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▶ ストライク フォトニクス,インコーポレーテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】導波管強化分析物検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/65 20060101AFI20241226BHJP
   G01N 35/08 20060101ALI20241226BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G01N21/65
G01N35/08 A
G01N37/00 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022557760
(86)(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 US2021022968
(87)【国際公開番号】W WO2021194844
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】62/993,033
(32)【優先日】2020-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/056,580
(32)【優先日】2020-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522373965
【氏名又は名称】ストライク フォトニクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100114915
【弁理士】
【氏名又は名称】三村 治彦
(74)【代理人】
【識別番号】100125139
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100209808
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 高志
(72)【発明者】
【氏名】キャロザーズ,ダニエル
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-063601(JP,A)
【文献】特開2006-234693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0169797(US,A1)
【文献】特表2007-512306(JP,A)
【文献】特表2008-519254(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0201497(US,A1)
【文献】特表2020-508471(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0336097(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0281209(US,A1)
【文献】米国特許第06438279(US,B1)
【文献】特表2023-527634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01N 37/00
G01N 35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査ストリップであって、前記検査ストリップは集積フォトニックチップを備え、
前記集積フォトニックチップは、
フォトニック回路基板上に設置される光導波管と、
フォトニック回路であって、前記光導波管に光学的に結合されて前記光導波管に光を入力するレーザ、および前記光を受取るために位置付けられた光検出器を備えるフォトニック回路と、
マイクロ流体チャネルであって、前記マイクロ流体チャネルは、シリコン基板上に位置し、前記フォトニック回路基板に接続され、前記光導波管上に位置することにより、前記光導波管の側面および最外面は前記マイクロ流体チャネルに延伸し、前記マイクロ流体チャネルは前記光導波管の長さに沿って延伸し、前記マイクロ流体チャネルは、端部に流体入力ポートと流体ベントポートを対向して有し、前記マイクロ流体チャネルは前記流体入力ポートと前記流体ベントポートの間の流体経路を形成する、マイクロ流体チャネルと、
前記マイクロ流体チャネル内に設けられる前記光導波管の前記側面または前記最外面に隣接して設置されるナノ粒子であって、濃度が前記最外面の上よりも前記側面の上において大きいナノ粒子と、
を備え、
前記検査ストリップは流体収集ストリップをさらに備え、
前記集積フォトニックチップは、前記流体収集ストリップの端部に隣接してその上に配置され、前記流体収集ストリップは、前記検査ストリップの長さを介して前記集積フォトニックチップまで延びる流体通路を有し、前記流体入力ポートは、前記集積フォトニックチップに隣接して配置され、前記流体通路を通って集積フォトニックチップに流体を流入させる前記流体収集ストリップに形成される検査ストリップ。
【請求項2】
前記集積フォトニックチップが駆動電極とバッキング電極とをさらに備え、
前記駆動電極は前記シリコン基板にあり、前記駆動電極は前記フォトニック回路基板にあり、前記光導波管は前記光導波管上に位置する前記駆動電極および前記バッキング電極の間に設置される、請求項1に記載の検査ストリップ。
【請求項3】
前記フォトニック回路は、フォトニック調整制御回路と、デジタルプロセッサコアと、メモリ回路と、デジタルインターフェースと、無線インターフェースと、を備える請求項1に記載の検査ストリップ。
【請求項4】
前記フォトニック回路は前記光導波管に光学的に接続された干渉計をさらに備え、前記干渉計は、入力信号の変調経路長と位相変調出力信号の固定経路長からなる請求項1に記載の検査ストリップ。
【請求項5】
前記干渉計は、光利得回路と、ブラッグミラー(Bragg mirror)に光学的に接続された位相変調回路を含む、請求項4に記載の検査ストリップ。
【請求項6】
前記光導波管の一部は非クラッド部であり、前記ナノ粒子は前記光導波管の前記非クラッド部の前記光導波管の前記側面の上にある、請求項1に記載の検査ストリップ。
【請求項7】
前記光導波管は蛇行形状である、請求項1に記載の検査ストリップ。
【請求項8】
前記マイクロ流体チャネルに流体的に接続されたマイクロ流体ポンプをさらに含む、請求項1に記載の検査ストリップ。
【請求項9】
前記流体収集ストリップは、前記集積フォトニックチップが配置されているトップフィルム、ボトムフィルム、およびスペーサフィルムからなり、前記トップフィルムおよび前記ボトムフィルムと前記スペーサフィルムは一緒に取り付けられて前記マイクロ流体チャネルを形成する、請求項1に記載の検査ストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、「WAVEGUIDE ENHANCE ANALYTE DETECTION」と題する2020年3月22日に出願された米国特許出願第62/993,033号および「ENHANCED WAVEGUIDE WITH MICROFLUIDIC PUMP」と題する2020年7月25日に提出された米国特許出願第63/056,580号の利益を主張するものであり、一般に本発明に割り当てられ、参照により本発明に組み込まれている。
【0002】
本発明は、ウイルス、細菌、薬物、または癌細胞などの分析物病原体を含む分析物の迅速な検出または検査のためのフォト光学デバイス(a photo optical device)に関する。
【背景技術】
【0003】
COVID-19のような新しいウイルスの突然の発症により、感染した可能性のある個人の迅速な検出が緊急に必要とされている。ごく最近のCOVID-19ウイルスのようなパンデミックは、新しく進化する生物学的脅威に対する検査技術の対応に関連する多くの問題を浮き彫りにしている。現在の検査技術は、現在の供給不足に直面しているだけでなく、結果を迅速に取得し報告する手段も提供していない。例えば、現在の検査技術では、ウイルスの存在を確認するのに数日かかる。さらに、対象者が十分な時間感染していない場合、検査は偽陰性を示し、それによって知らず知らずのうちに一般住民への曝露を引き起こす可能性がある。現在の検査技術には、変異を迅速に同定し追跡する能力も欠けている。さらに、報告時間の遅れは、政府当局が適切な政策を形成し実施する上で重要となりうる最新のデータを欠く原因となる。
【0004】
したがって、この技術において緊急に必要とされるのは、感染の可能性のある対象者における病原体の存在を正確かつ迅速に決定し報告することができる迅速な応答試験技術である。
【0005】
上記で議論された先行技術の欠陥に対処するために、本開示は、ウイルスまたは細菌のようなヒト病原体、ならびに薬物または癌細胞を含む分析物の検出において、直接的、迅速かつ感度を高めた正確な測定および検出を提供する、独自の光学ベースの検出技術を提供する。COVID-19ウイルスが広がり続ける中、この技術は、現在のバイオアッセイの許容できないほど低い感度レベルと誤った結果とのギャップを埋めるために不可欠であり、単一のプラットフォームでより広範な感染性病原体をより迅速かつ高感度に検出する必要性が高まっている。
【0006】
ここに示す実施形態は、マイクロ流体および積層製造法によるフォトニック処理ソリューションを提供し、迅速なウイルス検出、同定、および報告ソリューションを提供するためのコンパクトで表面増強ラマン分光法(SERS:Surface-Enhanced Raman Spectroscopy)ベースのシステムを実装する。これらの実施形態は、任意の医療施設、公衆衛生、および第一対応者ユニットへの展開を可能にするデバイス取得コストで、特定の病原体の存在についての非常に正確でほぼリアルタイムのスクリーニングと報告を提供する。SERS相互作用からのラマンスペクトルをマイケルソン干渉計と結合した検出器を用いて検出する。ここに開示された実施形態は、感染のリアルタイム遠隔検出および監視;感染性病原体、汚染された体液への人員の曝露または輸送を制限する、制御され隔離されたテストプロトコルの迅速な同時同定;検査対象から隔離された人員への検査ストリップからのデータの無線伝送;ほぼ瞬時の検査結果;エージングアウトする試薬や試料の二次加工を必要としない検査の実施;低コストで、製造が容易で、迅速に展開でき、最小限の訓練で操作される検査要素;および、ウイルス検出以外の拡張された用途を提供する。
【0007】
上記は、当業者が以下の詳細な説明をよりよく理解できるように特徴を概説したものである。クレームの主題を形成することができる追加の特徴を以下に説明する。当業者は、開示された概念および特定の例を、ここに開示されたのと同じ目的を遂行するために他の構造を設計または修正するための基礎として容易に使用できることを認識すべきである。当業者はまた、そのような同等の構成が開示の精神と範囲から逸脱していないことを認識すべきである。
【0008】
本発明をより完全に理解するために、添付の図面と併せて以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1A-1Bは、本開示によって提供される検査ストリップの一実施形態の透視図を示す。
図1B図1A-1Bは、本開示によって提供される検査ストリップの一実施形態の透視図を示す。
図2図2は、検査ストリップ上に配置されたテストチップの部分断面図を示す。
図3A】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図3B】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図3C】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図3D】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図3E】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図3F】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図3G】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図3H】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図3I】検査チップのフォトニック集積回路を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図4A図4A-4Hは、検査チップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図4B図4A-4Hは、検査チップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図4C図4A-4Hは、検査チップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図4D図4A-4Hは、検査チップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図4E図4A-4Hは、検査チップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図4F図4A-4Hは、検査チップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図4G図4A-4Hは、検査チップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図4H図4A-4Hは、検査チップのマイクロ流体チャネルを製造するために使用できるプロセスの一実施形態の種々の中間ステップを示す。
図5A図5A-5Bは、マイクロ流体チャネルに流体的に接続することができるマイクロ流体ポンプの実施形態を示す。
図5B図5A-5Bは、マイクロ流体チャネルに流体的に接続することができるマイクロ流体ポンプの実施形態を示す。
図6図6は検査チップの一実施形態のブロック図レイアウトを示す。
図7図7は、検査チップ内のさまざまな要素の集積を示す実施形態の一般的なブロック図レイアウトを示す。
図8図8は、干渉計と安定化光源の実施形態を示す。
図9図9は、導波管を用いた干渉計と安定化光源との協調接続の配線レイアウトを示す。
図10図10は、図1に一般的に示されるように、検査チップを製造するために使用できる特定の方法ステップの一実施形態のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ヒトウイルスのリアルタイム検出と特性評価、およびその他の生化学的および非生化学的分析を提供するシステムが非常に必要とされている。現在、コロナウイルス、COVID-19のような病原体は、長いサイクルの潜伏、初期の無症候性感染、空気感染、およびその高い感染性の性質が組み合わさって、封じ込めに成功しないまま広まっている。単純で迅速かつ効率的な検査検出能力が欠如しているため、感染者は早期に隔離から移行したり、症状が出るまで完全に隔離を逃したりする可能性がある。さらに、他の生化学的分析や非生化学的分析も同様に迅速な結果を必要とすることが多い。本開示において提示される様々な実施形態は、これらの現在の緊急のニーズに対処するものである。
【0011】
図1Aは、コンパクトな寸法の検査ストリップ110の一実施形態の透視図である。例えば、ある実施形態では、検査ストリップは厚さ0.5mm、幅4.0mm、長さ50.0mmである。ただし、検査ストリップ110はこれらの寸法だけに限定されるものではなく、他の実施形態では、検査ストリップ110は、設計が異なれば、異なる寸法を持つこともある。そのコンパクトなサイズを考慮しても、検査ストリップ110の長さは、その長さに沿って比較的大きなサンプリングチャネリング領域を提供し、ラマン分光法データのようなより多くの干渉計データを収集することを可能にし、より正確な結果をもたらす。検査ストリップ110は、検査ストリップの反対側の端に位置するストリップラベル120と共に一方の端に配置された、以下により詳細に説明する集積フォトニックチップのような検査チップ115を含む。
【0012】
図1Bは、図1Aの実施形態の分解図であり、図1Bに一般的に示されているように、流体ベントポート130aおよび検査ストリップ110の反対側の端に形成される流体ベントポート135aをそれぞれ有する上部フィルム130および下部フィルム135の間に位置し、データ伝送用のトレースをその上に有する、プリント基板などのスペーサ125を示している。スペーサ125は、検査チップ115まで延びる検査ストリップ110の長さを通る流体通路125aを形成する切り欠き領域を有する。さらに、検査チップ115が配置されている端部に隣接する検査ストリップ110の端部は、一般的に示されているように、上部フィルム130と下部フィルム135の両方に形成された流体入力ポート140を含む。流体入力ポート140は、流体通路125aからの検査流体が分析のために検査チップ115に入ることを可能にする。一面では、検査ストリップ110は、マイラー(登録商標)または他のポリマーフィルムにパッケージされ、コストを削減し、柔軟性を高めるために、積層製造法とレーザー切断を利用することができる。このような場合、2ロールのマイラーがインクジェット印刷スペーサー材料の周りにホットプレスされる。表面にはUSB電気相互接続線がラベルとして印刷される。後述するように、バッテリーまたは電線が提供され、検査ストリップ110への電源の電気的接続を提供する。
【0013】
図2は、一般的に図1Aおよび1Bに示されているように、検査チップ115の一実施形態の部分的な断面図を示している。図示された実施形態では、検査チップ115はフォトニック集積回路(PIC)基板210上に配置された導波管205を含む。PIC基板210は、シリコン基板上の二酸化ケイ素のような既知の材料で構成され、二酸化ケイ素層内に形成された1つ以上の相互接続された金属レベル210a、210bを含むことができる。これらの特徴は、既知のリソグラフィおよび蒸着プロセスを使用して製造することができる。一実施形態では、PIC基板210の金属レベル210a、210bの1つは、導波管205の長さの少なくとも一部に沿って誘電泳動場(dielectrophoretic field)を提供するために使用できるバッキング電極215を含むことができる。しかしながら、他の実施形態では、バッキング電極215はオプションであり、したがって、特定の実施形態では存在しない場合がある。一実施形態では、導波管205は、既知のリソグラフィおよび蒸着プロセスを使用して蒸着およびエッチングできる窒化ケイ素材料を備え得る。窒化ケイ素が例として挙げられているが、ヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、ケイ素、酸化アルミニウム、オキシ窒化ケイ素、ドープ二酸化ケイ素(チタン、リチウム、リン、ホウ素など)、またはそれらの組み合わせなど、他の種類の導波管を使用することもできる。PIC基板210、金属レベル210a、210b、および導波管205は、以下で説明する他の要素とともに、独特のフォトニック集積回路を形成する。
【0014】
銀、金、銅、またはそれらの組み合わせなどのナノ粒子220は、導波管205上または(本明細書および特許請求の範囲で使用される「または」は、連言形(conjunctive)および選言形(disjunctive)「および/または」を含む)隣接して位置する。一実施形態では、ナノ粒子220の濃度は、導波管205の外面205bよりも導波管205の側面205aにおいて、または隣接する側面の方が高くてもよい。ナノ粒子220は、導波管205の長さのセンサ部分に沿って延びている。センサ部分は、導波管205の全長を延長することも、その一部のみを延長することもできる。一実施形態では、導波管205はクラッド部と非クラッド部を持ち、非クラッド部はセンサ部として機能する。このような実施形態では、ナノ粒子220は非クラッド部に配置されるが、他の実施形態では、導波管205の全長がクラッドされ、ナノ粒子が導波管205のクラッド上に堆積される場合がある。
【0015】
ナノ粒子220は、ナノ粒子が電荷移動またはプラズモン共鳴の形成を助けるという点で、検査流体または分析物に関連するデータ収集を改善する。具体的には金属が挙げられるが、ナノスケールで蒸着や形成が可能な他の導電性の高い材料を使用することもできる。使用が検討されている半導体材料には、炭化ケイ素、炭素、窒化ガリウムなどの狭いバンドギャップ材料のほか、ゲルマニウム、セレン化鉛、テルル化鉛、アンチモン化ガリウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウムなどの狭いバンドギャップ材料がある。さらに、カルコジナイドモリブデンジスルフィド(MoS)のように、ナノ構造の挙動が独自の利点を持つ可能性のあるいくつかの進化中の半導体もある。
【0016】
PIC基板210の導波管205がある側に、第2のシリコン基板225が接合されている。第2のシリコン基板225は、その中に形成されたマイクロ流体チャネル230を有し、一実施形態では、導波管205の長さの少なくとも一部に沿って誘電泳動場を提供するためにバッキング電極と連動して動作するオプションの駆動電極235を含む。駆動電極235を形成するために、既知の製造リソグラフィプロセスを使用することができる。マイクロ流体チャネル230は、一般的に示されているように、導波管205の側面205aと最外面205bがマイクロ流体チャネル225に延びるように、導波管205をカプセル化する。マイクロ流体チャネル230は、試験流体または分析物を入れることができるチャネルを提供する。
【0017】
バッキング電極215と駆動電極235が存在するこれらの実施形態では、病原体などの対象分子のナノ構造表面への制御された遷移を促進するための追加フィールドを生成するために使用することができる。図示された実施形態に見られるように、一般的に示されるように、駆動電極235はシリコン基板225内に位置し、マイクロ流体チャネル230に隣接し、バッキング電極は導波管205に隣接し、PIC基板210内に位置する。これらの電極を使用して、マイクロ流体チャネル内で誘電泳動(DEP)力を発生させるための高周波(3-5MHz)電圧を電極に印加し、対象分析物をナノ粒子測定表面に駆動(drive)することができる。
【0018】
DEPは、特定の質量とサイズの生体分子を、エバネッセント誘導プローブビームと相互作用する対象分析物の量を劇的に高めることができる測定表面に駆動するために使用される。DEP力は、導電性粒子と非導電性粒子の両方に加えることができ、直流(DC)または交流(AC)の場を使用することによって発生させることができる。誘電泳動力によって、ウイルスを非常に正確に分類することができる。DEP力は不均一な電場の存在下で懸濁粒子(浮遊粒子)に働く力である。力の大きさと方向は、電場強度、粒子半径、粒子と懸濁液との誘電率、および粒子と懸濁液との伝導率に関連している。DEPは、制御可能であり選択的かつ正確な対象ウイルスの操作を提供する。
【0019】
知られているように、DEPは生体分子の双極子と電場の空間勾配との相互作用による不均一な電場での粒子の動きである。生体分子の双極子は、主に2つの現象に由来する。1)原子の配向(orientation)と配置(configuration)による永久双極子、2)粒子表面に電荷の再分布をもたらす外部電場の印加によって生じる誘起双極子。
【0020】
生体分子の挙動は、物質が界面で電荷を生成する能力の尺度である分極率によって記述することができる。その分極率は、物質が電場に応答する能力の尺度であり、(i)電子分極、(ii)原子分極、(iii)配向分極という3つの基本的なメカニズムがある。
【0021】
10kHzから100MHzの動作周波数内の粒子に誘起された双極子の起源であるため、界面分極率は制限される。粒子の分極率が媒質の分極率より高い場合、粒子の側により多くの電荷が蓄積する。媒質の分極率が粒子の分極率よりも高い場合、媒質側により多くの電荷が蓄積する。この電荷の不均一な分布は、粒子の両側の電荷密度の違いを意味し、これにより、印加された電場と整列した粒子全体に誘起された双極子が生じる。粒子-媒質系が不均一な電場に置かれると、粒子は両端で異なる力を感じる。両端の力の差は、粒子と媒質の分極率に応じてどちらの方向にも正味の力を発生させる。
【0022】
交流誘電泳動AC-DEPを適用するための一般的な方法は、マイクロチャネルネットワーク内に埋め込まれた金属電極のアレイである。ほとんどの場合、これらの内部電極は平面(2-D)電極(すなわち、電極の高さは100ナノメートルのオーダーである)であり、デバイス内に製造される。AC-DEPは、ジュール発熱を防ぐ低い動作電圧により有利である。さらに、低い印加電圧は電界を発生させるために必要な回路を簡素化し、AC-DEPフォーカシングシステムを集積回路と互換性があり、バッテリー駆動のハンドヘルドデバイスに適したものにする。
【0023】
このように、DEPはウイルス検出技術を強化し、測定表面に沈着した選択的ウイルス分析物の量を強化し(enhancing)または高め(enriching)る。代替として、他の実施形態では、同じ検査構造内の多数の分析物の選択的、同時的、特性化および同定を可能にするために、生体分子をサイズおよび構造によって分離する周波数可変および位相選択的な誘電泳動を採用することができる。
【0024】
図3A-3Iは、検査チップ115の複数の導波管205を製造するために使用できるプロセスの一実施形態の中間構造300の部分的な断面図を示す。図3Aは、二酸化シリコン層310を成長させたシリコン基板305を示す。また、窒化シリコン層315と、窒化シリコン層315上に位置するパターン化されたフォトレジスト層320も見られる。以下で説明するように、既知のプロセスと材料を使用して、図示された中間構造を形成することができる。一実施形態では、シリコン基板305は、P型ドーパントをドープした200mmのシリコンウェハであってもよい。実施形態によっては、ドーパント濃度と厚さが変わり得る。一実施形態では、二酸化シリコン層310は2000nmの厚さに形成することができる。後にパターン化されて導波管を形成する窒化シリコン315層の厚さも変わり得る。特定の実施形態では、厚さは約100nmから約200nmの範囲であり得る。一実施形態では、ドライエッチングを使用して窒化シリコン層315のマスクされていない部分をエッチングし、設計要件に応じて異なる間隔を持つ導波管を生成することができる。例えば、ある実施形態では、エッチングされた導波管の間隔は約300nmであり得る。
【0025】
図3Bは、図3Aに示すデバイスの中間的な実施形態を示しており、窒化シリコン315のパターン化に続いて複数の導波管315aを形成している。一実施形態では、既知のドライエッチングを用いて導波管315aを形成してもよい。導波管315aの1つの拡大図315bに示されているように、ドライエッチングにより、導波管の端部が約0°から約4°にテーパすることがある。導波管315aのテーパした端部は、電荷移動またはプラズモン共鳴をさらに形作るのに役立つ。ドライエッチングに続いて、ストリップレジストやウェハクリーンプロセスなどの既知のプロセスを使用して、残りのフォトレジスト320を導波管315aから除去する。いくつかの実施形態では、導波管315aを様々な蛇行形状設計にパターン化して、導波管の問い合わせ(interrogation)またはデータ収集の長さを長くすることができる。例えば、図3Cは、導波管315aが長方形の折り畳み構成315cまたは円形構成315dでパターン化されるいくつかの例を示している。これらはほんの数例であり、他の幾何学的デザインも本開示の範囲内である。さらに、フォトレジストのパターン化中に、同じレチクルを使用して、図3Dに示すように、エッチングされたファセット(facet)表面330の近くにテーパ領域325を形成することができる。この狭められたテーパ領域325は、導波管の出力端付近のモードおよび光伝送を改善する。一実施形態では、図3Dに見られるように、窒化シリコン導波管315の端部に光学ファセット表面330を規定するためにディープエッチングを行うことができる。このオプションのエッチングは、下にあるシリコン酸化物を貫通し、さらに2~3ミクロンのシリコンの中にまでエッチングするように実施される。このような実施形態では、滑らかな酸化物表面を得るために、その後のウェットクリーニングが必要となる場合がある。
【0026】
図3Eは、残りのフォトレジスト320を除去し、その後のウェットエッチングプロセスのためのエッチング制御を提供する窒化物エッチストップ335を蒸着した後の図3Bのデバイスを示している。窒化物エッチストップ335を堆積させるために既知の堆積プロセスを使用することができ、約20nmから約30nmの範囲の厚さまで堆積させることができる。窒化物エッチストップ335は、以下に示すように、導波管のセンサ部分を露出させるために使用されるウェットエッチングのエッチング制御を提供する。窒化物エッチストップ335は、以下に示すように、導波管のセンサ部分を露出させるために使用されるウェットエッチングのエッチング制御を提供する。一実施形態では、窒化物エッチストップ335は導波管315a上に残り、導波管伝送容量を拡大する役割を果たし、分析物からのデータ収集をさらに強化する。
【0027】
図3Fは、既知の堆積プロセスを使用した、酸化シリコン層340の堆積後の図3Eの中間デバイスを示している。二酸化シリコン層340の厚さは様々であるが、一実施形態では厚さは約2ミクロンであり得る。また、酸化シリコン層340は、後述するように導波管315aの少なくとも一部に対してクラッド層として機能する。
【0028】
図3Gは、フォトレジスト345にセンサ開口部350を形成するためにフォトレジスト345を蒸着し、パターン化した後の図3Fの中間デバイスを示している。センサ開口部350は、導波管の一部から酸化ケイ素を除去する後続のエッチングのために酸化シリコン340の領域を露出させ、その結果、ナノ粒子が堆積され、対象の分析物からデータを収集するために使用されるクラッドされていない導波管315aが生じる。次に、既知の基本的なウェット酸化物エッチングを行って、ターゲット導波管上のシリコン酸化物クラッドを除去すると、図3Hに示すように中間構造が得られる。図3Hに示すように、導波管315aの一部は二酸化シリコン340によってクラッドされたままであり、他の部分はクラッドされていない。これらの非クラッド部分は、対象の分析物に関するデータを収集するために使用されるセンサ領域として機能する。
【0029】
図3Iは、図3Hに見られるように、露出した導波管315a上にナノ構造345が形成された後の中間構造を示している。いくつかの実施形態では、ナノ構造345は、約140nmから300nmピッチで約70nmから約100nmの範囲の直径を持つことができる。ただし、デバイスのパフォーマンスを最適化するために、他の範囲やピッチを使用することもできる。ナノ構造345を堆積させるために、異なる堆積プロセスを使用してもよい。例えば、一実施形態では、ナノ構造345は、インクジェット堆積プロセスを使用して堆積させることができる。別の実施形態では、ナノ構造345は、深紫外線(DUV)フォトリソグラフィまたは金属蒸着リフトオフを伴う電子ビームリソグラフィを使用して蒸着することができる。このような実施形態では、リフトオフ構造の厚さは、平均直径に応じて、約40nmから約80nmの範囲である。
【0030】
図4A-4Hは、フォトニック集積回路と導波管205が形成されたウエハに接合されたウエハ内に上記のマイクロ流体チャネル230を製造するプロセスフローの一実施形態の中間構造400の部分的な断面図を示している。マイクロ流体チャネル230は、接合されると、図2に示すように、導波管の側面と最外面の周りに密閉された流体チャネルを形成する。一実施形態では、マイクロ流体チャネル230は、以下で説明するように、浅いエッチング構造と深いエッチング構造の二つのレベルから構成される。浅いエッチは横方向の毛細管流を支持し、深いエッチ構造はポスト裏面研削中に露出する通気口と供給口を提供する。
【0031】
図4Aは、一実施形態では、既知のP型ドーパントがドープされた200mmのシリコンウェハであり得るウェハ405を示し、その濃度と拡散深度は最適化された設計要件によって異なり得る。酸化成長や堆積プロセスなどの既知のプロセスを使用してシリコンウエハ405上にパッド酸化物410を形成する。酸化シリコン層410の厚さは波打つことがある。例えば、ウェットエッチング条件では、厚さは約100nmまたは30nmから50nmであり得る。窒化シリコン層415は酸化物層410の上に形成され、特定の実施形態では、その厚さは約300nmであり得る。窒化シリコン層415は浅いトレンチエッチングのハードマスクの特徴である。酸化物層410は、その後のステップで窒化ケイ素415層の孤立除去を提供する。
【0032】
図4Bは、パターン化されたフォトレジスト420をもたらす既知のフォトレジスト堆積、現像、およびストリッププロセスに続く図4Aの中間デバイスを示している。パターン化されたフォトレジスト420は、その後エッチングされるトレンチ領域425を露出する。
【0033】
図4Cは、浅いトレンチ430を形成するウェットまたはドライエッチングのいずれかである既知のハードマスクエッチングプロセスに続く図4Bの中間デバイスを示している。エッチングの深さは様々であるが、特定の実施形態では、エッチングの深さは3から6ミクロンであり得る。見られるように、エッチは酸化層410と窒化シリコン層415の一部をアンダーカットする。パターン化されたフォトレジスト420は、示されているが、エッチングを行う前に除去することができる。エッチング後、窒化シリコン層415および酸化物層410は既知のストリップおよびクリーニングプロセスを用いて除去され、図4Dの中間デバイスが得られる。
【0034】
図4Eは、より深いトレンチを形成するために使用される浅いトレンチ430内のフォトレジスト層435の堆積とパターン形成に続く図4Dの中間デバイスを示している。一実施形態では、BOSCHエッチングプロセスのような深い反応性イオンエッチングプロセスを使用して、深いトレンチ440を約200ミクロンの深さまでエッチングし、図4Fに示す中間構造を得ることができる。エッチングに続いて、既知のストリップレジストアッシュ処理が行われ、クリーンプロセスによって流れ、浅いトレンチ430と深いトレンチ440を含む図4Gに示す中間構造が得られる。
【0035】
図4Hは、フォトレジストを除去して酸化物層445を形成した後の図4Gの中間デバイスを示しており、一実施形態では、約75nmから約100nmの厚さまで成長させることができるが、デバイス性能を最適化するために他の厚さを使用することもできる。前述のように、駆動電極が存在するこれらの実施形態では、トレンチの底に電極を堆積させたり、深いトレンチ440の底の露出したシリコンに高伝導領域を形成するためにインプラントを行うことができる。
【0036】
図4Hに示す中間構造のクリーニングに続いて、浅いトレンチ430と深いトレンチ440が形成されたシリコンウエハ405を反転してフォトニック基板に接合し、図2に示す一般的な構造となる。
【0037】
一実施形態では、マイクロ流体チャネル230をマイクロ流体ポンプ500、505に流体的に接続してもよく、これは単なる2つの例示的な実施形態である。図5A-5Bはいくつかの実施形態の例を示しているが、マイクロ流体ポンプ500、505は、図5Aおよび図5Bに一般的に示されているように、任意の数の蛇行形状として設計することができる。図5A-5Bに見られるように、強化/修正された導波管510、515およびそれらに関連するマイクロ流体チャネル520、525とマイクロ流体ポンプ530、535は、特定の用途のためにそれぞれの導波管510、515の長さを最適化するために使用できるいくつかの幾何学的構成を持つことができる。しかしながら、設計パラメータに応じて、いくつかの実施形態では、マイクロ流体チャネル520、525は関連するマイクロ流体ポンプを持たない場合がある。例えば、設計パラメータがそのように要求する場合、強化/修正導波管510、515とマイクロ流体チャネルの長さは、マイクロ流体ポンプを必要としないように十分に短くすることができる。設計パラメータが必要な他の実施形態では、強化/修正された導波管510、515と関連するマイクロ流体チャネル520、525は、それぞれ、図5A-5Bに見られるように、より長いか、より複雑である。このような実施形態では、マイクロ流体ポンプ530、535が存在する。分析物は、流体入力ポート540、545を介してマイクロ流体チャネル520、525に導入される。マイクロ流体ポンプ530、535は、存在する場合、毛細管原理で動作し、マイクロ流体チャネルを通って導波管を越えて流体を引き込むのを助け、テストサンプルから最大のデータを得ることができる。しかしながら、他の実施形態では、マイクロ流体ポンプ530、535を機械的に駆動して、マイクロ流体チャネルを通して検査流体をポンプすることもできる。例えば、マイクロ流体ポンプは圧電材料を含んでもよく、マイクロ流体チャネルを通して検査流体を移動させることができる。マイクロ流体チャネル530、535の長さと幾何学的構成は変化してもよく、設計パラメータとシステム要件に依存する。図示された実施形態では、マイクロ流体チャネル520、525およびマイクロ流体ポンプ530、535は一般的な蛇行形状を有するが、先に述べたように、他の幾何学的形状は本開示の範囲内である。これらの折り畳まれたタイプの経路は、デバイスのデータ収集長を長くしながら、デバイスをコンパクトな形式としては例外的に小さく保つために使用できる。既知のフォトリソグラフィプロセスと材料を使用して、マイクロ流体チャネルを作成できる。
【0038】
図6は、検査チップ115の一実施形態の一般的なブロック図レイアウトを示す。この実施形態は、後述するように信号抽出のための干渉計と安定化された光源を含むフォトニック調整制御回路600、構成管理回路、デジタルプロセッサコア、メモリ、USBデータインターフェイス、電源、およびデータを迅速かつ容易に送信するための既知のワイヤレスインターフェイスを備える。分析物は入力ポート615からマイクロ流体チャネル605に入る。流体がマイクロ流体チャネル605を通過するとき、導波管内の光のエバネセント場、ナノ粒子、および流体中の分析物の間の相互作用によって定量的または定性的データが生成される。流体はマイクロ流体チャネルを通過し、ベントポート620を通って出て、前述のように検査ストリップの流体チャネルに戻る。したがって、この開示は、迅速な結果を伴う正確な流体解析を提供するマイクロサイズのフォトニック集積回路を提示する。
【0039】
図7は、導波管強化分析物検出装置の一実施形態の一般的な概略構成を示す。この実施形態では、フォトニック集積をマイクロ流体と積層製造法と組み合わせて、コンパクトなラマン分光法ベースのシステムを迅速に実装し、病原体または他の生化学的または非生化学的物質の迅速な検出と同定を提供する。
【0040】
上述のように、本開示の1つの実施形態はラマン分光法を使用するが、他の同様のタイプのスペクトロメータを使用することもできる。ラマン分光法は、入射したレーザー光を試料から非弾性散乱し、その特徴的な分子振動のエネルギーによって周波数をシフトさせる手法として知られている。ラマンスペクトルは、プローブされた物質の化学構造に関する高い情報量を提供し、この方法をウイルスと細菌の同定、違法薬物、医薬品および医薬品製造のモニタリング/検証、またはがん細胞の検出と同定のための理想的なツールにする。しかしながら、従来のシステムで行われていたように、ラマンビームを対象とした対象物を含む表面上の一点に焦点を合わせるのとは異なり、この開示の実施形態は、導波管または導波管の長さに沿ってデータを収集する構造を提供し、それによってデータの量と精度を大幅に向上させる。
【0041】
検査分析物または流体は、検査分析物の閉じ込めを提供するマイクロ流体チャネルに注入される。この閉じ込めにより、分析物とプローブビームが最も重なり合うことが保証される。さらに、マイクロ流体チャネルの壁に沿って分子とナノ構造との緊密で強力な相互作用をもたらし、これによりラマンシグナル強度が強化される。
【0042】
信号強度を改善するための表面増強ラマン分光法(SERS)の応用はラマン分光法の改良である。細菌やウイルスなどの生体分子を同定するための非常に優れたアプローチとして実証されている。これは、特定の分子が、通常は銀、金、銅などの貴金属のように適切な金属ナノ構造の近くに吸着または配置されたときに、その分子のラマン散乱シグナルが増強されることに基づいている。SERS法では、1014~1015という大きな増強因子を得ることができ、最新の検査セットや検出パネルで使用される蛍光性有機色素やその他の試薬よりも大きなラマン散乱断面積をもたらすことが示されている。
【0043】
この開示の実施形態は、図8に一般的に示されているように、マイケルソン干渉計などの干渉計に接続された検出器を使用してSERS相互作用からラマンスペクトルを検出するが、これはマイケルソン干渉計などの干渉計の実施形態と、検査チップ115のフォトニック集積回路の一部を形成する安定化光源を概略的に示している。このユニークなアプローチは、スペクトロメータの一方の経路(in one arm of)における位相伝搬長変化の関数として時間領域で変調された周波数依存情報を含む干渉グラフ(interferogram)を生成する。その後、システムはフーリエ変換を実行して、サンプル中に存在するウイルスの検出と識別に使用される詳細なラマンスペクトルを抽出する。
【0044】
光集積回路のフーリエ変換(FT)スペクトロメータは、干渉によって時間領域の放射線(radiation)を変調することで出力スペクトルを生成し、フーリエ変換を行う。病原体の検出と同定は、半導体の製造技術とパッケージング技術を活用して、6つの要素を図に示した検査チップのような比較的小さな領域に集積する能力によって保証されている。これには、1)制御可能なラマンプローブを提供するための安定化された狭帯域光源;2)導波管の外部を移動するモードエネルギーとラマン散乱のフォトニック強化を提供する金属ナノ構造の制御されたオーバーラップを提供するエバネッセント接続した低指数コントラスト導波管;3)病原体の特性評価のための制御された表面領域を提供する導波管の間と上のナノ構造の形成;4)金属ナノ構造表面で対象の病原体を制御濃縮できる電極の集積化;5)導波管と濃縮構造に対する試料体積を閉じ込めるためのマイクロ流体構造の集積;6)小型フーリエ変換スペクトロメータの集積能力、が含まれる。
【0045】
位相変調されたアームに沿って伝搬する信号と非位相変調されたアームとの間の干渉は、位相の変化が振幅変化を引き起こすカプラに反射される。これを記録すると、変調されたアーム内の駆動電圧または結果として生じる有効経路長の変動に対して、時間ベースの振幅情報が記録され、これは干渉グラフ(interferogram)I(xeff)と呼ばれる。この干渉グラフは、干渉計の2つのアーム間の有効経路長の変化の関数として変調された放射信号を表す。干渉光回路では、アナログ信号は光検出器で記録され、光検出器は符号化されたラマンスペクトルの波長または波数情報を符号化する。次に、ラマンスペクトルを回復するために、干渉グラフに対してフーリエ変換ルーチンが実行される。このシステムの利点はフォトニック集積回路、安定化光源である。一実施例では、共振空洞を使用して、外部空洞に対して安定化され、ブラッグミラー(Bragg mirror)と位相チューナーで構成される初期利得分布を定義する。このアプローチにより、共振利得段の注入ロックのために再注入される信号の位相と周波数の内容を制御することができる。
【0046】
一実施形態の動作では、検査流体は入力ポートを介してマイクロ流体チャネルに配置される。次に、安定化された光源が、マイクロ流体チャネルの少なくとも部分的な長さに沿って形成された導波管内に案内される。チャネルと光導波管の領域は比較的長く、導波管の周囲または間のエバネッセントに誘導される領域は、より多くの対象の分析物と相互作用するため、相互作用の合計によって増加を得ることができ、検査の精度を高めることができる。センサ領域の最後で、光信号は、対象の分子または病原体に関連する電磁スペクトルの特定の部分にわたる光の特性を測定する集積スペクトロメータに入力される。これらのスペクトロメータは、共振器結合型検出器からマッハ・ツェンダー(Mach-Zehnder)干渉計やマイケルソン干渉計のような走査構造まで、幅広い集積構造の形態をとることができる。示されているアプローチは、集積マイケルソン干渉計の使用を詳細に説明しており、これにより、基準アームの固定長に対する一方のアームの位相誘起伝搬変動によって干渉パターン干渉グラフが導入され、その後、内部または外部のプロセッサに送信される。これは、高速フーリエ変換(FFT)によってスペクトルに変換され、そこから、一意のピーク位置、幅、および形状からなる一意のフィンガープリントを比較器で処理して最終的なデータセットを得ることができる。最終的なデータセットは、視覚信号や英数字の読み取りなどの検出可能な形式に送信できる。
【0047】
図9は、1つの実施形態において、干渉計と安定化された光源が、約3mmから約4mmの間の流体入力ポートとベントポートを含み、線幅源(line width source)が約0.5mWから約5mWの範囲にある全長を持ち得る導波管にどのように光学的に接続されるかを概略的に示す。
【0048】
図10は、検査チップの製造に使用できる一般的な製造プロセスフローの実施例を示す。
【0049】
検査ストリップ検出および同定システムの様々な実施形態のユニークな利点には、ウイルス物質を含む溶液をマイクロチャネルに閉じ込める能力が含まれる。この閉じ込めにより、プローブ光ビームと対象の素材との相互作用が改善される。ここでの実施形態は、他のどのアプローチよりも感度が何桁も改善されたコンパクトな分析システムを提供し、例えば、マイクロチャネルの壁に沿って金属ナノ構造を適用することから生じる信号感度の14から15桁の大幅な増加が可能であると考えられる。マイクロチャネル内のナノ粒子の複数の表面との強制的な相互作用は、全体的な相互作用長と蓄積された信号強度を増加させる。ここでの実施形態によって提供される他の利点には、低コストの生成、接続、伝送、ラマンスペクトルの処理と検出、チャネル内の局在化した金属ナノ構造の形成とそれらのフォトニック集積回路との集積を支援するためのマイクロチャネル集積技術の適用、およびマイクロチャネルへのプローブ光ビームの注入を制御するための支持素子が含まれる。このシステムにより、マイクロチャネルを通して制御された方法でプローブビームを誘導し、プローブビームをフォトニック回路に再接続して処理とスペクトル抽出を行うことができる。ここでの実施形態は、追加の人を危険にさらすことなく、孤立したリアルタイムの単一点検査を可能にするために、センサを使用可能な車両にパッケージングすることも提供する。
【0050】
ここで開示される実施形態は、以下を備える。
【0051】
一実施形態では、フォトニック集積チップが開示される。この実施形態では、フォトニック集積チップは、フォトニック回路を含むフォトニック回路基板上に配置された光導波路を含む。光導波路はフォトニック回路に光学的に接続される。マイクロ流体チャネルはシリコン基板内にあり、フォトニック回路基板に電気的および光学的に接続され、マイクロ流体チャネルは光導波路上に配置される。光導波管の側面と最外面はマイクロ流体チャネルの中に伸びる。マイクロ流体チャネルは光導波路の長さに沿って伸びる。光導波管上または隣接して位置するナノ粒子は、マイクロ流体チャネル内に位置する。
【0052】
別の実施形態は、検査ストリップに関するものである。この実施形態はフォトニック集積チップを含む。フォトニック集積チップは、フォトニック回路を含むフォトニック回路基板上に配置された光導波路を含む。光導波路はフォトニック回路に光学的に接続される。マイクロ流体チャネルはシリコン基板内にあり、フォトニック回路基板に取り付けられ、マイクロ流体チャネルは光導波路上に配置される。光導波管の側面と最外面はマイクロ流体チャネルに伸び、マイクロ流体チャネルは光導波管の長さに沿って伸びる。光導波路上または隣接するナノ粒子は、マイクロ流体チャネル内に位置する。集積フォトニックチップは、流体収集ストリップとその端の1つに隣接して配置される。流体収集ストリップは、その中に形成された流体チャネルと、流体チャネルに流体的に接続された流体入力ポートを有する。流体入力ポートは、流体収集ストリップの反対側の端に隣接して配置され、ベントポートは、流体チャネルから集積フォトニックチップのマイクロ流体チャネルへの流体の流れを可能にするために、集積フォトニックチップの流体入力ポートに流体的に接続される。
【0053】
要素1:駆動電極とバッキング電極をさらに含み、駆動電極はシリコン基板内にあり、駆動電極はフォトニック回路基板内にあり、光導波路上に位置する駆動電極とバッキング電極の間に位置する光導波路である。
【0054】
要素2:フォトニック集積回路は、フォトニック調整制御回路、構成管理回路、デジタルプロセッサコア、メモリ回路、デジタルインターフェイス、およびBluetooth(登録商標)インターフェイスで構成される。
【0055】
要素3:さらに、流体入力ポートと、マイクロ流体チャネルの反対側の端に位置する流体ベントポートを含み、マイクロ流体チャネルは、流体入力ポートと流体ベントポートの間の流体パスを形成する。
【0056】
要素4:さらに光安定器と、入力信号の変調経路長と位相変調出力信号の固定経路長からなる干渉計を含む。
【0057】
要素5:光安定器は、光利得回路と、ブラッグミラー(Bragg mirror)に接続された位相変調光回路を含む。
【0058】
要素6:ナノ粒子の濃度は、最も外側の表面の上よりも側面の上または近傍においてより高い。
【0059】
要素7:導波管の一部がクラッドされておらず、ナノ粒子はクラッドされていない導波管の上または近傍にある。
【0060】
要素8:導波管は蛇行形状である。
【0061】
要素9:さらに、マイクロ流体チャネルに流体的に接続されたマイクロ流体ポンプを含む。
【0062】
要素10:集積フォトニックチップは、駆動電極とバッキング電極をさらに含み、駆動電極はシリコン基板内にあり、駆動電極はフォトニック回路基板内にあり、光導波路上に位置する駆動電極とバッキング電極の間に位置する光導波路である。
【0063】
要素11:フォトニック集積回路は、フォトニック調整制御回路、構成管理回路、デジタルプロセッサコア、メモリ回路、デジタルインターフェイス、およびBluetoothインターフェイスで構成される。
【0064】
要素12:さらに光安定器と、入力信号の変調経路長と位相変調出力信号の固定経路長からなる干渉計を含む。
【0065】
要素13:光安定器は、光利得回路と、ブラッグミラー(Bragg mirror)に光学的に接続された位相変調回路を含む。
【0066】
要素14:ナノ粒子の濃度は、最も外側の表面よりも側面または側面に隣接する面においてより高い。
【0067】
要素15:導波管の一部がクラッドされておらず、ナノ粒子はクラッドされていない導波管上にある、または隣接する。
【0068】
要素16:導波管は蛇行形状である。
【0069】
要素17:導波管の一部がクラッドされておらず、ナノ粒子はクラッドされていない導波管上にある、または隣接する。
【0070】
要素18:流体収集ストリップは、集積フォトニックチップが配置されているトップフィルム、ボトムフィルム、およびスペーサフィルムからなり、トップおよびボトムフィルムとスペーサフィルムは一緒に取り付けられて流体チャネルを形成する。
【0071】
本発明は詳細に説明されているが、当業者は、本発明の精神および範囲を最も広範な形態で逸脱することなく、ここで様々な変更、置換および変更を加えることができることを理解すべきである。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10