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特許7611169バイアスのかかった結紮部材を備えた歯列矯正用ブラケット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】バイアスのかかった結紮部材を備えた歯列矯正用ブラケット
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/30 20060101AFI20241226BHJP
   A61C 7/28 20060101ALI20241226BHJP
   A61C 7/12 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
A61C7/30
A61C7/28
A61C7/12
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021564823
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 US2020030864
(87)【国際公開番号】W WO2020223564
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】62/842,461
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508328833
【氏名又は名称】ワールド クラス テクノロジー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100225060
【弁理士】
【氏名又は名称】屋代 直樹
(72)【発明者】
【氏名】アルバート ルイズ-ヴェラ
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ベイスン
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-058742(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03170472(EP,A1)
【文献】特表2015-522394(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0130189(US,A1)
【文献】特表2011-529727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 7/30
A61C 7/28
A61C 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯に取り付け可能なブラケット本体(12,1112)であって、該ブラケット本体の第1側から反対側の第2側まで延在するアーチワイヤースロット(30)を備え、該アーチワイヤースロットは、アーチワイヤーをその中に受け入れられるように寸法が決められており、該ブラケット本体はさらに、シート(50,1150)を備える、ブラケット本体と、
前記ブラケット本体に取り付け可能で、閉鎖位置と開放位置との間で移動可能な結紮部材(26,1126)であって、該結紮部材が閉鎖位置にあるときに該結紮部材の少なくとも一部が前記アーチワイヤースロットを覆って延在して、該アーチワイヤースロット内に前記アーチワイヤーを保持し、かつ、前記結紮部材が前記開放位置にあるときに前記結紮部材が前記アーチワイヤースロットからオフセットされて、前記アーチワイヤーへのアクセスを提供し、該結紮部材は、その下側に形成されたスロット(77)を備え、該スロットは、停止面(86)およびガイド面(82、1182)を含み、前記結紮部材は、該結紮部材の下側に形成されたポケット(92、1192)をさらに備える、結紮部材と、
前記ブラケット本体の前記シート内に挿入され、保持される下部を含む弾性バイアス部材(48,148)であって、該弾性バイアス部材は、クロス部材(58,158)を支持するステム(56,156)をさらに含み、該クロス部材は、突出部(60,160)をさらに含み、ここで、前記突出部は前記ポケット内に延在し、かつ前記停止面に隣接して、前記結紮部材を前記開放位置に保持し、およびここで、前記突出部は、前記ガイド面に対してバイアス力を加え、前記結紮部材を前記閉鎖位置に保持する、弾性バイアス部材と、
を含む、歯列矯正用ブラケット(10,1100)。
【請求項2】
前記クロス部材は、前記結紮部材が前記開放位置と前記閉鎖位置との間で移動する際に、前記突出部に対して該結紮部材によって加えられる力に応じて、前記ステム周りでの弧状経路に沿って屈曲する、請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項3】
前記ステム、前記クロス部材、および前記突出部を含む前記弾性バイアス部材が、単一の、一体型構成要素として形成されている、請求項1または2に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項4】
前記弾性バイアス部材が、前記ステムおよび前記クロス部材がそれぞれ、第1の平面(72,172)と、それらの間に延在する縁面(70,170)によって分離された反対側の第2の平面(74,174)とを含むように、平坦なストック材料から形成される、請求項3に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項5】
前記結紮部材が、前記スロット内に形成された隆起部(80,1180)をさらに含み、該隆起部が、前記停止面および前記ガイド面を含む、請求項1~4のいずれかに記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項6】
前記結紮部材が、前記スロット内に形成された隆起部(80,1180)をさらに含み、前記隆起部が、前記停止面および前記ガイド面を含み、ここで、前記ガイド面は傾斜しており、また、前記弾性バイアス部材の前記突出部は、前記結紮部材が前記閉鎖位置から前記開放位置へ移動する際に、前記傾斜したガイド面に乗りかかる、請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項7】
前記ポケットが、前記結紮部材の前記下側の前壁(94、1194)と前記隆起部との間の該結紮部材の前端に隣接して形成されている、請求項5または6に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項8】
前記クロス部材が、ギャップ(90)により前記突出部からオフセットされた第2の突出部(64)をさらに含み、かつ、前記隆起部が、前記結紮部材が前記開放位置にあるときに前記突出部と前記第2の突出部との間の前記ギャップ内に位置付けられる、請求項5または6に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項9】
前記弾性バイアス部材が、前記下部に沿って配置された1つ以上のリブ(68,168)をさらに含み、該1つ以上のリブは、前記下部を前記ブラケット本体の前記シートに固定する、請求項1~8のいずれか一項に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項10】
前記シートが、前記ブラケット本体の下側に沿って形成された開口部を含み、かつ、前記弾性バイアス部材の前記下部が、前記開口部を通って延在する、請求項9に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項11】
前記弾性バイアス部材が、第1の平面(72,172)、反対側の第2の平面(74,174)、および該第1の平面と該第2の平面との間に延在する縁面(70,170)とをさらに含み、かつ、前記縁面が、前記結紮部材のスライド方向にほぼ直交して配置される、請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項12】
前記結紮部材が、前記開放位置と前記閉鎖位置との間の第1の軸に沿った運動方向に移動し、かつ、前記クロス部材が、前記第1の軸に平行な第2の軸および前記結紮部材の前記運動方向に沿って配置される、請求項1~11のいずれか一項に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項13】
前記ブラケット本体と前記結紮部材との間に形成されたチャネル(78,178)をさらに備え、前記チャネルは、前記アーチワイヤースロットに対して開口しており、かつ該アーチワイヤースロットと連通している、請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項14】
前記チャネルが、前記ブラケット本体の後部に沿って開放する、請求項13に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項15】
前記アーチワイヤースロットが、第1の壁(108)、反対側の第2の壁(110)、およびそれらの間に延在する底面(106)を含み、前記ブラケット本体が、前記底面と前記第1の壁との間に配置された第1のチャネル(112)と、該底面と前記第2の壁との間に配置された第2のチャネル(114)とをさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項16】
前記第1のチャネルおよび前記第2のチャネルがそれぞれ、前記アーチワイヤースロットに沿って、前記ブラケット本体の前記第1側から前記反対側の第2側まで延在する、請求項15に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項17】
前記結紮部材は、前記スロット内に形成された隆起部(80、1180)をさらに含み、前記隆起部は、前記停止面と、前記ガイド面が該隆起部に形成された湾曲した端部(84、1184)につながる該ガイド面とを含み、ここで、前記弾性バイアス部材の前記突出部は、前記結紮部材が前記開放位置と前記閉鎖位置との間を移動する際に、湾曲した端部に乗りかかる、請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項18】
前記弾性バイアス部材の前記ステムは、前記シートから前記結紮部材の前記下側の前記スロットに向かってほぼ直立して延在する、請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【請求項19】
前記弾性バイアス部材の前記突出部は、前記結紮部材が前記閉鎖位置から前記開放位置へ移動する際に、前記ガイド面に乗りかかる、請求項1に記載の歯列矯正用ブラケット。
【発明の詳細な説明】
【関連出願データ】
【0001】
本出願は、2019年5月2日に出願された米国仮特許出願第62/842,461号に基づく非仮出願であって、その利益を米国特許法第119条(e)項により主張するものであり、その開示は、全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本出願は、一般に、自己結紮式歯列矯正用ブラケット、より具体的には、全体的な性能を改善するように設計されたバイアスのかかった結紮部材を有するそのようなブラケットに関する。
【背景技術】
【0003】
歯列矯正治療は通常、患者の歯に機械的な力を加えて、不適切な位置にある歯を正しい位置に強圧するように設計された歯列矯正デバイスを含む。歯列矯正治療の一形式には、自己結紮式歯列矯正用ブラケットの使用を含み、単一のブラケットが、結合材料または他の接着剤によって歯のサブセット中の個々の歯に接着される。この構成では、アーチワイヤーを締める際にブラケットに圧力がかかり、それによって順次、歯が所望の位置および向きに移動するように強圧される。
【0004】
いくつかの設計では、自己結紮式ブラケットは、アーチワイヤーをスロット内の所定の位置に保持するのを助けるために、バネまたは他のバイアス要素を備えた結紮ドアまたはスライドを含み得る。結紮スライドは、閉鎖位置と開放位置との間で移動可能であり、ブラケットのアーチワイヤースロット内にアーチワイヤーを挿入および保持することを可能にする。そのような設計において、バイアス要素は、使用を改善するために、結紮スライドを開放位置または閉鎖位置のいずれかに保持する保持力を提供する。多くの場合、結紮スライドは通常、歯列矯正治療の過程で約6~10回繰り返される(例えば、開放および閉鎖される)。したがって、従来の自己結紮式ブラケットは、短いライフサイクルでバネの保持力を最適化するように設計されている。しかしながら、時折、特定の治療のサイクル数は、更なるアーチワイヤーの調整、更なるアーチワイヤーの変更、または補助治療機械により増加し得る。さらに、患者の中には結紮スライドの操作方法を学習し、結紮スライドを開放および閉鎖することによりブラケットを「いじる」場合があり、これにより、開放および閉鎖サイクルが追加され、時間の経過とともにバネの保持力が低下する。バネの保持力の過度の低下により、治療段階中に結紮スライドが不注意に開放し得、ブラケットからアーチワイヤーが外れる可能性を高め、歯に十分な機械的力が加えられないために治療効率の低下を招きかねない。さらに、アーチワイヤーがスロットから外れると、施術者は何らかの問題に対処する必要があり、および/または必要に応じてブラケット/アーチワイヤーを交換する必要があり、これにより患者の全体的な治療時間が長びく恐れがある。他の例では、バネの保持力が低下すれば、ブラケットから結紮スライドが完全に外れることになりかねない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明者らは、様々な使用および状況に対して最適な性能を確保すべく、多数の開放/閉鎖サイクルに対して効果的かつ一貫した保持力を提供するように改良された設計の歯列矯正用ブラケットの必要性を特定した。このような設計は、結紮スライドを開放位置または閉鎖位置に保持する保持力の劇的な減少を経験することなく、結紮スライドおよびバイアス要素が許容できる開放および閉鎖サイクルの数量を最大化する。そのうえ、改良された設計により、結紮スライドが矯正ブラケットに固定され、ブラケットから完全に外れるのを防ぐ。さらなる態様および利点は、添付の図面を参照して進める、以下の例示的な実施形態の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態に従った歯列矯正用ブラケットの上面斜視図である。
図2】内部弾性バイアス部材の特徴を説明するために、図1の歯列矯正用ブラケットをスライドドアがブラケット本体から切り離された状態で示す。
図3】内部弾性バイアス部材の特徴を説明するために、図1の歯列矯正用ブラケットをスライドドアがブラケット本体から切り離された状態で示す。
図4】ブラケット本体の内部の特徴を説明するために、図1の歯列矯正用ブラケットをスライドドアおよびバイアス要素が取り外された状態で示す。
図5図1の歯列矯正用ブラケットの弾性バイアス要素を示す。
図6図1の歯列矯正用ブラケットの弾性バイアス要素を示す。
図7図1の歯列矯正用ブラケットの閉鎖状態を示す断面図である。
図8図1の歯列矯正用ブラケットの開放状態を示す断面図である。
図9A図1の歯列矯正用ブラケットに組み込み得る弾性バイアス要素の別の実施形態の図である。
図9B図1の歯列矯正用ブラケットに組み込み得る弾性バイアス要素の別の実施形態の図である。
図9C図1の歯列矯正用ブラケットに組み込み得る弾性バイアス要素の別の実施形態の図である。
図9D図1の歯列矯正用ブラケットに組み込み得る弾性バイアス要素の別の実施形態の図である。
図9E図1の歯列矯正用ブラケットに組み込み得る弾性バイアス要素の別の実施形態の図である。
図9F図1の歯列矯正用ブラケットに組み込み得る弾性バイアス要素の別の実施形態の図である。
図9G図1の歯列矯正用ブラケットに組み込み得る弾性バイアス要素の別の実施形態の図である。
図10図9A~9Gの弾性バイアス要素を組み込んだ図1の歯列矯正用ブラケットを閉鎖状態で示す断面図である。
図11図9A~9Gの弾性バイアス要素を組み込んだ図1の歯列矯正用ブラケットを開放状態で示す断面図である。
図12】別の実施形態に従った歯列矯正用ブラケットのアーチワイヤースロット内に配置された一対のチャネルの特徴を示す。
図13】別の実施形態に従った歯列矯正用ブラケットのアーチワイヤースロット内に配置された一対のチャネルの特徴を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、歯列矯正用ブラケットシステムの様々な実施形態ならびにその詳細な構造および動作について、図面を参照して説明する。本明細書全体を通して、「一実施形態」、「ある実施形態」、または「いくつかの実施形態」とは、記載された特徴、構造、または特性が歯列矯正用ブラケットの少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。従って、本明細書全体を通して様々な箇所における「一実施形態では」、「ある実施形態では」、または「いくつかの実施形態では」という語句は、必ずしもすべて同一の実施形態を指すとは限らない。さらに、説明される特徴、構造、および特性は、1つ以上の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。本明細書の開示を考慮して、当業者は、1つ以上の特定の詳細なしで、または他の方法、構成要素、材料などを用いて様々な実施形態を実施することができることを認識するであろう。
【0008】
以下の説明では、歯列矯正用ブラケットの特定の構成要素を詳細に説明する。いくつかの例では、実施形態のより適切な態様を曖昧にすることを避けるために、公知の構造、材料、または動作は詳細に示されていないか、または説明されていないことを理解されたい。さらに、実施形態が特定の歯列矯正用ブラケットの設計を例示および参照している場合があるが、他の実施形態は、記載された実施形態よりも追加のまたはより少ない構成要素を含んでもよい。
【0009】
図1は、歯列矯正用自己結紮式ブラケット10の例示的な実施形態を示す。ブラケット10は、閉鎖位置と開放位置との間でブラケット本体12に対して移動するように設計されたスライドドア26を備えるブラケット本体12を含む。以下の説明(特に明記しない限り)では、ブラケット10について、患者の上顎の歯の唇面に取り付けられて基準枠を確立するものとして言及する。例えば、図1に示されるブラケット本体12を参照すると、ブラケット本体12が患者の上顎の歯に取り付けられる場合、ブラケット本体12は、舌側14(図3も参照)、唇側16、咬合側18、歯肉側20、近心端22、および遠位端24を有する。本明細書でブラケット10を説明するために使用される唇、舌、近心、遠位、咬合、および歯肉などの用語は、この基準枠に関連している。しかしながら、歯列矯正用ブラケット10は、口腔内の他の歯および他の向きで使用され得るため、開示された主題の実施形態は、選択された基準枠および説明用語に限定されないことを理解されたい。例えば、ブラケット10はまた、下顎または上顎の前歯に配置してもよく、これは開示された主題の範囲内となり得る。当業者は、基準枠に変更があった場合、本明細書で使用される説明用語が直接適用されない場合があることを認識するであろう。開示された主題は、口腔内の位置および向きから独立していることが意図されており、図示された実施形態を説明するために用いられる相対的な用語は、図面と併せて明確な説明を提供することを意図している。従って、唇、舌、近心、遠位、咬合、および歯肉等の相対的な用語は、開示された主題を特定の位置または向きに限定するものではなく、代わりに、開示された主題の理解を支援するために提供されるものである。
【0010】
一般的に図1を参照すると、ブラケット10は、ブラケット本体12の舌側14上のベース構造28(図3を参照)を介して歯に取り付け可能なブラケット本体12を含む。ベース構造28は、接着剤または他の結合材料を受け入れるための一連の溝または隆起部を含むことで、歯との強固な連結を提供し、外れを防止することができる。ブラケット本体12は、ほぼ近心-遠位方向に、例えば近心端22から遠位端24までのように、ブラケット本体12にわたって第1の側から第2の側まで延在するアーチワイヤースロット30をさらに含む。アーチワイヤースロット30は、スロット30の長さ方向にわたって延在するほぼ平面状のベース表面32と、ベース表面32から唇側方向に上方に延在する、対向する側壁34、36とを含む。いくつかの実施形態では、側壁34、36は、ベース表面32に対して垂直であり、ほぼ直線的なアーチワイヤースロット30(例えば、ほぼ長方形または正方形の形状を有するスロット)を形成し、上記アーチワイヤースロット30は、ブラケット本体12の唇側16に沿って、並びに、近心端22および遠位端24に沿ってそれぞれ形成された開放端を有する。
【0011】
図2を参照すると、ブラケット本体12は、アーチワイヤー(図示せず)をアーチワイヤースロット30内に保持するために、ブラケット本体12の唇側16に配置されたスライド式結紮部材、すなわちスライドドア26をさらに含む。スライドドア26は、ベース38と、ブラケット本体12上に形成された対応する一対のガイド44、46内に摺動可能に受け入れられるように設計された一対のサイドレール40、42とを含む。スライドドア26が、ブラケット本体12内の所定の位置に挿入されると、サイドレール40、42およびガイド44、46は、スライドドア26が開放または閉鎖されるときに、スライドドア26の移動を歯肉-咬合方向に対して制限するように一緒に作動する。スライドドア26が閉鎖位置にあるとき、アーチワイヤーは、アーチワイヤースロット30内に下向きに強圧され、ブラケット本体12および患者の歯に圧力を加えて、所望の歯の移動をもたらす。
【0012】
図2図4をまとめて参照すると、ブラケット本体12は、以下、特に図5図8に関してさらに説明されるように、スライドドア26に力を加えてスライドドア26を閉鎖位置または開放位置のいずれかに維持するのを助けるように設計された弾性バイアス部材48をさらに収容する。特に図2図4を参照すると、バイアス部材48は、ほぼ直立して舌-唇方向に沿って延在し、バイアス部材48の下部は、ブラケット本体12の唇面52に沿って形成されたシート50に挿入され、そのシート内に保持され、シート50は、唇面52に沿って開き、ブラケット本体12を通って唇面52から、ブラケット本体12の舌側14上のベース表面28まで下向きに延在する。(図3を参照)。1つの好ましい構成では、シート50は、図3に示されるようにベース表面28の上方向へ開放するが、他の実施形態では、シート50は、ベース表面28に沿って閉鎖してもよい。シート50がベース表面28の上方向へ開放する構成では、接着剤を舌側14から、または唇面52から塗布して、バイアス部材48の下部をブラケット本体12に接着してもよい。他の実施形態では、シート50は、シート50の中央部分に向かって延在する隆起したプロファイルをそれぞれが有する1つ以上の側壁54を含んでもよく、側壁54は、バイアス部材48を所定の位置にさらに固定するために、シート50内のバイアス部材48に抵触し、しっかりと把持するように設計される。バイアス部材48のさらなる詳細は、以下に提供される。
【0013】
図5図8は、バイアス部材48の特徴、および必要に応じてスライドドア26を開放状態または閉鎖状態のいずれかに保持するためのスライドドア26とのその相互作用をまとめて示している。図5および図6は、一実施形態に従ったバイアス部材48の例示的な実施形態を示している。一般的に図5および図6を参照すると、バイアス部材48は、ほぼ直立したステム56と、ステム56によってほぼ直交して支持および配置されたクロス部材58とを備えたほぼT字型の構成で配置されている。いくつかの実施形態では、クロス部材58は、代わりに直立したステム56に対して傾斜または角度を付け、必要に応じて保持力を変化させてもよい。クロス部材58は、その第1の端部62でクロス部材58から上向きに延在する第1の突出部60と、その第2の端部66に沿ってクロス部材58から上向きに延在する第2の突出部64とを含む。突出部60、64は、ステム56の軸にほぼ平行であり、舌-唇方向に沿って延在する各々の軸に沿って配置され、突出部60、64は、それらの間のギャップまたは開口部90の境界を明確にするために互いにオフセットされる。いくつかの実施形態では、ステム56は、第1の(前面)表面72と反対側の第2の(背面)表面74との間に延在する側面70に沿って形成された1つ以上のリブ68をさらに含んでもよい。前述のように、リブ68は、1つ以上の側壁54と相互作用して、バイアス部材48をブラケット本体12上のシート50内の所定の位置に固定および保持するのを助けることができる(図4を参照)。
【0014】
特に図6を参照すると、クロス部材58は、バイアス部材48の第1の表面72と第2の表面74との間に延在する前縁面76をさらに含む。図7図8を参照して以下でさらに説明されるように、前縁面76は、バイアス部材48の周囲形状の境界を明確にし、それにより、バイアス部材48の全体的な形状は、図5図6に示されるように、第1の表面72および第2の表面74内に含有される。
【0015】
好ましくは、ステム56、クロス部材58、および突出部60、62は、バイアス部材48の単一の、一体型構成要素として形成される。いくつかの実施形態では、バイアス部材48は、ニッケルチタンを原料とし、実質的に平面のストックまたはシートからエッチング、レーザーカット、機械加工(例えば、放電加工)、または他の方法で製造されて、第1の表面72および反対側の第2の表面74が実質的に平面であり、かつ、前縁面76がそれら表面の間に延在するバイアス部材48を生み出し得る。他の実施形態では、バイアス部材48は、他の任意の適切な材料を原料としてもよい。
【0016】
図7図8は、組み立てられたブラケット10の閉鎖状態および開放状態をそれぞれ示す断面図である。図7図1図3も参照)を参照すると、スライドドア26は、その下側に形成されたスロット77を含み、スロット77は、スライドドア26の前端から延在し、その後端の上方向へ開放している。スライドドア26は、スロット77内に形成された隆起部80をさらに含み(図3を参照)、ここで、隆起部80は、以下でさらに詳細に説明されるように、弾性部材48と相互作用する。いくつかの実施形態では、隆起部80は、一端に沿って形成された傾斜したガイド面82を含んでもよく、ガイド面82は、隆起部80の頂点に形成された湾曲した先端または端部84につながっている。停止面86は、湾曲した端部84からスライドドア26の下側に向かって延在する。
【0017】
図7を参照すると、スライドドア26が、ブラケット本体12に連結されると、チャネル78がその間に形成され、チャネル78は、スライドドア26のスロット77を組み込み、側壁34(アーチワイヤースロット30の1つの壁を形成する)から延在し、ブラケット本体12の咬合側18に沿って開放する。チャネル78およびスロット77は、各々の後端に沿って開放しているように示されているが、他の実施形態では、スロット77およびチャネル78の一方または両方は、必要に応じて、ブラケット本体12の咬合側18に沿って代わりに閉鎖してもよい。
【0018】
図7図8を参照すると、以下は、ブラケット本体12内のバイアス部材48の位置付けについて論じ、引き続き、スライドドア26の開閉機能を容易にするためのバイアス部材48と隆起部80との相互作用について論じる。図7に示され、図1図4を参照して前述したように、バイアス部材48は、ブラケット本体12上に形成されたシート50内に位置付けられる。バイアス部材48がその中に固定されると、ステム56の一部がシート50からチャネル78内に延在し、そこで、ステム56は、舌-唇方向に沿ってほぼ直立して延在する。さらに、クロス部材58の全体が、チャネル78内に位置付けられ、スライドドア26の歯肉-咬合スライド方向にほぼ平行に配置され、前縁面76(図6を参照)はスロット77内に位置付けられ、スライドドア26の地形面にほぼ垂直である。
【0019】
図7図8をまとめて参照すると、スライドドア26が閉鎖位置にあるとき、弾性バイアス部材48の突出部60は、傾斜したガイド面82の開始部分に沿って隆起部80に寄りかかっている。この位置において、弾性バイアス部材48は、クロス部材58および突出部60を介して、ブラケット本体12の咬合側18に向かうスライドドア26の望ましくない移動に抵抗するのに十分なバイアス力を集合的に生成し、それによって、スライドドア26を閉鎖位置に維持する。
【0020】
スライドドア26を開くために、一つのツール(図示せず)を、スライドドア26の唇面に沿って形成されたくぼんだ領域88に挿入してもよい。スライドドア26が、ブラケット本体12の咬合側18に向かって後方に引っ張られると、隆起部80の傾斜面82は、弾性バイアス部材48の突出部60に対してスライドする。スライドドア26が後方に引っ張られ続けると、弾性バイアス部材48のクロス部材58は、ステム56の周りの弧状の経路で歯肉側20に向かって前方および下方に偏向する。弾性バイアス部材48が、その偏向状態を継続すると、隆起部80の湾曲した端部84は、弾性バイアス部材48の突出部60を越えて通過する。隆起部80が突出部60を超えて移動すると、隆起部80は、第1の突出部60と第2の突出部64との間に形成されたギャップまたは開口部90内に位置付けられる(図8を参照)。隆起部80が、開口部90内にあるとき、弾性バイアス部材48に対して加えられた力が解放され、それにより、弾性バイアス部材48は、その直立した無バイアスの位置に戻るように促され、突出部60は、スライドドア26の下側の前壁94と隆起部80との間のスライドドア26の前端に隣接して形成されたポケット92内に位置付けられている。いくつかの実施形態では、突出部60の上部は、前壁94およびスライドドア26の下側に隣接して、開放位置にあるときに、スライドドア26が、確実にブラケット本体12に対してしっかりと保持されるようにする。他の実施形態では、ポケット92の幅および突出部60の幅に応じて、突出部60は、突出部60がポケット92内にあるときに、隆起部80の前壁94および停止面86の一方または両方に隣接し得る。この構成では、弾性バイアス部材48の突出部60、64は、スライドドア26を開放位置に維持するのに役立ち、その結果、アーチワイヤースロット30にアクセスし(例えば、アーチワイヤーを位置付ける、または既存のアーチワイヤーを調整する)、また、スライドドア26が開きすぎてブラケット本体12から切り離されるのを確実に防止する。いくつかの実施形態では、突出部60およびポケット92が、協同してスライドドア26の後方への移動を制限することができるので、弾性バイアス部材48の第2の突出部64を排除してもよい(図10図11に示すように)。
【0021】
スライドドア26を開放位置から閉じるためには、隆起部80に対して突出部60から生じる抵抗力を乗り越えなければならない。スライドドア26が、開放位置から閉鎖位置に移動すると、隆起部80は、開口部90内を突出部60に向かって移動する。隆起部80が突出部60に乗りかかると、クロス部材58は、ステム56の周りの弧状の経路で歯肉側20に向かって前方および下方に偏向させられる。クロス部材58は、隆起部80が突出部60を超えて移動するまで偏向し続け、その時点で、クロス部材58は、弧状の経路に沿って元の直立した無バイアスの位置へ偏向する(図7に示すように)。
【0022】
図9A図9Gは、図5図6の弾性バイアス要素48の代わりに、図1の歯列矯正用ブラケットに組み込み得る弾性バイアス要素148の別の実施形態の様々な図を示している。図9A図9Gを参照すると、弾性バイアス要素148は、図5図6の弾性バイアス要素48と同じ構成要素の多くを含むが、より能率化した設計のために第2の(後部)突出部64を明白に排除する。以下の節は、バイアス要素148に関するより多くの情報を提供するが、場合によっては、弾性バイアス要素48、148の同様の特徴が特に明記しない限り同様に動作するという理解と共に、弾性バイアス要素148の特定の特徴を簡潔に説明するのみとなり得る。このような特徴の議論は、繰り返しを避けるために省略されている。
【0023】
図9A図9Gをまとめて参照すると、弾性バイアス要素148は、ほぼ直立したステム156と、ステム156によってほぼ直交して支持および配置されたクロス部材158とを備えたほぼ逆L形状に配置されている。いくつかの実施形態では、クロス部材158は、代わりに直立したステム156に対して傾斜または角度を付け、必要に応じて保持力を変化させてもよい。クロス部材158は、その第1の端部162においてクロス部材158から上方に延在する第1の突出部160を含む。突出部160は、ステム156の対応する軸にほぼ平行であり、かつ舌-唇方向に沿って延在する軸に沿って配置される。いくつかの実施形態では、ステム156は、バイアス要素148をブラケット本体1112内の所定の位置にさらに固定するための1つ以上のリブ168をさらに含んでもよく(図10を参照)、リブ168は、第1の(前面)表面172と反対側の第2の(背面)表面174との間に延在する側面170に沿って形成されている。
【0024】
特に図9Bを参照すると、クロス部材158は、バイアス部材148の第1の表面172と第2の表面174との間に延在する前縁面176をさらに含む。図10図11を参照して以下でさらに説明するように、前縁面176は、バイアス部材148の周囲形状の境界を明確にし、それにより、バイアス部材148の全体的な形状は、図9A図9Gに示されるように、第1の表面172および第2の表面174内に含有される。好ましくは、ステム156、クロス部材158、および突出部160は、バイアス部材48に関して前述したのと同様の方法で、バイアス部材148の単一の、一体型構成要素として形成される。
【0025】
ここで図10図11に注意を向けると、次のセクションでは、一実施形態に従ったバイアス部材148の動作について論じる。図10図11は、各々、閉鎖状態および開放状態で示された、組み立てられたブラケット1100の断面図である。ブラケット1100は、図7図8を参照して説明したブラケット10と同じ特徴および特性の多くを含む。したがって、ブラケット1100およびドア1126の特徴の多くは、それらが前述のブラケット10およびドア26と同じ特徴を共有することと理解して、繰り返しを避けるために本明細書でのさらなる説明はされない。したがって、以下の節は、主に、弾性バイアス部材148がブラケット1100およびドア1126とどのように相互作用するかに焦点を合わせている。
【0026】
図10を参照すると、弾性バイアス部材148は、ブラケット1100のシート1150に受け入れられ、リブ168(および使用され得る任意の接着剤)が、バイアス部材148を所定の位置に固定している。バイアス部材148が、ブラケット本体1112に挿入されると、ステム156は、舌-唇方向に沿ってほぼ直立して延在し、クロス部材158は、スライドドア1126の歯肉-咬合スライド方向にほぼ平行である。この構成では、ステム156の一部が、シート1150からチャネル178内に延在し、クロス部材158全体が、チャネル178内に位置付けられる。この配置では、前縁面176(図9Bを参照)は、チャネル178内に位置付けられたスライドドア1126の地形面に対してほぼ垂直に位置付けられる。
【0027】
図10を参照すると、スライドドア1126が閉鎖位置にあるとき、弾性バイアス部材148の突出部160は、スライドドア1126の下に形成された隆起部1180の傾斜したガイド面1182(図11を参照)の一部に寄りかかっている。この位置では、弾性バイアス部材148は、クロス部材158および突出部160を介して、ブラケット本体1112の咬合側1118に向かうスライドドア1126の後方移動に抵抗するのに十分なバイアス力を集合的に生成し、それによって、スライドドア1126を閉鎖位置に維持する。
【0028】
ここで図11に注意を向けると、スライドドア1126が、ブラケット本体1112の咬合側1118に向かって後方に引っ張られると、隆起部1180の傾斜面1182は、弾性バイアス部材148の突出部160に対してスライドする。スライドドア1126が後方に引っ張られ続けると、弾性バイアス部材148のクロス部材158は、ステム156の周りの弧状の経路において、ブラケット1100の歯肉側1120に向かって前方および下方に偏向する。弾性バイアス部材148が、その偏向状態を継続すると、隆起部1180の湾曲した端部1184(図10を参照)は、弾性バイアス部材148の突出部160を越えて通過する。隆起部1180が突出部160を超えて移動すると、隆起部1180は、第1の突出部160の後方に位置付けられ、突出部160は、スライドドア1126の下側の前壁1194と隆起部1180との間のスライドドア1126の前端に隣接して形成されたポケット1192(図10を参照)内に位置付けられる。いくつかの実施形態では、突出部160の上部は、図7図8を参照して前述したのと同様の方法で突出部160がポケット1192内にある場合、前壁1194および隆起部1180の一方または両方に隣接し得る。この構成では、弾性バイアス部材148のただ一つの突出部160が、弾性バイアス部材148とスライドドア1126との間に他の接触点を必要とせずに、スライドドア1126を開放位置に維持するのを助けている。
【0029】
前述と同様の方法で、スライドドア1126を開放位置から閉じるためには、隆起部1180に対して突出部160から生じる抵抗力を乗り越えなければならない。スライドドア1126が、開放位置から閉鎖位置に移動すると、隆起部180は、突出部160に向かって移動する。隆起部1180が突出部160に乗りかかると、クロス部材158は、ステム156の周りの弧状の経路で歯肉側1120に向かって前方および下方に偏向させられる。クロス部材158は、隆起部1180が突出部160を超えて移動するまで偏向し続け、その時点で、クロス部材158は、弧状の経路に沿って元の直立した無バイアスの位置へ偏向する(図10に示すように)。
【0030】
図12図13は、歯列矯正用ブラケット100の別の実施形態の特徴をまとめて示している(便宜上、スライドドアを取り外した状態で図示)。図12に示されるように、ブラケット100は、図1に示される歯列矯正用ブラケット10と同じ特徴の多くを含むが、ブラケット100は、歯肉側にフックのない別の実施形態を示す(図1と比較して)。繰り返しを避けるため、歯列矯正用ブラケット100の上記の共通的な特徴は、歯列矯正用ブラケット10の同じかまたは類似の特徴が、図12の歯列矯正用ブラケット100に等しく適用されるという理解と共に、本明細書ではさらなる議論はされない。
【0031】
図12および図13に注意を向けると、歯列矯正用ブラケット100は、ブラケット本体104にわたってほぼ近心-遠位方向に延在するアーチワイヤースロット102を含む。アーチワイヤースロット102は、ベース表面106と、ベース表面106から唇側方向に上方に延在する、対向する側壁108、110とを含む。いくつかの実施形態では、側壁108、110は、ベース表面106に対して垂直であり、図示のように、周辺側に沿って開放端を有するほぼ直線状のアーチワイヤースロット102を形成する。いくつかの実施形態では、アーチワイヤースロット102のベース表面106は、一対のくぼんだ領域またはチャネル112、114をさらに含んでもよく、一方のチャネル112は、ベース表面106と側壁108の底部との間に形成され、他方のチャネル114は、ベース表面106と側壁110の底部との間に形成される。好ましくは、チャネル112、114はそれぞれ、ブラケット本体104の近心端から遠位端までアーチワイヤースロット102全体にわたって延在するが、他の実施形態では、チャネル112、114は、アーチワイヤースロット102の長さ方向に沿って途中までしか延在し得ない。いくつかの実施形態では、チャネル112、114は、図12図13に示されるように、ほぼ湾曲したまたは円弧プロファイルを有するように形成されてもよい。他の実施形態では、チャネル112、114は、より直線的な形状のプロファイルなど、異なる形状のプロファイルを有し得る。開示された主題の原理から逸脱することなく、任意の適切なチャネルプロファイルに置き換え得ることを理解されたい。チャネル112、114は、歯列矯正用ブラケット100の強度を改善し、アーチワイヤー(図示せず)とアーチワイヤースロット102との間の締りばめに対する干渉を最小化するのに役立つ。
【0032】
図は、説明された歯列矯正用ブラケットの特定の特徴の例示的な設計を示しているが、開示された主題の原理から逸脱することなく、他の構成が可能であり得ることを理解されたい。さらに、上記の説明は多くの特異性を含むが、これらの詳細は開示された主題の範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、単にいくつかの実施形態の例示を提供するものとして解釈されるべきである。本明細書の一部に開示される主題は、そのような組み合わせが相互に排他的または動作不能でない限り、本明細書の他の部分の1つ以上の主題と組み合わせることができることを理解されたい。
【0033】
上記で使用される用語および説明は、例示のみを目的として記載されており、限定を意味するものではない。開示された主題の基礎となる原理から逸脱することなく、上述した実施形態の詳細に多くの変更を加えることができることは、当業者には明白であろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図10
図11
図12
図13