(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】靴
(51)【国際特許分類】
A43B 23/02 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A43B23/02 105Z
(21)【出願番号】P 2021091051
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2024-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(72)【発明者】
【氏名】内藤 有香
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 章央
(72)【発明者】
【氏名】是佐 茉彩
【審査官】村山 達也
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3219334(JP,U)
【文献】実開平02-107307(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A43B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足を挿入する履き口部と、前記履き口部からつま先側にかけて形成される開き口部と、を備える甲被と、
前記開き口部を塞ぐように前記甲被の内側に配置されつま先側の先端部が固定される砂除け部材と、
前記砂除け部材と前記開き口部の少なくとも一方の前記甲被の内側との間に設けられる接続部材と、を有し、
前記接続部材は、前記砂除け部材の先端固定部からの引き上げ角度を規制し、引き上げ状態の解除により前記砂除け部材が自動的に元の位置に戻さ
れ、
前記接続部材は、一端縁を前記砂除け部材の側端縁と同じ向きに重ねて前記砂除け部材の外側面に固定され、折り返すようにした他端縁は靴底側を向くように前記甲被の内側面に固定して山折り状態を保持可能とした、
ことを特徴とする靴。
【請求項2】
前記接続部材は、前記砂除け部材の引き上げ角度を30~135度の範囲に規制する大きさに形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の靴。
【請求項3】
前記接続部材の接合範囲は、開き口部の縁部の長さに対して60~100%とされる、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴に関する。
【背景技術】
【0002】
靴は、特に乳幼児用や高齢者用の靴として脱ぎ履きが簡単なものが利用されることが多く、履き口部のつま先側につなげて開き口部を形成し、開き口部の内側に砂除け部材(舌部)を配置して引き上げることで大きく開口させ、開き口部を塞ぐ砂除け部材の外側を甲被に架け渡したバンドで緊締できるようにしたものがある。
履きやすい靴として、例えば、特許文献1に開示された靴があり、引き上げた砂除け部材を補強部材で保持できるようにし、手を離した状態で履くことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の砂除け部材を引き上げた状態で保持できる靴では、引き上げすぎると開き口部のつま先側のバンドの外側まで砂除け部材が出てしまい、砂除け部材を元に戻さないままバンドで締め付けてしまうという問題がある。このため引き上げた砂除け部材を手で戻す必要があり、煩雑であるという問題がある。
また、砂除け部材が外に出たままでは、開き口部から砂やゴミなどが靴の中に入ってしまうという問題がある。
そこで、より履きやすく簡単に履くことができる靴への要望が高く、改良が望まれる。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、引き上げた砂除け部材が自動的に元の位置に戻ることで簡単に履くことができる靴を提供することを目的とする。
加えて、足当たりが良好な靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の靴は、
足を挿入する履き口部と、前記履き口部からつま先側にかけて形成される開き口部と、
を備える甲被と、
前記開き口部を塞ぐように前記甲被の内側に配置されつま先側の先端部が固定される砂
除け部材と、
前記砂除け部材と前記開き口部の少なくとも一方の前記甲被の内側との間に設けられる
接続部材と、を有し、
前記接続部材は、前記砂除け部材の先端固定部からの引き上げ角度を規制し、引き上げ
状態の解除により前記砂除け部材が自動的に元の位置に戻され、
前記接続部材は、一端縁を前記砂除け部材の側端縁と同じ向きに重ねて前記砂除け部材の外側面に固定され、折り返すようにした他端縁は靴底側を向くように前記甲被の内側面に固定して山折り状態を保持可能とした、
ことを特徴とする。
【0007】
前記接続部材は、前記砂除け部材の引き上げ角度を30~135度の範囲に規制する大きさに形成される、ことが好ましい。
【0008】
前記接続部材の接合範囲は、開き口部の縁部の長さに対して60~100%とされる、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、引き上げた砂除け部材が自動的に元の位置に戻ることで簡単に履くことができる。
加えて、足当たりが良好な靴を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の靴の一実施の形態にかかる平面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態にかかる左側面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態にかかり、(a)は砂除け部材と接続部材を抽出して示す平面図、(b)は砂除け部材と接続部材を靴に取り付けた状態の概略側面図である。
【
図4】本発明の一実施の形態にかかる砂除け部材の引き上げ角度を説明する左側面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態にかかる接続部材を山折り状態とした横断面図である。
【
図6】本発明の一実施の形態にかかる接続部材を谷折り状態とした横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の靴の一実施の形態について、
図1~
図6を参照して詳細に説明する。
本発明の靴1は、履くときに甲被10の開き口部12から引き上げた砂除け部材20を、手を放すことで自動的に元の位置に戻すことができるようにして履きやすくしたものである(
図1、
図2参照)。
靴1は、足を挿入する履き口部11と履き口部11からつま先側にかけて形成される開き口部12とを備える甲被10と、開き口部12を塞ぐように甲被10の内側に配置され、つま先側の先端部22が固定される砂除け部材20と、砂除け部材20と開き口部12の少なくとも一方の甲被10の内側との間に設けられる接続部材40と、を有して構成される(
図1、
図2参照)。接続部材40は、砂除け部材20の先端固定部からの引き上げ角度θ(
図3、
図4参照)を規制し、引き上げ状態の解除により砂除け部材20が自動的に元の位置に戻されるように設けられる。
【0014】
甲被10は、靴底部50から足を包み込むように立ち上げられて靴底部50と一体に形成されており、複数の部品を組み合わせて縫着され、あるいは接着することなどで形成されている。甲被10には、踵側に足を挿入する履き口部11が形成され、履き口部11からつま先側にかけて開き口部12が平面視略U字状に形成されており、履き口部11を開き口部12によって甲被10を大きく開口させることで履きやすくしている(
図1、
図2参照)。
【0015】
砂除け部材20は、開き口部12の横幅より広幅とされ、長さ(つま先・踵方向の長さ)が開き口部12の長さL1より長く形成され、履き口部11内に突き出した基端部21を把持できる大きさとしてある(
図1、
図2参照)。砂除け部材20は、開き口部12を塞ぐように甲被10の内側に配置され、つま先側の先端部22を縫着することで固定されている。砂除け部材20は、履き口部11内の基端部21を把持してつま先側の先端部22の縫着部分を中心に引き上げることで開き口部12を大きく開くことができる。このため砂除け部材20は、開き口部12の両側の甲被10とは縫着などで固定されていない(
図3、
図4参照)。砂除け部材20は、履き口部11に足を入れて靴1を履き、引き戻した状態では、開き口部12の内側で甲被10の両側と接触するように重ねられ、足の前甲部を覆って開き口部12からの砂やゴミなどの浸入を防止する。
【0016】
砂除け部材20は、その構成や素材は特に限定するものではないが、内装材を外装材で覆って構成されるなど複数素材で構成したものであってもよい。内装材は、例えば布帛や発泡体が用いられる。発泡体を用いることで、クッション性を確保し、形状回復性による型くずれを防止することができる。発泡体としては、例えばアスカーC硬度や密度を調整することで強度の確保と硬すぎなどの防止による履き心地などを確保でき、これらの値をこれまでの経験値や実験結果などに基づき適宜定めれば良い。
具体的には、発泡体として軟質ポリウレタンフォームを用い、厚さを2~5mm、硬さを50~200N(JIS K6400)とする。
外装材は、例えば柔らかいメッシュ、キャンパス、トリコット、マイクロスウェード、ポリウレタンによる合成皮革、天然皮革などが用いられる。
砂除け部材20としての硬度は、アスカーC硬度40~60とされることが好ましい。
【0017】
本発明の靴1は、開き口部12の両側の甲被10に架け渡されて一端31が固定され他端32が係脱自在に設けられる緊締部材30を有してもよい。
緊締部材30は、例えばバンドで構成され横向きの略U字状に形成されて開き口部12の両側の甲被10の外表面に架け渡されている(
図1、
図2参照)。緊締部材30は、略U字状の連続している谷部分とされた一端31が靴1の土踏まず側の甲被13の表面に縫着することで固定され、二つに分かれている他端32が小指側の甲被14の表側に係脱自在に設けられる。緊締部材30は、その裏面(内側の甲被10と接する面)に一方の面ファスナ33が取り付けられ、小指側の甲被14の表面に、対応する他方の面ファスナ34が取り付けられる。緊締部材30は、開き口部12を覆うように架け渡して面ファスナ33,34で止めることで、甲被10の内側の砂除け部材20とともに、足の前甲部を覆って締め付けることができる。緊締部材30は、一端31が繰り返し開閉されることに耐え得る強度が確保される。緊締部材30は、例えば、樹脂シートの表面に装飾性の布帛を縫着し、裏面の略全体に一方の面ファスナ33を縫着することで必要な強度を確保できる。
なお、緊締部材30は、上記の構成に限らず、他の構成や素材を用いて構成することができるものである。また、緊締部材30は、甲被と10と別体としたものを縫着などで固定するものに限らず、甲被10の土踏まず側に一体に突き出す突片を延出してバンド状の緊締部材30として用いるようにしても良い。
【0018】
接続部材40は、砂除け部材20と、開き口部12の少なくとも一方の甲被10の内側と、の間に設けられる。接続部材40は、砂除け部材20の先端部22の縫着した固定部(先端固定部)からの引き上げ角度θを規制し、引き上げ状態の解除により砂除け部材20が自動的に元の位置(甲被10の内側)に戻されるように設けられる。砂除け部材20は、略扇形のシート状とされ、一方の直線状の縁部41が砂除け部材20に縫着などで固定され、他方の直線状の縁部42が開き口部12の内側の甲被10に縫着することで固定される。
【0019】
接続部材40を開き口部12の少なくとも一方の甲被10との間に設けることで、砂除け部材20の基端部21を把持して引き上げるようにすると、砂除け部材20の幅方向の両側が接続部材40によって引っ張られて横断面方向がアーチ状に変形して幅が狭まり、開き口部12(甲被10)と直接接触しない状態となる。この砂除け部材20を引き上げた状態で、手を放すと、幅が狭まった状態の砂除け部材20が開き口部12の間から甲被10の内側に自動的に戻ることになる。この砂除け部材20が自動的に甲被10の内側に戻る際には、接続部材40からの復元力、すなわち接続部材40の自重、接続部材40自体の剛性や弾性による引張り力が作用し元の位置への復帰を促す。
接続部材40は、開き口部12の少なくとも一方の甲被10の内側との間に設けられていればよいが、両側に設けられていることが好適である。両側に設けられていると、上記砂除け部材20を甲被10の内側により確実に戻すことができる。
【0020】
接続部材40は、略扇形の中心側の端部43を砂除け部材20の先端部22の縫着部分に位置させ、履き口部11側に向かって接続部材の上端部44が接合される。こうすることで、砂除け部材20の両側が接続部材40で塞がれ、開き口部12の内側の隙間から砂やゴミだけでなく、水などが浸入することを防止できる。接続部材40の接合位置は、上端部44の位置が開き口部12の上端に近い方が砂除け部材20を元の位置に戻す大きな復元力を作用させるために好ましい。接続部材40の接合範囲Lは、開き口部12の縁部の長さL1に対して60~100%とされることが好ましい(
図1参照)。この接合範囲Lは、砂除け部材20に対して接続部材40がどの程度存在するかを示すものであり、この接合範囲Lに設けた接続部材40の剛性や引張り力によって、引き上げた後に手を放して引き上げ状態を解放すると、自動的に元の位置に砂除け部材20を戻すことができる。接合範囲Lが60%以下では、接続部材40の剛性や引張り力による復元力が不足する傾向にあり、砂除け部材20動的に元の位置に戻しにくくなる。
【0021】
接続部材40は、砂除け部材20の先端部22を中心として引き上げ角度θを規制し、引き上げ角度θが30~135度となるような略扇形の大きさが好ましい(
図3、
図4参照)。引き上げ角度θとは、砂除け部材を引き上げていない初期状態から砂除け部材を引き上げた状態までの角度を指す。この範囲の引き上げ角度θとした大きさの接続部材40とすることで、接続部材40の剛性や引張り力によって砂除け部材20を自動的に元の位置に戻すことができる。引き上げ角度θが30度以下では、開き口部12の開口が小さく履きやすくする効果が得られにくい。一方、引き上げ角度θが135度を超えると、砂除け部材20を元の位置に戻すための接続部材40による剛性や引張り力の作用方向がずれて有効に元の位置に戻すことができなくなる傾向にある。
【0022】
このような接続部材40は、砂除け部材20と甲被10との間に、山折り状態または谷折り状態で配置される(
図5、
図6参照)。山折り状態の接続部材40は、幅方向中間部が靴1の外側に凸の状態であり、谷折り状態では、逆に幅方向中間部が靴1の外側に凹の状態とされる。
山折り状態の接続部材40では、一方の縁部(一端縁)41を砂除け部材20の側端縁23と同じ向きに重ねて砂除け部材20の外側面24に縫着することで固定され、折り返すようにした他方の縁部(他端縁)42は靴底部50側を向くように甲被10の内側面に縫着することで固定して山折り状態を保持可能とする。このように縫着状態で山折り状態とした接続部材40によれば、砂除け部材20と甲被10との間に接続部材40が円滑に折り込まれ、より一層確実に砂除け部材20と甲被10とを直接接触させることを防止でき、引き上げた砂除け部材20を、手を放して引き上げ状態を解放することで、元の位置に円滑に戻すことができる。
また、山折り状態の接続部材40は、引き戻された元の位置では、山折りの頂部が開き口部12の外側に出ないようにすることで、緊締部材30(
図1、
図2参照)で確実に前甲部を押えることができるとともに、見栄えなどの外観をこれまでの靴と同様に保つことができる。
【0023】
また、接続部材40は、谷折り状態としても良く、この場合には、一方の縁部(一端縁)41を砂除け部材20の側端縁23と逆の向きに重ねて砂除け部材20の外側面24に縫着することで固定され、砂除け部材20の外側面に沿うようにし、他方の縁部(他端縁)42は外側を向くように甲被10の内側面の先端縁に重ねて縫着することで固定して谷折り状態を保持する(
図6参照)。谷折り状態の接続部材40によっても、砂除け部材20と甲被10との間に接続部材40が円滑に折り込まれ、砂除け部材20と甲被10とを直接接触させることを防止でき、引き上げた砂除け部材20を、手を放して引き上げ状態を解放することで、元の位置に戻すことができる。谷折り状態の接続部材40は、引き戻された元の位置では、谷折りの頂部が砂除け部材20の側端縁23から靴の内側に出ない状態とすることが好ましい。なお、谷折り状態の接続部材40では、山折り状態の接続部材40に比べて谷部分にゴミなどが溜まりやすくなることもあり、山折り状態とすることが好ましい。
【0024】
接続部材40は、略扇形のシート状とした構成に限定するものでなく、例えば略台形状や略長方形状などであっても良い。また、接続部材40は、接合範囲L内であれば、連続した1枚のシート状とする場合に限らず複数に分割したシート状や紐状に構成したものであっても良い。また、接続部材40の素材は、特に限定するものではなく、例えばゴムや布帛、天然皮革、合成皮革などを用いる。好ましくはゴムや合成皮革が良く、伸縮性の良いゴムを用いることで、砂除け部材20を、ゴムの弾性力を利用して元の位置に戻しやすくすることができ、合成皮革を用いることで、砂除け部材20と甲被10との間の摩擦を低減させ、剛性(形状回復性など)により元の位置に戻しやすくすることができる。
【0025】
このような靴1では、靴1を履く場合に、開き口部12から履き口部11に突き出ている砂除け部材20の基端部21を手で掴んで先端部22を中心に引き上げるようにし、履き口部11に続く開き口部12を大きく開くようにして足を入れる。これにより、履き口部11に加えて開き口部12が開くことで、足を挿入しやすくすることができる。この砂除け部材20を引き上げることで、砂除け部材20の幅方向の両側が接続部材40によって引っ張られて横断面方向がアーチ状に変形して幅が狭まり、開き口部12(甲被10)と直接接触しない状態となる。
足を挿入した後、砂除け部材20を掴んでいた手を放して引き上げ状態を解放すると、アーチ状に幅が狭まった砂除け部材20に自重や接続部材40自体の剛性や弾性による引張り力が作用して元の位置への復帰を促すことで、開き口部12の間から甲被10の内側に砂除け部材20が自動的に戻ることになる。
こうして自動的に元の位置に砂除け部材20が戻った後、バンド状の緊締部材30を、開き口部12の外側を覆うように架け渡し、面ファスナ33,34で止めるようにし、足の前甲部を締め付け、靴1を間単に履くことができる。
【0026】
このような靴1によれば、砂除け部材20を引き上げすぎて開き口部12の外側に砂除け部材20が出てしまった状態のままバンドで締め付けてしまうこともなく、手を放すだけで円滑に靴1を履くことができる。これにより、砂除け部材20が外に出たまま開き口部12から砂やゴミなどが靴1の中に入ってしまうことも防止できる。
履くことが簡単な靴1とすることで、靴1を履くことの本来の目的である歩行への準備が短時間かつ容易となり、靴1の機能向上を図ることができる。
また、実験により、履き口部12の幅が45mm、砂除け部材20の基端部21の横方向の長さが65mmの条件において、接続部材40の有無による砂除け部材20が自動的に元の位置に戻るか確認した。接続部材40が有る場合は、砂除け部材20が自動的に元の位置に戻った。一方、接続部材40が無い場合は、砂除け部材20が自動的に元の位置に戻らなかった。
【0027】
以上、一実施の形態とともに、具体的に説明したように、本発明の靴1は、足を挿入する履き口部11と、履き口部11のつま先側につながって形成される開き口部12と、を備える甲被10と、開き口部12を塞ぐように甲被10の内側に配置されつま先側の先端部22が固定される砂除け部材20と、砂除け部材20と開き口部12の少なくとも一方の甲被10の内側との間に設けられる接続部材40と、を有し、接続部材40は、砂除け部材20の先端固定部からの引き上げ角度θを規制し、引き上げ状態の解除により砂除け部材20が自動的に元の位置に戻される。
かかる構成によれば、砂除け部材20を手で掴んで引き上げるようにし、履き口部11に続く開き口部12を大きく開くことができ、足を挿入しやすくすることができる。足を挿入した後、砂除け部材20を掴んでいた手を放して引き上げ状態を解放すると、アーチ状に幅が狭まった砂除け部材20の自重や接続部材40自体の剛性や弾性による引張り力が作用して元の位置に砂除け部材20を自動的に戻すことができ、靴1を間単に履くことができ、歩行への準備が短時間かつ容易となり、靴1の機能向上を図ることができる。また、砂除け部材20が外に出たままにならず、適切な位置に自動的に戻るため、足当たりが良好な靴1となる。
【0028】
接続部材40は、砂除け部材20の引き上げ角度θを30~135度の範囲に規制する大きさに形成されることが好ましい。
かかる構成によれば、砂除け部材20をこの範囲の引き上げ角度θとすることで、履き口部11に続く開き口部12を大きく開いて履きやすくすることができるとともに、接続部材40の剛性や引張り力によって砂除け部材20を自動的に元の位置に戻すことができ、簡単に靴1を履くことができる。
【0029】
接続部材40は、開き口部の縁部の長さに対して60~100%とされることが好ましい。
かかる構成によれば、接続部材40をこの接合範囲Lに設けることで、接続部材40の剛性や引張り力によって、引き上げた後に手を放して引き上げ状態を解放すると、自動的に元の位置に砂除け部材20を戻すことができる。
【0030】
接続部材40は、中間部が甲被10の外側を向く山折り状態で設けられる。
かかる構成によれば、砂除け部材20と甲被10との間に接続部材40が円滑に折り込まれ、より一層確実に砂除け部材20と甲被10とを直接接触させることを防止でき、引き上げた砂除け部材20を、手を放して引き上げ状態を解放することで、元の位置に円滑に戻すことができる。
【0031】
接続部材40は、一端縁を砂除け部材20の側端縁と同じ向きに重ねて砂除け部材20の外側面24に固定され、折り返すようにした他端縁は靴底部50側を向くように甲被10の内側面に固定して山折り状態を保持可能とした。
かかる構成によれば、このような縫着状態で山折り状態とした接続部材40とすることで、砂除け部材20と甲被10との間に接続部材40が円滑に折り込まれ、より一層確実に砂除け部材20と甲被10とを直接接触させることを防止でき、引き上げた砂除け部材20を、手を放して引き上げ状態を解放することで、元の位置に円滑に戻すことができる。
【0032】
なお、本発明は、上記実施の形態に何ら限定するものでなく、それぞれの発明を組み合わせて構成することで、それぞれの効果を備えたものとなる。
また、本発明の適用範囲は、乳幼児用や高齢者用の靴に限らず、運動靴や児童靴、介護用靴、安全靴など様々な靴に適用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 靴
10 甲被
11 履き口部
12 開き口部
13 甲被(土踏まず側)
14 甲被(小指側)
20 砂除け部材
21 基端部(履き口側)
22 先端部(つま先側)
23 側端縁
24 外側面
30 緊締部材
31 一端(固定)
32 他端(係脱)
33 面ファスナ(一方)
34 面ファスナ(他方)
40 接続部材
41 一方の縁部(砂除け部材側)
42 他方の縁部(開き口部側)
43 中心側の端部
44 上端部
50 靴底部
θ 角度(引き上げ角度)
L 接合範囲
L1 開き口部の縁部の長さ