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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】吸気ダクト
(51)【国際特許分類】
   F02M 35/10 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
F02M35/10 101L
F02M35/10 101H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021136985
(22)【出願日】2021-08-25
(65)【公開番号】P2023031479
(43)【公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【弁理士】
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】加藤 治樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 麻人
【審査官】櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-102439(JP,A)
【文献】特開2006-193006(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0021719(KR,A)
【文献】特開2017-057845(JP,A)
【文献】特開平10-095228(JP,A)
【文献】特表2001-502634(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2004-0046585(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0114606(KR,A)
【文献】特開2016-011586(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2002-0012970(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0024435(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0069351(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアクリーナの接続口に差し込まれる嵌合部と、
前記嵌合部の外面から、前記外面と直交する方向へ張り出し、前記接続口と前記嵌合部との間を塞ぐ封止部と、を備え、
前記封止部は、前記嵌合部と同一材料で形成され、前記嵌合部の挿脱方向に曲げ変形可能であって、かつ、前記嵌合部の挿脱方向に沿った断面形状が、底辺よりも高さが長い三角形であり、
前記封止部の先端から切れ目が形成されている
ことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項2】
エアクリーナの接続口に差し込まれる嵌合部と、
前記嵌合部の外面から張り出し、前記接続口と前記嵌合部との間を塞ぐ封止部と、を備え、
前記封止部は、前記嵌合部と同一材料で形成され、弾性変形可能であり、
前記封止部が、前記嵌合部における前記接続口への差し込み方向に離して複数列設けられ、
前記封止部の先端から形成された切れ目が、隣り合う前記封止部において互いにずらした位置に設けられている
ことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項3】
エアクリーナの接続口に差し込まれる嵌合部と、
前記嵌合部の外面から張り出し、前記接続口と前記嵌合部との間を塞ぐ封止部と、
吸気ダクトにおける前記嵌合部と反対側の端に設けられた取入口と、を備え、
前記封止部は、前記嵌合部及び前記取入口と同一材料で形成され、前記嵌合部の挿脱方向に曲げ変形可能であって、かつ、前記嵌合部の挿脱方向に沿った断面形状が、底辺よりも高さが長い三角形であり、
前記封止部の先端から切れ目が形成されている
ことを特徴とする吸気ダクト。
【請求項4】
エアクリーナの接続口に差し込まれる嵌合部と、
前記嵌合部の外面から張り出し、前記接続口と前記嵌合部との間を塞ぐ封止部と、
前記嵌合部の根元の外面から張り出し、前記接続口の開口端に当接可能なフランジ部と、を備え、
前記封止部は、前記嵌合部と同一材料で形成され、前記嵌合部の挿脱方向に曲げ変形可能であって、かつ、前記嵌合部の挿脱方向に沿った断面形状が、底辺よりも高さが長い三角形であり、
前記封止部の先端から切れ目が形成されている
ことを特徴とする吸気ダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアクリーナに接続される吸気ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸気ダクトは、エアクリーナの接続口に下流端部を差し込んで、エアクリーナに接続される(例えば特許文献1参照)。ここで、エアクリーナの接続口と吸気ダクトの下流端部との隙間から、エンジンルーム内の高温の空気を吸い込んだり、エンジン騒音の漏れを防止したりするため、下流端部にウレタンフォーム製のシール材を取り付けて、隙間を封止することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-115643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の吸気ダクトは、シール材を付加するために部品点数が増加し、シール材を取り付けるための手間がかかるなどにより、コストが嵩んでしまう。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、コストを低減できる安価な吸気ダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る吸気ダクトは、
エアクリーナの接続口に差し込まれる嵌合部と、
前記嵌合部の外面から張り出し、前記接続口と前記嵌合部との間を塞ぐ封止部と、を備え、
前記封止部は、前記嵌合部と同一材料で形成され、弾性変形可能であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る吸気ダクトによれば、コストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施例に係る吸気ダクトを示す側面図である。
図2】実施例の吸気ダクトを示す正面図である。
図3】実施例の吸気ダクトを示す斜視図である。
図4】実施例の吸気ダクトを分解して示す斜視図である。
図5】実施例の吸気ダクトの要部を拡大して示す端面図であり、(a)はエアクリーナに取り付ける前であり、(b)はエアクリーナに取り付けた状態を示す。
図6】封止部の変更例を示す要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明に係る吸気ダクトにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、実施例では、自動車等の車両の吸気系に用いられるインレットダクトとも呼ばれる吸気ダクトを示している。
【実施例
【0010】
図1図3に示すように、実施例に係る吸気ダクト10は、空気を取入口10aから送出口10bへ向けて案内する空気流通路12を有し、下流にあるエアクリーナ100(図1参照)に空気を案内する。図4に示すように、実施例の吸気ダクト10は、複数(実施例では2つ)の分割体14A,14Bを、互いの縁を突き合わせて爪嵌合により組み付けて筒状にしている。実施例では、送出口10bや後述する嵌合部16や封止部20を含む吸気ダクト10の下流端部が、第1分割体14Aで形成されている、一方、吸気ダクト10の下流端部を除く取入口10aや空気流通路12の大部分が、第1分割体14Aと第2分割体Bとの組み合わせにより形成されている。分割体14A,14Bとしては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合樹脂(ABS)などの合成樹脂の成形品を用いることができる。
【0011】
図1図3に示すように、吸気ダクト10において送出口10bが設けられた下流端部には、エアクリーナ100の接続口102の内側に差し込まれる嵌合部16が設けられている。嵌合部16の外形状は、接続口102の内形状と相似形で形成されている。実施例では、四角形の接続口102の内形状に合わせて、嵌合部16の外形状が四角形に形成されている。また、嵌合部16の外寸法は、接続口102の内寸法よりもわずかに小さく設定されている。嵌合部16の根元には、外側へ張り出したフランジ部18が設けられている。嵌合部16を接続口102に差し込んだ際に、フランジ部18を接続口102の開口端に当てて、嵌合部16の差し込み位置を規定可能になっている(図5(b)参照)。
【0012】
図1図3に示すように、吸気ダクト10は、嵌合部16の外面から張り出し、接続口102と嵌合部16との間を塞ぐ封止部20を備えている。嵌合部16および封止部20は、同一の材料で形成されている。実施例では、嵌合部16および封止部20を含む第1分割体14Aを型成形することで、嵌合部16および封止部20を、継ぎ目なく一体的に形成している。
【0013】
封止部20は、弾性変形可能である。図5に示すように、封止部20は、嵌合部16における接続口102への挿脱方向(嵌合部16の接続口102への差し込み方向)へ曲げ変形するようになっている。ここで、嵌合部16は、比較的肉厚を厚くすることで撓み難くなっている。これに対して、封止部20は、嵌合部16よりも肉厚を薄く形成することで、嵌合部16と同一の材料であっても、弾性変形可能になっている。
【0014】
図1および図5に示すように、封止部20は、嵌合部16の外面から立ち上がるフィン状である。実施例の封止部20は、嵌合部16の外面と直交するように張り出している。封止部20は、嵌合部16の外面と接続口102の内面との間隔よりも大きく張り出している。封止部20は、嵌合部16に連なる根元よりも先端の方が薄くなっている(図5参照)。これにより、封止部20は、根元側よりも先端側の方が弾性変形し易くなっている。実施例の封止部20は、その厚み方向(嵌合部16における接続口102への挿脱方向)の両面が、根元から先端へ向かうにつれて互いに近づくように傾斜している。
【0015】
図2に示すように、封止部20は、嵌合部16を囲むように配置されている。実施例の封止部20は、嵌合部16の全周に亘って連続した閉環状に形成されている。封止部20が、嵌合部16における接続口102への挿脱方向に離して複数列設けられている。隣り合う封止部20は、弾性変形した封止部20が隣の封止部20に当たらない程度離すとよく、例えば、封止部20における接続口102とのラップ寸法程度に設定することが可能である。
【0016】
図6に示すように、封止部20には、切れ目22を設けてもよい。切れ目22は、例えば、封止部20の先端に開放しており、封止部20の先端から根元側へ向かうにつれて幅が狭くなる「V」字形状としたり(図6参照)、スリット形状にしたり、その他の形状にするなどが可能である。実施例の切れ目22は、封止部20の先端から封止部20の途中位置まで形成されている。切れ目22は、封止部20が変形した際に、切れ目22の開口縁同士が重なるなどにより切れ目22が閉じるように設定するとよい。切れ目22は、封止部20において嵌合部16のコーナー部分(図6(a)参照)および/またはコーナー部分近傍から張り出す部位(図6(b)参照)に設けることが好ましい。また、切れ目22は、複数列の封止部20において同じ部位に設けてもよいが、隣り合う封止部20において、切れ目22を互いにずらして配置してもよい。例えば、一列目の封止部20のコーナー部分に切れ目22を形成した場合(図6(a)参照)、二列目の封止部20においてコーナー部分近傍に切れ目22を形成して(図6(b)参照)、切れ目22の位置を互いにずらすことができる。
【0017】
前述した吸気ダクト10は、嵌合部16を接続口102に差し込むことで、嵌合部16の外面から張り出して弾性変形可能である封止部20により、接続口102と嵌合部16との間を塞いで、内部からの空気の漏れや外部からの水の浸入を防止できる。このとき、封止部20は、接続口102の内面に当たって嵌合部16の差し込み方向と反対側へ曲がっている。そして、曲がる前の元の形状へ戻ろうとする弾性が封止部20において働くことで、封止部20で接続口102の内面を強く押さえて、接続口102と嵌合部16との間を適切に封止できる。吸気ダクト10およびエアクリーナ100の内側が、空気の吸い込みにより負圧になると、外側へ曲がった封止部20が内側へ向けて引っ張られて、接続口102の内面に強く当たることになる。封止部20は、嵌合部16を接続口102に差し込むことで外側へ曲がるので、内側から負圧がかかって封止部20が引っ張られても、接続口102の内面を乗り越えて内側へ変形できないことから、接続口102と嵌合部16との間の封止状態を保つことができる。
【0018】
実施例の吸気ダクト10は、取入口10a側を車体に固定し、嵌合部16をエアクリーナ100の接続口102に差し込んで取り付けている。嵌合部16を接続口102に差し込んだ際に、封止部20が嵌合部16と接続口102のとの間にあるので、車両走行時等の振動を封止部20が弾性変形して吸収し、異音の発生を防止できる。また、嵌合部16や接続口102の寸法誤差を、封止部20の弾性変形により吸収して、嵌合部16と接続口102の間を適切に封止できる。
【0019】
前述したように、封止部20は、嵌合部16の外面から張り出す簡単な形状であるので、封止部20の形成にかかるコストを抑えることができる。また、封止部20が嵌合部16と同一材料であることで、第1分割体14Aを成形するときに嵌合部16と一緒に封止部20を形成することができる。このように、嵌合部16および封止部20を一体に形成することで、部品点数の増加を抑えたり、封止部20の取り付け手間を省いたりするなどにより、吸気ダクト10にかかるコストを低減することができる。
【0020】
封止部20が嵌合部16に同一材料により連ねて形成されているので、別体のシール材を貼り付けた場合のように、嵌合部16の接続口102への差し込みによって封止部20が位置ずれすることはない。従って、封止部20が接続口102からはみ出して見栄えが悪化したり、嵌合部16と接続口102との間の封止不良が発生したりすることを防止できる。封止部20は、その厚みや形状を変えて変形し易さを簡単に変更することができ、封止性や接続口102への組み付け性を簡単に調整できる。封止部20は、嵌合部16(吸気ダクト10の本体部分)と同じ熱や振動等に耐性を有する材料で構成できるので、ウレタンフォーム製のシール材のように加水分解して劣化したり、熱や振動等による経年劣化によって弾性を失ったりすることなどを回避できる。このように、封止部20によれば、封止性や振動吸収性などの機能を長期間に亘って発揮できる。
【0021】
封止部20は、嵌合部16に連なる根元よりも先端の方が薄くなっている。このようにすることで、接続口102の内面に当たる封止部20の先端側が変形し易くなり、嵌合部16を接続口102へ差し込み易くなる。そして、封止部20の先端側が接続口102の内面に追従するように変形して、嵌合部16と接続口102との間を適切に封止できる。また、封止部20の根元側が比較的厚いことで、封止部20が根元から折れ曲がることを抑えることができる。そして、封止部20の比較的厚い根元側による反力が働くので、嵌合部16と接続口102との間を適切に封止できる。
【0022】
封止部20を、嵌合部16における接続口102への差し込み方向に離して複数列設けることで、接続口102と嵌合部16との間を適切に封止できる。ここで、複数列の封止部20を設けても、封止部20に用いる材料や手間が少ないことから、コストの増加を抑えることができる。
【0023】
封止部20に切れ目22を設けることで、切れ目22の開口縁同士が近づくような封止部20の周方向への変形も可能となる。これにより、封止部20が接続口102の内面に追従し易くなり、嵌合部16と接続口102との間を適切に封止できる。特に、封止部20において嵌合部16のコーナー部分に対応する部位またはこの近傍部位に切れ目22を設けると、接続口102の内面におけるコーナー部分に沿って周方向へ変形しようとする封止部20の動きが切れ目22で許容され、コーナー部分を封止部20によって適切に封止できる。
【0024】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。なお、本発明は、実施例および以下の変更例の具体的な記載のみに限定されるものではない。
(1)封止部は、嵌合部の外面と直交するように張り出す構成に限らず、嵌合部の外面に対して斜めに張り出していてもよい。
(2)封止部は、厚み方向の両面を傾けて先細り形状とすることに限らず、厚み方向の一面を傾けて先細り形状としてもよい。
(3)封止部は、実施例の数に限らず、1列であっても、2列であっても、4列以上であってもよい。
(4)複数の封止部の張り出し寸法が同じである構成に限らず、複数の封止部がある場合、封止部の張り出し寸法が異なっていてもよい。例えば、送出口側から取入口側の列になるにつれて封止部の張り出し寸法を大きくしたり、小さくしたりするなどが挙げられる。
【符号の説明】
【0025】
16 嵌合部,20 封止部,22 切れ目,100 エアクリーナ,102 接続口
図1
図2
図3
図4
図5
図6