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特許7611148疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防における使用のための化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防における使用のための化合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/22 20060101AFI20241226BHJP
   A61K 31/165 20060101ALI20241226BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C07C233/22
A61K31/165
A61P25/04
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021543276
(86)(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-14
(86)【国際出願番号】 EP2020051528
(87)【国際公開番号】W WO2020152226
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】19153315.7
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521324665
【氏名又は名称】ノヴァレメド リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カプラン, エリ
(72)【発明者】
【氏名】ヘット, ロベルト
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-500831(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0086910(US,A1)
【文献】特表2007-531717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 233/22
A61K 31/165
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:
【化3】

を有する化合物の多形体であって、
ここで前記多形体は、19.0±0.2 °2θにおけるピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有し、ここで、前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、11.25±0.2、17.38±0.2、17.57±0.2、20.74±0.2、20.91±0.2、22.42±0.2および23.30±0.2 °2θにおけるピークをさらに含む、多形体。
【請求項2】
前記多形体は、105℃~110℃の範囲の融点を有する、請求項1に記載の多形体。
【請求項3】
式:
【化4】

を有する化合物の多形体であって、
ここで前記多形体は、107℃~108℃の範囲の融点を有する、多形体。
【請求項4】
前記多形体は、19.0±0.2 °2θにおけるピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する、請求項3に記載の多形体。
【請求項5】
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、11.25±0.2、17.38±0.2、17.57±0.2、20.74±0.2、20.91±0.2、22.42±0.2および23.30±0.2 °2θにおけるピークから選択される1つまたはこれより多くのピークをさらに含む、請求項に記載の多形体。
【請求項6】
前記多形体は、106℃~109℃の範囲の融点を有する、請求項1または2に記載の多形体。
【請求項7】
前記多形体は、107℃~108℃の範囲の融点を有する、請求項6に記載の多形体。
【請求項8】
前記多形体は、100J/g~140J/gの範囲内の融解エンタルピーを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の多形体。
【請求項9】
前記多形体は、110J/g~130J/gの範囲内の融解エンタルピーを有する、請求項8に記載の多形体。
【請求項10】
前記多形体は、115~125J/gの範囲内の融解エンタルピーを有する、請求項9に記載の多形体。
【請求項11】
医薬としての使用のための組成物であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の多形体を含む組成物。
【請求項12】
疼痛の処置または予防における使用のための組成物であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の多形体を含む組成物。
【請求項13】
炎症および/または自己免疫の処置または予防における使用のための組成物であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の多形体を含む組成物。
【請求項14】
疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防における使用のための薬学的組成物であって、前記組成物は、薬学的に有効な量の、請求項1~10のいずれか1項に記載の多形体を、必要に応じて、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤と一緒に含む、薬学的組成物。
【請求項15】
前記組成物は、単位投与形態として製剤化され、0.1~500mgの前記多形体を含む、請求項14に記載の薬学的組成物。
【請求項16】
経口投与される、請求項14または15に記載の薬学的組成物。
【請求項17】
疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または防止を必要とするヒトまたは非ヒト動物患者において疼痛、炎症および/または自己免疫を処置または防止するための、請求項1~10のいずれかに記載の少なくとも1つの多形体を含む組成物または請求項14もしくは15に記載の薬学的組成物。
【請求項18】
前記多形体の0.1mg~15gの1日用量で投与されることを特徴とする、請求項17に記載の組成物または薬学的組成物。
【請求項19】
経口投与されることを特徴とする、請求項17または18に記載の組成物または薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドまたは同義名N-[2-(4-ヒドロキシ-フェニル)-1-(2-ヒドロキシ-プロポキシメチル)-エチル]-3-フェニル-プロピオンアミドの多形体、ならびに疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防に関し、疼痛、炎症および/または自己免疫を処置または防止する方法、ならびにヒトおよび/または非ヒト動物において疼痛(好ましくは侵害受容性または神経障害性)、炎症および/または自己免疫の処置または予防のための医薬の製造におけるこの多形体の使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
化合物2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドは、US 7,754,771において開示されており、疼痛および炎症の処置または予防におけるその使用は、WO 2009/1099850、WO 2011/030105、US 2011/0086910およびWO 2013/084238に記載されている。この化合物に関する以前の開示は、全4種のエナンチオマーおよびジアステレオマー、すなわち、(S,S)、(S,R)、(R,R)および(R,S)を含むラセミ体に関連した。WO 2013/084238は、アミドに隣接するキラル位置においてSエナンチオマーを含むラセミ体が、特に有利な特性を示すことに言及した。
【0003】
疼痛は、種々の刺激条件に対する多面的または多次元的、経験的応答である。疼痛は、International Association for the Study of Pain(IASP)によって「実際のもしくは潜在的な組織損傷と関連する不快な感覚的および感情的な体験、またはこのような損傷に関して説明される」と定義される。
【0004】
動物における疼痛はしばしば、侵害受容、すなわち、侵害受容器の刺激から生じる神経系における活動の結果である。神経障害性疼痛は、これが疼痛の感覚を生じる神経への損傷を伴うという点において侵害受容性疼痛とは異なる。中枢性疼痛において、この疼痛は、病変の何らかの形態から脳において発せられる。ときおり疼痛は、心因性、すなわち、精神的な病気によって引き起こされることもある。
【0005】
疼痛は、急性または慢性であり得る。急性疼痛は、通常、原因の中でもとりわけ、軟組織損傷、感染および/または炎症によって引き起こされる。急性疼痛は、身体の傷害または機能不全の後に警告を発するように働く。慢性疼痛は、明らかな原因がないこともあり、発生している病気または不均衡によって引き起こされることもある。慢性疼痛は、疼痛の疾患として定義される;その起源、継続時間、強度および具体的症状は変動し得る。
【0006】
生理学的な疼痛の経験は、供給源および関連する侵害受容器に従ってグループ分けされ得る。皮膚疼痛は、皮膚または表在性組織に対する傷害によって引き起こされる。皮膚侵害受容器は、皮膚の直下に終止し、神経終末が高度に集中していることから、短い継続期間の、十分に定義された局部的な疼痛を生じる。皮膚疼痛を生じる傷害の例としては、紙での切り傷、小さな切り傷、小さな(第1度)熱傷および裂傷が挙げられる。体性痛は、靱帯、腱、骨、血管および神経に端を発する。それは、体性侵害受容器で検出される。これらの領域における疼痛受容体の欠乏は、皮膚疼痛より長い継続期間の鈍く、所在のはっきりしない疼痛(dull,poorly-localised pain)を生じる;例としては、捻挫および骨折が挙げられる。筋筋膜性疼痛は、通常、筋、腱および筋膜の中のトリガーポイントによって引き起こされ、局所的であってよいし、関連していてもよい。内臓痛は、身体の内臓または器官に端を発する。内臓の侵害受容器は、身体の器官および内腔の内部に位置する。これらの領域における侵害受容器のさらにより大きな欠乏は、通常はより痛みの大きい、かつ体性痛より長い継続期間にわたる疼痛を生じる。内臓痛は、所在を突き止めることが極めて困難であり、内臓の組織に対するいくらかの損傷は「関連」痛を示し、その場合、感覚は、傷害部位と完全に無関係の領域に位置する。幻肢痛は、関連痛の1タイプであり、失われてしまっているか、または個体が物理的シグナルをもはや受容しない肢からの疼痛の感覚である。神経障害性疼痛は、神経組織自体に対する傷害または疾患の結果として起こり得る。これは、感覚神経が正確な情報を視床に伝達する能力を混乱させ得、従って、疼痛の明らかな心理的原因が存在しないとしても、脳が痛覚刺激を解釈する。
【0007】
急性疼痛は通常、その原因を取り除くための医薬または適切な技術およびその疼痛感覚を制御するための医薬または適切な技術(一般には、鎮痛薬)で同時に処置される。
【0008】
鎮痛薬は、3つのカテゴリーに分類される:オピオイド(麻薬性)鎮痛薬、非オピオイド鎮痛薬および鎮痛補助薬。オピオイド鎮痛薬は、モルフィンに化学的に関連する強力な鎮痛薬である。しかし、オピオイドは、多くの副作用を有し、これら副作用は、ある種の障害:腎不全、肝臓障害、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、認知症または別の脳障害を有する人々において起こる可能性がより高い。眠気(drowsiness)、便秘、悪心、嘔吐およびそう痒は、オピオイドを開始したときに一般的である。モルフィンとは別に、執筆時に公知のオピオイド鎮痛薬としては、コデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルフォン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、オキシコドン、オキシモルホン、ペンタゾシンおよびプロポキシフェンが挙げられる。
【0009】
種々の非オピオイド鎮痛薬はまた、執筆時に利用可能である。それらはしばしば、軽度から中程度の疼痛に有効である。大部分の非オピオイド鎮痛薬は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)として分類される。NSAIDでない鎮痛薬の例は、アセトアミノフェンであり、これは、パラセタモールとして一般に公知である。アセトアミノフェンは、実質的に抗炎症特性を有しない。
【0010】
NSAIDは、軽度から中程度の疼痛を処置するために使用され、中程度から重度の疼痛を処置するために、オピオイドと組み合わされ得る。NSAIDは、疼痛を軽減するのみならず、しばしば付随しかつ疼痛を悪化させる炎症をも低減する。広く使用されるものの、NSAIDはまた、副作用を、ときおり重篤な副作用を有し得る(消化管における問題、出血の問題、体液貯留に関する問題、ならびに心臓および血管障害のリスクの増大が挙げられる)。現行のNSAIDとしては、アスピリン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナプロキセン、cox-2インヒビター(例えば、セレコキシブ)、トリサリチル酸コリンマグネシウム、ジフルニサル、サルサレート、ジクロフェナク、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトロラク、メクロフェナメート、メクロフェナム酸、メロキシカム、ナブメトン、オキサプロジン、ピロキシカム、スリンダクおよびトルメチンが挙げられる。
【0011】
鎮痛補助薬としては、抗鬱薬(例えば、イミプラミン、アミトリプチリン、ブプロピオン、デシプラミン、フルオキセチンおよびベンラファキシンのような);抗痙攣薬(例えば、カルバマゼピン、ガバペンチンおよびプレガバリン)ならびに経口および局所麻酔薬が挙げられる。
【0012】
慢性疼痛の処置において、世界保健機関によって確立された「三段階除痛ラダー」がしばしば使用される。軽度疼痛に関しては、アセトアミノフェン、アスピリンまたは他のNSAIDが使用され得る。軽度から中程度の疼痛に関しては、弱いオピオイド(例えば、コデインおよびジヒドロコデイン)が、アセトアミノフェン、アスピリンまたは他のNSAIDと組み合わせて使用される。中程度から重度の疼痛の場合には、強力なオピオイド(例えば、モルフィン、ジアモルフィン、またはフェンタニル、ヒドロモルフォン、メタドン、オキシコドンまたはフェナゾシン)が、アセトアミノフェン、アスピリンまたは他のNSAIDと組み合わせて投与され得る。
神経障害性疼痛に関して現在利用可能な処置は、ごく低い~中程度の有効性を有し、多くの患者は、顕著な疼痛軽減がないままである。神経障害性疼痛を有する数百万人の人々、ならびに疼痛の他のタイプを有する人々は適切な疼痛軽減がなく、未だに満たされていない大きな医学的ニーズが指摘されており、本発明は、そのニーズに対処する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第7,754,771号明細書
【文献】国際公開第2009/1099850号
【文献】国際公開第2011/030105号
【文献】米国特許出願公開第2011/0086910号明細書
【文献】国際公開第2013/084238号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
発明の要旨
本発明は、(S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドの多形体、ならびに疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防に関し、疼痛、炎症および/または自己免疫を処置または防止する方法、ならびにヒトおよび/または非ヒト動物において疼痛(好ましくは侵害受容性または神経障害性)、炎症および/または自己免疫の処置または予防のための医薬の製造におけるこの多形体の使用を提供する。より具体的には、本発明において使用される化合物は、以下の化学式:
【化1】

の化合物であり、これは、2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドの(S,S)-異性体である。
【0015】
本発明は、この化合物の多形体に関する。この化合物の多形体は、本発明において使用される。この多形体(これは、本明細書中以降、多形体2ともいわれる)、X線、DSCおよび/またはラマン分光分析法のような方法によって特徴づけられ得る。
【0016】
多形体2は驚くべきことに、後に考察されるように、他の結晶形態(例えば、多形体1)より吸湿性が低く、より安定性で、より容易に生体利用可能であることが見出された。
本発明の実施形態において、例えば以下の項目が提供される。
(項目1)
式:
【化3】


を有する化合物の多形体であって、
ここで前記多形体は、19.0±0.2 °2θにおけるピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する、多形体。
(項目2)
前記多形体は、約105℃~約110℃の範囲の融点を有する、項目1に記載の多形体。
(項目3)
式:
【化4】


を有する化合物の多形体であって、
ここで前記多形体は、約105℃~約110℃の範囲の融点を有する、多形体。
(項目4)
前記多形体は、約19.0±0.2 °2θにおけるピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する、項目3に記載の多形体。
(項目5)
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、11.25±0.2、17.38±0.2、17.57±0.2、20.74±0.2、20.91±0.2、22.42±0.2および23.30±0.2 °2θにおけるピークから選択される1つまたはこれより多くのピークをさらに含む、項目1~4のいずれか1項に記載の多形体。
(項目6)
前記X線粉末回折パターン(CuKα)は、実質的に図1に示されるとおりである、項目1~5のいずれか1項に記載の多形体。
(項目7)
前記多形体は、約106℃~約109℃、好ましくは約107℃~約108℃の範囲の融点を有する、項目1~6のいずれか1項に記載の多形体。
(項目8)
前記多形体は、100J/g~140J/g、好ましくは110J/g~130J/gおよびより好ましくは115~125J/gの範囲内の融解エンタルピーを有する、項目1~6のいずれか1項に記載の多形体。
(項目9)
医薬としての使用のための、項目1~8のいずれか1項に記載の多形体。
(項目10)
疼痛の処置または予防における使用のための、項目1~8のいずれか1項に記載の多形体。
(項目11)
炎症および/または自己免疫の処置または予防における使用のための、項目1~8のいずれか1項に記載の多形体。
(項目12)
疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防における使用のための薬学的組成物であって、前記組成物は、薬学的に有効な量の、項目1~8のいずれか1項に記載の化合物のうちの1またはこれより多くを、必要に応じて、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤と一緒に含む、薬学的組成物。
(項目13)
前記組成物は、単位投与形態として製剤化され、好ましくは0.1~約500mgの前記1またはこれより多くの化合物を含む、項目12に記載の薬学的組成物。
(項目14)
経口投与される、項目12または13に記載の薬学的組成物。
(項目15)
疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または防止を必要とするヒトまたは非ヒト動物患者において疼痛、炎症および/または自己免疫を処置または防止するための方法であって、ここで前記方法は、前記患者に、治療上有効な量の、項目1~8のいずれかに記載の少なくとも1つの化合物または項目12もしくは13に記載の薬学的組成物を投与する工程を包含する、方法。
(項目16)
前記1またはこれより多くの化合物の0.1mg~15gの1日用量が投与される、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記1またはこれより多くの化合物は、経口投与される、項目15または16に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1: 多形体2のX線粉末回折パターン
図2図2: 多形体2のSEM写真。
図3図3: 1064nmにおいてBruker RFS 100/Sで測定した場合の多形体2のラマンスペクトル。
図4図4: 多形体2のTGA/DTAデータ。
図5図5: 多形体1の分析データシート。
図6図6: 多形体2の分析データシート。
図7図7: 投与前体重、ならびに60mg/kgの目標用量レベルにおける雄性ビーグル犬へのNRD135S.E1形態1(141232)および形態2(COEN4-091-M)の経口投与に従うNRD135S.E1形態1(141232)および形態2(COEN4-091-M)の計算された用量。
図8図8: 2週目での、60mg/kgの目標用量レベルにおけるNRD135S.E1形態1(141232)および形態2(COEN4-091-M)の経口投与後の実際の血液サンプリング時間。
図9図9: 60mg/kgの目標用量レベルにおけるNRD135S.E1形態1(141232)および形態2(COEN4-091-M)の経口投与後のNRD135S.E1の平均および個々の血漿濃度。
図10図10: 1週目での、60mg/kgの名目上の用量での経口投与後の雄性ビーグル犬血漿におけるNRD135S.E1形態1(141232)および形態2(COEN4-091-M)の平均および個々の薬物動態パラメーター。
図11図11: 2週目での、60mg/kgの名目上の用量での経口投与後の雄性ビーグル犬血漿におけるNRD135S.E1形態1(141232)および形態2(COEN4-091-M)の平均および個々の薬物動態パラメーター。
図12図12: 60mg/kgの名目上の用量での経口投与後の、雄性ビーグル犬におけるNRD135S.E1形態1(141232)および形態2(COEN4-091-M)の平均血漿濃度。
図13図13: 60mg/kgでの名目上の用量の経口投与後の雄性ビーグル犬におけるNRD135S.E1形態1(141232)の個々の血漿濃度(シーケンス1-1 旧)。
図14図14: 60mg/kgの名目上の用量での経口投与後の雄性ビーグル犬におけるNRD135S.E1形態2(COEN4-091-M)の個々の血漿濃度(シーケンス2-1 新)。
図15図15: 60mg/kgの名目上の用量での経口投与後の雄性ビーグル犬におけるNRD135S.E1形態2(COEN4-091-M)の個々の血漿濃度(シーケンス1-2 新)。
図16図16: 60mg/kgの名目上の用量での経口投与後の雄性ビーグル犬におけるNRD135S.E1形態1(141232)の個々の血漿濃度(シーケンス2-2 旧)。
図17図17: (S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドのH-NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、具体的化合物の多形体、ならびに疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防に関し、疼痛、炎症および/または自己免疫を処置または防止する方法、ならびにヒトおよび/または非ヒト動物において疼痛(好ましくは侵害受容性または神経障害性)、炎症および/または自己免疫の処置または予防のための医薬の製造におけるこの多形体の使用を提供する。より具体的には、本発明において使用される化合物は、以下の化学式:
【化2】

の化合物である。
【0019】
この化合物((S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミド)は、そのエナンチオマーおよびジアステレオマーを含め、WO 2013/084238(本明細書に参考として援用される)に、特に、その実施例1および2に記載されるとおりに調製され得る。
【0020】
本発明において使用される((S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミド)は、好ましくはこの化合物の他の立体異性形態を実質的に含まないエナンチオマーである。代表的な、実質的に純粋なエナンチオマーは、90重量%超の上記化合物の1つのエナンチオマーおよび10重量%未満の上記化合物の他の立体異性形態を、好ましくは95重量%超の上記化合物の1つのエナンチオマーおよび5重量%未満の上記化合物の他の立体異性形態を、さらにより好ましくは98重量%超の上記化合物の1つのエナンチオマーおよび2重量%未満の上記化合物の他の立体異性形態を含む。用語「他の立体異性形態(other stereoisomeric form)」とは、代表的には、化合物2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドの(S,R)、(R,S)および(R,R)エナンチオマーまたはジアステレオマー形態に言及する。実質的に純粋な(S,S)-エナンチオマーは、BLKおよびLynAチロシンキナーゼを活性化し得る一方で、LynBチロシンキナーゼの活性に対して全くまたは実質的に全く影響を有しない。
【0021】
この化合物の多形体は、本発明において使用される。この多形体(本明細書中以降、多形体2ともいわれる)は、X線、DSCおよび/またはラマン分光分析法のような方法によって特徴づけられ得る。
【0022】
本発明者らは驚くべきことに、多形体2が、他の結晶形態(例えば、以降で考察されるとおりの多形体1)より吸湿性が低く、かつより安定であることを見出した。さらに、多形体2は驚くべきことに、多形体1と比較して、より良好なバイオアベイラビリティーを有することが見出された。これは、そのより高い安定性に鑑みれば、特に驚くべきことである。多形体2の熱分析は、104.5℃において開始する融点を、および107.2℃において融点ピークを示す。その融解エンタルピーΔHmeltは、約121J/gであった。
【0023】
特許請求された多形体の融点および融解エンタルピーを決定するための熱分析は、25℃の温度においてTGA/DTA分析器(例えば、Perkin-Elmer STA 600 TGA/DTA分析器)を使用して、10℃/分の速度で、代表的には、25℃から300℃へとサンプルを加熱して行われ得、その時間の間に、重量変化が示差熱分析(DTA)シグナルとともにモニターされると同時に、その使用されるパージガスは、20cm/分の流量の窒素である。
【0024】
走査型電子顕微鏡法(SEM)は、多形体2が、2~10μm 長および2~5μm 幅のサイズの範囲に及ぶ粒子を伴う直方形ブロック(regular rectangular block)晶癖を有することを示す。粒度は、代表的には、レーザー回折を使用して測定される場合に、D50体積メジアン粒径として表される。
【0025】
重量蒸気吸着(Gravimetric Vapour Sorption)(GVS)は、多形体2が、80% RHまでに0.6% 重量増加して、ごくわずかに吸湿性であることを示す。
【0026】
本発明の多形体2は、水の中でスラリーを調製し、重量でメタノールおよび水の50/50混合物から結晶化させることによって単離され得る。それはまた、クロロホルムおよび酢酸イソプロピル中で溶液を迅速に冷却することによって調製され得る。
【0027】
本発明の多形体2は、代表的には、19.0±0.2 °2θ、より好ましくは19.0±0.1 °2θおよびさらにより好ましくは19.0±0.05 °2θにおけるピークを含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する。より好ましくは、上記多形体は、11.25±0.2、17.38±0.2、17.57±0.2、20.74±0.2、20.91±0.2、22.42±0.2および23.30±0.2 °2θにおけるピークから選択される1またはこれより多くのピークをさらに含むX線粉末回折パターン(CuKα)を有する。上記さらなるピークは、さらにより好ましくは、11.25±0.1、17.38±0.1、17.57±0.1、20.74±0.1、20.91±0.1、22.42±0.1および23.30±0.1 °2θから選択される。なおより好ましくは、上記ピークは、11.25±0.05、17.38±0.05、17.57±0.05、20.74±0.05、20.91±0.05、22.42±0.05および23.30±0.05 °2θから選択される。好ましくは、19.0±0.2 °2θに、より好ましくは、19.0±0.1 °2θにおける上記ピークは、多形体2のX線粉末回折パターン(CuKα)において(特に、5~40 °2θの範囲内で)最も高い相対的強度を有するピークである。
【0028】
多形体2は、好ましくは、15±0.3 °2θおよび16.5±0.2 °2θの範囲内のいかなるピークをも含まない。より好ましくは、多形体2は、15±0.5 °2θおよび16.5±0.3 °2θの範囲内のいかなるピークをも含まない。
【0029】
さらにより好ましくは、本発明の多形体2のX線粉末回折パターン(CuKα)は、実質的に図1に示されるとおりである。
【0030】
多形体2は、代表的には、約105℃~約110℃の範囲の融点を有する。より好ましくは、上記融点は、約106℃~約109℃、好ましくは約107℃~約108℃の範囲にある。
【0031】
上記に加えて、イヌのバイオアベイラビリティー試験において、本明細書で記載される実験データに記載されるように、本発明の多形体2のバイオアベイラビリティーが、並外れて高く、特に、多形体1のバイオアベイラビリティーより高いことが見出されたことは、さらにより驚くべきことである。
【0032】
対照的に、多形体1の特徴は、本発明の多形体2より高い吸湿性およびより低い安定性を示す。
【0033】
すなわち、多形体1の熱分析は、119.6℃において開始する融点を、および125.6℃において融点ピークを示す。その融解エンタルピーΔHmeltは、約19J/gであった。
【0034】
多形体1の同時熱分析(STA)データは、90~115℃の間で1%をわずかに下回る小さな重量喪失、続いて、単一の熱事象において、約119.5℃において開始する融解をさらに示す。多形体1は、従って、部分的水和物であり得る。
【0035】
走査型電子顕微鏡法(SEM)は、多形体1が、幅10μm未満の大部分は不規則な形状の粒子を有することを示す。
【0036】
重量蒸気吸着(GVS)は、多形体1が、70% RHまでに約1.3% 重量増加して、吸湿性であることを示す。しかし、次いで、急激な水分取り込みは、70%~80% RHの間で、5.6%へと続き、吸着サイクルと脱離サイクルとの間にヒステリシス(ギャップ)が存在し、これは、形態変化を示唆した。この異なる形態は、より吸湿性であるようであった。第2の吸着サイクルは、ちょうど40%のRHにおいて2%という満足のいく限界を十分に上回る重量増加を示す。
【0037】
多形体1は、種々の溶媒(例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトニトリル、アセトン、1,4-ジオキサンおよびジメチルホルムアミド)から再結晶化することによって調製され得る。
【0038】
医学的使用
本発明はまた、医薬として使用するための多形体2に、ならびに疼痛、炎症および自己免疫から選択される疾患の処置または予防において使用するための多形体2に関する。上記疾患は、好ましくは疼痛である。
【0039】
さらに、疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防において使用するための薬学的組成物は、本発明によって包含され、ここで上記組成物は、薬学的に有効な量の多形体2を、必要に応じて、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤と一緒に含む。本発明の薬学的組成物は、加えてまたは代わりに、炎症の処置または予防において使用するために提供される。
【0040】
上記薬学的組成物は、好ましくは単位投与形態として製剤化される。上記単位投与形態は、好ましくは0.1~約500mgの多形体2を含む。
【0041】
本発明の多形体は、急性または慢性疼痛の処置または予防のために使用され得る。例えば、上記多形体は、侵害受容性疼痛(例えば、皮膚疼痛、体性痛、筋筋膜性疼痛、内臓痛、幻肢痛または神経障害性疼痛のような)の処置のために使用され得る。本発明の多形体はまた、頭痛または片頭痛の処置において使用され得る。上記多形体は、軽度の慢性疼痛の処置のために、単独で、またはアセトアミノフェンもしくは別のNSAIDと組み合わせて、あるいは中程度もしくは重度の疼痛の処置のために、弱いもしくは強いオピオイドとともに使用され得る。
【0042】
本発明の多形体はまた、神経障害性疼痛の処置または予防において使用され得、1またはこれより多くの抗鬱薬または抗てんかん薬(例えば、ガバペンチンまたはプレガバリンのような)とともに使用され得る。従って、本発明の別の局面によれば、ヒトまたは非ヒト動物患者において疼痛、炎症および/または自己免疫を処置または防止するための方法であって、上記方法は、必要性のある上記患者に、治療上有効な量の本発明の多形体を投与する工程を包含する方法が提供される。ヒト患者に関しては、以下でより詳細に記載されるとおりの純粋な、実質的に純粋なまたは部分的に純粋な形態にある上記多形体の1.0mg~15gの1日用量が、適切には投与され得る。上記多形体は、効果的な疼痛管理を達成するために十分な量において、医師の監督下で投与され得る。いくつかの実施形態において、上記多形体の1日用量は、このような有効量を決定するために滴定され得る。上記1日用量は、約5.0mg~1g、代表的には約5mg~500mgを含み得る。いくつかの実施形態において、上記用量は、10mg~100mg/日の上記多形体を含み得る。上記多形体は、1日あたり1~4回のレジメンで投与され得る。上記多形体は、非経口的に、経皮的に、筋肉内に、静脈内に、皮内に、鼻内に、皮下に、腹腔内に、脳室内に、髄腔内にまたは直腸に投与され得る。好ましくは、上記多形体は、経口投与される。必要に応じて、本発明の多形体は、少なくとも1種のオピオイド鎮痛薬、抗鬱薬または抗てんかん薬と同時に、逐次的にまたは別個に投与され得る。あるいは、本発明の多形体は、1またはこれより多くのNSAIDまたはアセトアミノフェンと同時に、逐次的にまたは別個に投与され得る。
【0043】
本発明の多形体は、自己免疫、すなわち、自己免疫疾患の処置または予防のために使用され得る。本発明の好ましい実施形態において、上記自己免疫疾患は、セリアック病、1型糖尿病、サルコイドーシス、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、橋本甲状腺炎、グレーブス病、特発性血小板減少性紫斑病、アジソン病、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、多発性筋炎(PM)、皮膚筋炎(DM)または多発性硬化症(MS)である。
【0044】
本発明はまた、疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防における使用のための医薬の製造における本発明の多形体の使用に関する。上記医薬は、アセトアミノフェン、別のNSAID、オピオイド、抗てんかん薬または抗鬱薬のうちの1またはこれより多くとの共投与のために製造され得る。別の実施形態において、本発明は、炎症の処置において使用するための医薬の製造における本発明の多形体の使用を提供する。
【0045】
有利なことには、本発明の多形体は、炎症を低減または防止するために有効であることが見出された。本発明の多形体は、中枢神経系に対して有害効果を全くまたは実質的に全く有しない(すなわち、受容可能な制限内)ことがまた、見出された。
【0046】
本発明のさらに別の局面において、疼痛、炎症および/または自己免疫の処置または予防において使用するための薬学的組成物であって、上記組成物は、薬学的に有効な量の本発明の多形体を含む薬学的組成物が提供される。上記組成物は、1またはこれより多くの薬学的に受容可能な賦形剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、上記組成物はまた、アセトアミノフェン、1またはこれより多くの他のNSAID、1またはこれより多くの弱いまたは強いオピオイド、抗鬱薬または抗てんかん薬を含み得る。
【0047】
本発明の薬学的組成物は、純粋な、実質的に純粋なまたは部分的に純粋な形態にある本発明の多形体を含み得る。いくつかの実施形態において、上記実質的に純粋な形態は、少なくとも95重量%の上記多形体、例えば、96重量%、97重量%、98重量%、または99重量%より多くの上記多形体を含み得る。
【0048】
上記組成物は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、滅菌非経口液剤または懸濁剤、計量式エアロゾルまたは液体スプレー、滴剤、アンプル、自己注射デバイス、坐剤、クリーム剤またはゲルとして製剤化され得る。上記組成物は、経口投与、経腸投与、非経口投与、髄腔内投与、鼻内投与、舌下投与、直腸投与もしくは局所投与のために、または吸入もしくは吹送による投与のために適合され得る。経口組成物(例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤またはウェハ)は、特に好ましい。
【0049】
錠剤のような固体投与形態を調製するために、上記多形体は、上記多形体が上記組成物全体に一様に分散され、その結果、上記組成物が、等しく有効な単位投与形態(例えば、錠剤、丸剤およびカプセル剤)へと容易に細分され得るように、上記多形体の実質的に均質な混合物を含む固体製剤化前組成物(solid pre-formulation composition)を形成するために、1またはこれより多くの薬学的賦形剤、例えば、従来の錠剤化成分(例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムもしくはガム、または他の薬学的希釈剤(例えば、水)と混合され得る。
【0050】
次いで、上記固体製剤化前組成物は、上述の種の単位投与形態へと細分され、その単位投与形態は、各々、0.1~約500mgの本発明の多形体を含み得る。好ましい単位投与形態は、1~500mg、例えば、1mg、5mg、10mg、25mg、50mg、100mg、300mgまたは500mgの本発明の多形体を含む。
【0051】
錠剤または丸剤として製剤化される場合、上記錠剤または丸剤は、コーティングされ得るか、または持続性作用という利点を得る投与形態を提供するために、別の方法で配合され得る。例えば、上記錠剤または丸剤は、内側の投与構成要素および外側の投与構成要素を含み得、外側の投与構成要素は、内側の構成要素を覆う外被の形態にある。これら2つの構成要素は、胃の中での崩壊に耐えるように働き、内側の構成要素が十二指腸へと無傷のまま通過するか、または放出が遅らされることを可能にする腸溶性の層によって隔てられ得る。種々の物質が、このような腸溶性の層またはコーティングにおいて使用することにおいて公知であり、このような物質としては、多くのポリマー酸、ならびにポリマー酸と、シェラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような物質との混合物が挙げられる。
【0052】
あるいは、本発明の薬学的組成物は、経口投与のためのまたは注射による液体投与形態として製剤化され得る;例えば、水性液剤、適切に矯味矯臭されたシロップ剤、水性もしくは油性の懸濁剤、または食用油(例えば、綿実油、ゴマ油、ココナツ油、またはラッカセイ油のような)との矯味矯臭されたエマルジョン、ならびにエリキシル剤もしくは類似の薬学的ビヒクル。水性懸濁剤に適切な分散剤または懸濁剤としては、合成および天然のガム、例えば、トラガカント、アカシア、アルギネート、デキストラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンが挙げられる。
【0053】
さらに、本発明はまた、必要性のあるヒトまたは非ヒト動物患者において疼痛、炎症および/または自己免疫を処置または防止するための方法であって、ここで上記方法は、上記患者に、治療上有効な量の多形体2または多形体2を含む薬学的組成物を投与する工程を包含する方法に関する。この方法において、0.1mg~15gの多形体2の1日用量が投与される。多形体2は、好ましくは経口投与される。
【0054】
以下の定義は、別段具体的に示されなければ、本明細書全体に適用する。
【0055】
障害または疾患の「処置」とは、例えば、上記障害または疾患の進行の停止(例えば、症状の増悪なし)または上記障害または疾患の進行の遅れ(進行の停止が一過性の性質に過ぎない場合)をもたらし得る。障害または疾患の「処置」はまた、上記障害または疾患に罹患している被験体/患者の部分応答(例えば、症状の改善)または完全応答(例えば、症状の消失)をもたらし得る。よって、障害または疾患の「処置」は、上記障害または疾患の改善にも言及し得、これは、例えば、上記障害もしくは疾患の進行の停止または上記障害もしくは疾患の進行の遅れをもたらし得る。このような部分応答または完全応答に続いて、再発が起こることもある。被験体/患者が、処置に対する広い範囲の応答(例えば、本明細書上記で記載されるとおりの例示的応答)を経験し得ることは理解されるべきである。障害または疾患の処置は、特に、治癒的処置(例えば、疾患修飾(disease modifying)、好ましくは、完全応答を、および最終的には、上記障害または疾患の治癒をもたらす)および緩和的処置(症状軽減を含む)を含み得る。
【0056】
障害または疾患の用語「防止(prevention)」または「予防(prophylaxis)」はまた、本明細書で使用される場合、当該分野で周知である。例えば、障害または疾患に罹患しやすいと疑われる患者/被験体は、上記障害または疾患の防止から特に利益を受け得る。上記被験体/患者は、障害または疾患に対する感受性または素因(遺伝的素因が挙げられるが、これらに限定されない)を有し得る。このような素因は、例えば、遺伝子マーカーまたは表現型インジケーターを使用して、標準的な方法またはアッセイによって決定され得る。本発明に従って防止されるべき障害または疾患が、上記患者/被験体において診断されていないかまたは診断できない(例えば、上記患者/被験体は、いかなる臨床上のまたは病的な症状も示さない)ことは、理解されるべきである。従って、用語「防止」または「予防」は、任意の臨床上および/または病的な症状が、主治医によって診断もしくは決定されるか、または診断または決定され得る前の、本発明の多形体の使用を含む。
【0057】
用語「約(about)」とは、好ましくは、示された数値の±10%に、より好ましくは示された数値の±5%に言及し、特に、示された正確な数値に言及する。例えば、表現「約100」とは、好ましくは、100±10%(すなわち、90~110)に、より好ましくは100±5%(すなわち、95~105)に、およびさらにより好ましくは100という具体的な値に言及する。用語「約」が、範囲の端点に関連して使用される場合、それは、好ましくはその示された数値の下側の端点10%からその示された数値の上側の端点+10%までの範囲、より好ましくは下側の端点5%から上側の端点+5%までの範囲、およびさらにより好ましくは下側の端点および上側の端点の正確な数値によって定義される範囲に言及する。従って、表現「約10~約20」は、好ましくは9~22の範囲に、より好ましくは9.5~21の範囲に、およびさらにより好ましくは10~20の範囲に言及する。用語「約」が、制約のない範囲(open-ended range)の端点に関連して使用される場合、それは、好ましくは下側の端点10%からまたは上側の端点+10%から始まる対応する範囲、より好ましくは下側の端点5%からまたは上側の端点+5%から始まる範囲に、およびさらにより好ましくはその対応する端点の正確な数値によって定義される制約のない範囲に言及する。例えば、表現「少なくとも約10%」は、好ましくは少なくとも9%に、より好ましくは少なくとも9.5%に、およびさらにより好ましくは少なくとも10%に言及する。
【0058】
用語「選択肢的な(optional)」、「必要に応じて(optionally)」および「し得る、してもよい、することもある(may)」とは、その示された特徴が、存在し得るが、存在しない可能性があることを示す。用語「選択肢的な」、「必要に応じて、」または「し得る、してもよい、することもある」が使用される場合、本発明は、具体的には両方の可能性、すなわち、その対応する特徴が存在するか、または代わりにその対応する特徴が存在しないことに関連する。例えば、組成物の構成要素が「選択肢的」であると示される場合、本発明は具体的には、両方の可能性、すなわち、その対応する構成要素が存在する(上記組成物の中に含まれる)か、またはその対応する構成要素がその組成物に存在しないことに関連する。
【0059】
用語「含む、包含する(comprising)」(または「含む、包含する(comprise)」、「含む、包含する(comprises)」、「含む、含有する(contain)」、「含む、含有する(contains)」、もしくは「含む、含有する(containing)」)は、別段明示的に示されないかまたは文脈が矛盾しなければ、「特に、含む、含有する」、すなわち、「さらなる選択肢的な構成要素の中でも、…を含む、含有する」の意味を有する。これに加えて、この用語はまた、「から本質的になる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」のより狭い意味を含む。例えば、用語「BおよびCを含むA(A comprising B and C)」は、「特に、BおよびCを含むA」の意味を有し、ここでAは、さらなる選択肢的な要素を含み得る(例えば、「B、CおよびDを含むA」がまた、包含される)が、この用語はまた、「BおよびCから本質的になるA」の意味ならびに「BおよびCからなるA」の意味(すなわち、BおよびC以外の他の構成要素は、Aの中に含まれない)を含む。
【0060】
本明細書で言及される任意のパラメーター(例えば、「mg/ml」単位または「% (v/v)」単位で示される任意の量/濃度、および任意のpH値が挙げられる)は、好ましくは、標準的な周囲温度および圧力条件において、特に、25℃(298.15K)の温度および1atm(101.325kPa)の絶対気圧において決定される。
【0061】
本発明が具体的に、本明細書で記載される特徴および実施形態の各々のおよびあらゆる組み合わせ(一般的および/または好ましい特徴/実施形態の任意の組み合わせを含む)に関することは、理解されるべきである。
【0062】
本明細書において、特許出願および科学文献を含む多くの文書が、引用される。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連するとはみなされないが、その全体において本明細書に参考として援用される。より具体的には、全ての言及される文書は、各個々の文書が具体的にかつ個々に参考として援用されているのと同程度に、参考として援用される。
【実施例
【0063】
本発明の実施例は、純粋に例証のために示され、限定目的ではない。
【0064】
実施例1 - (S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドの調製
(S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドを、WO 2013/084238およびUS 2011/0086910に記載されるとおりに調製した。
【0065】
第1の工程において、2gの乳酸メチルを、過剰な臭化ベンジルと反応させて、880mgの(S)-ベンジルオキシメチルラクテートを得た。その反応を、THF中で水酸化ナトリウムをスラリーにし、およそ-15℃へと冷却することによって行った。次いで、その反応混合物を、ゆっくりと室温へと加温させ、およそ1~2時間撹拌した。その反応を、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、MTBEで2回抽出し、続いて、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去して、粗製油状物を得た。その粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって精製して、純粋な(S)-2-ベンジルオキシメチルラクテートを得た。(R)-2-ベンジルオキシメチルラクテート異性体は、0.93%で存在するに過ぎなかった。この工程の収率は、反応溶液中の水分の存在を回避することによって増大され得る。
【0066】
第2の工程において、工程1において得た880mgの(S)-2-ベンジルオキシメチルラクテートを、水酸化リチウムアルミニウムを使用して還元して、(S)-2-ベンジルオキシプロピレングリコールを、83.8%収率、98.7%純度で得た。塩化メチレン中の純粋な(S)-2-ベンジルオキシメチルラクテートの溶液を撹拌し、これに、およそ5℃において水酸化リチウムアルミニウムの溶液をゆっくりと添加した。その反応を、TLCによってモニターし、USP-PW水によって非常に注意深くクエンチした。この工程においてラセミ化は起こらなかった。
【0067】
次いで、第3の工程において、(S)-2-ベンジルオキシプロピレングリコールを、塩化メチレン中のメタンスルホニルクロリドと、トリエチルアミンの存在下で反応させて、メシレートを88%収率において得た。工程2の溶液を塩化メチレン中で撹拌し、これに、メタンスルホニルクロリドを<5℃において滴下添加した。添加が完了した後、その反応の進捗をTLCによってモニターした。その反応をUSP-PW水でクエンチした。層分離した後、その水性層を塩化メチレンで抽出し戻した。次いで、その塩化メチレン層を合わせ、USP-PW水で3回洗浄して、そのメタンスルホン酸の大部分を除去した。この工程においてラセミ化は起こらなかった。
【0068】
第4の工程において、メシレート(工程3の)を、S-O-ベンジルチロシノールとカップリングして、ビス保護生成物を22.7%収率、純度 97.4%で形成した。その反応を、溶媒としてのDMFおよび塩基としての水酸化ナトリウムの組み合わせを使用して、室温において行った。少なくとも12時間、室温において撹拌した後にその反応が完了した。
【0069】
第5の工程において、340mgの工程4の生成物を、10% 炭素担持パラジウム触媒および塩酸の存在下で、溶媒として塩化メチレンを使用して、50℃において水素化することによって還元した。その反応は、ラセミ化を伴わずにおよそ4時間で完了して、所望の生成物を84.3%収率および98.9%純度で得た。より具体的には、その触媒を濾過によって除去し、次いで、その濾液を33℃において濃縮した。その得られた、固体および油状物混合物を、酢酸エチルと混合した。その得られたスラリーを濾過し、その固体を酢酸エチルで洗浄し、40~45℃において真空下で乾燥させて、所望の生成物を得た。
【0070】
実施例2 - 多形体2の調製
(S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミド(500mg)を、水(5mL)の中に懸濁し、その得られた懸濁物を振盪し、4時間ごとに40℃~25℃の間で、72時間にわたって温度サイクルさせた。過剰な水を、シリンジおよび針を使用して、可能な限りデカントした。その後、その生成物を乾燥させた。最初に、周囲温度で、次いで、50℃において、真空下で一定の重量が達成されるまで水をエバポレートした。
【0071】
多形体の分析のための方法の使用
X線粉末回折(XRPD)
およそ5mgのサンプルを、XRPDゼロバックグラウンド単一斜め切断シリカサンプルホルダー上で穏やかに圧縮した。次いで、そのサンプルを、Philips X-Pert MPD回折計にロードし、以下の実験条件を使用して分析した。
チューブアノード: Cu
発生器電圧(generator tension): 40kV
チューブ電流: 40mA
波長アルファ1: 1.5406Å
波長アルファ2: 1.5444Å
開始角度[2 θ]: 5
終了角度[2 θ]: 50
連続スキャン
代表的なX線データを、4~40°2Θの範囲にわたってよりゆっくりとしたスキャン速度で獲得した。
【0072】
ラマン分光分析法
ラマン
ラマンスペクトルを、励起波長1064nmを利用してBruker RFS 100/Sで獲得した。そのサンプルを、物質をサンプルホルダーに入れ、これを分光光度計に位置づけることによって分析用に調製した。
【0073】
同時熱分析(STA)
この文脈における同時熱分析(STA)は、熱重量分析(TGA)および示差熱分析(DTA)を、1つの機器において1つの同じサンプルに対して同時に適用することに関する。
【0074】
およそ5mgのサンプルを、セラミック坩堝に入れて正確に秤量し、それを、周囲(25℃)温度においてPerkin-Elmer STA 600 TGA/DTA分析器のチャンバの中に入れた。次いで、そのサンプルを、10℃/分の速度で、代表的には25℃~300℃へと加熱し、その時間の間に、重量の変化を、DTAシグナルと同様にモニターした。使用したパージガスは、20cm/分の流量の窒素であった。
【0075】
示差走査熱量測定法(DSC)
DSCを、Netzsch-DSC 204 F1 Phoenixで調査した。およそ5~6mgのサンプルを、DSCパンの中に入れた。その分析を、密封したピンホール付きのアルミニウムパンにおいて行った。そのサンプルを、窒素雰囲気下で25~125℃へと10K/分の速度で加熱した。
【0076】
走査型電子顕微鏡法(SEM)
走査型電子顕微鏡法を、15KVおよび15°のわずかな傾斜において作動するTescan Vega3 Scanning Electron Microscopeを使用して行った。
【0077】
分析の前に、サンプルを、Agar Scientificによって供給される両面炭素含浸粘着タブ(double sided carbon impregnated sticky tab)を使用して、そのサンプルをSEMスタブに接着させることによって調製した。
【0078】
次いで、その調製したスタブを、Quorum Q150ESスパッタコーターを使用して15nm 金でコーティングした。
【0079】
重量蒸気吸着(GVS)
およそ10mgのサンプルを、ワイヤメッシュ蒸気吸着天秤パンの中に入れ、「IgaSorp」蒸気吸着天秤(Hiden Analytical Instruments)にロードした。次いで、そのサンプルを、さらなる重量変化が記録されなくなるまで0% 湿度環境を維持することによって乾燥させた。その後、そのサンプルを、平衡が得られる(99% 工程完了)まで各工程においてそのサンプルを維持して、10% RHずつ上昇させて0~90% RHへの傾斜プロフィールに供した。平衡に達した際に、その装置内の% RHを、次の工程へと上昇させ、その平衡化手順を反復した。吸着サイクルの完了後に、そのサンプルを同じ手順を使用して乾燥させた。次いで、その吸着/脱離サイクルの間の重量変化を、モニターし、そのサンプルの吸湿性の性質が決定されることを可能にした。
【0080】
多形体の分析結果
得られたXRPDは、図1に示されるとおりであった。以下に、その観察されたピークの列挙を提供する。
表1
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0081】
H-NMRスペクトルを、多形体2を得る結晶化の前後に、(S,S)-2-N(3-O-(プロパン-2-オール)-1-プロピル-4-ヒドロキシベンゼン)-3-フェニルプロピルアミドに関して測定した。これらのスペクトルは、互いと一致し、化学的変換が起こらなかったことを示す。
【0082】
そのSTAデータは、重量喪失を示さなかった。これは、そのサンプルが水和も溶媒和化もされなかったことを示す。DTAサーモグラム(図4を参照のこと)は、約104.5℃で開始して急激な融解を示す。
【0083】
走査型電子顕微鏡法(SEM)(図2を参照のこと)は、この形態が、2~10μm 長および2~5μm 幅の範囲に及ぶ粒径を伴う直方形ブロック晶癖を有することを示した。
【0084】
GVSは、そのサンプルが、80% RHまでに0.6% 重量増加して、ごくわずかに吸湿性であることを示した。これは、形態2が、形態1より吸湿性が低かったことを示す。両方のサイクルに関して、90% RHにおいて急激な重量喪失が存在した。これは、無定形内容物のさらなる結晶化の結果であった可能性がある。これは、2つの吸着/脱離サイクルの最後まで、約1%という全体の重量喪失を生じたが、XRPDは、多形体の変化を示さなかった。
【0085】
実施例3 - 多形体1および2のバイオアベイラビリティー
この研究を、6匹のイヌへの単一用量経口投与後に、血漿サンプルを得て、2つの異なる多形体1および2のバイオアベイラビリティーおよび薬物動態の比較を可能にするように設計した。3匹のイヌをシーケンス1(多形態1の後に多形体2)に従って処置し、3匹のイヌをシーケンス2(多形態2の後に多形体1)に従って処置し(処置の間に1週間の休薬期間を設けた)て、クロスオーバーデザインを使用した。
【0086】
両方の多形体の濃度-時間プロフィールは、急速な吸収およびピーク濃度後の急激な濃度低下によって特徴づけられた;4時間およびそれより後でのプロフィールにおける二次的な山(secondary humps)は、腸肝再循環(entero-hepatic recirculation)を示唆した。
【0087】
薬物への曝露の尺度である、最大計測濃度(maximum observed concentration)(Cmax)および血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)は、多形体1の後より多形体2の後により高いようであった。多形体1に関するAUC(0-∞)(60.0mg 用量に補正)の最小二乗(LS)幾何平均推測値は、13170 h.ng/mL、多形体2に関しては、20064 h.ng/mL(p=0.0016)であった。その対応するCmax値(60.0mg 用量に補正)は、それぞれ、4986ng/mL(多形体1)および11088ng/mL(多形体2)であった(p=0.0009)。よって、AUC尺度に関して1.52(90%CI: 1.35, 1.71)、およびCmax尺度に関して2.22(90%CI: 1.84; 2.70)の幾何平均比(多形体2/多形体1)が生じた。これら分析からの結果および結論は、それぞれのパラメーターが用量差に関して補正されなくても、または外挿されなかったAUC値が分析されても、異ならなかった。多形体間のこれらの差異は、多形体2のバイオアベイラビリティーがより高いことを示す。
【0088】
多形体1は、Quay Pharmaceuticalsによって白色粉末として供給され、これを試験施設において周囲温度で貯蔵した。NRD 135S.E1形態1の分析データシートの写しを図5に示す。
【0089】
多形体2を、上記で詳述されるように調製した。NRD 135S.E1形態1の分析データシートの写しを図6に示す。
【0090】
各多形体を、滅菌水中の0.5% w/v HPMC K15M/0.5% w/v Tween(登録商標) 80のビヒクルに懸濁物として調製した。
【0091】
体重9.5~11.5kg、投与時2~7歳齢、現在動物コロニー(コロニー番号: 190431)の一部として保持された6匹の雄性ビーグル犬(それぞれ、入れ墨番号: 4986、0964、3611、2380、5002および1122 研究中動物番号: 001M、002M、003M、004M、005Mおよび006M)を、この研究に使用した。イヌは、元はMarshall Farms USA Inc.(NY, USA)またはEnvigo RMSから得、科学的手順において使用するために繁殖させた。治験前および試験中期間の間に、その動物を、その種に適した収容法において群で飼育した。研究における使用のために受け入れる前に、動物を獣医学的検査に供したところ、結果は十分であることが見出された。維持および試験区画は、明サイクルおよび温度を自動制御した。明時間は、0700時~1900時であった。試験の間に測定された温度および湿度の範囲は、それぞれ、17.0~21.8℃および23.4~83.07%であった。各用量投与の前に全ての動物の体重測定を行い、その体重を記録した。投与前夜から投与後4時間までの絶食期間を除いて、1日あたり200~300gの、既知の配合の標準的な実験飼料(SDS D3 (E) SQC)を得られるようにした。本管から取った良質の水道水を自由に摂取させた。
【0092】
製剤は常に、用量を投与するその朝に調製した。各多形体を、注射用滅菌水中の0.5% w/v HPMC K15M/0.5% w/v Tween(登録商標) 80のビヒクルに12mg/mLの濃度の懸濁物として調製した。必要とされるビヒクル容積を、適切な製剤容器に添加した。必要とされるビヒクル容積を、以下のように計算した:
V=(K×D)×1.25
ここで:
V=最終容積
K=投与されるべきkg数
D=用量容積(mL/kg)
1.25=製剤過剰分
試験品目の必要とされる量を、正確に秤量した。試験品目を、適切な変換係数および以下の式を使用して秤量した:
W=(C×V×100)/P
ここで:
W=必要とされる重量(mg)
C=目標製剤濃度(遊離塩基としてのmg/mL)
V=最終容積
P=遊離塩基としての純度(多形体1=98.1%、多形体2=98.7%)
【0093】
次いで、試験品目を、投与ビヒクルと同じ容器の中に(磁性撹拌下で)少量添加した。次いで、製剤を磁性撹拌下で15分間放置した。Ultraturraxホモジナイザーを、平均速度において15分間使用して、均質な懸濁物を得た。次いで、製剤を、均質な懸濁物が得られるまで磁性撹拌下で放置した。その製剤のpHを測定し、その値を記録した。pHが3未満であった場合、これを、1M NaOHを添加してそのレベルが3を上回るように調節した。製剤化が完了したら、3×100μL 用量のアリコートを入手した。用量アリコートおよび任意の残りの製剤を、輸送するまで-80℃で貯蔵した。
各製剤のまとめを、以下の表に示す:
表2
【表2】
【0094】
3匹の雄性イヌの各群は、目標用量レベル60mg/kgの多形体の単一の経口用量投与を受けた。1週間の休薬期間後に、3匹の雄性イヌの各群は、別の多形体を受けた。
動物を、以下の表に従って投与した:
表3
【表3】
目標値
【0095】
各群に関して、全血サンプル(約1.0mL)を、以下の時点においてNaF/EDTAチューブの中に頸静脈から集めた:
投与前、投与後0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、3時間、4時間、6時間、8時間、12時間および25時間
【0096】
上記に示した時間はあくまで目標時間であり、可能な限り近くなるようにした。サンプル収集の(および投与の)実際の時間を記録し(表2)、薬物動態パラメーターの評価において使用した。収集直後に、血液サンプルを氷水の上に置いた。可能な限り素早く、その血液サンプルを遠心分離した(+4℃、1500g、10分間)。得られた血漿を、2つのアリコートに分け(バイアルA:100μl 血漿、バイアルB:残りの容積)、輸送するまで-80℃の温度を維持するように設定した冷凍庫中で、適切にラベルを付けたポリプロピレンチューブの中に貯蔵した。全ての血漿サンプル、残りの投与製剤および用量アリコートを、輸送するまで-80℃の温度を維持するように設定した冷凍庫中で貯蔵した。
【0097】
薬物動態(PK)パラメーターを、経口投与経路と一致するノンコンパートメントアプローチを使用するPhoenix薬物動態ソフトウェアを使用して推測した。全てのパラメーターを、血漿中の多形体1および2の個々の濃度から生成した。パラメーターを、許容可能な偏差範囲(±10%)内で、各用量投与の開始に対する名目上のサンプル採取時間を使用して推測した。定量限界(0.5ng/mL)未満の投与前サンプルを、PK分析のために0と仮定した。
【0098】
多形体1および2の血漿濃度対時間曲線下の面積(AUC)を、線形台形法(linear trapezoidal method)と線形補間とを使用して計算した。各濃度対時間曲線の終末消失相(terminal elimination phase)を、片対数濃度-時間プロットの目視検査によって特定した。大部分の場合に薬物の腸肝再循環によって引き起こされるプロフィールの不規則性に起因して、最後の2つの観察された濃度値のみが、この計算において使用できた。終末消失相の傾きを、重み付けしていない濃度データに対する対数線形回帰を使用して決定した。終末消失相の決定に依拠するパラメーターは、決定係数が0.800未満である場合、および/または無限大までのAUCの外挿が総面積の20%超を表した場合に、報告しない(NR)とした。テキスト表1に記載されるパラメーターを、時間を説明するために必要とされる有効数字以下と報告されているTmaxを除いて、有効数字3桁まで報告した。さらなるパラメーターを、Phoenixによって自動的に生成した。これは、プロトコールによって必要とされなかったが、生データにおいて維持される。
表4
【表4】
【0099】
上記多形体の相対的バイオアベイラビリティーの統計分析を行った。計算を、FDAガイダンス文書: Statistical Approaches to Establishing Bioequivalenceと一致して、以下のように行った:
【0100】
自然対数変換後に、用量差に関して正規化なしおよびありのAUC(0-∞)、AUC(0-t)およびCmax値を、シーケンス、シーケンス内で入れ子になった被験体、期間および処置(多形体)の項を含む線形混合効果モデル分析手順に供した。さらに、終末消失速度定数およびその関連半減期、クリアランス(CL/F)および分布容積(V/F)を、同じ分析モダリティーを使用して統計的に比較した。全ての統計分析を、SAS(登録商標) v9.4を使用して行った;そのSASコードは、付表3Aに提供される一方で、その手順の出力は付表3Bに提供される。最小二乗平均の差異および旧多形体に対する新多形体のそれらの90% CIを、そのモデルから得た誤差分散を使用して推測した。点推定値および区間推定値を逆変換して、旧に対する新の幾何平均の比の推測値を示した。Tmaxに関しては、2に対する1の多形体のメジアン差およびその90% CIを計算した。
【0101】
多形体1および2の全ての経口投与は、インシデントなしに行われた。経口投与に対する有害反応は、投与した動物のいずれにおいても観察されなかった。体重および用量投与詳細は、図7に示される。全ての血液サンプルを、目標サンプル採取時間に、またはその付近(±6分)で集めた。実際の血液サンプル採取時間は、図8に示される。試験施設において収集し、その後、生体分析のために支援者の代表者に輸送した血漿サンプルから生成したデータを使用して、多形体1および2の薬物動態パラメーターを生成した。品質制御サンプルの血漿分析の結果は、試験サンプルに関して報告された結果に保証を与えた。
【0102】
形態1および2の個々の血漿濃度結果を、図9に示す。
【0103】
形態1および2の平均および個々の薬物動態パラメーター結果を、図10および図11に示す。形態1および2の経口投与後の平均濃度対時間プロフィールを、図12に示す。形態1および2の個々の濃度対時間プロフィールを、図13~16に示す。
【0104】
投与製剤からおよび各個々の最終投与懸濁物から取っておいたアリコートを融解した後には、もはや均質な懸濁物を得ることができなかったので、有効な濃度結果は、それらから得ることができなかった。
【0105】
濃度時間プロフィールの全体のパターンは、その2つの多形体間で類似であった。いずれかの多形体を投与した後も、NRD135S.E1の吸収は迅速であった。ピーク血漿濃度は、多くの場合、最初のサンプル採取時点(0.25時間)より前またはその時点で既に達成されており、0.5時間より長いTmaxが得られる場合は全くなかった。その後の濃度は、急激に低下して、およそ4時間で第1のトラフ濃度を達成し、その濃度は、最初に達成した濃度のせいぜい1/10であった。この時点の後 -イヌが飼料に再びアクセスし始めたと同時に- 濃度が再び上昇して、二次的な(低い)ピークを形成し、その後、再び低下した。その二次的な濃度上昇は、薬物の腸肝再循環を示唆し、ラット(例えば、試験12NVMDP1R1を参照のこと)、イヌ(試験VPT1468を参照のこと)、およびヒト(試験NRD135S.E1.101を参照のこと)において以前に既に注記されている。濃度低下における不規則性は、消失半減期の正確な推測を妨げた。しかし、これらの最終の低下はしばしば、同じ動物において両方の多形体について非常に類似しており、3~4時間あたりのNRD135S.E1の推測される平均半減期の裏付けを与えた。AUC(0-∞)の外挿された部分は小さかった(6%以下)ことから、AUC(0-∞)およびこれに伴って、処分パラメーターCL/FおよびV/Fは、なお信頼性高く推測できた。薬物への曝露の両方の尺度は、多形体1の後より多形体2の後の方が高いようであった。多形体1(141232)に関するAUC(0-∞)(60.0mg 用量に補正)の最小二乗(LS)幾何平均推測値は、13170 h.ng/mLであり、多形体2(COEN4-91-M)に関しては、20064 h.ng/mLであった。その対応するCmax値(60.0mg 用量に補正)は、それぞれ、4986 ng/mL(多形体1)および11088 ng/mL(多形体2)であった。多形体間のこれらの差異は、多形体2が与えられた場合に、NRD135S.E1のバイオアベイラビリティーがより高いことを示す。多形体2は、多形体1より熱力学的に安定であり、そのような結果は、予測されていなかった。
【0106】
統計分析の結果を、表6に示す。より高い曝露は、旧多形体(多形体1)に関するより新(多形体2)に関して見出された。新多形体に関して無限大(用量に関して補正)へと外挿されたAUCに関する最小二乗幾何平均推測値< AUCINF_obs_D>は、旧多形体(90%CI: 1.35, 1.71)に関するより1.52倍高かった;この差異は統計的に有意であった(p=0.0016)。最大濃度の差異は、さらにより高く、新多形体に関するCmax値の点推定値(用量差に関して補正)は、旧多形体に関するより2.22倍高かった(90%CI: 1.84; 2.70)。分析からの結果および結論は、それぞれのパラメーターが用量差に関して補正されなくても、または外挿されなかったAUC値が分析されても、異ならなかった。
【0107】
吸収の程度に差異は明らかに存在したが、最大濃度に達するために必要とされる時間(Tmax)によって判断される場合、その2つの多形体の間に吸収速度の差異は存在しなかった。その2つの多形体の後に観察された消失速度定数または半減期に差異は存在しなかった。
【0108】
両方の多形体の後のNRD135S.E1の濃度-時間プロフィールは、急速な吸収およびピーク濃度後の急激な濃度低下によって特徴づけられた;4時間およびそれより後でのプロフィールにおける二次的な山は、腸肝再循環を示唆した。
【0109】
薬物への曝露の尺度である、最大計測濃度(Cmax)および血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)は、多形体1の後より多形体2の後により高いようであった。AUC尺度に関して1.52(90%CI: 1.35, 1.71)およびCmax尺度に関して2.22(90%CI: 1.84; 2.70)の幾何平均比(多形体2/多形体1)が生じた。その分析からの結果および結論は、それぞれのパラメーターが用量差に関して補正されなくても、または外挿されなかったAUC値が分析されても、異ならなかった。多形体間のこれらの差異は、多形体2が与えられた場合に、NRD135S.E1のバイオアベイラビリティーがより高いことを示す。
【0110】
吸収の程度に差異は明らかに存在したが、最大濃度に達するために必要とされる時間(Tmax)によって判断される場合、その2つの多形体の間に吸収速度の差異は存在しなかった。その2つの多形体の後に観察された消失速度定数または半減期に差異は存在しなかった。
【0111】
シーケンスの、関連するが統計的に有意ではない効果が、Cmaxに関して観察され、シーケンス-2に対するシーケンス-1の比は、1.38(90%CI: 1.06, 1.79)として推測された。このシーケンス効果は、その2つの多形体間の曝露差が推測され得る精度を低下させる。
図1
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