(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】免疫原性アルギナーゼ2ポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 7/08 20060101AFI20241226BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20241226BHJP
C07K 14/47 20060101ALI20241226BHJP
C12N 9/14 20060101ALI20241226BHJP
A61K 39/00 20060101ALI20241226BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20241226BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20241226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241226BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241226BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20241226BHJP
C12N 15/55 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C07K7/08 ZNA
C07K7/06
C07K14/47
C12N9/14
A61K39/00 H
A61K38/10
A61K39/39
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/04
A61K39/395 N
A61P35/02
C12N15/55
(21)【出願番号】P 2021526247
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 EP2019081369
(87)【国際公開番号】W WO2020099582
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-08-22
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518289427
【氏名又は名称】アイオー バイオテック エーピーエス
【氏名又は名称原語表記】IO Biotech ApS
【住所又は居所原語表記】Ole Maaloes Vej 3, 2200 Copenhagen N, Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,マッズ ハルド
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/065563(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01033401(EP,A2)
【文献】国際公開第2018/032020(WO,A1)
【文献】特表2012-507301(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149150(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号51の少なくとも21、22および23位のアミノ酸を含み、配列番号51の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなり、最大で50アミノ酸の長さを有する、ヒトアルギナーゼ2(配列番号51)の免疫原性断片である、ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号51の最大15、20、25、30、35、40、45または50個の連続したアミノ酸を含むまたはそれらからなる、請求項1に記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号59、58、57、54、55、56、2または3のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、請求項1または2に記載のポリペプチド。
【請求項4】
9、10、15、20、25、30、35、40もしくは45アミノ酸の最大長を有する、および/またはC末端アミノ酸が対応するアミドに置き換えられている、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドおよびアジュバントを含む、組成物。
【請求項6】
少なくとも1つの薬学上許容可能な希釈剤、担体または保存剤をさらに含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記アジュバントが、細菌DNAベースのアジュバント、油/界面活性剤ベースのアジュバント、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、イミダゾキノリン、およびモンタニドISAアジュバントからなる群から選択される、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
対象における
癌を治療または予防する方法であって、ポリペプチドまたは組成物を対象に投与することを含む方法に使用するための、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項5~7のいずれか一項に記載の組成物
。
【請求項9】
前記方法が、さらなる癌療法の同時投与または逐次投与をさらに含む、請求項
8に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項10】
前記さらなる癌療法が、免疫系チェックポイント阻害剤である、請求項
9に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項11】
前記免疫系チェックポイント阻害剤が抗体である、請求項
10に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項12】
前記抗体が抗PD1抗体である、請求項
11に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項13】
前記癌が、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、脳癌、頭頸部癌、もしくは小腸癌であるか、または結腸直腸癌もしくは胃癌であるか、または黒色腫であるか、または白血病である、請求項
8~
12のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項14】
前記
白血病が、急性骨髄性白血病(AML)である、請求項
13の記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項15】
前記癌が、免疫系チェックポイント阻害剤を用いた治療に抵抗性である、請求項8~
14のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは組成物。
【請求項16】
アルギナーゼ2特異的T細胞をin vitroで刺激する方法であって、前記方法が、細胞を請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドまたは請求項5~7のいずれか1項に記載の組成物と接触させることを含む、方法。
【請求項17】
前記細胞が、健常対象または癌患者から採取されたサンプル中に存在する、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記サンプルが腫瘍サンプルである、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
請求項1~4のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、アルギナーゼ2に由来する新規なポリペプチドに関する。本発明はまた、ポリペプチドの使用と、ポリペプチド含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
アルギナーゼは、アミノ酸L-アルギニンをL-オルニチンおよび尿素に変換する反応を触媒する酵素である。これは、アルギニンの微小環境を枯渇させ、腫瘍特異的細胞傷害性T細胞応答の抑制をもたらす。アルギナーゼ活性の増大が、例えば、乳癌、肺癌、結腸癌または前立腺癌を有する患者の癌細胞において検出されている。ラットアルギナーゼ遺伝子をトランスフェクトしたマウスマクロファージは、共培養された腫瘍細胞の増殖を促進することが、in vitroおよびin vivoの両方で示されている。さらに、マクロファージによるアルギナーゼ発現の誘導は、ポリアミン合成を介した腫瘍血管新生を増大させることが示されている。マウス肺癌モデルの結果から、高レベルのアルギナーゼを発現する成熟腫瘍関連骨髄性細胞の亜集団が存在したことが示された。これらの腫瘍関連骨髄性細胞は、細胞外L-アルギニンを枯渇させ、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の抗原特異的増殖を阻害した。アルギナーゼ阻害剤の注入により、マウスにおける肺癌の成長が遮断された。これは、腫瘍細胞および腫瘍関連骨髄性細胞におけるアルギナーゼ発現の誘導が、TILに対する負の効果を介した抗腫瘍免疫応答の抑制によって、どのように腫瘍成長を促進し得るかを示すものである。
【0003】
MDSC(骨髄由来免疫抑制細胞)は、エフェクターT細胞およびナチュラルキラー細胞の活性化、増殖、および細胞傷害性を阻害するとともに、Tregの分化および増殖を誘導する。癌細胞およびMDSCの両方とも、酵素の一酸化窒素合成酵素(NOS)およびアルギナーゼを介したL-アルギニン代謝を操作することによって、T細胞を抑制し得る。多くの腫瘍は、アルギナーゼおよび誘導性NOS(iNOS)の発現の亢進を示し、腫瘍微小環境からのアルギニン枯渇をもたらす。いくつかの研究が、腫瘍特異的T細胞応答の抑制におけるこの変化した腫瘍アルギニン代謝の重要性を強調しており、急性骨髄性白血病(AML)芽球がT細胞増殖および造血幹細胞を阻害するアルギナーゼ依存的能力を示すことが、最近実証された。さらに、アルギナーゼおよびiNOS阻害剤は、AMLの抑制活性を低減させる。
【0004】
哺乳動物において、2つのアルギナーゼアイソエンザイム:アルギナーゼ1およびアルギナーゼ2が存在する。この2つのアイソエンザイムは、同じ生化学的反応を触媒するが(よって、酵素アッセイにより区別することができない)、細胞発現、調節および細胞内局在において異なっている。
【発明の概要】
【0005】
本発明者らは、免疫原性に関する「ホットスポット」であるアルギナーゼ1およびアルギナーゼ2の50アミノ酸領域を以前に同定した。この領域は、全長ヒトアルギナーゼ1(配列番号53)の161~210位もしくは全長ヒトアルギナーゼ2(配列番号51)の180~229位、またはマウスアルギナーゼの対応する位置に相当する。この領域およびそれに由来するペプチドは、WO2018065563に記載されている。本発明者らはまた、アルギナーゼ1の「ホットスポット」領域に由来するポリペプチドの特異的なサブセットが、免疫応答を刺激するのに特に有効であることを同定した。これらのペプチドは、全長ヒトアルギナーゼ1の169~206位、全長ヒトアルギナーゼ1の169~200位または全長ヒトアルギナーゼ1の169~210位(またはヒトアルギナーゼ2もしくはマウスアルギナーゼ1の対応する位置)に相当する。このポリペプチドのこのサブセットは、PCT/EP2019/075731およびその優先権出願GB1815549.9において記載されている。
【0006】
本発明者らは今回、ヒトアルギナーゼ2の全体的に異なる領域に由来するポリペプチドが、免疫応答を刺激するのに特に有効であることを同定した。意外にも、この領域は、ヒトアルギナーゼ2の輸送ペプチドのC末端(配列番号51の22位 -
図7における概略図を参照)に及ぶ。ヒトアルギナーゼ1に対する配列同一性は、この領域において比較的低い。
【0007】
本発明のポリペプチドは、アルギナーゼ2およびアルギナーゼ2発現細胞に対する有益な免疫応答を刺激するのに特に有効であることが期待される。癌に対する新規な免疫療法の開発には、病因に関与する分子および免疫系によって認識される特異タンパク質の完全な理解が必要である。臨床現場において、アルギナーゼ特異的免疫応答の誘導は、癌細胞の死滅に加えて、一般に、アルギナーゼ発現細胞、特にMDSCおよび腫瘍関連マクロファージ(TAM)の免疫抑制機能を抑制することによって、抗癌免疫応答を支持し得る。したがって、アルギナーゼ発現細胞は、例えば、本発明のポリペプチドのワクチン接種により、骨髄性樹状細胞を標的とする他の免疫療法アプローチの所望の効果と拮抗するため、結果として、さらなる抗癌免疫療法と高度に相乗的となるであろう。
【0008】
本発明は、(i)配列番号51の少なくとも21、22および23位のアミノ酸を含む、または(ii)配列番号51の180~229位から選択される、配列番号51の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなる、ヒトアルギナーゼ2(配列番号51)の免疫原性断片であるポリペプチドを提供する。前記ポリペプチドは、(i)または(ii)に定義される配列番号51の最大15、20、25、30、35、40、45または50個の連続したアミノ酸を含み得るまたはそれらからなり得る。前記ポリペプチドは、配列番号59、58、57、54、55、56、2、3、19、20、21、60または61のいずれか1つのアミノ酸配列を含み得るまたはそれからなり得る。前記ポリペプチドは、9、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50アミノ酸の最大長を有し得る、および/またはC末端アミノ酸が対応するアミドに置き換えられている。前記ポリペプチドは、単離され得る。
【0009】
本発明はまた、(i)配列番号52の少なくとも21、22および23位のアミノ酸を含む、または(ii)配列番号52の180~229位から選択される、配列番号52の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなる、マウスアルギナーゼ2(配列番号52)の免疫原性断片であるポリペプチドを提供する。前記ポリペプチドは、(i)または(ii)に定義される配列番号52の最大15、20、25、30、35、40、45または50個の連続したアミノ酸を含み得るまたはそれらからなり得る。前記ポリペプチドは、9、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50アミノ酸の最大長を有し得る、および/またはC末端アミノ酸が対応するアミドに置き換えられている。前記ポリペプチドは、単離され得る。
【0010】
本発明はまた、本発明のポリペプチド、少なくとも1つの薬学上許容可能な希釈剤、担体または保存剤、および場合によりアジュバントを含む組成物を提供する。
【0011】
本発明はまた、対象における疾患または病態を治療または予防する方法であって、本発明のポリペプチドまたは組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、ヒトアルギナーゼ1およびヒトアルギナーゼ2の両方の「ホットスポット」領域に及ぶ特定のポリペプチドの設計を示す。配列識別番号を、本明細書の表Xに示す。
【
図2】
図2は、ホットスポット領域に相当するARG2ペプチドが、健常ドナーおよび黒色腫患者(AA914.30)由来のPBMCにより認識されることを示す。スポット数は、ペプチドで刺激したウェルおよびペプチドなしの対照ウェルの平均の差として示す。ウェルあたり5×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。応答は、分布によらないリサンプリング(distribution free resampling:DFR)法を用いて分析した。
【
図3】
図3は、複数のARG2ライブラリーペプチドが、健常ドナー由来のPBMCにより認識されることを示す。スポット数は、ペプチドで刺激したウェルおよびペプチドなしの対照ウェルの平均の差として示す。ウェルあたり4~4.5×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。ボックスは、6例の健常ドナーのスクリーニング後に最も高く、かつ最も多くの応答を示すペプチドを表す。
【
図4】
図4は、ホットスポット領域のペプチドに対する応答を検証するものである。スポット数は、ペプチドで刺激したウェルおよびペプチドなしの対照ウェルの平均の差として示す。ウェルあたり5×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。ボックスは、得られた応答のより容易な比較のために、ほぼ同一の配列を有するペプチドを表す。
【
図5】
図5は、ARG2_1、ARG2_5、ARG2_8、ARG2_13およびARG2_22に対する応答の検証を示す。スポット数は、ペプチドで刺激したウェルおよびペプチドなしの対照ウェルの平均の差として示す。ペプチド刺激ありまたはなしのウェルあたり3×10
5個の細胞を播種し、三重反復で行った。強い顕著な応答が、ARG2_1に対して認められた。
【
図6A】
図6Aおよび6Bは、ARG2_1またはペプチドなしに対する2例の健常ドナーのCD4+T細胞の応答を示す。PBMC細胞をCD4抗体で染色し、ARG2_1刺激ありまたはなしでのフローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン放出アッセイにおいて分析した。CD4細胞は、ARG2由来ペプチドで刺激された場合、IFN-ガンマ(y軸)またはTNF-アルファ(x軸)の両方を放出することが、図から確認できる。
【
図6B】
図6Aおよび6Bは、ARG2_1またはペプチドなしに対する2例の健常ドナーのCD4+T細胞の応答を示す。PBMC細胞をCD4抗体で染色し、ARG2_1刺激ありまたはなしでのフローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン放出アッセイにおいて分析した。CD4細胞は、ARG2由来ペプチドで刺激された場合、IFN-ガンマ(y軸)またはTNF-アルファ(x軸)の両方を放出することが、図から確認できる。
【
図7】
図7は、ARG2_1断片の位置を示すアルギナーゼ2の模式図を示す。
【
図8】
図8は、ホットスポット領域に相当するARG2ペプチドが、健常ドナー(BCまたはBuf-M)および癌患者(AA、黒色腫;UR、腎細胞癌)由来のPBMCにより認識されることを示す。スポット数は、ペプチドで刺激したウェルおよびペプチドなしの対照ウェルの平均の差として示す。ウェルあたり4×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。応答は、分布によらないリサンプリング(DFR)法を用いて分析した。*-p≦0.05、**-p≦0.01。
【
図9】
図9は、ARG2_1またはペプチドなしに対する1例の癌患者のCD8+ T細胞の応答を示す。PBMC細胞をCD8抗体で染色し、ARG2_1刺激ありまたはなしでのフローサイトメトリーによる細胞内サイトカイン放出アッセイにおいて分析した。TNF-アルファの多少のバックグラウンド放出が認められたが、CD8+T細胞は、ARG2由来ペプチドで刺激された場合、より多くのIFN-ガンマ(y軸)およびTNF-アルファ(x軸)を放出することが、図から確認できる。
【
図10】
図10は、前刺激なしで、ELISPOTプレート中で+/-ペプチドによる72時間インキュベーションを行った後の、ARG2_1に対するex vivo ELISPOT応答を示す。ペプチドARG2_1ありまたはなし(対照)のウェルに、ウェルあたり9×10
5個の細胞を播種し、三重反復で行った。スポット数は、ペプチドで刺激したウェルおよびペプチドなしの対照ウェルの平均として示す。
【
図11】
図11は、in vivoマウスArg2試験に関する実験スキームを示す。各群3匹のマウスに対し、6つのペプチドのうち1つを皮下ワクチン接種する。7日後、マウスを屠殺し、脾臓をホモジナイズし、PBMCをmIFNγ ELISPOTに使用する。
【
図12】
図12は、
図11の実験後に行ったmIFNγ ELISPOTの結果を示す。スポット数は、ペプチドで刺激したウェルおよびペプチドなしの対照の平均の差として示す。ペプチドありまたはなしのウェルに、ウェルあたり8×10
5個の細胞を播種し、三重反復で計数した。角括弧は、同じペプチドをワクチン接種されたマウスを表し、ボックスは、最も強くかつ最も顕著な応答を示すマウスを強調するものである。
【
図13】
図13は、mARG2_188-196のワクチン接種は、mArg2_188-196およびmArg2_182-197の両方に対して強いmIFNγ応答を与えることを示す。ウェルあたり8×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。
【
図14】
図14は、ARG2-1は、健常ドナーおよび固形腫瘍またはAMLを有する癌患者の両方に由来する両PMBCにより広く認識されることを示す。(A)健常ドナー(n=33)、固形腫瘍を有する癌患者(n=19)またはAMLを有する癌患者(n=19)由来のPMBCにおけるARG2-1ペプチドに対するIFNγ ELISPOT応答。ウェルあたり3~4×10
5個の細胞を播種した。ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。各スポットは、1例のドナーを表し、ペプチド特異的IFNγ分泌細胞の数(ペプチドで刺激したウェルおよび対照ウェルの平均の差)を示す。(B)ARG2-1による刺激ありまたは非刺激対照に関する、健常ドナー(HD49およびHD50)および固形腫瘍を有する癌患者(AA27)におけるIFNγおよびTNFαの産生に対する代表的な細胞内サイトカイン染色。
【
図15A】
図15は、長鎖ARG2ペプチドA2L2は、健常ドナーおよび癌患者において強く頻繁なCD4+T細胞応答を誘発することを示す。(A)6例の健常ドナー由来のPBMCにおける長鎖ペプチドA2L1、A2L2およびA2L3に対するIFNγ ELISPOT応答。ウェルあたり4×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。特異的スポット数(ペプチド特異的IFNγ分泌細胞)は、ペプチドで刺激したウェルおよび対照ウェルの平均のIFNγスポットの数の差として示す。ペプチドに対する応答は、3つの設定において測定不能多数(TNTC)であり、750超のスポットとした。
【
図15B】
図15は、長鎖ARG2ペプチドA2L2は、健常ドナーおよび癌患者において強く頻繁なCD4+T細胞応答を誘発することを示す。(B)6例の健常ドナー由来のPBMCにおけるA2L2およびARG2-1に対するIFNγ ELISPOT応答。ウェルあたり4×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。特異的スポット数(ペプチド特異的IFNγ分泌細胞)は、ペプチドで刺激したウェルおよび対照ウェルのIFNγスポットの平均数の差として示す。分布によらないリサンプリング法に従って、* p≦0.05または** p≦0.01。
【
図15C】
図15は、長鎖ARG2ペプチドA2L2は、健常ドナーおよび癌患者において強く頻繁なCD4+T細胞応答を誘発することを示す。(C)健常ドナー(n=30)および固形腫瘍を有する癌患者(n=18)由来のPBMCにおけるA2L2ペプチドに対するIFNγ ELISPOT応答。ウェルあたり3~4×10
5個の細胞を播種した。ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。各スポットは、1例のドナーを表し、ペプチド特異的IFNγ分泌細胞の数(ペプチドで刺激したウェルおよび対照ウェルの平均の差)を示す。
【
図15D】
図15は、長鎖ARG2ペプチドA2L2は、健常ドナーおよび癌患者において強く頻繁なCD4+T細胞応答を誘発することを示す。(D)A2L2による刺激ありまたは刺激なしの対照について、健常ドナー(HD48およびHD53)および固形腫瘍を有する癌患者(AA27)におけるIFNγおよびTFNaの産生に対する代表的な細胞内サイトカイン染色。
【
図15E】
図15は、長鎖ARG2ペプチドA2L2は、健常ドナーおよび癌患者において強く頻繁なCD4+T細胞応答を誘発することを示す。(E)2つのペプチドに対する応答の大きさの比較のための、健常ドナー(n=26)および固形腫瘍を有する癌患者(n=11)由来のPBMCにおけるARG2-1およびA2L2に対するIFNγ ELISPOT応答。ウェルあたり4×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。特異的スポット数(ペプチド特異的IFNγ分泌細胞)は、ペプチドで刺激したウェルおよび対照ウェルのIFNγスポットの平均数の差として示す。ns:p=0.7038。
【
図16A】
図16は、ARG2特異的T細胞は、ARG2発現樹状細胞を認識することを示す。(A)ARG2特異的T細胞を、前立腺癌を有する患者から増殖させた。T細胞培養物の特異性を、ペプチドで刺激した細胞および刺激なしの対照におけるTNFαおよびIFNγの産生に対する細胞内サイトカイン染色により評価した。左:ARG2-1ペプチド刺激細胞および刺激なしの(対照)細胞に対するドットプロット。右:対照の刺激(ペプチドなし)、ARG2-1ペプチド刺激またはA2L2ペプチド刺激に応答したIFNγ、TNFαまたは両方を産生するCD4+T細胞の割合(%)。
【
図16B】
図16は、ARG2特異的T細胞は、ARG2発現樹状細胞を認識することを示す。(B)対照の刺激(ペプチドなし)、ARG2-1ペプチドまたはA2L2ペプチドに対するELISPOT応答により評価したARG2特異的T細胞の特異性。ウェルあたり4×10
4個の細胞を播種した。TNTC=測定不能多数(500スポット超)。
【
図16C】
図16は、ARG2特異的T細胞は、ARG2発現樹状細胞を認識することを示す。(C)ARG2特異的T細胞のHLA拘束性を調べた。異なるクラスII遮断剤の存在下におけるARG2-1ペプチドに対するARG2特異的T細胞のIFNγ ELISPOT応答。
【
図16D】
図16は、ARG2特異的T細胞は、ARG2発現樹状細胞を認識することを示す。(D)関連のない対照mRNA(疑似mRNA)またはARG2 mRNAでトランスフェクトした自家樹状細胞に対するARG2特異的T細胞によるIFNγ ELISPOT応答。エフェクター:標的比5:1で、ウェルあたり5×10
4個のエフェクター細胞を播種した。分布によらないリサンプリング法に従って、* p≦0.05または** p≦0.01。
【
図17A】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(A)HLAマッチ悪性細胞を同定するために、ARG2-1ペプチドで予めパルスした異なる関連癌細胞株に対するIFNγ ELISPOT応答において、ARG2特異的T細胞を調べた。ペプチド刺激なしの同じ癌細胞株を、対照として調べた。エフェクター:標的比1:1で、ウェルあたり1×10
4個のエフェクター細胞を播種した。分布によらないリサンプリング法に従って、* p≦0.05または** p≦0.01。TNTC=測定不能多数(>500)。
【
図17B】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(B)ARG2-1ペプチドおよびクラスII遮断剤でパルスしたTHP-1細胞に対するARG2特異的T細胞のIFNγ ELISPOT応答。
【
図17C】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(C)異なるサイトカインとともにTHP-1細胞を48時間インキュベーションした後のRT-qPCRにより評価したTHP-1におけるARG2発現量。データは、非刺激THP-1細胞に対する倍数変化、平均+SD、n=4として表す。
【
図17D】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(D)サイトカインカクテルで刺激したTHP-1細胞に対するARG2特異的T細胞のIFNγ ELISPOT応答。エフェクター:標的比5:1で、ウェルあたり1.5×10
5個のエフェクター細胞を播種した。分布によらないリサンプリング法に従って、** p≦0.01およびns=有意ではない。
【
図17E】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(E)刺激なしのTHP-1細胞またはサイトカインカクテルで前刺激したTHP-1細胞とともに48時間インキュベートした場合の、ARG2特異的T細胞培養物におけるCD4+T細胞からのTNFαおよびIFNγの産生の細胞内染色。エフェクター:標的比2:1で、条件あたり500,000個のエフェクター細胞を使用した。
【
図17F】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(F)サイトカインカクテルとともに48時間インキュベーションした後のRT-qPCRにより評価したTHP-1細胞におけるARG1およびARG2の発現量。刺激なしのTHP-1細胞は、対照としての役割を果たした。データは、ハウスキーピング遺伝子ACTBに対する相対発現量、平均+SD、n=4として表す。
【
図17G】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(G)サイトカインカクテル(THP-1+サイトカイン)およびクラスII遮断剤、aHLA-DRで刺激したTHP-1細胞に対するARG2特異的T細胞のIFNγ ELISPOT応答。エフェクター:標的比5:1で、ウェルあたり1.5×10
5個のエフェクター細胞を播種した。分布によらないリサンプリング法に従って、** p≦0.01およびns=有意ではない。
【
図17H】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(H)サイトカインカクテルまたはIFNγによる48時間の刺激後のRT-qPCRにより評価したTHP-1細胞におけるARG2発現量。刺激なしのTHP-1細胞は、対照として使用する。データは、ハウスキーピング遺伝子RPLPOに対する相対発現量、平均+SD、n=4として表す。
【
図17I】
図17は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(I)サイトカインカクテル(THP-1+サイトカイン)またはIFNγ(THP-1+IFNγ)で前刺激したTHP-1細胞に対するARG2特異的T細胞のIFNγ ELISPOT応答。エフェクター:標的比2.5:1で、ウェルあたり5×10
4個のエフェクター細胞を播種した。分布によらないリサンプリング法に従って、** p≦0.01およびns=有意ではない。
【
図18A】
図18は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(A)サイトカインカクテルとともに48時間インキュベーションした後のRT-qPCRにより評価したMONO-MAC-1(MM1)細胞におけるARG2発現量。データは、刺激なしのMM1細胞に対する倍数変化、平均+SD、n=4として表す。
【
図18B】
図18は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(B)サイトカインカクテルまたはIFNγとともに48時間インキュベーションした後のRT-qPCRにより評価したMM1細胞におけるARG2発現量。データは、刺激なしのMM1細胞に対する倍数変化、平均+SD、n=4として表す。
【
図18C】
図18は、ARG2特異的T細胞は、ARG2を発現する悪性骨髄性細胞を認識することを示す。(C)サイトカインカクテル(MM1+サイトカインカクテル)またはIFNγ(MM1+IFNγ)で前刺激したMM1細胞に対するARG2特異的T細胞のIFNγ ELISPOT応答。エフェクター:標的比2.5:1で、ウェルあたり5×10
4個のエフェクター細胞を播種した。分布によらないリサンプリング法に従って、** p≦0.01およびns=有意ではない。
【
図19A】
図19は、ARG2特異的T細胞によるARG2発現細胞の認識は、標的細胞の抗原プロセシング機構に加えて、ARG2発現のレベルに依存することを示す。(A)刺激なしの、またはサイトカインカクテルで前刺激した、およびARG1またはARG2 mRNAで疑似トランスフェクトしたまたはトランスフェクトしたTHP-1細胞に対するARG2特異的T細胞のIFNγ ELISPOT応答。エフェクター:標的比2.5:1で、ウェルあたり5×10
4個のエフェクター細胞を播種した。分布によらないリサンプリング法に従って、** p≦0.01およびns=有意ではない。
【
図19B】
図19は、ARG2特異的T細胞によるARG2発現細胞の認識は、標的細胞の抗原プロセシング機構に加えて、ARG2発現のレベルに依存することを示す。(B)刺激なしのTHP-1細胞またはサイトカインカクテルで前刺激し、次いで、疑似(疑似)トランスフェクションまたはARG2 mRNA(mRNA)トランスフェクションのいずれかを行ったTHP-1細胞とともにインキュベートした場合の、ARG2特異的T細胞培養物におけるCD4+ T細胞からのTNFαおよびIFNγの産生の細胞内染色。エフェクター:標的比2:1で、条件あたり500,000個のエフェクター細胞を使用した。
【
図19C】
図19は、ARG2特異的T細胞によるARG2発現細胞の認識は、標的細胞の抗原プロセシング機構に加えて、ARG2発現のレベルに依存することを示す。(C)ARG2特異的siRNAでのトランスフェクションの48時間後のRT-qPCRにより評価したTHP-1細胞におけるARG2発現量。データは、疑似トランスフェクトTHP-1細胞に対する倍数変化、平均+SD、n=4として表す。
【
図19D】
図19は、ARG2特異的T細胞によるARG2発現細胞の認識は、標的細胞の抗原プロセシング機構に加えて、ARG2発現のレベルに依存することを示す。(D)セットアップ前に48時間、非刺激条件またはサイトカインカクテル刺激条件下で保存した疑似またはsiRNAトランスフェクト細胞とともにインキュベートした場合の、ARG2特異的T細胞培養物におけるCD4+ T細胞からのTNFαおよびIFNγの産生の細胞内染色。エフェクター:標的比2:1で、条件あたり500,000個のエフェクター細胞を使用した。
【
図19E】
図19は、ARG2特異的T細胞によるARG2発現細胞の認識は、標的細胞の抗原プロセシング機構に加えて、ARG2発現のレベルに依存することを示す。(E)ARG2特異的siRNAでのトランスフェクションに次いで、サイトカインカクテル刺激を行った48時間後のRT-qPCRにより評価したTHP-1細胞におけるARG2発現量。データは、刺激なしの疑似トランスフェクトTHP-1細胞に対する倍数変化、平均+SD、n=4として表す。
【
図20A】
図20(A)6つの異なる予測されるArg2エピトープのうち1つをワクチン接種したC57BL/6マウス由来の脾細胞のマウスIFNγ ELISPOTスクリーニング。ウェルあたり8×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。特異的スポット数(ペプチド特異的IFNγ分泌細胞)は、ペプチドで刺激したウェルおよび対照ウェルのIFNγスポットの平均数の差として示す。
【
図20B】(B)Arg2ペプチドP4(M1-M5)をワクチン接種したまたは対照ワクチン接種(Ctrl1-4)をしたC57BL/6マウス由来の脾細胞のマウスIFNγ ELISPOT。ウェルあたり8×10
5個の細胞を播種し、ペプチドおよび対照の刺激を三重反復で行った。特異的スポット数(ペプチド特異的IFNγ分泌細胞)は、ペプチドで刺激したウェルおよび対照ウェルの平均のIFNγスポットの数の差として示す。
【
図20C】(C)C57BL/6バックグラウンドにおける異なる起源の移植腫瘍におけるArg2発現量。腫瘍型あたり3個の移植腫瘍を評価した。データは、ハウスキーピング遺伝子Hprt1に対する相対発現量、平均+SD、n=3として表す。
【
図20D】(D)抗PD-1処理の追加ありまたはなしでのLL2接種マウスにおけるArg2ワクチン接種を用いた2つの個々の有効性試験の処理スケジュール。0日目に、5×10
5個のLL2細胞を右側腹部に皮下注射し、次いで、(E)対照もしくはArg2ペプチドによるArg2ワクチン接種(両群n=20)または(F)対照ワクチン接種、Arg2ワクチン接種、抗PD-1処理、もしくはArg2ワクチン接種+抗PD-1処理(全群n=10)による処理を行った。(E~F)個々の有効性試験におけるLL2腫瘍の平均腫瘍成長。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表し、****=p≦0.0001。(G)(E)に記載の処理群の個々の腫瘍サイズ。エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
【
図20E】(D)抗PD-1処理の追加ありまたはなしでのLL2接種マウスにおけるArg2ワクチン接種を用いた2つの個々の有効性試験の処理スケジュール。0日目に、5×10
5個のLL2細胞を右側腹部に皮下注射し、次いで、(E)対照もしくはArg2ペプチドによるArg2ワクチン接種(両群n=20)または(F)対照ワクチン接種、Arg2ワクチン接種、抗PD-1処理、もしくはArg2ワクチン接種+抗PD-1処理(全群n=10)による処理を行った。(E~F)個々の有効性試験におけるLL2腫瘍の平均腫瘍成長。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表し、****=p≦0.0001。(G)(E)に記載の処理群の個々の腫瘍サイズ。エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
【
図20F】(D)抗PD-1処理の追加ありまたはなしでのLL2接種マウスにおけるArg2ワクチン接種を用いた2つの個々の有効性試験の処理スケジュール。0日目に、5×10
5個のLL2細胞を右側腹部に皮下注射し、次いで、(E)対照もしくはArg2ペプチドによるArg2ワクチン接種(両群n=20)または(F)対照ワクチン接種、Arg2ワクチン接種、抗PD-1処理、もしくはArg2ワクチン接種+抗PD-1処理(全群n=10)による処理を行った。(E~F)個々の有効性試験におけるLL2腫瘍の平均腫瘍成長。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表し、****=p≦0.0001。(G)(E)に記載の処理群の個々の腫瘍サイズ。エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
【
図20G】(D)抗PD-1処理の追加ありまたはなしでのLL2接種マウスにおけるArg2ワクチン接種を用いた2つの個々の有効性試験の処理スケジュール。0日目に、5×10
5個のLL2細胞を右側腹部に皮下注射し、次いで、(E)対照もしくはArg2ペプチドによるArg2ワクチン接種(両群n=20)または(F)対照ワクチン接種、Arg2ワクチン接種、抗PD-1処理、もしくはArg2ワクチン接種+抗PD-1処理(全群n=10)による処理を行った。(E~F)個々の有効性試験におけるLL2腫瘍の平均腫瘍成長。エラーバーは、平均値の標準誤差(SEM)を表し、****=p≦0.0001。(G)(E)に記載の処理群の個々の腫瘍サイズ。エラーバーは、標準偏差(SD)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
配列の簡単な説明
配列番号1~38はそれぞれ、ヒトアルギナーゼ2に由来するポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号39および40はそれぞれ、ヒトアルギナーゼ2およびアルギナーゼ1の対応する「ホットスポット」領域である。
配列番号41~44はそれぞれ、ヒトアルギナーゼ1に由来するポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号45~50はそれぞれ、マウスアルギナーゼ2に由来するポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号51は、全長ヒトアルギナーゼ2のアミノ酸配列である。
配列番号52は、全長マウスアルギナーゼ2のアミノ酸配列である。
配列番号53は、全長ヒトアルギナーゼ1のアミノ酸配列である。
配列番号54~56はそれぞれ、配列番号2のポリペプチド(Arg2_1)内のHLA-A2またはA3エピトープと予測される配列に相当する、ヒトアルギナーゼ2由来のポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号57~59はそれぞれ、配列番号54~56のエピトープの少なくとも1つを含むヒトアルギナーゼ2由来のさらなるポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号60~61はそれぞれ、配列番号39の「ホットスポット」領域由来の配列を含むヒトアルギナーゼ2由来のさらなるポリペプチドのアミノ酸配列である。
配列番号62は、ヒトアルギナーゼ2の予測されるシグナル配列である。
【0014】
発明の詳細な説明
開示される製品および方法の異なる適用が、当技術分野における特定のニーズに合わせられ得ると理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、本発明の特定の実施形態のみを説明することを目的としており、限定を意図するものではないと理解されるべきである。
【0015】
さらに、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、内容によって別途明確に規定されない限り、複数の指示対象を含む。よって、例えば、「ポリペプチド(a polypeptide)」に対する言及は、「複数のポリペプチド(polypeptides)」などを含む。
【0016】
本明細書において、「ポリペプチド」は、その最も広い意味で、2つ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸類似体、または他のペプチド疑似の化合物を指すように使用される。よって、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列と、より長いポリペプチドおよびタンパク質も包含する。本明細書で使用する場合、用語「アミノ酸」は、D光学異性体またはL光学異性体の両方を含む、天然および/もしくは非天然アミノ酸または合成アミノ酸のいずれか、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド疑似を指す。
【0017】
用語「患者」および「対象」は、互換的に使用され、通常はヒトを指す。
【0018】
上記または下記を問わず、本明細書に引用されるすべての刊行物、特許および特許出願は、引用することによりその全体が本明細書の一部とされる。
【0019】
本発明者らは、輸送ペプチドのC末端を占めるヒトアルギナーゼ2の領域が、特に免疫原性であることを同定した。輸送ペプチドのC末端残基は、配列番号51の22番目に相当する。したがって、輸送ペプチドのC末端を占める領域は少なくとも配列番号1の21、22及び23番目のアミノ酸を包含する。
【0020】
本明細書における「免疫原性」とは、好ましくは、アルギナーゼ2タンパク質が、アルギナーゼ2タンパク質を発現する細胞内または細胞上に存在する場合に、ポリペプチドがアルギナーゼ2タンパク質に対する免疫応答を誘発できることを意味する。言い換えれば、ポリペプチドは、アルギナーゼ2に対して免疫原性であると説明され得る。あるいは、ポリペプチドは、アルギナーゼ2の免疫原性断片として説明され得る。免疫応答は、好ましくは、T細胞応答であり、ポリペプチドはT細胞エピトープを含むアルギナーゼ2の免疫原性断片として説明され得る。免疫応答は、個体(または個体から採取したサンプル)に対するポリペプチドの投与後、少なくとも1つの個体(または前記サンプル)において検出され得る。
【0021】
ポリペプチドは、in vitroの方法を含む任意の適切な方法を用いて、免疫原性であると同定することができる。例えば、ペプチドは、以下の(i)~(iii)の特徴のうち少なくとも1つを有する場合、免疫原性であると同定することができる:
(i)ELISPOTアッセイによって決定された場合、健常対象および/または癌患者のPBL集団においてIFN-γ産生細胞を誘発することができる;および/または
(ii)アルギナーゼ2と反応性であるCTLの腫瘍組織のサンプルにおいてin situで検出することができる;および/または
(iii)特異的T細胞のin vitroでの成長を誘導することができる。
ポリペプチドが免疫原性であるかどうかを決定するのに適切な方法も、以下の実施例の項で説明される。
【0022】
本発明のポリペプチドは、(i)配列番号51の少なくとも21、22および23位のアミノ酸を含む、または(ii)配列番号51の180~229位から選択される、配列番号51の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなる、ヒトアルギナーゼ2(配列番号51)の免疫原性断片である。前記ポリペプチドは、(i)または(ii)に定義される配列番号51の最大15、20、25、30、35、40、45または50個の連続したアミノ酸を含み得るまたはそれらからなり得る。前記ポリペプチドは、配列番号59、58、57、54、55、56、2、3、19、20、21、60または61のいずれか1つのアミノ酸配列を含み得るまたはそれからなり得る。前記ポリペプチドは、9、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50アミノ酸の最大長を有し得る、および/またはC末端アミノ酸が対応するアミドに置き換えられている。前記ポリペプチドは、単離され得る。
【0023】
前記ポリペプチドは、好ましくは、配列番号51の少なくとも21、22および23位のアミノ酸、すなわち、配列KSVを含む、配列番号51の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなる。前記配列番号51の少なくとも9個の連続したアミノ酸は、好ましくは、配列番号54(ILKKSVHSVA)、配列番号55(ILKKSVHSV)または配列番号56(SILKKSVHSV)のアミノ酸配列を含む。本発明の好ましいポリペプチドは、配列番号54、55または56のアミノ酸配列を含み得るまたはそれからなり得る。これらの配列を組み込んだ配列番号51のより長いポリペプチド断片が、特に好ましい。例えば、本発明は、配列番号51の最大50個の連続したアミノ酸のポリペプチドを提供し、連続したアミノ酸は、配列番号54、55または56のいずれか1つのアミノ配列を含む。この種の例示的なポリペプチドは、配列番号2、3、57、58、または59のいずれか1つの配列を含むまたはそれからなるポリペプチドである。配列番号59、58および57のいずれか1つの配列を含むまたはそれからなるポリペプチドが、好ましい。配列番号59の配列を含むまたはそれからなるポリペプチドが、特に好ましい。
【0024】
本明細書に記載の任意のポリペプチドにおいて、修飾配列を有するポリペプチドが、非修飾配列を有するポリペプチドと比較して、アルギナーゼ2に対して同等または増大した免疫原性を示す限りにおいて、アミノ酸配列は、1個、2個、3個、4個、または5個(すなわち、最大5個)の付加、欠失または置換によって修飾されてもよい。「同等」とは、修飾配列のポリペプチドが、非修飾配列のポリペプチドと比較して、アルギナーゼ2に対する有意に低減した免疫原性を示さないことであると理解されるべきである。配列間の免疫原性のいずれの比較も、同じアッセイを使用して実施すべきである。特に断りのない限り、ポリペプチド配列に対する修飾は、好ましくは、保存的アミノ酸置換である。保存的置換では、アミノ酸が、類似の化学構造、類似の化学的特性または類似の側鎖体積の他のアミノ酸と置き換えられる。導入されたアミノ酸は、置き換わるアミノ酸と、類似の極性、親水性、疎水性、塩基性度、酸性度、中性度または電荷を有し得る。あるいは、保存的置換では、既存の芳香族または脂肪族アミノ酸の代わりに、芳香族または脂肪族である別のアミノ酸を導入し得る。保存的アミノ酸変化は、当技術分野で周知であり、下記の表A1に定義される20個の主要アミノ酸の特性に従って選択してもよい。アミノ酸が類似の極性を有する場合、これは、表A2におけるアミノ酸側鎖に関する疎水性親水性指標を参照することによって、決定することができる。
【0025】
【0026】
【0027】
本明細書に開示される任意のポリペプチドにおいて、ポリペプチドが、非修飾配列を有するポリペプチドと比較して、アルギナーゼ2に対する同等または増大した免疫原性を示すならば、生理化学的特性(例えば、安定性)を改善するために、以下の修飾のうちいずれか1つ以上を行ってもよい:
a)C末端アミノ酸の対応するアミドとの置換(カルボキシペプチダーゼに対する抵抗性を増大させることができる);
b)N末端アミノ酸の対応するアシル化アミノ酸との置換(アミノペプチダーゼに対する抵抗性を増大させることができる);
c)1つ以上のアミノ酸の対応するメチル化アミノ酸との置換(タンパク質分解抵抗性を改善することができる);
d)1つ以上のアミノ酸のD-立体配置の対応するアミノ酸との置換(タンパク質分解抵抗性を改善することができる)。
【0028】
本明細書に開示される任意のポリペプチドは、前記ポリペプチドが、さらなる部分を欠くポリペプチドと比較して、アルギナーゼ2に対して同等または増大した免疫原性を示す限りにおいて、溶解性、安定性を改善するため、および/または製造/単離の一助となるために、少なくとも1つの付加的な部分をNおよび/またはC末端に付着させてもよい。適切な部分としては、親水性アミノ酸が挙げられる。例えば、アミノ酸配列KK、KRまたはRRを、N末端および/またはC末端に付加させてもよい。他の適切な部分としては、アルブミンまたはPEG(ポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0029】
本明細書に開示されるポリペプチドは、任意の適切な手段によって製造することができる。例えば、ポリペプチドは、当技術分野で公知の標準的な技法、例えば、Fmoc固相化学、Boc固相化学または液相ペプチド合成を使用して、直接合成してもよい。あるいは、ポリペプチドは、細胞、通常は細菌細胞を、前記ポリペプチドをコードする核酸分子またはベクターで形質転換することによって、製造してもよい。
【0030】
本発明は、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子およびベクターを提供する。本発明はまた、このような核酸またはベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0031】
用語「核酸分子」および「ポリヌクレオチド」は、本明細書において互換的に使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマー型、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドのいずれか、またはそれらの類似体を指す。ポリヌクレオチドの限定されない例としては、遺伝子、遺伝子断片、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。本発明のポリヌクレオチドは、単離された形態または実質的に単離された形態で提供され得る。実質的に単離されたとは、任意の周囲の培地からのポリペプチドの実質的な、しかし完全ではない単離があり得ることを意味する。ポリヌクレオチドは、それらの使用目的を妨げない担体または希釈剤と混合してもよく、その場合でも、実質的に単離されたとみなされ得る。選択されたポリペプチドを「コードする」核酸配列は、例えば、発現ベクターにおける適切な調節配列の制御下に置かれた場合に、in vivoでポリペプチドに転写(DNAの場合)および翻訳(mRNAの場合)される核酸分子である。コード配列の境界は、5’(アミノ)末端の開始コドンおよび3’(カルボキシ)末端の翻訳終止コドンによって決定される。本発明の目的で、このような核酸配列としては、限定されるものではないが、ウイルス由来のcDNA、原核生物または真核生物のmRNA、ウイルスまたは原核生物のDNAまたはRNA由来のゲノム配列、およびさらには合成DNA配列を挙げることができる。転写終結配列は、コード配列に対して3’に位置し得る。
【0032】
ポリヌクレオチドは、Sambrookら(1989, Molecular Cloning - a laboratory manual; Cold Spring Harbor Press)における例により説明されるように、当技術分野で周知の方法に従って合成することができる。本発明の核酸分子は、挿入配列に動作可能に連結された調節配列を含み、それにより、in vivoにおける本発明のポリペプチドの発現を可能とする発現カセットの形態で提供され得る。次に、これらの発現カセットは、通常は、ベクター(例えば、プラスミドまたは組換えウイルスベクター)内で提供される。このような発現カセットは、宿主対象に直接投与してもよい。あるいは、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターを、宿主対象に投与してもよい。好ましくは、ポリヌクレオチドは、遺伝子ベクターを用いて調製および/または投与される。適切なベクターは、十分な量の遺伝情報を運び、本発明のポリペプチドの発現を可能とすることができる任意のベクターであり得る。
【0033】
したがって、本発明は、このようなポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを含む。このような発現ベクターは、分子生物学の技術分野で慣例的に構築され、例えば、プラスミドDNAおよび適切なイニシエーター、プロモーター、エンハンサーおよび他の要素、例えば、本発明のペプチドの発現を可能とするために、必要であり得る、および正確な方向で位置するポリアデニル化シグナルの使用が関与し得る。他の適切なベクターは、当業者に明らかであろう。この点に関するさらなる例については、Sambrookらを参照する。
【0034】
本発明はまた、本発明のポリペプチドを発現するように改変されている細胞を含む。このような細胞は、通常は、細菌細胞、例えば大腸菌などの原核細胞を含む。このような細胞は、本発明のポリペプチドを製造するために、慣用的な方法を用いて培養してもよい。
【0035】
本発明のポリペプチドは、実質的に単離された形態であり得る。本発明のポリペプチドは、使用目的を妨げない担体、保存剤、もしくは希釈剤(以下で考察する)、および/またはアジュバント(これも以下で考察する)と混合してもよく、その場合でも、実質的に単離されたとみなされ得る。本発明のポリペプチドはまた、実質的に精製された形態であってもよく、その場合、本発明のポリペプチドは、一般に、製剤中に少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、98%または99%のタンパク質を含む。
【0036】
ポリペプチドを含む組成物
別の側面において、本発明は、本発明のポリペプチドを含む組成物を提供する。例えば、本発明は、本発明の1つ以上のポリペプチドと、少なくとも1つの薬学上許容可能な担体、保存剤または賦形剤とを含む組成物を提供する。担体、保存剤および賦形剤は、組成物の他の成分と適合する、および組成物が投与される対象にとって有害ではないという意味で、「許容可能」でなければならない。通常は、すべての成分および最終組成物は、無菌かつパイロジェンフリーである。組成物は、医薬組成物であり得る。組成物は、好ましくは、アジュバントを含み得る。
【0037】
アジュバントは、組成物へのその混合が、組成物により誘発される免疫応答を増大またはそうでなければ修飾する、任意の物質である。広く定義されるアジュバントは、免疫応答を促進する物質である。アジュバントはまた、投与部位からの有効薬剤の緩徐かつ持続した放出ももたらすという点で、好ましくは、デポ効果を有し得る。アジュバントに関する一般的な考察は、Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (第2版, 1986) 61-63頁において提供されている。
【0038】
アジュバントは、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)3、Ca3(PO4)2、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、ムラミルジペプチド、N-アセチル-ムラミル-L-トレオニル-D-イソグルタミン(thr-DMP)、N-アセチル-ノルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミン(CGP11687、ノル-MDPともいう)、N-アセチルムラミル-L-アラニル-D-イソグルタミニル-L-アラニン-2-(1’2’-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ヒドロキシホスホリルオキシ)-エチルアミン(CGP19835A、MTP-PEともいう)、2%スクアレン/ツイーン-80.RTM.エマルション中のRIBI(MPL+TDM+CWS)、リピドAを含むリポ多糖およびその種々の誘導体、フロイント完全アジュバント(FCA)、フロイント不完全アジュバント、メルクアジュバント65、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)由来のワックスD、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)、百日咳菌(Bordetella pertussis)、およびブルセラ属のメンバーに認められる物質、Titermax、ISCOMS、Quil A、ALUN(US58767および5,554,372を参照のこと)、リピドA誘導体、コレラ毒素誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックスまたはGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタニドISA-51およびQS-21からなる群から選択され得る。種々のサポニン抽出物も、免疫原性組成物におけるアジュバントとして有用であることが示唆されている。顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)も、アジュバントとして使用してもよい。
【0039】
本発明とともに使用される好ましいアジュバントとしては、油/界面活性剤ベースのアジュバント、例えば、モンタニドアジュバント(Seppic社、ベルギーから入手可能)、好ましくは、モンタニドISA-51が挙げられる。他の好ましいアジュバントは、細菌DNAベースのアジュバント、例えば、CpGオリゴヌクレオチド配列を含むアジュバントである。さらに他の好ましいアジュバントは、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、例えば、ポリI:Cである。GM-CSFおよびイミダゾキニリンも、好ましいアジュバントの例である。
【0040】
アジュバントは、最も好ましくは、モンタニドISAアジュバントである。モンタニドISAアジュバントは、好ましくは、モンタニドISA51またはモンタニドISA720である。
【0041】
Goding, Monoclonal Antibodies: Principles & Practice (第2版, 1986)61-63頁において、目的の抗原が低分子量であるか、または免疫原性が不十分な場合、免疫原性担体へのカップリングが推奨されることも記載されている。したがって、本発明のポリペプチドを、担体にカップリングしてもよい。担体は、アジュバントと独立して存在し得る。担体の機能は、例えば、活性もしくは免疫原性を増大させるため、安定性を付与するため、生物活性を増大させるため、または血清中半減期を増大させるために、ポリペプチド断片の分子量を増加させることであり得る。さらに、担体は、ポリペプチドまたはその断片をT細胞に提示する助けとなり得る。したがって、組成物において、ポリペプチドは、以下に記載するような担体と会合し得る。
【0042】
担体は、当業者に公知の任意の適切な担体、例えば、タンパク質または抗原提示細胞、例えば樹状細胞(DC)であり得る。担体タンパク質としては、キーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質(トランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、サイログロブリンもしくはオボアルブミン、免疫グロブリン等)、またはホルモン(インスリン等)またはパルミチン酸が挙げられる。あるいは、担体タンパク質は、破傷風トキソイドまたはジフテリアトキソイドであり得る。あるいは、担体は、デキストラン、例えばセファロースであり得る。担体は、ヒトに対して生理学的上許容可能であり、安全でなければならない。
【0043】
組成物が賦形剤を含む場合、賦形剤は、組成物の他の成分と適合する、およびそのレシピエントにとって有害ではないという意味で、「薬学上許容可能」でなければならない。補助物質、例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝物質などが、賦形剤中に存在してもよい。これらの賦形剤および補助物質は、一般に、組成物を投与される個体において免疫応答を誘導せず、過度の毒性を伴わずに投与することができる医薬品である。薬学上許容可能な賦形剤としては、限定されるものではないが、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロールおよびエタノール等の液体が挙げられる。薬学上許容可能な塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩などの鉱酸塩;および酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩などの有機酸塩も含まれ得る。薬学上許容可能な賦形剤、ビヒクルおよび補助物質の完全な考察は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. 1991)において入手可能である。
【0044】
適切な組成物の処方は、標準的な医薬処方化学および方法(これらはすべて、当業者にとって容易に入手可能である)を用いて、実施することができる。このような組成物は、ボーラス投与または連続投与にとって適切な形態で、調製、包装、または販売され得る。注射用組成物は、単位投与形、例えば、アンプルまたは場合により保存剤を含有する多回投与容器で、調製、包装、または販売され得る。組成物としては、限定されるものではないが、懸濁液、溶液、油性または水性ビヒクル中のエマルション、ペースト、および埋込み型徐放性製剤または生分解性製剤が挙げられる。組成物の一つの実施形態において、有効成分は、再構成された組成物の投与前に、適切なビヒクル(例えば、無菌パイロジェンフリー水)で再構成するために、乾燥(例えば、粉末または顆粒)形態で提供される。組成物は、無菌注射用の水性または油性の懸濁液または溶液の形態で、調製、包装、または販売され得る。この懸濁液または溶液は、公知の技術に従って処方され得、有効成分に加えて、本明細書に記載のアジュバント、賦形剤および補助物質等の追加の成分を含み得る。このような無菌注射用製剤は、例えば、水または1,3-ブタンジオールなどの無毒の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒を用いて調製され得る。他の許容可能な希釈剤および溶媒としては、限定されるものではないが、リンゲル液、等張食塩水、および、合成モノまたはジグリセリド等の固定油が挙げられる。有用な他の組成物としては、微結晶形で、リポソーム調製物中に、または生分解性ポリマー系の成分として、有効成分を含む組成物が挙げられる。徐放または埋込みのための組成物は、薬学上許容可能なポリマー性または疎水性材料、例えば、エマルション、イオン交換樹脂、難溶性ポリマー、または難溶性塩を含み得る。あるいは、組成物の有効成分は、カプセル化され得る、粒子状担体に吸着され得る、または粒子状担体と会合し得る。適切な粒子状担体としては、ポリメチルメタクリレートポリマーに由来する担体、ならびにポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)に由来するPLG微粒子が挙げられる。例えば、Jeffery et al. (1993) Pharm. Res. 10:362-368を参照されたい。他の微粒子系およびポリマー、例えば、ポリリシン、ポリアルギニン、ポリオルニチン、スペルミン、スペルミジンなどのポリマー、およびこれらの分子のコンジュゲートも使用することができる。
【0045】
使用方法
本発明のポリペプチドまたは組成物は、対象における疾患または病態を治療または予防する方法において使用され得る。本発明のポリペプチドまたは組成物は、対象における疾患または病態を治療または予防する方法における使用のための薬剤の製造において使用され得る。方法は、前記ポリペプチドまたは前記組成物を前記対象に投与することを含む。投与は、治療上または予防上有効な量の前記ポリペプチドまたは前記組成物を、それを必要とする対象に投与するものであり得る。
【0046】
疾患または病態は、アルギナーゼ2の不適切なまたは過剰な免疫抑制機能を少なくとも部分的に特徴とし得る。疾患または病態は、癌、好ましくは、アルギナーゼ2を発現する、および/またはアルギナーゼ2の不適切なもしくは過剰な免疫抑制機能と関連する癌であり得る。癌は、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、脳癌、頭頚部癌もしくは小腸癌であり得るか、結腸直腸癌もしくは胃癌、または黒色腫、または白血病、好ましくは、急性骨髄性白血病(AML)もしくは慢性リンパ性白血病(CLL)であり得る。癌は、他の癌治療に耐性を有し得る、特に抗PD1療法などの免疫系チェックポイント阻害剤に耐性を有し得る。
【0047】
方法は、併用する癌療法との同時投与または逐次投与を含み得る。併用する癌療法は、サイトカイン療法、T細胞療法、NK療法、免疫系チェックポイント阻害剤、化学療法、放射線療法、免疫刺激物質(追加のワクチンなど)、または遺伝子療法から選択され得る。
【0048】
免疫系チェックポイント阻害剤は、特に追加の癌療法とすることが好ましい。アルギナーゼ2に対するワクチン療法は、免疫系チェックポンと阻害剤との併用で相乗効果を奏し得る。免疫系チェックポイントの例としては下記が挙げられる:
a)インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)とその基質の相互作用
b)PD1とPDL1および/またはPD1とPDL2の相互作用
c)CTLA4とCD86および/またはCTLA4とCD80の相互作用
d)B7-H3および/またはB7-H4と、それぞれのリガンドの相互作用
e)HVEMとBTLAの相互作用
f)GAL9とTIM3の相互作用
g)MHCクラスIまたはIIとLAG3の相互作用
h)MHCクラスIまたはIIとKIRの相互作用
チェックポイント(a)、(b)及び(c)の阻害は、追加の癌療法として特に好ましい。
チェックポイント阻害剤は、免疫系チェックポイントを遮断または阻害する任意の免疫調節剤(抗体など)であってもよく、または、免疫系チェックポイントの成分もしくは前記成分の免疫原性断片を含む免疫療法組成物であって、免疫系におけるチェックポイントの標的化を刺激する免疫療法組成物であってもよい。
【0049】
追加の癌療法は、抗体であってもよい。
【0050】
抗体は、アバゴボマブ、アブシキシマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アフェリモマブ、アフツズマブ、アラシズマブペゴール、ALD518、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブペンテテート、アマツキシマブ、アナツモマブマフェナトクス、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アセリズマブ、アチヌマブ、アトリズマブ(=トシリズマブ)、アトロリムマブ、バピネオズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクツモマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメルタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、CC49、セデリズマブ、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ、Ch.14.18、シタツズマブボガトクス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリキシマブ、クリバツズマブテトラキセタン、コナツムマブ、コンシズマブ、クレネズマブ、CR6261、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダラツムマブ、デムシズマブ、デノスマブ、デツモマブ、ドルリモマブアリトクス、ドロジツマブ、ドゥリゴツマブ、デュピルマブ、ドゥシギツマブ、エクロメキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エナバツズマブ、エンリモマブペゴール、エノキズマブ、エノチクマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツキセタン、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマキソマブ、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エボロクマブ、エクスビビルマブ、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファルレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フランボツマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリキシマブ、ガニツマブ、ガンテネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレムバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、GS6624、イバリズマブ、イブリツモマブチウキセタン、イクルクマブ、イゴボマブ、イムシロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インフリキシマブ、インテツムマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガマイシン、イピリムマブ、イラツムマブ、イトリズマブ、イキセキズマブ、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ランパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レルデリムマブ、レクサツムマブ、リビビルマブ、リゲリズマブ、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルミリキシマブ、マパツムマブ、マスリモマブ、マブリリムマブ、マツズマブ、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミツモマブ、モガムリズマブ、モロリムマブ、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェナトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブメルペンタン、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オズリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴボマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、パノバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO140、キリズマブ、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レガビルマブ、レスリズマブ、リロツムマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレズマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルピリズマブ、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セビルマブ、シブロツズマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、テフィバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、TGN1412、チシリムマブ(=トレメリムマブ)、チルドラキズマブ、チガツズマブ、TNX-650、トシリズマブ(=アトリズマブ)、トラリズマブ、トシツモマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バパリキシマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ベパリモマブ、ベセンクマブ、ビジリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマホドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブまたはゾリモマブアリトクスであり得る。
【0051】
好ましい抗体としては、ナタリズマブ、ベドリズマブ、ベリムマブ、アタシセプト、アレファセプト、オテリキシズマブ、テプリズマブ、リツキシマブ、オファツムマブ、オクレリズマブ、エプラツズマブ、アレムツズマブ、アバタセプト、エクリズマブ、オマリズマブ、カナキヌマブ、メポリズマブ、レスリズマブ、トシリズマブ、ウステキヌマブ、ブリアキヌマブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、アダリムマブ、セルトリズマブペゴール、ゴリムマブ、トラスツズマブ、ゲムツズマブ、オゾガマイシン、イブリツモマブ、チウキセタン、トシツモマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブ、デノスマブ、イピリムマブ、ブレンツキシマブおよびベドチンが挙げられる。
【0052】
本発明の方法において使用され得る特に好ましい抗体としては、ダラツムマブ、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、アベルマブ、リツキシマブ、トラスツズマブ、ペルツズマブ、アレムツズマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、トシツモマブおよびオファツムマブが挙げられる。ダラツムマブが特に好ましい。ニボルマブ等の抗PD1抗体も特に好ましい。
【0053】
併用する癌療法は、アクチミド、アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、カルボプラチン、カペシタビン、シスプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキシフルリジン、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イリノテカン、レナリドミド、ロイコボリン、メクロレタミン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、レブラミド、テモゾロミド、テニポシド、チオグアニン、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンからなる群から選択され得る。
【0054】
本発明の組成物のポリペプチドは、細胞を前記ポリペプチドまたは組成物に接触させることを含む、アルギナーゼ1特異的T細胞、例えば、CD4およびCD8T細胞を刺激する方法においても使用され得る。方法は、ex vivoで行ってもよい。細胞は、健常対象または癌患者から採取されたサンプル、例えば、腫瘍サンプル中に存在し得る。
【0055】
本発明を以下の実施例によりさらに説明するが、これらの実施例は、保護の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。前述の説明および以下の実施例に開示される特徴は、両方とも別々に、またその任意の組合せにおいて、その多様な形態で本発明を実現するための材料であり得る。
【0056】
実施例1
材料と方法
患者材料
健常ドナー由来のPBMCを、Lymphoprep(商標)(STEMCELL Technologies社)での密度勾配分離を用いて単離し、10%DMSOを添加したFBS中にて-150℃で凍結保存した。癌患者由来のPBMCは、すべての抗癌療法の終了から最低4週後に、血液サンプルから単離した。プロトコールは、Scientific Ethics Committee for The Capital Region of Denmarkにより承認され、ヘルシンキ宣言の規定に従って実施した。患者からの書面によるインフォームドコンセントを、試験登録前に取得した。
【0057】
ペプチド
ペプチドを、標準的な方法により合成し、DMSOに溶解してストック濃度10mMを得た。これらの実験に使用したペプチドの配列については、「配列」という表題の項目においても説明する。ペプチドは、配列番号、名称、またはアルギナーゼ2の全長配列における各ペプチド配列の開始および終了位置によって示される。それぞれ互換的に使用され得る。例えば、配列番号2のペプチドは、一方で名称Arg2_1という場合もあり、または、一方でArg2aa11-30(11の開始位置および30の終了位置を示す)という場合もある。各例における意図する参照は、文脈から明らかとなるであろう。
【0058】
ELISPOTアッセイ
in vitro ELISPOTのために、癌患者および健常ドナーに由来するPBMCを、ELISPOTアッセイに使用する前に、24ウェルプレート中で20μMのアルギナーゼ1由来ペプチド(または対照としてペプチドなし)および120U/mL IL-2で7日間パルスした。細胞を、IFNγ捕捉抗体(Mabtech社)でプレコートした96ウェルニトロセルロースELISPOTプレート(MultiScreen MAIP N45;Millipore社)に播種した。アルギナーゼペプチドを加え、終濃度5μMとし、プレートを37℃で14~16時間インキュベートした。インキュベーションの後、細胞を洗い流し、二次ビオチン化Ab(Mabtech社、カタログ番号3420-6-1000)を、室温で2時間加えた。非結合二次抗体を洗い流し、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(AP)コンジュゲート(Mabtech社、カタログ番号3310-10)を、室温で1時間加えた。非結合コンジュゲート酵素を洗い流し、BCIP/NBT基質(Mabtech社、カタログ番号3650-10)を加えることにより、アッセイを展開した。展開したELISPOTプレートを、Immunospotソフトウェアv5.1を用いたCTL ImmunoSpot S6 Ultimate-Vアナライザーで分析した。応答は、アルギナーゼ2で刺激したウェルおよびペプチド添加なしのウェル中の平均数間の差として報告した。
【0059】
細胞内染色
PBMCを、BD GolgiPlug(商標)(ペプチド刺激の最初の1時間の後に加えた)の存在下で、アルギナーゼ由来ペプチド(または対照としてペプチドなしでインキュベーション)で5時間刺激した後に、細胞培養物の細胞内染色を行った。刺激した細胞を、表面マーカー(CD3、CD4、CD8)に対する蛍光標識抗体で染色し、その後、固定/透過処理および透過処理緩衝液(eBioscience社、カタログ番号00-5123-43)を用いて、製造業者の説明書に従って透過処理した。次いで、透過処理した細胞を、IFNγおよびTNFαに対する蛍光色素標識抗体で染色した。フローサイトメトリー分析を、FACSCanto(商標)II(BD Biosciences社)で行った。以下の抗体:IFNγ-APC(カタログ番号341117)、TNFα-455 BV421(カタログ番号562783)、CD4-FITC(カタログ番号347413)、CD8-PerCP(カタログ番号345774)、CD3-APC-H7(カタログ番号560275)(すべてBD Biosciences社から)、死細胞染色-FVS510(564406、BD Biosciences社)を、製造業者の説明書に従って使用した。
【0060】
結果
アルギナーゼ1ホットスポットに基づいたアルギナーゼ2ペプチドに関するスクリーニング
以前に同定されたアルギナーゼ1の161~210位の50アミノ酸長アルギナーゼ1ホットスポット領域に基づき、アルギナーゼ2における対応する領域(180~229位)を網羅する4個のペプチドを、試験のために選択した。これらのペプチドは、Arg2-E17(aa180-199)、Arg2-E18(aa190-209)、Arg2-E19(aa200-219)およびArg2-E20(210-229)である。アルギナーゼ1およびアルギナーゼ2の比較模式図については、
図1を参照のこと。Arg2-E17は、慣例的な方法により合成できなかったため、実験は、残りの3個のペプチドを用いて行った。
【0061】
これらのペプチドがアルギナーゼ2応答を同定するのに使用できるかどうかを試験するために、12例の健常ドナーおよび1例の癌患者由来のPBMCを、IFNγ ELISPOTにおける応答について選別した。PBMCは、ELISPOTの前に1週間、アルギナーゼ2ペプチドおよび低用量IL-2で刺激した。
【0062】
図2に示されるように、ペプチドは、少なくとも1例の対象由来のPBMCにより、全て認識された。Arg2-E18は、最高かつ最も一貫した応答を示した。
【0063】
他のアルギナーゼ2ペプチドに関するペプチドライブラリースクリーニング
全アルギナーゼ2タンパク質配列をオーバーラップする20アミノ酸長のペプチドとして分割し(最終的に24アミノ酸のペプチド)、全配列(配列番号1~34)を網羅する34個のペプチドのライブラリーを作製した。ライブラリー中の各ペプチドは、以下のペプチドの最初の10個のアミノ酸とオーバーラップしていた。このアルギナーゼ2ペプチドライブラリーおよびIFNγ ELISPOTアッセイを用いて、本発明者らは次に、自発的応答に関して6例の健常ドナー由来のPBMCを選別した。3~4個の隣接する20-merアルギナーゼ2ライブラリーペプチドのプールおよび低用量IL-2(120U/mL)で、PBMCを1週間刺激した。次いで、それらをIFNγ ELISPOTアッセイのためにセットアップし、各20-merペプチドに対する応答に関して別々に選別した。
【0064】
図3に示されるように、以下の8個のペプチドが、最高かつ最も大量の応答を示した:
【0065】
ARG2_1(aa11-30)、ARG2_5(aa51-70)、ARG2_8(aa81-100)、ARG2_13(aa131-150)、ARG2_18(181-200)、ARG2_20(201-220)、ARG2_21(aa211-230)およびARG2_22(221-240)。
【0066】
Arg2_18、Arg2_20、Arg2_21およびArg2_22は総て、以前に同定されたホットスポット領域内に含まれているか、またはそれとオーバーラップしている。しかしながら、他のペプチド(最も高い応答を示したペプチド、Arg2_1を含む)は、アルギナーゼ2タンパク質の異なる領域に由来する。
【0067】
ライブラリースクリーニング(ホットスポット領域)の検証
2例の健常ドナー由来のPBMCを、単一ペプチドおよび低用量IL-2(120U/mL)で1週間刺激した後、IFNγ ELISPOTアッセイを行い、ライブラリースクリーニングにおいて認められた応答を検証した。
【0068】
ARG2_18、ARG2_19、ARG2_20およびARG2_21をそれぞれ、この検証実験において試験し、ARG2-E18、ARG2-E19およびARG2-E20は、アルギナーゼ2の同じ領域とオーバーラップしているため、これらも加えた。Arg2-E17は、慣例的な方法により合成できなかったため、再度除外した。
【0069】
6個の試験したペプチドを、以下にアラインメントで示す:
図4に示されるように、試験したペプチドのそれぞれに対する応答が認められ、最初のスクリーニングが検証された。ペプチドのオーバーラップするペアは、ほぼ同一の応答を示したが、ARG2_21およびARG2-E20は例外で、より強い応答が、ARG2_21に対して1例の健常ドナーにおいて認められた。この実験における最強かつ最も一貫した応答は、ARG2_18で得られた。
【0070】
ライブラリースクリーニング(他の領域)の検証
4例の健常ドナー由来のPBMCを、単一ペプチドおよび低用量IL-2(120U/mL)で1週間刺激した後、IFNγ ELISPOTアッセイを行い、ライブラリースクリーニングにおいて認められた応答を検証した。ARG2_1、ARG2_5、ARG2_13、ARG2_18およびARG2_22を、この検証において試験した。
図5に示されるように、強い顕著な応答が、特にArg2_1に対して認められた。
【0071】
このため、細胞内サイトカイン染色アッセイを同じ細胞に対して使用し、CD4+またはCD8+応答が存在したかどうかを解明した。2例の健常ドナーに関して、Buf-M-01およびBuf-M-02、0.2%および0.1%二重陽性(DP)CD4+細胞が認められ(
図6Aおよび6Bにおける代表的なプロットを参照のこと)、これらのドナーにおけるARG2_1に対するCD4+応答が示唆された。
【0072】
ARG2_1に対する応答に関する癌患者および健常ドナーのさらなるスクリーニング
ARG2_1を使用して、8例の黒色腫患者(AA07-AA31)、4例の前立腺癌患者(UR07-27)および13例の健常ドナーにおける応答に関するスクリーニングを行った。それぞれに由来するPBMCを、単一ペプチドおよび低用量IL-2(120U/mL)で1週間刺激した後、IFNγ ELISPOTアッセイを行った。
【0073】
図8に示されるように、有意な応答が、試験したドナー25例中15例(60%)に認められ、応答は、患者および健常ドナーにおいてほぼ等しい強さに見られた。
【0074】
IFNγ ELISPOTにおいて明らかな応答を示したPBMCを、細胞内サイトカイン染色にも使用した。本発明者らは、2例の健常ドナー由来のCD4細胞を分析し、これらの2例のドナーにおいて、CD4細胞は、ARG2_1に対して特異的に反応していたことを示した。さらに、本発明者らは、前立腺癌患者(UR12)由来のPBMCのうち、ARG2_1に対するCD8+応答も存在していたことを見出した(CD8+ DP細胞0.9% 対 対照0.5%)。
図9を参照のこと。まとめると、これらのICSの結果は、検出されたARG2_1応答は、T細胞媒介性であり、さらに、CD4およびCD8 T細胞の両方により媒介され得ることを示している。
【0075】
したがって、ARG2_1内のHLA-A2およびHLA-A3エピトープに関する予測を、www.syfpeithi.deサーバーを用いて行った。以下のエピトープが、ARG2_1配列内に存在すると予測された:
3個の予測エピトープは総て、配列番号51の21、22および23位の輸送ペプチド境界を組み込んでいる。
【0076】
ARG2_1に対する応答は、前刺激なしでも認められる(「ex vivo ELISPOT」)
先の実験(in vitroまたは「間接的な」IFNγ ELISPOT)において強い応答を示していた1例の癌患者および3例の健常ドナーを、ex vivo ELISPOTにおいても試験した。このことは、IFNγ ELISPOTアッセイの前に、PBMCは前刺激されず、+/- Arg2_1ペプチドで72時間単にインキュベートすることを意味する。
図10に示されるように、ARG2_1に対する応答が検出された。特異的T細胞応答がex vivoにおいて直接検出可能であったという事実は、特に注目すべきである。ほぼ例外なく、腫瘍関連抗原特異的T細胞は、四量体染色またはELISPOTのいずれかにより、in vitroペプチド前刺激なしでex vivoで直接PBMCにおいて検出することは通常可能ではない。in vitroでの前刺激工程なしで非ウイルス抗原に対する免疫応答を検出できることは、非常に稀有である。そのため、これらの結果は、ARG2_1配列およびその中に含まれるエピトープの高い免疫原性を強調するものである。したがって、データは、免疫系はアルギナーゼ2発現細胞を選択的に標的とすることができ、アルギナーゼ発現の免疫調節効果を低減し、それにより、抗腫瘍免疫応答を増強することを意味するため、このような配列は良好なワクチン接種の標的である。さらに、これらのデータは、アルギナーゼ2特異的T細胞(特に、ARG2_1内の1つまたは複数のエピトープを認識するもの)は、免疫系において天然的な役割を果たすことを示唆している。このことは、このような配列に対するワクチン接種は、患者において毒性を誘導しない可能性が最も高いことを意味する。
【0077】
考察
癌におけるアルギナーゼ2発現細胞の存在は、癌特異的エフェクターリンパ球の増殖を防ぐ免疫抑制腫瘍微小環境に寄与する。したがって、このようなアルギナーゼ2発現細胞(腫瘍細胞および他の調節細胞を含み得る)を特異的に標的とすることは、免疫抑制効果を低減し、癌特異的エフェクター細胞の活性化および増殖を可能とすることにより、直接的な利益および間接的な利益を有し得る。抗癌免疫療法は、免疫抑制細胞によりしばしば拮抗されることを考慮すると、アルギナーゼ2エピトープを標的とすることのこの二重効果は、高度に相乗的であり得る。これらの実験が、アルギナーゼ2に対する天然のCD4およびCD8T細胞媒介性免疫が存在すること(特に、Arg2_1配列内のエピトープに対して)を示していることを考慮すると、ワクチン接種の状況においてアルギナーゼ2を標的とすることが成功する可能性は高い。
【0078】
実施例2 - ヒトARG2ペプチドのさらなる検討
材料と方法
患者材料
健常ドナー由来のPBMCを、Lymphoprep(商標)(Alere社)での密度勾配分離を用いて単離し、10%DMSOを添加したFBS(Life Technologies社)中にて-150℃で凍結保存した。癌患者由来のPBMCは、総ての抗癌療法の終了から4週以後に、血液サンプルから単離した。AMLを有する患者由来のPBMCは、異なる疾患および治療段階の患者、すなわち治療中の患者を含む患者由来の血液サンプルから単離した。全てのプロトコールは、Scientific Ethics Committee for The Capital Region of Denmarkにより承認され、ヘルシンキ宣言の規定に従って実施した。患者からの書面によるインフォームドコンセントを、試験登録前に取得した。PMBCは、5%ヒト血清(Sigma Aldrich社)を添加したX-vivo(BioNordika社)中で維持した。
【0079】
細胞培養
THP-1を、10%FBSを添加したRPMI(Gibco社)中で培養した。Set2細胞を、20%FBSを添加したRPMI中で培養した。OCI-AML-2細胞を、10%FBSを添加したアルファ-MEM(Life Technologies社)中で培養した。MONO-MAC-1細胞を、10%FBS、1mMピルビン酸ナトリウム(Life Technologies社)、2mM L-グルタミン(Life Technologies社)および1倍非必須アミノ酸(Life Technologies社)を添加したRPMI中で培養した。全ての細胞株を試験し、マイコプラズマに対して陰性であることを確認した。細胞を週2~3回継代した。
【0080】
IL-4(400U/ml)、IL-13(50ng/ml)、IFNγ(100U/ml)またはサイトカインカクテル(400U/ml IL-4、1000U/ml GM-CSFおよび1000U/ml TNFα)を添加した培地に0.5~0.75×106細胞/mL培地をそれぞれ播種してサイトカイン刺激を行った。48時間のインキュベーションの後、種々の実験のために細胞を回収した。全てのサイトカインは、Trichem社からのものである。
【0081】
ペプチド
34個の20merペプチドのARG2ペプチドライブラリーをPepScanにより合成し、免疫応答に関するスクリーニングのためにDMSOに10mMで溶解した。残りの実験のために、ARG2-1を滅菌水に2mMで溶解した。長鎖ARG2ペプチド(A2L1、A2L2、A2L3(配列番号58、59、57)をSchaeferにより合成し、滅菌水に2mMとなるように溶解した。滅菌水に溶解したペプチドを、使用前に0.22μmフィルターで濾過した。合成したペプチドの純度は、90%超であった。全ペプチドの一覧については、表1を参照のこと。
【0082】
ペプチド刺激およびELISPOTアッセイ
健常ドナーまたは癌患者由来のPBMCを、in vitroで10μMのARG2由来ペプチドで刺激し、アッセイ感度を増強させた。2日目に、IL-2を加え、計120U/mlのIL-2(Novartis社)とした。7日後、4~6×105個のPBMCを、IFNγ捕捉抗体(Mabtech社)でプレコートしたELISPOTプレートの底部に播種した。各ドナーまたは患者由来のPBMCは、ペプチド(5μM ARG2由来ペプチド)および対照の刺激について、三重反復または四重反復測定となるようセットアップした。細胞を、抗原の存在下でELISPOTプレートにおいて14~16時間インキュベートし、その後、それらを洗い流し、二次ビオチン化抗体(Mabtech社)を加えた。2時間のインキュベーション後、二次抗体を洗い流し、次いで、ストレプトアビジン結合アルカリホスファターゼ(Mabtech社)を加えて1時間置いた。次に、非結合酵素を洗い流し、BCIP/NBT基質(Mabtech社)を加えて、アッセイを行った。展開したELISPOTプレートを、ImmunoSpotソフトウェア、バージョン5.1を用いたCTL Immunospot S6 Ultimate-Vアナライザーで分析した。応答は、ARG2由来ペプチドで刺激したウェルおよび対照ウェル中の平均スポット数の差として報告する。
【0083】
ARG2特異的T細胞(エフェクター細胞)および標的細胞としての種々の免疫細胞または癌細胞(標的細胞)を用いたELISPOTアッセイを、ELISPOTウェルの底部に1~5×104個のエフェクター細胞(前述の通り)および1~2.5×104個の標的細胞(前述の通り)を播種して、セットアップした。標的細胞のペプチドパルスを、20μMペプチドとともに細胞のインキュベーションを1時間行うことにより実施し、次いで、2回洗浄し、非結合ペプチドを除去した。これらの細胞は、陽性対照とした。標的細胞なしで播種したエフェクター細胞を陰性対照とした。全ての条件は、三重反復または四重反復測定となるようセットアップした。
【0084】
細胞内サイトカイン染色アッセイ
細胞培養物の細胞内染色を、in vitroでのARG2由来ペプチド刺激の1週後に、PBMCに対して行った。アッセイのために、9×105個のPBMCを、BD GolgiPlug(商標)(最初の1時間のペプチド刺激後に加えた)の存在下で、ARG2由来ペプチドで5時間再刺激した(または、対照としてのペプチドなしでインキュベートした)。刺激した細胞を、表面マーカー(CD3、CD4、CD8)に対する蛍光標識抗体で染色し、その後、固定/透過処理および透過処理緩衝液(eBioscience社、カタログ番号00-5123-43)を用いて、製造業者の説明書に従って透過処理した。次いで、透過処理した細胞を、IFNγおよびTNFαに対する蛍光色素標識抗体で染色した。フローサイトメトリー分析を、FACSCanto(商標)II(BD Biosciences社)で行った。以下の抗体:IFNγ-APC、TNFα-BV421、CD4-PerCP、CD8-FITC、CD3-APC-H7、CD4-FITC、CD8-PerCP、および死細胞染色-FVS510(総てBD Biosciences社から)を、製造業者の説明書に従って使用した。標的細胞に応答したARG2特異的T細胞のサイトカイン産生を検出するための細胞内サイトカイン染色のために、5×105個のARG2特異的細胞を、2.5×105個の標的細胞とともに5時間インキュベートした。その後、最初の1時間のインキュベーション後にGolgiPlug(商標)を加えた。
【0085】
ARG2特異的T細胞培養物の確立
照射ARG2-1をロードした自家成熟樹状細胞で前立腺癌患者由来のPMBCを最初に刺激することにより、ARG2特異的T細胞培養物を確立した。翌日、IL-12(20U/ml)およびIL-7(40U/ml)を加えた。PBMCを、ARG2-1ペプチドをロードした自家DCで8日毎に再刺激し、次いで、翌日にIL-2(120U/ml)を加えた。4回の刺激後、IFNγ富化キット(MiltenyiBiotec社)を用いて、ARG2特異的T細胞を富化した。細胞を増殖させ、CD4+富化キット(MiltenyiBiotec社)を用いて、ARG2特異的T細胞をさらに富化した。
【0086】
in vitro転写mRNAの作製
ARG2(NM_001172.4)をコードするcDNAを合成し、BamHI制限部位を用いて、HLAクラスII標的プラスミドpGEM-sig-DC.LAMP(Dr.K.Thielemans,Medical School of the Vrije Universiteit Brusselのご厚意による提供)にクローン化した。pGEM-ARG2-DC-LAMPプラスミドを、SpeIを用いて線形化した後、in vitro転写のためのDNA鋳型として用いた(OM論文**参照)。
【0087】
全RNA抽出
細胞を回収し、PBS中で洗浄し、遠心分離によりペレット化した。RNA抽出まで、細胞ペレットを氷上で保存、または-80℃で凍結した。全RNAを、製造業者の説明書に従ってRNAeasy Plus Mini Kit(Qiagen社)を用いて抽出し、30μlのRNAフリー水中で最終溶出した。RNA濃度は、NanoDrop 2000 Spectrophotometer(Thermo Scientific社)で測定した。RNAを-80℃で保存した。
【0088】
RT-qPCR
全RNAを、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems社)を用いて逆転写した。各反応につき、1000ngのRNAを逆転写した。RT-qPCRのために、cDNAを1:5に希釈し、Roche Lightcycler 480 InstrumentでのTaqMan Gene Expression Assayを用いたRT-qPCR分析に供した。RT-qPCRは四重反復で実施し、データは、ハウスキーピング遺伝子RPLPOおよび対照サンプルの発現レベルに対して正規化したddCT法を用いて、分析した。増幅しなかった低濃度サンプルについては、Ctを40とした。逆転写酵素なしの対照(逆転写酵素なしでcDNA反応をセットアップ)は、特異的増幅の対照とした。この試験に使用したプライマーの一覧を、以下に示す。
【0089】
【0090】
エレクトロポレーション
mRNAについて、DCまたは癌細胞を、以前に記載のエレクトロポレーションパラメーターを用いて、ARG1-DC-LAMP mRNA、ARG2-DC-LAMP mRNAまたはeGFPをコードする対照mRNAでトランスフェクトした。簡潔には、細胞をOpti-MEM培地(Thermo Scientific社)中で2回洗浄し、最終細胞濃度9~12×106細胞/mlに調整した。350μlの細胞懸濁液を、氷上で5分間プレインキュベートした後、10μgのmRNAを加えた。次いで、細胞懸濁液を2mm(癌細胞)または4mm(DC)のギャップエレクトロポレーションキュベットに迅速に移し、電気穿孔した(OM論文を参照のこと)。エレクトロポレーションの後、細胞を、予め加温した培地を入れたディッシュに迅速に移し、5%CO2の加湿雰囲気下でインキュベートした後、異なる実験的分析に使用した。mRNAをトランスフェクトした細胞は、1時間静置した後、ELISPOTアッセイにセットアップしたか、または、一晩静置した後、細胞内サイトカイン染色アッセイにセットアップした。エレクトロポレーション効率は、GFPをトランスフェクトした細胞のFACS分析により、トランスフェクションの24時間後に測定した。
【0091】
siRNA媒介性ARG2サイレンシング
ARG2を標的とする3個一組のsiRNA二本鎖を、Ambion社から得た(ARG2 Silencer Select Validated siRNA、ID s1571、s1572、s1573)。siRNAをヌクレアーゼフリー水に懸濁して0.1nmol原液とし、-80℃で保存した。ARG2サイレンシング実験について、THP-1細胞を上記のようにエレクトロポレーションのために調製し、0.02nmol siRNA溶液のワーキング溶液10μlを、3個のsiRNAのそれぞれに加えた後、以前に記載したようにトランスフェクションした。トランスフェクションの直後、細胞を予め加温した培地に移し、1時間インキュベートした。次いで、トランスフェクトした細胞を2つに分割し、その細胞の半分に対して、サイトカインカクテル(400U/ml IL-4、1000U/ml GM-CSFおよび1000U/ml TNFα)を加えた。細胞を培地またはサイトカインカクテルを含有する培地において48時間インキュベートした後、それらを細胞内サイトカイン染色アッセイにセットアップした。RT-qPCRによるノックダウン効率を増加させるために、48時間後に細胞のRNAをペレット化した。
【0092】
HLA-DR発現のフローサイトメトリー分析
HLA-DR発現分析を、疑似(サイトカインなし)、IFNγ(100U/ml)またはサイトカインカクテル(400U/ml IL-4、1000U/ml GM-CSFおよび1000U/ml TNFα)で48時間刺激した細胞に対して行った。簡潔には、細胞を洗浄し、7-AAD(カタログ番号:51-68981E、BD Bioscience社)およびFITC結合マウス抗ヒトHLA-DR、DP、DQ(カタログ番号:5555581、BD Bioscience社)またはFITC結合マウスIgG1 Kアイソタイプ対照(FC)(カタログ番号:400109、BD Bioscience社)で、4℃にて30分間染色した。過剰な抗体を洗い流した後、細胞をFACSCanto(商標)II機器で分析した。HLA-DR発現レベルは、染色したMHCクラスII生細胞とアイソタイプ対照生細胞との間のMFIの差として示す。
【0093】
統計解析
ELISPOT応答は、分布によらないリサンプリング(distribution free resampling:DFR)法を用いて分析した。ELISPOT応答の統計解析を、Rスタジオを用いて行った。ARG2-1およびA2L2に対する応答(特異的IFNγ分泌細胞)の差を、ウィルコクソンの対のある符号順位t検定(Prism 8を用いた)を使用して、有意水準0.05として比較した。対照とArg2ワクチン接種群との間の平均腫瘍成長の差の統計解析を、Prism 8を用いた混合効果分析により行った。
【0094】
結果
ARG2に対する自発的免疫応答
実施例1において概説したように、ARG2-1は、選別されたドナーにおいて最も高く、かつ最も頻繁な応答を示すことが認められた。興味深いことに、ARG2-1は、ARG2のトランジット配列(aa1-22)の一部である。シグナルペプチド配列は、HLA分子の観点で、それらのプロセシングおよび提示に関して、プロテオソーム分解またはTAPに大部分が依存しない興味深い種類のペプチドエピトープを示す。さらに、ARG2のこの部分は、ARG1の対応する配列との配列重複をほぼ有さない。以下のアラインメントを参照のこと:
【0095】
したがって、ARG2-1を用いて、IFNγ ELISPOTアッセイによる33例のHDおよび19例の固形腫瘍を有する癌患者(黒色腫患者11例、前立腺癌患者7例、および乳癌患者1例)におけるARG2免疫応答に関するスクリーニングを行った。強い頻繁な応答が、健常ドナーおよび固形腫瘍を有する癌患者の両方において認められ、有意な応答が、選別されたドナーのおよそ75%において認められた(
図14Aを参照のこと。 この図中のいくつかのデータポイントは、
図8にも示されている)。
【0096】
ARG2は、急性骨髄性白血病(AML)を有する患者において認められた免疫抑制微小環境において重要な役割を果たすと報告されているため、AMLと診断された患者由来のPBMCにおけるARG2特異的T細胞の存在の可能性も、IFNγ ELISPOTにより検討した。この目的を達成するため、本発明者らは、AMLと診断された9例の患者から末梢血を採取した。採血およびその後のPBMC単離は、治療状況とは関連なく行ったため、試験対象の患者は、広く多様な疾患段階および治療段階を示す。有意な応答が、試験した患者9例中3例に認められ(
図14Aを参照のこと)、ARG2特異的T細胞はAML患者において実際に存在し得ることが示唆された。健常ドナーおよび固形腫瘍を有する癌患者におけるIFNγおよびTFNaの産生に対する細胞内サイトカイン染色は、ARG2-1に対するCD4+応答を主に示した(
図14B)。
【0097】
長鎖ARG2ペプチドエピトープの特性評価
20-および30merのARG1ペプチドと比較して、より長い(38-mer)ARG1ペプチドは、ARG1特異的T細胞の刺激に優れていることが、以前に実証されている。したがって、組織型に依存しない個体におけるARG2特異的T細胞の刺激に関して、最適な広域宿主のARG2由来エピトープを同定するために、ARG2-1周囲の配列のより長い部分に及ぶより長いARG2ペプチドエピトープを、HLA予測アルゴリズム(www.syfpeithi.deおよびcbs.dtu.dkにて入手可能)に基づいて設計した。これらの配列を、ヒトアルギナーゼ2の予測シグナル配列ならびにARG2-0、ARG2-1およびARG2-2の20mer配列のアラインメントを以下に示す。
【0098】
【0099】
これらの長鎖ARG2ペプチドが、ARG2応答を同定するために使用できるかどうかを試験するために、6例の健常ドナー由来のPBMCを、3個の長鎖ペプチドのそれぞれで1回ずつ刺激した。その後、PBMCを用いて、IFNγ ELISPOTにおける免疫応答についてスクリーニングを行った。
図15Aに示されるように、3個の長鎖ペプチド総てに対する免疫応答が同定されたが、33-mer A2L2が、試験したドナーにおいて3個の長鎖ペプチドのうち最も強く、かつ最も頻繁な免疫応答を示した。ARG2-1はA2L2内に含まれるため、より長いペプチドA2L2を検討し、それがARG2特異的T細胞をより効率的に刺激したかどうかを決定した。このため、6例の健常ドナーをARG2-1またはA2L2のいずれかで1回刺激し、次いで、IFNγ ELISPOTアッセイにおいてセットアップした。6例中5例のドナーにおいて、有意ではないものの(p=0.0625)、A2L2免疫応答はARG2-1応答より高く(
図15B)、両ペプチドは頻繁な免疫応答を誘発することが示唆された。
【0100】
A2L2の免疫原性を特徴付けるため、30例の健常ドナーおよび18例の癌患者(黒色腫患者14例、前立腺癌患者3例、乳癌患者1例)由来のPBMCを、IFNγ ELISPOTアッセイにより選別した。強い頻繁な応答が、健常ドナーおよび癌患者の両方の約80%において認められた(
図15C)。IFNγおよびTNFαの産生に対する細胞内サイトカイン染色は、ARG2-1に対して認められたものと類似するA2L2刺激に対するCD4+応答のみを示した(
図15D)。A2L2に対する免疫応答は、有意ではないものの(p=0.7038)、同じドナーにおけるARG2-1応答と比較して、平均して高かった(
図15E)。
【0101】
ARG2特異的T細胞の特性評価
ARG2に対する免疫応答をさらに特徴付けるために、ARG2特異的CD4+ T細胞培養物を作製した。これは、前立腺癌患者から単離した細胞を、ARG2ペプチドをロードした自家DCで繰り返し刺激して、特異的細胞を富化してすばやく増殖させることで得られた。T細胞培養物は、TNFαおよびIFNγに対する細胞内サイトカイン染色(
図16A)ならびにIFNγ ELISPOT(
図16B)において、ARG2およびA2L2の両方に対して高度に特異的であった。さらに、ペプチドで刺激したARG2特異的T細胞培養物からのIFNγ産生は、IFNγ ELISPOTにおいて、HLA-DR遮断剤の添加によって阻害されるが、HLA-DPまたはHLA-DQ遮断剤の添加では阻害されないことが認められた(
図16C)。ARG2特異的T細胞培養物の特異性を評価するため、ARG2特異的T細胞培養物の、ARG2の細胞内発現を伴う細胞に対する認識能およびそれらに対する反応性を調べた。この目的を達成するため、リソソーム区画に対するタンパク質を標的として、そのタンパク質をクラスII提示に指向させる、DC-LAMPシグナル配列と融合したARG2をコードするmRNAで、自家DCをトランスフェクトした。疑似のトランスフェクトしたDCと比較して、ARG2 mRNAをトランスフェクトしたDCに対して、より高い反応性が認められた(
図16D)。トランスフェクトした細胞のFACS分析は、90%超のトランスフェクション効率を示し、疑似およびmRNAをトランスフェクトしたDCのmRNA分析は、トランスフェクションの24時間後にARG2の発現が大幅に増加することを示した(データ示さず)。
【0102】
ARG2産生免疫細胞に対する反応性を示したが、ARG2特異的T細胞培養物の、異なる癌細胞に対する認識能および反応性を、IFNγ ELISPOTアッセイを用いて検討した。特異的T細胞培養物に関するドナーのHLAシークエンシング分析によって、本発明者らは、低い内因性ARG2発現を伴う3個のHLAマッチ(HLA-DR01:01)AML細胞株を選択することができ(OCI-AML2、THP-1およびMONO-MAC-1 データ示さず)、ARG2-1ペプチドでパルスして、IFNγ ELISPOT用の標的細胞としてその後使用することができた。高い内因性ARG2発現を伴うが、ARG2特異的T細胞培養物とHLAミスマッチである別のAML細胞株であるSet2を、陰性対照として含めた。OCI-AML2、THP-1およびMONO-MAC-1は、ARG2特異的T細胞により効率的に認識されたが(
図17A)、Set2は認識されなかった。2つの異なるHLA-DR特異的抗体を添加することにより、ARG2特異的T細胞のHLA-DR拘束性が確認された。これは、両HLA-DR遮断剤の添加で、ARG2-1パルスTHP-1細胞の認識が抑制されたことによる(
図17B)。
【0103】
THP-1細胞株は、AMLを有する患者の末梢血に由来する単球性細胞株である。THP-1細胞は、それらの周囲における特異的サイトカインの存在に依存したそれらの機能により、ある程度の可塑性を維持していると報告されている。IL-4およびIL-13は、ARG1の主要誘導因子であると報告されているが、ARG2に対するそれらの機能は周知ではない。さらに、THP-1細胞は、IL-4、GM-CSFおよびTFNαのサイトカインカクテル(本明細書において「サイトカインカクテル」という)による48時間の刺激時に、DC様の特徴を獲得すると報告されている。したがって、IL-4、IL-13またはサイトカインカクテルによるTHP-1細胞の刺激が、THP-1細胞におけるARG2発現を増大させるかどうかを調べた。サイトカインカクテルによる刺激で、ARG2発現の2倍超の誘導が認められたが、一方、IL-4およびIL-13は、ARG2発現レベルに対して大きな効果を示さなかった(
図17C)。次に、サイトカインカクテル刺激後のARG2発現の増大が、ARG2特異的T細胞からの免疫応答を誘発し得るかどうかを検討した。実際に、サイトカインカクテルは、IFNγ ELISPOTにおいて刺激されたTHP-1細胞の認識(
図17D)ならびに細胞内サイトカイン染色により検出されたTNFαおよびIFNγの産生(
図17E)をもたらすことが認められた。サイトカインによるTHP-1細胞の処理後に、ARG2発現のみが増大し、一方、ARG1発現は不変のままであった(
図17F)。サイトカインで刺激したTHP-1細胞に対する応答は、HLA-DR特異的抗体により遮断することができた(
図17G)。
【0104】
注目すべきことに、サイトカインカクテルで刺激したTHP-1細胞は、刺激していない細胞と比較して、形態を変化させ、より多くのコロニー形成、小さな突出および付着性の獲得が認められた(データ示さず)。重要なことに、サイトカインカクテルは、HLA-DR発現をアップレギュレートしなかった(データ示さず)。対照的に、IFNγによるTHP-1細胞の処理は、細胞表面上のHLA-DR発現を増大させるが(示さず)、ARG2発現は増大させず(
図17H)、IFNγで刺激したTHP-1細胞は、IFNγ ELISPOTアッセイにおいてARG2特異的T細胞により認識されなかった(
図17I)。
【0105】
MONO-MAC-1は、THP-1細胞と同様に、分化能またはサイトカイン刺激の影響を受ける能力を維持するAML細胞株である。THP-1細胞に関する観察所見と同様に、サイトカインによりMONO-MAC-1細胞におけるARG2発現を増大させることが可能であった(
図18A)。サイトカインカクテルによるMONO-MAC-1細胞の刺激は、MONO-MAC-1細胞の刺激していない細胞と比較して、HLA-DRの発現を増大させなかった(示さず)。さらに、IFNγで刺激したMONO-MAC-1細胞は、ARG2発現をアップレギュレートせず(
図18B)、サイトカインで処理したMONO-MAC-1細胞のみが、IFNγ ELISPOTにおけるARG2特異的T細胞により認識された(
図18C)。サイトカインカクテルで刺激したMONO-MAC-1は、THP-1細胞で認められたものと同様に、形態も変化させる(示さず)。
【0106】
ARG2発現依存性T細胞認識の概念をさらに検証するため、ARG2-DC-LAMP構築物を用いて、THP-1細胞をARG2 mRNAでトランスフェクトした。DC-LAMP配列は、成熟DCに対して特異的であると報告されているが、THP-1細胞は、DC様細胞に分化し得、このため、構築物は、THP-1細胞のトランスフェクションにも適用可能である。実際に、ARG2特異的T細胞培養物は、ARG2-DC-LAMP mRNAでトランスフェクトしたTHP-1細胞に対して反応することが認められた(
図19A)。さらに、反応性は、ARG1-DC-LAMP mRNAでトランスフェクトした細胞と比較して、ARG2-DC-LAMP mRNAでトランスフェクトした細胞に対して有意に高く(
図7A)、ARG2特異的T細胞の特異性が強調された。さらに、トランスフェクション前のサイトカインによる48時間の刺激は、mRNAのトランスフェクションまたはサイトカイン刺激のみを受けた細胞と比較して、免疫応答を増大させた(
図19A)。TNFαおよびIFNγの産生についての細胞内サイトカイン染色は、同様の傾向を示した(
図19B)。トランスフェクションの24時間後にGFP発現細胞のFACS分析を行い、エレクトロポレーション効率を評価したところ、効率的なトランスフェクションが示された(GFP+細胞が99%超)(データ示さず)。これと一致して、疑似細胞と比較して、ARG2およびARG1発現の大きな倍数増加が、それぞれARG2-DC-LAMP mRNAまたはARG1-DC-LAMP mRNAでのトランスフェクションの24時間後に認められた(データ示さず)。mRNAトランスフェクトTHP-1細胞におけるARG2発現レベルは、Set2細胞における内因性ARG2発現レベルと比較して高かった(データ示さず)。
【0107】
次に、本発明者らは、ARG2のsiRNA媒介性ノックダウンを用いて、T細胞の認識および活性化が、ARG2発現に依存的であったことをさらに証明した。3個のARG2特異的siRNAのプールでのTHP-1細胞のトランスフェクションは、効率的なARG2 KDをもたらした(
図19C)。TNFαおよびIFNγの産生を、siRNAでのトランスフェクションおよびサイトカイン刺激の48時間後の細胞内サイトカイン染色により検証した。本発明者らは、たとえ産生を完全には抑制できなかった場合でも、疑似+サイトカイン細胞と比較して、siRNA+サイトカイン細胞に対するARG2特異的T細胞からのTNFαおよびIFNγの両方の産生が減少することを観察した(
図19D)。細胞におけるARG2発現のRT-qPCRは、siRNA+サイトカイン細胞におけるARG2 KDも示したが、ARG2発現レベルは、siRNA KDのみで得られたレベルよりわずかに高い(
図19E)。
【0108】
実施例3 - マウスモデルにおけるワクチン原理の証明
アルギナーゼ2に対するワクチン接種の治療可能性を実証するために、マウスモデルを構築した。マウスアルギナーゼ2の、ヒトアルギナーゼ2に対する配列相同性は85%であるため、単純にヒト配列を使用することはできない。エピトープ予測サーバーを使用して、C57マウスに関するマウスアルギナーゼ2における可能性のあるエピトープ(H-2Kb、H2-Db)を検索した。
【0109】
H2-KbおよびH2-Dbへの結合について予測されたエピトープは、aa85およびaa182の周囲の2つのクラスターに認められた。これらを、オーバーラップを例示するためにアラインメントとして以下に示す。
【0110】
【0111】
各予測エピトープは、H2-KbまたはH2-Dbのいずれかに結合することが予測されるが、mArg2_P2は、2個の予測エピトープによりひとまとめになり、理論的には、H2-KbおよびH2-Dbの両方に結合することができる。mArg2_P6は、H2-KbおよびH2-Dbの両方に結合すると予測された。
【0112】
これらのペプチドをワクチン接種スクリーニングに用い(
図11における実験模式図参照)、3匹のC57マウスに対し、6個のペプチドのうち1個を皮下ワクチン接種した。1週後、マウスを屠殺し、脾臓をホモジナイズしてPBMCを得た。これらを用いてIFNγ ELISPOTをセットアップし、ワクチン接種に使用したペプチドおよび重複配列を有する他の予測エピトープペプチドの両方に対する応答に関してスクリーニングした。
【0113】
図12に示されるように、mArg2 P5(aa188-196)をワクチン接種したマウスは、最も強力かつ最も顕著な応答を示した。さらに、このペプチドを用いたワクチン接種実験を行った。
図13に示されるように、mArg2 P5をワクチン接種したマウスにおける応答が、mArg2 P5(aa188-196)およびP4(aa182-197)の両方に対して認められたが、一方、mArg2 P3(as191-198)に対しては、応答は認められなかったか、または弱い応答のみが認められた。このことは、主要なエピトープがaa188-196内に位置することを示唆している。しかしながら、全体的に、実験は、アルギナーゼ2ペプチドのワクチン接種は、in vivoにおける免疫応答を刺激できることを実証しており、一般的原理としてアルギナーゼ2のワクチン接種について治療可能性が検証された。
【0114】
実施例4 - マウスモデル - ルイス肺癌におけるワクチン原理のさらなる証明
材料と方法
ペプチドの設計 - 実施例3を参照のこと。
【0115】
細胞培養
腫瘍由来細胞株ルイス肺(LL2)を、ペニシリン、ストレプトマイシンおよび10%FBSを添加したDMEM中で培養した。0.25%トリプシン-EDTA(Gibco)でフラスコから剥離することにより、細胞を週2~3回継代した。
【0116】
動物実験
Department of Oncology,Herlev Hospitalの動物施設にて、動物実験を行った。マウスを用いた総ての実験は、Danish Animal Experimentation Councilにより審査および承認された。C57BL/6マウスの毎日のケアおよび飼育は、動物施設の動物飼育者により行われた。治療的ワクチン接種試験のために、C57BL/6マウスはTaconic社から購入した。
【0117】
腫瘍の注射
LL2細胞(5×105)を100μlの無血清培地に再懸濁し、雌C57BL/6マウスの右側腹部に皮下注射した。腫瘍容積をデジタルノギスにより測定し、腫瘍試験のエンドポイントは、腫瘍が閾値サイズ800mm3に達したとき、または腫瘍上に潰瘍が形成されたときとした。
【0118】
ペプチドワクチン接種およびマウスELISPOT
マウスArg2ペプチド(P1-P6)を、PepScanまたはSchaeferにより合成し、報告された溶解度に応じて、それぞれ2mMまたは10mMで超純水またはDMSOのいずれかに溶解した。溶解したペプチドは、その後、総容量100μLで投与される全ペプチド100μgの最適用量が得られるように、モンタニドアジュバント(50μL/マウス)(Seppic Inc.)で乳化した。乳化したペプチドのワクチン接種は、27G針を用いて、12~16週齢のC57BL/6マウスの基部または尾部または側腹部への皮下注射により行った。対照マウスに、総容量100μLの水およびモンタニド乳化剤を与えた。腫瘍を接種したマウスに対する治療的ワクチン試験に関しては、ワクチン接種は、それぞれ尾部の側面および左側腹部に、腫瘍接種後0および7日目に行った。エピトープのスクリーニング - および検証実験のために、ワクチンの単一用量を、マウスの右側腹部に投与した。1週間後、マウスを屠殺し、脾臓を回収した。脾臓を70μMフィルターを介して分解し、Red Blood Cell Lysis Buffer(Qiagen社)を用いて赤血球を溶解した。細胞を4回洗浄し、計数した後、ウェルあたり8×106個の細胞をマウスIFNγ ELISPOTアッセイのためにセットアップした。
【0119】
PD-1遮断抗体による処理
抗マウスPD-1(CD279)モノクローナル抗体を、BioXCell社から購入した(クローン:RMP1-14)。有効性試験のために、マウスに対し、200μl PBS中250μgのPD-1遮断抗体を腹膜内注射により投与した。マウスを、LL2接種後4日目から週3回抗PD-1で処理した。
【0120】
統計解析
ELISPOT応答は、Moodieら(参考文献)により記載の分布によらないリサンプリング(DFR)法を用いて分析した。ELISPOT応答の統計解析を、Rスタジオを用いて行った。ARG2-1およびA2L2に対する応答(特異的IFNγ分泌細胞)の差を、ウィルコクソンの符号順位t検定(Prism 8を用いた)を使用して、有意水準を0.05として比較した。対照とArg2ワクチン接種群との間の平均腫瘍成長の差の統計解析を、Prism 8を用いた混合効果分析により行った。
【0121】
結果
実施例1および2は、ARG2を発現する免疫細胞および癌細胞の両方が、ARG2特異的T細胞により特異的に認識される、in vitroにおける特異的T細胞に対する標的としてのARG2を示している。in vivoにおけるARG2特異的T細胞の潜在的な機能的効果を調べるため、実施例3では、さらに評価された関連するマウスArg2ペプチドエピトープを同定した。C57BL/6マウスを、ペプチド-モンタニドエマルション中でのマウスの皮下ワクチン接種による免疫応答について選別した。群あたり3匹のマウスに対し、6個の候補ペプチドのそれぞれをワクチン接種し、7日後、マウスを屠殺し、脾細胞を単離し、ex vivo mIFNγ ELISPOTアッセイにおいて分析した。P4をワクチン接種した3匹のマウスの全てにおいて、強い免疫応答が認められた(
図12を参照のこと。加えて、同じデータを
図20Aにも示す)。このことは、群あたりより多くのマウスを用いた類似の実験において、その後確認された(
図20B)。
【0122】
最も関連のある腫瘍モデルを同定するために、C57BL/6起源の異なる移植腫瘍のパネルにおいてArg2発現を評価した。本発明者らは、ルイス肺(LL2)腫瘍細胞により形成された腫瘍におけるArg2の最も一貫した高い発現を見出した(
図20C)。LL2腫瘍細胞でのC57BL/6マウスのチャレンジに次いで、2回のワクチン接種(腫瘍接種後0日目および7日目-
図2Dにおける処理スケジュールを参照のこと)は、疑似ワクチン接種対照群(対照)と比較して、Arg2ワクチン接種マウス(P4)において腫瘍成長の減少を引き起こした(
図20E)。腫瘍上に潰瘍が形成されたため、マウスを腫瘍接種後12日目に屠殺した。Arg2ワクチン接種が、抗PD1抗体の効果を誘導し得る様式でTMEを修飾し得るかどうか調べるために、本発明者らは、LL2モデルにおいて、mARG2(188-197)(P4と表される)に対するワクチン接種と抗PD1を組み合わせた。予想されたように、抗PD1抗体を用いた単独療法は、このモデルにおいて腫瘍成長に影響を及ぼさなかった。しかしながら、抗PD1とARG2ワクチン接種との組合せは、相加効果を示した(
図20FおよびG)。腫瘍上に潰瘍が形成されたため、マウスを腫瘍接種後12日目に屠殺した。
【0123】
実施例1~4の全体的な要約および考察
実施例は、ARG2は特異的T細胞の標的であり、よって、特異的ARG2特異的エフェクターT細胞は、ARG2発現免疫抑制細胞を標的とする潜在的な新規の手段として利用できることを示している。第1に、実施例では、全ARG2配列を網羅するペプチドライブラリーをスクリーニングすることにより、癌患者および健常ドナーの両方に天然に存在する末梢ARG2特異的T細胞を同定した。興味深いことに、ARG2は、末梢T細胞により頻繁に認識された複数のエピトープを含むことが発見された。ARG2に対する頻繁なT細胞応答は、ARG2の高い免疫原性を強調するものであり、ARG2を発現する癌を有する患者、例えば、前立腺癌またはAMLを有する患者におけるARG2特異的免疫応答をブーストする可能性を支持するものである。さらに、健常人における強い免疫応答は、ARG2特異的T細胞は、免疫系の自然な一部であり、免疫ホメオスタシスにとって重要であり得ることを示唆している。さらに、ARG2の見かけ上最も免疫原性の高い領域に由来するペプチドに対して反応した特異的CD4+T細胞を単離し、増殖させた。結果は、ARG2特異的T細胞は、実際にARG2発現骨髄性細胞を認識し、それらに対して反応することを示している。
【0124】
一般に、腫瘍は現在、免疫浸潤に応じて、以下のカテゴリーに分けられる;(i)まれな免疫浸潤物(いわゆる「冷たい」腫瘍において);(ii)悪性細胞との接触から排除される免疫浸潤物(いわゆる「除外された」腫瘍において);または(iii)強固な免疫抑制機序により抑制される大量の腫瘍浸潤物(いわゆる「熱い」腫瘍において)。重要な治療戦略は、「冷たい」および「除外された」腫瘍を「熱い」腫瘍に転換する臨床的組合せである。後者は一般に、免疫療法、特にチェックポイント遮断での疾患転帰の改善と関連しているからである。アルギナーゼの重要な特徴は、これらの腫瘍におけるアルギナーゼを発現する免疫抑制性の免疫細胞に起因する「除外された」腫瘍型におけるその発現である。ARG1は、IL-10およびTGF-βに加えて、IL-4およびIL-13などのTh2サイトカインに応答して、M2様マクロファージにおいてアップレギュレートされることがよく説明されている。対照的に、ARG2の調節は、非常に限定されて説明されているにすぎないが、興味深いことに、大量の非メチル化シトシングアニンモチーフ(CpG)を含有するリポ多糖およびオリゴデオキシヌクレオチドなどのToll様受容体リガンドは、マウスマクロファージにおけるARG2発現を誘導することが示唆されている。
【0125】
IL1βおよびTNFαが神経芽腫細胞においてARG2を誘導したことが、さらに最近説明された。重要なことに、本試験において、本発明者らは、サイトカインの混合物、すなわちIL4、GM-CSFおよびTNF-αが、悪性骨髄性細胞においてARG2を誘導することをさらに示している。したがって、ARG2は、除外された腫瘍においてのみならず、より「中間の」~「熱い」腫瘍においても、存在する環境によって誘導されると考えられる。したがって、ARG1またはARG2が誘導される微小環境は異なるため、ARG1およびARG2が、異なる細胞により、および腫瘍微小環境(TME)中の異なる腫瘍型において発現されることが認められていることは、意外なものではない。したがって、ARG1は主にMDSCおよびTAMにより発現されるが、ARG2は、種々の固形腫瘍細胞、AML芽球およびCAFにより発現されることが説明されている。したがって、ワクチン接種のためのARG1およびARG2の組合せは、TME中の異なる免疫抑制アルギナーゼ発現細胞を標的とするのに有益であり得、より多くの患者にとって利益となり得る。さらに、炎症を伝播する活性化M1マクロファージは、IFNγなどのTh1サイトカインに応答して生じることが、よく説明されている。重要なことに、多くの間質細胞は、最終分化細胞ではなく、炎症促進性刺激が与えられた免疫担当細胞に戻り得る。例えば、ワクチン接種によるアルギナーゼ特異的T細胞の活性化は、腫瘍部位においてTh1炎症を実際に引き起こすはずである。他の種類の抗制御性T細胞、例えば、IDOおよびPD-L1特異的炎症促進性T細胞が存在することが知られており、Th1炎症シグナル、例えば、IFNγは、このようなIDOおよびPD-L1特異的T細胞の自発的な増殖をもたらすことが報告されており、アルギナーゼとIDOまたはPDL1ベースのワクチンとの潜在的な相乗作用が示唆されている。このシナリオにおいて、 ADDIN REFMGR.CITE ADDIN EN.CITE.DATA ARG1/ARG2ワクチン接種は、腫瘍部位においてTh1炎症を誘導し得るか、あるいはアルギナーゼ発現細胞がリンパ球浸潤を防止する。次に、この効果は、IDOおよび/またはPD-L1を誘導し、これらの標的に由来するエピトープを認識する抗Tregによるさらなる標的化を可能にすると思われる。このため、異なる抗Treg標的抗原由来のエピトープの組合せは、ワクチン接種アプローチにおいて追加的(相加的)でありうる。同様に、ARG2特異的T細胞を活性化するARG2免疫調節ワクチンとチェックポイント遮断抗体との併用療法は、炎症性腫瘍においてのみ作用するチェックポイント遮断単独と比較して、療法に応答し得る患者の数を増やすはずである。したがって、アルギナーゼ発現細胞は、腫瘍部位におけるエフェクターリンパ球増殖を防止するため、癌を有する多くの患者において抗PD1療法の効果が欠如することの重要な理由となっている。本試験において、本発明者らは、ARG2が、よく説明されているPD-L1抵抗性腫瘍モデルルイス肺において実際に発現されることを示す。本発明者らは、ワクチン接種によるARG2特異的T細胞の活性化は、ルイス肺細胞成長を阻害し、最も重要なことに、抗PD1と相乗的に機能することを示す。このため、免疫調節ARG2ワクチン接種との組合せは、実際に、抵抗性ルイス肺細胞を、抗PD1療法に対して感受性にさせ得る。
【0126】
全体的に、実施例は、ARG2特異的T細胞が、免疫系の自然な一部として存在し、癌における免疫抑制から離れるようにバランスを傾けるために容易に利用され得ることを示している。ARG2に対する治療的ワクチン接種は、癌細胞に対する癌特異的免疫応答を呈すると思われる炎症性TMEの発生を促進するはずである。したがって、ARG2ベースのワクチンは、さらなる免疫療法、特にチェックポイント阻害剤と相乗的に機能する可能性が高い。実施例において使用したヒトARG2由来の最も免疫原性の高いペプチドは、微小環境のバランスを取り戻すのに重要であり得るARG2特異的T細胞応答を刺激するのに有効であり、単一アプローチ療法または癌細胞を標的とすることのみを目的とした現在の癌ワクチンと比較して、チェックポイント遮断剤などのT細胞増強薬の効果を増大させるはずである。
【0127】
配列
開始位置および終了位置は、特に断りのない限り、全長ヒトアルギナーゼ2(配列番号51)内の位置を示す。
【0128】
【0129】
本発明は、以下の実施形態を包含する。
[1](i)配列番号51の少なくとも21、22および23位のアミノ酸を含む、または(ii)配列番号51の180~229位から選択される、配列番号51の少なくとも9個の連続したアミノ酸の配列を含むまたはそれからなる、ヒトアルギナーゼ2(配列番号51)の免疫原性断片である、ポリペプチド。
[2](i)または(ii)に定義される配列番号51の最大15、20、25、30、35、40、45または50個の連続したアミノ酸を含むまたはそれらからなる、[1]に記載のポリペプチド。
[3]配列番号59、58、57、54、55、56、2、3、19、20、21、60または61のいずれか1つのアミノ酸配列を含むまたはそれからなる、[1]または[2]に記載のポリペプチド。
[4]9、10、15、20、25、30、35、40、45もしくは50アミノ酸の最大長を有する、および/またはC末端アミノ酸が対応するアミドに置き換えられている、[1]~[3]のいずれかに記載のポリペプチド。
[5][1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチドおよびアジュバントを含む、組成物。
[6]少なくとも1つの薬学上許容可能な希釈剤、担体または保存剤を含む、[5]に記載の組成物。
[7]前記アジュバントが、細菌DNAベースのアジュバント、油/界面活性剤ベースのアジュバント、ウイルスdsRNAベースのアジュバント、イミダゾキニリン、およびモンタニドISAアジュバントからなる群から選択される、[5]または[6]に記載の組成物。
[8]対象における疾患または病態を治療または予防する方法であって、[1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチドまたは[5]~[7]に記載の組成物を対象に投与することを含む、方法。
[9]前記疾患または病態が、アルギナーゼ2の不適当なもしくは過剰な免疫抑制機能を少なくとも部分的に特徴とする、および/または前記疾患もしくは病態が癌である、[8]に記載の方法。
[10]前記疾患または病態が癌であり、場合により、前記方法が、さらなる癌療法の同時投与または逐次投与をさらに含む、[8]または[9]に記載の方法。
[11]前記さらなる癌療法が、免疫系チェックポイント阻害剤、好ましくは、抗体である、[10]に記載の方法。
[12]前記抗体が抗PD1抗体である、[11]に記載の方法。
[13]前記癌が、腎臓癌、前立腺癌、乳癌、脳癌、頭頸部癌、もしくは小腸癌であるか、または結腸直腸癌もしくは胃癌であるか、または黒色腫であるか、または白血病、好ましくは、急性骨髄性白血病(AML)であり、場合により、前記癌が、免疫系チェックポイント阻害剤を用いた治療に抵抗性である、[8]~[12]のいずれかに記載の方法。
[14]アルギナーゼ2特異的T細胞を刺激する方法であって、前記方法が、細胞を[1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチドまたは[5]~[7]のいずれかに記載の組成物と接触させることを含み、場合により、前記細胞が、健常対象または癌患者から採取されたサンプル、場合により、腫瘍サンプル中に存在する、方法。
[15][1]~[4]のいずれかに記載のポリペプチドをコードする、核酸。
【配列表】