(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】緩衝材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/40 20060101AFI20241226BHJP
C08J 9/04 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B32B27/40
C08J9/04 101
(21)【出願番号】P 2023513045
(86)(22)【出願日】2022-04-07
(86)【国際出願番号】 JP2022017266
(87)【国際公開番号】W WO2022215729
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2021066727
(32)【優先日】2021-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶浦 真
(72)【発明者】
【氏名】金原 悠帆
(72)【発明者】
【氏名】景岡 正和
(72)【発明者】
【氏名】近藤 隆博
(72)【発明者】
【氏名】菅原 敬
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-305722(JP,A)
【文献】特開2001-163991(JP,A)
【文献】特表2012-506460(JP,A)
【文献】国際公開第2017/038910(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/010422(WO,A1)
【文献】特開2019-001868(JP,A)
【文献】国際公開第2019/194161(WO,A1)
【文献】特開2018-090662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00、
C08J9/00-9/42、
C08J5/00-5/02、5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン発泡体を含む発泡層と、
前記発泡層の表面に配置され、ポリウレタンゲルを含むゲル層とを備え、
前記発泡層の23℃における貯蔵弾性率(E’
foam)が、1×10
4Pa以上、5×10
6Pa以下であり、
前記ゲル層の23℃における貯蔵弾性率(E’
gel)が、1×10
4Pa以上、
1×10
7Pa以下であり、
前記発泡層の23℃における貯蔵弾性率(E’
foam)に対する、前記ゲル層の23℃における貯蔵弾性率(E’
gel)の比率(E’
gel/E’
foam)が、0.1以上10未満であることを特徴とする、緩衝材。
【請求項2】
前記発泡層の厚みが、1000μm以上20000μm以下であり、
前記ゲル層の厚みが、500μm以上10000μm以下である、請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記発泡層の密度が、80kg/m
3以上200kg/m
3以下であり、
前記ゲル層の密度が、500kg/m
3以上1000kg/m
3以下である、請求項1に記載の緩衝材。
【請求項4】
さらに、前記ゲル層の表面に配置される表皮層を備える、請求項1に記載の緩衝材。
【請求項5】
ロボット用緩衝材である、請求項1に記載の緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、緩衝材として、ポリウレタン発泡体が知られている。ポリウレタン発泡体としては、例えば、ポリウレタンフォームおよび発泡ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
また、ポリウレタン発泡体の表面に、表皮層を配置することが知られている。
【0003】
ポリウレタン発泡体としては、例えば、以下の緩衝材が知られている。すなわち、緩衝材が、発泡層と、発泡層の表面に形成される表皮層とを備える表皮付ポリウレタン発泡体からなる。また、表皮付ポリウレタン発泡体は、発泡層は、発泡用イソシアネート成分と、発泡用活性水素基含有成分とが反応してなるポリウレタン発泡体である。また、表皮層は、脂肪族ポリイソシアネートおよび/または脂環族ポリイソシアネートを含む表皮用イソシアネート成分と、表皮用活性水素基含有成分とが反応してなるポリウレタン樹脂層である。また、表皮層の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)が、1×107Pa以上、3×108Pa以下である。また、発泡層の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)が、1×105Pa以上、5×106Pa以下である。そして、発泡層の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、表皮層の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)の比率(E’coat/E’foam)が、10以上500以下である(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、緩衝材としては、用途によっては、人肌に近い触感が要求される。より具体的には、緩衝材は、適度なソフト性および弾力性を有することが要求され、さらに、底突き感の低減が要求される。
【0006】
本発明は、触感に優れる緩衝材である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明[1]は、ポリウレタン発泡体を含む発泡層と、前記発泡層の表面に配置され、ポリウレタンゲルを含むゲル層とを備え、前記発泡層の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)が、1×104Pa以上、5×106Pa以下であり、前記ゲル層の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)が、1×104Pa以上、1×107Pa以下であり、前記発泡層の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、前記ゲル層の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)の比率(E’gel/E’foam)が、0.1以上10未満である、緩衝材を、含んでいる。
【0008】
本発明[2]は、前記発泡層の厚みが、1000μm以上20000μm以下であり、前記ゲル層の厚みが、500μm以上10000μm以下である、上記[1]に記載の緩衝材を、含んでいる。
【0009】
本発明[3]は、前記発泡層の密度が、80kg/m3以上200kg/m3以下であり、前記ゲル層の密度が、500kg/m3以上1000kg/m3以下である、上記[1]または[2]に記載の緩衝材を、含んでいる。
【0010】
本発明[4]は、さらに、前記ゲル層の表面に配置される表皮層を備える、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の緩衝材を、含んでいる。
【0011】
本発明[5]は、ロボット用緩衝材である、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の緩衝材を、含んでいる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の緩衝材は、ポリウレタン発泡体を含む発泡層と、発泡層の表面に配置され、ポリウレタンゲルを含むゲル層とを備える。そして、発泡層の貯蔵弾性率と、ゲル層の貯蔵弾性率と、それらの比とが、いずれも特定範囲である。そのため、本発明の緩衝材は、ソフト性および弾力性に優れ、底突き感を低減できる。その結果、本発明の緩衝材は、優れた触感を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の緩衝材の一実施形態の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1において、緩衝材1は、ゲル付ポリウレタン発泡体2を備えている。ゲル付ポリウレタン発泡体2は、発泡層3と、発泡層3の表面に配置されるゲル層4とを備えている。
【0015】
発泡層3は、ポリウレタン発泡体を含む。発泡層3は、好ましくは、ポリウレタン発泡体からなる。ポリウレタン発泡体は、ゲル層(後述)および表皮層(後述)を有さない発泡成形体である。ポリウレタン発泡体により、優れた弾力性が得られる。
【0016】
より具体的には、ポリウレタン発泡体としては、ポリウレタンフォームおよび発泡エラストマーが挙げられる。ポリウレタン発泡体として、好ましくは、ポリウレタンフォームが挙げられる。ポリウレタンフォームとしては、軟質フォームおよび硬質フォームが挙げられる。
【0017】
なお、軟質フォームおよび硬質フォームは、硬度により区別される。軟質フォームのアスカーF硬度は、例えば、1以上、好ましくは、10以上である。また、軟質フォームのアスカーF硬度は、例えば、90以下、好ましくは、70以下である。また、硬質フォームのアスカーF硬度は、例えば、90を超過する。ポリウレタンフォームとして、好ましくは、軟質フォームが挙げられる。
【0018】
ポリウレタン発泡体は、例えば、市販品として得ることができる。また、ポリウレタン発泡体は、例えば、発泡用イソシアネート成分と、発泡用活性水素基含有成分との反応生成物として得ることもできる。
【0019】
発泡用イソシアネート成分と発泡用活性水素基含有成分とを反応させる場合、例えば、まず、発泡用イソシアネート成分と、発泡用活性水素基含有成分(後述するプレミックスなど)とを混合して、発泡性ポリウレタン組成物を調製する。次いで、発泡性ポリウレタン組成物を、例えば、所定形状の型内で発泡させる。これにより、ポリウレタン発泡体が得られる。
【0020】
発泡用イソシアネート成分としては、例えば、ポリイソシアネート単量体、ポリイソシアネート誘導体およびイソシアネート基末端プレポリマーが挙げられる。
【0021】
ポリイソシアネート単量体としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート単量体、芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体および脂肪族ポリイソシアネート単量体が挙げられる。
【0022】
芳香族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、パラフェニレンジイソシアネート、および、ナフタレンジイソシアネート(NDI)が挙げられる。ジフェニルメタンジイソシアネートとしては、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、および、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0023】
芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、キシリレンジイソシアネート(XDI)、および、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)が挙げられる。キシリレンジイソシアネートとしては、例えば、1,3-キシリレンジイソシアネートおよび1,4-キシリレンジイソシアネートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0024】
脂肪族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、1,2-プロパンジイソシアネート、1,2-ブタンジイソシアネート、2,3-ブタンジイソシアネート、1,3-ブタンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および、2,6-ジイソシアネートメチルカプロエートが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0025】
また、脂肪族ポリイソシアネート単量体には、脂環族ポリイソシアネート単量体が含まれる。脂環族ポリイソシアネート単量体としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルネンジイソシアネート(NBDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(H12MDI)、および、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0026】
ポリイソシアネート誘導体としては、例えば、上記したポリイソシアネート単量体の変性体が挙げられる。変性体としては、例えば、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0027】
イソシアネート基末端プレポリマーは、少なくとも2つのイソシアネート基を分子末端に有するウレタンプレポリマーである。イソシアネート基末端プレポリマーは、原料ポリイソシアネートと原料ポリオールとを所定の当量比でウレタン化反応させて得られる反応生成物である。原料ポリイソシアネートとしては、例えば、上記ポリイソシアネート単量体および上記ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。原料ポリオールとしては、後述するマクロポリオールが挙げられる。また、原料ポリオールの水酸基に対する原料ポリイソシアネートの当量比(NCO/OH)は、例えば、1を超過し、好ましくは、1.5~100である。なお、ウレタン化反応は、公知の方法に準拠することができる。ウレタン化反応における反応温度は、例えば、50~120℃である。また、反応時間は、例えば、0.5~15時間である。また、ウレタン化反応は、無溶剤反応であってもよく、また、溶剤存在下における反応であってもよい。
【0028】
これら発泡用ポリイソシアネート成分は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0029】
発泡用活性水素基含有成分は、分子中に2つ以上の活性水素基(水酸基、アミノ基など)を有する成分である。発泡用活性水素基含有成分としては、例えば、発泡用ポリオール成分が挙げられる。発泡用ポリオール成分としては、例えば、マクロポリオールおよび低分子量ポリオールが挙げられる。
【0030】
マクロポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的高分子量の有機化合物である。マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、400以上であり、例えば、20000以下である。なお、数平均分子量は、水酸基当量および平均水酸基数から、公知の方法で算出できる。また、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより、ポリスチレン換算分子量として測定できる(以下同様)。
【0031】
マクロポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、エポキシポリオール、植物油ポリオール、ポリオレフィンポリオール、アクリルポリオールおよびビニルモノマー変性ポリオールが挙げられる。これらマクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。マクロポリオールとしては、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0032】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。ポリオキシアルキレンポリオールとしては、例えば、ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオール、および、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0033】
ポリオキシアルキレン(C2-3)ポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシトリエチレンポリオール、および、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリオール(ランダムまたはブロック共重合体)が挙げられる。
【0034】
ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物(結晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール)が挙げられる。また、ポリテトラメチレンエーテルポリオールとしては、例えば、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールも挙げられる。非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールでは、テトラヒドロフランと、アルキル置換テトラヒドロフランおよび/または2価アルコールとが共重合される。なお、結晶性とは、25℃において固体である性質を示す。また、非晶性とは、25℃において液体である性質を示す。
【0035】
発泡用活性水素基含有成分において、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、400以上、好ましくは、500以上、より好ましくは、1000以上である。また、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、15000以下、好ましくは、13000以下、より好ましくは、12000以下、さらに好ましくは、10000以下、さらに好ましくは、8000以下である。
【0036】
発泡用活性水素基含有成分において、マクロポリオールの平均水酸基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上である。また、マクロポリオールの平均水酸基数は、例えば、6以下、好ましくは、4以下、より好ましくは、3以下である。
【0037】
低分子量ポリオールは、分子中に水酸基を2つ以上有し、比較的低分子量の有機化合物である。低分子量ポリオールの分子量は、例えば、40以上400未満、好ましくは、300以下である。
【0038】
低分子量ポリオールとしては、例えば、2価アルコール、3価アルコール、および、4価以上のアルコールが挙げられる。2価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールおよびジプロピレングリコールが挙げられる。3価アルコールとしては、例えば、グリセリンおよびトリメチロールプロパンが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトールおよびジグリセリンが挙げられる。また、低分子量ポリオールとしては、数平均分子量が400未満になるように、2~4価アルコールに対してアルキレン(C2~3)オキサイドを付加重合した重合物も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0039】
低分子量ポリオールとして、好ましくは、2価アルコールおよび3価アルコールが挙げられ、より好ましくは、2価アルコールが挙げられる。
【0040】
発泡用活性水素基含有成分として、好ましくは、マクロポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0041】
発泡用活性水素基含有成分の平均官能基数は、例えば、2以上、好ましくは、2.5以上、より好ましくは、2.8以上である。また、発泡用活性水素基含有成分の平均官能基数は、例えば、6以下、好ましくは、4.5以下、より好ましくは、4.0以下、さらに好ましくは、3.5以下である。なお、発泡用活性水素基含有成分の平均官能基数は、仕込みの原料から算出することができる。
【0042】
また、発泡用活性水素基含有成分の平均水酸基価は、例えば、20mgKOH/g以上、好ましくは、24mgKOH/g以上である。また、発泡用活性水素基含有成分の平均水酸基価は、例えば、200mgKOH/g以下、好ましくは、70mgKOH/g以下である。なお、水酸基価は、アセチル化法またはフタル化法(JIS K1557-1(2007)に準拠)などの公知の水酸基価測定方法から求めることができる(以下同様。
)。
【0043】
また、発泡性ポリウレタン組成物は、さらに、架橋剤を含有できる。好ましくは、発泡性ポリウレタン組成物は、架橋剤を含有する。架橋剤は、ポリウレタン発泡体(発泡層3)の反発弾性を向上できる。また、架橋剤は、ポリウレタン発泡体(発泡層3)の成形密度を調整できる。また、架橋剤は、ポリウレタン発泡体(発泡層3)のセルを微細化でき、通気量を増大できる。なお、架橋剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0044】
架橋剤としては、例えば、アルカノールアミンが挙げられる。アルカノールアミンとしては、例えば、ジアルカノールアミンおよびトリアルカノールアミンが挙げられる。ジアルカノールアミンとしては、例えば、ジエタノールアミンが挙げられる。トリアルカノールアミンとしては、例えば、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンおよびトリブタノールアミンが挙げられる。
これらは、単独使用また2種以上併用できる。
【0045】
また、架橋剤としては、例えば、上記低分子量ポリオールおよび/またはそのアルキレンオキサイド付加ポリオールが挙げられる。また、架橋剤としては、例えば、4価脂肪族アミン、脂肪族2級ジアミンおよび脂環族2級ジアミンが挙げられる。また、架橋剤は、市販品として入手可能である。市販品としては、例えば、JEFFLINK 754(Huntsman社製)、CLEARLINK1000(Dorf Ketal Chemicals社製)、CLEARLINK3000(Dorf Ketal Chemicals社製)、および、ETHACURE90(ALBEMARLE社製))が挙げられる。これらは、単独使用または2種以上併用できる。
【0046】
また、発泡性ポリウレタン組成物は、さらに、触媒および発泡剤を含有できる。好ましくは、発泡性ポリウレタン組成物は、触媒および発泡剤を含有する。なお、触媒および発泡剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0047】
触媒としては、例えば、公知のウレタン化触媒が挙げられる。ウレタン化触媒としては、例えば、アミン触媒および金属触媒が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0048】
発泡剤としては、公知の発泡剤が挙げられる。発泡剤として、より具体的には、例えば、水およびハロゲン置換脂肪族炭化水素が挙げられる。ハロゲン置換脂肪族炭化水素としては、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トランス-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1-4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、塩化メチレン、トリクロロトリフルオロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンおよび四塩化炭素が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。発泡剤として、好ましくは、水が挙げられる。
【0049】
また、発泡性ポリウレタン組成物は、さらに、連通化剤を含有できる。好ましくは、発泡性ポリウレタン組成物は、連通化剤を含有する。連通化剤は、ポリウレタン発泡体(発泡層3)の連通化率を向上でき、通気量を増加できる。なお、連通化剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0050】
連通化剤としては、オキシアルキレンユニット含量が50質量%を超過するポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。なお、オキシアルキレンユニット含量が50質量%以下であるポリオキシアルキレンポリオールは、発泡用活性水素基含有成分である。
【0051】
より具体的には、連通化剤としてのポリオキシアルキレンポリオールのオキシアルキレンユニット含量は、50質量%を超過し、好ましくは、60質量%以上、より好ましくは、70質量%以上である。また、連通化剤としてのポリオキシアルキレンポリオールのオキシアルキレンユニット含量は、通常、95質量%以下である。また、連通化剤としてのポリオキシアルキレンポリオールの平均官能基数は、例えば、1.5以上、好ましくは、2以上である。また、連通化剤としてのポリオキシアルキレンポリオールの平均官能基数は、例えば、8以下、好ましくは、6以下である。また、連通化剤としてのポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は、例えば、20mgKOH/g以上、好ましくは、35mgKOH/g以上である。また、連通化剤としてのポリオキシアルキレンポリオールの水酸基価は、例えば、200mgKOH/g以下、好ましくは、150mgKOH/g以下である。
【0052】
また、発泡性ポリウレタン組成物は、必要により、その他の添加剤を含有できる。その他の添加剤としては、例えば、ポリウレタン発泡体の製造に通常使用される公知の添加剤が挙げられる。添加剤として、より具体的には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐光安定剤、消泡剤、難燃剤および着色剤が挙げられる。なお、添加剤の含有割合は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0053】
発泡性ポリウレタン組成物において、イソシアネートインデックスは、例えば、75以上、好ましくは、80以上、より好ましくは、84以上である。また、イソシアネートインデックスは、例えば、95以下、好ましくは、90以下、より好ましくは、88以下である。なお、イソシアネートインデックスは、発泡性ポリウレタン組成物中の活性水素基に対する、発泡用イソシアネート成分のイソシアネート基の比に、100を乗じた値である(NCO濃度/活性水素基濃度×100)。イソシアネートインデックスが上記範囲であれば、機械物性および耐久性に優れるポリウレタン発泡体が得られる。
【0054】
そして、発泡性ポリウレタン組成物は、例えば、成形型内において、公知の方法で反応および発泡する。発泡方式としては、例えば、スラブ方式、モールド方式、スプレー方式およびメカニカルフロス方式が挙げられる。これにより、発泡層3が得られる。
【0055】
発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)は、1×104Pa以上、好ましくは、3×104Pa以上、より好ましくは、5×104Pa以上、さらに好ましくは、1×105Pa以上である。また、発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)は、5×106Pa以下、好ましくは、1×106Pa以下、より好ましくは、8×105Pa以下、さらに好ましくは、5×105Pa以下、とりわけ好ましくは、3×105Pa以下である。発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)が上記範囲であれば、ソフト性および弾力性に優れ、底突き感が低減された緩衝材1が得られる。
【0056】
なお、貯蔵弾性率は、動的粘弾性の温度依存性(10Hz)を測定したときの23℃での値である。貯蔵弾性率は、後述する実施例に準拠して測定される(以下同様)。
【0057】
発泡層3の厚みは、成形型の種類などに応じて設定される。発泡層3の厚みは、例えば、500μm以上、好ましくは、1000μm以上、より好ましくは、5000μm以上である。また、発泡層3の厚みは、例えば、50000μm以下、好ましくは、20000μm以下、より好ましくは、10000μm以下である。
【0058】
また、発泡層3の密度は、例えば、10kg/m3以上、好ましくは、50kg/m3以上、より好ましくは、80kg/m3以上である。また、発泡層3の密度は、例えば、500kg/m3以下、好ましくは、200kg/m3以下、より好ましくは、150kg/m3以下である。密度が上記範囲であれば、機械物性および触感に優れる緩衝材が得られる。
【0059】
ゲル層4は、発泡層3の表面に配置される。ゲル層4は、ポリウレタンゲルを含む。ゲル層4は、好ましくは、ポリウレタンゲルからなる。ポリウレタンゲルにより、優れた弾力性が得られる。
【0060】
ポリウレタンゲルは、超低硬度ポリウレタンエラストマーである。ポリウレタンゲルは、ショアC硬度により定義される。ポリウレタンゲルのショアC硬度(JIS K 7312(1996年))は、例えば、90以下、好ましくは、40以下、より好ましくは、20以下、さらに好ましくは、10以下である。また、ポリウレタンゲルのショアC硬度は、例えば、0以上、好ましくは、1以上、より好ましくは、3以上、さらに好ましくは、5以上である。
【0061】
ポリウレタンゲルは、ゲル用イソシアネート成分と、ゲル用活性水素基含有成分との反応生成物を含む。より具体的には、ポリウレタンゲルは、ゲル用イソシアネート成分と、ゲル用活性水素基含有成分とを反応させることにより得られる。
【0062】
ゲル用イソシアネート成分は、平均イソシアネート基数が所定範囲であるイソシアネート成分である。ゲル用イソシアネート成分の平均イソシアネート基数は、例えば、1.8以上、好ましくは、2.0以上である。また、ゲル用イソシアネート成分の平均イソシアネート基数は、例えば、4.0以下、好ましくは、3.5以下である。ゲル用イソシアネート成分の平均イソシアネート基数が上記範囲であれば、ゲル状のポリウレタン樹脂を効率よく得られる。すなわち、ポリウレタンゲルの生産効率に優れる。なお、ゲル用イソシアネート成分の平均イソシアネート基数は、処方に基づいて、公知の方法で算出される。
【0063】
ゲル用イソシアネート成分としては、例えば、ポリイソシアネート誘導体が挙げられる。ポリイソシアネート誘導体は、ポリイソシアネート単量体の誘導体である。ポリイソシアネート単量体としては、例えば、上記の芳香族ポリイソシアネート単量体、上記の芳香脂肪族ポリイソシアネート単量体および上記の脂肪族ポリイソシアネート単量体が挙げられる。また、誘導体としては、例えば、上記した変性体が挙げられる。変性体としては、例えば、ウレトジオン変性体、イソシアヌレート変成体、アロファネート変性体、ポリオール変性体、ビウレット変性体、ウレア変性体、オキサジアジントリオン変性体およびカルボジイミド変性体が挙げられる。さらに、ポリイソシアネート誘導体として、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(クルードMDI、ポリメリックMDI)も挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0064】
ゲル用イソシアネート成分として、機械特性、耐熱性および触感の観点から、好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート単量体の誘導体が挙げられ、より好ましくは、脂肪族ポリイソシアネート単量体のイソシアヌレート誘導体が挙げられ、さらに好ましくは、ペンタメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート誘導体が挙げられる。
【0065】
ゲル用活性水素基含有成分は、分子中に2つ以上の活性水素基(水酸基、アミノ基など)を有する成分である。ゲル用活性水素基含有成分としては、例えば、ゲル用ポリオール成分が挙げられる。ゲル用ポリオール成分としては、例えば、マクロポリオールおよび低分子量ポリオールが挙げられる。
【0066】
マクロポリオールとしては、例えば、発泡用活性水素基含有成分として上記したマクロポリオールが挙げられる。マクロポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。マクロポリオールとしては、好ましくは、ポリエーテルポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルポリオールが挙げられ、より好ましくは、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられ、さらに好ましくは、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールが挙げられる。
【0067】
ゲル用活性水素基含有成分において、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、400以上、好ましくは、500以上、より好ましくは、1000以上である。また、マクロポリオールの数平均分子量は、例えば、15000以下、好ましくは、13000以下、より好ましくは、12000以下、さらに好ましくは、10000以下、さらに好ましくは、5000以下、とりわけ好ましくは、3000以下である。
【0068】
低分子量ポリオールとしては、例えば、発泡用活性水素基含有成分として上記した低分子量ポリオールが挙げられる。低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0069】
ゲル用活性水素基含有成分は、好ましくは、低分子量ポリオールを含まず、マクロポリオールのみを含有する。
【0070】
ゲル用活性水素基含有成分(総量)の平均水酸基数は、例えば、3.0以下、好ましくは、2.5以下である。また、ゲル用活性水素基含有成分(総量)の平均水酸基数は、例えば、2.0以上である。ゲル用活性水素基含有成分の平均水酸基数として、とりわけ好ましくは、2.0である。
【0071】
また、ゲル用活性水素基含有成分(総量)の平均水酸基価(OH価)は、例えば、10mgKOH/g以上、好ましくは、12mgKOH/g以上、より好ましくは、15mgKOH/g以上である。また、ゲル用活性水素基含有成分(総量)の平均水酸基価(OH価)は、例えば、150mgKOH/g以下、好ましくは、120mgKOH/g以下、より好ましくは、100mgKOH/g以下である。なお、水酸基価は、JIS K 1557-1(2007年)の記載に準拠して測定される。
【0072】
そして、ゲル層4を得るには、ゲル用イソシアネート成分とゲル用活性水素基含有成分とを、所定の金型内でウレタン化反応させる。ウレタン化反応は、無溶剤反応であってもよく、また、溶剤存在下における反応であってもよい。好ましくは、無溶剤反応である。
【0073】
ウレタン化反応では、公知の方法が採用される。反応方法としては、例えば、ワンショット法およびプレポリマー法が挙げられる。ウレタン化反応において、ゲル用イソシアネート成分中の活性水素基に対するゲル用イソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、例えば、0.2以上、好ましくは、0.4以上、例えば、0.8以下、好ましくは、0.7以下である。また、反応温度は、例えば、室温~120℃である。また、反応時間は、例えば、5分~72時間である。なお、反応温度は、一定温度であってもよく、段階的に昇温されていてもよく、また、段階的に冷却されていてもよい。
【0074】
そして、ゲル用イソシアネート成分およびゲル用活性水素基含有成分の反応により、ゲル層4が得られる。ゲル層4は、必要に応じて養生された後、金型から脱型される。
【0075】
また、ゲル層4を得るために、ゲル用イソシアネート成分およびゲル用活性水素基含有成分を、可塑剤の存在下で、反応させることもできる。
【0076】
可塑剤としては、特に制限されないが、例えば、フタル酸系可塑剤、水添フタル酸系可塑剤およびアジピン酸系可塑剤が挙げられる。フタル酸系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジウンデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルおよびフタル酸ジブチルが挙げられる。水添フタル酸系可塑剤としては、例えば、水素添加フタル酸ジイソノニルが挙げられる。アジピン酸系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチルが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用される。
【0077】
可塑剤の割合は、ゲル用活性水素基含有成分100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、50質量部以上、より好ましくは、100質量部以上である。また、可塑剤の割合は、ゲル用活性水素基含有成分100質量部に対して、例えば、1000質量部以下、好ましくは、500質量部以下、より好ましくは、200質量部以下である。
【0078】
また、上記反応においては、必要に応じて、公知の添加剤を添加できる。添加剤としては、例えば、ウレタン化触媒、フィラー、貯蔵安定剤、ブロッキング防止剤、耐熱安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、離型剤、顔料、染料、滑剤および加水分解防止剤が挙げられる。添加剤の配合割合は、適宜設定される。
【0079】
添加剤として、好ましくは、フィラーが挙げられる。フィラーとしては、例えば、熱伝導性無機粒子が挙げられる。熱伝導性無機粒子としては、例えば、窒化物粒子、水酸化物粒子、酸化物粒子、炭化物粒子、炭酸塩粒子、チタン酸塩粒子、および、その他の金属粒子が挙げられる。窒化物粒子としては、例えば、窒化ホウ素粒子、窒化アルミニウム粒子、窒化ケイ素粒子および窒化ガリウム粒子が挙げられる。水酸化物粒子としては、例えば、水酸化アルミニウム粒子および水酸化マグネシウム粒子が挙げられる。酸化物粒子としては、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、酸化銅粒子および酸化ニッケル粒子が挙げられる。炭化物粒子としては、例えば、炭化ケイ素粒子が挙げられる。炭酸塩粒子としては、例えば、炭酸カルシウム粒子が挙げられる。チタン酸塩粒子としては、例えば、チタン酸バリウム粒子およびチタン酸カリウム粒子が挙げられる。その他の金属粒子としては、例えば、銅粒子、銀粒子、金粒子、ニッケル粒子、アルミニウム粒子および白金粒子が挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用できる。
【0080】
添加剤の添加のタイミングは、特に制限されない。例えば、添加剤は、ゲル用イソシアネート成分に添加されていてもよい。また、添加剤は、ゲル用活性水素基含有成分に添加されていてもよい。また、添加剤は、ゲル用イソシアネート成分およびゲル用活性水素基含有成分の両方に添加されていてもよい。さらに、添加剤は、ゲル用イソシアネート成分およびゲル用活性水素基含有成分の混合時に添加されてもよい。
【0081】
ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)は、1×104Pa以上、好ましくは、3×104Pa以上、より好ましくは、5×104Pa以上、さらに好ましくは、7×104Pa以上である。また、ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)は、1×107Pa以下、好ましくは、5×106Pa以下、より好ましくは、1×106Pa以下、さらに好ましくは、5×105Pa以下、とりわけ好ましくは、3×105Pa以下である。ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)が上記範囲であれば、触感に優れる緩衝材が得られる。
【0082】
また、発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)の比率(E’gel/E’foam)は、0.1以上、好ましくは、0.2以上、より好ましくは、0.4以上、さらに好ましくは、0.8以上である。また、発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)の比率(E’gel/E’foam)は、10未満、好ましくは、5以下、より好ましくは、3以下、さらに好ましくは、1以下である。
【0083】
発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)の比率(E’gel/E’foam)が上記下限を下回る場合、ソフト性が低下するため、優れた触感を得られない。
【0084】
発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)の比率(E’gel/E’foam)が上記上限を上回る場合、ソフト性が低下し、また、底突き感を抑制できないため、優れた触感を得られない。
【0085】
ゲル層4の厚みは、金型の種類などに応じて設定される。ゲル層4の厚みは、例えば、300μm以上、好ましくは、500μm以上、より好ましくは、1000μm以上である。また、ゲル層4の厚みは、例えば、20000μm以下、好ましくは、10000μm以下、より好ましくは、5000μm以下である。
【0086】
また、発泡層3の厚みに対して、ゲル層4の厚みは、小さい。より具体的には、発泡層3の厚みに対するゲル層4の厚みの比(ゲル層4の厚み/発泡層3の厚み)は、例えば、0.025以上、好ましくは、0.1以上であり、例えば、10以下、好ましくは、1以下である。厚みの比が上記範囲であれば、触感に優れる緩衝材1を得ることができる。
【0087】
また、ゲル層4の密度は、例えば、100kg/m3以上、好ましくは、500kg/m3以上、より好ましくは、800kg/m3以上である。また、ゲル層4の密度は、例えば、3000kg/m3以下、好ましくは、2000kg/m3以下、より好ましくは、1000kg/m3以下である。密度が上記範囲であれば、機械物性および触感に優れる緩衝材が得られる。
【0088】
ゲル層4と発泡層3とは、公知の方法で貼り合わされる。例えば、ゲル層4は、発泡層3に対して、ゲル層4のタックにより貼り合わされる。また、例えば、ゲル層4は、発泡層3に対して、公知の接着剤を介して貼り合わされる。好ましくは、ゲル層4は、発泡層3に対して、ゲル層4のタックにより貼り合わされる。
【0089】
緩衝材1(ゲル付ポリウレタン発泡体2)は、さらに、ゲル層4の表面に配置される表皮層5を備えることができる。表皮層5としては、例えば、ポリウレタン樹脂層が挙げられる。より具体的には、表皮層5としては、例えば、公知のポリウレタン樹脂の溶液および/または分散液の硬化膜が挙げられる。
【0090】
ゲル層4の表面に表皮層5を形成する方法は、特に制限されず、公知の方法が採用される。例えば、まず、ゲル層4を形成するための金型の内面において、ゲル層4の表面側に、公知のポリウレタン樹脂の溶液および/または分散液を、塗布および硬化させる。これにより、金型の内面に表皮層5を形成する。次いで、表皮層5を備える金型を用いて、ゲル層4を形成する。その後、ゲル層4および表皮層5を脱型する。これにより、表面に表皮層5を備えるゲル層4が得られる。この場合、ゲル層4は、表皮層5に対して、ゲル層4のタックにより貼り合わされる。
【0091】
また、例えば、表皮層5を備えていない金型を用いて、ゲル層4を形成し、その後、ゲル層4の表面に、公知のポリウレタン樹脂の溶液および/または分散液を、塗布および硬化させることもできる。これにより、表面に表皮層5を備えるゲル層4が得られる。
【0092】
表皮層5の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)は、例えば、1×107Pa以上、好ましくは、3×107Pa以上、より好ましくは、5×107Pa以上、さらに好ましくは、7×107Pa以上である。また、表皮層5の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)は、例えば、3×108Pa以下、好ましくは、2×108Pa以下、より好ましくは、1×108Pa以下である。
【0093】
また、発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、表皮層5の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)の比率(E’coat/E’foam)は、例えば、0.1以上、好ましくは、1.0以上、より好ましくは、10以上、さらに好ましくは、50以上である。また、発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、表皮層5の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)の比率(E’coat/E’foam)は、例えば、2000以下、好ましくは、1000以下、より好ましくは、500以下、さらに好ましくは、300以下、とりわけ好ましくは、200以下である。
【0094】
発泡層3の23℃における貯蔵弾性率(E’foam)に対する、表皮層5の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)の比率(E’coat/E’foam)が上記範囲であれば、触感に優れる緩衝材1を得ることができる。
【0095】
また、ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)に対する、表皮層5の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)の比率(E’coat/E’gel)は、例えば、0.1以上、好ましくは、1以上、より好ましくは、10以上である。また、ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)に対する、表皮層5の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)の比率(E’coat/E’gel)は、例えば、2000以下、好ましくは、1000以下、より好ましくは、500以下である。
【0096】
ゲル層4の23℃における貯蔵弾性率(E’gel)に対する、表皮層5の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)の比率(E’coat/E’gel)が上記範囲であれば、触感に優れる緩衝材1を得ることができる。
【0097】
表皮層5の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、10μm以上、より好ましくは、20μm以上、さらに好ましくは、50μm以上、とりわけ好ましくは、70μm以上である。また、表皮層5の厚みは、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下、より好ましくは、700μm以下、さらに好ましくは、300μm以下、とりわけ好ましくは、150μm以下である。
【0098】
また、発泡層3の厚みおよびゲル層4の厚みに対して、表皮層5の厚みは、小さい。より具体的には、発泡層3の厚みに対する表皮層5の厚みの比(表皮層5の厚み/発泡層3の厚み)は、例えば、0.001以上、好ましくは、0.005以上であり、例えば、1以下、好ましくは、0.1以下である。厚みの比が上記範囲であれば、触感に優れる緩衝材1を得ることができる。
【0099】
また、ゲル層4の厚みに対する表皮層5の厚みの比(表皮層5の厚み/ゲル層4の厚み)は、例えば、0.0001以上、好ましくは、0.001以上であり、例えば、1以下、好ましくは、0.1以下である。厚みの比が上記範囲であれば、触感に優れる緩衝材1を得ることができる。
【0100】
そして、このような緩衝材1は、ポリウレタン発泡体を含む発泡層2と、発泡層2の表面に配置され、ポリウレタンゲルを含むゲル層4とを備える。そして、発泡層3の貯蔵弾性率と、ゲル層4の貯蔵弾性率と、それらの比とが、いずれも特定範囲である。そのため、緩衝材1は、ソフト性および弾力性に優れ、底突き感を低減できる。その結果、緩衝材1は、優れた触感を有する。
【0101】
さらに、上記の緩衝材1は、発泡層3により緩衝性が得られるため、ゲル層4の量を低減できる。その結果、上記の緩衝材1は、発泡層3を有しない緩衝材(例えば、ゲル層4からなる緩衝材)に比べて、軽量である。
【0102】
そのため、緩衝材1は、例えば、各種産業分野において、好適に用いられる。産業分野としては、例えば、家具分野、自動運動装置分野(ロボット分野)およびスポーツ分野が挙げられる。家具分野における緩衝材1の用途としては、例えば、家具のコーナーガード、クッション付きカーペット、および、衝突防止用クッションが挙げられる。ロボット分野における緩衝材1の用途としては、例えば、工場用ロボットの緩衝材、建物管理用ロボットの緩衝材、対人案内用ロボットの緩衝材、コミュニケーションロボットの緩衝材、および、介護ロボットの緩衝材が挙げられる。スポーツ分野における緩衝材1の用途としては、例えば、球技用プロテクターおよび格闘技用プロテクターが挙げられる。緩衝材1は、優れた触感を有するため、とりわけ好ましくは、自動運動装置分野(ロボット分野)において用いられる。すなわち、緩衝材は、とりわけ好ましくは、ロボット用緩衝材である。
【0103】
なお、
図1に示す緩衝材1は、発泡層3の表面にのみゲル層4および表皮層5が形成されているが、例えば、ゲル層4および表皮層5は、発泡層3の表面、裏面および側面の全てに形成されていてもよい。また、ゲル層4および表皮層5は、発泡層3の表面および裏面に形成され、発泡層3の側面に形成されていなくともよい。
【実施例】
【0104】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0105】
<発泡層>
原料
・1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(国際公開第2009/51114号の製造例3に従って合成した。純度(ガスクロマトグラフィー測定による。)99.9%、トランス/シス比(モル基準)=86/14)
・トリレンジイソシアネート:商品名:「コスモネートT-80」、三井化学SKCポリウレタン製
・ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンポリオール:商品名:「アクトコールED-28」、数平均分子量:4000、平均水酸基価:28.1mgKOH/g、三井化学SKCポリウレタン製)
・ポリテトラメチレンエーテルポリオール:商品名:「PTG-1000」、数平均分子量:1000、平均水酸基価=109.9mgKOH/g、保土ヶ谷化学工業製)
・ポリテトラメチレンエーテルポリオール:商品名:「PTG-3000SN」、数平均分子量:3000、平均水酸基価=37.7mgKOH/g、保土ヶ谷化学工業製)
・ポリオキシプロピレンポリオール:商品名「アクトコールT-3000」、平均水酸基価56mgKOH/g、平均官能基数3、三井化学SKCポリウレタン製
・低分子量ポリオール:商品名「1、4-ブタンジオール」、三菱ケミカル製
・触媒:アミン触媒、商品名:「DABCO 33LV」、トリエチレンジアミンの33%ジプロピレングリコール溶液、エボニック製
・触媒:アミン触媒、商品名:「DABCO TMR」、エボニック社製
・触媒:金属触媒、DBTDL、ジラウリン酸ジブチルすず(IV)(ジブチルスズジラウレート)、TCI製
・触媒:金属触媒、K―CAT XK―633、楠本化成製
・触媒:金属触媒、BiCAT8108、Shepherd Chemical Japan, Inc.
・触媒:金属触媒、商品名:「DABCO T-9」、エボニック製
・触媒:金属触媒:商品名「スタノクト」、三菱ケミカル製
・整泡剤:シリコーン系整泡剤:商品名:「Y10366J」、MOMENTIVE製・整泡剤:シリコーン系整泡剤:商品名:「B8545」、MOMENTIVE製
・整泡剤:シリコーン系整泡剤 商品名;「Niax silicone L-580」、モメンティブ製
・酸化防止剤:商品名;「イルガノックス245」、ヒンダードフェノール化合物、BASFジャパン製
・ヒンダードアミン系光安定剤:商品名;「LA-72」、アデカ製
・酸化防止剤:「JP-310」、トリデシルホスファイト、城北化学工業製
・可塑剤:商品名「DINA」、アジピン酸ジイソノニル、富士フイルム和光純薬製
・発泡剤:イオン交換水
【0106】
準備例1(発泡層1)
ポリウレタン発泡体として、テラヴィーナスWS(商品名、雪ヶ谷化学工業製、厚み10mm(10000μm))を準備した。これを発泡層1とした。
【0107】
準備例2(発泡層2)
窒素雰囲気下において、下記成分をスリーワンモーターで80℃×5時間撹拌し、イソシアネート末端プレポリマーを得た。イソシアネート基濃度は、6.64%であった。
【0108】
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン 227質量部
PTG-1000 132質量部
PTG-3000SN 641質量部
DINAに4%濃度で溶解させたスタノクト 0.125質量部
JP-310 0.023質量部
下記成分を混合し、レジンプレミックスを調製した。
【0109】
アクトコールED-28 25質量部
1,4-ブタンジオール 25質量部
イオン交換水 1.2質量部
DABCO TMR 0.5質量部
LA-72 0.5質量部
イルガノックス245 0.1質量部
B8545 1.0質量部
Y10366J 1.0質量部
次いで、レジンプレミックスを22℃±1℃に温調し、下記成分を添加した。その後、直ちにホモジナイザー(8000rpm)によって5秒間激しく攪拌し、混合物を得た。
【0110】
K-CAT XK-633 2.0質量部
BiCAT8108 2.0質量部
イソシアネート末端プレポリマー 79.4質量部
1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン 12.2質量部
(イソシアネートインデックス:105)
次いで、混合物を、80℃に温調した金型(A4サイズ×厚み10mm)に投入し、発泡させた。これを発泡層2とした。
【0111】
準備例3(発泡層3)
下記成分を混合して、レジンプレミックスを調製した。
【0112】
アクトコールT-3000 100質量部
DABCO 33LV 0.2質量部
イオン交換水 1.6質量部
Niax silicone L-580 0.5質量部
次いで、レジンプレミックスを22℃±1℃に温調し、下記成分を添加した。その後、直ちにホモジナイザー(8000rpm)によって5秒間激しく攪拌し、混合物を得た。
【0113】
DABCO T-9 0.05質量部
コスモネートT-80 25.7質量部
(イソシアネートインデックス:105)
次いで、混合物を、木製のボックスに投入してスラブ発泡させ、発泡物を60℃のオーブン内に24時間静置した。その後、発泡物を10mmの厚みに裁断した。これを発泡層3とした。
【0114】
<ゲル層および表皮層>
原料
・脂肪族ポリイソシアネート:商品名「スタビオD-376N」、ペンタメチレンジイソシアネート誘導体、三井化学製
・脂肪族ポリイソシアネート:商品名「スタビオD-370N」、ペンタメチレンジイソシアネート誘導体、三井化学製
・ポリテトラメチレンエーテルポリオール:商品名「PTXG-1800」、テトラヒドロフランとネオペンチルグリコールとの共重合体、非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコール、数平均分子量1800、平均水酸基価60mgKOH/g、平均官能基数2、旭化成製
・消泡剤:商品名「BYK-088」、シリコーン系界面活性剤、ビックケミー・ジャパン製
・触媒:ジラウリン酸ジブチルすず(IV)、東京化成工業社
・可塑剤:ヘキサモルDINCH、水素添加フタル酸ジイソノニル、BASFジャパン製・安定剤:イルガノックス245、酸化防止剤、ヒンダードフェノール化合物、BASFジャパン社
・安定剤:チヌビン234、紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール化合物、BASFジャパン社
・ポリウレタンコーティング剤:「フォルティモXSP-659」、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン系溶液、固形分濃度16%、三井化学製
【0115】
準備例4(ゲル層1および表皮層1)
金型の内面における一方側に、フォルティモXSP-659を塗布および乾燥させ、ポリウレタン樹脂からなる表皮層1を得た。表皮層1の厚みは、80~100μmであった。なお、金型として、内寸120mm×120mm×2mmの金型と、内寸120mm×120mm×10mmの金型とを使用した。
【0116】
一方、下記成分をスリーワンモーターで撹拌し、レジンプレミックスを得た。
【0117】
PTXG-1800 100質量部
ヘキサモルDINCH 127.15質量部
ジラウリン酸ジブチルすず 0.024質量部
BYK-088 0.24質量部
次いで、下記成分をスリーワンモーターで撹拌し、真空脱泡させることにより、混合物を得た。
【0118】
レジンプレミックス 100質量部
スタビオD-370N 4.66質量部
当量比(NCO/活性水素基):0.583
上記の混合物28.8gを、表皮層1が形成された金型に、泡が入らないように注意しながら流し込み、80℃のオーブンで1時間硬化させた。その後、成形物を脱型することにより、表皮層1を備えるゲル層1を得た。ゲル層1の厚みは、2mm(2000μm)または10mm(10000μm)であった。
【0119】
準備例5(ゲル層2および表皮層2)
金型の内面における一方側に、フォルティモXSP-659を塗布および乾燥させ、ポリウレタン樹脂からなる表皮層2を得た。表皮層2の厚みは、80~100μmであった。なお、金型として、内寸120mm×120mm×2mmの金型と、内寸120mm×120mm×10mmの金型とを使用した。
【0120】
一方、下記成分をスリーワンモーターで撹拌し、レジンプレミックスを得た。
【0121】
PTXG 1800 100質量部
ジラウリン酸ジブチルすず 0.01質量部
イルガノックス245 0.1質量部
チヌビン234 0.1質量部
BYK-088 0.1質量部
次いで、下記成分をスリーワンモーターで撹拌し、真空脱泡させることにより、混合物を得た。
【0122】
レジンプレミックス 100質量部
スタビオD-376N 19.5質量部
当量比(NCO/活性水素基):1.00
上記の混合物28.8gを、表皮層2が形成された金型に、泡が入らないように注意しながら流し込み、80℃のオーブンで1時間硬化させた。その後、成形物を脱型することにより、表皮層2を備えるゲル層2を得た。ゲル層2の厚みは、2mm(2000μm)または10mm(10000μm)であった。
【0123】
<緩衝材>
実施例1
表皮層1を備えるゲル層1と、発泡層1とを、ゲル層1のタックによって貼り合わせた。これにより、発泡層、ゲル層および表皮層を備える緩衝材を得た。なお、発泡層の厚みが10000μm、ゲル層の厚みが2000μm、表皮層の厚みが80~100μmであった。
【0124】
比較例1
表皮層1を備えるゲル層1と、発泡層2とを、ゲル層1のタックによって貼り合わせた。これにより、発泡層、ゲル層および表皮層を備える緩衝材を得た。なお、発泡層の厚みが10000μm、ゲル層の厚みが2000μm、表皮層の厚みが80~100μmであった。
【0125】
比較例2
表皮層2を備えるゲル層2と、発泡層3とを、ゲル層2のタックにより貼り合わせることはできなかった。そこで、これらを接着剤により貼り合わせた。より具体的にはゲル層2の表面に、市販の接着剤(商品名ウルトラ多用途SU プレミアム ソフト、コニシ製)を、ヘラで薄く伸ばしながら塗り広げた。そして、接着剤を介して、表皮層2を備えるゲル層2と、発泡層3とを貼り合わせ、15分程度放置して接着剤を硬化させた。さらに、これらを24時間放置し、接着剤を完全硬化させた。これにより、発泡層、ゲル層および表皮層を備える緩衝材を得た。なお、発泡層の厚みが10000μm、ゲル層の厚みが2000μm、表皮層の厚みが80~100μmであった。また、接着剤の乾燥厚みは、110~170μmであった。
【0126】
比較例3
表皮層1を備えるゲル層1を、緩衝材として使用した。なお、ゲル層の厚みが10000μm、表皮層の厚みが80~100μmであった。
【0127】
比較例4
発泡層1を、緩衝材として使用した。なお、発泡層の厚みが10000μmであった。
【0128】
<物性>
(1)貯蔵弾性率
ゲル層の貯蔵弾性率(E’gel)および発泡層の貯蔵弾性率(E’foam)を、以下の方法で求めた。すなわち、ゲル層の動的粘弾性の温度依存性を、動的粘弾性装置(アイティー計測制御社製、モデル:DVA-200)を用いて、引張モード、周波数10Hz、昇温速度5℃/minの条件にて測定し、その23℃における貯蔵弾性率をゲル層の貯蔵弾性率(E’gel)とした。また、発泡層のコアから20mm×20mm×10mmに切り出したサンプルの動的粘弾性の温度依存性を、動的粘弾性装置(アイティー計測制御社製、モデル:DVA-220)を用いて、圧縮モード、周波数10Hz、昇温速度5℃/minの条件にて測定し、その23℃における貯蔵弾性率をゲル層の貯蔵弾性率(E’gel)とした。また、発泡層の貯蔵弾性率(E’foam)に対するゲル層の貯蔵弾性率(E’gel)の比率(E’gel/E’foam)を算出した。
【0129】
また、表皮層の貯蔵弾性率(E’coat)を、ゲル層と同様にして求めた。表皮層の23℃における貯蔵弾性率(E’coat)は、1.6×107Paであった。
【0130】
(2)密度
ゲル層の密度および発泡層の密度を、以下の方法で求めた。ゲル層のコアから100mm×100mm×厚み10mmに切り出し、サンプルを得た。次いで、サンプルの質量および寸法を測定し、質量を体積で割ることにより、密度を求めた。また、発泡層のコアから100mm×100mm×厚み10mmに切り出し、サンプルを得た。次いで、サンプルの質量および寸法を測定し、質量を体積で割ることにより、密度を求めた。
【0131】
<評価>
(1)触感試験
緩衝材を、机の上に置いた。そして、緩衝材の上面中央部を指で押し、緩衝材の触感と、人肌触感とを対比した。なお、人肌触感とは、人間の腕腹部位を指で押したときの触感を示す。発泡層およびゲル層を有する緩衝材のサイズは、縦100mm×横100mm×厚み12mmであり、また、発泡層またはゲル層のいずれかのみを有する緩衝材のサイズは、縦100mm×横100mm×厚み10mmであった。
【0132】
なお、触感試験では、以下の項目を、総合的に評価した。
【0133】
a.接触時の柔らかさ(ソフト性)
b.応力変化の重さ(弾力性)
c.底突き感の度合い
そして、緩衝材の触感と、人肌触感との近さを、点数で評価した。具体的には、これらの触感が最も近い場合を10点とし、これらの触感が最も遠い場合を1点とした。
【0134】
なお、底突き感とは、指圧の深さが所定値に到達したときに、指圧が止まる感覚を指す。
【0135】
(2)圧縮試験
指が緩衝材に接触した瞬間、ソフトさを感じるか否かの指標を、以下の通り測定した。すなわち、緩衝材の上面中央部に、応力を付与し、0.2mm変形時の応力と、0.5mm変形時の応力とを求めた。そして、0.5mm変形時の応力を0.2mm変形時の応力で除した数値を求めた。なお、この数値が低いほど、人肌に近いソフトさを感じるとして評価した。発泡層およびゲル層を有する緩衝材のサイズは、縦100mm×横100mm×厚み12mmであり、また、発泡層またはゲル層のいずれかのみを有する緩衝材のサイズは、縦100mm×横100mm×厚み10mmであった。
【0136】
(3)質量測定
緩衝材の質量を測定した。発泡層およびゲル層を有する緩衝材のサイズは、縦100mm×横100mm×厚み12mmであり、また、発泡層またはゲル層のいずれかのみを有する緩衝材のサイズは、縦100mm×横100mm×厚み10mmであった。
【0137】
【0138】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明の緩衝材は、自動運動装置分野(ロボット分野)およびスポーツ分野において、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0140】
1 緩衝材
2 ゲル付ポリウレタン発泡体
3 発泡層
4 ゲル層
5 表皮層