(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-12-25
(45)【発行日】2025-01-09
(54)【発明の名称】部品装着機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20241226BHJP
【FI】
H05K13/02 B
(21)【出願番号】P 2023537849
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2021028131
(87)【国際公開番号】W WO2023007658
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比 達矢
(72)【発明者】
【氏名】山際 真人
(72)【発明者】
【氏名】菅野 正明
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/109793(WO,A1)
【文献】特開2013-254895(JP,A)
【文献】国際公開第2019/187033(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/176033(WO,A1)
【文献】特開2020-194982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
複数の部品を収容したキャリアテープに係合して所定の供給方向へ送る駆動機構を有するテープフィーダ、を
複数保持して前記基台に着脱可能に設けられるパレットと、
前記パレットを前記基台から取り外す作業の実行を検知する検知部と、
基板に前記部品を装着する装着作業を行っていない状態で、前記検知部にて前記パレットの取り外し作業の実行が検知された場合に、
複数の前記テープフィーダの前記駆動機構を制御して、前記キャリアテープを前記供給方向の逆方向へ巻き戻させる制御部と、
を備える部品装着機。
【請求項2】
前記制御部は、前記パレットを取り外して再び前記基台に取り付けるときに不要となる前記キャリアテープがセットされた前記テープフィーダを選択して前記キャリアテープを前記逆方向へ巻き戻させる、請求項1に記載の部品装着機。
【請求項3】
前記制御部は、前記キャリアテープと前記駆動機構の係合状態を維持しつつ、前記テープフィーダの外部に出ている前記キャリアテープの前記供給方向の外部長さが所定値以下となるまで、前記キャリアテープを前記逆方向へ巻き戻させる、請求項1に記載の部品装着機。
【請求項4】
前記所定値は、前記パレットを取り外して再び前記基台に取り付けるときに支障が生じない条件、および、取り外した前記パレットを移動させるときに支障が生じない条件の少なくとも一方を満たすように設定される、請求項3に記載の部品装着機。
【請求項5】
前記所定値は、前記パレットを取り外して再び前記基台に取り付けるときに、前記テープフィーダの外部に出ている前記キャリアテープの前記供給方向の先端が、前記基台と前記パレットとを電気的または構造的に接続する接続部に干渉しない条件を満たすように設定される、請求項4に記載の部品装着機。
【請求項6】
前記制御部は、前記キャリアテープの前記供給方向の先端が前記テープフィーダの外部から内部に引き込まれるまで、前記キャリアテープを前記逆方向へ巻き戻させる、請求項3に記載の部品装着機。
【請求項7】
前記部品装着機は、全数の前記テープフィーダに電源供給可能に接続されるとともに、全数未満の許容数の前記テープフィーダに電源供給可能な電源容量をもつ電源部を備え、
前記制御部は、同時に動作させる前記駆動機構を前記許容数以下に制御する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の部品装着機。
【請求項8】
前記駆動機構が前記キャリアテープを前記逆方向へ巻き戻している途中であって前記パレットを前記基台から取り外すことができない取り外し不能状態、および、前記パレットを前記基台から取り外すことができる取り外し可能状態を表示する表示部を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、テープフィーダを用いる部品装着機に関する。
【背景技術】
【0002】
回路パターンが形成された基板に対基板作業を実施して、基板製品を量産する技術が普及している。対基板作業機の代表例として、部品の装着作業を実施する部品装着機がある。多くの部品装着機は、複数の部品を収容したキャリアテープをリールから引き出して送るテープフィーダを使用する。リールを保持するタイプのテープフィーダでキャリアテープが終端まで使用されたときに、作業者は、当該のテープフィーダを取り外してリールを交換し、再度取り付ける。あるいは、作業者は、テープフィーダを別のものと交換する。一方、基板の種類を変更するときには、複数のテープフィーダを交換する段取り替えが必要になる場合が多い。従来、複数のテープフィーダを保持するパレットを台車形状に構成して、パレットごと交換することが行われてきた。テープフィーダやリールの交換に関する一技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、部品装着機本体からテープフィーダを取り外す作業の実行を検知する検知部と、テープフィーダの取り外し作業の実行が検知された場合に、空になったキャリアテープを巻き戻す巻き戻し実行部と、を備えるテープフィーダが開示されている。これによれば、部品装着機の稼働中にテープフィーダを取り外しても、装着ヘッドの可動領域に対する空テープの飛び出しを規制することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の技術は、部品装着機の稼働中にテープフィーダを取り外す場合に、空テープの飛び出しによる装着作業への影響を回避できる点で好ましい。しかしながら、複数のテープフィーダを保持するパレットの交換は、装着作業が終了してから行われる作業であり、装着作業への影響を回避する以外の課題を考慮する必要がある。例えば、パレットからテープフィーダを取り外して行うリールの交換作業の作業性の課題や、取り外したパレットを再取り付けするときおよび移動させるときの作業性の課題などがある。
【0006】
それゆえ、本明細書は、複数のテープフィーダを保持するパレットの段取り替えや交換の際に、作業性を従来よりも高めることができる部品装着機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、基台と、複数の部品を収容したキャリアテープに係合して所定の供給方向へ送る駆動機構を有するテープフィーダ、を保持して前記基台に着脱可能に設けられるパレットと、前記パレットを前記基台から取り外す作業の実行を検知する検知部と、前記検知部にて前記パレットの取り外し作業の実行が検知された場合に、前記テープフィーダの前記駆動機構を制御して、前記キャリアテープを前記供給方向の逆方向へ巻き戻させる制御部と、を備える部品装着機を開示する。
【発明の効果】
【0008】
開示した部品装着機では、検知部にてパレットの取り外し作業の実行が検知された場合に、制御部および駆動機構によりテープフィーダのキャリアテープが逆方向へ巻き戻される。これによれば、キャリアテープが巻き戻されることにより、テープフィーダにおけるリールの交換作業が容易になって短時間で実施されるので、作業性が従来よりも高められる。さらに、キャリアテープは、巻き戻されることによってテープフィーダの外部に出ている外部長さが短くなりまたは無くなるので、パレットの再取り付けや移動を阻害することがなく、作業性が従来よりも高められる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の部品装着機の全体構成を模式的に示す平面図である。
【
図2】テープフィーダの内部構成例を模式的に示す側面図である。
【
図3】テープフィーダの電源供給系統、および部品装着機の制御の構成を模式的に説明するブロック図である。
【
図4】制御部によってテープフィーダのキャリアテープが逆方向へ巻き戻された状況を模式的に示す側面図である。
【
図5】部品装着機の動作を説明する動作フローの図である。
【
図6】第2実施形態において、テープフィーダの外部に出ているキャリアテープの外部長さが所定値以下となるまで巻き戻す動作を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.第1実施形態の部品装着機1の全体構成
第1実施形態の部品装着機1の全体構成について、主に
図1および
図3を参考にして説明する。部品装着機1は、基板Kに部品を装着する装着作業を実施する。
図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面下側(前側)から紙面上側(後側)に向かう方向がY軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および制御装置9などが基台10に組み付けられて構成される。
【0011】
基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、図略の一対の搬送ベルト、およびクランプ機構23などで構成される。一対のガイドレール21は、基台10の上面のやや後方寄りを横断してX軸方向に延在し、互いに平行して基台10に組み付けられる。一対の搬送ベルトは、基板Kの平行する二辺が戴置された状態でガイドレール21に沿って輪転し、基板Kを基台10の中央付近の作業実施位置に搬入する。クランプ機構23は、搬入された基板Kを押し上げ、ガイドレール21との間にクランプして位置決めする。部品移載装置4による部品の装着作業が終了した後、クランプ機構23は基板Kを解放し、搬送ベルトは基板Kを機外に搬出する。
【0012】
部品供給装置3は、パレット30、複数のテープフィーダ8、使用済テープ処理部34、および電源部36などで構成される。パレット30は、基台10の前側の上部に、取り付けおよび取り外し可能に設けられる。パレット30は、概ね四角形の板状に形成される。パレット30は、移動や取り付けの作業性を高めるために台車形状に形成されてもよい。パレット30は、前後方向に延びかつ左右方向に所定のピッチで形成された複数のスロットを有する。各スロットには、それぞれテープフィーダ8が前側から挿入されてセットされる。つまり、パレット30は、複数のテープフィーダ8を左右方向に配列する形態で保持しつつ、基台10に着脱可能に設けられる。
【0013】
テープフィーダ8は、キャリアテープを用いて、後端寄りの供給位置81で部品を採取可能に供給する。なお、左右方向の幅寸法や内部構成が相違する複数種類のテープフィーダ8の混用が許容される。テープフィーダ8の内部構成例については、後で詳述する。キャリアテープの部品が取り出された部分は、供給位置81からさらに後方に送られ、続いて図略のガイドに沿うように下方に送られて、使用済テープ処理部34に到達する。
【0014】
使用済テープ処理部34は、基台10に固定して設けられ、パレット30の下側から後方にわたって配置される。使用済テープ処理部34は、パレット30と同程度の幅寸法(X軸方向寸法)をもち、全てのテープフィーダ8に対して共通に設けられる。使用済テープ処理部34は、例えば、キャリアテープを切断するカッタ、切断されたキャリアテープを下方へ案内するシュート、および切断されたキャリアテープを収容するダストボックスで構成される。
【0015】
部品移載装置4は、一対のガイドレール40、Y軸移動体41、X軸移動体42、装着ヘッド43、ロータリツール44、吸着ノズル45、基板認識用カメラ46、および部品認識用カメラ49などで構成される。一対のガイドレール40は、基台10の左縁および右縁に配置され、互いに離隔しつつ平行して、Y軸方向に延在する。Y軸移動体41は、X軸方向に長い部材で形成され、一対のガイドレール40に装架される。Y軸移動体41は、図略のY方向駆動機構に駆動されてY軸方向に移動する。X軸移動体42は、Y軸移動体41に装架され、図略のX方向駆動機構に駆動されてX軸方向に移動する。
【0016】
装着ヘッド43は、X軸移動体42の前面に設けられ、X軸移動体42と共に水平二方向に移動する。装着ヘッド43の下側に、ロータリツール44が自転可能に設けられる。ロータリツール44は、垂直中心軸の回りに自転する。ロータリツール44は、複数(
図1の例では12本)の吸着ノズル45を垂直中心軸から等距離に有する。吸着ノズル45は、基板Kの所定の装着位置に部品を装着する部品装着具の一形態である。吸着ノズル45は、昇降動作、および垂直軸の回りの自転動作を行う。また、ロータリツール44が自転したときに、吸着ノズル45は、ロータリツール44の垂直中心軸の回りを公転する。吸着ノズル45は、図略のエア供給機構から負圧や正圧のエアが選択的に供給されて、部品の吸着および装着を行う。なお、ロータリツール44が省略されて、装着ヘッド43の下側に1本の吸着ノズル45が自転可能に設けられる構成でもよい。
【0017】
基板認識用カメラ46は、装着ヘッド43と並んでX軸移動体42に設けられる。基板認識用カメラ46は、光軸が下向きとなるように配設され、基板Kに付設された位置基準マークを上方から撮像する。取得された画像データは画像処理され、基板Kの作業実施位置が正確に求められる。基板認識用カメラ46として、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0018】
部品認識用カメラ49は、基板搬送装置2と部品供給装置3の間の基台10上に設けられる。部品認識用カメラ49は、光軸が上向きとなるように配置される。部品認識用カメラ49は、装着ヘッド43が部品供給装置3から基板Kに移動する途中で、吸着ノズル45に保持された部品を下方から撮像して認識する。これにより、部品の種類の正誤が判定され、また、吸着ノズル45に対する部品の位置や向きが検出されて装着作業に反映される。部品認識用カメラ49として、CCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0019】
部品移載装置4は、位置決めされた基板Kに対して、複数回の吸着装着サイクルを繰り返すことができる。吸着装着サイクルにおいて、まず、装着ヘッド43が部品供給装置3の上方に移動し、各吸着ノズル45が部品を吸着する。次に、装着ヘッド43が部品認識用カメラ49の上方に移動し、部品認識用カメラ49が撮像を行う。その次に、装着ヘッド43が基板Kの上方に移動し、各吸着ノズル45が部品を基板Kに装着する。そして、装着ヘッド43が、再び部品供給装置3に向かって移動する。吸着装着サイクルとは、上記した一連の動作の総称である。
【0020】
制御装置9は、基台10に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置9は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。なお、制御装置9は、複数のCPUが機内に分散配置され、かつ通信接続されて構成されてもよい。制御装置9は、基板Kの種類ごとに作成された装着作業データ91に基づいて、基板搬送装置2、部品供給装置3、および部品移載装置4を制御し、部品の装着作業を進める。装着作業データ91は、装着作業の詳細な手順や実施方法などを記述したデータである。装着作業データ91は、装着する部品の種類や個数、使用するテープフィーダ8などの情報を含む。
【0021】
2.テープフィーダ8の内部構成例
次に、テープフィーダ8の内部構成例について、
図2を参考にして説明する。テープフィーダ8は、左右方向の幅寸法が小さな薄型に形成される。
図2に示されるように、テープフィーダ8は、側方から見て概ね中央の位置に、リール保持軸82を有する。リール保持軸82は、リールRの中心孔に係入して、リールRを着脱可能かつ回転可能に保持する。
【0022】
リールRは、複数の部品を収容したキャリアテープTが巻回される回転体である。キャリアテープTは、部品を一つずつ収容するキャビティ部が一定ピッチで形成されたベーステープ、およびベーステープに貼り付けられてキャビティ部を覆うカバーテープからなる。さらに、キャリアテープTは、テープ幅方向の片側にスプロケット孔が所定ピッチで多数設けられる。
【0023】
第1実施形態において、テープフィーダ8は、図略のテープ剥離部を備える。テープ剥離部は、カバーテープの一方の側縁をベーステープから剥離して、供給位置81を通過させる。供給位置81を通過したキャリアテープTは、カバーテープとベーステープが分離されない状態で使用済テープ処理部34に到達する。これに限定されず、カバーテープの両方の側縁がベーステープから剥離されて分離され、カバーテープおよびベーステープが別々に使用済テープ処理部34に到達する構成でもよい。
【0024】
テープフィーダ8は、キャリアテープTを送る駆動機構として、スプロケット83および駆動モータ84を有する。スプロケット83は、供給位置81の前側に回転可能に設けられる。スプロケット83の歯は、キャリアテープTのスプロケット孔に係入する。駆動モータ84は、スプロケット83の回転軸に連結される。駆動モータ84は、正転することにより、キャリアテープTを所定の供給方向へ送るようにスプロケット83を正回転駆動する。かつ、駆動モータ84は、逆転することにより、キャリアテープTを供給方向の逆方向へ戻すようにスプロケット83を逆回転駆動する。
【0025】
駆動モータ84の動作および停止、ならびに正転および逆転の切り替えは、フィーダ制御部85によって制御される。また、フィーダ制御部85は、駆動モータ84の制御量に基づいて、キャリアテープTの送り量および戻し量を求める。作業者の手動操作によって駆動モータ84を動作させることができるように、図略の操作スイッチがテープフィーダ8に設けられる。さらに、テープフィーダ8の稼働状態や、内部で発生した異常状態を表示する目的で、図略の表示部がテープフィーダ8に設けられる。
【0026】
テープフィーダ8を使用可能な状態にするリールRのセット作業において、作業者は、まず、リールRをリール保持軸82にセットする。作業者は、次に、キャリアテープTの先端の留めシールを剥がし、リールRからキャリアテープTを引き出して、その先端をスプロケット83まで進めて係合させる。作業者は、その次に、手動操作により駆動モータ84を正転させ、キャリアテープTの先端を供給位置81まで進める。
【0027】
また、リールRの取り外し作業において、使用済みのリールRは、キャリアテープTが無くなっている。このため、作業者は、リール保持軸82からリールRを簡単に取り外すことができる。一方、使用途中のリールRは、未だキャリアテープTが残っており、スプロケット83の歯がキャリアテープTのスプロケット孔に係入している。このため、作業者は、キャリアテープTをリールRに巻き取ることができず、リールRを取り外すことができない。
【0028】
したがって、作業者は、まず、手動操作により駆動モータ84を逆転させ、キャリアテープTを巻き戻させて、スプロケット83との係合状態を解消させる。作業者は、次に、リール保持軸82からリールRを取り外し、キャリアテープTをリールRに巻き取る。作業者は、その次に、キャリアテープTの先端を留めシールで留めて、弛みの発生を防止する。リールRのセット作業および取り外し作業(交換作業)は、部品装着機1の機外の外段取りエリアで実施される。
【0029】
3.テープフィーダ8の電源供給系統
次に、テープフィーダ8の電源供給系統について、
図3を参考にして説明する。図示されるように、パレット30に電源を供給する電源部36が、基台10に設けられている。パレット30が基台10に取り付けられるときに、電源部36は、図略のコネクタの嵌合によってパレット30に自動的に接続される。さらに、テープフィーダ8がパレット30にセットされるときに、図略のコネクタの嵌合により、両者の電源線が自動的に接続される。これにより、電源部36は、複数のテープフィーダ8に並列接続され、電源供給を行う。
【0030】
電源部36は、駆動モータ84を駆動する駆動電源、およびフィーダ制御部85を駆動する制御電源を兼ねる。電源部36は、パレット30上の全数のテープフィーダ8のフィーダ制御部85と、全数未満の許容数の駆動モータ84に電源供給可能な電源容量を有する。例えば、テープフィーダ8の全数が40台で、許容数が8台に設定される。このように、同時に動作可能な駆動モータ84(テープフィーダ8)の台数を許容数まで削減しても、部品装着機1の稼動に支障は生じない。その理由は、吸着装着サイクルの中で部品が吸着されるたびに、当該のテープフィーダ8のみがキャリアテープTを送る動作を行えばよいので、多数のテープフィーダ8が同時に動作する必要がないことに因る。
【0031】
上述したように動作可能なテープフィーダ8の台数を許容数まで削減することにより、電源部36の電源容量を小さなものとして、コストダウンに貢献することができる。なお、全数のフィーダ制御部85に電源供給する制御電源と、許容数の駆動モータ84に電源供給する駆動電源とが別々に設けられる構成でもよい。この構成では、駆動電源の電源容量を小さなものとして、コストダウンに貢献することができる。
【0032】
4.部品装着機1の制御の構成
次に、部品装着機1の制御の構成について、
図3を参考にして説明する。
図3に示されるように、パレット30には、パレット制御部39が設けられている。パレット30が基台10に取り付けられるときに、パレット制御部39は、図略のコネクタの嵌合によって制御装置9に自動的に通信接続される。さらに、テープフィーダ8がパレット30にセットされるときに、パレット制御部39は、図略のコネクタの嵌合によってフィーダ制御部85に自動的に通信接続される。制御装置9やパレット制御部39は、通信を行うことにより、パレット30に配列された各テープフィーダ8の個体識別情報や、各テープフィーダ8が供給する部品の種類の情報を取得する。
【0033】
また、パレット制御部39は、制御装置9からの指令にしたがって、複数のフィーダ制御部85を制御する。例えば、パレット制御部39は、吸着ノズル45が部品を吸着したテープフィーダ8の情報を制御装置9から受信すると、当該のテープフィーダ8のフィーダ制御部85に送り指令を送信する。送り指令を受信したフィーダ制御部85は、駆動モータ84を正転させて、キャリアテープTを一定ピッチだけ送る。また、パレット制御部39は、同時に動作する駆動モータ84の台数を許容数以下に制御する。
【0034】
制御装置9は、前述した装着作業データ91を記憶部92に記憶している。制御装置9は、ディスプレィ装置などの表示部93を備える。さらに、制御装置9は、ソフトウェアを用いて構成された検知部94を備える。また、制御装置9は、生産管理システム99に通信接続される。生産管理システム99は、基板K(基板製品)の生産計画や生産実績を管理する。
【0035】
検知部94は、パレット30を基台10から取り外す作業の実行を検知する。詳述すると、検知部94は、生産管理システム99から基板K(基板製品)の生産順序に関する情報を取得し、各基板Kの装着作業データ91を取得する。検知部94は、現在生産中の現基板種の基板Kに使用している第一の装着作業データ91と、次に生産する次基板種の基板Kに使用する第二の装着作業データ91とを比較して、パレット30の取り外し作業を実行するか否か判定する。
【0036】
ここで、装着作業データ91には、装着する部品の種類や使用するテープフィーダ8が定められている。したがって、検知部94は、パレット30に現在セットされているテープフィーダ8のみを用いて、そのまま次基板種の基板Kの装着作業を実施できるか否かを判定することができる。そのまま装着作業を実施できる場合には、パレット30の取り外し作業を実行せずに、現基板種から次基板種の生産に移行することになる。一方、そのまま装着作業を実施できない場合には、現基板種の生産終了後にパレット30の取り外し作業および取り付け作業を行って、次基板種の生産に移行することになる。
【0037】
後者の場合、取り外したパレット30に対してテープフィーダ8の交換作業を行った後、再び取り付け作業を行って、次基板種の生産に使用することができる。あるいは、次基板種の生産には別のパレット30を使用し、取り外したパレット30を次基板種よりも後の生産に使用することができる。いずれにしても、検知部94は、パレット30の取り外し作業の実行を事前に検知するものであり、パレット30が取り外される動作や取り外された状態を検知するものではない。
【0038】
また、装着作業データ91の各々に使用するパレット30が指定されていることがある。この場合、検知部94は、パレット30の取り外し作業の実行を容易に検知することできる。あるいは、検知部94は、パレット30の取り外し作業を実行する情報を、生産管理システム99やその他の管理装置などから取得してもよい。さらに、作業者がパレット30の取り外し作業を実行することを入力設定し、検知部94は、入力設定に基づく検知を行ってもよい。
【0039】
検知部94にてパレット30の取り外し作業の実行が検知された場合に、制御装置9、パレット制御部39、およびフィーダ制御部85は、協調して制御を行う。制御装置9は、まず、パレット30の次回の使用条件と現在のテープフィーダ8のセット状態とを比較することにより、パレット30を取り外して再び基台10に取り付けるときに不要となるキャリアテープTを判別する。制御装置9は、次に、当該のキャリアテープTがセットされたテープフィーダ8を選択して、パレット制御部39に送信する。
【0040】
パレット制御部39は、制御装置9から受信したテープフィーダ8のフィーダ制御部85に対し、巻き戻し指令を送信する。巻き戻し指令を受信したフィーダ制御部85は、駆動モータ84を逆転させて、キャリアテープTを供給方向の逆方向へ巻き戻させる。このときの巻き戻し量は、キャリアテープTとスプロケット83との係合状態が解消されるように設定され、フィーダ制御部85によって制御される。例えば、巻き戻し量は、スプロケット83から使用済テープ処理部34までの距離と比較して、大きめに設定される。
【0041】
巻き戻されたキャリアテープTは、
図4に示されるように、テープフィーダ8の筐体内で弛んだ状態となる。この後、矢印M1に示されるように、複数のテープフィーダ8を保持したパレット30は、基台10から取り外され、外段取りエリアに移送される。外段取りエリアにて、作業者は、パレット30からテープフィーダ8を取り外し、さらに、テープフィーダ8のリールRを交換する。このとき、キャリアテープTとスプロケット83との係合状態が解消されているので、不要になったリールRの取り外しが容易となり、リールRの交換作業が短時間で実施される。一方、次回の用途に使用されるテープフィーダ8は、パレット30のから取り外されず、かつキャリアテープTが巻き戻されず、使用可能な状態が維持される。
【0042】
また、制御装置9は、パレット30の取り外し不能状態および取り外し可能状態を表示部93に表示する。パレット30の取り外し不能状態とは、テープフィーダ8の駆動モータ84がキャリアテープTを逆方向へ巻き戻している途中の状態を含む。仮に、キャリアテープTを巻き戻している途中で、パレット30を無理に取り外すと、駆動モータ84やフィーダ制御部85の電源が喪失して不具合となる。パレット30の取り外し可能状態とは、対象となる全てのキャリアテープTの巻き戻しが終了した状態を意味する。
【0043】
これによれば、作業者は、表示部93の表示状況を見て、パレット30の取り外し作業をタイムリーに実行することができる。したがって、無駄な待ち時間等が発生せず、かつ誤って取り外し作業を開始することがなくなり、結果として作業性が向上する。なお、取り外し不能状態においてパレット30の取り外し作業を規制するロック機構を併用することができる。
【0044】
5.部品装着機1の動作
次に、部品装着機1の動作について、
図5に示される動作フローを参考にして説明する。この動作フローは、制御装置9、パレット制御部39、およびフィーダ制御部85からの制御によって進められる。また、この動作フローは、現基板種の基板Kへの装着作業が終了したときに実行される。
図5のステップS1で、検知部94は、パレット30の次回の使用条件や次基板種の基板Kに使用する装着作業データ91などの情報を取得する。次のステップS2で、検知部94は、取得した情報に基づいて、パレット30の取り外し作業を実行するか否か判定する(検知する)。なお、ステップS1およびステップS2は、装着作業と並行して実行されてもよい。
【0045】
パレット30の取り外し作業を実行しない場合、動作フローは終了となる。取り外し作業を実行する場合のステップS3で、制御装置9は、パレット30の取り外し不能状態を表示部93に表示する。これにより、作業者の誤った取り外し作業が回避される。次のステップS4で、制御装置9は、取得した情報に基づいて、キャリアテープTの巻き戻しの対象となるテープフィーダ8を決定し、パレット制御部39に指令する。
【0046】
次のステップS5で、パレット制御部39は、同時に動作する駆動モータ84の台数を許容数以下に制御しつつ、キャリアテープTの巻き戻しを実行させる。次のステップS6で、パレット制御部39は、指令されたテープフィーダ8の全数に関してキャリアテープTの巻き戻しが終了したか否か判定する。否の場合、ステップS5およびステップS6が繰り返して実行される。例えば、許容数が8台で、巻き戻しの対象となるテープフィーダ8が20台である場合に、ステップS5を3回繰り返すことにより指令された全数の巻き戻しが終了し、3回目のステップS6で、終了が判定される。
【0047】
ステップS6で終了が判定された場合のステップS7で、制御装置9は、パレット30の取り外し可能状態を表示部93に表示する。これにより、次のステップS8で、作業者は、パレット30の取り外し作業をタイムリーに実行することができる。これで、動作フローは終了となる。この後、作業者は、キャリアテープTが巻き戻されたテープフィーダ8をパレット30から取り外して、リールRの交換作業を行う。このとき、前述したように、キャリアテープTとスプロケット83との係合状態が解消されており、リールRの交換作業が短時間で実施される。
【0048】
第1実施形態の部品装着機1では、検知部94にてパレット30の取り外し作業の実行が検知された場合に、制御部(パレット制御部39、フィーダ制御部85)および駆動機構(駆動モータ84)によりテープフィーダ8のキャリアテープTが逆方向へ巻き戻される。これによれば、キャリアテープTが巻き戻されることにより、テープフィーダ8におけるリールRの交換作業が容易になって短時間で実施されるので、作業性が従来よりも高められる。
【0049】
6.第2実施形態
次に、第2実施形態の部品装着機について、
図6を参考にして、第1実施形態と異なる点を主に説明する。なお、
図6を見易くするために、基台10が図示省略されている。第2実施形態において、部品装着機の全体構成は、第1実施形態と殆ど変わらない。ただし、部品供給装置3を構成するパレット31の構造が第1実施形態と異なり、また、キャリアテープTを逆方向へ巻き戻させるときの巻き戻し量が第1実施形態と異なる。
【0050】
図6に示されるように、パレット31は、上面の右側にフィーダ搭載部311を有し、上面の左側にトレー式部品供給部312を有する。フィーダ搭載部311は、前後方向に延びかつ左右方向に所定のピッチで形成された複数のスロットを有する。各スロットには、それぞれテープフィーダ8が前側から挿入されてセットされる。
図6には、1台のテープフィーダ8が例示されており、実際には、複数のテープフィーダ8が配列されてセットされる。フィーダ搭載部311の後下方向の位置に、使用済テープ処理部35が基台10に固定して設けられる。
【0051】
トレー式部品供給部312は、二次元格子状に配置された複数の収容区画にそれぞれ部品を収容したトレーを用いて、部品を供給する。トレー式部品供給部312は、例えば、複数のトレーを昇降可能に収容するトレーマガジン、およびトレーマガジンからトレーを所定の供給位置まで引き出す引き出し機構などで構成される。部品供給装置3は、キャリアテープTおよびトレーを併用することにより、供給する部品の種類数の多数化、および部品形状の多様化が可能となっている。
【0052】
また、パレット31は、後面の右寄りのフィーダ搭載部311の下側の位置に、並んで配置される位置決めピン313および電源コネクタ314をもつ。位置決めピン313および電源コネクタ314は、キャリアテープTの先端付近が干渉し得る位置に配置される。位置決めピン313は、パレット31を基台10に取り付ける際に、基台10に設けられた位置決め孔に嵌入して、パレット31の取り付け位置を案内し、かつ取り付け位置を安定化する。位置決めピン313は、基台10とパレット31とを構造的に接続する接続部の一形態である。
【0053】
電源コネクタ314は、位置決めピン313が位置決め孔に嵌入するのに同期して、基台10に設けられた供給側コネクタに自動的に嵌合する。供給側コネクタは、電源部36に接続されている。したがって、電源コネクタ314と供給側コネクタの嵌合により、パレット31は、電源部36から電源供給される。電源コネクタ314は、基台10とパレット31とを電気的に接続する接続部の一形態である。
【0054】
なお、位置決めピン313および電源コネクタ314の一方が別の位置に配置されてもよい。また、制御装置9とパレット制御部39を通信接続する通信コネクタが、電源コネクタ314に代えて配置され、または電源コネクタ314に並んで配置されていてもよい。いずれの構成でも、構造的または電気的な接続部にキャリアテープTが干渉するおそれがあって、支障が生じ得る。この問題点は、パレット31を基台10に取り付ける際に発生し、パレット31を取り付けた後には発生しない。
【0055】
上記した問題点を解決するために、第2実施形態では、第1実施形態と同様、キャリアテープTを逆方向へ巻き戻させる制御を行う。詳述すると、現基板種の基板Kへの装着作業が終了して、検知部94がパレット31の取り外し作業の実行を検知した場合、制御装置9は、キャリアテープTの巻き戻しをパレット制御部39に指令する。パレット制御部39は、パレット31上の全数のテープフィーダ8を対象として、キャリアテープTの巻き戻しを実行させる。第1実施形態と同様、パレット制御部39は、同時に動作する駆動モータ84の台数を許容数以下に制御し、複数回に分けて巻き戻しを実行させる。
【0056】
このときの巻き戻し量は、キャリアテープTとスプロケット83との係合状態が維持されるように設定され、フィーダ制御部85によって制御される。すなわち、フィーダ制御部85は、キャリアテープTとスプロケット83の係合状態を維持しつつ、テープフィーダ8の外部に出ているキャリアテープTの供給方向の外部長さが所定値LA(
図6参照)以下となるまで、キャリアテープTを巻き戻させる。
【0057】
所定値LAは、パレット31を取り外して再び基台10に取り付けるときに支障が生じない条件、および、取り外したパレット31を移動させるときに支障が生じない条件の少なくとも一方を満たすように設定される。前者の条件によれば、キャリアテープTの先端が位置決めピン313および電源コネクタ314に届かない程度まで外部長さを短くすればよい。後者の条件によれば、パレット31の移動途中に、キャリアテープTの先端が揺れ動いても問題が生じない程度まで外部長さを短くすればよい。
【0058】
第2実施形態において、上記した二つの条件をともに満たす所定値LAは、
図6に例示される程度、例えば、外部長さの最大値の10~20%程度に設定される。また、所定値LAを負値に設定して、キャリアテープTの先端をテープフィーダ8の内部に引き込むまで巻き戻してもよい。この場合でも、所定値LAは、キャリアテープTとスプロケット83の係合状態を維持する範囲内に設定される。
【0059】
第2実施形態の部品装着機では、検知部94にてパレット30の取り外し作業の実行が検知された場合に、制御部(パレット制御部39、フィーダ制御部85)および駆動機構(駆動モータ84)によりテープフィーダ8のキャリアテープTが逆方向へ巻き戻される。これによれば、キャリアテープTは、巻き戻されることによってテープフィーダ8の外部に出ている外部長さが短くなりまたは無くなるので、パレット31の再取り付けや移動を阻害することがなく、作業性が従来よりも高められる。加えて、パレット31の次回の使用時に、キャリアテープTの先端を進めてスプロケット83に係合させる作業者の手間が不要となる。
【0060】
7.実施形態の応用および変形
なお、第1実施形態と第2実施形態を併用することができる。つまり、第1実施形態で巻き戻しの対象となったテープフィーダ8について、キャリアテープTとスプロケット83の係合状態が解消されるまで巻き戻しを行い、対象外のテープフィーダ8について、キャリアテープTとスプロケット83の係合状態が維持される範囲内で巻き戻しを行うことができる。また、第1実施形態において、電源部36の電源容量の制約が無い場合には、
図5のステップS5およびステップS6に代え、対象となっている全てのテープフィーダ8が同時にキャリアテープTの巻き戻しを行うことができる。
【0061】
さらに、キャリアテープTを積極的にリールRに巻き取るための巻き取り機構をテープフィーダ8に追加してもよい。巻き取り機構は、キャリアテープTの巻き戻し時に、駆動モータ84の逆転と同期して動作し、リールRを逆転させる。なお、リール保持軸82を回転軸とし、巻き取り機構は、リールRおよびリール保持軸82を一体的に逆転させてもよい。一方、巻き取り機構は、通常時にリールRの正転およびキャリアテープTの送りを阻害しないために、ワンウェイクラッチ部を有する。これによれば、巻き戻されたキャリアテープTに弛みを発生させることなく、リールRに巻き取ることができる。その他にも、第1および第2実施形態は、様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0062】
1:部品装着機 10:基台 2:基板搬送装置 3:部品供給装置 30、31:パレット 311:フィーダ搭載部 312:トレー式部品供給部 313:位置決めピン 314:電源コネクタ 34、35:使用済テープ処理部 36:電源部 39:パレット制御部 4:部品移載装置 8:テープフィーダ 81:供給位置 83:スプロケット 84:駆動モータ 85:フィーダ制御部 9:制御装置 91:装着作業データ 93:表示部 94:検知部 K:基板 R:リール T:キャリアテープ LA:所定値