(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】帯電防止機能付バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 51/00 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
F16K51/00 D
(21)【出願番号】P 2020138512
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019151172
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000039
【氏名又は名称】弁護士法人 衞藤法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉野 研郎
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-009667(JP,A)
【文献】実開昭54-099133(JP,U)
【文献】特開2010-121689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外表面に導電性を備えた管と接続されるバルブであって、導電性材料から構成されたボンネットと、非導電性材料から構成されたバルブボディと、該バルブボディに設けられ
第一配管と第二配管が接続される継手部分と、該継手部分に螺合するとともに前記
第一配管と第二配管の外表面と接し、導電性材料から構成された
第一袋ナット
と第二袋ナットと、該
第一袋ナット
と第二袋ナットと前記バルブボディ間に配設され導電性材料から構成された
第一スリーブ体
と第二スリーブ体を備え、該
第一スリーブ体
と第二スリーブ体には前記ボンネットに向かって突出した凸部が設けられ、該凸部が前記ボンネットと当接することを特徴とする帯電防止機能付バルブ。
【請求項2】
外表面に導電性を備えた管と接続されるバルブであって、導電性材料から構成されたボンネットと、バルブボディと、該バルブボディに設けられ
第一配管と第二配管が接続される継手部分と、該継手部分に螺合するとともに前記
第一配管と第二配管の外表面と接し、導電性材料から構成された
第一袋ナット
と第二袋ナットと、該
第一袋ナット
と第二袋ナットと前記バルブボディ間に配設され導電性材料から構成された
第一スリーブ体
と第二スリーブ体を備え、該
第一スリーブ体
と第二スリーブ体には前記ボンネットに向かって突出した凸部が設けられ、該凸部が前記ボンネットと当接し、前記バルブボディが前記
第一スリーブ体
と第二スリーブ体と当接する箇所のみ導電性材料から構成されていることを特徴とする帯電防止機能付バルブ。
【請求項3】
外表面に導電性を備えた管と接続されるバルブであって、ボンネットと、非導電性材料から構成されたバルブボディと、該バルブボディに設けられ
第一配管と第二配管が接続される継手部分と、該継手部分に螺合するとともに前記
第一配管と第二配管の外表面と接し、導電性材料から構成された
第一袋ナット
と第二袋ナットと、該
第一袋ナット
と第二袋ナットと前記バルブボディ間に配設され導電性材料から構成された
第一スリーブ体
と第二スリーブ体を備え、該
第一スリーブ体
と第二スリーブ体には前記ボンネットに向かって突出した凸部が設けられ、該凸部が前記ボンネットと当接し、弁体が弁座と当接する部分のみ非導電性材料から構成され残余部分が導電性材料から構成され、前記弁体が前記凸部と当接していることを特徴とする帯電防止機能付バルブ。
【請求項4】
前記バルブボディにおける非導電性材料がフッ素樹脂から構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯電防止機能付バルブ。
【請求項5】
前記バルブがダイヤフラムバルブであることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の帯電防止機能付バルブ。
【請求項6】
前記
第一スリーブ体
と第二スリーブ体と前記
第一袋ナット
と第二袋ナット間に導電性材料から構成された締付規制具が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5に記載の帯電防止機能付バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外表面に導電性を有した管に接続され、駆動部が導電性プラスチックから構成されるバルブに関し、施工するだけでバルブへの帯電を確実に防止する帯電防止機能付バルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルブは、流体の流通量やタイミングを制御するための機器としてあらゆる場面で使用されている。バルブ内の流路に流体が流れると、流路内周面と流体との摩擦により静電気が発生することがある。発生した静電気により、バルブの構成部品は、電子を蓄積して帯電した状態となり、種々の問題を招いていた。例えば、流路の内周面に帯電した場合、流路内周面にパーティクルなどの不純物が静電誘導により付着して流路が汚染される恐れがあった。また例えば、バルブの外表面に帯電した場合、空気中やバルブを操作する人手を介し、バルブに帯電された電子がバルブ周辺に設置された電子機器に放出され、電子機器が破損される危険性があった。またさらに、流体が可燃性の流体( 溶剤など) を扱う場合、帯電した静電気から引火して火災の要因になるという問題があった。
【0003】
そこで本出願人は、構成部品への帯電を抑止することができるダイヤフラムバルブとして、ダイヤフラムバルブのボンネットから接地する、もしくはダイヤフラムバルブのボンネットと、ダイヤフラムバルブに接続され、かつ導電性を有する配管を導電性材料からなるアースバンド等で接続することで、ダイヤフラムバルブの帯電を防止できるダイヤフラムバルブを提案した(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ダイヤフラムバルブでは、ダイヤフラムバルブとその前後の配管をアースバンドで接続するため、施工時に手間がかかるという問題があった。特許文献1の手法は、例えば
図5に示すように、複数個のダイヤフラムバルブ91が直列もしくは並列された場合は、アースバンド92及び接地線93の接続だけで多大な手間がかかるうえに、施工後の見目が美しくなかった。また、狭小な施工場所の場合、アースバンド92の接続作業は勿論、接地線93を放電可能な箇所を確保することが困難となるという問題もあった。
【0006】
内表面に導電性を備えた配管を導電性材料で形成されたバルブに接続する場合、バルブ内の帯電を解消できるものの、流体との摩擦により管内面の導電性物質が剥離する可能性があり、帯電防止能が低下する恐れがある。
【0007】
そこで本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みなされたものであり、管と接続施工するだけで容易にバルブの構成部品への帯電を防止できる帯電防止機能付バルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1の発明によれば、外表面に導電性を備えた管と接続されるバルブであって、導電性材料から構成されたボンネットと、非導電性材料から構成されたバルブボディと、該バルブボディに設けられ第一配管と第二配管が接続される継手部分と、該継手部分に螺合するとともに前記第一配管と第二配管の外表面と接し、導電性材料から構成された第一袋ナットと第二袋ナットと、該第一袋ナットと第二袋ナットと前記バルブボディ間に配設され導電性材料から構成された第一スリーブ体と第二スリーブ体を備え、該第一スリーブ体と第二スリーブ体には前記ボンネットに向かって突出した凸部が設けられ、該凸部が前記ボンネットと当接することを特徴とする帯電防止機能付バルブが提供され、請求項2の発明によれば、外表面に導電性を備えた管と接続されるバルブであって、導電性材料から構成されたボンネットと、バルブボディと、該バルブボディに設けられ第一配管と第二配管が接続される継手部分と、該継手部分に螺合するとともに前記第一配管と第二配管の外表面と接し、導電性材料から構成された第一袋ナットと第二袋ナットと、該第一袋ナットと第二袋ナットと前記バルブボディ間に配設され導電性材料から構成された第一スリーブ体と第二スリーブ体を備え、該第一スリーブ体と第二スリーブ体には前記ボンネットに向かって突出した凸部が設けられ、該凸部が前記ボンネットと当接し、前記バルブボディが前記第一スリーブ体と第二スリーブ体と当接する箇所のみ導電性材料から構成されていることを特徴とする帯電防止機能付バルブが提供され、請求項3の発明によれば、外表面に導電性を備えた管と接続されるバルブであって、ボンネットと、非導電性材料から構成されたバルブボディと、該バルブボディに設けられ第一配管と第二配管が接続される継手部分と、該継手部分に螺合するとともに前記第一配管と第二配管の外表面と接し、導電性材料から構成された第一袋ナットと第二袋ナットと、該第一袋ナットと第二袋ナットと前記バルブボディ間に配設され導電性材料から構成された第一スリーブ体と第二スリーブ体を備え、該第一スリーブ体と第二スリーブ体には前記ボンネットに向かって突出した凸部が設けられ、該凸部が前記ボンネットと当接し、弁体が弁座と当接する部分のみ非導電性材料から構成され残余部分が導電性材料から構成され、前記弁体が前記凸部と当接していることを特徴とする帯電防止機能付バルブが提供される。
【0009】
そして請求項4の発明によれば、前記バルブボディにおける非導電性材料がフッ素樹脂から構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の帯電防止機能付バルブが提供され、請求項5の発明によれば、前記バルブがダイヤフラムバルブであることを特徴とする請求項1から請求項4に記載の帯電防止機能付バルブが提供される。さらに、請求項6の発明によれば、前記第一スリーブ体と第二スリーブ体と前記第一袋ナットと第二袋ナット間に導電性材料から構成された締付規制具が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5に記載の帯電防止機能付バルブが提供される。
【0010】
ここでいう導電性材料とは、体積抵抗率が1010Ωcm以下の物質を指し、体積抵抗率が1011Ωcm以上の物質を絶縁性材料とする。
【0011】
すなわち、請求項1乃至請求項4の発明では、駆動部からバルブに接続される管までに導電性材料が物理的に接触して通電経路が構成されるため、アースバンドを設置しなくてもバルブの構成部品に帯電した電子を管へ放電することができる。さらに、管から接地線を配管外へ接続することで配管内の電子を放電することが可能となる。
【0012】
とくに、請求項4の発明では、締付部材が袋ナットの締付け量を規制し、適切な管接続を行い流体のシール性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1乃至請求項4に記載の発明によれば、バルブの構成部品への帯電による、バルブの構成部品やバルブの周辺に配置された電子機器の破損を低減することができる帯電防止機能付バルブを提供することができる。また、施工時に接地線を新たに設けるなどの接地作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第一の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。
【
図2】本発明の第一の実施形態に係るスリーブ体を示す拡大斜視図で、(a)及び(b)は
図1に示すスリーブ体の拡大斜視図、(c)及び(d)はスリーブ体の他例を示す拡大斜視図である。
【
図3】本発明の第二の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。
【
図4】本発明の第二の実施形態に係る締付規制具を示す拡大斜視図である。
【
図5】従来技術における接地状態を説明する斜視図である。
【
図6】本発明の第三の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。
【
図7】本発明の第四の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。
【
図8】本発明の第五の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の各実施形態について図面に示す実施例を参照して説明するが、本発明が各実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0016】
[第一の実施形態]
図1及び
図2を参照して、本発明の第一の実施形態である帯電防止機能付バルブ1について説明する。
図1は、第一の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。
図2は、第一の実施形態に係るスリーブ体を示す拡大斜視図で、(a)及び(b)は
図1に示すスリーブ体の拡大斜視図、(c)及び(d)はスリーブ体の別例を示す拡大斜視図である。第一の実施形態でバルブ形状は、いわゆるダイヤフラムバルブである。帯電防止機能付バルブ1は、バルブボディ2と、ボンネット3と、ダイヤフラム4と、を備え、ボンネット3の内部にはダイヤフラム4を上下へ駆動させる駆動部5が配置されている。また、バルブボディ2の上部にボンネット3が取り付けられている。
【0017】
バルブボディ2は、非導電性(絶縁性)材料であるポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFE)製である。バルブボディ2には、その上部中央に弁室6が形成されていると共に、弁室6に連通する第一流路7及び第二流路8が形成されている。第一流路7は、バルブボディ2の一方の側面に形成された第一開口9から続き、且つ弁室6の底部中央から弁室6に連通している。第一流路7の弁室6側の開口の周囲(弁室6の下方)には、ダイヤフラム4が接離するとともに、第一流路7を通る流体が弁室6へ導入可能な環状の弁座11が形成されている。第二流路8は、バルブボディ2の他方の側面に形成された第二開口10から続き、且つ弁室6の側面に連通している。本実施形態においては、第一開口9から第一流路7、弁室6および第二流路8を経て第二開口10に至る流路を内部流路12とする。
【0018】
ボンネット3は、導電性材料である炭素繊維強化ポリプロピレン(以下、C-PP)製である。ボンネット3は、バルブボディ2の上部に取り付けられる第一ボンネット13と、第一ボンネット13の上部に取り付けられる第二ボンネット14から構成されている。第一ボンネット13は、その上面に凹部15が形成されている。また、第一ボンネット13は、その底面にステム16が上下方向へ摺動可能に挿設される円筒部が形成されている。第二ボンネット14は、その上面に案内軸17が摺動可能に挿設される貫通孔が形成されている。第一ボンネット13の凹部15の内周面と第二ボンネット14の下面とで形成される空間には、ダイヤフラム4を駆動するための駆動部5が配置されている。なお、第一ボンネット13と第二ボンネット14とは連結部材であるステンレス鋼(以下、SUS)製のボルトおよびナットでバルブボディ2に一体的に連結されている(図示せず)。
【0019】
駆動部5は、ポリフッ化ビニリデン(以下、PVDF)製のピストン19と付勢部材として機能するSUS製のコイルばね20から構成されている。このとき、ボンネット3の内部空間(第一ボンネット13の凹部15の内周面と第二ボンネット14の下面とで形成される空間)は、シリンダとして機能し、ボンネット3は駆動部5の筐体として機能している。
【0020】
ピストン19は、ボンネット3の内周面に摺動可能に収容される鍔状のピストン本体21と、ピストン本体21から上方に向かって延出した案内軸17と、ピストン本体21から下方に向かって延出し、その下端にダイヤフラム4が挿設されるステム16と、を有している。ピストン19は案内軸17及びステム16が弁座面に対して垂直となるように配置されている。
【0021】
ピストン本体21は、ボンネット3の内部空間を、ピストン本体21の上面(鍔状上面)とボンネット3の内周面とボンネット3の天井面によって囲まれた上部空間22と、ピストン本体21の下面(鍔状下面)とボンネット3の内周面とボンネット3の底面とによって囲まれた下部空間23とに区画している。ここで、第二ボンネット14には、上部空間22に連通する通気口(図示せず)が形成されており、通気口を通して上部空間22と外部との間で通気を行うことができる。また、第一ボンネット13には、下部空間23に連通する作動流体供給口25が形成されており、作動流体供給口25から下部空間23内へ作動流体を供給できるように構成されている。また、第二ボンネット14の下面とピストン本体21の上面との間には、コイルばね20が圧縮状態で配置されている。
【0022】
ダイヤフラム4は、非導電性(絶縁性)材料であるPTFE製で、弁体部26と膜部27とを備えている。弁体部26は、ダイヤフラム4の下面中央部に形成されている。弁体部26は、略円錐形状に形成されており、底面(円錐の頂部面)が弁座11に離接するように配置されている。膜部27は、弁体部26の基端部の外周から外径方向に延設されている。膜部27の外周部は、バルブボディ2と第一ボンネット13とで挟持固定されている。
【0023】
バルブボディ2の第一開口9には第一配管41が接続され、第二開口10には第二配管42が接続されており、第一開口9及び第二開口10は、いわゆる継手部分として機能している。第一配管41及び第二配管42には、その外表面が導電性材料から構成された、例えばチューブや金属管などが用いられる。この継手部分は、導電性材料から構成された筒状の第一袋ナット28,第二袋ナット29がバルブボディ2の外周と螺合する(図示せず)ことで締結されている。
【0024】
第一袋ナット28,第二袋ナット29のバルブボディ2側端面と、バルブボディ2の側面間には、第一スリーブ体30,第二スリーブ体31がそれぞれ配設されている。第一スリーブ体30,第二スリーブ体31は、導電性ゴムや導電性樹脂などの導電性材料から構成されており、材料自体が有する反発力で第一袋ナット28,第二袋ナット29とバルブボディ2のシール性を向上させるものである。好適な材料としては、PTFE、PVDF、パーフルオロアルコキシアルカン(以下、PFA)、ポリ塩化ビニル(以下、PVC)、ポリエチレン(以下、PE)、ポリプロピレン(以下、PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂(以下、ABS)、ポリフェニレンサルファイド(以下、PPS)などの樹脂に金属や炭素などの導電性材料からなる繊維や粉末などを添加した導電性樹脂やエチレンプロピレンジエンゴム(以下、EPDM)、スチレンブタジエンゴム(以下、SBR)、クロロスルホン化ポリエチレン(以下、CSM)およびアクリロニトリルブタジエンゴム(以下、NBR)、フッ素ゴムの一種である六フッ化プロピレン-フッ化ビニリデン共重合体(以下、FKM)、シリコンゴムなどのゴムに金属や炭素などの導電性材料からなる繊維や粉末などを添加した導電性ゴムが挙げられる。第一スリーブ体30は、
図2(a)に示すように、第二スリーブ体31は、
図2(b)に示すように、リング部301と該リング部301の外周に延伸した凸部302を備えている。凸部302は、少なくともその一部が駆動部5の外表面に接触して駆動部5の帯電を通電できるよう構成されている。したがって、凸部302の延伸方向は、駆動部5に向かう方向であり、その長さは最低でも駆動部5の底面まで、もしくは駆動部5の側面最下部までとなる。また、第一スリーブ体30,第二スリーブ体31の変形例として、例えば
図2(c)に示すように、リング部301が円筒状でも良く、
図2(d)に示すように、リング部301が略C字状でも良く、第一スリーブ体30,第二スリーブ体31は、駆動部5の帯電を駆動部5の外表面を介して第一袋ナット28,第二袋ナット29へ通電できるような形状であれば図示した形状以外でも構わない。さらに、凸部302の先端に駆動部5側へ突出した嵌合部303を備えるとともに、バルブボディ2またはボンネット3にこの嵌合部303が嵌合する嵌合部を形成し、嵌合部303がボンネット3とバルブボディ2の間に嵌合して挟持されるようにしてもよい。
【0025】
以上のように第一の実施形態では、導電性材料から構成された駆動部5、第一スリーブ体30,第二スリーブ体31、及び第一袋ナット28,第二袋ナット29、がそれぞれ当接するよう構成され、第一袋ナット28,第二袋ナット29が、外表面に導電性を有する第一配管41,第二配管42と接触するため、駆動部5から第一配管41,第二配管42まで通電経路が構成され、駆動部5に蓄積された電子を第一配管41,第二配管42へ移動させる、すなわち放電することができる。さらに、複数のバルブを並列もしくは直列に設ける場合、バルブを外表面に導電性を備えた管に接続し、第一配管41,第二配管42の任意の位置やボンネットから、接地線93を配管外(適切な接地箇所)へ接続するだけで、配管内の蓄積された電子を簡単に放電することができる。
【0026】
[第二の実施形態]
次に、
図3及び
図4を参照して、本発明の第二の実施形態である帯電防止機能付バルブ1について説明する。
図3は、第二の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図で、
図4は、第二の実施形態に係る締付規制具を示す拡大斜視図である。なお、第一の実施形態と同一の機能を有する箇所には同一の符号を付し、以下では第一の実施形態との相違点を主に説明する。
【0027】
第二の実施形態では、継手部分並びに袋ナットの形状が第一の実施形態と異なり、袋ナットの締付け量を規制するいわゆる第一締付規制具32及び第二締付規制具33が設けられている。第一締付規制具32及び第二締付規制具33は、
図4に示すように、袋ナット28,29を適正なねじ込み位置までねじ込むと、自身の弾性力によりねじ込みが適量に達したことを明確な感触で判断することができるようにしたものである。そのため、第一締付規制具32及び第二締付規制具33は、導電性を有し、かつ一定の弾性力を有する材料が好ましい。このような材料として例えば、PTFE、PVDF、PFA、PVC、PE、PPなどの樹脂に金属や炭素などの導電性材料からなる繊維や粉末などを添加した導電性樹脂やEPDM、FKM、シリコンゴムなどのゴムに金属や炭素などの導電性材料からなる繊維や粉末などを添加した導電性ゴムなどが挙げられる。第一締付規制具32及び第二締付規制具33は、
図4(a)に示すように、外周に溝部321を備えた環状体に形成されている。溝部321を備えることで、材料そのものによる弾性力に加えて、両面間に一定の弾性力が付加されている。
【0028】
第一開口9,第二開口10は、その端部形状が第一の実施形態と異なり、
図3に示すように、端部が膨張している。本実施形態で用いられる第一配管41,第二配管42は、チューブであり、膨張した第一開口9,第二開口10に差し込まれる。継手部分(第一開口9,第二開口10)は、導電性材料から構成された筒状の第一袋ナット28,第二袋ナット29がバルブボディ2の外周と螺合する(図示せず)ことで締結されている。
【0029】
[第三の実施形態]
次に
図6を参照して、本発明の第三の実施形態である帯電防止機能付バルブ1について説明する。
図6は、第三の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。なお、第一の実施形態と同一の機能を有する箇所には同一の符号を付しものの、断面部分を表す斜線については図示しない。以下では第一の実施形態との相違点を主に説明する。
【0030】
第三の実施形態における帯電防止機能付バルブ1は、バルブボディ2の一部が導電性材料で構成されている。バルブボディ2は、
図6にて網掛け図示した部分のみが導電性材料で、残りの部分は第一の実施形態と同様に非導電性材料から構成されている。また、バルブボディ2は、
図6では一点鎖線により導電性材料と非導電性材料を区画して図示している。導電性材料部分は、ボンネット3、第一袋ナット28、並びに第二袋ナット29と当接する部分である。そのため、第一の実施形態と同様に駆動部5から第一配管41,第二配管42まで通電経路が形成され、駆動部5に蓄積された電子を第一配管41,第二配管42へ移動させる、すなわち放電することができる。
【0031】
[第四の実施形態]
次に
図7を参照して、本発明の第四の実施形態である帯電防止機能付バルブ1について説明する。
図7は、第四の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。なお、第一の実施形態と同一の機能を有する箇所には同一の符号を付しものの、断面部分を表す斜線については図示しない。以下では第三の実施形態との相違点を主に説明する。
【0032】
第四の実施形態における帯電防止機能付バルブ1は、第三の実施形態と同様にバルブボディ2の一部が導電性材料で構成されている。第三の実施形態と異なる点は、バルブボディ2より限定的な部分を導電性材料で構成した点である。第四の実施形態におけるバルブボディ2は、ボンネット3、第一スリーブ体30、並びに第二スリーブ体31と当接する部分のみが導電性材料で構成されており、第三の実施形態と比較してバルブボティ2を例えばインサート成形する際に製造し易い。第三の実施形態の場合、導電性材料で構成された外側を成形または加工などで製造し、外側を金型へセットして内側の非導電性材料で構成された部分を射出成形するのが一般的である。第四の実施形態の場合は導電性、非導電性材料で構成されたどちらの部分を先に製造しても金型へ固定しやすいためインサート成形を行うことが可能である。本実施形態においては、第一スリーブ体30、並びに第二スリーブ体31を介して第一配管41,第二配管42まで通電経路が形成され、駆動部5に蓄積された電子を第一配管41,第二配管42へ移動させる、すなわち放電することができる。
【0033】
すなわち、第一の実施形態においてはバルブボディ2全体が非導電性材料で構成されていたが、第三の実施形態及び第四の実施形態においては、バルブボティ2の接液部以外が導電性材料で構成される2層構造とされている。そのため、第三の実施形態及び第四の実施形態においては、ボンネット3が非導電性材料で構成されていても良く、ボンネット3内に帯電した電荷は、バルブボティ2の導電性材料部分を通電して外部へ放電される。
【0034】
[第五の実施形態]
次に
図8を参照して、本発明の第五の実施形態である帯電防止機能付バルブ1について説明する。
図8は、第五の実施形態に係る帯電防止機能付バルブを示す縦断面斜視図である。なお、第一の実施形態と同一の機能を有する箇所には同一の符号を付しものの、断面部分を表す斜線については図示しない。
図8では一点鎖線により導電性材料と非導電性材料を区画して図示している。以下では第一の実施形態との相違点を主に説明する。
【0035】
第五の実施形態における帯電防止機能付バルブ1は、弁体部26及び膜部27から構成されるダイヤフラム4が、全てもしくはその大部分が導電性材料から構成されている。より好ましくは、
図8に示すように、弁体部26の弁座11と当接する部分が非導電性材料で構成され、2層構造とされることが良い。すなわち弁体部26において弁座11と当接する部分が非導電性フッ素樹脂材料から形成されており、ダイヤフラム4の残余の部分が導電性フッ素樹脂材料から形成されていることが好ましい。ダイヤフラム4が導電性フッ素樹脂材料から形成されていれば、ダイヤフラム4に発生した静電気を駆動部5筐体にさらに逃がしやすくなり、帯電抑制効果が高められる。また、弁座11との当接部分が非導電性フッ素樹脂材料から形成されていれば、弁座11との摩擦でダイヤフラム4からパーティクルが発生して流体中に放出されても、導電性フッ素樹脂材料に含まれるカーボンブラックやカーボンナノチューブのような導電性材料が非導電性フッ素樹脂材料には含まれていないので、ダイヤフラム4から流体中への導電性材料の放出を防ぐことができ、半導体製造分野のような用途で、導電性材料が悪影響を及ぼすことを防止することができる。また、本実施形態においては、第一スリーブ体30並びに第二スリーブ体31と、膜部27が当接することで、通電経路が形成されている。本実施形態においては、ボンネット3は、導電性、非導電性どちらの材料から構成されても良い。
【0036】
本発明において、バルブボディ2に用いられる非導電性(絶縁性)材料は、使用する条件や環境に適した物性を有する非導電性(絶縁性)材料であれば何れでも使用することができる。このような材料として例えば、PTFE、PVDF、PFA、PCTFE、PVC、PE、PP、ABS、PPSなどの樹脂が好適な絶縁性材料として挙げられる。さらに、ダイヤフラム4に用いられる非導電性(絶縁性)材料は、PVDF、PTFE、PFA、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)やFKMなどのフッ素ゴムなどの樹脂やゴムが好適な絶縁性材料として挙げられる。
【0037】
本発明において、ボンネット3は導電性材料であればよく、使用する条件や環境に適した物性を有する導電性材料であれば何れでも使用することができる。例えば、ステンレス(SUS)やアルミニウム、鉄などの金属、PTFE、PVDF、PFA、PVC、PE、PP、ABS、PPSなどの樹脂に金属や炭素などの導電性材料からなる繊維や粉末などを添加した導電性樹脂が好適な導電性材料として挙げられる。また、本発明において、駆動部の構成部品であるピストン19、コイルばね20、連結軸、ばね受けの材質は特に限定されることはなく、使用する条件や環境に適した物性を有する材料であれば何れでも使用することができる。例えば、ステンレス(SUS)やアルミニウム、鉄などの金属、PTFE、PVDF、PFA、PVC、PE、PP、ABS、ポリアセタール(POM)、PPSなどの樹脂、樹脂に導電性材料を添加した導電性樹脂が好適な材料として挙げられる。
【0038】
本発明において、第一配管41、第二配管42は、外表面に導電性を有する配管であれば、特に限定されることはなく、使用する条件や環境に適した配管であれば何れでも使用することができる。例えば、導電性材料のみで形成された配管や、配管外部に導電性材料からなるワイヤーを付与したものなどが挙げられる。
【0039】
なお、本発明の実施形態では、バルブの形態としてダイヤフラムバルブを採用したが、これに限定されるものではなく、導電性材料から構成された駆動部と、非導電性材料から構成されたバルブボディを備えていれば、使用する条件や環境に適した種々のバルブに適用することができる。また駆動部は、本実施形態において逆作動のアクチュエータを採用しているが、導電性材料から構成されていれば、正作動、複動のアクチュエータや手動駆動部でも適用することができる。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施形態のバルブ形状に限定されないことを付言する。
【符号の説明】
【0040】
1 帯電防止機能付バルブ
2 バルブボディ
3 ボンネット
4 ダイヤフラム
5 駆動部
6 弁室
7 第一流路
8 第二流路
9 第一開口
10 第二開口
11 弁座
12 内部流路
13 第一ボンネット
14 第二ボンネット
15 凹部
16 ステム
17 案内軸
19 ピストン
20 コイルばね
21 ピストン本体
22 上部空間
23 下部空間
25 作動流体供給口
26 弁体部
27 膜部
28 第一袋ナット
29 第二袋ナット
30 第一スリーブ体
301 リング部
302 凸部
303 嵌合部
31 第二スリーブ体
32 第一締付規制具
321 溝部
33 第二締付規制具
41 第一配管
42 第二配管
43 嵌合凹部
91 ダイヤフラムバルブ
92 アースバンド
93 接地線