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特許7611234電子機器の近傍に物体があることを検出するための方法、コンピュータ可読プログラムコード、コンピュータ可読記憶媒体、およびコンピュータソフトウエア製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電子機器の近傍に物体があることを検出するための方法、コンピュータ可読プログラムコード、コンピュータ可読記憶媒体、およびコンピュータソフトウエア製品
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20241226BHJP
   G01S 15/04 20060101ALI20241226BHJP
   H04M 1/60 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
H04R3/00 310
G01S15/04
H04M1/60
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022514458
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-09
(86)【国際出願番号】 NO2020050222
(87)【国際公開番号】W WO2021045628
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】62/895,065
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20191252
(32)【優先日】2019-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(73)【特許権者】
【識別番号】520089657
【氏名又は名称】エリプティック ラボラトリーズ エーエスエー
【氏名又は名称原語表記】ELLIPTIC LABORATORIES ASA
【住所又は居所原語表記】Hausmanns gate 21, 0182 Oslo, Norway
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ストラット,グエナエル トーマス
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/004547(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/164380(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/122864(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
G01S 15/04
H04M 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の近傍に物体があることを検出するための方法であって、
・ 処理部を介して、ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータを使用して、制御された音声信号を生成するステップと、
・ 増幅器を使用して、少なくとも前記制御された音声信号を増幅して、増幅器出力において増幅された音声信号を生成するステップであって、ここで、前記増幅された音声信号が、前記1つまたは複数のパラメータを考慮して前記ラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるように、前記制御された音声信号の振幅が設定される、ステップと、
・ 前記増幅器出力と動作可能に接続された前記ラウドスピーカに、前記増幅された出力信号を送るステップと、
・ 前記増幅された音声信号を使用して、前記ラウドスピーカに関する前記パラメータを少なくとも1つ判断するステップと、
・ 前記ラウドスピーカを介して、前記増幅された出力信号に依存する音響信号を生成するステップと、
を含み、
・ 前記ラウドスピーカに関する前記1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つを分析して、前記ラウドスピーカの応答における変化を検出するステップであって、ここで、前記応答における変化は、前記ラウドスピーカの音響経路内に存在する物体によって引き起こされる、ステップと、
・ 前記分析の結果に基づいて、前記物体が前記電子機器の近傍に位置するかどうかを判断するステップと、
をさらに含む、
方法。
【請求項2】
選択された音響信号を送信する初期ステップを含み、前記音響信号のリターンが音声入力において前記音声信号を構成する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記制御された音声信号は、可聴域外、典型的には、近超音波域にある、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生成された音響信号は、前記ラウドスピーカの可動膜で生成され、前記音響信号は、前記増幅された出力信号に依存し、前記ラウドスピーカの前記応答における変化は、前記可動膜の応答における変化である、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記電子機器のメモリに格納された所定のラウドスピーカモデルによって定義される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのパラメータは、前記音響経路内に前記物体がない状態で、測定された性能から予め決定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのパラメータのうちの1つは、前記増幅された音声信号から導出されたI/V信号である、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記パラメータのうちの1つは、前記I/V信号の基準値である、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
音声入力において音響信号を受信して音声信号を生成し、処理部を使用して前記音声信号を処理する初期ステップを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を実行するための特定の能力を有する、コンピュータ可読プログラムコード。
【請求項11】
請求項1~8のいずれか1項に記載の方法を電子機器に実行させるプログラムを格納する、非一時的なコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項12】
コンピュータソフトウエア製品であって、前記コンピュータソフトウエア製品が電子機器のプロセッサによって実行されると、前記電子機器は、
・ 前記プロセッサを介して、ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータを使用して、制御された音声信号を生成し、
・ 増幅器を使用して、少なくとも前記制御された音声信号を増幅して、増幅器出力において増幅された音声信号を生成し、ここで、前記増幅された音声信号が、前記1つまたは複数のパラメータを考慮して前記ラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるように、前記制御された音声信号の振幅が設定され、
・ 前記増幅器出力と動作可能に接続された前記ラウドスピーカに、前記増幅された出力信号を送り、
・ 前記増幅された音声信号を使用して、前記ラウドスピーカに関する前記パラメータを少なくとも1つ判断し、
・ 前記ラウドスピーカの可動膜を介して、前記増幅された出力信号に依存する音響信号を生成し、
・ 前記ラウドスピーカに関する前記1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つを分析して、前記可動膜の応答における変化を検出し、ここで、前記応答における変化は、前記可動膜の音響経路内に存在する物体によって引き起こされ、
・ 前記分析の結果に基づいて、前記物体が前記電子機器の近傍に位置するかどうかを判断する、
コンピュータソフトウエア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器のための近接検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの電子機器は、通常、ユーザの体の一部などの物体が近傍にあることを検出するために使用される近接センサを備える。このような近接センサの主な機能の1つとして、ユーザが通話中に耳の近くに電子機器を置いたことを検出することが挙げられる。この場合、ユーザの耳またはその他の体の一部が携帯機器のスクリーンに意図せずに接触することによる誤ったタッチイベントを防ぐために、携帯機器のタッチスクリーンは、無効にされるか、オフに切り替えられる。通常、ユーザが通話中で頭や耳の近くに機器を置いている間はタッチスクリーンは使用されないため、電力を節約するために、タッチスクリーンコントローラは、オフに切り替えられるか、低電力モードになるように構成される場合がある。また、機器のスクリーンの明るさも、通常は無効にすることで電力を節約することができる。通常、赤外線(IR)近接センサが使用されるが、超音波近接センサも知られている。超音波近接センサを含む解決策の例が、送信機とマイクロフォンを使用して物体が近傍にあることを検出する欧州特許第2271134号および米国特許出願第2017329431号に記載されており、米国特許出願第2014126730号は、温度を測定して、過負荷を回避するためにスピーカを較正することを目的としている。
【0003】
多くの携帯機器は、カバー検出モードを必要とする。カバー検出は、携帯機器のスクリーンを有効にすべきか、無効状態から復帰すべきかを判断する一般的な目的を有する近距離近接検出である。したがって、カバー検出システムの重要な目的の1つは、意図しないときにスクリーンが有効になることを防止することである。これにより、電子機器のスクリーンが意図せずに有効になって意図しないタッチイベントや操作が行われることを防止することができる。同様に、カバー検出モードも、ユーザが機器を操作しようとするときにいつでもスクリーンに素早くアクセスすることを可能にする信頼性の高いものである必要がある。また、カバー検出システムが、スクリーンを有効にすべきイベントと、スクリーンを無効またはスリープ状態のままにすべきイベントとを確実に区別できることが望ましい。そして、スムーズなユーザエクスペリエンスを実現するために、カバー検出の応答が速いことも望ましい。
【0004】
一部のユーザにとって、携帯機器の保護および個性化のために、機器をカバーに入れることが好ましい場合がある。カバーには、フリップケース型(手帳型)およびウォレット型などいくつかの種類があり、閉じられたときに機器のスクリーンの少なくとも一部を取り囲むようになっている。一部の携帯機器では、フリップカバーが閉じられたとき、またはフリップカバーがスクリーンを覆ったときに、半透明または透明なウィンドウを介して専用のビューやメニューを表示するように、機器のスクリーンを適合させる。
【0005】
市場で入手可能なケースにおいて、スクリーン上でのフリップカバーの存在の検出は、例えば、携帯機器のタッチスクリーンセンサを使用して行われてもよく、スクリーンを覆うために使用されるフリップカバーの一部に、近距離無線通信(NFC)センサまたは磁気センサなどの専用のセンサが設けられてもよい。この場合、センサは、携帯機器のスクリーンから所定の距離内にカバーのスクリーン部分が入ったときにフリップケースの検出モードを起動させる。しかしながら、カバー検出のための専用または特殊なセンサを必要とするカバーは、より高価であり、顧客にとって魅力的でなくなる可能性がある。
【0006】
そのため、代替のカバー検出方法およびカバー検出システムが求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に存在する少なくともいくつかの問題は、添付の特許請求の範囲の独立請求項に記載の特徴によって解決される。
【0008】
したがって、本発明は、戻り信号を検出するためのマイクロフォンを使用することに依存することなく、物体が近くにあるとスピーカの動作条件の性能に影響を与えるので、ラウドスピーカのパラメータを直接評価することを目的としている。発信された音響信号の波長に相当する範囲に物体が入ることに伴って、物体の近接がスピーカの動作条件に影響を与える。例えば、スピーカが外方向に物体に向けて移動する場合、圧力波がスピーカから自由に移動できないため、スピーカと物体との間に通常よりも大きい圧力がかかることに敏感に反応する。これは、膜(スピーカ膜)の動きを制限するか、膜を動かすのに必要な力を増加させ、本発明によるスピーカ制御システムが測定することができるパラメータを表す。
【0009】
したがって、スピーカに関するパラメータは、スピーカが音響信号を受信することができるかどうかに依存せず、既存の動作条件下でのスピーカにのみ関連する。スピーカの近傍に物体があるために動作条件が変化したときに、その物体を検出することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の観点によれば、
・ 音声信号を生成するように構成された第1の部分と、
・ 音響信号を生成するためのラウドスピーカと、
を備える電子機器が提供され得る。ここで、ラウドスピーカは、可動膜を含んでいてもよい。また、代替的に、音を送信するように構成されたピエゾアクチュエータまたはマイクロフォンを有するガラススクリーンを含んでいてもよい。これにより、後述する膜が、ガラススクリーンまたはマイクロフォンの能動部分であることを理解することができる。
【0011】
また、当該機器は、処理部を含むスピーカ保護モジュールを備える。スピーカ保護モジュールは、処理部で音声信号を受信するように構成され、また、処理部を介して、ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータを使用して、制御された音声信号を生成するように構成される。
【0012】
また、当該機器は、増幅器を備える。増幅器は、少なくとも制御された音声信号を増幅して、増幅された音声信号を生成するように構成される。増幅された音声信号は、音響信号を生成するためにラウドスピーカに送られる。
【0013】
ここで、増幅された音声信号が、1つまたは複数のパラメータを考慮してラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号の振幅が設定される。
【0014】
また、電子機器は、ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つを分析して、可動膜の応答における変化を検出するように構成された第2の部分をさらに備える。応答における変化は、膜の音響経路内に存在する物体によって引き起こされる。第2の部分は、少なくとも1つのパラメータの分析結果に基づいて、物体が電子機器の近傍に位置するかどうかを判断するように構成される。
【0015】
本明細書において、「音声信号」という用語は、利用可能なトランスデューサに適した範囲内にある可聴域の内側または外側で送信される音響信号または受信した音響信号を表す電気信号を意味することに留意されたい。近接(近傍)とは、広義には、ラウドスピーカからの距離が5cm未満であることを意味する。
【0016】
また、増幅された音声信号は、制御された音声信号に依存していることに留意されたい。言い換えれば、増幅された音声信号は、増幅器のゲインによって乗算された制御された音声信号を少なくとも部分的に含み、または、増幅された音声信号は、増幅された且つ制御された音声信号を少なくとも部分的に含むと言うことができる。
【0017】
そうすることで、ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータは、ラウドスピーカに供給される増幅された音声信号がラウドスピーカの可動域および/または温度限度内に収まるように制御された音声信号を適応させて修正するためだけでなく、カバー検出または近距離近接検出を実施するためにも使用することができる。これにより、コスト、デザイン、さらには性能の面で大きな利点を得ることができる。スピーカ保護に使用される既存のハードウエアを使用することで、提案されている電子機器およびSPMを、近距離近接測定にも使用することができる。そのため、別個の近接検出システムを提供する必要がない。
【0018】
また、可動膜の応答における変化の検出または測定は、制御された音声信号の振幅が安全であると判断された振幅内にあるようにその振幅を監視および/または変更するために測定されるのと同じラウドスピーカパラメータを少なくとも部分的に使用して行うことができることに留意されたい。応答における変化の測定は、ラウドスピーカパラメータを使用して振幅を監視するのとほぼ同時に行うこともできる。
【0019】
応答における変化は、主に音響信号の反射と、ピエゾアクチュエータを有する膜またはガラススクリーンを含むラウドスピーカ、または、音を送信するように構成されたマイクロフォンとの相互作用によって引き起こされ得ることに留意されたい。膜の応答は、膜によって生成された音響信号の音響経路内に物体が存在しない場合と、音響信号の少なくとも一部が膜に反射されるように音響経路内に物体が存在する場合とで異なる。反射信号が膜に到達すると、少なくとも一部の音響エネルギーが膜に伝達され、その結果、膜の応答に変化が生じる。本出願人は、スピーカの保護のために使用されているラウドスピーカパラメータのうちの少なくとも一部を監視することでこの応答における変化を測定できることに気付いた。通常の音響検出システムと比較すると、送信してからトランスデューサで聞くという作業が必要ない。ラウドスピーカの安全限度を検証している間に、検出を行うことができる。これは、SPMが両方の機能を同時に行えるという利点と組み合わせたときに、商業的にも技術的にも大きな利点となり得る。
【0020】
さらなる利点として、音声が電子機器よって再生されている場合、機器に存在する別個のカバー検出システムを無効にし、SPMをカバー検出または近距離近接検出に使用することができることが挙げられる。これにより、電力を節約し、利用可能なバッテリーの時間を向上させることができる。
【0021】
一態様によれば、1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも一部は、ラウドスピーカモデルを定義するために使用される。ラウドスピーカモデルは、SPMおよび/または電子機器のアクセス可能な別の部分のいずれかにあるメモリに格納されてもよい。ラウドスピーカモデルは、ラウドスピーカの伝達関数を代表するものであり得る。したがって、電子機器は、スピーカ保護モジュールを介して、またはより具体的には処理部を介して、所与の音声入力信号値でラウドスピーカの予想される応答を判断することができる。音声入力信号値は、スピーカ保護モジュールの音声入力部において提供され得る。ラウドスピーカモデルは、較正を用いて、またはリアルタイムで、SPMによって動的に更新されてもよい。SPMは、ラウドスピーカモデルを較正するためのパイロットトーンなどの較正信号を1つまたは複数使用してもよい。
【0022】
別の態様によれば、電子機器は、同一のラウドスピーカまたは別のトランスデューサのいずれかを介して超音波信号を送信するように構成される。当業者であれば、超音波トランスデューサは音響式トランスデューサの一種であり、超音波域における音響信号の送信および/または受信に基づくものであることを理解するであろう。超音波信号は、典型的な人間の可聴域の外にあるので、単独に、または例えば音楽再生または通話中のスピーカ出力などの音声信号と同時に、電子機器から送信されてもよい。したがって、電子機器は、ラウドスピーカを介した可聴音響信号と同時またはその代わりに超音波近接検出を使用してもよい。また、電子機器は、超音波信号またはその反射信号を受信するための1つまたは複数の超音波受信機を備えてもよい。
【0023】
一態様によれば、ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つは、増幅された音声信号から導出される。例えば、少なくとも1つのパラメータは、増幅された音声信号から導出されたI/V信号である。したがって、1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つは、ラウドスピーカに関する電気信号である。また、それらのパラメータのうちの少なくとも1つは、I/V信号の基準値であってもよい。また、それらのパラメータの一部は、増幅された音声信号を介して導出されるラウドスピーカに関するそれぞれの電気信号と比較される、または相関するモデルパラメータまたは閾値であってもよい。
【0024】
一態様によれば、第2の部分は、少なくとも部分的に処理部の一部である。これは、制御された音声信号を生成するために処理部によって既に実施されている処理を少なくとも部分的に再利用することで、コスト、さらには性能の面でさらなる利点を提供することができる。そのため、第2の部分は、ハードウエアの点で、処理部と同一のプロセッサであり得る。
【0025】
したがって、本発明は、スピーカ保護モジュールを提供することができる。スピーカ保護モジュールは、
・ 処理部を介して制御された音声信号を生成するように構成された制御された出力と
・ ラウドスピーカに増幅された音声信号を送るように構成された増幅器出力と、
・ 少なくとも制御された音声信号を増幅して、増幅された音声信号を生成するように構成された増幅器と、
を備える。ここで、増幅された音声信号が、増幅された音声信号から抽出された1つまたは複数のパラメータを考慮してラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号の振幅が設定される。さらに、処理部は、増幅された音声信号から抽出された1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つを分析して、ラウドスピーカの近傍に物体が存在するかを判断するためにラウドスピーカの応答における変化を検出するように構成される。また、機器は、音声信号を受信するように構成された処理部の代わりに、音声信号を受信するように構成された音声入力を含んでいてもよい。
【0026】
さらに別の観点によれば、電子機器の近傍にある物体を検出するための方法が提供され得る。当該方法は、
・ 音声入力において音声信号を受信するステップと、
・ 処理部を使用して音声信号を処理するステップと、
・ 処理部を介して、ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータを使用して、制御された音声信号を生成するステップと、
・ 増幅器を使用して、少なくとも制御された音声信号を増幅して、増幅器出力において増幅された音声信号を生成するステップであって、ここで、増幅された音声信号が、1つまたは複数のパラメータを考慮してラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号の振幅が設定される、ステップと、
・ 増幅器出力と動作可能に接続されたラウドスピーカに、増幅された出力信号を送るステップと、
・ 増幅された音声信号を使用して、ラウドスピーカに関するパラメータを少なくとも1つ判断するステップと、
・ ラウドスピーカの可動膜を介して、増幅された出力信号に依存する音響信号を生成するステップと、
・ ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つを分析して、可動膜の応答における変化を検出するステップであって、ここで、応答における変化は、膜の音響経路内に存在する物体によって引き起こされる、ステップと、
・ 分析の結果に基づいて、物体が電子機器の近傍に位置するかどうかを判断するステップと、
を含む。
【0027】
さらに別の観点によれば、本発明は、適切なプロセッサを使用して本明細書に記載の方法ステップのいずれかを実現するためのコンピュータソフトウエア製品を提供することができる。したがって、本発明は、本明細書に記載の方法ステップのいずれかを実行するための特定の能力を有するコンピュータ可読プログラムコードにも関する。言い換えれば、本発明は、本明細書に記載の方法ステップのいずれかを電子機器に実行させるプログラムを格納する非一時的なコンピュータ可読記憶媒体にも関する。
【0028】
より具体的には、コンピュータソフトウエア製品がさらに提供され得る。ここで、コンピュータソフトウエア製品が電子機器のプロセッサによって実行されると、電子機器は、
・ 音声入力において音声信号を受信し、
・ プロセッサを使用して音声信号を処理し、
・ プロセッサを介して、ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータを使用して、制御された音声信号を生成し、
・ 増幅器を使用して、少なくとも制御された音声信号を増幅して、増幅器出力において増幅された音声信号を生成し、ここで、増幅された音声信号が、1つまたは複数のパラメータを考慮してラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号の振幅が設定され、
・ 増幅器出力と動作可能に接続されたラウドスピーカに、増幅された出力信号を送り、
・ 増幅された音声信号を使用して、ラウドスピーカに関するパラメータを少なくとも1つ判断し、
・ ラウドスピーカの可動膜を介して、増幅された出力信号に依存する音響信号を生成し、
・ ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つを分析して、可動膜の応答における変化を検出し、ここで、応答における変化は、膜の音響経路内に存在する物体によって引き起こされ、
・ 分析の結果に基づいて、物体が電子機器の近傍に位置するかどうかを判断する。
【0029】
当業者であれば、本明細書に記載の発明が、巻線またはコイルを備えるラウドスピーカに限定されるものではないことを理解するであろう。説明を簡略化するために、そのようなラウドスピーカを本明細書の実施例に記載している。したがって、オーバードライブからの保護を必要とする場合があるためにSPMを使用するあらゆる種類の音響式トランスデューサは、音響経路に導入される物体によるトランスデューサの応答における変化を検出できる限り、近接検出のための本発明の恩恵を受けることができる。例えば、特定の種類のピエゾトランスデューサを、音の送信のために使用してもよい。したがって、本発明は、そのようなピエゾトランスデューサまたはその他の種類の音響式トランスデューサにおける同様のオーバードライブの問題を緩和しながら、近接検出能力を提供するのに適している可能性がある。
【0030】
また、処理部が、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラなどの任意のタイプのコンピュータまたはデータプロセッサであり得ることに留意されたい。さらに、処理部またはプロセッサは、DSP、FPGA、またはASICであってもよい。処理部は、異なるハードウエア要素またはモジュールの組み合わせあってもよい。場合によっては、処理部は、本質的に、プロセッサで動作する仮想マシンであってもよい。場合によっては、処理部は、電子機器のユースケースに応じて測定の精度を向上させるための機械学習モジュールを含んでいてもよい。さらに、処理部は、機械学習(ML)モジュールおよび/または人工知能(AI)モジュールを含んでいてもよい。
【0031】
電子機器は、モバイル型または据え置き型などの任意の機器であってもよい。したがって、携帯電話、タブレット端末、音声アシスタント、スマートスピーカ、ノート型コンピュータ、デスクトップコンピュータ、および同様の機器を含む機器が、本明細書における電子機器という用語の範囲に含まれる。また、インターネットルーター、自動販売機、ビデオゲーム、自動車、門、扉、家電製品、およびその他の種類の電子機器を含む機器も、電子機器という用語の範囲に含まれる。
【0032】
超音波信号の処理は、送信された超音波信号と、対応する反射信号または超音波受信機が受信したエコー信号との間の飛行時間(TOF)の測定値に基づいて行われてもよい。受信機は、エコー信号を、測定された信号に変換する。また、エコー信号の処理は、測定された信号の振幅、または送信された信号と測定された信号との位相差、または送信された信号と測定された信号との周波数差、またはそれらの組み合わせに基づいて行われてもよい。送信された超音波信号は、単一の周波数を含んでいてもよく、複数の周波数を含んでいてもよい。場合によっては、送信された超音波信号は、チャープを含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
以下、添付の図面を参照して、例示的な実施形態を説明する。添付の図面は、必ずしも縮尺通りに描かれていない場合があり、これは、本発明の一般性の範囲に影響を与えない。
図1】近接検出システムを有する電子機器の正面斜視図である。
図2】近接検出システムを有する電子機器の側面斜視図である。
図3】スピーカ保護モジュール(SPM)を備える音声システムのブロック図である。
図4】SPMを使用した近距離近接測定を示す図である。
図5】SPMを使用した近距離近接測定方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
ラウドスピーカ(スピーカ)などの電気音響式トランスデューサは、電気エネルギーを音響エネルギーに変換するために使用される。一般的なスピーカが駆動すると、スピーカの巻線に電流が流れ、磁界が発生する。この磁界の中で、巻線(音声コイル)は磁力によって移動する。巻線には、振動板、フレーム、ダンパー(suspension)などのスピーカの可動部をすべて含む可動膜が取り付けられている。これにより、巻線と同様に膜が動き、巻線に流れる電流に応じた音響信号が生成される。
【0035】
スピーカは、オーバードライブによって、すなわち大きすぎる振幅または電力をもつ信号で駆動することによって、損傷する場合がある。スピーカは、主に、例えば可動膜の過剰な伸縮による機械的な原因、または通常巻線で生じる過剰な温度による熱的な原因によって損傷する。スピーカが駆動すると、巻線に流れる電流によってIR損失が生じて、巻線が加熱される。過剰な熱により、巻線が損傷する場合があり、さらに、巻線の周りのエポキシ樹脂が溶けて膜のさらなる動きが止まる場合がある。また、これらの組み合わせで損傷することもある。したがって、一部の電子機器では、ラウドスピーカからの音声出力を最大にする一方で、ラウドスピーカの損傷を避けるために、ラウドスピーカをオーバードライブから保護する「スピーカ保護モジュール(SPM)」が採用されている。
【0036】
携帯電話およびタブレット端末などの最新の電子機器には、通常、例えば音楽や動画などのマルチメディアコンテンツを再生するため、および通話などの電気通信のために、可聴音を生成するハードウエアを備える。一般に、このハードウエアには、(例えばマイクロプロセッサ、メモリ、記憶媒体等からの)入力信号を受信し、それを増幅してラウドスピーカの駆動に適した状態にするように配置された電力増幅器(PA)などの増幅器が含まれる。携帯機器では、機器の大きさと重量が非常に重要であるため、音声性能を最大化することが特に重要になる。
【0037】
SPMには、通常、電力増幅器と、スピーカ保護アルゴリズムと、が含まれる。スピーカ保護アルゴリズムは、可動域および熱による損傷からスピーカを保護する。SPMは、通常、(例えばラウドスピーカに供給される駆動電力を示す信号を監視することで)ラウドスピーカの出力および温度などのその他のローカル環境要因を監視し、それらをスピーカ保護アルゴリズムに供給し、スピーカ保護を最適化する目的でスピーカに供給された電気信号を動的に調整する。これにより、出力に余計な制限(例えば実際に必要とされる以上の音声出力信号の振幅を制限するなど)をかけることなく、ラウドスピーカのオーバードライブを防止することができ、条件が許す限り、ラウドスピーカを常に完全に駆動させることができる。
【0038】
通常、ラウドスピーカを介して電子機器によって出力される音声信号は、マイクロプロセッサまたはシステムオンチップ(SoC)などのソースから、増幅器で増幅される前にSPMを通過する。SPMは、通常、入力された音声信号を受け取り、増幅後にスピーカが現在安全に受け取ることができるのと同じレベルの制御された音声信号を生成する。次いで、増幅された且つ制御された音声信号は、通常、ラウドスピーカを直接駆動するために使用される。スピーカ保護モジュールが適切に較正されていれば、ラウドスピーカのオーバードライブを防止することができる。このように、上述したように、増幅された音声信号に依存する音響信号を生成するために可動膜が使用される。
【0039】
ラウドスピーカに関する1つまたは複数のパラメータは、ラウドスピーカの温度および/またはラウドスピーカのモデルを導出するために使用され得る。例えば、ラウドスピーカモデルは、膜の可動域を推定するために使用されてもよい。
【0040】
ラウドスピーカに供給される駆動電力を示す信号は、通常、I/V信号である。これは、I/Vセンス抵抗器によって、または駆動電力を示す信号を直接または間接的に提供することができるその他の電気的要素によって生成され得る。また、電気的要素は、複数の構成要素であってもよい。電気的要素は、任意の適切な電流検知要素であり得る。一態様によれば、I/Vセンス信号は、電気的要素にわたって測定される差動信号であってもよい。例えば、差動信号は、抵抗器、受動または能動半導体要素などの電気的要素にわたる電圧降下であってもよい。また、電気的要素は、カレントミラーであってもよい。I/V信号は、増幅、フィルタリング、および平均化のいずれかの信号処理を受けてもよい。また、信号処理は、例えばアナログ・デジタル変換器(ADC)を使用するアナログ・デジタル変換処理を含んでいてもよい。したがって、I/V信号は、例えば、マイクロプロセッサ、FPGA、またはデジタル信号プロセッサ(DSP)などのデジタルプロセッサを使用してさらに分析するために、デジタルI/V信号に変換されてもよい。増幅器の分野の当業者であれば、I/V検知および信号処理がどのように機能するかを理解するであろう。したがって、それに関するさらなる詳細は、本発明の範囲または一般性に影響を与えず、本明細書ではその説明を省略する。
【0041】
スピーカ温度およびスピーカモデルは、I/Vセンスから導出される。これを使用して、スピーカに提供される出力がスピーカの可動域および温度限度内に収まるように、電力/可動域保護ブロックにおける入力信号を適宜変更する。
【0042】
超音波センサは、音響センサの一種であり、超音波域における音響信号の送受信を利用する。超音波信号は、典型的な人間の可聴域の外にあるので、単独に、または例えば音楽再生または通話中のスピーカ出力などの音声信号と同時に、電子機器から送信されてもよい。
【0043】
図1は、ここでは携帯電話またはスマートフォンとして示されている電子機器100の例示的な正面斜視図である。携帯電話100は、コンテンツを表示するため、および機器100とのインタラクションのためのスクリーン101を有する。スクリーン101の上端110の上方には、イヤホン102と近接センサ106とが配置される。ここで、上、下、左、右という用語は、発明を容易に理解するために、本明細書において相対的な意味で使用される。さらに、近接センサ106などのそれぞれの構成要素の位置は、あくまでも一例として示されている。当業者であれば、このようなセンサまたはイヤホン102を、本実施例とは異なる位置に配置することができ、それが本発明の範囲または一般性に影響を与えないことを理解するであろう。
【0044】
以下で説明するように、イヤホン102は、通話の音声などの音響信号を出力するために使用されるスピーカを備える。また、特定の電話機では、例えば超音波に基づくユーザインタラクションのための超音波信号を出力するために、イヤホン102内の同一のスピーカが使用されてもよい。スクリーン101は、写真および動画などのコンテンツを表示するためのディスプレイだけでなく、タッチに基づくユーザインタラクションのためのタッチスクリーンセンサを備えることもできる。近接センサ106は、場合によっては赤外線(IR)検出に基づいているが、音響検出に基づくセンサ、または近接検出に適した別のタイプのセンサであり得る。近接センサ106は、センサ106が近傍のイベントなどの近接イベントを確実に検出することができる、センサ106の周囲の3次元エンベロープまたは空間である視野(FoV)を有する。近傍のイベントの検出は、例えば、望ましくないタッチスクリーン動作が防止できるように、機器100のタッチスクリーンおよびディスプレイ(またはスクリーン101)をオフに切り替えることができるように使用される。このような望ましくないタッチスクリーン動作は、ユーザがイヤホン120を耳に接触または近接させたとき、およびタッチスクリーンが無効になっていない場合に起こり得る。近接センサ105を使用した近傍のイベントの検出は、望ましくないタッチスクリーン動作を防止するように、タッチスクリーンを無効にするために使用される。
【0045】
また、図1には、1対のラウドスピーカ105とマイクロフォン103とが示されている。一部の電話機は、ハンズフリーの操作および/または音声再生に使用される、スピーカ105のような1つまたは複数の他のスピーカを備えてもよい。このような他のスピーカ105は、イヤホン102とは異なるものであり得る。また、このようなスピーカ105は、イヤホンのスピーカよりも大きくすることができる。図に示す実施例において、左スピーカ105aおよび右スピーカ105bは、ステレオ音声を再生するために使用されてもよい。一般的に、電話機100の下側のマイクロフォン103は、特にユーザがイヤホン102を耳に近づけて通話するために使用される。また、マイクロフォン103は、ハンズフリー操作、またはその他の音声の取り込みまたは録音のために使用されてもよい。
【0046】
また、一部の電話機は、例えば電話機の上側に配置されたマイクロフォン104のような追加のマイクロフォンを1つまたは複数備えてもよい。追加のマイクロフォンは、例えばステレオ音声の取り込みまたはその他の目的のために使用され得る。機器100の上側および/または下側、あるいは側面のいずれかに、複数のマイクロフォンが設けられてもよい。一部の機器において、複数のマイクロフォンおよび/または複数のスピーカは、機器100との超音波相互作用のために使用されてもよい。場合によっては、スピーカおよびマイクロフォンによって実現されるこのような超音波検知機器の配置によって、専用の近接センサ106の要件が取り除かれる場合がある。したがって、このような場合、機器100は、別個の近接センサ106を有さなくてもよい。
【0047】
図1に示すように、近接センサ106は、機器のスクリーン側に重要な空間を必要とする。したがって、ほとんどの場合、専用の近接センサ160のような構成要素を収容するために、ベゼル部120が必要とされる場合がある。そのような構成要素がない場合、スクリーン101を、機器の端部に向けて拡張することができる。これにより、ベゼル部120のデッドエリアとして空間を無駄にすることなく、機器100のスクリーン側のすべて、またはそのほとんどを表示領域として利用することができる。
【0048】
近接センサ106が実行する機能の1つに、カバー検出がある。カバー検出は、機器100、より正確には近接センサ106の近傍にある物体のための近接検出である。したがって、近接センサ106のFoVの例えば5cm以内に、ユーザの頭部、ユーザの掌、ポケットまたはバッグの側面、または閉状態またはほぼ閉状態のフリップカバーなどの物体が1つまたは複数存在すると、カバー検出が引き起こされる。あるいは、より一般的には、少なくとも大人の指の大きさがある物体を近接センサ106のFoVの5cm以内にもってくることで、カバー検出機能の近状態(near state)を引き起こすことができる。同様に、物体がFoVおよび/またはセンサ106から5cm超離れると、カバー検出機能の遠状態(far state)を引き起こすことができる。なお、近状態と遠状態は相互に排他的であること、すなわち、近状態が検出されないときに遠状態が発生することに留意されたい。
【0049】
スムーズなユーザエクスペリエンスと、近状態および/または遠状態の誤検出を防止するために、カバー検出機能は信頼性が高く、事実に基づく必要がある。これはまた、バッテリーの電力を節約するという利点もある。
【0050】
図2は、電話機100の側面斜視図である。近接検知システムのFoV205は、軸206に沿って近接センサ106から広がるように延びており、軸206に垂直な平面におけるFoV205の断面積は、軸206に沿った近接センサ106からの距離と共に増加する。通常、FoV205は、センサ106から特定の距離250まで延びている。したがって、FoV205は、近接検知システムが物体が近傍にあることを確実に検出することができる領域または3D空間である。本実施例において、FoV205は、近接センサ106の位置にその頂点がある円錐形状として示されており、この円錐の底部207は、信頼できる検知が可能な領域の限界を表している。代替的に、円錐の底部207は、近接検知が望まれる限界を表すことができる。FoV205の円錐形状は、単に例として示されている。場合によっては、FoV205は、いずれかの方向またはすべての方向において非対称であってもよく、使用されるセンサに応じて別の形状を有してもよい。例えば、超音波に基づく近接センサは、通常、IRに基づく近接センサ106よりも広いFoV205を有する。さらに、FoV205は、軸206に対して垂直ではない、すなわち、別の角度で、平面内に延びていてもよい。当業者であれば、FoV205の特定の形状が、本発明の範囲または一般性を限定するものではないことを認識するであろう。
【0051】
ここで図3を参照すると、スピーカ保護モジュール(SPM)301を備える音声システム300が示されている。SPM301は、少なくとも1つの入力と、少なくとも1つの出力と、を備える。SPM301は、少なくとも音声入力304を備える。また、SPM301は、ラウドスピーカ310と動作可能に接続された増幅器音声出力306aを備える。
【0052】
音声入力304は、音声信号を受信するように構成される。音声信号は、例えば電子機器の音声DSPなどの任意の適切なモジュールまたは機器を介して、音声入力304において受信されてもよい。音声入力304は、処理部302と動作可能に接続される。したがって、音声入力304において受信した音声信号は、直接または別のモジュールを介して、処理部302に送信される。処理部302は、ハードウエア信号処理モジュールを備えてもよく、且つ/または、ラウドスピーカ310を保護するためのスピーカ保護アルゴリズムを実行するように構成される。
【0053】
したがって、処理部302は、増幅器303と動作可能に接続された制御された出力305において、制御された音声信号を生成する。
【0054】
増幅器303は、直接または別のモジュールを介して、制御された音声信号を増幅して、増幅器出力306aにおいて増幅された音声信号を生成するように構成される。
【0055】
増幅器出力306aは、直接、または例えばバッファ、別の増幅器、減衰器、フィルタなどの信号処理機器、またはそのような信号処理機器の任意の組み合わせなどの別の適切な機器を介して、ラウドスピーカ310に増幅された音声信号を送るように構成される。したがって、ラウドスピーカ310は、増幅された出力信号に依存する音響信号を生成するように構成される。上述したように、音響信号は、ラウドスピーカ310の可動膜を介して生成される。
【0056】
スピーカ310を保護するために、処理部302は、増幅された出力信号を監視するように構成される。したがって、処理部302は、オーバードライブからの保護のために、ラウドスピーカ310に関する1つまたは複数のパラメータを使用する。パラメータのうちの少なくとも1つは、増幅された出力信号から、または増幅器出力306aで行われる検知から導出される。場合によっては、一部のパラメータは、スピーカ310の仕様および/または数学的モデルであってもよい。場合によっては、スピーカ310のモデルは、増幅器出力306aにおいて行われた測定から少なくとも部分的に導出される。
【0057】
増幅器出力306aにおける測定または検知は、例えば、増幅器音声出力306aにおけるI/V検知によって行うことができる。したがって、抵抗器などの電流検知要素の一方の端子を増幅器303に向けて接続し、他方の端子をスピーカ310に向けて接続した状態で電流検知要素を直列に配置することで、スピーカ310に送られる電流が電流検知要素を通って流れることができる。当業者であれば、この電流が構成要素間の電圧降下をもたらすことを理解するであろう。これは、スピーカ310に送られる電流または電力に依存する。検知要素320またはその配置がスピーカ310に関する少なくとも1つのパラメータを示す信号を提供することができる限り、上述したように直列接続された、および/または増幅器出力306aに対して異なる配置にある任意の適切な検知要素320を使用することができる。ここで、信号を、機械的および/または熱的なオーバードライブからスピーカ310を保護するために使用することができる。上記のような構成要素の他の例として、カレントミラー、シャント抵抗器、分圧器、電流検知増幅器、差動増幅器、および変圧器が挙げられる。特定の種類の検知は、本発明の範囲または一般性を限定するものではない。
【0058】
ここで、増幅された音声信号が、ラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号の振幅が設定される。したがって、処理部302は、制御された出力305において、増幅された音声信号が、1つまたは複数のパラメータを考慮してラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるような振幅を有するように、制御された音声信号を生成するように構成される。言い換えれば、処理部302は、ハードウエアモジュールおよび/またはスピーカ保護アルゴリズムを介して、増幅された音声信号が、ラウドスピーカにとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号を適合させる。
【0059】
図3において、検知要素320は、増幅器出力306aと測定された増幅器出力306bとの間に直列にあるように示されているが、上述したように、任意のタイプの構成要素とすることもできる。場合によっては、検知要素320は、少なくとも部分的に処理部302内に含まれてもよく、完全に処理部302の内部に含まれてもよい。検知要素320が処理部302の内部に含まれる場合、測定された増幅器出力306bも処理部302の内部に含まれることに留意されたい。そのような場合、増幅器出力306aは、処理部302にも直接接続されてもよい。
【0060】
増幅器303は、SPM301の一部として示されているが、少なくとも部分的にSPM301の外部に設けることもできる。場合によっては、増幅器303は、少なくとも部分的に処理部の一部であってもよい。
【0061】
ここで図4を参照すると、SPM301を使用した近距離近接測定が示されている。図4では、簡略化のため、SPM301のすべての部分を明確に示していない。さらに、検知要素320も示していない。上述したように、図4において構成要素320が存在するとみなしてもよいし、構成要素320が処理部302の一部であるとみなしてもよい。図4において、制御された出力305は、制御された音声信号を増幅器303に提供する。増幅器303は、増幅器出力306aにおいて、制御された音声信号に依存する、増幅された音声信号を生成する。増幅された音声信号は、増幅された音声信号に依存する音響信号401を生成するラウドスピーカ310に供給される。
【0062】
より具体的には、図4Aを参照すると、スピーカ310の近傍に物体が存在しない状態が示されている。この場合、図4Aでは、増幅器出力306aにおける信号、または信号の測定されたコピーが、処理部302に供給される。このようにして、処理部302は、増幅された音声信号が、ラウドスピーカ310にとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号を適合させる。
【0063】
図4Bでは、スピーカ310の近傍にあるユーザの手410が示されている。より具体的には、手410は、スピーカ310の音響経路内にある。音響経路は、スピーカ310の視野(FoV)としてみなすことができる。これにより、音響信号401の反射402がスピーカ310に到達して、増幅器出力306aにおいて、またはスピーカの入力において、測定可能な信号変化405を生じさせることができる。
【0064】
検知要素320を介して、増幅された音声信号、より具体的にはスピーカ310に供給された信号における信号変化405を測定することができる。したがって、この変化は、スピーカ310またはスピーカ310がその一部である電子機器の近傍に物体(ここでは手410)が存在することを判断するために、処理部302によって使用され得る。
【0065】
信号変化405は、スピーカ310の応答またはダイナミクスにおける変化をもたらす。これは、検知要素320を介して測定することができる。測定可能な変化405を引き起こすには、スピーカからの物体の距離と、物体の大きさとの両方が重要であることに留意されたい。より具体的には、確実に検出されるには、物体は、特定の大きさよりも大きくなければならず、スピーカ310からの物体の距離は、特定の値より小さくなければならない。さらに、特定の物体の各々は、検出され得る特定の最大距離を有することができる。本発明の範囲は、カバー検出、すなわち、電子機器が「カバー」されているときの状態の検出であるので、どのような種類の物体が本発明を使用して検出することができ、またどのような種類の物体を検出すべきかは、当業者には明らかであろう。物体がどのようなものか、どのような大きさであるかを説明する必要はない。非限定的な例として、物体は、ユーザの指、手、カバー、紙切れまたは本の表面、およびポケットまたはバッグの表面のうちの1つ、または複数、またはその組み合わせであり得る。
【0066】
信号変化405は、例えば、音響信号401がその反射402と相互作用することによって生じる定在波によって引き起こされ得る。さらに、共振などのその他の現象も信号変化405に寄与する場合がある。
【0067】
場合によっては、スピーカ310の入力は、増幅器出力306aと接続された入力と同じである。代替的または追加的に、入力は、スピーカ310のパラメータの少なくとも一部を測定するための専用のスピーカの異なるインタフェースとすることができる。本明細書から理解されるように、異なるインタフェースは、スピーカのパラメータの少なくとも一部を測定するための、スピーカ310の膜に結合された1つまたは複数の端子であり得る。
【0068】
図5は、SPMを使用した近距離近接検出方法のフロー図500である。開始時501において、音声信号が受信される。音声信号は、音声入力304において受信され得る。次いで、別のステップ502において、音声信号またはそのコピーが処理される。音声信号は、処理部302を使用して処理され得る。さらに別のステップ503において、制御された音声信号が生成される。制御された音声信号は、例えば、制御された出力305において、処理部302によって生成され得る。制御された音声信号は、ラウドスピーカ310に関する1つまたは複数のパラメータを使用してさらに処理される。別のステップ504において、増幅された音声信号が生成される。増幅された音声信号は、増幅器303を使用して、制御された音声信号を増幅することで生成され得る。好ましくは、増幅された音声信号が、1つまたは複数のパラメータを考慮してラウドスピーカ310にとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号の振幅が設定される。別のステップ505において、増幅された音声信号がラウドスピーカ310に送られる。ラウドスピーカ310は、増幅器出力306aと動作可能に接続される。別のステップ506において、増幅器出力306aにおける信号、すなわち増幅された音声信号は、ラウドスピーカ310に関するパラメータのうちの少なくとも1つを決定するために使用される。増幅された音声信号の測定値を処理部302に提供するために、検知要素320が使用されてもよい。これにより、例えばステップ503において、処理部302は、増幅された音声信号が、ラウドスピーカ310にとって安全であると判断された振幅以下となるように、制御された音声信号の振幅を適合させることができる。さらに別のステップ507において、音響信号が生成される。音響信号は、ラウドスピーカ310によって生成され、増幅された音声信号に依存する。なお、音響信号は、ラウドスピーカ310の可動膜を介して生成されることに留意されたい。別のステップ508において、物体によって引き起こされた可動膜の応答における変化が検出される。膜の応答における変化は、ラウドスピーカ310に関する1つまたは複数のパラメータのうちの少なくとも1つを分析することで検出することができる。より具体的には、ステップ506に模式的に示すように、応答における変化は、増幅された音声信号またはその派生信号を分析することで検出することができる。したがって、信号変化405は、処理部によって測定することができる。続くステップ509において、分析の結果に基づいて、物体がラウドスピーカ310の近傍にあるかどうかが判断される。判断は、処理部302によって行うことができる。
【0069】
最後のステップ510において、該方法は終了してもよく、最初のステップから、または中間のステップのいずれかから繰り返されてもよい。
【0070】
以上、近接検出のためのSPMを含む電子機器、近接検出が可能なSPM、SPMを使用した近接検出方法、およびその方法を少なくとも部分的に実施するコンピュータソフトウエア製品について、様々な実施形態を説明した。しかしながら、当業者であれば、添付の特許請求の範囲およびその等価物の精神および範囲から逸脱することなく、上記実施例に変更および修正を加えることができることを理解するであろう。また、本明細書に記載した方法および製品の実施形態からの態様および/または特徴を自由に組み合わせることができることも理解されるであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5