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特許7611253電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法
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  • 特許-電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 123/08 20060101AFI20241226BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20241226BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241226BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241226BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20241226BHJP
   H01F 3/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
C09J123/08
B32B15/082 Z
C09J11/04
C09J11/06
C23C26/00 A
H01F3/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022537605
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 KR2020018613
(87)【国際公開番号】W WO2021125859
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】10-2019-0172209
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ボンウ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジョン‐ウ
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドン‐ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ノ,テヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ギョンリョル
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-159843(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03561015(EP,A1)
【文献】特開平01-311144(JP,A)
【文献】特開平01-093349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
C23C 26/00
B32B 15/082
H01F 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される繰り返し単位構造、および下記化学式2で表される繰り返し単位構造を含むポリエチレンアクリレートの100重量部および無機粒子の5~20重量部を含み、
前記ポリエチレンアクリレートは、下記化学式1で表される繰り返し単位を75~95重量%、下記化学式2で表される繰り返し単位を5~25重量%含み、
前記ポリエチレンアクリレートの100重量部に対して、硬化剤を0.5~2.5重量部さらに含むことを特徴とする電磁鋼板接着コーティング組成物。
[化学式1]
[化学式2]
(上記化学式1および化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して水素または直鎖型または分枝型アルキル基を示し、Rは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、またはヒドロキシ基を示す。)
【請求項2】
前記無機粒子は、SiO、Al、TiO、MgO、ZnO、およびZrOのうちの1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項3】
前記ポリエチレンアクリレートの1モルに対して、
中和剤を0.5~1.5モルさらに含むことを特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項4】
前記中和剤は、沸点が50~150℃であることを特徴とする請求項3に記載の電磁鋼板接着コーティング組成物。
【請求項5】
複数の電磁鋼板、および
前記複数の電磁鋼板の間に位置する融着層、を含み、
前記融着層は、下記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含むポリエチレンアクリレートの100重量部および無機粒子の5~20重量部を含み、
前記ポリエチレンアクリレートは下記化学式1で表される繰り返し単位を75~95重量%、下記化学式2で表される繰り返し単位を5~25重量%含み、
前記ポリエチレンアクリレートの100重量部に対して、硬化剤を0.5~2.5重量部さらに含むことを特徴とする電磁鋼板積層体。
[化学式1]
[化学式2]
(上記化学式1および化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して水素または直鎖型または分枝型アルキル基を示し、Rは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、またはヒドロキシ基を示す。)
【請求項6】
前記融着層の厚さは0.1~5μmであることを特徴とする請求項5に記載の電磁鋼板積層体。
【請求項7】
電磁鋼板の一面または両面に接着コーティング組成物を塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階、および
前記接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層を形成する段階、
を含み、
前記接着コーティング組成物は、下記化学式1で表される繰り返し単位構造および下記化学式2で表される繰り返し単位構造を含むポリエチレンアクリレートの100重量部および無機粒子の5~20重量部を含み、
前記ポリエチレンアクリレートは、下記化学式1で表される繰り返し単位を75~95重量%、下記化学式2で表される繰り返し単位を5~25重量%含み、
前記ポリエチレンアクリレートの100重量部に対して、硬化剤を0.5~2.5重量部さらに含むことを特徴とする電磁鋼板積層体の製造方法。
[化学式1]
[化学式2]
(上記化学式1および化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して水素または直鎖型または分枝型アルキル基を示し、Rは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、またはヒドロキシ基を示す。)
【請求項8】
前記接着コーティング層を形成する段階で150~250℃の温度で硬化させることを特徴とする請求項7に記載の電磁鋼板積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体およびその製造方法に係り、より詳しくは、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を使用せず、電磁鋼板を接着(締結)することができる融着層を形成した電磁鋼板積層体に関する。具体的に、本発明の一実施形態は、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させた電磁鋼板積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は圧延板上の全ての方向に対し磁気的特性が均一な鋼板であって、モータ、発電機の鉄芯、電動機、小型変圧機などに広く使用されている。
電磁鋼板は、打ち抜き加工後、磁気的特性の向上のために応力除去焼鈍(SRA)を実施しなければならないものと、応力除去焼鈍による磁気的特性効果より熱処理による経費損失が大きいため、応力除去焼鈍を省略するものとの二つの形態に区分される。
絶縁被膜はモータ、発電機の鉄芯、電動機、小型変圧機など積層体の仕上げ工程でコーティングされる被膜であって、通常、渦電流の発生を低減させる電気的特性が要求される。その他にも、連続打ち抜き加工性、耐粘着性および表面密着性などが要求される。連続打ち抜き加工性とは、所定の形状に打ち抜き加工後、複数を積層して鉄芯を作る時、金型の摩耗を抑制する能力を意味する。耐粘着性とは、鋼板の加工応力を除去して磁気的特性を回復させる応力除去焼鈍過程後、鉄芯鋼板間が密着しない能力を意味する。
【0003】
このような基本的な特性以外にコーティング溶液の優れた塗布作業性と配合後長時間使用可能な溶液安定性なども要求される。従来、このような絶縁被膜は、溶接、クランピング、インターロッキングなど別途の締結方法を使用して初めて電磁鋼板積層体の製造が可能であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的とするところは、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を使用せずに、電磁鋼板を接着(締結)することができる融着層を形成した電磁鋼板積層体およびその製造方法を提供することにある。具体的に、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させた電磁鋼板接着コーティング組成物、電磁鋼板積層体、およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電磁鋼板接着コーティング組成物は、下記化学式1で表される繰り返し単位構造、および下記化学式2で表される繰り返し単位構造を含むポリエチレンアクリレートの100重量部および無機粒子の3~25重量部を含み、
前記ポリエチレンアクリレートは、下記化学式1で表される繰り返し単位を75~95重量%、下記化学式2で表される繰り返し単位を5~25重量%含むことを特徴とする。
[化学式1]
[化学式2]
(上記化学式1および化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して水素または直鎖型または分枝型アルキル基を示し、Rは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、またはヒドロキシ基を示す。)
【0006】
無機粒子は、SiO、Al、TiO、MgO、ZnO、およびZrOのうちの1種以上を含むことができる。
電磁鋼板接着コーティング組成物は、ポリエチレンアクリレート100重量部に対して、硬化剤を0.5~2.5重量部さらに含むことがよい。
電磁鋼板接着コーティング組成物は、ポリエチレンアクリレート1モルに対して、中和剤を0.5~1.5モルさらに含むことが好ましい。
中和剤は、沸点が50~150℃であることがよい。
【0007】
本発明の電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板、および複数の電磁鋼板の間に位置する融着層、を含み、融着層は下記化学式1で表される繰り返し単位構造および下記化学式2で表される繰り返し単位構造を含むポリエチレンアクリレート100重量部および無機粒子3~25重量部を含み、前記ポリエチレンアクリレートは下記化学式1で表される繰り返し単位を75~95重量%、下記化学式2で表される繰り返し単位を5~25重量%含むことを特徴とする。
[化学式1]
[化学式2]
(上記化学式1および化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して水素または直鎖型または分枝型アルキル基を示し、Rは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、またはヒドロキシ基を示す。)
融着層の厚さは0.1~5μmであることが好ましい。
【0008】
本発明の電磁鋼板積層体の製造方法は、電磁鋼板の一面または両面に接着コーティング組成物を塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階、および接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層を形成する段階、を含むことを特徴とする。
接着コーティング層を形成する段階で150~250℃の温度で硬化させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、電磁鋼板の間に形成される融着層の成分を制御して、電磁鋼板間の接着力を向上させることができる。
本発明の一実施形態によれば、接着コーティング組成物の安定性を向上させることができる。
本発明の一実施形態によれば、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を使用せず、電磁鋼板を接着することができて、電磁鋼板積層体の磁性がさらに優れる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】電磁鋼板積層体の模式図である。
図2】本発明の一実施形態による電磁鋼板積層体の断面の概略図である。
図3】実施例1で融着層の成分を分析したFT-IRデータである。
図4】実施例1で融着層の成分を分析した走査熱分析(Differential Scanning Calorimetry、DSC)データである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1、第2および第3などの用語は多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語はある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためにのみ使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及することができる。
ここで使用される専門用語はただ特定実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数形態は文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。明細書で使用される“含む”の意味は特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0012】
ある部分が他の部分“の上に”または“上に”あると言及する場合、これは直ぐ他の部分の上にまたは上にあるか、その間に他の部分が伴われることがある。対照的に、ある部分が他の部分“の真上に”あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
異なって定義しない限り、ここに使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞典に定義された用語は関連する技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
【0013】
本明細書で“置換”とは別途の定義がない限り、化合物中の少なくとも一つの水素が炭素数1~30のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、シラン基、アルキルシラン基、アルコキシシラン基、エチレンオキシル基で置換されたことを意味する。
前記アルキル基は炭素数1~20のアルキル基であってもよく、具体的に、炭素数1~6の低級アルキル基、炭素数7~10の中級アルキル基、炭素数11~20の高級アルキル基であってもよい。
【0014】
例えば、炭素数1~4のアルキル基は、アルキル鎖に一つ~四つの炭素原子が存在するものを意味し、これはメチル、エチル、プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチルからなる群を示す。
典型的なアルキル基には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などがある。
以下、添付した図面を参照して本発明の実施形態について本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々の異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0015】
本発明の一実施形態による電磁鋼板接着コーティング組成物は、下記化学式1で表される繰り返し単位構造および下記化学式2で表される繰り返し単位構造を含むポリエチレンアクリレートを含む。
[化学式1]
[化学式2]
(上記化学式1および化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して水素または直鎖型または分枝型アルキル基を示し、Rは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、またはヒドロキシ基を示す。)
【0016】
ポリエチレンアクリレートは、熱融着時、融着層を形成し、電磁鋼板の間に介されて、電磁鋼板の間に接着力を付与する。融着層が電磁鋼板の間で接着力を適切に付与しない場合、精密に積層された複数の電磁鋼板が工程進行過程でずれる虞がある。積層位置がずれれば、最終製造された電磁鋼板製品の品質に悪影響を及ぼす。樹脂によって熱融着以後、接着力を確保することができ、積層された電磁鋼板の位置がずれないようにする。
有機樹脂の中でもポリエチレンアクリレートを使用する場合、ポリエチレン樹脂の溶融点以下の温度では結晶によって接着層表面の硬度が高くて加工工程(Slitting、Stamping)上で接着層が加工ラインとの摩擦による損傷を最少化し、一方、溶融点以上の温度では接着層の流れが急速に増加して接着力がさらに優れるようになる。また、アクリレートは、水分散コーティング溶液を製造時、水への分散力に優れた特性を有し、コーティング以後電磁鋼板表面との界面接着力を向上させる。
【0017】
ポリエチレンアクリレートは、具体的に、ポリエチレンとアクリレートがコポリマー(Copolymer)形態に重合された構造を有す。この時、先に例示されたポリエチレンは融着層の融着性、絶縁性および表面特性を改善するのに寄与する。アクリル酸樹脂はコーティング溶液を水分散し、融着層と無方向性電磁鋼板の接着性を改善するのに寄与する。さらに具体的に、ポリエチレンアクリレートは、下記化学式1で表される繰り返し単位および下記化学式2で表される繰り返し単位を含む。
[化学式1]
[化学式2]
(上記化学式1および化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して水素または直鎖型または分枝型アルキル基を示し、Rは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基、またはヒドロキシ基を示す。)
さらに具体的に、化学式1および化学式2中、R~Rはそれぞれ独立して水素または炭素数1~3のアルキル基を示し、Rは水素、ハロゲン原子、カルボキシル基またはヒドロキシ基であることができる。さらに具体的に、R ~R は水素であることもできる。
【0018】
ポリエチレンアクリレートは、ポリエチレンアクリレート100重量%に対して、化学式1で表されるポリエチレンを75~95重量%および化学式2で表されるアクリレート含量5~25重量%を含む。ポリエチレンが過度に少なければ、融着性が低下し、ポリエチレンが逆に過度に多ければ、コーティング組成物の水分散性および融着層と電磁鋼板の接着性が低下する虞がある。さらに具体的に、化学式1で表されるポリエチレンを80~90重量%および化学式2で表されるアクリレート含量10~20重量%を含むことができる。
本発明の一実施形態による電磁鋼板接着コーティング組成物は、ポリエチレンアクリレート100重量部に対して、無機粒子を3~25重量部さらに含むことができる。無機粒子は、高温接着力向上に寄与する。無機粒子が過度に少なく含まれれば高温接着力が低下することがあり、過度に多く添加されれば低温融着性が低下することがある。さらに具体的に、無機粒子を5~20重量部さらに含むことができる。この時、重量部とは、ポリエチレンアクリレートの含量に対する相対的な重量比率を意味する。
【0019】
無機粒子は、SiO、Al、TiO、MgO、ZnO、およびZrOのうちの1種以上を含むことができる。
無機粒子は、平均粒子大きさが10~50nmであることがよい。上記の範囲で適切な分散性を確保することができる。
無機粒子は、ポリエチレンアクリレート内の一部官能基に置換されてもよい。無機粒子をポリエチレンアクリレートに結合させず、単独で添加する場合、無機粒子同士が凝集し、分散されなくなる。ポリエチレンアクリレートに結合されたとの意味は、ポリエチレンアクリレートの官能基に無機粒子が置換されて、結合されたことを意味する。
【0020】
本発明の一実施形態による電磁鋼板接着コーティング組成物は、ポリエチレンアクリレート100重量部に対して、硬化剤を0.5~2.5重量部さらに含むことができる。硬化剤は、接着コーティング層表面の反応性を調節する役割を果たす。硬化剤が過度に少なく含まれる場合、融着層の硬化反応性が低下して、融着層表面の粘着(sticky)性が劣位になる問題が発生する虞がある。逆に硬化剤が過度に多く添加される場合、低温融着後、締結力が劣位になる虞がある。さらに具体的に、硬化剤を1~1.5重量部さらに含むことがよい。
硬化剤としては、脂肪族アミン系、芳香族アミン系、アミノアミン系、またはイミダゾール系の少なくともいずれかを含むことができる。さらに具体的には、ジシアンジアミド(Dicyandiamide)を含むことができる。
【0021】
本発明の一実施形態による電磁鋼板接着コーティング組成物は、ポリエチレンアクリレート1モルに対して、中和剤を0.5~1.5モルさらに含むことができる。中和剤は、酸性のアクリル酸との反応で電荷を付与して水に分散する役割を果たす。中和剤が過度に少なく含まれる時、水分散安定性が低下する虞があり、過度に多く含まれる時、コーティング後塗膜密着性が低下する虞がある。さらに具体的に、中和剤を1~1.5モルさらに含むことがよい。
中和剤としては、アミンおよびアルコール類系塩基性中和剤を使用することができる。さらに具体的に、トリエチルアミン(Triethylamine)、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(2-amino-2-methyl-1-propanol)およびアンモニア水のうちの1種以上を使用することができる。さらに具体的に、沸点が50~150℃である中和剤を使用することがよい。
上記の成分外に、接着コーティング組成物は塗布を容易にし、成分を均一に分散させるために溶媒を含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態では、電磁鋼板積層体を提供する。
本発明の一実施形態による電磁鋼板積層体は、複数の電磁鋼板、および複数の電磁鋼板の間に位置する融着層、を含む。図1には、本発明の一実施形態による電磁鋼板積層体の模式図を示した。図1に示したとおり、電磁鋼板積層体は複数の電磁鋼板が積層された形態である。
図2には、本発明の一実施形態による電磁鋼板積層体の断面の概略図を示した。図2に示したとおり、本発明の一実施形態による電磁鋼板積層体100は、複数の電磁鋼板10、および複数の電磁鋼板の間に位置する融着層20、を含む。
【0023】
本発明の一実施形態による電磁鋼板積層体は、溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の方法を使用せず、単純に上記の接着コーティング組成物を使用して融着層を形成することによって、互いに異なる電磁鋼板を熱融着させた積層体であることが好ましい。
この時、電磁鋼板積層体は、熱融着後にも高温接着性および高温耐油性に優れる特性がある。
【0024】
以下、各構成別について詳細に説明する。
電磁鋼板10は、一般的な無方向性または方向性電磁鋼板を制限なく使用することができる。本発明の一実施形態では、複数の電磁鋼板10の間に融着層20を形成して、電磁鋼板積層体100を製造することが主要構成であるので、電磁鋼板10に対する具体的な説明は省略する。
【0025】
融着層20は複数の電磁鋼板10の間に形成され、複数の電磁鋼板10を溶接、クランピング、インターロッキングなど既存の締結方法を使用せず、接着することができる程度に接着力が強い。
融着層20は、接着コーティング組成物を表面にコーティングし、硬化させて接着コーティング層を形成し、これを積層し熱融着して融着層20を形成する。接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板10を積層し熱融着すると、接着コーティング層内の樹脂成分が熱融着して、融着層を形成する。このような融着層は、主成分の有機物に少量の無機金属化合物が含まれている。融着層内で有機物内に無機物成分が均一に分散して微細相を形成する。
本発明の一実施形態で、融着層20は、ポリエチレンアクリレートを含む。ポリエチレンアクリレートについては、接着コーティング組成物に関連して詳しく前述したので、重複される説明は省略する。融着層形成過程で、ポリエチレンアクリレートはそのまま残存する。また、無機粒子および硬化剤も残存する。
【0026】
したがって、融着層は、ポリエチレンアクリレート100重量部、無機粒子を3~25重量部および硬化剤を0.5~2.5重量部含むことができる。中和剤は、硬化および熱融着過程で蒸発して融着層20内には残存しない。
融着層20の厚さは0.1~5μmであることがよい。融着層の厚さが過度に薄ければ接着力が急激に低下する虞があり、一方、過度に厚ければコーティング巻取り後に粘着性(Stikcy性)による欠陥が問題になる。さらに具体的に、融着層20の厚さは2~3μmであることがよい。
【0027】
本発明の一実施形態による電磁鋼板積層体の製造方法は、電磁鋼板の一面または両面に接着コーティング組成物を塗布した後、硬化させて接着コーティング層を形成する段階、および接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層を形成する段階、を含む。
【0028】
以下、各段階別に具体的に説明する。
まず、接着コーティング組成物を準備する。接着コーティング組成物については前述したので、重複する説明は省略する。
その次に、接着コーティング組成物を電磁鋼板の表面にコーティングした後、硬化させて接着コーティング層を形成する。この段階は、接着コーティング組成物の硬化のために150~250℃の温度範囲で行うことができる。
【0029】
接着コーティング層が形成された複数の電磁鋼板を積層し、熱融着して融着層20を形成する。熱融着する段階を通じて接着コーティング層内の高分子成分が熱融着し、融着層を形成するようになる。
熱融着する段階は、150~250℃の温度、0.05~5.0Mpaの圧力および0.1~120分の加圧条件で熱融着することができる。前記条件はそれぞれ独立して満たすことができ、2以上の条件を同時に満たすこともできる。このように熱融着する段階での温度、圧力、時間条件を調節することによって、電磁鋼板の間に、ギャップや、有機物相がなく、稠密に熱融着される。
熱融着する段階は昇温段階および融着段階を含み、昇温段階の昇温速度は10℃/分~1000℃/分であることがよい。
【0030】
以下、本発明の好ましい実施例、これに対比される比較例、およびこれらの評価例を記載する。しかし、下記実施例は本発明の好ましい一実施形態に過ぎず、本発明が下記実施例に限定されるのではない。
【実施例
【0031】
実験例1
無方向性電磁鋼板(50×50mm、0.35mmt)を供試片として準備した。接着コーティング溶液をバーコーター(Bar Coater)およびロールコーター(Roll Coater)を用いて各準備された供試片に上部と下部に一定の厚さで塗布して、板温基準200~250℃で20秒間硬化した後、空気中で徐々に冷却させて、接着コーティング層を形成した。
接着コーティング組成物は、下記表1に整理したポリエチレンアクリル酸100重量部、中和剤(トリエチルアミン:Triethylamine)をポリエチレンアクリル酸に対して1モル、シリカ粒子(粒径約30nm)10重量部、硬化剤(ジシアンジアミド:Dicyandiamide)1重量部含んでいる。
【0032】
ポリエチレンおよびアクリル酸は下記化学式で表すことができる。
接着コーティング層がコーティングされた電磁鋼板を高さ20mmで積層した後、0.1MPaの力で加圧して120℃、10分間熱融着した。熱融着層の成分および熱融着された電磁鋼板の接着力をせん断面引張法によって接着力を測定して下記表1に示した。熱融着後融着層の厚さは約3μmであった。
その具体的な評価条件は次の通りである。
【0033】
水分散安定性:接着コーティング溶液を60℃で72hr維持した後、コーティング溶液内沈殿や塊り現象が発生しない場合は良好(〇)、溶液内樹脂の塊り現象が発生した場合は不良(×)と表示した。
【0034】
接着力:せん断法(Shear Strength)測定のための試片規格はISO4587に基づいて製作した。25×100mm試片二枚を12.5×25mmの面積で接着し前記条件で熱融着してせん断法試片を製作した。
【0035】
剥離法(T-Peeloff)測定のための試片規格はISO11339に基づいて製作した。25×200mm試片二枚を25×150mmの面積で接着した後、未接着部位を90に屈曲(bending)してT形態の引張試片を製作した。
【0036】
せん断法および剥離法(T-Peeloff)で製作された試片を上/下部ジグ(JIG)に一定の力で固定させた後、一定の速度で引きながら積層されたサンプルの引張力を測定する装置を使用して測定した。この時、せん断法の場合、測定された値は積層されたサンプルの界面の中の最小接着力を有する界面が脱落する地点を測定した。剥離法は、剥離時測定される一定の力で最初と最終10%を除いた地点の平均値で測定した。
【0037】
低温融着後せん断接着力:前記せん断法試片規格ISO4587で試片規格を製作して熱融着時、1MPa力で加圧して140℃、30分間熱融着した。熱融着後、せん断法で測定した。
高温せん断接着力:前記せん断法で測定する時、加熱装置を通じて試片の温度を60℃で維持した後、接着力を測定した。
【0038】
粘着(Sticky)性:接着コーティング層がコーティングされた電磁鋼板を高さ20mmで積層した後、1MPaの力で加圧して70℃、30分間熱融着後、鋼板を脱落させた時、接着による痕跡で粘着(Sticky)性の有無を判断する。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示したとおり、実施例1~実施例2のように、融着層樹脂をポリエチレンアクリル酸樹脂を使用し、これに含まれているエチレンとアクリル酸の含量比が適切に調節された場合、優れたせん断接着力と剥離接着力を示した。
比較例1は、ポリエチレンアクリル酸樹脂の代わりにエポキシ樹脂を使用した場合、せん断接着力は優れるが、剥離接着力と低温融着後接着力が劣っているのを確認することができる。
【0041】
比較例2は、ポリエチレンアクリル酸樹脂中のエチレン含量比が多少低い場合、せん断接着力は優れるが、剥離接着力と低温融着後接着力が劣っていることを確認することができる。
比較例3は、ポリエチレンアクリル酸樹脂中のアクリル酸含量比が低い場合、せん断接着力、剥離接着力、低温融着後接着力は優れるが、コーティング溶液製造時、水分散安定性が劣っているのを確認することができる。
【0042】
図3および図4には、実施例1で製造した融着層のFT-IRデータおよび走査熱分析データを示した。
図3の1700cm-1付近でピークが観察され、これはポリエチレンアクリレートでの-COOH構造を示し、その面積を通じて比率を確認することができる。また、図3で2850cm-1付近と、2920cm-1付近でピークが観察され、これはポリエチレンアクリレートでの-CH構造を示し、その面積を通じて比率を確認することができる。
【0043】
一方、図4でポリエチレンアクリレートの結晶構造の溶融によるピークを80℃付近で確認することができる。また、1st Scanでは45℃で鮮明なピークを確認したが、2nd ScanではこのPeakが明確に減るのを確認することができ、これはポリエチレンアクリレートの整列された構造で現れるピークとして確認することができる。
【0044】
実験例2
上記の実験例1と同様に実施し、接着コーティング組成物内の成分含量および融着層の厚さを変更しながら実施した。
【0045】
【表2】
【0046】
表2に示したとおり、実施例1および実施例3のように、ナノシリカ、硬化剤添加およびコーティング層の厚さが適切な場合、せん断接着力、剥離接着力、高温せん断接着力、低温融着後接着力に優れており、粘着(Sticky)性も優れる結果を示した。
比較例4でナノシリカが添加されていない場合、せん断接着力と剥離接着力、低温融着後接着力、粘着(Sticky)性は優れているが、高温せん断接着力が劣っているのを確認することができる。
【0047】
比較例5で硬化剤が添加されていない場合、せん断接着力、剥離接着力、高温せん断後接着力、低温融着後接着力は優れているが、粘着(Sticky)性が劣っているのが分かる。
比較例6でナノシリカが過量で添加された場合、せん断接着力と高温せん断接着力、粘着(Sticky)性は良好であるが、剥離接着力と低温融着後接着力が劣っているのを確認することができる。
比較例7で硬化剤が過量で添加された場合、低温融着後締結力が劣っているのを確認することができる。
比較例8でコーティング厚さが高い場合、粘着(Sticky)性が劣っているのを確認することができる。
【0048】
本発明は前記実施例に限定されるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態で実施することができるということを理解することができるはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり限定的ではないことを理解しなければならない。
【符号の説明】
【0049】
100:電磁鋼板積層体
10:電磁鋼板
20:融着層
図1
図2
図3
図4