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特許7610906測定装置、測定方法、および測定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】測定装置、測定方法、および測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 29/10 20060101AFI20241226BHJP
   H01Q 1/12 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01R29/10 E
H01Q1/12 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021115964
(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公開番号】P2023012362
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2024-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻澤 成彰
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-106355(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008442(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3008168(JP,U)
【文献】特開2005-270570(JP,A)
【文献】特表2014-501020(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0260523(US,A1)
【文献】特開2006-343203(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0083718(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/10
H01Q 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナから振動検出用電波を発信させる発信制御部と、
測定対象電波を発信する通信システムが搭載された対象から前記測定対象電波を受信する前記アンテナの振動幅を、前記アンテナで受信した前記振動検出用電波の前記対象による反射波である第1受信電波および前記振動検出用電波に基づいて導出した前記アンテナと前記対象との距離と、前記アンテナと前記対象との設定距離と、の差に対応する前記アンテナの揺れ角および揺れ量の少なくとも一方を、前記アンテナの振動幅として検出する検出部と、
前記振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、前記アンテナで受信した前記測定対象電波である第2受信電波に基づいて、前記通信システムの通信性能を導出する導出部と、
を備える測定装置。
【請求項2】
前記導出部は、
前記振動幅が0より大きく且つ前記測定対象電波の周波数に応じた前記設定幅以下となったときに、前記第2受信電波に基づいて、前記通信性能を導出する、
請求項1に記載の測定装置。
【請求項3】
前記導出部は、
前記振動幅が、0より大きく且つ前記測定対象電波の周波数が高いほど小さい前記設定幅以下となったときに、前記第2受信電波に基づいて、前記通信性能を導出する、
請求項1または請求項2に記載の測定装置。
【請求項4】
アンテナから振動検出用電波を発信させるステップと、
測定対象電波を発信する通信システムが搭載された対象から前記測定対象電波を受信する前記アンテナの振動幅を、前記アンテナで受信した前記振動検出用電波の前記対象による反射波である第1受信電波および前記振動検出用電波に基づいて導出した前記アンテナと前記対象との距離と、前記アンテナと前記対象との設定距離と、の差に対応する前記アンテナの揺れ角および揺れ量の少なくとも一方を、前記振動幅として検出するステップと、
前記振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、前記アンテナで受信した前記測定対象電波である第2受信電波に基づいて、前記通信システムの通信性能を導出するステップと、
を含む測定方法。
【請求項5】
前記導出するステップは、
前記振動幅が0より大きく且つ前記測定対象電波の周波数に応じた前記設定幅以下となったときに、前記第2受信電波に基づいて、前記通信性能を導出する、
請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
前記導出するステップは、
前記振動幅が、0より大きく且つ前記測定対象電波の周波数が高いほど小さい前記設定幅以下となったときに、前記第2受信電波に基づいて、前記通信性能を導出する、
請求項4または請求項5に記載の測定方法。
【請求項7】
アンテナから振動検出用電波を発信させるステップと、
測定対象電波を発信する通信システムが搭載された対象から前記測定対象電波を受信する前記アンテナの振動幅を、前記アンテナで受信した前記振動検出用電波の前記対象による反射波である第1受信電波および前記振動検出用電波に基づいて導出した前記アンテナと前記対象との距離と、前記アンテナと前記対象との設定距離と、の差に対応する前記アンテナの揺れ角および揺れ量の少なくとも一方を、前記振動幅として検出するステップと、
前記振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、前記アンテナで受信した前記測定対象電波である第2受信電波に基づいて、前記通信システムの通信性能を導出するステップと、
をコンピュータに実行させるための測定プログラム。
【請求項8】
前記導出するステップは、
前記振動幅が0より大きく且つ前記測定対象電波の周波数に応じた前記設定幅以下となったときに、前記第2受信電波に基づいて、前記通信性能を導出する、
請求項7に記載の測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置、測定方法、および測定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話や車両などの対象に搭載された通信システムから発せられる電波をアンテナで受信し、受信した受信電波に基づいて通信システムの通信性能を導出するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、大型の対象である場合には、大型の機構を用意し、可動部によって機構を動かしながら電波を受信することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2019-505768号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可動部による動作などによってアンテナに揺れが発生する場合がある。従来技術では、測定精度の低下を抑制するために、アンテナの揺れが完全に停止するまで目視により待機してから測定を行っていた。すなわち、従来技術では、アンテナの振動中は通信システムの通信性能を高精度に測定することは困難であった。
【0005】
本開示が解決しようとする課題は、通信システムの通信性能を高精度に測定することができる測定装置、測定方法、および測定プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる測定装置は、発信制御部と、検出部と、導出部と、を備える。発信制御部は、アンテナから振動検出用電波を発信させる。検出部は、測定対象電波を発信する通信システムが搭載された対象から前記測定対象電波を受信する前記アンテナの振動幅を、前記アンテナで受信した前記振動検出用電波の前記対象による反射波である第1受信電波および前記振動検出用電波に基づいて導出した前記アンテナと前記対象との距離と、前記アンテナと前記対象との設定距離と、の差に対応する前記アンテナの揺れ角および揺れ量の少なくとも一方を、前記アンテナの振動幅として検出する。導出部は、前記振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、前記アンテナで受信した前記測定対象電波である第2受信電波に基づいて、前記通信システムの通信性能を導出する。
【発明の効果】
【0007】
本開示にかかる測定装置、測定方法、および測定プログラムによれば、通信システムの通信性能を高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態の測定システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、測定装置の一例の機能ブロック図である。
図3図3は、第1受信電波の一例の模式図である。
図4図4は、測定装置で実行される情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態の測定システムの一例を示す模式図である。
図6図6は、測定装置の一例の機能ブロック図である。
図7図7は、検出部によるアンテナの振動幅の検出の一例の説明図である。
図8図8は、測定装置で実行される情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、測定装置の一例のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、本開示に係る測定装置、測定方法、および測定プログラムの実施形態を説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の測定システム1の一例を示す模式図である。測定システム1は、測定装置10と、測定機構20と、固定波源40と、を備える。
【0011】
測定システム1は、対象に搭載された通信システム30の通信性能を測定するためのシステムである。
【0012】
対象とは、通信システム30を搭載された物である。対象は、通信システム30を搭載可能な物であればよい。対象は、例えば、車両T、飛行機などの飛翔体、船舶、建物などの建造物、携帯端末、パーソナルコンピュータなどの電子機器、などである。本実施形態では、対象が、車両Tである形態を一例として説明する。
【0013】
通信システム30は、無線により測定対象電波52Aを発信する電波発信機である。言い換えると、通信システム30は、空中に測定対象電波52Aを発信する電波発信機である。通信システム30は、例えば、コードレスの電話機器、Wi-Fi(Wireless Fidelity)ルータなどの無線通信機、レーダ発信機、などである。また、通信システム30は、例えば、追跡、検出、または通信などに用いられる各種の発信機である。
【0014】
測定対象電波52Aは、通信システム30から無線により発信される電波である。測定対象電波52Aは、本実施形態の測定システム1における測定対象となる電波である。測定対象電波52Aは、ミリ波、マイクロ波、極超電波、超電波、短波、中波、および長波、の何れであってもよい。ミリ波は、26GHz以上の周波数帯のミリ波周波数帯域の電波である。ミリ波は、5G(第5世代移動通信システム)などの移動通信システム、車両Tの自動運転技術、ADAS(Advanced Driver Assistance System)技術などに用いられる。ADAS技術で用いられる電波には、例えば、レーダ波などが含まれる。
【0015】
本実施形態では、通信システム30は、対象の一例である車両Tに搭載されている。本実施形態では、通信システム30が、車両T内に搭載された形態を一例として説明する。
【0016】
測定機構20は、車両Tに搭載された通信システム30から発信された測定対象電波52Aを受信するための機構である。測定機構20は、少なくとも一部が可動することで、車両Tの全方位の位置の各々で測定対象電波52Aを受信可能に構成されている。
【0017】
詳細には、測定機構20は、アンテナ21と、支持部22と、支持部23と、支持部24と、を備える。
【0018】
アンテナ21は、無線による電波の受信および無線による電波の発信を行う装置である。言い換えると、アンテナ21は、電波を空中に放射し、また、空中を伝搬した電波を受信する。
【0019】
アンテナ21は、支持部24によって支持されている。支持部24は、棒状の部材である。支持部24は、長手方向の一端部にアンテナ21を支持し、他端部を支持部23によって支持されてなる。本実施形態では、支持部24が、支持部24の長手方向と鉛直方向に対して交差する方向とが略一致するように配置されている形態を一例として説明する。
【0020】
支持部23は、棒状の部材である。本実施形態では、支持部23は、支持部23の長手方向と鉛直方向とが略一致するように配置されている形態を一例として説明する。支持部23の長手方向の一端部は支持部22によって支持されている。支持部22は、地面などに配置された棒状の部材である。本実施形態では、支持部22の長手方向は水平方向に略一致する形態を一例として説明する。
【0021】
支持部25は、車両Tを支持する部材である。本実施形態では、支持部25は、円盤状の部材である。本実施形態では、支持部25の円盤状の盤面は、水平方向に沿った方向となるように配置されている。支持部25の円中心には、駆動部25Aが設けられている。駆動部25Aは、後述する測定装置10の制御によって駆動する。駆動部25Aの駆動によって、支持部25が円中心を回転中心として所定角度ごとに回転する(矢印Q方向)。支持部25の回転に伴って、支持部25上に載置された車両Tが回転する(矢印Q方向)。
【0022】
支持部23には、駆動部23Aが設けられている。支持部24には、駆動部24Aが設けられている。駆動部23Aおよび駆動部24Aは、後述する測定装置10の制御によって駆動する。駆動部23Aの駆動によって、支持部23は支持部22の長手方向(矢印X方向)に沿って移動する。駆動部24Aの駆動によって、支持部24は支持部23の長手方向(矢印Z方向)に沿って移動する。
【0023】
支持部24によって支持されたアンテナ21は、駆動部23Aおよび駆動部24Aの駆動によって、車両Tに対して、鉛直方向に近づく方向または離れる方向、および鉛直方向に対して交差する方向に近づく方向または離れる方向に、移動可能に支持されている。言い換えると、アンテナ21は、駆動部23Aおよび駆動部24Aの駆動によって、車両Tを球中心とする半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間を移動可能に支持されている。
【0024】
固定波源40は、静止状態の電波発信源である。本実施形態では、電波発信源は、無線により第1発信電波50Aを発信する電波発信装置である。すなわち、固定波源40は、空中に第1発信電波50Aを発信する電波発信装置である。
【0025】
固定波源40から発信される第1発信電波50Aは、波長、周期、振幅、および速さが経時変化しない一定の電波である。周期は、振動数または周波数を意味する。速さは、速度の絶対値で表される。本実施形態では、第1発信電波50Aが正弦波である形態を一例として説明する。
【0026】
静止状態とは、測定装置10、測定機構20、および車両Tの少なくとも1つが振動した場合であっても振動しない状態が維持されることを意味する。すなわち、固定波源40は、測定装置10、測定機構20、および車両Tの少なくとも1つが振動した場合であっても振動しない状態である静止状態が維持される電波発信源である。
【0027】
例えば、固定波源40は、測定装置10、測定機構20、および車両Tの振動の影響を受けない場所に設置されている。また、例えば、固定波源40は、振動を吸収する振動吸収部材上に載置された構成であってもよい。
【0028】
固定波源40は、静止状態で第1発信電波50Aを発信する電波発信源であればよい。固定波源40には、例えば、通信システム30と同じ電波発信装置を用いてもよく、また、通信システム30と異なる電波発信装置を用いてもよい。固定波源40として通信システム30と同じ電波発信装置を用いる場合には、該電波発信装置を静止状態が維持される場所に設置することで、固定波源40として用いることができる。
【0029】
なお、固定波源40は、静止状態を維持し、且つ、固定波源40とアンテナ21との間に他の部材が介在しない環境に配置されていることが好ましい。または、固定波源40は、静止状態を維持し、且つ、固定波源40とアンテナ21との間に介在する他の部材の状況が経時変化しない環境に配置されていることが好ましい。他の部材の状況とは、他の部材における、アンテナ21で受信する電波に影響を与える要素を意味する。他の部材の状況は、例えば、他の部材の種類、位置、および形状などである。
【0030】
次に、測定装置10について説明する。測定装置10は、アンテナ21で受信した通信システム30の測定対象電波52Aに基づいて、通信システム30の通信性能を測定する装置である。
【0031】
図2は、測定装置10の一例の機能ブロック図である。図2には、測定システム1に含まれる測定装置10以外の電気的構成部分も併せて示す。
【0032】
測定装置10は、処理部12と、通信部14と、記憶部16と、出力部18と、を備える。処理部12、通信部14、記憶部16、および出力部18は、例えば、バス19を介して通信可能に接続されている。
【0033】
通信部14は、駆動部23A、駆動部24A、駆動部25A、およびアンテナ21と通信可能に接続されている。本実施形態では、通信部14は、駆動部23A、駆動部24A、駆動部25A、およびアンテナ21の各々と、有線により通信可能に接続された形態を一例として説明する。また、本実施形態では、通信部14は、固定波源40および通信システム30の各々に有線により通信可能に接続されている形態を一例として説明する。
【0034】
記憶部16は、各種の情報を記憶する。出力部18は、各種の情報を出力する。出力部18は、例えば、画像を表示するディスプレイ、音声を出力するスピーカ、などである。なお、出力部18は、ネットワークなどを介して外部の情報処理装置と通信する通信機能を備えていてもよい。通信機能を備えることで、出力部18は、各種の情報を外部の情報処理装置へ送信することができる。
【0035】
処理部12は、各種の情報処理を実行する。本実施形態では、処理部12は、駆動制御部12Aと、発信制御部12Bと、検出部12Cと、導出部12Dと、を備える。駆動制御部12A、発信制御部12B、検出部12C、および導出部12Dの一部または全ては、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。また、駆動制御部12A、発信制御部12B、検出部12C、および導出部12Dの少なくとも1つを、ネットワークなどを介して測定装置10と通信可能に接続された外部の情報処理装置に搭載した構成としてもよい。
【0036】
駆動制御部12Aは、駆動部23A、駆動部24A、および駆動部25Aを駆動制御する。例えば、駆動制御部12Aは、車両Tを中心とした半球C(図1参照)の外周を複数領域に分割した各領域に、アンテナ21が順次配置されるように、駆動部23A、駆動部24A、および駆動部25Aを駆動する。詳細には、駆動制御部12Aは、駆動部23Aおよび駆動部24Aの駆動によってアンテナ21の位置が半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の次の測定位置へと移動制御されるごとに、駆動部25Aを制御する。駆動部25Aの制御によって、駆動制御部12Aは、支持部25上に載置された車両Tを所定の回転角度ごとに回転駆動させる。
【0037】
測定装置10では、駆動制御部12Aの駆動制御によってアンテナ21が次の測定位置に移動され、支持部25上に載置された車両Tが所定の回転角度回転駆動されるごとに、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aの第2受信電波52Bを用いて通信システム30の通信性能を導出する。すなわち、測定装置10は、車両Tを中心とした半球Cの外周に沿って、該外周を複数領域に分割した各領域において受信した第2受信電波52Bを取得可能に構成されている。言い換えると、測定装置10は、車両Tの全方位の各々の位置で受信した第2受信電波52Bを取得可能に構成されている。
【0038】
発信制御部12Bは、固定波源40および通信システム30の各々の電波の発信開始および発信停止を制御する。
【0039】
詳細には、発信制御部12Bは、通信部14を介して固定波源40へ第1発信電波50Aの発信開始を表す発信開始信号を送信する。第1発信電波50Aの発信開始信号を受け付けた固定波源40は、無線による第1発信電波50Aの発信を開始する。また、発信制御部12Bは、通信部14を介して固定波源40へ、第1発信電波50Aの発信停止を表す発信停止信号を送信する。第1発信電波50Aの発信停止信号を受け付けた固定波源40は、第1発信電波50Aの発信を停止する。
【0040】
また、発信制御部12Bは、通信部14を介して通信システム30へ測定対象電波52Aの発信開始を表す発信開始信号を送信する。測定対象電波52Aの発信開始信号を受け付けた通信システム30は、無線による測定対象電波52Aの発信を開始する。また、発信制御部12Bは、通信部14を介して通信システム30へ、測定対象電波52Aの発信停止を表す発信停止信号を送信する。測定対象電波52Aの発信停止信号を受け付けた通信システム30は、測定対象電波52Aの発信を停止する。
【0041】
なお、固定波源40および通信システム30は、ユーザによる操作指示などによって第1発信電波50Aの発信開始および発信停止、並びに測定対象電波52Aの発信開始および発信停止を切り替える構成であってもよい。また、通信部14は、無線により固定波源40へ第1発信電波50Aの発信開始信号および発信停止信号を送信してもよい。同様に、通信部14は、無線により通信システム30へ測定対象電波52Aの発信開始信号および発信停止信号を送信してもよい。この場合、発信制御部12Bは、例えば、アンテナ21を介して、これらの発信開始信号および発信停止信号を送信すればよい。
【0042】
検出部12Cは、アンテナ21の振動幅を検出する。検出部12Cは、アンテナ21で受信した受信電波に基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する。
【0043】
アンテナ21の振動幅とは、アンテナ21の揺れ幅を意味する。
【0044】
測定機構20を構成する少なくとも一部には、振動が生じる場合がある。例えば、上述したように、測定装置10では、駆動制御部12Aの駆動制御によってアンテナ21が次の測定位置に順次移動される。このため、測定機構20によって支持されたアンテナ21には、次の測定位置に移動されるごとに振動が発生する。例えば、図1の矢印S方向などによって表される振動がアンテナ21に発生する場合がある。また、測定機構20の可動以外の要因によっても、アンテナ21に振動が生じる場合がある。
【0045】
本実施形態では、検出部12Cは、アンテナ21で受信した第1受信電波50Bに基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する。第1受信電波50Bは、固定波源40から発信された第1発信電波50Aをアンテナ21で受信した受信電波である。
【0046】
図3は、第1受信電波50Bの一例の模式図である。検出部12Cは、第1受信電波50Bの所定期間P内の最大振幅Wmaxと最小振幅Wminとの差Wdを、アンテナ21の振動幅として算出する。
【0047】
所定期間Pには、移動などによってアンテナ21に振動が発生してから振動が停止するまでの期間を複数回予め測定し、該期間の最大値を所定期間Pとして用いればよい。所定期間Pは、測定機構20の管理者などによって変更可能としてもよい。
【0048】
上述したように、固定波源40から発信される第1発信電波50Aは、波長、周期、振幅、および速さが経時変化しない一定の電波である。このため、アンテナ21が振動しない状態で第1発信電波50Aを受信した場合、第1発信電波50Aの受信電波である第1受信電波50Bには振幅の変動が生じない。一方、アンテナ21の振動が大きくなるほど、振動中のアンテナ21で受信した第1受信電波50Bの最大振幅Wmaxと最小振幅Wminとの差Wdが大きくなる。
【0049】
そこで、本実施形態では、検出部12Cは、第1受信電波50Bの所定期間P内の最大振幅Wmaxと最小振幅Wminとの差Wdを、アンテナ21の振動幅として算出する。
【0050】
図2に戻り説明を続ける。
【0051】
導出部12Dは、検出部12Cで検出されたアンテナ21の振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aである第2受信電波52Bに基づいて、通信システム30の通信性能を導出する。
【0052】
詳細には、導出部12Dは、検出部12Cで検出されたアンテナ21の振動幅が0より大きく且つ測定対象電波52Aの周波数に応じた設定幅以下となったときに、第2受信電波52Bに基づいて通信システム30の通信性能を導出する。さらに詳細には、導出部12Dは、検出部12Cで検出されたアンテナ21の振動幅が、0より大きく且つ測定対象電波52Aの周波数が高いほど小さい設定幅以下となったときに、第2受信電波52Bに基づいて通信性能を導出する。
【0053】
具体的には、設定幅には、通信システム30の通信性能の導出に影響を与えないアンテナ21の振動幅の最大値を予め設定すればよい。言い換えると、設定幅には、0より大きく、且つ、通信システム30の通信性能の導出に影響を与えるアンテナ21の振動幅の最小値未満の値を予め設定すればよい。上述したように設定幅には、0を超える値が予め設定される。すなわち、アンテナ21が完全に振動していない状態ではなく、アンテナ21の振動を表す振動幅が設定幅として予め設定される。
【0054】
設定幅には、測定対象電波52Aの周波数に応じた振動幅が予め定められる。詳細には、測定対象電波52Aの周波数が高いほど、小さい振動幅を設定幅として予め定めればよい。測定対象電波52Aの周波数が高いほど、通信システム30の通信性能の導出には、ミリ単位などのより高い測定精度が必要となるためである。一方、測定対象電波52Aの周波数が低いほど、大きい振動幅を設定幅として予め定めればよい。
【0055】
例えば、導出部12Dは、設定幅対応テーブル16Aを予め記憶部16に記憶する。
【0056】
設定幅対応テーブル16Aは、測定対象電波52Aの周波数と設定幅とを対応付けたテーブルである。なお、設定幅対応テーブル16Aのデータ形式は、データベースなどであってもよく、テーブルに限定されない。
【0057】
設定幅対応テーブル16Aは、測定対象電波52Aの周波数が高いほど、小さい設定幅を対応付けたテーブルである。また、設定幅対応テーブル16Aは、測定対象電波52Aの測定対象電波52Aの周波数が低いほど、大きい設定幅を対応付けたテーブルである。また、設定幅対応テーブル16Aには、0を超える値を表す設定幅が予め登録される。
【0058】
導出部12Dは、例えば、通信部14を介して通信システム30から、通信システム30から発信される測定対象電波52Aの周波数を取得する。なお、導出部12Dは、ユーザによる操作指示によって入力された測定対象電波52Aの周波数を、キーボードなどの入力部から取得してもよい。
【0059】
導出部12Dは、取得した測定対象電波52Aの周波数に対応する設定幅を設定幅対応テーブル16Aから読み取ることで、導出に用いる設定幅を取得する。
【0060】
そして、導出部12Dは、検出部12Cで検出されたアンテナ21の振動幅が0より大きく且つ取得した設定幅以下となったときに、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aである第2受信電波52Bを取得する。導出部12Dは、取得した第2受信電波52Bを用いて、通信システム30の通信性能を導出する。
【0061】
例えば、導出部12Dは、取得した第2受信電波52Bを表す情報と、該第2受信電波52Bの取得時のアンテナ21の実空間における位置情報と、を対応付けた情報を、通信性能として導出する。アンテナ21の実空間における位置には、駆動制御部12Aによる駆動部23A、駆動部24A、および駆動部25Aの制御によって導出される、アンテナ21の半球Cの外面における位置を用いればよい。
【0062】
なお、導出部12Dは、取得した第2受信電波52Bの振幅、波長、周期、振幅、および速さの少なくとも1つを、第2受信電波52Bを表す情報として用いればよい。
【0063】
次に、本実施形態の測定装置10で実行する情報処理の流れの一例を説明する。
【0064】
図4は、測定装置10で実行される情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートが実行される直前の状態では、固定波源40および通信システム30は電波を発信していない状態であるものとして説明する。また、図4に示すフローチャートの実行前に、導出部12Dは、通信システム30から発信される測定対象電波52Aの周波数を取得しているものとして説明する。
【0065】
駆動制御部12Aは、次の測定位置へアンテナ21を移動制御する(ステップS100)。駆動制御部12Aは、駆動部23Aおよび駆動部24Aを駆動制御することにより、車両Tを中心とした半球C(図1参照)の外周におけるアンテナ21の位置を、該外周における半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の次の測定位置へと移動させる。
【0066】
発信制御部12Bは、第1発信電波50Aの発信開始を表す発信開始信号を固定波源40へ送信する(ステップS102)。発信開始信号を受付けた固定波源40は、第1発信電波50Aの発信を開始する。
【0067】
検出部12Cは、アンテナ21で受信した第1発信電波50Aである第1受信電波50Bを取得する(ステップS104)。検出部12Cは、アンテナ21から通信部14を介して第1受信電波50Bを取得する。
【0068】
検出部12Cは、ステップS104で取得した第1受信電波50Bに基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する(ステップS106)。検出部12Cは、ステップS104で取得した第1受信電波50Bの所定期間P内の最大振幅Wmaxと最小振幅Wminとの差Wdを、アンテナ21の振動幅として算出する。
【0069】
導出部12Dは、ステップS106で検出されたアンテナ21の振動幅が0より大きく且つ設定幅以下であるか否かを判断する(ステップS108)。導出部12Dは、測定対象電波52Aの周波数に対応する設定幅を設定幅対応テーブル16Aから読み取る。そして、導出部12Dは、ステップS106で検出されたアンテナ21の振動幅が0より大きく且つ読取った設定幅以下であるか否かを判断する。
【0070】
振動幅が設定幅を超える値であると判断した場合(ステップS108:No)、上記ステップS104へ戻る。一方、振動幅が0より大きく且つ設定幅以下であると判断した場合(ステップS108:Yes)、ステップS110へ進む。なお、導出部12Dは、振動幅が0であると判断した場合についても、ステップS108で肯定判断してよい。
【0071】
ステップS110では、発信制御部12Bが、第1発信電波50Aの発信停止を表す発信停止信号を固定波源40へ送信する(ステップS110)。発信停止信号を受付けた固定波源40は、第1発信電波50Aの発信を停止する。
【0072】
次に、発信制御部12Bは、測定対象電波52Aの発信開始を表す発信開始信号を通信システム30へ送信する(ステップS112)。発信開始信号を受付けた通信システム30は、測定対象電波52Aの発信を開始する。
【0073】
導出部12Dは、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aである第2受信電波52Bを取得する(ステップS114)。導出部12Dは、アンテナ21から通信部14を介して第2受信電波52Bを取得する。
【0074】
導出部12Dは、ステップS114で取得した第2受信電波52Bに基づいて、通信システム30の通信性能を導出する(ステップS116)。そして、導出部12Dは、ステップS116で導出した通信性能を、記憶部16へ記憶する(ステップS118)。
【0075】
そして、駆動制御部12Aは、駆動部25Aを制御することで、支持部25上に載置された車両Tを所定の回転角度ごとに回転駆動させる。導出部12Dは、車両Tが所定の回転角度回転駆動されるごとに、ステップS114の第2受信電波52Bの取得、ステップS116の通信性能の導出、およびステップS118の通信性能の記憶部16への記憶を繰り返す(ステップS120)。そして、所定の回転角度ごとの回転により支持部25の周方向への360°の回転が終了すると、ステップS122へ進む。
【0076】
ステップS122では、発信制御部12Bが、測定対象電波52Aの発信停止を表す発信停止信号を通信システム30へ送信する(ステップS122)。発信停止信号を受付けた通信システム30は、測定対象電波52Aの発信を停止する。
【0077】
次に、処理部12が測定処理を終了するか否かを判断する(ステップS124)。例えば、処理部12は、車両Tを中心とした半球C(図1参照)の外周に沿った全方位の測定位置の測定が完了したか否かを判別することで、ステップS124の判断を行う。ステップS124で否定判断すると(ステップS124:No)、上記ステップS100へ戻る。ステップS124で肯定判断すると(ステップS124:Yes)、本ルーチンを終了する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態の測定装置10は、検出部12Cと、導出部12Dと、を備える。検出部12Cは、測定対象電波52Aを発信する通信システム30が搭載された車両Tから測定対象電波52Aを受信するアンテナ21の振動幅を、アンテナ21で受信した第1発信電波50Aに基づいて検出する。導出部12Dは、振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aである第2受信電波52Bに基づいて、通信システム30の通信性能を導出する。
【0079】
車両Tなどの測定する対象が大型化するほど、対象に搭載された通信システム30の通信性能の導出には、大型化された測定機構20を用いる必要がある。しかし、測定機構20が大型化するほど、測定機構20の各部からアンテナ21に伝搬される振動の影響が強くなる。また、電波の影響を抑制する観点から、測定機構20を非金属素材で構成する場合がある。この場合、測定機構20によって支持されたアンテナ21は、より振動しやすくなる。
【0080】
ここで、従来技術では、アンテナ21の揺れが完全に停止するまで目視により待機してから測定を行っていた。すなわち、従来技術では、アンテナ21の振動中は高精度な測定を行うことは困難であった。
【0081】
一方、本実施形態の測定装置10の検出部12Cは、アンテナ21の振動幅を、アンテナ21で受信した第1発信電波50Aに基づいて検出する。そして、導出部12Dは、振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aである第2受信電波52Bに基づいて、通信システム30の通信性能を導出する。
【0082】
アンテナ21で受信した第1発信電波50Aに基づいてアンテナ21の振動幅を検出するため、本実施形態の測定装置10では、高精度にアンテナ21の揺れを検出することができる。また、本実施形態の測定装置10では、アンテナ21の揺れが完全に停止した状態を表す振動幅ゼロ“0”ではなく、検出した振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aである第2受信電波52Bに基づいて、通信システム30の通信性能を導出する。このため、本実施形態の測定装置10では、アンテナ21が振動していても高精度に通信システム30の通信性能を導出、すなわち測定することができる。
【0083】
従って、本実施形態の測定装置10は、通信システム30の通信性能を高精度に測定することができる。
【0084】
また、アンテナ21の振動が収束するまでに要する時間は、測定機構20のサイズ、測定機構20の重量、アンテナ21のサイズ、およびアンテナ21の重量などによって異なる。従来技術では、アンテナ21の揺れが完全に停止するまで目視により待機してから測定を行っていたため、測定に時間を要していた。
【0085】
一方、本実施形態の測定装置10は、検出した振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、アンテナ21で受信した第2受信電波52Bに基づいて通信システム30の通信性能を導出する。よって、本実施形態の測定装置10は、アンテナ21の揺れが完全に停止するまで待機することなく、通信システム30の通信性能を高精度に測定することができる。このため、本実施形態の測定装置10は、上記効果に加えて、測定時間の短縮を図ることができる。
【0086】
(第2の実施形態)
本実施形態では、アンテナ21の振動幅の検出に用いる第1受信電波として、固定波源40から受信した第1発信電波50Aに替えて、車両Tからの反射波の受信電波を用いる形態を説明する。
【0087】
なお、本実施形態において、上記実施形態と同様の機能または構成を示す部分には、同じ符号を付与して詳細な説明を省略する。
【0088】
図5は、本実施形態の測定システム2の一例を示す模式図である。測定システム2は、測定装置11と、測定機構20と、を備える。測定システム2は、測定装置10に替えて測定装置11を備え、固定波源40を備えない点以外は、上記実施形態の測定システム1と同様である。
【0089】
測定装置11は、第2受信電波52Bに基づいて通信システム30の通信性能を測定する装置である。第2受信電波52Bは、アンテナ21で受信した通信システム30の測定対象電波52Aである。本実施形態では、測定装置11は、アンテナ21から車両Tへ発信された振動検出用電波54Aの車両Tによる反射波である第1受信電波54Bを用いて、アンテナ21の振動幅を検出する。
【0090】
図6は、測定装置11の一例の機能ブロック図である。図6には、測定システム2に含まれる測定装置11以外の電気的構成部分も併せて示す。
【0091】
測定装置11は、処理部13と、通信部14と、記憶部16と、出力部18と、を備える。処理部13、通信部14、記憶部16、および出力部18は、例えば、バス19を介して通信可能に接続されている。通信部14、記憶部16、および出力部18は、上記実施形態と同様である。
【0092】
処理部13は、各種の情報処理を実行する。本実施形態では、処理部13は、駆動制御部12Aと、発信制御部13Bと、検出部13Cと、導出部12Dと、を備える。駆動制御部12A、発信制御部13B、検出部13C、および導出部12Dの一部または全ては、例えば、CPUなどの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、ICなどのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。また、駆動制御部12A、発信制御部13B、検出部13C、および導出部12Dの少なくとも1つを、ネットワークなどを介して測定装置11と通信可能に接続された外部の情報処理装置に搭載した構成としてもよい。
【0093】
発信制御部13Bは、通信システム30の電波の発信開始および発信停止を制御する。
【0094】
発信制御部13Bは、通信部14を介して通信システム30へ測定対象電波52Aの発信開始を表す発信開始信号を送信する。測定対象電波52Aの発信開始信号を受け付けた通信システム30は、無線による測定対象電波52Aの発信を開始する。また、発信制御部13Bは、通信部14を介して通信システム30へ、測定対象電波52Aの発信停止を表す発信停止信号を送信する。測定対象電波52Aの発信停止信号を受け付けた通信システム30は、測定対象電波52Aの発信を停止する。
【0095】
また、発信制御部13Bは、アンテナ21から振動検出用電波54Aを発信させる。
【0096】
振動検出用電波54Aは、アンテナ21の振動検出に用いる電波である。本実施形態では、振動検出用電波54Aが、変調波である形態を一例として説明する。例えば、発信制御部13Bは、予め定めた特定の周波数のパルス波を表す振動検出用電波54Aの発信信号を通信部14を介してアンテナ21へ出力する。アンテナ21は、通信部14を介して発信制御部13Bから発信信号を受付けると、該発信信号によって表される振動検出用電波54Aの発信を開始する。
【0097】
検出部13Cは、アンテナ21の振動幅を検出する。検出部13Cは、アンテナ21で受信した受信電波に基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する。
【0098】
本実施形態では、検出部12Cは、アンテナ21で受信した第1受信電波54Bに基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する。第1受信電波54Bは、アンテナ21から発信された振動検出用電波54Aが車両Tによって反射した反射波を、アンテナ21で受信した受信電波である。すなわち、アンテナ21は、第1受信電波54Bの車両Tによる反射波である第1受信電波54Bを受信する。検出部12Cは、第1受信電波54Bに基づいてアンテナ21の振動幅を検出する。
【0099】
図7は、検出部12Cによるアンテナ21の振動幅の検出の一例の説明図である。
【0100】
検出部12Cは、振動検出用電波54Aおよび第1受信電波54Bに基づいて、アンテナ21と車両Tとの距離Rを算出する。
【0101】
例えば、検出部12Cは、公知のタイムドメイン法などを用いて、振動検出用電波54Aの発信から該振動検出用電波54Aの反射波である第1受信電波54Bの受信までの時間を導出する。そして、検出部12Cは、振動検出用電波54Aの送信から該振動検出用電波54Aの反射波である第1受信電波54Bを受信するまでの時間と、電波の速さと、を用いて距離Rを算出する。
【0102】
なお、発信制御部13Bは、FMCW(周波数連続変調)方式による変調波を振動検出用電波54Aとしてアンテナ21から発信させてもよい。この場合、検出部12Cは、振動検出用電波54Aおよび第1受信電波54BからIF(Intermediate Frequency)信号を生成し、IF信号に対して公知の信号処理を行うことで、距離Rを算出する。例えば、検出部12Cは、IF信号をAD(アナログデジタル)変換し、さらにフーリエ変換(FFT)することで周波数スペクトルを導出する。そして、検出部12Cは、導出した周波スペクトルから距離Rを算出する。
【0103】
また、検出部12Cは、振動検出用電波54Aの強度と、第1受信電波54Bの強度と、の差に基づいて、アンテナ21と車両Tとの距離Rを算出してもよい。例えば、検出部12Cは、振動検出用電波54Aの振幅強度と、第1受信電波54Bの振幅強度と、の差に対応する距離Rを予め対応付けて記憶部16に記憶する。そして、検出部12Cは、振動検出用電波54Aの振幅強度と、第1受信電波54Bの振幅強度と、の差に対応する距離Rを記憶部16から読み取ることで、距離Rを導出してもよい。
【0104】
そして、検出部12Cは、算出したアンテナ21と車両Tとの距離Rと、設定距離R’と、の差を算出する。設定距離R’は、アンテナ21の実空間における想定位置と車両Tとの設定上の距離である。アンテナ21の実空間における想定位置には、駆動制御部12Aによる駆動部23A、駆動部24A、および駆動部25Aの制御によって導出される、アンテナ21の半球Cの外面における位置を用いればよい。また、車両Tの位置には、支持部25上における車両Tのサイズを加味した位置を予め算出して用いればよい。
【0105】
アンテナ21が振動しない場合、距離Rと設定距離R’とは同じ値となる。しかし、図7に示すように、例えば、アンテナ21がアンテナ21Aの位置およびアンテナ21Bの位置などの間で振動すると、距離Rと設定距離R’とは異なる値となる。
【0106】
検出部12Cは、距離Rと設定距離R’との差と、アンテナ21の揺れ角θおよび揺れ量W’の少なくとも一方を表す振動幅と、を予め対応付けて記憶部16に記憶する。そして、検出部12Cは、距離Rと設定距離R’との差に対応する振動幅を記憶部16から読み取ることで、アンテナ21の揺れ角θおよび揺れ量W’の少なくとも一方を表す振動幅を検出する。
【0107】
検出部12Cは、距離Rと設定距離R’との差から、計算によって振動幅を算出してもよい。この場合、例えば、検出部12Cは、距離Rおよび設定距離R’を用いた三角関数などにより、アンテナ21の揺れ角θおよび揺れ量W’の少なくとも一方を表す振動幅を算出すればよい。
【0108】
なお、検出部12Cは、振動検出用電波54Aと第1受信電波54Bとの位相のずれから算出した、アンテナ21と車両Tとの距離Rの設定期間における推移から、アンテナ21の振動幅を算出してもよい。例えば、検出部12Cは、アンテナ21と車両Tとの距離Rについて、設定期間における最大の距離Rと最小の距離Rとの差を、アンテナ21の振動幅として算出してもよい。
【0109】
図6に戻り説明を続ける。導出部12Dは、上記実施形態と同様である。本実施形態では、導出部12Dは、検出部12Cに替えて検出部13Cで検出されたアンテナ21の振動幅について、振動幅が0より大きく且つ0より大きい設定幅以下となったときに、アンテナ21で受信した第2受信電波52Bに基づいて通信システム30の通信性能を導出すればよい。
【0110】
次に、本実施形態の測定装置11で実行する情報処理の流れの一例を説明する。
【0111】
図8は、測定装置11で実行される情報処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートが実行される直前の状態では、アンテナ21および通信システム30は電波を発信していない状態であるものとして説明する。また、図8に示すフローチャートの実行前に、導出部12Dは、通信システム30から発信される測定対象電波52Aの周波数を取得しているものとして説明する。
【0112】
駆動制御部12Aは、次の測定位置へアンテナ21を移動制御する(ステップS200)。駆動制御部12Aは、駆動部23Aおよび駆動部24Aを駆動制御することにより、車両Tを中心とした半球C(図5参照)の外周におけるアンテナ21の位置を、該外周における半球Cの頂点部と半球Cの周縁部との間の次の測定位置へと移動させる。
【0113】
発信制御部13Bは、振動検出用電波54Aの発信信号を、通信部14を介してアンテナ21へ出力する(ステップS202)。振動検出用電波54Aの発信信号を受付けたアンテナ21は、振動検出用電波54Aの発信を開始する。
【0114】
検出部13Cは、アンテナ21で受信した、振動検出用電波54Aの車両Tによる反射波である第1受信電波54Bを取得する(ステップS204)。検出部13Cは、アンテナ21から通信部14を介して第1受信電波54Bを取得する。
【0115】
検出部13Cは、ステップS204で取得した第1受信電波54Bに基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する(ステップS206)。
【0116】
導出部12Dは、ステップS206で検出されたアンテナ21の振動幅が設定幅以下であるか否かを判断する(ステップS208)。導出部12Dは、測定対象電波52Aの周波数に対応する設定幅を設定幅対応テーブル16Aから読み取る。そして、導出部12Dは、ステップS206で検出されたアンテナ21の振動幅が読取った設定幅以下であるか否かを判断する。
【0117】
振動幅が設定幅を超える値であると判断した場合(ステップS208:No)、上記ステップS204へ戻る。一方、振動幅が設定幅以下であると判断した場合(ステップS208:Yes)、ステップS210へ進む。
【0118】
ステップS210では、発信制御部13Bが、アンテナ21への振動検出用電波54Aの発信信号の送信を停止する(ステップS210)。振動検出用電波54Aの発信信号の送信が停止されたアンテナ21は、振動検出用電波54Aの発信を停止する。
【0119】
次に、発信制御部13Bは、測定対象電波52Aの発信開始を表す発信開始信号を通信システム30へ送信する(ステップS212)。発信開始信号を受付けた通信システム30は、測定対象電波52Aの発信を開始する。
【0120】
導出部12Dは、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aである第2受信電波52Bを取得する(ステップS214)。導出部12Dは、アンテナ21から通信部14を介して第2受信電波52Bを取得する。
【0121】
導出部12Dは、ステップS214で取得した第2受信電波52Bに基づいて、通信システム30の通信性能を導出する(ステップS216)。そして、導出部12Dは、ステップS216で導出した通信性能を、記憶部16へ記憶する(ステップS218)。
【0122】
そして、駆動制御部12Aは、駆動部25Aを制御することで、支持部25上に載置された車両Tを所定の回転角度ごとに回転駆動させる。導出部12Dは、車両Tが所定の回転角度回転駆動されるごとに、ステップS214の第2受信電波52Bの取得、ステップS216の通信性能の導出、およびステップS218の通信性能の記憶部16への記憶を繰り返す(ステップS220)。そして、支持部25の所定の回転角度ごとの回転により支持部25の周方向への360°の回転が終了すると、ステップS222へ進む。
【0123】
ステップS222では、発信制御部13Bが、測定対象電波52Aの発信停止を表す発信停止信号を通信システム30へ送信する(ステップS222)。発信停止信号を受付けた通信システム30は、測定対象電波52Aの発信を停止する。
【0124】
次に、処理部13が測定処理を終了するか否かを判断する(ステップS224)。例えば、処理部13は、車両Tを中心とした半球C(図5参照)の外周に沿った全方位の測定位置の測定が完了したか否かを判別することで、ステップS224の判断を行う。ステップS224で否定判断すると(ステップS224:No)、上記ステップS200へ戻る。ステップS224で肯定判断すると(ステップS224:Yes)、本ルーチンを終了する。
【0125】
以上説明したように、本実施形態の測定装置11の検出部13Cは、アンテナ21から車両Tへ発信された振動検出用電波54Aの車両Tによる反射波である第1受信電波54Bに基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する。すなわち、本実施形態の検出部13Cは、振動検出用電波54Aと第1受信電波54Bとの位相のずれなどに基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する。そして、導出部12Dは、振動幅が0より大きい設定幅以下となったときに、アンテナ21で受信した測定対象電波52Aである第2受信電波52Bに基づいて、通信システム30の通信性能を導出する。
【0126】
このため、本実施形態の測定装置11は、上記実施形態と同様に、アンテナ21に揺れが生じている場合であっても、通信システム30の通信性能を高精度に測定することができる。
【0127】
また、本実施形態の測定装置11では、アンテナ21から車両Tへ発信された振動検出用電波54Aの車両Tによる反射波である第1受信電波54Bに基づいて、アンテナ21の振動幅を検出する。このため、本実施形態の測定装置11は、加速度センサなどのアンテナ21の振動測定用の装置を別途設けることなく、アンテナ21の振動幅を検出することができる。
【0128】
このため、本実施形態の測定装置11は、上記効果に加えて、装置の複雑化を抑制することができる。
【0129】
次に、上記実施形態の測定装置10および測定装置11のハードウェア構成の一例を説明する。
【0130】
図9は、上記実施形態の測定装置10および測定装置11の一例のハードウェア構成図である。
【0131】
上記実施形態の測定装置10および測定装置11は、CPU60Aなどの制御装置と、ROM(Read Only Memory)60BやRAM(Random Access Memory)60CやHDD(ハードディスクドライブ)などの記憶装置と、各種機器とのインターフェースであるI/F部60Dと、各部を接続するバス60Eとを備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
【0132】
上記実施形態の測定装置10および測定装置11では、CPU60Aが、ROM60BからプログラムをRAM60C上に読み出して実行することにより、上記各部がコンピュータ上で実現される。
【0133】
なお、上記実施形態の測定装置10および測定装置11で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、HDDに記憶されていてもよい。また、上記実施形態の測定装置10および測定装置11で実行される上記各処理を実行するためのプログラムは、ROM60Bに予め組み込まれて提供されていてもよい。
【0134】
また、上記実施形態の測定装置10および測定装置11で実行される上記処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)、フレキシブルディスク(FD)等のコンピュータで読み取り可能な記憶媒体に記憶されてコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるようにしてもよい。また、上記実施形態の測定装置10および測定装置11で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するようにしてもよい。また、上記実施形態の測定装置10および測定装置11で実行される上記処理を実行するためのプログラムを、インターネットなどのネットワーク経由で提供または配布するようにしてもよい。
【0135】
なお、上記には、本発明の実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0136】
10、11 測定装置
12A 駆動制御部
12B、13B 発信制御部
12C、13C 検出部
12D 導出部
21 アンテナ
30 通信システム
40 固定波源
図1
図2
図3
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図5
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図7
図8
図9