(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】異常データ処理システムおよび異常データ処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20241226BHJP
A61B 10/00 20060101ALN20241226BHJP
【FI】
A61B5/11 230
A61B10/00 H
(21)【出願番号】P 2023096145
(22)【出願日】2023-06-12
(62)【分割の表示】P 2022023708の分割
【原出願日】2018-10-17
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2017209127
(32)【優先日】2017-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐野 佑子
(72)【発明者】
【氏名】神鳥 明彦
(72)【発明者】
【氏名】水口 寛彦
(72)【発明者】
【氏名】殷 穎
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-152053(JP,A)
【文献】特開2009-142333(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0035247(US,A1)
【文献】特開2016-163698(JP,A)
【文献】特開2005-304996(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056434(WO,A1)
【文献】特開2017-140424(JP,A)
【文献】特開2011-238215(JP,A)
【文献】特開2017-189444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00
A61B 5/11
A61B 5/22
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
新規データの異常の有無を検出して処理する異常データ処理システムであって,
複数の被験者のユーザーを特定する情報が付されたデータが蓄積された多数被験者DBを保持する記憶部と,
前記新規データが前記多数被験者DBから乖離している度合いである多数
被験者DB乖離度を算出する多数被
験者DB乖離度算出部と,
前記新規データが前記多数被験者DBのデータから抽出される個別被験者のデータから乖離している度合いである個別被験者データ乖離度を算出する個別被験者データ乖離度算出部と,
前記多数被験者DBから抽出される個別被験者のデータ数に基づき、前記多数被験者DB乖離度と前記個別被験者データ乖離度を用いて,合成乖離度を求める合成乖離度算出部と,を備え,
前記合成乖離度に基づいて前記新規データを異常と判定し,
前記多数被験者DBから抽出される個別被験者
のデータを用いず,前記新規データ自体あるいは前記新規データから得られる特徴量に基づいて前記新規データを異常と判定する,DB不使用異常データ検出部をさらに備え,
前記新規データは手指運動データであり,
前記DB不使用異常データ検出部は,
前記手指運動データから算出される波形振幅,運動不実施時間,および両手協調性の少なくとも一つを前記特徴量とし,当該特徴量が所定の数値範囲から逸脱することを検出する,
異常データ処理システム。
【請求項2】
前記合成乖離度算出部において,
前記多数被験者DBから抽出される個別被験者のデータ数が増えると増加する個別被験者DB信頼係数を用い,前記個別被験者DB信頼係数で前記個別被験者データ乖離度を重み付けして,前記合成乖離度を求める,
請求項1記載の異常データ処理システム。
【請求項3】
前記新規データが異常と判定された場合の処理を決定する異常データ処理決定部と,
前記処理を実行する異常データ処理実行部と,を備える,
請求項1記載の異常データ処理システム。
【請求項4】
前記個別被験者データ乖離度算出部において,
前記新規データと前記個別被験者
のデータの各データとの計測時間の差異を算出し,
前記計測時間の差異が大きいほど減衰する過去データ信頼度を算出して,前記各データと前記過去データ信頼度から前記個別被験者データ乖離度を算出する経時減衰乖離度算出機能と,を備える,
請求項1記載の異常データ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理サービス技術に関する。また、本発明は、異常データ処理を実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘルスケア分野・医療分野・介護分野等の分野において,人を対象としたデータ計測を行うシステムが増えている。これらのシステムでは,得られたデータから解析結果を算出してユーザにフィードバックしたりすることで,ユーザに価値を提供する。このようなシステムの一例として,ユーザの指タップ運動の計測・解析によって認知機能や運動機能を簡易的に評価するシステム(指タップ計測解析システム)が挙げられる(例えば特許文献1)。ここで,指タップ運動とは、親指と人差し指を繰り返し開閉する運動である。指タップ運動は,認知症やパーキンソン病等の脳機能障害の有無や重症度によって,その出来が異なることが知られている。上記システムによる指タップ運動の解析結果から,ユーザが有する脳機能障害の早期発見や重症度推定等の評価を行える可能性が指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-140424号公報
【文献】特表2013-535268号公報
【文献】特開2013-039344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
指タップ計測解析システムに代表される人データ計測サービスが広く一般家庭に普及すると,ユーザが一人で計測する場合や,また,計測に不慣れな家族が補助して計測する場合が起こることが想定される。このように熟練した計測者を伴わずにデータが計測されると,計測手順が不適切であったり,ユーザが期待された行動を行わなかったりする等,信頼性の乏しいデータ(以下「異常データ」という)が計測される可能性がある。
【0005】
例えば,上述の指タップ計測解析システムを例に挙げると,所定の計測時間の途中でユーザが指タップ運動を中断してしまう場合や,ユーザが指示を誤解して指タップ運動を行った場合などが考えられる。
【0006】
このような異常データが用いられると,信頼性の高い解析結果をユーザにフィードバックすることが出来なくなるという問題が生じる。例えば,上述の指タップ計測解析システムの場合では,実態以上に指タップ運動の出来が悪いと看做されて,本来は脳機能障害の可能性が低いにも関わらず,脳機能障害の可能性が高いという解析結果が得られてしまう場合が考えられる。
【0007】
そこで,異常データを自動的に処理する仕組みが必要となる。この異常データ処理の仕組みを実現するためのアプローチとしては,(A)対象となるデータに着目するだけで異常を検出できる場合と,(B)過去のデータベース(DB)と比較して初めて異常を検出できる場合がある。(A)の場合は,対象となるデータがあれば良いため,ローカルの計測機器に接続したパーソナルコンピュータ(PC)端末(ローカルPC)等で実施可能である。(B)の場合は,ローカルPCに過去のDBが蓄積された場合はローカルPCで実施可能であるが,クラウドサーバに過去のDBが蓄積されている場合はサーバ上で実施することが必要となる。
【0008】
上述の(B)の場合について詳しく述べる。対象データを過去のDBと比較する場合,過去のDBとは,(i)当該ユーザのデータのみから成るDB(以下「個別被験者DB」という)である場合と,(ii)他の多数のユーザのデータも含めたDB(以下「多数被験者DB」という)である場合が考えられる。(i)の個別被験者DBは当該ユーザのデータの個性を反映しているため,正確な異常データ検出のためには(i)の個別被験者DBを使うことが望ましい。しかし,当該ユーザが既に何回も計測を実施している場合は(i)の個別被験者DBを使うことが可能であるものの,初回もしくは少ない回数しか計測を実施していない場合は(i)のDBが十分蓄積されていないため,(ii)の多数被験者DBを使う必要がある。
【0009】
(ii)の多数被験者DBを使う場合は,当該ユーザ以外のユーザのデータを予め蓄積しておけばよいことから,DBを準備しやすいことが利点である。しかし,(ii)の多数被験者DBは多数のユーザのデータの集合体であり,当該ユーザのデータの個性が反映されていないことから,(i)の個別被験者DBを使う場合と比較して異常データ検出が不正確になる可能性があるという欠点がある。
【0010】
以上の問題意識から,(i)の個別被験者DBと(ii)の多数被験者DBの長所と短所を補い合って,両者のDBを併用する技術が必要であると考えられる。異常データ処理に関する先行技術例としては、特表2013-535268号公報(特許文献2)や特開2013-039344号公報(特許文献3)が挙げられる。しかし,これらの2つの特許文献には、予め与えられたデータベースに対してテストデータが異常であるかを特定する方法が記載されているに過ぎず,個別被験者DBと多数被験者DBを併用して異常データ検出の精度を向上する技術については触れられていない。そこで本発明では,高精度で異常データを自動的に処理する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一側面は,新規データの異常の有無を検出して処理する異常データ処理システムであって,複数の被験者のデータが蓄積された多数被験者DBと,個別の被験者のデータが蓄積された個別被験者DBとを保持する記憶部と,新規データが個別被験者DBから乖離している度合いである個別被験者DB乖離度を算出する個別被験者DB乖離度算出部と,新規データが多数被験者DBから乖離している度合いである多数被験者DB乖離度を算出する多数被験者DB乖離度算出部と,個別被験者DBのデータ数を用いて,個別被験者DB乖離度と多数被験者DB乖離度を合成した合成乖離度を求める合成乖離度算出部と,を備え,合成乖離度に基づいて前記新規データを異常と判定する,異常データ処理システムである。
【0012】
入力部,出力部,制御部,および記憶部を用いて,入力部より取得した新規データの異常の有無を検出して処理する異常データ処理方法であって,記憶部に,複数の被験者のデータが蓄積された多数被験者DBと,個別の被験者のデータが蓄積された個別被験者DBとを保持し,新規データが個別被験者DBから乖離している度合いである個別被験者DB乖離度を算出し,新規データが多数被験者DBから乖離している度合いである多数被験者DB乖離度を算出し,個別被験者DBのデータ数に基づき,個別被験者DB乖離度と多数被験者DB乖離度を用いて合成乖離度を求め,合成乖離度に基づいて新規データを異常と判定する,異常データ処理方法である。
【発明の効果】
【0013】
高精度で異常データを自動的に処理する技術を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1の異常データ処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1で、異常データ処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1で、計測装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】実施の形態1で、端末装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】実施の形態1で、手指に装着された運動センサを示す斜視図である。
【
図6】実施の形態1で、計測装置の運動センサ制御部等の構成を示すブロック図である。
【
図7】実施の形態1の異常データ処理システムの処理フローを示す流れ図である。
【
図8】実施の形態1で、特徴量の波形信号の例を示す波形図である。
【
図9】実施の形態1で、特徴量リストの構成例を示す表図である。
【
図10】実施の形態1で、DB不使用異常データ検出の例を示す波形図である。
【
図11】実施の形態1で、個別被験者DBを用いた異常データ検出,及び,多数被験者DBを用いた異常データ検出を示す概念図である。
【
図12】実施の形態1で、合成乖離度の算出方法を示す概念図である。
【
図13】実施の形態1で、時系列を考慮した乖離度の算出方法を示す概念図である。
【
図14】実施の形態1で、異常検出理由・処理対応表の構成例を示す表図である。
【
図15】実施の形態1で、表示画面の例としてメニュー画面を示す平面図である。
【
図16】実施の形態1で、表示画面の例としてタスク計測画面を示す平面図である。
【
図17】実施の形態1で、表示画面の例として評価結果画面を示す平面図である。
【
図18】実施の形態1で、表示画面の例として第1の異常データ検出・処理画面を示す平面図である。
【
図19】実施の形態1で、表示画面の例として第2の異常データ検出・処理画面を示す平面図である。
【
図20】本発明の実施の形態2の異常データ処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図21】実施の形態2で、運動例として、画面上の指タップを示す平面図である。
【
図22】実施の形態2で、画面上の指タップの二指の距離の波形を示す波形図である。
【
図23】実施の形態2で、運動例として、リーチングを示す平面図である。
【
図24】実施の形態2で、運動例として、連続タッチを示す平面図である。
【
図25】実施の形態2で、運動例として、刺激に合わせたタップを示す平面図である。
【
図26】実施の形態2で、運動例として、五指タップを示す平面図である。
【
図27】本発明の実施の形態3の異常データ処理システムの構成を示すブロック図である。
【
図28】実施の形態3の異常データ処理システムであるサーバの構成を示すブロック図である。
【
図29】実施の形態3で、サーバの管理情報であるユーザ情報の構成例を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0017】
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0018】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0019】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0020】
本実施例では,異常データを自動的に処理する技術を提案する。異常データ処理においては,(A)対象となるデータに着目するだけで異常を検出できる場合と,(B)過去のDBと比較して初めて異常を検出できる場合がある。本実施例では,特に(B)について,(i)当該ユーザのデータのみから成るDB(個別被験者DB)と,(ii)他の多数のユーザのデータも含めたDB(多数被験者DB)を併用して,異常データを検出する技術を提案する。代表的な実施の形態によれば、(i)当該ユーザのデータのみから成るDBを用いた場合のデータ数の不足による精度低下と,(ii)他の多数のユーザのデータも含めたDBを用いた場合に個人差を反映できないことによる精度低下を,相互に補い合うことで精度の高い異常データ検出を実現できる。
【実施の形態1】
【0021】
図1~
図19を用いて、本発明の実施の形態1の異常データ処理システムについて説明する。実施の形態1の異常データ処理システムは、ユーザから計測されたデータの異常を検出して,異常が検出された場合の処理内容を生成する機能を有する。これらの機能により,高精度に異常データを検出して処理できる。
【0022】
[人データ計測システム(1)]
図1は、実施の形態1の異常データ処理システムを含む,人データ計測システムの構成を示す。実施の形態1では、病院や高齢者施設などの施設やユーザ自宅等に,人データ計測システムを有する。人データ計測システムは、異常データ処理システム1と、磁気センサ型指タップ運動システムである計測システム2とを有し、それらが通信線を通じて接続されている。計測システムは、計測装置3と端末装置4とを有し、それらが通信線を通じて接続されている。施設内に複数の計測システム2が設けられてもよい。
【0023】
計測システム2は、磁気センサ型の運動センサを用いて手指運動を計測するシステムである。計測装置3には運動センサが接続されている。ユーザの手指にはその運動センサが装着される。計測装置3は、運動センサを通じて手指運動を計測し、時系列の波形信号を含む計測データを得る。
【0024】
端末装置4は、異常データ検出結果,異常検出理由,異常データ処理内容を含んだ異常データ処理のための各種の情報を表示画面に表示し、ユーザによる操作入力を受け付ける。実施の形態1では、端末装置4はPCである。
【0025】
異常データ処理システム1は、情報処理によるサービスとして、異常データ処理サービスを提供する機能を有する。異常データ処理システム1は、その機能として、異常データ検出機能,異常データ処理決定機能、等を有する。異常データ検出機能は,計測システム2で計測された計測データを対象として異常の有無を検出する機能である。異常データ処理決定機能は,異常データ検出機能によって異常が検出されたデータに対する処理を決定する機能である。
【0026】
異常データ処理システム1は、計測システム2からの入力データとして、例えば,ユーザへの指示内容、計測データ等を入力する。異常データ処理システム1は、計測システム2への出力データとして、例えば,異常データ検出結果,異常データ処理内容等を出力する。異常データ検出結果には,当該計測データの異常の有無の他に,異常データ検出理由が含まれる。
【0027】
実施の形態1の人データ計測システムは、病院や高齢者施設等の施設及びその被験者等に限らずに、広く一般的な施設や人に適用可能である。計測装置3と端末装置4が一体型の計測システムとして構成されてもよい。計測システム2と異常データ処理システム1が一体型の装置として構成されてもよい。端末装置4と異常データ処理システム1が一体型の装置として構成されてもよい。計測装置3と異常データ処理システム1が一体型の装置として構成されてもよい。
【0028】
[異常データ処理システム]
図2は、実施の形態1の異常データ処理システム1の構成を示す。異常データ処理システム1は、制御部101、記憶部102、入力部103、出力部104、通信部105等を有し、それらがバスを介して接続されている。入力部103は、異常データ処理システム1の管理者等による操作入力を行う部分である。出力部104は、異常データ処理システム1の管理者等に対する画面表示等を行う部分である。通信部105は、通信インタフェースを有し、計測装置3及び端末装置4との通信処理を行う部分である。
【0029】
制御部101は、異常データ処理システムの全体を制御し、Central Processing Unit(CPU)、Read Only Memory(ROM)、Random Access Memory(RAM)等により構成され、ソフトウェアプログラム処理に基づいて、異常データ検出や異常データ処理決定等を行うデータ処理部を実現する。制御部101のデータ処理部は、ユーザ情報管理部11、タスク処理部12、解析評価部13、異常データ検出部14、異常データ処理決定部15、異常データ処理実行部16、結果出力部17を有する。制御部101は、計測装置3から計測データを入力する機能、計測データを処理して解析する機能、計測装置3や端末装置4へ制御指示を出力する機能、端末装置4へ表示用のデータを出力する機能等を実現する。
【0030】
ユーザ情報管理部11は、ユーザにより入力されたユーザ情報をDB40のユーザ情報41に登録して管理する処理や、ユーザのサービス利用の際に、DB40のユーザ情報41を確認する処理等を行う。ユーザ情報41は、ユーザ個人毎の属性値、利用履歴情報、ユーザ設定情報、等を含む。属性値は、性別、年齢等がある。利用履歴情報は、本システムが提供するサービスをユーザが利用した履歴を管理する情報である。ユーザ設定情報は、本サービスの機能に関してユーザにより設定された設定情報である。
【0031】
タスク処理部12は、運動機能等の解析評価のためのタスクに関する処理を行う部分である。タスクは言い換えると所定の手指運動である。タスク処理部12は、DB40のタスクデータ42Aに基づいて、端末装置4の画面にタスクを出力する。また、タスク処理部12は、計測装置3で計測されたタスクの計測データを取得して、計測データ42BとしてDB40に格納する。
【0032】
解析評価部13は、ユーザの計測データ42Bに基づいて、計測データの性質を表す特徴量を算出する部分である。解析評価部13は、解析評価処理の結果である解析評価データ43をDB40に格納する。
【0033】
異常データ検出部14は、ユーザの解析評価データ43,個別被験者DB45A,多数被験者DB45B,管理表50内の異常検出理由・処理対応表50Bの情報に基づいて、異常データを検出する処理、及び、異常データ検出結果44を端末装置4の画面に出力する処理を行う。異常データ検出部14は、異常を検出した結果を異常データ検出結果44としてDB40に格納する。異常データ検出結果44には,当該計測データの異常の有無の他に,異常データ検出理由が含まれる。異常データ検出部14は、DB40の異常データ検出結果44を端末装置4へ送信して画面に出力させる。異常データ検出部14は,DBを使わずに異常データを検出するDB不使用異常データ検出部14Aと,DBを使って異常データを検出するDB使用異常データ検出部14Bから構成される。DB使用異常データ検出部14Bは,個別被験者DB乖離度算出部14Ba,多数被験者DB乖離度算出部14Bb,合成乖離度算出部14Bcから構成される。
【0034】
異常データ処理決定部15は、異常データ検出結果44と,管理表50内の異常検出理由・処理対応表50Bに基づき,異常データ処理内容46を作成してDB40に格納する処理、等を行う。
【0035】
異常データ処理実行部16は、異常データ処理内容46に基づき,異常データ処理内容を実行する処理、等を行う。この際,異常データ処理内容46によっては,計測データ42Bを個別被験者DB45Aや多数被験者DB45Bに計測データを格納する場合もあり,しない場合もあり得る。
【0036】
ここで、個別被験者DB45Aは,特定のユーザのデータのみから成るDBであり,多数被験者DB45Bは,複数のユーザのデータを合わせたDBである。一般には,個別被験者DB45Aのデータは,多数被験者DB45Bの部分集合であるが,必ずしも多数被験者DB45Bに個別被験者DB45Aのデータが含まれなくてもよい。また,個別被験者DB45Aと多数被験者DB45Bは,データベースとして分離されていてもよい。ただし,多数被験者DB45Bのデータにユーザを特定する情報を付しておき,特定ユーザのデータを抽出できるようにしておくことで,多数被験者DB45Bが個別被験者DB45Aの機能を兼ねることもできる。
【0037】
結果出力部17は、ユーザの解析評価データ43,異常データ検出結果44,異常データ処理内容46を,端末装置4の画面に出力する処理を行う。解析評価部13,異常データ検出部14,異常データ処理決定部15,異常データ処理実行部16は、結果出力部17と連携して画面出力処理を行う。
【0038】
記憶部102のDB40に格納されるデータや情報として、ユーザ情報41、タスクデータ42A、計測データ42B、解析評価データ43、異常データ検出結果44、個別被験者DB45A,多数被験者DB45B,異常データ処理内容46、管理表50、等を有する。制御部101は、記憶部102に管理表50を保持し管理する。管理者は、管理表50の内容を設定可能である。管理表50は、特徴量を設定する特徴量リスト50A、異常検出理由と対応する処理を設定する異常検出理由・処理対応表50B等が格納されている。
【0039】
[計測装置]
図3は、実施の形態1の計測装置3の構成を示す。計測装置3は、運動センサ20、収容部301、計測部302、通信部303等を有する。収容部301は、運動センサ20が接続されている運動センサインタフェース部311、運動センサ20を制御する運動センサ制御部312を有する。計測部302は、運動センサ20及び収容部301を通じて、波形信号を計測し、計測データとして出力する。計測部302は、計測データを得るタスク計測部321を含む。通信部303は、通信インタフェースを有し、異常データ処理システム1と通信して計測データを異常データ処理システム1へ送信する。運動センサインタフェース部311は、アナログデジタル変換回路を含み、運動センサ20により検出されたアナログ波形信号を、サンプリングによりデジタル波形信号に変換する。そのデジタル波形信号は、運動センサ制御部312に入力される。
【0040】
なお、計測装置3で各計測データを記憶手段に保持する形態としてもよいし、計測装置3では各計測データを保持せずに異常データ処理システム1のみで保持する形態としてもよい。
【0041】
[端末装置]
図4は、実施の形態1の端末装置4の構成を示す。端末装置4は、制御部401、記憶部402、通信部403、入力機器404、表示機器405を有する。制御部401は、ソフトウェアプログラム処理に基づいた制御処理として、異常データ検出結果表示,異常データ処理内容表示,異常データ処理内容実行,等を行う。記憶部402は、異常データ処理システム1から得た,ユーザ情報,タスクデータ,計測データ,解析評価データ,異常データ検出結果,異常データ処理内容,等を格納する。通信部403は、通信インタフェースを有し、異常データ処理システム1と通信して異常データ処理システム1から各種データを受信し、異常データ処理システム1へユーザ指示入力情報等を送信する。入力機器404はキーボードやマウス等がある。表示機器405は、表示画面406に各種情報を表示する。なお、表示機器405をタッチパネルとしてもよい。
【0042】
[手指、運動センサ、指タップ計測]
図5は、ユーザの手指に運動センサ20である磁気センサが装着された状態を示す。運動センサ20は、計測装置3に接続されている信号線23を通じて、対になるコイル部である、発信コイル部21と受信コイル部22とを有する。発信コイル部21は、磁場を発生し、受信コイル部22は、その磁場を検知する。
図5の例では、ユーザの右手において、親指の爪付近に発信コイル部21が装着されており、人差し指の爪付近に受信コイル部22が装着されている。装着する指は他の指に変更可能である。装着する箇所は爪付近に限らず可能である。
【0043】
図5のように、ユーザの対象手指、例えば左手の親指と人差し指との二指に、運動センサ20を装着した状態とする。ユーザは、その状態で、二指の開閉の繰り返しの運動である指タップを行う。指タップでは、二指を閉じた状態、即ち二指の指先が接触した状態と、二指を開いた状態、即ち二指の指先を開いた状態との間で遷移する運動が行われる。その運動に伴い、二指の指先間の距離に対応する、発信コイル部21と受信コイル部22とのコイル部間の距離が変化する。計測装置3は、運動センサ20の発信コイル部21と受信コイル部22との間の磁場変化に応じた波形信号を計測する。
【0044】
指タップは、詳しくは以下の各種類のタスクが含まれる。その運動は、例えば、片手フリーラン、片手メトロノーム、両手同時フリーラン、両手交互フリーラン、両手同時メトロノーム、両手交互メトロノーム等が挙げられる。片手フリーランは、片手の二指でできる限り素早く何回も指タップを行うことを指す。片手メトロノームは、片手の二指で一定のペースの刺激に合わせて指タップを行うことを指す。両手同時フリーランは、左手の二指と右手の二指とで同じタイミングで指タップを行うことを指す。両手交互フリーランは、左手の二指と右手の二指とで交互のタイミングで指タップを行うことを指す。
【0045】
[運動センサ制御部及び指タップ計測]
図6は、計測装置3の運動センサ制御部312等の詳細構成例を示す。運動センサ20において、発信コイル部21と受信コイル部22との間の距離Dを示す。運動センサ制御部312は、交流発生回路312a、電流発生用アンプ回路312b、プリアンプ回路312c、検波回路312d、LPF回路312e、位相調整回路312f、アンプ回路312g、出力信号端子312hを有する。交流発生回路312aには、電流発生用アンプ回路312b及び位相調整回路312fが接続されている。電流発生用アンプ回路312bには、信号線23を通じて、発信コイル部21が接続されている。プリアンプ回路312cには、信号線23を通じて、受信コイル部22が接続されている。プリアンプ回路312cの後段には、順に、検波回路312d、LPF回路312e、アンプ回路312g、出力信号端子312hが接続されている。位相調整回路312fには検波回路312dが接続されている。
【0046】
交流発生回路312aは、所定の周波数の交流電圧信号を生成する。電流発生用アンプ回路312bは、交流電圧信号を所定の周波数の交流電流に変換して発信コイル部21へ出力する。発信コイル部21は、交流電流によって磁場を発生する。その磁場は、受信コイル部22に誘起起電力を発生させる。受信コイル部22は、誘起起電力によって発生した交流電流を出力する。その交流電流は、交流発生回路312aで発生した交流電圧信号の所定の周波数と同じ周波数を持つ。
【0047】
プリアンプ回路312cは、検出した交流電流を増幅する。検波回路312dは、増幅後の信号を、位相調整回路312fからの参照信号312iに基づいて検波する。位相調整回路312fは、交流発生回路312aからの所定の周波数または2倍周波数の交流電圧信号の位相を調整し、参照信号312iとして出力する。LPF回路312eは、検波後の信号を帯域制限して出力し、アンプ回路312gは、その信号を所定の電圧に増幅する。そして、出力信号端子312hからは、計測された波形信号に相当する出力信号が出力される。
【0048】
出力信号である波形信号は、二指の距離Dを表す電圧値を持つ信号となっている。距離Dと電圧値は所定の計算式に基づいて変換可能である。その計算式は、キャリブレーションにより得ることもできる。キャリブレーションでは、例えばユーザが所定長のブロックを対象手の二指で持った状態で計測される。その計測値における電圧値と距離値とのデータセットから、誤差を最小にする近似曲線として、所定の計算式が得られる。また、キャリブレーションによってユーザの手の大きさを把握し、特徴量の正規化等に用いてもよい。実施の形態1では、運動センサ20として上記磁気センサを用い、その磁気センサに対応した計測手段を用いた。これに限らず、加速度センサ、ストレインゲージ、高速度カメラ等の他の検出手段及び計測手段を適用可能である。
【0049】
[処理フロー]
図7は、実施の形態1の人データ計測システムにおける主に異常データ処理システム1により行われる処理全体のフローを示す。
図7は、ステップS1~S10を有する。以下、ステップの順に説明する。
【0050】
(S1) ユーザは、計測システム2を操作する。端末装置4は、表示画面に初期画面を表示する。ユーザは、初期画面で所望の操作項目を選択する。例えば、異常データ検出・処理を行うための操作項目が選択される。端末装置4は、その選択に対応する指示入力情報を異常データ処理システム1へ送信する。また、ユーザは、初期画面で、性別や年齢等のユーザ情報を入力して登録することもできる。その場合、端末装置4は、入力されたユーザ情報を異常データ処理システム1へ送信する。異常データ処理システム1のユーザ情報管理部11は、そのユーザ情報をユーザ情報41に登録する。
【0051】
(S2) 異常データ処理システムのタスク処理部12は、S1の指示入力情報及び指タップのタスクデータ42Aに基づいて、ユーザに対するタスクデータを端末装置4へ送信する。そのタスクデータは、片手フリーラン,両手同時フリーラン,両手交互フリーランなど,手指運動に関する1種類以上のタスクの情報を含む。端末装置4は、受信したタスクデータに基づいて、表示画面に、手指運動のタスク情報を表示する。ユーザは、表示画面のタスク情報に従って手指運動のタスクを行う。計測装置3は、そのタスクを計測し、計測データとして、異常データ処理システム1へ送信する。異常データ処理システム1は、その計測データを計測データ42Bに格納する。
【0052】
(S3) 異常データ処理システムの解析評価部13は、S2の計測データ42Bに基づいて、ユーザの運動機能等の解析評価処理を行い、ユーザの解析評価データ43を作成して、DB40に格納する。解析評価部13は、解析評価処理では、ユーザの計測データ42Bの波形信号に基づいて、特徴量を抽出する。この特徴量には、特徴量リスト50Aに記録されていて,後述する距離波形から算出される特徴量や、速度波形から算出される特徴量等がある。解析評価部13は、抽出した特徴量を、ユーザの年齢等の属性値に基づいて補正してもよい。そして、補正後の特徴量を評価に用いてもよい。
【0053】
(S4) 異常データ処理システム1の結果出力部17は、S3の解析評価データ43に基づいて、端末装置4の表示画面に、解析評価結果情報を出力する。ユーザは、表示画面で、自身の運動機能等の状態を表す解析評価結果情報を確認できる。ステップS4を省略した形態としてもよい。
【0054】
(S5) 異常データ処理システム1の異常データ検出部14内のDB不使用異常データ検出部14Aは,S3の解析評価データ43に基づいて、DBを使わずに異常データを検出する。つまり,過去に蓄積された個別被験者DB45Aや多数被験者DB45Bを参照せずに,当該計測データのみから検出できる異常を検出する。詳細な検出方法は後述する。異常検出理由・処理対応表50Bには,検出する異常検出理由のリストが記録されている。この異常検出理由に基づいて異常データを検出する。この結果は,記憶部40の異常データ検出結果44に格納される。なお,ステップS5を省略して、ステップS6のみを行っても良い。
【0055】
(S6) 異常データ処理システム1の異常データ検出部14のDB使用異常データ検出部14Bは,S3の解析評価データ43,個別被験者DB45A,多数被験者DB45Bを用いて、DBを使いた異常データ検出を行う。つまり,当該計測データを過去の個別被験者や多数被験者のDBと比較することで初めて検出できる異常を検出する。詳細な検出方法は後述する。異常検出理由・処理対応表50Bには,検出する異常検出項目のリストが記録されている。この異常検出項目に基づいて異常データを検出する。この結果は,記憶部40の異常データ検出結果44に格納される。なお,ステップS6を省略して、ステップS5のみを行っても良い。
【0056】
(S7) 異常データ処理システム1の異常データ処理決定部15は,ステップS5およびS6で生成した異常データ検出結果44に基づいて,異常データ処理内容46を決定する。詳細な決定方法は後述する。異常検出理由・処理対応表50Bには,異常データ検出結果44と,異常データ処理内容46の対応表が記録されている。異常データ処理決定部15は,この対応表に基づいて,異常データの処理内容を決定し,異常データ処理内容46に格納する。
【0057】
(S8) 異常データ処理システム1は、解析評価部13により、S5とS6で生成された異常データ検出結果44,および,S7で生成された異常データ処理内容46を表示画面に表示する。ユーザは、表示画面で今回の異常データの検出結果とその処理内容を確認できる。
【0058】
(S9) 異常データ処理システム1は、異常データ処理内容46に基づいて,異常データの処理を実行する。一例として,異常が検出されなかった場合は個別被験者DB45Aおよび多数被験者DB45Bに格納されるが,異常が検出された場合は格納されないという処理が考えられる。他の例としては,通信部105を経由して,異常データ処理内容46を端末装置4に出力して,再計測を要求するという処理が考えられる。詳細な実行方法は後述する。
【0059】
(S10) 異常データ処理システム1は、S9において端末装置4に再計測を要求する場合には,S2に戻って同様に繰り返す。再計測を要求しない場合はフローを終了する。
【0060】
[特徴量]
図8は、特徴量の波形信号の例を示す。
図8の(a)は、二指の距離Dの波形信号を示し、(b)は、二指の速度の波形信号を示し、(c)は、二指の加速度の波形信号を示す。(b)の速度は(a)の距離の波形信号の時間微分により得られる。(c)の加速度は(b)の速度の波形信号の時間微分により得られる。解析評価部13は、計測データ42Bの波形信号から、微分や積分等の演算に基づいて、本例のような所定の特徴量の波形信号を得る。また、解析評価部13は、特徴量から所定の計算による値を得る。
【0061】
図8の(d)は、(a)の拡大で、特徴量の例を示す。指タップの距離Dの最大値Dmaxや、タップインターバルTI等を示す。横破線は、全計測時間における距離Dの平均値Davを示す。最大値Dmaxは、全計測時間における距離Dの最大値を示す。タップインターバルTIは、1回の指タップの周期TCに対応する時間であり、特に極小点Pminから次の極小点Pminまでの時間を示す。その他、距離Dの1周期内の極大点Pmaxや極小点Pmin、後述のオープニング動作の時間T1やクロージング動作の時間T2を示す。
【0062】
以下では、更に、特徴量の詳細例について示す。実施の形態1では、上記距離、速度、加速度の波形から得られる複数の特徴量を用いる。なお、他の実施の形態では、それらの複数の特徴量のうちのいくつかの特徴量のみを用いてもよいし、他の特徴量を用いてもよいし、特徴量の定義の詳細についても限定しない。
【0063】
図9は、特徴量リスト50Aに記録された指タップの特徴量のうち、特徴量[距離]の部分を示す。この関連付けの設定は一例であり、変更可能である。
図9の特徴量リスト50Aにおいて、列として、特徴量分類、識別番号、特徴量パラメータを有する。特徴量分類は、[距離]、[速度]、[加速度]、[タップインターバル]、[位相差]、[マーカー追従]を有する。例えば、特徴量[距離]において、識別番号(1)~(7)で識別される複数の特徴量パラメータを有する。特徴量パラメータの括弧[]内は単位を示す。
【0064】
(1)「距離の最大振幅」[mm]は、距離の波形(
図8の(a))における、振幅の最大値と最小値との差分である。(2)「総移動距離」[mm]は、1回の計測の全計測時間における、距離変化量の絶対値の総和である。(3)「距離の極大点の平均」[mm]は、各周期の振幅の極大点の値の平均値である。(4)「距離の極大点の標準偏差」[mm]は、上記値に関する標準偏差である。
【0065】
(5)「距離の極大点の近似曲線の傾き(減衰率)」[mm/秒]は、振幅の極大点を近似した曲線の傾きである。このパラメータは、主に計測時間中の疲労による振幅変化を表している。(6)「距離の極大点の変動係数」は、振幅の極大点の変動係数であり、単位は無次元量([-]で示す)である。このパラメータは、標準偏差を平均値で正規化した値であり、そのため、指の長さの個人差を排除できる。(7)「距離の局所的な極大点の標準偏差」[mm]は、隣り合う三箇所の振幅の極大点についての標準偏差である。このパラメータは、局所的な短時間における振幅のばらつきの度合いを評価するためのパラメータである。
【0066】
以下、図示を省略して、各特徴量パラメータについて説明する。特徴量[速度]について、以下の識別番号(8)~(22)で示す特徴量パラメータを有する。(8)「速度の最大振幅」[m/秒]は、速度の波形(
図8の(b))における、速度の最大値と最小値との差分である。(9)「オープニング速度の極大点の平均」[m/秒]は、各指タップ波形のオープニング動作時の速度の最大値に関する平均値である。オープニング動作とは、二指を閉状態から最大の開状態にする動作である(
図8の(d))。(10)「クロージング速度の極大点の平均」[m/秒]は、クロージング動作時の速度の最大値に関する平均値である。クロージング動作とは、二指を最大の開状態から閉状態にする動作である。(11)「オープニング速度の極大点の標準偏差」[m/秒]は、上記オープニング動作時の速度の最大値に関する標準偏差である。(12)「クロージング速度の極大点の平均」[m/秒]は、上記クロージング動作時の速度の最大値に関する標準偏差である。
【0067】
(13)「エネルギーバランス」[-]は、オープニング動作中の速度の二乗和と、クロージング動作中の速度の二乗和との比率である。(14)「総エネルギー」[m2/秒2]は、全計測時間中の速度の二乗和である。(15)「オープニング速度の極大点の変動係数」[-]は、オープニング動作時の速度の最大値に関する変動係数であり、標準偏差を平均値で正規化した値である。(16)「クロージング速度の極大点の平均」[m/秒]は、クロージング動作時の速度の最小値に関する変動係数である。
【0068】
(17)「ふるえ回数」[-]は、速度の波形の正負が変わる往復回数から、大きな開閉の指タップの回数を減算した数である。(18)「オープニング速度ピーク時の距離比率の平均」[-]は、オープニング動作中の速度の最大値の時の距離に関する、指タップの振幅を1。0とした場合の比率に関する平均値である。(19)「クロージング速度ピーク時の距離比率の平均」[-]は、クロージング動作中の速度の最小値の時の距離に関する、同様の比率に関する平均値である。(20)「速度ピーク時の距離比率の比」[-]は、(18)の値と(19)の値との比である。(21)「オープニング速度ピーク時の距離比率の標準偏差」[-]は、オープニング動作中の速度の最大値の時の距離に関する、指タップの振幅を1。0とした場合の比率に関する標準偏差である。(22)「クロージング速度ピーク時の距離比率の標準偏差」[-]は、クロージング動作中の速度の最小値の時の距離に関する、同様の比率に関する標準偏差である。
【0069】
特徴量[加速度]について、以下の識別番号(23)~(32)で示す特徴量パラメータを有する。(23)「加速度の最大振幅」[m/秒2]は、加速度の波形(
図8の(c))における、加速度の最大値と最小値との差分である。(24)「オープニング加速度の極大点の平均」[m/秒2]は、オープニング動作中の加速度の極大値の平均であり、指タップの1周期中に現れる4種類の極値のうちの第1値である。(25)「オープニング加速度の極小点の平均」[m/秒2]は、オープニング動作中の加速度の極小値の平均であり、4種類の極値のうちの第2値である。(26)「クロージング加速度の極大点の平均」[m/秒2]は、クロージング動作中の加速度の極大値の平均であり、4種類の極値のうちの第3値である。(27)「クロージング加速度の極小点の平均」[m/秒2]は、クロージング動作中の加速度の極小値の平均であり、4種類の極値のうちの第4値である。
【0070】
(28)「接触時間の平均」[秒]は、二指の閉状態における接触時間の平均値である。(29)「接触時間の標準偏差」[秒]は、上記接触時間の標準偏差である。(30)「接触時間の変動係数」[-]は、上記接触時間の変動係数である。(31)「加速度のゼロ交差数」[-]は、指タップの1周期中に加速度の正負が変わる平均回数である。この値は理想的には2回となる。(32)「すくみ回数」[-]は、指タップの1周期中に加速度の正負が変わる往復回数から、大きな開閉の指タップの回数を減算した値である。
【0071】
特徴量[タップインターバル]について、以下の識別番号(33)~(41)で示す特徴量パラメータを有する。(33)「タップ回数」[-]は、1回の計測の全計測時間中の指タップの回数である。(34)「タップインターバル平均」[秒]は、距離の波形における前述のタップインターバル(
図8の(d))に関する平均値である。(35)「タップ周波数」[Hz]は、距離の波形をフーリエ変換した場合に、スペクトルが最大になる周波数である。(36)「タップインターバル標準偏差」[秒]は、タップインターバルに関する標準偏差である。
【0072】
(37)「タップインターバル変動係数」[-]は、タップインターバルに関する変動係数であり、標準偏差を平均値で正規化した値である。(38)「タップインターバル変動」[mm2]は、タップインターバルをスペクトル分析した場合の、周波数が0。2~2。0Hzの積算値である。(39)「タップインターバル分布の歪度」[-]は、タップインターバルの頻度分布における歪度であり、頻度分布が正規分布と比較して歪んでいる程度を表す。(40)「局所的なタップインターバルの標準偏差」[秒]は、隣り合う三箇所のタップインターバルに関する標準偏差である。(41)「タップインターバルの近似曲線の傾き(減衰率)」[-]は、タップインターバルを近似した曲線の傾きである。この傾きは、主に計測時間中の疲労によるタップインターバルの変化を表す。
【0073】
特徴量[位相差]について、以下の識別番号(42)~(45)で示す特徴量パラメータを有する。(42)「位相差の平均」[度]は、両手の波形における、位相差の平均値である。位相差は、右手の指タップの1周期を360度とした場合に、右手に対する左手の指タップのズレを角度として表した指標値である。ズレが無い場合を0度とする。(42)や(43)の値が大きいほど、両手のズレが大きく不安定であることを表している。(43)「位相差の標準偏差」[度]は、上記位相差に関する標準偏差である。(44)「両手の類似度」[-]は、左手と右手の波形に相互相関関数を適用した場合に、時間ずれが0の場合の相関を表す値である。(45)「両手の類似度が最大となる時間ずれ」[秒]は、(44)の相関が最大となる時間ずれを表す値である。
【0074】
特徴量[マーカー追従]について、以下の識別番号(46)~(47)で示す特徴量パラメータを有する。(46)「マーカーからの遅延時間の平均」[秒]は、周期的なマーカーで示す時間に対する指タップの遅延時間に関する平均値である。マーカーは、視覚刺激、聴覚刺激、触覚刺激等の刺激と対応している。このパラメータ値は、二指の閉状態の時点を基準とする。(47)「マーカーからの遅延時間の標準偏差」[秒]は、上記遅延時間に関する標準偏差である。
【0075】
[DB不使用異常データ検出]
異常データ処理システム1の異常データ検出部14で行われるDB不使用異常データ検出部14Aについて説明する。DB不使用異常データ検出部14Aでは,個別被験者DB45Aおよび多数被験者DB45Bを参照せずに,計測データのみから異常か否かを判定する。具体的には下記の異常検出項目が挙げられる。異常データ検出部14では、本来想定されるデータの特徴と、取得されたデータの特徴に不一致がある場合に、取得されたデータを異常データとして検出する。検出には取得された計測データ自体、あるいは、計測データから得られる上述の各種特徴量を用いることができる。異常検出項目に対応する異常データを検出した異常データ検出部14は、検出した異常データに対応した処理を行なう。
【0076】
図10は、異常データを検出した際に得られる信号波形の例を示す。
(E1)ユーザが誤って同一のタスクを連続して計測した場合
同一のタスクに対応する複数のデータが入力された場合、異常データとして検出する。対応する処理として、端末装置4の画面上でユーザに1回目と2回目のどちらを用いるか問いかけて,データを選択する。もしくは,2回目は繰り返し計測することによる練習効果が生じると考えて,練習効果が含まれない1回目を常に用いると決めても良い。また,1回目は計測に不慣れなことから計測に失敗している可能性があると考えて,2回目を常に用いると決めても良い。また,解析評価データ43に格納された特徴量を参照して,出来が良い方を用いるとしても良い。
【0077】
(E2)片手の指タップの計測時に誤って両手の指タップを選択していた場合
これは,ユーザは片手の指タップを計測する意図で運動をしたものの,実際はシステム上では両手の指タップが選択されて計測データが記録されている場合である。各々の手の計測データについて,運動が実施されていない時間(以下,「運動不実施時間」という)を算出する。運動不実施時間は,前述の特徴量を使って求められる。例えば,単位時間あたりの(2)「総移動距離」が所定の値TDc以下であった時間帯と定義する。この定義以外でも,(14)「総エネルギー」や(33)「タップ回数」が所定の値以下であるとしても良い。そして,片方の手においてのみ,運動不実施時間が所定の値Tc以上となった場合は,両手のタスクであるのに誤って片手のみのタスクを行ったと判定し,異常データとして検出される。Tcは,例えば,計測時間の3分の2などと予め決めることが出来る。この場合,計測時間が15秒間の場合は,運動不実施時間が10秒以上となった場合に異常データと検出される。このように異常データと検出された場合,運動不実施時間があった方の手のデータは無視して,もう一方の手だけのデータからなる片手タスクの計測データとして扱う。なお,自動的に処理せずに,端末装置4の画面上でユーザまたは管理者に問いかけて確認しても良い。
【0078】
(E3)両手の指タップの計測時に誤って片手の指タップを選択していた場合
これは,ユーザは両手の指タップを計測する意図で運動をしたものの,実際はシステム上では片手の指タップが選択されて計測データが記録されている場合である。後述するように
図12のタスク計測画面では,片手の指タップを行った場合は片方の手の波形しかユーザに提示されないが,計測装置3では両手の計測データを取得していることから,バックグラウンドで両手の計測データを保存しておく。この両手の計測データの各々の手について,前項のように運動不実施時間を算出する。もし両手ともに運動不実施時間が所定の値Tc未満であった場合,ユーザは両手タスクを行っていたと判定することができる。そして,ユーザに提示しなかった方の手のデータも使って,両手タスクの計測データとして扱う。なお,自動的に処理せずに,画面上でユーザまたは管理者に問いかけて確認しても良い。
【0079】
(E4)両手同時フリーランの計測時に誤って両手交互フリーランを選択していた場合
これは,ユーザは両手同時フリーランを計測する意図で運動をしたものの,計測システム2は両手交互フリーランをユーザに指示していた場合である。この異常を検出するには,解析評価データ43に格納された特徴量のうち,両手の協調性を評価する特徴量を利用する。例えば,(42)「位相差の平均」は,両手が完全に揃って動かされた理想的な両手同時フリーランでは0°となる一方で,両手が完全に交互に動かされた理想的な両手交互フリーランでは180°となる。このことから,(42)「位相差の平均」が所定の値(例えば,90°)未満となった場合は,たとえ両手交互フリーランが選択されていたとしても,ユーザは両手同時フリーランを意図して運動していたと看做すことができる。つまり,両手同時フリーランの計測時に誤って両手交互フリーランが選択されていたと考えて,計測後に両手同時フリーランの計測データであるとタスクデータ42Aを変更する。この場合は,自動的に処理せずに,画面上でユーザに問いかけて確認しても良い。他の特徴量を用いる例として,(44)「両手の類似度」が所定の値(例えば,0)以上になった場合は両手同時フリーランと看做したり,(45)「両手の類似度が最大となる時間ずれ」の絶対値が所定の値(例えば,(34)「タップインターバル平均」×0。25)未満になった場合に両手同時フリーランと看做したりしても良い。なお,ユーザは両手同時フリーランを行っているつもりであるが,両手を揃えて動かすことが出来ず,両手交互フリーランに近い計測データが得られている場合がある。この場合は,自動的に異常データと処理せずに,画面上でユーザまたは管理者に問いかけて確認しても良い。
【0080】
(E5)両手交互フリーランの計測時に誤って両手同時フリーランを選択していた場合
これは,前項と反対で,ユーザは両手交互フリーランを計測する意図で運動をしたものの,計測システム2は両手同時フリーランをユーザに指示していた場合である。前項と同様に指タップの特徴量を基準に判定できる。(42)「位相差の平均」が所定の値(例えば,両手同時フリーランにおける理想値0°と両手交互フリーランにおける理想値180°との中間値である90°)以上となった場合は,たとえ両手同時フリーランが選択されていたとしても,ユーザは両手交互フリーランを意図して運動していた可能性がある。つまり,両手交互フリーランの計測時に誤って両手同時フリーランが選択されていたと考えて,計測後にタスクデータ42Aを両手同時フリーランに変更する。他の特徴量を用いる例として,(44)「両手の類似度」が所定の値(例えば,0)未満になった場合は両手同時フリーランと看做したり,(45)「両手の類似度が最大となる時間ずれ」が所定の値(例えば,(34)「タップインターバル平均」×0。25)以上になった場合に両手同時フリーランと看做したりしても良い。なお,ユーザは両手交互フリーランを行っているつもりであるが,両手が揃って動いてしまい,両手同時フリーランに近い計測データが得られている場合がある。この場合は,自動的に異常データと処理せずに,画面上でユーザまたは管理者に問いかけて確認しても良い。
【0081】
(E6)計測中に2指が交差した場合
これは,指タップ運動の計測中に親指と人差し指が交差することで,2指間距離が異常値になる場合である。運動センサ20に磁気センサを用いる場合,その性質上,
図10(a)に示したように2指が交差した時間帯で2指間距離が非常に大きな値に推定されてしまうことがある。この異常を検出するには,解析評価データ43に格納された特徴量の中で,波形振幅を表す特徴量を用いる。例えば,(1)「距離の最大振幅」が,所定の値(例えば,多くの人の2指間距離よりも大きい値として20cm),または,計測前に予め計測しておいた2指間距離の最大値よりも大きい場合は,2指が交差する異常が発生したと看做すことができる。また,特徴量を算出する前の計測データ42B(生の波形データ)において2指間距離の最大値よりも大きい時間帯を抽出することで,異常が発生した時間帯を特定することができる。なお,2指が交差したという現象も指タップの運動の性質の一部であるので,異常データと看做さずに排除しない方がよい場合もある。この場合は,自動的に異常データと処理せずに,画面上でユーザまたは管理者に問いかけて確認しても良い。
【0082】
(E7)計測中に指から運動センサが外れた場合
これは,計測中に指から運動センサが外れたことで,2指間距離が異常値となる場合である。運動センサが外れると,
図10(b)に示したように2指間距離が非常に大きな値に推定される。前項と同様に,(1)「距離の最大振幅」などの波形振幅を表す特徴量が,所定の値または2指間距離の最大値よりも大きい場合で,かつ,それが計測の最後まで持続した場合に,運動センサが指から外れたと看做すことができる。この状態が計測終了時まで持続したことは,前項と同様に,計測データにおいて2指間距離の最大値よりも大きい時間帯を抽出することで判定することができる。なお,所定の計測時間が終了しなくても,運動センサが指から外れたと判定されたときに,リアルタイムに即時に計測を終了して,再計測を促しても良い。
【0083】
(E8)計測時間の途中から運動を開始した場合
これは,ユーザが計測開始の合図を正しく理解せずに,計測時間の途中から運動を開始した場合である。
図10(c)のように,計測の最初に運動不実施時間がある場合に,この異常が生じたと判定することができる。運動不実施時間の有無の判定は,前述の方法で実現できる。また,計測時間を所定の数(例えば,5つ)のセグメントで区切って,各セグメントにおいて指タップの特徴量を算出し,セグメント間で特徴量を比較したときに,特徴量の値が明らかに他のセグメントとは異なるセグメントがあったときに,この異常が起こったと判定することができる。例えば,15秒間の計測時間を5つに区切ると各3秒のセグメントができる。これらのセグメントに対して,それぞれ(33)「タップ回数」を算出したときに,最初のセグメントから順に,0回,5回,5回,5回,4回という値が得られたとする。この場合に,これらの5個の特徴量の平均値から,運動の大きさが低下する方向に標準偏差N個分以上(例えば,N=2)離れているセグメントの有無を調べると,1番目のセグメントの0回が該当する。このようにして,運動不実施時間の有無を求めることも出来る。
【0084】
(E9)計測時間の途中で運動を終了した場合
これは,ユーザが計測終了の前に誤って運動を終了した場合である。
図10(d)のように,計測の最後に運動不実施時間がある場合に,この異常が起こったと検出することができる。運動不実施時間の有無の判定は,前述の方法で実現できる。また,前項のように計測時間をN個のセグメントで区切って運動不実施時間を求める方法でも実現できる。なお,所定の計測時間が終了しなくても,計測時間の途中で運動を終了したと判定されたときに,リアルタイムに即時に計測を終了して,再計測を促しても良い。
【0085】
(E10)計測時間の途中で運動を一時中断した場合
これは,計測の途中でケーブルが絡まったなどの原因で,運動を一時中断した場合である。
図10(e)のように,計測の途中に運動不実施時間がある場合に,この異常が起こったと検出することができる。運動不実施時間の有無の判定は,前述の方法で実現できる。また,前々項のように計測時間をN個のセグメントで区切って運動不実施時間を求める方法でも実現できる。なお,所定の計測時間が終了しなくても,計測時間の途中で運動を中断したと判定されたときに,リアルタイムに即時に計測を終了して,再計測を促しても良い。
【0086】
[DB使用異常データ検出]
異常データ処理システム1の異常データ検出部14で行われるDB使用異常データ検出部14Bについて説明する。DB使用異常データ検出部14Bでは,例えばユーザXの新規データを取得した場合に、ユーザXの過去データを格納した個別被験者DB45Aおよび多数被験者DB45Bを参照することで新規データが異常か否かを判定する。具体的には下記の異常検出項目が挙げられる。
【0087】
(E11)ユーザの意図により運動の性質が変化した場合
これは,ユーザが意図的に不真面目に運動したり,タスクの指示を誤解したりすることによって,運動の出来が低い場合である。これらは,ユーザ自身の過去のDB(個別被験者DB)または多数の被験者の過去のDB(多数被験者DB)と比較して,それとの乖離度が大きい場合に検出することができる。乖離度の算出方法は後述する。
【0088】
(E12)ユーザの体調変化により運動の性質が変化した場合
これは,脳機能や運動機能の低下や極度の疲労によって運動の出来が悪化する場合や,投薬やリハビリテーションの影響で運動の出来が向上する場合が含まれる。これらは,ユーザ自身の過去のDB(個別被験者DB)と比較して,それとの乖離度が大きい場合に検出することができる。乖離度の算出方法は後述する。
【0089】
(E13)他人が当該ユーザになりすました場合
これは,他人がユーザになりすますことで,運動の性質が変化したようにみえる場合である。この場合も,ユーザ自身の過去のDB(個別被験者DB)と比較して,それとの乖離度が大きい場合に検出することができる。乖離度の算出方法は後述する。
【0090】
≪乖離度の算出≫
上記の乖離度の算出方法について説明する。乖離度は,個別被験者DB乖離度算出部14Ba,多数被験者DB乖離度算出部14Bb,合成乖離度算出部14Bcによって算出される。
【0091】
まず,個別被験者DB乖離度算出部14Ba,多数被験者DB乖離度算出部14Bbに共通する乖離度の算出方法について説明する。指タップ運動の特徴量をN個(N≧1)選択し,DB(個別被験者DB45Aまたは多数被験者DB45B)について,N次元空間におけるデータ分布を生成する。このデータ分布の平均をM(=[m1,m2,・・・,mN])とし,標準偏差をΣ(=[σ1,σ2,・・・,σN])とする。そして,異常データ検出の対象となる当該データはA(=[a1,a2,・・・,aN])とする。このとき,乖離度d=|(A-M)/Σ|として求められる。ここで||とは,ベクトルの絶対値(二乗和の平方根)を示している。dが所定の値dcより大きければ,DBから十分に乖離していると判定される。例えば,dc=1であれば,当該計測データは,DB内の平均に近いデータの68。3%から外れていると言える。同様に,dc=2であれば95。5%,dc=3であれば99。7%から外れていると言える。つまり,厳格に異常データ検出をしたい場合はdcを小さい値とし,緩やかに異常データ検出を行いたい場合はdcを大きい値に設定すれば良い。なお,乖離度の定義は,上述の方法以外でもよく,DBから離れていることを意味する指標であれば良い。
【0092】
なお,上述の乖離度の算出では,指タップ運動の特徴量をそのまま用いたが,特徴量を加工して新たな指標を作成しても良い。例えば,全ての特徴量を対象に主成分分析を適用し,寄与率の高い主成分N個を用いても良い。
【0093】
指タップ運動の特徴量の変化を見ることで,運動の出来が悪化したか向上したかを特定することはできる。例えば,(2)「総移動距離」や(14)「総エネルギー」や(33)「タップ回数」が個別被験者DBの平均よりも小さければ,運動の出来が低下したと分かる。反対に,これらの特徴量が個別被験者DBの平均よりも大きければ,運動の出来が向上したと分かる。
【0094】
なお,運動の出来が変化する原因を特定するために,脳機能や運動機能の低下の有無,疲労の有無,投薬やリハビリテーションなどの治療の有無について,計測前にユーザが入力する画面を設けても良い。その場合は,個別被験者DB45Aと比較して運動の出来が悪化または向上した場合の異常検出理由(
図15の説明で後述)として,その入力内容を参照してもよい。そうすることで,異常データが検出された理由のユーザに対する説得力を高めることができる。
【0095】
≪乖離度の合成≫
上述の方法で,個別被験者DB乖離度算出部14Baおよび多数被験者DB乖離度算出部14Bbにおいては,当該計測データの個別被験者DB45Aまたは多数被験者DB45Bからの乖離度を算出することができる。この点,個別被験者DB45Aは,当該ユーザのデータの個性を反映した異常データ検出が可能であるので,正確な異常データ検出のためには個別被験者DB45Aを使うことが望ましい。具体的には,
図11(a)で示すように,★で示したデータ1とデータ2はユーザAの個別被験者DB45Aからの乖離度は等しく,両者とも異常データと正しく検出される。しかし,当該ユーザが既に何回も計測を実施している場合は個別被験者DB45Aを使うことが可能であるものの,初回もしくは少ない回数しか計測を実施していない場合は個別被験者DB45Aが十分蓄積されていないため,多数被験者DB45Bを使う必要がある。なお,
図11~13では,特徴量2個からなる2次元空間と考えてDBや異常データを模式的に示しているが,特徴量は1個でも3個以上でも良く,用いる特徴量の数に応じた多次元空間と考える。
【0096】
多数被験者DB45Bを使う場合は,当該ユーザ以外のユーザのデータを予め蓄積しておけばよいことから,DBを準備しやすいことが利点である。しかし,多数被験者DB45Bは多数のユーザのデータの集合体であり,当該ユーザのデータの特性が反映されていないことから,個別被験者DB45Aを使う場合と比較して異常データ検出が不正確になる可能性があるという欠点もある。具体的には,
図11(b)で示すように,★で示したデータ1とデータ2は,多数被験者DB45Bからの乖離度が異なり,データ2は異常データと正しく検出されるが,データ1は異常データと検出されないという問題が生じる。以上の問題意識から,個別被験者DB45Aと多数被験者DB45Bの長所と短所を補い合って,両者のDBを併用する技術が必要であると考えられる。
【0097】
そこで,個別被験者DB45Aの乖離度と多数被験者DB45Bの乖離度のどちらかを選択して用いるのではなく,両者を合成して新しい乖離度(合成乖離度)を算出することとする。合成乖離度を用いることで,個別被験者DB45Aと多数被験者DB45Bのどちらか一方を用いる際の長所と短所を補い合った異常データ検出が可能になると考えられる。
【0098】
合成乖離度は,合成乖離度算出部14Bcで算出される。合成乖離度dsは,
図12(a)で示されるように,個別被験者DB信頼係数cと,個別被験者DB乖離度d1と多数被験者DB乖離度d2を用いて算出される。個別被験者DB信頼係数cとは,個別被験者DB45Aを信頼できる度合いを示した指標で,
図12(b)に示すように0.0から1.0の値である。個別被験者DB45Aのデータ数が0のときは0.0で,データが増えるに従って徐々に1.0に近づいていく。個別被験者DB信頼係数cとデータ数kの関係を表す式は,データ数が増えるに伴ってcが増大する関係にあれば何でも良い。例えば,
図12(b)のようにシグモイド関数を用いて,c=1/(1+exp(-α(k-β)))+γと設定できる(例えば,α=0.1,β=50)。ここで,個別被験者DBをデータ数が少ない段階で信頼する場合はαを大きい値とし,データ数が大きくなった段階で信頼する場合はαを小さい値と設定すれば良い。βおよびγは,k=0のときにc=0となるように調整すれば良い。このように定義されたcを用いて,合成乖離度dsはds=d1×c+d2×(1.0-c)と定義される。そして,dsが所定の値dcより大きければ,DBから十分に乖離していると判定される。すなわち,個別被験者DB信頼係数cは個別被験者DB乖離度d1の重みであり,個別被験者DB45Aのデータ数が増えると増加する。なお,個別被験者DB乖離度d1および多数被験者DB乖離度d2には,次に説明する経時減衰乖離度を用いても良い。
【0099】
≪時系列を考慮した乖離度の算出≫
個別被験者DB乖離度算出部14Baにおいて,個別被験者DB45Aからの乖離度を算出する場合に,DB内のデータの時系列の関係も考慮して算出される乖離度(以下,経時減衰乖離度と呼ぶ)を求める方法を説明する。個別被験者DB45Aのデータは,ユーザが定期的に計測することで経時的に蓄積されている。しかし,ユーザの健康状態は,加齢や認知機能低下や運動機能低下などによって日々変化している。そのため,異常データを検出するにあたっては,直近のデータほど信頼性が高く,過去に遡るほど信頼性が低くなると考えられる。具体的には,
図13(a)のように,個別被験者DB45A内のデータが1⇒2⇒3と経時的に推移しているとき,4aと4bはDBの平均からの乖離度は同じであるが,4aは直近のデータである3から遠いため異常と判定されるべきだが,4bは直近のデータである3に近いので異常と判定されるべきではない。
【0100】
そこで,個別被験者DB乖離度d1は,
図13(b)のように,直近のデータに重み付けを大きくし,過去に遡ったデータほど重み付けを小さくして算出される経時減衰乖離度を用いることとする。具体的には,個別被験者DB45A内のデータをBi(=[bi1,bi2,・・・,biN],i=1~k(個別被験者DB45A内のデータ数))として,新規データの取得時から遡った時間tiに応じて,過去データ信頼度qi=ptiを定義する(0.0<p<1.0)。そして,個別被験者DB45A内のデータ分布の平均は,M=q1B1+q2B2+・・・+qkBkと定義する。このようにMを定義すると,直近のデータほど高く信頼し,過去に遡るほど信頼しないことになる。さらに,このMを用いて,DB内のデータ分布の標準偏差Σは,Σ=((q1B1-M)2+(q2B2-M)2+・・・+(qkBk-M)2)/kと定義できる。個別被験者DB乖離度d1は,前述の通り,これらのMとΣを使ってd=|(A-M)/Σ|として求められる。
【0101】
上述の時系列を考慮した乖離度は,個別被験者DB45Aを念頭において説明したが,多数被験者DB45Bにおいても同様の計算を行うことができる。つまり,多数被験者DB45Bの中の個々の被験者に対して上述の時系列を考慮した乖離度を算出し,それらの平均を算出することで,多数被験者DB乖離度d2を算出しても良い。
【0102】
[異常データ処理決定]
異常データ処理決定部15は,異常データ処理システム1のDB不使用異常データ検出部14AおよびDB使用異常データ検出部14Bで検出された異常データを処理する。
図14で示した管理表50内の異常検出理由・処理対応表50Bには,異常データ処理システム1の異常データ検出部14で行われるDB不使用異常データ検出部14AおよびDB使用異常データ検出部14Bの異常項目が表形式で格納されている。これは,異常データ処理システム1の構築時に予め与えても良いし,異常データ処理システム1の管理者が設定可能としてもよい。処理の欄には複数の処理が記載されているが,実際はこのうち1つを選択して設定しておく。異常データ処理決定部15は,異常検出理由・処理対応表50Bに基づいて,DB不使用異常データ検出部14AおよびDB使用異常データ検出部14Bで検出された異常検出項目に対応した処理を行う。
【0103】
[異常データ処理の実行]
異常データ処理実行部16は,異常データ処理決定部15で決定された異常データ処理内容46を実行する。計測データを不使用とする場合は,個別被験者DB45Aおよび多数被験者DB45Bにデータは登録しないこととする。再計測を行う場合は,通信部105を経由して,端末装置4に再計測という異常データ処理内容46を伝える。端末装置4はこれを受けて,計測装置3と連携して,再計測を実施する。ユーザにデータの取り扱いを問い合わせる場合は,通信部105を経由して,端末装置4に問い合わせ内容を伝える。端末装置4は,画面上に問合せ内容を表示し,ユーザが画面を見て回答する。ユーザ回答内容は,通信部105を経由して,異常データ処理システムに送信される。異常データ処理実行部16はユーザ回答内容に基づいて,処理を実行する。
【0104】
[表示画面(1)-メニュー]
図15は、端末装置4の表示画面の例として、サービスの初期画面であるメニュー画面の例を示す。このメニュー画面では、ユーザ情報欄1501、操作メニュー欄1502、設定欄1503等を有する。
【0105】
ユーザ情報欄1501では、ユーザによりユーザ情報を入力して登録可能である。なお、電子カルテ等に入力済みのユーザ情報が存在する場合、そのユーザ情報と連携するようにしてもよい。入力可能なユーザ情報の例として、ユーザID、氏名、生年月日または年齢、性別、利き手、疾患/症状、メモ等がある。利き手は、右手、左手、両手、不明、等から選択入力可能である。疾患/症状は、例えばリストボックスの選択肢から選択入力可能としてもよいし、任意のテキストで入力可能としてもよい。病院等で本システムを利用する場合、ユーザではなく医師等がユーザの代わりに入力を行うようにしてもよい。本異常データ処理システムは、ユーザ情報の登録が無い場合にも適用可能である。
【0106】
操作メニュー欄1502では、サービスが提供する機能の操作項目を表示する。操作項目は、「キャリブレーション」、「手指運動の計測」、「異常データ検出・処理」、「終了」等を有する。「キャリブレーション」の選択の場合、前述のキャリブレーション、即ちユーザの手指に対する運動センサ20等の調整に係わる処理が行われる。調整済みか否かの状態も表示される。「手指運動の計測」の選択の場合、指タップなどの手指運動のタスクを計測するためのタスク計測画面に遷移する。「異常データ検出・処理」の選択の場合、計測されたデータを対象として異常を検出し,その異常データ検出結果を表示し、検出された異常データの処理を実施する画面に遷移する。「終了」の選択の場合、本サービスを終了する。
【0107】
設定欄1503では、ユーザ設定が可能である。例えば、ユーザまたは計測者または管理者が検出を希望する異常検出項目の種類がある場合には、選択肢からその異常検出項目を選択して設定可能である。また,各々の異常検出項目に対応した処理を選択することが出来る。また,異常データ検出の閾値なども設定可能である。これらの設定内容は通信部105を通して異常データ処理システム1に送られ,異常データ処理システム1はここで指定された設定を参照して異常データを検出・処理する。
【0108】
[表示画面(2)-タスク計測]
図16は、他の例として、タスク計測画面を示す。この画面では、タスク情報を表示する。例えば、左右の手それぞれについて、横軸に時間、縦軸に二指の距離をとったグラフ1600を表示する。画面には、タスク内容を説明するための他の教示情報を出力してもよい。例えば、タスク内容を映像音声で説明するビデオの領域を設けてもよい。画面内には、「計測開始」、「計測やり直し」、「計測終了」、「保存(登録)」等の操作ボタンを有し、ユーザが選択できる。ユーザは、画面のタスク情報に従い、「計測開始」を選択して、タスクの運動を行う。計測装置3は、タスクの運動を計測して波形信号を得る。端末装置4は、計測中の波形信号に対応する計測波形1602をリアルタイムでグラフ1600上に表示する。ユーザは、運動後、「計測終了」を選択し、確定する場合には「保存(登録)」を選択する。計測装置3は、計測データを異常データ処理システム1へ送信する。
【0109】
[表示画面(3)-評価結果]
図17は、他の例として、評価結果画面を示す。本画面では、タスクの解析評価結果情報が表示される。タスクの解析評価後、自動的に本画面が表示される。本例では、A~Eの5個の指タップ運動の特徴量について、レーダーチャート形式のグラフで表示する場合を示す。実線の枠線1701は、今回のタスク計測後の解析評価結果を示す。特徴量をレーダーチャートで表示する方式に限らず、所定の形式のグラフ等で表示する方式としてもよい。特徴量は、成績スコア(例えば100点満点)等の形式で換算して表示してもよい。特徴量のグラフの他に、解析評価結果に関する評価コメント等を表示してもよい。解析評価部13はその評価コメントを作成する。例えば、「(B),(E)は良好です」等のメッセージが表示される。画面内に、「過去の結果を重ね書きする」、「異常データ検出・処理へ進む」、「終了」等の操作ボタンを有する。異常データ処理システムは、「異常データ検出・処理へ進む」が選択された場合、異常データ検出・処理画面へ遷移させ、「終了」が選択された場合、初期画面へ遷移させる。
【0110】
[表示画面(3)-異常データ検出・処理]
図18は、他の例として、異常データ検出・処理画面を示す。本画面では、異常データ処理システム1から送られた,異常データ検出結果44,および,その異常データ処理内容46が表示される。
図11の「異常データ検出・処理」ボタン,または,
図18の「異常データ検出・処理へ進む」ボタンが押された後に,本画面が表示される。本画面では,ユーザ情報や計測データ情報などの基本情報が示された上で,異常データ検出結果が表示される。計測データに異常が検出された場合は「異常」と表示され,異常が検出されなかった場合は「異常なし」と表示される。さらに,「異常」と判定された場合は,その異常データ検出理由が示される。異常データ検出理由は,異常データ処理システム1から送られた異常データ検出結果44に含まれている。本図では,DB不使用異常データ検出14Aの一例として,「計測時間0~3秒で運動が行われなかったため。」という例が示されている。その下には指タップ運動の波形を提示して,異常データ検出理由を視覚的に分かりやすく説明している。さらにその下に,この異常データ検出理由に対応した,推奨される処理が示される。本図では,「再計測する」と例示している。この異常データ検出理由と処理の対応表は,管理表50内の異常検出理由・処理対応表50Bに記録されている。ユーザまたは計測者または管理者は,本図で示された推奨される処理を実行する場合は「推奨される処理を実行」ボタンを選択し,実行を希望しない場合は「推奨される処理を実行しない」ボタンを選択する。なお,このようにユーザまたは計測者または管理者に処理を実行させるか否かを選択させずに,異常データ処理システム1が自動的に処理を実行して,事後にその処理結果を知らせてもよい。
【0111】
図19は、異常データ検出・処理画面のもう一つの例を示す。本図では,DB使用異常データ検出14Bの一例として,異常データ検出理由を「過去の個人DBから逸脱していたため。」としている。そして,この異常データ検出理由に対応した推奨される処理として,「DBにデータを登録しない」と例示している。
[効果等]
実施の形態1の異常データ処理システム1によれば、個別被験者DB45Aと多数被験者DB45Bの両方のDBを用いることで,精度の高い異常データ処理を実現できる。これは。個別被験者DB45Aのデータ数が不足しているときの精度低下は多数被験者DB45Bの重み付けを高めることでカバーでき,また,多数被験者DB45Bを用いた場合に個人差を反映できないことによる精度低下は個別被験者DB45Aの重み付けを高めることによってカバーできるためである。
【実施の形態2】
【0112】
図20~
図26を用いて、本発明の実施の形態2の異常データ処理システムについて説明する。実施の形態2の基本的な構成は、実施の形態1と同様であり、以下、実施の形態2の構成における実施の形態1の構成とは異なる部分について説明する。
【0113】
[システム(2)]
図20は、実施の形態2の異常データ処理システムを含む,人データ計測システムを示す。この人データ計測システムは,病院や高齢者施設,ユーザ自宅等に設置される。実施の形態2の異常データ処理システムは、タブレット型指タップ運動計測システムである計測システムを用いる。この計測装システムは、タブレット端末である端末装置5により構成される。実施の形態2では、端末装置5に備えるタッチパネルを利用して、運動計測や情報表示を行う。実施の形態2は、実施の形態1の計測装置3の計測機能や端末装置4の表示機能を、1台の端末装置5に統合した形態に相当する。端末装置5は、施設に設置された装置としてもよいし、ユーザが所有する装置としてもよい。
【0114】
端末装置5は、制御部501、記憶部502、通信部505、タッチパネル510等を有し、それらがバスを介して接続されている。タッチパネル510は、表示部511、タッチセンサ512を有する。表示部511は、例えば液晶表示部あるいは有機EL表示部であり、表示画面を有する。タッチセンサ512は、例えば静電容量方式であり、表示画面に対応した領域に配置されている。タッチセンサ512は、表示画面での指の近接や接触の状態に応じた静電容量変化を電気信号として検出し、その検出信号をタッチ検出部521へ出力する。
【0115】
制御部501は、端末装置5の全体を制御し、CPU、ROM、RAM等により構成され、ソフトウェアプログラム処理に基づいて、異常データ処理等を行うデータ処理部500を実現する。データ処理部500の構成は実施の形態1と概略同様である。制御部501は、更に、タッチ検出部521、計測処理部522を有する。制御部501は、タッチパネル510を通じて計測データを得る機能、計測データを処理して解析する機能、タッチパネル510の表示部511の表示画面に情報を出力する機能等を実現する。タッチ検出部521は、タッチセンサ512からの検出信号に基づいて、ユーザの表示画面上での指の近接や接触の状態、指の動きの状態を、タッチ位置座標及びその時系列の信号として検出する処理を行う。計測処理部522は、タッチ検出部521の検出情報を用いて、表示画面上での指の位置や動きを波形信号として計測し、計測データとして得る。この計測データは、計測データ42Bに相当する。データ処理部500は、実施の形態1と同様の処理により、計測データに基づいて異常データ検出や異常データ処理決定を実施し、表示部511の表示画面に表示する。また、データ処理部500は、解析評価データ等を作成し、評価画面等を表示部511の表示画面に表示する。データ処理部500は,ユーザ情報管理部11や,DB不使用異常データ検出部14AとDB使用異常データ検出部14Bから成る異常データ検出部14など,
図2のデータ処理部と同一の機能を有する。記憶部502は,ユーザ情報41,タスクデータ42A,計測データ42B,解析評価データ43,異常データ検出結果44,個別被験者DB45A,多数被験者DB45B,管理表50,異常データ処理内容46など,
図2の記憶部102と同一の機能を有する。
【0116】
[運動、表示画面の例(1)]
図21は、端末装置5の表示画面210上において指タップの運動を行う方式を示す。端末装置5は、この方式を用いたタスクを提供してもよい。この方式では、制御部501は、表示画面210の背景領域上に、両手の対象の二指を配置するための領域211を表示する。対象の二指は、例えば第1指が親指、第2指が人指し指である場合を示す。ユーザは、その領域211に、各手の二指を接触または近接した状態で配置する。タッチセンサ512等に依存するが、本例では、この運動の際、表示画面の領域211に指をタッチした状態を基本的に維持させる。ユーザは、その領域211で二指を開閉する指タップを行う。端末装置5は、タッチセンサ512等を通じて、その指タップの運動を計測し、実施の形態1と同様に波形信号等の計測データを得る。領域211上の第1指の動き212及び第2指の動き213を矢印で示す。二指の指先間の距離Lとして、左手側の距離L1、右手側の距離L2を示す。
【0117】
図22は、
図21の指タップの運動に対応した計測データの例として、二指の距離Lの波形信号を示す。横軸は経過時間t[秒]、縦軸は経過時間t毎の距離L(t)[mm]を示す。なお、波形の部分221は、領域211上から指がある程度離れた状態の時の部分を示す。このように波形が途切れた場合は,領域211上に指がある状態での波形を補間することで連続した波形を得ることが出来る。端末装置5は、上記方式で実施の形態1と同様に、計測データに基づいて特徴量を抽出し、異常データ検出,異常データ処理決定,異常データ処理実行を行い、その結果を提示する。
【0118】
[運動、表示画面の例(2)]
図23は、別の指タップの運動及び表示画面の例として、リーチング方式について示す。端末装置5は、リーチング方式を用いたタスクを提供してもよい。
図23の(a)は、十字リーチングを示す。端末装置5の表示画面210上に、最初、初期位置の図形231が表示され、その初期位置の図形231に対象指、例えば人差し指が置かれた状態で、計測を開始する。開始後、表示画面210上に、マーカーに対応するターゲットの図形232、例えば十字(クロス)が表示される。制御部501は、例えば所定の周期で、異なる位置に、図形232を表示する。ユーザは、その図形232の位置に追従して手指を伸ばすようにして指タップを行う。本例では、図形232の中心位置に対してズレを持つ位置233で指タップされた状態を示す。ターゲットの図形232の中心位置と、タップまたはタッチの位置233との間に、ズレに対応する距離Eを有する。端末装置5は、計測データに基づいて、特徴量の1つとして、距離Eや遅延時間TD等を算出する。遅延時間TDは、初期位置の図形231に指を置いた待機状態でターゲットの図形232が表示された時点から、指がターゲットの図形232にタッチされた時点までの時間である。
【0119】
図23の(b)は、円リーチングを示す。ターゲットの図形234として円形領域を表示する。ユーザは、図形234の円形領域内に対して指タップを同様に行う。特徴量としては、例えば図形234の中心位置とタップ位置との距離が抽出される。
【0120】
[運動、表示画面の例(3)]
図24は、別の指タップの運動、表示画面の例として、連続タッチ方式について示す。端末装置5は、連続タッチ方式を用いたタスクや練習を提供してもよい。
図24(a)は、片手連続タッチを示す。表示画面210上の一箇所、例えば左下付近に、左手の親指をタッチするための図形241、例えば円形領域が表示される。ユーザは、表示された図形241に指をタッチして連続的にタッチし続けるようにする。図形241が非表示状態になった場合、ユーザは図形241から指を離す。制御部501は、図形241の表示を制御する。例えば、所定の周期で図形241の表示と非表示とが切り替えられ、所定の回数で表示される。また、図形241の表示と共に、教示情報として聴覚刺激等を与えてもよい。特徴量としては、例えば図形241のタッチ回数、タッチ間隔、タッチ遅延時間等が抽出される。
【0121】
図24(b)は、両手同時連続タッチを示す。表示画面210の二箇所に、左手及び右手の対象指のタッチ位置を示す図形242が表示される。ユーザは、それらの表示された図形242に対し、両手同時に同じタイミングで連続的にタッチする。同様に、両手交互連続タッチも可能である。その場合、制御部501は、左右の図形242を交互に表示するように切り替える。ユーザは、それらの図形242に対して左右の手で交互のタイミングでタッチする。特徴量としては、例えば、左右の図形242のタッチの位相差等が抽出される。
【0122】
別の運動の例としては、図形を表示せずに、教示情報として聴覚刺激等を出力してもよい。例えば、タッチすべき時間とタッチすべきではない時間とで2種類の音声を所定の周期等で出力してもよい。
【0123】
[運動、表示画面の例(4)]
図25は、別の指タップの運動、表示画面の例として、光に合わせたタップ方式を示す。端末装置5は、この方式を用いたタスクを提供してもよい。
図25(a)は、片手タップを示す。表示画面210上に、左手の対象指のタップ用の図形251と、その図形251のタップのタイミングを示すための視覚刺激の光となる図形252とを表示する。制御部501は、図形252の表示と非表示とを切り替えるように点滅表示させる。ユーザは、図形252が表示されたタイミングで、タップ用の図形251をタップする。別の運動の例としては、視覚刺激の図形252の代わりに聴覚刺激である音の出力としてもよいし、連続タッチを行う方式としてもよい。特徴量としては、例えば、周期的な刺激の発生時点に対するタップやタッチの時点の時間ずれがある。この時間ずれは、図形252が表示された時点から図形251がタップされた時点までの遅延時間に相当する。
図25(b)は、同様に、両手同時タップの場合を示す。左右に2つのタップ用の図形251が設けられ、左右に2つの視覚刺激の図形252が同じタイミングで点滅表示される。同様に、両手交互タップの場合、制御部501は、左右の2つの図形252を交互のタイミングで点滅表示させる。
【0124】
[運動、表示画面の例(5)]
図26は、別の指タップの運動、表示画面の例として、五指タップ方式を示す。端末装置5は、五指タップ方式を用いたタスクを提供してもよい。この方式では、対象手の五指を用いる。端末装置5は、表示画面210の背景領域上に、両手のそれぞれの五指、合計十指をタップするための図形261を表示する。ユーザは、最初、表示画面210に五指をタッチするように置く。端末装置5は、そのタッチ位置の検出に基づいて、図形261の表示位置を自動的に調整して設定する。端末装置5は、各位置の図形261の表示を制御する。端末装置5は、タップすべき位置の図形261を特定の表示状態(例えば黒円で示す)にし、タップすべきではない位置の他の図形261を別の表示状態にする。端末装置5は、図形261の表示状態の切り替えを制御する。ユーザは、タップすべき図形261の表示に合わせ、その図形261に指をタップする。
【0125】
[特徴量]
実施の形態2に特有の特徴量の例については以下である。
リーチング方式に関する特徴量パラメータとして以下を有する。(2-1)「ターゲット表示からの遅延時間の平均値」[秒]は、上記遅延時間に関する平均値である。(2-2)「ターゲット表示からの遅延時間の標準偏差」[秒]は、上記遅延時間に関する標準偏差である。(2-3)「ターゲットに対する位置誤差の平均値」[mm]は、上記距離Eに関する平均値である。(2-4)「ターゲットに対する位置誤差の標準偏差」[mm]は、上記距離Eに関する標準偏差である。
【0126】
片手連続タッチ方式に関する特徴量パラメータとして以下を有する。(2-5)「タップ回数」[-]、(2-6)「タップインターバル平均」[秒]、(2-7)「タップ周波数」[Hz]、(2-8)「タップインターバル標準偏差」[秒]、(2-9)「タップインターバル変動係数」[-]、(2-10)「タップインターバル変動」[mm2]、(2-11)「タップインターバル分布の歪度」[-]、(2-12)「局所的なタップインターバルの標準偏差」[秒]、(2-13)「タップインターバル減衰率」等。各特徴量の定義は実施の形態1と同様である。
【0127】
両手連続タッチ方式に関する特徴量パラメータとして以下を有する。(2-14)「位相差の平均」[度]は、両手のタッチ等の位相差の平均値である。(2-15)「位相差の標準偏差」[度]は、上記位相差の標準偏差である。
【0128】
光または音の刺激に合わせたタッチやタップの方式に関する特徴量パラメータとして以下を有する。(2-16)「刺激に対する時間ずれの平均値」[秒]は、上記時間ずれの平均値である。(2-17)「刺激に対する時間ずれの標準偏差」[度]は、上記時間ずれの標準偏差である。
【0129】
[DB不使用異常データ検出]
データ処理部500内の異常データ検出部14で行われるDB不使用異常データ検出部14Aについて説明する。実施の形態1と同様に,DB不使用異常データ検出部14Aでは,DBを参照せずに,計測データのみから異常か否かを判定する。基本的には,実施の形態1と同じ異常検出項目が挙げられるが,本実施形態に特有の項目のみ下記で説明する。なお,実施の形態1で述べた異常項目のうち,(E2)は本実施形態では両手を使うタスクの場合は両手をタッチする場所が視覚的に指示されるため起こりえない。また,(E6)は,磁気センサに特有の現象であるため,画面をタッチする本実施形態では考えなくてよい。
【0130】
(E4)両手同時タップの計測時に誤って両手交互タップを選択していた場合
これは,ユーザは両手同時タップを計測する意図で運動をしたものの,実際はシステム上では両手交互タップが選択されて計測データが記録されている場合である。この異常を検出するには,解析評価データ43に格納された特徴量のうち,両手の協調性を評価する特徴量を利用する。例えば,(2-14)「位相差の平均」は,両手が完全に揃って動かされた理想的な両手同時タップでは0°となる一方で,両手が完全に交互に動かされた理想的な両手交互タップでは180°となる。このことから,(2-14)「位相差の平均」が所定の値(例えば,90°)未満となった場合は,たとえ両手交互タップが選択されていたとしても,ユーザは両手同時タップを意図して運動していたと看做すことができる。つまり,両手同時タップの計測時に誤って両手交互タップが選択されていたと考えて,計測後に両手同時タップの計測データであるとタスクデータ42Aを変更する。
【0131】
(E5)両手交互タップの計測時に誤って両手同時タップを選択していた場合
これは,前項と反対で,ユーザは両手交互タップを計測する意図で運動をしたものの,実際はシステム上では両手同時タップが選択されて計測データが記録されている場合である。前項と同様に指タップの特徴量を基準に判定できる。(2-14)「位相差の平均」が所定の値(例えば,90°)以上となった場合は,たとえ両手同時タップが選択されていたとしても,ユーザは両手交互タップを意図して運動していたと看做すことができる。つまり,両手交互タップの計測時に誤って両手同時タップンが選択されていたと考えて,計測後に両手同時タップの計測データであるとタスクデータ42Aを変更する。
【0132】
(E7)計測中に指が所定の場所から外れた場合
これは,計測中に画面上に指定された所定の場所から外れた場所に指をタッチしている場合である。一定時間,運動不実施時間がある場合に,この異常が起こったと判定することができる。具体的には,例えば,運動不実施時間とは(2-5)「タップ回数」が0回であった時間として評価できる。また,所定の計測時間が終了する前でも,リアルタイムに計測を終了して,再計測を促しても良い。また,異常データとして検出せずに,所定の場所の周辺におけるタッチも検出することで,タッチする場所が所定の場所から外れた場合にユーザが所定の正しい場所に戻れるように視覚的または聴覚的に誘導してもよい。(E8)(E9)(E10)における運動不実施時間は,本異常検出項目と同じように(2-5)「タップ回数」が0回であった時間として評価すればよい。
【0133】
[効果等]
実施の形態2の異常データ処理システムによれば、実施の形態1と同様に,個別被験者DB45Aと多数被験者DB45Bの両方のDBを併用することで,精度の高い異常データ検出を実現できる。実施の形態2では、特に、運動センサ20等を設ける必要が無いこともユーザの計測の手間を省くメリットとなる。
【実施の形態3】
【0134】
図27~
図29を用いて、本発明の実施の形態3の異常データ処理システムについて説明する。実施の形態3の基本的な構成は、実施の形態1と同様であり、以下、実施の形態3の構成における実施の形態1の構成とは異なる部分について説明する。
【0135】
[システム(3)]
図27は、実施の形態3の異常データ処理システムを示す。異常データ処理システムは、サービス事業者のサーバ6と、複数の施設のシステム7とを有し、それらが通信網8を介して接続されている。通信網8やサーバ6は、クラウドコンピューティングシステムを含むものとしてもよい。実施の形態3の異常データ処理システムは、システム7の端末装置4およびサーバ6で役割を分担して構成される。分担については後述する。
【0136】
施設は、病院や健康診断センタ、公共施設、娯楽施設等、あるいはユーザ自宅等、各種が可能である。施設にはシステム7が設けられている。施設のシステム7の例として、病院H1のシステム7A、病院H2のシステム7B等を有する。例えば,各病院のシステム7Aおよびシステム7Bは、実施の形態1と同様の計測システム2を構成する計測装置3及び端末装置4を有する。各システム7の構成は同じでもよいし、異なってもよい。施設のシステム7は、病院の電子カルテ管理システム等を含んでもよい。システム7の計測装置は、専用端末としてもよい。
【0137】
サーバ6は、サービス事業者が管轄している装置である。サーバ6は、情報処理によるサービスとして、施設及びユーザに対し、実施の形態1の異常データ処理システム1と同様の異常データ処理サービスを提供する機能を有する。サーバ6は、計測システムに対してクライアントサーバ方式でサービス処理を提供する。サーバ6は、そのような機能に加え、ユーザ管理機能等を有する。ユーザ管理機能は、複数の施設のシステム7を通じて得られた、ユーザ群のユーザ情報、計測データや解析評価データ等を、DBに登録、蓄積して管理する機能である。なお、実施の形態3の端末装置5は、自身で異常データを処理する機能は不要であり、タッチパネルを用いた計測機能と、サーバ6で生成された異常データ検出結果等を表示する表示機能とを有する。
【0138】
[サーバ]
図28は、サーバ6の構成を示す。サーバ6は、制御部601、記憶部602、入力部603、出力部604、通信部605を有し、それらがバスを介して接続されている。入力部603は、サーバ6の管理者等による操作入力を行う部分である。出力部604は、サーバ6の管理者等に対する画面表示等を行う部分である。通信部605は、通信インタフェースを有し、通信網8との通信処理を行う部分である。記憶部602にはDB640が格納されている。DB640は、サーバ6とは別のDBサーバ等で管理されてもよい。
【0139】
制御部601は、サーバ6の全体を制御し、CPU、ROM、RAM等により構成され、ソフトウェアプログラム処理に基づいて、異常データ検出や異常データ処理決定等を行うデータ処理部600を実現する。データ処理部600は、ユーザ情報管理部11、タスク処理部12、解析評価部13、異常データ検出部14、異常データ処理決定部15、異常データ処理実行部16、結果出力部17を有する。異常データ検出部14は,実施の形態1とは異なり,DB不使用異常データ検出部14Aは含まれず,DB使用異常データ検出部14Bのみを含む。
【0140】
ユーザ情報管理部11は、複数の施設のシステム7のユーザ群に関するユーザ情報を、DB640にユーザ情報41として登録し管理する。ユーザ情報41は、ユーザ個人毎の属性値、利用履歴情報、ユーザ設定情報等を含む。利用履歴情報は、各ユーザが過去に異常データ処理サービスを利用した実績情報を含む。
【0141】
[サーバ管理情報]
図29は、サーバ6がDB640に管理するユーザ情報41のデータ構成例を示す。このユーザ情報41の表において、ユーザID、施設ID、施設内ユーザID、性別、年齢、疾患、重症度スコア、症状、履歴情報、等を有する。ユーザIDは、本システムでのユーザの一意の識別情報である。施設IDは、システム7が設けられている施設の識別情報である。なお、別に、各システム7の計測装置の通信アドレス等も管理されている。施設内ユーザIDは、その施設またはシステム7内で管理されているユーザ識別情報が存在する場合のそのユーザ識別情報である。即ち、ユーザIDと施設内ユーザIDとが関連付けられて管理されている。疾患項目や症状項目は、ユーザが選択入力した疾患や症状を表す値、あるいは病院で医師等が診断した値が格納される。重症度スコアは、疾患に関する度合いを表す値である。
【0142】
履歴情報項目は、そのユーザの過去のサービス利用及び異常データ処理の実績を管理する情報であり、各回の利用の日時、等の情報が時系列で格納されている。また、履歴情報項目には、その回で練習が行われた場合における各データ、即ち前述の計測データ、解析評価データ、異常データ検出結果、異常データ処理内容等のデータが格納されている。履歴情報項目には、各データが格納されているアドレスの情報を格納してもよい。
【0143】
[ローカルとサーバの異常データ検出の分担]
実施の形態1では,異常データ検出部14で,DB不使用異常データ検出部14AおよびDB使用異常データ検出部14Bの両方を実行する構成となっていた。これに対して,本実施形態では,ローカルにあるシステム7の端末装置4でDB不使用異常データ検出部14Aを実施する,サーバ6でDB使用異常データ検出部14Bを実施する。このように分担する理由としては,サーバ6では,複数あるシステム7(7A,7B,・・・)から集約されたデータから個別被験者DB45Aおよび多数被験者DB45Bが構成されるため,DBを使用する異常データ検出に適しているためである。一方で,これらのDBが不要な異常データ検出は出来る限り早く実施するために,ローカルの端末装置4で実行した方がよい。ローカルの端末装置4で異常データ検出することで,計測中に異常が発生した場合にリアルタイムに異常データ検出を行えて,再計測の指示などを即時に出すことが出来る。また,サーバとのネットワークが常時接続されていない場合は,サーバにデータを送って異常データ検出結果を待つ時間のロスを防ぐことが出来る。
【0144】
なお,上記のようにDBを使用するか否かという基準で,異常データ検出機能を端末装置4とサーバ6に分担させる方法を述べたが,他の分担方法でもよい。例えば,病院H1では多くのユーザが来訪し,大規模なDBが構築できるのであれば,DB使用異常データ検出部14Bも端末装置4で行っても良い。また,システムの管理者に管理表50の異常検出理由・処理対応表50Bの設定を一括して変更する権限を与える場合は,DB不使用異常データ検出部14Aもサーバ6で行っても良い。
【0145】
[効果等]
実施の形態3の異常データ処理システムによれば、実施の形態1と同様に,個別被験者DB45Aと多数被験者DB45Bの両方のDBを併用することで,精度の高い異常データ検出を実現できる。また,個別被験者DB45Aおよび多数被験者DB45Bをサーバで管理することで,多くの施設のデータを集約して大規模なDBを構築することができ,より精度の高い異常データ検出が実現できると考えられる。また,ローカルの端末装置4とサーバ6で異常データ検出機能を分担することで,時間ロスのない異常データ検出が可能となる。
【0146】
以上、本発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0147】
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0148】
1…異常データ処理システム、2…計測システム、3…計測装置、4…端末装置。