(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】緊急離脱用の管継手
(51)【国際特許分類】
F16L 37/23 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
F16L37/23
(21)【出願番号】P 2021003992
(22)【出願日】2021-01-14
【審査請求日】2023-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000227386
【氏名又は名称】日東工器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100175983
【氏名又は名称】海老 裕介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優秀
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-073993(JP,U)
【文献】実開昭51-009318(JP,U)
【文献】実開昭59-141280(JP,U)
【文献】米国特許第06497120(US,B1)
【文献】米国特許第03761117(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 37/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の雌型管継手本体と、該雌型管継手本体に保持された施錠子と、該施錠子を該雌型管継手本体の径方向内側に付勢する付勢手段と、を備える雌型管継手部材に着脱可能に連結される雄型管継手部材であって、
該雌型管継手部材に連結されたときに該施錠子によって係合されて当該雄型管継手部材が該雌型管継手部材から抜け出るのを防止する施錠子係止面を有し、
該施錠子係止面が、当該雄型管継手部材が該雌型管継手部材から引き抜かれるときに該施錠子を
該付勢手段の付勢力に抗して径方向外側に押し出すように、引き抜き方向とは反対側に向かって径方向外側に傾斜していて、該雌型管継手部材との連結が完了しているときに該施錠子が係合する初期係止位置から径方向外側に押し出された該施錠子との該引き抜き方向での係合が解除される終端係止位置に至る途中で傾斜角度が小さくなるようにされた、雄型管継手部材。
【請求項2】
該施錠子係止面が、該初期係止位置と該終端係止位置との間の中間係止位置を有し、該初期係止位置と該中間係止位置との間が一定の第1傾斜角度で傾斜した面であり、該中間係止位置と該終端係止位置との間が該第1傾斜角度よりも小さい一定の第2傾斜角度で傾斜した面である、請求項1に記載の雄型管継手部材。
【請求項3】
該施錠子係止面が、該終端係止位置に向かって徐々に傾斜角度が小さくなる湾曲面を有する、請求項1に記載の雄型管継手部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の雄型管継手部材と、
該雄型管継手部材に連結される雌型管継手部材と、
を備え、
該雌型管継手部材が、
該雄型管継手部材が挿入される挿入通路を有する管状の雌型管継手本体と、
該雌型管継手本体に形成された施錠子保持孔内に保持され、該雌型管継手本体の内周面から径方向内側に突出して該挿入通路内に挿入された該雄型管継手部材の該施錠子係止面に係合する施錠位置と、該施錠位置から径方向外側に変位して該施錠子係止面に対する係合が解除される施錠解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
該施錠子を該施錠位置に向かって径方向内側に付勢する付勢手段と、
を有する、
管継手。
【請求項5】
該施錠子が周方向に並んで複数配置され、
該付勢手段が、該雌型管継手本体の外周面上に周方向に並べて配置された複数の施錠子押圧部材と、隣り合う該施錠子押圧部材の間にそれぞれ設定された複数の弾性部材と、を有し、各施錠子押圧部材が少なくとも1つの施錠子に径方向外側から当接し、該複数の弾性部材が各施錠子押圧部材を径方向内側に付勢するようにされた、請求項4に記載の管継手。
【請求項6】
該弾性部材が、引張コイルバネであり、各隣り合う施錠子押圧部材の間に該雌型管継手本体の長手軸線の方向に並べて2つ配置されている、請求項5に記載の管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雌型管継手部材と雄型管継手部材とからなる管継手に関し、より詳細には、連結した状態でそれらを引き離す方向に一定以上の引張荷重が作用したときに連結が解除されるようにした緊急離脱用の管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
管継手によってホースやパイプ等を接続している状態で、何らかの原因によりホース等が大きな力で引っ張られたときにホース等が破損することを防止するために、一定以上の引張荷重が加わったときに雄型管継手部材が雌型管継手部材から抜けて連結が解除されるようにした緊急離脱用の管継手が開発されている。このような管継手として、例えば特許文献1に示されるように、雌型管継手部材が施錠子をバネなどの付勢手段で径方向内側に付勢する構成を有し、雄型管継手部材の外周面に形成された環状の施錠子係止溝に施錠子が係合することで連結状態を維持するようにしたものがある。この管継手においては、雌型管継手部材と雄型管継手部材とが離れる方向に一定以上の力で引っ張られたときに、施錠子が施錠子係止溝の傾斜した側面に押されて付勢手段の付勢力に抗して径方向外側に変位して施錠子係止溝から外れることにより、連結が解除されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の管継手において、バネの付勢力に抗して施錠子が動き始めるときに比べて、施錠子が施錠子係止溝から外れるときにはバネの変形量が大きくなっている。通常、バネなどの弾性部材を利用した付勢手段は、フックの法則に従って変位量の増加に伴い付勢力が増加していく。そのため、施錠子による施錠子係止溝に対する係止が解除されるのに必要な引張荷重は、施錠子が動き始めるときに必要な引張荷重に比べて大きくなる。この引張荷重の差が大きくなると、管継手にその間の大きさの引張荷重が作用して施錠子が中途半端に変位した状態となり、連結状態が不安定になる可能性が高くなる。一方で施錠子係止溝を浅くすれば連結が解除されるまでの施錠子の変位量が小さくなって、結果として施錠子が動き始めるときの引張荷重と施錠が解除されるときの引張荷重の差は小さくなるが、そうすると引張荷重を受けた管継手部材が僅かに移動しただけで連結が解除されてしまうことになるため、連結が解除される際の施錠子の変位量を一定以上の距離は確保する必要がある。
【0005】
そこで本発明は、連結が解除される際の施錠子の変位量を小さくすることなく、施錠子が動き始めるのに必要な引張荷重と、施錠が解除される際の最大の引張荷重との差を小さくすることが可能となる雄型管継手部材、及びそのような雄型管継手部材とそれを連結する雌型管継手部材とからなる管継手を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は、
管状の雌型管継手本体と、該雌型管継手本体に保持された施錠子と、該施錠子を該雌型管継手本体の径方向内側に付勢する付勢手段と、を備える雌型管継手部材に着脱可能に連結される雄型管継手部材であって、
該雌型管継手部材に連結されたときに該施錠子によって係合されて当該雄型管継手部材が該雌型管継手部材から抜け出るのを防止する施錠子係止面を有し、
該施錠子係止面が、当該雄型管継手部材が該雌型管継手部材から引き抜かれるときに該施錠子を径方向外側に押し出すように、引き抜き方向とは反対側に向かって径方向外側に傾斜していて、該雌型管継手部材との連結が完了しているときに該施錠子が係合する初期係止位置から径方向外側に押し出された該施錠子との該引き抜き方向での係合が解除される終端係止位置に至る途中で傾斜角度が小さくなるようにされた、雄型管継手部材を提供する。
【0007】
当該雄型管継手部材においては、施錠子係止面が、初期係止位置から終端係止位置に至る途中で傾斜角度が小さくなるように形状付けられている。施錠子が施錠子係止面から受ける径方向外側への変位方向での力は、施錠子係止面の傾斜角度が小さくなるにしたがって大きくなる。そのため、当該雄型管継手部材に対する引き抜き方向への引張荷重の大きさが同じであっても施錠子係止面の傾斜角度が小さい方が施錠子には径方向外側への大きな力が作用することになる。施錠子が終端係止位置に近づくにつれて付勢部材の付勢力が大きくなっていくが、付勢力が大きくなる位置において施錠係止面の傾斜角度が小さくなっていることにより施錠子には径方向外側に効率よく力が作用するようになり、施錠子を変位させるのに必要な引張荷重を小さくすることが可能となる。これにより、施錠子が動き始めるのに必要な引張荷重と、施錠子による施錠が解除されるまでの最大の引張荷重との差を小さくすることが可能となる。一方で、施錠子係止面の大きさは小さくならないため、施錠が解除されるまでに必要な施錠子の変位量は十分に大きくとることができる。
【0008】
また、該施錠子係止面が、該初期係止位置と該終端係止位置との間の中間係止位置を有し、該初期係止位置と該中間係止位置との間が一定の第1傾斜角度で傾斜した面であり、該中間係止位置と該終端係止位置との間が該第1傾斜角度よりも小さい一定の第2傾斜角度で傾斜した面であるようにすることができる。
【0009】
又は、該施錠子係止面が、該終端係止位置に向かって徐々に傾斜角度が小さくなる湾曲面を有するようにすることもできる。
【0010】
また本発明は、
上述の雄型管継手部材と、
該雄型管継手部材に連結される雌型管継手部材と、
を備え、
該雌型管継手部材が、
該雄型管継手部材が挿入される挿入通路を有する管状の雌型管継手本体と、
該雌型管継手本体に形成された施錠子保持孔内に保持され、該雌型管継手本体の内周面から径方向内側に突出して該挿入通路内に挿入された該雄型管継手部材の該施錠子係止面に係合する施錠位置と、該施錠位置から径方向外側に変位して該施錠子係止面に対する係合が解除される施錠解除位置との間で変位可能とされた施錠子と、
該施錠子を該施錠位置に向かって径方向内側に付勢する付勢手段と、
を有する、
管継手を提供する。
【0011】
この管継手において、
該施錠子が周方向に並んで複数配置され、
該付勢手段が、該雌型管継手本体の外周面上に周方向に並べて配置された複数の施錠子押圧部材と、隣り合う該施錠子押圧部材の間にそれぞれ設定された複数の弾性部材と、を有し、各施錠子押圧部材が少なくとも1つの施錠子に径方向外側から当接し、該複数の弾性部材が各施錠子押圧部材を径方向内側に付勢するようにすることができる。
【0012】
また、該弾性部材が、引張コイルバネであり、各隣り合う施錠子押圧部材の間に該雌型管継手本体の長手軸線の方向に並べて2つ配置されているようにすることができる。
【0013】
以下、本発明に係る緊急離脱用の管継手の実施形態を添付図面に基づき説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る管継手の、連結されていない状態での斜視図である。
【
図3】
図2のIII-III線における断面図である。
【
図4】施錠解除される際の施錠子と施錠子係止面との関係を示す第1の図であり、施錠子が初期係止位置で施錠子係止面に係合している状態の図である。
【
図5】施錠解除される際の施錠子と施錠子係止面との関係を示す第2の図であり、施錠子が中間係止位置で第1傾斜面に係合している状態の図である。
【
図6】施錠解除される際の施錠子と施錠子係止面との関係を示す第3の図であり、施錠子が中間係止位置に係合している状態の図である。
【
図7】施錠解除される際の施錠子と施錠子係止面との関係を示す第4の図であり、施錠子が中間係止位置で第2傾斜面に係合している状態の図である。
【
図8】施錠解除される際の施錠子と施錠子係止面との関係を示す第5の図であり、施錠子が終端係止位置で第2傾斜面に係合している状態の図である。
【
図9】雄型管継手部材の変位量と引張荷重との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る管継手1は、
図1に示すように、雄型管継手部材2と、それに着脱可能に連結される雌型管継手部材3とからなる。
【0016】
雌型管継手部材3は、
図2に示すように、環状の雌型管継手本体10と、雌型管継手本体10に形成された施錠子保持孔12内に保持された球状の施錠子14と、雌型管継手本体10の外周面16上に配置された付勢手段18と、を備える。雌型管継手本体10は、雄型管継手部材2が挿入される挿入通路20を有する。施錠子保持孔12および施錠子14は、
図3に示すように周方向で等間隔に12個配置されている。施錠子14は、雌型管継手本体10の内周面22から径方向内側に突出して挿入通路20内に挿入された雄型管継手部材2を係止する施錠位置(
図2、
図3、
図4)と、施錠位置から径方向外側に変位して雄型管継手部材2の係止を解除する施錠解除位置(
図8)との間で径方向に変位可能となっている。付勢手段18は、
図3に示すように、雌型管継手本体10の外周面16上に周方向に並べて配置された6つの施錠子押圧部材24と、隣り合う施錠子押圧部材24の間にそれぞれ設定された引張コイルバネ(弾性部材)26とからなる。引張コイルバネ26は、各隣り合う施錠子押圧部材24の間に雌型管継手本体10の長手軸線Lの方向に並んで2つ配置されている(
図1)。各施錠子押圧部材24は、2つの施錠子14に径方向外側から係合するように配置されており、引張コイルバネ26から受ける引張荷重により径方向内側に付勢されて各施錠子14を施錠位置に向かって径方向内側に押圧する。
【0017】
雄型管継手部材2は、流体通路28を有する管状の部材であり、その外周面30に環状の施錠子係止溝32が形成されている。施錠子係止溝32は、
図4からよく分かるように、底面34と、底面34から先端側(図で見て左側)に向かって径方向外側に傾斜した施錠子係止面36とを有する。施錠子係止面36は、底面34から中間係止位置P
1にまで延びる第1傾斜面36aと、中間係止位置P
1から終端係止位置P
2にまで延びる第2傾斜面36bとを有する。第1傾斜面36aは長手軸線Lに対して一定の第1傾斜角度θ
1で傾斜した面であり、第2傾斜面36bは長手軸線Lに対して第1傾斜角度θ
1よりも小さい一定の第2傾斜角度θ
2で傾斜した面となっている。
【0018】
雌型管継手部材3に雄型管継手部材2が連結された状態では、
図4に示すように、施錠子14は施錠位置にあり、施錠子係止面36の第1傾斜面36aにおける初期係止位置P
0で施錠子係止面36に係合している。施錠子14が施錠子係止面36に係合していることにより、雄型管継手部材2は施錠子14によって係止されて雌型管継手部材3から抜けないようなっている。この連結状態において雄型管継手部材2が雌型管継手部材3から引き抜かれる方向(図で見て右方向)に引っ張られると、施錠子14は施錠子係止面36から径方向外向きの力を受ける。施錠子14が受ける力が付勢手段18の付勢力を超えると、施錠子14は施錠子押圧部材24を径方向外側に押しながら第1傾斜面36aに沿って径方向外側に変位していく。雄型管継手部材2に継続して引張荷重が作用しつづけると、施錠子14は第1傾斜面36aに沿って中間係止位置P1に至り(
図5)、さらに第2傾斜面36bに至る(
図6)。施錠子14はさらに第2傾斜面36bに沿って終端係止位置P2にまで至る(
図7)。施錠子14が、第2傾斜面36bの終端係止位置P2を超えて施錠子係止溝32から出て施錠解除位置になると(
図8)、施錠子14による引き抜き方向での雄型管継手部材2に対する係合が解除される。そうすると、雄型管継手部材2は雌型管継手部材3から容易に引き抜かれる状態となり、雌型管継手部材3と雄型管継手部材2との連結が解除される。
【0019】
上述のようにして施錠子14が施錠位置から施錠解除位置にまで変位するときに、施錠子押圧部材24は径方向外側に変位し、それにより引張コイルバネ26は伸長する。よって引張コイルバネ26による付勢力は施錠子14が径方向外側に変位するのに伴って増加していく。そのため、雄型管継手部材2が引き抜かれるのに必要となる雄型管継手部材2への引張荷重は、基本的には、雄型管継手部材2の引き抜き方向への変位量が大きくなるに従って大きくなっていく。従来の管継手のように施錠子係止面の全体が一定の傾斜角度を有する1つの面で形成されている場合には、雄型管継手部材の引き抜き方向での変位量(X)と雄型管継手部材に加えられる引張荷重(F)との関係は、
図9において波線で示す通りとなる。ここでは、施錠子係止面は上記実施形態の第1傾斜面36aと同じ傾斜角度を有しているものとする。具体的には、連結状態において引張荷重がF
0を超えると雄型管継手部材が引き抜き方向に変位し始め、雄型管継手部材の変位量がX
aのときに引張荷重は最大のF
aとなる。このとき施錠子は施錠子傾斜面の最も外側の位置である終端係止位置にある。施錠子が終端係止位置に係合した状態で施錠子係止面から長手軸線に平行な外周面に至る過程で引張荷重は徐々に低下していき、変位量がX
bとなると施錠子は外周面に係合した状態となり、施錠子による引き抜き方向での係合が解除される。このときには付勢部材の付勢力に抗するために必要な引張荷重は実質的にゼロとなる。なお、実際には施錠子は付勢部材により雄型管継手部材の外周面に押し付けられているため施錠子と雄型管継手部材との間には摩擦力が作用している。よって、雄型管継手部材が雌型管継手部材から完全に引き抜かれるためには、その摩擦力に抗するだけの引張荷重が継続して作用することが必要となる。
【0020】
これに対して本発明の上記実施形態のように、施錠子係止面36が第1傾斜面36aと、それよりも傾斜角度が小さい第2傾斜面36bとからなっている場合には、雄型管継手部材2の変位量(X)と引張荷重(F)との関係は
図9において実線で示すようになる。具体的には、変位量がX
0である連結状態(
図4の状態)で雄型管継手部材2に対する引張荷重がF
0を超えると、雄型管継手部材2は雌型管継手部材3に対して引き抜き方向に変位し始める。変位量がX
0からX
1の間の区間Aでは、施錠子14は第1傾斜面36aに係合して第1傾斜面36aに沿って変位する。雄型管継手部材2の変位量がX
1になると施錠子14は第1傾斜面36a上で中間係止位置P
1に至る(
図5)。雄型管継手部材2がX
1にまで変位する間に引張コイルバネ26は伸長してその付勢力が増加するため、それに抗するのに必要な引張荷重はF
0からF
1にまで直線的に増加する。雄型管継手部材2がX
1からX
2にまで変位する間の区間Bでは、施錠子14は中間係止位置P
1に係合した状態で第1係止面から離れて第2傾斜面36bに近づいていき、変位量がX
2になると第2傾斜面36bに接触した状態となる(
図6)。この間に施錠子14は引き続き径方向外側に変位するため引張コイルバネ26の付勢力は増加していくが、施錠子14が施錠子係止面36から受ける力の方向がより径方向外側に向いていき、施錠子14の変位方向への分力が大きくなっていく。そのため、引張コイルバネ26の付勢力に抗して施錠子14を径方向外側に変位させるのに必要な引張荷重はF
2にまで徐々に小さくなっていく。雄型管継手部材2がX
2からX
3にまで変位する間の区間Cでは、施錠子14は第2傾斜面36bに沿って終端係止位置P
2にまで変位していく。その間、引張コイルバネ26は更に伸長していき、引き抜きに必要な引張荷重はF
3にまで直線的に増加していく。変位量がX
3になると施錠子14は第2傾斜面36b上で終端係止位置P
2に接触した状態になる(
図7)。雄型管継手部材2がX
3からX
4にまで変位する間の区間Dでは、施錠子14は、終端係止位置P
2に係合した状態で第2傾斜面36bから離れて長手軸線Lに平行な外周面30に近づいていき、変位量がX
4になると外周面30に接触した状態となる(
図8)。変位量がX
4以上である区間Eでは、施錠子14は施錠子係止溝32から押し出されてもはや施錠子係止面36に係合していない状態となり、付勢手段18の付勢力に抗するために必要な引張荷重は実質的にゼロとなる。これにより雄型管継手部材2に対する施錠子14による引き抜き方向での係合が解除され、雄型管継手部材2は雌型管継手部材3から自由に引き抜くことが可能な状態となる。
【0021】
このように、施錠子係止面36を途中の中間係止位置P1から傾斜角度の小さい面とすることにより、施錠子14を施錠解除位置にまで変位させるのに必要な引張荷重の最大値を小さくして、初期引張荷重F0と施錠を解除するのに必要な最大引張荷重F3との差を小さくすることができる。これにより、引張荷重が初期引張荷重と最大引張荷重との間の大きさとなり、施錠子14が不安定な位置に留まった状態となる可能性を低減することができる。一方で、施錠が解除されるまでに必要な雄型管継手部材2の変位量は十分に取ることができるため、瞬間的に大きな引張荷重が作用して雄型管継手部材2が極僅かに変位しただけで連結が解除されてしまうことは防止することができる。
【0022】
施錠子係止面36の第1傾斜面36aと第2傾斜面36bの大きさと傾斜角度は、最大引張荷重をどのような大きさに設定するのかによって適宜変更可能である。また、施錠子係止面36は3つ以上の異なる傾斜角度を有する面としてもよいし、徐々に傾斜角度が小さくなっていくような湾曲面とすることもできる。湾曲面を採用することにより、例えば引張荷重がF1からF3にまで低下することなくなだらかに上昇していくようにすることも可能である。
【0023】
以上に本発明の実施形態について説明をしたが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではない。例えば、雌型管継手部材における付勢手段は、板バネや弾性ゴムなどにより施錠子を直接または間接的に付勢するような他の形態のものとすることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 管継手
2 雄型管継手部材
3 雌型管継手部材
10 雌型管継手本体
12 施錠子保持孔
14 施錠子
16 外周面
18 付勢手段
20 挿入通路
22 内周面
24 施錠子押圧部材
26 引張コイルバネ(弾性部材)
28 流体通路
30 外周面
32 施錠子係止溝
34 底面
36 施錠子係止面
36a 第1傾斜面
36b 第2傾斜面
L 長手軸線
P0 初期係止位置
P1 中間係止位置
P2 終端係止位置
θ1 第1傾斜角度
θ2 第2傾斜角度