(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】ハイブリッド型ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 11/215 20160101AFI20241226BHJP
H02K 37/04 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H02K11/215
H02K37/04 501Y
(21)【出願番号】P 2020135233
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000103792
【氏名又は名称】オリエンタルモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】寳田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】染谷 雅行
(72)【発明者】
【氏名】小関 栄男
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-107584(JP,U)
【文献】特開2000-161989(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094042(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/046854(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/010141(WO,A1)
【文献】特許第6647478(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/215
H02K 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
双方向に回転可能な回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ双方向に回転可能なロータであって、前記ロータは、軸方向に間隔を置いて配置された軟磁性体製の第1ロータ磁極部及び第2ロータ磁極部と、前記第1ロータ磁極部と前記第2ロータ磁極部とに挟まれ
軸方向に着磁された永久磁石とを備え、前記ロータの軸方向両端面のうち一方の軸方向端面に、
同形状であり、前記ロータの周方向に沿って180度の間隔を置いて配置された軟磁性体製の
2つの突起部が設けられ
、前記2つの突起部は前記永久磁石により同一磁極に磁化され磁界を発生させる、ロータと、
大バルクハウゼンジャンプを発現する細長の磁性素子と、前記磁性素子に巻回されたコイルとを
有する第1磁気センサ及び第2磁気センサであって、前記ロータが回転すると前記
2つの突起部により
円が描かれ
、前記
2つの突起部
の上面及び側面の単一磁極面からの磁界
が前記第1磁気センサ及び第2磁気センサにより検出され、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサは、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサの出力信号が90度の位相関係となるように、前記円と同軸となる円のそれぞれの接線と平行に配置されており、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサがそれぞれ、前記それぞれの接点と前記円の径方向又は前記回転軸方向に対向し、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサの出力信号から前記ロータの回転が検出される、第1磁気センサ及び第2磁気センサと
を備えるハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項2】
双方向に回転可能な回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ双方向に回転可能なロータであって、前記ロータは、軸方向に間隔を置いて配置された軟磁性体製の第1ロータ磁極部及び第2ロータ磁極部と、前記第1ロータ磁極部と前記第2ロータ磁極部とに挟まれ軸方向に着磁された永久磁石とを備え、前記ロータの軸方向両端面のうち一方の軸方向端面に、同形状であり、前記ロータの周方向に沿って180度の間隔を置いて、かつ前記回転軸からの距離が異なるように配置された軟磁性体製の2つの突起部が設けられ、前記2つの突起部は前記永久磁石により同一磁極に磁化され磁界を発生させる、ロータと、
大バルクハウゼンジャンプを発現する細長の磁性素子と、前記磁性素子に巻回されたコイルとを有する第1磁気センサ及び第2磁気センサであって、前記2つの突起部の上面及び側面の単一磁極面からの磁界が前記第1磁気センサ及び第2磁気センサにより検出され、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサは、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサの出力信号が180度の位相関係となるように、前記ロータが回転すると前記2つの突起部のうち前記回転軸からの距離が大きい突起部により描かれる円と同軸となる円のそれぞれの接線と平行に配置されており、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサがそれぞれ、前記それぞれの接点と前記円の径方向又は前記回転軸方向に対向し、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサの出力信号から前記ロータの回転が検出される、第1磁気センサ及び第2磁気センサと
を備えるハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項3】
双方向に回転可能な回転軸と、
前記回転軸に取り付けられ双方向に回転可能なロータであって、前記ロータは、軸方向に間隔を置いて配置された軟磁性体製の第1ロータ磁極部及び第2ロータ磁極部と、前記第1ロータ磁極部と前記第2ロータ磁極部とに挟まれ軸方向に着磁された永久磁石とを備え、前記ロータの軸方向両端面のうち一方の軸方向端面に、異なる形状であり、前記ロータの周方向に沿って180度の間隔を置いて配置された軟磁性体製の2つの突起部が設けられ、前記2つの突起部は前記永久磁石により同一磁極に磁化され磁界を発生させる、ロータと、
大バルクハウゼンジャンプを発現する細長の磁性素子と、前記磁性素子に巻回されたコイルとを有する第1磁気センサ及び第2磁気センサであって、前記ロータが回転すると前記2つの突起部により円が描かれ、前記2つの突起部の上面及び側面の単一磁極面からの磁界が前記第1磁気センサ及び第2磁気センサにより検出され、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサは、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサの出力信号が180度の位相関係となるように、前記円と同軸となる円のそれぞれの接線と平行に配置されており、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサがそれぞれ、前記それぞれの接点と前記円の径方向又は前記回転軸方向に対向し、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサの出力信号から前記ロータの回転が検出される、第1磁気センサ及び第2磁気センサと
を備えるハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項4】
前記磁性素子の長手方向の中心と前記接線上の接点とが、一致している、請求項
1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
【請求項5】
前記2つの磁気センサの各々が、前記磁性素子の両端部に設けられた軟磁性部材をさらに備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多回転計数機能を備えたハイブリッド型ステッピングモータシステムの技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大バルクハウゼンジャンプを発現する磁性素子が特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1に記載の磁性素子は、結晶質金属からなるワイヤ形状をしたものでウィーガンドワイヤとして知られる。特許文献2に記載の磁性素子は、非結晶質金属からなるワイヤ形状又はリボン形状をなしている。
【0003】
大バルクハウゼンジャンプを発現する磁性素子を回転検出に用いた技術が特許文献3~6に記載されている。特許文献3においては、1つの磁石の単一磁極面の中心から放射線状に伸びる磁束線が、1つの磁性素子により検出される。特許文献4によれば、1つの磁性素子、1つの励磁器磁石、正転反転を識別する追加センサ要素(例えばホール素子)が設けられる。特許文献5によれば、磁性素子に巻かれたコイルに電流を流す励磁機能によって磁性素子の磁区方向を識別し、補正が行われる。特許文献6によれば、磁性素子とコイルとによる3つの磁気検出部と、1回転で2周期の交番磁界を印加するための4つの磁気発生部とが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭53-137641号公報
【文献】特開平5-195170号公報
【文献】特開2000-161989号公報
【文献】特許第4712390号公報
【文献】特開2012-225917号公報
【文献】特許第5511748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術によれば、回転方向の検出は可能であっても回転数を正確に検出できない場合がある。あるいは、回転方向及び回転数を検出できたとしても、部品点数が比較的多くなったり、識別に必要な要素(ホール素子、励磁機能)に電力を供給しなければいけないことから構造が複雑になる傾向がある。
【0006】
従来技術に鑑み、本発明は、回転方向及び回転数の正確な検出が可能かつ比較的簡単な構造のハイブリッド型ステッピングモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るハイブリッド型ステッピングモータは、双方向に回転可能な回転軸と、前記回転軸に取り付けられ双方向に回転可能なロータであって、前記ロータは、軸方向に間隔を置いて配置された軟磁性体製の第1ロータ磁極部及び第2ロータ磁極部と、前記第1ロータ磁極部と前記第2ロータ磁極部とに挟まれ軸方向に着磁された永久磁石とを備え、前記ロータの軸方向両端面のうち一方の軸方向端面に、同形状であり、前記ロータの周方向に沿って180度の間隔を置いて配置された軟磁性体製の2つの突起部が設けられ、前記2つの突起部は前記永久磁石により同一磁極に磁化され磁界を発生させる、ロータと、大バルクハウゼンジャンプを発現する細長の磁性素子と、前記磁性素子に巻回されたコイルとを有する第1磁気センサ及び第2磁気センサであって、前記ロータが回転すると前記2つの突起部により円が描かれ、前記2つの突起部の上面及び側面の単一磁極面からの磁界が前記第1磁気センサ及び第2磁気センサにより検出され、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサは、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサの出力信号が90度の位相関係となるように、前記円と同軸となる円のそれぞれの接線と平行に配置されており、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサがそれぞれ、前記それぞれの接点と前記円の径方向又は前記回転軸方向に対向し、前記第1磁気センサ及び第2磁気センサの出力信号から前記ロータの回転が検出される、第1磁気センサ及び第2磁気センサとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転方向及び回転数の正確な検出が可能かつ比較的簡単な構造のハイブリッド型ステッピングモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】ハイブリッド型ステッピングモータの斜視断面図である。
【
図1B】ハイブリッド型ステッピングモータの斜視断面図である。
【
図2A】第1実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの斜視図である。
【
図2B】第1実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの上面図である。
【
図2C】第1実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの正面図である。
【
図2D】第1実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの上面図である。
【
図3A】(A)及び(B)は、第1実施形態の変形例に基づくロータの斜視図である。
【
図3B】第1実施形態の変形例に基づくロータの上面図である。
【
図3C】第1実施形態の変形例に基づくロータの正面図である。
【
図3D】第1実施形態の変形例に基づくハイブリッド型ステッピングモータの斜視図である。
【
図4A】第2実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの斜視図である。
【
図4B】第2実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの平面図である。
【
図5A】第3実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの斜視図である。
【
図5B】第3実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの正面図である。
【
図5C】第3実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの上面図である。
【
図6A】(A)は、第3実施形態の第1変形例に基づくロータの斜視図である。(B)は、第3実施形態の第1変形例に基づくロータの上面図である。
【
図6B】(A)は、第3実施形態の第2変形例に基づくロータの斜視図である。(B)は、第3実施形態の第2変形例に基づくロータの上面図である。
【
図7A】(A)は、第3実施形態の第3変形例に基づくロータの斜視図である。(B)は、第3実施形態の第3変形例に基づくロータの上面図である。
【
図7B】(A)は、第3実施形態の第4変形例に基づくロータの斜視図である。(B)は、第3実施形態の第4変形例に基づくロータの上面図である。
【
図7C】(A)は、第3実施形態の第5変形例に基づくロータの斜視図である。(B)は、第3実施形態の第5変形例に基づくロータの上面図である。
【
図7D】第3実施形態の第5変形例に基づくハイブリッド型ステッピングモータの斜視図である。
【
図8A】第4実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの斜視図である。
【
図8B】第4実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータの上面図である。
【
図9】磁気センサの他の実施形態を示す説明図である。
【
図10A】第1実施形態及び第2実施形態に基づくモータの正転時における回転位置と検出磁界との関係を示すグラフである。
【
図10B】第1実施形態及び第2実施形態に基づくモータの反転時における回転位置と検出磁界との関係を示すグラフである。
【
図11A】第3実施形態及び第4実施形態に基づくモータの正転時における回転位置と検出磁界との関係を示すグラフである。
【
図11B】第3実施形態及び第4実施形態に基づくモータの反転時における回転位置と検出磁界との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0011】
[ハイブリッド型ステッピングモータ]
図1Aに、ハイブリッド型ステッピングモータ10を示す。ハイブリッド型ステッピングモータ10は、ステータ11とロータ12と回転軸12cとを有する。ロータ12は、回転軸12cに取り付けられており、軟磁性体製のAロータ12a及びBロータ12bと、永久磁石12dとを備える。Aロータ12aとBロータ12bとは軸方向に間隔を置いて配置されており、Aロータ12aとBロータ12bとに挟まれるように永久磁石12dが配置されている。永久磁石12dは軸方向に着磁されている。
【0012】
Aロータ12a及びBロータ12bは永久磁石12dによって軸方向に磁化されており、Aロータ12aがN極の場合、Bロータ12bがS極となる。Aロータ12a及びBロータ12bの外周面には複数の小歯が周方向等間隔に形成されており、Aロータ12aの小歯とBロータ12bの小歯とは機械的に1/2ピッチずれている。
なお、Aロータ12a及びBロータ12bをそれぞれ、第1ロータ磁極部12a及び第2ロータ磁極部12bと呼ぶこともできる。
【0013】
ステータ11は、略円筒状であり、内周面には径方向内側に向かって突出した複数の磁極部が周方向等間隔に形成されている。各磁極部の、ロータ12と対向する面には、複数の小歯が形成されている。各磁極部には巻線(不図示)が巻かれている。径方向に向かい合う2つの磁極部には同一の巻線が巻かれており、その巻線に電流を流すと両磁極部が同じ極性に磁化される。このように、向かい合う2つの磁極部により1つの相が構成される。
【0014】
A相からE相までの5つの相があるタイプは5相ステッピングモータと呼ばれ、A相とB相の2つの相があるタイプは2相ステッピングモータと呼ばれる。
【0015】
Aロータ12a、Bロータ12bの外周面の小歯から径方向の磁界が発生する。さらに、ロータ12の軸方向両端面(具体的には、Aロータ12aの上面及びBロータ12bの下面)からも図中の矢印方向に漏れ磁界が発生する。以下に述べる実施形態は漏れ磁界を利用するものである。“漏れた”磁界はモータ設計によっては小さすぎて検出に十分な磁界とならないこともあるため、十分な磁界を得るために、Aロータ及びBロータの軸方向の全長をステータの軸方向の全長に対して長くしたり短くしたりするなどして、意図的に漏れ磁界を増やすことも有効である。
【0016】
なお、
図1Bに示すように、複数のロータ12が回転軸方向に配置されてなるロータスタックを採用することも可能である。
【0017】
[第1実施形態]
図2A~
図2Dに、第1実施形態に基づくハイブリッド型ステッピングモータ10を示す。
ハイブリッド型ステッピングモータ10は、
図1Aに示した構成に加え、第1磁気センサ20と、第2磁気センサ30と、Aロータ12aの軸方向上端面に設けられた2つの突起部40a及び40bを備えている。
第1磁気センサ20は、大バルクハウゼンジャンプを発現する細長の磁性素子21と、この磁性素子に巻回されたコイル22とを備えている。同様に、第2磁気センサ30は、大バルクハウゼンジャンプを発現する細長の磁性素子31と、この磁性素子に巻回されたコイル32とを備えている。
【0018】
突起部40a、40bは、同じ形状で軟磁性体製である。これらの突起部は、回転軸12cに関して180度をなすように配置されている。突起部40a、40bは、円柱状の形状を成し、Aロータ12aに設けた穴に圧入等で固定されている。突起部40a、40bの軸方向は回転軸と平行である。ロータの外周部に小歯が形成されている関係上、突起部をAロータの小歯部の歯底から間隔を置いて配置し、鉄損の発生を抑制することが好ましい。
【0019】
磁化されたAロータ12aの端面外周に突起部40a、40bを設けたことで、両突起部は、磁界発生部となり、Aロータ12aと同じN極(又はS極)の単一磁極に磁化される。突起部40a,40bは同じ形状、材質であることから、大きさも方向も同じ磁界が両突起部の上面より発生する。
図2Bに、突起部40a及び40bの上面から漏洩する磁束線の方向を矢印により示している。突起部40a、40bの上面はそれぞれ、単一磁極面となり、漏洩する磁束線は、その中心より放射状に延びる。矢印のグラデーションは磁束密度を表し、濃いほど磁束密度が大きいことを示す。後述する円50上では、単一磁極面の中心にて互いに逆方向の磁束線が延びていることが分かる。突起部による、円50上の磁界強度は、最大で、安定化磁界以上である。安定化磁界については後述説明する。
【0020】
ロータ12が回転すると、突起部40a及び40bの単一磁極面により第1の円が描かれる。この第1の円を軸方向上方に平行移動させた後の第2の円を符号50により示す(
図2B及び
図2C)。第2の円50は第1の円と同軸である。
図2Dに示すように、第1磁気センサ20及び第2磁気センサ30は、各出力信号が電気角で90°の位相関係となるよう、回転軸12cを基準とした円50上の2つの位置50a及び50bにそれぞれ配置されている。回転軸の上方から両磁気センサを見たときに、回転軸12cを基準として第1磁気センサ20を機械角で反時計回りに90°回転させると、第2磁気センサ30と重なる。また、第1磁気センサ20及び第2磁気センサ30は、長手方向が、位置50a及び50bを通る円50の接線51及び52と平行になるように配置されている。位置50a及び50bを接点と呼ぶこともできる。
【0021】
磁性素子21は、例えばワイヤ形状、リボン状、成膜タイプとすることができるが、これらに限定されず、大バルクハウゼンジャンプを発現する磁性体であればよい。磁性素子21の長手方向を、磁気異方性の磁化容易方向とすることができる。磁性素子21は、芯部とその芯部を取り囲むように設けられた表皮部とを備えている。一例として、芯部は弱い磁界でも磁化方向の反転が起きるソフト層であり、表皮部は強い磁界を与えないと磁化方向が反転しないハード層である。コイル22には、磁性素子21に大バルクハウゼンジャンプが発現したときにパルス信号が誘発される。
磁性素子31も磁性素子21と同様である。コイル32には、磁性素子31に大バルクハウゼンジャンプが発現したときにパルス信号が誘発される。
【0022】
なお、コイル22及び32は、両コイルに生じた信号を処理する回路(不図示)に接続され、回転検出に使われる。
【0023】
磁性素子21の長手方向は、
図2Dの紙面上下方向と平行である。磁性素子21の長手方向に関して、
図2Dの紙面下方向をプラス方向と呼び、紙面上方向をマイナス方向と呼ぶ。
磁性素子31の長手方向は、
図2Dの紙面左右方向と平行である。磁性素子31の長手方向に関して、
図2Dの紙面右方向をプラス方向と呼び、紙面左方向をマイナス方向と呼ぶ。
ハード層とソフト層の磁化方向が同方向(例えば、マイナス方向)であるときに、その方向とは反対方向(例えば、プラス方向)の外部磁界強度が増加してソフト層の磁化方向が反転する磁界強度に達すると、ソフト層の磁化方向が反転する。このとき、大バルクハウゼンジャンプが発現し、当該磁性素子に巻かれたコイルにパルス信号が誘発される。ソフト層の磁化方向が反転するときの磁界強度を「動作磁界」と呼ぶ。
【0024】
上述の外部磁界強度がさらに増加し、ハード層の磁化方向が反転する磁界強度に達すると、ハード層の磁化方向も反転する。ハード層の磁化方向が反転するときの磁界強度を「安定化磁界」と呼ぶ。
【0025】
大バルクハウゼンジャンプが発現するためには、ハード層とソフト層の磁化方向が一致していることを前提として、ソフト層のみ磁化方向が反転することが必要である。ハード層とソフト層の磁化方向が単一磁区を形成していない不一致の状態で、ソフト層のみ磁化反転したとしても、パルス信号は生じないか、あるいは生じたとしても非常に小さく、上記回路が回転検出に用いることは困難である。
【0026】
Aロータ12aに設けられた突起部40a及び40bの一方の単一磁極面が磁気センサ付近を通過するときに、磁性素子に対しその延伸方向に安定化磁界が印加され、磁性素子が単一磁区に磁化する。その後、回転が続き、突起部40a及び40bの他方の単一磁極面が磁気センサに近づくと、単一磁区の磁化方向とは逆方向の動作磁界が磁性素子の延伸方向に印加され、大バルクハウゼン現象が発現する。ロータ12が回転するときの、突起部の単一磁極面から印加される磁界と2つの磁気センサ20、30の出力信号の関係を詳しく説明する。
【0027】
図10Aに、正転時の回転位置と、第1磁気センサ20に印加される磁界Ha及び第2磁気センサ30に印加される磁界Hbとの関係を示す。また、
図10Bに、反転時の回転位置と磁界Ha及び磁界Hbとの関係を示す。正転及び反転はそれぞれ、ハイブリッド型ステッピングモータ10を軸方向上方から見たときの右回転及び左回転のことである。両図とも、突起部40aから第1磁気センサ20に印加される磁界Haを実線で示し、突起部40bから第1磁気センサ20に印加される磁界Haを一点鎖線で示す。また、突起部40aから第2磁気センサ30に印加される磁界Hbを破線で示し、突起部40bから第2磁気センサ30に印加される磁界Hbを二点鎖線で示す。±H1は動作磁界強度、±H2は安定化磁界強度である。
【0028】
図10Aにおいて、正転時に第1磁気センサ20に生じる正パルス信号を符号Aで示し、信号Aの出力の前提となる安定化磁界を符号Asで示す。さらに、第2磁気センサ30に生じる正パルス信号を符号Bで示し、信号Bの出力の前提となる安定化磁界を符号Bsで示す。
図10Bにおいて、反転時に第1磁気センサ20に生じる負パルス信号を符号Cで示し、信号Cの出力の前提となる安定化磁界を符号Csで示す。さらに、第2磁気センサ30に生じる負パルス信号を符号Dで示し、信号Dの出力の前提となる安定化磁界を符号Dsで示す。
【0029】
第1磁気センサ20及び第2磁気センサ30には、互いに180度の等間隔をもった位置にある突起部40aと突起部40bの磁界が印加され、第1磁気センサ20と第2磁気センサ30の信号は、電気角の設置位置の関係から90度の位相関係となる。各磁気センサからは正転1回転で同じ符号の信号が2回出力され、反転1回転では、正転時とは異なる符号で同じ信号が2回出力される。2つの磁気センサから、正転1回転で信号A、Bが2回ずつ出力され、反転1回転で信号C、Dが2回ずつ出力される。磁気センサ20の磁性素子21の中心を位置50aに一致させ、磁気センサ30の磁性素子31の中心を位置50bに一致させれば、正反転の出力信号の波形品位(波高と半値幅)が同じとなる。
【0030】
すなわち、ハイブリッド型ステッピングモータの基幹部品であるロータに、その一部として突起部を設けることで、大バルクハウゼン効果を利用した磁気センサにて直接、モータの磁石磁界が検出可能となる。磁性素子の磁化の状態によっては、大きさが小さく評価困難なパルス信号が生じうるが、このようなパルス信号に依存することなく、多回転の計数が可能となる。また、ロータ12の永久磁石12dの他に永久磁石がないため、ロータ12以外の漏洩磁界の磁気センサへの影響を低減する手段を講じる必要性がないことも利点となる。従って、安価で安定性のある構成となる。
【0031】
このように、本実施形態によれば、回転方向及び回転数の正確な検出が可能かつ比較的簡単な構造のハイブリッド型ステッピングモータが提供される。
【0032】
[第1実施形態の変形例]
突起部は、同形状で、ロータの軸方向端面に等間隔に設けられ、軟磁性体製であれば、その形状は円柱状に限定されず、また固定方法も圧入に限定されない。突起部の変形例を
図3A~
図3Dに示す。
図3A(A)に示すように、ロータ12の軸方向端面に、軟磁性体製の複数の薄板を積み重ねてもよい。各薄板は、回転軸12cが貫通する穴が設けられたリング部と、リング部から径方向外側に延びる2つの延伸部とを備えている。両延伸部は一直線上にある。両延伸部をそれぞれ、突起部40a及び40bと呼ぶことができる。
なお、
図3A(B)に示すようにリング部と2つの延伸部とを、積層型ではなく、単一部材で構成してもよい。
【0033】
図3Bに示すように、突起部40a及び40bの上面に単一磁極面が形成され、漏洩する磁束線は、突起部40a及び40bから外側に延びる。Aロータ、Bロータが積層薄板で構成される場合は、同じ積層の工程を経ることができ手間を要することなく製造できる利点がある。さらに突起部はロータと一体化され、単一磁極面の磁力が高まり、磁気センサの設置許容範囲が広がる利点がある。
【0034】
この形状の他の利点として、
図3Cに示すように各突起部の側面(軸方向に平行な面)にも単一磁極面が形成され、漏洩する磁束線は、各突起部から外側に延びる。
図3Dに示すように突起部40a、40bの側面の単一磁極面に対して、2つの磁気センサ20、30を、磁界強度が最大で安定化磁界の強度以上になる間隔で径方向に対向させる。第1磁気センサ20と第2磁気センサ30の各出力信号が電気角で90°位相になるよう、回転軸12cを基準とした円50上の2つの位置50aと50bに両磁気センサを配置する。これにより、磁気センサを突起部の上方向ではなく外周に配置することができ、軸方向寸法(モーター長さ)をより小さくすることができる。
【0035】
[第2実施形態]
第1実施形態では突起部を2つとしたが、第2実施形態では4つの突起部が設けられる。
図4A及び
図4Bを参照しながら以下に説明する。
図4Aに示すように、Aロータ12aの上面に同形状の4つの突起部40a、40b、40c、40dが設けられ、これらの4つの突起部は回転軸12cに関して周方向90度間隔で配置されている。それに伴い、
図4Bに示すように回転軸の上方から両磁気センサを見たときに、回転軸12cを基準として第2磁気センサ30は、第1磁気センサ20を反時計回りに機械角で45°または(45°+180°=225°)回転させた位置にある。
図4Bでは225°である。これにより、第1磁気センサ20と第2磁気センサ30の各出力信号が電気角で90°位相になる。
【0036】
4つの突起部が設けられ、
図10A及び
図10Bにおける出力信号の360°が本実施例では180°に相当することから、磁気センサからは正転1回転で同じ符号の信号が4回出力され、反転1回転では、正転とは異なる符号で同じ信号が4回出力される。2つの磁気センサから、正転1回転でA、B、反転1回転でC、Dの4種類信号が4回出力される。第1実施形態に比べて、出力信号の分解能が2倍となり、回転検出の精度が向上する。
【0037】
突起部からの磁界が互いに干渉しない間隔で周方向に配置されていれば、突起部の数をさらに増すことが可能である。また、第1実施形態の突起部の変形例は第2実施形態にも適応可能である。
【0038】
[第3実施形態]
図5A~
図5Cに示すように、ハイブリッド型ステッピングモータ10は、第1磁気センサ20及び第2磁気センサ30と、Aロータ12aの軸方向上端面に設けられた突起部40a及び40a’を備えている。突起部40a、40a’は、軟磁性体製であり、回転軸12cに関して180度間隔で配置されている。突起部40a、40a’は、いずれも円柱状であるが、
図5Bに示すように突起部40a’の高さh’は、突起部40aの高さhよりも小さい。磁化されたAロータ12aの端面外周に突起部40a、40a‘を設けたことで、突起部は磁界発生部となり、Aロータ12aと同じN極(又はS極)の単一磁極に磁化される。突起部40a,40a’は高さが異なる(h>h‘)ことから、磁気センサに対して印加される磁界強度の最大値が異なる。
【0039】
円50は、突起部40aの単一磁極面の軌道と同軸の円である。
図5Cに示すように、第1磁気センサ20及び第2磁気センサ30は、各出力信号が電気角で180°の位相関係となるよう、回転軸12cを基準とした円50上の2つの位置50aと50bに配置される。回転軸の上方から両磁気センサを見たときに、第2磁気センサ30は、回転軸12cを基準として第1磁気センサ20を反時計回りに機械角で180°回転させた位置にある。また、両磁気センサは、そしてその位置を通る各接線51、52においてその接線方向と平行になるように配置される。
【0040】
突起部40a、40a’の上面である単一磁極面からの漏洩する磁束線は、その中心より互いに逆方向に延びる。しかし、突起部の高さの違いにより、突起部40aと磁気センサとの最小間隔は、突起部40a’と磁気センサとの最小間隔よりも小さい。このような最小間隔の差によって、磁気センサに印加される磁界が調整される。突起部40aから磁気センサに対し、最大で、安定化磁界以上の磁界が印加されるように、突起部40aが構成されている。突起部40a’から磁気センサに対しては、最大で、動作磁界以上かつ安定化磁界を下回る磁界が印加されるよう、突起部40a’が構成されている。
【0041】
ロータ12が回転し、一組の突起部のうち、一方の突起部40aが磁気センサを通過したときに、安定化磁界により当該磁気センサの磁性素子が単一磁区に磁化する。その後、他方の突起部40a’が当該磁気センサに近づくと単一磁区の磁化方向とは逆方向の動作磁界が印加され、大バルクハウゼン現象が発現する。このとき、安定化磁界は印加されないことから磁性素子は単一磁区にならない。そのため、一方の突起部40aが再び当該磁気センサに近づいて動作磁界が印加されても、大バルクハウゼン現象が発現されることはない。以下、ロータが回転したときの、突起部から印加される磁界と2つの磁気センサ20、30の出力信号の関係を説明する。
【0042】
図11Aに、正転時の回転位置と磁界Ha及びHbとの関係を示し、
図11Bに、反転時の回転位置と磁界Ha及びHbとの関係を示す。両図とも、第1磁気センサ20に対し、突起部40aから印加される磁界Haを実線で示し、突起部40a’から印加される磁界Haを一点鎖線で示す。また、第2磁気センサ30に対し、突起部40aから印加される磁界Hbを破線で示し、突起部40a’から印加される磁界Hbを二点鎖線で示す。±H1は動作磁界強度であり、±H2は安定化磁界強度である。
【0043】
図11Aにおいて、正転時に第1磁気センサ20に生じる正パルス信号を符号Aで示し、信号Aの出力の前提となる安定化磁界を符号Asで示す。さらに、第2磁気センサ30に生じる正パルス信号を符号Bで示し、信号Bの出力の前提となる安定化磁界を符号Bsで示す。
図11Bにおいて、反転時に第1磁気センサ20に生じる負パルス信号を符号Cで示し、信号Cの出力の前提となる安定化磁界を符号Csで示す。さらに、第2磁気センサ30に生じる負パルス信号を符号Dで示し、信号Dの出力の前提となる安定化磁界を符号Dsで示す。
【0044】
第1磁気センサ20及び第2磁気センサ30には、180度間隔で配置された突起部40aと突起部40a’の磁界が印加され、第1磁気センサ20と第2磁気センサ30の信号は、設置位置の関係から電気角で180度の位相関係となる。各磁気センサからは正転1回転で同じ符号の信号が1回出力され、反転1回転では、正転とは異なる符号で同じ信号が1回出力される。2つの磁気センサから、正転1回転でA、B、反転1回転でC、Dの4種類の信号が1回出力される。第1実施形態と同様、磁気センサ20の磁性素子21の中心を位置50aに、磁気センサ30の磁性素子31の中心を位置50bに一致させることで、正反転の出力信号の波形品位(波高と半値幅)同じにすることができる。
【0045】
すなわち、ハイブリッド型ステッピングモータの基幹部品であるロータに、その一部として突起部を設けることで、大バルクハウゼン効果を利用した磁気センサにて直接、ロータの磁石磁界が検出可能となる。磁性素子の磁化の状態によっては、大きさが小さく評価困難なパルス信号が生じうるが、このようなパルス信号に依存することなく、多回転の計数が可能となる。また、ロータ12の永久磁石12dの他に永久磁石がないため、ロータ12以外の漏洩磁界の磁気センサへの影響を低減する手段を講じる必要性がないことも利点となる。従って、安価で安定性のある構成となる。
【0046】
[第3実施形態の変形例]
一組の突起部は、形状が互いに異なり、異なる磁界を磁気センサに印加できる軟磁性体製のものであれば、前述の形状以外の形状を採用することもできる。突起部40a及び40a’の変形例を以下に示す。
図6Aに示すように、両突起部は円柱状で同じ高さではあるが径が異なる。突起部40a’の径r’は、突起部40aの径rよりも小さい。突起部40a’は突起部40aに比べ、単一磁極面から漏洩する磁束密度が小さいことから、磁気センサとの間隔が同じでも磁気センサに印加される磁界強度が異なる。
図6Bに示すように、両突起部40a及び40a’は全く同じ円柱形状であるが、突起部40a’の回転軸12cからの距離l’は、突起部40aの回転軸12cからの距離lよりも小さい。突起部40aと磁気センサとの最小間隔は、突起部40a’と磁気センサとの最小間隔よりも小さい。この最小間隔の差によって、磁気センサに印加される磁界が調整される。
図7A~
図7Cに、
図3Aに類似するリング部と2つの延伸部とを示す。2つの延伸部を突起部40a及び40a’と呼ぶことができる。
図7Aに示すように、突起部40a’の高さH’は突起部40aの高さHよりも小さい。また、
図7Bに示すように、突起部40a’の幅(接線方向の寸法)R’は突起部40aの幅Rよりも小さい。さらに、
図7Cに示すように、突起部40a’の回転軸12cからの距離L’は、突起部40aの回転軸12cからの距離Lよりも小さい。この構造では突起部40a、40a’は軟磁性の積層薄板でも構成できる。
【0047】
図7Cに示した突起部の形状の他の利点として、各突起部の側面にも単一磁極面が形成され、漏洩する磁束線は、各突起部から外側に延びる。
図7Dに示すように突起部40a,40a’の側面の単一磁極面が描く円に対して、2つの磁気センサ20、30を径方向に対向させる。第1磁気センサ20と第2磁気センサ30の各出力信号が電気角で180°の位相関係になるよう、回転軸12cを基準とした円50上の2つの位置50aと50bに両磁気センサを配置する。これにより、磁気センサを突起部の上方向ではなく外周に配置することができ、軸方向寸法(モーター長さ)をより小さくすることができる。
【0048】
[第4実施形態]
図8Aに示すように、Aロータ12aの軸方向上端面に、突起部40a、40a’からなる第1の組と突起部40b、40b’からなる第2の組とが設けられている。上方からロータ12を見たときに、突起部40a、40a’、40b、40b’が順に反時計回りで周方向等間隔に配置されている。突起部40a及び突起部40bは円柱状で高さも同じであり、突起部40a’及び40b’も円柱状で高さも同じであるが、突起部40a’及び40b’の高さは、突起部40a及び突起部40bの高さよりも小さい。4つの突起部はいずれも軟磁性体製で磁界発生部となり、Aロータ12aと同じN極(又はS極)の単一磁極に磁化される。突起部40a及び40a’と突起部40b及び40b’とでは高さが異なることから、磁気センサに異なる磁界強度が印加される。
【0049】
第1磁気センサ20及び第2磁気センサ30はそれぞれ、円50上の2つの位置50a及び50bにおいて、接線51及び52と平行になるように配置されている。2つの位置50a及び50bは、第1磁気センサ20と第2磁気センサ30の各出力信号が電気角で180°の位相関係になるような位置である。
図8Bに示すように回転軸の上方から両磁気センサを見たときに、回転軸12cを基準として第1磁気センサ20を反時計回りに機械角で90°回転させると、第2磁気センサ30と重なる。
【0050】
4つの突起部はいずれも同じ材質である。しかし、突起部の高さの違いより突起部40a、40bは磁気センサとの間隔が狭く、突起部40a’、40b’は磁気センサとの間隔が広くなる。この間隔の差によって、磁気センサに印加される磁界が調整される。突起部40a、40bは磁気センサに対して最大で安定化磁界以上の磁界を印加する。突起部40a’、40b’は、磁気センサに対して、最大で、動作磁界以上かつ安定化磁界を下回る磁界を印加する。
ロータ12が回転し突起部40aが磁気センサ付近を通過したときに安定化磁界によって磁性素子が単一磁区に磁化する。その後、突起部40a’が当該磁気センサに近づくと単一磁区の磁化方向とは逆方向の動作磁界が印加され、大バルクハウゼン現象が発現する。突起部40a’が当該磁気センサを通過しても安定化磁界が印加されることはなく、磁性素子は単一磁区にならない。そのため、突起部40bが磁気センサに近づいて動作磁界を上回る安定化磁界が印加されても大バルクハウゼン現象が発現されない。この安定化磁界によって磁性素子が単一磁区に磁化する。その後、突起部40b’が当該磁気センサに近づくと単一磁区の磁化方向とは逆方向の動作磁界が印加され、大バルクハウゼン現象が発現する。
すなわち、本実施形態では4つの突起部を有することから、
図11A及び
図11Bにおける出力信号の360°が本実施例では180°に相当する。そのため、磁気センサからは正転1回転で同じ符号の信号が2回出力され、反転1回転では、正転とは異なる符号で同じ信号が2回出力される。2つの磁気センサからは正反転1回転でA、B、C、Dの4種類の信号が2回出力される。第3実施形態に比べて出力信号の分解能が2倍となり回転検出の精度が向上する。
【0051】
突起部からの磁界が互いに干渉しない間隔で周方向に配置されていれば、突起部の数をさらに増やすことが可能である。また第3実施形態の変形例も第4実施形態に適用可能である。
【0052】
[磁気センサの他の実施形態]
図9に、第1磁気センサ20の他の実施形態を示す。大バルクハウゼンジャンプを発現する細長い磁性素子21にコイル22が巻かれている。。さらに、磁性素子21の両端部に対し、軟磁性材料からなる部品23a及び23bが磁性素子21に接触しないように装着されている。部品23a及び23bから磁性素子の両端部が同じ長さで露出していることが好ましい。また、部品23a及び23bは、材質、形状、位置に関して等価であることが好ましい。部品例として、一般的に市販されているEMS(電磁感受性、Electromagnetic Susceptibility)対策用のフェライトコアが利用可能である。
第2磁気センサ30についても同様に、磁性素子31にコイル32を巻き、磁性素子の両端部に軟磁性材料の部品33a、33bを装着する。
この軟磁性部材の集磁機能により、磁性素子の端部の発生する反磁界が抑制され、出力信号(電力量)を大きくすることができる。換言すれば、磁性素子の線長も短くできることになり、磁気センサが小型となる利点がある。
【0053】
これまでに説明した実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
回転軸と、
前記回転軸に取り付けられたロータであって、前記ロータは、軸方向に間隔を置いて配置された軟磁性体製の第1ロータ磁極部及び第2ロータ磁極部と、前記第1ロータ磁極部と前記第2ロータ磁極部とに挟まれた永久磁石とを備え、前記ロータの軸方向両端面のうち一方の軸方向端面に、軟磁性体製の複数の突起部が設けられている、ロータと、
大バルクハウゼンジャンプを発現する細長の磁性素子と、前記磁性素子に巻回されたコイルとを備え、前記ロータが回転すると前記突起部により描かれる円の近傍に配置されている2つの磁気センサと
を備えるハイブリッド型ステッピングモータ。
[付記2]
前記複数の突起部が、同形状であり、前記ロータの周方向に沿って等間隔に配置され、
前記2つの磁気センサは、前記2つの磁気センサの出力信号が90度の位相関係となるように、前記円と同軸となる円の接線と平行に配置されている、
付記1に記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
[付記3]
前記複数の突起部が、異なる形状であり、前記ロータの周方向に沿って等間隔に配置され、
前記2つの磁気センサは、前記2つの磁気センサの出力信号が180度の位相関係となるように、前記円と同軸となる円の接線と平行に配置されている、
付記1に記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
[付記4]
前記磁性素子の長手方向の中心と前記接線上の接点とが、一致している、付記2又は3に記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
[付記5]
前記2つの磁気センサの各々が、前記磁性素子の両端部に設けられた軟磁性部材をさらに備える、付記1から4のいずれか一項に記載のハイブリッド型ステッピングモータ。
【0054】
以上、本発明の実施の形態につき述べたが、本発明は既述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 ハイブリッド型ステッピングモータ
11 ステータ
12 ロータ
12a Aロータ
12b Bロータ
12c 回転軸
12d 磁石
20、30 磁気センサ
21、31 磁性素子
22、32 コイル
23a、23b、33a、33b 軟磁性部材
40a、40a’、40b、40b’、40c、40d 突起部
50 円
50a、50b 接点
51,52 接線