(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】同期スペクトル拡散クロック信号によって駆動されるデータ伝送用のデジタルトランシーバ
(51)【国際特許分類】
H04L 7/00 20060101AFI20241226BHJP
G06F 1/04 20060101ALI20241226BHJP
H03L 7/06 20060101ALI20241226BHJP
H03L 7/099 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
H04L7/00 910
G06F1/04 512
H03L7/06 230
H03L7/099 110
(21)【出願番号】P 2021567870
(86)(22)【出願日】2019-10-09
(86)【国際出願番号】 CN2019110162
(87)【国際公開番号】W WO2021068133
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】519385216
【氏名又は名称】北京京▲東▼方技▲術▼▲開▼▲発▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE TECHNOLOGY DEVELOPMENT CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 407,Building 1,No.9 Dize Road,BDA,Beijing,100176,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】シャンイェ・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】リミン・シュ
(72)【発明者】
【氏名】ユハイ・マ
(72)【発明者】
【氏名】シン・リ
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-090774(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0123749(US,A1)
【文献】特開2001-119381(JP,A)
【文献】Liming Xiu, et al.,A Full Digital Fractional-N TAF-FLL for Digital Applications: Demonstration of the Principle of a Frequency-Locked Loop Built on Time-Average-Frequency,IEEE Transactions on Very Large Scale Integration (VLSI) Systems,Vol.27, No.3,2019年03月,pp.524-534
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 7/00
G06F 1/04
H03L 7/06
H03L 7/099
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定値の第1の周波数を有する第1のクロック信号を生成するように構成されたクロック発生器と、
前記第1の周波数の前記第1のクロック信号によって駆動されてデータを送信する送信機と、
前記クロック発生器に結合されて前記第1の周波数の反転された第1のクロック信号を生成するインバータと、
前記第1の周波数の反転された前記第1のクロック信号を、フィードバックのループ内で変化する第2の周波数のフィードバック信号と比較して、整数部分I+小数部分r(0<r<1)を含む周波数制御ワードFを決定するように構成された周波数検出器と、
前記フィードバックのループにおいて前記周波数制御ワードFによって駆動されて、周波数境界拡散である境界拡散を有する前記第1の周波数に同期する時間平均周波数を有する第2のクロック信号を出力するデジタル制御発振器と、
前記第2のクロック信号によって駆動されて前記データを受信する受信機と、を備え、
前記周波数検出器は、前記周波数制御ワードFの前記整数部分Iを減少させるために第1の時間フレーム内で第1の制御信号を生成し、前記周波数制御ワードFの前記整数部分Iを増加させるために第2の時間フレーム内で第2の制御信号を生成するように構成された分数コントローラを含み、前記第1の時間フレームと前記第2の時間フレームは、前記フィードバックのループにおいて次々に時間的に交互に設定され、
前記分数コントローラは、前記反転された第1のクロック信号を受信する第1の入力ポートと、前記フィードバック信号を受信する第2の入力ポートと、1/2周波数分割器を介して前記第1の入力ポートに結合され、かつ部分的にインバータを介して前記第2の入力ポートに結合され、前記第1の周波数が前記第2の周波数よりも大きいか小さいかを判定するように構成された4つのD型フリップフロップを含むトリガーサブ回路と、前記トリガーサブ回路に結合された2つのXORゲート、2つのインバータ、及び2つのANDゲートを含み、前記第1の周波数が前記第2の周波数よりも大きいと判定された場合に前記第1の時間フレーム内で第1の制御ポートに前記第1の制御信号を出力し、前記第1の周波数が前記第2の周波数よりも小さいと判定された場合に前記第2の時間フレーム内で第2の制御ポートに前記第2の制御信号を出力するように構成された結合論理サブ回路とを含む、デジタルトランシーバ。
【請求項2】
前記第1の制御信号は、前記第1の時間フレーム内でフィードバックの各ループにおいて前記整数部分Iを1だけ減少させるように制御することであり、前記第2の制御信号は、前記第2の時間フレーム内でフィードバックの各ループにおいて前記整数部分Iを1だけ増加させるように制御することである、請求項1に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項3】
前記デジタル制御発振器は、基本時間単位Δを含み、それに基づいて、前記第1の時間フレーム内で第1の周期T
A=I・Δを有するN
A個のパルスと前記第2の時間フレーム内で第2の周期T
B=(I+1)・Δを有するN
B個のパルスとの組合せが生成される、請求項2に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項4】
前記デジタル制御発振器は、時間平均周期T
TAF=(1-r)・T
A+r・T
B=(I+r)・Δ=F・Δを有する合成信号を生成するように構成された直接周期合成器を含み、前記小数部分rは、(N
A+N
B)に対するN
Bの比によって決定される、請求項3に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項5】
前記直接周期合成器は、前記第1の周波数に等しい同じ入力周波数及び等間隔位相シフトΔを有するK個のパルスを生成する信号発生器と、累算器を介して前記周波数制御ワードFによって制御される累算レジスタに結合されて、前記K個のパルスを下位経路を介して入力して低レベルの前記合成信号を生成する第1のK‐1マルチプレクサと、加算器を介して半制御ワードF/2によって制御される加算器レジスタに結合されて、前記K個のパルスを上位経路を介して入力して高レベルの前記合成信号を生成する第2のK‐1マルチプレクサとを含む、請求項4に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項6】
前記直接周期合成器は、2‐1マルチプレクサを更に含み、それは、前記上位経路と前記下位経路との間の遷移を制御して、前記K個のパルスの前記入力周波数f
1を追跡する出力周波数f
2を有する前記合成信号を、f
2=1/T
TAF=K・f
1/Fと前記周波数制御ワードFによって決定される前記境界拡散との関係を介して、前記時間平均周期T
TAFに関連する時間平均周波数として出力する、請求項5に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項7】
前記境界拡散は、N
A(T
TAF-T
A)によって与えられる、前記入力周波数f
1より前の前記出力周波数f
2の最大位相シフトと、N
B(T
B-T
TAF)によって与えられる、前記入力周波数f
1より後ろの前記出力周波数f
2の最大位相シフトとを含む、請求項6に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項8】
前記信号発生器は、水晶発振器(XO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、電圧制御温度補償水晶発振器(VCTCXO)、またはオーブン制御水晶発振器(OCXO)に基づくクロック発生器である、請求項5に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項9】
前記直接周期合成器は、前記2‐1マルチプレクサに結合されたトグルフリップフロップを更に含み、それは、前記周波数制御ワードFがIとI+1との間で切り替えられて前記フィードバックのループの動的平衡に達した後、前記上位経路と前記下位経路の前記遷移を切り替えて前記合成信号を選択的に出力する、請求項7に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項10】
前記合成信号は、前記時間平均周波数の前記境界拡散内で前記反転された第1のクロック信号の前記第1の周波数と同期した前記第2のクロック信号として出力され、前記受信機を駆動する、請求項9に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項11】
前記受信機は、前記受信機でのデータ受信確立時間が、前記時間平均周期T
TAFの半分から前記反転された第1のクロック信号に先行する前記第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であり、前記受信機でのデータ受信維持時間が、前記時間平均周期T
TAFの半分から前記反転された第1のクロック信号より遅れている前記第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であるという条件によって保証されたデータ完全性で、前記送信機から送信された前記データを受信するように構成される、請求項10に記載のデジタルトランシーバ。
【請求項12】
システムオンチップ(SOC)としてデジタル集積回路に実装された請求項1~11のいずれか一項に記載のデジタルトランシーバを含む、同期スペクトル拡散クロック信号によって駆動される
データ伝送用のトランシーバチップ。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載のデジタルトランシーバを試験するための試験システムであって、
第1のクロック信号によって駆動されて前記デジタルトランシーバに記憶されたランダムデータを生成する擬似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)発生器であって、前記デジタルトランシーバの送信機は、前記第1のクロック信号によって駆動されて、前記送信機の第1のメモリに記憶された前記ランダムデータに基づいて送信データを生成し、前記デジタルトランシーバの受信機は、周波数境界拡散を有する前記第1のクロック信号に同期する第2のクロック信号によって駆動されて、受信データを記憶し、前記受信データを前記受信機の第2のメモリに記憶する、擬似ランダムバイナリシーケンス発生器と、
前記第1のクロック信号によって駆動されて、前記受信データを前記送信データと比較してエラーデータを生成する比較器であって、前記エラーデータは、前記受信データと最初に前記PRBSによって生成された前記ランダムデータとの整合性に対応する0、又は前記受信データと前記ランダムデータとの不整合に対応する1である、比較器と、を備える、試験システム。
【請求項14】
同期スペクトル拡散クロック信号によって駆動される
データ伝送方法であって、
固定値の第1の周波数の第1のクロック信号を生成するステップと、
前記第1のクロック信号で送信機を駆動してデータを送信するステップと、
前記第1のクロック信号を反転させて前記第1の周波数の反転された第1のクロック信号を取得するステップと、
等間隔位相遅延Δを有する前記第1の周波数の複数のパルスを生成するステップと、
周波数制御ワードFによって制御される前記複数のパルスのうちの1つから、時間平均周期T
TAFに基づく時間平均周波数を有する合成信号を取得するステップであって、前記合成信号は、フィードバックのループにおいて第2の周波数のフィードバック信号として使用される、ステップと、
前記時間平均周波数を有する前記合成信号が前記第1の周波数にロックされ、前記周波数制御ワードFが前記フィードバックのループ内の動的平衡で整数Iと整数I+1との間で切り替えられるときに分数rによって決定される境界拡散を有することに基づいて、第2のクロック信号を出力するステップと、
前記第2のクロック信号で受信機を駆動して前記データを受信するステップと、を含み、
前記境界拡散は周波数境界拡散であり、
前記周波数制御ワードFは、分数コントローラが生成する第1の制御信号で整数部分Iを減少させ、前記分数コントローラが生成する第2の制御信号で整数部分Iを増加させ、
前記分数コントローラは、前記反転された第1のクロック信号を受信する第1の入力ポートと、前記フィードバック信号を受信する第2の入力ポートと、1/2周波数分割器を介して前記第1の入力ポートに結合され、かつ部分的にインバータを介して前記第2の入力ポートに結合され、前記第1の周波数が前記第2の周波数よりも大きいか小さいかを判定するように構成された4つのD型フリップフロップを含むトリガーサブ回路と、前記トリガーサブ回路に結合された2つのXORゲート、2つのインバータ、及び2つのANDゲートを含み、前記第1の周波数が前記第2の周波数よりも大きいと判定された場合に第1の時間フレーム内で第1の制御ポートに前記第1の制御信号を出力し、前記第1の周波数が前記第2の周波数よりも小さいと判定された場合に第2の時間フレーム内で第2の制御ポートに前記第2の制御信号を出力するように構成された結合論理サブ回路とを含む、方法。
【請求項15】
前記第1のクロック信号を反転させるステップは、データ受信のために追加の位相シフト利益を提供するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
等間隔位相遅延Δを有する前記第1の周波数の複数のパルスを生成するステップは、水晶発振器(XO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、電圧制御温度補償水晶発振器(VCTCXO)、またはオーブン制御水晶発振器(OCXO)に基づくクロック発生器を使用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
時間平均周波数を有する合成信号を取得するステップは、第1の経路において累算器を介して前記周波数制御ワードFによって制御される累算レジスタに結合された第1のK‐1マルチプレクサを用いて、等間隔位相遅延Δを有する前記第1の周波数のK個のパルスを入力するステップと、低レベルの前記合成信号を生成するステップと、第2の経路において加算器を介して半周波数制御ワードF/2によって制御される加算器レジスタに結合された第2のK‐1マルチプレクサを用いて、等間隔位相遅延Δを有する前記第1の周波数の前記K個のパルスを入力するステップと、高レベルの前記合成信号を生成するステップと、2‐1マルチプレクサを用いて、前記第1の経路と前記第2の経路を連動させ、前記低レベル又は前記高レベルの前記合成信号のいずれかを出力するステップとを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のクロック信号で受信機を駆動するステップは、前記受信機でのデータ受信確立時間が、前記時間平均周期T
TAFの半分から前記反転された第1のクロック信号に先行する前記第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であり、前記受信機でのデータ受信維持時間が、前記時間平均周期T
TAFの半分から前記反転された第1のクロック信号より遅れている前記第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であるという条件下で、前記境界拡散を有する前記時間平均周波数の前記合成信号を使用するステップを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ伝送技術に関し、より具体的には、同期スペクトル拡散クロック信号によって駆動されるデータ伝送用のデジタルトランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁干渉(EMI)の問題は、多くの種類の高周波電子製品及びデジタルデバイスの開発に伴ってますます深刻になっている。使用されている重要な抗EMI技術の1つは、スペクトル拡散クロック信号発生器に基づく。しかしながら、高速データ伝送の応用の場合、従来のスペクトル拡散実装には、クロック領域信号交差、データアライメント、及びセットアップ/ホールドチェック問題のような多くの問題に直面する厳密な回路設計が必要である。従来のスペクトル拡散クロック信号がデータ伝送の駆動に適用されると、時間領域におけるデータ信号の位相関係は制御不能となり、安全でないデータ伝送につながる。このため、一方では、RAM及びFIFO伝送方式に基づく典型的な高データレートトランシーバは、スペクトル拡散クロック信号によって駆動することができない。他方では、これらのトランシーバは、超高(>100MHz)周波数で動作するように設計されているため、強力なEMIが発生する。外部シールドを使用することは、これらの電子製品のEMIを低減する1つの方法であるが、製品の重量が増加し、コストが高くなるため、望ましくない。したがって、改善されたデジタルトランシーバが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
一態様では、本開示は、デジタルトランシーバを提供する。デジタルトランシーバは、固定値の第1の周波数を有する第1のクロック信号を生成するように構成されたクロック発生器を含む。デジタルトランシーバは、第1の周波数の第1のクロック信号によって駆動されてデータを送信する送信機を更に含む。更に、デジタルトランシーバは、クロック発生器に結合されて第1の周波数の反転された第1のクロック信号を生成するインバータを含む。デジタルトランシーバはまた、第1の周波数の反転された第1のクロック信号を、フィードバックのループ内で変化する第2の周波数のフィードバック信号と比較して、整数部分I+小数部分r(0<r<1)を含む周波数制御ワードFを決定するように構成された周波数検出器を含む。更に、デジタルトランシーバは、フィードバックのループにおいて周波数制御ワードFによって駆動されて、境界拡散を有する第1の周波数に実質的に同期する時間平均周波数を有する第2のクロック信号を出力するデジタル制御発振器を含む。更に、デジタルトランシーバは、第2のクロック信号によって駆動されてデータを受信する受信機を含む。
【0004】
任意選択で、周波数検出器は、周波数制御ワードFの整数部分Iを減少させるために第1の時間フレーム内で第1の制御信号を生成し、周波数制御ワードFの整数部分Iを増加させるために第2の時間フレーム内で第2の制御信号を生成するように構成された分数コントローラを含む。第1の時間フレームと第2の時間フレームは、フィードバックのループにおいて次々に時間的に交互に設定される。
【0005】
任意選択で、分数コントローラは、反転された第1のクロック信号を受信する第1の入力ポートと、フィードバック信号を受信する第2の入力ポートと、トリガーサブ回路と、結合論理サブ回路とを含む。トリガーサブ回路は、1/2周波数分割器を介して第1の入力ポートに結合され、かつ部分的にインバータを介して第2の入力ポートに結合され、第1の周波数が第2の周波数よりも大きいか小さいかを判定するように構成された4つのD型フリップフロップを含む。結合論理サブ回路は、トリガーサブ回路に結合された2つのXORゲート、2つのインバータ、及び2つのANDゲートを含み、第1の周波数が第2の周波数よりも大きいと判定された場合に第1の時間フレーム内で第1の制御ポートに第1の制御信号を出力し、第1の周波数が第2の周波数よりも小さいと判定された場合に第2の時間フレーム内で第2の制御ポートに第2の制御信号を出力する。
【0006】
任意選択で、第1の制御信号は、第1の時間フレーム内でフィードバックの各ループにおいて整数部分Iを1だけ減少させるように制御することであり、第2の制御信号は、第2の時間フレーム内でフィードバックの各ループにおいて整数部分Iを1だけ増加させるように制御することである。
【0007】
任意選択で、デジタル制御発振器は、基本時間単位Δを含み、それに基づいて、第1の時間フレーム内で第1の周期TA=I・Δを有するNA個のパルスと第2の時間フレーム内で第2の周期TB=(I+1)・Δを有するNB個のパルスとの組合せが生成される。
【0008】
任意選択で、デジタル制御発振器は、時間平均周期TTAF=(1-r)・TA+r・TB=(I+r)・Δ=F・Δを有する合成信号を生成するように構成された直接周期合成器を含み、小数部分rは、(NA+NB)に対するNBの比によって決定される。
【0009】
任意選択で、直接周期合成器は、第1の周波数に等しい同じ入力周波数及び等間隔位相シフトΔを有するK個のパルスを生成する信号発生器を含む。直接周期合成器はまた、累算器を介して周波数制御ワードFによって制御される累算レジスタに結合されて、K個のパルスを下位経路を介して入力して低レベルの合成信号を生成する第1のK‐1マルチプレクサを含む。直接周期合成器は、加算器を介して半制御ワードF/2によって制御される加算器レジスタに結合されて、K個のパルスを上位経路を介して入力して高レベルの合成信号を生成する第2のK‐1マルチプレクサを更に含む。
【0010】
任意選択で、直接周期合成器は、2‐1マルチプレクサを更に含み、それは、上位経路と下位経路との間の遷移を制御して、K個のパルスの入力周波数f1を追跡する出力周波数f2を有する合成信号を、f2=1/TTAF=K・f1/Fと周波数制御ワードFによって決定される境界拡散との関係を介して、時間平均周期TTAFに関連する時間平均周波数として出力する。
【0011】
任意選択で、境界拡散は、NA(TTAF-TA)によって与えられる、入力周波数f1より前の出力周波数f2の最大位相シフトと、NB(TB-TTAF)によって与えられる、入力周波数f1より後ろの出力周波数f2の最大位相シフトとを含む。
【0012】
任意選択で、信号発生器は、水晶発振器(XO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、電圧制御温度補償水晶発振器(VCTCXO)及びオーブン制御水晶発振器(OCXO)に基づくクロック発生器である。
【0013】
任意選択で、直接周期合成器は、2‐1マルチプレクサに結合されたトグルフリップフロップを更に含み、それは、周波数制御ワードFがIとI+1との間で切り替えられてフィードバックのループの動的平衡に達した後、上位経路と下位経路の遷移を切り替えて合成信号を選択的に出力する。
【0014】
任意選択で、合成信号は、時間平均周波数の境界拡散内で反転された第1のクロック信号の第1の周波数と実質的に同期した第2のクロック信号として出力され、受信機を駆動する。
【0015】
任意選択で、受信機は、受信機でのデータ受信確立時間が、時間平均周期TTAFの半分から反転された第1のクロック信号に先行する第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であり、受信機でのデータ受信維持時間が、時間平均周期TTAFの半分から反転された第1のクロック信号より遅れている第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であるという条件によって保証されたデータ完全性で、送信機から送信されたデータを受信するように構成される。
【0016】
一態様では、本開示は、本明細書に記載のデジタルトランシーバを含む、同期スペクトル拡散クロック信号によって駆動されるデータ伝送用のトランシーバチップを提供する。トランシーバチップは、システムオンチップ(SOC)としてデジタル集積回路に実装される。
【0017】
更に別の態様では、本開示は、本明細書に記載のデジタルトランシーバを試験するための試験システムを提供する。試験システムは、第1のクロック信号によって駆動されてデジタルトランシーバに記憶されたランダムデータを生成する擬似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)発生器を含む。デジタルトランシーバの送信機は、第1のクロック信号によって駆動されて送信機の第1のメモリに記憶されたランダムデータに基づいて送信データを生成し、デジタルトランシーバの受信機は、周波数境界拡散を有する第1のクロック信号に同期する第2のクロック信号によって駆動されて、受信データを記憶し、受信データを受信機の第2のメモリに記憶する。比較器は、第1のクロック信号によって駆動されて受信データを送信データと比較してエラーデータを生成する。エラーデータは、受信データと最初にPRBSによって生成されたランダムデータとの整合性に対応する0、又は受信データとランダムデータとの不整合に対応する1である。
【0018】
更に別の態様では、本開示は、同期スペクトル拡散クロック信号によって駆動されるデータ伝送方法を提供する。この方法は、固定値の第1の周波数の第1のクロック信号を生成するステップを含む。この方法は、第1のクロック信号で送信機を駆動してデータを送信するステップを更に含む。更に、この方法は、第1のクロック信号を反転させて第1の周波数の反転された第1のクロック信号を取得するステップを含む。この方法は、等間隔位相遅延Δを有する第1の周波数の複数のパルスを生成するステップを更に含む。更に、この方法は、周波数制御ワードFによって制御される複数のパルスのうちの1つから、時間平均周期TTAFに基づく時間平均周波数を有する合成信号を取得するステップを含み、合成信号は、フィードバックのループにおいてフィードバック信号として使用される。この方法は、時間平均周波数を有する合成信号が第1の周波数にロックされ、周波数制御ワードFがフィードバックのループ内の動的平衡で整数Iと整数I+1との間で切り替えられるときに分数rによって決定される境界拡散を有することに基づいて、第2のクロック信号を出力するステップを更に含む。更に、この方法は、第2のクロック信号で受信機を駆動してデータを受信するステップを含む。
【0019】
任意選択で、第1のクロック信号を反転させるステップは、データ受信のために追加の位相シフト利益を提供するステップを含む。
【0020】
任意選択で、等間隔位相遅延Δを有する第1の周波数の複数のパルスを生成するステップは、水晶発振器(XO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、電圧制御温度補償水晶発振器(VCTCXO)及びオーブン制御水晶発振器(OCXO)に基づくクロック発生器を使用するステップを含む。
【0021】
任意選択で、時間平均周波数を有する合成信号を取得するステップは、下位経路において累算器を介して周波数制御ワードFによって制御される累算レジスタに結合された第1のK‐1マルチプレクサを用いて、等間隔位相遅延Δを有する第1の周波数のK個のパルスを入力するステップと、低レベルの合成信号を生成するステップと、上位経路において加算器を介して半周波数制御ワードF/2によって制御される加算器レジスタに結合された第2のK‐1マルチプレクサを用いて、等間隔位相遅延Δを有する第1の周波数のK個のパルスを入力するステップと、高レベルの合成信号を生成するステップと、2‐1マルチプレクサを用いて、下位経路と上位経路を連動させ、低レベル又は高レベルの合成信号のいずれかを出力するステップとを含む。
【0022】
任意選択で、第2のクロック信号で受信機を駆動するステップは、受信機でのデータ受信確立時間が、時間平均周期TTAFの半分から反転された第1のクロック信号に先行する第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であり、受信機でのデータ受信維持時間が、時間平均周期TTAFの半分から反転された第1のクロック信号より遅れている第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であるという条件下で、境界拡散を有する時間平均周波数の合成信号を使用するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
以下の図面は、開示された様々な実施形態による例示の目的のための単なる例であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0024】
【
図1】本開示の一実施形態による、同期拡散スペクトルを有する
データ伝送用のデジタルトランシーバのブロック図である。
【
図2】本開示の一部の実施形態による、時間平均直接周期合成の下での基本時間単位及び周波数制御ワードに基づく合成クロック信号の生成を示す概略図である。
【
図3】本開示の一実施形態による、時間平均周波数直接周期合成のための論理回路の機能図である。
【
図4】本開示の一実施形態による、基本時間単位Dの等間隔位相で
図3の論理回路にロードされるK個の入力パルスを示す概略図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、時間平均周波数ロッキングに基づくフィードバックのループの機能図である。
【
図6】本開示の一実施形態による、
図5のフィードバックのループにおける周波数検出器の論理回路の概略図である。
【
図7】本開示の一実施形態による、デジタルトランシーバに含まれる複数の信号の位相関係を示す波形図である。
【
図8】本開示の一実施形態による、
図1のデジタルトランシーバを試験するための簡略化された試験システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、以下の実施形態を参照して、本開示をより具体的に説明する。一部の実施形態の以下の説明は、例示及び説明のみを目的として本明細書に提示されることに留意されたい。網羅的であること、又は開示された正確な形態に限定されることを意図するものではない。
【0026】
データ伝送を駆動するために適用される従来のスペクトル拡散クロック信号により、データ信号の位相関係が時間領域で制御できなくなり、安全でないデータ伝送につながる。このため、一方では、RAM及びFIFO伝送方式に基づく典型的な高データレートトランシーバは、スペクトル拡散クロック信号によって駆動することができない。他方では、これらのトランシーバは、超高(>100MHz)データ信号周波数で動作するように設計されているため、強力な電磁干渉(EMI)が発生する。
【0027】
したがって、本開示は、とりわけ、従来技術の制限及び欠点に起因する1つ以上の問題を実質的に排除する、境界拡散を有する同期クロック信号によって駆動される高データレート送信用の新規なデジタルトランシーバ及びその方法を提供する。一態様では、本開示は、以下に示される一部の実施形態によるデジタルトランシーバを提供する。
【0028】
図1は、同期スペクトル拡散を有する
データ伝送用のデジタルトランシーバのブロック図である。
図1を参照すると、デジタルトランシーバ1000は、データを送信するために第1の周波数f1の第1のクロック信号によって駆動される送信機10と、送信機10から送信されたデータを受信するために第2の周波数f2の第2のクロック信号によって駆動される受信機20とを含む。一実施形態では、第1のクロック信号は、クロック発生器30によって生成される。任意選択で、クロック発生器30は、水晶発振器(XO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、電圧制御温度補償水晶発振器(VCTCXO)及びオーブン制御水晶発振器(OCXO)を備えることができる。任意選択で、第1のクロック信号の第1の周波数f1は固定値を有する。任意選択で、第1のクロック信号の第1の周波数f1は、スペクトル拡散を有する信号ではない。一実施形態では、受信機20を駆動するための第2のクロック信号は、第1の周波数f1に実質的に同期する第2の周波数f2を有するスペクトル拡散クロック信号となるように構成され、その信号パルスの立ち下がり/立ち上がりエッジが境界範囲で拡大される。第2のクロック信号の境界範囲が受信機20におけるデータ確立及び維持時間を満たすように適切に設定されている限り、第2のクロック信号によって駆動される受信機20は、データアラインメントを失うことなく、送信データを正しく受信することができる。
【0029】
図1を参照すると、デジタルトランシーバ1000は、境界拡散を有する同期クロック信号を生成するための時間平均周波数ロッキングループを含む。一実施形態では、インバータ40は、クロック発生器30に結合されて、反転された第1のクロック信号を生成してから、フィードバックのループにおいてそれをデジタル制御発振器50に供給する。デジタル制御発振器50は、時間平均周波数直接周期合成の原理に基づいて合成信号を生成するように構成される。合成信号は、フィードバックのループにおいてフィードバック信号として使用され、フィードバックのループが平衡状態に達すると、最終的に第2のクロック信号として出力される。
【0030】
図2は、本開示の一部の実施形態による、時間平均直接周期合成の下での基本時間単位及び周波数制御ワードに基づく合成クロック信号の生成を示す概略図である。
図2を参照すると、フィードバックの周波数ロッキングループは、最初にデジタル発振器を使用して、基本時間単位Δを生成する。基本時間単位に基づいて、異なるパルス周期T
A及びT
Bを有する2つの周期信号がそれぞれ生成される。デジタル制御周波数制御ワードFは、少なくともその整数部分Iで表され、2つのパルス周期をT
A=I・Δ及びT
B=(I+1)・Δに設定するために使用される。周波数制御ワードFは、デジタル制御発振器50を制御して、2つのパルス周期T
A及びT
Bの時間平均の組み合わせでパルスを有する出力信号を合成するために使用される。合成信号は、時間平均周期T
TAF=(1-r)・T
A+r・T
B=(I+r)・Δを有する新しいクロック信号として供給される。時間平均周波数は、f
TAF=1/T
TAFである。ここで、rは、2種類のパルス周期が発生する可能性を表す0~1の分数である。周波数制御ワードF=I+rである。
【0031】
上記の
図1に示されるデジタル制御発振器50は、
図5に示されるように、フィードバックのループにおいて入力信号の第1の周波数とフィードバック信号のフィードバック周波数を比較する周波数検出器100と、フィードバック信号として再び使用される合成信号を生成する時間平均周波数直接周期合成器200とを含む。フィードバックのループは、最終的に、フィードバック信号のフィードバック周波数が入力信号の第1の周波数を追跡することを可能にする。
【0032】
特定の実施形態では、周波数検出器100は、第1の周波数f1の入力信号を第2の周波数f2のフィードバック信号と比較して、第1の制御信号fast及び第2の制御信号slowを交互に生成して、フィードバックのループ内の周波数制御ワードFを決定して、第2の周波数f2が第1の周波数f1を追跡することを可能にするように構成される。
図6は、本開示の一実施形態による、
図5のフィードバックのループにおける周波数検出器の論理回路の概略図を示す。
図6を参照すると、周波数検出器100は、入力信号を受信する第1の入力ポートと、フィードバック信号を受信する第2の入力ポートとを含む。更に、周波数検出器100は、第1の入力ポート及び第2の入力ポートに結合され、第1の周波数f1と第2の周波数f2との間の関係を検出するように構成されたトリガーサブ回路1001を含む。周波数検出器100は、トリガーサブ回路1001に結合され、第1の時間フレーム内で第1の制御ポートへの第1の制御信号fastを生成し、第2の時間フレーム内で第2の制御ポートへの第2の制御信号slowを生成する結合論理サブ回路1002を更に含む。第1の時間フレーム及び第2の時間フレームは次々に交互に現れる。
【0033】
一実施形態では、トリガーサブ回路1001は、周波数分割器を介して第1の入力ポートに結合され、かつ部分的にインバータを介して第2の入力ポートに結合された4つのD型フリップフロップを含む。トリガーサブ回路1001は、第1の周波数f1が第2の周波数f2よりも大きいか小さいかを判定するように構成される。結合論理サブ回路1002は、2つのXORゲートと、2つのインバータと、2つのANDゲートとを含み、第1の周波数f1が第2の周波数f2よりも大きいという判定に基づいて第1の時間フレーム内で第1の制御ポートに第1の制御信号fastを出力するか、又は第1の周波数f1が第2の周波数f2よりも小さいという判定に基づいて第2の時間フレーム内で第2の制御ポートに第2の制御信号slowを出力するように構成される。一実施形態では、フィードバックのループにおいて、第1の制御信号fastは、周波数制御ワードFを減少させるように駆動し、第2の制御信号slowは、周波数制御ワードFを増加させるように駆動する。最終的に、第1の制御信号fast及び第2の制御信号slowが交互に生成され、周波数制御ワードFが2つの整数IとI+1の間で切り替えられるときにフィードバックのループ全体が動的平衡に達する。言い換えると、第2の周波数は、フィードバックのループ内で第1の周波数に実質的にロックされる。入力周波数が変化すると、即ち、ロッキングターゲットが変更されると、周波数検出器100は、周波数制御ワードを決定して、フィードバックのループにおける周波数ロッキングを達成するように動作する。
【0034】
図5に戻ると、周波数検出器100は、時間平均周波数直接周期合成器200と共に動作して、フィードバックのループにおける周波数ロッキングを達成する。一実施形態では、
図3は、本開示の一実施形態による、時間平均周波数直接周期合成器200の論理回路の機能図を示す。一実施形態では、各ループにおいて、周波数検出器100は、入力周波数f
in=f1を通過させ、周波数制御ワードFを時間平均周波数直接周期合成器200に供給する。
図3を参照すると、K個の入力パルスは、水晶発振器(XO)によって生成された基本時間単位Δに基づいて、単純な電圧制御発振器(VCO)によって生成される。任意選択で、K個の入力パルスは、同じ周波数f
in=f1を有するK個の位相等間隔信号から生成された基本時間単位Δに基づいている。
図4は、本開示の一実施形態による、
図3のデジタル制御発振器のK個の入力パルスの概略図を示す。
【0035】
K個の入力パルスは、それぞれ2つのK‐1マルチプレクサに入力される。図の下半分にある第1のK‐1マルチプレクサ(MUX_A)は、累算器を介して制御ワードFによって制御される2パイプラインレジスタに結合され、K個の入力パルスが第1の出力MUXOUT_Aとして下位経路を通過することを可能にする。
【0036】
遷移時間t6で、累算器は、クロック信号の立ち上がりエッジごとに累積計算を実行して、周波数制御ワードFが、小数部分r及び整数部分Iを含む実数であることを処理する。下位経路にあるK‐1マルチプレクサは、低電圧レベルで出力CLK1の論理「0」の長さを支配する。第1の遷移時間t1で、SEL_LOWはCLK2の立ち上がりエッジで第1(又は下位)のK‐1マルチプレクサに供給される。したがって、それはK個のパルスのうちの1つのパルスを第1の出力として選択する。
【0037】
第2のK‐1マルチプレクサ(MUX_B)は、加算器を介して半制御ワードF/2によって制御される2パイプラインレジスタに結合され、K個のパルスを上位経路を介して入力して高レベルの第2の出力MUXOUT_Bを生成する。加算器は、周波数制御ワードFの整数部分Iのみを有する。上位経路にあるK‐1マルチプレクサは、高電圧レベルで出力CLK1の論理「1」の長さを支配する。
【0038】
更に、
図3を参照すると、2‐1マルチプレクサMUX‐CはCLK1によって制御され、上位経路及び下位経路の遷移を制御する。これで、上位経路又は下位経路のいずれかから1つの信号のみが、D型フリップフロップ及び2つのインバータを含むトグルフリップフロップ回路に到達し、クロックの立ち上がりエッジごとに出力MUXOUTを「1」から「0」に、又は「0」から「1」に切り替える。
【0039】
第2の遷移時間t2で、選択された信号は第1のK‐1マルチプレクサMUX_Aを通過し、2‐1マルチプレクサMUX‐Cに供給される。
【0040】
t2と同時に発生する第3の遷移時間t3で、CLK2が立ち上がりエッジの後に論理「1」の状態にあるとき、CLK1は論理「0」の状態にある。したがって、2‐1マルチプレクサMUX‐Cは、トグルフリップフロップに送信されるMUXOUTとして、上位経路から第2の出力MUXOUT_Bを選択する。
【0041】
第4の遷移時間t4で、第2の出力MUXOUT_Bの立ち上がりエッジはトグルフリップフロップに到達し、0から1への遷移が終了する。
【0042】
第5の遷移時間t5で、CLK1は1に遷移する。したがって、2‐1マルチプレクサMUX‐Cは、下位経路の第1の出力MUXOUT_Aを選択してトグルフリップフロップに送信する。プロセス全体がフィードバックのループにおいて繰り返される。
【0043】
本実施形態では、時間平均周波数f
TAF = K・f
in/Fを有する合成信号は、周波数制御ワードFが変化するにつれて、フィードバックの各ループにおいてデジタル制御発振器50から出力される。最終的に、周波数検出器100によって決定された周波数制御ワードFが整数IとI+1との間で切り替えられるとき、フィードバックのループは動的平衡に達する。これは、フィードバックループ内の第2の周波数f2(
図5を参照)が、時間平均周波数直接周期合成器200によって合成され、そこから出力される時間平均周波数f
TAFであり、拡大された位相範囲で第1の周波数又は入力周波数f1を実質的に追跡することを表す。拡大された位相範囲は、
【0044】
【0045】
で表される、第1の時間フレーム+第2の時間フレーム内のNA個のサイクルTA=I・Δ及びNB個のサイクルTB=(I+1)・Δからの合成信号の周波数における境界拡散として表すことができる。
【0046】
【0047】
は、NA(TTAF-TA)によって与えられる、入力周波数f1より前の第2の周波数f2の最大位相シフトを表し、
【0048】
【0049】
は、NB(TB-TTAF)によって与えられる、入力周波数f1より後ろの第2の周波数f2の最大位相シフトを表す。
【0050】
図7は、本開示の一実施形態による、デジタルトランシーバ1000に含まれる複数の信号の位相関係を示す波形図である。
図7を参照すると、一例では、入力信号は、固定値の第1の周波数f1を有する方形波であり、即ち、それは、データを送信するために送信機10を駆動するために使用される第1のクロック信号である。
図7に見られるように、第1のクロック信号は境界拡散を有していない。第1のクロック信号によって与えられる各サイクルにおいて、送信データは送信機10のメモリに書き込まれ、送信される。
図1に示されるように、インバータ40は、同じ第1の周波数を有するが反転された位相を有する反転された第1のクロック信号を生成する。反転された第1のクロック信号は、デジタル制御発振器50にロードされた第1の周波数を有する入力信号である。任意選択で、反転された第1のクロック信号を入力信号としてデジタル制御発振器50にロードする前に、第1のクロック信号に対してインバータ40によって実行される位相反転は、フィードバックの時間平均周波数ロッキングループを動作させるための追加のサイクル遅延を可能にする。
図7に示されるように、元の送信機クロックf1から反転されたTAF‐FLL入力f1として示される入力信号は、それらの間で逆位相を有するが、同じ周波数f1を有する。出力信号(フィードバックのループが動的平衡に達した後)は、受信機クロックf2として示される第2の周波数を有する。f2は実質的にf1を追跡するか、又はそれにロックされるが、拡大境界L1+L2を有する。言い換えると、出力信号は、境界拡散を有する第1のクロック周波数と実質的に同期する第2の周波数を有する第2のクロック信号として供給される。
【0051】
一実施形態では、
図7を参照すると、1サイクルにおける入力信号の立ち下がりエッジと同じ1サイクルにおける出力信号の最も早い立ち上がりエッジとの間の期間は、最小位相シフト値
【0052】
【0053】
を与える。同じ実施形態では、1サイクルにおける入力信号の立ち下がりエッジと同じ1サイクルにおける出力信号の最も遅い立ち上がりエッジとの間の期間は、最大位相シフト値
【0054】
【0055】
を与える。受信機20が、データアライメント及びセキュリティを失うことなく、送信機10から送信されたデータを正しく受信するために、以下の条件が満たされなければならない。
TSU<L3min
TH<T-L3max
ここで、TSUは、受信機に必要なデータ確立時間を表し、THは受信機に必要なデータ維持時間を表す。
【0056】
別の態様では、本開示は、同期スペクトル拡散クロック信号によって駆動されるデータ伝送用のトランシーバチップを提供し、それは、本明細書に記載され、システムオンチップ(SOC)としてデジタル集積回路に実装されたデジタルトランシーバ1000を含む。任意選択で、デジタルトランシーバ1000は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)チップデバイスに実装される。任意選択で、デジタルトランシーバ1000は、特定用途向け集積回路(ASIC)チップデバイスに実装される。
【0057】
更に別の態様では、本開示は、本明細書に記載のデジタルトランシーバを試験するための試験システムを提供する。
図8は、本開示の一実施形態による、
図1のデジタルトランシーバ1000を試験するための簡略化された試験システム2000のブロック図を示す。
図8を参照すると、試験システム2000は、第1のクロック信号によって駆動されて、デジタルトランシーバ1000の送信機10のメモリ(RAM11)に記憶されたランダムデータを生成する擬似ランダムバイナリシーケンス(PRBS)発生器5を含む。第1の周波数f1の第1のクロック信号によって駆動される送信機10は、PRBS5によって生成されたランダムデータに基づいて送信データを生成する。デジタルトランシーバ1000の受信機20は、第1のクロック信号に同期し、周波数境界拡散を有する第2の周波数f2を有する第2のクロック信号によって駆動され、受信データを収集し、収集データを受信機20のメモリ(RAM21)に記憶する。試験システム2000は、第1のクロック信号f1によっても駆動され、受信データを送信データと比較してエラーデータを生成する比較器6を更に含み、任意選択で、エラーデータは、受信データと最初にPRBS5によって生成されたランダムデータとの整合性に対応する0である。任意選択で、エラーデータは、受信データとランダムデータとの不整合に対応する1である。一般に、デジタルトランシーバ1000は、第1のクロック信号の第1の周波数又は入力周波数を第2のクロック信号の第2の周波数又は出力周波数で追跡するフィードバックの時間平均周波数ロッキングループを含むため、フィードバックのループがまだ動的平衡に達することなく周波数追跡で動作している以前の期間では、これらの以前の期間の受信データの一部にはエラーデータ1が出力されている。動的平衡に到達し、デジタルトランシーバ1000が安定化されると、第1のクロック信号の入力周波数と第2のクロック信号の出力周波数との間の整合性を確立することができ、その結果、完全なデータアラインメントに対応する実質的に0のエラーデータが生じる。
【0058】
同期スペクトル拡散クロック信号は、デジタルトランシーバシステムの受信機を駆動し、(高速)データ伝送中の電磁干渉を実質的に低減する。デジタルトランシーバシステムにおける送信機及び受信機がそれぞれ異なるクロック信号によって駆動され、システムにおける個々のモジュールがスペクトル拡散クロック信号制御を可能にする機能を有するため、トランシーバシステムは、データ送信及び受信を駆動するためにクロック信号を柔軟に使用することができる。システム回路全体は、シンプルで効率が高く、抗EMI機能を備えており、また、高速データ伝送の応用でシステムオンチップ形式で便利に実装することができる。
【0059】
更に別の態様では、本開示は、同期スペクトル拡散クロック信号によって駆動されるデータ伝送用の方法を提供する。この方法は、固定値の第1の周波数の第1のクロック信号を生成するステップを含む。この方法はまた、第1のクロック信号で送信機を駆動してデータを送信するステップを含む。更に、この方法は、第1のクロック信号を反転させて第1の周波数の反転された第1のクロック信号を取得するステップを含む。この方法は、等間隔位相遅延Δを有する第1の周波数の複数のパルスを生成するステップを更に含む。
【0060】
更に、この方法は、周波数制御ワードFによって制御される複数のパルスのうちの1つから、時間平均周期TTAFに基づく時間平均周波数を有する合成信号を取得するステップを含む。合成信号は、フィードバックの時間平均周波数ロッキングループにおいてフィードバック信号としても使用される。この方法は、時間平均周波数を有する合成信号が第1の周波数にロックされ、周波数制御ワードFがフィードバックのループ内の動的平衡で整数Iと整数I+1との間で切り替えられるときに分数rによって決定される境界拡散を有することに基づいて、第2のクロック信号を出力するステップを更に含む。更に、この方法は、第2のクロック信号で受信機を駆動してデータを受信するステップを含む。
【0061】
特に、等間隔位相遅延Δを有する第1の周波数の複数のパルスを生成するステップは、入力信号、即ち第1の周波数の第1のクロック信号に基づいて、水晶発振器(XO)、電圧制御水晶発振器(VCXO)、温度補償水晶発振器(TCXO)、電圧制御温度補償水晶発振器(VCTCXO)及びオーブン制御水晶発振器(OCXO)に基づくクロック発生器を使用するステップを含む。
【0062】
一実施形態では、第1のクロック信号を反転させるステップは、データ受信のために追加の位相シフト利益を提供するステップを含む。
【0063】
一実施形態では、時間平均周波数を有する合成信号を取得するステップは、第1の経路において累算器を介して周波数制御ワードFによって制御される累算レジスタに結合された第1のK‐1マルチプレクサを用いて、等間隔位相遅延Δを有する第1の周波数のK個のパルスを入力するステップと、低レベルの合成信号を生成するステップと、第2の経路において加算器を介して半周波数制御ワードF/2によって制御される加算器レジスタに結合された第2のK‐1マルチプレクサを用いて、等間隔位相遅延Δを有する第1の周波数のK個のパルスを入力するステップと、高レベルの合成信号を生成するステップと、2‐1マルチプレクサを用いて、第1の経路と第2の経路を連動させ、低レベル又は高レベルの合成信号のいずれかを出力するステップとを含む。
【0064】
最後に、第2のクロック信号で受信機を駆動するステップは、受信機でのデータ受信確立時間が、時間平均周期TTAFの半分から反転された第1のクロック信号に先行する第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であり、受信機でのデータ受信維持時間が、時間平均周期TTAFの半分から反転された第1のクロック信号より遅れている第2のクロック信号の最大位相シフトを引いた値未満であるという条件下で、境界拡散を有する時間平均周波数の合成信号を使用するステップを含む。
【0065】
本発明の実施形態の前述の説明は、例示及び説明の目的で提示されてきた。網羅的であること、又は本発明を正確な形態若しくは開示された例示的な実施形態に限定することを意図するものではない。したがって、前述の説明は、限定的ではなく例示的であると見なされるべきである。明らかに、多くの修正及び変形は当業者には明らかであろう。実施形態は、本発明の原理及びその最良の形態の実際の適用を説明するために選択及び記載され、それによって、当業者が、企図される特定の使用又は実装に適した様々な修正を加えて様々な実施形態について本発明を理解できるようにする。本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲及びそれらの同等物によって定義されることが意図され、すべての用語は、特に明記されていない限り、それらの最も広い合理的な意味で意味される。したがって、「発明」、「本発明」などの用語は、必ずしも特許請求の範囲を特定の実施形態に限定するものではなく、本発明の例示的な実施形態への言及は、本発明に対する限定を意味するものではなく、そのような限定は推論されるべきではない。本発明は、添付の特許請求の範囲の精神及び範囲によってのみ限定される。更に、これらの特許請求の範囲は、名詞又は要素に続く「第1」、「第2」などを使用することに言及することができる。そのような用語は、命名法として理解されるべきであり、特定の数が与えられていない限り、そのような命名法によって修飾される要素の数に制限を与えると解釈されるべきではない。記載されているいかなる利点及び利益も、本発明のすべての実施形態に当てはまるとは限らない。以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって記載された実施形態に変更を加えることができることを理解されたい。更に、本開示の要素及び構成要素は、その要素又は構成要素が以下の特許請求の範囲において明示的に記載されているか否かにかかわらず、公衆に提供されることを意図するものではない。