(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】制御方法、装置、動力システム及び電気自動車
(51)【国際特許分類】
H02P 27/08 20060101AFI20241226BHJP
H02P 21/00 20160101ALI20241226BHJP
【FI】
H02P27/08
H02P21/00
(21)【出願番号】P 2021557737
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 CN2021114980
(87)【国際公開番号】W WO2022134640
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2021-10-12
【審判番号】
【審判請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】202011554389.6
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524304976
【氏名又は名称】香港時代新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】CONTEMPORARY AMPEREX TECHNOLOGY (HONG KONG) LIMITED
【住所又は居所原語表記】LEVEL 19, CHINA BUILDING, 29 QUEEN’S ROAD CENTRAL, CENTRAL, CENTRAL AND WESTERN DISTRICT, HONG KONG, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄孝鍵
(72)【発明者】
【氏名】但志敏
(72)【発明者】
【氏名】潘先喜
(72)【発明者】
【氏名】左希陽
【合議体】
【審判長】須田 勝巳
【審判官】山崎 慎一
【審判官】脇岡 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-72955(JP,A)
【文献】特開2014-50170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P27/08
H02P21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力電池、モータ及びインバータを備えた動力システムにおけるモータコントローラに適用される制御方法であって、
前記動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、第1制御信号を前記インバータに送信するステップと、
前記動力電池の電池セル温度が前記予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、前記インバータに第2制御信号を送信するステップとを含み、
前記第1制御信号を送信する前に、
複数の設定周波数をランダムに生成して、各設定周波数に応じて各設定周波数の継続時間を決定するステップと、
前記設定周波数と前記各設定周波数の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定して、q軸成分の参考信号行列をゼロ行列に設定するステップと、
前記d軸成分の参考値行列、前記q軸成分の参考値行列及び前記モータのモータパラメータに基づいて、前記第1制御信号を生成するステップと、を含み、
前記第2制御信号を送信する前に、
前記動力電池の加熱パラメータと
前記モータの振動騒音閾値である最大騒音閾値に基づいて複数の設定振幅値と各設定振幅値の継続時間を決定するステップと、
前記設定振幅値と前記各設定振幅値の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定して、q軸成分の参考値行列をゼロ行列に設定するステップと、
前記d軸成分の参考値行列、前記q軸成分の参考値行列及び前記モータのモータパラメータに基づいて、前記第2制御信号を生成するステップと、をさらに含み、
前記第1制御信号は、周波数が変化する交流電流を供給するために前記インバータを制御して充電回路又は放電回路を形成するためのものであり、
前記第2制御信号は、振幅値が変化する交流電流を供給するために前記インバータを制御して充電回路又は放電回路を形成するためのものである制御方法。
【請求項2】
前記各設定周波数に応じて各設定周波数の継続時間を決定するステップは、
前記設定周波数に対応する全周期分の時間長を前記設定周波数の継続時間とするか、または、前記設定周波数に対応する半周期分の時間長を前記設定周波数の継続時間とすることを含む請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記加熱パラメータは、加熱速度と加熱時間長を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、第1制御信号を前記インバータに送信するステップは、
前記動力電池の電池セル温度が前記動力電池の最低作動温度よりも低く且つ前記モータが非駆動運転状態にある場合に、前記第1制御信号を前記インバータに送信することを含む請求項
1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、第1制御信号又は第2制御信号をインバータに送信するための制御装置であって、
前記第1制御信号は、周波数が変化する交流電流を供給するために充電回路又は放電回路を形成するように前記インバータを制御するためのものであり、
前記第2制御信号は、振幅値が変化する交流電流を供給するために充電回路又は放電回路を形成するように前記インバータを制御するためのものであり、
前記第1制御信号を送信する前に、
複数の設定周波数をランダムに生成して、各設定周波数に応じて各設定周波数の継続時間を決定し、
前記設定周波数と前記各設定周波数の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定して、q軸成分の参考信号行列をゼロ行列に設定し、
前記d軸成分の参考値行列、前記q軸成分の参考値行列及び前記モータのモータパラメータに基づいて、前記第1制御信号を生成し、
前記第2制御信号を送信する前に、
前記動力電池の加熱パラメータと
前記モータの振動騒音閾値である最大騒音閾値に基づいて複数の設定振幅値と各設定振幅値の継続時間を決定し、
前記設定振幅値と前記各設定振幅値の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定して、q軸成分の参考値行列をゼロ行列に設定し、
前記d軸成分の参考値行列、前記q軸成分の参考値行列及びモータのモータパラメータに基づいて、前記第2制御信号を生成する制御装置。
【請求項6】
動力電池と、インバータと、モータと、請求項
1~4のいずれかに記載の制御方法を実行するためのモータコントローラとを備える動力システム。
【請求項7】
動力電池と、インバータと、モータと、請求項
1~4のいずれかに記載の制御方法を実行するためのモータコントローラとを備えた動力システムを備えた電気自動車。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2020年12月24日に出願された「制御方法、装置、動力システム及び電気自動車」という名称の中国特許出願202011554389.6に基づく優先権を主張し、その開示全体は援用により本願に組み込まれるものとする。
【技術分野】
【0002】
本願は、電池の技術分野に関し、特に制御方法、装置、動力システム及び電気自動車に関する。
【背景技術】
【0003】
動力電池は、材料に制限されているため、定格の環境温度でなければ、安定して最適性能を発揮することができないようになる。環境温度の低い地域で電気自動車を使用する場合、動力電池を定格の環境温度まで加熱する必要がある。
【0004】
モータによって動力電池を直接加熱するのは技術者にとって一般的である。具体的には、動力電池とモータの固定子巻線との間に閉回路が形成され、モータの固定子巻線に電気エネルギーが蓄えられ、モータの固定子巻線は、動力電池に交番電流を印加することによって励起され、動力電池を自身の内部抵抗で加熱する。
【0005】
しかしながら、モータによる動力電池の加熱では、騒音が過大となる場合がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の実施例は、動力電池、モータ及びインバータを備えた動力システムにおけるモータコントローラに適用される制御方法であって、動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、第1制御信号をインバータに送信するステップを含み、第1制御信号は、動力電池から供給される電気を、モータに給電され周波数がランダムに変化する交流電気に変換するように、インバータを制御するためのものである制御方法を提供する。
【0007】
いくつかの実施例では、第1制御信号を送信する前に、上記方法は、複数の設定周波数をランダムに生成して、各設定周波数に応じて各設定周波数の継続時間を決定するステップと、設定周波数と各設定周波数の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定して、q軸成分の参考信号行列をゼロ行列に設定するステップと、d軸成分の参考値行列、q軸成分の参考値行列及びモータのモータパラメータに基づいて、第1制御信号を生成するステップと、をさらに含む。
【0008】
上記実施例では、複数の設定周波数をランダムに生成して、各設定周波数に応じて各設定周波数の継続時間を決定し、そして、設定周波数と設定周波数の継続時間に基づいて第1制御信号を生成し、動力電池の電流を周波数がランダムに変化する交流電流に変換するようにインバータを制御し、新たな周波数成分を導入することにより、本来集中していた径方向の電磁力を固定子全体に均一に分散させて、動力電池加熱中の振動騒音を低減する。
【0009】
いくつかの実施例では、各設定周波数に応じて各設定周波数の継続時間を決定するステップは、設定周波数に対応する全周期分の時間長を設定周波数の継続時間とするか、または、設定周波数に対応する半周期分の時間長を設定周波数の継続時間とすることを含む。
【0010】
上記実施例では、設定周波数の継続時間を設定周波数に対応する半周期分または全周期分の時間長に設定することにより、モータを駆動するための交流電気の検出を容易にし、制御信号をリアルタイムに調整して騒音抑制効果を確保することができる。
【0011】
いくつかの実施例では、上記方法は、動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、第2制御信号をインバータに送信するステップをさらに含み、第2制御信号は、動力電池から供給される電気を、モータに給電され振幅値が周期的に変化する交流電気に変換するように、インバータを制御するためのものである。
【0012】
上記実施例では、動力電池の電池セル温度が動力電池加熱条件を満した場合、インバータに第1制御信号と第2制御信号を送信し、動力電池の電流を周波数がランダムに変化し且つ振幅値が周期的に変化する交流電流に変換するようにインバータを制御し、新たな周波数成分を導入して動力電池加熱中の振動騒音をさらに低減する。
【0013】
いくつかの実施例では、第2制御信号を送信する前に、上記方法は、動力電池の加熱パラメータと最大騒音閾値に基づいて複数の設定振幅値と各設定振幅値の継続時間を決定するステップと、設定振幅値と各設定振幅値の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定して、q軸成分の参考値行列をゼロ行列に設定するステップと、d軸成分の参考値行列、q軸成分の参考値行列及びモータのモータパラメータに基づいて、第2制御信号を生成するステップと、をさらに含む。
【0014】
上記実施例では、動力電池の電池セル温度が電池自己加熱条件を満たした場合に、動力電池の加熱パラメータと最大騒音閾値に基づいて複数の設定振幅値と各設定振幅値の継続時間を決定して、設定振幅値と継続時間に基づいて第2制御信号を生成し、第1制御信号と第2制御信号との協働制御で、動力電池供給電流をインバータで周波数がランダムに変化し且つ振幅値が周期的に変化する交流電流に変換し、周波数成分をより多く導入することにより、本来集中していた径方向の電磁力を固定子全体に均一に分散させて、動力電池加熱中の振動騒音を大幅に低減する。
【0015】
いくつかの実施例では、加熱パラメータは、加熱速度と加熱時間長を含む。
【0016】
いくつかの実施例では、d軸成分の参考値行列における振幅参考値は、周期的に増加または減少する。
【0017】
いくつかの実施例では、動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、第1制御信号をインバータに送信するステップは、動力電池の電池セル温度が動力電池の最低作動温度よりも低く且つモータが非駆動運転状態にある場合に、第1制御信号をインバータに送信することを含む。
【0018】
上記実施例では、モータコントローラは、動力電池の電池セル温度が動力電池の最低作動温度よりも低く、かつ、出力トルクがほぼ0になるようにモータを制御する場合、すなわち、加熱により動力電池を正常に作動させる必要があり、かつ、モータが回転していない場合に、第1制御信号をインバータに送信する。これによって、モータの正常運転への影響を回避することができ、モータの運転の安全性を効果的に高めることができる。
【0019】
第2観点では、本願は、動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、第1制御信号をインバータに送信するための制御装置を提供し、第1制御信号は、動力電池から供給される電気を、モータに給電され周波数がランダムに変化する交流電気に変換するように、インバータを制御するためのものである
【0020】
第3観点では、本願は、動力電池と、インバータと、モータと、第1観点および代替案に係る制御方法を実行するためのモータコントローラとを備えた動力システムを提供する。
【0021】
第4観点では、本願は、動力電池と、インバータと、モータと、第1観点および代替案に係る制御方法をそれぞれ実行するためのモータコントローラとを備えた動力システムを備えた電気自動車を提供する。
【0022】
本願の実施例は、制御方法、装置、動力システム及び電気自動車を提供する。動力電池の電池セル温度が動力電池加熱条件を満たした場合に、第1制御信号をインバータに送信すし、該第1制御信号は、動力電池の電流を、モータに給電され周波数がランダムに変化する交流電気に変換するように、インバータを制御するためのものである。新たな周波数成分を導入することにより、本来集中していた径方向の電磁力を固定子全体に均一に分散させて、動力電池加熱中の振動騒音を低減する。また、インバータに第1制御信号と第2制御信号を送信し、動力電池の電流を周波数がランダムに変化し且つ振幅値が周期的に変化する交流電流に変換するように、インバータを制御し、新たな周波数成分を導入して動力電池加熱中の振動騒音をさらに低減する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本願の実施例に係る技術案をより明確に説明するために、本願の実施例で使用する図面を簡単に説明するが、以下に説明する図面は本願の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、発明的な労力を要することなく、図面に基づいて他の図面を得られることは明らかである。
【0024】
【
図1】
図1は、本願の実施例に係る動力システムの構成模式図である。
【0025】
【
図2】
図2は、本願の実施例に係る動力電池の構成模式図である。
【0026】
【
図3】
図3は、本願の実施例に係る制御方法のフロー模式図である。
【0027】
【
図4】
図4は、本願の実施例に係る永久磁石式モータのベクトル制御のフロー模式図である。
【0028】
【
図5】
図5は、本願の実施例に係るモータ駆動用交流電流の模式図である。
【0029】
【
図6】
図6は、本願の実施例に係る動力システムの1つの作動状態の模式図である。
【0030】
【
図7】
図7は、本願の実施例に係る動力システムのもう1つの作動状態の模式図である。
【0031】
【
図8】
図8は、本願の実施例に係るモータ駆動用交流電流の模式図である。
【0032】
【
図9】
図9は、本願の実施例に係る制御装置の構成模式図である。
【0033】
図面において、実際の縮尺で描かれていない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面及び実施例を参照して本願の実施の形態を更に詳細に説明する。以下の実施例の詳細な説明及び図面は、本願の原理を例示するためのものであり、本願の範囲を限定するものではない。すなわち、本願は、記載された実施例に限定されるものではない。
【0035】
本願の記載において、「複数」は、特に断りのない限り、2つ以上を意味している。「上」、「下」、「左」、「右」、「内」、「外」などの位置又は位置関係を指示する用語は、単に本願の説明を容易且つ簡潔にするためのものであり、言及されている装置又は要素が特定の方向を有し、特定の方向で構成され作動されることを指示又は示唆しているものではなく、本願を限定するものと理解すべきではない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、説明をする目的のみであり、相対的重要性を指示又は示唆しているものと理解すべきではない。「垂直」は厳密な意味での垂直ではなく、誤差の許容範囲内である。「平行」は厳密な意味での平行ではなく、誤差の許容範囲内である。
【0036】
以下の記載において出現する方位語は、いずれも図中に示す方向であり、本願の具体的な構成を限定するものではない。なお、本願の記載において、特に明確な規定や限定がない限り、「装着」、「繋がる」、「接続」という用語は、広義的に理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体接続であってもよい。直接的に接続してもよいし、中間媒体を介して間接的に接続してもよい。当業者にとって、具体的な状況に応じて、上記用語の本願における具体的な意味を把握することができる。
【0037】
電気自動車とは、動力電池から動力が供給される自動車という。
図1に示すように、電気自動車の動力システム100は、動力電池10と、インバータ20と、モータ30と、モータコントローラ(MotorControllerUnit:MCU)40とを備えており、モータ30としては永久磁石式モータが挙げられる。動力電池10の正負極はインバータ20の直流側に接続され、インバータ20の交流側はモータ30の固定子巻線に接続されている。動力電池10は、インバータ20を介してモータに給電する。MCU40は、モータの運転状態データを受信したり、モータ制御信号を送信したりするための複数の入力端子を備えている。MCU40は、モータ制御信号、モータ運転状態データ及び動力電池の運転状態データに基づいて、パルス幅変調(PulseWidthModulation、略称:PWM)信号を生成し、インバータ20からモータ30に供給する電圧及び電流の大きさを制御して、モータ30の回転数を制御することによって、自動車の走行速度制御を実現する。
【0038】
図2に示すように、動力電池10は、電池モジュール101と、電池管理システム(BatteryManagementSystem、略称:BMS)102と、補助構造103とを備えている。このうち、電池モジュール101は、複数の動力電池セルが直並列に接続されて構成されており、電池セルは動力電池の中核部材であり、動力電池から給電するための源である。電池管理システム102は、主に、充放電管理、高圧制御、電池状態評価、電池データ収集及び電池保護、電池熱管理を行うように機能する。補助構造103は、一般的に、外枠、電気的接続手段、絶縁部材等から構成される。外枠は、電池モジュール等を保護、支持するように機能し、電気的接続手段は、例えばインバータのような他の電気機器を接続するように機能し、絶縁部分は、絶縁保護するように機能している。
【0039】
ここで、電池管理システム102における熱管理機能は、動力電池が適正温度範囲で作動していることを確保するためのものである。熱管理機能は主に電池温度の正確な測定と監視を実現するものであり、電池パックの温度が高すぎる場合に有効に放熱し、低温条件で急速に加熱し、電池パックの温度場の均一な分布を確保する。ここで、低温条件での急速加熱とは、電池セル温度が低い地域で使用する場合、動力電池を定格電池セル温度まで加熱して、動力電池が安定して最適性能を発揮するようにすることという。
【0040】
従来の動力電池加熱方式は、間接加熱と直接加熱に分けられる。間接加熱とは、動力電池の外部に熱源を置いて加熱することという。間接加熱方法としては、空気加熱、液体加熱、加熱膜加熱等が挙げられる。加熱源によって電池の加熱速度が異なる。電池を外部熱源で加熱することにより、熱伝導媒体に熱損失が生じるため、間接加熱の効率が高くない。
【0041】
直接加熱とは、動力電池を内部で加熱することという。そのうち、通常な直接加熱方式は、内部抵抗加熱であり、具体的には、モータ回転子を固定し、インバータの制御端にPWM信号を入力し、動力電池と固定子巻線が閉回路を形成し、固定子巻線が電気エネルギーを貯蔵するということである。固定子巻線のインダクタンス特性により、固定子巻線が交流電流を電池に供給し、動力電池が交流電流を自己内部抵抗に流すことによって加熱される。低温環境では動力電池の内部抵抗が大きいため、動力電池の加熱効率が高い。
【0042】
しかしながら、従来の動力電池内部抵抗による加熱方式では、モータは、動力電池に加熱電流を供給する際に、固定子巻線をエネルギー貯蔵素子として用いて母線電流の交番を実現している。このような方式は、モータの正常作動時の磁界分布を変化させて、モータ内部の力のアンバランスを生じさせ、モータの振動や騒音の発生を引き起こしやすく、電気自動車のNVH三相指標が規格を満たさないようになる。このうち、NVHはNoise、Vibration、Harshnessの略称であり、それぞれ騒音、振動、音響振動の粗さを表し、自動車の快適さを評価する重要な指標である。
【0043】
上記課題を解決するために、本願の実施例は、制御方法、装置、動力システム及び電気自動車を提供する。本願発明は、q軸電流又はq軸電圧を0に制御し、d軸に電圧又は電流を全て印加してモータ出力トルクを0にすると共に、モータのインダクタンスを利用して蓄電を行い、電池の自己発熱機能を実現するものである。モータのd軸電圧又は電流を正弦波に制御した上で、d軸電圧又は電流の周波数をランダムに変化させることによって、余分な電流高調波成分を導入して、電池の自己加熱運転状態で、モータの径方向の電磁力を固定子に均一に分布させて、自己加熱運転状態でのモータの騒音を低減する。また、d軸電圧又は電流の周波数をランダムに変化させ、d軸電圧又は電流の振幅値を周期的に変化させることにより、電流高調波成分をより多く導入することができ、固定子全体にラジアル電磁力を均一に分散させることができ、動力電池加熱中の振動騒音を大幅に低減することができる。
【0044】
本願の一実施例は、
図1に示す動力システムのモータコントローラMCUに適用される制御方法であって、MCUは、動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、インバータを制御して動力電池から供給される電気をモータに給電され周波数がランダムに変化する交流電気に変換する第1制御信号を、インバータに送信することを含む制御方法を提供する。
【0045】
図3に示すように、本願の一実施例は、
図1に示す動力システムに適用され、以下のステップを含む制御方法を提供する。
【0046】
S201. BMSは、動力電池の電池セル温度を取得する。
【0047】
ここで、動力電池の電池セル温度をリアルタイムで監視するように、温度センサを動力電池の内部に配置し、温度センサは、検出した電池セル温度をBMSに送信する。
【0048】
S202. フルビークルコントローラユニット(Vehicle control unit、VCU)は、電池セル温度が動力電池加熱条件を満たすと判断した場合、加熱指令をMCUに送信し、MCUは加熱指令を受信した後、第1制御信号をインバータに送信する。
【0049】
ここで、動力電池加熱条件とは、動力電池の電池セル温度が最低作動温度よりも低いことを指す。動力電池の電池セル温度が最低作動温度よりも低い場合は、動力電池の電池セル温度が動力電池加熱条件を満たすことを意味する。動力電池の電池セル温度が最低作動温度以上である場合は、動力電池の電池セル温度が動力電池加熱条件を満たしていないことを意味する。
【0050】
いくつかの実施例では、電池セル温度が動力電池加熱条件を満たし、かつモータが非駆動運転状態にあるとVCUが判断した場合、加熱指令をMCUに送信するか、又は電池セル温度が最低作動温度を下回り、かつモータが非駆動運転状態にあるとVCUが判断した場合、加熱指令をMCUに送信する。
【0051】
第1制御信号は、動力電池供給電流を、永久磁石式モータに給電され周波数がランダムに変化する交流電流に変換するようにインバータを制御して、動力電池を自己抵抗で自己加熱するためのものである。
【0052】
本願の実施例に係る制御方法では、動力電池の電池セル温度が電池自己加熱条件を満たしたときに、インバータによって動力電池供給電流を周波数がランダムに変化する交流電流に変換するための第1制御信号を生成し、新たな周波数成分を導入することにより、本来集中していた径方向の電磁力を固定子全体に均一に分散させて動力電池加熱中の振動騒音を低減する。
【0053】
本願の他の実施例は、
図1に示す動力システムに適用され、以下のステップを含む制御方法を提供する。
【0054】
S301. BMSは、動力電池の電池セル温度を取得する。
【0055】
動力電池の電池セル温度をリアルタイムで監視するように、温度センサを動力電池の内部に配置し、温度センサは、検出した電池セル温度をBMSに送信する。
【0056】
S302. VCUは、電池セル温度が動力電池加熱条件を満たすと判断した場合、加熱指令をMCUに送信し、MCUは加熱指令を受信した後、複数の設定周波数をランダムに生成し、各設定周波数に応じて各設定周波数の継続時間を決定する。
【0057】
ここで、電池セル温度が動力電池の最低作動温度よりも小さい場合には、複数の設定周波数をランダムに生成する。この設定周波数は、モータに電流を流す周波数であり、つまり、この設定周波数の交流電気を用いてモータに給電する。
【0058】
各設定周波数の継続時間を決定する具体的な方法の1つとしては、設定周波数に対応する全周期分の時間長を設定周波数の継続時間とする。設定周波数をfとすると、設定周波数に対応する全周期分の時間長は1/fであり、つまり、設定周波数毎を1周期の時間長継続させる。
【0059】
各設定周波数の継続時間を決定する具体的な方法のもう1つとしては、設定周波数に対応する半周期分の時間長を設定周波数の継続時間とする。設定周波数をfとすると、設定周波数に対応する半周期分の時間長は1/2fであり、つまり、設定周波数毎を半周期分の時間長を継続させる。
【0060】
S303. MCUは、設定周波数及び各設定周波数の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定し、q軸成分の参考信号行列をゼロ行列に設定する。
【0061】
ここで、ランダムに生成される設定周波数をf1、f2、・・・、fnとする。設定周波数f1に対する継続時間長をt11、設定周波数f2に対する継続時間長をt12、…、設定周波数fnに対する継続時間長をt1nとする。
【0062】
d軸成分の参考値行列は、複数の参考値を含み、各参考値は、振幅参考値成分と、周波数参考値成分と、継続時間参考値成分とを含む。振幅参考値成分は任意の数値I1とすることができ、周波数参考値成分は設定周波数であり、継続時間参考値成分は設定周波数に対応する継続時間長である。すなわち、d軸成分の参考値行列は{(I1,f1,t11)、(I1,f2,t12)、…、(I1,f1,t1n)}である。
【0063】
q軸成分の参考値行列は、複数の参考値を含み、各参考値は、振幅参考値成分と、周波数参考値成分と、継続時間参考値成分とを含む。振幅参考値成分、周波数参考値成分、継続時間参考値成分は全てゼロである。すなわち、q軸成分の参考値行列は{(0,0,0)、(0,0,0)、…、(0,0,0)}である。
【0064】
S304. MCUは、d軸成分の参考値行列、q軸成分の参考値行列及び永久磁石式モータのモータパラメータに基づいて、第1制御信号を生成する。
【0065】
ここで、永久磁石式モータのモータパラメータは、
図4に示すように、永久磁石式モータの加速度、回転数、位置及びモータ固定子電流を含む。
【0066】
MCUは、モータの回転数と位置に基づいて固定子電流を座標変換して、永久磁石式モータの固定子電流のd軸リアルタイム成分と固定子電流のq軸リアルタイム成分を取得する。
【0067】
MCUは、さらに、固定子電流のd軸リアルタイム成分、永久磁石式モータの加速度及び固定子電流のd軸成分の参考値に基づいて、第1比例積分制御手段の入力値を生成する。第1比例積分制御手段から、固定子電圧のd軸参考値を出力する。
【0068】
MCUは、さらに、固定子電流のq軸リアルタイム成分及びq軸成分の参考値に基づいて、第2比例積分制御手段の入力値を生成する。第2比例積分制御手段から、固定子電圧のq軸参考値を出力する。
【0069】
MCUは、さらに、固定子電圧のd軸参考値、固定子電圧のq軸参考値、モータの回転数と位置を座標変換して固定子電圧の参考値を取得し、固定子電圧の参考値に基づいて第1制御信号を生成する。第1制御信号は、スペースベクトルパルス幅変調信号(SpaceVectorPulseWidthModulation、略称:SVPWM)である。
【0070】
S305. VCUは、電池セル温度が動力電池加熱条件を満たすと判断した場合、加熱指令をMCUに送信し、MCUは加熱指令を受信した後、第1制御信号をインバータに送信する。
【0071】
ここで、第1制御信号は、動力電池供給電流を、周波数がランダムに変化する交流電流に変換するように、インバータを制御するためのものである。
図5に示すように、交流電流の周波数は、順にf1、f2、・・・、fnであり、周波数f1に対する継続時間長はt11、周波数f2に対する継続時間長はt12、・・・、周波数fnに対応する継続時間長はt1nであり、交流電流の振幅値はI1である。
【0072】
周波数がランダムに変化する交流電流を永久磁石式モータに供給して、動力電池を自己抵抗で自己加熱する。次に、インバータによる動力電池の加熱の制御について説明する。
【0073】
図6に示すように、第1制御信号はインバータを制御し、MCUは、A相アーム上のパワースイッチング素子Sa、B相アーム上のパワースイッチング素子Sb’、C相アーム上のパワースイッチング素子Sc’をオンにして2つの放電回路を形成する。一方の放電回路は、動力電池→Sa→固定子巻線U→固定子巻線V→Sb’→動力電池であり、他方の放電回路は、動力電池→Sa→固定子巻線U→固定子巻線W→Sc’→動力電池である。動力電池は放電して電気エネルギーを三相固定子巻線上の電磁エネルギーに変換して、電子回転子は静止を保持し、固定子巻線はエネルギーを貯蔵し、動力電池の両端に母線電流の交番を実現して電池を加熱する。
【0074】
次のタイミングで、A相アーム上のパワースイッチング素子Sa、B相アーム上のパワースイッチング素子Sb’、C相アーム上のパワースイッチング素子Sc’を同時にオフにすると、固定子巻線の電流が急激に変化しない特性のため、
図7に示すようなリターン電流回路となる。2つのリターン電流回路は、それぞれ、動力電池→ダイオードD2→固定子巻線U→固定子巻線V→ダイオードD3→動力電池、動力電池→ダイオードD2→固定子巻線U→固定子巻線W→ダイオードD5→動力電池である。モータの固定子巻線の放電中と充電中の両方において、動力電池に電流が流れ、これによって電池パックを加熱する。
【0075】
放電回路における加熱電流の大きさは、パワースイッチング素子がオンになるタイミングによって決定され、つまり、パワースイッチング素子を制御するための制御信号の周波数f及びデューティ比Dによって決定される。
【0076】
本願の実施例に係る制御方法では、動力電池の電池セル温度が電池自己加熱条件を満たした場合に、設定周波数をランダムに生成し、設定周波数に応じて各設定周波数に対応する継続時間を決定し、設定周波数と継続時間に応じて第1制御信号を生成することにより、インバータで動力電池供給電流を設定周波数の交流電流に変換し、新たな周波数成分を導入することにより、本来集中していた径方向の電磁力を固定子全体に均一に分散させて動力電池加熱中の振動騒音を低減する。
【0077】
本願の他の実施例は、
図1に示す動力システムに適用され、以下のステップを含む制御方法を提供する。
【0078】
S401. BMSは動力電池の電池セル温度を取得する。
【0079】
動力電池の電池セル温度をリアルタイムで監視するように、温度センサを動力電池の内部に配置し、温度センサは、検出した電池セル温度をBMSに送信する。
【0080】
S402. VCUは、電池セル温度が動力電池加熱条件を満たすと判断した場合、加熱指令をMCUに送信し、MCUは加熱指令を受信した後、第1制御信号をインバータに送信する。
【0081】
ここで、電池セル温度が最低作動温度よりも低い場合には、第1制御信号をインバータに送信する。第1制御信号は、動力電池供給電流を、永久磁石式モータに給電され周波数がランダムに変化する交流電流に変換するように、インバータを制御するためのものである。
【0082】
S403. MCUは、環境温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合、第2制御信号をインバータに送信する。
【0083】
ここで、電池セル温度が最低作動温度よりも低い場合も、インバータに第2制御信号を送信する。第2制御信号は、動力電池供給電流を、永久磁石式モータに給電され振幅値が周期的に変化する交流電流に変換するように、インバータを制御するためのものである。
【0084】
図8に示すように、インバータは、第1制御信号及び第2制御信号の制御で、動力電池供給電流を、振幅値が周期的にが変化し且つ周波数がランダムに変化する交流電流に変換して、動力電池を自己抵抗で自己加熱する。
【0085】
本願の実施例に係る制御方法では、動力電池の電池セル温度が自己発熱条件を満たした場合に、第1制御信号と第2制御信号とを生成して、動力電池供給電流をインバータで周波数がランダムに変化し且つ振幅値が周期的に変化する交流電流に変換し、周波数成分をより多く導入することにより、本来集中していた径方向の電磁力を固定子全体に均一に分散させて、動力電池加熱中の振動騒音を大幅に低減する。
【0086】
本願の他の実施例は、
図1に示す動力システムに適用され、以下のステップを含む制御方法を提供する。
【0087】
S501. BMSは、動力電池の電池セル温度を取得する。
【0088】
S502. VCUは、電池セル温度が動力電池加熱条件を満たすと判断した場合、加熱指令をMCUに送信し、MCUは加熱指令を受信した後、複数の設定周波数をランダムに生成し、各設定周波数に応じて各設定周波数の継続時間を決定する。
【0089】
S503. MCUは、設定周波数及び各設定周波数の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定し、q軸成分の参考信号行列をゼロ行列に設定する。
【0090】
S504. MCUは、d軸成分の参考値行列、q軸成分の参考値行列及び永久磁石式モータのモータパラメータに基づいて、第1制御信号を生成する。
【0091】
S505. MCUは、第1制御信号をインバータに送信する。
【0092】
なお、S501~S505については、上記実施例で詳細に説明したので、ここでは説明を省略する。
【0093】
S506. MCUは、動力電池の加熱パラメータと最大騒音閾値に応じて、複数の設定振幅値と各設定振幅値の継続時間を決定する。
【0094】
ここで、加熱パラメータは加熱速度と加熱時間長を含み、最大騒音閾値はモータの振動騒音閾値である。設定振幅値が大きいほど継続時間が長くなり、加熱速度が大きいほど加熱時間長が短くなる。
【0095】
設定振幅値を決定する際、定振幅値と定周波数の運転状態での必要な加熱速度に対応する電流振幅値Id0を得ることができ、Id0を振幅値の平均値として複数の設定振幅値を生成し、設定振幅値の数は今回は限定されていない。
【0096】
S507. MCUは、設定振幅値と各設定振幅値の継続時間に応じて、d軸成分の参考値行列を決定し、q軸成分の参考値行列をゼロ列に設定する。
【0097】
ここで、設定振幅値をI1、I2、…、Inとする。設定周波数I1に対応する継続時間長をt21、設定周波数I2に対応する継続時間長をt22、…、設定周波数Inに対する継続時間長をt2nとする。
【0098】
d軸成分の参考値行列は、複数の参考値を含み、各参考値は、振幅参考値成分と、周波数参考値成分と、継続時間参考値成分とを含む。また、周波数参考値成分は任意の数値f1とすることができ、振幅参考値成分は設定振幅値であり、継続時間参考値成分は設定振幅値に対応する継続時間長である。すなわち、d軸成分の参考値行列は{(I1,f1,t21)、(I2,f1,t22)、…、(In,f1,t2n)、(I1,f1,t21)、(I2,f1,t22)、…、(In,f1,t2n)、…}である。
【0099】
q軸成分の参考値行列は、複数の参考値を含み、各参考値は、振幅参考値成分と、周波数参考値成分と、継続時間参考値成分とを含む。振幅参考値成分、周波数参考値成分、継続時間参考値成分は全てゼロである。すなわち、q軸成分の参考値行列は{(0,0,0)、(0,0,0)、…、(0,0,0)}である。
【0100】
一実施例では、d軸成分の参考値行列は、振幅参考値が順次増加又は減少し、すなわち、I1≦I2…≦In、あるいはI1≧I2…≧Inであり、振幅値が周期的に増加又は周期的に減少する交流電流を採用してモータに給電することによって、周波数成分をより多く導入することができ、本来集中していた径方向の電磁力を固定子全体に均一に分散させて、動力電池加熱中の振動騒音を大幅に低減する。
【0101】
S508. MCUは、d軸成分の参考値行列、q軸成分の参考値行列及び永久磁石式モータのモータパラメータに基づいて、第2制御信号を生成する。
【0102】
ここで、永久磁石式モータのモータパラメータは、モータの位置、速度、加速度、固定子電流を含み、第2制御信号は、
図4で説明したのと同様に生成されるので、その説明を省略する。
【0103】
S509. MCUは、環境温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合、第2制御信号をインバータに送信する。
【0104】
ここで、電池セル温度が最低作動温度よりも低い場合も、インバータに第2制御信号を送信する。第2制御信号は、動力電池供給電流を、永久磁石式モータに給電され振幅値が周期的に変化する交流電流に変換するように、インバータを制御するためのものである。
【0105】
【0106】
本願の実施例の制御方法では、動力電池の電池セル温度が電池自己加熱条件を満たした場合に、設定周波数をランダムに生成し、設定周波数に応じて各設定周波数に対応する継続時間を決定して、設定周波数と継続時間に応じて第1制御信号を生成し、動力電池の加熱パラメータと最大騒音閾値に応じて複数の設定振幅値と各設定振幅値の継続時間を決定して、設定振幅値と継続時間に応じて第2制御信号を生成し、第1制御信号と第2制御信号との協働制御で、動力電池供給電流をインバータで周波数がランダムに変化し且つ振幅値が周期的に変化する交流電流に変換し、周波数成分をより多く導入することにより、本来集中していた径方向の電磁力を固定子全体に均一に分散させて、動力電池加熱中の振動騒音を大幅に低減する。
【0107】
図9に示すように、本願は、動力電池の電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、インバータを制御して動力電池から供給される電気をモータに給電され周波数がランダムに変化する交流電気に変換する第1制御信号を、インバータに送信する制御装置600を提供する。
【0108】
一実施例では、制御装置600は、
【0109】
動力電池の電池セル温度を取得する取得モジュール601と、
【0110】
電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たした場合に、加熱指令を制御モジュール603に送信する送信モジュール602と、
【0111】
加熱指令を受信した後、インバータを制御して動力電池供給電流を永久磁石式モータに給電され周波数がランダムに変化する交流電流に変換する第1制御信号を、インバータに送信する制御モジュール603とを含む。
【0112】
いくつかの実施例では、制御モジュール603は、さらに、複数の設定周波数をランダムに生成して、各設定周波数に基づいて各設定周波数の継続時間を決定し、設定周波数と各設定周波数の継続時間に基づいてd軸成分の参考値行列を決定して、q軸成分の参考信号行列をゼロ行列に設定し、d軸成分の参考値行列、q軸成分の参考値行列及び永久磁石式モータのモータパラメータに基づいて第1制御信号を生成するように構成される。
【0113】
いくつかの実施例では、制御モジュール603は、設定周波数に対応する全周期分の時間長を設定周波数の継続時間とし、又は、設定周波数に対応する半周期分の時間長を設定周波数の継続時間とするように構成される。
【0114】
いくつかの実施例では、送信モジュール602は、さらに、電池セル温度が予め設定された動力電池加熱条件を満たしたとき、インバータを制御して動力電池供給電流を永久磁石式モータに給電され振幅値が周期的に変化する交流電流に変換する第2制御信号を、インバータに送信するように構成される。
【0115】
いくつかの実施例では、制御モジュール603は、さらに、動力電池の加熱パラメータと最大騒音閾値に基づいて、複数の設定振幅値及び各設定振幅値の継続時間を決定し、設定振幅値と各設定振幅値の継続時間に基づいて、d軸成分の参考値行列を決定して、q軸成分の参考値行列をゼロ列に設定し、d軸成分の参考値行列、q軸成分の参考値行列及び永久磁石式モータのモータパラメータに基づいて、第2制御信号を生成する。
【0116】
いくつかの実施例では、加熱パラメータは、加熱速度と加熱時間長を含む。
【0117】
いくつかの実施例では、d軸成分の参考値行列における振幅参考値は、周期的に増加又は減少する。
【0118】
いくつかの実施例では、制御モジュール603は、さらに、電池セル温度が動力電池の最低作動温度よりも低いかどうかを判定するように構成される。
【0119】
本願の実施例は、動力電池と、インバータと、モータと、上記実施例で説明した制御方法のステップをそれぞれ実行するためのモータコントローラとを備えた動力システムを提供する。一方、周波数の変化により、モータの固定子、回転子鉄心、永久磁石に大きな渦電流損が発生し、モータの発熱量が大きくなるので、モータに放熱手段を追加して、モータの焼損を防止することができる。
【0120】
本願の実施例は、動力電池と、インバータと、モータと、上記実施例で説明した制御方法のステップをそれぞれ実行するためのモータコントローラとを備えた動力システムを備えた電気自動車を提供する。
【0121】
以上、いくつかの実施例を参照して本願を説明したが、本願の範囲を逸脱しない状況で、種々の変形が可能であり、その中の構成要素を均等物で置き換えることができる。特に、各実施例に記載されている各技術的特徴は、構造的なコンフリクトが生じない限り任意に組み合わせることができる。本願は、本明細書に開示された特定の実施例に限定されるものではなく、請求の範囲に含まれるすべての技術案を含む。