(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】亜酸化窒素の排出を低減するためのシステムを有する大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関及びそのような機関の亜酸化窒素の排出を低減するための方法
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20241226BHJP
C25B 1/01 20210101ALI20241226BHJP
C25B 1/02 20060101ALI20241226BHJP
C25B 1/16 20060101ALI20241226BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20241226BHJP
C25B 15/02 20210101ALI20241226BHJP
C25B 15/00 20060101ALI20241226BHJP
B63H 21/14 20060101ALI20241226BHJP
B01D 53/56 20060101ALI20241226BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20241226BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
F01N3/08 A
C25B1/01 Z ZAB
C25B1/02
C25B1/16
C25B9/65 301
C25B15/02 301
C25B15/00 301
B63H21/14
B01D53/56 200
B01D53/78
B01D53/14 210
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023027928
(22)【出願日】2023-02-27
【審査請求日】2024-05-13
(32)【優先日】2022-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】597061332
【氏名又は名称】エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・フィリアル・アフ・エムエーエヌ・エナジー・ソリューションズ・エスイー・ティスクランド
(74)【代理人】
【識別番号】100127188
【氏名又は名称】川守田 光紀
(72)【発明者】
【氏名】クリステンセン ヘンリック
(72)【発明者】
【氏名】キエントルプ ニールス
【審査官】佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-180814(JP,A)
【文献】特開2017-029892(JP,A)
【文献】特開2021-014851(JP,A)
【文献】特開2020-070804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/00
F02B 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主燃料がアンモニアである運転モードを少なくとも1つ有する大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関であって、
シリンダライナと、前記シリンダライナ内の往復ピストンと、自身をカバーするシリンダカバーとを有する少なくとも1つのシリンダと、
前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間において前記シリンダライナ内に形成される燃焼室と、
前記シリンダカバー又は前記シリンダライナに配される燃料弁に加圧されたアンモニアを供給するように構成されるアンモニア燃料システムと、
・ 掃気用空気を圧縮するための少なくとも1つの圧縮機と、少なくとも1つの排ガス駆動タービンとを有するターボ過給システムと;
・ 前記少なくとも1つの排ガス駆動タービンの下流に設けられるウェットスクラバーと;
を備え、前記ウェットスクラバーは亜酸化窒素スクラバーであって、前記亜酸化窒素スクラバーを流れる排ガス中の亜酸化窒素を、アンモニアに変換する及び/又は窒素と酸素若しくは窒素と水酸化物に還元するように構成される、機関。
【請求項2】
前記亜酸化窒素スクラバーは電気スクラバーであり、湿式洗浄と、電気的に生成されたメディエータとを組み合わせて、1回の処理段階で亜酸化窒素をアンモニアに還元する、請求項1に記載の機関。
【請求項3】
前記メディエータはNi(I)系のメディエータである、請求項2に記載の機関。
【請求項4】
前記メディエータはNi(I)[Ni(I)(CN)
4]
3-メディエータである、請求項2に記載の機関。
【請求項5】
前記亜酸化窒素スクラバーを通してメディエータを含む水を循環させる循環システムを備える、請求項1に記載の機関。
【請求項6】
前記循環システムは前記メディエータを電気生成するための電圧源に結合した電解槽を有する、請求項5に記載の機関。
【請求項7】
前記電解槽は前記電圧源に結合した少なくとも二つの電極を有する、請求項6に記載の機関。
【請求項8】
排ガスからアンモニアを分離する手段を備え、該手段は前記亜酸化窒素スクラバーの下流に配置される、請求項1に記載の機関。
【請求項9】
前記分離する手段はスクラバータワーを有する、請求項8に記載の機関。
【請求項10】
前記少なくとも1つの排ガス駆動タービンの下流で前記亜酸化窒素スクラバーの上流に、排ガス中の水の一部を除去するための凝縮器を備える、請求項
6に記載の機関。
【請求項11】
前記凝縮器は排ガスから除去された水を捨てるためのアウトレットを有する、請求項10に記載の機関。
【請求項12】
前記凝縮器は冷却水を受け取るためのインレットと冷却水を排出するためのアウトレットを有する、請求項11に記載の機関。
【請求項13】
アンモニア供給ポンプを備え、前記アンモニア供給ポンプのアウトレットは燃料弁に流体的に接続される、請求項1に記載の機関。
【請求項14】
前記アンモニア供給ポンプはアンモニア貯蔵タンクに流体的に接続されるインレットを有する、請求項13に記載の機関。
【請求項15】
請求項10に記載の機関であって、コントローラを備え、該コントローラは、
・ 前記凝縮器の働きを、前記循環システム内の水又は流体の量を代表する信号に応じて制御することと;
・ 前記電圧源から前記電解槽に供給される電力量を制御することと;
・ アンモニア燃料システムから機関に供給されるアンモニアの量及び/又は圧力を制御することと;
のうちの1つ以上を行うように構成される、機関。
【請求項16】
水銀電極を備え、亜酸化窒素の還元は、水溶液中で少量のNi(II)錯体の存在下で前記水銀電極で生じ、前記Ni(II)錯体は[15又は14]aneN
4{[15又は14]aneN
4=1,4,8,12(又は11)-テトラアザシクロペンタ(又はテトラ)デカン}のNi(II)錯体である、請求項1に記載の機関。
【請求項17】
ターボ過給機を有する大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関の排ガスから亜酸化窒素を除去する方法であって、
・ 主燃料としてアンモニアで前記大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関を動作させることと;
・ ターボ過給機のタービンの下流の排ガスを湿式洗浄することと;
を含み、前記湿式洗浄することは、
Ni(I)系のメディエータを水に加え、排ガス中の亜酸化窒素を単一の処理段階でアンモニアに変換すること、又は、
水に添加した大環状ポリアミンのNi(II)錯体を用いて、前記亜酸化窒素を窒素と酸素に還元すること、及び/又は窒素と水酸化物に還元すること;
によって行われる、方法。
【請求項18】
前記Ni(I)系のメディエータはNi(I)[Ni(I)(CN)
4]
3-メディエータである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
電解槽で前記メディエータを電気生成することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記メディエータを含む水をスクラバーで循環させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
排ガスから前記アンモニアを分離し、その後、湿式洗浄することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記湿式洗浄することはスクラバータワーを用いることを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
湿式洗浄の前に排ガス中の水分含有量を制御することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記制御することは、排ガスから水を除去することを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記除去することは前記タービンの上流で行われる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記除去することは凝縮器を用いて行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記Ni(I)系のメディエータを含む水を、湿式スクラバーを有する循環システムで循環させることを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項28】
湿式洗浄の前に排ガスから水を除去することによって、前記循環システム内の水の量を制御することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
湿式洗浄の前に排ガスから水を除去することによって、前記循環システム内の水の量を制御することを含み、前記制御することは、前記循環システム内の水の量が上限閾値以上である場合は
凝縮器の働きを活発にし、前記循環システム内の水の量が下限閾値未満である場合は前記凝縮器の働きを低下させることによって行う、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
水溶液中で少量のNi(II)錯体の存在下で水銀電極で亜酸化窒素を還元することを含み、前記Ni(II)錯体は、[15又は14]aneN
4{[15又は14]aneN
4=1,4,8,12(又は11)-テトラアザシクロペンタ(又はテトラ)デカン}のNi(II)錯体である、請求項17に記載の方法。
【請求項31】
前記凝縮器は制御された凝縮器である、請求項10から12のいずれかに記載の機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される事項は、燃焼用の燃料としてアンモニアを使用して運転される少なくとも1つのモードを有する大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関であって、亜酸化窒素の排出を低減するためのシステムを有する機関、及び、そのような機関の亜酸化窒素排出の低減方法に関する。
【背景】
【0002】
大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関は、典型的には、大型船舶の推進システムや、発電プラントの原動機として用いられる。その大きさや重量、出力は、大型2ストロークターボ過給式圧縮着火内燃機関を他の燃焼機関からかけ離れたものとしており、このタイプの圧縮内燃機関を独特の分類に位置づけている。
【0003】
内燃機関はこれまで、ディーゼル油のような燃料油や、天然ガス又は石油ガスのような燃料ガスといった、炭化水素燃料によって主に運転されてきた。炭化水素燃料の燃焼は、二酸化炭素(CO2)等の温室効果ガスの発生を伴うが、これらは大気汚染や気候変動の原因になり得る。副生成物の排出を生じる石油燃料の不純物と違って、CO2の発生は、炭化水素の燃焼に不可避である。特定の燃料のエネルギー密度やCO2排出量は、炭化水素鎖の長さと炭化水素分子の複雑さに依存する。このためガス状炭化水素燃料は、液体の炭化水素燃料よりもCO2排出量が少ない。しかし、ガス状炭化水素燃料は、取り扱いや貯蔵が難しく、コストもかかる。CO2排出量を削減するために、炭化水素以外の燃料の研究が進められている。
【0004】
アンモニアは、石油やバイオマス、再生可能エネルギー源(風力、太陽光、水力、地熱)によって得られる合成物である。再生可能エネルギー源を用いて生成したアンモニアは、燃焼させたときのカーボン排出量は事実上ゼロであり、CO2やSOx、粒子状物質、未燃焼炭化水素を排出することはない。
【0005】
アンモニアは、小さな火花点火内燃機関において、小規模にテストされ使用されてきた。しかし、圧縮着火内燃機関を動作させるためには未だ使用されていない。
【0006】
アンモニアを燃料とする機関は、燃焼の副産物として亜酸化窒素(N2O)が発生しやすい。対策を行わないと、亜酸化窒素を含む排ガスが大気中に出てしまう。亜酸化窒素は、国連の気候レポートIPPC AR5によると、CO2の約265倍という大きな地球温暖化係数を持つことが知られている。このため、アンモニアを燃料とする大型2サイクルユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関の亜酸化窒素排出量を削減する必要がある。
【0007】
現在入手可能な排ガス中亜酸化窒素除去システムは、触媒分解法及び熱破壊法を使用している。これらの方法は、亜酸化窒素を窒素と酸素に変換する。触媒分解は約500℃で動作し、熱的破壊は1000℃近くで動作する。大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関の排気温度は、運転条件によるが、タービン前の排気温度が典型的には300~500℃であり、タービン後の排気温度が典型的には150~250℃であるので、これらの公知の方法で使用するには不充分である。従って、触媒分解及び熱破壊は、アンモニアを燃料とする大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関の排気ガスから亜酸化窒素を除去するには適していない。
【0008】
DK178072B1は、液体燃料からなる第1の燃料とアンモニアからなる第2の燃料とで運転する大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関を開示している。この機関は、シリンダライナとその中の往復ピストンとシリンダカバーとを有する少なくとも1つのシリンダと、前記シリンダ内で前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と、シリンダカバーに配された燃料弁に加圧されたアンモニアを供給するように構成されるアンモニア燃料システムと、掃気用空気を圧縮する少なくとも1つのコンプレッサと少なくとも1つの排ガス駆動タービンとを有するターボ過給システムとを備える。また、再循環された排気ガスを燃焼室に再導入する前に洗浄するスクラバーが設けられている。アンモニアなどの低カロリー燃料を使用する場合は、排気ガスの再循環率を上げることで、NOxの排出を低く抑えることができる。
【摘要】
【0009】
目的は、上述の問題を解決するか又は少なくとも緩和する、大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関を提供することである。
【0010】
上述の課題やその他の課題が、独立請求項に記載の特徴により解決される。より具体的な実装形態は、従属請求項や発明の詳細な説明、図面から明らかになるだろう。
【0011】
第1の捉え方によれば、主燃料がアンモニアである運転モードを少なくとも1つ有する大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関が提供される。この機関は、
・ シリンダライナと、前記シリンダライナ内の往復ピストンとを有する少なくとも1つのシリンダと、前記シリンダを覆うシリンダと;
・ 前記シリンダ内において、前記往復ピストンと前記シリンダカバーとの間に形成される燃焼室と;
・ 前記シリンダカバー又は前記シリンダライナに配される燃料弁に、加圧されたアンモニアを供給するように構成されるアンモニア燃料システムと;
・ 掃気用空気を圧縮するための少なくとも1つの圧縮機と、少なくとも1つの排ガス駆動タービンとを有するターボ過給システムと;
・ 前記少なくとも1つの排ガス駆動タービンの下流に設けられる亜酸化窒素スクラバーであって、前記亜酸化窒素スクラバーを流れる排ガス中の亜酸化窒素を、アンモニアに変換する及び/又は窒素と酸素若しくは窒素と水酸化物に還元する亜酸化窒素スクラバーと;
を備える。
【0012】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記スクラバーは、湿式洗浄と、電気的に生成されたメディエータ(electrogenerated mediator)とを組み合わせた電気スクラバー(electroscrubber)であり、前記メディエータは好ましくはNi系のメディエータであり、より好ましくはNi(I)[Ni(I)(CN)4]3-メディエータであり、前記スクラバーは、一回の処理段階で亜酸化窒素をアンモニアに変換し、及び/又は、前記スクラバーを流れる排ガス中の亜酸化窒素を窒素と酸素若しくは窒素と水酸化物に還元する。
【0013】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、スクラバーを通してメディエータを含む水を循環させる循環システムを備え、前記メディエータは好ましくは電気的に生成されたメディエータであり、前記循環システムは好ましくは前記メディエータを電気生成するための電圧源に結合した電解槽を有し、前記電解槽は好ましくは前記電圧源に結合した少なくとも二つの電極を有する。
【0014】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、排ガスからアンモニアを分離する手段を備え、前記排ガスからアンモニアを分離する手段は前記スクラバーの下流に配置され、好ましくはスクラバータワーを有している。
【0015】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関は、前記タービンの下流で前記スクラバーの上流に、排ガス中の水の一部を除去するための凝縮器を備え、前記凝縮器は好ましくは制御された凝縮器であり、前記凝縮器は好ましくは排ガスから除去された水を捨てるためのアウトレットを有し、前記凝縮器は好ましくは冷却水を受け取るためのインレットと冷却水を排出するためのアウトレットを有する。
【0016】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関はアンモニア供給ポンプを備え、前記アンモニア供給ポンプのアウトレットは燃料弁に流体的に接続され、前記アンモニア供給ポンプは好ましくはアンモニア貯蔵タンクに流体的に接続されるインレットを有する。
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、前記機関はコントローラを備え、該コントローラは、以下のうちの1つ以上を制御するように構成される。
・ 前記凝縮器の働き。前記循環システム内の水又は流体の量を代表する信号に応じて制御する。これは、好ましくは前記循環システム内の水の量を一定に保つためになされ、また好ましくは、前記凝縮器を通過する冷却水の温度を制御することによってなされる。
・ 前記電圧源から前記電解槽に供給される電力量。好ましくは、再循環水中の、電気的に生成されたメディエータの濃度を表す信号に応じて制御する。
・ 前記アンモニア燃料システムから前記機関に供給されるアンモニアの量及び/又は圧力。好ましくはアンモニア供給ポンプの速度を調整することで制御する。
【0017】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、亜酸化窒素の還元は、水溶液中で少量のNi(II)錯体の存在下で水銀電極で生じる。このNi(II)錯体は、[15又は14]aneN4{[15又は14]aneN4=1,4,8,12(又は11)-テトラアザシクロペンタ(又はテトラ)デカン}のNi(II)錯体である。
【0018】
前記第1の捉え方の実装形態の一例において、N2OからN2への還元は、PtやNiの電気触媒で修飾されたガス拡散電極上で行われる。
【0019】
第2の側面によれば、ターボ過給機を有する大型2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関の排ガスから亜酸化窒素を除去する方法が提供される。この方法は、
主燃料としてアンモニアで前記機関を動作させることと;
・ ターボ過給機のタービン下流の排ガスを、Ni系のメディエータ(好ましくはNi(I)[Ni(I)(CN)4]3-メディエータ)を水に加えて湿式洗浄し、排ガス中の亜酸化窒素を単一の処理段階でアンモニアに変換すること、又は、
水に添加した大環状ポリアミンのNi(II)錯体を用いて、前記亜酸化窒素を窒素と酸素に還元すること、及び/又は窒素と水酸化物に還元することと;
を含む。
【0020】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、好ましくは電解槽で、前記メディエータを電気的に生成することを含む。
【0021】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記メディエータを含む水をスクラバーで循環させることを含む。
【0022】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、排ガスからアンモニアを分離し、その後、好ましくはスクラバータワーを用いて、湿式洗浄することを含む。
【0023】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、湿式洗浄の前に排ガス中の水分含有量を制御することを含む。これは好ましくは排ガスから水を除去することによって行われる。排ガスからの水の除去は、好ましくはタービン6の上流で行われ、好ましくは凝縮器を用いて行われる。
【0024】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、Ni系メディエータを含む水を、湿式スクラバーを有する循環システムで循環させることを含む。
【0025】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、洗浄の前に排ガスから水を除去することによって、前記循環システム内の水の量を制御することを含む。この制御は、好ましくは、前記循環システム内の水の量が上限閾値以上である場合は前記凝縮器の働きを活発にし、前記循環システム内の水の量が下限閾値未満である場合は前記凝縮器の働きを低下させることによって、行う。
【0026】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、水溶液中で少量のNi(II)錯体の存在下で水銀電極で亜酸化窒素を還元することを含む。このNi(II)錯体は、[15又は14]aneN4{[15又は14]aneN4=1,4,8,12(又は11)-テトラアザシクロペンタ(又はテトラ)デカン}のNi(II)錯体である。
【0027】
前記第2の捉え方の実装形態の一例において、前記方法は、PtやNiの電気触媒で修飾されたガス拡散電極上で、N2OをN2に還元することを含む。
【0028】
これらの捉え方及び他の捉え方は、添付図面及び以下に説明される実施例により更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下、図面に示される例示的な実施形態を参照しつつ、様々な捉え方や実施形態、実装例を詳細に説明する。
【
図1】ある例示的実施形態に従う大型2ストロークディーゼル機関を正面方向から見た概観を示す図である。
【
図2】
図1の大型2ストローク機関を背面方向から見た概観を示す図である。
【
図3】アンモニア燃料システム及び亜酸化窒素除去システムを有する、
図1の大型2ストローク機関の実施形態を示す略図表現である。
【
図4】アンモニア燃料システムをより詳細に示した
図3の実施形態の機関の略図表現である。
【
図5】アンモニア燃料システム及び亜酸化窒素除去システムを有する、
図1の大型2ストローク機関の別の実施形態を示す略図表現である。
【詳細説明】
【0030】
以下の詳細説明では、実施例のクロスヘッド式大型低速2ストロークユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関を参照して、内燃機関が説明される。なお場合によっては、内燃機関は別のタイプの機関で有り得ることに注意されたい。大型2ストローク低速ユニフロー掃気ターボ過給式内燃機関は、ピストンの上死点付近又は上死点で燃料が噴射される、圧縮着火型の(すなわち高圧型の)機関であることができる。又は、掃気空気が圧縮される前又は圧縮される途中で燃料と混合される、火花点火型の(すなわち低圧型の)機関であることができる。後者の場合は通常、確実に点火を行うために、添加液(例えば燃料油)によるパイロット点火が行われる。
【0031】
図1-
図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を描いている。このエンジンは、クランクシャフト8及びクロスヘッド9を有する。
図3は、ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関を、その吸気システム及び排気システムと共に略図により表現したものである。この実施例において、機関は直列に6本のシリンダを有する。ターボ過給式大型低速2ストロークディーゼル機関は通常、直列に配される4から14のシリンダを有する。これらのシリンダはシリンダフレーム23に担持される。シリンダフレーム23は機関フレーム11に担持される。またこのような機関は、例えば、船舶の主機関や、発電所において発電機を動かすための据え付け型の機関として用いられることができる。機関の全出力は、例えば、1000kWから110000kWでありうる。
【0032】
この実施例における機関は、2ストロークユニフロー式圧縮着火型二元機関であり、各シリンダライナ1には、その下部領域に掃気ポート18が設けられ、その頂部中央には排気弁が配される。この機関は少なくとも1つのアンモニアモード及び少なくとも1つの従来燃料モードを有する。アンモニアモードにおいて、機関はアンモニア燃料又はアンモニアベースの燃料で運転される。従来燃料モードにおいては従来の燃料、例えば燃料油(船舶用ディーゼル燃料)や重油で運転される。
【0033】
掃気空気は、掃気受け2を通じて、各シリンダ1の掃気ポート18へと導かれる。ピストン10は、シリンダライナ1中で下死点(BDC)と上死点(TDC)の間を往復し、掃気空気を圧縮する。燃料(アンモニアモードではアンモニア)は、シリンダカバー22に配置された燃料弁50を通じて燃焼室内に噴射される。ディーゼル原理に基づく動作の場合、燃料は、ピストンがTDC又はその付近にあるときに、高圧で噴射される。オットー原理に基づく動作の場合、燃料は、ピストンがTDCに向かう途中に低圧で噴射される。燃料の噴射に続いて燃焼が生じ、排気が生成される。各シリンダカバー22には2つ以上の燃料弁50が設けられる。燃料弁50は、特定の1つのタイプの燃料(例えばアンモニア)のみを噴射するように構成されてもよい。その場合、燃焼室内に従来燃料を噴射するための2つ以上の燃料弁も設けられるだろう(
図3には図示されていない)。燃料弁50は、シリンダカバー22において、シリンダカバー22の中央部に配される排気弁4の周囲に配される。図示されていないが、実施例によっては、アンモニア燃料を確実に点火するために点火液を噴射するように構成される、追加の(通常は小さな)燃料弁がシリンダカバーに配されてもよい。点火液は、例えばジメチルエーテル(DME)又は燃料油であってもよい。しかし、例えば水素のような、他の形の点火促進剤であってもよい。機関は二元エンジンであってもよいので、機関は、燃料弁50に従来燃料を供給するための従来燃料供給システムを備えていてもよい(図示されていない)。実施例によっては、シリンダライナに沿って燃料弁50'が配される(破線で示されている)。燃料弁50'は、ピストン10がBDCからTDCに向かう途中であって燃料弁50'を通過する前に、シリンダ内に燃料を導入する。その場合、ピストン10は掃気と燃料の混合気を圧縮する。TDC又はその近辺でタイミングをはかって点火が行われる。点火は、火花、レーザー、点火液の噴射等によって行われる。燃料弁50'を有する実施例では、燃料が導入される時点での圧力は、シリンダカバー22に燃料弁50を有する実施例において燃料が噴射される時点での圧力よりもかなり低い。シリンダカバー22に配される燃料弁50は、ピストンがTDC又はその付近にあるときに燃料を噴射するので、燃料噴射圧力は、圧縮圧力よりもかなり高くなくてはならない。このように、実施形態によっては、機関はディーゼル原理(圧縮点火)に従って動作し、掃気ガスを圧縮しする。他の実施形態では、機関はオットーサイクル(所定のタイミングで点火する)に従って動作し、燃料と掃気ガスの混合物を圧縮する。オットー原理に従って動作するとき、燃料供給システム30が燃料を供給するために必要な圧力は、圧縮点火の場合に比べて著しく低くすることができ、及び/又は、圧縮点火機関用の燃料弁50でしばしば使用される圧力ブースターを用いる必要は回避され得る。
【0034】
排気弁4が開くと、排ガスは、シリンダ1に設けられる排気ダクトを通って排気受け3へと流れ、(実施形態によっては選択的触媒リアクター33を通って)第1の排気管19を流れ、ターボ過給機5のタービン6へと進む。そこから排ガスは第2の排気管28を進み、、凝縮器20、ウェットスクラバー40、スクラバータワー48を経て、出口21から大気中へと放出される。湿式スクラバー40は、以下でさらに詳細に説明するように、亜酸化窒素排出量(N2O排出量)を低減する。
【0035】
ターボ過給機5のタービン6は、シャフトを介してコンプレッサ7を駆動する。コンプレッサ9には、空気取り入れ口12を通じて外気が供給される。コンプレッサ7は、圧縮された掃気空気を、掃気受け2に繋がる掃気管13へと送り込む。掃気管13の掃気は、掃気を冷却するためのインタークーラー14を通過する。
【0036】
冷却された掃気は、電気モーター17により駆動される補助ブロワ16を通る。補助ブロワ16は、ターボ過給機5のコンプレッサ7が掃気受け2のために十分な圧力を提供できない場合、すなわち機関が低負荷又は部分負荷である場合に、掃気流を圧縮する。機関の負荷が高い場合は、ターボ過給機のコンプレッサ7が、十分に圧縮された掃気を供給することができるので、補助ブロワ16は逆止め弁15によってバイパスされ、電気モーター17は停止される。ターボ過給システムは2つ以上のターボ過給機5を有してもよい。
【0037】
アンモニアモードにおいて、機関はアンモニアを主燃料として運転される。アンモニアは、アンモニア燃料システム30によって、ほぼ一定の圧力及び温度でアンモニア弁50に供給される。アンモニアはアンモニア弁50に、液相又は気相で供給されうる。液相アンモニアは、アンモニア水(aqueous ammonia)、すなわちアンモニア水溶液であってもよい。
【0038】
従来燃料システムについてはよく知られているので、図示されておらず、また詳細な説明もなされない。アンモニア燃料システム30は、液相のアンモニアを中間的な供給圧力で(例えば30~80bar)で、アンモニア弁50に供給する。代替例では、アンモニア燃料は、気相で、比較的低い供給圧力(例えば8~30bar)で、アンモニア弁50に供給される。圧縮着火型機関の場合、燃料弁50は、アンモニア燃料の圧力を著しく上昇させる圧力ブースターを備える。圧力ブースターは、アンモニア燃料の圧力を中間的な圧力から高圧へと上昇させ、それによって、機関の圧縮圧力よりも高い圧力でアンモニア燃料が噴射されることを可能にする。通常、圧縮着火型機関の噴射圧力は300barより高い。
【0039】
実施形態によっては、機関は、排ガスの一部を掃気ガスと共に燃焼室に再導入するための排ガス循環システムを備える。これは例えばNOxの発生を低減するためである。
【0040】
図4を参照すると、アンモニア燃料システム30がより詳細に示されている。アンモニアは、圧力式貯蔵タンク31に液相で約17barで貯蔵される。アンモニアは、外気温20℃において8.6bar以上であればアンモニア貯蔵タンク31に液相で貯蔵することができる。しかし、外気温が上昇しても液相を保たせるためには、17bar以上でアンモニアを貯蔵することが好ましい。
【0041】
低圧アンモニア供給ライン32が、アンモニア貯蔵タンク31の出口と中圧供給ポンプ35の入口を繋いでいる。低圧供給ポンプ33は、タンク31からの液相アンモニアがフィルタ装置34を通って中圧供給ポンプ35の入口に達するように圧力をかける。中圧供給ポンプ35は、中圧アンモニア供給ライン36から燃料弁50,50'へと液相アンモニアを圧送する。燃料弁50へと供給される液相アンモニアの一部は機関の燃焼室に噴射されるが、別の部分はアンモニア戻しラインライン38に戻される。アンモニア戻しライン38は、燃料弁50,50'の戻しポートを低圧供給ライン32に接続している。従って、液相アンモニア燃料の一部は中圧供給ポンプ35の入口へと再循環される。
【0042】
電子制御ユニット100は、有線又は無線で、燃料システム30のポンプ及びバルブ、制御される凝縮器20、及び亜酸化物除去システムに接続されている。電子制御ユニット100は、例えばポンプのスピードを調節したりバルブの開閉を制御したりすることにより、これらの要素を制御するように構成される。そうして、燃料システムや亜酸化物除去吸収システムが、以下に詳細に説明するように動作することを可能とする。
【0043】
図3に戻る。亜酸化窒素低減システムは、タービン6の下流で、制御された凝縮器20の下流に亜酸化窒素スクラバー40を有する。亜酸化窒素スクラバー40は、スクラバー40を流れる排ガス中の亜酸化窒素を1回の処理段階でアンモニアに変化させるように構成されている。従って、スクラバー40を出る排ガスは、スクラバー40に入る排ガスと比較して亜酸化物の含有量が大幅に減少しており、スクラバー40を出る排ガスは、スクラバー40に入る排ガスと比較してアンモニアの含有量が増加している。
【0044】
実施形態によっては、スクラバー40は充填カラム(packed column)を有する。この充填カラムは、広い表面積と低い圧力損失を実現する物質で充填されている。実施形態によっては、スクラバーはプレートカラムを有する。亜酸化窒素の除去プロセスは、カラムの設計に関係なく機能する。しかし、効率及び流量は、カラムの種類及び構造によって影響を受ける可能性がある。
【0045】
電気スクラバー40は、湿式洗浄と、電気的に生成されたメディエータ(electrogenerated mediator)とを組み合わせて、1回の処理段階で亜酸化窒素をアンモニアに還元する。このメディエータは好ましくはNi(I)系のメディエータであり、より好ましくはNi(I)[Ni(I)(CN)4]3-メディエータである。
【0046】
メディエータは、亜酸化窒素除去装置内で循環する水と混合される。循環水のpH値が高いため、アンモニアは水に溶解せず、排ガスと共にスクラバー40から排出される。
【0047】
循環システムは、循環ポンプ45を用いて、水を循環回路49内で循環させる。水はメディエータを含み、スクラバー40を通過する。
【0048】
電気的電子メディエータの存在、例えば9MのKOH中の例えば[Ni(I)(CN)4]3-(Ni(I))の存在は、は、亜酸化窒素(N2O)をアンモニアに変換することによって、ウェットスクラバー40を通過する排ガスから亜酸化窒素を一貫して除去する(通常95%が除去される)結果をもたらす。
【0049】
このプロセスは高温を必要とせず、周囲温度と同程度の低い温度で機能する。ウェットスクラバー40に入る排ガスは、機関運転条件及び制御された凝縮器20の動作の度合いに依存するが、典型的には150~250℃の範囲にあるであろう。
【0050】
亜酸化窒素は、電気的触 媒メディエータであるNi(I)と合体して、周囲温度まで下がった排ガスから除去される。この、メディエータとなる電気的触媒は、過剰な窒素の存在下で、N2OからNH3への変換を促進する。この変換は、溶液相反応(solution phase reaction)によって可能になる。これは、NH3が生成され、機関の燃料として、又は選択的触媒リアクターにおける還元剤として使用することができるという利点を有する。
【0051】
メディエータは、電気的に生成されるメディエータ(electrogenerated mediator)であり、循環システムは、メディエータを電気的に生成するための電位源46に結合された電解槽44を有する。電解槽44は、電位源46に接続される少なくとも2つの電極(陽極/陰極)を有する。循環システムはまた、循環システム内の水の量を検知するためのセンサ(図示せず)を有する。
【0052】
電位源46、循環ポンプ45、循環システム水量検知用センサ、及び制御可能な凝縮器20は、コントローラ100に接続されている。
【0053】
スクラバー40の下流には、排ガスからアンモニアを分離するスクラバータワー48等が配置され、スクラバー40のアウトレットがスクラバータワー48の入口に接続されている。スクラバータワー48からアウトレット21を通って大気中に出る排ガスは、アンモニアを全く含まないか、又は非常に少ない。スクラバータワー48で排ガスから分離されたアンモニアは、機関の燃料として、又はNOx排出を低減するために使用できる選択的触媒リアクター33における還元剤として、使用することが可能である。
【0054】
タービン6の下流でスクラバー40の上流に配される凝縮器20は、循環システム内の水量が増加して再循環水中のメディエータの濃度が低下することを避けるために、排ガス中の水分の一部を除去する。凝縮器20は、好ましくは、制御装置100によって制御可能であり、排ガスから除去された水を排出するためのアウトレットを有する。凝縮器20は、冷却水を受け取るためのインレットと、冷却水を排出するためのアウトレットも有している。実施形態によっては、凝縮器20を通る冷却水の温度及び低下率は、制御装置100によって制御される。
【0055】
コントローラは、以下のうちの1つ以上を制御するように構成される。
・ 凝縮器20の能力。循環システム内の水又は流体の量を表す信号(例えば前記センサーからの信号)に応じて制御する。これは、好ましくは前記循環システム内の水の量を一定又は限度内に保つためになされ、また好ましくは、凝縮器20を通過する冷却水の温度及び/又は流量を制御することによってなされる。ここで、凝縮器20を通過する冷却水の温度及び/又は流量の制御は、スクラバー40内で蒸発及び/又は凝縮が生じないか又はほとんど生じないように行われる。
・ 電圧源46から電解槽44に供給される電力量。好ましくは再循環水中の電解メディエータの濃度を表す信号に応じて制御する。この信号は、好ましくは循環システム内に配されたセンサー(図示されていない)からの信号である。
・ アンモニア燃料システムから機関に供給されるアンモニアの量及び/又は圧力。好ましくはアンモニア供給ポンプ35の速度を調整することで制御する。
【0056】
実施形態によっては、大型2ストロークユニフロー掃気式ターボ内燃の排ガスから亜酸化窒素を除去する方法は、
・ 主燃料としてアンモニアで前記機関を動作させることと;
・ ターボ過給機5のタービン6の下流の排ガスを、Ni(I)系のメディエータ(好ましくはNi(I)[Ni(I)(CN)4]3-メディエータ)を水に加えて湿式洗浄し、排ガス中の亜酸化窒素を単一の処理段階でアンモニアに変換することと;
を含む。
【0057】
前記方法は、好ましくは電解槽44で、前記メディエータを電気生成することを更に含んでもよい。前記方法は、好ましくは循環ポンプ45を使用して、前記メディエータを含む水をスクラバー40を通して循環させることを更に含んでもよい。前記方法は、排ガスからアンモニアを分離し、その後、好ましくはスクラバータワーを用いて、湿式洗浄することを更に含んでもよい。前記方法は、湿式洗浄の前に排ガス中の水分含有量を制御することを更に含んでもよい。これは好ましくは排ガスから水を除去することによって行われる。排ガスからの水の除去は、好ましくはタービン6の上流で行われ、好ましくは凝縮器20を用いて行われる。前記方法は、Ni(I)系メディエータを含む水を、湿式スクラバー40を有する前記循環システムで循環させることを更に含んでもよい。前記方法は、洗浄の前に排ガスから水を除去することによって、前記循環システム内の水の量を制御することを更に含んでもよい。この制御は、好ましくは、前記循環システム内の水の量が上限閾値以上である場合は前記凝縮器の働きを活発にし、前記循環システム内の水の量が下限閾値未満である場合は前記凝縮器の働きを低下させることによって、行う。
【0058】
図5は、機関の別の実施形態を描いている。この実施形態において、既に説明又は図示した構成や特徴と同様の構成及び特徴については、以前に使用したものと同じ符号を付している。この実施形態において、機関は、DC電流源46に接続された電極を備える電気スクラバー40を備えている。水は、循環ポンプ45によって電気スクラバー40を通って循環される。実施形態によっては、電気スクラバー40を通って循環される水は、触媒を含む。電気スクラバー40を通過する排ガス中の亜酸化窒素は、電気分解(electrolysis)を利用して、窒素と酸素に、又は窒素と水酸化物に分解される。このプロセスは、周囲温度と同じくらい低い温度でも機能するが、排ガスが電気スクラバー40に入る典型的な温度範囲である150~250℃において良好に機能する。
【0059】
実施形態によっては、電極は水銀電極であり、好ましくは垂下型水銀滴下電極(hanging mercury drop electrode)である。この実施形態において、亜酸化窒素の還元は水銀電極で生じ、水溶液中に少量のNi(II)錯体が存在する条件の下で、100%近い収率でN2のみを得ることができる。ここで上記Ni(II)錯体は、[15又は14]aneN4{[15又は14]aneN4=1,4,8,12(又は11)-テトラアザシクロペンタ(又はテトラ)デカン}のNi(II)錯体である。大環状ポリアミンは従来から調製されており、その金属錯体は、選択された金属イオンと配位子としての大環状ポリアミンをエタノール及び/又はメタノール中で混合することによって得られる。
【0060】
また、白金やニッケルの電極触媒で修飾したガス拡散電極で亜酸化窒素の還元が行われることもある。
【0061】
製造過程でアンモニアは発生しないので、本実施形態によっては、電気スクラバー40の下流にアンモニアを除去するためのスクラバータワー48を設ける必要はない。
【0062】
発明の様々な捉え方や実装形態が、いくつかの実施例と共に説明されてきた。しかし、本願の明細書や図面、特許請求の範囲を検討すれば、当業者は、特許請求の範囲に記載される発明を実施するにおいて、説明された実施例に加えて多くのバリエーションが存在することを理解し、また具現化することができるであろう。特許請求の範囲に記載される「備える」「有する」「含む」との語句は、記載されていない要素やステップが存在することを排除しない。特許請求の範囲において記載される要素の数が複数であると明示されていなくとも、当該要素が複数存在することを除外しない。
【0063】
特許請求の範囲で使用されている符号は発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。特に言及されない限り、図面は明細書と共に読まれることが意図されており、本願による開示の全体の一部である。