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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】複合体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2483 20160101AFI20241226BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241226BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20241226BHJP
【FI】
H01M8/2483
C25B9/00 A
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022021692
(22)【出願日】2022-02-16
(65)【公開番号】P2023119076
(43)【公開日】2023-08-28
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】星子 琢也
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大村 肇
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-204943(JP,A)
【文献】特開2009-067163(JP,A)
【文献】特開2006-242033(JP,A)
【文献】特開2014-192131(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/24
H01M 8/12
C25B 9/00
F16L 23/00-25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に貫通する第1の貫通孔が形成されるとともに、前記第1の方向の一方側に突出し、かつ、前記第1の貫通孔を囲む筒状の立設部が形成されている第1の部材と、
前記第1の部材の前記第1の貫通孔に連通するように前記立設部に溶接されている筒状部材と、
前記第1の部材に対して前記第1の方向の他方側に配置されており、前記第1の貫通孔と連通する連通孔を有する第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に配置され、かつ、前記第1の方向視で前記第1の貫通孔の周囲に配置されている接合部材と、を備える、複合体において、
前記第1の方向視で、前記接合部材は、前記筒状部材のうち、前記立設部との接続部分の外形線を取り囲む部分である前記第1の部材の接続周囲部よりも外側に配置されており、
前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルを有している、電気化学反応ブロックを備え、
前記電気化学反応ブロックが、前記第1の部材および前記筒状部材に対して前記第1の方向の他方側に配置され、
前記第2の部材が、前記電気化学反応ブロックと前記第1の部材との間に配置されており、
前記筒状部材の内部空間がガス流路となっており、
各前記電気化学反応単位における前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極との間でガスのやり取りを行うマニホールドが、前記電気化学反応ブロックの内部から前記第1の部材の前記第1の貫通孔および前記第2の部材の前記連通孔を介して前記筒状部材に至るように形成されており、前記マニホールドが前記ガス流路と連通している、電気化学反応セルスタックである、
ことを特徴とする複合体。
【請求項2】
請求項1に記載の複合体において、
前記第2の部材は、前記第1の部材に対して前記第1の方向の他方側に隣り合うように配置されている、
ことを特徴とする複合体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の複合体において、
前記第1の部材のうち、前記第1の方向視で前記接合部材と重なる重複部の剛性は、前記接続周囲部の剛性よりも高い、
ことを特徴とする複合体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の複合体において、
前記接合部材は、前記第1の方向視で前記第1の貫通孔の周囲を囲む第2の貫通孔が形成されており、
前記第1の方向視で、少なくとも、前記筒状部材の前記接続部分の外形線により囲まれた空間の中心から互いに異なる方向に延びる2本の仮想直線上において、前記筒状部材の前記接続部分と前記接合部材との離間距離は互いに異なっている、
ことを特徴とする複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という)が知られている。SOFCの構成単位である燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という)は、電解質層と、電解質層を挟んで所定の方向(以下、「第1の方向」という)に互いに対向する空気極および燃料極とを含む。
【0003】
SOFCは、一般に、単セルを有する発電単位が、第1の方向に複数並べて配置された発電ブロックを備えるとともに、燃料極と空気極との一方である特定電極に面するガス室に連通するマニホールドが形成された燃料電池スタックの形態で利用される。燃料電池スタックは、さらに、エンド部材とガス通路部材と接合部材とを備える。エンド部材は、発電ブロックにおける第1の方向の一方側に配置されている。エンド部材には、第1の方向に貫通するとともにマニホールドに連通しているエンド貫通孔が形成されている。ガス通路部材は、エンド部材に対して第1の方向の上記一方側(発電ブロックとは反対側)に配置されている。ガス通路部材は、第1の方向に貫通し、かつ、エンド貫通孔に連通するガス貫通孔が形成された筒状体である。接合部材は、発電ブロックとエンド部材との間に配置されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-10804号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願発明者は、立設部が形成されたエンド部材を備える燃料電池スタックについて検討した。立設部は、第1の方向の上記一方側に突出し、かつ、エンド貫通孔を囲む筒状である。ガス通路部材は、エンド部材の立設部に接続される。このような構成では、ガス通路部材に外力が加わって変位すると、エンド部材のうち、立設部とガス通路部材との接続部分の外形線を取り囲む部分である接続周囲部分が変形しやすい。ここで、仮に、接合部材が、第1の方向視で、エンド部材の接続周囲部分に重なる位置に配置されている構成では、接続周囲部分の変形に伴って接合部材に応力が加わり、接合部材による接合箇所が損傷するおそれがある、という課題がある。
【0006】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解単セルを含む電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、燃料電池発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの燃料電池や電解セルにも共通の課題である。さらに、このような課題は、電気化学反応セルスタック等に限らず、第1の貫通孔および立設部を備える第1の部材と、その立設部に接続される筒状部材と、第2の部材と、第1の部材と第2の部材との接合する接合部材とを備える複合体にも共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される複合体は、第1の方向に貫通する第1の貫通孔が形成されるとともに、前記第1の方向の一方側に突出し、かつ、前記第1の貫通孔を囲む筒状の立設部が形成されている第1の部材と、前記第1の部材の前記第1の貫通孔に連通するように前記立設部に接続されている筒状部材と、前記第1の部材に対して前記第1の方向の他方側に配置されている第2の部材と、前記第1の部材と前記第2の部材との間に配置され、かつ、前記第1の方向視で前記第1の貫通孔の周囲に配置されている接合部材と、を備える、複合体において、前記第1の方向視で、前記接合部材は、前記筒状部材のうち、前記立設部との接続部分の外形線を取り囲む部分である前記第1の部材の接続周囲部よりも外側に配置されている。本複合体では、接合部材が、筒状部材のうち、第1の部材の立設部との接続部分の外形線を取り囲む部分である第1の部材の接続周囲部よりも外側に配置されている。そのため、仮に、筒状部材の変位に伴って第1の部材の接続周囲部が変形しても、その変形が接合部材に伝わりにくい。これにより、本複合体によれば、筒状部材の変位に起因して接合部材による接合箇所が損傷することを抑制することができる。
【0010】
(2)上記複合体において、前記第2の部材は、前記第1の部材に対して前記第1の方向の他方側に隣り合うように配置されている構成としてもよい。本複合体では、接合部材が、第1の部材と、それに隣り合う第2の部材との間に配置されている。このように接合部材が第1の部材の変形箇所に近い位置に配置された構成であっても、本発明を適用することにより、筒状部材の変位に起因して接合部材による接合箇所が損傷することを抑制することができる。
【0011】
(3)上記複合体において、前記第1の部材のうち、前記第1の方向視で前記接合部材と重なる重複部の剛性は、前記接続周囲部の剛性よりも高い構成としてもよい。本複合体によれば、第1の部材の接続周囲部が変形しても、第1の部材の重複部は変形しにくい。そのため、第1の部材の変形が接合部材に伝わることが抑制され、筒状部材の変位に起因して接合部材による接合箇所が損傷することを効果的に抑制することができる。
【0012】
(4)上記複合体において、前記接合部材は、前記第1の方向視で前記第1の貫通孔の周囲を囲む第2の貫通孔が形成されており、前記第1の方向視で、少なくとも、前記筒状部材の前記接続部分の外形線により囲まれた空間の中心から互いに異なる方向に延びる2本の仮想直線上において、前記筒状部材の前記接続部分と前記接合部材との離間距離は互いに異なっている構成としてもよい。本複合体によれば、例えば筒状部材が、上記離間距離が長い方向側に変位した場合において接合部材による接合箇所が損傷することを効果的に抑制することができる。
【0013】
(5)上記複合体において、前記複合体は、前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位から構成される電気化学反応ブロックであって、各前記電気化学反応単位は、電解質層と、前記電解質層を挟んで前記第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む電気化学反応単セルを有している、電気化学反応ブロックを備え、前記電気化学反応ブロックが、前記第1の部材に対して前記第1の方向の他方側に配置され、前記第2の部材が、前記電気化学反応ブロックと前記第1の部材との間に配置されており、各前記電気化学反応単位における前記空気極と前記燃料極との少なくとも一方である特定電極との間でガスのやり取りを行うマニホールドが、前記電気化学反応ブロックの内部から前記第1の部材の前記第1の貫通孔を介して前記筒状部材に至るように形成されている、電気化学反応セルスタックである構成としてもよい。本電気化学反応セルスタックでは、接合部材が、筒状部材のうち、エンド部材との接続部分の外形線を取り囲む部分である接続周囲部よりも外側に配置されている。そのため、仮に、外力による筒状部材の変位に伴ってエンド部材の接続周囲部が変形しても、その変形が接合部材に伝わりにくい。これにより、本電気化学反応セルスタックによれば、筒状部材の変位に起因して接合部材による接合箇所が損傷することを抑制することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、複数の電気化学反応単セルまたは電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、上記複合体、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図4図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図5図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図6図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図7図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図8図5のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
図9図5のIX-IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図
図10】下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との接合構造を拡大して示す説明図阿呆に
図11図10のXI-XIの位置におけるガス通路部材27等のXY平面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A-1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図4は、図1のIV-IVの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図5以降についても同様である。燃料電池スタック100は、特許請求の範囲における複合体の一例であり、上下方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。
【0017】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」という。)102と、末端セパレータ210と、上端プレート220と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420と、絶縁部200と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のターミナルプレート410,420のうちの一方(以下、「上側ターミナルプレート410」という。)は、7つの発電単位102から構成される集合体(以下、「発電ブロック103」という。)の上側に配置されており、一対のターミナルプレート410,420のうちの他方(以下、「下側ターミナルプレート420」という。)は、発電ブロック103の下側に配置されている。末端セパレータ210は、上側ターミナルプレート410の上側に配置されており、下端プレート189は、下側ターミナルプレート420の下側に配置されている。絶縁部200は、末端セパレータ210の上側に配置されている。一対のエンドプレート104,106のうちの一方(以下、「上側エンドプレート104」という。)は、絶縁部200の上側に配置されており、一対のエンドプレート104,106のうちの他方(以下、「下側エンドプレート106」という。)は、下端プレート189の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、発電ブロック103と、末端セパレータ210と、下端プレート189と、一対のターミナルプレート410,420と、絶縁部200とを上下から挟むように配置されている。発電単位102は、特許請求の範囲における電気化学反応単位の一例であり、発電ブロック103は、特許請求の範囲における電気化学反応ブロックの一例である。
【0018】
図1および図4に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(発電ブロック103、末端セパレータ210、下端プレート189、一対のターミナルプレート410,420、および、絶縁部200)のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、各層を上下方向に貫通する孔が形成されている。上側エンドプレート104のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔(ネジ孔)が貫通形成されており、下側エンドプレート106のZ軸方向回りの外周の4つの角部付近には、孔(ネジ孔)が貫通形成されている。これらの各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、上下方向に延びるボルト孔109を構成している。以下の説明では、ボルト孔109を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔109と呼ぶ場合がある。
【0019】
各ボルト孔109にはボルト22が挿入されている。各ボルト22の上端部は、上側エンドプレート104の孔を介してナット24のネジ孔に螺合しており、各ボルト22の下端部は、下側エンドプレート106の孔を介してナット24のネジ孔に螺合している。このような構成のボルト22およびナット24により、燃料電池スタック100の各層が一体に締結されている。
【0020】
また、図1から図3に示すように、燃料電池スタック100を構成する各層(各発電単位102、下側ターミナルプレート420、下端プレート189、下側エンドプレート106)のZ軸方向回りの周縁部には、各層を上下方向に貫通する4つの孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、最上部の発電単位102から下側エンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。なお、以下、連通孔108のうち、下側エンドプレート106に形成された孔を、特にエンド貫通孔107という。
【0021】
図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の後述する空気室166に供給するガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の付近に位置する1つの連通孔108は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。酸化剤ガス供給マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162は、各発電単位102の空気極114(後述)との間でガスのやり取りを行うガス流路である。なお、酸化剤ガスOGとしては、例えば空気が使用される。
【0022】
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ軸方向回りの外周を構成する辺の内、上述した酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の後述する燃料室176に供給するガス流路である燃料ガス供給マニホールド171として機能し、上述した酸化剤ガス供給マニホールド161として機能する連通孔108に最も近い辺の付近に位置する他の1つの連通孔108は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へ排出するガス流路である燃料ガス排出マニホールド172として機能する。燃料ガス供給マニホールド171および燃料ガス排出マニホールド172は、各発電単位102の燃料極116(後述)との間でガスのやり取りを行うガス流路である。なお、燃料ガスFGとしては、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。また、以下では、空気室166と燃料室176とを、まとめて「ガス室」という。
【0023】
図1から図3に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、例えばアルミニウムを含むフェライト系ステンレス等の導電材料(金属材料)により形成され、中空筒状の本体部28とフランジ部29とを有している。本体部28には、上下方向に貫通するガス貫通孔26が形成されている。本体部28の一端(上端)は、下側エンドプレート106に形成されたエンド貫通孔107に接続されている。具体的には、本体部28の上端は、エンド貫通孔107内に挿入され、例えば溶接により接合されている。なお、本体部28の上端の外径および内径は、本体部28の他端(下端)の外径および内径より小さくなっている。本体部28の板厚(外径と内径との差)は、例えば0.6mm以上、1.0mm以下とすることができる。フランジ部29は、本体部28の下端側から上下方向(Z軸方向)に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に張り出すように設けられている。なお、フランジ部29の上下方向視での形状は、略矩形状であり、4つの角部のそれぞれにはボルト孔29A(図1参照)が形成されている。各ボルト孔29Aには、燃料電池スタック100を外部装置に接続するためのボルト(図示しない)が挿入される。
【0024】
図2に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、燃料ガス供給マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172の位置に配置されたガス通路部材27のガス貫通孔26は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0025】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば表面にアルミナの酸化被膜を形成するフェライト系ステンレス等の導電材料(金属材料)により形成されている。一対のエンドプレート104,106の中央付近には、それぞれ、Z軸方向に貫通する孔32,34が形成されている。Z軸方向視で、一対のエンドプレート104,106のそれぞれに形成された孔32,34の内周線は、後述する各単セル110の少なくとも一部を内包している。各ボルト22およびナット24による締結によって生じるZ軸方向の圧縮力は、主として各発電単位102の周縁部(後述する各単セル110より外周側の部分)に作用する。なお、エンドプレート104,106は、それぞれ、1枚の板状部材をプレス加工(屈曲)して形成されたものである。エンドプレート104,106の板厚は、例えば1mm以上、3mm以下とすることができ、ガス通路部材27の本体部28の板厚と同じ、またはガス通路部材27の本体部28の板厚より薄くてもよい。
【0026】
図2から図4に示すように、上側エンドプレート104は、平面部310と、凸部320と、を含んでいる。平面部310は、Z軸方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に沿った平坦部分である。具体的には、平面部310のZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。なお、上述したボルト孔109を構成する孔は、平面部310におけるZ軸方向回りの周縁部に形成されている。凸部320は、平面部310から上側に突出したリブである。凸部320は、外側凸部322と、内側凸部324と、を有している。外側凸部322は、平面部310の外周部から上側に突出している。外側凸部322は、平面部310の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部324は、平面部310の内周部から上側に突出している。内側凸部324は、平面部310の内周部の全周にわたって形成されている。
【0027】
また、下側エンドプレート106は、平面部510と、凸部520と、を含んでいる。平面部510は、Z軸方向に垂直な面方向(XY平面に平行な方向)に沿った平坦部分である。具体的には、平面部510のZ軸方向視での形状は、全体として、矩形枠状である。なお、上述したボルト孔109を構成する孔は、平面部510におけるZ軸方向回りの周縁部に形成されている。凸部520は、平面部510から下側に突出したリブである。凸部520は、外側凸部522と、内側凸部524と、を有している。外側凸部522は、平面部510の外周部から下側に突出している。外側凸部522は、平面部510の外周部の全周にわたって形成されている。内側凸部524は、平面部510の内周部から下側に突出している。内側凸部524は、平面部510の内周部の全周にわたって形成されている。
【0028】
図2および図3に示すように、下側エンドプレート106には、補強部材600が固定されている。補強部材600は、平板部分610と、筒部分620と、を有する。平板部分610は、下側エンドプレート106の平面部510に平行な平板状の部分である。平板部分610の上下方向視での形状は、略矩形である。平板部分610は、下側エンドプレート106の平面部510から下方に離間した位置に配置されている。平板部分610の長手方向の一方側の辺は、外側凸部522の内壁面に接触し、例えば溶接により接合されており、平板部分610の長手方向の他方側の辺は、内側凸部524の内壁面に接触し、例えば溶接により接合されている。平板部分610には、ガス通路部材27の本体部28を挿入可能な貫通孔612が形成されている。筒部分620は、平板部分610の貫通孔612に連通する貫通孔622を有する円筒状の部分である。筒部分620は、平板部分610における貫通孔612の周囲部分から下側に突出するように形成されている。平板部分610の貫通孔612および筒部分620の貫通孔622を構成する内壁面がガス通路部材27の本体部28の外周面に接触し、例えば溶接により接合されている。平板部分610と筒部分620とは、一体に形成されている。補強部材600は、耐熱性材料や、下側エンドプレート106やガス通路部材27等と同一材料または熱膨張率が同じ材料により形成されていることが好ましく、例えば金属(フェライト系ステンレス等)により形成されている。
【0029】
(ターミナルプレート410,420の構成)
一対のターミナルプレート410,420は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば表面にアルミナの酸化被膜を形成するフェライト系ステンレス等の導電材料により形成されている。上側ターミナルプレート410の中央付近には、Z軸方向に貫通する孔412が形成されている。Z軸方向視で、上側ターミナルプレート410に形成された孔412の内周線は、後述する各単セル110を内包している。Z軸方向視で、一対のターミナルプレート410,420のそれぞれの一方側(X軸正方向側)の端部は、発電ブロック103から側方に張り出している。本実施形態では、上側ターミナルプレート410の張り出し部分は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側ターミナルプレート420の張り出し部分は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0030】
(上端プレート220の構成)
上端プレート220は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えばステンレス等の導電材料により形成されている。上端プレート220は、発電ブロック103の上側に配置されており、発電ブロック103における上端に位置するインターコネクタ190(後述)に電気的に接続されている。本実施形態では、上端プレート220とインターコネクタ190とは、後述の燃料極側集電部材144と同一構造の接続部材を介して電気的に接続されている。
【0031】
(末端セパレータ210の構成)
末端セパレータ210は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔211が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。末端セパレータ210における貫通孔211を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、上端プレート220の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。末端セパレータ210は、上端プレート220と発電ブロック103との間の空間と燃料電池スタック100の外部空間とを区画する。
【0032】
末端セパレータ210は、末端セパレータ210の貫通孔周囲部を含む内側部216と、内側部216より外周側に位置する外側部217と、内側部216と外側部217とを連結する連結部218とを備える。本実施形態では、内側部216および外側部217は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部218は、内側部216と外側部217との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部218における下側(発電ブロック103側)の部分は凸部となっており、連結部218における上側(上側エンドプレート104側)の部分は凹部となっている。このため、連結部218は、Z軸方向における位置が内側部216および外側部217とは異なる部分を含んでいる。
【0033】
(下端プレート189の構成)
下端プレート189は、Z軸方向視での外形が略矩形の平板状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。下端プレート189の周縁部は、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との間に挟み込まれており、これにより、下側ターミナルプレート420と下側エンドプレート106との絶縁性とが確保されている。
【0034】
(絶縁部200の構成)
絶縁部200は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔が形成されたフレーム状の部材であり、例えば絶縁材料により形成されている。絶縁部200は、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との間に挟み込まれており、これにより、各マニホールド161,162,171,172のシール性と、上側エンドプレート104と末端セパレータ210との絶縁性とが確保されている。
【0035】
(発電単位102の構成)
図5は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図6は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図7は、図4に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。また、図8は、図5のVIII-VIIIの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図であり、図9は、図5のIX-IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
【0036】
図5から図7に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、単セル用セパレータ120と、空気極側フレーム130と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電部材144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ190および一対のIC用セパレータ180とを備えている。単セル用セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、IC用セパレータ180におけるZ軸方向回りの周縁部には、各マニホールド161,162,171,172として機能する各連通孔108を構成する孔と、各ボルト孔109を構成する孔とが形成されている。
【0037】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112のZ軸方向の一方側(上側)に配置された空気極114と、電解質層112のZ軸方向の他方側(下側)に配置された燃料極116と、電解質層112と空気極114との間に配置された反応防止層118とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で単セル110を構成する他の層(電解質層112、空気極114、反応防止層118)を支持する燃料極支持形の単セルである。単セル110は、特許請求の範囲における電気化学反応単セルの一例である。
【0038】
電解質層112は、Z軸方向視で略矩形の平板形状部材であり、固体酸化物(例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア))を含むように構成されている。すなわち、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向視で電解質層112より小さい略矩形の平板形状部材であり、例えばペロブスカイト型酸化物(例えば、LSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))を含むように構成されている。燃料極116は、Z軸方向視で電解質層112と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。反応防止層118は、Z軸方向視で空気極114と略同じ大きさの略矩形の平板形状部材であり、例えばGDC(ガドリニウムドープセリア)を含むように構成されている。反応防止層118は、空気極114から拡散した元素(例えば、Sr)が電解質層112に含まれる元素(例えば、Zr)と反応して高抵抗な物質(例えば、SrZrO)が生成されることを抑制する機能を有する。空気極114および燃料極116は、特許請求の範囲における特定電極の一例である。
【0039】
単セル用セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。単セル用セパレータ120における貫通孔121を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、単セル110(電解質層112)の周縁部における上側の表面に対向している。単セル用セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、単セル110(電解質層112)と接合されている。単セル用セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が抑制される。
【0040】
単セル用セパレータ120は、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部を含む内側部126と、内側部126より外周側に位置する外側部127と、内側部126と外側部127とを連結する連結部128とを備える。本実施形態では、内側部126および外側部127は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部128は、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部128における下側(燃料室176側)の部分は凸部となっており、連結部128における上側(空気室166側)の部分は凹部となっている。このため、連結部128は、Z軸方向における位置が内側部126および外側部127とは異なる部分を含んでいる。
【0041】
単セル用セパレータ120における貫通孔121付近には、ガラスを含むガラスシール部125が配置されている。ガラスシール部125は、接合部124に対して空気室166側に位置しており、単セル用セパレータ120の貫通孔周囲部の表面と、単セル110(本実施形態では電解質層112)の表面との両方に接触するように形成されている。ガラスシール部125により、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリーク(クロスリーク)が効果的に抑制される。
【0042】
インターコネクタ190は、略矩形の平板形状の平板部150と、平板部150から空気極114側に突出した複数の略柱状の空気極側集電部134とを有する導電性の部材であり、金属(例えば、フェライト系ステンレス)により形成されている。本実施形態では、インターコネクタ190の表面(空気室166に面する表面)に、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性の被覆層194が形成されている。以下では、被覆層194に覆われたインターコネクタ190を、単にインターコネクタ190という。インターコネクタ190(の各空気極側集電部134)は、例えばスピネル型酸化物により構成された導電性接合材196を介して、単セル110の空気極114に接合されており、これにより単セル110の空気極114に電気的に接続されている。インターコネクタ190は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を抑制する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ190は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ190は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ190と同一部材である。また、燃料電池スタック100は下側ターミナルプレート420および下端プレート189を備えているため、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていない(図2から図4参照)。
【0043】
IC用セパレータ180は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の貫通孔181が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。IC用セパレータ180における貫通孔181を取り囲む部分(以下、「貫通孔周囲部」という。)は、インターコネクタ190の平板部150の周縁部における上側の表面に例えば溶接により接合されている。ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、上側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の空気室166と、該発電単位102に対して上側に隣り合う他の発電単位102の燃料室176とを区画する。また、ある発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180のうち、下側のIC用セパレータ180は、該発電単位102の燃料室176と、該発電単位102に対して下側に隣り合う他の発電単位102の空気室166とを区画する。このように、IC用セパレータ180により、発電単位102の周縁部における発電単位102間のガスのリークが抑制される。なお、燃料電池スタック100において最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190に接合されたIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されている。
【0044】
IC用セパレータ180は、IC用セパレータ180の貫通孔周囲部を含む内側部186と、内側部186より外周側に位置する外側部187と、内側部186と外側部187とを連結する連結部188とを備える。本実施形態では、内側部186および外側部187は、Z軸方向に略直交する方向に延びる略平板状である。また、連結部188は、内側部186と外側部187との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状となっている。連結部188における下側(空気室166側)の部分は凸部となっており、連結部188における上側(燃料室176側)の部分は凹部となっている。このため、連結部188は、Z軸方向における位置が内側部186および外側部187とは異なる部分を含んでいる。
【0045】
図8に示すように、空気極側フレーム130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、単セル用セパレータ120の周縁部における上側の表面と、上側のIC用セパレータ180の周縁部における下側の表面とに接触しており、両者の間のガスシール性(すなわち、空気室166のガスシール性)を確保するシール部材として機能する。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のIC用セパレータ180間(すなわち、一対のインターコネクタ190間)が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
【0046】
図9に示すように、燃料極側フレーム140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、単セル用セパレータ120の周縁部における下側の表面と、下側のIC用セパレータ180の周縁部における上側の表面とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0047】
図5から図7に示すように、燃料極側集電部材144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電部材144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116の下側の表面に接触しており、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ190(の平板部150)の上側の表面に接触している。ただし、上述したように、燃料電池スタック100において最も下側に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ190を備えていないため、該発電単位102における燃料極側集電部材144のインターコネクタ対向部146は、下側ターミナルプレート420に接触している。燃料極側集電部材144は、このような構成であるため、燃料極116とインターコネクタ190(または下端プレート189)とを電気的に接続する。なお、燃料極側集電部材144の電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電部材144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電部材144を介した燃料極116とインターコネクタ190(または下側ターミナルプレート420)との電気的接続が良好に維持される。燃料極側集電部材144は、例えば、平板状の材料(例えば、厚さ10~200μmのニッケル箔)に複数の矩形の切り込みを入れ、該材料の上に複数の孔が形成されたシート状の燃料極側集電部材144を配置した状態で、複数の矩形部分を曲げ起こしてスペーサー149を挟むように加工することにより作製される。曲げ起こされた各矩形部分が電極対向部145となり、曲げ起こされた部分以外の穴が開いた状態の平板部分がインターコネクタ対向部146となり、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ部分が連接部147となる。
【0048】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図5に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27のガス貫通孔26を介して酸化剤ガス供給マニホールド161に供給され、酸化剤ガス供給マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図6に示すように、燃料ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27のガス貫通孔26を介して燃料ガス供給マニホールド171に供給され、燃料ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0049】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は上側のインターコネクタ190に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電部材144を介して下側のインターコネクタ190(または、下端プレート189)に電気的に接続されている。すなわち、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。また、最も上側に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ190およびIC用セパレータ180は、上側ターミナルプレート410に電気的に接続されており、最も下側に位置する発電単位102の燃料極側集電部材144には、下側ターミナルプレート420が電気的に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するターミナルプレート410,420から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば600℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0050】
図2および図5に示すように、各発電単位102の空気室166から酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28のガス貫通孔26を経て、当該本体部28に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図3および図6に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28のガス貫通孔26を経て、当該本体部28に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0051】
なお、本実施形態の燃料電池スタック100は、各発電単位102において、空気室166における酸化剤ガスOGの主たる流れ方向(X軸正方向からX軸負方向へ向かう方向)と燃料室176における燃料ガスFGの主たる流れ方向(X軸負方向からX軸正方向へ向かう方向)とが略反対方向(互いに対向する方向)である、カウンターフロータイプのSOFCである。
【0052】
A-3.下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との接合構造:
次に、本実施形態の燃料電池スタック100における下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との接合構造について説明する。図10は、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との接合構造を拡大して示す説明図であり、図11は、図10のXI-XIの位置におけるガス通路部材27等のXY平面構成を示す説明図である。図11には、酸化剤ガス供給マニホールド161に連通するガス通路部材27が例示されている。図11では、ガス通路部材27および下側エンドプレート106は実線で示されており、下側エンドプレート106の背後に位置するガラスシール部材197や連通孔108等は点線で示されている。
【0053】
図2から図4図10および図11に示すように、本実施形態の下側エンドプレート106には、4つの立設部530が形成されている。立設部530は、下側エンドプレート106の平面部510から下側(Z軸負方向側)に突出し、かつ、上下方向視で下側エンドプレート106のエンド貫通孔107を囲む筒状である。立設部530は、平面部510に一体的に形成されている。本実施形態では、下側エンドプレート106のうち、エンド貫通孔107を画定する内壁面と、立設部530の内周壁とは、段差がなく面一でつながっている。下側エンドプレート106は、特許請求の範囲における第1の部材の一例であり、エンド貫通孔107は、特許請求の範囲における第1の貫通孔の一例である。
【0054】
ガス通路部材27は、下側エンドプレート106の立設部530に接続されており、ガス通路部材27のガス流路が下側エンドプレート106のエンド貫通孔107に連通している。具体的には、ガス通路部材27の先端部分28aが立設部530の内周側に挿入されており、ガス通路部材27の先端部分28aと立設部530とが、例えば溶接等により接合されている。ガス通路部材27は、特許請求の範囲における筒状部材の一例である。
【0055】
下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との間には、ガラス製のガラスシール部材197が配置されている。ガラスシール部材197は、上下方向視で発電ブロック103に形成された連通孔108(以下、「ブロック連通孔108B」という)の周囲に枠状に配置されている。ガラスシール部材197は、上下方向に互いに隣り合う部材同士(下側エンドプレート106、下側ターミナルプレート420)を接合する部材である。ガラスシール部材197の厚みは例えば1.0mm以上、1.5mm以下とすることができる。ガラスシール部材197は、特許請求の範囲における接合部材の一例であり、下側ターミナルプレート420は、特許請求の範囲における第2の部材の一例である。
【0056】
図11に示すように、ガラスシール部材197は、上下方向視で、下側エンドプレート106における接続周囲部520bよりも外側に配置されている。接続周囲部520bは、上下方向視で、下側エンドプレート106(平面部510)のうち、ガス通路部材27における立設部530との接続部分の外形線(図11において、ガス通路部材27の本体部28の先端部分28aの輪郭線)を取り囲む部分である。具体的には、ガラスシール部材197は、挿通孔197aが形成された枠状部材であり、上下方向視で、挿通孔197aの輪郭線が、下側エンドプレート106のエンド貫通孔107の周囲を取り囲んでいる。ガラスシール部材197の内径と外径との差は、例えば2mm以上、4mm以下とすることができる。上下方向視で、挿通孔197aの輪郭線は、全周にわたって、下側エンドプレート106の接続周囲部520bよりも外側に位置している。挿通孔197aは、特許請求の範囲における第2の貫通孔の一例である。
【0057】
図11中の符号Oは、ガス通路部材27の接続部分(先端部分28a)の外形線により囲まれた空間の中心(以下、「接続部分の中心O」という)である。上下方向視で、少なくとも、接続部分の中心Oから互いに異なる方向に延びる2本の仮想直線L1,L2上において、ガス通路部材27の接続部分とガラスシール部材197との離間距離は互いに異なっている。具体的には、図11に示すように、第1の仮想直線L1(接続部分の中心OからY軸負方向に延びる仮想直線)上における接続部分とガラスシール部材197との第1の離間距離D1と、第2の仮想直線L2(接続部分の中心OからY軸正方向に延びる仮想直線)上における接続部分とガラスシール部材197との第2の離間距離D2とは互いに異なっている。換言すれば、本実施形態では、中心Oを通る一の仮想直線L1(L2)上において存在する、接続部分とガラスシール部材197との2つの離間距離D1,D2は互いに異なっている。
【0058】
より具体的には、発電ブロック103のブロック連通孔108Bのうち、酸化剤ガス供給マニホールド161を構成するブロック連通孔108Bは、所定方向(Y軸方向)に延びる長孔である。上下方向視で、下側エンドプレート106のエンド貫通孔107(立設部530)は、ブロック連通孔108Bの輪郭線内において、上記所定方向において偏った位置(Y軸正方向側)に配置されている。ガラスシール部材197の挿通孔197aは、ブロック連通孔108Bよりも一回り大きい長孔であり、挿通孔197aの輪郭線は、ブロック連通孔108Bの周囲を取り囲んでいる。このような構成により、第1の離間距離D1は、第2の離間距離D2よりも長くなっている。
【0059】
なお、本実施形態では、発電ブロック103のブロック連通孔108Bのうち、酸化剤ガス排出マニホールド162を構成するブロック連通孔108Bも、所定方向(Y軸方向)に延びる長孔である(図8等参照)。このため、この酸化剤ガス排出マニホールド162に連通するように配置されたガラスシール部材197も、同様に、ガス通路部材27の接続部分の中心を通る一の仮想直線上において存在する、接続部分との2つの離間距離は互いに異なっている。一方、燃料ガス供給マニホールド171と燃料ガス排出マニホールド172とをそれぞれ構成するブロック連通孔108Bは、円形の孔である(図8等参照)。本実施形態では、これらのマニホールド171,172に連通するように配置されたガラスシール部材197の中心は、ガス通路部材27の接続部分の中心に略一致するように配置されており、ガス通路部材27の接続部分とガラスシール部材197との離間距離は、全周にわたって略均一である。
【0060】
下側エンドプレート106のうち、上下方向視で、ガラスシール部材197と重なる重複部510aの剛性は、接続周囲部520bの剛性よりも高い。具体的には、図10に示すように、下側エンドプレート106の平面部510の下面には、補強部523が設けられている。補強部523は、例えば金属製であり、平面部510の下面に接合されている。補強部523は、上下方向視で、下側エンドプレート106の接続周囲部520bの周囲を取り囲むように形成されている。なお、補強部523は、耐熱性材料や、下側エンドプレート106やガス通路部材27等と同一材料または熱膨張率が同じ材料により形成されていることが好ましく、例えば金属(フェライト系ステンレス等)により形成されている。
【0061】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100は、上下方向視で、下側エンドプレート106における接続周囲部520bよりも外側に配置されている(図10および図11参照)。そのため、仮に、ガス通路部材27の変位に伴って下側エンドプレート106の接続周囲部520bが変形しても、その変形がガラスシール部材197に伝わりにくい。これにより、本実施形態によれば、ガス通路部材27の変位に起因してガラスシール部材197による接合箇所が損傷することを抑制することができる。なお、ガス通路部材27の変位は、例えば、立設部530の軸方向(Z軸方向)への移動や、ガス通路部材27の基端側(下端側)の該軸方向に対する傾きである。また、ガス通路部材27の変位の発生要因は、例えば、ガス通路部材27と下側エンドプレート106等との熱膨張差により生じる応力や、ガス通路部材27に対する外力である。
【0062】
本実施形態では、ガラスシール部材197が、下側エンドプレート106と、それに隣り合う下側ターミナルプレート420との間に配置されている(図10参照)。このようにガラスシール部材197が下側エンドプレート106の変形箇所に近い位置に配置された構成であっても、本発明を適用することにより、ガス通路部材27の変位に起因してガラスシール部材197による接合箇所が損傷することを抑制することができる。
【0063】
本実施形態では、下側エンドプレート106のうち、上下方向視で、ガラスシール部材197と重なる重複部510aの剛性は、接続周囲部520bの剛性よりも高い(図10参照)。そのため、下側エンドプレート106の接続周囲部520bが変形しても、下側エンドプレート106の重複部510aは変形しにくい。これにより、下側エンドプレート106の変形がガラスシール部材197に伝わることが抑制され、ガス通路部材27の変位に起因してガラスシール部材197による接合箇所が損傷することを効果的に抑制することができる。
【0064】
本実施形態では、上下方向視で、少なくとも、接続部分の中心Oから互いに異なる方向に延びる2本の仮想直線L1,L2上において、ガス通路部材27の接続部分とガラスシール部材197との離間距離は互いに異なっている(図11参照)。本実施形態によれば、例えばガス通路部材27が、上記離間距離が長い方向(第1の離間距離D1)側の接続周囲部520bを変形させる向きに変位した場合においてガラスシール部材197による接合箇所が損傷することを効果的に抑制することができる。本実施形態では、図11に示すように、下側エンドプレート106のエンド貫通孔107は、下側ターミナルプレート420(発電ブロック103)に形成されたブロック連通孔108Bに対して偏った位置に配置されている。このため、下側エンドプレート106(平面部510)のうち、第1の離間距離D1側の部分は、第2の離間距離D2側の部分に比べて変形しやすい。これに対して、本実施形態では、第1の離間距離D1は、第2の離間距離D2よりも長いため、ガス通路部材27が第1の離間距離D1側の接続周囲部520bを変形させる向きに変位した場合においてガラスシール部材197による接合箇所が損傷することを効果的に抑制することができる。
【0065】
B.変形例:
本明細書に開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0066】
上記実施形態における燃料電池スタック100や発電単位102の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0067】
上記実施形態では、下側エンドプレート106のうち、連通孔108を画定する内壁面と、立設部530の内周壁とは、段差がなく面一でつながっていたが、これに限らず、例えば、上下方向視で、立設部530の内周壁が、連通孔108を画定する内壁面よりも外側に位置する構成でもよい。上記実施形態では、第1の貫通孔として、下側エンドプレート106に形成された円形状や長孔状の連通孔108を例示したが、これに限らず、例えば矩形状や多角形状の貫通孔でもよい。
【0068】
上記実施形態において、下側エンドプレート106の立設部530がガス通路部材27の先端部分28a内に挿入された構成や、立設部530の下端面とガス通路部材27の上端面とが突き合わされて接合された構成でもよい。上記実施形態では、筒状部材の一例として、ガス流路が形成されたガス通路部材27を例示したが、これに限らず、第1の部材の立設部に接続される部材であれば、ガス流路を構成しない、単なる筒状の部材でもよい。また、筒状部材の形状は、ガス通路部材27のような直線状に限らず、曲がった形状でもよい。
【0069】
上記実施形態では、接合部材として、ガラス製のガラスシール部材197を例示したが、接合機能を有する部材であれば、ガラス以外の材料(例えば金属や樹脂製)により形成されたものでもよい。また、上記実施形態では、ガラスシール部材197は、上下方向視で、下側エンドプレート106に形成された連通孔108の周囲を取り囲むように形成され(図11参照)、ガス漏れを抑制するシール部材として機能したが、これに限らず、例えば、ガラスシール部材197が、下側エンドプレート106に形成された連通孔108の周囲の一部だけに形成された構成でもよい。
【0070】
上記実施形態では、第2の部材として、下側エンドプレート106に対して上下方向に隣り合う下側ターミナルプレート420を例示したが、これに限らず、下側エンドプレート106に対して上下方向に隣り合わない部材でもよい。例えば、上記実施形態において、下側エンドプレート106と下側ターミナルプレート420との間に、1または複数の中間部材が配置された構成でもよい。この構成において、接合部材は、下側エンドプレート106と中間部材とを接合する部材でもよいし、下側ターミナルプレート420と中間部材とを接合する部材でもよいし、中間部材同士を接合する部材でもよい。
【0071】
上記実施形態では、下側エンドプレート106の重複部510aの剛性を、接続周囲部520bの剛性よりも高くする手段として、下側エンドプレート106に補強部523を設けた構成が採用されていた。その他の手段として、下側エンドプレート106の重複部510aの肉厚を、接続周囲部520bの肉厚よりも厚くする構成(重複部510aと接続周囲部520bとは同一材料により形成)や、下側エンドプレート106の重複部510aにリブ等を形成する構成などを採用してもよい。
【0072】
上記実施形態において、異なる方向に延びる2本の仮想直線として、接続部分の中心Oから互いに反対方向に延びる仮想直線L1,L2を例示したが、これに限らず、互いに交差する方向に延びる2本の仮想直線でもよい。例えば、図11の構成に対して、エンド貫通孔107が、ブロック連通孔108Bに対して、ブロック連通孔108Bの長手方向(Y軸方向)において中央に位置する構成でもよい。この構成では、接続部分の中心Oから互いに直交する方向(Y軸方向、X軸方向)にそれぞれ延びる2本の仮想直線上において、ガス通路部材27の接続部分とガラスシール部材197との離間距離が互いに異なっている。このような構成であれば、ガス通路部材27がY軸方向側に変位した場合においてガラスシール部材197による接合箇所が損傷することを効果的に抑制することができる。
【0073】
上記実施形態では、一対のエンドプレート104,106に孔32,34が形成されているが、一対のエンドプレート104,106の少なくとも一方について該孔32,34が形成されていなくてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100が一対のターミナルプレート410,420を備えているが、他の部材(例えば、一対のエンドプレート104,106)をターミナルプレートとしても機能させ、専用部材としてのターミナルプレート410,420を省略してもよい。
【0074】
上記実施形態では、単セル用セパレータ120が、内側部126と外側部127との両方に対して下側に突出するように湾曲した形状の連結部128を有しているが、連結部128の形状は他の形状であってもよい。また、単セル用セパレータ120が連結部128を有さなくてもよい。IC用セパレータ180における連結部188についても同様である。
【0075】
上記実施形態では、単セル用セパレータ120における孔121付近にガラスシール部125が配置されているが、ガラスシール部125は省略されてもよい。
【0076】
上記実施形態では、インターコネクタ190は導電性の被覆層194を含んでいるが、インターコネクタ190が該被覆層194を含んでいなくてもよい。また、上記実施形態では、単セル110が反応防止層118を有しているが、単セル110が反応防止層118を有さないとしてもよい。
【0077】
上記実施形態では、単セル110は燃料極支持形の単セルであるが、電解質支持形や金属支持形等の他のタイプの単セルであってもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100がカウンターフロータイプの燃料電池であるが、燃料電池スタック100がコフロータイプといった他のタイプの燃料電池であってもよい。
【0078】
上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる単セル110の個数(発電単位102の個数)は、あくまで一例であり、単セル110の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。また、上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。
【0079】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解セル単位や、電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セル単位および電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における発電単位102および燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、マニホールドを介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、マニホールドを介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様の構成を採用すると、ガス通路部材27の変位に起因して接合部材による接合箇所が損傷することを抑制することができる。
【0080】
上記実施形態では、いわゆる平板型の燃料電池スタックを例に用いて説明したが、本明細書に開示される技術は、以下に説明するように、平板型に限らず、他のタイプ(いわゆる円筒平板型や円筒形)の燃料電池スタックにも同様に適用可能である。
【0081】
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。さらに、本明細書に開示される技術は、電気化学反応セルスタック等に限らず、第1の貫通孔および立設部を備える第1の部材と、その立設部に接続される筒状部材と、第2の部材と、第1の部材と第2の部材との接合する接合部材とを備える複合体にも適用可能である。
【符号の説明】
【0082】
22:ボルト 24:ナット 26:ガス貫通孔 27:ガス通路部材 28:本体部 28a:先端部分 29:フランジ部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:発電ブロック 104:上側エンドプレート 106:下側エンドプレート 107:エンド貫通孔 108:連通孔 108B:ブロック連通孔 109:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 118:反応防止層 120:単セル用セパレータ 121:貫通孔 124:接合部 125:ガラスシール部 130:空気極側フレーム 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電部 140:燃料極側フレーム 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電部材 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:平板部 161:酸化剤ガス供給マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス供給マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 180:IC用セパレータ 189:下端プレート 190:インターコネクタ 194:被覆層 196:導電性接合材 197:ガラスシール部材 197a:挿通孔 200:絶縁部 210:末端セパレータ 220:上端プレート 310,510:平面部 320,520:凸部 322,522:外側凸部 324,524:内側凸部 410,420:ターミナルプレート 510a:重複部 520b:接続周囲部 523:補強部 530:立設部 600:補強部材 610:平板部分 620:筒部分 FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11