(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】横型帯鋸盤
(51)【国際特許分類】
B23D 53/04 20060101AFI20241226BHJP
B23D 55/08 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B23D53/04
B23D55/08 J
(21)【出願番号】P 2021041452
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390014672
【氏名又は名称】株式会社アマダ
(73)【特許権者】
【識別番号】504279326
【氏名又は名称】株式会社アマダマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】境 典久
(72)【発明者】
【氏名】只野 進
【審査官】中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-011035(JP,A)
【文献】特開2004-090177(JP,A)
【文献】特開昭61-025718(JP,A)
【文献】実開昭57-122315(JP,U)
【文献】実開平06-061419(JP,U)
【文献】特開平10-156624(JP,A)
【文献】特開2009-119576(JP,A)
【文献】実開平07-037526(JP,U)
【文献】特開平10-043939(JP,A)
【文献】特開昭62-208821(JP,A)
【文献】実開平01-087825(JP,U)
【文献】米国特許第05878644(US,A)
【文献】特開平06-143027(JP,A)
【文献】実開平04-115530(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D 45/00-65/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可動バイスジョーとの間にワークを挟持することにより前記ワークを固定する固定バイスジョーと、
上下方向に沿って直線状に延在するガイドポストと、
前記ガイドポストに沿って降下しながら前記ワークを切断するカッティングヘッドと、
制御装置と、を備え、
前記カッティングヘッドは、
駆動ホイール及び従動ホイールのそれぞれが回転自在に取り付けられたハウジングと、
前記駆動ホイールと前記従動ホイールとの間に掛け渡される無端状の帯鋸刃と、を含み、
前記駆動ホイールの中心は、前記従動ホイールの中心よりも上方に位置し、
且つ、前記駆動ホイールの下端は、前記従動ホイールの下端よりも上方に位置し、
前記駆動ホイールは、前記ワークよりも前記固定バイスジョー側に位置し、且つ、前記従動ホイールは、前記ワークよりも前記可動バイスジョー側に位置し、
前記駆動ホイール及び前記固定バイスジョーは、前記従動ホイール及び前記可動バイスジョーよりも前記ガイドポスト側に位置し、
前記帯鋸刃には、前記固定バイスジョーからみて前記ワークの幅が広がる方向にかけて下り傾斜となる傾斜角が付与されており、
前記駆動ホイールと前記従動ホイールとの間の前記帯鋸刃でワークを切断するとき、
前記ハウジングは、
前記帯鋸刃の傾斜角及び前記駆動ホイールと前記従動ホイールとの位置関係を保持したまま、前記ガイドポストに沿って直線上下動し、
前記固定バイスジョーが前記ワークを固定する鉛直面である固定バイス基準は、前記帯鋸刃が前記ワークの切断を終了する切断終了点を共有
し、
前記切断終了点は、前記ワークの下端を定める水平面であるワーク支持基準と、前記固定バイス基準との交点に存在し、
前記制御装置は、前記カッティングヘッドの降下量を検出するセンサの検出信号に基づいて、前記帯鋸刃が切断終了点まで下降したか否を判断する、
横型帯鋸盤。
【請求項2】
水平方向に旋回可能に構成され、前記ガイドポストが設けられる機台をさらに有し、
前記カッティングヘッドの旋回中心は、前記固定バイス基準と前記帯鋸刃の走行ラインとの交点に存在する
請求項1記載の横型帯鋸盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横型帯鋸盤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、横型帯鋸盤では、ワークを固定する固定バイスジョーからみてワークの幅が広がる方向にかけて上り傾斜となるように、帯鋸刃を水平方向から傾けた状態で切削を行うことが行われている。この類の横型帯鋸盤では、ワークの幅及び断面形状などの切断条件によって、ワークの切断を終了する切断終了点が変わってしまうという問題に対処する必要があった(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手法は、ワークを切断加工する際に切断終了点を検出する又は演算する必要があり、煩雑さを伴うものであった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る横型帯鋸盤は、可動バイスジョーとの間にワークを挟持することによりワークを固定する固定バイスジョーと、上下方向に沿って直線状に延在するガイドポストと、ガイドポストに沿って降下しながらワークを切断するカッティングヘッドと、を備え、カッティングヘッドは、駆動ホイール及び従動ホイールのそれぞれが回転自在に取り付けられたハウジングと、駆動ホイールと従動ホイールとの間に掛け渡される無端状の帯鋸刃と、を含む。駆動ホイールと従動ホイールとの間の帯鋸刃でワークを切断するとき、駆動ホイールの中心は、従動ホイールの中心よりも上方に位置し、ハウジングは、駆動ホイールと従動ホイールとの位置関係を保持したまま、ガイドポストに沿って直線上下動する。固定バイスジョーがワークを固定する鉛直面である固定バイス基準は、帯鋸刃がワークの切断を終了する切断終了点を共有している。
【0006】
本発明の一態様に係る横型帯鋸盤によれば、固定バイス基準が切断終了点を共有するので、切断条件に拘わらず切断終了点を一意に定めることができる。このため、ワークを切断加工する際に切断終了点を検出したり演算したりする必要がない。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、ワークを切断加工する際の煩雑さを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る横型帯鋸盤を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る横型帯鋸盤を示す上面図である。
【
図3】
図3は、帯鋸刃の走行ラインと旋回角との関係を示す図である。
【
図4】
図4は、帯鋸刃の走行ラインと旋回角との関係を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る横型帯鋸盤を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、本実施形態に係る横型帯鋸盤について説明する。以下の説明では、方向を定義するために左右方向、前後方向、及び上下方向を用いるが、これらの方向は説明の便宜のために用いられるに過ぎない。左右方向及び前後方向は、水平方向に対応し、上下方向は鉛直方向に対応する。
【0010】
図1は、本実施形態に係る横型帯鋸盤を示す正面図である。
図1に示すように、横型帯鋸盤1は、可動バイスジョー71との間にワークWを挟持することによりワークWを固定する固定バイスジョー27と、上下方向に沿って直線状に延在するガイドポスト31と、ガイドポスト31に沿って降下しながらワークWを切断するカッティングヘッド9と、を備えている。カッティングヘッド9は、駆動ホイール43及び従動ホイール45のそれぞれが回転自在に取り付けられたハウジング33と、駆動ホイール43と従動ホイール45との間に掛け渡される無端状の帯鋸刃47と、を含む。駆動ホイール43の中心は、従動ホイール45の中心よりも上方に位置し、ハウジング33は、駆動ホイール43と従動ホイール45との位置関係を保持したまま、ガイドポスト31に沿って直線上下動する。固定バイスジョー27がワークWを固定する鉛直面である固定バイス基準Rbは、帯鋸刃47がワークWの切断を終了する切断終了点Pcを共有している。
【0011】
図2は、本実施形態に係る横型帯鋸盤を示す上面図である。
図3及び
図4は、帯鋸刃の走行ラインと旋回角との関係を示す図である。つぎに、
図1から
図4を参照し、本実施形態に係る横型帯鋸盤1の構成を詳細に説明する。横型帯鋸盤1は、帯鋸刃47によってワークWを切断加工する加工機である。加工対象となるワークWは、前後方向に沿って長手となる長尺なワークであり、例えばH形綱といった形鋼である。
【0012】
横型帯鋸盤1は、ベースフレーム3と、カッティングヘッド9と、NC装置65とを主体に構成されている。ベースフレーム3は、ピン5、機台7、支持ローラ11、フロントバイス装置17、固定バイスジョー27、旋回バイス装置29、ガイドポスト31などを備えている。
【0013】
ピン5は、上下方向に沿って起立するように、ベースフレーム3に設けられている。ピン5は、ベースフレーム3上に搭載された機台7を貫通し、ピン5の上端は、機台7の上面から上方へと僅かに突出している。
【0014】
機台7は、ベースフレーム3上に搭載されて、ピン5を中心として水平方向に回動する。機台7は、図示しない旋回作動装置を操作することによって旋回させることができる。機台7を旋回させることで、カッティングヘッド9も同期して旋回し、旋回角θ、すなわちワークWの長手方向と直交する方向(ワークWの幅方向)から傾斜した角度θでワークWを切断することができる。
【0015】
支持ローラ11は、ワークWを支持して搬送する。支持ローラ11は、ベースフレーム3の前側及び後側にそれぞれ設けられている。個々の支持ローラ11は、ローラスタンド13によって回転自在に支持されている。前後の支持ローラ11にワークWが支持されることで、個々の支持ローラ11の頂部を含む水平面においてワークWの下端が定められる(後述するワーク支持基準Rw)。
【0016】
前側のローラスタンド13には、ワーク搬送用のハンドル15が設けられている。ハンドル15は、チェーン等を介して前後の支持ローラ11と連結されている。ハンドル15を回転させることで、前後の支持ローラ11がそれぞれ回転し、これにより、ワークWを後側から前側にかけて搬送することができる。
【0017】
フロントバイス装置17は、帯鋸刃47の走行ラインBLよりも前側においてワークWを固定する。フロントバイス装置17は、ピン5よりも前側、且つ、前側の支持ローラ11よりも後側に配置されている。フロントバイス装置17は、フロントバイスヘッド19と、フロント固定バイスジョー21と、及びフロント可動バイスジョー23とを備えている。
【0018】
フロント固定バイスジョー21は、左右方向に沿って設けられたフロントバイスベッド19の一端側に固定されている。フロント固定バイスジョー21の後端部側は、機台7の上方に突出したピン5の上端部に固定されている。フロント可動バイスジョー23は、フロントバイスベッド19上に取り付けられている。フロント可動バイスジョー23は、フロント固定バイスジョー21に接近する方向、又はフロント固定バイスジョー21から離反する方向へそれぞれ進退自在に構成されている。フロント可動バイスジョー23の進退動作は、フロントバイスベッド19の側部に設けられたフロントバイスシリンダ25によって行われる。フロント固定バイスジョー21及びフロント可動バイスジョー23は、ワークWを両側から挾持することで、ワークWを固定する。
【0019】
固定バイスジョー27は、帯鋸刃47の走行ラインBLよりも後側においてワークWを固定する。固定バイスジョー27は、ピン5と後側のローラスタンド13との間に支持されている。固定バイスジョー27とフロント固定バイスジョー21とをピン5に連結した部分は、帯鋸刃47との干渉を回避するように、帯鋸刃47が進入し得るスリット状に形成されている。
【0020】
旋回バイス装置29は、固定バイスジョー27と協働してワークWを固定する。旋回バイス装置29は、機台7上に設けられ、機台7とともにピン5を中心として旋回する。旋回バイス装置29は、バイスヘッド67と、可動バイスジョー71とを備えている。
【0021】
バイスヘッド67の上面の一端側は、固定バイスジョー27の下面に位置している。バイスベッド67の上面の他端側には、ガイドポスト31から離れた位置にサブガイドポスト69が設けられている。サブガイドポスト69は、上下方向に沿って直線状に延在している。サブガイドポスト69は、ガイドポスト31とともにカッティングヘッド9の直線上下動を案内する。
【0022】
バイスベッド67の上面の他端側には、可動バイスジョー71が設けられている。可動バイスジョー71は、固定バイスジョー27に接近する方向、又は固定バイスジョー27から離反する方向へそれぞれ進退自在に構成されている。可動バイスジョー71の進退動作は、サブガイドポスト69に装着されたバイスシリンダ73によって行われる。固定バイスジョー27及び可動バイスジョー71は、ワークWを両側から挾持することで、ワークWを固定する。
【0023】
ガイドポスト31は、機台7に設けられて、上下方向に沿って直線状に延在している。ガイドポスト31は、カッティングヘッド9の直線上下動を案内する。
【0024】
カッティングヘッド9は、機台7の上方に配置されている。カッティングヘッド9と機台7との間には、支持ローラ11によって支持されたワークWが存在する。カッティングヘッド9は、上下方向に沿って降下しながらワークWを切断する。カッティングヘッド9は、ハウジング33と、帯鋸刃47とを備えている。
【0025】
ハウジング33は、ガイドポスト31及びサブガイドポスト69にそれぞれ取り付けられ、ガイドポスト31及びサブガイドポスト69の延在方向に沿って移動可能に構成されている。ガイドポスト31に近接した位置には、ハウジング33を昇降するための油圧シリンダ57が設けられている。昇降用の油圧シリンダ57のピストンロッドの先端は、ハウジング33のブラケット部61に連結されている。油圧シリンダ57が動作することで、ハウジング33は、ガイドポスト31及びサブガイドポスト69に沿って直線上下動する。
【0026】
ハウジング33は、左右方向に延在するビーム部材33aと、ビーム部材33aの両端に設けられたハウジング本体部35、37とで構成されている。一方のハウジング本体部35には、駆動ホイール43が設けられ、他方のハウジング本体部37には、従動ホイール45が設けられている。駆動ホイール43と従動ホイール45とは、互いに離間しており、ワークWを隔てて向かい合っている。駆動ホイール43は、ワークWよりも固定バイスジョー27側に位置し、従動ホイール45は、ワークWよりも可動バイスジョー71側に位置する。
【0027】
駆動ホイール43の中心には、ハウジング本体部35に対して回転自在に取り付けられた駆動軸39が挿通されている。駆動軸39は、モータなどの駆動機構から伝達される動力によって回転する。駆動ホイール43は、駆動軸39の回転に伴って回転する。従動ホイール45の中心には、ハウジング本体部37に対して回転自在に取り付けられた従動軸41が挿通されている。
【0028】
駆動ホイール43と従動ホイール45との間には、ワークWを切削して切断するための無端状の帯鋸刃47が掛け渡されている。なお、従動されるホイールが2つ以上ある帯鋸盤もあるが、本実施形態で示す従動ホイール45は、ワークWを切削して切断するための無端状の帯鋸刃47が掛け渡されている駆動ホイール43と従動ホイールとの間を形成するための従動ホイールを指す。帯鋸刃47のうち、駆動ホイール43と従動ホイールとの間の領域、すなわち、ワークWを切削する領域である切削領域は、鋸刃ガイド53、55によって垂直にひねり起こされている。一方の鋸刃ガイド53は、ビーム部材33aに固定された固定ガイドアーム49の下端に設けられている。他方の鋸刃ガイド55は、ビーム部材33aに沿って移動自在に取り付けられた可動ガイドアーム51の下端に設けられている。
【0029】
本実施形態の特徴の1つとして、ハウジング33のビーム部材33aには、固定バイスジョー27からみてワークWの幅が広がる方向、すなわち、可動バイスジョー71が固定バイスジョー27から離反する方向にかけて下がるような傾斜が設定されている。ビーム部材33aの傾斜角に対応して、駆動ホイール43の中心である駆動軸39は、従動ホイール45の中心である従動軸41よりも上方に位置している。駆動ホイール43のホイール径と従動ホイール45のホイール径とは相互に対応しており、駆動ホイール43の下端43aは、従動ホイール45の下端45aよりも上方に位置する。このため、帯鋸刃47には、ワークWの幅が広がる方向にかけて下り傾斜となる傾斜角αが付与されている。ハウジング33は、傾斜角α、すなわち駆動ホイール43と従動ホイール45との位置関係を保持したまま、ガイドポスト31に沿って直線上下動する。
【0030】
機台7がピン5を旋回中心として旋回することで、可動バイスジョー71及びカッティングヘッド9もピン5を旋回中心として旋回する。
図3及び
図4に示すように、フロント固定バイスジョー21及び固定バイスジョー27においてワークWを固定する鉛直面を、基準面である固定バイス基準Rbとして定める。この場合、可動バイスジョー71及びカッティングヘッド9の旋回中心Oは、帯鋸刃47の走行ラインBLを通る鉛直面と、固定バイス基準Rbとの交点と一致している。
【0031】
NC装置65は、アーム部材63を介して、ガイドポスト31の上部に設けられている。NC装置65は、横型帯鋸盤1を制御する制御装置である。NC装置65には、カッティングヘッド9の降下量などを検出する各種のセンサから検出信号が入力されている。NC装置65は、これらの検出信号及び加工プログラムに基づいて、帯鋸刃47の回転制御、カッティングヘッド9の昇降制御などを行う。
【0032】
本実施形態との関係において、NC装置65は、カッティングヘッド9の降下量を検出するセンサの検出信号に基づいて、帯鋸刃47が後述する切断終了点Pcまで下降したか否を判断する。NC装置65は、帯鋸刃47が切断終了点Pcまで下降したと判断すると、ハウジング33を所定のホーム位置まで上昇させる動作を行う。
【0033】
このような構成の横型帯鋸盤1では、ハンドル15を操作してワークWを搬送することで、ワークWが適宜の位置に位置決めされる。ワークWが位置決めされると、フロントバイス装置17、固定バイスジョー27及び旋回バイス装置29によってワークWが固定される。NC装置65の制御のもと、駆動ホイール43を回転させて帯鋸刃47を走行させ、且つ、ガイドポスト31に沿ってカッティングヘッド9を下降させることにより、ワークWの切断が行われる。
【0034】
図5は、ワークの幅と切断終了点との関係を示す説明図である。
図5には、幅が異なる2種類のワークWが示されている。カッティングヘッド9がガイドポスト31に沿って降下しながらワークWを切断する場合、ワークWの幅によって切断長が相違する。
【0035】
本実施形態に係る横型帯鋸盤1にあっては、駆動ホイール43の中心は、従動ホイール45の中心よりも上方に位置しており、帯鋸刃47にも、ワークWの幅が広がる方向にかけて下り傾斜となる傾斜角αが付与されている。帯鋸刃47によるワークWの切断は、可動バイスジョー71側から固定バイスジョー27側に向かって進行し、固定バイス基準Rbにおいて終了する。より特定的には、帯鋸刃47によるワークWの切断は、ワークWの下端を定める水平面であるワーク支持基準Rwと固定バイス基準Rbとの交点で終了する。ワークWの切断がワーク支持基準Rwと固定バイス基準Rbとの交点で終了する関係は、ワークWの幅に拘わらず一定となる。したがって、ワークWの幅に係わらず、ワーク支持基準Rwと固定バイス基準Rbとの交点を、帯鋸刃47がワークWの切断を終了する切断終了点Pcとして定義することができる。
【0036】
このように、本実施形態に係る横型帯鋸盤1においては、固定バイス基準Rbに切断終了点Pcを割り当てることができるので、固定バイス基準Rbが切断終了点Pcを共有することとなる。すなわち、固定バイス基準Rbはその面内に切断終了点Pcを含み、切断終了点Pcとしての役割も果たすことなる。これにより、ワークWの幅(加工条件の一例)に拘わらず、切断終了点Pcが一定となるので、切断終了点Pcを一意に定めることができる。その結果、ワークWを切断加工する際に切断終了点Pcを検出したり演算したりする必要がないので、ワークWを切断加工する際の煩雑さを解消することができる。
【0037】
なお、
図5では、ワークWの幅の違いによる切断長の相違を説明した。しかしながら、このような切断長の相違は、同一のワークWを切断する場合であっても旋回角θの違いによって発生する。この点、本実施形態に係る横型帯鋸盤1によれば、帯鋸刃47によるワークWの切断は、旋回角θに拘わらず、ワーク支持基準Rwと固定バイス基準Rbとの交点で終了することとなる。したがって、旋回角θに拘わらず、ワーク支持基準Rwと固定バイス基準Rbとの交点を切断終了点Pcとして定義することができる。固定バイス基準Rbに対して切断終了点Pcが割り当てることができるので、固定バイス基準Rbが切断終了点Pcを共有することとなる。つまり、ワークWの幅に係わらず、また、ピン5を回転中心にカッティングヘッド9の旋回を伴っても、ワーク支持基準Rwと固定バイス基準Rbとの交点を、帯鋸刃47がワークWの切断を終了する切断終了点Pcとして一意に定めることができる。
【0038】
また、本実施形態に係る横型帯鋸盤1よれば、以下に述べる副次的な効果も達成することができる。
【0039】
例えば、角コラムを上面から下面に向かって切断するような場合には、下面の切断の際に、下面上部に堆積した切粉を帯鋸刃が巻き込むような事態が起こり得る。しかしながら、本実施形態においては、駆動ホイール43の中心が従動ホイール45の中心よりも上方に位置しているので、帯鋸刃47は、ワークWを引き切る状態で切削することになる。これにより、切粉の巻き込みを抑制することができるので、帯鋸刃47のチッピングの対策、及び切断面の加工精度の向上を図ることができる。
【0040】
また、帯鋸刃47がワークWを引き切る状態で切削することになるので、切断面に発生するバリを抑制する、或いは発生するバリのサイズを抑制することができる。
【0041】
さらに、固定バイス基準Rb側に切断終了点Pcが位置するので、ワークWの個体差に応じた幅誤差などを考慮しなくても済む。これにより、空切削量をゼロ、もしくは大幅に低減することができるので、作業能率の向上を図ることができる。
【0042】
加えて、本実施形態に係る横型帯鋸盤1は、カッティングヘッド9よりもワークWの搬送方向の上流側に、ワークWに対して穴明け加工が可能なドリルヘッドを備えた複合加工機であってもよい。上述したように、駆動ホイール43の中心が従動ホイール45の中心よりも上方に位置しているので、帯鋸刃47はワークWを引き切る状態で切削することになる。そのため、前工程の穴明け加工でワークW上に堆積した切粉を、帯鋸刃47が巻き込んでしまうといった事態を抑制することができる。これにより、帯鋸刃47のチッピングの対策、及び切断面の加工精度の向上を図ることができる。
【0043】
なお、上述した実施形態では、ハウジング33のビーム部材33aに傾斜が設定されている。しかしながら、駆動ホイール43の中心が、従動ホイール45の中心よりも上方に位置しているのであれば、ビーム部材33aは水平であってもよい。
【0044】
また、上述した実施形態では、駆動ホイール43のホイール径と従動ホイール45のホイール径とが対応している。しかしながら、駆動ホイール43の下端43aが従動ホイール45の下端45aよりも上方に位置するのであれば、ホイール径が対応していなくてもよい。
【0045】
また、上述した実施形態では、ワークWとして形鋼を例示したが、これに限られない。本実施形態に係る横型帯鋸盤1は、ワーク支持基準Rwと固定バイス基準Rbの交点にワークWの端部が存在するような断面形状を有するワークWに対して広く適用が可能である。
【0046】
また、上述した実施形態では、ワークWの幅が広がる方向にかけて下り傾斜となる傾斜角αが帯鋸刃47に設定されている。しかしながら、この傾斜角αの設定は、帯鋸刃47の全体に及ぶ必要はなく、少なくとも切削領域に及んでいればよい。
【0047】
以上のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0048】
1 横型帯鋸盤
3 ベースフレーム
7 機台
9 カッティングヘッド
21 フロント固定バイスジョー
23 フロント可動バイスジョー
27 固定バイスジョー
31 ガイドポスト
33 ハウジング
33a ビーム部材
35、37 ハウジング本体部
43 駆動ホイール
45 従動ホイール
47 帯鋸刃
71 可動バイスジョー
Rb 固定バイス基準
Pc 切断終了点