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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】リールシート
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/06 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
A01K87/06 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021171012
(22)【出願日】2021-10-19
(65)【公開番号】P2023061177
(43)【公開日】2023-05-01
【審査請求日】2023-10-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 勝
【審査官】小島 洋志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-041541(JP,A)
【文献】特開2000-333564(JP,A)
【文献】実開昭58-182677(JP,U)
【文献】特開2002-191267(JP,A)
【文献】米国特許第06357165(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 87/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部と、竿杆の後端部分が嵌合、固定される開口孔が形成された筒状部とを備えたシート本体を有するリールシートにおいて、
前記シート本体は、前記シート本体の軸方向に移動して前記リール脚載置部に載置されたリール脚を固定する遊動フードと、前記遊動フードを回り止めした状態で軸方向に移動させるように前記遊動フードに嵌合するナット部材と、前記遊動フードとナット部材の嵌合領域に設けられるクリック機構とを備えており、
前記クリック機構は、前記ナット部材の内周面に形成され、クリック音を発生させる凹凸と、前記凹凸と係合する頂部と両端に屈曲係止部が形成された板バネと、前記遊動フードの外周面に形成され、前記板バネを設置する円弧状の凹所と、前記凹所の周方向両側に形成され、前記屈曲係止部が係止される突起とを備え、
前記凹所は、前記ナット部材を回転操作して前記板バネの屈曲係止部が前記突起に係合した状態で、前記屈曲係止部との間に隙間を有するように形成され、
前記板バネは、前記凹所の表面形状に沿うように湾曲して形成され、前記頂部が前記凹凸によって弾発した際、前記屈曲係止部は前記隙間内で自由に動くことが可能である、ことを特徴とするリールシート。
【請求項2】
前記凹所の隙間は、前記ナット部材を回転操作した際、前記板バネの屈曲係止部が凹所を規定する内壁に当接しない大きさに形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載のリールシート。
【請求項3】
前記板バネは、その頂部が前記ナット部材の凹凸の凹部に係合している状態で、前記凹凸の凸部の最内径位置と前記頂部の最外径位置との間の径方向距離が、0.1~0.35mmの範囲となるように形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のリールシート。
【請求項4】
前記板バネの頂部は、前記ナット部材の凹凸の凹部に係合している状態で、凹部の底面との間に隙間が形成される曲率で形成されている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のリールシート。
【請求項5】
上記した請求項1からのいずれか1項に記載のリールシートを固着したことを特徴とする釣竿。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リールが装着される各種の釣竿に取り付けられ、リールを装着、固定するのに用いられるリールシートに関し、詳細には、遊動フードを移動させる際にクリック音を発生するリールシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リールを使用する釣竿の元竿杆の外周面に、筒状のリールシートを固定することが知られている。一般的にこのようなリールシートは、リール脚載置部の軸方向一端側に固定フードが設けられ、軸方向他端側に遊動フードが設けられた構造となっている。前記遊動フードはナット部材と回り止め係合しており、ナット部材を回転操作することで、遊動フードを固定フードに対して接近/離間させる構造となっている。
【0003】
上記した構造のリールシートには、ナット部材を回転操作した際、クラック音を発生させるクリック機構を設けたものが知られている。例えば、特許文献1には、ナット部材とリールシートとの間に、板バネを取り付けた支持部材を配設したクリック機構が開示されており、特許文献2には、ナット部材とリールシートとの間にコイルスプリングとボールパーツを取り付けた支持部材を配設したクリック機構が開示されている。いずれの構成も、ナット部材の内面に板バネ及びボールパーツが弾性係合する凹凸が周方向に亘って形成されており、ナット部材を回転操作することで、クリック音が生じるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-342123号
【文献】特開2001-145439号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のクリック機構は、ナット部材とリールシートとの間に弾性部材を取り付けるための支持部材を配設する構造であるため、遊動フードの外径が太くなってしまい、外観が低下すると共に機能的にも好ましくはない。この場合、遊動フードの外径を抑えようとすると、スクリュー外径を小さくする必要があり、使用できる範囲に制限がある。また、ボールパーツをコイルスプリングで付勢する構造は、部品点数が多く、コストも高くなり、構造的に不安定で故障などが生じ易い。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、遊動フード及びナット部材の外径を大きくすることなく、簡易な構造でクリック音を発生するクリック機構を組み込んだリールシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係るリールシートは、魚釣用リールのリール脚を載置するリール脚載置部と、竿杆の後端部分が嵌合、固定される開口孔が形成された筒状部とを備えたシート本体を有しており、前記シート本体は、軸方向に移動して前記リール脚載置部に載置されたリール脚を固定する遊動フードと、前記遊動フードを回り止めした状態で軸方向に移動させるように前記遊動フードに嵌合するナット部材と、前記遊動フードとナット部材の嵌合領域に設けられるクリック機構とを備えており、前記クリック機構は、前記ナット部材の内周面に形成され、クリック音を発生させる凹凸と、前記凹凸と係合する頂部と両端に屈曲係止部が形成された板バネと、前記遊動フードの外周面に形成され、前記板バネを設置する円弧状の凹所と、前記凹所の周方向両側に形成され、前記屈曲係止部が係止される突起とを備え、
前記凹所は、前記ナット部材を回転操作して前記板バネの屈曲係止部が前記突起に係合した状態で、前記屈曲係止部との間に隙間を有するように形成されている、ことを特徴とする。
【0008】
上記したリールシートのクリック機構は、遊動フードとナット部材の嵌合領域に設けられており、クリック機構は、ナット部材の内周面に形成された凹凸と係合する頂部を備えた板バネを有している。この板バネは、遊動フードの嵌合領域の外周面に形成された円弧状の凹所に設置する構成であることから、従来のように、別途、支持部材を設ける必要が無く、また、凹所に設置した板バネの弾性によってクリック音を生じさせる構成であるため、構造が簡単で、遊動フード及びナット部材の外径を大きくすることもない。さらに、ナット部材を回転操作した際、板バネは一端が突起に支持されて他端が自由に動くことが可能であるため、ナット部材を回転操作した際、凹凸によって弾発しやすくなり、クリック音を大きくすることができる。
【0009】
そして、上記した構成のリールシートは、各種の釣竿の竿杆(元竿杆)の外周面に固定することが可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、遊動フード及びナット部材の外径を大きくすることなく、簡易な構造でクリック音を発生するクリック機構を組み込んだリールシート、及び、そのようなリールシートが装着された釣竿が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るリールシートの一実施形態を示す軸方向の部分断面図。
図2図1に示すリールシート部分の分解斜視図であり、(a)は上方から見た図、(b)は下方から見た図。
図3】リールシートを構成するナット部材を示しており、(a)は軸方向の断面図、(b)は図(a)のA-A線に沿った断面図。
図4】リールシートを構成する遊動フードを示しており、(a)は軸方向の断面図、(b)は平面図、(c)は軸方向の前側から見た図。
図5】遊動フードに設置される板バネの構成を示す図であり、(a)正面図、(b)は側面図。
図6】遊動フードにナット部材を嵌合させた状態(クリック機構の構造)を示す図であり、(a)はナット部材の凹凸の凹部に板バネの頂部が係合した状態を示す図、(b)は板バネ部分を拡大した正面図。
図7】クリック機構の構造を示す図であり、(a)は板バネの頂部がナット部材の凹凸の凹部と係合した状態を示す図、(b)はナット部材を反時計回り方向に回転した状態を示す図。
図8】ナット部材を反時計回り方向に回転操作した際、ナット部材の凹凸に係合している板バネの頂部が変形する状態を示す拡大図。
図9】クリック機構の変形例を示す図であり、(a)はナット部材の凹凸の凹部に板バネの頂部が係合した状態を示す図、(b)は板バネの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るリールシートの実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明に係るリールシートの一実施形態を示す図である。
以下の説明において、前後方向(軸方向)及び上下方向は、図1で示した方向を意味し、左右方向(側方向)は、図1の紙面と直交する方向を意味する。なお、本実施形態のリールシートは、スピニングリールを取り付ける釣竿に適した構造(異形グリップ構造)となっており、リールは、下側に装着される。また、リールシートに固着される釣竿については図示しないが、竿杆の後端部分(元竿杆)がリールシートの開口孔を介して軸方向に嵌入され、接着等によって固着される。この釣竿については、振出式、並継式、1本竿等、その構成については限定されることはない。
【0014】
本実施形態に係るリールシート1のシート本体1Aは、意匠性の向上が図れるように、透明性を有する材料、例えば、ナイロン、ポリカーボネート、アクリル、ウレタンなどで一体形成されており、内部まで視認できるよう構成されている。色彩については、無色透明であっても良いし、有彩色であっても良く、内部が視認できれば、透過率については限定されることはない。また、部分的に色分けされていたり、部分的に透過率が異なる構成であっても良い。或いは、透明でない材料で形成されていても良い。
【0015】
前記シート本体1Aは、全体として筒状に形成されており、その筒状部1Bに形成された前後方向に亘って貫通する開口孔1Cに、釣竿を構成する竿杆(元竿杆)の基端側が挿入され、その外周面が接着等によって固定される。この場合、竿杆の基端側は、直接、開口孔1Cの内周面に固定されていても良いし、管状のスペーサを介在して固定されていても良い。
【0016】
前記シート本体1Aには、握持、保持される筒状のグリップ50が一体化されるようになっている。本実施形態のグリップ50は、シート本体1Aの後方側に取着され、その本体50Aは、握持した際の感触、グリップ性や外観の向上、及び、軽量化が図れるような軟質材料、例えば、天然コルク、ウレタン、EVA、熱可塑性エラストマー、ゴム等で形成したり、硬質部材にこれらの材料を被着することで形成することが可能である。
前記グリップ50は、後述するカバー部材を介してシート本体1Aと一体化されるようになっており、両者が一体化されると、本体50Aの前後方向に亘って貫通する開口孔50Bは、シート本体1Aの前記開口孔1Cと同軸上となって、竿杆の基端側が挿通、固定される。この場合、挿通される竿杆の基端側は、開口孔50Bの内周面に直接、固定されても良いし、管状のスペーサを介在して固定されていても良い。
【0017】
前記シート本体1Aには、スピニングリールのリール脚を載置するリール脚載置部3と、リール脚載置部3の後方側に配設されて、リール脚の後端側を受ける固定フード5が形成されている。また、前記シート本体1Aには、固定フード5と対向して軸方向前側に、遊動フード60と、遊動フード60を回り止めした状態で軸方向に移動させるように遊動フードに嵌合するナット部材70と、遊動フード60とナット部材70の嵌合領域に設けられるクリック機構80とが配設されている。すなわち、シート本体1Aの前方側(リール脚載置部3の前方側)には、前記固定フード5と対向して軸方向に進退可能な遊動フード60が配設されている。
【0018】
前記遊動フード60は、筒状部1Bの前方の端部に形成された雄螺子部7に螺合されたナット部材70を回転操作することで、回転することなく軸方向に移動し、リール脚載置部3に載置されたスピニングリールの脚部の前端側を締め付け、固定する。このため、遊動フード60は、軸方向に移動してリール脚の前端側を受けるフード部61を備えている。
なお、遊動フード60とナット部材70の嵌合構造、及び、クリック機構80の構成については後述する。
【0019】
前記シート本体1Aのグリップ側の端面(接続端面)8には、グリップ50の端面(接続端面)52が対向して配設されるようになっており、両者の間に、カバー部材30が介在されて両者は一体化される。
この場合、本実施形態のリールシート1及びグリップ50は、グリップの軸方向の一部が、リールシートのシート本体1Aに重なって配設される異形グリップとして構成されており、外観の向上を図っている。具体的には、シート本体1Aは、前記筒状部1Bが露出した状態で後方に突出するように形成されており、その露出する突出部(以下、露出突出部1B´とする)の外周面に沿って、下方から上方に向けて傾斜する接続端面8が形成されている。
【0020】
前記接続端面8は、露出突出部1B´の外周面に沿って外方に突出する段部として構成されており、露出突出部1B´の下端位置で、軸方向に略半円形状で突出する突出段部8aと、突出段部8aの両側で、前方側に向けて次第に上昇するように形成された両側傾斜段部8bと、露出突出部1B´の上端位置において、前記両側傾斜段部8bと連続するように形成された上側突出段部8cと、を備えている。このような突出段部8a、両側傾斜段部8b、上側突出段部8cを具備する接続端面8は、後方側に向けて露出する当て付け面として構成されており、この当て付け面に、カバー部材30が密着するように面接される。また、前記固定フード5は、突出段部8aの下面から、両側傾斜段部8bの下方側と一体化されている。
【0021】
前記グリップ50の本体50Aの接続側となる接続端面52は、シート本体側の接続領域において、上端から下方に向けて傾斜するようにカットされており、そのカット面は、前記シート本体1Aの突出段部8a、両側傾斜段部8b、上側突出段部8cと対向するように、下側端面52a、両側傾斜端面52b、上側端面52cを備えている。そして、これらの面は、グリップ50の前側の開口孔50Bに、前記シート本体1Aの露出突出部1B´を嵌入することでカバー部材30を介在した状態で対向するようになっている。
【0022】
前記グリップ50の前側の開口孔50Bに、前記シート本体1Aの露出突出部1B´を嵌入する際、両者の間には、カバー部材30が介在される。このカバー部材30は、軸方向及び上下方向に延び、前側が屈曲して上昇するリング状のフレーム構造となっており、非透明な材料で形成されている。
このようなカバー部材30がシート本体1Aと遊動フード60との間に介在された状態では、シート本体1A、カバー部材30、グリップ50の表面は略面一状となり、表面に凹凸のない握持し易い構成となる。前記カバー部材30は、例えば、樹脂、金属、木材等で一体形成することが可能であり、その表面には、色彩、模様を付しても良いし、光輝性を有するように、金、銀、銅、アルミ等の金属メッキを付しても良い。このように、シート本体1Aとカバー部材30との間の境界部分に、細い線状のカバー部材30が露出することで、意匠性を高めることができる。
【0023】
前記カバー部材30は、一方の面(シート対向面)30Aが、前記シート本体1Aの接続端面8(突出段部8a、両側傾斜段部8b、上側突出段部8c)と面接するように屈曲形成されており、他方の面(グリップ対向面)30Bが、グリップの本体50Aの接続端面52(下側端面52a、両側傾斜端面52b、上側端面52c)と面接するように屈曲形成されている。
【0024】
上記したように形成されるカバー部材30は、シート本体及びグリップを竿杆に装着する前に、シート本体1Aの接続端面8とグリップ50(接続端面52)との間に介在して両者を一体化し、一体化された状態で、竿杆を開口孔1C,50Bに挿通し接着剤等で固定される。この場合、カバー部材30とグリップ50を接着剤で接着しても、その接着剤は、非透明なカバー部材30によって、透明なシート本体1Aを介して視認することができないため、従来のように、シート本体1Aに接着剤を隠ぺいするような被膜を形成しておく必要が無い。すなわち、シート本体1Aの接続端面8に隠蔽塗料を塗布したり、メッキ処理する等の被膜形成工程を施す必要もないので、コスト及び加工の手間を軽減することができる。また、そのような被膜を形成しないことから、透明部分が減って外観が低下するようなことはなく、被膜のバラツキを修正、加工する等の後処理をする必要もない。
【0025】
さらに、シート本体1Aの接続端面8、及び、グリップ50の接続端面52は、傾斜するように形成されているので、カバー部材30に対する接地面積が広くなって固定力の向上が図れると共に、目視できるカバー部材表面の面積も広くなり、デザイン性が向上する。
【0026】
上記した構成では、カバー部材30は、シート本体1Aに予め固定しておき、この状態でカバー部材30にグリップ50を接着するように構成すれば、組付け作業を容易に行なうことが可能となる。
【0027】
また、このような構成では、カバー部材30の接続端面(シート対向面)30Aと、シート本体1Aの接続端面8に、両者を移動不能に嵌合させる凹凸係合部を形成しておくことが好ましい。このような凹凸係合部は、両部材が当て付く領域に形成しておけば良く、本実施形態では、シート本体1Aの接続端面8の突出段部8aの中央部表面に凹所12を形成し、かつ、カバー部材30の接続端面(シート対向面)30Aに、前記凹所12に嵌合する凸部32を形成することで構成されている(凹凸は逆でも良い)。
【0028】
このような凹凸係合部12,32によれば、カバー部材30をシート本体1Aに対して、軸方向及び回転方向に移動不能に嵌合固定することができ、この状態で、グリップ50をカバー部材30に接着することで、組付け作業を容易に行なうことが可能となる。
【0029】
また、上記した凹凸係合部は、軸方向に沿うように形成しておくことが好ましい。
両部材の凹凸係合部が軸方向に延出することで、カバー部材30を、シート本体1Aに対して、露出突出部1B´の外周面に嵌合するように軸方向に挿入し、そのまま両部材を一体化することが可能となり、一体化された状態では、カバー部材30は回転方向に移動しない状態で固定できるので、両部材を安定して固定することが可能となる。この場合、凹凸係合部は、軸方向に組付ける際に相対移動し易く、かつ、軸方向に抜け難くするような傾斜面や規制面を形成しておくことが好ましい。このようにすることで、組付け易く、かつ、組付けた後は、周方向及び軸方向に移動しないようにすることができる。
【0030】
次に、前記遊動フード60とナット部材70の嵌合構造、及び、前記クリック機構80の構成について、図3から図6を参照して説明する。
【0031】
前記遊動フード60とナット部材70の嵌合は、遊動フード60の前端部及びナット部材70の後端部でなされ、ナット部材70が遊動フード60の径方向外側に外嵌されるようになっている。ナット部材70の後端部は、図3(a)に示すように、径方向に膨出しており、その内面側に、図4に示す遊動フード60の前端部が嵌合される。
【0032】
前記ナット部材70の内周面には、雌螺子部71が形成されており、前記筒状部1Bの前方の端部に形成された雄螺子部7と螺合されるようになっている。このため、ナット部材70を回転操作すると、ナット部材70は軸方向に移動する。また、遊動フード60とナット部材70の嵌合領域には、ナット部材70の軸方向移動と一体的に遊動フード60を移動させる係合構造が設けられている。この係合構造は、ナット部材70の後端縁に、径方向内側に向けて突出するフランジ72と、遊動フード60の先端の円筒突部63の後側に形成された円周溝62との係合関係によって構成される。
【0033】
すなわち、ナット部材70のフランジ72が、遊動フード60の円周溝62に嵌まり込むことで、ナット部材70を回転操作してナット部材70が軸方向(前後方向)に進退した際、遊動フード60は、ナット部材と共に一体的に軸方向に移動される。この場合、ナット部材70を回転操作しても、遊動フード60が連れ回りしないように回り止め構造によって回り止めされた状態となっている。この回り止め構造は、例えば、遊動フード60の内周面に軸方向に延出するように突起65を形成すると共に、シート本体1A側に、この突起65が入り込む軸方向に延出する長溝1Eを形成することで構成することができる。このような構成によれば、遊動フード60がナット部材70と共に回転しようとしても、突起65と長溝1Eの係合関係によって、遊動フード60の回転が規制されると共に、遊動フード60の軸方向の移動が可能となる。
なお、このような突起と長溝による回り止め構造は、複数個所形成されていても良いし(本実施形態では、180°間隔で2箇所)、突起をシート本体1A側、長溝を遊動フード60側に形成したものであっても良い。
【0034】
前記クリック機構80は、遊動フード60とナット部材70の嵌合領域に設けられており、本実施形態では、ナット部材70の軸方向移動と一体的に遊動フード60を移動させる係合構造(フランジ72)の前側で、前記遊動フード60の先端の円筒突部63の部分の嵌合領域に設けられている。具体的に、クリック機構80は、前記ナット部材70の内周面に、周方向に亘って形成され、クリック音を発生させるように、凹部82bと凸部82aが隣接形成して構成された凹凸82と、前記凹凸82と係合する頂部90aを備えた板バネ90と、遊動フード60の外周面に形成され、前記板バネ90を設置する円弧状の凹所84とを備えている。
【0035】
前記凹所84は、円筒突部63の表面に円弧状に形成されたものであり、図4(a)(b)に示すように、前記遊動フード60のフード部61に、軸方向に隣接して配設されて、フード部61の近傍で発音するように構成されている。
【0036】
前記凹所84には、前記板バネ90が配設(載置)されるようになっている。
板バネ90は、図5に示すように、円弧状の凹所84に配設できるように、薄板状の本体90Aを凹所84の表面形状に沿うように湾曲して形成されている。その中間部分には、上方に向けて突出する頂部90aが形成されると共に、両端には、それぞれ頂部とは反対方向に略直角に折り曲げられた屈曲係止部90bが形成されている。本体90Aは、全体として山形状に形成されており、好ましくは、左右方向に対称となるように形成されて、前記凹所84内にそのまま設置(載置)できるように構成されている。このため、板バネ90は、前記円筒突部63に対して巻回されるのではなく、凹所内で位置決めされて載置されるようになっている。
【0037】
前記凹所84の形成範囲(軸方向から見た円周方向における形成範囲の角度θ;図4(c)参照)については、軸心Xを中心にして180°未満に形成されていれば良い。実際には、板バネの弾発によって、効果的にクリック音が生じる大きさであれば良く、構造の簡略化、軽量化、組み込み作業性等を考慮すれば、50°~120°の範囲であれば良く、更には、60°~90°の範囲であれば良い。また、板バネ90の材料につては、アルミやSUS等の金属材料や樹脂材料で形成しても良く、その形状については、適宜、変形することが可能である。
【0038】
また、凹所84の深さDについては、クリック機構が配設されていない従来のリールシートにおける遊動フードの円筒突部63の肉厚と略同等にすることを考慮して、強度低下を来さない程度に形成しておくことが好ましい。また、凹所84の深さDについては、板バネ90の頂部がナット部材70の凹凸82によって弾発する際、頂部領域の裏側と接触させないようにすることで、クリック音を大きくすることができる。具体的には、0.5mm~1.5mmに形成することで、強度低下を来たすことなく、クリック音を大きくすることが可能である。さらに、そのような深さDの凹所84に設置される板バネ90の厚さTについては、凹所84の深さD及び弾発性を考慮して0.15mm~0.5mmに形成しておくことが好ましい。
【0039】
上記したように、板バネ90の両端には、屈曲係止部90bが形成されている。前記板バネが設置される凹所84には、両端の屈曲係止部90bがそれぞれ係止されるように、突起84aが形成されている。各突起84aは、周方向外方に隙間Sが存在するように形成されており、この隙間Sは、凹所84を規定する周方向両サイドの内壁84bによって形成される。隙間Sは、屈曲係止部90bの周方向の肉厚よりも広く形成されており、屈曲係止部90bは遊度をもって隙間S内に配設される。
【0040】
次に、図6から図8を参照して、前記クリック機構80よるクリック音の報音態様について説明する。
上記したように、クリック音は、ナット部材70を回転操作した際、回転する凹凸82と板バネ90の頂部90aとの弾発係合によって生じる。凹凸82の形成個数(一組となった凸部82aと凹部82bの周方向の形成個数)については限定されることはないが、ナット部材70を回転操作した際の回し易さ、及び、クリック音の発音状態等を考慮して、30個以上形成することが好ましい。
【0041】
前記板バネ90は、その屈曲係止部90bが、図6(a)及び図7(a)に示すように、遊度をもって隙間S内に配設されている。この状態で、ナット部材70を反時計回り方向(R方向)に回転操作すると、図7(a)(b)に示すように、図面右側の屈曲係止部90bが図面右側の突起84aに当て付いて、板バネ90は反時計回り方向の回転に規制を受ける。このとき、右側の突起84aの縁部(頂部90側の縁部)Pが支点位置となり、凹部82b内において板バネ90の部90aに当て付いている位置P1では、P点とP1点を結ぶ作用線Lに対して直交する方向に力Fが作用する(図8参照)。
【0042】
板バネ90の頂部90aに作用する力Fによって、板バネ90の頂部領域は凹所84内に押し下げられ、板バネ90の頂部領域が、回転する部82aを超えたときに弾発して、頂部90aは隣の凹部82bに入り込む。このときの弾発する音が連続することでクリック音が発生する。
【0043】
上記した構成では、板バネ90は、一端側が突起84aの縁部(支点)Pに支持されて他端が自由に動くことが可能であるため、ナット部材70を回転操作した際、凹凸82によって弾発しやすくなり、クリック音が大きくなる。このため、上記した凹所の隙間Sは、ナット部材70を回転操作した際、板バネ90の屈曲係止部90bが、凹所を規定する内壁84bに当接しない大きさに形成しておくことが好ましい。すなわち、図7(b)に示すように、屈曲係止部90bが内壁84bに当接しない程度に隙間Sを形成しておくことで、板バネ90は、支点Pで支持された片持ち状になって弾発し易くなり、大きなクリック音を発生することが可能となる。また、隙間Sを、このような大きさに形成することで、板バネ90の設置が容易に行えるようになる。
【0044】
上記したクリック機構では、板バネ90は、その頂部90aがナット部材の凹凸82の凹部82bに係合している状態で、凹凸の凸部82aの最内径位置P3と、頂部90aの最外径位置P4との間の径方向距離D1(図8参照)が、0.1~0.35mmの範囲に形成されることが好ましい。
【0045】
これは、D1が0.1mmよりも小さくなると、ナット部材70は回転操作し易くなるものの、クリック音が小さくなる傾向が高くなり、逆に、D1が0.35mmよりも大きくなると、クリック音は大きくなるものの、ナット部材70の回転操作がスムーズに行えなくなるからである。実際には、前記径方向距離D1は、0.15~0.2mmの範囲に形成されることが好ましい。
【0046】
また、板バネ90の頂部90aと凹凸82の関係については、頂部90aが凹凸82の凹部82bに係合している状態で、図8に示すように、凹部82bの底面との間に隙間S1が形成される程度となるように頂部90aの曲率を形成することが好ましい。
このような構成によれば、板バネ90がナット部材70の回転によってF方向の力を受けた際、頂部領域が凹所84内に入り込み易くなるとともに、弾発して復帰した際、凹部の底面に当て付かいないことから、クリック音が響きやすく、音を大きくすることが可能となる。
【0047】
また、前記凹凸82と板バネ90の係合関係において、その凹部82bの各内面による開口角度α(図3(b)参照)と、そこに配設される板バネ90の部90aの裏面の各内面による開口角度β(図6(b)参照)との大小関係については特に限定されることはないが、α≦βにすることが好ましい。特に、図9に示す変形例のように、板バネ90の部90aの曲率を小さく(曲率半径が大きい)して、高さが低い湾曲形状にすることで、頂部90aが弾性変形し易いとともに、頂部90aと凹部82bとの間の隙間S1が確保し易くなるため、ナット部材70を回転操作し易く、クリック音を大きくすることが可能となる。
【0048】
このように、板バネ90の頂部90aと凹凸82(凸部82a、凹部82b)については、ナット部材70の回転操作時にクリック音が生じるものであれば、その係合関係については適宜変形することが可能である。板バネ90の頂部90aは、上記したように、凹凸面に対して曲率半径を大きくすることで、凹部82b内に頂部90aが全て入り込まないようにすることができ、隣接する凸部82aの側面が頂部90aを押さえ付けることで、ナット部材70を回転操作する際の抵抗が軽減され、回転操作性の向上が図れるようになる。
【0049】
以上のようなリールシートのクリック機構80によれば、遊動フード60の外周面(先端の円筒突部63)に円弧状の凹所84を形成し、その部分に板バネ90を設置するだけの簡単な構造であるため、従来のように、別途、バネ部材用の支持部材を設ける必要はない。また、そのような凹所84に設置した板バネ90の弾性(上下方向の弾発)によってクリック音を生じさせる構成であるため、構造が簡単となり、遊動フード及びナット部材の外径を大きくすることもない。さらに、板バネ90に屈曲係止部90bを形成し、片持ち状態で弾発させることから、クリック音を大きくすることが可能となる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることは無く種々変形することが可能である。
【0051】
上記したクリック機構80は、遊動フード60のフード部61に対して軸方向に隣接して形成したが、その形成する位置については限定されることはない。また、クリック機構80は、単に遊動フード60の嵌合領域に凹所84を形成するだけの簡単な構造であるため、周方向に沿って複数個所に形成しても、遊動フード及びナット部材の外径を大きくすることもない。また、板バネ90の形状については、特に限定されることはなく、頂部が複数、形成されていても良い。
【0052】
さらに、シート本体1Aの形成材料については限定されることはなく、その表面形状については、凹凸、肉抜き部、開口を形成する等、種々変形することが可能である。また、上記したナット部材70については、その表面にグリップ等を取着しても良い。また、遊動フード60は、シート本体1Aの後方に配設されていても良く、両側が遊動フードであっても良い。さらに、本実施形態のリールシートは、スピニングリールを装着する構造となっていたが、両軸受けリールを装着するタイプであっても良く、このようなシート本体では、リール脚載置部と反対側にトリガーを形成しても良い。
【符号の説明】
【0053】
1 リールシート
1A シート本体
1B 筒状部
1C 開口孔
3 リール脚載置部
5 固定フード
60 遊動フード
70 ナット部材
80 クリック機構
82 凹凸
84 凹所
84a 突起
90 板バネ
90a 頂部
90b 屈曲係止部
S 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9