(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】車両用バックドア
(51)【国際特許分類】
B60J 5/10 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
B60J5/10 R
(21)【出願番号】P 2021037391
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390026538
【氏名又は名称】ダイキョーニシカワ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】大道 新一
(72)【発明者】
【氏名】松岡 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】畠山 一樹
(72)【発明者】
【氏名】近兼 裕也
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-084106(JP,A)
【文献】特開2015-104979(JP,A)
【文献】特開2013-220785(JP,A)
【文献】特開2020-104555(JP,A)
【文献】特開2019-018639(JP,A)
【文献】特開2017-185833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0361689(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60J 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓用の開口(15)を有するインナパネル(5)とアウタパネル(7)とを備え、両パネル(5,7)の外周側及び上記開口(15)側の端縁部が接着剤(AD1)を介して接着された車両用バックドアであって、
上記インナパネル(5)及び上記アウタパネル(7)のうちの一方のパネルの端縁には、周壁部(37,55,75)が他方のパネル側に向けて突設され、当該周壁部(37,55,75)の先端部には、パネル内側に突出する突出片部(39,57,77)が形成され、
上記インナパネル(5)及び上記アウタパネル(7)のうちの片側のパネルにおける端縁から若干離れた箇所には、複数の位置決め突起(41,59,79)が上記端縁に沿う方向に互いに間隔を空けて相手側のパネルに向けて突設され、
上記相手側のパネルには、被位置決め部(17,63f)が設けられ、
上記一方のパネルの突出片部(39,57,77)は、上記他方のパネルの端縁部に当該他方のパネルの非接着面側から重なった状態で係合することで、当該他方のパネルが上記一方のパネルから厚さ方向に離間するのを規制し、
上記片側のパネルの複数の位置決め突起(41,59,79)は、上記相手側のパネルの被位置決め部(17,63f)とパネル内側又はパネル外側から対向することにより、上記一方のパネルの突出片部(39,57,77)が上記他方のパネルの端縁部と重ならなくなるまで上記他方のパネルの端縁部に対して相対的にパネル外
周側に移動するのを規制し、
上記接着剤(AD1)は、上記周壁部(37,55,75)よりもパネル内側で上記一方のパネルの端縁に沿って延在していることを特徴とする車両用バックドア。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用バックドアにおいて、
上記周壁部(55,75)は、上記アウタパネル(7)の外周側の端縁に設けられ、
上記インナパネル(5)の外周側の端縁から若干離れた箇所には、上記インナパネル(5)の外周側の端縁部よりも上記アウタパネル(7)から離間する方向に突出する立壁部(17)が形成され、
上記複数の位置決め突起(59,79)は、上記アウタパネル(7)における外周側の端縁から若干離れた箇所に突設され、
上記被位置決め部(17,63f)は、上記立壁部(17)であり、
上記接着剤(AD1)は、上記複数の位置決め突起(59,79)よりも外周側で延在していることを特徴とする車両用バックドア。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用バックドアにおいて、
上記周壁部(37)は、上記インナパネル(5)の上記開口(15)側の端縁に設けられ、
上記アウタパネル(7)の上記開口(15)側の端縁から若干離れた箇所には、当該端縁に沿って延びるスリット(63a)が形成され、当該アウタパネル(7)における当該スリット(63a)に端縁側から隣接する部分は、当該スリット(63a)の内部に上記接着剤(AD1)がない状態で上記スリット(63a)側へ撓み可能な可撓部(63b)を構成し、
上記突出片部(39)は、上記可撓部(63b)に上記アウタパネル(7)の非接着面側から重なった状態で係合することで、当該アウタパネル(7)が上記インナパネル(5)から厚さ方向に離間するのを規制し、
上記接着剤(AD1)が、上記スリット(63a)の内部に入り込んで上記可撓部(63b)が上記スリット(63a)側へ撓むのを規制していることを特徴とする車両用バックドア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窓用の開口を有するインナパネルとアウタパネルとを備え、両パネルの外周側及び上記開口側の端縁部が接着剤を介して接着された車両用バックドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓用の開口を有する樹脂製インナパネルと樹脂製アウタパネルとを備え、両パネルの外周側及び上記開口側の端縁部が接着剤を介して接着された車両用バックドアの製造方法として、インナパネルの外周側及び上記開口側の端縁部に接着剤を塗布し、両パネルを互いに重ねて密着させた後、接着剤が硬化するまで両パネルを相対的に動かないように治具等で保持する方法が知られている。この方法では、両パネルを互いに重ねて密着させてから接着剤が硬化するまでの間に、両パネルを治具等で保持するので、他の部品の組み付け作業や輸送等の次工程の作業ができない問題があった。
【0003】
特許文献1には、窓用の開口を有するインナパネルとアウタパネルとを備え、両パネルの外周側及び上記開口側の端縁部が接着剤を介して接着された車両用バックドアの製造方法が開示されている。この製造方法では、インナパネルの外周側及び上記開口側の端縁部に接着剤を塗布した後、両パネルを互いに重ねて密着させた状態でレーザ溶接を行うことにより、接着剤が硬化する前に両パネルが厚さ方向に離間するのを規制し、接着剤が硬化する前に次工程の作業を行うことを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、接着剤の硬化前に両パネルが厚さ方向に離間するのを規制するためにレーザ溶接を行うので、両パネルが厚さ方向に離間するのを規制するための作業に手間がかかる。また、レーザ加工設備を用いる必要があるので、設備コストの増加を招く。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、接着剤が硬化する前に次工程の作業を行うことを可能にすることで車両用バックドアの製造タクトを短縮し、接着剤の硬化前に両パネルが厚さ方向に離間するのを規制するための作業を容易にし、かつ設備コストを削減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、一方のパネルの端縁部に突出片部を設け、当該突出片部を他方のパネルの端縁部に係合させることで両パネルが厚さ方向に離間するのを規制するとともに、片側のパネルに位置決め突起を設け、当該位置決め突起を相手側のパネルの一部にパネル内側又はパネル外側から対向させることで、上記一方のパネルの突出片部が他方のパネルの端縁部に対して相対的にパネル外周側に移動するのを規制できるようにしたことを特徴とする。
【0008】
具体的には、第1の発明は、窓用の開口を有するインナパネルとアウタパネルとを備え、両パネルの外周側及び上記開口側の端縁部が接着剤を介して接着された車両用バックドアを前提とし、次のような解決手段を講じた。
【0009】
すなわち、第1の発明は、上記インナパネル及び上記アウタパネルのうちの一方のパネルの端縁には、周壁部が他方のパネル側に向けて突設され、当該周壁部の先端部には、パネル内側に突出する突出片部が形成され、上記インナパネル及び上記アウタパネルのうちの片側のパネルにおける端縁から若干離れた箇所には、複数の位置決め突起が上記端縁に沿う方向に互いに間隔を空けて相手側のパネルに向けて突設され、上記相手側のパネルには、被位置決め部が設けられ、上記一方のパネルの突出片部は、上記他方のパネルの端縁部に当該他方のパネルの非接着面側から重なった状態で係合することで、当該他方のパネルが上記一方のパネルから厚さ方向に離間するのを規制し、上記片側のパネルの複数の位置決め突起は、上記相手側のパネルの被位置決め部とパネル内側又はパネル外側から対向することにより、上記一方のパネルの突出片部が上記他方のパネルの端縁部と重ならなくなるまで上記他方のパネルの端縁部に対して相対的にパネル外周側に移動するのを規制し、上記接着剤は、上記周壁部よりもパネル内側で上記一方のパネルの端縁に沿って延在していることを特徴とする。
【0010】
第2の発明は、第1の発明に係る車両用バックドアにおいて、上記周壁部は、上記アウタパネルの外周側の端縁に設けられ、上記インナパネルの外周側の端縁から若干離れた箇所には、上記アウタパネルから離間する方向に突出する立壁部が形成され、上記複数の位置決め突起は、上記アウタパネルにおける外周側の端縁から若干離れた箇所に突設され、上記被位置決め部は、上記立壁部であり、上記接着剤は、上記複数の位置決め突起よりも外周側で延在していることを特徴とする。
【0011】
第3の発明は、第1又は第2の発明に係る車両用バックドアにおいて、上記周壁部は、上記インナパネルの上記開口側の端縁に設けられ、上記アウタパネルの上記開口側の端縁から若干離れた箇所には、当該端縁に沿って延びるスリットが形成され、当該アウタパネルにおける当該スリットに端縁側から隣接する部分は、当該スリットの内部に上記接着剤がない状態で上記スリット側へ撓み可能な可撓部を構成し、上記突出片部は、上記可撓部に上記アウタパネルの非接着面側から重なった状態で係合することで、当該アウタパネルが上記インナパネルから厚さ方向に離間するのを規制し、上記接着剤が、上記スリットの内部に入り込んで上記可撓部が上記スリット側へ撓むのを規制していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、両パネルを互いに接近させ、一方のパネルの突出片部を他方のパネルの端縁部に係合させるだけで、レーザ溶接を行わなくても、両パネルが厚さ方向に離間するのを規制できる。したがって、接着剤の硬化前に両パネルが厚さ方向に離間するのを規制するための作業を容易にできる。また、レーザ加工設備を用いなくてもよいので、設備コストを削減できる。また、接着剤が硬化する前に次工程の作業を行うことが可能になるので、車両用バックドアの製造タクトを短縮できる。
【0013】
また、片側のパネルの位置決め突起が被位置決め部と対向することで、一方のパネルの突出片部が他方のパネルの端縁部に対して相対的にパネル外側に移動するのを規制するので、成形収縮率のばらつき等に起因して一方のパネルの寸法が他方のパネルの寸法よりも大きくなる寸法誤差が生じたときに、上記一方のパネルを位置決め突起よりもパネル内側で撓ませることにより、上記一方のパネルの突出片部と他方のパネルの端縁部との位置関係に生じる上記寸法誤差の影響を低減できる。したがって、両パネルに位置決め突起及び被位置決め部を設けない場合に比べ、一方のパネルの突出片部を他方のパネルの端縁部により確実に係合させることができ、両パネルが接着剤の介在領域で厚さ方向に離間することによる接着不良をより確実に防止できる。
【0014】
また、一方のパネルの端縁に周壁部を設けたので、両パネルを接近させて接着剤を押し広げる過程で接着剤がパネル外側にはみ出るのを周壁部によって抑制できる。
【0015】
第2の発明によれば、アウタパネルの突出片部をインナパネルの外周側の端縁部に押しつけてアウタパネルにおける位置決め突起よりも外周側の領域を反インナパネル側に撓ませることにより、アウタパネルの突出片部をインナパネルの外周側の端縁部に容易に係合させることができる。
【0016】
第3の発明によれば、スリットの内部に接着剤が入り込んで可撓部がスリット側へ撓むのを規制するので、突出片部の可撓部との係合状態を確実に維持できる。したがって、両パネルが接着剤の介在領域で厚さ方向に離間することによる接着不良をより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態1に係る車両用バックドアの分解斜視図である。
【
図2】バックドアを構成するインナパネルを車両後方から見た斜視図である。
【
図3】インナパネル及びアウタパネルを車両後方から見た斜視図である。
【
図4】バックドアを
図3の矢印IV方向から見た矢視図である。
【
図7】アウタパネルの位置決め突起周りを破断して示すバックドアの分解斜視図である。
【
図8】アウタパネルの位置決め突起周りを破断して示すバックドアの斜視図である。
【
図9】バックドアを
図3の矢印IX方向から見た矢視図である。
【
図11】
図9のXI-XI線における断面図である。
【
図12】バックドアを
図3の矢印XII方向から見た矢視図である。
【
図13】
図12のXIV-XIV線に相当する分解断面図である。
【
図16】
図15のXVI-XVI線における断面図である。
【
図17】バックドアを
図3の矢印XVII方向から見た矢視図である。
【
図18】
図17のXVIII-XVIII線における断面図である。
【
図21】バックドアを
図20の矢印XXI方向から見た矢視図である。
【
図22】
図21のXXII-XXII線における断面図である。
【
図23】
図21のXXIII-XXIII線における断面図である。
【
図24】爪部及び挿入孔周りを破断して示すインナパネルの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、説明の便宜上、車両前後方向における前側を「前」、後側を「後」と称し、車両前方を向いて車幅方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、車高方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。また、この実施形態に係るバックドアについて、特に開閉状態を断り書きしない場合には、車両後部のバックドア開口を閉じた状態での姿勢を前提に説明する。
【0019】
《実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る車両用バックドア1を示す。このバックドア1は、ハッチバック車の車体後端に設けられたドア開口を開閉する上下開閉式のバックドアである。
【0020】
バックドア1は、車内側に位置する樹脂製のインナパネル5と、車外側に位置する樹脂製のアウタパネル7と、窓パネル9と、1対のランプユニット(
図1では一方のランプユニットのみを示す)11とを備える。
【0021】
インナパネル5は、射出成形などで成形される一枚物のパネルであって、例えば、ガラス繊維(GF:Glass Fiber)、炭素繊維(CF:Carbon Fiber)、セルロースナノファイバー等の繊維補強材を含有するポリプロピレン(PP:Polypropylene)等の熱可塑性樹脂からなる。
【0022】
インナパネル5は、
図2及び
図3にも示すように、アウタパネル7と対向し、当該インナパネル5の主体をなす略板状のパネル本体部13を有する。パネル本体部13の上半部分には、車幅方向に延びる略矩形状の窓用の開口15が形成されている。また、パネル本体部13の開口15よりも下側の部分(以下、「下半部」と呼ぶ)は、その板面をほぼ前後方向に向けている。インナパネル5のパネル本体部13の開口15よりも上側の部分は、上方に向かって前方に傾斜している。以下、両パネル5,7の外周側、及び開口15の内周側を「パネル外側」、両パネル5,7の内周側、及び開口15の外周側を「パネル内側」と呼ぶ。
【0023】
インナパネル5のパネル本体部13の車幅方向中央における開口15の下端縁近傍には、アウタパネル7側(後側)に膨出する車幅方向に長い平面視略長方形状の膨出部13aが形成されている。該膨出部13aのアウタパネル7側の端面には、該膨出部13aの室内側に収容されるランプのライセンスプレート照明用のランプを取り付けるための第1開口部13bと、車両用バックドア1の開閉ロックを解除するスイッチを取り付けるための第2開口部13cとが形成されている。
【0024】
インナパネル5のパネル本体部13の外周側の端縁には、
図4~
図11にも示すように、アウタパネル7側に立ち上がる被位置決め部としての外周側立壁部17が全周に亘って環状に設けられている。この外周側立壁部17の後端には、接合用の板状の外側フランジ部19が外周側に張り出すように形成され、この外側フランジ部19が、インナパネル5の外周側の端縁部を構成している。したがって、外周側立壁部17は、インナパネル5の外周側の端縁から若干内周側に離れた箇所で、上記インナパネル5の外周側の端縁部よりも上記アウタパネル7から離間する方向に突出している。外周側立壁部17の内周面における先端よりも反アウタパネル7側に下がった位置には、断面略への字状に屈曲するガイド壁部21が、外周側立壁部17との間にアウタパネル7側に解放する挿入空間Sを形成するように突設されている。当該ガイド壁部21の屈曲部分よりも先端側は、外周側立壁部17に内周側から対向するとともに、アウタパネル7側に向かって外周側立壁部17から離間するように先端側に向かって内周側に傾斜している。上記外周側立壁部17と各ガイド壁部21とは、
図7及び
図8に示すように、連結壁部23によって連結されている。パネル本体部13の上側の外周側の端縁で車幅方向に延びる外周側立壁部17の車幅方向両端部近傍には、
図9に示すように、ヒンジ取付用のネジ穴17aが形成され、パネル本体部13の上側の外周側の端縁で車幅方向に延びる外周側立壁部17の車幅方向中程には、ストップランプ等の配線を挿通させる複数の挿通孔17bが形成されている。
【0025】
インナパネル5のパネル本体部13の開口15側の端縁には、膨出部13a形成箇所を除く全周に亘って、アウタパネル7側に立ち上がる開口側立壁部25が設けられている。したがって、インナパネル5のパネル本体部13と外周側立壁部17と開口側立壁部25とで、反アウタパネル7側に凹む凹所27が形成されている。
【0026】
インナパネル5の外側フランジ部19の外周側の端縁のうち、上側、下端部の車幅方向両側、及び下側で延びる部分には、アウタパネル7側に向かって斜め外周側に突出する複数の第1突条部29が周方向に間隔を空けて形成されている。第1突条部29は、ガイド壁部21とは周方向に離間する位置に配置されている。インナパネル5の外側フランジ部19の外周側の端縁における第1突条部29非形成部分には、アウタパネル7側に向かってほぼ垂直に突出する第2突条部31がそれぞれ形成されている。
【0027】
開口側立壁部25の開口15の上側で車幅方向に延びる部分の後端には、板面を後方に向かって斜め上方に向けた板状の開口上端側フランジ部33が開口15の内方に張り出すように設けられている。開口側立壁部25の開口15の下側で車幅方向に延びる部分、及び膨出部13aの上端部には、板面を後方に向かって斜め上方に向けた開口下端側フランジ部35が開口15の内方に張り出すように連続して設けられている。
【0028】
開口上端側フランジ部33の開口15側の端縁(下端縁)には、
図12~
図14に示すように、アウタパネル7側(後方に向かって斜め上方)に向けて開口側周壁部37が周方向全体に亘って突設されている。当該開口側周壁部37の先端部には、パネル内側(開口15の外周側)、すなわち前方に向かって斜め上方に向けて突出する複数の開口側突出片部39が、開口15の周方向(車幅方向)に間隔を空けて形成されている。また、開口上端側フランジ部33における開口15側の端縁から若干上側に離れた箇所には、
図15及び
図16に示すように、板面を開口15の内方に向けた矩形板状の複数の位置決め突起としての位置決め突出壁部41が、開口15の上側の端縁に沿う方向(車幅方向)に互いに間隔を空けてアウタパネル7側に向けて突設されている。各位置決め突出壁部41の車幅方向中央部は、板面を車幅方向に向けた板状の連結リブ43によって開口側周壁部37に連結されている。
【0029】
開口下端側フランジ部35の開口15側の端縁(上端縁)には、
図18及び
図19に示すように、前方に延出する複数の第1延出壁部45が、開口15の下側の端縁に沿う方向(車幅方向)に間隔を空けて形成されている。第1延出壁部45の先端には、
図17にも示すように、車幅方向に長い長方形状の突出壁部47が上方に向けて突設されている。当該突出壁部47には、車幅方向に長い長方形状の第1の貫通孔47aが貫通形成されている。開口下端側フランジ部35の開口15側の端縁(上端縁)における第1延出壁部45非形成箇所には、第2延出壁部49が開口下端側フランジ部35と同じ傾斜で延設されている。当該第2延出壁部49には、車幅方向に長い長方形状の複数の第2の貫通孔49aが貫通形成されている。
【0030】
インナパネル5の開口15よりも上側のパネル本体部13には、
図1及び
図2に示すように、板面を車幅方向に向けた板状の複数の上側補強リブ51aがアウタパネル7側に向けて突設され、各上側補強リブ51aは、外周側立壁部17と開口側立壁部25とに連結されている。パネル本体部13の下端部には、板面を車幅方向に向けた板状の複数の下側補強リブ51bがアウタパネル7側に向けて突設され、各下側補強リブ51bは、外周側立壁部17に連結されている。
【0031】
アウタパネル7は、上下に2分割され、上側に位置するアッパアウタパネル7aと、下側に位置するロアアウタパネル7bとで構成されている。これらアッパアウタパネル7a及びロアアウタパネル7bは、それぞれ、射出成形などで成形される一枚物のパネルであって、例えば、タルク入りポリプロピレン(PP-T:Polypropylene Talc)やそれにエチレンプロピレンジエンメチレンゴム(EPDM:Ethylene Propylene Diene Monomer)を混合した合成樹脂からなる。
【0032】
アッパアウタパネル7aは、インナパネル5の開口15よりも上側の部分と、開口15の上端部の車幅方向両側の部分とに対向する。
【0033】
アッパアウタパネル7aは、その板面をインナパネル5側に向けたアッパ側本体部53を備えている。アッパ側本体部53の上側(外周側)の端縁には、
図11に示すように、周方向(車幅方向)に延びる複数の上側周壁部55が周方向(車幅方向)に互いに間隔を空けてインナパネル5側(下側)に向けて突設されている。当該上側周壁部55の先端部には、パネル内側(アッパアウタパネル7aの内周側(
図11における左側))に向かって斜め下側に突出する上側突出片部57が形成されている。アッパアウタパネル7aの上側(外周側)の端縁から内周側に若干離れた箇所には、
図10に示すように、当該端縁に沿う方向(車幅方向)に板面を向けた複数の板状の位置決め突起としての上側位置決めリブ59が、当該端縁に沿う方向(車幅方向)に互いに間隔を空けてインナパネル5側(下側)に向けて突設されている。アッパ側本体部53の上側の端縁と上側位置決めリブ59との間隔D1は、20~30mmに設定されている。上側位置決めリブ59は、上側周壁部55及び上側突出片部57と周方向(車幅方向)に異なる位置に配置されている。
【0034】
アッパアウタパネル7aのアッパ側本体部53の下側の端縁には、
図12~
図14及び
図16に示すように、インナパネル5側(下側に向かって斜め前側)に突出する下側側壁部61が形成され、当該下側側壁部61の下端部には、アッパ側本体部53よりもインナパネル5側に位置する板状のアッパ側フランジ部63が開口15の内方に張り出すように形成されている。アッパ側フランジ部63の下側(開口15側)の端縁から若干離れた箇所、すなわちアッパアウタパネル7aの開口15側の端縁から若干離れた箇所には、当該端縁に沿って延びる複数のスリット63aが、当該端縁に沿う方向に互いに間隔を空けて形成されている。アッパ側フランジ部63におけるスリット63aに端縁側から隣接する部分は、スリット63aの内部に後述する第1接着剤AD1がない状態でスリット63a側へ撓み可能な可撓部63bを構成している。また、アッパ側フランジ部63の下端部には、平面視略T字状の被位置決め孔63cが形成されている。この被位置決め孔63cは、アッパ側フランジ部63の開口15側の端縁との間に若干間隔を空けて当該端縁に沿って車幅方向に延びる長方形状の複数の第1長孔部63dと、当該第1長孔部63dの車幅方向中央から垂直に上記端縁まで延びる第2長孔部63eとで構成されている。アッパ側フランジ部63における第2長孔部63eの車幅方向両側で第1長孔部63dに開口15側から臨む部分が、被位置決め部63fを構成している。
【0035】
アッパアウタパネル7aのアッパ側本体部53の車幅方向中央の開口15側の端部には、車幅方向に延びるストップランプ取付用凹部64が形成されている。
【0036】
ロアアウタパネル7bは、インナパネル5の開口15よりも下側の部分と、開口15の下端部の車幅方向両側の部分とに対向する。
【0037】
ロアアウタパネル7bは、その主体をなすロア側本体部65を備えている。ロア側本体部65の上側の端縁には、
図17~
図19に示すように、上方に向かって前方に傾斜する傾斜面部67が車幅方向全体に亘って突設され、当該傾斜面部67の上側には、ロア側本体部65よりもインナパネル5側(前側)に位置する板状のロア側フランジ部69が開口15の内方に張り出すように形成されている。ロア側フランジ部69の開口15側の端縁(上端縁)には、板面を略上下方向に向けた板状の複数の挿入片部71が、インナパネル5側(前側)に向けて車幅方向に互いに間隔を空けて突設されている。これら複数の挿入片部71のうちの一部の挿入片部71の先端部には、上方に突出する爪部73が形成されている。
【0038】
ロア側本体部65の車幅方向両端部の上端部には、ランプユニット取付用凹部65aが、当該ランプユニット取付用凹部65aより下側の領域よりも前方に凹むように形成されている。ロア側本体部65の車幅方向中央部の上下方向中央よりも上側には、ナンバープレート取付用凹部65bが、当該ナンバープレート取付用凹部65bより下側の領域よりも前方に凹むように形成されている。
【0039】
ロア側本体部65のランプユニット取付用凹部65a形成箇所を除く車幅方向両側及び下側(外周側)の端縁には、
図4及び
図5に示すように、周方向に延びる複数の下側周壁部75が周方向に互いに間隔を空けてインナパネル5側(前側)に向けて突設されている。下側周壁部75は、先端側に向けて外周側に傾斜している。当該下側周壁部75の先端部には、パネル内側(内周側、
図5における右側)に向かってインナパネル5側に傾斜して突出する下側突出片部77が形成されている。ロア側本体部65のランプユニット取付用凹部65a形成箇所を除く車幅方向両側及び下側の端縁(外周側の端縁)から内周側に若干離れた箇所には、当該端縁に沿う方向に板面を向けた複数の板状の位置決め突起としての下側位置決めリブ79が、当該端縁に沿う方向に互いに間隔を空けてインナパネル5側に向けて突設されている。ロア側本体部65の外周側の端縁と下側位置決めリブ79との間隔D2(
図6参照)は、20~30mmに設定されている。互いに近接する3つの下側位置決めリブ79は、3つずつ互いに近接している。下側位置決めリブ79は、下側周壁部75及び下側突出片部77と周方向に離間する位置に配置されている。
【0040】
窓パネル9は、バックドア1の車幅方向全体に延びる横長のパネルである。窓パネル9は、ポリカーボネート(PC)などの透明樹脂やガラスなどからなる。
【0041】
上述のように構成されたアッパアウタパネル7aは、アッパ側本体部53を開口15よりも上側のインナパネル5に対向させた状態でインナパネル5に後方斜め上方から組み付けられている。アッパアウタパネル7aの上側及び車幅方向両側、すなわち外周側の端縁部と、インナパネル5の外側フランジ部19、すなわち外周側の端縁部とが第1接着剤AD1を介して接着され、アッパアウタパネル7aのアッパ側フランジ部63、すなわち開口15側の端縁部と、インナパネル5の開口上端側フランジ部33、すなわち開口15側の端縁部とが第1接着剤AD1を介して接着されている。
【0042】
第1接着剤AD1としては、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等を用いることができる。また、第1接着剤AD1は、主剤及び硬化剤の二液性接着剤、及び主剤だけの一液性接着剤のうちのいずれであってもよい。
【0043】
図2中、インナパネル5における第1接着剤AD1の塗布領域を仮想線で示している。したがって、第1接着剤AD1は、上側周壁部55よりも内周側(パネル内側)で、かつ上側位置決めリブ59よりも外周側でアッパアウタパネル7aの上側の端縁に沿って延在し、かつ開口側周壁部37よりも開口15の外周側(パネル内側)でアッパアウタパネル7aの開口15側の端縁に沿って延在している。
【0044】
この状態で、
図11に示すように、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57は、インナパネル5の第1突条部29(外周側の端縁部)にインナパネル5の非接着面側(
図11中下側)から重なった状態で係合することで、当該インナパネル5の外側フランジ部19が当該アッパアウタパネル7aのアッパ側本体部53から厚さ方向に離間するのを規制している。一方で、
図10に示すように、アッパアウタパネル7aのアッパ側本体部53の上側の端縁部とインナパネル5の第2突条部31の先端面とは厚さ方向に間隔を空けて互いに対向している。また、アッパアウタパネル7aの上側位置決めリブ59が、インナパネル5の上側の端縁近傍に形成されたガイド壁部21と外周側立壁部17との間の挿入空間Sに挿入されている。このアッパアウタパネル7aの上側位置決めリブ59は、インナパネル5の外周側立壁部17に内周側(パネル内側、
図10中左側)から対向することにより、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57がインナパネル5の第1突条部(上側(外周側)の端縁部)29と重ならなくなるまでインナパネル5の上側の端縁部に対して相対的に外周側(パネル外側)に移動するのを規制している。
【0045】
また、
図12及び
図14に示すように、インナパネル5の開口側突出片部39が、アッパアウタパネル7aの可撓部63bにアッパアウタパネル7aの非接着面側(
図14中左斜め上側)から重なった状態で係合することで、アッパアウタパネル7aのアッパ側フランジ部63がインナパネル5の開口上端側フランジ部33から厚さ方向に離間するのを規制している。また、第1接着剤AD1は、スリット63aの内部に入り込んで硬化した状態で可撓部63bがスリット63a側へ撓むのを規制している。さらに、インナパネル5の位置決め突出壁部41が、アッパアウタパネル7aの第1長孔部63dに挿入された状態で被位置決め部63fに開口15の外周側(パネル内側、
図16中右斜め上側)から対向することにより、インナパネル5の開口側突出片部39が、アッパアウタパネル7aの可撓部63bと重ならなくなるまでアッパアウタパネル7aの開口15の上側の端縁部に対して相対的に開口15の内側(パネル外側)に移動するのを規制している。
【0046】
一方、ロアアウタパネル7bは、ロア側本体部65を開口15よりも下側のインナパネル5に対向させた状態でインナパネル5に後方から組み付けられている。ロアアウタパネル7bのロア側フランジ部69、すなわち開口15側の端縁部と、インナパネル5の開口下端側フランジ部35、すなわち開口15側の端縁部とが接着剤AD1を介して接着され、ロアアウタパネル7bの下側及び車幅方向両側、すなわち外周側の端縁部と、インナパネル5の外側フランジ部19、すなわち外周側の端縁部とが第1接着剤AD1を介して接着されている。したがって、第1接着剤AD1は、下側周壁部75よりも内周側(パネル内側)で、かつ下側位置決めリブ79よりも外周側でロアアウタパネル7bの外周側の端縁に沿って延在している。また、ロアアウタパネル7bのナンバープレート取付用凹部65bより上部が、インナパネル5の膨出部13aの端面の外周部に第1接着剤AD1を介して接着されている。
【0047】
この状態で、
図17~
図19に示すように、ロアアウタパネル7bの挿入片部71が、インナパネル5の第1及び第2の貫通孔47a,49aに挿入されている。そして、爪部73が第1の貫通孔47aの周縁部に係合することで、挿入片部71が第1の貫通孔47aから抜けるのを規制している。
【0048】
また、
図5に示すように、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77が、インナパネル5の第1突条部29にインナパネル5の非接着面側(
図5中下側)から重なった状態で係合することで、インナパネル5の外側フランジ部19がロアアウタパネル7bのロア側本体部65から厚さ方向に離間するのを規制している。一方で、
図6に示すように、ロアアウタパネル7bのロア側本体部65の外周側の端縁部とインナパネル5の第2突条部31の先端面とは厚さ方向に間隔を空けて互いに対向している。また、
図6~
図8に示すように、ロアアウタパネル7bの下側位置決めリブ79が、互いに近接する3つの下側位置決めリブ79毎に、インナパネル5の上側及び車幅方向両側の端縁近傍に形成されたガイド壁部21と外周側立壁部17との間の挿入空間Sに挿入されている。このロアアウタパネル7bの下側位置決めリブ79は、インナパネル5の外周側立壁部17に内周側(パネル内側、
図6中右側)から対向することにより、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77がインナパネル5の第1突条部(外周側の端縁部)29と重ならなくなるまでインナパネル5の外周側の端縁部に対して相対的に外周側(パネル外側)に移動するのを規制している。
【0049】
また、アッパアウタパネル7aのアッパ側フランジ部63と、ロアアウタパネル7bのロア側フランジ部69と、インナパネル5の開口15の車幅方向両側の外側フランジ部19におけるアウタパネル7に覆われていない部分とには、窓パネル9の外周部がウレタン系接着剤等からなる第2接着剤AD2を介して接着されている。したがって、アッパアウタパネル7aのアッパ側フランジ部63におけるスリット63a及び第1長孔部63dと、インナパネル5の開口側周壁部37及び開口側突出片部39と、ロアアウタパネル7bの挿入片部71及び爪部73と、インナパネル5の第1延出壁部45、突出壁部47及び第2延出壁部49とは、窓パネル9によって後方から覆われている。
【0050】
また、ロアアウタパネル7bのランプユニット取付用凹部65aには、ランプユニット11が取り付けられている。
【0051】
上述のように構成されたインナパネル5、アッパアウタパネル7a、ロアアウタパネル7b、及び窓パネル9を組み付けるには、まず、インナパネル5の外側フランジ部19、開口上端側フランジ部33、開口下端側フランジ部35、及び膨出部13aの端面の外周部に第1接着剤AD1を塗布する。
【0052】
そして、アッパアウタパネル7aのアッパ側本体部53の外周側(上側)の端縁部をインナパネル5の外側フランジ部19に対向させて接近させ、第1接着剤AD1を押し広げるとともに、アッパアウタパネル7aの上側位置決めリブ59をインナパネル5の上側(外周側)の端縁近傍に形成された各ガイド壁部21と外周側立壁部17との間の挿入空間Sに挿入する。これにより、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57が、インナパネル5の第1突条部29に押しつけられることにより、アッパ側本体部53の上側周壁部55周りが反インナパネル5側に撓み、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57が、インナパネル5の上側(外周側)の端縁部(第1突条部29)を乗り越える。このとき、上側周壁部55を上側位置決めリブ59と周方向に離間する位置に形成したので、上側位置決めリブ59と周方向に同じ位置に形成した場合に比べ、アッパ側本体部53の上側周壁部55周りを反インナパネル5側に撓ませやすい。また、インナパネル5のガイド壁部21が、アッパアウタパネル7aの上側位置決めリブ59に内周側から当接することによって、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57がインナパネル5の第1突条部29よりも内周側に移動するのを規制する。その後、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57がインナパネル5の第1突条部29にインナパネル5の非接着面側(
図11中下側)から重なった状態で係合する。これにより、インナパネル5の外側フランジ部19がアッパアウタパネル7aのアッパ側本体部53から厚さ方向に離間するのが規制される。このように、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57を、インナパネル5の第1突条部29に押しつけるだけで、当該第1突条部29に容易に係合させることができる。また、アッパアウタパネル7aのアッパ側本体部53は、インナパネル5の第2突条部31の先端面に当接する。さらに、アッパアウタパネル7aの上側位置決めリブ59が、インナパネル5の外周側立壁部17に内周側(パネル内側、
図10中左側)から対向する。これにより、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57がインナパネル5の第1突条部29(外周側の端縁部)と重ならなくなるまでインナパネル5の上側(外周側)の端縁部に対して相対的に外周側(パネル外側)に移動するのが規制される。
【0053】
同時に、アッパアウタパネル7aのアッパ側フランジ部63をインナパネル5の開口上端側フランジ部33に対向させて接近させ、第1接着剤AD1を押し広げるとともに、アッパアウタパネル7aの被位置決め孔63cに、インナパネル5の位置決め突出壁部41及び連結リブ43を挿入する。これにより、
図13及び
図14に示すように、アッパアウタパネル7aの可撓部63bが、インナパネル5の開口側突出片部39に押しつけられてスリット63a側(開口15の外周側)に撓みながら開口側突出片部39を乗り越えるとともに、インナパネル5の開口上端側フランジ部33に塗布された第1接着剤AD1が押し広げられてスリット63a及び被位置決め孔63cに入り込む。これにより、インナパネル5の開口側突出片部39が、アッパアウタパネル7aの可撓部63bに非接着面側から重なった状態で係合する。この状態で、アッパアウタパネル7aのアッパ側フランジ部63がインナパネル5の開口上端側フランジ部33から厚さ方向に離間するのが規制される。また、スリット63aに第1接着剤AD1が入り込んで可撓部63bがスリット63a側へ撓むのを規制しているので、可撓部63bが開口側突出片部39を乗り越えてインナパネル5の開口上端側フランジ部33から離間するのが防止される。さらに、インナパネル5の位置決め突出壁部41が、アッパアウタパネル7aの被位置決め部63fに開口15の外周側(パネル内側)から対向する。これにより、インナパネル5の開口側突出片部39がアッパアウタパネル7aの可撓部(開口15側の端縁部)63bと重ならなくなるまでアッパアウタパネル7aの開口15側の端縁部に対して相対的に開口15内側(パネル外側)に移動するのを規制している。
【0054】
この状態で、アッパアウタパネル7aの上側位置決めリブ59がインナパネル17の外周側立壁部17に内周側から対向するとともに、インナパネル5の位置決め突出壁部41が、アッパアウタパネル7aの被位置決め部63fに開口15の外周側(パネル内側)から対向するので、成形収縮率のばらつき等によりアッパアウタパネル7aの上下方向及び車幅方向の寸法がインナパネル5におけるアッパアウタパネル7a取付領域の寸法よりも大きくなる寸法誤差が生じたときに、アッパアウタパネル7aにおける上側位置決めリブ59及び位置決め突出壁部41よりもパネル内側の領域を撓ませることにより、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57とインナパネル5の上側の端縁部との位置関係、及びインナパネル5の開口側突出片部39とアッパアウタパネル7aの開口15側の端縁部との位置関係に生じる上記寸法誤差の影響を低減できる。したがって、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57をインナパネル5の上側の端縁部に確実に係合するとともに、インナパネル5の開口側突出片部39をアッパアウタパネル7aの開口15側の端縁部に確実に係合させることができ、アッパアウタパネル7aとインナパネル5とが第1接着剤AD1の介在領域で厚さ方向に離間することによる接着不良をより確実に防止できる。
【0055】
また、アッパ側本体部53の上側の端縁と上側位置決めリブ59との間隔D1を、30mm以下に設定したので、30mmよりも大きく設定した場合に比べ、アッパ側本体部53の上側の端縁と上側位置決めリブ59との間隔D1の寸法ばらつきを小さくできる。したがって、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57とインナパネル5の外周側の端縁部とをより確実に係合させることができる。
【0056】
また、ロアアウタパネル7bのロア側フランジ部69をインナパネル5の開口下端側フランジ部35に対向させた状態で接近させ、第1接着剤AD1を押し広げるとともに、ロアアウタパネル7bの挿入片部71をインナパネル5の第1及び第2の貫通孔47a,49aに挿入し、ロアアウタパネル7bの爪部73を第1の貫通孔47aの周縁部に係合させる。
【0057】
同時に、ロアアウタパネル7bのロア側本体部65の外周側の端縁部をインナパネル5の外側フランジ部19に対向させた状態で接近させ、第1接着剤AD1を押し広げるとともに、ロアアウタパネル7bの下側位置決めリブ79を、インナパネル5の下側及び車幅方向両側(外周側)の端縁近傍に形成された各ガイド壁部21と外周側立壁部17との間の挿入空間Sに挿入する。これにより、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77が、インナパネル5の第1突条部29に押しつけられることにより、ロア側本体部65の下側周壁部77周りが反インナパネル5側に撓み、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77が、インナパネル5の外周側の端縁部(第1突条部29)を乗り越える。このとき、下側突出片部77を下側位置決めリブ79と周方向に離間する位置に形成したので、下側位置決めリブ79と周方向に同じ位置に形成した場合に比べ、ロア側本体部65の下側突出片部77周りを反インナパネル5側に撓ませやすい。また、インナパネル5のガイド壁部21が、ロアアウタパネル7bの下側位置決めリブ79に内周側から当接することによって、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77がインナパネル5の第1突条部29よりも内周側に移動するのを規制する。その後、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77が、インナパネル5の第1突条部29にインナパネル5の非接着面側(
図5中下側)から重なった状態で係合する。これにより、インナパネル5の外側フランジ部19がロアアウタパネル7bのロア側本体部65から厚さ方向に離間するのが規制される。このように、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77を、インナパネル5の第1突条部29に押しつけるだけで、当該第1突条部29に容易に係合させることができる。また、ロアアウタパネル7bのロア側本体部65は、インナパネル5の第2突条部31の先端面に当接する。また、ロアアウタパネル7bの下側位置決めリブ79が、インナパネル5の外周側立壁部17に内周側(パネル内側、
図6中右側)から対向する。これにより、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77がインナパネル5の第1突条部29(外周側の端縁部)と重ならなくなるまでインナパネル5の外周側の端縁部に対して相対的に外周側(パネル外側)に移動するのが規制される。
【0058】
この状態で、ロアアウタパネル7bの下側位置決めリブ79が、インナパネル5の外周側立壁部17に内周側から対向するので、成形収縮率のばらつき等によりロアアウタパネル7bの上下方向及び車幅方向の寸法がインナパネル5におけるロアアウタパネル7b取付領域の寸法よりも大きくなる寸法誤差が生じたときに、ロアアウタパネル7bにおける下側位置決めリブ79よりも内周側の領域を撓ませることにより、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77とインナパネル5の外周側の端縁部と位置関係に生じる上記寸法誤差の影響を低減できる。したがって、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77をインナパネル5の外周側の端縁部に確実に係合させることができ、ロアアウタパネル7bとインナパネル5とが第1接着剤AD1の介在領域で厚さ方向に離間することによる接着不良をより確実に防止できる。
【0059】
また、ロア側本体部65の外周側の端縁と下側位置決めリブ79との間隔D2を、20~30mmに設定したので、30mmよりも大きく設定した場合に比べ、ロア側本体部65の外周側の端縁と下側位置決めリブ79との間隔D2の寸法ばらつきを小さくできる。したがって、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77とインナパネル5の外周側の端縁部とをより確実に係合させることができる。
【0060】
このように、アッパアウタパネル7aをインナパネル5に接近させ、アッパアウタパネル7aの上側突出片部57及びをインナパネル5の上側の端縁部に係合させるとともに、インナパネル5の開口側突出片部39をアッパアウタパネル7aの可撓部63b(開口15側の端縁部)に係合させるだけで、レーザ溶接を行わなくても、インナパネル5とアッパアウタパネル7aとが厚さ方向に離間するのを規制できる。同様に、ロアアウタパネル7bをインナパネル5に接近させ、ロアアウタパネル7bの爪部73をインナパネル5の第1の貫通孔47aに係合させるとともに、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77をインナパネル5の外周側の端縁部に係合させるだけで、レーザ溶接を行わなくても、インナパネル5とロアアウタパネル7bとが厚さ方向に離間するのを規制できる。したがって、第1接着剤AD1の硬化前に両パネル5,7が厚さ方向に離間するのを規制するための作業を容易にできる。また、レーザ加工設備を用いなくてもよいので、設備コストを削減できる。
【0061】
また、アウタパネル7の外周側の端縁に上側周壁部55及び下側周壁部75を設けるとともに、インナパネル5の開口15側端縁に開口側周壁部37を設けたので、両パネル5,7間で第1接着剤AD1を押し広げる過程で第1接着剤AD1がパネル外側にはみ出るのをこれら上側周壁部55、下側周壁部75及び開口側周壁部37によって抑制できる。
【0062】
また、スリット63aの内部に第1接着剤AD1が入り込んで可撓部63bがスリット63a側へ撓むのを規制するので、開口側突出片部39と可撓部63bとの係合状態を確実に維持できる。したがって、インナパネル5とアッパアウタパネル7aとが第1接着剤AD1の介在領域で厚さ方向に離間することによる接着不良をより確実に防止できる。
【0063】
しかる後、上記アッパアウタパネル7aのアッパ側フランジ部63と、ロアアウタパネル7bのロア側フランジ部69と、インナパネル5の開口15の車幅方向両側の外側フランジ部19におけるアウタパネル7に覆われていない部分とに第2接着剤AD2を塗布し、窓パネル9の外周部を重ね合わせて図示しない仮止め手段で固定する。
【0064】
その後、これらインナパネル5、アウタパネル7及び窓パネル9を重ね合わせたままで第1及び第2の接着剤AD1,AD2を完全に硬化させることにより、インナパネル5、アウタパネル7及び窓パネル9を互いに接着させる。
【0065】
なお、第1及び第2の接着剤AD1,AD2を硬化させるために必ずしも乾燥炉は必要ではなく、第1及び第2の接着剤AD1,AD2は常温で硬化させることができる。また、第1及び第2の接着剤AD1,AD2が完全に硬化していなくても、インナパネル5、アウタパネル7及び窓パネル9は、第1及び第2の接着剤AD1,AD2の介在領域で厚さ方向に容易に離間しないので、インナパネル5、アウタパネル7及び窓パネル9を第1及び第2の接着剤AD1,AD2を介在させて重ね合わせた後、すぐに他の部品の組み付けや輸送等の次工程の作業が可能になる。
【0066】
《実施形態2》
図20は、本発明の実施形態2の
図6相当図である。本実施形態2では、インナパネル5の下半部に第1突条部29及び第2突条部31が形成されていない。そして、
図22及び
図24に示すように、インナパネル5の下半部の外側フランジ部19の外周側の端縁に、断面台形状で周方向に延びる突部81が、アウタパネル7側及び外周側に突出するように形成されている。突部81は、ガイド壁部21と周方向に離間する位置に配置されている。また、
図20~
図23に示すように、ロアアウタパネル7bの下側周壁部75が、外周側の端縁の全体に亘って連続して形成されている。また、下側周壁部75の内周側の面に、突出方向全体に亘って外周側に凹む複数の凹所75aが、周方向に互いに間隔を空けて形成されている。したがって、下側周壁部75の凹所75a形成領域は、凹所75a非形成領域よりも薄肉になっている。そして、下側突出片部77が爪形状をなし、下側周壁部75の凹所75aの周方向中央部の先端部に内周側(パネル内側)に向けて突設されている。
【0067】
そして、ロアアウタパネル7bの下側突出片部77が、インナパネル5の突部81にインナパネル5の非接着面側(
図22中下側)から重なった状態で係合することで、当該インナパネル5の外側フランジ部19が当該ロアアウタパネル7bのロア側本体部65から厚さ方向に離間するのを規制している。
【0068】
その他の構成は、実施形態1と同じであるので、同一の構成箇所には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0069】
したがって、本実施形態2によれば、凹所75a非形成領域よりも薄肉な凹所75a形成領域に下側突出片部77を形成したので、下側突出片部77をインナパネル5の突部81に係合させる過程で、下側突出片部77を外周側に撓ませやすい。
【0070】
また、突部81をガイド壁部21と周方向に離間する位置に配置したので、下側突出片部77をインナパネル5の突部81に係合させる過程で、突部81周りを内周側に撓ませやすい。
【0071】
なお、上記実施形態1,2では、上側周壁部55、上側突出片部57、下側周壁部75、及び下側突出片部77をアウタパネル7に設けたが、インナパネル5に設けてもよい。その場合、ガイド壁部21を被位置決め部とし、上側位置決めリブ59及び下側位置決めリブ79がガイド壁部21に外周側(パネル外側)から対向することにより、上側突出片部57及び下側突出片部77がアウタパネル7の外周側の端部に対して相対的に外周側(パネル外側)に移動するのを規制するようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施形態1,2では、アウタパネル7をアッパアウタパネル7aとロアアウタパネル7bとで構成したが、一枚物の樹脂製パネルで構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、窓用の開口を有するインナパネルとアウタパネルとを備え、両パネルの外周側及び上記開口側の端縁部が接着剤を介して接着された車両用バックドアとして有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 バックドア
5 インナパネル
7 アウタパネル
15 開口
17 外周側立壁部(被位置決め部)
37 開口側周壁部
39 開口側突出片部
41 位置決め突出壁部(位置決め突起)
55 上側周壁部
57 上側突出片部
59 上側位置決めリブ(位置決め突起)
63a スリット
63b 可撓部
63f 被位置決め部
75 下側周壁部
77 下側突出片部
79 下側位置決めリブ(位置決め突起)
AD1 第1接着剤