(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電磁誘導装置
(51)【国際特許分類】
H01F 30/10 20060101AFI20241226BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20241226BHJP
H01F 27/255 20060101ALI20241226BHJP
H02M 3/28 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H01F30/10 A
H01F30/10 C
H01F30/10 M
H01F27/24 E
H01F27/255
H02M3/28 Z
(21)【出願番号】P 2021530987
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(86)【国際出願番号】 FR2019052825
(87)【国際公開番号】W WO2020115402
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール・デレット
(72)【発明者】
【氏名】セルジュ・ロウド
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ソウプレマニエン
【審査官】秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-085004(JP,A)
【文献】特開昭59-044812(JP,A)
【文献】特開2004-207552(JP,A)
【文献】特表2010-535068(JP,A)
【文献】特開昭59-040513(JP,A)
【文献】特開昭59-022305(JP,A)
【文献】特開平06-151076(JP,A)
【文献】実開昭60-085819(JP,U)
【文献】特開2016-063050(JP,A)
【文献】特公昭55-028409(JP,B2)
【文献】国際公開第2013/061220(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0197673(US,A1)
【文献】米国特許第04547705(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 27/24
H01F 27/255
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- 2つの端部の間に延びる、円柱形の主ピア(210)と、前記主ピア(210)の前記2つの端部(211、212)をつなぐ、前記主ピア(210)に対して本質的に平行なプレート状の側方ピア(240)を含む二次セクション(220)とを備えるコア(200)と、
- 前記主ピア(210)の別々の部位に巻き付けられた一次コイル(300)と二次コイル(400)の2つのコイルであって、前記一次コイル(300)は、前記二次コイル(400)を通過することになる界磁束と呼ばれる磁束を発生させることができる、2つのコイルと
を備える電磁誘導装置(100)であって、
- 前記コア(200)が、前記二次セクション(220)から延びて前記一次コイル(300)と前記二次コイル(400)との間に挟まる少なくとも1つの舌状体(230)を形成するピックアップ手段をさらに備え、前記ピックアップ手段がピックアップ束と呼ばれる磁束の一部をピックアップすることで、前記二次コイル(400)を通過する前記界磁束から前記ピックアップ束が差し引かれ、前記一次コイル(300)に再ループ化するようにされ、
前記舌状体(230)が前記主ピア(210)から離れており、そのために、前記一次コイル(300)が形成する界磁束のうち、前記主ピア(210)の外側を通る界磁束の一部が前記ピックアップ束として前記舌状体(230)に入り、
前記側方ピア(240)の内面(241)が、前記主ピア(210)の外周面(213)に対向し、前記内面(241)が前記外周面(213)を少なくとも部分的に取り囲み、前記内面(241)が、前記外周面(213)の相似変換の形状を有する、電磁誘導装置(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの舌状体(230)が、前記主ピア(210)の前記両端部によって規定される方向と垂直な方向に同じく前記内面(241)に沿って延びるカラーを形成する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記二次セクション(220)が、本質的に互いに平行をなす2つのプレート(250、251)であって、前記主ピア(210)と前記側方ピア(240)を双方が一体をなすように保持するプレート(250、251)を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記一次コイル(300)が、電気的に直列に接続された2つの一次サブコイル(300a、300b)であって、前記二次コイル(400)の両側に配置された一次サブコイル(300a、300b)を備える、請求項1から
3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記2つの一次サブコイル(300a、300b)の各々が、同じ巻数の金属導体を有する、請求項
4に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの舌状体(230)が、前記二次コイル(400)と各々異なる一次サブコイルとの間に挟まれた第1の舌状体(230a)および第2の舌状体(230b)を含む、請求項
4または
5に記載の装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか一項に記載の装置を装備した変圧器。
【請求項8】
前記一次コイル(300)と前記二次コイル(400)が各々、第1のキャパシタンスおよび第2のキャパシタンスとそれぞれ呼ばれるキャパシタンスと直列に接続される、請求項
7に記載の変圧器。
【請求項9】
前記一次コイル(300)および前記第1のキャパシタンスによって形成される分岐路と並列に接続された第1のAC-ACコンバータと、前記二次コイル(400)および第2のキャパシタンスによって形成される別の分岐路と並列に接続された第2のAC-DCコンバータとをさらに備える、請求項
8に記載の変圧器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導装置に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、直列につながれた2つのインダクタンスの振る舞いを一次コイルに与えるピックアップ手段を備えた電磁誘導装置に関する。
【0003】
本発明による電磁誘導装置は、有利には電源変圧器において、特に自動車分野の電源変圧器において、より詳細には電気自動車両の充電用として実装される。
【背景技術】
【0004】
電気車両は、数年前から飛躍的な進歩を遂げている。
【0005】
そうした電気車両は、車両の駆動に必要な電力を供給するバッテリを実装しており、その充電はその車両の段階で行われる。
【0006】
交流電流が供給される充電端子レベルで行われるこの充電には、AC-DCコンバータの使用が必要となる。
【0007】
しかし、充電端子においてAC-DCコンバータが占めると考えられる体積を考慮して、メーカーはそれらを自動車両に組み込もうと考える。
【0008】
この解決法は、AC-DCコンバータと自動車両の車載エレクトロニクスとの間のインターフェースを取ることを計画することを可能にする。
【0009】
より具体的には、AC-DCコンバータと車両の各種機器、特にバッテリ管理システムとの間の適した通信手段による情報交換を実装することができる。
【0010】
AC-DCコンバータは、「スマート充電」や「グリッドコード」適合化のための測位など、各種サービスを行うための外部とのコネクティビティの恩恵にあずかることができる。
【0011】
そのため、AC-DCコンバータは、たとえば、比較的高い周波数で動作する磁性コアを実装することなどによって、個々の制約条件に対応すること、特に小型であることが好ましい。
【0012】
また、AC-DCコンバータを双方向化すること、それによって電気車両のバッテリによるエネルギーの貯蔵および/または配給に道を開くことが計画される。
【0013】
こうしたアレンジにより、エネルギーの生成過剰期および/または消費ピーク期に当該の車両が接続される電気系統の不十分さに部分的に対処することは可能であろう。
【0014】
しかし、双方向AC-DCコンバータには、コンバータをより静音にすることができる特別なアレンジが必要である。
【0015】
そして最後に、提案されるアレンジは、電流変換時の電力損失を抑える形で効率の問題にも対処するものでなければならない。
【0016】
そこで、少なくとも2つのトポロジー(本明細書末尾に示した文献[1]で挙げられているもの)のコンバータで、それぞれLLCタイプ(
図1に示した共振コンバータ)、DABタイプ(「Dual Active Bridge」の略で、
図2に示したもの)と呼ばれるものが提案された。
【0017】
LLCトポロジーは、特に共振タイプの段(英米系の技術用語で「共振タンク」)を組み込んだ上で、「直列」につないだキャパシタンス2Cのコンデンサとインダクタンスを組み合わせた変圧器を備える。
【0018】
インダクタンスとコンデンサは、スイッチの公称スイッチング周波数に近い周波数で共振動作するように調整される。
【0019】
変圧器はまた、入力回路と負荷回路のガルバニック絶縁、および負荷の端子に加えられる電圧の値の適合化が可能となるようにアレンジされる。
【0020】
変圧器はとりわけ、入力電圧と負荷電圧の比に等しい巻数の比nで磁性コアの周りに形成された一次コイルおよび二次コイルを備える。
【0021】
平衡LLC構成では、直列共振要素は同じ巻線の両側に二重化される。LLCトポロジーの場合、一次コイルの巻数およびコアの幾何学形状の関数である変圧器Lmの励磁インダクタンスが正確に規定され、コンバータの利得が調整される。
【0022】
一方、DABトポロジーは、変圧器の両側に配置されたキャパシタンスゼロの分岐を備える。直列のインダクタンスは、パワーを転移させる役割を果たす。
【0023】
DABトポロジーでは、変圧器の励磁インダクタンスが所与の値にしばられることはなく、良好な利用率が得られるように十分に高いことだけが求められる。しかし、この双方向トポロジーでは、変圧器と直列に接続された4つのインダクタンスを可能な限り対称形の回路が得られるように実装することで、共通モードの外乱を入力側のフィルタリングの小型化を実現するごく低いレベルに制限することが好ましい。
【0024】
LLCトポロジーおよびDABトポロジーで変圧器と直列につながれるインダクタンスは、典型的には1~10μH程度で、従来技術では変圧器の外に配置されたディスクリート型の構成要素である。
【0025】
こうした構成要素は一般に大きな体積を占めるため、変圧器内部に組み込むことでその減容を図ることが目指される。
【0026】
本明細書末尾に挙げた文献[2]は、
図3に示すように、変圧器の自然な漏洩インダクタンスを直列インダクタンスとして利用することを提案している。
【0027】
漏洩インダクタンスとして特徴づけられるのは、特に、変圧器の一次コイルによって生じた後、二次コイルを通らない分の磁束などである。
【0028】
この漏洩インダクタンスは、変圧器の理想的でない動作の代表格であり、当該の構成要素の周りに磁束の一部が分布する原因となるものである。
【0029】
漏洩インダクタンスは、一般に弱く(1マイクロヘンリー(μH)未満)、その評価を見越すことは困難である。
【0030】
そのため、漏洩インダクタンスの値を高めるため、文献[3]では第1のコイルと第2のコイルとの間にスペースを設けることが提案されている。
【0031】
しかし、このアレンジは、変圧器に単一の直列インダクタンスしか作り出すことはできず、したがってLLCまたはDABの平衡構成の中に実装することはできない。
【0032】
一方で、第1のコイルと第2のコイルとの間に間隔が生じることによって、変圧器の体積を増大させがちである。
【0033】
さらに、コイルの周りの磁気漏洩があるため、フーコー電流が誘導されないように付近の導体の存在が禁じられてコイルの配置が制約を受けることから、コンバータは体積がかなり増すことになる。
【0034】
本明細書末尾に挙げた文献[3]は、
図3に示すように、コアの周りに追加のコイルを導入することを提案している。
【0035】
とりわけ、この追加のコイルは、主たる磁束と同じまたは異なる方向の磁束の流れによって、コア内に組み込まれたインダクタンスを作り出すためのものである。
【0036】
コアの体積の増大は、追加のコイル1つだけを考える限りは限定的なものにとどまる。
【0037】
しかし、この構成は、直列インダクタンスを実現する上で、長さおよび断面積に関する磁気回路の調整という点ではあまり柔軟性がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
そのため、本発明の目的は、制御された漏洩インダクタンスをもつ変圧器であって、目立った体積の増大を招くことのない変圧器を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0039】
本発明の目的は、
- 2つの端部の間に延びる主ピアと、主ピアのその2つの端部をつなぐ二次セクションとを備えるコアと、
- 主ピアの別々の部位に巻き付けられた一次コイルと二次コイルの2つのコイルであって、一次コイルは、二次コイルを通過することになる界磁束と呼ばれる磁束を発生させることができる、2つのコイルと
を備える電磁誘導装置であって、
- コアが、二次セクションから延びて主コイルと二次コイルとの間に挟まる少なくとも1つの舌状体を形成するピックアップ手段をさらに備え、ピックアップ手段がピックアップ束と呼ばれる磁束の一部をピックアップすることで、第2のコイルを通過する界磁束から前記ピックアップ束が差し引かれ、第1のコイルに再ループ化するようにされた、電磁誘導装置によって果たされる。
【0040】
ある実施形態によれば、舌状体が主ピアから離れており、そのためにピックアップ束が主ピアの外を循環する界磁束の一部に限定される。
【0041】
ある実施形態によれば、二次セクションは、主ピアに対して本質的に平行な側方ピアを含む。
【0042】
ある実施形態によれば、側方ピアは主ピアの外周面に対向する内面を有し、有利には内面は外周面を少なくとも部分的に取り囲み、さらに有利には、内面は外周面をならうように少なくとも部分的に取り囲む。
【0043】
ある実施形態によれば、該少なくとも1つの舌状体は、主ピアの両端部によって規定される方向と垂直な方向に同じく内面に沿って延びるカラーを形成する。
【0044】
ある実施形態によれば、二次セクションは、本質的に互いに平行をなす2つのプレートであって、主ピアと側方ピアを双方が一体をなすように保持するプレートを備える。
【0045】
ある実施形態によれば、主ピアは円柱形である。
【0046】
ある実施形態によれば、一次コイルは、電気的に直列に接続された2つの一次サブコイルであって、二次コイルの両側に配置された一次サブコイルを備える。
【0047】
ある実施形態によれば、2つの一次サブコイルの各々が、同じ巻数の金属導体を有する。
【0048】
ある実施形態によれば、該少なくとも1つの舌状体は、二次コイルと各々異なるサブコイルとの間に挟まれた第1の舌状体および第2の舌状体を含む。
【0049】
本発明は、本発明による電磁誘導装置を装備した変圧器にも関する。
【0050】
ある実施形態によれば、第1のコイルと第2のコイルは各々、第1のキャパシタンスおよび第2のキャパシタンスとそれぞれ呼ばれるキャパシタンスと直列に接続される。
【0051】
ある実施形態によれば、変圧器は、第1のコイルおよび第1の容量性リアクタンスによって形成される分岐路と並列に接続された第1のAC-ACコンバータと、第2のコイルおよび第2の容量性リアクタンスによって形成される別の分岐路と並列に接続された第2のAC-DCコンバータとをさらに備える。
【0052】
その他の特徴および利点は、添付の図面を参照しながら限定的でない例として行う本発明による電磁誘導装置に関する以下の説明によって明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【
図1】現行技術において既知のLLCトポロジーの変圧器のディスクリート型構成要素の概略図である。
【
図2】現行技術において既知のDABトポロジーの変圧器のディスクリート型構成要素の概略図である。
【
図3】現行技術において既知のコアのセクションの周りに形成された同心状の一次コイルおよび二次コイルの概略図である。
【
図4a】本発明による1つだけのピックアップ手段を備える電磁誘導装置の概略図であって、特にコアを一次コイルおよび二次コイルとともに横断面図で示した図である。
【
図4b】本発明による2つのピックアップ手段を備える電磁誘導装置の概略図であって、特にコアを一次コイルおよび二次コイルとともに横断面図で示した図である。
【
図6a】断面斜視図による装置の概略図であって、特にコイルなしの装置を示した図である。
【
図6b】断面斜視図による装置の概略図であって、特にコイル付きの装置を示した図である。
【
図7】本発明の枠組みのもとで実装されると考えられる舌状体の幾何学的詳細を、
図6aを援用して示した図である。
【
図8a】表2と関連させてコアの幾何学的特徴を示したコアの概略図である。
【
図8b】表2と関連させてコアの幾何学的特徴を示したコアの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、強磁性体コアの同じ主ピアの2つの異なるセクションに巻き付けられた一次コイルと二次コイルとを備える電磁誘導装置に関する。
【0055】
強磁性体コアは、主ピアの2つの端部をつなぐ二次セクションをさらに備える。
【0056】
本発明による装置は、一次コイルのセクションから形成される、漏洩インダクタンスと呼ばれるインダクタンスを実装する。
【0057】
漏洩インダクタンスは、二次セクションから延びて一次コイルと二次コイルとの間に割り込む舌状体を有するピックアップ手段を介して特に形成される。
【0058】
図4aに、本発明による電磁誘導装置100を見ることができる。
【0059】
装置100は、特にコア200、より具体的には強磁性体材料で製作されたコアを備える。
【0060】
強磁性体材料は焼結することができ、特にMnZn、NiZnの中から選択される少なくとも1つの材料を含むことができる。
【0061】
コア200は、主ピア210および二次セクション220を備える。
【0062】
「ピア」とは、延伸した形状を有するセクションのことをいう。すなわち、ピアは棒状をなすことができ、特に円柱形の横断面の棒の形をなすことができる。
【0063】
主ピア210は、その2つの端部211と212との間に長手方向に延びる。
【0064】
二次セクション220は、主ピアの2つの端部211および212をつないで磁気ループを形成する。
【0065】
「磁気ループ」とは、コア内を循環すると考えられる磁束がたどる道筋をいう。磁気ループは閉じたものであると理解される。
【0066】
本発明による装置は、一次コイル300と二次コイル400をさらに備える。
【0067】
本発明によるコイルは、物体の周りに巻き付けられた巻数Nの導体を含む。
【0068】
一次コイル300と二次コイル400は、主ピア210の別々の部位に巻き付けられる。
【0069】
また、一次コイル300は、特にそこに電流が流れるときには、二次コイル400を通過することになる界磁束と呼ばれる磁束(
図4aおよび
図4bのループ「M」)を発生させることが想定される。
【0070】
また、一次コイル300は、一次コイル300と主ピア210との間に円環状の空間310が挟まるように、主ピア210の周りに巻き付けられ得る。
【0071】
円環状の空間310は、一次コイル300の長さにわたって延び、側方を一次コイル300の内面と主ピア210の表面とによって画定される。
【0072】
コイルの長さは、コイルがその周りに巻き付けられるピアの長さ方向の寸法に当たる。
【0073】
二次セクション220は、主ピア210に対して本質的に平行な側方ピア240を含むことができる。
【0074】
側方ピア240は、主ピア210の外周面213に対向する内面241を有する。
【0075】
特に有利には、内面241は、外周面213を少なくとも部分的に取り囲む(
図6aおよび
図6b)。
【0076】
同じく有利には、内面241は、外周面213をならうように少なくとも部分的に取り囲む。
【0077】
「ならうように取り囲む」とは、2つの表面の一方が相似変換による他方の像であることをいう。
【0078】
二次セクション220は、本質的に互いに平行をなす2つのプレート250、251であって、主ピア210と側方ピア240を双方が一体をなすように保持するプレートをさらに備えることができる。
【0079】
主ピア210は円柱形であることができる。
【0080】
本発明によれば、コア100は、側方ピア230から延びて一次コイル300と二次コイル400との間に挟み込まれる少なくとも1つの舌状体230を形成するピックアップ手段をさらに備える。
【0081】
舌状体は一次コイルと二次コイルとの間に挟み込まれることから、二次コイルが一次コイルによって発生すると考えられる界磁束にさらされることは、改めて指摘するまでもなく、理解されるところである。
【0082】
「舌状体」とは、二次セクションの表面から延びる何らかの形状物、特に形材をいう。ただし、本発明によれば、この形材はあらゆる種類の形状をとることができる。
【0083】
その場合、舌状体230は、
図7に示すように、本質的に互いに平行で、主ピア210に対して垂直な2つの面231および232を有することができる。2つの面231および232は、周縁233によって連結される。
【0084】
2つの面231および232の距離は、舌状体の厚さEを規定する。
【0085】
周縁233は、内面から延びる2つの側方セクション233aおよび233bであって、外周面213に対向する終端セクション233tと呼ばれるセクションによって連結された、側方セクションを有する。
【0086】
有利には、終端セクション233tは外周面213から離れている。換言すれば、舌状体230は主ピア210とは接しない。
【0087】
やはり有利には、終端セクション233tは外周面にならう。
【0088】
舌状体は、一次コイル300と二次コイル400との間に挟まることから、ピックアップ束(
図4aおよび
図4bにおけるループ「P」)と呼ばれる界磁束の一部を偏らせて、二次コイルを通過しないようにする。
【0089】
舌状体230は主ピア210から離れていることから、ピックアップ束は、主ピアの外を循環する界磁束の一部、特に円環状の空間310を循環する界磁束に限定される。
【0090】
ピックアップ束は、界磁束と同様に磁気ループPを形成する。しかし、このループPが順次循環するのは、舌状体、二次セクション、そして一次コイルである(
図4aおよび
図4b)。
【0091】
すなわち、ピックアップ手段の実装により、一次コイル300によって形成されるインダクタンスを直列の2つのインダクタンスに切り換えることができる。より詳細には、ピックアップ手段の作用により、一次コイル300は、それぞれ漏洩インダクタンスLrおよび励磁インダクタンスLmと呼ばれる直列の2つのインダクタンスの振る舞いを示す。
【0092】
その場合、励磁インダクタンスは、特に二次コイルの巻数によって、一次コイルレベルの入力電圧と二次コイルレベルの出力電圧との間の変圧比(すなわち利得)を決定する。一方、漏洩インダクタンスは、電磁エネルギーを貯蔵し、必要なときにそれを放出することができる。
【0093】
図4aの装置の等価回路図を
図5aに示す。この回路図にはとりわけ、漏洩インダクタンスLrと直列につながれた励磁インダクタンスLmが含まれる。
【0094】
このアレンジは、装置の体積をさほど増大させることなく、励磁インダクタンスと直列につながれた漏洩インダクタンスを一次コイルから作り出すことができるという意味において非常に有利である。
【0095】
漏洩インダクタンスは舌状体の幾何学的特徴に依存する。
【0096】
図4bは、
図4aを参照して説明した装置の特徴を基本的にすべて採り入れた電磁誘導装置の有利な変形態を示したものである。
【0097】
この変形態によれば、一次コイル300は、電気的に直列に接続された2つの一次サブコイル300aおよび300bであって、二次コイル400の両側に配置された一次サブコイルを備える。
【0098】
特に有利には、2つの一次サブコイル300aおよび300bは、各々が同じ巻数の金属導体を有する。
【0099】
引き続き同じ変形態によれば、電磁誘導装置は、それぞれ第1の舌状体230aおよび第2の舌状体230bと呼ばれる2つの舌状体230を具備する。
【0100】
第1の舌状体と第2の舌状体は、各々が二次コイル400と互いに異なる一次サブコイルとの間に挟まれる。
【0101】
2つの舌状体230aおよび230bの実装により、2つの一次サブコイルの各々によって発生する界磁束の一部分のピックアップが可能になる。
【0102】
また、装置は、主ピアに対して垂直な対称面に関して対称であることができる。この構成では、磁束のピックアップもまた対称形であり、それによって共通モードの障害を制限することができる。
【0103】
図4bの装置の等価回路図を
図5bに示す。この回路図にはとりわけ、2つの漏洩インダクタンスLr/2と直列につないだ励磁インダクタンスLmが含まれる。
【0104】
また、いずれの変形態にせよ、コアは2つの部品のアレンジ、特に第2の変形態の枠組みにおける同じ2つの部品のアレンジに対応したものであることができる。
【0105】
以下では、
図5aを参照して説明した装置の設計例を紹介する。
【0106】
表1は、共振周波数が500kHzで、本発明による電磁誘導装置を備える「LLC」タイプの変圧器の仕様を特にまとめたものである。
【0107】
【0108】
表2は、表1にまとめられた仕様に従うことのできる電磁誘導装置の特徴をまとめたものである(「A」、「B」、「D
1」、「D
2」、「E」、「F」、「H」の寸法箇所は
図8aおよび
図8bに示すとおり)。
【0109】
【0110】
本発明によるコアの設計は、射出成形法(英米の技術用語で「PIM」、すなわち「Powder Injection Molding(粉末射出成形)」)の利用が可能である。この技法は、製品の大量生産に非常に適している。
【0111】
射出成形ではまず、マスターバッチ(英米の技術用語で「feedstock(原材料)」)を形成するステップが行われる。
【0112】
マスターバッチには、最終製品を形成するための有機材料(または高分子バインダー)と無機粉体(金属またはセラミックス)の混合物が特に含まれる。
【0113】
マスターバッチは、当業者には周知の技術を用いた射出成形機に注入される。射出成形機は、注入された重合体をキャビティ内で粉体とともに溶かし、その粉体に所望の形状を与えることができる。
【0114】
そうして溶解したマスターバッチは冷却され、射出成形機によって与えられる形状に固化する。
【0115】
マスターバッチによって形成された成形物は、型から取り出され、脱バインダー処理を行って有機材料が取り除かれる。
【0116】
次いで、部品は焼結によってさらに安定化させることができる。
【0117】
本発明は、本発明による電磁誘導装置を装備した変圧器(とりわけ「LLC」タイプの変圧器)にも関する。
【0118】
特に、第1のコイル300と第2のコイル400の各々は、第1の容量性リアクタンスおよび第2の容量性リアクタンスとそれぞれ呼ばれる容量性リアクタンスと直列に接続される。
【0119】
変圧器は、第1のコイルおよび第1の容量性リアクタンスによって形成される分岐路と並列に接続された第1のAC-ACコンバータと、第2のコイルおよび第2の容量性リアクタンスによって形成される別の分岐路と並列に接続された第2のAC-DCコンバータとをさらに備える。
【0120】
[1] Inoue, “A Bidirectional DC-DC Converter for an Energy Storage System With Galvanic Isolation”, IEEE Transactions on Power Electronics, Vol.: 22, No.: 6 , 2007,
[2] Mingkai Mu et al., << Design of Integrated Transformer and Inductor for High Frequency Dual Active Bridge GaN Charger for PHEV >>, IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition, pages 579-585, 15-19 March 2015,
[3] US 6,320,490.
【符号の説明】
【0121】
100 電磁誘導装置
200 コア
210 主ピア
211、212 端部
213 外周面
220 二次セクション
230 舌状体
232 周縁
240 側方ピア
241 内面
250 プレート
300 一次コイル
310 円環状の空間
400 二次コイル