(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】大きな回折格子パターンのデジタル書き込み
(51)【国際特許分類】
G02B 5/18 20060101AFI20241226BHJP
G02B 27/02 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
G02B5/18
G02B27/02 Z
(21)【出願番号】P 2023182518
(22)【出願日】2023-10-24
(62)【分割の表示】P 2021540139の分割
【原出願日】2020-01-14
【審査請求日】2023-10-24
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516201548
【氏名又は名称】ビュージックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Vuzix Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ, ロバート ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】コワーツ, マーク ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】グレイ,ロバート, ダブリュー.
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-329705(JP,A)
【文献】国際公開第2018/231754(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/213009(WO,A1)
【文献】国際公開第2008/056577(WO,A1)
【文献】特開2010-197436(JP,A)
【文献】特開2014-238465(JP,A)
【文献】特開2008-076922(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0322426(US,A1)
【文献】国際公開第2017/120320(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0231566(US,A1)
【文献】特開2000-121815(JP,A)
【文献】特開2009-065036(JP,A)
【文献】国際公開第2018/206847(WO,A1)
【文献】特開2003-173954(JP,A)
【文献】特開平08-213299(JP,A)
【文献】特開平08-114429(JP,A)
【文献】特開2013-157064(JP,A)
【文献】特開昭62-208001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/18
G02B27/00-27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の表面と、
前記平面状の表面に沿って配置された第1の複数のリニアな回折フィーチャと、
前記平面状の表面に沿って配置された第2の複数のリニアな回折フィーチャと、
を備え、
前記第1の複数のリニアな回折フィーチャが、実質的にリニアな回折フィーチャを形成する階段状の線の回折フィーチャを含
み、
前記第1の複数のリニアな回折フィーチャが、前記第2の複数のリニアな回折フィーチャと平行に配向された第1直線部と、前記第2の複数のリニアな回折フィーチャと垂直に配向された第2直線部と、を含み、
前記第1直線部と前記第2直線部が交互に配置され、
前記第2の複数のリニアな回折フィーチャが階段状の線の回折フィーチャを含まない、基板。
【請求項2】
前記階段状の線の回折フィーチャが、直線状の回折フィーチャであるかのように入射光を回折するように動作可能である、請求項1に記載の基板。
【請求項3】
前記平面状の表面に結合された基板本体をさらに備え、前記平面状の表面が第1の材料を含み、前記基板
本体が第2の材料を含む、請求項1に記載の基板。
【請求項4】
前記第1の材料がクロム層を含み、前記第2の材料が石英を含む、請求項3に記載の基板。
【請求項5】
前記平面状の表面に沿って配置された第3の複数のリニアな回折フィーチャをさらに備え、前記第1および第
3の複数のリニアな回折フィーチャは、それぞれ前記階段状の線の回折フィーチャを含み、前記第
2の複数のリニアな回折フィーチャはそれぞれ直線を画成する、請求項1に記載の基板。
【請求項6】
前記平面状の表面に沿って配置された第3の複数のリニアな回折フィーチャをさらに備え、前記第
2の複数のリニアな回折フィーチャが、前記第1、第
3の複数のリニアな回折フィーチャの間に光学的に配置され、前記第1、第
3の複数のリニアな回折フィーチャが、
前記第1、第3の複数のリニアな回折フィーチャの格子ベクトルが、前記第2の複数のリニアな回折フィーチャの格子ベクトルに対して等しい角度で配向されるように、前記第
2の複数のリニアな回折
フィーチャの周りに対称の配向を有する、請求項1に記載の基板。
【請求項7】
前記平面状の表面に沿って配置された第3の複数のリニアな回折フィーチャをさらに備え、前記第1の複数のリニアな回折フィーチャが、前記第3の複数のリニアな回折フィーチャから、0度から90度の間の角度で配置されている、請求項1に記載の基板。
【請求項8】
前記平面状の表面に沿って配置された第3の複数のリニアな回折フィーチャをさらに備え、総回折格子面積が、200mm
2と前記平面状の表面の総面積との間であり、前記第1、第2、第3の複数のリニアな回折フィーチャが、前記総回折格子面積を規定する、請求項1に記載の基板。
【請求項9】
第3の複数のリニアな回折フィーチャをさらに含み、前記第1、第2、第3の複数のリニアな回折フィーチャが連なって曲線の弦セグメントを形成する、請求項1に記載の基板。
【請求項10】
平面状の表面と、
前記平面状の表面に沿って配置された第1の複数のリニアな回折フィーチャと、
前記平面状の表面に沿って配置された第2の複数のリニアな回折フィーチャと、
前記平面状の表面に沿って、前記第1、第2の複数のリニアな回折フィーチャの間に光学的に配置された第3の複数のリニアな回折フィーチャと、
を備え、
前記第1の複数のリニアな回折フィーチャは、実質的にリニアな回折フィーチャを形成する階段状の線の回折フィーチャを含み、第1直線部と、前記第1直線部と実質的に垂直に配向された第2直線部と、を含み、前記第1直線部と前記第2直線部が交互に配置されており、
前記第2の複数のリニアな回折フィーチャは、実質的にリニアな回折フィーチャを形成する階段状の線の回折フィーチャを含み、第1直線部と、前記第1直線部と実質的に垂直に配向された第2直線部と、を含み、前記第1直線部と前記第2直線部が交互に配置されており、
前記第3の複数のリニアな回折フィーチャは、前記第1の複数のリニアな回折フィーチャおよび前記第2の複数のリニアな回折フィーチャの前記第1直線部または前記第2直線部と平行な直線部により構成されており、
前記第1、第2の複数のリニアな回折フィーチャは、前記第1、第2の複数のリニアな回折フィーチャの格子ベクトルが前記第3の複数のリニアな回折フィーチャの格子ベクトルに対して等しい角度で配向されるように、前記第3の複数のリニアな回折格子の周りに対称の配向を有する、基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板への回折格子パターンの作成に関し、より具体的には、バーチャル像ニアアイディスプレイシステムで用いられる光導波路を製造するためのモールド基板に、回折格子パターンをデジタル製造することに関する。
【背景技術】
【0002】
バーチャル像ニアアイディスプレイシステムは、軍事、商業、工業、消防、娯楽の分野への適用を含め、様々な用途に向けて開発されている。これら適用の多くにおいて、ユーザーの視野にある現実世界の像に重ね合わせ可能なバーチャル像を形成することは、特に価値がある。光学画像光ガイドは、狭い空間内で画像担持光をユーザーに伝送し、バーチャル像をユーザーの瞳に向け、上記重ね合わせ機能を可能にする。
【0003】
従来の設計および方法に従って光学画像光ガイドを製造することは、時間と資本の集約を要する。本開示は特に、光学画像光ガイドおよび同ガイドを作るより効率的な方法について説明する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、基板と、この基板を製作する方法を提供する。第1の例示的な実施形態では、基板は平坦な表面を含む。平坦な表面には、第1回折格子と第2回折格子と第3回折格子が配置されている。第1回折格子は第1の複数の回折フィーチャを含む。第2回折格子は第2の複数の回折フィーチャを含む。第3回折格子は、第3の複数の回折フィーチャを含む。第1、第2、第3の複数の回折フィーチャのうちの1つまたは複数が、階段状のパターンを有している。
【0005】
第2の例示的な実施形態では、バーチャル像ニアアイディスプレイシステムは、第1、第2、第3回折格子を含む第1平面導波路と、第1、第2、第3回折格子を含む第2平面導波路と、を備えている。前記第2平面導波路は、前記第1平面導波路と平行に配置されている。前記第1、第2平面導波路の回折格子のそれぞれは、格子ベクトルを含む。前記第1、第2平面導波路の各々において、前記第1、第2、第3回折格子のうちの少なくとも1つは、階段状パターンを画成する回折フィーチャを含む。前記第1、第2平面導波路の各々において、前記第1、第2、第3回折格子のうちの少なくとも1つは、直線を画成する回折フィーチャを含む。
【0006】
第3の例示的な実施形態では、基板を製造する方法は、平坦な表面を有し、前記平坦な表面にコーティングが結合された基板を提供する工程と、第1方向と前記第1方向に垂直の第2方向に書き込むように動作可能なビーム書き込みシステムを提供する工程とを備えている。この方法はさらに、回折格子レイアウトパターンを提供する工程を備えている。前記回折格子レイアウトパターンは、第1格子ベクトルを定義する第1の複数の回折フィーチャを含む第1回折格子と、第2格子ベクトルを定義する第2の複数の回折フィーチャを含む第2回折格子と、第3格子ベクトルを定義する第3の複数の回折フィーチャを含む第3回折格子とを含む。この方法はまた、前記基板を前記ビーム書き込みシステムに配置し、それにより、前記ビーム書き込みシステムが前記コーティングに書き込むように動作可能になる工程を備えている。さらにこの方法は、前記第1、第2、第3の複数の回折フィーチャのうちの1つを、前記ビーム書き込みシステムの第1方向と平行にアライメントさせる工程と、前記回折格子レイアウトパターンを、前記ビーム書き込みシステムにより前記コーティングに書き込む工程と、を備えている。
【0007】
第4の例示的な実施形態では、ビーム書き込みシステムは、x軸方向およびy軸方向に平行移動するように動作可能な第1プラットフォームと、前記第1プラットフォームと垂直なz軸の周りを回転するように動作可能な第2プラットフォームと、を備えている。前記第2プラットフォームは前記第1のプラットフォームに取り付けられている。基板が前記第2プラットフォームと選択的に結合することができ、それにより、基板に作成される回折フィーチャは、常に前記第1プラットフォームのx軸方向とy軸方向の1つに向けられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
添付の図面は、明細書の一部としてここに組み込まれる。ここに記載された図面は、本開示の実施形態を例示し、選択された原理およびその教示を例示するものである。しかしながら、図面は、現在開示されている主題のすべての可能な実施を例示するものではなく、いかなる方法でも本開示の範囲を制限することを意図するものではない。
【0009】
【
図1】本開示の一実施形態による、複数の回折格子を有する導波路の概略図である。
【0010】
【
図2】本開示の一実施形態による、ヘッドマウントディスプレイシステムを着用している人の概略図である。
【0011】
【
図3】本開示の一実施形態による、基板の概略図である。
【0012】
【
図4A】本開示の一実施形態による、3つの回折格子を有する導波路の概略図である。
【0013】
【
図4B】本開示の一実施形態による、回転回折光学要素の配向を示す基板の概略図である。
【0014】
【
図5A】本開示の別の実施形態による、3つの回折格子を有する導波路の概略図である。
【0015】
【
図5B】本開示の一実施形態による、回折格子の配向を示す基板の概略図である。
【0016】
【
図6】本開示の一実施形態による、回折格子ベクトルの配向の概略図である。
【0017】
【
図7】本開示の一実施形態による、2つの平行板の平面導波路の概略図である。
【0018】
【
図8】本開示の一実施形態による、回転ステージを有するビーム書き込み機の概略図である。
【0019】
【
図9】本開示の一実施形態による、基板の概略図である。
【0020】
【
図10】本開示の一実施形態による、回折格子デューティサイクルの概略図を示す。
【0021】
【
図11】本開示の一実施形態による、モールド基板を製造する方法を示すフローチャートである。
【0022】
【
図12】本開示の別の実施形態による、モールド基板を製造する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、明示されている場合を除いて、様々な代替の配向および工程シーケンスを想定し得ることが理解されるべきである。添付の図面に示され、以下の明細書に記載された特定のアセンブリおよびシステムは、ここで定義される本発明の概念の単なる例示的な実施形態であることも理解されたい。したがって、開示された実施形態に関連する特定の寸法、方向、または他の物理的特性は、特に明記しない限り、限定的であると見なされるべきではない。また、そうではない場合もあるが、ここに記載の様々な実施形態における同様の要素は、同様の参照番号で参照され得る。
【0024】
実像投影の代替として、光学システムはバーチャル像表示を生成することができる。
一実施形態では、
図2に示されるように、光学システムは、バーチャル像ニアアイディスプレイシステム34であるか、またはそれを含むことができる。バーチャル像ニアアイディスプレイシステム34は、ヘッドマウントディスプレイ(「HMD」)を含むことができる。実像を形成する方法とは対照的に、バーチャル像はディスプレイ面上に形成されない。すなわち、ディスプレイ面がバーチャル像を知覚する位置に配置された場合、このディスプレイ面上に画像は形成されない。バーチャル像ディスプレイには、拡張現実ディスプレイにとって固有の利点がいくつかある。たとえば、バーチャル像の見かけのサイズは、ディスプレイ面のサイズや位置によって制限されない。実像を投影するシステムと比較して、ある程度離れているように見えるバーチャル像を形成することにより、より現実的な視覚体験を提供することができる。バーチャル像を提供することで、実像を投射するときに必要になるスクリーンのアーティファクトの補正も、必要なくなる。
【0025】
図1に示されるように、光学イメージング光ガイド20は、画像担持光WOをユーザー32に伝送することができる。コリメートされ相対的角度的にエンコードされた画像ソース36からの光線WI(「画像担持光」)は、インプットカップリング光学要素24によって光学イメージング光ガイド20内に結合することができる。このインプットカップリング光学要素24は、イメージング光ガイド20の表面内や表面上に取り付けまたは形成することができる。光学イメージング光ガイド20に沿って伝搬した後、アウトプットカップリング回折光学要素28によって、回折光が光学イメージング光ガイド20から出て戻るように方向付けられる。アウトプットカップリング回折光学要素28は、バーチャル像の一次元に沿って瞳孔拡張を提供するように構成することができる。さらに、回転回折光学要素26は、インプットカップリング光学要素24とアウトプットカップリング光学要素28との間において光学イメージング光ガイド20上または当ガイド20内に配置され、アウトカップリング回折光学要素28によるバーチャル像の瞳孔拡大と直交する次元で、瞳孔拡大を提供することができる。一実施形態では、そのような回折光学要素は、回折格子として形成することができる。例えば、回折格子は表面レリーフによって形成することができる。光学イメージング光ガイド20から出力された画像担持光WOは、視者に拡張されたアイボックスを提供する。
【0026】
図1を参照すると、一実施形態では、光学イメージング光ガイド20は平面導波路22を含む。この平面導波路22上に3つの回折光学要素24、26、28が作られている。イメージング光ガイド20は、中間回転回折光学要素26を用いて、x軸およびy軸の両方についてビーム拡張を提供するビーム拡張器として構成されている。中間回転回折光学要素26は、光出力(第1の回折モード)をインカップリング回折光学要素24からアウトカップリング回折光学要素28へ方向転換する。格子ベクトルk0を有するインカップリング回折光学要素24は、イメージングプロジェクタ36からの画像担持光ビームWIを平面導波路22と光学的に結合するために用いられる。入力光ビームWIは、インカップリング回折光学要素24によって回折される。例えば、一次回折光は、角度的に関連付けられたビームの集合WGとして、基板Sに沿って回転回折光学要素24に向かって伝播する。回折格子間または他のタイプの回折光学要素間で、光は、全内部反射(TIR)によって導波路22に沿って伝播されまたは向けられる。アウトカップリング回折光学要素28は、その長手方向に沿って(すなわち、
図1のx軸に沿って)、伝搬してきた光ビームWGとの複数の回折遭遇により、ビーム拡張に寄与する。アウトカップリング回折光学要素28は、各遭遇からの回折光を、観察者の目の意図された位置に向ける。
【0027】
画像担持光ビームWGの一部は、格子ベクトルk1を有する中間回転回折光学要素26に向けられる。回転回折光学要素26を用いることにより、平面導波路22を経て伝播してきた、光学的に結合された画像担持光ビームWGの少なくとも一部を、格子ベクトルk2を有するアウトカップリング回折光学要素28に向けて、回転/方向付けることができる。中間格子26は、光路におけるその機能故に「回転格子」と呼ばれる。中間格子26は、その格子ベクトルk1に従って、導波路22内からのビームWGを、アウトカップリング回折光学要素28に向かって方向転換し、それによって、インカップリング回折光学要素24とアウトカップリング回折光学要素28の格子ベクトルk0、k2間の角度差を構成する。回転回折光学要素26は、回折要素の角度配向と、間隔周期dによって決定される間隔形状を有している。この回転回折光学要素26は、内部反射ビームWGを方向転換するだけでなく、最初の伝播方向に沿う(すなわち
図1のy軸に沿う)光ビームWGとの複数の回折遭遇を介して、ビーム拡大に寄与する。
【0028】
このようにして、回転回折光学要素26は、インカップリング回折光学要素24とアウトカップリング回折光学要素28との間に光学的に配置される。回折格子24、26、28は、複数の回折フィーチャ50を含む。回折フィーチャ50は、溝、線、または罫線(ruling)である。一実施形態では、
図1に示されるように、回折フィーチャ50は、直線を含む。各回折格子24、26、28は、互いの回折格子24、26、28に対して、幅、深さ、ブレイズ角、デューティサイクルなどが異なる回折フィーチャ50を有することができる。
【0029】
回転回折光学要素26をインカップリング回折格子24とアウトカップリング回折格子28の間に光学的に配置することにより、回転回折光学要素26は、インカップリング回折構成24から平面導波路を通って伝搬してきた画像担持光の少なくとも一部を、アウトカップリング回折格子28に向けて、回転させる/方向付けることができる。感光層、マスク層またはモールド基板(型基板;mold substrate)の平坦な表面上に、少なくとも3つの回折格子を作成することは、電子ビームまたはイオンビーム及び/又は他のビームの書き込み装置にとって、かなりの書き込み時間を必要とする。しかしながら、本明細書に記載されるように、回折格子パターンの書き込み時間は、用いられるビーム書き込み機のx軸及び/又はy軸に対する回折格子の配向により、短縮することができる。ビーム書き込み機のx軸及び/又はy軸は、本明細書では、好ましいビーム書き込み方向と呼ばれる。x軸及びy軸は、ビーム書き込み機が、モールド基板及び/又は基板上の材料層に、回折フィーチャを最も正確に及び/又は最も迅速に書き込むことができる方向である。
【0030】
一実施形態では、回折格子のレイアウトパターンは、電子ビーム(e-ビーム)リソグラフィー、イオンビームリソグラフィー、レーザーリソグラフィー、及び/又は他のデジタルビーム書き込み方法(これらに限定されない)の方法を用いて、モールド基板の平坦な表面上及び/又は表面内に直接形成または書き込むことができる。別の実施形態では、回折格子のレイアウトパターンは、モールド基板上に配置されたマスク層またはコーティングに書き込むことができる。さらに別の実施形態では、回折格子のレイアウトパターンは、マスク層及び/又はモールド基板上に配置された感光層に書き込むことができる。
【0031】
マスク層に直接書き込む場合、パターンは、モールド基板上の複数の可能な層の異なる層に転写される。モールド基板は、シリコンまたは石英であるが、これらに限定されない。転写プロセスは、例えば、イオンエッチングプロセスである。パターンが感光層に書き込まれる場合、レイアウトパターンは、例えば乾式または湿式エッチングプロセスのいずれかによって、感光層の下のマスク層に転写することができる。レイアウトパターンはまた、例えば、イオンエッチングまたはウェットエッチングプロセスを用いて、感光層からモールド基板に直接転写することができる。
【0032】
回折格子のレイアウトパターンを受け取ったモールド基板は、別のモールド基板を製造するためのモールド(型)として利用することができ、または光学画像光ガイドの回折格子パターンを作成するためのモールドとして利用することができる。モールド基板を利用して画像光ガイドの回折格子パターンを作成する方法は、ポリマーをモールド基板に塗布してポリマーに回折格子パターンを形成し、次にポリマーを光ガイドの表面に接着して画像光ガイドに回折格子パターンを形成する工程を含む。当業者に知られている他の技術を用いて、モールド基板から画像光ガイドに回折パターンを複製し転写することもできる。
【0033】
図2に示されるように、一実施形態では、回折格子24、26、28の配置は、拡張現実及び/又は仮想現実のバーチャル像ニアアイディスプレイシステム34のイメージング光ガイド20において使用することができる。回転回折光学要素26を用いて、ニアアイディスプレイシステムの射出瞳を一方向に沿って拡張することができ、アウトカップリング回折光学要素28を用いて、ニアアイディスプレイシステムの射出瞳を別の方向に沿って拡張することができる。一実施形態では、回転回折光学要素26は、ニアアイディスプレイシステムの射出瞳を第1の方向に拡張し、アウトカップリング回折光学要素28は、ニアアイディスプレイシステムの射出瞳を第2の方向に拡張する。
【0034】
一実施形態では、バーチャル像ニアアイディスプレイシステム34は、人32が着用する眼鏡の形態をとることができる。眼鏡のレンズの少なくとも1つは、イメージング光ガイド20を含むことができる。バーチャル像ニアアイディスプレイシステム34は、画像光ガイドのインカップリング回折格子24に向かって投射される画像担持光ビームを生成するためのプロジェクタ36を含むことができる。画像担持光ビームの一部は、インカップリング回折格子24から回転回折光学要素26に向けられる。回転回折光学要素26は、画像担持光ビームの少なくとも一部をアウトカップリング回折光学要素28に向けて回転させ、人32がバーチャル像を見られるようにする。別の実施形態では、イメージング光ガイド20を含むバーチャル像ニアアイディスプレイシステムは、フェイスシールドの形態をとることができる。
【0035】
図3に示されるように、一実施形態では、モールド基板40は、平坦な表面46を有する。平坦な表面46は、モールド基板40と同じ材料ではないコーティング/層を含むことができる。一実施形態では、モールド基板40は石英であり、平坦な表面46はクロム層を含むことができる。別の実施形態では、平坦な表面46は、感光コーティングを含むことができる。さらに、平坦な表面46は、モールド基板40に付された多層コーティングから形成されていてもよい。
【0036】
図3は、複数の直線の回折フィーチャ50を有する回折格子24、26、28の一部の概略図である(
図3には、1つの直線の回折フィーチャ50のみが示されている)。一実施形態では、回折フィーチャ50は、基板の平坦な表面46上及び/又は表面内にビーム書き込み機(本明細書に記載のビーム書き込みシステム200等)によって作成することができる。各回折フィーチャ50は、所望の深さおよび所望の幅の溝とすることができる。
図10に示されるように、一実施形態では、各回折格子24、26、28の回折フィーチャ50のデューティサイクルは、50%未満とすることができる。換言すれば、回折フィーチャ50の隆起部分の幅wlは、回折フィーチャ50の凹部分の幅w2の半分未満である。別の実施形態では、回折格子24、26、28のうちの1つだけが、50%未満のデューティサイクルの回折フィーチャ50を有する。本実施形態では、デューティサイクルが50%未満の回折フィーチャ50を有する回折格子24、26、28は、回折フィーチャ50がビーム書き込み機の好ましい書き込み方向と平行になるように配向することができる。
【0037】
モールド基板40は、ビーム書き込み機に対してモールド基板40を配向するために利用される1つまたは複数のアライメントフィーチャ(位置合わせフィーチャ)を含むことができる。一実施形態では、1つまたは複数のアライメントフィーチャは、第1の直線エッジ(first straight edge)42および第2の直線エッジ(second straight edge)44を含む。第1の直線エッジ42は、ビーム書き込み機のy軸とほぼ平行に整列させることができ、第2の直線エッジ44は、ビーム書き込み機のx軸とほぼ平行に整列させることができる。別の実施形態では、モールド基板は、直線でない周縁を有することもある。モールド基板が直線でない周縁を有する一実施形態では、1つまたは複数のアライメントフィーチャは、1つまたは複数の基準マーカーとすることができるが、これらに限定されない。
【0038】
一実施形態では、回折格子パターンは、書き込みビームの偏向、書き込みビームの選択的な給電及び/又は活性化、及び/又はモールド基板40の平行移動の組み合わせによって、モールド基板40及び/又は平坦な表面46内に作成することができる。
図3に示されるように、所望の直線回折フィーチャ50に近づけるために、ビーム書き込み機のビームは、本明細書ではジグザグ経路とも呼ばれる階段状パターン(step pattern)52をとることができる。ビーム書き込み機の階段状パターン52は、1つまたは複数のy軸の書き込み経路54と、1つまたは複数のx軸の書き込み経路56を含む。このようにして、平坦な表面46上にx軸およびy軸のビーム経路方向を有するデジタルビーム書き込み機は、所望の直線状の回折フィーチャ50を作成することができる。この直線状の回折フィーチャ50は、階段状パターン52を用いて直線50に近似させることにより、x軸およびy軸に対してある角度で配置されている。例えば、モールド基板40は、インカップリング回折光学要素24、回転回折光学要素26、およびアウトカップリング回折光学要素28を含むことができ、これら回折光学要素24、26、28のうちの1つ以上は、ほぼ直線状の回折フィーチャ50のように振る舞う階段状の線の回折フィーチャ52を含む。換言すれば、回折光学要素24、26、28のうちの1つ以上の回折フィーチャは、あたかも直線回折フィーチャ50であるかのように入射光を回折するように動作可能な階段状の線の回折フィーチャ52を備えている。
【0039】
別の実施形態では、所望の回折フィーチャは、書き込みビームの偏向、モールド基板40の平行移動、及び/又は書き込みビームの選択的な給電の組み合わせによって生成されたx-yラスター(raster)を用いて書き込むことができる。ラスターによる方法では、x軸およびy軸に対してある角度で配置された直線状の回折フィーチャ50もまた、階段状パターンを有する。ラスターは、所望の回折フィーチャの完全な集合を生成するために、複数の経路(pass)の書き込みを含むことができる。
【0040】
実際には、最終の基板及び/又は平行板の導波路に書き込まれた階段状パターン52は、書き込みビームの経路またはラスターよりもはるかに滑らかにすることができる。平滑化は、書き込みビームの有限の幅と、最終の基板を形成するために用いられる化学処理の両方から生じる。結果として得られる階段状パターンを確認するには、走査型電子顕微鏡(SEM)や原子間力顕微鏡(AFM)などの高精度の技術が必要である。階段状パターン52が存在するが比較的滑らかである特定の場合には、これらの顕微鏡技術を用いても見るのは難しいかもしれない。
【0041】
別の実施形態(図示せず)では、モールド基板40は、直線エッジ42及び/又は直線エッジ44がそれぞれy軸及び/又はx軸と平行に整列されないように回転することができる。この実施形態では、基準マークなどのアライメントフィーチャを用いて、ビーム書き込み機内でモールド基板40をアライメント(位置合わせ)することができる。
【0042】
図4Aに示されるように、一実施形態では、平行板の導波路60は、その1つまたは複数の表面62上に、インカップリング回折格子24、回転回折光学要素26、およびアウトカップリング回折光学要素28を含む。
図4Bに示されるように、モールド基板70は、平行板導波路60の回折格子パターン24、26、28を有する表面72を含む。モールド基板70の表面72は、モールド基板70とは異なる材料を含むことができる。一実施形態では、モールド基板70は石英であり、表面72はクロムコーティング及び/又は複層コーティングである。
図4Bに示されるように、回転回折光学要素26の格子ベクトルklは、ビーム書き込み機のy軸方向と平行になるように配向されている。格子ベクトルk1は、回転回折光学要素26の直線状の回折フィーチャと直角をなしている。換言すれば、格子ベクトルk1は、ビーム書き込み機のx軸に対して垂直に配向されている。インカップリング回折格子24は格子ベクトルk0を有し、アウトカップリング回折光学要素28は格子ベクトルk2を有する。一実施形態では、格子ベクトルk0は、格子ベクトルk1に対して約65度の角度をなす。格子ベクトルk2は、格子ベクトルk0と鏡面対称をなし、回転回折光学要素の格子ベクトルk1に対して約65度の角度をなしている。3つの回折格子ベクトルk0、k1、k2の合計はほぼゼロである。格子ベクトルk0およびk2は、格子ベクトルk1と一緒に(描写された矢印の先端を尾に配置したときに、)二等辺三角形を形成するような長さを有する。言い換えると、格子ベクトルk0、k1、k2の力ベクトル図は三角形を形成する。一実施形態では、3つの格子ベクトルk0、k1、k2が不等辺三角形を形成する場合もある。
【0043】
別の実施形態では、モールド基板の表面72上の回折格子24、26、28のレイアウトは、格子ベクトルk1がビーム書き込み機のx軸と平行に配向されるように回転することができる。したがって、回転回折光学要素26の直線状の回折フィーチャは、y軸方向と平行である。
【0044】
モールド基板70上において、回転回折光学要素26の格子ベクトルklは、x軸方向およびy軸方向と名付けられたビーム書き込み機の好ましい書き込み方向の1つと、直角にアライメントされるべきである。これにより、モールド基板70の周辺の形状を、円形、正方形、長方形、または楕円形を含む(ただし、これらに限定されない)任意の都合のよい形状にすることができる。
【0045】
回転回折光学要素26の格子ベクトルklをビーム書き込み機の好ましい書き込み方向の1つと直角になるように配向することにより、回折格子24、26、28をモールド基板70内/上に書き込むのに必要な時間が大幅に短縮される。例えば、第1のモールド基板は、格子ベクトルk1が1つの好ましい書き込み方向に直角であり、他の好ましい書き込み方向と平行であるように配向された回折格子パターンを有する。第2のモールド基板は、格子ベクトルk1が好ましい書き込み方向の1つに対して直角に配向されていないことを除いて、第1のモールド基板の回折格子パターンと同一の回折格子パターンを有する。格子ベクトルk0、k1、k2の相対的な配向は、第1、第2の基板の両方で同じであり、インカップリング回折格子24、回転回折光学要素26、およびアウトカップリング回折光学要素28の全体のサイズも同じである。この例では、回折格子ベクトルk0、k2は、対称線を挟んで格子ベクトルk1に対して65度の角度で配置され、3つの回折格子24、26、28すべての合計書き込み面積は約574mm2である。そして、3つすべての回折格子24、26、28の回折格子ピッチは、320nmから380nmの間である。第2のモールド基板の場合(3つの回折格子ベクトルk0、k1、k2のいずれもビーム書き込み機のx軸またはy軸の好ましい書き込み方向とアライメントしていない場合)、書き込み時間は約884分である(これはテストにより決定された)。第1のモールド基板の場合(回転回折光学要素のベクトルklがy軸と平行にアライメントされ、これにより、回転回折光学要素26の直線状の回折フィーチャがビーム書き込み機のx軸と平行であり、格子ベクトルk0、k2に関連する直線状の回折フィーチャが好ましい書き込み方向でない場合)、3つの回折格子24、26、28すべての合計書き込み時間は527分である(これはテストにより決定された)。したがって、第1のモールド基板の書き込み時間は、第2のモールド基板の書き込み時間よりも40%短い。
【0046】
図5Aは、平行板導波路80の1つまたは複数の表面82上の3つの回折格子84、86、88のレイアウトを示す。回折格子84、86、88のピッチは、300nmから1000nmの間である。
【0047】
図5Bは、モールド基板90の平坦な表面92上での
図5Aの回折格子のレイアウト図であり、回折格子84、86、88の配向を示す。モールド基板90の平坦な表面92は、多層コーティング、例えば、クロムコーティング及び/又はフォトポリマーコーティング(例えば、PMMAまたは他のフォトレジスト材料)を含む。回折格子86の格子ベクトルklは、ビーム書き込み機のx軸方向と直角になるように配向されている。回折格子84は格子ベクトルk0を有し、回折格子88は回折格子ベクトルk2を有する。格子ベクトルk0は、格子ベクトルk1に対して約60度の角度をなす。回折格子88の格子ベクトルk2は、対称線を挟んで鏡面対称をなし、回折格子ベクトルk1に対して約60度の角度をなす。3つの回折格子ベクトルの合計はほぼゼロである。格子ベクトルk0およびk2は、格子ベクトルk1と一緒に(描写された矢印の先端を尾に配置したときに、)二等辺三角形を形成するような長さを有する。別の実施形態では、3つの格子ベクトルk0、k1、k2が不等辺三角形を形成する。
【0048】
一実施形態では、3つの回折格子84、86、88すべての総書き込み面積は、約200mm2である。別の実施形態では、3つの回折格子84、86、88すべての総書き込み面積は、モールド基板90のほぼ全表面92であり得る。
【0049】
図6は、インプット回折格子ベクトルk0、回転回折格子ベクトルk1、アウトプット回折格子ベクトルk2を示している。インプット回折格子ベクトルk0の直線状の回折フィーチャ102は、関連するビーム書き込み経路104を経て作成され、回折格子ベクトルk2の直線状の回折フィーチャ110は、関連するビーム書き込み経路112を経て作成される。 格子ベクトルk0およびk2は、対称線を挟んで対称である。回転回折格子ベクトルk1は、回折格子ベクトルk0によって表される回折格子と回折格子ベクトルk2によって表される回折格子との間において光学的に配置される。
【0050】
図7は、モールド基板70を用いて少なくとも部分的に製造された2つの平行板平面導波路160、162の積み重ねを示す。第1の平行板平面導波路160は、少なくともインプットカップリング回折格子IDO1、回転回折格子TG1、およびアウトカップリング回折格子ODO1を備えている。格子ベクトルklaは、回転回折光学要素TG1に関連する回折格子ベクトルである。回転回折光学要素TG1は、インプットカップリング回折格子IDO1とアウトカップリング回折格子ODO1との間に光学的に配置されている。第2の平行板平面導波路162は、少なくともインプットカップリング回折格子ID02、回転回折格子TG2、およびアウトプットカップリング回折格子OD02を備えている。格子ベクトルklbは、回転回折光学要素TG2と関連する回折格子ベクトルである。回転回折光学要素TG2は、インプットカップリング回折格子ID02とアウトカップリング回折格子OD02の間に光学的に配置されている。
【0051】
モールド基板70の製造中に、回転回折光学要素TG1/TG2の直線状回折フィーチャと、ビーム書き込み機のx軸またはy軸との間の角度が平行でなくゼロ度に近づくと、ビーム書き込み機により作成された、インカップリング回折光学要素とアウトカップリング回折光学要素の直線状回折フィーチャの階段状パターンは、アウトカップリング回折光学要素0D01/0D02からの回折光に、有効な角度誤差を誘発する可能性がある。そのため、画像担持光ビームの光線の入力角度と出力角度は同じではない。この有効な角度誤差により、平行板平面導波路160、162の積み重ねられたプレートは、互いにオフセットされた直接画像を有するか、または画像からオフセットされたフレネル反射を有することになる。しかしながら、作成された直線状回折フィーチャに有効な角度誤差がない場合、平行板平面導波路160、162は、フレネル反射を所望の画像光とアライメントさせ、それによって出力画像の品質を改善する。
【0052】
デジタルビーム書き込みによるモールド基板70の製造では、ビーム書き込み機のx軸及び/又はy軸に平行ではない直線状回折フィーチャが、上記のようにジグザグパターンまたは階段状パターンで作成される。一実施形態では、回転回折光学要素26の直線状回折フィーチャを第1の好ましい書き込み方向と平行に配向することにより、インカップリング回折格子24およびアウトカップリング回折光学要素28の直線状回折フィーチャの角度を、第2の好ましい書き込み方向に向け、これら角度が対称線を挟んで鏡面対称をなす。ビーム書き込みプロセス中にこのようにモールド基板70を配向することにより、インカップリング回折格子24とアウトカップリング回折光学要素28の直線状回折フィーチャの階段状パターンを対称の階段状パターンにすることができ、それにより、階段状パターンにおける周期的誤差の効果(影響)が排除される。一実施形態では、回転回折光学要素26の直線状回折フィーチャは、好ましい書き込み方向の1つと平行から1分角(arc minute)以内に配向される。別の実施形態では、回転回折光学要素26の直線状回折フィーチャは、好ましい書き込み方向の1つと平行から1秒角(arc second)以内に配向されている。
【0053】
回転回折光学要素26の直線状回折フィーチャをビーム書き込み機の第1の好ましい書き込み方向と平行に配向し、格子ベクトルk0、k2(
図6を参照)の角度をミラーリングすることにより、モールド基板70の直線状回折フィーチャの階段状パターンにおける周期的エラーの影響を排除またはキャンセルする。
【0054】
平行板平面導波路160、162は、格子ベクトルklbが格子ベクトルklaと平行になるように、その積層において整列(アライメント)される。
図7はさらに、画像担持光を生成するマイクロプロジェクタ170の例を示している。画像担持光は、インプットカップリング回折格子ID01およびID02に向けられるように、プリズムアセンブリ172によって方向転換される。
【0055】
別の実施形態では、格子ベクトルk0およびk2は、対称線を越えてミラーリングされていない。しかしながら、格子ベクトルk1をビーム書き込み機の好ましい書き込み方向に対して垂直に向けることは、デジタルビーム書き込み機の階段状パターンによって引き起こされる関連する直線状回折フィーチャにおける周期的誤差の影響を、少なくとも部分的に排除することができる。階段状パターンによって生成される周期的誤差は両方の回折格子で同じであり、対称線を挟んで少なくとも部分的にアライメントするため、周期的誤差の影響は少なくとも部分的に排除される。
【0056】
一実施形態では、
図9に示されるように、回折格子180は、弦セグメントを形成する直線状回折フィーチャ182を含む。弦セグメントは連なって曲線を構成する。y軸に対して測定すると、直線回折フィーチャ182の角度φは、連続する曲線の弦としてy軸に沿って段階的に変化する。直線状回折フィーチャ182は、x軸に沿った回折格子180の中心線184から離れるにしたがって、段階的にy軸方向から角度的に逸脱する。この角度的逸脱は、中心線184の反対側で符号が変わる。一実施形態では、ビーム書き込み機の階段状パターンによって生成される周期的誤差を低減または排除するために、中心線184を横切って配置される直線状回折フィーチャ182Aは、好ましいビーム書き込み方向と平行に配向される。このアライメントは、中心線184を横切る回折格子180の直線状回折フィーチャ182を反映している。
【0057】
ここで、
図11を参照する。
図11は、モールド基板を提供する方法の実施形態にしたがう簡略化されたブロック図である。この方法は、平坦な表面を有する基板を提供するステップ300を含む。コーティングが平坦な表面と結合されている。この方法は、第1方向および第2方向に書き込むように動作可能なビーム書き込みシステムを提供するステップ302を含む。第2方向は第1方向と垂直である。この方法はまた、回折格子のレイアウトパターンを提供する工程304を含む。回折格子のレイアウトパターンは、第1回折格子と第2回折格子と第3回折格子を有する。第1回折格子は、第1格子ベクトルを規定する第1の複数の回折フィーチャを含む。第2回折格子は、第2格子ベクトルを規定する第2の複数の回折フィーチャを含む。第3回折格子は、第3格子ベクトルを規定する第3の複数の回折フィーチャを含む。この方法はさらに、ビーム書き込みシステム内に基板を配置するステップ306を含む。これにより、ビーム書き込みシステムは、コーティングに書き込むように動作可能となる。この方法はさらに、第1、第2、第3の複数の回折フィーチャのうちの1つを、ビーム書き込みシステムの第1方向と平行にアライメントさせるステップ308を含む。この方法は、ビーム書き込みシステムにより回折格子レイアウトパターンをコーティングに書き込むステップ310を含む。
【0058】
ここで、
図12を参照する。
図12は、モールド基板を提供する方法の実施形態にしたがう簡略化されたブロック図である。
図12に示される実施形態では、ステップ308(第1、第2、第3の複数の回折フィーチャのうちの1つを、ビーム書き込みシステムの第1方向と平行にアライメントさせるステップ)が、ステップ308Aを含んでいる。このステップ308Aでは、第1、第2の複数の回折フィーチャがビーム書き込みシステムの第1、第2方向の1つと平行にアライメントされない。ステップ310(ビーム書き込みシステムにより回折格子レイアウトパターンをコーティングに書き込むステップ)は、ステップ310Aを含む。このステップ310Aでは、第1、第2の複数の回折フィーチャを階段状パターンでコーティングに書き込む。ステップ310はさらにステップ310Bを含む。このステップ310Bでは、第1、第2回折格子が第2回折格子の周りに左右対称の配向で配置され、それによって階段状パターンによって誘発される角度的誤差が少なくとも部分的に矯正される。
【0059】
図8に示されるように、一実施形態では、ビーム書き込みシステム200は、少なくともxy直線移動プラットフォーム202と、回転手段204と、回転手段コントローラ208と、および通信手段206を含む。 通信手段206は、コントローラ208が信号を回転手段204に送信するのを可能にする。一実施形態では、通信手段206は、複数の電気的に独立したワイヤを有するワイヤケーブル(同軸ケーブルまたは8チャンネルケーブルなどであるが、これらに限定されない)である。別の実施形態では、コントローラ208は、無線通信(例えば、無線ローカルエリアネットワーキングまたは無線パーソナルエリアネットワーキングなど)を介して、回転手段204と通信することができる。
【0060】
一実施形態では、回転手段204は、電動回転ステージである。一実施形態では、回転手段204の角度精度は、0.01度よりも良い。別の実施形態では、回転手段204の角度精度は、0.001度よりも良い。ビーム書き込みシステム200は、さらに回転プラットフォーム210を含む。回転プラットフォーム210は、回転手段204に取り付けられて回転手段204とともに回転する。ビーム書き込みシステム200はまた、ビーム210を生成し出射するビーム源212を含む。ビーム源212はまた、出射ビーム210を集束及び/又は操縦するための手段(図示せず)を含む。一実施形態では、1つまたは複数の磁気レンズを用いて、出射ビーム210を集束及び/又は操縦する。別の実施形態では、出射ビーム210は、静電偏向により集束及び/又は操縦される。ビーム書き込みシステム200の他の構成要素、例えば真空チャンバーは、関連技術分野の当業者に周知であり、本明細書では図示されていない。
【0061】
ビーム書き込みシステム200の動作において、オプションの平坦な表面コーティング222を備えたモールド基板220が、回転プラットフォーム210上に配置される。回折格子は、モールド基板220上またはモールド基板220内に、または平坦な表面コーティング122内に製造することができる。モールド基板220は、回転手段204によって好ましい配向まで回転される。このようにして、すべての回折格子の直線状回折フィーチャを、好ましい書き込み方向に向けることができる。この好ましい書き込み方向は、ビーム書き込みシステム200での作成時におけるxy-直線移動プラットフォーム202の直線移動方向及び/又は好ましいビーム操縦方向と関連する。
【0062】
直線状回折フィーチャを好ましい直線の書き込み方向に向けることに加えて、ビーム書き込みシステム200を用いて、湾曲したフィーチャをモールド基板220の上又は中に及び/又はオプションの平面コーティング222の上または中に書き込むことができる。これは、xy-リニア移動プラットフォーム202のリニア移動中に回転手段204を操作することによって実現する。
【0063】
本明細書に記載の実施形態の1つまたは複数の特徴を組み合わせて、図示されていない追加の実施形態を作ることができる。様々な実施形態が上で詳細に説明されてきたが、それらは例示として提示されたものであり、限定ではないことを理解されたい。開示された主題が、その範囲、精神、または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態、変形、および修正で具体化され得ることは、関連技術の当業者には明らかであろう。したがって、上記の実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示され、その均等の意味および範囲内にあるすべての変更を含むことが意図されている。