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特許7611392バラスト水処理システムを制御するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】バラスト水処理システムを制御するための方法
(51)【国際特許分類】
   B63B 13/00 20060101AFI20241226BHJP
   B01D 29/66 20060101ALI20241226BHJP
   C02F 1/32 20230101ALI20241226BHJP
   B01D 24/48 20060101ALI20241226BHJP
   B01D 29/60 20060101ALI20241226BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20241226BHJP
【FI】
B63B13/00 Z
B01D29/38 510C
C02F1/32
B01D29/36 A
B01D29/10 520B
B01D29/10 530A
B01D29/38 520A
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023535755
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2021085006
(87)【国際公開番号】W WO2022122925
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】20213356.7
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】523141518
【氏名又は名称】アルファウォール・アクチエボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ラミン・ニクザド
(72)【発明者】
【氏名】マグヌス・カールソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリック・ラーゲルシュテット
(72)【発明者】
【氏名】ヨナタン・ブリクト
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/234439(WO,A1)
【文献】特開平06-126110(JP,A)
【文献】特開昭62-053715(JP,A)
【文献】特開2017-218023(JP,A)
【文献】国際公開第2014/118926(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 24/48
B01D 29/00-96
B63B 13/00
B63J 4/00
C02F 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バラスト水処理システム(1)を制御するための方法であって、前記バラスト水処理システム(1)が、逆洗要素(55)を備える逆洗構成(50)を有するフィルタユニット(40)、バラスト水の中の生存生物を制圧するための処理ユニット(60)、および前記バラスト水処理システム(1)の動作を制御するように構成された制御ユニット(20)を備え、前記方法が、
感知手段を用いるステップ(s101)において決定された、前記フィルタユニット(40)および/または前記処理ユニット(60)に関係する支配的動作条件値(PCV)を前記制御ユニット(20)の中で受信するステップ(s1010)と、
前記決定された支配的動作条件値(PCV)を、前記制御ユニットにおける支配的条件にとっての基準値(RV)または基準範囲(RR)と比較するステップ(s1020)と、
前記支配的動作条件値(PCV)が前記基準値(RV)または前記基準範囲(RR)とは異なるとき、前記バラスト水処理システムの中の前記フィルタユニット(40)および/または前記処理ユニット(60)の前記動作に関係する修正措置の実行(s102)を、前記決定された支配的動作条件値(PCV)およびステップ(s1020)における前記比較に基づいて制御するステップと、
決定された時間間隔中に前記ステップ(s101)および/または(s102)が反復されるとき、前記支配的動作条件値(PCV)の進展および前記修正措置にとっての頻度の少なくとも1つに対する傾向を追跡するステップ(s103)と、
前記支配的動作条件値(PCV)にとっての臨界値(CV)に到達する時間的な瞬間(TCV1;TCV2)を、前記ステップ(s103)における前記追跡される傾向に基づいて予測するステップ(s104)と
前記予測された時間的な瞬間(TCV1;TCV2)、
前記決定された支配的動作条件値(PCV)が前記基準値(RV)に到達したこと、
前記決定された支配的動作条件値(PCV)が前記基準範囲(RR)に到達したこと、および、
前記支配的動作条件値(PCV)が前記臨界値(CV)に到達する前の残りの時点を示す基準値(RVT)、
の少なくとも1つに基づいて、前記修正措置を実行するように前記バラスト水処理システムをさらに制御するステップ(s105)と
を含み、
前記支配的動作条件値(PCV)が、前記フィルタユニット(40)にかかる差圧を含み、
前記処理ユニット(60)が、1つ以上のUVランプを備えるUVリアクタであり、前記支配的動作条件値(PCV)を決定する前記ステップ(s101)が、UV強度を決定するステップを含む、方法。
【請求項2】
定された前記差圧(PD)が、基準差圧値(RV)とは異なるが前記差圧にとっての臨界値(CV)に到達していないとき、前記修正措置が逆洗動作を含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(s102)および/または(s105)が、予測された前記差圧(PD)および/もしくは決定された前記差圧(PD)が高ければ高いほど可動的な前記逆洗要素(55)の回転速度を大きくするステップ、ならびに/または予測された前記差圧(PD)および/もしくは決定された前記差圧(PD)が高ければ高いほど前記フィルタユニットを通る前記バラスト水の流量を小さくするステップを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
逆洗ステップが反復されるとき、前記支配的条件を決定する前記ステップ(s101)が、前記フィルタユニットにおける逆洗動作間の支配的時間を決定するステップを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ステップ(s102)および/または(s105)が、予測された前記UV強度および/または決定された前記UV強度が低ければ低いほど前記UVリアクタを通る流量を小さくするステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップ(s104)において、前記予測が線形回帰および/または非線形回帰に基づく、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
コンピュータプログラム(P)であって、制御ユニット(20)および/またはコンピュータの中に含まれるデータ処理ユニット上で前記コンピュータプログラムが実行されるとき、前記制御ユニット(20)および/または前記コンピュータに請求項1からのいずれか一項に記載の方法ステップを実行させる、命令を含み、それによって、前記データ処理ユニットを、バラスト水処理システム(1)を制御するための手段として機能させるためのコンピュータプログラム(P)。
【請求項8】
請求項に記載のコンピュータプログラムが組み込まれたコンピュータ可読媒体と、制御ユニット(20)と、を備えており、
前記制御ユニット(20)は、前記制御ユニット(20)の機能を制御するためのオペレーティングシステムがその中に記憶される不揮発性メモリ(520)と、データ処理ユニット(510)と、読取り/書込みメモリ(550)と、を有しており、
前記データ処理ユニット(510)を用いて請求項1から6のいずれか一項に記載の方法が実行される、コンピュータプログラム製品。
【請求項9】
逆洗要素(55)を備える逆洗構成(50)を有するフィルタユニット(40)、およびバラスト水の中の生存生物を制圧するための処理ユニット(60)を含む、バラスト水処理システム(1)を制御するように構成された、制御ユニット(20)であって、
感知手段を用いて決定された、前記フィルタユニット(40)および/または前記処理ユニット(60)に関係する支配的動作条件値(PCV)を受信し、
前記決定された支配的動作条件値(PCV)を前記制御ユニット(20)における支配的条件にとっての基準値(RV)または基準範囲(RR)と比較し、
前記支配的動作条件値(PCV)が前記基準値(RV)または前記基準範囲(RR)とは異なるとき、前記バラスト水処理システムの中の前記フィルタユニット(40)および/または前記処理ユニット(60)の動作に関係する修正措置の実行を、前記決定された支配的動作条件値(PCV)および前記比較に基づいて制御し、
前記バラスト水処理システムにおいて支配的動作条件値(PCV)を決定するとともに修正措置を実行することが、決定された時間間隔中に反復されるとき、前記支配的動作条件値(PCV)の進展およ前記修正措置にとっての頻度の少なくとも1つに対する傾向を追跡し、
前記支配的動作条件値(PCV)にとっての臨界値(CV)に到達する時間的な瞬間(TCV1;TCV2)を、前記追跡される傾向に基づいて予測し、
前記予測された時間的な瞬間(TCV1;TCV2)、
前記決定された支配的動作条件値(PCV)が前記基準値(RV)に到達したこと、
前記決定された支配的動作条件値(PCV)が前記基準範囲(RR)に到達したこと、および、
前記支配的動作条件値(PCV)が前記臨界値(CV)に到達する前の残りの時点を示す基準値(RVT)、
の少なくとも1つに基づいて、前記修正措置を実行するように前記バラスト水処理システムをさらに制御するように構成され
前記支配的動作条件値(PCV)が、前記フィルタユニット(40)にかかる差圧を含み、
前記処理ユニット(60)が、1つ以上のUVランプを備えるUVリアクタであり、前記支配的動作条件値(PCV)の決定が、UV強度の決定を含む、
制御ユニット(20)。
【請求項10】
決定された前記差圧(PD)が前記基準値(RV)とは異なるが前記差圧にとっての臨界値(CV)に到達していないとき、逆洗動作を実行するように構成される、請求項に記載の制御ユニット(20)。
【請求項11】
予測された前記差圧(PD)および/もしくは決定された前記差圧(PD)が高ければ高いほど可動的な前記逆洗要素(55)の回転速度を大きくすること、ならびに/または予測された前記差圧(PD)および/もしくは決定された前記差圧(PD)が高ければ高いほど前記フィルタユニットを通る前記バラスト水の流量を小さくすることを制御するように構成される、請求項9または10に記載の制御ユニット(20)。
【請求項12】
逆洗動作が反復されるとき、前記フィルタユニットにおける逆洗動作間の支配的時間をさらに決定することによって前記支配的条件を決定するように構成される、請求項9から11のいずれか一項に記載の制御ユニット(20)。
【請求項13】
前記予測されたUV強度および/または前記決定されたUV強度が低ければ低いほど前記UVリアクタを通る流量を小さくするように構成される、請求項に記載の制御ユニット(20)。
【請求項14】
線形回帰および/または非線形回帰に基づいて前記予測を実行するように構成される、請求項9から13のいずれか一項に記載の制御ユニット(20)。
【請求項15】
船舶に搭載されて構成されるかまたは前記船舶に遠隔に接続される、請求項9から14のいずれか一項に記載の制御ユニット(20)。
【請求項16】
請求項9から15のいずれか一項に記載の制御ユニット(20)を備えるかまたはそれに接続されるバラスト水処理システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆流置換要素を備える逆流置換構成を有するフィルタユニット、バラスト水の中の生存生物を制圧するための処理ユニット、および制御ユニットを備える、バラスト水処理システムを制御するための方法に関する。本開示はまた、方法ステップを実行するためのコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラム製品に関する。さらに、本発明は、方法を実行するように構成された制御デバイス、およびその制御デバイスを備えるバラスト水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
貨物が船に十分に積まれていないときに船を安定させるために充填されるバラスト水タンクとともに、船が構成されることがある。すなわち、船が、第1のロケーションの中の港においてその貨物をおろしており、次いで、第2のロケーションにおける港の中で別の貨物をピックアップするための命令を受けると、船はそのバラスト水タンクを第1のロケーションからの海水で充填する。船は、次いで、第2のロケーションの中の港に到着すると、新たな貨物を受け取るためにバラスト水タンクを空にする。海水は汚物を含み、したがって、タンクを充填する前に、かつ/または第2のロケーションにおいてタンクを空にする前に、ろ過を含めて処理される必要がある。バラスト水タンクを空にする、すなわち、バラストを取り除く前に、水の中の生物を殺すためにバラスト水も処理される。輸送された種は、第2の位置の通常の種とは完全に異なる場合があり、したがって、生態学的な大問題を引き起こすことがあるので、生物は殺される必要がある。それらの通常の環境から新たな環境に輸送される種が大問題を引き起こす場合があることがよく知られている。たとえば、輸送された種は、新たな環境の中で通常の敵を有しないことがある。あるいは、その地方の種が病気を獲得すること、および輸送された種によって撲滅されることなどがある。
【0003】
世界中で約30億~50億トンのバラスト水が輸送されると推定される。したがって、UNの国際海事機関は、バラスト水を扱うための特別なシステムが装備されるとともにそれを使用するように、すべての商船に対して要望を課す規約を発行している。船の中でバラスト水を処理する際、未処理の水が船を離れることができないことが極めて重要である。したがって、処理機器が、それが動作すべき、したがって、安全かつ最適な機能が保証されるように制御および監視される方法で、動作することが重要である。さらに、適切な方策がとられ得るようにシステムの様々な部分の機能不全を示すことができることが重要である。また、船の安全が保証されなければならない。
【0004】
流体から固形物および微生物をフィルタで除去するために、多くの領域および用途においてフィルタが使用される。1つの適用領域は、船の中のバラスト水を処理するためのシステムである。バラスト水処理システムにおいて処理されるべき海水は、バラスト水処理システムに入るべきでない大きい生物および他の物質を含むことがある。したがって、バラスト水処理システムは、バラスト水システムの注入配管とともに配置される、フィルタを有するフィルタ構成を備えることができる。フィルタは、網目のサイズよりも大きい物質をフィルタで除去する、細かい網目のあるフィルタプレートまたはシリンダを含んでよい。フィルタの適切な機能を有するために、フィルタは定期的にクリーニングされる必要がある。フィルタ要素をクリーニングする1つの方法は、フィルタで除去されている、より大きい物質を除去するために、フィルタを逆流置換することである。バラストを積むことが実行されているとフィルタは逆流置換されてよく、さもなければバラストを積むことが逆流置換によって割り込まれることがある。水が、システムに提供された同じロケーションの近くで次に排出されるので、バラストを積む間またはその直後に使用された逆流置換液は、海に戻して排出されてよい。バラストを取り除く間にもフィルタが使用されることになる場合、使用される逆流置換液は、バラストを積むことが行われたのと同じ場所に戻してポンプでくみ上げられるか、海に戻して排出する前に処理される必要があるかのいずれかでなければならない。
【0005】
すべてのタイプの水および汚物負荷を扱うことができるフィルタを設計および生産することは困難であり得る。汚物負荷は、フィルタの網目の設計に直接結びつけられる。自己クリーニングフィルタデバイスは、一般に、フィルタ媒体/網目をクリーニングするために、液体の圧力および速度に依拠する。このことは、高い汚物負荷におけるシステムの使用を制限する。自己クリーニングフィルタデバイスは、圧力バジェット限度と汚染物質充填限度の両方を考慮に入れてサイズ決定されなければならない。汚染物質充填問題は、逆流置換システムのフィルタ面積、逆流置換間隔、および逆流置換タイプに対するそれらの影響の形で現れる。逆流置換サイクルの間の実際的な最小間隔は、少なくとも、フィルタが逆流置換されるのを可能にすることに加えて異常に大きい汚染物質充填を許容するのに十分長くなければならない。特定の液状汚染物質の組合せにとっての実際の汚物保持容量もある。加えて、液状汚染物質の組合せ、逆流置換レート、および他の要因の関数である、逆流置換効率もある。フィルタ容量およびフィルタ面積を与えるために、これらのパラメータがすべて結びつく。
【0006】
フィルタ処理済みの水は、生存生物を制圧する異なるタイプの処理ユニットを用いてさらに処理されてよい。処理ユニットの例は、UVリアクタ、および海水をさらに浄化する化学的な処理ユニットである。たとえば、UVリアクタの中で、海水は、1つ以上のUVランプがいくらかの波長を発することによって生成されるUV放射を受け、そのランプは駆動ユニットによって動作させられる。これらのランプの電力は大きく、駆動ユニットからの多くの電力を必要とし、そのことは、それらが多くの熱を発生させる結果となる。しかしながら、UVランプのUV強度は経時的に劣化し、そのことは、UVリアクタ効率が劣化することがあり、もはやバラスト水を効果的かつ十分に処理およびクリーニングし得ない結果となる。UV強度が臨界レベル未満に低下すると、そのランプは新たなUVランプに交換されなければならない。化学的な処理ユニットでは、たとえば、酸化反応によって生存生物を制圧するために、十分な量の化学物質が提供されることが保証されなければならない。酸化反応が生存生物を制圧するのに十分でない場合、もっと多くの化学物質が添加される必要がある。
【0007】
船舶の中のバラスト水を処理するとき、未処理水が船舶を離れることができないようにバラストを積むことおよびバラストを取り除くことが実行されることが重要である。したがって、安全かつ最適な機能が保証されるようにバラスト水ポンピング機器ならびに処理機器が制御および監視されることが重要である。さらに、適切な方策がとられ得るようにシステムの様々な部分の機能不全を示すことができること、および船の安全が危険にさらされないことが重要である。したがって、フィルタ処理および浄化機器を有するバラスト水処理システムがロバストかつ安全な方式で動作することが保証されなければならない。
【0008】
たとえば、改善された制御によってそのような自己クリーニングフィルタの継続的な動作を改善することが試みられており、特許文献1が一例を開示する。特許文献2は、汚染されたバラスト水を処理するためのUV放射手段を備える、水処理のシステムを開示する。システムは、制御されずに未処理水がシステムを離れないことを保証するためのシステムを制御および監視することが可能な、制御ユニットを含む。
【0009】
しかしながら、システムの動作を改善するための、以前の試みにもかかわらず、特に、バラスト水に関する、より厳格な環境規制を考えると、依然としてさらなる改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第3574509号公報
【文献】米国特許出願公開第2009321365(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、システムにおけるバラスト水機器の動作時間が拡張され得るとともに、保守のための停止時間が最小化され得るように、バラスト水処理システムの制御をさらに改善することである。さらなる目的は、フィルタの長時間の継続的な動作が取得され得るように、バラスト水処理システムの中の自己クリーニングフィルタ構成の制御を改善することである。また別の目的は、長時間の動作時間が取得され得るように、UVリアクタなどの処理ユニットの制御を改善することである。さらに、フィルタの早すぎる目詰まりを防止することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示による発明によって、また添付の特許請求の範囲の中でさらに規定するように、目的が達成される。
【0013】
特に、逆流置換要素を備える逆流置換構成を有するフィルタユニット、バラスト水の中の生存生物を制圧するための処理ユニット、およびバラスト水処理システムの動作を制御するように構成された制御ユニットを備える、バラスト水処理システムを制御するための方法によって、本目的が達成される。方法は、
感知手段を用いて決定された、フィルタユニットおよび/または処理ユニットに関係する支配的動作条件値(PCV:prevailing operational condition value)を制御ユニットの中で受信するステップと、
決定された支配的条件値を、制御ユニットにおける支配的条件にとっての基準値または基準範囲と比較するステップと、
支配的動作条件値が基準値または基準値範囲とは異なるとき、バラスト水処理システムの中のフィルタユニットおよび/または処理ユニットの動作に関係する修正措置の実行を、決定された支配的条件値および比較ステップに基づいて制御するステップと、
決定された時間間隔中にステップが反復されるとき、支配的動作条件値の進展および/または修正措置にとっての頻度に対する傾向を追跡するステップと、
支配的動作条件値にとっての臨界値に到達する時間的な瞬間を、ステップにおける追跡される傾向に基づいて予測するステップと、
予測、および/またはその基準値に最初に到達するどの値でも決定された支配的条件値に基づいて、修正措置を実行するようにバラスト水処理システムをさらに制御するステップとを含む。
【0014】
予測にとっての基準値とは、予測による、支配的動作条件値にとっての臨界値に到達する前の残りの時間を示す時間的な基準値を意味する。支配的条件にとっての基準値とは、事前決定された設定値を意味する。したがって、その基準値に最初に到達するどの値でもとは、支配的条件にとっての基準値に到達していなくても、時間的な基準値に到達する場合、修正措置が実行されることを意味する。その逆も同様であり、時間的な基準値にまだ到達していなくても、支配的条件にとっての基準値に到達する場合、修正措置が実行される。
【0015】
本方法によって、多くの利点が取得されてよい。システムを制御する際に支配的条件だけでなく支配的条件の進展の予測も使用され得るので、動作時間が延長されてよい。同時に、制御は、制御決定のための基礎として、そのそれぞれの基準値に最初に到達するものはどれでも支配的条件または予測された支配的条件のいずれかを使用し得るので、システムの安全な使用が保証される。
【0016】
支配的条件を決定するステップは、フィルタユニットにかかる差圧を決定することを含んでもよい。追加または代替として、逆流置換構成における電力信号が使用されてよい。
【0017】
修正措置は、決定された差圧が基準差圧とは異なり、すなわち、基準差圧よりも大きいが差圧にとっての臨界値に到達していないとき、逆流置換動作を含んでもよい。
【0018】
さらに、支配的条件を決定するステップは、逆流置換ステップが反復されるとき、フィルタユニットにおける逆流置換動作間の支配的時間を決定することをさらに含んでもよい。
【0019】
逆流置換を制御するステップは、予測された差圧および/もしくは決定された差圧が高ければ高いほど可動逆流置換要素の回転速度を大きくすること、ならびに/または予測された差圧および/もしくは決定された差圧が高ければ高いほどフィルタを通るバラスト水の流量を小さくすることを含んでもよい。
【0020】
したがって、フィルタユニットの動作、すなわち、ろ過プロセス、および、たとえば、逆流置換動作に関係する、修正措置を制御することによって、フィルタ構成の動作時間が延長されてよい。たとえば、修正措置が、経時的にフィルタにかかる差圧値の予測および/または決定された支配的差圧値に基づいて修正される、フィルタユニットへの注入フローの制御を含むとき、その結果、これらの2つのインジケータのうちのいずれかが、減らされた流れを示唆する場合、流れは減らされる。修正措置は予防的な方式でそのように行われてよく、たとえば、逆流置換要素またはノズルの回転速度が、それが必要とされる前にすでに大きくされることが可能であり、それによって、フィルタの目詰まりが防止され得る。同様にして、フィルタの目詰まりを防止するために、システムを通る流れが減らされてよい。
【0021】
さらなる代替形態では、処理ユニットが、1つ以上のUVランプを備えるUVリアクタであるとき、支配的動作条件を決定するステップは、UVリアクタのUV強度を決定することを含んでもよい。
【0022】
そのステップにおける修正措置は、予測されたUV強度および/または決定されたUV強度が低ければ低いほどUVリアクタを通る流量を小さくすることを含んでもよい。
【0023】
修正措置はまた、UVリアクタをクリーニングするための定置クリーニング(CIP:cleaning in place)プロセスを実行することを含んでもよい。
【0024】
追加として、UVランプのうちのいずれかが、低くなったUV強度を有する場合には、未処理の水がUVリアクタを通ることを防止するために、UVリアクタを通る流れが減らされてよい。一方、決定された差圧が予測された差圧よりも高い場合には、システムは、たとえば、流れが減らされるかまたは逆流置換要素の回転速度が大きくされるかのいずれかのように制御される。このようにして、動作上の障害を防止するとともにクリーニングおよび保守のための間隔を延長することが可能である。
【0025】
予測のステップは、線形回帰および/または非線形回帰に基づいてよい。
【0026】
本発明はまた、制御ユニットおよび/またはコンピュータの中に含まれる処理ユニット上でプログラムが実行されるとき、制御ユニットおよび/またはコンピュータに上記の方法ステップを実行させる、命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0027】
本発明はまた、上記で規定されたコンピュータプログラムが組み込まれたコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータプログラム製品に関する。
【0028】
上記の目的はまた、上記で規定されたような方法ステップを用いてバラスト水処理システムを制御するように構成された制御ユニットによって達成される。制御ユニットは、船舶に搭載されて構成されてよく、または船舶に遠隔に接続されてよい。
【0029】
上記の目的はまた、上記で規定したような制御ユニットを備えるかまたはそれに接続されるバラスト水処理システムによって達成される。
【0030】
本発明のさらなる態様は、従属請求項および説明から明らかである。
【0031】
さらなる目的、特徴、および利点が、図面を参照しながら本発明のいくつかの実施形態の以下の詳細な説明から現れる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】バラストを積む間に図示されるバラスト水フィルタ構成10を含むバラスト水処理システム1の一例を示す図である。
図2a】ろ過中のバラスト水フィルタ構成の一例を示す図である。
図2b】逆流置換中の図2aのバラスト水フィルタ構成を示す図である。
図3】本開示の方法のステップを示すフローチャートである。
図4】予測線を用いて経時的な差圧PDの進展を示す図である。
図5】一実施形態による制御デバイスまたはコンピュータを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
バラスト水処理システムは、バラスト水を海に戻して排出する前に海水を処理するように構成される。バラスト動作の(バラストを積む)間、海水は、海からポンプでくみ上げられフィルタを通って導かれ、フィルタは、より大きい粒子および生物を除去する。ろ過の後、バラスト水の中の生存生物を制圧するために海水が処理ユニットに供給される。制圧することとは、生存生物を生存可能でないかまたは死んだ状態にすることを意味する。
【0034】
フィルタユニットの下流で使用され得る、市場におけるいくつかのタイプの処理ユニットがある。たとえば、生存生物を制圧するために生存生物が酸化させられる、化学的な処理ユニットが使用され得る。そのようなシステムの一例は、海水から酸化消毒剤を生み出すための電気塩素処理が使用される、電気化学システムである。バラスト水を海に戻して排出する前に、総残留オキシダント含有量(TRO:total residual oxidant content)が排出に対する許容可能レベル未満である必要がある。TROは、たとえば、ナトリウムチオ硫酸塩の添加によって低減され得る。TROレベルを管理することは、センサを用いたTROの決定を必要とする。
【0035】
処理ユニットの別の例は、1つ以上のUVランプを備えるUVリアクタであり、ここで、UV光を用いて水が処理される。UVリアクタでは、UVランプは、高いUV強度を伴って海水に放射する。UVランプは、ランプ駆動キャビネットの中のランプ電源装置によって電力供給されてよい。UVランプが高い強度を有することが重要であり、したがって、UVリアクタは、任意の汚物を除去することまたはスケーリングのために、バラスト水処理動作間にクリーニングされる必要がある。リアクタは、たとえば、定置クリーニング(CIP)動作モジュールを使用することによって、クリーニングされ得る。クリーニングされるとき、リアクタは、最初に真水でゆすがれ、次いで、リアクタを通ってクリーニング液が循環させられる。プロセスの終わりにおいて、リアクタは真水が充填され得る。
【0036】
UVリアクタおよび進行中のプロセスは、制御ユニットによって制御および監視され得る。制御はまた、たとえば、リモートインターフェースを介して、リモート制御パネルおよび/または船の統合制御システムもしくは主制御システムから実行され得る。
【0037】
バラスト水システムの中での流体の流れは、1つ以上の流量計によって監視されることおよび1つ以上の制御バルブを用いて調整されることが可能であり、それらは制御ユニットに接続されてよい。
【0038】
バラストを積む間、バラスト水処理システムが開始される。UVリアクタが使用される場合には、リアクタの中のUVランプが加熱される。ランプが準備できていると、操作者によるかまたは自動的に、バラスト水ポンプが開始される。バラスト水が、次いで、海水箱からフィルタにポンプでくみ上げられ、フィルタは、より大きい粒子および生物を除去する。このことはまた、バラスト水タンクの中の沈殿物蓄積の量を低減する。フィルタの中で捕らえられた生物および沈殿物は、通常のフィルタ逆流置換動作を介して船外に流される。ろ過の後、生存生物がその中で制圧されるUVリアクタに水が供給される。リアクタの中の1つ以上のランプのUV強度が最小値未満に落ちる場合、処理は継続されてよいがシステム警報が作成されてよい。しかしながら、より低い強度を伴って処理要件が満たされることを保証するために、流れが減らされるようにプロセスが修正されてよい。流れの低減が十分でない場合、ランプの強度を高くすることが可能である。これらの措置が十分でない場合、サービスを実行するために処理動作が停止されなければならない場合がある。
【0039】
バラスト水処理システムのフィルタをクリーンに保つために、フィルタは自動的に逆流置換され得る。逆流置換動作は、バラストを積むプロセスに割り込むことなく、進行中のプロセス中に実行され得る。逆流置換は、フィルタ要素領域の一部しかクリーニングされない場合、ろ過プロセスに割り込まなくてよい。特定の時間においてクリーニングされない領域は、バラスト水のろ過を継続することができる。制御システムから手作業で逆流置換を開始することも可能である。バラスト動作が停止されると、システムが完全停止になる前に逆流置換が実行され得る。逆流置換のために使用される水は、バラストを積む現場において海に直接戻され得る。効率的なろ過を確保するために、逆流置換動作は、決定された時間設定間隔で実行されるか、またはフィルタの中の汚物の表示によってトリガされてよい。フィルタにかかる圧力降下、すなわち、差圧が、フィルタ注入口および排出口における圧力センサおよび/または送信機によって監視され得るとともに支配的動作条件値PCVとして決定され得る。フィルタの中の粒子によって引き起こされる、増大した差圧によって、汚物が検出され得る。差圧は、バラスト水処理制御ユニットの中で受信されてよく、ここで、監視された差圧が基準値と比較され得る。差圧がパラメータ基準値に到達すると、自動逆流置換動作が開始する。
【0040】
ここで、本開示によるバラスト水システム1の一例が概略的に示される図1を参照する。
【0041】
バラスト水処理システム1はバラスト水フィルタ構成10を含み、図1はバラストを積む間のシステムを示す。バラスト水処理システム1は制御ユニット20によって制御される。バラストを積む間、海水注入口32を通ってバラスト水ポンプ30を用いて海水がポンプでくみ上げられる。バラストを積むこととは、船が、たとえば、港または海にいるとき、海水がそれによって船の中に取り込まれるプロセスを意味する。バラストタンクの中で運ばれるバラスト水の目的は、船の安定性を保証することである。バラストを取り除くこととは、船が港または海にいるとき、海水がそれによって船のバラスト水タンクの外に取り出されるプロセスである。バラストタンクは、バラストを積む動作およびバラストを取り除く動作を実行するために配管システムおよびバラストポンプに連結される。
【0042】
バラスト水ポンプ30は、制御ユニット20によって制御され得、2方向の物理接続またはワイヤレス接続301を介して制御ユニットに接続されて構成され得る。バラスト水ポンプ30は、バラスト水フィルタ構成10の上流または下流に配置されてよい。図示の図1では、ポンプ30はバラスト水フィルタ構成10の上流に配置される。
【0043】
海水は、フィルタユニット注入ライン34を介してフィルタユニット40にポンプでくみ上げられる。注入ライン34は、たとえば、故障の場合に、フィルタを通る流れを止めるかまたは減らすための、第1の閉鎖バルブ35を備えてよい。しかしながら、通常のバラストを積む動作中、海水は、注入ライン34を通ってフィルタユニット40の水注入口44に供給される。フィルタ構成10は、第2の閉鎖バルブ37を含むバイパスライン36を備えてよい。バイパスライン36は、閉鎖バルブ35の上流にライン分岐を有してよい。フィルタ構成10は、フィルタ排出口46と流体連結した水排出ライン38をさらに備える。フィルタ排出口46の下流に、さらなる第3の閉鎖バルブ39が配置されてよい。バイパスライン36の第2の分岐は、第3の閉鎖バルブ39の下流、かつこの図示の例ではUVリアクタ60である処理ユニットの上流で、排出ライン38に連結されてよい。
【0044】
フィルタユニット40は、注入側421および排出側422を有するフィルタ要素42を備える。フィルタ要素は、フィルタユニットハウジング41によって取り囲まれ得る。図1の概略図においてフィルタ要素42は詳細には表示されない。しかしながら、フィルタ要素は、知られている任意のタイプのものであってよく、たとえば、2つ以上の中空の円筒形フィルタ要素ハウジング、すなわち、内側および外側のフィルタ要素ハウジングの間に挿入される、フィルタ媒体を備えてよい。ハウジングの各々は、水が流れることを可能にしながらフィルタ処理を支援するために、削孔されたシリンダ壁を有してよい。フィルタ媒体は、知られている任意のタイプのものであってよく、たとえば、ポリプロピレンベース材料などの高分子材料および/または金属製もしくはセラミック製の材料の、スクリーンを備えてよい。スクリーンは、海水ろ過に対して適合される好適な網目サイズを有する。好適には、フィルタ要素は、耐食性があり、かつ塩を含んだ海水条件において使用するのに適した、材料を含む。フィルタ要素は、海水から生存生物とプラスチックなどのごみの両方をフィルタ処理するように適合され得る。内側および外側のフィルタ媒体ハウジングは、たとえば、円形円筒形状を有してよいが、他の形状が考えられる場合がある。
【0045】
図1に概略的に示すように、フィルタ要素42の注入側421はフィルタユニット注入ライン34と流体連通して構成され、フィルタユニット注入ライン34を通じて、フィルタ処理されていない海水、すなわち、フィルタ要素42を通過していない海水が、バラストを積む間に第1の流れ方向でフィルタユニット40にポンプでくみ上げられる。第1の流れ方向は、図1では矢印によって示される。フィルタ処理されていない海水は、変形形態によれば、フィルタユニット40の下部に位置するフィルタ注入口44を介してフィルタユニット40に供給されてよい。フィルタ注入口44は、フィルタ要素42の半径方向に内向きに、すなわち、フィルタユニット40の中心軸Aの近くに、フィルタ処理されていない海水の流れを導くように適合される。水流は、注入側421から排出側422への方向で海水がフィルタ要素を通るように、接線方向に構成されてよく、排出側422は、注入側421から半径方向に外向きに配置される。フィルタ要素の網目サイズよりもサイズが大きいすべての物質は、フィルタ要素の中で捕捉される。このことは、いくつかの間隔でフィルタ要素がクリーニングされない限り、捕捉された物質によってフィルタ要素が目詰まりするようになることを意味する。たとえば、バラストを積むことが実行されるとき、または事前決定された間隔で、逆流置換によってクリーニングが実行されてよい。フィルタユニット40は、フィルタ処理済みの水がそれを通じて流れるように構成されるフィルタ処理済み海水排出口46、および第4の閉鎖バルブ47が装備されている逆流置換排出口48をさらに備える。さらに、真水タンク56から提供され得る真水のための真水注入口54、およびフィルタ要素42の上流のドレイン排出口49が、システムの中に含まれてよい。
【0046】
本開示のフィルタ構成10は自己クリーニング型であり、可動逆流置換要素55を有する逆流置換構成50を備え、図2aおよび図2bも参照されたい。逆流置換要素55は、フィルタ要素42およびそれらの注入側421にわたって移動し、それらに捕捉された物質を除去するように構成される。フィルタデバイスの逆流置換モード中、流体の流れ方向は一時的に逆転する。
【0047】
可動逆流置換要素55は、フィルタユニット40の中心軸Aに相当する回転軸の周囲を回転するように構成される。逆流置換要素55は可変速度モーターMによって駆動され、可変速度モーターMは、逆流置換要素55の回転運動を駆動するように構成される、ギアのあるモーターであってよい。ギア速度は、たとえば、15から50RPMであってよいが、それらに限定されない。ギア比は、たとえば、1/70であってよいが、それらに限定されない。可変速度モーターMは制御ユニット20に接続され、制御ユニット20によって制御されてよい。たとえば、制御ユニット20は、モーターの回転速度を制御するように構成される、ユニット20の内側のインバータを含んでよい。モーターはまた、制御ユニット20の中に含まれるインバータによって制御される標準的なモーターであってよい。標準的なモーターまたはギアのあるモーターは、2方向の物理接続またはワイヤレス接続501を介して制御ユニットに接続されて構成され得る。
【0048】
フィルタ構成10は、フィルタ要素の注入側と排出側との間の差圧PDを感知するように構成された1つ以上の感知手段Pをさらに備える。感知または測定された差圧PD値は、支配的動作条件値PCVとして決定されてよい。図面において、感知手段は1つの要素として概略的に示されるが、フィルタの注入口と排出口の両方において圧力センサが設けられてよい。
【0049】
感知手段Pは制御ユニット20に接続される。制御ユニット20は、決定された支配的条件値PCVに対応し得る感知された差動値を受信するように構成される。基準差圧PRefと比較したときの、差圧PDの上昇は、逆流置換動作、および/またはフィルタユニットもしくはバラスト水処理システム1を通る流量の減少などの、修正措置を実行することにつながる。
【0050】
制御ユニット20は、追加として、感知された差圧および/または海水の注入フローに基づいて可動逆流置換要素55の回転速度を制御するように構成されてよい。決定された支配的条件値として、感知された差圧および/または海水の注入フローに基づいて、可動逆流置換要素の回転速度を制御するように制御ユニット20を構成させることによって、フィルタユニットの中の汚物のレベルに基づいて、修正措置として逆流置換要素の回転速度を制御することが可能である。すなわち、差圧が高ければ高いほど、または流れが多ければ多いほど、回転速度はより速くてよく、逆も同様である。
【0051】
図2aでは、ろ過、すなわち、通常のバラストを積む動作中の、フィルタユニット40が概略的に示される。海水が、注入口44を通って注入ライン34から入り、注入側421から排出側422までフィルタ要素42を通って流れる。フィルタ要素42の注入側421において、フィルタ処理された汚物が捕捉される。フィルタ処理済みの水はチャンバ423を通り、排出口46を通ってフィルタから外に流れ、バラストタンクの中に導かれる。ろ過中、フィルタは静的なフィルタとして動作することができ、移動する部分がなく、モーターMは動作中でなく、逆流置換要素55は停止している。
【0052】
図2bに示す逆流置換において、モーターMは、回転軸Aの周囲で、図2bの中の矢印によって示すように回転するように、逆流置換要素55を駆動し始める。同時に、第4の閉鎖バルブ47、すなわち、逆流置換バルブ47が開く。逆流置換要素55は、フィルタ要素42の内側で回転する。フィルタ要素の注入側421における汚物は、矢印425によって示すように、ノズルの前方で高効率逆流置換フローによってクリーニングされる。逆流置換フローは、排出側422から注入側423までフィルタをクリーニングするために、チャンバ423からのフィルタ処理済みの水を使用する。水は、汚物と一緒に、逆流置換排出口48を通って、かつ逆流置換バルブ47を介して外に、逆流置換要素55を介して導かれる。
【0053】
逆流置換要素55の前方にない、フィルタ要素のすべての領域が、矢印426および排出口46における矢印によって示されるようにフィルタ処理している。逆流置換が行われると、たとえば、ほぼ20秒後、モーターは停止し、逆流置換バルブ47が閉じられる。フィルタは、次いで、バラストタンクへの完全な流れを伴う、ろ過モードに戻る。
【0054】
逆流置換動作が頻繁に実行されるようにトリガされる場合、制御ユニットは、継続的である逆流置換動作を開始してよい。このことは、逆流置換によって除去されない粒子の長期間の蓄積をフィルタ要素が受けるとき、経時的に起こり得る。このうちの1つの効果は、差圧が経時的に高くなることである。長期間の汚物蓄積の程度は、水条件に依存する。しかしながら、極めて濁った水の中で船が貨物を運んでいる場合には、もっと頻繁にフィルタ要素をクリーニングすることが必要である場合がある。継続的に、または短い間隔を伴って、圧力トリガ型の逆流置換が実行される場合、フィルタ要素は手作業でクリーニングされるべきである。このクリーニングは面倒であり、そのような手作業のクリーニングにとって間隔を短縮する要望がある。この目的は、以下でより詳細に説明される本方法によって取得され得る。
【0055】
図1における本例によるバラスト水処理システムは、処理ユニットとしてUVリアクタ60をさらに備える。処理ユニットは、上述のように化学的な処理ユニットであり得る。UVリアクタは、図1において、複数のUVランプ64を含むリアクタ容器62を備え、そのうちの1つだけが参照符号とともに図示される。ランプ64は、UVリアクタの中のUVランプに電力を与えるランプ駆動キャビネット65に接続される。フィルタ処理された海水がUVリアクタの中で処理され、ここで、UV光は、生物の再成長を防止することによって生存生物を制圧するために細胞DNAを不活性化する。UV光はまた、基を生成する。基は極めて反応しやすく、微生物および他の有機汚染物質がそれらの膜を破壊して瞬時に反応する。基は短命であり数ミリ秒の間しか存在しない。このことは、基がUVリアクタの内側にしか存在しないことを意味する。リアクタの中で生み出される基の数量は、基がリアクタを通過するときに水を処理するのに十分である。したがって、処理プロセスに添加される化学物質がなく、生成される毒性の残渣がない。水が化学的に影響を受けないので、有害な環境影響がない。
【0056】
UVリアクタ60は、バラスト水注入口66およびバラスト水排出口68、真水および/またはクリーニング液注入口72および排出口74、ならびにリアクタの中のランプ64によってもたらされるUV強度を検出するように構成された1つ以上のセンサ61をさらに備える。検出されたUV強度は、制御ユニット20の中で受信されてよく、決定された動作条件値PCVに対応し得る。ランプの数は様々であってよく、たとえば、10個から30個、たとえば、20個のランプであってよい。UVランプは、個々の水晶ガラススリーブの中に封入される。
【0057】
ランプがつけられると、ランプは極めて暖かくなることがある。したがって、ランプは、通常、つけられているときはいつでも冷却される。ランプがつけられているとき、浄化されるべきバラスト水がリアクタの中に十分にあることを確保するために、各リアクタは、レベルセンサおよび/またはレベルスイッチが装備されてよい。レベルスイッチはまた、定置クリーニング(CIP)プロセス中、十分なレベルのクリーニング液がリアクタの中にポンプでくみ上げられることを確保し得る。ランプがバラスト水によって十分に冷却されることを確保するために、各UVリアクタは、温度センサまたはスイッチ(図示せず)が装備されてよい。センサは制御ユニット20に接続されてよく、制御ユニット20は、事前決定された温度、たとえば、摂氏約60度においてリアクタを停止させるように構成され得る。リアクタはまた、決定された温度、たとえば、摂氏約65~70度よりも温度が高い場合にリアクタを自動的に遮断する、スイッチを備えてよい。
【0058】
1つ以上のUVセンサ61は、1つ以上のUVランプのUV強度を感知することによって、UVリアクタの内側の水透過率に関してUVランプ効率を監視する。感知されたUV強度は、支配的動作条件PCVとして決定されてよい。センサ61は、感知されたUV強度が支配的条件値PCVとして受信される制御ユニット20に接続される。この入力に基づいて、通常、全容量のうちの50%と100%との間で、修正措置としてUVランプへの電力が調整され得る。UVランプは、それらが依然として有効である可能な最低レベルまで減光されてよい。
【0059】
ランプ電源装置を含むランプ駆動キャビネット65は、ランプ駆動キャビネット65に接続されたUVリアクタの中のUVランプに電力供給する。ランプ駆動キャビネット65は、UVリアクタ62に遠隔に接続されてよい。ランプ駆動キャビネット65は、2方向の有線接続またはワイヤレス接続を介して制御ユニット20に接続されてよい。ランプ電源装置はまた、各UVランプの機能を監視し、障害が発生する場合に措置を取るように構成されてよい。ランプ駆動キャビネット65は、適切な動作温度を維持するために冷却システムが装備されてよい。
【0060】
バラスト水処理システム1は、システム全体を制御および監視するために使用され得る制御ユニット20をさらに備える。制御ユニット20はまた、統合される場合、船の他のシステムおよび構成要素と通信するために使用されてよい。制御ユニットは、リモートインターフェースを用いて統合されてよい。制御ユニットは、同じロケーションにおいて、または遠隔のロケーションにおいて、統合制御パネルを備えてよい。制御ユニットは、パラメータを設定し、動作し、かつバラスト水処理システムを監視するために使用されてよい。
【0061】
本発明は、上記で説明したように、特にバラスト水システムを制御するための方法に関する。方法のステップが図示される図3を参照する。方法は、第1のステップs101として、感知手段を用いて感知された、フィルタユニット40および/または処理ユニット60に関係する支配的動作条件値PCVを決定するステップ(s101)を含む。感知手段は、継続的にまたは設定された時間間隔で支配的条件値を感知するように構成されてよい。代替として、制御ユニットは、支配的条件値PCVの要求を感知手段へ送るように構成される。制御ユニット20は、感知手段から支配的条件値を自動的に受信するように構成されてよい。代替として、制御ユニットは、要求時に支配的条件値を受信するように構成されてよい。
【0062】
支配的条件値は、たとえば、フィルタユニット40にかかる差圧PDであってよく、フィルタの中の汚物のレベルを示してよい。差圧PDは、1つ以上の圧力センサPを用いて決定されてよい。追加または代替として、支配的条件値は、可変速度モーターからの感知された出力電力信号に基づいて決定されてよい。異常電力ピークは、逆流置換要素の機械的故障、またはフィルタユニットの中の高い汚物負荷を示すことがある。
【0063】
別の実施形態によれば、かつ代替または追加として、UVランプの感知されたUV強度が支配的条件値に対応し得る。UV強度は、1つ以上のUVセンサを用いて測定されてよい。
【0064】
たとえば、上記で説明したものと組み合わせて、システムを通る流量などの他の支配的条件値も、感知手段を用いて決定されてよい。
【0065】
次のステップs1010において、支配的条件に対する決定された値が制御ユニット20の中で受信される。支配的動作条件値を決定するステップs101および制御ユニットにおける支配的条件値を受信するステップs1010は、1つのステップとして統合されてよく、感知または決定された値が制御ユニットの中で自動的に受信されることを意味する。制御ユニットでは、支配的条件に対する決定された値が、ステップs1020における支配的動作条件値PCVにとっての基準値すなわち設定点値(RV)または基準範囲(RR)と比較され得る。基準値は、たとえば、システムの試運転中に設定された基準値であってよく、または基準値は、デバイス、たとえば、UVランプの製造業者によって設定されてよい。
【0066】
決定された支配的条件値(PCV)に基づいて、たとえば、決定された支配的条件値が基準値とは異なるとき、制御デバイスは、バラスト水処理システムの中で修正措置を実行するように構成される。修正措置を実行することとは、以前または通常の動作状態と比較していくつかの方法で動作が修正されるように、制御ユニットがコマンドをプロセス機器へ送ることを意味する。たとえば、支配的差圧が基準値RVよりも大きいが、フィルタの手作業のクリーニングを必要とする、差圧にとっての臨界値CVよりも小さい場合、逆流置換動作が実行される。代替として、逆流置換動作の頻度が増やされてよい。代替または追加として、示される差圧に応じて、逆流置換要素またはノズルの回転速度が変更されてよい。代替または追加として、たとえば、フィルタおよび処理ユニット60を通る流れを減らすことによって、プロセスにおける流量が修正されてよい。
【0067】
処理ユニットがUVリアクタである場合には、かつUVリアクタにおけるUV強度が基準値RVよりも低い場合、ランプの強度を高くするためのUVランプへの電力が増大されてよく、かつ/またはリアクタを通る流量が小さくされてよい。
【0068】
これらの修正措置は例であり、他のタイプの修正ステップが実行されてよい。
【0069】
本方法は、決定された時間間隔中にステップs101および/またはs102が反復されるとき、支配的動作条件値PCVの進展および/または修正措置にとっての頻度に対する傾向を追跡するステップ(s103)をさらに含む。決定された時間間隔は、たとえば、全部のバラストを積む1つ以上の動作の持続時間、またはそれらの部分だけであってよい。
【0070】
本発明によれば、支配的条件にとっての臨界値CVに到達する瞬間または時点が、追跡される傾向に基づいてステップs104において予測される。予測のために、線形回帰および/または非線形回帰に基づくアルゴリズムが使用されてよい。
【0071】
ステップs105において、バラスト水処理システムは、予測、すなわち、その基準値に最初に到達するどの値でも決定された支配的条件に対する予測された時点および/または値に基づいて、修正措置を実行するように制御ユニットによって制御される。
【0072】
図4は、フィルタユニットにかかる差圧PDにとっての臨界値CVに到達する瞬間または時点TCV1またはTCV2の予測の、簡略化された非限定的な例を示す。TLは、経時的なフィルタユニットにおける差圧PDの進展、および逆流置換BFの前と後の両方での差圧PDの進展を追跡する、追跡線を示す。差圧PDにとっての基準値RVに到達すると逆流置換BF動作がトリガされる。逆流置換BFが実行されると、差圧が降下し、次いで、再び上昇し始める。差圧にとっての最小値PDminが経時的に増大し、その増大に起因してもっと短い間隔で逆流置換BFを実行する必要があることが理解され得る。その増大は、フィルタ要素の増大した目詰まりレベルによって引き起こされることがある。いくつかの点において、継続的に逆流置換を実行する必要がある。継続的な逆流置換にもかかわらず、最小差圧PDが依然として上昇するリスクがあり得る。その場合、他の修正措置、たとえば、逆流置換要素のより速い回転速度、および/または減らされた流れが、開始されてよい。
【0073】
予測線PL1は、図4の中では最小差圧PDminに基づく例であり、時点TCV1において差圧がいつ臨界値CVに到達するのかを予測するために使用され得る。代替または追加として、追跡されるすべてのデータ点の平均に基づく予測線PL2が、時点TCV2において差圧がいつ臨界値CVに到達するのかを予測するために使用され得る。予測線PL1およびPL2の異なる係数に応じて時点TCV1およびTCV2が異なることが理解され得る。臨界値CVに到達する前の良好な時間において修正措置が開始されることが確実となるために、より大きい係数を伴う線を使用することが好都合であり得る。臨界値CVに到達すると、フィルタは保守、たとえば、手作業でクリーニングすることを必要とする。
【0074】
本発明によれば、決定された支配的動作条件値PCVが差圧PDにとっての基準値RVに到達する瞬間に基づいて、修正措置を開始することが可能である。差圧にとっての臨界値CVに到達する前の残りの時間を示す時間RVTにおいて、並行して基準値を使用することも可能である。時間制限RVTにとっての基準値は、追跡が終了した後かつ臨界値に到達する時点、すなわち、図示の例ではTCV1またはTCV2の前の、予測線上の時点である。RVTは、たとえば、予測線PL1の傾きに基づいて、臨界値TCV1に到達する30分前に設定されてよい。代替として、時間制限RVTにとっての基準値は、たとえば、予測線PL2の傾きに基づいて、臨界値TCV2に到達する45分前であってよい。それぞれの予測線PL1およびPL2に対して、基準値RVTは同じであっても異なってもよい。
【0075】
基準値RVTは、修正措置、たとえば、逆流置換を実行するための、瞬間または時点を決めるために使用され得、修正措置は、継続的な修正措置および/または他の修正措置であってよい。したがって、たとえば、時間制限RVTにとっての基準値が、差圧にとっての臨界値TCV1またはTCV2に到達するための時点の前の30分に設定される場合、支配的条件PCVに対する値が支配的差圧にとっての基準値RV未満であったとしても逆流置換動作が開始される。代替として、予測された時点にとっての基準値RVTに到達していなくても、差圧にとっての基準値RVに到達すると修正措置が開始される。したがって、本方法のステップs105において、バラスト水処理システムは、予測、すなわち、基準値RVTに基づいて、修正措置の実行を開始することによって制御され、基準値RVTは、臨界支配的条件値、たとえば、臨界差圧に到達する予測される時間的な瞬間の前に設定された時点、および/またはそのそれぞれの基準値に最初に到達するどの値でも、決定された支配的条件に対する値である。
【0076】
差圧にとっての基準値RVに到達する前に予測線PL1またはPL2に従って逆流置換動作を実行することによって、フィルタの早すぎる目詰まりが防止され得る。フィルタが目詰まりしすぎる前に、すなわち、逆流置換によってフィルタをクリーニングするのがより困難となるレベルまで差圧が上昇する前に、フィルタがクリーニングされるので、このことが取得される。差圧が、できる限り低いレベルに経時的に保持され得るとき、フィルタのクリーニングはより簡単である。
【0077】
したがって、予測を使用することによって、支配的動作条件に対する決定または感知された値が修正措置の必要を示す前に、すでに修正措置を実行することが可能である。たとえば、決定された差圧が基準値とは異なるが差圧にとっての臨界値に到達していないとき、ステップs104における修正措置は逆流置換動作を含んでもよい。このようにして、たとえば、フィルタの早すぎる目詰まりを抑制すること、したがって、フィルタの動作時間を延長することが可能である。
【0078】
逆流置換動作が反復されるとき、支配的条件を決定するステップs101は、フィルタユニットにおける逆流置換動作間の支配的時間を決定することをさらに含んでもよい。逆流置換動作間の時間を決定することによって、次の逆流置換動作のための時点を予測することが可能である。次いで、たとえば、海水が大量の微粒子物質を含む場合、たとえば、設定された時間間隔におけるよりもすぐに動作を実行することが可能である。このようにして、フィルタの早すぎる目詰まりが防止され得る。
【0079】
修正措置の実行を制御するステップs105は、可動逆流置換要素55の回転速度を大きくすることを含んでもよい。たとえば、決定された差圧(PD)が高ければ高いほど、かつ/または差圧にとっての臨界値に到達する予測された時点が早ければ早いほど、可動逆流置換要素は、可動逆流置換要素の回転速度が大きくなるように制御され得る。
【0080】
代替または追加として、ステップs105は、決定された差圧(PD)が高ければ高いほど、かつ/または差圧にとっての臨界値に到達する予測された時点が早ければ早いほど、フィルタを通るバラスト水の流量を小さくすることを含んでもよい。このことは、臨界差圧にとっての臨界支配的条件値(時間基準値RVT)に到達する予測された時間的な瞬間に先立って設定された時点の前に、決定された差圧値がその基準値(RV)に到達する場合、流れが減らされることを意味する。代替として、基準差圧値(RV)に到達する前にその時点(時間基準値)に到達する場合、すなわち、そのそれぞれの基準値に最初に到達するどの値でも、流れは減らされる。
【0081】
同じように、増大する汚物負荷を示す、差圧が高くなるときに、逆流置換要素の回転速度を大きくすることによって、クリーニング動作の強度は高くされてよく、したがって、フィルタの動作時間がさらに伸長されてよい。このことは、たとえば、海水が高含有量の微粒子物質を有する場合、逆流置換動作が継続的に実行される場合に、すなわち、逆流置換動作間の時間が0であるときに、特に好都合であり得る。
【0082】
差圧および流量を決定することに加えて、またはこれらの代替として、支配的動作条件を決定するステップs101は、UVリアクタの中の1つ以上のUVランプによって提供されるUV強度を決定することを含んでもよい。UV強度は、海水の中の生存生物をランプがどのくらい効果的に不活性化できるのかを示す。基準強度よりも低い強度の場合、ステップs105における修正措置は、UVリアクタを通る流量を小さくすることを含んでもよい。このようにして、UVリアクタにおける負荷が小さくなってよく、それによって、十分な不活性化が取得され得る。UV強度に対する追跡される傾向を使用する予測は、フィルタユニットにかかる差圧に関して上述したような類似の方式で実行されてよい。この予測では、UV強度が経時的に追跡され、臨界値に到達するまでUV強度の進展に対する予測線のためにUV強度データが使用される。流量および/または強度の増大が修正措置として使用されてよい。臨界値に到達すると、UVリアクタは1つ以上のUVランプの保守および/または交換を必要とする。
【0083】
本方法によって、システムの延長された動作時間に関係する多くの利点が取得され得る。たとえば、フィルタユニットへの注入フローの制御が、決定された支配的差圧値と経時的な差圧値に対する予測線の両方に基づき、かつこれらが並行して使用されるとき、その結果、これらの2つのインジケータのうちのいずれかが、減らされた流れを示唆する場合、流れは減らされる。このようにして、修正措置は予防的な方式で行われてよく、たとえば、逆流置換要素またはノズルの回転速度が、それが必要とされる前にすでに大きくされることが可能であり、それによって、フィルタの目詰まりが防止され得る。同様にして、フィルタの目詰まりを防止するために、システムを通る流れが減らされてよい。追加として、UVランプのうちのいずれかが、低くなったUV強度を有する場合には、未処理の水がUVリアクタを通ることを防止するために、UVリアクタを通る流れが減らされてよい。一方、決定された差圧が予測された差圧よりも高い場合には、システムは、たとえば、流れが減らされるかまたは逆流置換要素の回転速度が大きくされるかのいずれかのように制御される。このようにして、動作上の障害を防止するとともにクリーニングおよび保守のための間隔を延長することが可能である。
【0084】
図5は、制御ユニット20を概略的に示す。制御ユニット20は、コンピュータを備えてよく、またはコンピュータが、あるバージョンでは制御ユニット20を備えてよい。コンピュータは、専用のコンピュータもしくはサーバ、またはいくつかのサーバを含むクラウドの一部であってよい。「~に接続される」という用語は、本明細書では、光電子通信回線などの物理接続、またはワイヤレス接続、たとえば、衛星リンク、無線リンク、もしくはマイクロ波リンクなどの非物理接続であってよい、通信リンクを指す。制御ユニットは、船に搭載されてまたは遠隔のロケーションにおいて配置されてよい。
【0085】
制御ユニット20は、不揮発性メモリ520、データ処理ユニット510、および読取り/書込みメモリ550を備えてよい。不揮発性メモリ520は、制御ユニット50の機能を制御するためにコンピュータプログラム、たとえば、オペレーティングシステムがその中に記憶される第1のメモリ素子530を有する。制御ユニット20は、バスコントローラ、シリアル通信ポート、I/O手段、A/D変換器、時間および日付入力および転送ユニット、イベントカウンタ、ならびに割込みコントローラ(図示せず)をさらに備える。不揮発性メモリ520はまた、第2のメモリ素子540を有する。
【0086】
本発明による、バラスト水処理システム1を制御するための方法のためのルーチンを含むコンピュータプログラムPが設けられる。コンピュータプログラムPは、フィルタユニット(40)および/または処理ユニット(60)に関係する決定された支配的動作条件値(PCV)を受信するためのルーチンを含み、決定されたPCVは、感知手段を用いて実行された測定に基づく。コンピュータプログラムPは、支配的動作条件値(PCV)が基準値(RV)または基準範囲(RR)とは異なる比較に基づいて、修正措置の実行を指令するためのルーチンを含む。コンピュータプログラムPは、制御ユニットにおける支配的条件に対する決定された値を受信するためのルーチンを含んでもよい。コンピュータプログラムPは、決定された支配的条件値(PCV)を制御ユニットにおける支配的条件にとっての基準値(RV)または基準範囲(RR)と比較するためのルーチンを含んでもよい。コンピュータプログラムPは、支配的動作条件値(PCV)が基準値(RV)または基準範囲(RR)とは異なる比較に基づいて修正措置を実行するためのルーチンを含んでもよい。コンピュータプログラムPは、バラスト水処理システムにおいて支配的動作条件値(PCV)を決定するとともに修正措置を実行するためのステップが、決定された時間間隔中に反復されるとき、支配的動作条件値(PCV)の進展および/または修正措置にとっての頻度に対する傾向を追跡するためのルーチンを含む。コンピュータプログラムPは、支配的動作条件値(PCV)にとっての臨界値(CV)に到達する時間的な瞬間を、ステップ(s103)における追跡される傾向に基づいて予測するためのルーチンを含む。コンピュータプログラムPは、予測、および/またはそのそれぞれの基準値に最初に到達するどの値でも決定された支配的条件に対する値に基づいて、修正措置の実行を開始することによってバラスト水処理システムを制御するためのルーチンを含む。
【0087】
コンピュータプログラムPは、支配的条件を決定するためのルーチンをさらに含んでもよく、支配的条件は、フィルタユニットにかかる差圧および/またはフィルタユニットを通る流量を決定することを含んでもよい。さらに、コンピュータプログラムPは、決定された差圧(PD)が基準値(RV)とは異なるが差圧にとっての臨界値(CV)に到達していないとき、逆流置換動作を実行することを、たとえば、コマンドをフィルタユニットへ送ることによって開始するためのルーチンを含んでもよい。コンピュータプログラムPは、逆流置換ステップが反復されるとき、フィルタユニットにおける逆流置換動作間の支配的時間をさらに決定することによって支配的条件を決定するためのルーチンを含んでもよい。コンピュータプログラムPは、予測された差圧(PD)および/もしくは決定された差圧(PD)が高ければ高いほど可動逆流置換要素(55)の回転速度を大きくし、かつ/または予測された差圧(PD)および/もしくは決定された差圧(PD)が高ければ高いほどフィルタを通るバラスト水の流量を小さくするためのルーチンを含んでもよい。コンピュータプログラムPは、処理ユニット(60)がUVリアクタであるとき、支配的動作条件値としてUVリアクタのUV強度を決定するためのルーチンを含んでもよい。コンピュータプログラムPは、予測されたUV強度および/または決定されたUV強度が低ければ低いほどUVリアクタを通る流量を小さくするためのルーチンを含んでもよい。コンピュータプログラムPは、予測のために線形回帰または非線形回帰を使用するためのルーチンを含んでもよい。
【0088】
プログラムPは、実行可能な形態で、または圧縮された形態で、メモリ560の中かつ/または読取り/書込みメモリ550の中に記憶されてよい。
【0089】
いくつかの機能を実行するものとしてデータ処理ユニット510が説明される場合、それは、データ処理ユニット510が、メモリ560の中に記憶されたプログラムのいくつかの部分または読取り/書込みメモリ550の中に記憶されたプログラムのいくつかの部分を実施することを意味する。
【0090】
データ処理デバイス510は、データバス515を介してデータポート599と通信することができる。不揮発性メモリ520は、データバス512を介したデータ処理ユニット510との通信を対象とする。別個のメモリ560は、データバス511を介してデータ処理ユニット510と通信することが意図される。読取り/書込みメモリ550は、データバス514を介してデータ処理ユニット510と通信することに適合される。
【0091】
データは、データポート599上で受信されると、一時的に第2のメモリ素子540の中に記憶される。受信された入力データが一時的に記憶されているとき、データ処理ユニット510は、上記で説明したようなコード実行を実施するように準備される。
【0092】
本明細書で説明する方法の部分は、データ処理ユニット510を用いて制御ユニット50によって実施されてよく、データ処理ユニット510は、メモリ560または読取り/書込みメモリ550の中に記憶されたプログラムを実行する。制御ユニット50がプログラムを実行すると、本明細書で説明する方法が実行される。
【0093】
本発明の好ましい実施形態の上記の説明は、例示および説明の目的のために提供される。網羅的であることまたは説明する変形形態に本発明を制約することは意図されない。多くの修正および変形が当業者にとって目に見えて明らかとなろう。本発明の原理およびその実際の適用例を最もよく説明し、したがって、様々な実施形態に対して、かつ意図される使用にとって適切な様々な修正とともに、専門家が本発明を理解することを可能にするために、本実施形態が選ばれ説明されている。本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定されるように本発明の範囲内の任意の方法で、増補および修正され得る。
【符号の説明】
【0094】
1 バラスト水処理システム
10 バラスト水フィルタ構成
20 制御ユニット
30 バラスト水ポンプ
32 海水注入口
34 フィルタユニット注入ライン
35 第1の閉鎖バルブ
36 バイパスライン
37 第2の閉鎖バルブ
38 水排出ライン
39 第3の閉鎖バルブ
40 フィルタユニット
41 フィルタユニットハウジング
42 フィルタ要素
44 水注入口、フィルタ注入口
46 フィルタ排出口、フィルタ処理済み海水排出口
47 第4の閉鎖バルブ、逆流置換バルブ
48 逆流置換排出口
49 ドレイン排出口
50 逆流置換構成、制御ユニット
54 真水注入口
55 可動逆流置換要素、逆流置換要素
56 真水タンク
60 UVリアクタ、処理ユニット
61 センサ
62 リアクタ容器
64 UVランプ
65 ランプ駆動キャビネット
66 バラスト水注入口
68 バラスト水排出口
72 真水および/またはクリーニング液注入口
74 真水および/またはクリーニング液排出口
301 物理接続またはワイヤレス接続
421 注入側
422 排出側
423 チャンバ
501 物理接続またはワイヤレス接続
510 データ処理ユニット
511、512、514、515 データバス
520 不揮発性メモリ
530 第1のメモリ素子
540 第2のメモリ素子
550 読取り/書込みメモリ
560 メモリ
599 データポート
図1
図2a
図2b
図3
図4
図5