テラス幅測定系1の構成としては、例えば、図1に示すように、測定光学系として垂直入射光L1の光源3と、垂直反射光L2を受光するカメラ4を備えたものとすることができる。光源3としては、波長領域の選択、設定が容易な光源とすることが好ましい。例えば、LEDを使用することができる。テラス幅測定系1として、より具体的には、光源3として高輝度LEDを用い、高輝度LEDからの短い波長の光をコリメートし、テレセントリックレンズを通して貼り合わせウェーハの表面に対して極めて高精度な垂直光を同軸落射し、貼り合わせウェーハからの垂直反射光をデジタルカメラで撮像することができる。
【0036】
(反射体)
反射体2は、貼り合わせウェーハ30の外径よりも大きな外縁を有し、貼り合わせウェーハ30の裏面側に配置されるものである。言い換えると、貼り合わせウェーハ30を反射体2上に設置した状態で、貼り合わせウェーハ30の表面を垂直方向から見たときに、貼り合わせウェーハ30の外周部(エッジ)より外側に、反射体2の表面が見える状態となるものである。
【0037】
本発明に係る測定装置は貼り合わせウェーハ30及び反射体2からの垂直反射光L2を受光するものであるため、反射体2の表面状態は、垂直入射光L1を受けて垂直反射光L2を反射するものであれば特に限定はされない。垂直反射光L2を反射するとは、垂直入射光の全てを垂直方向に反射するものに限られず、反射光に垂直方向の成分が含まれていればよい。したがって、反射体の表面は鏡面又は光散乱面とすることができる。光散乱面の場合、粉末を吹き付けた面であってもよい。また、反射体の表面は垂直反射光L2の波長特性がフラット(均一)に近いものがより好ましい。特に、反射体の表面が鏡面であれば垂直反射光L2の波長特性がよりフラット(均一)になり、垂直反射光貼り合わせウェーハの面取り部とのコントラストが強調されるため、より好ましい。
【0038】
貼り合わせウェーハの裏面側に配置される反射体は、貼り合わせウェーハ30の外径よりも大きな外縁を有するものであれば特に限定されない。貼り合わせウェーハ30の下面全体を支持するものであっても良いし、例えば、図1に示すような貼り合わせウェーハの外周部のみを支持するドーナツ形状のものであってもよい。特に、反射体を、貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージとすれば、装置構成が簡便なものとなるため好ましい。言い換えると、貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージを、その外縁が貼り合わせウェーハの外径よりも大きいものとするとともに、上述のようにステージの表面状態を、垂直入射光を受けて垂直反射光を反射する状態としてもよい。
【0039】
(その他)
本発明に係る測定装置は、測定したテラス幅と欠陥を表示する表示手段を備えるものであることが好ましい。本発明に係る測定装置は垂直反射光を測定するものであるため、ウェーハ表面の欠陥の大きさ、面積、形状を正確に測定することも可能であることを、本発明者らは見出した。すなわち、本発明に係る測定装置は、測定したテラス幅と欠陥を表示する表示手段を備えるものとして、テラス幅の測定と同時に貼り合わせウェーハの欠陥の測定が可能なものとできる。欠陥の測定の詳細については後述する。
【0040】
[測定方法]
次に、本発明のテラス幅の測定方法について説明する。本発明のテラス幅の測定方法は、基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅の測定方法である。例えば上述のような本発明に係る測定装置を用いて行うことが可能である。上述の測定装置の説明で述べた事項については適宜省略することがある。
【0041】
図1に示すように、貼り合わせウェーハ30の外径よりも大きな外縁を有する反射体2の表面側に貼り合わせウェーハ30を配置する。そして、貼り合わせウェーハ30の表面及び貼り合わせウェーハ30の外周部より外側の反射体2の表面を含む領域に対して垂直入射光L1を照射し、貼り合わせウェーハ30及び反射体2からの垂直反射光L2を受光してテラス幅の測定を行う。このようなテラス幅の測定方法であれば、垂直反射光L2を測定したときに、貼り合わせウェーハ30のSOI層(半導体層)33、テラス部34の平坦な領域、面取り部及び反射体で異なるコントラストとして観察されるため、貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス部34のテラス幅を正確に測定することができる。また、従来の顕微鏡法のように条件出し等にかかる手間を省くことができ、テラス幅を迅速に測定することが可能である。
【0042】
測定領域は、貼り合わせウェーハ30の表面及び貼り合わせウェーハ30の外周部より外側の反射体2の表面を含む領域であればよく、貼り合わせウェーハ30の表面の一部又は全面を測定対象とすることができる。
【0043】
本発明のテラス幅の測定方法では、反射体2として表面が鏡面又は光散乱面のものを用いることができる。特に、反射体2の表面が鏡面であれば、貼り合わせウェーハの面取り部とのコントラストが強調されるため、好ましい。
【0044】
また、上記反射体2を貼り合わせウェーハ30を載置するためのウェーハステージとして用いることも好ましい。一般的にウェーハの形状等の測定ではウェーハをステージに載置して測定するため、反射体2を貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージとして用いれば、より簡便にテラス幅を測定することができる。
【0045】
垂直入射光L1の波長として、貼り合わせウェーハ30及びテラス部の材料に対して垂直反射光L2のコントラストの高い波長領域を選択することが好ましい。コントラストが高くなれば、より安定してより精度高くテラス幅を測定することができる。
【0046】
さらに、上述のテラス幅の測定方法における垂直反射光L2を用いて貼り合わせウェーハの欠陥を測定する欠陥測定方法を提供することができる。本発明に係るテラス幅の測定方法では垂直反射光を測定するため、ウェーハ表面の欠陥の大きさ、面積、形状を正確に測定することも可能である。すなわち、テラス幅の測定と同時に貼り合わせウェーハの欠陥の測定が可能である。例えば、垂直入射光の照射及び垂直反射光の測定を貼り合わせウェーハ全面について行うことで図4に示すような画像を得ることができる。このような画像に基づいて、テラス幅の測定と欠陥の測定を同時に行うことができる。
【0047】
測定可能な欠陥は、貼り合わせウェーハの外周部に発生するスリップ転位などのほか、貼り合わせウェーハのテラス部より内方のSOI層に発生する各種欠陥(ボイド、ブリスター、キズ等)が挙げられる。
【実施例
【0048】
以下、実施例を挙げて本発明について具体的に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0049】
(実施例1)
直径200mm(8インチ)のSOIウェーハを測定サンプルとして、表面を鏡面とした、SOIウェーハの径よりも大きな直径208mmのステージ(反射体)上にSOIウェーハを載置して、SOIウェーハの表面に対して垂直に光を照射し、SOIウェーハの表面からの垂直反射光をカメラで撮像しテラス幅を測定した。より詳細には、ステージとして、360°全周回転可能な高分解能θステージ及び300mmストロークリニアステージを組み合わせた。SOIウェーハは、バキュームエアーでステージ上に吸着した。リニアステージと光軸の垂直度は特に高い精度が好ましいため、200mmのストロークに対し10μm以下の誤差のものを使用した。なお、反射体の径はカメラに写っている反射体のピクセル数が一定以上であれば良い。実施例1の場合は100ピクセルである。
【0050】
また、測定装置の光源として高輝度LEDを用い、高輝度LEDからの短波長(450nm)の光をコリメートし、テレセントリックレンズを通して貼り合わせウェーハの表面に対して極めて高精度な垂直光を同軸落射し、貼り合わせウェーハからの垂直反射光をデジタルカメラで撮像した。テレセントリックレンズとしては、光学倍率は0.23倍の低倍率・高解像度のものを用いた。デジタルカメラは1/3”型イメージセンサ搭載型のカメラを使用した。観察視野は50mm×40mmとした。さらに、専用の画像処理ユニットを設け、リアルタイムで欠陥箇所の面状態変化を強調処理するとともに、濃度分布等を適正化した。なお、実施例1のSOIウェーハでは貼り合わせウェーハとテラス部のコントラストの高い波長450nmのLEDを使用しているが、LEDの波長は貼り合わせウェーハの仕様によって選択される。実施例1の装置では450nm、525nm、630nmのLED光源が選択可能となっているが、貼り合わせウェーハとテラス部材料に合わせてコントラストの高い波長のLEDが実装される。また、倍率、観察領域は、測定精度、スループット等の仕様要求によって異なる。
【0051】
(実施例2)
実施例1で測定対象としたSOIウェーハと同じものを用い、実施例1の測定装置によりSOIウェーハ全面の測定を行った。
【0052】
(比較例1、2)
実施例1で測定対象としたSOIウェーハと同じものを用い、従来の顕微鏡法(比較例1)及び特許文献2に記載の魔鏡法(比較例2)によりテラス部の幅を測定した。
【0053】
本発明のテラス幅の測定方法により測定した結果(実施例1)と、従来の顕微鏡法(比較例1)及び魔鏡法(比較例2)で測定した結果を図2に示す。また、図3に実施例1と比較例2の違いを説明するための図を示す。図2に示すように、顕微鏡法(比較例1)では面取り部を含むテラス部が観察できているものの、実際の測定においてはサンプルの設置、焦点合わせ、光量の条件出しなどの時間がかかった。図2、3に示すように、魔鏡法(比較例2)による測定では、テラス部のうち平坦な部分はコントラストの違いとして観察できたものの、面取り部は判別できなかったため、テラス幅の測定結果は面取り部の分だけ小さくなってしまった。
【0054】
一方、本発明のテラス幅の測定方法(実施例1)によれば、図2、3に示すようにテラス部のうちの平坦な部分と面取り部とSOIウェーハの裏面側のステージ(反射体)のそれぞれが、異なるコントラストとして観察された。面取り部は表面が鏡面であり、入射光を垂直方向に反射しないため、垂直反射光を受光したときのコントラストが黒くなる。この結果から、テラス部の平坦な部分と面取り部を合わせたテラス幅を正確にかつ短時間で測定することができた。
【0055】
また、実施例2の測定結果を図4に示す。図4に示すように、テラス幅の測定と同時に、貼り合わせウェーハのボイド欠陥も観察できた。ボイド欠陥は、貼り合わせた層のない部分であるテラス部のコントラストと同じになり、欠陥の大きさ等を正確に測定できるようになった。
【0056】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、簡便な装置構成の測定装置を用い、貼り合わせウェーハのテラス幅を正確にかつ短時間に測定することができた。また、テラス幅の測定と同時に貼り合わせウェーハの面内に存在する欠陥も測定することができた。
【0057】
本明細書は、以下の態様を包含する。
[1]: 基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅の測定方法であって、
前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有する反射体の表面側に前記貼り合わせウェーハを配置し、
前記貼り合わせウェーハの表面及び前記貼り合わせウェーハの外周部より外側の前記反射体の表面を含む領域に対して垂直入射光を照射し、
前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うテラス幅の測定方法。
[2]:前記反射体として前記表面が鏡面又は光散乱面のものを用いる上記[1]のテラス幅の測定方法。
[3]:前記反射体を、前記貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージとして用いる上記[1]又は上記[2]のテラス幅の測定方法。
[4]:前記垂直入射光の波長を、前記貼り合わせウェーハ及び前記テラス部の材料に対して前記垂直反射光のコントラストの高い波長領域を選択する上記[1]、上記[2]又は上記[3]のテラス幅の測定方法。
[5]:上記[1]、上記[2]、上記[3]又は上記[4]ののテラス幅の測定方法における前記垂直反射光を用いて、前記貼り合わせウェーハの欠陥を測定する欠陥測定方法。
[6]: 基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅を測定するための測定装置であって、
前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有し、前記貼り合わせウェーハの裏面側に配置される反射体と、
前記貼り合わせウェーハの表面及び前記反射体の表面に対して垂直入射光を照射するとともに、前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うテラス幅測定系と、
を備えるものである測定装置。
[7]:前記反射体の前記表面は鏡面又は光散乱面である上記[6]の測定装置。
[8]:前記反射体は、前記貼り合わせウェーハを載置するためのウェーハステージである上記[6]又は上記[7]の測定装置。
[9]:前記テラス幅の測定と同時に前記貼り合わせウェーハの欠陥の測定が可能なものであり、測定した前記テラス幅と前記欠陥を表示する表示手段を備えるものである上記[6]、上記[7]又は上記[8]の測定装置。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0059】
1…テラス幅測定系、 2…反射体、 3…光源、 4…カメラ、
30…SOIウェーハ、 31…ベースウェーハ、 32…BOX層、
33…SOI層(半導体層)、 34…テラス部、 100…測定装置。
L1…垂直入射光、 L2…垂直反射光。
【要約】
【課題】
貼り合わせウェーハの外周部に存在するテラス幅を迅速かつ正確に測定することが可能なテラス幅の測定方法及び測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】
基板と該基板上に貼り合わされた薄膜とを備える貼り合わせウェーハの外周部に形成されたテラス部のテラス幅の測定方法であって、前記貼り合わせウェーハの外径よりも大きな外縁を有する反射体の表面側に前記貼り合わせウェーハを配置し、前記貼り合わせウェーハの表面及び前記貼り合わせウェーハの外周部より外側の前記反射体の表面を含む領域に対して垂直入射光を照射し、前記貼り合わせウェーハ及び前記反射体からの垂直反射光を受光して前記テラス幅の測定を行うテラス幅の測定方法。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5